JP2014119084A - 車両用デファレンシャル装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成でリングギヤによる潤滑油の攪拌損失が減少し、かつ十分な被潤滑部の潤滑が確保できる車両用デファレンシャル装置を提供する。
【解決手段】ギヤ収容室3が形成されたデフキャリア2にガスケット10を介在してカバー4が結合され、リングギヤ7の下端部をギヤ収容室3に貯留される潤滑油OLに浸漬して掻き上げられる潤滑油によって潤滑する車両用デファレンシャル装置1であって、ガスケット10は、ギヤ収容室3側とカバー4側とに仕切ると共にカバー4と協働して潤滑油溜まり18を形成する区画壁12と、区画壁12の上方形成される開口部15と、区画壁12の下部に形成されるドレーン孔16とを有する。ドレーン孔16は潤滑油低温時において油溜まり18に供給される潤滑油の供給量より多くの潤滑油量が流出可能であって、かつ潤滑油高温時における潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量より少ない流出量に設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両用デファレンシャル装置に関し、特に回転するリングギヤによって掻き上げられた潤滑油により各被潤滑部を潤滑する車両用デファレンシャル装置に関する。
自動車におけるデファレンシャル装置は、内部に差動歯車機構を収容するデファレンシャルケースと、デファレンシャルケースを収容すると共に回転自在に支持するギヤ収容室を有するデフキャリアと、デファレンシャルケースに固定されたリングギヤと、デフキャリアにベアリング等を介在して回転自在に支持されると共にリングギヤに噛み合うドライブピニオンとを備え、ギヤ収容室内に潤滑油が貯留される。このデファレンシャル装置は、リングギヤの下端部をギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油に浸漬して該部を潤滑すると共にリングギヤにより掻き上げられて飛散する潤滑油によってベアリング等の各被潤滑部を潤滑する。
しかし、高速走行時等にリングギヤとドライブピニオンの噛み合いによる発熱や差動歯車機構等の各部の発熱及び潤滑油の攪拌による発熱等で潤滑油の温度が高くなり、ギヤ収容室の下部に貯留された潤滑油の粘性が低下してリングギヤによる潤滑油の連れ廻り量が増大し、各被潤滑部が必要以上に潤滑されることが懸念される。一方、ギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油を少なくすると、攪拌損失低減による燃費向上が見込まれるが、リングギヤによる掻き上げ量が減少するため、各被潤滑部の潤滑不足を招くおそれがある。このため、被潤滑部の十分な潤滑を確保する必要から、ギヤ収容室の底部に貯留される潤滑油を多く設定している。
この対策として、リングギヤによる攪拌損失の低減を図ると共に被潤滑部の潤滑を確保する車両用デファレンシャル装置が種々提案されており、例えば、特許文献1や特許文献2等がある。
特許文献1のデファレンシャル装置について、図10を参照して説明する。図10の(a)は、デファレンシャル装置の部分断面図であり、同図(b)は(a)のb−b線断面図である。
デフキャリア101は、ギヤ収容室102が図示しないドライブピニオンに噛み合うリングギヤ111を内蔵し、ガスケット107を介在してデフキャリア101の開口部を覆うカバー103が複数のボルト108によって固定される。カバー103の内面に上部が開口する潤滑油溜まり106をカバー103と一体の区画壁105によって形成する。
この潤滑油溜まり106は、同図(b)に示すようにリングギヤ111の背面に位置し、低部にドレーン孔109が形成される。ドレーン孔109の下方に潤滑油の温度によって選択的にドレーン孔109を開閉する制御弁110が装着される。リングギヤ111の下端部がギヤ収容室102の下部に貯留される潤滑油OL中に浸漬される。
潤滑油温が設定値以下の時には制御弁110が作動してドレーン孔109を開口することで、リングギヤ111によって掻き上げて潤滑油溜まり106に供給された潤滑油は、ドレーン孔109を介してギヤ収納室102側に流出して潤滑油溜まり106に貯留されることなくギヤ収容室102に貯留される潤滑油の油面がリングギヤ111の下端部を十分に浸漬する設定油面に維持される。
一方、潤滑油温が設定値を超えると、制御弁110がドレーン孔109を塞ぐことで、リングギヤ111によって掻き上げられた潤滑油が潤滑油溜まり106内に貯留され、ギヤ収容室102に貯留される潤滑油が相対的に減少してリングギヤ111による潤滑油の連れ廻り量が減少して攪拌損失が抑制される。
