JPWO2011068206A1 - 光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドの製造法 - Google Patents

光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドの製造法 Download PDF

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Abstract

本発明は、DL−tert−ロイシンアミドに、これを立体選択的に加水分解する酵素、該酵素を有する微生物の菌体、該菌体の処理物、該酵素を担体に固定化した固定化酵素、該菌体を担体に固定化した固定化菌体、および該菌体処理物を担体に固定化した固定化菌体処理物からなる群より選択される生体触媒を作用させて加水分解することによって、D−若しくはL−tert−ロイシンまたはD−若しくはL−tert−ロイシンアミドを製造する方法であって、該加水分解により生成するアンモニアを、加水分解の反応溶液から分離しながら該加水分解を行うことを特徴とする方法に関する。本発明によれば、アミノ酸アミドを立体選択的に加水分解する酵素反応において、酵素または菌体もしくはその処理物あたり、かつ単位時間当たりの活性を高く維持することで、菌体やpH調整用の酸を増量することなく反応溶液中の原料アミノ酸アミド濃度を高めることができ、その結果として廃塩や廃菌体の発生を増加させること無く、光学活性tert−ロイシンまたは光学活性tert−ロイシンアミドの生産性を大幅に改善することができる。

Description

関連出願の参照
本願は、先行する日本国特許出願である特願2009−276930号(出願日:2009年12月4日)、特願2009−276931号(出願日:2009年12月4日)、特願2009−276932号(出願日:2009年12月4日)、特願2009−276933号(出願日:2009年12月4日)、特願2009−276934号(出願日:2009年12月4日)、および特願2009−276935号(出願日:2009年12月4日)に基づくものであって、それらの優先権の利益を主張するものであり、それらの開示内容全体は参照することによりここに組み込まれる。
本発明は、光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドの製造方法に関する。詳しくは、本発明は、光学活性tert−ロイシンまたは光学活性tert−ロイシンアミドを効率的に製造する方法に関する。
光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドは、医薬品原料や不斉配位子として重要な化合物である。光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドの製造法として、DL−アミノ酸アミドにD−またはL−体選択的なアミノ酸アミドを立体選択的に加水分解する酵素を作用させて光学活性アミノ酸またはその対掌体である光学活性アミノ酸アミドを製造する方法が知られている(例えば、特開昭63−87998号公報)。
一般的に、酵素反応を好適に進めるためには使用する酵素の至適条件となるpHや温度にて反応を行うことが重要であり、アミノ酸アミドを立体選択的に加水分解する酵素によるアミノ酸アミドの加水分解反応においても酵素の至適条件に調整する方法が知られている(例えば、特開2003−225094号公報)。しかし、このような至適条件で反応を開始しても、原料濃度が高濃度である場合には反応の進行とともに反応速度が低下し、目的とする反応を完結できない場合がある。このような事態を解決し、より高濃度の原料濃度で酵素反応を行えるように、一般的には原料の分割添加法(例えば、特開2005−117905号公報)や、生成物を逐次取り出す方法(例えば、特開平11−137286号公報)が報告されている。これらの方法でも解決しない場合、pH調整する酸の増量や、酵素の増量が必要となる。しかし、pH調整する酸の量を増やした場合、投入した酸を中和するために工程を増やす必要がある。さらに、中和に伴い廃棄物である大量の塩が副生する。また、酵素の生産には大量の廃菌体が生じるため、酵素の量を増やすことに比例して廃棄物となる廃菌体の量も増えるだけでなく、酵素反応後の菌体や塩の分離操作への負荷が増大するといった欠点を有しているため、これらの方法は工業的に好ましくない。
アミノ酸アミドの加水分解反応では、光学活性アミノ酸と副生成物であるアンモニアが生じる。ところで、例えば、特許4139773号やWO2003/020929パンフレットでは、該酵素の酵素反応の緩衝液にアンモニウム塩緩衝液を用いている。さらには、特許3647065号においては、アミノ酸アミドを加水分解する酵素を用いた酵素反応のpH調整のためにアンモニア水を添加している。したがって、アミノ酸アミドを加水分解する酵素の酵素反応において、アンモニア系緩衝液を用いることや、pH調整のためにアンモニアを添加することは広く一般的に行われているため、この酵素反応においてアンモニアもしくはアンモニウムイオンが与える影響は無視できるほど小さいか、影響が無いと認識されているといえる。
特開2006−180751号公報に、アミノ酸アミドを加水分解する酵素を用いた加水分解反応中に副生成物であるアンモニアを除去する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、加水分解反応により生成したアミノ酸が析出するのを防ぐためにアミノ酸の溶解度向上を目的として高温で行っている操作であるため、アンモニアに着目した生産性向上の手法ではない。さらに、アンモニアがアミド加水分解活性を有する微生物触媒にとって活性や安定性の点で好ましくない(特開2006−180751号公報)という記載はあるものの、それに着目した対策は示されていない。むしろ、アミノ酸アミドを加水分解する酵素反応において、アンモニア系緩衝液を用いることや、アンモニア水でのpH調整が一般的であるともいえる。
例えば、特開2006−340630号公報には、アミノ酸アミドを加水分解する酵素においてアンモニアの影響があるとの記載がある。該文献では、新たな酵素を探索することでアンモニアの影響を回避する対策としているが、新規酵素の探索は多大なる労力と時間を必要とし、しかも、必ずしもアンモニアの影響を受けにくい新規酵素が見出せるとも限らない。さらには、特定の基質に対してアンモニアの影響を回避できても、他の基質に対してアンモニアの影響がある場合もある。したがって、新規酵素の探索は有効な手法とは言えない。
アミノ酸アミドを立体選択的に加水分解する酵素による加水分解反応後に塩基の添加やストリッピングによりアンモニアまたはアンモニウム塩を除去する製造方法が知られている(例えば、特開2007−254439号公報)。しかしながら、この方法は有機溶媒に対して溶解度の低いアンモニウム塩の除去を目的としており、加水分解反応後にアンモニアを除去するものである。
他の酵素による加水分解反応においてアンモニアを除去する方法として、一般的なアンモニア除去の方法である蒸留除去や塩の添加を行うことができることが知られている(特表2004−521623号公報、特開昭61−285996号公報)。しかしながら、アミド加水分解活性を有する微生物触媒による反応を行いながらこれらのアンモニア除去を組み合わせた方法は知られていない。
本発明者らは、DL−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する酵素反応について検討を行ったところ、pH調整用の酸の増量や酵素の増量を行わずに原料アミノ酸アミド濃度を高めると、pHが酵素の至適範囲内にあるにもかかわらず、反応の進行とともに酵素が失活してついには反応が進行しなくなり、反応が完結しないという問題が生じた。また、固定化酵素のような固定化生体触媒を使用した場合であっても、同様に、固定化生体触媒の活性が著しく低下し、固定化生体触媒の繰り返し利用が極めて困難となる問題が生じた。そこで、原料の分割添加法、生成物であるアミノ酸を逐次取り出す方法およびこれらの方法を複合的に用いる方法を検討したが、問題の解決には至らなかった。
