JPWO2010106619A1 - 色変換フィルター基板 - Google Patents

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Abstract

本発明は、基板と、基板上の少なくとも副画素部に形成された、異なる透過波長を有する複数のカラーフィルターと、基板の上方の非副画素部に形成された、硬化性樹脂からなるバンクと、少なくとも一部のカラーフィルターの上方領域であって、バンク間に画成された領域に、インクジェット法によってスリットパターンで形成された、光源の光を吸収し、吸収波長と異なる波長分布の光を発する色変換膜と、少なくとも一部のバンク上にフォトリソグラフ法によって形成された、スペーサーとを備え、スペーサーを形成するバンクが、他のバンクに比べて、側方断面視で、水平方向に張り出している色変換フィルター基板に関する。本発明によれば、色変換効率の高い色変換フィルター基板を、大画面ディスプレイの量産に好適に適用することができる。

Description

本発明は色変換フィルター基板に関する。より詳しくは、本発明の色変換フィルター基板は、色変換効率が高く、大画面ディスプレイの量産に好適に用いることができる色変換フィルター基板に関する。
有機EL素子を用いて多色発光を実現する方法の一つとして色変換法がある。色変換法は、有機EL素子の発光を吸収し、吸収波長と異なる波長分布の発光を行う色変換膜を有機EL素子の前面に配設して多色を表現する方法であり、色変換膜としては高分子樹脂へ蛍光色素を分散させたものがある。色変換法に関し、例えば、以下の技術が開示されている。
特許文献1には、(a)ローダミン系蛍光顔料と、(b)青色領域に吸収を有し且つ該ローダミン系蛍光顔料へのエネルギー移動又は再吸収を誘起する蛍光顔料と、を光透過性媒体に分散したものからなる赤色蛍光変換膜が開示されている。
この方式を用いた場合には、有機EL素子からの発光が単色でよいため、製造が容易であり、故に大画面ディスプレイへの応用が積極的に検討されている。また、この方式は、色変換膜とカラーフィルターとを組み合わせることによって、良好な色再現性が得られる等の利点を有する。
しかしながら、特許文献1に開示された色変換膜によって、優れた色変換効率を得るためには、色変換膜の厚さを10μm程度まで厚くする必要がある。また、この色変換膜の上面に有機EL素子を形成するためには、色変換膜の表面凹凸を平滑にする技術、及び色変換膜から生じた水分を遮断する技術等の、特殊な技術が必要となる。これらの付随的な特殊技術を採用することは、大画面ディスプレイの形成に際し、相当のコストアップにつながる。
このようなコストアップの問題を解決する方策として、有機EL素子の電極間にドライプロセスにて色変換能を有する層を配設する技術、具体的には、以下の技術が開示されている。
特許文献2には、有機化合物からなり互いに積層された蛍光体発光層及び正孔輸送層が陰極及び陽極間に配された構成の電界発光素子であって、上記蛍光体発光層は互に積層されかつ陽極側よりも陰極側の方が電気輸送能力が大なる一対の蛍光体薄膜からなる、電界発光素子が開示されている。特許文献2によれば、最適な色変換材料を選択すれば、水分発生の問題のない高効率且つ極薄(1μm以下)の色変換素子が実現できる、と考えられる。
また、特許文献2に開示された技術を更に改良した技術として、色変換膜の構成材料をインク化し、当該膜をインクジェット法でパターニングする方法が提案されている。
しかしながら、インクジェット法により、精密パターニングを行う際は、微量液滴を精密塗出させる必要があることから、増粘原因となるインク固形分比をあまり高くすることはできない。このため、必要膜厚を確保するために要する液滴の体積は必然的に大きなものとなることに鑑み、精度良くパターンを形成する技術として、以下の技術が開示されている。
特許文献3には、有機EL材料を含むインク組成物をインク吐出法により同一画素内に少なくとも2回以上吐出して製膜し、インク組成物をバンクで区画された領域内に吐出し、n回目(nは吐出回数)の吐出ドット径が、バンク径に比べて等しいかもしくは小さい有機EL素子の製造方法が開示されている。
しかしながら、バンクを形成する場合には、形状を特定するのみならず、濡れ性の制御も重要である。具体的には、インクを滴下する領域においては、その壁面をインクに対して撥液性の状態とし、下地をインクに対して親液性の状態とすることが肝要である。このような濡れ性に関する技術については、以下の技術が開示されている。
