JP3647065B2 - 光学活性アラニンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光学活性アラニンの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、DL−α−アラニンアミドを基質として酵素反応によりD−α−アラニン、L−α−アラニンまたはその両者を能率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
L−α−アラニンの製造方法としては、L−α−アスパラギン酸を脱炭酸する方法(アミノ酸発酵 387−396,学生出版センター 1986)、DL−α−アラニンを光学分割する方法(特公昭41−22380号公報)などが知られているが、いずれも高価であり、また発酵による方法では一般に収率、光学純度などに問題があり、工業的により安価な製法の開発が望まれている。
【0003】
またD−α−アラニンの製法としては、発酵による方法(特開昭51−22881号公報)、5−メチルヒダントインを酵素により分解する方法(特開昭55−104890号公報)などが知られているが、発酵法では収率に問題があり、5−メチルヒダントインの加水分解では、原料となる5−メチルヒダントインが高価であるため、工業的に満足な製造法は確立されていなかった。
【0004】
一方、安価な原料である乳酸ニトリルからDL−α−アラニンアミドを化学的に合成し、該DL−α−アラニンアミドをD−α−アミダーゼにより加水分解してD−α−アラニンを得る方法(特開平1−262798号、特開平1−317387号または特公平6−44870号公報)、または該DL−α−アラニンアミドをL−α−アミダーゼにより加水分解してL−α−アラニンを得る方法(特開昭59−159789号、特開昭60−36446号、特開昭62−55097号、特開平1−215297号、特開平1−277499号または特開平4−45797号公報など)が開示されているが、反応の後でD−α−アラニンとL−α−アラニンアミド、またはL−α−アラニンとD−α−アラニンアミドを別途、従来公知とする方法、すなわち、反応終了液から遠心分離により微生物を除き、減圧濃縮後エタノールを加え析出するL−α−アラニンを濾過するといった方法、D−アラニンなどのように比較的親水性である場合には、イオン交換樹脂により目的物を吸着させ、これを安水などで溶出し、ついで中和し濃縮することにより目的物を取得する方法、あるいは単に分別晶析、溶媒抽出、イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、その他公知の方法により行うことができることが記載されている。
【0005】
しかしながら、いずれの場合においても、DL−α−アラニンアミドをD−またはL−α−アミダーゼにより加水分解してD−またはL−α−アラニンを得る工程と、その後に得られたD−α−アラニンとL−α−アラニンアミド、またはL−α−アラニンとD−α−アラニンアミドを分離する工程とが必ず必要であり、必然的にこうした分離工程を経ることによる目的物の収率の低下や変性、および不純物の残留ないし混入する余地があり、これにより得られるアラニンの光学活性が低下するなどの恐れもあり、また、こうした分離工程を行うための設備などに関しても、工業的に上述の課題を解決するためには新たにそれなりの技術開発および設備投資が必要であり、これに要する人的および物的コストも大きくなる問題があり、今日までに、上述の加水分解工程と、その後の分離工程を同時になし得る極めて優れた方法は何等開示されておらず、こうした意味において、現在までに工業的に有利に加水分解工程と、その後の分離工程をなし得る方法は知られていなかったといえる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、酵素による加水分解によってDL−α−アラニンアミドからL−α−アラニンまたはD−α−アラニンを合成し、これを他方の光学異性体であるD−α−アラニンアミドまたはL−α−アラニンアミドと能率的に分離する方法を提供することにある。