そこで、本発明者らは、DL−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する酵素の阻害要因を鋭意研究したところ、本発明で用いる酵素はアンモニアに対する阻害が見られないとの知見が他の基質(DL−2−メチルシステインアミド塩酸塩)で得られている(参考例3)にもかかわらず、驚くべきことにDL−tert−ロイシンアミドを基質とした場合においてはアンモニアおよびアンモニウムイオンが阻害要因となることを発見した。そこで、該酵素による加水分解反応中に連続的、または間欠的に反応溶液中からアンモニアを分離して溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和を低下させる事により、酵素の活性低下を大幅に低減でき、かつ、固定化生体触媒の場合にはその繰り返し利用を可能とすることを見出し、さらには活性低下に伴い反応率が低下する問題を解決することに成功した。このとき、反応溶液中からのアンモニアの分離には、減圧下での蒸発、陽イオン交換樹脂もしくはゼオライトによる吸着が有効であることもわかった。これらにより、反応溶液中の原料アミノ酸アミド濃度を高めることにより反応容器あたりの生産性を向上させることができた。その結果、廃棄物である廃塩、廃菌体を増大させることなく生産性を大幅に向上させることが可能となり、高品質かつ安価に光学活性tert−ロイシンまたは光学活性tert−ロイシンアミドを製造できることを見出した。
本発明はこれら知見に基づくものである。
よって、本発明の目的は、DL−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する酵素反応において、酵素または菌体もしくはその処理物あたり、かつ単位時間当たりの活性を高く維持することで、菌体やpH調整用の酸を増量することなく反応溶液中の原料DL−tert−ロイシンアミド濃度を高めることができ、その結果として廃塩や廃菌体の発生を増加させること無く生産性を大幅に改善した光学活性tert−ロイシンまたは光学活性tert−ロイシンアミドの製造法を提供する事にある。
本発明は、DL−tert−ロイシンアミドに、これを立体選択的に加水分解する酵素、該酵素を有する微生物の菌体、該菌体の処理物、該酵素を担体に固定化した固定化酵素、該菌体を担体に固定化した固定化菌体、および該菌体処理物を担体に固定化した固定化菌体処理物からなる群より選択される生体触媒を作用させて加水分解することによって、D−若しくはL−tert−ロイシンまたはD−若しくはL−tert−ロイシンアミドを製造する方法であって、
該加水分解により生成するアンモニアを、加水分解の反応溶液から分離しながら該加水分解を行うことを特徴とする方法に関する。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法において、アンモニアの反応溶液からの分離を、
前記反応溶液を減圧下に置き、アンモニアを蒸発させるか、または
陽イオン交換樹脂若しくはゼオライトへ、反応溶液中のアンモニアを吸着させる
ことにより行う。
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の方法において、アンモニアの反応溶液からの分離を、反応溶液を減圧下に置き、アンモニアを蒸発させることにより行う。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明の方法において、アンモニアの反応溶液からの分離を、陽イオン交換樹脂へ、反応溶液中のアンモニアを吸着させることにより行う。
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、本発明の方法において、アンモニアの反応溶液からの分離を、ゼオライトへ、反応溶液中のアンモニアを吸着させることにより行う。
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の方法において、酵素は、キサントバクター フラバス由来の酵素である。
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の方法において、微生物は、キサントバクター フラバス由来の酵素であって、DL−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する酵素の遺伝子を導入された微生物である。
本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明の方法において、微生物は、pMCA1/JM109(FERM BP−10334)である。
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明の方法において、反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、7000ppm以下である。
なお本発明の別の態様によれば、DL−アミノ酸アミドに、これを立体選択的に加水分解する酵素または前記酵素を有する微生物もしくは微生物処理物を作用させて加水分解し、D−若しくはL−アミノ酸またはD−若しくはL−アミノ酸アミドを製造する方法であって、前記加水分解により生成するアンモニアを反応溶液から分離しながら前記加水分解を行うことを特徴とするD−若しくはL−アミノ酸またはD−若しくはL−アミノ酸アミドの製造方法が提供される。
本発明によれば、DL−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する酵素反応において、廃塩、廃菌体を増加させることなく、原料濃度を向上させることが可能となるため、後工程の濃縮操作等の負荷を低減し、かつ反応容器当たりの生産性を大幅に改善した、D−若しくはL−tert−ロイシンまたはD−若しくはL−tert−ロイシンアミド、特にL−tert−ロイシンまたはD−tert−ロイシンアミドの製造が可能となる。
実施例Aの結果を示す。 実施例A−3および実施例D−2で使用した装置の概略図を示す。 実施例Bの結果を示す。 実施例Cの結果を示す。 実施例Dの結果を示す。 実施例Eの結果を示す。 実施例Fの結果を示す。
発明の具体的説明
以下、実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明の範囲は、実施形態および実施例によって限定されるものではない。
本発明において、「DL−tert−ロイシンアミド」とは、D体またはL体のtert−ロイシンアミドの混合物、若しくは、ラセミ体を意味する。
本発明において、DL−tert−ロイシンアミドの立体選択的加水分解には、L−またはD−tert−ロイシンに対応するL−またはD−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する活性を有する酵素、該酵素を有する微生物の菌体、該菌体の処理物、該酵素を担体に固定化した固定化酵素、該菌体を担体に固定化した固定化菌体、および該菌体処理物を担体に固定化した固定化菌体処理物からなる群より選択される生体触媒を使用する。
DL−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する酵素を有する微生物としては、例えば、キサントバクター属、プロタミノバクター属、ミコバクテリウム属およびミコプラナ属等に属する微生物が挙げられる。具体的には、キサントバクター フラバス(Xanthobacter flavus)、プロタミノバクター アルボフラバス(Protaminobacter alboflavus)、ミコバクテリウム メタノリカ(Mycobacterium methanolica)、ミコバクテリウム メタノリカ(Mycobacterium methanolica)、ミコプラナ ラモサ(Mycoplana ramosa)、ミコプラナ ディモルファ(Mycoplana dimorpha)、バリオボラックス パラドクサス(Variovorax paradoxus)などの種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに具体的な例を挙げると、キサントバクター フラバス(Xanthobacter flavus)NCIB 10071T、プロタミノバクター アルボフラバス(Protaminobacter alboflavus)ATCC8458、ミコバクテリウム メタノリカ(Mycobacterium methanolica)BT−84(FERM P8823)、ミコバクテリウム メタノリカ(Mycobacterium methanolica)P−23(FERM P8825)、ミコプラナ ラモサ(Mycoplana ramosa)NCIB9440T、ミコプラナ ディモルファ(Mycoplana dimorpha)ATCC4279T、バリオボラックス パラドクサス(Variovorax paradoxus)DSM14468が挙げられる。
