JPWO2012093660A1 - ドリル孔あけ用エントリーシート - Google Patents

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Abstract

従来のドリル孔あけ用エントリーシートに比べて、潤滑効果が高く、孔壁粗さが小さく、かつ孔位置精度に優れたドリル孔あけ用エントリーシートを提供する。金属支持箔の少なくとも片面に、樹脂組成物からなる層を形成したドリル孔あけ用エントリーシートであって、前記樹脂組成物に特定のポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体とポリエチレンオキサイドを含む水溶性樹脂とを特定割合配合し、前記樹脂組成物層の厚さが0.02〜0.2mmの範囲であることを特徴とするドリル孔あけ用エントリーシート。

Description

本発明は、銅張積層板や多層板のドリル孔あけ加工の際に使用されるドリル孔あけ用エントリーシートに関するものである。
プリント配線板材料に使用される銅張積層板や多層板のドリル孔あけ加工方法としては、銅張積層板又は多層板を、1枚又は複数枚重ね、その最上部に当て板としてアルミ等の金属箔単体又は金属支持箔表面に樹脂組成物層を形成したシート(以下、本明細書ではこのシートを、通常「ドリル孔あけ用エントリーシート」という。)を配置して孔あけ加工を行う方法が一般的に採用されている。
近年、プリント配線板材料である銅張積層板や多層板に対する要求として、高密度化の進展、生産性向上とコスト低減、信頼性向上があり、孔位置精度の向上や孔壁粗さの低減等の高品質な孔あけ加工が求められている。これらの要求に対応すべく、例えば特許文献1では、ポリエチレングリコールなどの水溶性樹脂からなるシートを使用した孔あけ加工法が提案されている。また、特許文献2では、ポリエーテルエステルと潤滑剤成分を含む水溶性樹脂組成物を形成した孔あけ用潤滑剤シートが提案されている。さらに、特許文献3では、水溶性樹脂を水、IPAの混合溶媒に溶解したものを用いてアルミニウム箔に水溶性樹脂層を形成した孔あけ用エントリーシートの製造方法が提案されている。
しかしながら、半導体技術の進展に比して、プリント配線板技術のそれは遅く、半導体技術との乖離がある。そのため、プリント配線板に対する高密度化と信頼性向上の要求は、益々高度化している。さらに、グローバル化による競争と新興国需要の取り込みのため、生産性向上とコスト低減要求もまた、とどまるところを知らない。よって、このような要求に応える新たなドリル孔あけ用エントリーシートの開発が切望されている。
特開平4−92494号公報 特開平6−344297号公報 特開2007−324183号公報
本発明の目的は、従来のドリル孔あけ用エントリーシートに比べて、ドリル孔あけ加工時の潤滑効果が大きく、孔壁粗さが小さくなり、かつ孔位置精度が良いドリル孔あけ用エントリーシートを提供することにある。孔壁粗さを小さくするためには、従来以上に樹脂組成物層の潤滑性を高める必要がある。従来の技術において、孔壁粗さの低減と孔位置精度の向上を両立させることは非常に困難であった。
ドリルビットがエントリーシートの樹脂組成物層に接する点において、回転するドリルビット先端の切刃は、滑り動きながら樹脂組成物層表面に食いつく。潤滑性を単に高めるだけでは、ドリルビットが横滑りしやすくなるので求芯性を損ない、孔位置精度を悪化させてしまう。ここでいう求芯性とは、切削時の切削方向の直進性を指す。本発明者らは、上記の課題を解決するため種々の検討を行った結果、ある特定の構造、分子量のポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体を適正量、該樹脂組成物に配合することで、潤滑性を高め、孔あけ加工時の切り粉の排出性が向上し、孔壁粗さの低減、および、孔位置精度の向上を達成した。特に、該ブロック共重合体を適正量配合することで求芯性を維持したまま、潤滑性を向上させたことにより、孔位置精度を悪化させることなく、上記課題を解決できる事を見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)金属支持箔の少なくとも片面に、樹脂組成物からなる層が形成されたドリル孔あけ用エントリーシートであって、前記樹脂組成物が式(1)で示されるポリエチレングリコール(PEG)・ポリプロピレングリコール(PPG)・ブロック共重合体(A)3〜30重量部と、ポリエチレンオキサイド(PEO)を含む水溶性樹脂(B)70〜97重量部とからなり、前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計が100重量部であり、
前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が平均値で0.1〜1であり、数平均分子量が1,800〜4,000であり、樹脂組成物層の厚さが0.02〜0.2mmの範囲であることを特徴とするドリル孔あけ用エントリーシート。
Figure 2012093660
(式(1)中のl、m、nは繰り返し数であり、1以上の整数である。)
なお、上記の「PEG」は「ポリエチレングリコール」、「PPG」は「ポリプロピレングリコール」の略語であり、「PEG/PPG比率」は、ブロック共重合体を構成するポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの重量比率を示すものである。
(2)前記ポリエチレングリコール(PEG)・ポリプロピレングリコール(PPG)・ブロック共重合体(A)の含有量が5〜15重量部であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(3)前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.1以上0.3未満であり、数平均分子量が1,900以上2,200未満であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(4)前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.1以上0.3未満であり、数平均分子量が2,220以上2,400未満であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(5)前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.3以上0.7未満であり、数平均分子量が2,400以上2,800未満であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(6)前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.7以上1以下であり、数平均分子量が2,800以上3,330未満であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(7)前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