JPWO2014017301A1 - バッフルプレート及びそれを備えた変速機 - Google Patents

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Abstract

ディファレンシャルギヤ(9)と油溜部(13)との間を仕切るように設置された本体部(51)と、機械室(10)内でディファレンシャルギヤ(9)により掻き上げられたオイルを制御室(30)へ導くための第1の樋部(61)と、下外周リブ(55)に形成されて制御室(30)から機械室(10)へオイルを流入させるための連通路(20)をケーシング(3)の側面(3b)との間に区画する切欠部(56)と、本体部(51)における開口部(52)の外周側に形成された貫通穴(57)と、ディファレンシャルギヤ(9)で掻き上げられて貫通穴(57)を通過したオイルを軸支部(9a)へ案内する第2の樋部(63)とを備えたバッフルプレート(50)である。ディファレンシャルギヤによるオイルの攪拌抵抗の低減、制御室内のオイル吸入口のエア噛み込み防止、ディファレンシャルギヤの軸支部に供給する潤滑油の流量の増加を図ることができる。

Description

本発明は、ケーシング内に画成されたディファレンシャルギヤを含む複数のギヤを収容してなる機械室と、該ケーシング内で機械室に隣接して配置された油圧制御用の機構を収容してなる制御室と、機械室内でケーシングの内側面とディファレンシャルギヤの側面との間に形成された油溜部とを備える変速機において、ディファレンシャルギヤによるオイルの攪拌抵抗の低減、及びディファレンシャルギヤで掻き上げられたオイルの流通制御を行うためのバッフルプレート、及びそれを備えた変速機に関する。
従来、車両に搭載された変速機として、ケーシング内に配置されてディファレンシャルギヤを含む複数のギヤを収容してなる機械室と、ケーシング内で機械室に隣接して配置されて油圧制御ボディなど油圧制御用の機構を収容してなる制御室と、機械室内でディファレンシャルギヤとケーシングの内側面との隙間に設けた油溜部とを備える変速機がある。このような変速機では、回転軸を支持するベアリングやギヤなど潤滑が必要な箇所にケーシング内のオイルを供給する潤滑油供給構造が設けられている。このような潤滑油供給構造には、例えば、特許文献1、2に示すように、ディファレンシャルギヤによる掻き上げオイルを利用したものがある。変速機では、この潤滑油供給構造によって、ギヤの歯面、回転軸の内部、ベアリングなど軸支部の油膜形成や冷却を行うことで、ケーシング内の各部品のスムーズな動作及び強度耐久性を確保している。
ところが、従来のディファレンシャルギヤによって掻き上げられたオイルによる潤滑構造には、下記(A1)〜(A4)のような課題がある。
(A1)ディファレンシャルギヤによって掻き上げられた機械室(ディファレンシャル室)内のオイルは、ケーシングの内壁面を伝って再び機械室内に落下する。そのため、制御室に十分なオイルが戻らず、制御室の油面が低下する。これにより、制御室の底部又はその近傍に設けたオイル吸入口が油面から露出することで、空気(エア)の噛み込み(エアレーション)が発生するおそれがある。
(A2)機械室の底部には、制御室の底部に連通する連通路(オイル流入部)が形成されている。この連通路を通して制御室内のオイルの一部が機械室に戻されるようになっている。そしてこの連通路は、ケーシングの内側面と、該ケーシングに一体形成した仕切壁との隙間部分に形成されている。すなわちこの連通路は、ケーシングの加工によって形成された部分である。そのため、ケーシングに必要な応力(強度)の条件から、連通路の寸法をあまり小さくすることができない。これにより、制御室から機械室に流入するオイルの流量を適切に制御することができず、機械室内のオイル量が多くなることで、ディファレンシャルギヤによる掻き上げ抵抗が増大するという問題がある。