特許文献4には、無機材料で構成されるバンク形成面に有機材料でバンクを形成し、導入ガスをフッ素系としフッ素過多の条件下でプラズマ処理を行い、バンクで囲まれる領域に薄膜材料液を充填して薄膜層を形成し、有機物で形成したバンクを有する基板に、酸素ガスプラズマ処理後、フッ素系ガスプラズマ処理を行う、薄膜形成方法が開示されている。
以上のように、色変換膜を含む基板(色変換フィルター基板)については、各種技術が開示されているところ、色変換フィルター基板を、有機EL基板と貼り合わせることで、有機ELディスプレイを得ることができる。
例えば、色変換フィルター基板をトップエミッション構造の有機ELディスプレイに用いる場合には、有機EL基板(例えば、TFT素子を含む基板)と色変換フィルター基板とを貼り合わせた構成が一般的である。貼り合わせ方法としては、液晶で一般的な真空滴下貼り合わせ法などを用いることができる。
ここで、貼り合わせ時には、色変換フィルター基板に、有機EL基板との間のギャップを埋めるギャップ層を形成する。このギャップ層には、一般に、接着剤などの固体が用いられるが、液体又は気体を用いることもできる。
ギャップ層の形成において、両基板間のギャップを精密に制御する場合には、カラーフィルター若しくは色変換膜の上、又はそれらの周囲にスペーサーを形成することが知られており、例えば、以下の技術が提案されている。
特許文献5には、有機EL層の発光方向に位置する透明基板上に上記有機EL層と対向してブラックマトリックスと複数の着色樹脂領域とからなる有効領域と、上記有機EL層と上記透明基板との間に介在するスペーサーとを備え、上記スペーサーが上記ブラックマトリックス上に形成されており、上記スペーサーの頂面の面積の総和をA、上記有効領域の面積をSとした場合、AのSに対する比率Rが下記条件:0.05%≦R≦1%を満たすカラーフィルターが開示されている。
スペーサーの形成理由は、以下のとおりである。即ち、両基板間のギャップが広すぎる場合には、光が隣の副画素部に侵入するクロストークの問題が生ずる一方、当該ギャップが狭すぎる場合には、干渉の影響又は発光領域への機械的接触などの問題が生ずるためである。
また、特に、色変換方式を用いる有機ELディスプレイにおいては、色変換膜に入射する光量が色変換効率に大きく寄与するため、スペーサーによるギャップの精密な制御が必要である。
特開平08−286033号公報 特開平02−216790号公報 特開2001−291583号公報 特開2000−353594号公報 特開2004−311305号公報
ところで、トップエミッション型の有機ELディスプレイにおいて、上記ギャップ層に接着剤などの固体を含ませた場合には、その屈折率を高くすることができ、その結果、優れた光の取り出し効率を実現することができる。
これは、透明電極層、並びに色変換膜及びカラーフィルターの屈折率が1.5〜2.0程度であるところ、窒素及び不活性液体の屈折率が1.0〜1.3程度であるのに対し、エポキシ系接着剤などの屈折率が1.5以上であることによる。
また、ギャップ層に接着剤などの固体を含ませた場合には、有機ELディスプレイの優れた機械的強度を実現することもできる。
しかしながら、一般に、接着剤などの樹脂は、液晶などの液体に比べて粘度が高く、有機EL基板と色変換フィルター基板とを貼り合せる際の広がりに欠ける。
特に、色変換膜がインクジェット法によって形成される色変換フィルター基板の場合には、精度良く色変換膜を形成するために色変換フィルター基板側にバンクが形成されている。このため、両基板の貼り合わせ時には、カラーフィルターのライン方向へはギャップ層(樹脂)の広がりは阻害されないが、上記方向と垂直な方向に対しては、樹脂がバンクを乗り越えて広がらなければならない。よって、単純な滴下貼り合わせでは、外周シール材内側の隅々まで樹脂が広がらないことから、2〜3インチ程度のパネルであっても、画面の一部が樹脂で埋まらない不良が発生するそれがある。
このような樹脂の広がりの調整と、光学ギャップ調整とを併せて行うべく、上述のとおり、カラーフィルター若しくは色変換膜の上、又はそれらの周囲にスペーサーを形成する技術が知られている。スペーサーは、バンク上に、光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂などをフォトリソグラフ法で形成することができる。
通常、スペーサーは、表示部(画素)に対して10〜20%の割合でとびとびに存在するバンク上に塗布する。このため、特に画素の寸法が小さくなると、バンクの幅10〜15μmに対してスペーサーの幅が10μm前後となり、バンク及びスペーサーの寸法が非常に近くなり、バンク上でスペーサーがはみ出すなど位置ずれを起こすおそれがある。このような場合には、スペーサーの高さにムラが生ずることから、フォトマスクの高い位置合わせ精度が必要となる。