また、これら微生物から人工的変異手段によって誘導される変異株、あるいは細胞融合もしくは遺伝子組換え法等の遺伝学的手法により誘導される組換え株、例えば、キサントバクター フラバス由来のアミノ酸アミドを立体選択的に加水分解する酵素の遺伝子が導入され該酵素を有するpMCA1/JM109(FERM BP−10334)等の株であっても上記酵素を有するものであれば、本発明において使用できる。また、菌体処理物とは、例えば菌体濃縮液、乾燥菌体、菌体破砕物、菌体抽出物、もしくは精製酵素が挙げられる。さらに、例えば無細胞タンパク質合成系など、微生物を用いない方法で得られた酵素を用いることもできる。
酵素または該酵素を有する微生物の菌体もしくは菌体処理物を担体に固定化させた固定化生体触媒(すなわち、固定化酵素、固定化菌体、および固定化菌体処理物)の調製は、当業者に周知の方法である架橋法、共有結合法、物理的吸着法、包括法などで行うことができる。固定化の際に使用される担体としては、固定化法に応じて慣用のものを適宜使用することができるが、具体例を挙げれば、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、寒天、κ − カラギーナン等の天然高分子を用いた固定化、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂、ウレタンポリマー等の合成高分子を用いた固定化、マイクロカプセルなどが挙げられる。
原料であり酵素反応の基質であるDL−tert−ロイシンアミドは、一般式(1)に示すものである。式中のRは、tert−ブチル基である。
Figure 2011068206
上記のDL−tert−ロイシンアミドを水に溶解させ、そこに、前記酵素、該酵素を有する微生物の菌体、その菌体の処理物、固定化酵素、固定化菌体、又は固定化菌体処理物と、必要に応じて他の成分とを加えて反応溶液を調製し、立体選択的加水分解を行うと同時に生成するアンモニアを分離することにより、一般式(2)で示される光学活性tert−ロイシンまたはこれと対掌体である一般式(3)の光学活性tert−ロイシンアミドを製造する。なお、一般式(2)および(3)におけるRは一般式(1)におけるRと同一である。
Figure 2011068206
Figure 2011068206
立体選択的加水分解前の反応溶液における基質であるDL−tert−ロイシンアミドの濃度は、0.01wt%〜DL−tert−ロイシンアミドの飽和濃度が好ましく、より好適には10〜30wt%である。DL−tert−ロイシンアミド濃度を上記の範囲とすることで、基質濃度が低すぎることが無いために反応液体積あたりの生産性を高くすることができ、また、高濃度の基質による酵素の失活を招くことがない。
DL−アミノ酸アミドの立体選択的加水分解に適したpHは、使用する酵素により異なり一概に規定することはできないが、例えば酵素としてpMCA1/JM109(FERM BP−10334)を用いた場合にはpH6〜10において好適に進行する。DL−tert−ロイシンアミドの水溶液のpHは10.5程度となるため、立体選択的加水分解を至適pH条件で実施するためには酸を添加してpHを調整する必要がある。
pH調整のために添加する酸としては、鉱酸でも有機酸でもよく特に制限されないが、中でも塩酸、酢酸が好適である。添加する酸の量は、上記pHの範囲に収まるように決めればよく、例えば塩酸であれば、DL−tert−ロイシンアミドに対して0.005〜0.5モル倍量、好ましくは0.05〜0.4モル倍量であり、酢酸であれば、DL−tert−ロイシンアミドに対して0.005〜1モル倍量、好ましくは0.05〜0.7モル倍量である。
酵素によっては金属イオンの添加により立体選択的加水分解速度が向上するものもあり、そのような場合には酵素の特性に合わせてCa2+、Co2+、Cu2+、Fe3+、Mg2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+などの各種金属イオンを反応溶液中に、例えば1〜100ppm添加してもよい。
アミノ酸アミドを立体選択的加水分解する酵素によるDL−tert−ロイシンアミドの立体選択的加水分解反応において、生成するL−又はD−tert−ロイシンと等mol量のアンモニアが発生する。このアンモニアを加水分解反応中に連続的もしくは断続的に反応溶液から分離する。本発明で使用する酵素は、基質としてDL−tert−ロイシンアミドを用いた場合においてはアンモニアにより阻害されるが、加水分解中にアンモニアを反応溶液から分離することにより、アンモニアの増加による酵素の失活を防ぐことにより反応速度の低下を抑え、ひいては原料濃度を増加することができる。
酵素がアンモニアおよびアンモニウムイオンにより失活する条件は、アンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和のみによるものではなく、酵素、温度により異なる。そのため、反応溶液中のアンモニアの濃度は一概に規定することができない。DL−tert−ロイシンアミドの立体選択的加水分解反応において、例えば、酵素として菌体pMCA1/JM109(FERM BP−10334)を用い、40℃の水溶液中で反応を行う場合には、反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は7000ppm以下、好ましくは6000ppm以下となるようにアンモニア分離の条件を設定する。
反応終了後に限外ろ過など当業者に周知の方法で反応溶液より酵素または該酵素を有する微生物もしくはその処理物を回収して再利用する場合には、反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は好ましくは3500ppm以下、より好ましくは2500ppm以下となるようにアンモニア分離の条件を設定する。
アミノ酸アミドを立体選択的加水分解する酵素もしくは該酵素を含有する菌体処理物を固定化生体触媒として用いる場合、アンモニアおよびアンモニウムイオンにより酵素が失活する条件は、酵素、固定化法、温度などの条件により異なる。例えば、菌体pMCA1/JM109(FERM BP−10334)を固定化生体触媒として立体選択的加水分解を行い、該固定化生体触媒の再利用を行う場合には、反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は3500ppm以下、好ましくは2500ppm以下となるようにアンモニア分離の条件を設定する。
アンモニアの分離を行う箇所は、加水分解反応を行っている反応釜でも、反応釜とは別に設けたアンモニア分離装置でもよい。
反応溶液からアンモニアを分離する方法としては、反応溶液を減圧下に置く減圧法、陽イオン交換樹脂に吸着させる方法、ゼオライトに吸着させる方法を用いることができる。
反応液からアンモニアを分離する他の方法として、反応液に通気する方法、反応液を加熱する方法が挙げられる。しかし、反応液に通気する方法では分離可能なアンモニア量が少なく反応が完結しないことがあり望ましくない。また、反応液を加熱する方法では、十分な量のアンモニア量を分離するための温度では酵素が失活することがあり必ずしも望ましくない。
減圧法
アンモニアを反応溶液から分離するために、反応溶液を減圧下に置き、アンモニアを蒸発させることができる。
減圧法による反応では、酵素として菌体pMCA1/JM109(FERM BP−10334)を用い、反応溶液の温度を40℃とするならば、DL−tert−ロイシンアミドの加水分解反応中の圧力を反応溶液が沸騰する圧力である40mmHg以上で、該圧力より50mmHg高い圧力である90mmHg以下とすることが好適である。