特許文献2のデファレンシャル装置は、差動歯車機構を備えたデファレンシャルケースの軸方向両端部を軸受を介してハウジングに支持し、デファレンシャルケースにリングギヤが設けられたデファレンシャル装置であって、ハウジングにデファレンシャルケースの回転方向と対向するリブを形成し、かつハウジング内をセパレータプレートでリングギヤが配置される一側室とリブが形成された他側室とに区分けし、セパレータリブとリブとでリングギヤによって掻き上げられた潤滑油の一部を溜める潤滑油溜まり部を形成すると共に、潤滑油溜まり部の潤滑油を軸受に供給する連通路を設ける。
これにより、リングギヤによって掻き上げられた潤滑油の一部をセパレータリブとリブとで形成された潤滑油溜まり部に流入して一側室の潤滑油を減らしてリングギヤによる攪拌抵抗を低減させると共に、潤滑油溜まりの潤滑油を軸受に供給することで軸受に供給される潤滑油を確保する。
実開昭58−76855号公報 特開2006−275164号公報
上記特許文献1によると、ギヤ収納室の開口部を覆うカバーの内面に区画壁によって潤滑油溜まりを形成し、ドレーン孔を開閉する制御弁を設けることで、潤滑油低温時にはギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油量が確保されてリングギヤ及び各被潤滑部の潤滑が得られる。一方、潤滑油高温時にはギヤ収容室に貯留される潤滑油量が減少してリングギヤによる攪拌損失が減少する。
しかし、ギヤ収納部の開口部を覆うカバーの内周面に、カバーと一体の隔壁によって潤滑油溜めを形成し、更にドレーン孔を開閉する制御弁を設けることから、カバーの形状が複雑になりカバーの製造コストが上昇すると共に、カバーの汎用性の低下が懸念される。また、潤滑油温により作動する制御弁の配置及び制御が厄介になることと相俟ってデファレンシャル装置の製造及びメンテナンスが複雑になる。
一方、特許文献2によると、ハウジング内をセパレータプレートで区分けし、セパレータプレートでリングギヤによって掻き上げられた潤滑油の一部を溜める潤滑油溜まり部を形成すると共に、潤滑油溜まり部に貯留される潤滑油を軸受に供給する連通路を設けることで、リングギヤによる攪拌抵抗を低減させると共に軸受の潤滑が確保できる。
しかし、ハウジング内にセパレータプレートを配置すると共に潤滑油溜まり部の潤滑油を軸受に供給する連通路を設けることから、デファレンシャル装置が複雑になると共に、専用のセパレータプレートの配置による製造コストの上昇が懸念される。
ここで、本発明者は、鋭意実験研究の結果、デファレンシャル装置におけるデフキャリアのギヤ収納室の開口部端部と、カバーとの間にガスケットが介在することに着目し、ガスケットを活用することで構成の複雑化及び製造コストの上昇を招くことなく簡単な構成で潤滑油高温時におけるリングギヤによる潤滑油の攪拌損失を減少し、かつ十分な被潤滑部の潤滑が確保できることを見出した。
従って、本発明の目的は簡単な構成で製造コストの上昇を招くことなく、リングギヤによる潤滑油の攪拌損失が減少し、かつ十分な被潤滑部の潤滑が確保できる車両用デファレンシャル装置を提供することにある。
上記目的を達成する請求項1に記載の車両用デファレンシャル装置は 差動歯車機構を備えたデファレンシャルケース及び該デファレンシャルケースに固定されてドライブピニオンに噛み合うリングギヤを収容するギヤ収容室が形成されたデフキャリアと、該ギヤ収容室の開口部を覆うカバーがギヤ収容室の開口端縁と前記カバーの外周端縁との間にガスケットを介在して結合され、前記リングギヤの下端部を前記ギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油に浸漬して該リングギヤにより掻き上げられる潤滑油によって被潤滑部を潤滑する車両用デファレンシャル装置において、前記ガスケットは、前記ギヤ収容室の開口端縁とカバーの外周端縁との間に挟持される環状の外周部と、該外周部の下部を閉塞して前記リングギヤと対向すると共にデファレンシャル装置内の下部を前記ギヤ収容室側とカバー側とに仕切ると共に前記カバーと協働して上方が開放された潤滑油溜まりを形成する区画壁と、該区画壁の上方に前記区画壁の上端縁と外周部とによって形成されたギヤ収容室内とカバー内を連通する開口部と、前記区画壁の下部に形成された前記潤滑油たまりと前記ギヤ収納室とを連通するドレーン孔とを有し、該ドレーン孔は潤滑油低温時においてリングギヤによって掻き上げられて潤滑油溜まりに供給される潤滑油の供給量より多くの潤滑油量が流出可能であって、かつ潤滑油高温時における潤滑油溜まりに供給される潤滑油量より少ない流出量に設定されることを特徴とする。