(A3)機械室内のディファレンシャルギヤの側面とそれに対向するケーシングの内側面との隙間には、オイルが溜まるスペースである油溜部が形成されている。ところが、ディファレンシャルギヤの側面がこの油溜部に溜まったオイルに接している(浸されている)ことで、ディファレンシャルギヤの回転に伴い油溜部のオイルが攪拌されて、オイルの攪拌抵抗が増大するという問題がある。
(A4)ディファレンシャルギヤの側面に対向するケーシングの内側面には、例えば、特許文献3に示すように、機械室内で掻き上げられたオイルの一部をディファレンシャルギヤの軸受やスプライン係合部などの軸支部へ導くための潤滑油通路が形成されている。しかしながらこの潤滑油通路は、ケーシングの内面に形成した溝状(窪み状)の部分であるため、この潤滑油通路を通る潤滑油は、大部分が途中で機械室内にこぼれ落ちてしまう。そのため、ディファレンシャルギヤの軸支部に十分な量の潤滑油を供給することができないという問題がある。
なお、変速機におけるケーシング内の作動油の流れを規制するための構造として、特許文献4、5に示すように、ケーシング内に設置したバッフルプレートを備えるものがある。このようなバッフルプレートを設置すれば、ケーシング内の作動油の流れを所望の状態に規制できるうえに、機械室内の底部に溜まった作動油がディファレンシャルギヤの回転で攪拌されることを防止できる。しかしながら、従来構造のバッフルプレートには、特に単一のバッフルプレートで上記(A1)〜(A4)の問題すべてに対処することが可能なものは存在していなかった。
特開2004−176744号公報 特開2003−130190号公報 特許4409929号公報 特許4497896号公報 特許4497897号公報
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記(A1)〜(A4)の問題に対処することが可能なバッフルプレート、及びそれを備えた変速機を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、ケーシング(3)内に画成されてディファレンシャルギヤ(9)を含む複数のギヤを収容してなる機械室(10)と、ケーシング(3)内で機械室(10)に隣接して配置された油圧制御用の機構を収容してなる制御室(30)と、機械室(10)内でケーシング(3)の内側面とディファレンシャルギヤ(9)の側面との間に形成された油溜部(13)と、を備える変速機(1)において、ディファレンシャルギヤ(9)と油溜部(13)とを仕切るように設置されるバッフルプレート(50)であって、ディファレンシャルギヤ(9)の側部に配置されて、ディファレンシャルギヤ(9)の回転軸(6)を貫通させる開口部(52)を中心に有する本体部(51)と、本体部(51)の油溜部(13)側の面(51b)に形成されて、機械室(10)内でディファレンシャルギヤ(9)により掻き上げられたオイルを制御室(30)へ導くための第1の樋部(61)と、本体部(51)の外周の一部に形成された外周リブ(55)と、外周リブ(55)に設けられて制御室(30)から機械室(10)へオイルを流入させる連通路(20)をケーシング(3)の内面(3b)との間に形成する切欠部(56)と、本体部(51)における開口部(52)の外周側に形成されたスリット状の貫通穴(57)と、本体部(51)の油溜部(13)側の面(51b)における貫通穴(57)の下側に形成されて、ディファレンシャルギヤ(9)で掻き上げられて貫通穴(57)を通過したオイルをディファレンシャルギヤ(9)の軸支部(9a)へ案内する第2の樋部(63)と、を備えることを特徴とする。また、このバッフルプレートでは、第1の樋部(61)は、機械室(10)の上部から制御室(30)の上部に向かって次第に下降するよう傾斜する板状の突出片であってよい。
本発明にかかるバッフルプレートによれば、上記の各課題(A1)〜(A4)それぞれを下記(B1)〜(B4)のようにして解決することができる。
(B1)バッフルプレートに上記第1の樋部を設けたことで、機械室内でディファレンシャルギヤによって掻き上げられたオイルがこの第1の樋部で受け止められ、第1の樋部を伝って制御室に流入することで、制御室内の作動油の油面を上昇させることができる。そのため、制御室内の油面からオイル吸入口が露出することを防止でき、オイル吸入口からのエア(空気)の噛み込みを防止して、エアレーション性能(エアの吸引防止性能)を向上させることができる。
