JP3940580B2 - 配管検査方法及び配管検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1配管の外周面(外面)に、該外周面を例えば風雨の影響で腐食するのを防止する目的で塗布される特殊な塗装(後述する重防食塗装)が施され、この塗装は超音波を通しにくいものであって、該第1配管の内周面(内面)に例えば海水との接液を防止するための第2配管例えばポリエチレンからなるライニングを収納接着又は収納接触した状態にある検査対象において、該第1配管に対する該第2配管の接着又は接蝕(以下接着等と称する)に対する異常を、超音波の減衰により検査する配管検査方法及び配管検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所においては、タービンの復水器等の冷却に海水が使用される。海水を発電所内に導くために、海水配管の内面に海水による錆などの腐食を防止するための樹脂入り塗装でできたライニング(内張り)が施されている。
【0003】
しかし、長期間に亘り海水系配管を使用していると、ライニングの剥離等の現象が発生する。従って、ライニングの剥離等を早期に検出できる技術の開発が望まれ、海水系配管の健全性を維持することが必要である。このため、原子力発電所においては、定期検査時の配管内部から目視検査することによって海水系配管のライニングの布設状態を検査している。
【0004】
原子力発電所が運転中の場合には、海水系配管内で海水の流れがあるため、直接海水系配管内にアクセスすることは困難なので、定期検査時にのみ検査が実施されている。しかしながら、ライニングの剥離等の布設状態を早期に検出し補修することは、原子力発電所の補修費用を低減する上で重要なことである。
【0005】
このようなことから、ライニングの布設状態を運転中に監視できる装置の開発が望まれていた。このため、本出願人は海水系配管等ライニングを有する配管の外周面からライニングの剥離等の布設状態を推定できる「配管検査方法及び装置」を開発し、これが出願公開されている(特開2000−329751)。以下このことを公知の発明と称する。
【0006】
この公知の発明は、配管の外面からの超音波パルスを入射させ、ライニングから多重に反射されてくる超音波反射信号(以下多重エコーと称する)を検出し、その多重エコーのピーク値の減衰定数を算出することにより配管内ライニングの布設状態を推定するものである。
【0007】
上記した配管内面の検査は通常、1年に1度程度の定期点検時にのみ行われている。配管を開放するためには系統を隔離し、配管内にたまっている海水を抜き、保温材などの除去する必要がある。さらに、ライニングの状態を目視検査するためには、配管内面に付着している貝類を除去する必要がある。これらの作業は基本的には人手を使って実施しているため、時間とコスト両面において問題がある。また、系統を隔離する必要があることから1回の定期点検時に検査可能な配管の位置や本数は限られる。発電所の稼動を高くするために、定期定検はなるべく短く済ませる必要があり、1度の定期点検で検査可能な配管の本数も少なくなるため、所定の回数の定期検査で全ての配管の健全性を検査することは工程的にも厳しくなってきている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
該公知の発明は、原子力発電所の運転中にライニングの布設状況を検査可能な手法であり、上記の課題を解決する一手段である。実プラントの配管では表面に発生した錆や、塗装状態の不均一性およびノイズの影響により安定したエコーを得ることができないことも想定される。
【0009】
該公知の発明では、配管エコーのレベルの減衰のみからライニングの布設状況を検査するため、安定したエコーが得られない場合がある。例えば、重防食塗装と呼ばれている、塗装を配管外周面に塗布したものにあっては、安定したエコーが得られないことがある。重防食塗装は、配管外面に施されており、配管外面の腐食を防止するために使用されているものである。なお、配管の内面は、後述するライニングにより保護されている。このような重防食塗装は、経験的に横波超音波を通しにくく、規則正しい繰り返し信号を得ることができないものである。
【0010】
そこで本発明は、配管(又は第1配管と第2配管)の状態に依らずに、プラント運転中に配管外面(又は第1配管の外面)からライニング(又は第2配管)の剥離等の布設状態を検出する配管検査方法及び配管検査装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から多重に反射する超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、この積分値の大きさの違いにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査することを特徴とする配管検査方法である。
【0012】
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で、前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第1の積分値を求め、さらに前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間のn(n:整数)倍だけ離れた時間から前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間までと定義される、第2の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第2の積分値を求め、前記第1の積分値及び第2の積分値の比の違いにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査することを特徴とする配管検査方法である。
【0013】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査する場合、前記第2配管との接着に対する異常を判定する前に前記超音波反射信号の自己相関関数を求めて、該自己相関関数のピーク間隔を第1の配管の肉厚を伝播するのに要する時間と比較することにより、正常に超音波反射信号が得られているかの判定を行うようにしたことを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の配管検査方法である。
【0014】