これによると、区画壁及び開口部を有し、区画壁にドレーン孔が形成された簡単な構成のガスケットをデフキャリアのギヤ収容室の開口端縁とカバーの外周縁との間に介在させてデフキャリアとカバーとを結合する簡単な構成で、潤滑油低温時にはギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油が十分に確保されて被潤滑部の潤滑が確保できる一方、潤滑油高温時にリングギヤによって掻き上げられた潤滑油が潤滑油溜まりに貯留されて相対的にギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油が減少し、リングギヤによる潤滑油の攪拌損失が減少され、燃費の向上が得られる。また、デフキャリア及びカバーの形状に複雑化を招くことなく、デフキャリア及びカバー等の汎用性が維持できる。
また、従来のデフキャリアとカバーとの間に介在する従来のガスケットを、区画壁及び開口部を有し、区画壁にドレーン孔が形成されたガスケットに変更することが可能であり、従来のデファレンシャル装置の基本構成を変更することなく広く適用できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用デファレンシャル装置において、前記ドレーン孔は、前記リングギヤの外周に対し該リングギヤの軸方向にオフセットして前記区画壁に形成されたことを特徴とする。
これによると、リングギヤ7に連れ廻る潤滑油に伴ってギヤ収容室の下部に沿って流動する潤滑油の流れに影響されることなく、或いは影響が極めて少なく円滑に潤滑油溜まり側からギヤ収容室内に潤滑油が流出する。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用デファレンシャル装置において、前記区画壁の上端縁に、前記リングギヤの外周に対し該リングギヤの軸方向にオフセットして凹状の油量規制部が形成されたことを特徴とする。
これによると、リングギヤによって掻き上げられる潤滑油と油量規制部からギヤ収容室側にオーバフローして流出する潤滑油が互いに干渉することなく、リングギヤの掻き上げによる潤滑油の潤滑油溜まりへの供給及び余剰の潤滑油の油量規制部からの流出が確保され、潤滑油溜まり内に貯留される潤滑油が設定油量に維持される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用デファレンシャル装置において、前記ガスケットは、前記カバーと協働してエアブリーザ室を形成するエアブリーザ仕切り壁が一体形成されたことを特徴とする。
これによると、ガスケットに一体形成されるエアブリーザ仕切り壁と、カバーとによってエアブリーザ室を形成することから、エアブリーザ室を形成するための専用の部材やカバーの複雑化を招くことなくエアブリーザ室を形成することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用デファレンシャル装置において、前記エアブリーザ室は、前記カバーに形成されたブリーザポートを介して外部に連通し、エアブリーザ仕切り壁と前記カバーに形成された補強リブによって屈曲形成された連通路によってギヤ収納室の内部空間に連通することを特徴とする。
これによると、エアブリーザ仕切り壁とカバーの補強リブによって屈曲する連通路を形成することから、簡単な構成でエアブリーザ室に潤滑油が進入することを効率的に阻止する。
本発明によると、区画壁及び開口部を有し、区画壁にドレーン孔が形成された簡単な構成のガスケットをギヤ収容室の開口端縁とカバーの外周縁との間に介在しデフキャリアとカバーとを結合する簡単な構成で、潤滑油低温時にはギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油が十分に確保されて被潤滑部の潤滑が確保できる一方、潤滑油高温時にはギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油が減少してリングギヤ7による潤滑油の攪拌損失が減少され、燃費の向上が得られる。
第1実施の形態に係る車両用デファレンシャル装置の一部を示す断面図である。 図1おける矢視A方向から見たガスケットの正面図である。 停車時における作動状態を示す作動説明図である。 潤滑油低温時における作動状態を示す作動説明図である。 潤滑油高温時における作動状態を示す作動説明図である。 潤滑油溜まり部設定油量と潤滑油攪拌損失の相関説明図である。 第2実施の形態に係る車両用デファレンシャル装置の一部を示す断面図である。 図2おける矢視B方向から見たガスケットの正面図である。 デファレンシャル装置の作動説明図であり、(a)は潤滑油低温時における作動状態を示す作動説明図、(b)は潤滑油高温時における作動状態を示す作動説明図である。 従来の車両用デファレンシャル装置の一部を示す断面図である。
