JPWO2010137729A1 - ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
これらの製品をポリカーボネート樹脂組成物を用い射出成形法により形成した場合、良好な離型性および低減された成形品の内部歪みを有し、かつ割れ発生のない成形品を得ることが困難であるという問題がある。具体的には、良好な離型性を与えると、成形品の内部歪み、または成形品の割れが発生し易くなる。一方、離型剤を低減させた場合は、離型抵抗の増加による成形品の割れ発生が増加する。これらの問題解決に加えて、良好な透明性、耐沸水性、成形耐熱性および耐候性等を有することも求められる。
ここで成形品の内部歪みとは、通常、よく知られる偏光板の縞模様の色変化や疎密の不均一さにより観察される歪みであり、アニール処理によってある程度低減されるものである(便宜上かかる歪みを“歪み−1”と称する場合がある)。一方、偏光板観察において不均一な陰影部分として観察されるものがあり(便宜上かかる歪みを“歪み−2”と称する場合がある)、通常のアニール処理によって低減されることはなく、場合によっては逆に顕在化する。
歪み−1の主体は、熱応力等に起因する個々のポリマー分子鎖の歪みである。歪み−2は、成形時の成形温度が高く、成形機が大型で滞留部分が多い場合に生じやすい。歪み−1はハードコート処理時の、また長期特性におけるクラックの発生要因となるため、その低減が求められる。歪み−2はわずかな滞留時間の増加により成形品にシルバーの発生、変色、および内部のくもり(白モヤ)などの不良が現れることがあり、その低減が求められる。
このような車両用透明部材は、多くの場合、ハードコート処理などの表面処理が施される。しかしながらかかるハードコート処理において成形品に割れが発生する場合もある。かかる成形品の割れは、ハードコート処理前にアニール処理を行っても生ずる。したがって成形時およびアニール時いずれもポリカーボネート樹脂組成物の何らかの特性が成形品の割れの発生を促進していると考えられる。かかる割れの要因を低減し成形品の割れに対する耐性(以下、単に“割れ耐性”と称する場合がある)を改善する必要がある。
従来から、ポリカーボネート樹脂の離型性を向上する方法として脂肪酸エステルを配合する方法が広く知られており、中でもグリセリンモノステアレートが多く使用されているが、グリセリンモノステアレートを添加したポリカーボネート樹脂組成物は、上記歪み−2が明確に観察され、また割れ耐性の点でも十分とはいえないものであった。
一方、ポリカーボネート樹脂に使用される離型剤としては、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどの、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルもまた広く使用されている。該フルエステルを添加したポリカーボネート樹脂組成物においても更なる品質の改良を目的として、種々の提案がなされている。尚、以下多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルを単に“脂肪酸エステル”と称する場合がある。
特許文献1には、エステル化合物のOH基含量と酸価を極度に小さくしたペンタエリスリトールのエステルを含むポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。しかしながらその該公報に記載された発明の主たる目的は、該樹脂組成物の延性−脆性転移温度の低下である(すなわち延性温度域が増大する)。
また特許文献2では、ポリカーボネート樹脂とフルエステル90%以上の酸価0.6〜1.6、ヨウ素価0.1〜1.3、および金属元素Snの含有量5〜300ppmである内部離型剤からなるポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。該公報は酸価が1.6を超える場合には成形耐熱性が低下することを開示するものの、良好な離型性、低減された成形品の内部歪み(特に歪み−2)、および改善された割れ耐性をいずれも満足するポリカーボネート樹脂組成物に関する十分な技術的知見を開示するものではなかった。
上記の如く車両用透明部材においては、良好な透明性、耐候性および成形耐熱性に加えて、良好な離型性、低減された成形品の内部歪み、および改善された割れ耐性を有する、ポリカーボネート樹脂組成物が求められている。更に車両用透明部材は屋外で使用することが多く、特に夏季には高温多湿の状態に長時間晒されることがあるため、高温下での耐湿熱性も必要である。
特許文献3には、特定の離型剤と紫外線吸収剤をポリカーボネート樹脂に添加することで、透明性、耐候性、成形耐熱性、離型性が良好で、成形品の内部歪を低減し、割れ耐性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られることが開示されている。しかしながら、成形耐熱性を向上させる目的でリン系の安定剤を併用した場合、リン系の安定剤が加水分解によって酸性化合物となり成形品の耐湿熱性を悪化させるという問題があった。
特許文献4には、特定のリン系化合物、フェノール系化合物およびエポキシ化合物を組み合わせてポリカーボネート樹脂に添加することで、熱安定性や耐水性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることが開示されている。しかし、車両用透明部材に求められる上記の特性の全てを満足するものではなかった。
一方、ポリカーボネート樹脂組成物は成形した後に金型の腐食を促進するという問題がある。通常、連続して成形している時には金型表面に水分(湿気)が少ないため、腐食の問題は発生しないが、成形を一時中断したときなどに金型の腐食が発生する。これはポリカーボネート中に含まれる微量の塩素系有機溶媒や添加剤の分解によって生じる酸性物質および添加剤に含まれる酸性の不純物等が金型表面に付着した状態で湿気に晒されることによって、金型の腐食が著しく促進されるからであると考えられている。
特許文献5にはグリセリンモノステアレートなどの高級脂肪酸と多価アルコールの部分エステルをポリカーボネート樹脂に添加することで金型腐食の抑制に効果があるポリカーボネート樹脂組成物が得られることが開示されている。
また特許文献6には脂環式エポキシ化合物をポリカーボネート樹脂に添加することで金型の腐食を抑制するポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。しかし、車両用透明部材に求められる特性を満足するものではなかった。
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂(A成分)に、特定の脂肪酸エステル(B成分)、特定のエポキシ化合物(C成分)、紫外線吸収剤(D成分)およびリン系安定剤(E成分)を添加した樹脂組成物は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、
1. (A)100重量部のポリカーボネート樹脂(A成分)、
(B)0.005〜1重量部の、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのエステル(B成分)、
(C)0.003〜0.2重量部のエポキシ化合物(C成分)、
(D)0.01〜1重量部の紫外線吸収剤(D成分)、並びに
(E)0.001〜0.5重量部のリン系安定剤(E成分)、
を含有する樹脂組成物であって、
B成分およびC成分は溶融押出法で製造された粘度平均分子量24,500のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上であることを特徴とする樹脂組成物、
2. リン系安定剤(E成分)が、ホスファイト系化合物およびホスホナイト系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である前項1記載の樹脂組成物、
