JP6562050B2 - 車両用動力伝達装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用動力伝達装置に関し、特に、差動機構に潤滑油を供給するための油路を有するバッフルプレートを備えた車両用動力伝達装置に関するものである。
(a)回転軸線まわりに回転可能に設けられ、外周面に貫通穴を有するデファレンシャルケースと、前記デファレンシャルケースに固定されたピニオンシャフトとの両端にそれぞれ嵌め付けられた一対のピニオンギヤと、前記デファレンシャルケースに回転可能に支持されて前記ピニオンギヤと噛み合う一対のサイドギヤと、を備える差動機構と、(b)前記デファレンシャルケースの外周を覆うように固設され、前記ピニオンギヤおよび前記サイドギヤを潤滑するための潤滑油供給用の油路と、(c)前記デファレンシャルケースを覆う位置固定のバッフルプレートと、を含む車両用動力伝達装置が知られている。たとえば、特許文献1に記載の車両用動力伝達装置がそれである。
上記特許文献1に記載の車両用動力伝達装置では、潤滑油供給用管路を介して潤滑油が差動機構に供給されている。具体的には、潤滑油は、差動機構を収容する外部ケースに形成された油路からデファレンシャルケースの内部に配管された潤滑油供給用管路に供給され、さらに潤滑油供給用管路から差動機構に供給されている。これにより、潤滑油供給用管路を介して差動機構の外部から差動機構内に潤滑油を直接供給することができる。
特開2016−041979号公報
ところで、車両用動力伝達装置では、ピニオンギヤやサイドギヤによる攪拌抵抗によって差動機構の動力伝達効率が悪化することを防止するために、差動機構の周辺から飛散してくる潤滑油が差動機構内に流入しないように、たとえば差動機構の外周を覆うバッフルプレートを設けている。この場合には、上記特許文献1の車両用動力伝達装置では、バッフルプレートが外部ケースに形成された油路と潤滑油供給用管路と間に介在する可能性があり、バッフルプレートが潤滑油の供給の妨げになる可能性があった。
他方、差動機構の外周にバッフルプレートを設ける車両用動力伝達装置では、油路をバッフルプレートに形成して潤滑油供給用管路を介さず差動機構に潤滑油を供給する構造が考えられる。これにより、バッフルプレートに一体的に設けられた油路の開口部から差動機構に潤滑油が吐出されるので、バッフルプレートが潤滑油の供給の妨げになることなく、差動機構に潤滑油を供給することができる。しかしながら、上記油路の開口部から差動機構に潤滑油を吐出するための力が自重より小さくなった場合、すなわち潤滑油が低温時に高粘度になって油路内で抵抗が増大した場合には、潤滑油は上記油路の開口部から噴射されず、油路の壁面に沿って滴下する可能性があった。そのため、潤滑油の吐出方向が定まらず、差動機構に潤滑油を安定して供給することができない可能性があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、効率的かつ安定的に潤滑油を差動機構内に供給することができる油路一体のバッフルプレートを備えた車両用動力伝達装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、(a)回転軸線まわりに回転可能に設けられ、外周壁に貫通穴を有するデファレンシャルケースと、前記デファレンシャルケースに固定されたピニオンシャフトとの両端にそれぞれ嵌め付けられた一対のピニオンギヤと、前記デファレンシャルケースに回転可能に支持されて前記ピニオンギヤと噛み合う一対のサイドギヤと、を備える差動機構と、(b)前記ピニオンギヤおよび前記サイドギヤを潤滑するための潤滑油供給用の油路として機能する油路部品を備え、前記デファレンシャルケースの外周を覆うように固設されるバッフルプレートと、を含む車両用動力伝達装置であって、(c)前記油路部品には、前記油路内の潤滑油を下方へ流出させる開口部が形成され、(d)前記開口部は、前記ピニオンシャフトの上方、かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する前記一対の端面間に配設されていることにある。
第2発明の要旨とするところは、前記油路部品は、前記バッフルプレートに一体的に備えられていることにある。