.7以上1以下であり、数平均分子量が3,330以上4,000以下であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(8)前記水溶性樹脂(B)に含まれる前記ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が50,000以上1,000,000以下であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(9)前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計100重量部のうち、水溶性樹脂(B)に含まれるポリエチレンオキサイドの配合量が5〜70重量部であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(10)数平均分子量が20,000以下のポリエチレングリコールを前記水溶性樹脂(B)に含有することを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(11)前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計100重量部のうち、水溶性樹脂(B)に含まれるポリエチレングリコールの配合量が10〜90重量部であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(12)前記樹脂組成物が、前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)3〜30重量部、および、水溶性樹脂(B)として数平均分子量50,000以上のポリエチレンオキサイド5〜50重量部と数平均分子量20,000以下のポリエチレングリコール20〜92重量部を含むことを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(13)前記樹脂組成物の凝固点が40℃以上44℃以下であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(14)前記樹脂組成物を溶媒に溶解させた樹脂組成物溶液を金属支持箔の少なくとも片面に塗布する塗布工程、乾燥工程、及び冷却工程を経て、樹脂組成物層が形成されてなることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(15)前記樹脂組成物を溶液化する際に用いられる溶媒として、水と水よりも沸点の低い溶剤との混合溶媒を用いて樹脂組成物層が形成されてなることを特徴とする上記(14)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(16)あらかじめ金属支持箔の少なくとも片面に、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の層を形成し、その上に前記樹脂組成物からなる層が形成されてなることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(17)前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の層の厚みが0.001〜0.02mmであることを特徴とする上記(16)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(18)前記冷却工程において、120℃〜160℃から、5〜30秒で20℃〜40℃に冷却されてなることを特徴とする上記(14)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(19)前記金属支持箔の厚さが0.05〜0.5mmの範囲であることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(20)前記金属支持箔が純度95%以上のアルミニウムであることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(21)銅張積層板および多層板の加工に用いられることを特徴とする上記(1)に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
(22)金属支持箔の少なくとも片面に、樹脂組成物からなる層を形成してドリル孔あけ用エントリーシートを製造する方法であって、前記樹脂組成物が式(1)で示されるポリエチレングリコール(PEG)・ポリプロピレングリコール(PPG)・ブロック共重合体(A)3〜30重量部と、ポリエチレンオキサイド(PEO)を含む水溶性樹脂(B)70〜97重量部とからなり、前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計が100重量部であり、前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が平均値で0.1〜1であり、数平均分子量が1,800〜4,000であり、樹脂組成物層の厚さが0.02〜0.2mmの範囲であることを特徴とするドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
Figure 2012093660
(式(1)中のl、m、nは繰り返し数であり、1以上の整数である。)
(23)前記樹脂組成物を溶媒に溶解させた樹脂組成物溶液を金属支持箔の少なくとも片面に塗布する塗布工程、乾燥工程、及び冷却工程を具え、樹脂組成物層を形成することを特徴とする上記(22)に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
(24)前記樹脂組成物を溶液化する際に用いられる溶媒として、水と水よりも沸点の低い溶剤との混合溶媒を用いて樹脂組成物層を形成することを特徴とする上記(23)に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
(25)あらかじめ金属支持箔の少なくとも片面に、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の層を形成し、その上に前記樹脂組成物からなる層を形成することを特徴とする上記(22)に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
(26)前記冷却工程において、120℃〜160℃から、5〜30秒で20℃〜40℃に冷却することを特徴とする上記(23)に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
本発明のドリル孔あけ用エントリーシートを使用することにより、潤滑性に優れるので、孔あけ加工時における切り粉の排出性が向上し、孔壁粗さが小さく、さらに孔位置精度が向上する。その結果、高品質で、生産性に優れる孔あけ加工が可能となる。
本発明のドリル孔あけ用エントリーシートは、金属支持箔の少なくとも片面に、樹脂組成物からなる層(以下、「樹脂組成物層」という。)を形成したドリル孔あけ用エントリーシートである。