3. ヒンダードフェノール系安定剤(F成分)をポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、0.001〜0.5重量部含有する前項1または2記載の樹脂組成物、
4. 前項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を射出成形してなる成形品、
5. 成形品が車両用透明部材である前項4記載の成形品、
が提供される。
図2は、実施例において成形した自動車の素通し型ヘッドランプレンズの成形品を示す。図示されるとおり該レンズはドーム状の形状である。[2−A]は正面図(成形時のプラテン面に投影した図。したがってかかる面積が最大投影面積となる)を示し、[2−B]はA−A線断面図を示す。
図3は、金型腐食性の評価に使用した金型(キャビティーサイズ横42mm×縦24mm×深さ3mmt、金型鋼材NAK80にて作成した腐食評価用入れ子(20mmφ)挿入)の概要図を示す。
2 楕円の長軸半径(10cm)
3 楕円の短軸半径(4cm)
4 ジグの幅(4cm)
5 押え金具(それぞれ幅1cm)
6 楕円中心から最も少ない歪みでクラックが生じている部分までの水平距離(cm)
7 ポリカーボネート樹脂シート
8 最も少ない歪みでクラックが生じている部分
11 ヘッドランプレンズ本体
12 レンズのドーム状部分
13 レンズの外周部分
14 成形品のゲート(幅30mm、ゲート部の厚み4mm)
15 スプルー(ゲート部の直径7mmφ)
16 レンズの外周部分の直径(220mm)
17 レンズのドーム部分の直径(200mm)
18 レンズのドーム部分の高さ(20mm)
19 レンズ成形品の厚み(4mm)
20 ゲート
21 スプルー
22 腐食評価用入れ子(鋼材NAK80、20mmφ)
(ポリカーボネート樹脂:A成分)
ポリカーボネート樹脂(A成分)は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。ポリカーボネート樹脂(A成分)は、上記二価フェノールの単独重合体および二種以上の二価フェノールから構成される共重合体のいずれも選択できる。
なかでもビスフェノールAなどビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンの単独重合体、並びに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン(ビスフェノールAなど)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、およびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンから選択される2種以上の二価フェノールから構成される共重合体が好ましく使用される。特にビスフェノールAの単独重合体が好ましい。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
二価フェノールとカーボネート前駆体から各種重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。またポリカーボネート樹脂(A成分)は、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。更に単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
溶融法による反応は、通常、二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。また、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシドが挙げられる。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩が挙げられる。また、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒が挙げられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
上記以外の反応形式の詳細についても、成書および特許公報などで良く知られている。
ポリカーボネート樹脂(A成分)の分子量は、1.0×104〜10.0×104が好ましく、1.5×104〜3.0×104がより好ましく、1.7×104〜2.7×104が更に好ましく、18,000〜25,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂を使用した場合、本発明の樹脂組成物は十分な強度および成形時の良好な溶融流動性を有する。かかる良好な溶融流動性は、成形歪みの更なる低減を可能にするため好ましい。また上記範囲内の場合には、ハードコート処理などの2次加工への耐性も十分となる。尚、上記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が上記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。
ポリカーボネート樹脂(A成分)の粘度平均分子量(M)は、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A成分)の態様として以下のものを挙げることができる。すなわち、粘度平均分子量7.0×104〜30.0×104の芳香族ポリカーボネート(PC1)、および粘度平均分子量1.0×104〜3.0×104の芳香族ポリカーボネート(PC2)からなり、その粘度平均分子量が1.5×104〜4.0×104、好適には2.0×104〜3.0×104である芳香族ポリカーボネート(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート”と称することがある)も使用できる。
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネートは、PC1の存在によりポリマーのエントロピー弾性を大きくし、大型成形品の場合に好適に使用される射出プレス成形時においてより有利となる。例えばヘジテーションマークなどの外観不良はより低減でき、その分射出プレス成形の条件幅を広げることが可能である。一方PC2成分の低い分子量成分は全体の溶融粘度を低下し、樹脂の緩和を促進して、より低歪みの成形を可能とする。尚、同様の効果は分岐成分を含有するポリカーボネート樹脂においても認められる。
(ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのエステル:B成分)
本発明で使用するB成分は、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのエステル(脂肪酸エステル)であって、溶融押出法で製造された粘度平均分子量24,500のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上であることを特徴とする。
B成分は、脂肪族カルボン酸とペンタエリスリトールとを従来公知の各種方法によって反応させることで製造できる。反応触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、並びに2−エチルヘキシル錫などの有機錫化合物が挙げられる。
脂肪族カルボン酸の原料となる油脂としては、例えば牛脂および豚脂などの動物性油脂、並びにアマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、およびオリーブ油などの植物性油脂を挙げることができる。なかでもパーム油がその生産コストの有利性から広く使用されている。
本発明は、脂肪酸エステル(B成分)の限界応力が特定値以上となる場合に割れ耐性が良好に改善され得ることを見出したことに基づく。成形品の割れは、第1に金型表面に残留した脂肪酸エステルが、歪みや応力が大きく残留した高温のポリカーボネート樹脂と成形時に直接接触することにより生じると考えられる。また成形品の割れは第2に、かかる際に割れは生じなかったものの、ポリカーボネート樹脂は劣化し、その後の刺激により割れが生じやすい状況が形成されたために生じると考えられる。