前記目的を達成するため、請求項4に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、前記第1配管の中央部を予備走査して前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の分布を求め、該求めた分布より前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定することを特徴とする配管検査方法である。
【0015】
前記目的を達成するため、請求項5に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、前記検査対象と同等の処理が施された対比試験片を用いることにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定することを特徴とする配管検査方法である。
【0016】
前記目的を達成するため、請求項6に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲の前記超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出するものであって、検査点と周囲と前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値を検査対象点とその周囲で比較して、超音波反射信号のレベルの減衰の差、前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の比の差あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の差が設定した差のしきい値より大きい場合に前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常とすることを特徴とする配管検査方法である。
【0017】
前記目的を達成するため、請求項7に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を、前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間のn(n:整数)倍だけ離れた時間から、前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第2の特定の範囲の前記超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出するものであって、検査点と周囲と前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値を検査対象点とその周囲で比較して、超音波反射信号のレベルの減衰の差、前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の比の差あるいは前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の差が設定した差のしきい値より大きい場合に前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常とすることを特徴とする配管検査方法である。
【0018】
前記目的を達成するため、請求項8に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に対して超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、前記第2配管と前記第1の配管との境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から該第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、この積分値の大きさの違いを判別可能な演算処理手段とを具備したことを特徴とする配管検査装置である。
【0019】
前記目的を達成するため、請求項9に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第1の積分値を求め、さらに前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間のn(n:整数)倍だけ離れた時間から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第2の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第2の積分値を求め、前記第1の積分値及び第2の積分値の比の違いを判別可能な演算処理手段とを具備したことを特徴とする配管検査装置である。
【0020】
前記目的を達成するため、請求項10に対応する発明は、前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査する場合、第2配管との接着に対する異常を判定する前に超音波反射信号の自己相関関数を求めて、該自己相関関数のピーク間隔を第1の配管の肉厚を伝播するのに要する時間と比較することにより、正常に超音波反射信号が得られているかの判定を行う判定手段を、更に具備したことを特徴とする請求項8、9のいずれかに記載の配管検査装置である。
【0021】
前記目的を達成するため、請求項11に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、前記第1配管の中央部を予備走査して前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の分布を求め、該求めた分布より前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定する判定手段とを備えたことを特徴とする配管検査装置である。
【0022】
前記目的を達成するため、請求項12に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、前記検査対象と同等の処理が施された対比試験片を用いることにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定する判定手段とを備えたことを特徴とする配管検査装置である。
【0023】