(第1実施の形態)
以下、本発明の第1実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施の形態である車両用デファレンシャル装置の一部を示す断面図であり、図2は図1おける矢視A方向から見たガスケットの正面図である。
この車両用デファレンシャル装置1は、図1に示すように内部に差動歯車機構を備えたデファレンシャルケース6を収容すると共に回転自在に支持するギヤ収容室3を有するデフキャリア2と、デファレンシャルケース6に固定されたリングギヤ7と、デフキャリア2にベアリング9等を介して回転自在に支持されてリングギヤ7に噛み合うドライブピニオン8とを備え、ドライブピニオン8は推進軸により駆動される。
デフキャリア2のギヤ収容室3の開口部を覆う皿状の端面5を有するカバー4が、ギヤ収容室3の開口部に沿って形成される環状の開口端縁2aと、カバー4の外周端縁4aとの間に、リングギヤ7の外周と対向する区画壁12及び開口部15を有するガスケット10を介在して複数のボルトによって結合される。
ガスケット10は、図1及び図2に示すようにデフキャリア2の開口端縁2a及びカバー4の外周端縁4aとの間に挟持される環状の外周部11と、外周部11の下部を閉塞してリングギヤ7の外周と対向すると共にデファレンシャル装置1内の下部をギヤ収容室3側とカバー4側とに仕切る区画壁12を有し、区画壁12の上方に区画壁12の上端縁13と外周部11とによってギヤ収納室3側の内部空間とカバー4内を連通する開口部15が形成される。
開口部15の下縁を形成する区画壁12の上端縁13は略水平に延在し、かつ上端縁13の両端に矩形凹状の油量規制部14が形成される。この各油量規制部14はリングギヤ7の外周(図2にはリングギヤ7を仮想線7aで示す)に対しリングギヤ7の軸方向にオフセットして形成される。
区画壁13の下部両側にリングギヤ7の外周に対してリングギヤ7の軸方向にオフセットして一対のドレーン孔16が形成される。この油量規制部14及びドレーン孔16については詳細に後述する。
このガスケット10を、デフキャリア2の開口端部2aとカバー4の外周端縁4aとの間に外周部11を挟持して装着することで、図1に示すように区画壁12がリングギヤ6の外周と対向すると共に、区画壁12とカバー4の内面とによって上部が開放された潤滑油溜まり18が形成される。潤滑油溜まり18の上部はガスケット10の開口部15によってギヤ収納室3の内部空間側に開放される。
この潤滑油溜まり18に貯留される潤滑油量は、区画壁12の上端縁13の両側に形成される油量規制部14の高さによって規制される。即ち、潤滑油溜まり18に貯留される潤滑油が設定された油量を超えると、その設定油量を超えた潤滑油が油量規制部14をオーバフローしてギヤ収容室3側に流出することで潤滑油溜まり18に貯留される設定油量が決定される。
一方、区画壁12の下部に開口するドレーン孔16は、ギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLの設定油面Lより下方位置に設けられ、ドレーン孔16によって潤滑油溜まり18側からドレーン孔16を経由してギヤ収容室3内に流出する流量が規制される。このドレーン孔16による流量は予め設定された潤滑油温時において、リングギヤ7によってギヤ収容室3の下部に貯留した潤滑油OLが掻き上げられて開口部15から潤滑油溜まり18に供給される潤滑油の供給量に設定される。具体的には、潤滑油低温時において潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量より多くの潤滑油量が流出可能であって、かつ潤滑油高温時における潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量より少ない流出量に設定される。
このように構成されたデファレンシャル装置1において、ギヤ収容室3の下部に予め設定された潤滑油量、例えば、図1に設定油面Lを示すように停止状態でリングギヤ7の略1/4及びリングギヤ7に噛み合うドライブピニオン8の略1/2程度が潤滑油中に浸漬する量の潤滑油OLが貯留される。
次に、図3乃至図5を参照して作用を説明する。
停車時においては、ドライブピニオン8及びリングギヤ7等が回転停止状態であり、図3に示すようにギヤ収容室3の下部に貯留された潤滑油OLはリングギヤ7等によって攪拌されることなく、ドレーン孔16を介して連通するデフキャリア2内の潤滑油OLの油面La及び潤滑油溜まり18内の潤滑油の油面Lbは設定油面Lに維持される。この停車時においてリングギヤ7の下端部及びリングギヤ7に噛み合うドライブピニオン8の下端部、ドライブピニオン8を回転自在に支持するベアリング9の下部等が十分に潤滑油OLに浸漬される。