第3発明の要旨とするところは、前記バッフルプレートおよび前記油路部品は、樹脂素材によりそれぞれ構成されていることにある。
第4発明の要旨とするところは、前記開口部は、前記油路の内径よりも小さい穴径を有する開口穴を備えていることにある。
第5発明の要旨とするところは、(a)前記開口部には、前記開口穴から流出する潤滑油を滴下するガイドが形成され(b)前記ガイドは、前記ピニオンシャフトの上方、かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する前記一対の端面間に配設されていることにある。
第6発明の要旨とするところは、前記ガイドは、前記開口穴の中心線方向に突出する円筒状突起を有し、かつ前記円筒状突起の先端部は先端から前記開口穴に向かって厚さ寸法が増大するテーパ状に形成されていることにある。
第7発明の要旨とするところは、前記円筒状突起のテーパ状の先端部は、前記バッフルプレートおよび前記差動機構が車両に組み付けられた状態において、水平線に対する最小角度が0度よりも大きい角度を有するテーパ面となるように形成されていることにある。
第1発明によれば、車両用動力伝達装置では、前記油路部品は、前記バッフルプレートに備えられ、前記油路部品には、前記油路内の潤滑油を下方へ流出させる開口部が形成されている。また、前記開口部は、前記ピニオンシャフトの上方、かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する前記一対の端面間に配設されている。これにより、車両用動力伝達装置は、前記開口部と前記差動機構との間に前記貫通穴が位置している場合、それらの間には潤滑油の供給を妨げる遮蔽物が無くなるので、潤滑油を無駄無く前記差動機構に供給できるとともに、前記開口部が前記ピニオンシャフトの上方かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する前記一対の端面間に配設されているので、潤滑油を下方へ流出させて前記ピニオンシャフトに供給することができる。そのため、車両用動力伝達装置は、効率的かつ安定的に潤滑油を前記差動機構に供給することができる。
第2発明によれば、前記油路部品は、前記バッフルプレートに一体的に備えられている。これにより、車両用動力伝達装置は、前記開口部と前記差動機構との間に前記貫通穴が位置している場合、それらの間には潤滑油の供給を妨げる遮蔽物が無くなるとともに、前記油路部品が前記バッフルプレートとともに容易に取り付けられる。そのため、車両用動力伝達装置の組付作業性が向上するとともに、車両用動力伝達装置は、潤滑油を無駄無く前記差動機構に供給できる。
第3発明によれば、前記バッフルプレートおよび前記油路部品は、樹脂素材によりそれぞれ構成されている。これにより、たとえば複雑な形状であっても金属素材の場合と比べて安価に前記バッフルプレートおよび前記油路部品を形成することができるので、車両用動力伝達装置の低コスト化を図ることができる。
第4発明によれば、前記開口部は、前記油路の内径よりも小さい穴径を有する開口穴を備えている。これにより、前記油路を流れる潤滑油は、前記開口穴から噴射されて前記ピニオンシャフトに供給されるので、車両用動力伝達装置は、潤滑油を前記ピニオンシャフトに確実に供給することができる。
第5発明によれば、前記開口部には、前記開口穴から流出する潤滑油を滴下するガイドが形成され、前記ガイドは、前記ピニオンシャフトの上方、かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する前記一対の端面間に配設されている。これにより、前記ガイドが前記ピニオンシャフトの上方かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する前記一対の端面間に配設されているので、前記開口部から潤滑油が噴射されずに前記開口部から潤滑油が滴下される場合に、車両用動力伝達装置は、潤滑油を前記ピニオンシャフトに確実に供給することができる。そのため、車両用動力伝達装置は、より効率的かつ安定的に潤滑油を前記差動機構に供給することができる。