前記目的を達成するため、請求項13に対応する発明は、音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲の前記超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出するものであって、検査点と周囲と前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値を検査対象点とその周囲で比較して、超音波反射信号のレベルの減衰の差、特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の比の差あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の差が設定した差のしきい値より大きい場合に前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常とする判定手段とを備えたことを特徴とする配管検査装置である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第1の実施形態を説明するための図である。始めに、本発明の検査対象について説明する。本発明の検査対象は、例えば音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態のものである。具体的には例えば炭素鋼からなる円筒状の配管2の内面全面(内周面全面)に、例えばポリエチレンからなる円筒状のライニング1の外面全面(外周面全面)を挿通させると共に、配管2の内面とライニング1の外面同士を接着させた状態にする。実際にこのようにするには、例えば配管2の内面に、ポリエチレンの粉末を入れて、該粉末を溶融させた後ポリエチレンを硬化させることでライニング1が配管2の内面に形成される。ここで、配管2の内面とライニング1の外面同士を接着させた状態とは、接着剤を媒介とする場合又は接着剤を媒介としない場合のいずれかであってもよく、結果的に配管2の内面とライニング1の外面が接合されている状態を指している。
【0029】
しかして、配管2の内面にライニング1を施工した検査対象である配管2の外面(表面)に、配管外面と垂直に伝播する超音波3を送受信するセンサー4を設置する。センサー4は、超音波発信手段及び超音波受信手段を構成するパルサー/レシーバー5によって駆動される。
【0030】
受信される超音波反射信号(超音波多重反射エコー)はライニング1の状態により異なり、ライニング1が配管2と密着している場合には配管2の外面(配管表面)からライニング1へ超音波が伝播した分、減衰して配管外面へ戻り、さらに配管2の外面ではセンサー4を駆動するエネルギーとして超音波の一部がセンサー4へ伝播し、残りが再び配管外面へ伝播する、という動作を繰り返しながら減衰する。
【0031】
一方、ライニング1が剥離している場合には、この剥離部6と、配管外面から伝播するのは海水あるいは空気である、という違いがありライニング1と海水、あるいは水の音響インピーダンス(参考:下の図に音響インピーダンス(縦波の場合)を記す)の違いにより減衰度合いが異なってくる。
【0032】
音響インピーダンス(縦波) ライニング(ポリエチレン):2.0×106
海水 :1.5×106
空気 :4.1×102
炭素鋼 :4.6×107
特に検査装置に用いる超音波を横波とすると、海水・空気などの気体や液体には横波はほとんど伝播しないため配管底面へ伝わったエネルギーはほとんど全て反射して配管外面へ伝わり、センサー4のエネルギー吸収以外減衰する要因はなく、ほとんど減衰しない波形が得られる。横波を使用すると上記したように、ライニング1の剥離時と正常時の減衰度合いの違いが顕著になり検査が容易になる。
【0033】
さらに、本発明では、配管内面とライニングの接触状態が保たれていれば安定した検査ができるため、例えばライニングの内面に貝などの海生物が付着した場合であってもそれらの影響を受けることもなく、確実な検査結果を得ることができる。
【0034】
また、超音波を送受信するセンサー4としては、圧電素子や電磁超音波探傷装置を用いることが考えられる。圧電素子はセンサーの感度がよいため、センサー4自体がエネルギー吸収してしまい、多重エコー波形が長時間続くことはなく、短時間で減衰してしまう。
【0035】
一方、電磁超音波探傷装置はセンサー感度が悪く、センサー自体でのエネルギー吸収が小さいため、長時間にわたり多重エコーを観察することができる。ここでは多重エコーの減衰から配管内面の状態を検査する方法を使用するため、センサーとして電磁超音波探傷装置を使用する。パルサー/レシーバー5で受信した波形は、A/Dカード7でデジタル化して、演算処理手段、判定手段、検査手段、処理手段を構成するパソコン8に入力し、処理する。
【0036】
図2は、ライニング1が剥離している場合に得られる理想的な波形を示す。ライニング1が剥離している場合には配管2の内面と外面でほぼ完全に反射されるために減衰のほとんど無い波形が得られる。
【0037】
図3は、ライニング1が正常に配管2内面と密着している場合に得られる理想的な波形を示す。ライニング1が配管内面と密着している場合には超音波は配管2外面からライニング1へも伝播して配管内面へ到達する多重エコーのレベルは低下し、徐々に減衰する波形が得られる。その反射率は音響インピーダンスから計算でき、上記した音響インピーダンス(縦波の場合:横波も比は同程度と考える)の値を用いて反射率を計算すると下式のようになる。
【0038】
R1=(Z1−Z2)/(Z1+Z2)=0.84
ここで、R1:反射率、Z1:配管の音響インピーダンス、Z2:ライニングの音響インピーダンス
n回反射の後を考えると、エコーレベルは0.84nとなり、例えば5回反射の後の減衰を正常時と剥離時で比較すると、剥離部6のエコーレベルを1とすると、正常部のエコーレベルは0.42となる。エコーレベルを積分値で評価した場合においても波形の周波数が変らずにレベルのみが低下していると考えると、その比は同様に1:0.42となる。この性質を利用して適切なしきい値を設定することにより、エコーレベル、エコーレベルの積分値ともにライニングの状態を配管外面から検知することが可能である。
【0039】
図4は、正常部でノイズ9が入った場合の波形を示す。第nピークレベル10と第mピークレベル11の比による減衰を考える。第nピークレベルを1とすると、実際の第mピークのレベルは0.33であるが、ノイズの影響で検出される第mピーク12のレベルは0.5となり減衰の割合は50%大きく検出されることになる。
【0040】
一方、積分範囲13で示す配管板厚の伝播にかかる時間の間のレベルを積分した値を考えると、ノイズの無い場合を1とすると1.24となり、24%大きく検出されることになるが、ピークレベルのみで検出する場合と比較するとノイズの影響は半分以下に低減されることになる。
【0041】
図5は、内面にポリエチレンライニングを施した板厚9.5mmの炭素鋼材でできた配管でライニング正常時および剥離時に検出される実波形例を示す。センサーとしては2MHzの横波を送受信する電磁超音波探傷装置を用い、構成は図1に示したものと同様である。
【0042】