アンモニアの分離に伴う水の蒸発により反応溶液が減少する場合、外部から水を加えてもよい。
陽イオン交換樹脂による吸着法
アンモニアを反応溶液から分離するために、陽イオン交換樹脂へ反応溶液中のアンモニアを吸着させることができる。
陽イオン交換樹脂を用いる場合、反応液中に共存させる陽イオン交換樹脂は、加水分解反応中に生成するアンモニアを吸着する能力があれば強酸性イオン交換樹脂や弱酸性イオン交換樹脂のいずれであってもよい。またその選定に当たってはその種類、形態等によって制限されることは無く、吸着能、イオン交換容量、強度、価格等を考慮して適宜決定されれば良く、例えばDOWEX 50WX8(ダウ ケミカル社製)やDIAION SK110(三菱化学株式会社製)、アンバーライトIR120B(ローム アンド ハース社製)等が好適に使用できる。
反応液中に共存させる陽イオン交換樹脂の量は、陽イオン交換樹脂のイオン交換容量、吸着能によって異なるが、加水分解反応中に生成するアンモニアを吸着するのに充分な量であればよい。反応液中に共存させる陽イオン交換樹脂の量が、加水分解反応中に生成するアンモニアを吸着するのに充分な量に満たない場合、陽イオン交換樹脂を共存させる効果が充分に期待されず、反応の進行とともに反応速度が低下し、目的とする反応が完結しない場合がある。また、反応液中に共存させる陽イオン交換樹脂の量が極端に多い場合は、アミノ酸、アミノ酸アミド、菌体や酵素が陽イオン交換樹脂に吸着し、回収率や反応進行率が低下する場合がある。したがって、好適な陽イオン交換樹脂の量は、陽イオン交換樹脂のイオン交換容量が発生するアンモニアの0.05〜2倍量となるように加えることが適当である。
使用する陽イオン交換樹脂は、活性型であればよく、使用後の陽イオン交換樹脂を活性化して再使用することもできる。
陽イオン交換樹脂を反応液中に共存させる方法は、陽イオン交換樹脂と反応液が実質上接していればよく、例えば、攪拌式反応槽内の反応液に陽イオン交換樹脂を直接添加して懸濁状態で使用する方法や、陽イオン交換樹脂をろ布や膜あるいは籠状の容器に充填して反応槽内に仕込む方法や、陽イオン交換樹脂を充填した塔に反応液を流通または循環させる方法等、任意の方法を用いることができる。攪拌式反応槽内の反応液に陽イオン交換樹脂を直接添加して懸濁状態で使用する方法は、簡便ではあるが、攪拌による樹脂の破損や、反応後の樹脂の回収を考慮すると、陽イオン交換樹脂をろ布や膜あるいは籠状の容器に充填して反応槽内に仕込む方法や、陽イオン交換樹脂を充填した塔に反応液を流通または循環させる方法が好適である。また、膜状あるいは繊維状に成形された陽イオン交換樹脂を使用することも可能である。
ゼオライトによる吸着法
アンモニアを反応溶液から分離するために、ゼオライトへ反応溶液中のアンモニアを吸着させることができる。
ゼオライトを用いる場合、反応液中に共存させるゼオライトは、加水分解反応中に生成するアンモニアを吸着する能力があればよく、その種類によって制限されることなく使用可能であり、例えば、モルデナイト、Y型ゼオライト、シャバサイトなどを使用することができ、吸着能、イオン交換容量、単位重量あたり表面積、強度および価格等を総合的に判断して用いることができる。
反応液中に共存させるゼオライトの形態は、粉末状よりは強度が強く粉化しにくい成型体が好適に使用される。粉末状ゼオライトは、アンモニアの他に酵素をも吸着し、反応を阻害する。強度の弱い成型体は、一部粉末状となり、反応を阻害する傾向がある。粉末状ゼオライトへの酵素の吸着と反応阻害を回避するためには、成型体をろ布や膜あるいは籠状の容器に充填して反応槽内に仕込む方法や、成型体を充填した塔に反応液を流通または循環させる方法が好適である。
反応液中に共存させるゼオライトの量は、ゼオライトの種類、吸着能、イオン交換容量、単位重量あたり表面積によって異なるが、加水分解反応中に生成するアンモニアを吸着するのに充分な量であればよい。反応液中に共存させるゼオライトの量が、加水分解反応中に生成するアンモニアを吸着するのに充分な量に満たない場合、ゼオライトを共存させる効果が充分に発揮されず、反応の進行とともに反応速度が低下し、目的とする反応が完結しない場合がある。また、反応液中に共存させるゼオライトの量が極端に多い場合は、アミノ酸、アミノ酸アミド、菌体や酵素がゼオライトに吸着し、回収率や反応進行率が低下する場合がある。したがって、好適なゼオライトの量は、ゼオライトのイオン交換容量が発生するアンモニアの0.05〜2倍量となるように加えることが適当である。
使用するゼオライトは、プロトン型などアンモニアを吸着できる状態であればよく、使用後のゼオライトを再びアンモニアを吸着できるよう処理して再使用することもできる。
ゼオライトを反応液中に共存させる方法は、ゼオライトと反応液が実質上接していればよく、例えば、攪拌式反応槽内の反応液にゼオライトを直接添加して懸濁状態で使用する方法や、ゼオライトをろ布や膜あるいは籠状の容器に充填して反応槽内に仕込む方法や、ゼオライトを充填した塔に反応液を流通または循環させる方法等、任意の方法を採ることができる。攪拌式反応槽内の反応液にゼオライトを直接添加して懸濁状態で使用する方法は、簡便ではあるが、攪拌による成型体の粉化や、反応後のゼオライトの回収、またゼオライトへの菌体の吸着等があり、ゼオライトをろ布や膜あるいは籠状の容器に充填して反応槽内に仕込む方法が最も好適な効果を得ることができる。
酵素反応後、当業者に周知の方法で反応溶液より光学活性tert−ロイシンまたは光学活性tert−ロイシンアミドを得ることができる。例えば、酵素反応後の反応溶液から菌体やタンパク質、核酸を活性炭に吸着除去し、光学活性tert−ロイシンと対掌体である光学活性tert−ロイシンアミドの溶解性が、例えば2−メチル−1−プロパノールに置換することで光学活性tert−ロイシンを析出でき、該溶液を濾過することで結晶として光学活性tert−ロイシンを取得できる。さらに、ここで得られた濾液を濃縮乾固させることで、光学活性tert−ロイシンアミドを取得できる。
以下に実施例をあげて本願発明を詳細に説明するが、本願発明はこれによって限定されるものではない。
実験方法および測定法:
反応の進行および光学純度の測定は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、アンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和はキャピラリー電気泳動で測定した。分析条件は以下のとおりであった。
〔HPLC分析条件1〕
カラム:Lichrosorb RP−18(4.6φ×250mm)
溶離液:過塩素酸50mM水溶液
流速:0.5ml/min
検出:RI
〔HPLC分析条件2〕
カラム:Sumichiral OA−5000(4.6φ×50mm)
溶離液:硫酸銅10mM水溶液
流速:0.5ml/min
検出:UV254nm
〔HPLC分析条件3〕
カラム:LiChrosorb100RP−18(4.6φ×250mm)
カラム温度:40℃
溶離液:過塩素酸50mM水溶液
流速:0.5mL/min
検出:RI
〔アンモニア分析条件〕
装置:Agilent社製 キャピラリー電気泳動システム 3DCE
キャピラリー長:40cm
参考例1: 菌体の調製
下記の実施例および比較例で用いるL−tert−ロイシンアミド立体選択的加水分解酵素を有する形質転換株pMCA1/JM109(FERM BP−10334)は、Turbo培地(Athena Environmental Sciences, Inc.製、フナコシ株式会社より購入)を用い、37℃で培養し、遠心分離により菌体濃縮液(乾燥菌体の重量として6.7wt%を含有)を得た。
なお、大腸菌の形質転換株pMCA1/JM109は、2004年(平成16年)5月21日(原寄託日)付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6)に寄託されたものであり、受託番号はFERM BP−10334である。
参考例2: 固定化生体触媒の調製