第6発明によれば、前記ガイドは、前記開口穴の中心線方向に突出する円筒状突起を有し、かつ前記円筒状突起の先端部は先端から前記開口穴に向かって厚さ寸法が増大するテーパ状に形成されている。これにより、前記開口部から潤滑油が噴射されずに前記開口部から潤滑油が滴下される場合に、潤滑油は、前記円筒状突起の内径壁面に沿ってにじみ出されるとともにテーパ状の前記円筒状突起の先端部によってより確実に潤滑油を前記ピニオンシャフトに供給される。そのため、車両用動力伝達装置は、より効率的かつ安定的に潤滑油を前記差動機構に供給することができる。
第7発明によれば、前記円筒状突起のテーパ状の先端部は、前記バッフルプレートおよび前記差動機構が車両に組み付けられた状態において、水平線に対する最小角度が0度よりも大きい角度を有するテーパ面となるように形成されている。これにより、車両用動力伝達装置は、前記円筒状突起の外周周辺に潤滑油が伝うことなく、潤滑油をより確実に滴下させて前記ピニオンシャフトに供給することができる。
本発明の車両用動力伝達装置が適用される車両の概略構成を説明する骨子図である。 図1の差動機構の構成を説明する断面図である。 差動機構およびバッフルプレートの要部を示す側面図である。 バッフルプレートの要部を示す斜視図である。 差動機構およびバッフルプレートの要部を示す図であり、差動機構は図3のV−V視断面図で示し、バッフルプレートは端面側から見た要部を示す図である。 図5の囲みA部で示す開口部の要部を拡大して示す断面図である。 図5の囲みA部で示す開口部の要部を拡大して示す断面図である。
本発明は、エンジン駆動車両に適用されているが、走行用の駆動力源としてエンジンの他に走行用回転機すなわち駆動用電動機を有するハイブリッド車両等や駆動力源として電動モータのみを備えている電気自動車などにも適用され得る。車両用動力伝達装置は、複数の軸が車両幅方向に沿って配置されるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)等の横置き型のトランスアクスルが好適に用いられるが、FR型や4輪駆動型の動力伝達装置であってもよい。
以下、本発明の一実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用される前置エンジン前輪駆動を基本とする前後輪駆動車両10(以下、車両10という)に備えられた車両用動力伝達装置12の構成を説明する骨子図である。この図1に示す車両用動力伝達装置12において、駆動源として機能するエンジン14により発生させられた駆動トルクは、トルクコンバータ16、変速機18、前輪用デファレンシャル装置20(以下、単にデファレンシャル装置(車両用デファレンシャル装置)20という)、及び一対の前輪車軸22lおよび22rを介して一対の前輪24lおよび24rへ伝達される。さらに、車両用動力伝達装置12において、前記駆動トルクは、駆動トルク伝達軸であるプロペラシャフト26、前後輪駆動力配分装置である電子制御カップリング28、後輪用デファレンシャル装置30、及び一対の後輪車軸2lおよび2r(以下、一対のドライブシャフト2lおよび2rという)を介して一対の後輪34lおよび34rへ伝達される。ここで、デファレンシャル装置20および後輪用デファレンシャル装置30は、遊星歯車機構により差動作用を生じる差動機構として機能するものであり、本実施例では、デファレンシャル装置20について説明する。
図2は、デファレンシャル装置20の構成を示すためにピニオンシャフト36の軸心C1及び一対のドライブシャフト2lおよび2rの軸心C2を含む平面で切断した断面図である。図2に示すように、デファレンシャル装置20は、軸心C2と略同じ回転軸心(回転軸線)C3まわりに図示しない非回転部材であるハウジングに回転可能に支持された容器状のデファレンシャルケース44と、そのデファレンシャルケース44の外周部44aにボルト46により固定されたリングギヤ48とを備えている。また、デファレンシャル装置20は、デファレンシャルケース44に両端部が支持され、そのデファレンシャルケース44の回転軸心C3に直交する姿勢でノックピン50によりそのデファレンシャルケース44に固定された円柱形状のピニオンシャフト36を備えている。また、デファレンシャル装置20は、ピニオンシャフト36を挟んで対向する状態で軸心C4まわりに回動自在に配置され、デファレンシャルケース44内に収容された一対のサイドギヤ52および54と、ピニオンシャフト36が挿通させられることによってそのピニオンシャフト36により回転可能に支持された状態でデファレンシャルケース44と共に回転し、一対のサイドギヤ52および54の外周歯52aおよび54aと噛み合う外周歯56aおよび58aを有する一対のピニオンギヤ56および58とを備え、デファレンシャルケース44に伝達された駆動トルクを一対のドライブシャフト22lおよび22rに分配する。