図5に示した波形は送信ノイズで正常に波形の得られない約30μsを削除して送信から30μsの時点を時間=0として表したものであり、既に5回程度配管2内の反射を繰り返した後の波形である。図5(a)中に示した積分範囲13内のピークレベルは正常部では1.1V、図5(b)中に示した剥離部6では1.9Vであり、その比は0.58となる。
【0043】
積分範囲内の積分(ここでは単純に、積分範囲内の各ピーク値をたし合わせたもの)は正常部52.3、剥離部92.4であり、その比は0.57となり、レベルの比を比較したものと同等な結果が得られることがわかる。
【0044】
また、この積分範囲については、配管板厚を超音波がちょうど一往復伝播するのに要する時間を選択することが適切である。これは、例えば板厚に誤差がある場合など、積分範囲の決め方によってはデータのばらつきにつながることがあるためである。
【0045】
例えば、上記した肉厚9.5mmの配管を超音波の横波(炭素鋼材中の音速:3240m/s)を使って検査する場合には、
9.5(mm)×2/3240=5.86(μs)
の間隔でピークができるはずである。従って、板厚の変化がある場合においても必ず1つだけのピークを含む範囲とするために、上記の配管の板厚を往復する時間である5.86μsとするのがよい。また、板厚などの変化があった場合においても影響が小さくなるよう、積分範囲の中央がピークとなるよう積分範囲を決める。
【0046】
例に示した波形は、ノイズは少ないためピークレベルの比と同等な結果となるが、上記例で示したようにノイズが測定範囲にある場合にはエコーレベルの積分値を使用した場合の方が、実際の減衰現象を表すものとなり、ライニングの異常をより正確に判定することができる。
【0047】
ここで、以上述べた第1の実施形態において、積分値の大きさの違いにより、円筒状の配管の内周面に施工例えば接着されているライニング1の異常を判定することの優位性について説明する。配管の内周面にライニングを施工し、その一部にライニング1辺20mm〜50mmの正方形状の剥離部を設け、外面に重防食塗装を施工した試験片を用いてライニングの剥離を検出する試験を実施した。
【0048】
図6に重防食塗装からなるライニング剥離部6で採取した多重エコー信号の生波形の1例を示す。図6からもわかるように、エコーのピーク間隔は例えば5.2μs〜7.7μsとばらついており、ノイズなどの影響で、実際のピークの位置が正確には検出できないことがわかる。エコー信号は重防食塗装の影響で減衰するため、長時間に渡る多重エコーを観察することができない。
【0049】
このため、各検査位置でのピークレベルの比は、図6に示す第1番目のエコーのピークレベル(第1ピーク)と、第3番目のエコーのピークレベル(第3ピーク)の比を用いて剥離の判定を行った。また、積分値による判定は40〜46μs間の波形を積分して判定を行った。図7はこのピークレベルの比、すなわち3波目と1波目を用いた減幅比を示すものであり、図8は40〜46μs間の波形を積分値の変化を示している。
【0050】
両図より、ピークレベルの比は50mm、40mmの剥離部では周囲と比較してレベル比は大きく、剥離を判定可能であるとも考えられるが、40mm以降のデータには剥離部6と同程度の比になる個所が多数有り、このデータよりしきい値を用いて剥離を判定することは難しいことがわかる。40mm以降のレベルの比の変化は不規則であり、重防食塗装状態の変化、および外部のノイズの影響であると考えることができる。
【0051】
一方、積分値については50mmおよび40mmの剥離部については、周囲と有効な差があり、レベルの比ではノイズの影響により、レベルの比では大きく変化した個所においても周囲との大きな違いは見られず、しきい値を適切に設定すれば剥離は検出可能なことがわかる。
【0052】
ここで、示したように、重防食塗装や、ノイズの影響が大きい個所においては、レベルの比はその影響を受けやすく、剥離を見逃す、あるいは誤判定してしまう可能性が有るのに対して、積分値を用いると安定してライニングの剥離を検出することが可能である。
【0053】
例えば、上記した板厚9.5mmの配管を超音波の横波(炭素鋼材中の音速:3240m/s)を使って検査する場合には、
9.5(mm)×2/3240=5.86(μs)
の間隔でピークができるはずである。従って、板厚の変化がある場合においても必ず1つだけのピークを含む範囲とするために、上記の配管の板厚を往復する時間である5.86μsとするのがよい。また、板厚などの変化があった場合においても影響が小さくなるよう、積分範囲の中央がピークとなるよう積分範囲を決める。
【0054】
次に、本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第2の実施形態を説明する。配管検査装置は、第1の実施形態では受信した多重エコーのパルスレベルの積分値を1個所での積分範囲で求めて値を比較するのに対して、2個所でのパルスレベルの積分値を求め、その比から配管内面のライニング1の状態を検査するものである。前述の第1の実施形態では、直接値を比較するために検査対象面が均一であり多重エコーが安定して採取可能な場合、特に第1ピークレベルに変化が無い場合には手法も簡単で精度良くライニングの状態を検出可能であるが、配管外面の塗装、錆などの影響によりエコーが安定しない場合には1個所の積分値を用いるため、その影響を受けやすく検出精度が悪化する可能性がある。第2の実施の形態の配管検査装置は塗装、錆の影響を小さくするために、エコーレベルを2個所で積分してその比を求めるものである。検査装置としての構成は第1の実施形態の配管検査装置と同じである。
【0055】
積分範囲は第1の実施の形態と同様に配管板厚を伝播するのに要する時間であり、求める2個所の積分範囲の時間間隔を配管板厚を伝播するのに要する時間の整数倍に設定する。板厚を9.5mmと想定していた場合に、実際の板厚が9.6mmであった場合において、最初の積分範囲から更に5回反射した時間から2個所目の積分範囲を設定した場合を考える。想定した板厚より実際には0.1mm厚い鋼材であるために後半の積分範囲の開始点が0.35μsだけずれることになるが、これは2MHzの波形の半波分の範囲であり、積分範囲の開始点をピークと半周期ずれた位置に設定していれば、レベルの一番低い部分でのみずれが発生することになり、積分値にほとんど影響なく検査を実施することが可能である。
【0056】
図9は、実際の波形での第nピークを含む積分範囲14と第mピークを含む積分範囲15の2個所でエコーレベルおよびその積分値(ここでは単純に、積分範囲内の各ピーク値をたし合わせたもの)を演算した場合を検討する。
【0057】