固定化生体触媒の調製方法は次の通りであった。PEG−1000ジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)27.2g、N, N’−メチレンビスアクリルアミド0.9g、テトラメチルエチレンジアミン1.0g、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.03g、参考例1で得られた菌体濃縮液52.2g、純水18.7gを均一になるまで混合し、常温にて静置させることにより固化させた。固化後、約3mm角に切断して、下記実施例において、固定化生体触媒として用いた。
参考例3: 形質転換体pMCA1/JM109の他の基質に対するアンモニアの影響例
500mLのフラスコにDL−2−メチルシステインアミド塩酸塩16.3g(0.096mol)を入れ、水141.3gを加えて溶解した。28%アンモニア水3.2gを添加して攪拌した。このときのアンモニア濃度は5500ppmとなる。さらに、塩化マンガン四水和物2.97mgを添加し、参考例1で調製した形質転換体pMCA1/JM109の菌体濃縮液0.09gを添加し、30℃、窒素気流下において撹拌して立体選択的加水分解を行った。HPLC条件3を用いて反応進行率を調べた結果、反応時間24時間において、L−2−メチルシステインアミドのうち95%以上がL−2−メチルシステインに変換された。このときのアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は10000ppmであった。
実施例A: 減圧/酵素反応
実施例A−1: 減圧(40mmHg)/酵素反応
200mLのフラスコに20.0g(0.15mol)のDL−tert−ロイシンアミドを入れ、水78.4gを加えて溶解した。酢酸1.86g(0.031mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物6.88mgを添加し、形質転換株pMCA1/JM109の菌体濃縮液0.60gを添加し、40℃、40mmHgにおいて撹拌して立体選択的加水分解を行った。
HPLC分析条件1を用いた反応進行率の経時変化を図1に示す。図1の反応進行率とは、原料DL−tert−ロイシンアミド中のL−tert−ロイシンアミドのうち何%がL−tert−ロイシンに変換されたかを示す。反応時間27時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち99.5%以上がL−tert−ロイシンに変換された。また、反応時間27時間においてHPLC分析条件2を用いて測定した結果、L−tert−ロイシンの光学純度は100%e.e.であった。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後5時間目における5000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
反応溶液に活性炭および濾過助剤を加えて濾過することにより菌体を除去した濾液を取得した。濾液に2−メチル−1−プロパノール65gを加え、20kPaにて含水濃度が1%に達するまで共沸脱水を行い、溶媒置換操作を行った。共沸脱水は沸点60℃で進行し、共沸脱水終了時には沸点は76℃であった。溶媒置換により析出したL−tert−ロイシンを吸引濾過で濾取し、70℃に加温した2−メチル−1−プロパノール30gで洗浄し、さらに25℃のアセトン90gで洗浄した後、常温で真空乾燥を行い、白色粉末を9.8g取得した。このL−tert−ロイシンの化学純度をHPLC条件1で分析したところ、化学純度は99.8%であった。光学純度をHPLC条件2で分析したところ、光学純度は99.5%以上であった。
実施例A−2: 減圧(65mmHg)/酵素反応
立体選択的加水分解時に65mmHgで行う以外は実施例A−1と同様に反応を行った。反応の進行結果を図1に示す。反応時間68時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち99.5%以上がL−tert−ロイシンに変換された。また、L−tert−ロイシンの光学純度は100%e.e.であった。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後7時間目における6000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
実施例A−3: 減圧(40mmHg)/酵素反応(アンモニア分離装置付き)
1)実験装置
装置の概略図を図2に示す。
反応釜1に反応液を入れ加熱器2で反応液の温度制御を行い攪拌しながら大気開放として反応を行う。同時に、反応液移送ポンプ3により反応液の一部がアンモニア分離装置である蒸発器4に送られる。蒸発器4は真空ポンプにて減圧されるとともに温度制御されており、反応液はアンモニアを分離された後に反応液移送ポンプ5によって反応釜1に戻される。また、反応中に加水ライン6から反応釜1に水を加えることができる。
2)立体選択的加水分解
500mLのフラスコを反応釜とし、これに50.39g(0.38mol)のDL−tert−ロイシンアミドを入れ、水194.24gを加えて溶解した。酢酸4.62g(0.031mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物9.01mgを添加し、形質転換株pMCA1/JM109の菌体濃縮液1.82gを添加し、40℃、大気開放において撹拌して立体選択的加水分解を行った。反応開始と共に、40℃、40mmHgの蒸発器に反応溶液の一部を30mL/分で連続的に流通し、酵素反応に伴い発生するアンモニアを除去した。蒸発器により減少した水は、加水ラインより補った。反応の進行結果を図1に示す。反応時間39時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち99.5%以上がL−tert−ロイシンに変換された。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後6時間目における3500ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
比較例A−1
立体選択的酵素反応時に常圧で行う以外は実施例A−1と同様に反応を行った。反応の進行結果を図1に示す。反応時間45時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち47.4%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、45時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大7800ppmであった。従って、常圧条件では酵素反応完結には至らなかった。
比較例A−2
立体選択的酵素反応時に常圧で行い、窒素を反応溶液下部から100mL/minで通気する以外は実施例A−1と同様に反応を行った。反応の進行結果を図1に示す。反応時間24時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち52.0%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、24時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大7200ppmであった。したがって、窒素通気では酵素反応完結に至らなかった。
比較例A−3
立体選択的酵素反応時に常圧で行い、酵素反応の温度を55℃で行う以外は実施例A−1と同様に反応を行った。反応の進行結果を図1に示す。反応時間24時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち15.8%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、24時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大2000ppmであった。したがって、該酵素と該基質の組み合わせでは、高温により酵素が失活してしまうため、反応完結には至らなかった。
実施例B: 陽イオン交換樹脂吸着/酵素反応
実施例B−1
