図1、図2に示すように、実施例1による車体上部構造13は、車体12に採用されている。車体12は、車室15の左右の壁をなす左右の車体側部(サイドボデー)16、17と、ルーフ18とを備えている。
ルーフ18は、ルーフパネル21と、ルーフ18の前部に設けられたフロントレール組立体22と、車体側部16、17に接合されているルーフパネル21のルーフパネルサイド部23、24とを備えている。
車体側部16、17は、下のサイドシル26と、前のフロントピラー27と、中央のセンタピラー28と、リヤピラー31と、上のサイドレール32とを備えている。
そして、これらサイドシル26、フロントピラー27、センタピラー28、リヤピラー31、サイドレール32の各々のサイドシルアウタパネル26a、フロントピラーアウタパネル27a、センタピラーアウタパネル28a、リヤピラーアウタパネル31a、サイドレールアウタ32aを一体に形成したものがサイドアウタパネル34である。
サイドレール32は、図2、図3、図5、図6に示すように、サイドレールインナ36と、サイドレールアウタ32aと、サイドレールスチフナ37と、内部のインナ補強部材38、アウタ補強部材41とを含んでいる。図6は、サイドレールアウタ32a、サイドレールスティフナ37、アウタ補強部材41を取り外して示している。
サイドレール32は、サイドレールインナ36の上フランジ部42および下フランジ部43に、サイドレールアウタ32aの上フランジ部45および下フランジ部46をサイドレールスチフナ37を介して接合した構造をしている。
サイドレールインナ36とサイドレールスチフナ37とで閉断面形状を形成して中空部47(図4)を形成している。この中空部47の内部にインナ補強部材38、アウタ補強部材41、前ステー51、後ステー52が配置されている。
左右の車体側部16,17は、車体12の車幅方向中央を基準にしてほぼ対称に配置されている。
車体上部構造13は、左の車体側部16にルーフ18の前の一端部54(図1)を接合し、右の車体側部17にルーフ18の前の他端部55(図1)を接合している。
図1に示すように、車体上部構造13は、車室15(図1)の左右の車体側部16、17の上部に車体前後方向へ延ばして設けられた左右のサイドレール32と、車幅方向に延びて左のサイドレール32に一方の端部57が接合され、右のサイドレール32に他方の端部58が接合され、車体前後方向に所定の幅を有するフロントレール22とを備える。
図5及び図6に示すように、フロントレール22の一端57と他端58の少なくとも一方に、厚板部61、62と厚板部61、62よりも板厚の薄い薄板部63、64、65とを車体前後方向に配置している。薄板部63、64、65は、左右のサイドレール32にそれぞれ結合している。
フロントレール22は、一端57及び他端58を有するフロントレールアッパ67と、一端57又は他端58に結合し、フロントレールアッパ67の板厚tu(図3、図9)よりも薄い薄板(板厚tb)に形成されているブラケット68と、を備える。
フロントレールアッパ67は、一端57又は他端58に、薄板部63、64、65に一致させて形成した第1切り欠き部71、第2切り欠き部72、第3切り欠き部73を備える。
ブラケット68は、一端57又は他端58に重なり第1切り欠き部71、第2切り欠き部72、第3切り欠き部73から露出する第1溶接点部142、第3溶接点部144、第5溶接点部146を備える。薄板部63、64、65は、第1溶接点部142、第3溶接点部144、第5溶接点部146により形成されている。厚板部61、62は、フロントレールアッパ67の第1切り欠き部71、第2切り欠き部72、第3切り欠き部73が形成されない残りの部位75、76と、ブラケット68とを重ねることで形成されている。
図3に示すように、サイドレール32は、サイドレールインナ36と、サイドレールインナ36に車室15の外方から(図2の矢印a1の方向)重なり結合して閉断面形状を形成しているサイドレールスチフナ37と、サイドレールインナ36とサイドレールスチフナ37との間に配置された前ステー51と、を備える。前ステー51は、厚板部61に車両11上下方向で重なるステー上部77を有する。
図2、図3、図4に示すように、フロントレール22は、フロントレールアッパ67の下方に配置され、フロントレールアッパ67の長さLuよりも車幅方向寸法が短く形成された長さLwのフロントレールロア78を備える。サイドレール32は、車幅の中央へ向け延出して車体前後方向へ延在し、一端57および他端58を載置している載置部81を有する。