そして、本発明のドリル孔あけ用エントリーシートは、樹脂組成物がポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)を含有し、該ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体が特定の構造、分子量に最適化されたものである事を特徴とする。その結果、エントリーシートの潤滑性を高めて、切り粉の排出性を向上させた。さらに該ブロック共重合体を適正量配合することで求芯性を維持したまま、孔位置精度を損なうことなく潤滑性を向上させることができる。
該ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体を樹脂組成物に配合することで、孔壁粗さが低減し、また、孔位置精度が向上する。その作用効果の仕組みとしては、該共重合体の融点が低く、25℃で液体であるため、ドリル孔あけ加工初期、つまりドリルビットが低温の時でも樹脂組成物を低粘度に整え、切り粉をスムーズに排出させることが可能になる。その効果として孔壁粗さが小さくなる。さらに、ドリル孔あけ加工時の摩擦熱でドリルビットを取り囲むドリル孔あけ用エントリーシートの樹脂組成物が適度に溶融するため、ドリルビットが横滑りすることなく、孔位置精度が向上する。
これに対して、例えば、分子構造内にポリプロピレングリコールを含まない数平均分子量1,800〜4,000の直鎖状のポリエチレングリコールでは、該共重合体よりも融点が高く、樹脂組成物の粘度を低下させる効果が小さいので、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体を配合した場合と同様な潤滑効果を得られない。
ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体分子の特徴として、ポリプロピレングリコールを分子内に含むことで、分子間において立体障害が生じやすく、凝固しにくい、というものがある。また、該ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体は両端がポリエチレングリコールであるため、他の樹脂成分との相溶性が向上する。そのため、樹脂組成物層が均一に形成され、シート形成性の低下がなく、さらに、樹脂組成物層表面から該共重合体が染み出すといった不具合が抑制される。このポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体分子内のポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールの比率ならびに平均分子量を適宜選択することにより、潤滑性、シート形成性、相溶性の向上が可能になる。
前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)は、下記の式(1)で示される。すなわち、ポリプロピレングリコール鎖の両側にポリエチレングリコール鎖を持つブロックコポリマーである。コポリマー鎖の両側が水酸基であり、式(1)中のポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの重量比率(以下、PEG/PPG比率と表記する)は平均値で、0.1〜1であり、0.1〜0.9であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましく、0.3〜0.8であることがもっとも好ましい。PEG/PPG比率が平均値で0.1未満の場合、水溶性樹脂(B)との相溶性が悪く、均一な層形成が困難であり、製造上不具合が生じる。またPEG/PPG比率が平均値で1を超えた場合、潤滑効果が小さくなる。ここでいうPEG/PPG比率とは、式(1)に含まれるエチレングリコール構造単位とプロピレングリコール構造単位の重量比率であり、PEG/PPG比率=[44×(l+n)]/(58×m)の式で表される。
Figure 2012093660
(式(1)中のl、m、nは繰り返し数であり、1以上の整数である。)
前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)は、数平均分子量が1,800〜4,000であり、2,000〜4,000であることが好ましく、2,500〜4,000であることがもっとも好ましい。数平均分子量が1,800未満の場合、ドリルビットが横滑りしてしまいドリルビットの求芯性を損なうため、孔位置精度の悪化が生じる。また、数平均分子量が4,000以上の場合、潤滑効果が小さくなり、孔壁粗さが悪化する。
前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)は、樹脂組成物に対して、3重量部〜30重量部含有し、3重量部〜25重量部含有することが好ましく、5重量部〜20重量部含有することがより好ましく、5重量部〜15重量部含有することがもっとも好ましい。共重合体(A)の含有量が3重量部未満の場合、共重合体(A)の潤滑効果が発現しない。共重合体(A)の含有量が30重量部を超えた場合、樹脂組成物にベタツキが生じてしまい、シート形成が困難になり、製造上不具合が生じる。さらにはドリルビットの求芯性を損なうため、孔位置精度の悪化が生じる。
前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)の構造式である式(1)中のl、m、nは1以上の整数であり、PEG/PPG比率と数平均分子量の関係から、次のような範囲となる。(l+n)は5〜44の整数であり、mは16〜61の整数である。ただし、(l+n)が5≦(l+n)≦10の場合、mは−0.7×(l+n)+30.8<m<5.8×(l+n)+6.3の範囲の整数であり、(l+n)が10<(l+n)<20の場合、mは−0.8×(l+n)+31.8<m<−0.8×(l+n)+68.8の範囲の整数であり、(l+n)が20≦(l+n)≦44の場合、mは0.8×(l+n)+0.3<m<−0.7×(l+n)+67.6の範囲の整数である。(l+n)が5未満の場合、十分な潤滑効果が得られず、孔壁粗さ低減効果が小さく、該エントリーシートの表面状態が悪化し、孔位置精度の悪化が生じる。(l+n)が44を超えた場合、前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)は十分な潤滑効果を発揮できず、孔壁粗さ低減効果が小さく、ドリルビットへの樹脂組成物が巻き付き、孔位置精度の悪化が生じる。mが上記範囲よりも下回った場合、十分な潤滑効果が得られず、孔壁粗さ低減効果が小さくなり、該エントリーシートの表面状態が悪化し、孔位置精度の悪化が生じる。mが上記範囲を超えた場合、十分な潤滑効果が得られず、孔壁粗さ低減効果が小さく、ドリルビットへの樹脂組成物が巻き付き、孔位置精度の悪化が生じる。