(B2)機械室と制御室とを連通する連通路を画成するための切欠部をバッフルプレートに形成したことで、ケーシングに必要な応力(強度)とは無関係に連通路の大きさ(切欠部の寸法)を設定することができる。したがって、連通路を通って制御室から機械室に流入するオイルの流量を所望の流量に制限することができ、ディファレンシャルギヤによるオイルの攪拌抵抗を効果的に低減することができる。
(B3)ディファレンシャルギヤの側面と油溜部との間を仕切るようにバッフルプレートが介在することで、油溜部のオイルがディファレンシャルギヤに接することを防止できる。したがって、ディファレンシャルギヤの攪拌抵抗を効果的に低減することができる。
(B4)本体部における開口部の外周側に形成されたスリット状の貫通穴と、本体部の油溜部側の面における貫通穴の下側に形成された第2の樋部とを設けたことで、ディファレンシャルギヤの回転で機械室内のオイルが掻き上げられると、この掻き上げられたオイルがスリット状の貫通穴を通ってバッフルプレートの正面側(ディファレンシャルギヤ側)から裏面側(油溜部側)へ導かれる。このオイルが第2の樋部を伝ってディファレンシャルギヤを支持する軸支部に供給される。したがって、ディファレンシャルギヤの軸支部に供給する潤滑油の流量を効果的に増加させることができる。
このように、本発明にかかる上記のバッフルプレートによれば、単一のバッフルプレートで上記(B1)〜(B4)の効果を奏することができるので、制御室内のオイル吸入口のエア噛み込み防止、ディファレンシャルギヤの回転に伴うオイルの攪拌抵抗の低減、ディファレンシャルギヤの軸支部に供給する潤滑油の流量の増加を図ることができる。
また、上記のバッフルプレートでは、前記本体部(51)の前記ディファレンシャルギヤ(9)側の面(51a)における前記貫通穴(57)の下側には、前記ディファレンシャルギヤ(9)側の面(51a)を軸方向の奥側へ窪ませて前記貫通穴(57)に連続させてなる窪み部(58)が設けられているとよい。
この構成によれば、上記の窪み部によって、ディファレンシャルギヤの回転で掻き上げられたオイルを貫通穴へ効率良く取り込むことができる。したがって、第2の樋部でディファレンシャルギヤの軸支部に供給する潤滑油の流量をより効果的に増加させることができる。
また本発明は、ケーシング(3)内に画成されたディファレンシャルギヤ(9)を含む複数のギヤを収容してなる機械室(10)と、前記ケーシング(3)内で前記機械室(10)に隣接して配置された油圧制御用の機構を収容してなる制御室(30)と、前記機械室(10)内で前記ケーシング(3)の内面と前記ディファレンシャルギヤ(9)の側面との間に形成された油溜部(13)と、前記ディファレンシャルギヤ(9)と前記油溜部(13)とを仕切るように設置されるバッフルプレート(50)と、を備える変速機(1)であって、当該バッフルプレート(50)として、本発明にかかる上記いずれかのバッフルプレートを備えることを特徴とする。
本発明にかかる変速機によれば、ディファレンシャルギヤと油溜部とに間に設置されるバッフルプレートとして、本発明にかかる上記いずれかのバッフルプレートを備えたことで、上記(B1)〜(B4)の効果を奏することができる。したがって、制御室内のオイル吸入口のエア噛み込み防止、ディファレンシャルギヤの回転に伴う機械室内のオイル攪拌抵抗の低減、ディファレンシャルギヤの軸支部に供給する潤滑油の流量の増加を図ることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