図2に示すように、ドライブシャフト2lおよび2rのピニオンシャフト36側の軸端部の外周には、スプライン溝2aがそれぞれ形成されている。また、一対のサイドギヤ52および54の嵌合穴52bおよび54bの内周部には、ドライブシャフ2lおよび2rのスプライン溝2aと噛み合うスプライン歯52cおよび54cがそれぞれ形成されている。
一対のドライブシャフト2lおよび2rは、一対のサイドギヤ52および54のスプライン歯52cおよび54cに、その一対のドライブシャフト2lおよび2rのスプライン溝2aが相互に噛み合わされるように嵌め入れられている。すなわち、一対のドライブシャフト2lおよび2rは、サイドギヤ52および54に相対回転不能に且つサイドギヤ52および54の軸心C4方向の移動可能に、それぞれ一対のサイドギヤ52および54の嵌合穴52bおよび54bに嵌め入れられている。ドライブシャフト2lおよび2rの軸心C2とサイドギヤ52および54の軸心C4とは、略同一軸心上に設けられている。
図3は、デファレンシャル装置20およびバッフルプレート70の要部を水平方向視で示す側面図である。図3は、具体的には、デファレンシャル装置20の周囲にバッフルプレート70が図示しない非回転部材であるハウジングに固設された状態を側面から見た図を示しており、バッフルプレート70は断面で示されている。図4は、バッフルプレート70の要部を示す斜視図である。図5は、デファレンシャル装置20およびバッフルプレート70の要部を示す図であり、デファレンシャル装置20は図3のV−V視断面図で示し、バッフルプレート70は図3におけるリングギヤ48側のバッフルプレート70の端面側から見た要部を示す図である。図5の一部には、後述する油路部品80に形成された開口部90が透視図によって示されている。油路部品80およびバッフルプレート70は、樹脂素材によってそれぞれ構成されている。
バッフルプレート70は、図3から図5に示すように、デファレンシャル装置20の外周、具体的にはデファレンシャルケース44の外周を覆うようにハット状或いは環状に形成されている。バッフルプレート70は、図3から図5に示すように、本体72とフランジ74とにより構成されている。バッフルプレート70には複数の締結用穴が形成されており、本実施例のバッフルプレート70には、本体72に個の締結用穴72aが形成され、フランジ74に個の締結用穴74aが形成されている。締結用穴72a、74aには図示しない締結ボルトが挿通され、前記締結ボルトはたとえば図示しないハウジングに形成された図示しない締結部にそれぞれ締結されている。デファレンシャルケース44の外周壁には、後述するバッフルプレート70から噴射または滴下される潤滑油がピニオンシャフト36などに直接供給されるように、2個の貫通穴44bが周方向等間隔に形成されている。組み立て時において貫通穴44bは、サイドギヤ52、54およびピニオンギヤ56、58を通過させることが可能な大きさを有している。貫通穴44bは、図3および図5に示すように、ピニオンシャフト36の軸心C1に平行であって、一対のピニオンギヤ56、58の相対向する一対の端面56b、58b間の距離より大きく、且つ一対のピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56c、58c間の距離よりも小さい長径d1を有している。また、図3に示すように、貫通穴44bは、デファレンシャルケース44の回転軸心C3に直交する方向から視て、一対のピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56b、58bとサイドギヤ52、54の一部とを含む大きさの短径d2を有している。
バッフルプレート70の本体72は、図3および図4に示すように、デファレンシャルケース44を所定の間隔を隔てて覆うことが可能な空間を内部に有する略円筒状に形成され、かつ不均一な肉厚で形成されている。図3に示すように、デファレンシャル装置20の外周にバッフルプレート70が固設された状態において、本体72のうち、鉛直方向上方側すなわち図3での上方側は肉厚が大きい厚肉部72aとなっている。本体72の厚肉部には、フランジ74から本体72のリングギヤ48とは反対側の先端72bに向かって伸びる本体側油路部80dが一体的に備えられている。