100mLのフラスコに12.13g(0.093mol)のDL−tert−ロイシンアミドを入れ、水44.31gを加えて溶解した。酢酸3.3g(0.056mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物5.97mgを添加し、反応ストック溶液を調製した。試験管にこの反応ストック溶液10.0gを入れ、形質転換株pMCA1/JM109の培養濃縮液0.12g(乾燥菌体の重量として0.008gを含有)を接種し、40℃において撹拌により立体選択的加水分解を行った。陽イオン交換樹脂DOWEX 50WX8(ダウ ケミカル社製)2.5gを反応溶液に懸濁した。
反応の進行は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件1で確認した。結果を図3に示す。反応時間69時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち99.8%がL−tert−ロイシンに変換された。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後20時間目における5500ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
得られた反応溶液に活性炭および濾過助剤を加えて濾過することにより菌体および陽イオン交換樹脂を除去した濾液を取得した。濾液に2−メチル−1−プロパノール35gを加え、20kPaにて含水濃度が1%に達するまで共沸脱水を行い、溶媒置換操作を行った。共沸脱水は沸点60℃で進行し、共沸脱水終了時には沸点は76℃であった。溶媒置換により析出したL−tert−ロイシンを吸引濾過で濾取し、70℃に加温した2−メチル−1−プロパノール25gで洗浄し、さらに25℃のアセトン75gで洗浄した後、常温で真空乾燥を行い、白色粉末を5.9g取得した。このL−tert−ロイシンの化学純度をHPLC条件1で分析したところ、化学純度は99.5%であった。光学純度をHPLC条件2で分析したところ、光学純度は99.5%以上であった。
実施例B−2
実施例B−1の条件にて、陽イオン交換樹脂DOWEX 50WX8(ダウ ケミカル社製)2.5gを不織布に袋状に包み、反応溶液へ投入した。酵素反応の結果を図3に示す。反応時間45時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち99.8%がL−tert−ロイシンに変換された。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後20時間目における6000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
比較例B−1
実施例B−1の条件にて、陽イオン交換樹脂を設置せずに反応を行った。反応の進行結果を図3に示す。反応時間46時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち68.5%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、46時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大8000ppmであった。
比較例B−2
200mLのフラスコに20.0g(0.15mol)のDL−tert−ロイシンアミドを入れ、水78.4gを加えて溶解した。酢酸1.86g(0.031mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物6.88mgを添加し、参考例1で得られた菌体濃縮液0.60gを添加し、40℃において陽イオン交換樹脂を設置せずに撹拌して立体選択的加水分解を行った。反応の進行結果を図3に示す。反応時間45時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち47.4%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、45時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大7800ppmであった。
実施例C: ゼオライト吸着/酵素反応
実施例C−1
100mLのフラスコに12.13g(0.093mol)のDL−tert−ロイシンアミドを入れ、水44.31gを加えて溶解した。酢酸3.3g(0.056mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物5.97mgを添加し、反応ストック溶液を調製した。試験管にこの反応ストック溶液10.0gを入れ、参考例1で得られた菌体濃縮液0.24g(乾燥菌体の重量として0.02gを含有)を接種し、40℃において撹拌により立体選択的加水分解を行った。ゼオライトSAPO−34打錠成型体(特開2004−043296号公報に記載の実施例6に従い調製)2.4gを不織布に充填し、反応溶液に浸るように試験管内に設置した。
反応の進行は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件1で確認した。結果を図4に示す。図4の反応進行率とは、原料DL−tert−ロイシンアミド中のL−tert−ロイシンアミドのうち何%がL−tert−ロイシンに変換されたかを示す。反応時間45時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち99.6%がL−tert−ロイシンに変換された。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後20時間目における6000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
反応溶液に活性炭および濾過助剤を加えて濾過することにより菌体およびゼオライトを除去した濾液を取得した。濾液に2−メチル−1−プロパノール35gを加え、20kPaにて含水濃度が1%に達するまで共沸脱水を行い、溶媒置換操作を行った。共沸脱水は沸点60℃で進行し、共沸脱水終了時には沸点は76℃であった。溶媒置換により析出したL−tert−ロイシンを吸引濾過で濾取し、70℃に加温した2−メチル−1−プロパノール25gで洗浄し、さらに25℃のアセトン75gで洗浄した後、常温で真空乾燥を行い、白色粉末を5.9g取得した。このL−tert−ロイシンの化学純度をHPLC条件1で分析したところ、化学純度は99.5%であった。光学純度をHPLC条件2で分析したところ、光学純度は99.5%以上であった。
比較例C−1
実施例C−1の条件にて、ゼオライトを設置せずに反応を行った。反応の進行結果を図4に示す。反応時間46時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち68.5%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、46時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大8000ppmであった。
比較例C−2
立体選択的酵素反応時に粉末状ゼオライトSAPO−34を懸濁状態で反応溶液に投入した以外は実施例1と同様に反応を行った。反応の進行結果を図4に示す。反応時間46時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち3.6%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、46時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大400ppmであった。
比較例C−3