本発明の一実施形態にかかるバッフルプレートを備えた変速機の内部構造を示す概略側断面図である。 図1のX−X矢視断面を示す概略図である。 バッフルプレートを正面側から見た斜視図である。 バッフルプレートを背面側の上方から見た斜視図である。 バッフルプレートの背面図である。 バッフルプレートを正面側の上方から見た斜視図である。 バッフルプレートによるケーシング内の作動油の流れを説明するための図である。 バッフルプレートによるケーシング内の作動油の流れを説明するための図である。 バッフルプレートによるケーシング内の作動油の流れを説明するための図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるバッフルプレートを備えた変速機を示す概略の側断面図、図2は、図1のX―X矢視断面を示す概略図である。図1に示す変速機1は、後述するギヤ機構2や油圧制御ボディなどの構成部品を収容するケーシング3を備える。ケーシング3の内部は、ギヤ機構2が収容された機械室10と、油圧制御ボディなどが収容された制御室30との二室に分割されている。
機械室10内のギヤ機構2は、エンジン(図示せず)からの回転が入力される入力軸4と、入力軸4に対して平行に配置された出力軸5と、ディファレンシャル軸(回転軸)6とを備えている。また、入力軸4、出力軸5上にそれぞれ設置した変速段を形成するための各種のギヤ7,8やクラッチ(図示せず)を備える共に、ディファレンシャル軸6上に設置したディファレンシャルギヤ9を備える。ディファレンシャルギヤ9は、ギヤスプライン(軸支部)9aでディファレンシャル軸6上に支持されており、機械室10の底部10aの近傍に配置されている。なお、以下の説明で軸方向というときは、入力軸4や出力軸5の軸方向を示すものとし、横方向というときは、当該軸方向に対する左右方向(幅方向)を示すものとする。また、上又は下というときは、変速機1を車両に搭載した状態(図1に示す状態)での上又は下を指すものとする。
図1に示すように、機械室10の底部10a近傍におけるディファレンシャルギヤ9の外周端面に沿う位置には、機械室10と制御室30を仕切るための円弧状の仕切壁3aが形成されている。仕切壁3aは、ケーシング3の内面に一体形成されている。制御室30の底部30a及びその近傍と機械室10の底部10a及びその近傍との間は、この仕切壁3aによって仕切られている。仕切壁3aの下端とそれに対向するケーシング3の下側の内面3bとの間には、若干の間隔が設けられている。この間隔の部分には、後述するバッフルプレート50が有する下外周リブ55の下端辺55aの一部が張り出して配置されている。そして、この張り出している下外周リブ55には、機械室10と制御室30とを連通する連通路20を画成するための切欠部56が設けられている。
また、図2に示すように、ディファレンシャルギヤ9の背面(側面)9bとそれに対向するケーシング3の内側面との間には、機械室10内の作動油が貯留される油溜部13が形成されている。そして、ディファレンシャルギヤ9の背面9bに沿う位置には、バッフルプレート50が設置されている。バッフルプレート50は、ディファレンシャルギヤ9と油溜部13との間を仕切るように設置されている。バッフルプレート50の詳細構成については、後述する。
制御室30の底部30aに溜まったオイルは、制御室30の底部30a又はその近傍に開口するオイル吸入口(図示せず)から吸入される。このオイル吸入口から吸入されたオイルは、変速機1が備える図示しない制御ボディなどの油圧回路に供給されて、変速制御用のバルブ機構などを作動するための作動油圧として用いられる。また、入力軸4、出力軸5、ディファレンシャル軸6などの軸受部分に潤滑用のオイルとして供給される。そして、機械室10内のギヤや軸受部分に供給された潤滑用のオイルは、機械室10の油溜部13(図2参照)に貯留されるようになっている。機械室10の底部10a(ディファレンシャルギヤ9の周囲や油溜部13)に溜まったオイルは、ディファレンシャルギヤ9の回転で掻き上げられる。
ここで、ケーシング3内に設置したバッフルプレート50について詳細に説明する。図3乃至図6は、バッフルプレート50を示す図で、図3は、バッフルプレート50を正面側から見た斜視図、図4は、バッフルプレート50を背面側の上方から見た斜視図、図5は、バッフルプレート50の背面図、図6は、バッフルプレート50を正面側の上方から見た斜視図である。