脂肪酸エステル(B成分)の限界応力は12MPa以上であり、14MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましく、16MPa以上が更に好ましい。
上記の限界応力の試験方法は、通常、脂肪酸エステルが融点60℃以上の固体であることから、次のように行う。すなわち脂肪酸エステルの固体は加熱して溶融状態にし、4分の1楕円試験法の治具に設置された所定のポリカーボネート樹脂シートの表面一面に塗布される。その後かかるシートは120℃のギアオーブン中で24時間保管されて熱処理される。かかる処理後のシートは冷却され、表面の脂肪酸エステルを取り除いた後、そのクラックの発生位置から脂肪酸エステルの限界応力は評価される。尚、120℃での粘度があまりに低いためギアオーブン中の保管において、脂肪酸エステルがシート表面から容易に流れ落ちる場合には、脂肪酸エステルを染み込ませたガーゼをシート表面に載せることで処理を行う。更に、常温において既に液体のものについては加熱することなくシートの表面一面に塗布するか、またはかかる液体を染み込ませたガーゼをシート表面に載せて評価を行う。またかかる試験法において使用するポリカーボネート樹脂シートは、残留する歪みが極めて低いものが使用される。通常、溶融押出法により製造されたシートは残留する歪みが極めて低いためそのまま使用することができるが、万が一その歪みが大きい場合にはアニール処理などにより残留歪みを低減して試験を行う必要がある。なお、後述する実施例で、図1に示す4分の1楕円試験法用の治具により測定される限界応力は、その最大値が47MPaとなる。
B成分は、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルであることが好ましい。脂肪酸エステル(B成分)は、そのエステル化率は特に制限されないものの、エステル化率は60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。エステル化率が低く、水酸基価が高いエステルは上記の限界応力が12MPa以上を満みたすことができない。但し、本発明においてフルエステルとは、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよく、好ましくは85%以上である。
脂肪酸エステル(B成分)を含むポリカーボネート樹脂組成物が良好な離型性、低減された成形品内部の歪み、および改善された割れ耐性を有する理由は明らかではないものの次のように考えられる。
金型表面に残留した脂肪酸エステル(B成分)が直接に高温のポリカーボネート樹脂を攻撃し劣化させる。よってかかる攻撃性の弱い脂肪酸エステルが割れ耐性を改善すると考えられる。
B成分の脂肪酸エステル(B成分)の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜1重量部であり、0.01〜0.7重量部が好ましく、0.03〜0.5重量部がより好ましい。B成分の脂肪酸エステルが上記範囲を超えて少なすぎる場合には離型性の改善が十分でなく、割れ耐性も低下する。一方、脂肪酸エステル(B成分)が上記範囲を超えて多すぎる場合には成形品の透明性を損ない、成形耐熱性の低下によって割れ耐性も逆に低下する場合がある。
(エポキシ化合物:C成分)
エポキシ化合物(C成分)は、溶融押出法で製造された粘度平均分子量24,500のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上であることを特徴とする。
エポキシ化合物(C成分)を含むポリカーボネート樹脂組成物は、車両用透明部材等の高温高湿の環境化に晒される用途において、良好な耐沸水性を付与するとともに、成形機の金型腐食を抑え、かつ良好な成形品の割れ耐性を有する。特にリン系安定剤(E成分)と併用した場合に良好な耐沸水性を付与することができる。一方、成形品の割れ耐性を改善する理由は明らかではないが、上記の脂肪酸エステル(B成分)と同様の効果が考えられる。すなわち、金型表面に残留したエポキシ化合物(C成分)が直接に高温のポリカーボネート樹脂を攻撃し、劣化させる。よってかかる攻撃性の弱いエポキシ化合物が割れ耐性を改善すると考えられる。
エポキシ化合物(C成分)は、良好な耐沸水性を付与するという目的や、金型腐食を抑制するという目的に対しては、基本的にエポキシ官能基を有するもの全てが適用できる。しかしながら、本発明における車両用透明部材に用いられる成形品の場合には、加えて限界応力が12MPa以上であることが必要である。
このようなエポキシ化合物(C成分)としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物、メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体、スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体等が例示される。
エポキシ化合物(C成分)の限界応力は12MPa以上であり、14MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましく、16MPa以上が更に好ましい。なお、後述する実施例で、図1に示す4分の1楕円試験法用の治具により測定される限界応力は、その最大値が47MPaとなる。
エポキシ化合物(C成分)の含有量は、A成分100重量部に対して0.003〜0.2重量部である。好ましくはA成分100重量部に対して0.004〜0.15重量部であり、より好ましくは0.005〜0.1重量部である。エポキシ化合物(C成分)の含有量が0.003重量部未満であると、耐沸水性の改善効果が十分でなく、また本発明の樹脂組成物を成形する際の金型腐食の抑制効果が十分でない。エポキシ化合物(C成分)の含有量が0.2重量部を超えるとポリカーボネート樹脂の耐熱性が悪化し、結果として成形品の着色を引き起こす等の問題がある。
(紫外線吸収剤:D成分)
紫外線吸収剤(D成分)は、成形品に耐候性を付与できるものであれば、特に限定はされないが、特にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、および環状イミノエステル系化合物の紫外線吸収剤が好適に用いられる。
具体的にはベンゾフェノン系では、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
ベンゾトリアゾール系では、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’−ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示される。更に2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記フェニル基が2,4−ジメチルフェニル基である化合物が例示される。
環状イミノエステル系化合物では、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。中でも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適であり、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。
上記の中でもベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系および環状イミノエステル系化合物が好ましく、特にヘッドランプレンズにおいてはベンゾトリアゾール系および環状イミノエステル系化合物が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