走行開始時等の潤滑油低温時では、図4に示すように、回転するリングギヤ7によってギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLが攪拌されると共に、リングギヤ7によって掻き上げられて飛散する潤滑油によって各被潤滑部が潤滑される。この潤滑油低温時においては、ギヤ収容室3に貯留される潤滑油OLの粘度が比較的高く、リングギヤ7に連れ廻り掻き上げられる潤滑油量が比較的少なく、リングギヤ7によって掻き上げられて開口部15から潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量(より正確には所定時間当たりに供給される潤滑油量)が比較的少ない。
この潤滑油溜まり18に供給された潤滑油は、その全量が区画壁12のドレーン孔16を介してギヤ収容室3側に流出して潤滑油溜まり18内に貯留されることなく、ギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLの液面Laと潤滑油溜まり18の液面Lbはほぼ設定油面Lに維持される。
この潤滑油低温時において潤滑油溜まり18からドレーン孔16を介してギヤ収容室3側への潤滑油の流出は、区画壁12の下部に開口する各ドレーン孔16が、リングギヤ7の外周に対しリングギヤ7の軸方向にオフセットした区画壁12の端部近傍に配置することで、リングギヤ7に連れ廻る潤滑油に伴ってギヤ収容室3の下部に沿って区画壁12側に向かって流動する潤滑油の流れに影響されることなく、或いは影響が極めて少なく円滑に潤滑油溜まり18側からギヤ収容室3内に流出する。
このように車両走行開始時等の潤滑油低温時において、ギヤ収容室3に貯留される潤滑油OLが多く、潤滑油OLに対してリングギヤ7の下端部が十分浸漬し、リングギヤ7に噛み合うドライブピニオン8も十分に浸漬して潤滑され、かつリングギヤ7により掻き上げ飛散する潤滑油によって各被潤滑部が潤滑される。
一方、走行等によりリングギヤ7とドライブピニオン8との噛み合いや差動歯車機構等の各部の発熱や潤滑油OLの攪拌による発熱でギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLの温度が所定以上高くなる潤滑油高温時には、潤滑油OLの粘性が次第に低下し、図5(a)に示すようにリングギヤ6による潤滑油OLの連れ廻り量が増加すると共にリングギヤ7により掻き上げられて飛散する潤滑油が多くなる。
リングギヤ7による掻き上げ潤滑油の増加に伴って、リングギヤ7により掻き上げられて区画壁12に沿って誘導され、或いは直接的に開口部15から潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量(より正確には所定時間あたりに供給される潤滑油量)が増加する。また、開口部15からカバー4側に飛散して投入された潤滑油の一部はカバー4の端面5の内面に突出形成された補強リブ5aによって受け止められて潤滑油溜まり18に誘導される。
この潤滑油高温時に潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量は、ドレーン孔16を介して潤滑油溜まり18からギヤ収容室3内に流出する流出量に比べて多く、次第に潤滑油溜まり18内に貯留される潤滑油が増加して油面Lbが上昇する一方、相対的にギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLが減少して油面Laが降下してリングギヤ6の潤滑油OLに対する浸漬量が次第に減少し、潤滑油OLの粘性に伴うリングギヤ7に連れ廻る潤滑油の量が少なくなり次第に攪拌抵抗が減少する。
潤滑油溜まり18内の潤滑油が予め設定された潤滑油量に達する、即ち潤滑油溜まり18内の潤滑油の油面Lbが油量規制部14に達するとその設定油量を超えた過剰の潤滑油は、区画壁12の上端縁13に凹状に形成された油面規制部14上をオーバフローしてギヤ収容室3側に流出して潤滑油溜まり18内に貯留される潤滑油が設定油量に維持される。この潤滑油溜まり18に貯留される設定潤滑油量に相当する分だけギヤ収容室3に貯留される潤滑油OLが減少してギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLの油面Laは低い位置に維持される。
この潤滑油高温時において潤滑油溜まり18の潤滑油の油量規制は、貯留量の維持は、リンクギヤ7によって掻き上げによる潤滑油が連続的に供給される一方、過剰に供給された潤滑油が区画壁12の上端縁13に形成された油面規制部14連続的にオーバフローしてギヤ収容室3側に流出することで実行される。
