JP3078820B2 - サポニンの製造方法 - Google Patents

サポニンの製造方法

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JP3078820B2 JP02086897A JP8689790A JP3078820B2 JP 3078820 B2 JP3078820 B2 JP 3078820B2 JP 02086897 A JP02086897 A JP 02086897A JP 8689790 A JP8689790 A JP 8689790A JP 3078820 B2 JP3078820 B2 JP 3078820B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、サポニンの製造法に関する。更に詳しくは
薬用人参形質転換根をタービン内蔵型培養槽を用いるこ
とにより、効率よく大量にサポニンを製造する方法に関
する。
〔従来の技術〕
従来、薬用人参のサポニンの製造法としては、天然の
薬用人参から抽出する方法、培養植物組織から抽出する
方法、毛根病菌(Agrobacterium rhizogenes)を感染さ
せて得られた形質転換根から抽出する方法が知られてい
る。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来技術の問題点 しかしながら、天然植物からの抽出方法においては、
天然植物のサポニン含量が一般に非常に低く、野生状態
の植物それ自体が激減しつつあり、更に野外での栽培も
5年から7年もの長期間が必要であるために気候変化を
受ける傾向が大きい等の欠点があった。また、培養組織
や形質転換根からの抽出方法においては、生育速度が起
源植物よりも早くなるものの、サポニンの工業的な大量
生産を想定した場合、その生産性は依然、低いレベルで
ある。
発明の目的 本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意研
究を重ねた結果、薬用人参(Panax ginseng)に毛根病
菌(Agrobacterium rhizogenes)を感染させて得られ
た形質転換根を特定のタービン内蔵型培養槽で培養する
こと、また培養途中で培地を新鮮な培地に交換すること
により、上記問題点を解決できることを見いだし、この
知見に基づいて本発明を完成するに至った。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、請求項1記載の発明は薬用人参(Panax gi
nseng)に毛根病菌(Agrobacterium rhizogenes)を感
染させて得られた形質転換根を支持網付きドラフトチュ
ーブが内接されているタービン内蔵型培養槽で培養する
ことを特徴とするサポニンの製造方法に関する。
請求項2記載の発明は、形質転換根の培養の途中で培
地を交換することを特徴とするサポニンの製造方法に関
する。
請求項3記載の発明は、培地交換を7〜10日毎に行う
ことを特徴とするサポニンの製造方法に関する。
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
本発明に使用する薬用人参の形質転換根とは、薬用人
参(Panax ginseng)に毛根病菌(Agrobacterium rhizo
genes)を感染させて誘導した根を言う。
本発明に使用される薬用人参は上記のものに限定され
るものではなく、Panax属であるならば、いずれでも良
い。
それらの中で例を挙げるとトチバニンジン(Panax ja
ponicum)、チクセツニンジン、アメリカニンジン、三
七ニンジンなどが挙げることができる。
感染方法は無菌個体に毛根病菌を直接摂取する直接接
種法、無菌個体より得たカルスでの浸漬法、プロトプラ
ストとの共存培養法、リーフディスク法等、いずれの方
法でもよい。こうして感染させた植物体を一定期間培養
すると多数の毛状組織が形成される。
具体的には、滅菌処理した針の先端に毛根病菌を付着
させて、一方発芽後1年ぐらいまでの若い植物体を滅菌
し、その無菌植物体に針を突き刺して感染させ、この植
物体を数週間から数カ月間培養すると、細菌の接種部位
やその周辺に多数の毛状組織が形成される。
尚、培養に用いる培地は、例えばムラシゲ・スクーグ
(Murashige−Skoog)培地、リンスマイヤー・スクーグ
(Linsmeier−Skoog)培地(LS培地)、ホワイト(Whit
e)培地、ガムボルグ(Gamborg)培地、ニッチ・ニッチ
(Nitsch−Nitsch)培地、コーレンバッハ・シュミット
(Kohlingach−Schmidt)培地等の植物組織培養に用い
られる普通の培地である。
上記の方法により得られた毛状組織を一本一本別々に
切り出し、抗生物質、例えばカルベニシリンまたはバン
コマイシン0.1〜5mg/mlを含む寒天培地、例えばLS培地
に移植する。組織が約5〜15cm伸長してから、その先端
を約0.5〜1cm切取り、もう一度前記抗生物質を含む別の
寒天培地に植え継ぐ。再び、組織が約5〜15cm伸長して