紫外線吸収剤(D成分)の含有量は、A成分100重量部に対して0.01〜1重量部である。好ましくはA成分100重量部に対して0.03〜0.7重量部であり、より好ましくは0.05〜0.4重量部であり、さらに好ましくは0.08〜0.35重量部、特に好ましくは0.1〜0.3重量部である。紫外線吸収剤(D成分)の含有量がA成分100重量部に対して0.01重量部未満であると、目的とする樹脂組成物の耐候性能が十分でなく、紫外線吸収剤(D成分)の含有量が1重量部を超えると、紫外線吸収剤自体がその性質上黄色く着色する場合が多く、ポリカーボネート樹脂を黄色く着色するため、その黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を大量に添加することが必要となる。その結果として成形品の透明性の悪化や成形時に紫外線吸収剤の揮発分が多くなって金型汚染を引き起こす等の問題が生じる。
(リン系安定剤:E成分)
リン系安定剤(E成分)としては、特に成形時にポリカーボネート樹脂の劣化を抑制できるものであり、既にポリカーボネート樹脂の熱安定剤として知られたものが使用できる。例えば、ホスファイト系、ホスフェート系、ホスホナイト系の化合物が例示される。
ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができる。好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。特に、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
リン系安定剤(E成分)は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。リン系安定剤(E成分)は、特に、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。
リン系安定剤(E成分)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.001〜0.5重量部である。好ましくはA成分100重量部に対して0.003〜0.3重量部であり、より好ましくは0.005〜0.1重量部、さらに好ましくは0.01〜0.05重量部である。リン系安定剤(E成分)の含有量がA成分100重量部に対して0.001重量部未満であると、目的とするポリカーボネート樹脂の安定化効果が少なくなり、リン系安定剤(E成分)の含有量が0.5重量部を超えるとポリカーボネート樹脂の着色や成形品の割れ等を引き起こす可能性がある。
(ヒンダードフェノール系安定剤:F成分)
また本発明の樹脂組成物には、ヒンダードフェノール系安定剤(F成分)を含むことができる。ヒンダードフェノール系安定剤(F成分)としては、各種樹脂などに適用可能な酸化防止剤が利用できる。例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
ヒンダードフェノール系安定剤(F成分)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して好ましくは0.001〜0.5重量部である。より好ましくはA成分100重量部に対して0.01〜0.3重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.1重量部である。ヒンダードフェノール系安定剤(F成分)の含有量がA成分100重量部に対して上記範囲であるとポリカーボネート樹脂の安定化効果が十分で、且つポリカーボネート樹脂の着色や成形品の割れ等を引き起こす可能性が低減される。
(光安定剤)
また本発明の樹脂組成物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、およびポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。更にヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系および/またはトリアジン系紫外線吸収剤との併用が耐候性を効果的に向上させる。かかる併用では両者の重量比(光安定剤/紫外線吸収剤)は95/5〜5/95の範囲が好ましく、80/20〜20/80の範囲が更に好ましい。
光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。光安定剤の含有量はポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.0005〜3重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部が更に好ましく、0.05〜0.5重量部が特に好ましい。
(ブルーイング剤)
本発明の樹脂組成物は、更にブルーイング剤を樹脂組成物中0.05〜3ppm(重量割合)含むことが好ましい。ブルーイング剤は、ポリカーボネート樹脂成形品の黄色味を消すために有効である。特に紫外線吸収剤が使用されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によって樹脂製品が黄色味を帯びやすい現実があり、したがって成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。
ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明の樹脂組成物は、更に良好な色相を達成する。ここで重要な点はかかるブルーイング剤の含有量である。樹脂組成物中、ブルーイング剤が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の配合量は樹脂組成物中0.2〜2.5ppm、更に好ましくは0.3〜2ppmの範囲である。
ブルーイング剤としては代表例として、バイエル・ケミカルズ・ジャパン(株)製のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRRや、クラリアントジャパン(株)製のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
(染顔料)
本発明の樹脂組成物は、発明の目的を損なわない範囲で上記ブルーイング剤以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性を維持する点から、染料が好適である。好ましい染料としてはペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更にビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体、およびクマリン誘導体などの蛍光増白剤を使用することができる。これら染料および蛍光増白剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
(帯電防止剤)
本発明の樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合、帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり5重量部以下の組成割合が適切であり、0.05〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部がより好ましく、1.5〜3重量部の範囲が更に好ましい。
帯電防止剤としては例えば、(ii)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、0.5重量部以下の組成割合が適切であり、0.001〜0.3重量部が好ましく、0.005〜0.2重量部がより好ましい。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