バッフルプレート70には、デファレンシャル装置20の一対のピニオンギヤ56、58や一対のサイドギヤ52、54を潤滑するため潤滑油を導く油路80aとして機能するようにその油路80aの外殻を構成する油路部品80を一体的に備えている。バッフルプレート70のフランジ74には、油路部品80の一部である円環油路部80cが一体的に備えられている。
油路部品80は、図に示すように、円環油路部80cと本体側油路部80dとを含んで形成されており、バッフルプレート70に一体的に備えられている。円環油路部80cの上部であってリングギヤ48とは反対側の側面と本体側油路部80dのリングギヤ48側の端部とは、互いに連通している。円環油路部80cは、図3に示すように、本体72の内周面形状に沿うように湾曲させられることで略円環状すなわちC字形状に形成されて、フランジ74に一体的に備えられている。円環油路部80cの一端には、潤滑油受け渡し部80eが形成されており、バッフルプレート70の外部の図示しない潤滑油供給装置から潤滑油受け渡し部80eを介して油路80aに潤滑油が供給されている。本体側油路部80dは、円環油路部80cの一部から本体72のリングギヤ48とは反対側の先端72bに向かって伸びるように形成されて、本体72に一体的に備えられている。図3に示すように、本実施例では、円環油路部80c内の油路80aは断面が略長方形状に形成され、本体側油路部80d内の油路80aは断面が円形状に形成されているが、たとえば円環油路部80c内の油路80aおよび本体側油路部80d内の油路80aの断面が共に円形状に形成されていてもよい。
油路部品80には、油路80a内の潤滑油を鉛直方向の下方に向かって流出させる開口部90が形成されている。図5の囲みA部は、バッフルプレート70の内部を透視図により示しており、具体的には油路部品80に形成される開口部90の要部を示している。図5に示すように、開口部90は、ピニオンシャフト36の鉛直方向の上方、かつピニオンシャフト36が水平であるときの一対のピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56b、58b間に配設されている。図5では、ピニオンシャフト36が水平に対して約15度程度傾斜した状態が示されている。図5に示すF1方向およびF2方向は、開口部90からデファレンシャル装置20に供給される潤滑油の吐出方向を示している。F1方向は、開口部90から潤滑油が噴射された場合の潤滑油の吐出方向であって、ピニオンシャフト36の長手方向の略中央付近に潤滑油が供給されている。F2方向は、開口部90から潤滑油が滴下された場合の潤滑油の吐出方向であって、一対のピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56b、58b間、好適には一対の相対向する面56b、58bの内側部位のピニオンシャフト36上に潤滑油が供給されている。ここで、開口部90から潤滑油が滴下される場合は、たとえば低温時に潤滑油が高粘度となった場合が考えられる。F2方向は、車両10の鉛直下方方向と略同じ方向である。また、開口部90は、図3および図5に示すように、ピニオンシャフト36の径方向すなわちピニオンシャフト36の幅方向において、ピニオンシャフト36の中心線上に配設されている。本実施例では、図5に示すように、開口部90とデファレンシャルケース44の回転軸線C3との間に貫通穴44bが位置している場合には、遮蔽物となる部品が存在していないため、潤滑油が開口部90からデファレンシャル装置20に効率よく供給される。ここで、図5および図7に示す、潤滑油が開口部90から噴射された場合の潤滑油の吐出方向であるF1方向は、開口穴90aの中心線C5方向と略同じ方向である。