前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)の分析方法は、次の通りである。まず、ドリル孔あけ用エントリーシートの樹脂組成物からポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体を分離・抽出する。該ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体のPEG/PPG比率の分析方法は、NMR測定を行い、ピーク面積比より算出する。この比率が共重合体のPEG/PPG比率である。さらに、該ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体の分子量測定方法は、次の通りである。まずJIS−K−1577−1に準じて、該共重合体の水酸基価を算出する。数平均分子量=56100÷水酸基価×2の式より得られた分子量が、ドリル孔あけ用エントリーシートの樹脂組成物に含まれるポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体の数平均分子量である。
ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)の作用のしくみは、およそ次の通りである。第1に、孔あけ加工時に潤滑性を発揮させるためには、孔あけ加工時のドリルビットの温度上昇により、ドリルビットを取り巻く樹脂組成物を必要十分に溶融させて粘度を低下させる必要がある。そして、固体である切り粉を包み込み、ドリルビットの溝を通り、スムーズに排出させる必要がある。該ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)を該樹脂組成物に配合することで、その凝固点を下げることができ、ドリル孔あけ加工初期の段階で樹脂組成物が低粘度になり、十分な潤滑効果が得られる。
第2に、水溶性樹脂(B)に相溶性のあるポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)を配合することが重要である。そして、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)が潤滑効果を発揮して、孔壁粗さの低減効果を発現するには、孔あけ加工をするシート表面の樹脂組成物層に均一にポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)を配合していることが必要である。また、水溶性樹脂(B)と相溶性の低いブロック共重合体を配合すると、孔位置精度などの特性が悪化する。該ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)は、式(1)に示すとおり、その両端がポリエチレングリコールであるから、水溶性樹脂(B)との相溶性に優れている。
ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)は、孔あけ加工する対象物である銅張積層板や多層板の仕様、孔あけ加工条件などにより、適宜選択することが、より好ましい。例えば、ドリルビットの径が小さくなり、銅張積層板の厚みが薄くなった場合は、孔壁粗さは荒れにくくなり、またドリルビットの径が大きくなり、銅張積層板の厚みが厚くなった場合は、孔壁粗さは荒れ易くなるため、孔あけ加工条件に応じて、該ブロック共重合体の数平均分子量、配合量、PEG/PPG比率を、本発明における範囲内で、適宜選択することが、より好ましい。
また、本発明における樹脂組成物は、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物であれば、水溶性樹脂、非水溶性樹脂のいずれを含んでもよいが、ポリエチレンオキサイドを含む水溶性樹脂(B)とからなる組成物であることが好ましい。
前記水溶性樹脂(B)は、ポリエチレンオキサイドを含有するものとする。ポリエチレンオキサイドの数平均分子量は、50,000以上1,000,000以下が好ましく、50,000以上200,000以下がより好ましく、50,000以上100,000以下が最も好ましい。数平均分子量1,000,000を超えるポリエチレンオキサイドは、流通していない。数平均分子量50,000未満のポリエチレンオキサイドでは、シート形成が困難になる場合がある。そして、前記水溶性樹脂(B)は、ポリエチレンオキサイド(数平均分子量50,000以上)を含有するものとする。好適には、ポリエチレンオキサイドを含む水溶性樹脂(B)を70重量部〜97重量部含有し、75重量部〜97重量部含有することが好ましく、80重量部〜95重量部含有することがより好ましく、85重量部〜95重量部含有することがもっとも好ましい。共重合体(A)の含有量が3重量部未満の場合、共重合体(A)の潤滑効果が発現しない。共重合体(A)の含有量が30重量部を超えた場合、樹脂組成物にベタツキが生じてしまい、シート形成が困難になり、製造上不具合が生じる。さらにはドリルビットの求芯性を損なうため、孔位置精度の悪化が生じる。
ポリエチレンオキサイドを含む水溶性樹脂(B)の含有量が70重量部未満であれば、シート形成が困難になり、製造上不具合が生じる。さらにはドリルビットの求芯性を損なうため、孔位置精度の悪化が生じる。また、ポリエチレンオキサイドを含む水溶性樹脂(B)の含有量が97重量部超であれば、樹脂組成物の溶融粘度が上昇し、ドリルビットへの巻き付きの増加という問題が生じ得る。
ポリエチレンオキサイド以外の成分としては、数平均分子量20,000以下の潤滑剤を配合してもよい。例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラメチレングリコールからなる群から選択された1種もしくは2種以上を含有させてもよい。また、本願の効果を損なわない限り、数平均分子量20,000以下の水溶性潤滑剤を配合してもよい。例えば、ポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどで例示されるポリオキシエチレンのモノエーテル類;ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート;ヘキサグリセリンモノステアレート、デカヘキサグリセリンモノステアレートなどで例示されるポリグリセリンモノステアレート類;ポリオキシエチレンプロピレン共重合体などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜配合して使用することができる。
前記水溶性樹脂(B)におけるポリエチレンオキサイドとポリエチレングリコールの配合重量比率(PEO/PEG)は、0.05以上25以下の比率が好ましい。さらに、0.05〜20の比率が好ましく、0.05〜10の比率がより好ましく、0.05〜7の比率がさらにより好ましく、0.1〜5の比率がもっとも好ましい。水溶性樹脂(B)におけるポリエチレンオキサイドとポリエチレングリコールの配合比率が0.05未満であれば、シート形成が困難になり、製造上不具合が生じる。さらにはドリルビットの求芯性を損なうため、孔位置精度の悪化が生じる。
さらに、本発明における樹脂組成物には、樹脂組成物層を均一に形成させるために、その他の物質を含んでも構わない。たとえば、樹脂組成物層の表面を均一にするための表面調整剤や造核剤などが挙げられる。さらに、樹脂組成物の溶液を塗布する際の、消泡剤や濡れ性向上剤、熱安定化剤、着色剤などを配合しても構わなく、公知のものであれば適宜選択可能である。