当該位置合わせに関する解決策として、色変換インクを塗布しない画素に、透明な樹脂材料又はバンクと同じ材料からなる埋め込み部を形成し、その上にスペーサーを形成する手段がある。
ここで、両基板の貼り合わせ後には、色変換フィルター基板の副画素と一対一に対向すべき有機EL基板の副画素に隣接する副画素からの発光が、色変換基板の上記副画素に入り込んで発生する混色を防止することが肝要である。
しかしながら、上記混色の防止に関し、インクジェット法で塗布する色変換膜のインクの漏れを防止すべく、バンクの高さを相当大きくした場合には、黒色等でのバンクの着色が困難となる。このため、上記埋め込み部だけに透明材料を用いることも考えられるが、バンクの形成以外に更に埋め込み部を形成することは、工数の増大を招く結果となり、実質的にコストアップにつながる。
従って、色変換効率が高く、量産にも優れた、安定性の高い有機ELディスプレイの生産が望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低コストでの大画面ディスプレイの量産が実現でき、特に、色変換効率の高い色変換フィルター基板を提供することにある。
本発明は、基板と、上記基板上の少なくとも副画素部に形成された、異なる透過波長を有する複数のカラーフィルターと、上記基板の上方の非副画素部に形成された、硬化性樹脂からなるバンクと、少なくとも一部のカラーフィルターの上方領域であって、上記バンク間に画成された領域に、インクジェット法によってスリットパターンで形成された、光源の光を吸収し、吸収波長と異なる波長分布の光を発する色変換膜と、少なくとも一部のバンク上にフォトリソグラフ法によって形成された、スペーサーとを備え、上記スペーサーを形成するバンクが、他のバンクに比べて、側方断面視で、水平方向に張り出している、色変換フィルター基板(タイプ1)に関する。本発明の色変換フィルター基板は、パーソナルコンピューター等に内蔵される多色発光有機ELデバイスの構成要素として利用することができる。
このような色変換フィルター基板においては、上記硬化性樹脂を、光硬化性樹脂又は光熱併用硬化性樹脂とすることができる。また、上記バンクを、上記基板上に形成されたブラックマトリクスの上方に形成することができる。更に、上記バンクの少なくとも一部が着色されていることが望ましく、上記着色が黒色によるものであり、且つ、上記バンクの可視域における透過率が10%以下であることが更に望ましい。
次に、本発明は、基板と、上記基板上の少なくとも副画素部に形成された、異なる透過波長を有する複数のカラーフィルターと、上記基板の上方の非副画素部に形成された、硬化性樹脂からなるバンクと、少なくとも一部のカラーフィルターの上方領域であって、上記バンク間に画成された領域に、インクジェット法によってスリットパターンで形成された、光源の光を吸収し、吸収波長と異なる波長分布の光を発する色変換膜と、上記領域のうち上記色変換膜を形成しない領域の両側に位置するバンク間に形成された、光硬化性樹脂又は光熱併用硬化性樹脂からなる埋め込み部材と、上記埋め込み部材上にフォトリソグラフ法によって形成された、スペーサーとを備え、上記バンクと上記埋め込み部材とが同時に形成されたものである、色変換フィルター基板(タイプ2)を包含する。タイプ2の色変換フィルター基板も、タイプ1の色変換フィルター基板と同様に、パーソナルコンピューター等に内蔵される多色発光有機ELデバイスの構成要素として利用することができる。
このような色変換フィルター基板においては、上記光硬化性樹脂又は光熱併用硬化性樹脂の硬化後の、波長領域350〜500nmの光に対する屈折率が、少なくとも1.5より大きいことが望ましい。更に、上記埋め込み部材が、側方断面視で、バンク上面に対して−1〜+1μmである平坦部を10μm以上含むことが望ましい。
本発明の色変換フィルター基板は、上記タイプ1,2のいずれの構成においても、低コストでの大画面ディスプレイの量産が実現でき、特に、優れた色変換効率を実現することができる。
