JPWO2013161835A1 - 積層体の剥離検査方法及び剥離検査装置 - Google Patents
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Abstract
Description
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る剥離検査装置1は、大略、複数の部材としての第一の部材20、第二の部材30が薄層40を介して積層された積層体10の一側11(表面21)から超音波を入射すると共に多重反射波を受信する探触子2と、受信した多重反射波を処理し評価する信号処理装置3とを備える。この信号処理装置3は、例えば、パーソナルコンピューターにより構成される。また、探触子2には、走査位置を検出するエンコーダ等の位置検出器2aが取り付けると共に、信号処理装置3に接続されている。本実施形態において、積層体10の一側11(第一の部材20の表面21)には、塗装膜50が形成されている。
ここで、本実施形態における検査対象となる積層体10は、例えば液体を保存する液体用コンテナタンクの壁部である。このタンクは、例えばISO規格に準ずるコンテナタンクである。図2に示すように、積層体10は、第一の部材20としての板材と、この板材20を内容物からの侵食を防ぐための第二の部材30としてのフッ素樹脂ライニング材とを有する。そして、このフッ素樹脂ライニング材30が薄層40としての接着剤よりなる接着層により板材20に接着されている。
ここで、超音波の挙動と反射波形との関係について説明する。
図2(a)は、板材20、ライニング材30及び接着層40が互いに密着し剥離が存在しない健全部での反射の挙動を示す。探触子2から板材20内部へその上面(表面)21(容器外面11)から入射した超音波は、その一部が板材20の下面(裏面22)と接着層40の上面41との界面となる第二界面F2で符号P2に示す如く反射する。
ここで、健全部、剥離部D1及び剥離部D2における受信波形の相違について、図3〜5を参照しながら説明する。
図3に健全試験体TP0、第一、第二剥離試験体TP1,TP2にて受信した信号にバンドパスフィルター(中心周波数5MHz)を施して生成したRF波形の一例を示す。また、図4は、図3に対応する検波波形を示す。ここで、健全試験体TP0は、板材20、ライニング材30及び接着層40が互いに密着した健全部を模した。第一剥離試験体TP1は、板材20及び接着層40を接着させ第一界面F1の剥離部D1を模した。第二剥離試験体TP2は、板材20のみで構成し第二界面F2の剥離部D2を模した。図3,4の縦軸はエコー高さ(%)、横軸は伝搬時間(μ秒)を示す。
健全試験体TP0の反射波P2は、第二界面F2での反射及び接着層40への透過によって減衰する。一方、第二剥離試験体TP2の反射波P2’は、剥離部D2の空気Aでの反射のため、健全試験体TP0に比べ反射による減衰は小さい。また、第二剥離試験体TP2では接着層40への透過が生じないため、接着層40による減衰の影響を受けない。よって、第二剥離試験体TP2(剥離部D2)の減衰は、健全試験体TP0に比べ小さくなる。従って、複数回反射した反射波のピーク値(エコー高さ)を比較することで剥離部D2の検出が可能となる。
次に、第一、第二界面F1,F2における剥離の検出について、図6を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、伝搬時間として、反射波のピーク時間を例に以下説明する。
このように、以下の積層体の剥離検査方法により、第一、第二界面F1,F2における剥離の有無を検査することが可能となる。
予め、板材20、ライニング材30及び接着層40が密着した健全部及び模擬剥離部において板材20の表面21から超音波を入射すると共に多重反射波を受信し、図22に示す如く、健全部における多重反射波のエコー高さと模擬剥離部における多重反射波のエコー高さとの差が所定値以上となる反射波の反射回数を求める。そして、その反射回数の反射を繰り返した反射波のピーク時間及びエコー高さを基準伝搬時間としての基準ピーク時間T0及び基準エコー高さとしての基準ピーク値H0として求めておく。なお、模擬剥離部には、剥離の他、剥離部が腐食した腐食部も含まれる。
上記第一実施形態において、接着層40を介して板材20(第一の部材)にフッ素樹脂ライニング材30(第二の部材)を接着させた積層体10を例に説明した。しかし、検査対象としての積層体10は、接着層40を介して複数の部材20,30が積層されたものに限られるものではない。例えば、図13に示す第二実施形態の如く、第一の部材20’に第二の部材30’が直接設けられた積層体10’においても、層間剥離の検出が可能である。なお、この第一、第二の部材20’,30’は、上記第一実施形態の材料に限られるものではない。