前記樹脂組成物層の厚みについては、ドリル孔あけ加工する際に使用するドリルビット径や、加工する銅張積層板又は多層板の構成などによって異なるが、通常0.02〜0.3mmの範囲であり、0.02〜0.2mmの範囲であることが好ましい。樹脂組成物層の厚みが、0.02mm未満では十分な潤滑効果が得られず、孔壁粗さの低減に効果が小さく、さらにはドリルビットへの負荷が大きくなりドリルビットの折損が生じるおそれがある。一方、樹脂組成物層の厚みが0.3mmを超えると、ドリルビットへの前記樹脂組成物の巻き付きが増加する場合がある。
前記樹脂組成物の凝固点について、水溶性樹脂(B)単体では凝固点が高く、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)の配合は、凝固点を下げる効果がある。樹脂組成物の凝固点を下げることにより、孔あけ加工時に容易に樹脂組成物が低粘度化する。このため、樹脂組成物が高い潤滑効果を発揮し、孔壁粗さ低減効果が大きくなる。しかし、樹脂組成物の凝固点が低すぎる場合、製造工程において樹脂組成物層を形成する際の層形成速度が低下したり、高温環境において樹脂組成物層が溶解したりするなどの不具合が生じる。したがって樹脂組成物の凝固点は40℃以上〜44℃以下が好ましく、41〜44℃がより好ましく、42〜44℃がさらに好ましい。樹脂組成物の凝固点が40℃未満の場合、上記の理由により、製造、保管の際に不具合を生じる。また樹脂組成物の凝固点が44℃を超えた場合、孔あけ加工時に樹脂組成物が低粘度化しにくく、十分な潤滑効果が得られず、孔壁粗さの低減効果が小さくなる。
樹脂組成物の凝固点とは、外部からの熱により溶解した樹脂組成物を、一定の速度で冷却させた時に、樹脂組成物が液体から固体に変わる温度である。この樹脂組成物の凝固点の測定は、DSC(示唆走査熱量計、DSC6220高感度DSC、SIINano technology Inc.製)を用いて行う。10mg程度のシート試料をアルミパン上に設置し、窒素雰囲気下で、30℃から150℃に3℃/分の速度で昇温させ、150℃で3分間保持する。さらに、150℃から30℃に−3℃/分の速度で降温させる。この時の、降温時の発熱ピーク最大値の時の温度が樹脂組成物の凝固点である。
また、前記樹脂組成物層を形成する方法としては、前記金属支持箔上に、直接樹脂組成物の熱溶解物や溶液をコーティング法等によって塗布、乾燥させる方法、又は、予め樹脂組成物のシートを作製しておき、前記金属支持箔と貼り合わせる方法などが例示される。その際、金属支持箔に予め樹脂皮膜が形成されていることで金属支持箔と樹脂組成物の層を積層一体化させることができる。
さらに、コーティング法などによって樹脂組成物層を形成する場合、樹脂組成物と相溶性のある溶媒にあらかじめ樹脂組成物を溶解させ、その溶液を直接金属支持箔上に、塗布、乾燥させる方法などが例示される。溶媒に水を使用する場合、用いられる溶液は、水と水よりも沸点の低い溶媒を含有する溶液であることが好ましい。水よりも沸点の低い溶媒の種類については、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類が挙げられ、メチルエチルケトンやアセトンなどの低沸点溶剤も用いることが可能である。その他の溶媒として、水やアルコール類に樹脂組成物との相溶性が高いテトラヒドロフランやアセトニトリルを一部混合させた溶媒などを用いることが可能である。
また、コーティング法などによって、樹脂組成物の溶液を直接金属支持箔上に、塗布、加熱乾燥させる方法を採る場合、前記エントリーシートの温度は、120℃〜160℃から、5〜30秒で20℃〜40℃に冷却することが好ましい。160℃を超えた高い乾燥温度は、工業的安定生産に支障のある場合があり、20℃よりも低い冷却温度は、後工程で結露を生じる場合があり、好ましくない。
また、樹脂組成物の溶液を作成せずに、樹脂組成物を熱により溶解し、樹脂組成物を低粘度化させた状態で押し出し成型などによりシート形成するホットメルト法などの場合、前記エントリーシートの温度は、120℃〜160℃から、5〜30秒で20℃〜40℃に冷却することが好ましい。160℃を超えた高い乾燥温度は、工業的安定生産に支障のある場合があり、20℃よりも低い冷却温度は、後工程で結露を生じる場合があり、好ましくない。
本発明のドリル孔あけ用エントリーシートに使用される金属支持箔については、前記樹脂組成物層との密着性が高く、ドリルビットによる衝撃に耐え得る金属材料であれば特に限定はされない。金属支持箔の金属種としては、例えばアルミニウムを用いることができ、金属支持箔の厚みは通常0.05〜0.5mmであり、好ましくは0.05〜0.3mmである。該アルミニウム箔の厚みが0.05mm未満ではドリル孔あけ加工時に積層板のバリが発生し易く、0.5mmを超えると、ドリル孔あけ加工時に発生する切り粉の排出が困難になるおそれがある。前記アルミニウム箔の材質としては、純度95%以上のアルミニウムが好ましく、例えば、JIS-H4160に規定される、5052、3004、3003、1N30、1N99、1050、1070、1085、8021などが例示される。金属支持箔に高純度のアルミニウム箔を使うことによって、ドリルビットによる衝撃の緩和や、ドリルビット先端部との食い付き性が向上し、前記樹脂組成物層によるドリルビットの潤滑効果と相俟って、加工孔の孔位置精度を高めることができる。
樹脂組成物層と金属箔との密着性の点から、予め、表面に厚さ0.001〜0.02mmの樹脂皮膜が形成されたアルミニウム箔を使用することが好ましい。該樹脂皮膜に用いられる樹脂については、前記水溶性樹脂組成物との密着性を向上できるものであれば特に限定はされず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いることもできる。例えば、熱可塑性樹脂としてはウレタン系重合体、酢酸ビニル系重合体、塩化ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、アクリル系重合体及びそれらの共重合体が例示される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、シアネート系樹脂などの樹脂が例示される。なお、本発明では、前記金属支持箔については、市販の金属箔に予め樹脂を公知の方法でコーティングしたものを用いることも可能である。その中でも好ましくは、上記に挙げた熱硬化性樹脂を用いることで、ドリルビット先端部との食い付き性、求芯性が向上し、孔位置精度を向上させることができる。該樹脂皮膜の厚みが0.001mm未満の場合、十分な密着性が得られず、ドリルビットへの樹脂巻き付きが発生し、これがシート表面上に落ち、孔位置精度が悪化する。また、樹脂被膜の厚みが0.02mmを超えた場合、該樹脂皮膜成分がドリルビットに巻き付き、これの場合も同様に、孔位置精度の悪化が懸念される。