バッフルプレート50は、合成樹脂製の一体成型品からなる板状の部材である。このバッフルプレート50は、略円形平板状の本体部51を備える。本体部51の中心には、ディファレンシャル軸(回転軸)6(図1参照)を貫通させる円形の貫通孔からなる開口部52が形成されている。本体部51の正面(ディファレンシャルギヤ9側の面を指す、以下同じ。)51a側の外周縁には、軸方向に沿って本体部51の周縁から正面51a側へ突出し、周方向に沿って略円弧状に延びる上外周リブ53及び下外周リブ55が形成されている。上外周リブ53は、本体部51の正面51a側から見て、ディファレンシャルギヤ9の左上側の一部を囲む位置に設けられており、下外周リブ55は、ディファレンシャルギヤ9の右下側の一部を囲む位置に設けられている。なお、本体部51の上外周リブ53及び下外周リブ55以外の部分の外周縁は、ケーシング3の内面に沿う形状に加工されている。
そして、図6に示すように、下外周リブ55には切欠部56が設けられている。この切欠部56は、下外周リブ55における下端辺55aの先端部(角部)を略矩形状に切り欠いてなる部分である。そしてこの切欠部56は、後述するように、バッフルプレート50をディファレンシャルギヤ9の背面9b側に取り付けた状態で、ケーシング3の側面3bとの間に連通路20用の隙間を画成するための部分である。
一方、本体部51の上端辺51cは、横方向に延びる略直線状になっている。そして、本体部51の背面51bにおける上端辺51cの下側には、上端辺51cに沿って横方向に延びる細板状の第1の樋部61が形成されている。第1の樋部61は、本体部51の背面51bから軸方向に突出する細板状の突出片であり、上端辺51cと開口部52との間を通って本体部51の両側間を横方向に延伸している。そして、第1の樋部61は、その上面61cが上端部61aから下端部61bに向かって次第に下降する緩やかな傾斜面状になっている。すなわち、第1の樋部61は、上端部61aから下端部61bに向かってその高さ位置が次第に低くなるように構成されている。これにより、第1の樋部61は、上端部61a側から下端部61b側に向かってオイルを重力で自然に流下させるようになっている。また、第1の樋部61の上端部61aは、上方を向いて配置されており、下端部61bは、下方を向いて配置されている。なお、上端部61aの軸方向の奥側(本体部51の正面51a側)には、側部が囲まれて上方が開口してなる受皿状の油受部61dが設けられている。この油受部61dは、上外周リブ53の上端に設けられている。
また、図5に示すように、開口部52の外径側における上外周リブ53の内側には、本体部51の正面51a側から背面51b側へ連通するスリット状の貫通穴57が形成されている。貫通穴57は、本体部51の正面51a側から見て、開口部52の左上方に配置されており、開口部52の中心に対して径方向に延びる略長方形状に形成されている。また、本体部51の正面51aにおける貫通穴57の下側には、本体部51の正面51aを軸方向の奥側(背面51b側)へ窪ませてなる窪み部58が形成されている。この窪み部58の下端は、本体部51の正面51aから傾斜面状に連続しており、その上端が貫通穴57の下端辺に繋がっている。これにより、貫通穴57は、正面51側が下側を向いて開いた状態となっており、下側から掻き上げられたオイルを取り込み易くなっている。
貫通穴57は、本体部51の背面51bにおいて、第1の樋部61における上端部61aの近傍位置の下側に開口している。貫通穴57の下側には、該貫通穴57から流出した作動油を開口部52側に向けて案内するための細板状に形成された第2の樋部63が設けられている。第2の樋部63は、第1の樋部61と同様、本体部51の背面51bから軸方向に突出する板状の部分であり、貫通穴57の下端辺に沿う位置から開口部52の外周に沿う位置まで略横方向に延伸している。