図9(a)に示すように正常部の第n番目のエコーレベルは1.33V、第m番目のエコーレベルは0.90Vでその比は0.68であり、第n番目のエコーを含む積分範囲での積分値は66.8、第m番目のエコーを含む積分範囲での積分値は46.7でその比は0.70である。
【0058】
図9(b)に示すように剥離部の第n番目のエコーレベルは2.00V、第m番目のエコーレベルは1.83Vでその比は0.92であり、第n番目のエコーを含む積分範囲での積分値は98.8、第m番目のエコーを含む積分範囲での積分値は92.6でその比は0.94である。
【0059】
図9で示したように、エコーレベルを積分しその比を使用する方法は、ピークレベルの比を用いて配管異常を検出する方法と同等な検出能力があり、さらにノイズの発生している状況では、エコーレベルの積分値の比を使用した場合の方が、実際の減衰現象を表すものとなり、ライニング1の異常をより正確に判定することができる。
【0060】
図10は、本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第3の実施形態を説明するための図である。本発明の第3の実施形態は上記第1、2の実施形態で示された配管検査装置において、波形が配管の状態を検査するのに適したものであるかを検証するための手段を有する配管検査装置である。
【0061】
超音波送受信子で得られる多重エコー信号のピーク間隔は、使用する配管の板厚に依存して一定となるため、ピーク間隔を測定してピーク間隔が配管板厚から求められる一定値と同じ時間であれば得られた信号は多重エコー信号であると判断可能である。例えば、配管板厚9.5mm、横波超音波(音速:3420m/s)を使用した場合には5.6μs間隔でピークが現れるため、エコー間隔が5〜6μsであれば正常波形であると考えることとし、正常と考えられる波形のみを第1、2の実施形態で示された配管検査装置で処理することにより精度のよい配管の検査を行うことができる。
【0062】
ピーク間隔を求めるには、包絡線を求めてそのピークとなる時間を求める方法が一般的であるが、外部ノイズの多い場合には正確なピーク間隔を測定することができない。
【0063】
ここでは、図10(a)の生波形例に示す生波形から、図10(b)に示す自己相関関数16を求め、そのピーク間隔を求めることにより、より正確にピーク間隔を求めることができ、誤った判定を避ける。ここで、自己相関関数は以下の式で求められる。
【0064】
Yacf ( i ) = Σ ( Y( j ) × Y( j + i ) ) ( j = 1 to DataEnd)
(Yacf ( i ):自己相関関数、Y( j ):エコー波形)
この後、ピーク間隔を求めるわけであるが、実用的には例えば板厚9.5mmの場合には配管内を往復するのに約5.6μsであるため、エコー間隔が5μsあるいは6μsであることがわかれば十分である。従って、例えばサンプリングを20MHz(サンプリング間隔50ns)である場合には、図10(c)に示すような包絡線を求めて単純に最大値を得る時間を求めればよい。包絡線17を求める式を下記する。
【0065】
Y ( i ) = Y( i ×20 )〜Y(i ×20 + 19 ) 間での最大値 ( i = 1 to DataEnd / 20) (Y ( i ):包絡線、)
最大値を与える i は以下にの式を満たす i を検出する。
【0066】
Y ( i-1 ) < Y( i ) > Y ( i+1 )
上記の例で示した場合には、この i の間隔が5、または6であれば得られた反射エコーは配管エコーとして正常な波形と考え、エコーレベルなどにより配管の健全性を検査し、間隔が上記以外の場合には正常なエコーが得られなかった個所として検査対象外とする。この方法により、異常波形を予め排除して配管検査を実施すれば、より信頼性の高い配管検査装置とすることができる。
【0067】
図11は、本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第4の実施形態を説明するためのフロー図であり、具体的には本発明の第4の実施の形態の配管検査装置のしきい値の決め方を示している。第4の実施の形態の配管検査装置は検査対象の配管中央部での予備走査を行い(S18)、多重エコーの第nエコーと第mエコーのレベルの比を求める。予備走査として、配管を1周した場合のレベル比(減幅比)の変化19を図12(a)に示す。
【0068】
配管内周面は塗装が施されており、局部的には錆のうきなども見えるために、ライニング1の状態が同じだと考えられる場合においても図に示したような変動がある。
【0069】
本発明の配管検査装置では、ライニング1の状態をしきい値を決めて検査するため、しきい値を決める際にはこの変動を考慮する必要がある。しきい値の決め方は、図12(b)に示すように上記予備走査におけるレベルの比を度数分布として表し、その分布が正規分布に近いかどうかを判断する(S21)。正規分布に近いと判断した場合にはその平均値を演算し(S22)、また標準偏差を演算する(S23)。この場合、ライニング1が剥離していると判断するしきい値を、平均値+2×標準偏差とする。正規分布とは考えられない場合には予備走査をやり直し、上記の操作を繰り返す。なお、平均値と標準偏差はデータをd(i):i=1〜jとすると、以下の式で求める。
【0070】
平均値 :davr = Σd(i) (i=1 to j)
標準偏差:σ = √{Σ(d(i) ― davr)2 / j }1/2
統計上は、平均値に標準偏差の2倍を加えたしきい値を設定しても、正常部のうちの約7%程度が異常と検出されることとなるが、例えばしきい値を2回連続で超えた場合に異常とするなどの方法で誤判定を低減し、異常部を正確に判定可能である。
【0071】
なお、ここでは多重エコーの第nエコーと第mエコーのレベルの比を用いて実施例を説明したが、多重エコーの第nエコーと第mエコーの特定の範囲のレベルの積分値の減衰や特定の範囲のレベルの積分値そのものを判定に使用する場合のしきい値も同様に決定することができる。
【0072】
図12は、本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第5の実施形態を説明するための図である。本発明の第5の実施の形態の配管検査装置は検査対象の配管を予備走査する代わりに、検査対象と同じ材質・仕様でできた対比試験片を使用してしきい値を決定して配管の異常を検出するものである。
【0073】