から、その先端約0.5〜1cmを切り取ると、その先端部分
には、感染に使用した細菌はもはや含まれていない。感
染細菌を取り除く培地は、前記のLS培地の他、前記の植
物組織培養に用いられる培地のいずれの培地であっても
よい。また、培養温度は15〜30℃好ましくは約20〜26℃
であり、光の照射は特に必要ではない。
こうして得られた先端部分は液体培地に移す。使用す
る培地は、前記の植物組織培養に用いる一般的な培地で
よいが、但し、寒天を添加せずに液体培地とする。三角
フラスコ等を用いて、振とう培養し、生長した形質転換
根は、ジャー培養の種として使用する。なお、培養条件
は、回転式振とう培養機あるいは往復式振とう培養機
で、回転数は50〜250rpmの範囲、そして往復数は50〜15
0回/分の範囲であればよい。
本発明の特徴の一つは、ジャー培養にタービン内蔵型
培養槽を用いることである。本発明における「タービン
内蔵型培養槽」とは、特開昭62−210979号公報(出願
人:株式会社千代田製作所)等に記載されている、株式
会社千代田製作所製〔少なくとも、本件特許出願当時:
本件特許出願後の技術移転等により製造元が変動があっ
た場合は、株式会社千代田製作所(長野県更輪市八幡11
22−8)に問い合わせることにより、その変動の内容に
ついて特定することが可能である。なお、この製造元の
記載は、本発明における「タービン内蔵型培養槽」の具
体的な技術的内容を特定することのみを目的とする表示
であり、製造元の如何に係わらず、上記の公開公報等に
記載されている技術的事項により、かかる「タービン内
蔵型培養槽」の内容は特定される〕の、支持網付きドラ
フトチューブが内設されているタービン内蔵型培養槽の
ことを意味する。
具体的に、この「タービン内蔵型培養槽」は、筒型形
状の培養槽底部に、この槽の外側から内側方向に向かう
循環流を発生させるためのタービン内蔵型ポンプが設け
られ、かつ、支持網が設けられている円筒状のドラフト
チューブが、前記培養槽において、ほぼ同心に配置され
ている、タービン内蔵型培養槽である。
前記タービン内蔵型ポンプにより、培養槽内におい
て、培養物である形質転換根を支持網付きドラフトチュ
ーブにトラップし、トラップした上記培養物の周囲に、
強力な循環流を恒常的に発生させることにより、形質転
換根に対する培養液の接触を高く保つことが可能であ
り、かつ、従来の通気攪拌型培養槽における攪拌羽等の
機械力による形質転換根のダメージを少なくすることが
できる。また本発明で使用されるドラフトチューブの支
持網は、本形質転換根が支持網を通り抜けしないため
と、培養時に発生する水流が形質転換根に与えるストレ
スを軽減するために、目の細かなものを用いるとよい。
網の目の大きさは80メッシュ以上、好ましくは100〜160
メッシュである。通気量は、0.1vvm以上、好ましくは0.
3〜1vvm、回転数は50rpm〜300rpm、好ましくは150〜250
rpmである。
また、培養温度は15〜30℃、好ましくは20〜27℃であ
り、光の照射は特に必要ではない。培養に用いる培地は
上記の植物組織培養に用いる一般的な培地でよい。
このような条件下で本形質転換根を培養すると、他の
培養槽、例えば通気攪拌型やエアーリフト型培養槽など
に比べて良好な増殖が得られ、かつサポニン生産性が向
上する。
本発明のもう一つの特徴は形質転換根の培養途中で培
地を一定期間毎に新鮮な培地に交換することである。培
地の交換は、例えば20日以内に、このましくは7〜10日
毎に無菌的に行う。
この方法により、フラスコ培養や、ジャー培養でも培
地を交換をしない場合に見られる、培養途中での増殖速
度の低下を防止でき、また最終到達密度を非常に高密度
にできる。また、サポニン含量を増加させる効果も認め
られる。従って、サポニンを多量に含有する本形質転換
根を短期間のうちに、しかも大量に採取できることか
ら、サポニンの生産性が大幅に向上する。
〔発明の効果〕
請求項1記載のサポニンの製造方法においては、薬用
人参形質転換根を、タービン内蔵型培養槽で培養するこ
とにより、他の形式の培養槽で培養するのに比べて、前
記形質転換根の組織を、安定して、しかも早く増殖させ
る効果が認められる。このことから、サポニンの生産性
を向上させることができる。
請求項2、3記載の製造方法においては、細菌の培養
期間を大幅に短縮し、かつ培養液中の細胞密度を向上さ
せる効果があり、さらにサポニン含量を増加させる効果
が認められる。このことから、サポニンの生産性をさら
に向上させることができる。
〔実施例〕
次に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発
明を限定するものではない。
実施例1 会津若松の1年ものの薬用人参の根部を70%エタノー
ルとアンチホルミンで殺菌した後、YEB寒天培地上で一
晩増殖させたAgrobacterium rhizogenes(ATCC15834)
を針を使って接種した。3%ショ糖を含むLS寒天培地上
で15〜22℃、12時間暗期を含む24時間周期の5000ルクス
照射下で1〜2カ月間培養後、出現した不定根部を切り