このリングギヤ7による掻き上げによる潤滑油溜まり18への潤滑油の供給及び油面規制部14からのオーバフローは、各油面規制部14がリングギヤ7の外周に対してリングギヤ7の軸方向にオフセットして配置することで、リングギヤ7によって掻き上げられる潤滑油と油面規制部14からギヤ収容室3側に流出する潤滑油が互いに干渉することなく、リングギヤ7の掻き上げによる潤滑油の潤滑油溜まり18への供給及び余剰の潤滑油の油面規制部14からの流出が確保され、潤滑油溜まり18内に貯留される潤滑油が設定油量に維持される。
従って、潤滑油高温時におけるリングギヤ7の潤滑油OLに対する浸漬量が減少して維持され、潤滑油OLの粘性に伴うリングギヤ7に連れ廻る潤滑油OLの量が少なくなり攪拌抵抗が抑制されて、潤滑油の劣化が抑制され、かつ燃費が向上する。
また、低速回転等に移行すると、リングギヤ7による潤滑油OLの掻き上げが減少して、潤滑油溜まり18に供給される潤滑油が減少し、潤滑油溜まり18に供給される潤滑油は全量が区画壁12のドレーン孔15を介してギヤ収容室3側に流出して潤滑油溜まり18内に貯留されることがなくなり、ギヤ収容室3に貯留される潤滑油OLの液面Laが上昇する一方、潤滑油温が次第に低下する。従って、リングギヤ7の下端部がギヤ収容室3の下部に貯留された潤滑油OL内に十分浸漬し、かつ十分な潤滑油量によって各潤滑部を潤滑する。
これら潤滑油溜まり18の設定貯留量及びドレーン孔16による流量等は、デファレンシャル装置1の仕様等に応じて予め実験等により設定することが好ましい。
図6は、潤滑油低温時及び潤滑油高温時の潤滑油溜まり18の設定油量と潤滑油攪拌損失の相関図を示す。
従って、本実施の形態によると、区画壁12及び開口部15を有し、区画壁12にドレーン孔15が形成された簡単な構成のガスケット10をデフキャリア2の開口端縁3aとカバー4の外周縁4aとの間に介在してデフキャリア2とカバー4とを結合する簡単な構成で、潤滑油低温時にはギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油が十分に確保されて被潤滑部の潤滑が確保できる一方、潤滑油高温時にはギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油が減少してリングギヤ7による潤滑油の攪拌損失が減少され、燃費の向上が得られる。
また、デフキャリア2及びカバー4の形状に複雑化を招くことなく、デフキャリア2及びカバー4等の汎用性が維持できる。
また、従来のデフキャリア2とカバー4との間に介在する従来のガスケットを、区画壁12及び開口部15を有し、区画壁12にドレーン孔16が形成されたガスケット10に変更することが可能であり、従来のデファレンシャル装置の基本構成を変更することなく広く適用できる。
(第2実施の形態)
以下、本発明の第2実施の形態を図7乃至図9を参照して説明する。図7は本実施の形態であるデファレンシャル装置の一部断面図であり、図8は図7における矢視B方向から見たガスケットの正面図である。
なお、本実施の形態のデファレンシャル装置は、第1実施の形態のデファレンシャル装置1とガスケット及びカバーの形状が異なり、他の構成は同一であり、対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なるガスケット20及びカバー24を主に説明する。
この車両用デファレンシャル装置は、図7に示すように内部にデファレンシャルケース6を回転自在に支持するデフキャリア2のギヤ収容室3と、デファレンシャルケース6に固定されたリングギヤ7と、デフキャリア2にベアリング9等を介して回転自在に支持されてリングギヤ7に噛み合うドライブピニオン8とを備える。
ギヤ収容室3の開口部を覆う皿状のカバー24が、ガスケット20を介在して複数のボルトによって装着される。カバー24は、デフキャリア2から離反する側に膨出する端面25及び周面26を有する皿状であって、周面26にデフキャリア2の開口端縁2aと対向する外周端縁24aが形成される。端面25の内面に周面26の上部と対向する略水平方向に延在してギヤ収納室3側に突出する補強リブ27を有し、周面26の上部に外部に連通するブリーザポート28が形成される。
ガスケット20は、図7及び図8に示すように、デフキャリア2の開口端縁2a及びカバー24の外周端縁24aとの間に挟持される環状の外周部11と、外周部11の下部を閉塞してリングギヤ7の外周と対向すると共にデファレンシャル装置1内の下部をギヤ収容室3側とカバー4側とに仕切る区画壁12を有し、区画壁12の上方に区画壁12の上端縁13と外周部11とによってデフキャリア2内とカバー24内を連通する開口部15が形成される。