さらに本発明の解決しようとする課題は、光学活性アラニンと分離された他方の異性体である光学活性アラニンアミドを別の酵素によって加水分解し、もう一方の光学活性アラニンを能率よく得る方法を提供することにもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、DL−α−アラニンアミドを陽イオン交換樹脂に吸着させた状態で、D−および/またはL−α−アラニンアミドを加水分解してD−および/またはL−α−アラニンを合成するアミダーゼと水とを接触させると、該D−および/またはL−α−アラニンアミドのアミド基が加水分解されて該D−および/またはL−α−アラニンを生成し、この生成したD−および/またはL−α−アラニンは、該陽イオン交換樹脂から脱離することを見出だして本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、(1) DL−α−アラニンアミドの一方の光学異性体をアミダーゼにより加水分解して光学活性のアラニンを得る方法において、該DL−α−アラニンアミドを陽イオン交換樹脂に吸着させ、該DL−α−アラニンアミドを吸着した陽イオン交換樹脂に該アミダーゼと水を接触させることによって、加水分解を行うと同時に生成した該光学活性アラニンを該陽イオン交換樹脂から脱離させることを特徴とする光学活性アラニンの製造方法によって達成される。
【0009】
また本発明の目的は、(2) 上記(1)に示す光学活性アラニンの製造方法において、前記一方の光学異性体を加水分解、脱離した後に、前記陽イオン交換樹脂に吸着されている他方の光学異性体であるアラニンアミドに該他方の光学異性体を加水分解してアラニンとする別のアミダーゼと水を接触させて、他方の光学活性アラニンを生成すると同時に該陽イオン交換樹脂から生成した該アラニンを脱離させることを特徴とする光学活性アラニンの製造方法によっても達成される。
【0010】
さらに本発明の目的は、(3) 陽イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂であり、かつ、DL−α−アラニンアミドを吸着する前にアンモニア型であることを特徴とする上記(1)または(2)に示す光学活性アラニンの製造方法によっても達成される。
【0011】
【作用】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の酵素反応の基質として用いられるDL−α−アラニンアミドは、一般に次のようにして収率よく、簡単に合成できる。ラクトニトリルにアンモニアを作用させてα−アミノプロピオニトリルを合成し、これにNaOHなどの強アルカリおよびアセトンなどのケトン類を作用させてDL−α−アラニンアミドとする。反応液からアンモニアとアセトンを除去した後、一般には硫酸または塩酸などで中和し、アラニンアミド硫酸塩などの安定な塩とする。
【0013】
次に本発明に用いられる酵素であるアミダーゼは、D−またはL−α−アラニンアミドの一方の光学異性体を加水分解してD−またはL−α−アラニンとする作用をもつものであればよく、このようなアミダーゼとしては特開平1−262798号、特開平1−317387号または特公平6−44870号公報に記載されている微生物の生産するD−アミダーゼ、特開昭59−159789号、特開昭60−36446号、特開昭62−55097号、特開平1−215297号、特開平1−277499号または特開平4−45797号公報に記載されている微生物の生産するL−アミダーゼが例として挙げられるが、これらに限らず広く自然界に分布する微生物などの生産する光学活性のアミダーゼであっても問題はない。しかし工業的に有利に得られるアミダーゼとしては、代表的なものとして、アースロバクター・エスピー(Arthrobactor sp. 工業技術院微生物工業技術研究所寄託 FERM BP−1649)の生産するD−アミダーゼ(特開平1−317387号公報)、およびラフネラ・エスピー(Raphnella sp.工業技術院微生物工業技術研究所寄託 FERM BP−2871)の生産するL−アミダーゼ(特開平4−45797号公報)などが挙げられる。なお、本発明にこうした酵素を用いる場合には、従来公知の方法、例えば、特開平1−317387号および特開平4−45797号公報などをはじめ先述した従来技術の公知文献などに開示された微生物の培養方法(および条件)によって得られた上記微生物を、培養液、分離菌体、菌体破砕物、乾燥菌体あるいは分離精製した酵素などの菌体処理物の形態で反応に使用されるが、一般的には陽イオン交換樹脂に吸着したアラニンアミドとアミダーゼを直接接触させるために、菌体破砕によりアミダーゼを菌体外に取り出してなる該アミダーゼ水溶液が望ましい。また、このアミダーゼ水溶液としては、破砕された菌体などの固型分を予めろ過などにより除去しておくことが、さらに好ましい。
【0014】