帯電防止剤としては、例えば(iii)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、0.05重量部以下の組成割合が適切である。帯電防止剤としては、例えば(iv)グリセリンモノステアレート、無水マレイン酸モノグリセライド、および無水マレイン酸ジグリセライドなどのグリセリン誘導体エステルが挙げられる。該エステルはA成分100重量部あたり0.5重量部以下の組成割合が適切である。帯電防止剤としては、例えば(v)ポリエーテルエステルアミドなどのポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分100重量部あたり5重量部以下が適切である。他の帯電防止剤としては、例えば、(vi)カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属粉末、金属酸化物粉末などの非有機化合物が挙げられる。該非有機化合物は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。またこれらの(vi)に例示された非有機化合物は、帯電防止性能以外にも、熱線吸収剤として配合される場合がある。
(熱線吸収能を有する化合物)
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。更にメタリック顔料(例えば金属酸化物被覆板状充填材、金属被覆板状充填材、および金属フレークなど)も主として熱線を反射し熱線遮蔽能を発現する。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。
フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、好ましくは0.0005〜0.2重量部、より好ましくは0.0008〜0.1重量部、更に好ましくは0.001〜0.07重量部である。金属酸化物系近赤外線吸収剤および金属ホウ化物系近赤外線吸収剤は、A成分に対して0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。炭素フィラーはA成分に対して0.05〜5ppm(重量割合)の範囲が好ましい。またメタリック顔料は、A成分100重量部あたり好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.8重量部である。
(難燃剤)
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を含有することができる。難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、有機塩系難燃剤、芳香族リン酸エステル系難燃剤、あるいは、ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤等が挙げられ、それらを一種以上使用することができる。
ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤として、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤等が挙げられる。
有機塩系難燃剤として、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−クミルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(p−トルエンスルホン)イミドカリウム、ビス(ジフェニルリン酸)イミドカリウム、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸カリウム、ジフェニルリン酸カリウム、ジフェニルリン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウムあるいはカリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムあるいはカリウム等が挙げられる。
ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤として、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
芳香族リン酸エステル系難燃剤として、トリフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシリル)ホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)レゾルシンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)ヒドロキノンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)−4,4’−ビフェノールジホスフェート、テトラフェニルレゾルシンジホスフェート、テトラフェニルヒドロキノンジホスフェート、テトラフェニル−4,4’−ビフェノールジホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、同様のフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、(以下に示す「芳香族ポリホスフェート」は、フェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェートと含まない芳香族ポリホスフェートの両方を意味するものとする)、芳香環ソースがビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート等が挙げられる。
(他の樹脂やエラストマー)
本発明の樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを適宜目的に応じて配合することもできる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、適宜目的に応じて各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
(表面処理)
更に本発明の樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表向処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。
本発明の成形品はその割れ耐性が改善されていることから、かかる表面処理を行うのに極めて適している。殊に溶剤などポリカーボネート樹脂に悪影響を与える因子を含む表面処理に本発明の樹脂組成物は適し、特にハードコートに適している。
本発明で使用するハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤などが例示される。シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものである。シリコーン樹脂系ハードコート剤として、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物等が挙げられる。シリコーン樹脂系ハードコート剤は、更に2官能性のシロキサン単位および1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るため各種界面活性剤、例えば、シロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤などを添加してもよい。
有機樹脂系ハードコート剤としては、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂などが挙げられる。ここで多官能アクリル樹脂としてはポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレートなどの樹脂が挙げられる。
これらハードコート剤のうち長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系ハードコート剤、または処理が比較的簡便でかつ良好なハードコート層が形成される紫外線硬化型のアクリル樹脂または多官能アクリル樹脂が好ましい。シリコーン樹脂系ハードコート剤はプライマー層とトップ層から構成されるいわゆる2コートタイプ、並びに1層のみから形成されるいわゆる1コートタイプのいずれも選択できる。
かかるプライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分およびポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、およびポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレートなどの各種多官能アクリル樹脂を挙げることができる。これらは単独でも2種以上を併用して使用することもできる。これらの中でも好ましくはアクリル樹脂、多官能アクリル樹脂が50重量%、より好ましくは60重量%以上含有するものを挙げることができ、特にアクリル樹脂およびウレタンアクリレートからなるものが好ましい。これらは未反応状態のものを塗布後所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、並びに反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は通常樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布されその後溶媒が除去される。また前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
更に、ハードコート層を形成する樹脂には、上述した光安定剤や紫外線吸収剤、並びに触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤および添加助剤を含むことができる。
コート方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材となる成形品の形状に応じて適宜選択することができる。中でも複雑な成形品形状に対応しやすいディップコート法、フローコート法、およびスプレーコート法が好ましい。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分、B成分、C成分、D成分、E成分並びに任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。各成分の一部を予備混合する方法としては例えば、脂肪酸エステル(B成分)、エポキシ化合物(C成分)、紫外線吸収剤(D成分)、リン系安定剤(E成分)およびヒンダードフェノール系安定剤(F成分)を予め予備混合した後、ポリカーボネート樹脂(A成分)に混合または押出機に直接供給する方法が挙げられる。
また予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドして、パウダーで希釈した添加剤のマスターバッチとする方法が挙げられる。更に一成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。更に、ポリカーボネート樹脂中の不要な揮発成分を効率的に取り除くために、ベントの前に水等の液体を注入する装置を備えていてもよい。かかる液体の注入量はポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、0.1〜3重量部が好ましい。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後、かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。
本発明の樹脂組成物からなるペレットを射出成形して成形品を得ることができる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また本発明の樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
本発明の樹脂組成物は、良好な透明性、耐候性、耐沸水性および成形耐熱性に加えて、良好な離型性、低減された成形品の内部歪み、改善された割れ耐性および優れた金型の腐食抑制効果を有することから、各種の高い品質が要求される各種の透明部材において好適に用いられる。
かかる透明部材としては例えば、各種車両用透明部材(ヘッドランプレンズ、ウインカーランプレンズ、テールランプレンズ、樹脂窓ガラス、メーターカバーなど)、照明灯カバー、樹脂窓ガラス(建築用など)、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用レンズ、タッチパネル、および遊技機(パチンコ機など)用部品(前面カバー、回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などを挙げることができる。更にこれらの中でもハードコート処理がなされる成形品が、本発明の樹脂組成物に対し特に適するものである。
すなわち本発明によれば、本発明のA成分、B成分、C成分、D成分、E成分の上記所定量からなる樹脂組成物の成形品が提供され、更に好適にはその表面にハードコート処理がなされた成形品が提供される。
より好ましくはこれらの中でも上記のごとく品質要求が高く、大型の成形品である車両用透明部材が好適に挙げられ、特にヘッドランプレンズ、更に詳しくは素通し型のヘッドランプレンズが好適に挙げられる。尚、ここで素通し型のヘッドランプレンズは、集光作用をリフレクターで行うランプのカバー、ランプユニットを一体として有するランプユニットのカバーおよびこれらに類するものを含む。
本発明は、樹脂組成物を射出成形して成形品を製造する際の、成形品中のひずみを抑制する方法であって、樹脂組成物としてポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのエステル(B成分)0.005〜1重量部、エポキシ化合物(C成分)0.003〜0.2重量部、紫外線吸収剤(D成分)0.01〜1重量部、並びにリン系安定剤(E成分)0.001〜0.5重量部を含有する樹脂組成物であって、B成分およびC成分は溶融押出法で製造された粘度平均分子量24,500のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上である樹脂組成物を用いることを特徴とする方法を包含する。
本発明は、樹脂組成物を射出成形して成形品を製造する際の、成形品の割れを抑制する方法であって、前記樹脂組成物を用いることを特徴とする方法を包含する。成形品が、車両用透明部材であることが好ましい。
(1)脂肪酸エステル(B成分)とエポキシ化合物(C成分)の限界応力
図1に示す4分の1楕円試験法用の治具に設置して限界応力を測定した。試験片として、Tダイを用いた押出成形により製造した粘度平均分子量24,500、および厚み1mmのポリカーボネート樹脂シート(曲げ弾性率Eb=2,040MPa)から、長さ120mmおよび幅40mmの大きさにカッターナイフを用いて丁寧に切り出した試験片を用いた。かかるポリカーボネート樹脂シート(符号7)を治具に取り付け、楕円の曲面に沿うように押え金具(符号5)で固定し、シート面にあらかじめ溶融させた脂肪酸エステル(B成分)およびエポキシ化合物(C成分)をそれぞれ塗付した。その後120℃で24時間ギアオーブン中に保持し最も少ない歪みでクラックが生じている部分(符号8)の楕円中心(符号1)からの水平距離X(cm)(符号6、すなわち楕円短軸からクラック発生点までの水平距離)を測定した。試験に使用した治具において距離Xとポリカーボネート樹脂シートのひずみεの関係は次のようになる。
ε=0.02×(1−0.0084X2)−3/2t
t:ポリカーボネート樹脂シートの厚さ(cm)
X:楕円中心から最も少ない歪みでクラックが生じている部分までの水平距離(cm)
本発明の試験においてt=0.1であることから、ひずみεは下記式より求めた。
ε=2×(1−0.0084X2)−3/2×10−3
更にクラックの発生の限界応力は上記のεの値から下記式により求めた。
限界応力(MPa)=ε×Eb
Eb:ポリカーボネート樹脂の曲げ弾性率(MPa)