図1Aは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す平面図である。 図1Bは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す、図1AのIB−IB線断面図である。 図1Cは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す、図1AのIC−IC線断面図である。 図2Aは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す平面図である。 図2Bは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す、図2AのIIB−IIB線断面図である。 図2Cは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す、図2AのIIC−IIC線断面図である。 図3は、色変換フィルター基板と貼り合わせる有機EL基板の一例を示す断面図である。 図4Aは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す平面図である。 図4Bは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す、図4AのIVB−IVB線断面図である。 図4Cは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す、図4AのIVC−IVC線断面図である。 図5は、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す断面図である。 図6は、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す断面図である。 図7は、従来の色変換フィルター基板の一例を示す断面図である。
符号の説明
10a,10b,10d,10e 本発明に係る色変換フィルター基板
12 透明基板
14 ブラックマトリクス
16R 赤色カラーフィルター
16G 緑色カラーフィルター
16B 青色カラーフィルター
18 親液層
20 バンク
20a バンク着色部
22 フォトスペーサー
24R 赤色変換膜
24G 緑色変換膜
24B 青色変換膜
26 バリア層
28 埋め込み部材
<色変換フィルター基板及びその形成方法>
図1A〜図1Cは、本発明の色変換フィルター基板の一例を示す図であり、図1Aはその平面図、図1Bは図1AのIB−IB線断面図、図1Cは図1AのIC−IC線断面図をそれぞれ示す。これらの図に示すところによれば、色変換フィルター基板10aは、透明基板12と、透明基板12上の副画素部を除く部分(非副画素部)に形成されたブラックマトリクス14と、その上に副画素部を覆うようにストライプ状に形成された、赤色、緑色、及び青色の各カラーフィルター16R,16G,16Bと、更にその上にブラックマトリクス14及びカラーフィルター16(R,G,B)を覆うように形成された親液層18と、親液層18上の非副画素部に形成されたバンク20と、非副画素部であって後述する色変換膜を形成しない領域を画成するバンク20上に形成されたフォトスペーサー22と、親液層18及びバンク20により画成された領域に形成された赤色、及び緑色変換膜24R,24Gと、バンク20、フォトスペーサー22、色変換膜24(R,G)、及び色変換膜が形成されていない親液層18の部分を覆うように形成されたバリア層26とを備える構造体である。
(透明基板12)
透明基板12としては、ガラス、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンスルホンなどの高分子材料を用いることができる。透明基板12は剛直であっても可撓性であってもよい。透明基板12は、可視光に対して80%以上の透過率を有することが好ましい。
(ブラックマトリクス14)
ブラックマトリクス14は、後述するカラーフィルター16(R,G,B)の配設位置におけるコントラストの向上を目的として配設される構成要素である。ブラックマトリクス14は可視域の光を透過しない材料をスロットパターンに形成する。
ブラックマトリクス14の材料には、アクリル型の樹脂などの感光性樹脂中に黒色化するための着色剤を混合したものなどを用いることができる。また、液晶表示装置に用いられるブラックマスク材料を適用してもよい。
ブラックマトリクス14は、透明基板12上に、スピンコート法などのウェットプロセスの塗布手段により塗布し、加熱乾燥した後、フォトリソグラフ法などによりパターニングを行って形成することができる。
なお、ブラックマトリクス14は、必要に応じて設けることによって、隣接する画素からの光の回り込み、即ち、隣接する副画素からの発光が、隣の副画素に対応したカラーフィルター層に漏れることを、効果的に防止することができる。これにより、高いコントラストを実現することができる。また、ブラックマトリクス14の形成は、後述する各カラーフィルター16(R,G,B)の形成により生ずる段差を低減させる点でも有効である。
(カラーフィルター16(R,G,B))