また本発明で用いるアミダーゼを含む菌体処理物中には、一般的に光学活性なアラニンのラセミ化を触媒する酵素であるアラニンラセマーゼの含有量が低く、当該アミダーゼを含む菌体処理物をそのまま用いても充分な光学純度のアラニンを得ることができるが、アラニンラセマーゼ活性を抑制する従来公知の方法として、例えば、「化学と生物 20,70−772(1986)」または「生化学実験講座 11,275−296」に記載されているようなアラニンラセマーゼ阻害剤を反応時に添加するなどの方法を用いることもできる。
【0015】
また、本発明に用いる陽イオン交換樹脂としては、DL−α−アラニンアミドを吸着できるものであればよいが、このような陽イオン交換樹脂としては強酸性陽イオン交換樹脂が適当であり、また使用に際してはイオン交換樹脂の官能基がアンモニウムイオンによって置換されていることが好ましい。これは、該イオン交換樹脂の官能基が水素型となっている場合にはDL−α−アラニンアミド合成時に若干量副生するDL−α−アラニンも吸着し、これが酵素反応時に溶出するため、結果として光学活性を低下させることになるからである。
【0016】
次に、DL−α−アラニンアミドを上記陽イオン交換樹脂に吸着させる方法としては、例えば、該DL−α−アラニンアミド硫酸塩などの水溶液を硫酸などの酸性物質で、通常pH3.0〜5.0、好ましくはpH4.0〜4.5の領域に調整して、予め交換基としてアンモニア基を導入したアンモニア型のイオン交換樹脂を通常カラムなどの充填装置に充填しておき、該イオン交換樹脂を固定床として使用するバッチ方式、あるいは交換反応の終了した該イオン交換樹脂の取り出しと再生した該イオン交換樹脂の供給を連続的に行う連続方式などにより、上記pHに調整された水溶液を該カラムなどの充填装置の上から下へ流す下降流方式または下から上へ流す上昇流方式などにより、該イオン交換樹脂と接触させ、アラニンアミドをアンモニアイオンとのイオン交換により該イオン交換樹脂に吸着させた後で、該イオン交換樹脂を十分に水洗し、副生する硫酸アンモニウムを除去しておくことが好ましい。さらに上記陽イオン交換樹脂としては、単一の樹脂を充填した単床式、異種樹脂を上下に分けて充填した複層床式など、用途に応じて最適の方式を選択することができる。
【0017】
次に、イオン交換樹脂に吸着させたDL−α−アラニンアミドを不斉加水分解してD−α−アラニンを得る場合には、通常カラムなどの充填装置に充填されてなるDL−α−アラニンアミドを吸着させたイオン交換樹脂を、固定床として使用するバッチ方式あるいは交換反応の終了した該イオン交換樹脂の取り出しと再生した該イオン交換樹脂の供給を連続的に行う連続方式などにより、D−アミダーゼを含む水溶液を適当なpHに調整し、該調整済の水溶液を該カラムなどの充填装置の上から下へ流す下降流方式または下から上へ流す上昇流方式などにより、DL−α−アラニンアミドを吸着させたイオン交換樹脂と接触させればよい。
【0018】
上記加水分解の反応条件としては、該反応を触媒するD−アミダーゼ酵素が失活しない条件であれば良く、一概に特定し得ないが、通常、例えば、前記のアースロバクター・エスピーの生産するD−アミダーゼの水溶液の場合には、反応温度は通常10〜60℃、好ましくは30〜45℃で、D−アミダーゼを含む水溶液のpHを通常6〜10、好ましくは7〜8の領域に調整する。また、D−アミダーゼの仕込み量としては、吸着させたDL−α−アラニンアミドの量および反応時間により適宜決定すればよいが、通常1〜1000K単位/リットル、好ましくは10〜200K単位/リットルであり、この際の反応時間としては、通常1〜100時間、好ましくは3〜30時間である。上記反応温度が10℃未満の場合には、用いるD−アミダーゼ酵素による触媒活性が低下するため、該D−アミダーゼ酵素を用いた加水分解反応速度が遅くなるため、反応に長時間を要するため好ましくなく、該反応温度が60℃を越える場合には、用いるD−アミダーゼ酵素が失活するため好ましくない。また、上記D−アミダーゼを含む水溶液のpHが6未満の場合には、該D−アミダーゼの酵素反応の好適なpHの領域から大きくはずれるため好ましくなく、該D−アミダーゼを含む水溶液のpHが10を越える場合にも、該D−アミダーゼの酵素反応の好適なpHの領域から大きくはずれるため好ましくない。さらにまたD−アミダーゼの仕込み量が1K単位/リットル未満の場合には、該D−アミダーゼ酵素の加水分解活性による単位時間当たりの処理能力が少なく、反応に長時間を要するため好ましくなく、また、用いるD−アミダーゼ酵素の入手は容易であるが、こうした酵素は他の原料などに比較して高価であるため、該酵素量はできるだけ少なくして所望の反応を完了できることが望ましく、D−アミダーゼの仕込み量が1000K単位/リットルを越える場合には、過度の添加に見合うだけの経済的効果が得られないため好ましくない。