サイドレール32から載置部81よりも車幅の中央へ向け延出して、フロントレールロア78の車幅方向外側のロア端部82のうちの前ロアフランジ部84および後ロアフランジ部85を前フランジ部87および後フランジ部88(図7参照)に載せることで、フロントレールロア78を支持しているエクステンション91を備える。
ブラケット68は、図5、図7、図8に示す通り、エクステンション91とフロントレールアッパ67との間に配置され、且つエクステンション91の前フランジ部87および後フランジ部88のうちの後フランジ部88とフロントレールアッパ67とに重なって、これらの3枚が溶接部93で結合されている。
厚板部61、62は、車体前後方向に配列されている。薄板部63、64、65は、車体前後方向に配列されている。
フロントレールアッパ67は、このフロントレールアッパ67の本体94の長手方向(車幅方向)に延びるアッパビード95を有する。ブラケット68は、アッパビード95に沿うように延びるとともに、アッパビード95に車体上下方向で重なるブラケットビード96を有する(図8)。アッパビード95は、厚板部61へ図6の矢印a3のように向かって延びている。
次に、実施例1による車体上部構造13の構成について説明する。図2に示すように、車体上部構造13は、サイドレール32のサイドレール完成前組立体98と、ルーフ18のフロントレール22とを備える。
サイドレール完成前組立体98は、ルーフパネル21やサイドレールアウタ32aを接合する前のものである。サイドレール完成前組立体98は、ルーフ18の範囲に対応してルーフ18を取り付ける上部サイドレールインナ組体101と、この上部サイドレールインナ組体101に連続して下方へ延びる下部サイドレールインナ組体102とからなる。
サイドレール完成前組立体98は、詳しくは、サイドレールインナ36と、前ステー51と、後ステー52と、インナ補強部材38と、アウタ補強部材41と、サイドレールスチフナ37と、サイドレールインナ36およびルーフ18に接合しているエクステンション91とからなる。ブラケット68は含まない。
サイドレール完成前組立体98は、図2〜図4に示す通り、サイドレールインナ36にサイドレールスチフナ37を接合している。より詳しくは、上フランジ部42、下フランジ部43に、スチフナ上フランジ部37a、スチフナ下フランジ部37bを重ねて接合している。
サイドレール完成前組立体98は、サイドレールインナ36にインナ補強部材38を重ねている。インナ補強部材38はサイドレールインナ36に接合されている。
アウタ補強部材41は、サイドレールスチフナ37に重ねられ、サイドレールスチフナ37に接合されている。加えて、図3に示すように、インナ補強部材38とアウタ補強部材41との間に前ステー51が配置されている。
前ステー51は、図2、図3、図6に示す通り、L字形で、サイドレールインナ36に載るステー上部77が形成され、ステー上部77に連ねてルーフバックアップ106がサイドレールスチフナ37の内面に接触するように形成されている。また、ルーフバックアップ106に連続して下方へ延ばした縦部107が形成され、縦部107に連ねてステー下部108が形成されている。
ステー下部108およびステー上部77は、サイドレールインナ36とサイドレールスチフナ37に挟まれて接合している。ステー上部77は、車幅方向に延びるフロントレール22の左右の端部57、58に、サイドレールスチフナ37を介して重なり接合している(図3)。
このフロントレール22の端部57、58は、サイドレール完成前組立体98のエクステンション91に載って結合している。
エクステンション91は、図2〜図4、図6〜図8に示す通り、サイドレールインナ36に一端(サイドレール接合部)111を接合し、他端(フロントレール接合部)112を開放している。
すなわち、エクステンション91は、サイドレール接合部111からフロントレール接合部112まで底部114が形成され、この底部114に連ねて前側部115、後側部116が形成され、前側部115に前フランジ部87、後側部88に後フランジ部88が形成されている。そして、前フランジ部87、後フランジ部88をフロントレールロア78の前ロアフランジ部84、後ロアフランジ部85に接合している。エクステンション91は、サイドレール完成前組立体98とフロントレール組立体22が交差する交差部(T字突き合わせ結合部)121(図3)に配置されている。