図13は、本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第6の実施形態を説明するための図である。本発明の第6の実施の形態の配管検査装置はエコーレベルの比の差分からライニングの異常を検出するものである。図13(a)は一部ライニングに剥離のある配管を検査した場合の第n番目と第m番目のエコーレベルの比をグラフに表した例であり、実際のデータではない。エコーレベルの比が周囲と比較して大きい部分が剥離していると考えられる部分24である。
【0074】
一方、図中13(a)中に減幅比の大きい部分と記している部位25は、塗装の影響などでレベルの比が大きいだけの部位25と考えられる場所である。このような場合にライニング1の異常をエコーレベルの比のしきい値により検出する。例えば全ての異常部位を検出するためにしきい値を0.8と設定した場合には減幅比の大きい部分25も異常と判定されることになり、また実際には正常部位であると考えられる減幅比の大きい部分25を異常と検出しないようにしきい値を0.9と設定した場合には1番目と3番目の異常部位が検出できないことになる。
【0075】
図13(b)のグラフはこのエコーレベルの比を現在の検査位置と直前の検査位置の差を演算したものである。ライニングの異常部位では正常部と比較してレベルの比が大きくなることが考えられるため、その偏差にしきい値を設けて(例えば0.04)、しきい値よりも大きな偏差となった場所から異常部位が始まり26、もう1つのしきい値(例えば−0.04)よりも小さくなった場合に異常部位は終了する27と考えることができる。
【0076】
上記したようなライニングの状態以外の例えば錆や塗装の影響を排除して正確に配管ライニングの異常を検出することができる。ここでは、単純に前の位置との差分のみでの検査としたが、前後・左右との差を求めて検査を実施すること可能である。
【0077】
図14は、本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第7の実施形態を説明するためのフロー図である。本発明の第7の実施形態は、上記第1〜第6の実施形態までの配管検査装置と同様に、例えばエコーレベルの減衰をしきい値処理して、正常部(S34)、剥離部(S32)、及び中間部(S29)の3段階で判定する(S28)。ここで、中間部(S29)と判定された部位を、配管の肉厚を計測し(S30)、規定の厚さ以上の肉厚を有するかを比較する(S31)ことにより、健全性を検査するものである。
【0078】
配管の肉厚の計測は、例えば圧電素子を使用し、そのエコー間隔を測定することで容易に板厚を計測することができる。必要に応じて剥離部と判定された部位(S32)に対しても配管の板厚を計測してもよい。上記第1〜6実施の形態のまでの配管検査装置は配管の内側に施工されたライニングの健全性を検査している。
【0079】
ところで、ライニングが剥離し、配管内に流れる水と配管が接液すると、配管の内面が腐食して減肉する。第7、8の実施の形態では、ライニングの健全性を検査すると共に、さらに異常が進んだ配管の減肉状況を測定して配管の健全性を検査する配管検査装置である。
【0080】
図15にエコーレベルの比(減幅比)の度数分布を示す。図15からもわかるように、エコーレベルのピーク比では正常部と異常部での重なり部分、すなわち、正常・異常の区別の付かない部位33があり、完全に正常部と異常部を分離することは難しい。そのため、上記したようにエコーレベルの減衰から正常部、剥離部及び中間部の3段階で判定する必要がある。第7の実施形態では、エコーレベルの比が平均値+標準偏差以上でありさらに平均値+標準偏差×2以下である位置を中間部とし、中間部については圧電素子などにより配管板厚を計測して規定の厚さ以上あるこかどうかの検査を実施して、配管の健全性を検査するものである。
【0081】
本発明の第8の実施形態は多重エコーのレベルの比、エコーのレベルの比、及びエコーのレベルから配管の異常を検出するのに加えて、同時に上記の多重エコーからピークの間隔を求めて配管の厚みを測定して厚みが所定の厚さ以上あるかどうかを検査するものである。上記第3の実施の形態では得られたエコー波形を自己相関処理および包絡線処理を行い、1μs単位の時間間隔を求めてエコー波形の正常/異常を判定したが、第8の実施の形態では自己相関処理した後に直接、ピークを求めることにより厚さを同時に測定し、配管異常をより正確に検出することができるものである。
【0082】
<変形例>
前述の実施形態では、配管として肉厚(板厚)が一定円筒状のものを例にあげて説明したが、これに限らず、外形形状はどんな形状であってもよく、事前に正常部・異常部で得られる超音波エコー波形のデータがあれば、板厚が変化しても配管検査は可能である。しかしながら、配管(板厚)の自動検査を行う場合にあっては、検査対象とする配管の断面は、板厚が一定の円筒状の配管であることが望ましい。
【0083】
また、前述の実施形態の多重エコー超音波信号とは、配管の外周面(外面)と内周面(内面)を多重に反射する超音波の信号のことを指している。
【0084】
さらに、前述の実施形態では、検査対象として例えば炭素鋼からなる配管2の内周面に、例えばポリエチレンからなるライニング1を配設したものを例にあげて説明したが、これに限らず、音響インピーダンスが異なる2種類の材質から第1配管と、第2配管からなり、第1配管の内周面に第2配管が収納接着又は収納接合される2重配管であって、2重配管が互いに接着(接合)された状態のものであっても、その両者の接着等の異常を検査することが可能である。この場合であっても、前述の実施形態の配管2の外周面と同様に、第1配管の外周面に、風雨の影響で該外周面が腐食するのを防止するための特殊な塗装であって、超音波を安定して通すことができない重防食塗装(例えば商品名:ジンクリッチプライマー)等の物質が存在していることは言うまでもない。前述の実施形態で、配管2の内周面に、ポリエチレンからなるライニング1を配設した理由は、防食の目的で、配管2内部に海水を流通させる場合に配管2の内周面に海水が直接接液しないようにするためである。また配管2の外周面に重防食塗装を施した理由は、室外に用いられる配管(室外配管)は、室内に用いられる配管(室内配管)に比べて風雨にさらされるため、該風雨の影響により配管2の外周面が腐食するのを防止するためであり、室内配管の場合には、重防食塗装を施さず、風雨にさらされることがないため、配管2の外周面に超音波を通し易い例えばエポキシ系の塗装を施すだけでよい。
【0085】
【発明の効果】
以上述べた本発明によれば、配管(又は第1配管と第2配管)の状態に依らずに、プラント運転中に配管外面(又は第1配管の外面)からライニング(又は第2配管)の剥離等の布設状態を検出する配管検査方法及び配管検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第1の実施形態を説明するための概略構成図。