開口部15の下縁を形成する区画壁12の上端縁13の両端に矩形凹状の油量規制部14が形成される。区画壁13の下部両側に一対のドレーン孔16が形成される。これら区画壁12、区画壁12の上端縁13及び油量規制部14、区画壁13の下部両側に形成されるドレーン孔16等は第1実施の形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
外周部11の上側隅部に開口部15に略矩形に突出する仕切り面22A及び仕切り面22Aの下縁及び側縁からカバー24の端面25側に折曲形成される下面22B及び側面22Cを有するエアブリーザ仕切り壁22が形成される。
このガスケット20を、デフキャリア2の開口端部2aとカバー24の外周端縁24aとの間に外周部11を挟持して装着することで、図7に示すように区画壁12がリングギヤ7の外周と対向すると共に、区画壁12とカバー24の内面とによって上部が開放された潤滑油溜まり18が形成される。潤滑油溜まり18の上部はガスケット20の開口部15によってデフキャリア2側に開放される。
この潤滑油溜まり18に貯留される潤滑油量は、区画壁12の上端縁13の両側に形成される油量規制部14の高さによって規制される。また、区画壁12の下部に開口するドレーン孔16は、ギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLの設定油面Laより下方位置に設けられ、潤滑油溜まり19側からドレーン孔16を経由してギヤ収容室3内に流出する流量が規制される。
一方、エアブリーザ仕切り壁22の下面22Bの先端縁がカバー24の端面26と間隙を有して対向し、側面22Cの先端縁がカバー24の端面25に当接或いは接近して、エアブリーザ仕切り壁22とカバー24の端面25及び周面26によってボックス状のエアブリーザ室23が形成される。このエアブリーザ室23はブリーザポート28によって外部に連通する。
また、エアブリーザ仕切り壁22の下面22Bはカバー24に形成された補強リブ27に上面に対向して配置され、補強リブ27と下面22Bによって屈曲する迷路状、いわゆるラビリンス機能を有してエアブリーザ室23内とギヤ収容室3の内側空間を連結する連通路29を形成する。連通路29を屈曲形成することで、エアブリーザ仕切り壁22とカバー24の補強リブ27によって屈曲する連通路29を形成する簡単な構成で、ギヤ室3内に飛散する潤滑油がエアブリーザ室23に進入することが効率的に阻止される。
これによりギヤ収容室3内及びカバー24内の空気圧力が外気より高くなると、内部の空気が連通路29からエアブリーザ室23内に流入し、更にブリーザポート28から外部に流出する。逆に、ギヤ収容室3及びカバー24内の圧力が外気よりも低くなると、ブリーザポート28から外気がエアブリーザ室23に流入し、エアブリーザ室23から連通路29を経てギヤ収容室3及びカバー24内に流入することでギヤ室3内が大気圧に維持される。
このように構成されたデファレンシャル装置よると、第1実施の形態と同様に、潤滑油低温時では、図9(a)に示すように、回転するリングギヤ7によってギヤ収容室3に貯留される潤滑油OLが攪拌されると共に、リングギヤ7によって掻き上げられて飛散する潤滑油によって各被潤滑部が潤滑される。この潤滑油低温時においては、リングギヤ7に掻き上げられて開口部15から潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量が比較的少ない。
この潤滑油溜まり18に供給された潤滑油は、その全量が区画壁12のドレーン孔16を介してギヤ収容室3側に流出して潤滑油溜まり18内に貯留されることなく、ギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLの液面Laと潤滑油溜まり18の液面Lbはほぼ設定油面Lに維持される。
このように車両走行開始時等の潤滑油低温時において、ギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLに対してリングギヤ7の下端部が十分浸漬し、リングギヤ7に噛み合うドライブピニオン8も十分に浸漬して潤滑され、かつリングギヤ7により掻き上げ飛散する潤滑油によって各被潤滑部が潤滑される。
一方、潤滑油OLの温度が所定以上高くなる潤滑油高温時には、潤滑油OLの粘性が次第に低下し、図9(b)に示すようにリングギヤ7による潤滑油OLの連れ廻り量が増加すると共にリングギヤ7により掻き上げられて飛散する潤滑油が多くなる。
この潤滑油高温時に潤滑油溜まり18に供給される潤滑油量は、ドレーン孔16を介して潤滑油溜まり18からギヤ収容室3内に流出する流出量に比べて多く、次第に潤滑油溜まり18内に貯留される潤滑油が増加して油面Lbが上昇する一方、相対的にギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油OLが減少して油面Laが降下してリングギヤ7の潤滑油OLに対する浸漬量が減少し、潤滑油OLの粘性に伴うリングギヤ7に連れ廻る潤滑油の量が少なくなり攪拌抵抗が減少する。