図14に健全試験体TP0、第三剥離試験体TP3にて受信した信号にバンドパスフィルター(中心周波数5MHz)を施して生成したRF波形の一例を示す。また、図15は、図14に対応する検波波形を示す。ここで、健全試験体TP0は、第一の部材20’及び第二の部材30’が互いに密着した健全部を模した。第三剥離試験体TP3は、第一の部材20’のみで構成し界面F3の剥離部D3を模した。
界面F3の剥離部D3の場合、その信号波形S3における所定回数の反射を繰り返した反射波のピーク時間T3は、健全部の信号波形S0’における同回数の反射を繰り返した反射波のピーク時間T0’よりも早く出現し、時間ずれΔT’が生じる。これは、健全部の減衰が剥離部D3よりも大きいため、複数回の反射を繰り返すと、剥離部D3からの反射波が相対的に大きくなり、健全部の波形に対し時間がずれた波形となるためである。
上記第一、第二実施形態において、比較対象としてピーク時間Tを用いた。しかし、第三実施形態では、ピーク時間Tと共に、又は、ピーク時間Tに代えて反射波の位相を用いる。具体的には、予め、健全部において所定回数の反射を繰り返した反射波の位相を基準位相として求めておく。そして、検査部において同回数の反射を繰り返した反射波の位相を求め、これら位相を比較する。ここで、接着層40は、第二の部材30の音響インピーダンスより小となる材料よりなる。
近距離音場限界距離L=(振動子の直径)の2乗/(4×波長)・・・(1)
指向角α=(70×波長)/(振動子の直径)・・・(2)
本発明は、予め求めた反射回数反射した反射波に着目するため、超音波は広がりによる減衰が少ないものが好ましい。そのため、近距離音場限界距離Lが大きく、また指向角αの小さい周波数のものが好ましい。また、腐食部を検出する場合、腐食面の面粗さにより大きく減衰するため、面粗さの影響を受けやすい周波数が好ましい。上記の点から、振動子の直径が20mm、周波数5MHzの垂直探触子を用いるとよい。なお、腐食部を検出する場合、腐食面の面粗さによる減衰の影響を大きくするべく、分割型探触子を用いることもできる。
発明が解決しようとする課題
[0006]
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、簡便でありながら積層体の層間剥離を明瞭に検出することの可能な積層体の剥離検査方法及び剥離検査装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007]
上記目的を達成するため、本発明に係る積層体の剥離検査方法の特徴は、複数の部材が積層した積層体の一側に配置した探触子から超音波を入射すると共に多重反射波を受信し、受信した多重反射波を評価することにより層間剥離の有無を検査する方法において、予め、前記積層体の健全部及び模擬剥離部において多重反射波をそれぞれ受信し、前記健全部におけるエコー高さに変動を与える変動要因による変動を含む多重反射波のエコー高さの変動範囲と前記模擬剥離部における前記変動要因による変動を含む多重反射波のエコー高さの変動範囲とを求めると共に、これら変動範囲が重複せず且つその差が所定値以上となる反射波の反射回数を求め、前記積層体の検査部において多重反射波を受信し、前記検査部における予め求めた前記反射回数の反射波のエコー高さと前記健全部における予め求めた前記反射回数の反射波のエコー高さを比較することにより前記層間剥離の有無を検査することにある。
[0008]
ところで、検査対象となる積層体の界面で反射した反射波のエコー高さ(信号強度)は、例えば、塗装膜の有無、その厚さ、探触子の探傷面に対する接触状態、探傷面や界面の面粗さ、剥離部内の物質等の要因によって変動する。そのため、多重反射波全体の減衰率や減衰曲線にのみ着目すると、上記要因による変動によって、健全部からの信号と剥離部からの信号とを明瞭に識別することが困難となる場合がある。
[0009]
上記構成によれば、例えば図22に示すように、反射波のエコー高さは、上記各種要因による変動(バラツキ)を含む。予め、前記積層体の健全部及び模擬剥離部において多重反射波をそれぞれ受信し、前記健全部におけるエコー高さに変動を与える変動要因による変動を含む多重反射波のエコー高さの変動範囲と前記模擬剥離部における前記変動要因による変動を含む多重反射波のエコー高さの変動範囲とを求めると共に、これら変動範囲が重複せず且つその差が所定値以上となる反射波の反射回数を求める。そして、予め求めた反射回数の健全部の反射波のエコー高さと同回数の反射回数の検査部の反射波のエコー高さと