(2)透明性
最大型締め力が85Tonの射出成形機にて、シリンダー温度350℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル60秒で成形して得た成形板(縦90mm×横50mm×厚み2mm)について、日本電色(株)製NDH−2000を用いて、ISO14782に準じてHazeを測定した。Hazeの数値が大きいほど光の拡散が大きく、透明性に劣ることを示す。
(3)耐候性
最大型締め力が85Tonの射出成形機にて、シリンダー温度350℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル60秒で成形して得た成形板(縦90mm×横50mm×厚み2mm)を、サンシャイン・ウェザーメーター(スガ試験機(株)製:WEL−SUN:HC−B)を使用し、ブラックパネル温度63℃、湿度50%、18分間水噴霧と102分間噴霧無しの計120分サイクルの条件で1,000時間処理した。処理の前後の色相変化(ΔYI)は、日本電色(株)製SE−2000を用いて透過光を測定して得られたX、YおよびZ値からASTM−E1925に基づき、下記式にて求めた。ΔYIが大きいほど耐候性に劣ることを示す。
YI = [100(1.28X−1.06Z)]/Y
ΔYI = 処理後の成形板のYI − 処理前の成形板のYI
(4)耐沸水性
最大型締め力が85Tonの射出成形機にて、シリンダー温度350℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル60秒で成形して得た成形板(縦90mm×横50mm×厚み2mm)を、ヤマト科学(株)製オートクレーブSN510を使用して、温度120℃、湿度100%の条件で48時間処理した。処理前後のHazeを、日本電色(株)製NDH−2000を用いて、ISO14782に準じて測定し、処理前後のHazeの変化(ΔHaze)を下記式にて求めた。ΔHazeが大きいほど耐沸水性に劣ることを示す。
ΔHaze = 処理後の成形板のHaze − 処理前の成形板のHaze
(5)成形耐熱性
最大型締め力が85Tonの射出成形機にて、シリンダー温度350℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル60秒で成形して「滞留前の成形板」(縦90mm×横50mm×厚み2mm)を得た。さらに、該射出成形機のシリンダー中に樹脂を10分間滞留させた後に成形して、「滞留後の成形板」(縦90mm×横50mm×厚み2mm)を得た。滞留前後の成形板の色相(L、a、b)を、日本電色(株)製SE−2000を用いてC光源反射法で測定し、下記式により色差ΔEを求めた。ΔEが大きいほど成形耐熱性に劣ることを示す。
ΔE={(L−L’)2+(a−a’)2+(b−b’)2}1/2
「滞留前の成形板」の色相:L、a、b
「滞留後の成形板」の色相:L’、a’、b’
(6)離型性
最大型締め力75Tonの射出成形機にて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃、射出圧力118MPaの条件で70mmφ×20mm、厚み4mmのコップ型成形品を成形する際の突き出しピンにかかる突き出し荷重を測定し、30ショット成形した平均値を離型荷重として示した。離型荷重が大きいほど、離型性が劣ることを示す。
(7)応力割れ試験
(7−1)成形時の割れ
上記の離型性の測定と同条件でコップ型成形品を1,000ショット連続成形し、成形直後に割れが発生したものを×、全く割れが発生しなかったものを○とした。
(7−2)ハードコート処理後の割れ
上記(7−1)の成形で割れが発生しなかったコップ型成形品を100個使用し、実施例に示すコーティング剤でハードコート処理を行い成形品にクラックが発生したものを×、全く割れが発生しなかったものを○とした。
(8)成形品のひずみ
図2に示す素通し型のヘッドランプレンズをシリンダー温度320℃および金型温度80℃の条件で、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いて30ショット分成形し、120℃で2時間アニール処理した。その後かかる成形品を偏光面が直行する2枚の偏光板の間に置き、その陰影(歪み−2)の有無を観察した。30個の成形品を観察し、その陰影の程度を下記の基準に基づき評価した。
○:陰影は、そのコントラストが比較的薄く、わずかに観察される
△:陰影は、そのコントラストがある程度強く、明確に観察される
×:陰影は、そのコントラストが強く、極めて明確かつ大面積にわたって観察される。
(9)金型腐食性
図3に示す形状の金型(キャビティーサイズ横42mm×縦24mm×深さ3mmt、金型鋼材NAK80にて作成した腐食評価用入れ子(20mmφ)挿入)を用いて最大型締め力が85Tonの射出成形機にて500ショット連続成形した後、腐食評価用入れ子を金型から取り外し、50℃×90%RHに設定した恒温恒湿機に2時間入れたのち外観観察を目視にて行い、金型鏡面の腐食の有無を判定した。尚、判定基準は以下のとおりである。
○:腐食は鏡面の5%以下である
△:鏡面の5%を超えて50%以下に腐食が認められる
×:鏡面の50%を超えて腐食が認められる
実施例1〜16、比較例1〜6
ビスフェノールAとホスゲンから界面重縮合法により製造されたポリカーボネート樹脂100重量部に、表1記載の各種添加剤を表1記載の配合量で添加し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練しペレットを得た。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量30kg/h、スクリュー回転数300rpm、ベントの真空度2kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで270℃とした。
得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、上記の射出成形機を用いて、シリンダー温度350℃および金型温度80℃の条件で、縦90mm×横50mm×厚み2mmの板を成形した。射出成形機は(株)日本製鋼所製:J85ELIIを使用した。得られた成形板の各評価結果を表1に示した。
また、実施例で得られたペレットを同様の方法で乾燥した後、シリンダー温度320℃および金型温度80℃の条件で、図2に示す素通し型のヘッドランプレンズを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いて作成した。このヘッドランプレンズのひずみ(歪―2)の評価結果を表1に示す。
また実施例1〜16のヘッドランプレンズを120℃で2時間アニール処理した後(上記評価(8)を終了した後)、下記に示すアクリル樹脂塗料(i−1)を、熱硬化後の膜厚が6.0μmになるようにディップコート法によって両面塗布し、25℃で20分静置後、130℃で1時間熱硬化させた。次いで該レンズ成形品の被膜表面上に下記に示すオルガノシロキサン樹脂塗料(ii―1)を熱硬化後の膜厚が4.0μmになるようにディップコート法で塗布し、25℃で20分静置後、120℃で1時間熱硬化させ、ハードコート処理を行った。得られたヘッドランプレンズを観察したところ割れの発生はなかった。
(A成分)
A−1:ビスフェノールAとホスゲンから界面重縮合法により製造された粘度平均分子量19,700のポリカーボネート樹脂パウダー
A−2:ビスフェノールAとホスゲンから界面重縮合法により製造された粘度平均分子量22,400のポリカーボネート樹脂パウダー
(B成分)
B−1:上記評価法による限界応力値が18MPaであるペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのエステル(理研ビタミン(株)製:リケスターEW−400 なお、脂肪族カルボン酸は植物性油脂を原料とするものである。)
(B成分以外の脂肪酸エステル)