200mLのフラスコに20.0g(0.15mol)のDL−tert−ロイシンアミドを入れ、水78.4gを加えて溶解した。酢酸1.86g(0.031mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物6.88mgを添加し、参考例1で得られた菌体濃縮液0.60gを添加し、40℃においてゼオライトを設置せずに撹拌して立体選択的加水分解を行った。反応の進行結果を図4に示す。反応時間45時間において、L−tert−ロイシンアミドのうち47.4%がL−tert−ロイシンに変換され、残りはL−tert−ロイシンアミドとして残留した。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、45時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大7800ppmであった。
実施例D: 減圧下での固定化生体触媒を用いた酵素反応
実施例D−1: 減圧(40mmHg)/固定化生体触媒を用いた酵素反応
DL−tert−ロイシンアミド600.2g(4.61mol)を、水4642.8gで溶解した。酢酸55.4g(0.92mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物0.32gを添加したものを基質溶液とした。500mLフラスコに基質溶液200gを入れ、参考例2で調製した固定化生体触媒14.4gを添加し、40℃、40mmHgにおいて撹拌して立体選択的加水分解を行った。
反応開始から24時間後に反応溶液を全量抜き出し、固定化生体触媒の表面およびフラスコを純水で洗浄後、新しく基質溶液200gを添加し、40℃、40mmHgにおいて撹拌して立体選択的加水分解を繰り返し行った。
HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図5に示す。図5の反応進行率とは、原料DL−tert−ロイシンアミド中のL−tert−ロイシンアミドのうち何%がL−tert−ロイシンに変換されたかを示す。同一の固定化生体触媒を用いて反応を繰り返し10回行った結果、いずれも24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち99.0%以上がL−tert−ロイシンに変換された。また、反応時間24時間目においてHPLC分析条件2を用いて測定した結果、いずれもL−tert−ロイシンの光学純度は100%e.e.であった。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後6時間目における2000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
実施例D−2: 減圧(40mmHg)/固定化生体触媒を用いた酵素反応(アンモニア分離装置付き)
1)実験装置
装置の概略図を図2に示す。
反応液貯槽1に反応液を入れ加熱器2で反応液の温度制御を行い攪拌しながら大気開放とする。同時に、反応液移送ポンプ3により反応液の一部が固定化生体触媒を入れたアンモニア分離装置である反応塔兼蒸発器4に送られる。反応塔兼蒸発器4は真空ポンプにて減圧されるとともに温度制御されており、反応液は固定化生体触媒により反応すると共にアンモニアを分離された後に反応液移送ポンプ5によって反応液貯槽1に戻される。また、反応中に加水ライン6から反応液貯槽1に水を加えることができる。
2)立体選択的加水分解
DL−tert−ロイシンアミド600.5g(4.61mol)を、水2357.7gで溶解した。酢酸56.2g(0.94mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物0.32gを添加したものを基質溶液とした。500mLフラスコに基質溶液200gを入れた。参考例2で調製した固定化生体触媒29.6gを反応塔兼蒸発器に入れ、40℃、40mmHgに設定した。基質溶液の一部を30mL/分で連続的に流通し、立体選択的加水分解を行うと共にアンモニアを除去した。蒸発により減少した水は、加水ラインより補った。
反応開始から24時間後に反応溶液を全量抜き出し、フラスコ、反応塔兼蒸発器に純水を通水することで容器内部および固定化生体触媒表面を洗浄後、新しく基質溶液200gをフラスコに添加して立体選択的加水分解を繰り返し行った。
HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図5に示す。同一の固定化生体触媒を用いて反応を繰り返し10回行った結果、いずれも24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち99.0%以上がL−tert−ロイシンに変換された。
また、反応時間24時間目においてHPLC分析条件2を用いて測定した結果、いずれもL−tert−ロイシンの光学純度は100%e.e.であった。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後6時間目における3000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
比較例D−1
常圧において反応を行う以外においては実施例D−1と同様に立体選択的加水分解を行った。HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図5に示す。図5の反応進行率とは、原料DL−tert−ロイシンアミド中のL−tert−ロイシンアミドのうち何%がL−tert−ロイシンに変換されたかを示す。反応の1回目は24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち96.9%がL−tert−ロイシンに変換された。一方、2回目以降は24時間目の反応率が27%未満となり、固定化生体触媒の再利用ができなった。
なお、1回目の反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後24時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大7000ppmとなった。
比較例D−2
実施例D−2と同様に9回の繰り返し立体選択的加水分解を行った。繰り返し7回目において、7.5時間から22.5時間では反応塔兼蒸発器4を常圧で立体選択的加水分解を行った。続く繰り返し8、9回目は実施例2と同様に反応塔兼蒸発器4を40mmHgで立体選択的加水分解を行った。1〜6回目ならびに8、9回目の反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は最大3500ppmであったのに対し、7回目では最大4500ppmとなった。HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図5に示す。反応の7回目までは24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち99.5%以上がL−tert−ロイシンに変換された。一方、8回目以降は24時間目の反応率が89%未満となり、固定化生体触媒の再利用ができなった。
実施例E: 陽イオン交換樹脂吸着/固定化生体触媒を用いた酵素反応
実施例E−1
DL−tert−ロイシンアミド600.2g(4.61mol)を、水4642.8gで溶解した。酢酸55.4g(0.92mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物0.32gを添加したものを基質溶液とした。試験管に基質溶液10.0gを入れ、陽イオン交換樹脂DOWEX 50WX8(ダウ ケミカル社製)2.5gを反応溶液に懸濁した。さらに、参考例2で調製した固定化生体触媒2.9gを添加し、40℃において撹拌して立体選択的加水分解を行った。
反応開始後24時間後に反応溶液を全量抜き出し、固定化生体触媒を分離した。固定化生体触媒の表面および試験管を純水で洗浄後、新しく基質溶液10.0gおよび陽イオン交換樹脂2.6gを添加し、40℃で撹拌して立体選択的加水分解を繰り返し行った。
HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図6に示す。図6の反応進行率とは、原料DL−tert−ロイシンアミド中のL−tert−ロイシンアミドのうち何%がL−tert−ロイシンに変換されたかを示す。同一の固定化生体触媒を用いて反応を繰り返し5回行った結果、いずれも24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち99.0%以上がL−tert−ロイシンに変換された。