本発明ドリル孔あけ用エントリーシートは、プリント配線板材料、例えば、銅張積層板又は多層板をドリル孔あけ加工する際に用いられる。具体的には、銅張積層板又は多層板を1枚又は複数枚を重ねたものの最上面に、前記金属支持箔側がプリント配線材料に接するように配置し、ドリル孔あけ用エントリーシートの水溶性樹脂組成物の面から、ドリル孔あけ加工を行うことができる。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲の記載に応じて種々の変更を加えることができる。
以下に実施例、比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本明細書では実施例、比較例の結果において、「ポリエチレングリコール」を「PEG」、「ポリプロピレングリコール」を「PPG」、「ポリエチレンオキサイド」を「PEO」と略記することがある。
<実施例1>
表1に示すとおり、水溶性樹脂(B)である数平均分子量50,000のポリエチレンオキサイド(アルトップMG−150、明成化学工業株式会社製)27重量部と数平均分子量 3,000のポリエチレングリコール(PEG4000S、三洋化成工業株式会社製)63重量部を、水140重量部とMeOH(メタノール)93重量部の混合溶媒に溶解させた。さらに、この水溶性樹脂溶液に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ブラウノンP−171、青木油脂工業株式会社製)10重量部を添加し、完全に溶解させた。さらに、前記樹脂組成物の合計100重量部に対して、添加剤(C)として蟻酸ナトリウム(三菱ガス化学製)0.25重量部を添加し、完全に溶解させた。この水溶性樹脂組成物の溶液を、片面に厚み0.01mmのエポキシ樹脂皮膜を形成したアルミニウム箔(使用アルミニウム箔:3004、(厚さ0.12mm)三菱アルミニウム株式会社製)にバーコーターを用いて、乾燥後の水溶性樹脂組成物層が0.05mmになるように塗布し、乾燥機にて120℃、3分間乾燥させたのち、室温まで冷却することで、ドリル孔あけ用エントリーシートを作製した。
<実施例2〜12>
表1に示したブロック共重合体および水溶性樹脂(B)、添加剤(C)を用いて、実施例1に準じて、ドリル孔あけ用エントリーシートを作製した。
<比較例1>
表1に示すように、水溶性樹脂(B)である数平均分子量 50,000のポリエチレンオキサイド(アルトップMG−150、明成化学工業株式会社製)27重量部と数平均分子量 3,000のポリエチレングリコール(PEG4000S、三洋化成工業株式会社製)63重量部を、水140重量部とMeOH(メタノール)93重量部の混合溶媒に溶解させた。さらに、この水溶性樹脂溶液に、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)(プロノン#104、日油株式会社製)10重量部を添加し、完全に溶解させた。さらに、前記樹脂組成物の合計100重量部に対して、添加剤(C)として蟻酸ナトリウム(三菱ガス化学製)0.25重量部を添加し、完全に溶解させた。この水溶性樹脂組成物の溶液を、実施例1に準じた作製方法で、ドリル孔あけ用エントリーシートを作製した。
<比較例2〜14>
表1に示したブロック共重合体および水溶性樹脂(B)、添加剤(C)を用いて、比較例1に準じた作製方法で、ドリル孔あけ用エントリーシートを作製した。
<評価方法>
実施例及び比較例で作製したドリル孔あけ用エントリーシートの各サンプルについて、以下の評価を行った。
(1)孔位置精度
厚さ 0.2mmの銅張積層板(CCL−HL832、銅箔両面 12μm、三菱ガス化学株式会社製)を5枚重ねた上に、作成したエントリーシートの樹脂組成物の層を上にして配置した。重ねた銅張積層板の下側には当て板(ベーク板)を配置してドリルビット:0.2mmφ(型番:C−CFU020S株式会社タンガロイ製)、回転数:200,000rpm、送り速度:13μm/rev.、上昇速度:25.4m/minの条件でドリルビット1本につき3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った。
重ねた銅張積層板の最下板の裏面における孔位置と、指定座標とのズレ量をホールアナライザー(型番:HA−1AM、日立ビアメカニクス株式会社製)を用いて測定し、ドリルビット1本分ごとに最大値、平均値及び標準偏差(σ)を計算し、「平均値+3σ」を算出した。ドリル孔あけ加工20回分の「平均値+3σ」から、その平均値を算出し、結果を表1に示す。孔位置精度における判定基準は以下の通りである。
平均値
◎:20μm未満
○:20μm以上、25μm未満
△:25μm以上、30μm未満
×:30μm以上またはシートにならず
最大値
◎:55μ未満
○:55μm以上、60μm未満
△:60μm以上、70μm未満
×:70μm以上またはシートにならず
(2)孔壁粗さ
厚さ 0.8mmの銅張積層板(CCL−HL830、銅箔両面 12μm、三菱ガス化学株式会社製)を4枚重ねた上に、作成したエントリーシートの樹脂組成物の層を上にして配置した。重ねた銅張積層板の下側には当て板(ベーク板)を配置してドリルビット:0.25mmφ(型番:NEU L026W ユニオンツール株式会社製)、回転数:160,000rpm、送り速度:14μm/rev.の条件でドリルビット1本につき3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った。ドリル孔あけ加工を行った銅張積層板の最上板を、デスミア処理、メッキ処理を施した後、加工孔の中央を通る面において断面研磨を行った。さらに、銅張積層板に含まれるガラスクロスの折り込み目に対して90°の方向で断面研磨を行った。その意図は、樹脂のえぐれ、すなわち孔壁粗さを適切に評価するためである。一方、ガラスクロスの折り込み目に対して45°の方向で断面研磨する方法もある。これは、おもにメッキ染み込み、すなわちマイクロクラックを観察する際に用いる。45℃の方向で断面研磨すると、孔壁粗さが小さな値になるので適切とはいえない。本発明では、上記の通り、ガラスクロスの折り込み目に対して90°の方向で断面研磨を行う。
各スルーホールの内側の壁を基準線とし、凹部の最大値を 金属顕微鏡(型番:EPIPHOT200 株式会社ニコン製)を用いて、100倍の視野で計測した。測定箇所は2,991hitから3,000hitの10個のスルーホールで、計20点の平均値と最大値を算出した。孔壁粗さにおける判定基準は以下の通りである。
◎:10μm未満
○:10μm以上、11μm未満
△:11μm以上、12μm未満
×:12μm以上またはシートにならず
本願における、ドリル孔あけ加工を行った銅張積層板のデスミア処理およびめっき処理条件は以下の通りである。デスミア処理については、65℃で5分間の膨潤工程(使用薬液:OPC−B103 奥野製薬工業株式会社製)の後、80℃で8分間のエッチング工程(使用薬液:PTH−1200NA 奥野製薬工業株式会社製)、その後45℃で5分間の中和工程(使用薬品:OPC−B303 奥野製薬工業株式会社製)を行った。めっき処理については、45℃で5分間の酸性脱脂(使用薬品:PB−242D 荏原ユージライト株式会社製)を行い、その後、無電解銅めっきにより、めっきされた銅の厚みが20μmになるように行った。