カラーフィルター16(R,G,B)は、一定領域の波長を有する光の色純度を、特定波長の遮断により向上させるための構成要素である。カラーフィルター16(R,G,B)は、透明基板12上に、フラットパネルディスプレイ用の材料を用いて形成することができ、例えば、フォトレジストに顔料を分散させた、顔料分散型材料を使用することができる。
カラーフィルター16は、600nm以上の波長の光を透過する赤色カラーフィルター16R、500〜600nmの波長の光を透過する緑色カラーフィルター16G、及び400〜550nmの波長の光を透過する青色カラーフィルター16Bを配列した構造とすることが一般的である。カラーフィルター16(R,G,B)の形成方法としては、塗布法を用いることができ、特に、フォトプロセスを用いることが好ましい。
(親液層18)
親液層18は、後述するように、色変換膜24(R,G)がインクジェット法で形成される場合に、色変換膜24(R,G)の濡れ性を向上させるために配設する構成要素である。
親液層18には、色変換膜24(R,G)として使用するインクの極性に応じて、スパッタ法又は化学気相堆積法(CVD法)により形成したSiOx膜、又はSiNx膜を用いることができる。
なお、親液層18を形成しない場合には、プラズマ処理などにより、カラーフィルター16(R,G,B)の上面と後述するバンク20との濡れ性を好適に制御することができる。
(バンク20)
バンク20は、後述する色変換膜24(R,G)のインクが隣接する他の副画素へ流れ込むことに起因する混色の発生を防止するために配設する構成要素である。
図1A〜図1Cに示す例においては、色変換膜24(R,G)をインクジェット法によって形成することが前提である。このため、色変換膜24(R,G)を精密にパターニングするには、微量液滴を精密塗出させる必要がある。よって、色変換膜24(R,G)に使用するインクについては、その増粘の原因となるインク固形分比を過度に大きくすることができない。従って、必要膜厚に対して液滴の体積が必然的に大きくなるため、隣の副画素への混色を防止し、各副画素のパターンを精度高く形成するためには、バンク20の形成が効果的である。
また、バンク20のパターン形状としては、副画素(各色のカラーフィルター16(R,G,B)の配設位置に略対応する領域)毎に区切るスロットパターンと、カラーフィルター16(R,G,B)のラインごとに区切るスリットパターンとがある。充填封止材の広がりを妨げず、かつ隣の副画素への混色を防止するためには、スリットパターン形状を採用することが好ましい。
ここで、図1A〜図1Cに示す例においては、後述するスペーサー22を形成するバンク(図1Cにおいて、右から2番目のバンク)が、他のバンクに比べて、側方断面視で、水平方向に張り出した形状としている。これにより、側方断面視において、水平方向に幅の広い土台としてのバンクを形成することで、スペーサー22の形状精度を向上させることができる。
バンク20の形成は、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂を、光及び/又は熱処理して、ラジカル種又はイオン種を発生させて重合又は架橋させ、不溶不融化させて行うことができる。また、該光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂は、パターニングを行うために硬化をする前は有機溶媒又はアルカリ溶液に可溶性であることが好ましい。
図1A〜図1Cに示す色変換フィルター基板10aにおいて、バンク20の材料として用いることのできる光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂としては、具体的に、以下のものが挙げられる。即ち、(1)アクロイル基又はメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマー及びオリゴマーと、光又は熱重合開始剤からなる組成物膜とを光または熱処理して、光ラジカル又は熱ラジカルを発生させて重合させたもの、(2)ポリビニル桂皮酸エステルと増感剤とからなる組成物を光又は熱処理により二量化させて架橋したもの、(3)鎖状又は環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物膜を光又は熱処理によりナイトレンを発生させ、オレフィンと架橋させたもの、並びに(4)エポキシ基を有するモノマーと光酸発生剤とからなる組成物膜を光または熱処理により、酸(カチオン)を発生させて重合させたものなどが挙げられる。