図6および図7は、図5の囲みA部に示す開口部90の要部を拡大して示す図である。図6は、油路80aに潤滑油が供給されていない状態を示している。開口部90は、油路部品80の本体側油路部80dに形成されて、油路80aに連通する開口穴90aを備えている。開口穴90aの穴径は、油路80aの内径よりも小さく形成されている。また、開口部90には、開口穴90aから流出する潤滑油を所定の方向に案内するガイド90bが形成されている。本実施例では、ガイド90bは、開口穴90aの中心線C5方向に突出する円筒状突起90cを有しており、円筒状突起90cは、開口穴90aの中心線C5と同心に形成されている。ガイド90bは、ピニオンシャフト36の鉛直方向の上方、かつピニオンシャフト36が水平であるときの一対のピニオンギヤ56、58の相対向する一対の端面56b、58b間に配設されている。また、ガイド90bは、デファレンシャルケース44の回転軸線C3方向において、ピニオンシャフト36の幅(径)寸法内に、好適には、ピニオンシャフト36の幅方向において、ピニオンシャフト36の中心線上に配設されている。
図6に示すように、円筒状突起90cの内径は、開口穴90aの穴径よりも大きく形成されている。円筒状突起90cの先端部は、先端から開口穴90aに向かって外径が増大すなわち先端から開口穴90aに向かって円筒状突起90cの厚さ寸法が増大するテーパ状に形成されている。すなわち、開口部90は、いわゆるノズル状となるように形成されている。円筒状突起90cのテーパ状の先端部は、バッフルプレート70およびデファレンシャル装置20が車両10に組み付けられた状態において、図6に示すように、水平線に対する角度が0度よりも大きい角度θを有するテーパ面90dが形成されている。角度θは、図6において水平線に対して反時計回り方向の角度を正とする。
図7は、油路80aに潤滑油が供給されて開口部90から潤滑油が流出する状態を示しており、低温時における潤滑油が開口部90から流出する状態を示している。具体的には、図7は、低温時に潤滑油が高粘度となり、潤滑油受け渡し部80eから油路80aを通り開口穴90aまでの管路における抵抗が増大することによって、たとえば潤滑油は開口部90の開口穴90aの軸心方向に向かって噴射されず、ガイド90bの壁面すなわち円筒状突起90cの内径壁面90eに沿って潤滑油が滴下される状態を示している。図7に示すように、潤滑油が低温時に高粘度となって開口部90から噴射されない場合には、潤滑油は円筒状突起90cの内径壁面90eに沿ってにじみ出されるとともに、円筒状突起90cのテーパ状の先端部によってF2方向に滴下される。円筒状突起90cは、図5に示すように、ピニオンシャフト36の上方、かつピニオンシャフト36が水平であるときの一対のピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56b、58b間に配設されているので、F2方向に滴下された潤滑油はピニオンシャフト36に供給される。すなわち、潤滑油が低温時に高粘度となって開口部90からたとえばピニオンシャフト36へ噴射させる力が潤滑油の粘性抵抗よりも小さくなった場合に、潤滑油の自重によって一対のピニオンギヤ56、58の相対向する一対の端面56b、58b間、好適には、その一対の端面56b、58bの内側部位のピニオンシャフト36に潤滑油が滴下される。さらに、一対のピニオンギヤ56、58の相対向する一対の端面56b、58b間のピニオンシャフト36に滴下された潤滑油は、デファレンシャルケース44の回転軸線C3まわりの回転による遠心力によって、ピニオンシャフト36とピニオンギヤ56との間、および、ピニオンシャフト36とピニオンギヤ58との間に供給される
このように、本実施例によれば、車両用動力伝達装置12では、油路部品80は、バッフルプレート70に一体的に備えられ、油路部品80には、油路80a内の潤滑油を下方へ流出させる開口部90が形成されている。また、開口部90は、ピニオンシャフト36の上方、かつピニオンシャフト36が水平であるときの一対のピニオンギヤ56、58の相対向する一対の端面56b、58b間に配設されている。これにより、車両用動力伝達装置12は、開口部90とデファレンシャル装置20との間に貫通穴44bが位置している場合、それらの間には潤滑油の供給を妨げる遮蔽物が無くなるので、潤滑油を無駄無くデファレンシャル装置20に供給できるとともに、開口部90がピニオンシャフト36の上方かつピニオンシャフト36が水平であるときの一対のピニオンギヤ56、58の相対向する一対の端面56b、58b間に、好適にはその一対の端面56b、58bの内側部位に配設されているので、潤滑油を下方へ流出させてピニオンシャフト36に供給することができる。そのため、車両用動力伝達装置12は、効率的かつ安定的に潤滑油をデファレンシャル装置20に供給することができる。