上記構成のバッフルプレート50は、図1及び図2に示すように、機械室10内でディファレンシャルギヤ9の背面(側面)9b側に沿う位置に設置される。すなわち、バッフルプレート50は、その本体部51がディファレンシャルギヤ9の背面9bに対向しており、上外周リブ53と下外周リブ55のそれぞれが、本体部51の正面51a側から見て、ディファレンシャルギヤ9の外周端面における右斜め下側の一部と左斜め上側の一部とを円弧状に囲むように配置される。
また、図2に示すように、バッフルプレート50の背面51bとそれに対向するケーシング3の内側面との間には、機械室10内の作動油が貯留される油溜部13が形成されている。そして、バッフルプレート50の第1の樋部61は、油溜部13の上方に被さるように配置される。また、第1の樋部61の下端部61bは、制御室30の上方に張り出して位置している。
また、機械室10内にバッフルプレート50を設置した状態で、下外周リブ55に形成した切欠部56は、仕切壁3aとケーシング3の側面3bとの間に配置される。そして、この状態でケーシング3の側面3bと切欠部56との間には、連通路20を画成するための隙間が形成される。
図7〜図9は、バッフルプレート50による機械室内での作動油の流れを説明するための図である。機械室10内でディファレンシャルギヤ9の回転によって掻き上げられた作動油は、図7の矢印に示すように、再び機械室10内に流れ落ちようとする。これに対して、本実施形態では、バッフルプレート50に第1の樋部61を設けていることで、機械室10内に流れ落ちようとする作動油を第1の樋部61で受け止めることができる。第1の樋部61で受け止められた作動油は、第1の樋部61に沿って上端部61a側から下端部61b側へ流れ、下端部61bから制御室30内に流下する。
このように、バッフルプレート50に第1の樋部61を設けたことで、機械室10内でディファレンシャルギヤ9によって掻き上げられたオイルが第1の樋部61で受け止められ、第1の樋部61を伝って制御室30に流入する。これにより、制御室30の油面L2が上がるため、オイル吸入口が油面L2から露出することを防止できる。したがって、オイル吸入口でのエア(空気)の噛み込みを防止でき、エアレーション性能(エアの吸引防止性能)を向上させることができる。
また、上記のバッフルプレート50では、第1の樋部61は、機械室10の上部から制御室30の上部に向かって次第に下降するよう傾斜する板状の突出片である。この構成によれば、機械室10内でディファレンシャルギヤ9によって掻き上げられたオイルを第1の樋部61に沿って重力で自然に流下させて、制御室30へ確実に導くことが可能となる。
また、バッフルプレート50に上記の貫通穴57及び第2の樋部63を設けたことで、ディファレンシャルギヤ9の回転で機械室10の底部に溜まったオイルが掻き上げられると、この掻き上げられたオイルは、図3及び図8に示すように、スリット状の貫通穴57を通って本体部51の正面51a側から背面51b側へ導かれる。このオイルは、本体部51の背面51bに設けた第2の樋部63を伝ってディファレンシャル軸6上のギヤスプライン(軸支部)9aに導かれる。これにより、ディファレンシャル軸6上のギヤスプライン9aに供給する潤滑油の流量を効果的に増加させることができる。
また、図9に示すように、機械室10と制御室30との間に設けた連通路(オイル流入部)20を通って、制御室30内のオイルの一部が機械室10に戻されるようになっている。そして本実施形態では、この連通路20用の切欠部56をバッフルプレート50に形成していることで、ケーシング3に必要な応力(強度)とは無関係に連通路20の大きさ(切欠部56の寸法)を設定することができる。したがって、連通路20を通って制御室30から機械室10に流入するオイルを所望の流量に制限できるので、機械室10内のオイルの攪拌抵抗を効果的に低減することができる。
また、本実施形態の変速機1では、図2に示すように、ディファレンシャルギヤ9と油溜部13との間を仕切るようにバッフルプレート50の本体部51が介在している。これにより、油溜部13のオイルがディファレンシャルギヤ9に接することを防止できる。したがって、ディファレンシャルギヤ9の回転による機械室10内のオイルの攪拌抵抗を低減することができる。