B−2:上記評価法による限界応力値が11MPaであるグリセリンモノ脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
(C成分)
C−1:上記評価法による限界応力値が47MPaであるスチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体(日油(株)製:マープルーフG−0250SP)
C−2:上記評価法による限界応力値が47MPaであるメチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体(日油(株)製:マープルーフG−0150M)
C−3:上記評価法による限界応力値が47MPaである3,4−エポキシシクロヘキシルメチルー3’,4’ーエポキシシクロヘキシルカルボキシレート
(C成分以外のエポキシ化合物)
C−4:上記評価法による限界応力値が2MPaであるエポキシ化大豆油(日油(株)製:ニューサイザー510R)
(D成分)
D−1:紫外線吸収剤(2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79)
D−2:紫外線吸収剤(2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(錦海化学(株)製:UV−0901)
D−3:紫外線吸収剤(2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、チバ・ジャパン(株)製:チヌビン1577)
(E成分)
E−1:ホスホナイト系熱安定剤(主成分テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、クラリアントジャパン(株)製:ホスタノックスP−EPQ)
E−2:ホスファイト系熱安定剤(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、チバ・ジャパン(株)製:イルガフォス168)
(F成分)
F−1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チバ・ジャパン(株)製:イルガノックス1076)
(その他添加剤)
H−1:ブルーイング剤(下記式で示されるアントラキノン系化合物、バイエル・ケミカルズ・ジャパン(株)製:マクロレックスバイオレットB)
(ハードコート用組成物)
(アクリル共重合体溶液(A)の合成)
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート79.9部、シクロヘキシルメタクリレート33.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13.0部、メチルイソブチルケトン126.6部(以下MIBKと省略する)および2−ブタノール(以下2−BuOHと省略する)63.3部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと省略する)0.33部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.08部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、不揮発分濃度が39.6%のアクリル共重合体溶液(A)を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;クロロホルム)からポリスチレン換算で125,000であった。
(アクリル樹脂塗料(i−1)の調製)
前記アクリル共重合体溶液(A)100部に、MIBK43.2部、2−BuOH21.6部、1−メトキシ−2−プロパノール83.5部を加えて混合し、チヌビン400(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製トリアジン系紫外線吸収剤)5.3部、アクリル樹脂溶液(A)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100(デグサ・ジャパン(株)製ポリイソシアネート化合物前駆体)10.6部を添加し、さらにジメチルジネオデカノエート錫(DMDNT)0.015部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂塗料(i−1)を得た。
(オルガノシロキサン樹脂塗料(ii−1)の調製)
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製 カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%)133部に1Mの塩酸1.3部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン162部を滴下して加えた。メチルトリメトキシシランの滴下直後から反応熱で混合液の温度は上昇を開始し、滴下開始から5分後に60℃まで温度上昇した後、冷却の効果で徐々に混合液温度が低下した。混合液の温度が30℃になった段階でこの温度を維持するようにして30℃で10時間攪拌し、これに、硬化触媒としてコリン濃度45重量%のメタノール溶液0.8部、pH調整剤として酢酸5部、希釈溶剤としてイソプロピルアルコール200部を混合し、オルガノシロキサン樹脂塗料(ii−1)を得た。
発明の効果
本発明の樹脂組成物およびその成形品は、透明性、耐候性、耐沸水性、成形耐熱性および離型性に優れる。また本発明の成形品は内部歪みが低減され、並びに割れ耐性が良好である。
更に本発明の樹脂組成物は、その特有の特徴から車両用透明部材以外にも、建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、および温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、消音壁、バイクの風防、銘板、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用カバー、タッチパネル、並びに遊技機(パチンコ機など)用部品(回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などの幅広い用途に使用可能である。したがって、本発明の樹脂組成物は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具および雑貨などの各種用途に有用である。
Claims (5)
- (A)100重量部のポリカーボネート樹脂(A成分)、
(B)0.005〜1重量部の、ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸とのエステル(B成分)、
(C)0.003〜0.2重量部のエポキシ化合物(C成分)、
(D)0.01〜1重量部の紫外線吸収剤(D成分)、並びに
(E)0.001〜0.5重量部のリン系安定剤(E成分)、
を含有する樹脂組成物であって、
B成分およびC成分は溶融押出法で製造された粘度平均分子量24,500のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂シートに対し、4分の1楕円試験法において温度120℃で24時間処理した際の限界応力が12MPa以上であることを特徴とする樹脂組成物。 - リン系安定剤(E成分)が、ホスファイト系化合物およびホスホナイト系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
- ヒンダードフェノール系安定剤(F成分)を、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、0.001〜0.5重量部含有する請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
- 車両用透明部材である請求項4記載の成形品。
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