また、本実施例によれば、油路部品80は、バッフルプレート70に一体的に備えられている。これにより、車両用動力伝達装置12は、開口部90とデファレンシャル装置20との間に貫通穴44bが位置している場合、それらの間には潤滑油の供給を妨げる遮蔽物が無くなるとともに、油路部品80がバッフルプレート70とともに容易に取り付けられる。そのため、車両用動力伝達装置12の組付作業性が向上するとともに、車両用動力伝達装置12は、潤滑油を無駄無くデファレンシャル装置20に供給できる。
また、本実施例によれば、バッフルプレート70および油路部品80は、樹脂素材によりそれぞれ構成されている。これにより、たとえば複雑な形状であっても金属素材の場合と比べて安価にバッフルプレート70および油路部品80を形成することができるので、車両用動力伝達装置12の低コスト化を図ることができる。
また、本実施例によれば、開口部90は、油路80aの内径よりも小さい穴径を有する開口穴90aを備えている。これにより、油路80aを流れる潤滑油は、開口穴90aから噴射されてピニオンシャフト36に供給されるので、車両用動力伝達装置12は、潤滑油をピニオンシャフト36に確実に供給することができる。
また、本実施例によれば、開口部90には、開口穴90aから流出する潤滑油を滴下するガイド90bが形成され、ガイド90bは、ピニオンシャフト36の鉛直方向の上方、かつ一対のピニオンシャフト36が水平であるときのピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56b、58b間に配設されている。これにより、ガイド90bがピニオンシャフト36の鉛直方向の上方かつピニオンシャフト36が水平であるときの一対のピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56b、58b間に配設されているので、開口部90から潤滑油が噴射されずに開口部90から潤滑油が滴下される場合に、潤滑油をピニオンシャフト36により確実に供給することができる。そのため、車両用動力伝達装置12は、より効率的かつ安定的に潤滑油をデファレンシャル装置20に供給することができる。
また、本実施例によれば、開口部90から潤滑油が噴射されずに開口部90から潤滑油が滴下される場合に、潤滑油は、円筒状突起90cの内径壁面90eに沿ってにじみ出されるとともにテーパ状の円筒状突起90cの先端部によって、より確実に潤滑油をピニオンシャフト36に供給される。そのため、車両用動力伝達装置12は、より効率的かつ安定的に潤滑油をデファレンシャル装置20に供給することができる。
また、本実施例によれば、円筒状突起90cのテーパ状の先端部は、バッフルプレート70およびデファレンシャル装置20が車両10に組み付けられた状態において、水平線に対する角度が0度よりも大きい角度を有するテーパ面となるように形成されている。これにより、車両用動力伝達装置12は、円筒状突起90cの外周周辺に潤滑油が伝うことなく、潤滑油をより確実にピニオンシャフト36上に滴下させてピニオンシャフト36に供給することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
たとえば、前述の実施例においては、開口部90は、油路部品80の本体側油路部80dに形成されているが、必ずしもこれに限らず、たとえば油路部品80の円環油路部80cに形成されていてもよい。
また、前述の実施例においては、開口部90は、ピニオンシャフト36の径方向すなわちピニオンシャフト36の幅方向において、ピニオンシャフト36の中心線上に配設されているが、必ずしもこれに限らず、たとえば開口部90は、ピニオンシャフト36の幅方向において、ピニオンシャフト36の幅寸法内に配設されていればよい。また、少なくとも開口部90のガイド90bが、ピニオンシャフト36の幅方向において、ピニオンシャフト36の中心線上またはピニオンシャフト36の幅寸法内に配設されていればよい。
また、前述の実施例においては、円筒状突起90cの内径は、開口穴90aの穴径よりも大きく形成されているが、必ずしもこれに限らず、たとえば円筒状突起90cの内径は、開口穴90aの穴径と同じであってもよい。