【図2】図1のセンサーで得られる理想的な波形を示す図(剥離部)。
【図3】図1のセンサーで得られる理想的な波形を示す図(正常部)。
【図4】図1の正常部でノイズが入った場合の波形を示す図。
【図5】図1の実際の波形例を示す図。
【図6】図1の重防食塗装上での生波形例を示す図。
【図7】図6の波形の一部を拡大して示すピークレベルの比の変化を示す図。
【図8】図6の波形の一部を拡大して示す積分値の変化を示す図。
【図9】実際の波形例を示す図。
【図10】本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第3の実施形態を説明するための波形図。
【図11】本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第4の実施形態を説明するためのフロー図。
【図12】減幅比の変化と分布を示す図。
【図13】減幅比と減幅比の偏差の変化を示す図。
【図14】本発明に係る配管検査装置及び配管検査方法の第7の実施形態を説明するためのフロー図。
【図15】レベルの比の度数分布を示す図。
【符号の説明】
1…ライニング、2…配管、3…超音波、4…センサー、5…パルサー/レシーバー、6…剥離部、7…A/Dカード、8…パソコン、9…ノイズ、10…第nピークレベル、11…第nピークレベル、12…検出される第mピークレベル、13…積分範囲、14…第nピークを含む積分範囲、15…第mピークを含む積分範囲、16…自己相関関数、17…包絡線、S18…予備走査、S19…レベル比の変化、S20…減幅比の分布、S21…正規分布をしているかの判断、22…平均値、23…標準偏差、24…剥離と考えられる部分、25…減幅比の大きい部分、26…異常部位の始まり、27…異常部位の終わり、S28…しきい値による判定、S29…中間部、S30…板厚の計測、S31…規定の寸法以上かの判定、S32…剥離部、33…正常・異常の区別がつかない部位、S34…正常部。
Claims (13)
- 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から多重に反射する超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、この積分値の大きさの違いにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査することを特徴とする配管検査方法。
- 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で、前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第1の積分値を求め、
さらに前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間のn(n:整数)倍だけ離れた時間から前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間までと定義される、第2の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第2の積分値を求め、
前記第1の積分値及び第2の積分値の比の違いにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査することを特徴とする配管検査方法。 - 前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査する場合、前記第2配管との接着に対する異常を判定する前に前記超音波反射信号の自己相関関数を求めて、該自己相関関数のピーク間隔を第1の配管の肉厚を伝播するのに要する時間と比較することにより、正常に超音波反射信号が得られているかの判定を行うようにしたことを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の配管検査方法。
- 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2
配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、
前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、
前記第1配管の中央部を予備走査して前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の分布を求め、該求めた分布より前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定することを特徴とする配管検査方法。 - 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、
前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、
前記検査対象と同等の処理が施された対比試験片を用いることにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定することを特徴とする配管検査方法。 - 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、
前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲の前記超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出するものであって、
検査点と周囲と前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値を検査対象点とその周囲で比較して、超音波反射信号のレベルの減衰の差、前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の比の差あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の差が設定した差のしきい値より大きい場合に前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常とすることを特徴とする配管検査方法。 - 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象に対して、前記第1配管の肉厚方向に超音波発信手段により超音波パルスを入射し、前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を超音波受信手段により受信し、