【0019】
上記反応により生成するD−α−アラニンは、陽イオン交換樹脂から脱離し、また副生するアンモニアは、D−α−アラニンアミドに代わって該陽イオン交換樹脂に吸着される。したがって、反応液と該陽イオン交換樹脂を分離すれば、反応液にははじめに仕込まれたD−アミダーゼおよびD−α−アラニンのみが含まれることとなり、通常の晶析操作によって簡単にD−α−アラニンを得ることが可能である。
【0020】
次に、上記の操作でD−α−アラニンを分離した後の上記陽イオン交換樹脂にはL−α−アラニンアミドとアンモニアが吸着されているので、L−アミダーゼを含む水溶液を適当なpHに調整して接触させることにより同様にL−α−アラニンアミドを加水分解してL−α−アラニンが生成して該陽イオン交換樹脂から脱離し、また副生するアンモニアはL−α−アラニンアミドに代わって該陽イオン交換樹脂に吸着される。したがって、反応液と該陽イオン交換樹脂を分離すれば、反応液にははじめに仕込まれたL−α−アミダーゼおよびL−α−アラニンのみが含まれることになり、通常の晶析操作によって簡単にL−α−アラニンを得ることが可能である。
【0021】
上記加水分解の反応条件としても、該反応を触媒するL−アミダーゼ酵素が失活しない条件であれば良く、一概に特定し得ないが、例えば、前記のラフネラ・エスピーの生産するL−アミダーゼの水溶液の場合には、反応温度は通常10〜60℃、好ましくは30〜45℃で、L−アミダーゼを含む水溶液のpHを通常5〜10、好ましくは7〜8の領域に調整する。また、L−アミダーゼの仕込み量としては、吸着させたL−α−アラニンアミドの量および反応時間により適宜決定すればよいが、通常1〜1000K単位/リットル、好ましくは10〜200K単位/リットルであり、この際の反応時間としては、通常1〜100時間、好ましくは3〜30時間である。上記反応温度が10℃未満の場合には、用いるL−アミダーゼ酵素による触媒活性が低下するため、加水分解反応速度が遅くなり反応に長時間を要するため好ましくなく、該反応温度が60℃を越える場合には、用いるL−アミダーゼ酵素が失活するため好ましくない。また、上記L−アミダーゼを含む水溶液のpHが5未満の場合には、該L−アミダーゼの酵素反応の好適なpHの領域から大きくはずれるため好ましくなく、該L−アミダーゼを含む水溶液のpHが10を越える場合にも、該L−アミダーゼの酵素反応の好適なpHの領域から大きくはずれるため好ましくない。さらにまたL−アミダーゼの仕込み量が1K単位/リットル未満の場合には、該L−アミダーゼ酵素の加水分解活性による単位時間当たりの処理能力が少なく、反応に長時間を要するため好ましくなく、また、用いるL−アミダーゼ酵素の入手は容易であるが、こうした酵素は他の原料などに比較して高価であるため、該酵素量はできるだけ少なくして所望の反応を完了できることが望ましく、L−アミダーゼの仕込み量が1000K単位/リットルを越える場合には、過度の添加に見合うだけの経済的効果が得られないため好ましくない。
【0022】
上記の操作により、D−α−アラニンおよびL−α−アラニンを順次生成分離できると同時に、D−α−アラニンおよびL−α−アラニンを順次生成分離した後のイオン交換樹脂はDL−α−アラニンアミドを吸着させる前のアンモニア型に戻っており、そのまま、あるいは必要ならば低濃度のアンモニア水で完全に官能基を置換して回復した後、水洗して次の反応に繰り返して用いることが可能である。もちろん、D−α−アラニンとL−α−アラニンの酵素反応の順序を逆にすることは一向に差し支ええない。また必要ならば、D−α−アミダーゼとL−α−アミダーゼを同時に作用させてDL−α−アラニンとすることも可能である。もちろん、イオン交換樹脂に吸着させたDL−アラニンアミドに光学活性のアミダーゼを作用させて一方の光学活性のアラニンを生成分離した後に、該イオン交換樹脂に吸着している他方の光学活性のアラニンアミドをアンモニアで溶出させ、これを化学的な方法で加水分解して他方の光学活性のアラニンを得てもよいことはいうまでもない。
【0023】
【実施例】
下記表1に示す組成物を含み、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.8に調整した培地200mlを1リットルのバッフル付きフラスコに分注し、120℃、20分間オートクレーブ滅菌した。この培地にブイヨンスラントに生育したアースロバクター・エスピー(Arthrobactor sp. 工業技術院微生物工業技術研究所寄託 FERM BP−1773)を植菌し、30℃、220rpmで24時間振蘯培養して種培養液とした。