出し、これを1mg/mlカルベニシリンを含むLS培地に移し
て1カ月培養した後、さらに同組織の新鮮培地で1カ月
培養して除菌した。得られた組織を三角フラスコを用
い、26℃、110rpmの条件下で液体振とう培養し(3%シ
ョ糖含有LS培地使用)、特に増殖速度が速いクローンと
してR52株を選抜した。
ジャー培養には千代田製作所製2Lのバイオリアクター
を用いた。支持網のメッシュを160に変更した。これに
3%ショ糖を含むLS培地を1.2Lいれてオートクレーブ滅
菌し、約一カ月間500mlフラスコで種培養したR52株を生
重量12g接種して培養を開始した。回転数200rpm、培養
温度26℃の条件で49日間培養後、得られた細胞を凍結乾
燥し、組織収量を測定した。乾重量の増加と培地中の電
気伝導度の現象は比例関係にあることがわかったので
(第1図に記載)、細胞の増殖経過は培地の電気伝導度
の減少量から求めた。この細胞をミルで粉砕し、これに
80%メタノールを加えて超音波下2時間サポニン抽出を
行った。このサポニン抽出液は濾過後エバポレーターで
濃縮乾固し、再度水に溶解したのち、セップパックでサ
ポニン以外の不純物を除去した。得られたサンプルはNH
2カラムを用いてHPLCで分析し、サポニン含量を定量し
た。得られたデータのうち増殖経過を第2図に、またジ
ンセノサイド含量を表−1に示す。
実施例2 実施例1と同様の形質転換根であるR52株を用い、ま
たジャー培養の回転数及び培養温度も実施例1と同様の
条件で培養した。培養開始後10日目にサンプリング口よ
り無菌的に内容液をすべて取り出し、予め滅菌しておい
た3%含有LS培地1.2Lを火炎下無菌的に培養槽内に添加
して培地の交換を図った。それ以後、培養終了まで、7
日毎に培地の交換を行った。培養は3回試み、各々の培
養日数は20、27、36日間とした。培養終了後、得られた
細胞を凍結乾燥し、組織収量を測定した。サポニン含量
は実施例1と同様に凍結乾燥した培養物から80%メタノ
ールで抽出後、NH2カラムを用いてHPLCにより定量し
た。
得られた結果を表−1及び第2図に示す。
比較例1 実施例1、2で用いたR52株をエアーリフト型培養槽
で培養した。詳しくは、ミツワ理化学工業製5Lジャーフ
ァメンターに細孔40μmの焼結金属製スパージャーを取
りつけ、LS培地3Lをいれて滅菌後、R52株を生重量70g接
種し、0.5vvmで35日間通気培養した。培養温度及びサポ
ニンの抽出定量法は実施例1と同様である。
得られた結果を表−1及び第2図に示す。
表−1から判るように、本発明の製造方法を用いる
と、従来の製造方法に比べて、効率良くしかも大量にサ
ポニンを生産することが示唆された。
【図面の簡単な説明】
第1図は培地の電気伝導度の減少量と細胞乾重量との関
係を表す図である。 第2図は実施例1、2及び比較例1の薬用人参形質転換
根の増殖経過を表す図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12N 15/09 C12N 15/00 A (C12P 19/44 C12R 1:91) (72)発明者 合津 陽子 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂研究所内 (72)発明者 柳 光男 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂研究所内 (72)発明者 瀬戸 進 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂研究所内 (72)発明者 清水 俊明 長野県更埴市大字鋳物師屋75―5 株式 会社千代田製作所研究所内 (72)発明者 寒河江 正太郎 長野県更埴市大字鋳物師屋75―5 株式 会社千代田製作所研究所内 (72)発明者 村田 和彦 長野県更埴市大字鋳物師屋75―5 株式 会社千代田製作所研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−283595(JP,A) 特開 昭62−210979(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/00 - 19/44 C12M 1/00 - 3/00 C12R 1:91

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】薬用人参(Panax ginseng)に、毛根病菌
    (Agrobacterium rhizogenes)を感染させて得られた形
    質転換根を、支持網付きドラフトチューブが内接されて
    いるタービン内蔵型培養槽で培養することを特徴とする
    サポニンの製造方法。
  2. 【請求項2】形質転換根を培養する際、培養途中で培地
    を交換することを特徴とする請求項1記載のサポニンの
    製造方法。
  3. 【請求項3】培地交換を7〜10日毎に行うことを特徴と
    する請求項2記載のサポニンの製造方法。
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