フロントレール組立体22は、フロントレールアッパ67と、フロントレールロア78と、ブラケット68と、レール補強部材123と、からなる。
フロントレールアッパ67は、左のサイドレールインナ36から右のサイドレールインナ36まで延び、一端57、他端58を接合している。フロントレールアッパ67は、図8に示すように、天部125、アッパ前壁126、アッパ後壁127で断面U字形状に形成されている。アッパ前壁126、アッパ後壁127にそれぞれ前アッパフランジ部117、後アッパフランジ部118を連続している。フロントレールアッパ67の一端57、他端58は、ほぼ対称であるため、一端57についてのみ説明する。
図7に示すように、フロントレールアッパ67の一端57には、天部125(図8)に連ねて側壁131が形成され、側壁131に連ねて一端フランジ132が形成されている。一端フランジ132は、前から順に、第1切り欠き部71、中央溶接点部133、第2切り欠き部72、後端溶接点部134、第3切り欠き部73を所定の間隔p1〜p4で形成されている。
すなわち、一端フランジ132はサイドレールインナ36に沿って延び、この延びている一端フランジ132の中央に中央溶接点部133を設け、中央溶接点部133の前方に第1切り欠き部71、後方に第2切り欠き部72を設けている。中央溶接点部133から後方へ所定の距離だけ離して後端溶接点部134を設け、後端溶接点部134の後方に第3切り欠き部73を設けている。
フロントレールアッパ67は、天部125にアッパビード95が形成されている。アッパビード95は、天部125の車体前後方向の中央をフロントレールロア78へ向け溝状に押し込んだ部位である。
アッパビード95の延長線136(図5)は、車両11の上方から見て(図5、図6の視点)、中央溶接点部133を通る、または中央溶接点部133に近接している。フロントレールアッパ67は、長さがLu(図2)であり、フロントレールロア78の長さLwより長い。フロントレールアッパ67は、一端57から他端58に亘って全体が板厚tu(図3)である。一端には、板厚tuより薄いブラケット68を取付けている。
図7に示すように、ブラケット68は、中央にブラケットビード96を形成し、ブラケットビード96に沿って別のブラケットビード138を形成し、連ねてブランク材残部141を形成している。
ブランク材残部141には、前から順に、露出する第1溶接点部142、第2溶接点部143、露出する第3溶接点部144、第4溶接点部145、露出する第5溶接点部146が所定の間隔で設定されている。すなわち、第1溶接点部142、第3溶接点部144、第5溶接点部146はフロントレール(フロントレール組立体22)の薄板部63、64、65に形成される。
図2に示すように、フロントレールロア78は、断面コ字形である。フロントレールロア78とフロントレールアッパ67の間にレール補強部材123が設けられている。レール補強部材123は、フロントレールロア78の一端、他端に配置され、前ロアフランジ部84、後ロアフランジ部85、前アッパフランジ部117(図7)、後アッパフランジ部118に挟まれ接合している。
次に、実施例1による車体上部構造13の組付け要領およびスポット溶接の要領を簡単に説明する。まず、図2に示すように、予めサイドレール完成前組立体98とフロントレール組立体22それぞれを完成させる。次に、サイドレール完成前組立体98に対してサイドアウタパネル34を接合することで、サイドレール32を完成させる。次に、サイドレール32に対してフロントレール組立体22を接合する。最後に、ルーフパネル21を載せる。
サイドレール完成前組立体98では、サイドレールインナ36にインナ補強部材38をスポット溶接の溶接部(図に示していない)で接合する。サイドレールスチフナ37にアウタ補強部材41をスポット溶接の溶接部(図に示していない)で接合する。
そして、サイドレールインナ36にサイドレールスチフナ37を接合する。その際、前ステー51、後ステー52を配置し、上フランジ部42とスチフナ上フランジ部37aで挟み、下フランジ部43とスチフナ下フランジ部37bで挟む。
その次に、上フランジ部42とスチフナ上フランジ部37aをスポット溶接の溶接部(図に示していない)で接合し、下フランジ部43とスチフナ下フランジ部37bをスポット溶接の溶接部(図に示していない)で接合する。その次に、エクステンション91の一端(サイドレール接合部)111(図7)をサイドレールインナ36に接合してサイドレール完成前組立体98が完成する。