また、反応時間24時間目においてHPLC分析条件2を用いて測定した結果、いずれもL−tert−ロイシンの光学純度は100%e.e.であった。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後6時間目における2000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
反応溶液に活性炭および濾過助剤を加えて濾過することにより菌体を除去した濾液を取得した。濾液に2−メチル−1−プロパノール10gを加え、20kPaにて含水濃度が1%に達するまで共沸脱水を行い、溶媒置換操作を行った。共沸脱水は沸点60℃で進行し、共沸脱水終了時には沸点は76℃であった。溶媒置換により析出したL−tert−ロイシンを吸引濾過で濾取し、70℃に加温した2−メチル−1−プロパノール5gで洗浄し、さらに25℃のアセトン15gで洗浄した後、常温で真空乾燥を行い、白色粉末を0.96g取得した。このL−tert−ロイシンの化学純度をHPLC条件1で分析したところ、化学純度は99.0%であった。光学純度をHPLC条件2で分析したところ、光学純度は99.5%以上であった。
比較例E−1
実施例E−1の条件にてイオン交換樹脂を添加せずに立体選択的加水分解を行った。HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図6に示す。反応の1回目は24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち96.9%がL−tert−ロイシンに変換された。一方、2回目以降は24時間目の反応率が27%未満となり、固定化生体触媒の再利用ができなった。
なお、1回目の反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後24時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大7000ppmとなった。
実施例F: ゼオライト吸着/固定化生体触媒を用いた酵素反応
実施例F−1
DL−tert−ロイシンアミド600.2g(4.61mol)を、水4642.8gで溶解した。酢酸55.4g(0.92mol)を添加して撹拌した。このときのpHは8.3であった。さらに、塩化マンガン四水和物0.32gを添加したものを基質溶液とした。試験管に基質溶液10.0gを入れ、ゼオライトSAPO−34打錠成型体(特開2004−043296号公報に記載の実施例6に従い調製)2.4gを不織布に充填し、反応溶液に浸るように試験管内に設置した。さらに、参考例2で調製した固定化生体触媒2.9gを添加し、40℃において撹拌して立体選択的加水分解を行った。反応開始後24時間後に反応溶液を全量抜き出し、固定化生体触媒を分離した。固定化生体触媒の表面および試験管を純水で洗浄後、不織布に充填したゼオライト2.4gを反応溶液に浸るように試験管内に設置し、新しく基質溶液10.0gを添加し、40℃で撹拌して立体選択的加水分解を繰り返し行った。
HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図7に示す。図7の反応進行率とは、原料DL−tert−ロイシンアミド中のL−tert−ロイシンアミドのうち何%がL−tert−ロイシンに変換されたかを示す。同一の固定化生体触媒を用いて反応を繰り返し5回行った結果、いずれも24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち99.0%以上がL−tert−ロイシンに変換された。
また、反応時間24時間目においてHPLC分析条件2を用いて測定した結果、いずれもL−tert−ロイシンの光学純度は100%e.e.であった。反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後6時間目における2000ppmが最大であり、アンモニアの除去によって常にこの濃度以下を保っていた。
反応溶液に活性炭および濾過助剤を加えて濾過することにより菌体およびゼオライトを除去した濾液を取得した。濾液に2−メチル−1−プロパノール35gを加え、20kPaにて含水濃度が1%に達するまで共沸脱水を行い、溶媒置換操作を行った。共沸脱水は沸点60℃で進行し、共沸脱水終了時には沸点は76℃であった。溶媒置換により析出したL−tert−ロイシンを吸引濾過で濾取し、70℃に加温した2−メチル−1−プロパノール25gで洗浄し、さらに25℃のアセトン75gで洗浄した後、常温で真空乾燥を行い、白色粉末を5.9g取得した。このL−tert−ロイシンの化学純度をHPLC条件1で分析したところ、化学純度は99.5%であった。光学純度をHPLC条件2で分析したところ、光学純度は99.5%以上であった。
比較例F−1
実施例F−1の条件にてゼオライトを添加せずに立体選択的加水分解を行った。HPLC分析条件1を用いた24時間後の反応進行率を図7に示す反応の1回目は24時間目においてL−tert−ロイシンアミドのうち96.9%がL−tert−ロイシンに変換された。一方、2回目以降は24時間目の反応率が27%未満となり、固定化生体触媒の再利用ができなった。
なお、1回目の反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和は、反応開始後24時間目まで反応の進行に伴い上昇し、最大7000ppmとなった。
1 反応釜もしくは反応液貯槽
2 加熱器
3 反応液移送ポンプ
4 蒸発器もしくは反応塔兼蒸発器
5 反応液移送ポンプ
6 加水ライン

Claims (9)

  1. DL−tert−ロイシンアミドに、これを立体選択的に加水分解する酵素、該酵素を有する微生物の菌体、該菌体の処理物、該酵素を担体に固定化した固定化酵素、該菌体を担体に固定化した固定化菌体、および該菌体処理物を担体に固定化した固定化菌体処理物からなる群より選択される生体触媒を作用させて加水分解することによって、D−若しくはL−tert−ロイシンまたはD−若しくはL−tert−ロイシンアミドを製造する方法であって、
    該加水分解により生成するアンモニアを、加水分解の反応溶液から分離しながら該加水分解を行うことを特徴とする、方法。
  2. アンモニアの反応溶液からの分離を、
    前記反応溶液を減圧下に置き、アンモニアを蒸発させるか、または
    陽イオン交換樹脂若しくはゼオライトへ、反応溶液中のアンモニアを吸着させる
    ことにより行う、請求項1に記載の方法。
  3. アンモニアの反応溶液からの分離を、反応溶液を減圧下に置き、アンモニアを蒸発させることにより行う、請求項1に記載の方法。
  4. アンモニアの反応溶液からの分離を、陽イオン交換樹脂へ、反応溶液中のアンモニアを吸着させることにより行う、請求項1に記載の方法。
  5. アンモニアの反応溶液からの分離を、ゼオライトへ、反応溶液中のアンモニア光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドを吸着させることにより行う、請求項1に記載の方法。
  6. 酵素が、キサントバクター フラバス由来の酵素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 微生物が、キサントバクター フラバス由来の酵素であって、DL−tert−ロイシンアミドを立体選択的に加水分解する酵素の遺伝子を導入された微生物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 微生物が、pMCA1/JM109(FERM BP−10334)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  9. 反応溶液中のアンモニア濃度およびアンモニウムイオン濃度の和が、7000ppm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載方法。
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