【0024】
【表1】
Figure 0003647065
【0025】
別に、下記表2に示す組成物を含み、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.4に調整した培地2リットルを3リットルのジャーファーメンターに仕込み、120℃、30分間オートクレーブ滅菌した。
【0026】
【表2】
Figure 0003647065
【0027】
この培地に前記の種培養を植菌して、35℃、通気1vvm、700rpm、pH6.8(14%アンモニア水にて適宜調整した)で30時間培養を行い、培養終了後、培養液を遠心分離して164gの湿菌体を得た。この湿菌体1.34gに50mMリン酸緩衝液(pH7)を加えて40mlの懸濁液とし、この懸濁液中の菌体を100W、10℃以下で30分間、超音波破砕して、遠心分離により菌体破砕物を除去し、再度50mMリン酸緩衝液(pH7)を加え40mlとして、酵素水溶液を得た。
【0028】
一方、強酸性陽イオン交換樹脂SK1−BH(三菱化成株式会社製、登録商標ダイアイオン)50mlを内径19mmのガラスカラムに充填し、これに2N−アンモニア水溶液を充分に通液して該イオン交換樹脂をアンモニア型にした後、イオン交換水で洗液のpHが中性となるまで充分に洗浄した。次に、このイオン交換樹脂を充填した上記カラムに、硫酸でpH4.5に調製したDL−α−アラニンアミド硫酸塩水溶液(DL−α−アラニンアミド換算で10重量%)を充分に通液し、DL−α−アラニンアミドを吸着させた後、イオン交換水で該イオン交換樹脂を充分に洗浄した。洗浄後の該イオン交換樹脂には0.089モルのDL−α−アラニンアミドが吸着していた。
【0029】
このイオン交換樹脂を充填した上記カラムに、前記の酵素水溶液10.0mlをイオン交換水で40mlに希釈した液をポンプで循環通液し、2時間おきに1N−アンモニア水でpH7.5に保ちつつ、40℃で13時間反応させた。反応終了後、上記イオン交換樹脂と反応液を分離し、該イオン交換樹脂をイオン交換水で充分に洗浄した洗液も反応液と併せ、液体クロマトグラフィーで分析した。この結果、反応はほぼ定量的に進行し、D−α−アラニンの収率ははじめに上記イオン交換樹脂に吸着したD−α−アラニンアミドに対して100%、反応液中のアラニン光学純度は99.6%であった。
【0030】
なお、反応終了後のイオン交換樹脂に吸着しているアラニンアミドを2N−アンモニア水で溶出し、液体クロマトグラフィーで分析したところ、L−α−アラニンアミド回収率98.8%、光学純度99.9%であった。
【0031】
実施例2
下記表3に示す組成物を含み、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.2に調整した培地100mlを1リットルのバッフル付きフラスコに分注し、120℃、20分間オートクレーブ滅菌した。この培地にブイヨンスラントに生育したラフネラ・エスピー(Raphnella sp. 工業技術院微生物工業技術研究所寄託 FERM BP−2871)を植菌し、30℃、220rpmで20時間振蘯培養して種培養液とした。
【0032】
【表3】
Figure 0003647065
【0033】
別に、下記表4に示す組成物を含み、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.2に調整した培地2リットルを3リットルのジャーファーメンターに仕込み、120℃、20分間オートクレーブ滅菌した。
【0034】
【表4】
Figure 0003647065
【0035】
この培地に前記の種培養を植菌して、35℃、通気1vvm、700rpm、pH6.8(14%アンモニア水にて適宜調整した)で15時間培養を行い、培養終了後、培養液を遠心分離して36gの湿菌体を得た。この湿菌体2.64gに50mMリン酸緩衝液(pH7)を加えて40mlの懸濁液とし、この懸濁液中の菌体を100W、10℃以下で5分間、超音波破砕して、遠心分離により菌体破砕物を除去し、再度50mMリン酸緩衝液(pH7)を加え40mlとして、酵素水溶液を得た。
【0036】
一方、実施例1と同様に強酸性陽イオン交換樹脂SK1−BH(三菱化成株式会社製、登録商標ダイアイオン)50mlを内径19mmのガラスカラムに充填し、これに2N−アンモニア水溶液を充分に通液して該イオン交換樹脂をアンモニア型にした後、イオン交換水で洗液のpHが中性となるまで充分に洗浄した。次に、このイオン交換樹脂を充填した上記カラムに、硫酸でpH4.5に調製したDL−α−アラニンアミド硫酸塩水溶液(DL−α−アラニンアミド換算で10重量%)を充分に通液し、DL−α−アラニンアミドを吸着させた後、イオン交換水で該イオン交換樹脂を充分に洗浄した。洗浄後の該イオン交換樹脂には0.086モルのDL−α−アラニンアミドが吸着していた。