一方、フロントレール22では、フロントレールアッパ67にブラケット68を取付ける(図3)。フロントレールアッパ67の天部125にブラケット68の中央接合部151(図5)、前接合部152をスポット溶接の溶接部153、154で結合する。
フロントレールアッパ67の一端フランジ132の中央溶接点部133、後端溶接点部134にブラケット68の第2溶接点部143(図3)、第4溶接点部145(図7)をスポット溶接の溶接部155(図5)で接合する。
ここで、厚板部61、62(図3)が、フロントレールアッパ67の中央溶接点部133にブラケット68の第2溶接点部143を重ね、フロントレールアッパ67の後端溶接点部134(図7)にブラケット68の第4溶接点部145を重ねた部位である。薄板部63、64、65はブラケット68の第1溶接点部142、第3溶接点部144、第5溶接点部146である。
このようにして、サイドレール完成前組立体98とフロントレール22とをそれぞれ完成させた後に、サイドレール完成前組立体98に対してサイドアウタパネル34を接合することで、サイドレール32を完成させる。
次に、完成したサイドレール32にフロントレール22を載せて接合する。このとき、フロントレールロア78のロア端部82が、エクステンション91の他端であるフロントレール接合部112の上に載置され、フロントレールアッパ67の一端57および他端58のそれぞれが、サイドレールインナ36の上フランジ部42およびサイドレールスチフナ37のスチフナ上フランジ部37aの上に載置される。
図4〜図6に示す通り、サイドレールインナ36の上フランジ部42、サイドレールスチフナ37のスチフナ上フランジ部37a、ブラケット68の第1溶接点部142、第3溶接点部144、第5溶接点部146を重ね、合計3枚を片側アクセススポット溶接の溶接部156で結合する。
フロントレールアッパ67の後アッパフランジ部118、ブラケット68の後接合部158、エクステンション91の後フランジ部88を重ね、合計3枚をスポット溶接の溶接部93で結合する。このように、ブラケット68、エクステンション91、フロントレールアッパ67を重ねて接合した部位を3枚結合部とする(図8)。
フロントレールアッパ67の前アッパフランジ部117、後アッパフランジ部118にエクステンション91の前フランジ部87、後フランジ部88をスポット溶接の溶接部161で結合する。
最後に、サイドレール32にルーフパネル21を載せ、接合する。ルーフパネル21のルーフフランジ部163(図3)、サイドレールアウタ32aのフランジ部45、サイドレールスチフナ37のスチフナ上フランジ部37aを重ね、合計3枚を前ステー51、後ステー52(図2)に向けて押し付けるように片側アクセススポット溶接し、その溶接部164で結合する。
次に、実施例1に係る車体上部構造13の作用を説明する。車体上部構造13では、フロントレール22の薄板部63、64、65(第1溶接点部142、第3溶接点部144、第5溶接点部146)によってサイドレール32に対する溶接を十分に行うことができる。
すなわち、薄板部63、64、65(第1溶接点部142、第3溶接点部144、第5溶接点部146)とサイドレール32(サイドレールインナ36とサイドレールスチフナ37を接合したもの)を重ねて、3枚を溶接(片側アクセススポット溶接)したときに、厚板部61、62に比べ、溶け込み不足が起きず、溶接した部位(T字突き合わせ結合部)121の溶接強度の低下を防止することができる。
さらに、薄板部64、65(第2溶接点部143(図7)、第5溶接点部146)に連続する前の厚板部61、62または、薄板部63、64(第1溶接点部142、第3溶接点部144)に連続する後の厚板部61、62が、サイドレール32(サイドレールインナ36とサイドレールスチフナ37を接合したもの)に重なるまで延びているので、サイドレール32とフロントレールとの交差部(T字突き合わせ結合部)121の剛性、強度を高めることができる。
厚板部61、62の近傍、つまりルーフパネル21を片側アクセススポット溶接する際の上方から下方へ向けたスポットガン166(図3)の押し付け力を厚板部61、62から前ステー51に矢印a4(図6も参照)、矢印a5のように伝達することができる。