前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を、前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間のn(n:整数)倍だけ離れた時間から、前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第2の特定の範囲の前記超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出するものであって、
検査点と周囲と前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値を検査対象点とその周囲で比較して、超音波反射信号のレベルの減衰の差、前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の比の差あるいは前記第2の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の差が設定した差のしきい値より大きい場合に前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常とすることを特徴とする配管検査方法。 - 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に対して超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、
前記第2配管と前記第1の配管との境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、
前記第1配管に前記超音波が入射した時点から該第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、この積分値の大きさの違いを判別可能な演算処理手段と、
を具備したことを特徴とする配管検査装置。 - 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、
前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、
前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第1の積分値を求め、
さらに前記第1配管の肉厚を超音波が伝播するのに要する時間のn(n:整数)倍だけ離れた時間から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第2の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理して第2の積分値を求め、
前記第1の積分値及び第2の積分値の比の違いを判別可能な演算処理手段と、
を具備したことを特徴とする配管検査装置。 - 前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を検査する場合、第2配管との接着に対する異常を判定する前に超音波反射信号の自己相関関数を求めて、該自己相関関数のピーク間隔を第1の配管の肉厚を伝播するのに要する時間と比較することにより、正常に超音波反射信号が得られているかの判定を行う判定手段を、更に具備したことを特徴とする請求項8、9のいずれかに記載の配管検査装置。
- 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、
前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、
前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、
前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、
前記第1配管の中央部を予備走査して前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の分布を求め、該求めた分布より前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする配管検査装置。 - 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、
前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、
前記第1配管に前記超音波が入射した時点から第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲で前記超音波反射信号のレベルを積分処理し、
前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出し、前記検査対象と同等の処理が施された対比試験片を用いることにより前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常を判定するしきい値を設定する判定手段と
を備えたことを特徴とする配管検査装置。 - 音響インピーダンスの異なる材質からなる第1配管及び第2配管からなり、前記第1配管の内面と前記第2配管の外面同士を接着させた状態の検査対象であって、前記第1配管の肉厚方向に超音波パルスを入射させる超音波送信手段と、
前記第1配管と前記第2配管の境界から反射される超音波反射信号を受信する超音波受信手段と、
前記第1配管と前記第2配管との接着の状態を、前記第1配管に前記超音波が入射した時点から前記第1配管の肉厚を超音波が1往復伝播するのに要する時間までと定義される、第1の特定の範囲の前記超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値から検出するものであって、
検査点と周囲と前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の減衰あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値を検査対象点とその周囲で比較して、超音波反射信号のレベルの減衰の差、特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の比の差あるいは前記第1の特定の範囲の超音波反射信号のレベルの積分値の差が設定した差のしきい値より大きい場合に前記第1配管と前記第2配管との接着に対する異常とする判定手段と、
を備えたことを特徴とする配管検査装置。
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