特に、上記(1)の光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂が高精細でパターニングが可能であり、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性の面でも好ましい。
その他、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルホン、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ノルボルネン系樹脂、メタクリル樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合樹脂、環状オレフィン系等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、イミド系樹脂、ウレタン系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、或いはポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート等と3官能性又は4官能性のアルコキシシランを含むポリマーハイブリッド等を用いることもできる。
以上は、上記タイプ1の色変換フィルター基板のバンク20の形態であるが、側方断面視で、水平方向に張り出したバンクの部分については、バンク20と異なる部材として形成することができ、特に、当該張り出し部を隣接するバンクまで延在させ、結果的に、張り出し部を埋め込み部材として形成する、上記タイプ2の形態とすることもできる。
このような埋め込み部材の形成材料、及び形成方法等の諸条件については、バンク20の諸条件と同一条件又はこれに準ずる条件であり、特に、バンク20と埋め込み部材とを同時に形成することが、経済的である点で好ましい。
また、埋め込み部材として使用する場合は光硬化性樹脂又は光熱併用硬化性樹脂の硬化後の、波長領域350〜500nmの光に対する屈折率が、少なくとも1.5より大きいことが好ましい。このように、より屈折率の高い材料を用いることで、色変換フィルター基板への有機EL素子基板からの光の入射効率を高められる。
更に、埋め込み部材が、側方断面視で、バンク上面に対して−1〜+1μmである平坦部を10μm以上含むこと好ましい。このような場合には、フォトリソグラフィーによるパターン位置ズレが発生した場合においても、スペーサー22の形状精度を向上させることができる。
次に、上記したバンク20は、図2A〜図2Cで示す例ように、その外周部分を着色することが好ましい。即ち、図2A〜図2Cは、本発明の色変換フィルター基板の他の例を示す図であり、図2Aはその平面図、図2Bは図2AのIIB−IIB線断面図、図2Cは図2AのIIC−IIC線断面図をそれぞれ示す。これらの図に示す色変換フィルター基板10bの各構成要素12〜26の使用材料及び形成条件等は、上記した、バンクを着色しない場合の色変換フィルター基板(10a)(図1A〜図1C)のそれらと同じである。
図2A〜図2Cに示す例では、図1A〜図1Cに示す例の構成に加えて、バンク20の側方及び上方の各外周部が着色され、これによりバンク着色部20aが形成されている。
この着色は、バンク20の可視域における透過率を低減させ、隣接する他の副画素への光の漏れによる色度の低下を抑制することを目的として形成された部分である。
このようなバンク着色部20aの着色は、透明なバンク材料に顔料若しくは染料を分散させること、又はバンク20に着色された膜を被覆することにより行うことができる。バンク材料に顔料又は染料を分散ることが、製造工数を減らせ経済的である点で好ましい。
例えば、上記着色においては、可視域における透過率低下させ色度の低下を抑制させることを満たす色を採用することができ、特に、黒色を採用して、バンク20の可視域における透過率を10%以下とすることが好ましい。
(フォトスペーサー22)
一般に、色変換フィルター基板をトップエミッション型の有機ELディスプレイに用いる場合には、有機EL基板(例えば、TFT基板)と色変換フィルター基板とを貼り合わせて当該ディスプレイを形成する。
この際、有機EL基板と色変換フィルター基板との貼り合わせ時のギャップを精密に制御する場合には、カラーフィルター若しくは色変換膜の上、又はそれらの周囲にスペーサーを設けることがある。これは、ギャップが広すぎる場合には、光が隣の副画素に侵入するクロストークの問題が発生する一方、狭すぎる場合には、干渉の影響又は発光領域への機械的接触などが生ずるためである。
特に、図1A〜図1Cに示すような色変換方式の有機ELディスプレイでは、色変換膜24(R,G)に入射する光量が色変換効率に大きく寄与するため、スペーサー22によるギャップ制御が重要となる。