を比較すれば、上記要因による変動を排除でき、精度よく剥離の有無を検出することが可能となる。
[0010]
前記積層体は前記一側に塗装膜を備え、前記変動範囲は、前記塗装膜の膜厚による前記エコー高さの変動値を含むものであるとよい。例えば図20に示すように、反射波のエコー高さの変動範囲は、塗装膜の膜厚による変動を含む。よって、予め求めた反射回数の健全部の反射波のエコー高さと同回数の反射回数の検査部の反射波のエコー高さとを比較すれば、塗装膜の膜厚によるエコー高さの変動を排除でき、膜厚にバラツキが生じていたとしても、精度よく剥離の有無を検出することができる。
[0011]
前記変動範囲は、前記探触子の前記積層体に対する接触状態による前記エコー高さの変動値を含むものであってもよい。例えば図21に示すように、反射波のエコー高さの変動範囲は、探触子の接触状態による変動を含む。よって、予め求めた反射回数の健全部の反射波のエコー高さと同回数の反射回数の検査部の反射波のエコー高さとを比較すれば、触子の接触状態によるエコー高さの変動を排除でき、接触状態にバラツキが生じていたとしても、精度よく剥離の有無を検出することができる。
[0012]
予め、前記健全部における前記反射回数の反射波の伝搬時間を求め、前記検査部における前記反射回数の反射波の伝搬時間を求め、これら伝搬時間を比較することで前記層間剥離の有無を検査するとよい。例えば図6に示すように、第一の部材と第二の部材との界面に剥離が存在する場合、前記反射回数の反射を繰り返した反射波の伝搬時間にずれが生じる。従って、予め求めた反射回数の健全部の反射波の伝搬時間と同回数の反射回数の検査部の反射波の伝搬時間とを比較すれば、伝搬時間のずれによって積層体の層間剥離の検出が可能となる。なお、この伝搬時間のずれは、超音波の周波数に依存するものではなく、原理的に周波数は特に限定されるものではない。
[0013]
前記複数の部材は、前記一側に位置する第一の部材と、この第一の部材に設けられる第二の部材とを少なくとも含み、前記第一の部材は、前記第二の部材の音響インピーダンスより小となる材料よりなり、予め、前記健全部に
受信した多重反射波を評価することにより層間剥離の有無を検査する構成において、前記信号処理装置は、予め、前記積層体の健全部及び模擬剥離部において多重反射波をそれぞれ受信し、前記健全部におけるエコー高さに変動を与える変動要因による変動を含む多重反射波のエコー高さの変動範囲と前記模擬剥離部における前記変動要因による変動を含む多重反射波のエコー高さの変動範囲とを求めると共に、これら変動範囲が重複せず且つその差が所定値以上となる反射波の反射回数を求め前記積層体の検査部において多重反射波を受信し、前記検査部における予め求めた前記反射回数の反射波のエコー高さと前記健全部における予め求めた前記反射回数の反射波のエコー高さを比較することにより前記層間剥離の有無を検査することにある。
[0023]
前記信号処理装置は、前記探触子を走査して受信した多重反射波により走査画像を生成するようにしても構わない。走査画像としては、例えば、Bスキャン画像やCスキャン画像が挙げられる。また、前記探触子には、一振動子型探触子を用いてもよく、二振動子型探触子を用いることも可能である。
発明の効果
[0024]
上記本発明に係る積層体の剥離検査方法及び剥離検査装置の特徴によれば、簡便でありながら積層体の層間剥離を明瞭に検出することが可能となった。
[0025]
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
図面の簡単な説明
[0026]
[図1]本発明に係る剥離検査装置の概略図である。
[図2]積層体の各層に対する超音波の挙動を説明するための図であり、(a)は健全部、(b)は第一界面での剥離、(c)は第二界面での剥離を示す図である。
[図3]各試験体におけるバンドパスフィルターを介して得られたRF波形の一例を示すグラフであり、(a)はB1付近、(b)はB10付近、(c)はB20付近の結果を示す。
[図4](a)〜(c)は、図3(a)〜(c)にそれぞれ対応する検波波形を示すグラフである。
Claims (16)
- 複数の部材が積層した積層体の一側に配置した探触子から超音波を入射すると共に多重反射波を受信し、受信した多重反射波を評価することにより層間剥離の有無を検査する積層体の剥離検査方法であって、