(3)総合判定
孔位置精度および孔壁粗さの判定を元にして総合判定を行う。各評価結果において一番低い判定を該孔あけ用エントリーシートの総合判定とした。
Figure 2012093660
ブロック共重合体(A)
A−1:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PEG−PPG−PEG型)(ブラウノンP−171、青木油脂工業株式会社製)
A−2:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)(プロノン#201、日油株式会社製)
A−3:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)(プロノン#202B、日油株式会社製)
A−4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PEG−PPG−PEG型)(ブラウノンP−174、青木油脂工業株式会社製)
A−5:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)(プロノン#204、日油株式会社製)
A−6:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)(プロノン#104、日油株式会社製)
A−7:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PEG−PPG−PEG型)(ブラウノンP−106、青木油脂工業株式会社製)
A−8:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)(プロノン#208、日油株式会社製)
A−9:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PPG−PEG−PPG型)(ブラウノンEP−0480、青木油脂工業株式会社製)
A−10:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PPG−PEG−PPG型)(ブラウノンEP−0670、青木油脂工業株式会社)
A−11:ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシエチレングリコール(ランダムタイプ)(ポリセリンDC−3000E、日油株式会社製)
A−12:ポリオキシエチレン−モノメチルエーテル(ユニオックスM−4000、日油株式会社製)
A−13:ポリプロピレングリコール(ジオール)(ユニオールD−4000、日油株式会社製)
水溶性樹脂(B)
B−1:数平均分子量 50,000のポリエチレンオキサイド(アルトップMG−150、明成化学工業株式会社製)
B−2:数平均分子量 50,000のポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(パオゲンPP-15、第一工業製薬株式会社製)
B−3:数平均分子量 3,000のポリエチレングリコール(PEG4000S、三洋化成工業株式会社製)
均一な樹脂層表面を得るために、添加剤(C)として、蟻酸ナトリウム(三菱ガス化学株式会社製)を水溶性樹脂(B)100重量部に対して、0.25重量部加えた。
ドリル孔あけ加工条件
(1)孔位置精度評価条件:ドリル径:0.2mmφ(型番:C−CFU020S 株式会社タンガロイ製)、加工基材:HL832 0.2mmt Cu12μ 5枚重ね(三菱ガス化学株式会社製)、回転数:200,000rpm、チップロード:13μm/rev.、上昇速度:25.4m/min。ドリルビット1本につき3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った。
(2)孔壁粗さ評価条件:ドリル径:0.25mmφ(型番:NEU L026W ユニオンツール株式会社製)、加工基材:HL830 0.8mmt Cu12μ 4枚重ね(三菱ガス化学株式会社製)、回転数:160,000rpm、チップロード:14μm/rev.、上昇速度:25.4m/min。ドリルビット1本につき3,000hitsで、20本のドリル孔あけ加工を行った。
表1の結果から、実施例1〜12のサンプルは、比較例1〜14のサンプルに比べて、孔壁粗さが小さく、かつ孔位置精度に優れていることがわかる。
本発明によれば、従来のドリル孔あけ用エントリーシートに比べて、孔壁粗さが小さく、かつ、孔位置精度に優れるドリル孔あけ用エントリーシートを提供できる。

Claims (26)

  1. 金属支持箔の少なくとも片面に、樹脂組成物からなる層が形成されたドリル孔あけ用エントリーシートであって、
    前記樹脂組成物が式(1)で示されるポリエチレングリコール(PEG)・ポリプロピレングリコール(PPG)・ブロック共重合体(A)3〜30重量部と、
    ポリエチレンオキサイド(PEO)を含む水溶性樹脂(B)70〜97重量部とからなり、
    前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計が100重量部であり、
    前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が平均値で0.1〜1であり、数平均分子量が1,800〜4,000であり、
    樹脂組成物層の厚さが0.02〜0.2mmの範囲であることを特徴とするドリル孔あけ用エントリーシート。
    Figure 2012093660
    (式(1)中のl、m、nは繰り返し数であり、1以上の整数である。)
  2. 前記ポリエチレングリコール(PEG)・ポリプロピレングリコール(PPG)・ブロック共重合体(A)の含有量が5〜15重量部であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  3. 前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.1以上0.3未満であり、数平均分子量が1,900以上2,200未満であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  4. 前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.1以上0.3未満であり、数平均分子量が2,220以上2,400未満であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  5. 前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.3以上0.7未満であり、数平均分子量が2,400以上2,800未満であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  6. 