また、前述の実施例においては、円筒状突起90cの先端部は、先端から開口穴90aに向かって外径が増大するテーパ状に形成されているが、必ずしもこれに限らず、たとえば円筒状突起90cの先端部は、先端から開口穴90aに向かって外径および内径が増大するテーパ状に形成されていてもよいし、先端から開口穴90aに向かって内径が増大するテーパ状に形成されていてもよい。すなわち、たとえば低温時に潤滑油が高粘度となった場合に、円筒状突起90cのテーパ状の先端部によって、一対のピニオンギヤ56、58の一対の相対向する端面56b、58b間に潤滑油が滴下されていればよい。
また、前述の実施例においては、ガイド90bは、開口穴90aの中心線C5方向に突出する円筒状突起90cを有しているが、必ずしもこれに限らず、たとえばガイド90bは、開口穴90aの中心線C5方向に突出する突起であって、断面が長穴状であってもよいし、長方形状であってもよい。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
12:車両用動力伝達装置
20:デファレンシャル装置(差動機構)
36:ピニオンシャフト
44:デファレンシャルケース
52、54:サイドギヤ
56、58:ピニオンギヤ
56b、58b:一対の相対向する端面
70:バッフルプレート
80:油路部品
80a:油路
90:開口部
90a:開口穴
90b:ガイド
90c:円筒状突起
90d:テーパ面

Claims (7)

  1. 回転軸線まわりに回転可能に設けられ、外周壁に貫通穴を有するデファレンシャルケースと、前記デファレンシャルケースに固定されたピニオンシャフトとの両端にそれぞれ嵌め付けられた一対のピニオンギヤと、前記デファレンシャルケースに回転可能に支持されて前記ピニオンギヤと噛み合う一対のサイドギヤと、を備える差動機構と、
    前記ピニオンギヤおよび前記サイドギヤを潤滑するための潤滑油供給用の油路として機能する油路部品を備え、前記デファレンシャルケースの外周を覆うように固設されるバッフルプレートと、
    を含む車両用動力伝達装置であって、
    前記油路部品には、前記油路内の潤滑油を下方へ流出させる開口部が形成され、
    前記開口部は、前記ピニオンシャフトの上方、かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する一対の端面間に配設されていることを特徴とする車両用動力伝達装置。
  2. 前記油路部品は、前記バッフルプレートに一体的に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
  3. 前記バッフルプレートおよび前記油路部品は、樹脂素材によりそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用動力伝達装置。
  4. 前記開口部は、前記油路の内径よりも小さい穴径を有する開口穴を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の車両用動力伝達装置。
  5. 前記開口部には、前記開口穴から流出する潤滑油を滴下するガイドが形成され、
    前記ガイドは、前記ピニオンシャフトの上方、かつ前記ピニオンシャフトが水平であるときの前記一対のピニオンギヤの相対向する一対の端面間に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用動力伝達装置。
  6. 前記ガイドは、前記開口穴の中心線方向に突出する円筒状突起を有し、かつ前記円筒状突起の先端部は先端から前記開口穴に向かって厚さ寸法が増大するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用動力伝達装置。
  7. 前記円筒状突起のテーパ状の先端部は、前記バッフルプレートおよび前記差動機構が車両に組み付けられた状態において、水平線に対する最小角度が0度よりも大きい角度を有するテーパ面となるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用動力伝達装置。
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