【0037】
このイオン交換樹脂を充填した上記カラムに、前記の酵素水溶液5.7mlをイオン交換水で40mlに希釈した液をポンプで循環通液し、2時間おきに1N−硫酸水溶液でpH7.0に保ちつつ、40℃で11時間反応させた。反応終了後、上記イオン交換樹脂と反応液を分離し、該イオン交換樹脂をイオン交換水で充分に洗浄した洗液も反応液と併せ、液体クロマトグラフィーで分析した。この結果、0.038モルのL−α−アラニンおよび0.0055モルのD−α−アラニンが生成していることが判明した。
【0038】
なお、反応終了後のイオン交換樹脂に吸着しているアラニンアミドを2N−アンモニア水で溶出し、液体クロマトグラフィーで分析したところ、D−α−アラニンアミド回収率97.8%、光学純度98.9%であった。したがって、上記の酵素反応によりD−α−アラニンが生成したのは、アラニンラマーゼのためであると考えられる。
【0039】
実施例3
実施例1と同様に強酸性陽イオン交換樹脂SK1−BH(三菱化成株式会社製、登録商標ダイアイオン)50mlを内径19mmのガラスカラムに充填し、これに2N−アンモニア水溶液を充分に通液して該イオン交換樹脂をアンモニア型にした後、イオン交換水で洗液のpHが中性となるまで充分に洗浄した。次に、このイオン交換樹脂を充填した上記カラムに、硫酸でpH4.5に調製したDL−α−アラニンアミド硫酸塩水溶液(DL−α−アラニンアミド換算で10重量%)を充分に通液し、DL−α−アラニンアミドを吸着させた後、イオン交換水で上記イオン交換樹脂を充分に洗浄した。洗浄後の該イオン交換樹脂には0.090モルのDL−α−アラニンアミドが吸着していた。
【0040】
このイオン交換樹脂を充填した上記カラムに、実施例2と同様のL−α−アミダーゼ酵素水溶液5.7mlをイオン交換水で40mlに希釈した液に公知のラセマーゼ阻害剤であるD−シクロセリン0.004gを加え、これをポンプで循環通液し、2時間おきに1N−硫酸水溶液でpH7.0に保ちつつ、40℃で9時間反応させた。反応終了後、上記イオン交換樹脂と反応液を分離し、該イオン交換樹脂をイオン交換水で充分に洗浄した洗液も反応液と併せ、液体クロマトグラフィーで分析した。この結果、反応はほぼ定量的に進行し、L−α−アラニンの収率ははじめに上記イオン交換樹脂に吸着したL−α−アラニンアミドに対して97.8%、反応液中のアラニン光学純度は100%であった。
【0041】
なお、反応終了後のイオン交換樹脂に吸着しているアラニンアミドを2N−アンモニア水で溶出し、液体クロマトグラフィーで分析したところ、D−α−アラニンアミド回収率98.8%、光学純度99.9%であった。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、DL−α−アラニンアミドから光学活性アラニンを得ることが容易にでき、しかも反応と分離が同時に可能であるために極めて簡単な装置で実施できるというメリットがある。

Claims (3)

  1. DL−α−アラニンアミドの一方の光学異性体をアミダーゼにより加水分解して光学活性のアラニンを得る方法において、該DL−α−アラニンアミドを陽イオン交換樹脂に吸着させ、該DL−α−アラニンアミドを吸着した陽イオン交換樹脂に該アミダーゼと水を接触させることによって、加水分解を行うと同時に生成した該光学活性アラニンを該陽イオン交換樹脂から脱離させることを特徴とする光学活性アラニンの製造方法。
  2. 請求項1に記載の光学活性アラニンの製造方法において、前記一方の光学異性体を加水分解、脱離した後に、前記陽イオン交換樹脂に吸着されている他方の光学異性体であるアラニンアミドに該他方の光学異性体を加水分解してアラニンとする別のアミダーゼと水を接触させて、他方の光学活性アラニンを生成すると同時に該陽イオン交換樹脂から生成した該アラニンを脱離させることを特徴とする光学活性アラニンの製造方法。
  3. 前記陽イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂であり、かつ、DL−α−アラニンアミドを吸着する前にアンモニア型であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学活性アラニンの製造方法。
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