予め、前記積層体の健全部及び模擬剥離部において多重反射波をそれぞれ受信し、前記健全部における多重反射波のエコー高さと前記模擬剥離部における多重反射波のエコー高さとの差が所定値以上となる反射波の反射回数を求め、前記積層体の検査部において多重反射波を受信し、前記検査部における前記反射回数の反射波のエコー高さと前記健全部における前記反射回数の反射波のエコー高さを比較することにより前記層間剥離の有無を検査する積層体の剥離検査方法。 - 前記積層体は前記一側に塗装膜を備え、前記所定値は、前記エコー高さの差から前記塗装膜の膜厚による前記エコー高さの変動値を除いたものである請求項1記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記所定値は、前記エコー高さの差から前記探触子の前記積層体に対する接触状態による前記エコー高さの変動値を除いたものである請求項1又は2記載の積層体の剥離検査方法。
- 予め、前記健全部における前記反射回数の反射波の伝搬時間を求め、前記検査部における前記反射回数の反射波の伝搬時間を求め、これら伝搬時間を比較することで前記層間剥離の有無を検査する請求項1〜3のいずれかに記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記複数の部材は、前記一側に位置する第一の部材と、この第一の部材に設けられる第二の部材とを少なくとも含み、前記第一の部材は、前記第二の部材の音響インピーダンスより小となる材料よりなり、予め、前記健全部における前記反射回数の反射波の位相を求め、前記検査部における前記反射回数の反射波の位相を求め、これら位相を比較することで前記層間剥離の有無を検査する請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記複数の部材は、前記一側に位置する第一の部材と、この第一の部材に設けられる第二の部材と、これら部材を密着させる接着層とを少なくとも含み、前記第一の部材と前記接着層との界面における層間剥離を検査する請求項1記載の積層体の剥離検査方法。
- 予め、前記健全部における前記反射回数の反射波の伝搬時間を求め、前記検査部における前記反射回数の反射波の伝搬時間を求め、これら伝搬時間を比較することで前記接着層と前記第二の部材との界面における層間剥離の有無を検査する請求項6記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記第一の部材は鋼材であり、前記第二の部材はフッ素樹脂ライニング材である請求項6又は7記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記接着層は、前記鋼材に前記フッ素樹脂ライニング材を接着させる接着剤とガラスクロスとよりなる請求項8記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記積層体は、液体用コンテナタンクである請求項8又は9記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記積層体は、曲面を有する請求項1〜6のいずれかに記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記探触子を前記一側に沿って走査すると共に、前記検査部における前記反射回数の反射波のエコー高さに基づいて走査画像を生成する請求項1〜11のいずれかに記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記検査部における前記反射回数の反射波のエコー高さが、前記健全部における前記反射回数の反射波のエコー高さより小さい場合に、前記層間剥離の一部に腐食が存在すると判定する請求項1〜12のいずれかに記載の積層体の剥離検査方法。
- 前記探触子は、分割型探触子である請求項13記載の積層体の剥離検査方法。
- 複数の部材が積層した積層体の一側から超音波を入射すると共に多重反射波を受信する探触子と、受信した多重反射波を評価する信号処理装置を備え、受信した多重反射波を評価することにより層間剥離の有無を検査する積層体の剥離検査装置であって、
前記信号処理装置は、予め、前記積層体の健全部及び模擬剥離部において多重反射波をそれぞれ受信し、前記健全部における多重反射波のエコー高さと前記模擬剥離部における多重反射波のエコー高さとの差が所定値以上となる反射波の反射回数を求め、前記積層体の検査部において多重反射波を受信し、前記検査部における前記反射回数の反射波のエコー高さと前記健全部における前記反射回数の反射波のエコー高さを比較することにより前記層間剥離の有無を検査する積層体の剥離検査装置。 - 前記信号処理装置は、前記探触子を走査して受信した多重反射波により走査画像を生成する請求項15記載の積層体の剥離検査装置。
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