前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.7以上1以下であり、数平均分子量が2,800以上3,330未満であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  7. 前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が0.7以上1以下であり、数平均分子量が3,330以上4,000以下であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  8. 前記水溶性樹脂(B)に含まれる前記ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が50,000以上1,000,000以下であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  9. 前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計100重量部のうち、水溶性樹脂(B)に含まれるポリエチレンオキサイドの配合量が5〜70重量部であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  10. 数平均分子量が20,000以下のポリエチレングリコール(PEG)を前記水溶性樹脂(B)に含有することを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  11. 前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計100重量部のうち、水溶性樹脂(B)に含まれるポリエチレングリコールの配合量が10〜90重量部であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  12. 前記樹脂組成物は、前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)3〜30重量部、水溶性樹脂(B)として、数平均分子量50,000以上のポリエチレンオキサイド5〜50重量部と数平均分子量20,000以下のポリエチレングリコール20〜92重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  13. 前記樹脂組成物の凝固点が40℃以上44℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  14. 前記樹脂組成物を溶媒に溶解させた樹脂組成物溶液を金属支持箔の少なくとも片面に塗布する塗布工程、乾燥工程、及び冷却工程を経て、樹脂組成物層が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  15. 前記樹脂組成物を溶液化する際に用いられる溶媒として、水と水よりも沸点の低い溶剤との混合溶媒を用いて樹脂組成物層が形成されてなることを特徴とする請求項14に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  16. あらかじめ金属支持箔の少なくとも片面に、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の層を形成し、その上に前記樹脂組成物からなる層が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  17. 前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の層の厚みが0.001〜0.02mmであることを特徴とする請求項16に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  18. 前記冷却工程において、120℃〜160℃から、5〜30秒で20℃〜40℃に冷却されてなることを特徴とする請求項14に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  19. 前記金属支持箔の厚さが0.05〜0.5mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  20. 前記金属支持箔が純度95%以上のアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  21. 銅張積層板および多層板の加工に用いられることを特徴とする請求項1に記載のドリル孔あけ用エントリーシート。
  22. 金属支持箔の少なくとも片面に、樹脂組成物からなる層を形成してドリル孔あけ用エントリーシートを製造する方法であって、
    前記樹脂組成物が式(1)で示されるポリエチレングリコール(PEG)・ポリプロピレングリコール(PPG)・ブロック共重合体(A)3〜30重量部と、
    ポリエチレンオキサイド(PEO)を含む水溶性樹脂(B)70〜97重量部とからなり、
    前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)と前記水溶性樹脂(B)との合計が100重量部であり、
    前記ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロック共重合体(A)のPEG/PPG比率が平均値で0.1〜1であり、数平均分子量が1,800〜4,000であり、
    樹脂組成物層の厚さが0.02〜0.2mmの範囲であることを特徴とするドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
    Figure 2012093660
    (式(1)中のl、m、nは繰り返し数であり、1以上の整数である。)
  23. 前記樹脂組成物を溶媒に溶解させた樹脂組成物溶液を金属支持箔の少なくとも片面に塗布する塗布工程、乾燥工程、及び冷却工程を具え、樹脂組成物層を形成することを特徴とする請求項22に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
  24. 前記樹脂組成物を溶液化する際に用いられる溶媒として、水と水よりも沸点の低い溶剤との混合溶媒を用いて樹脂組成物層を形成することを特徴とする請求項23に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
  25. あらかじめ金属支持箔の少なくとも片面に、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の層を形成し、その上に前記樹脂組成物からなる層を形成することを特徴とする請求項22に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
  26. 前記冷却工程において、120℃〜160℃から、5〜30秒で20℃〜40℃に冷却することを特徴とする請求項23に記載のドリル孔あけ用エントリーシートの製造方法。
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