スペーサー22の形状は、幅が10μm前後の円形、矩形又はそれらに順ずる形状とすることができるが、充填樹脂がバンク20と直交する方向(図1B,図1Cにおける水平方向)へ広がることを妨げない形状とすることが肝要である。また、光が隣の副画素に侵入するクロストークを発生させないためには、バンク20とスペーサー22それぞれ単体か重ね合わせて形成されるギャップを10μm以下とすることが必要であり、故にバンク20上に形成されるスペーサー22の高さは1〜3μm程度とすることが好ましい。
更に、充填樹脂がバンク20と直交する方向へ広がることを妨げず、かつディスプレイのパネル面内で貼り合わせギャップを一様に確保するには、カラーフィルター16(R,G,B)若しくは色変換膜24(R,G)の上、又はそれらの周囲にスペーサー22を離散的に形成することが好ましい。具体的には、1画素毎(3副画素毎)に1個程度のスペーサー22を形成することが好ましい。
しかしながら、表示部(画素部)に対して10〜20%の割合で離散的に形成されたバンク20上にスペーサー22を塗布する場合には、特に、画素部の精細度が高くなるに従い、バンク20の幅10〜15μmに対しスペーサー22の幅が10μm前後とこれらの大きさが非常に近くなる。このため、バンク20上でスペーサー22がはみ出すなど位置ずれを起こした場合には、スペーサー22の高さにムラが生じてしまうため、フォトマスクの高い位置合わせ精度が必要となる。
スペーサー22の形成は、光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂を、光及び/又は熱処理して、ラジカル種又はイオン種を発生させて重合又は架橋させ、不溶不融化させて行うことができる。また、該光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂は、パターニングを行うために硬化を行う前は有機溶媒又はアルカリ溶液に可溶性であることが好ましい。
一般に、スペーサー22は、ガラスビーズなどを散布して形成される。このような形成態様では、通常、バンク20とカラーフィルター16(R,G,B)との高さが異なり、しかも、スペーサー22がバンク20上又はカラーフィルター16(R,G,B)上に無作為に配置される。このため、バンク20よりもカラーフィルター16(R,G,B)が低い場合には、カラーフィルター16(R,G,B)上に配置されたスペーサー22の高さが比較的小さくなる。特に、色変換方式を用いる有機ELディスプレイにおいては、色変換膜に入射する光量が色変換効率に大きく寄与する。このため、スペーサーによるギャップの精密な制御が必要となり、スペーサー22を同一の高さに保持する必要がある。従って、スペーサー22としては、フォトリソグラフ法で形成できる材料を用いることがより好ましい。
図1A〜図1Cに示す色変換フィルター基板10aにおいて、フォトスペーサー22の材料として用いることのできる光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂としては、具体的に、以下のものが挙げられる。即ち、(1)アクロイル基又はメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマー及びオリゴマーと、光又は熱重合開始剤からなる組成物膜とを光又は熱処理して、光ラジカル又は熱ラジカルを発生させて重合させたもの、(2)ポリビニル桂皮酸エステルと増感剤とからなる組成物を光又は熱処理により二量化させて架橋したもの、(3)鎖状又は環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物膜を光または熱処理によりナイトレンを発生させ、オレフィンと架橋させたもの、並びに(4)エポキシ基を有するモノマーと光酸発生剤とからなる組成物膜を光又は熱処理により、酸(カチオン)を発生させて重合させたものなどが挙げられる。
特に、上記(1)の光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂が高精細でパターニングが可能であり、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性の面でも好ましい。