従って、ガスケット20をデフキャリア2の開口端縁2aとカバー24の外周縁24aとの間に介在させてデフキャリア2とカバー24とを結合する簡単な構成で、第1実施の形態と同様に潤滑油高温時にはギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油が減少してリングギヤ7による潤滑油の攪拌損失が減少され、燃費の向上が得られ、かつ潤滑油低温時にはギヤ収容室3の下部に貯留される潤滑油が十分に確保されて被潤滑部の潤滑が確保できる。
更に、ガスケット20に形成されたエアブリーザ仕切り壁22によってカバー24と協働してエアブリーザ室23を形成することから、エアブリーザ室を形成する専用の部材を要することなく、構成の複雑化や構成部品を増加することなくブリーザ室が形成できる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記実施の形態では、ガスケット10及び20において区画壁12の上端縁13を水平方向に延在する直線状に形成したが、両端に移行するに従って下降する湾曲形状にして油量規制部14に滑らかに連続する形状や、区画壁12に補強ビード等を形成してガスケットの剛性強度を高めることもできる。
1 車両用デファレンシャル装置
2 デフキャリア
2a 開口端縁
3 ギヤ収容室
4 カバー
4a 外周端縁
6 デファレンシャルケース
7 リングギヤ
8 ドライブピニオン
9 ベアリング(被潤滑部)
10 ガスケット
11 外周部
12 区画壁
13 上端縁
14 油量規制部
15 開口部
16 ドレーン孔
18 潤滑油溜まり
20 ガスケット
24 カバー
24a 外周端縁
25 端面
26 周面
27 補強リブ
28 ブリーザポート
22 エアブリーザ仕切り壁
23 エアブリーザ室
27 補強リブ
29 連通路

Claims (5)

  1. 差動歯車機構を備えたデファレンシャルスケース及び該デファレンシャルケースに固定されてドライブピニオンに噛み合うリングギヤを収容するギヤ収容室が形成されたデフキャリアと、該ギヤ収容室の開口部を覆うカバーがギヤ収容室の開口端縁と前記カバーの外周端縁との間にガスケットを介在して結合され、前記リングギヤの下端部を前記ギヤ収容室の下部に貯留される潤滑油に浸漬して該リングギヤにより掻き上げられる潤滑油によって被潤滑部を潤滑する車両用デファレンシャル装置において、
    前記ガスケットは、
    前記ギヤ収容室の開口端縁とカバーの外周端縁との間に挟持される環状の外周部と、
    該外周部の下部を閉塞して前記リングギヤと対向すると共にデファレンシャル装置内の下部を前記ギヤ収容室側とカバー側とに仕切ると共に前記カバーと協働して上方が開放された潤滑油溜まりを形成する区画壁と、
    該区画壁の上方に前記区画壁の上端縁と外周部とによって形成されたギヤ収容室内とカバー内を連通する開口部と、
    前記区画壁の下部に形成された前記潤滑油たまりと前記ギヤ収納室とを連通するドレーン孔とを有し、該ドレーン孔は潤滑油低温時においてリングギヤによって掻き上げられて潤滑油溜まりに供給される潤滑油の供給量より多くの潤滑油量が流出可能であって、かつ潤滑油高温時における潤滑油溜まりに供給される潤滑油量より少ない流出量に設定されることを特徴とする車両用デファレンシャル装置。
  2. 前記ドレーン孔は、前記リングギヤの外周に対し該リングギヤの軸方向にオフセットして前記区画壁に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用デファレンシャル装置。
  3. 前記区画壁の上端縁に、前記リングギヤの外周に対し該リングギヤの軸方向にオフセットして凹状の油量規制部が形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用デファレンシャル装置。
  4. 前記ガスケットは、前記カバーと協働してエアブリーザ室を形成するエアブリーザ仕切り壁が一体形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用デファレンシャル装置。
  5. 前記エアブリーザ室は、前記カバーに形成されたブリーザポートを介して外部に連通し、エアブリーザ仕切り壁と前記カバーに形成された補強リブによって屈曲形成された連通路によってギヤ収納室の内部空間に連通することを特徴とする請求項4に記載の車両用デファレンシャル装置。
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