また、上記のバッフルプレート50では、本体部51の正面(ディファレンシャルギヤ9側の面)51aにおける貫通穴57の下側には、ディファレンシャルギヤ9で掻き上げられたオイルを貫通穴57に取り込むための窪み部58が設けられている。この窪み部58を設けたことによって、ディファレンシャルギヤ9で掻き上げられたオイルを貫通穴57へより効率良く取り込むことができる。したがって、第2の樋部63でディファレンシャル軸6上のギヤスプライン9aに供給する潤滑油の流量をより効果的に増加させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態に示す変速機の具体的な構成は一例であり、本発明にかかるバッフルプレートは、他の構成の変速機に適用することも可能である。また、バッフルプレートの具体的な形状も一例であり、本発明にかかるバッフルプレートは、ディファンシャルギヤと油溜部とを仕切るように設置されたバッフルプレートであって、上記第1の樋部、貫通孔、第2の樋部、切欠部に対応する部分を備えたものであれば、その具体的な形状は、上記実施形態に示す以外の形状であってもよい。

Claims (4)

  1. ケーシング内に画成されてディファレンシャルギヤを含む複数のギヤを収容してなる機械室と、前記ケーシング内で前記機械室に隣接して配置された油圧制御用の機構を収容してなる制御室と、前記機械室内で前記ケーシングの内側面と前記ディファレンシャルギヤの側面との間に形成された油溜部と、を備える変速機において、前記ディファレンシャルギヤと前記油溜部とを仕切るように設置されるバッフルプレートであって、
    前記ディファレンシャルギヤの側部に配置されて、前記ディファレンシャルギヤの回転軸を貫通させる開口部を中心に有する本体部と、
    前記本体部の前記油溜部側の面に形成されて、前記機械室内で前記ディファレンシャルギヤにより掻き上げられたオイルを前記制御室へ導くための第1の樋部と、
    前記本体部の外周の一部に形成された外周リブと、
    前記外周リブに設けられて前記制御室から前記機械室へオイルを流入させる連通路を前記ケーシングの内面との間に画成する切欠部と、
    前記本体部における前記開口部の外周側に形成されたスリット状の貫通穴と、前記本体部の前記油溜部側の面における前記貫通穴の下側に形成されて、前記ディファレンシャルギヤで掻き上げられて前記貫通穴を通過したオイルを前記ディファレンシャルギヤの軸支部へ案内する第2の樋部と、を備える
    ことを特徴とするバッフルプレート。
  2. 前記第1の樋部は、前記機械室の上部から前記制御室の上部に向かって次第に下降するように傾斜する板状の突出片である
    ことを特徴とする請求項1に記載のバッフルプレート。
  3. 前記本体部の前記ディファレンシャルギヤ側の面における前記貫通穴の下側には、前記ディファレンシャルギヤ側の面を軸方向の奥側へ窪ませて前記貫通穴に連続させてなる窪み部が設けられている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバッフルプレート。
  4. ケーシング内に画成されたディファレンシャルギヤを含む複数のギヤを収容してなる機械室と、前記ケーシング内で前記機械室に隣接して配置された油圧制御用の機構を収容してなる制御室と、前記機械室内で前記ケーシングの内側面と前記ディファレンシャルギヤの側面との間に形成された油溜部と、前記ディファレンシャルギヤと前記油溜部とを仕切るように設置されるバッフルプレートと、を備える変速機であって、
    前記バッフルプレートとして、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバッフルプレートを備えることを特徴とする変速機。
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