その他、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルホン、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ノルボルネン系樹脂、メタクリル樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合樹脂、環状オレフィン系等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、イミド系樹脂、ウレタン系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、或いはポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート等と3官能性又は4官能性のアルコキシシランを含むポリマーハイブリッド等を用いることもできる。
なお、スペーサー22は、その材料塗布時に、バンク20によって膜はじき及び/又は膜剥離が生じなければ、バンク20と同じ材質とすることも、又異なる材質とすることもできる。
(色変換膜24(R,G))
色変換膜24(R,G)は、光源からの光を吸収して、異なる波長分布の蛍光を発する機能を発揮する構成要素である。
色変換膜24(R,G)に適用できる材料としては、蛍光色素であって、Alq(トリス8−キノリノラトアルミニウム錯体)などのアルミキレート系色素、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、クマリン135などのクマリン系色素、ソルベントイエロー43、ソルベントイエロー44のようなナフタルイミド系色素のような低分子系の有機蛍光色素、ポリフェニレン、ポリアリーレン、ポリフルオレンに代表される高分子蛍光材料が挙げられる。
また、必要に応じてこれらの色素を複数混合して使用することもできる。このような混合手段は、青色から赤色への変換時などの、波長シフト幅が広い場合に有効な手段である。
図1A〜図1Cに示す色変換フィルター基板の形成においては、色変換膜24(R,G)は、インクジェット法により形成する。このため、パターニングの際にはこれら蛍光材料をインクに調製する必要があり、具体的には先述の蛍光材料を溶媒へ溶解させる。
溶媒としては、蛍光材料を溶解できるもののうち、使用蛍光材料に適合するものを適宜選択することができる。例えば、トルエン等の非極性有機溶媒、クロロホルム、アルコール、ケトン系などの極性有機溶媒等を使用することができる。インクの粘度、蒸気圧、及び/又は溶解性を調整する場合には、複数の溶媒を混合して使用することが好ましい。
(バリア層26)
バリア層26は、上記のようにパターニングした色変換膜24(R,G)が水及び/又は酸素の介在により劣化するような物質である場合に、色変換層24(R,G)への水等の浸入を防止して、その性能を安定させるために配設する構成要素である。
バリア層26の材料としては、ガス及び/又は有機溶剤に対するバリア性を有し、可視域における透明性が高い(400〜700nmの範囲で透過率50%以上)ものを使用することができる。例えば、SiOx、SiNx、SiNxOy、AlOx、TiOx、TaOx、ZnOx等の無機酸化物、無機窒化物等を使用することができる。
バリア層26の形成方法としては、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法等を用いることができるが、色変換膜24(R,G)へのダメージを回避するには、100℃以下の低温で実施でき、しかも粒子の有するエネルギーが比較的弱いCVD法を用いることが好ましい。
<有機ELディスプレイ及びその製造方法>
次に、上記の色変換フィルター基板10a,10b(バンク20を着色しない場合と着色した場合とのいずれか)を用いた、有機ELディスプレイについて併記する。
有機ELディスプレイは、色変換フィルター基板と有機EL基板とを貼り合わせて形成する。
[色変換フィルター基板及びその製造方法]
色変換フィルター基板及びその製造方法については、上述したとおりであり、例えば、図1A〜図1C及び図2A〜図2Cに示す基板を上述の各条件等に従い形成する。
[有機EL基板及びその製造方法]
図3に示すように、有機EL基板30は、基板32に、スイッチング素子34、平坦化層36、反射電極38、絶縁層40、有機EL膜42、透明電極44、及び無機バリア層46が順次形成された積層体である。
以下に、有機EL基板30の各構成要素32〜46を、その積層順に(図3の下側から順に)説明する。
(基板32)
有機ELディスプレイは、上述の色変換フィルター基板10a,10bと、有機EL基板と貼り合せたものであって、色変換フィルター基板10a,10b側から光を取り出すデバイスである。このため、有機EL基板の基板32は必ずしも透明でなくてよい。例えば、Al等の金属材料、ガラス、石英などの非晶質基板、及び樹脂等の透明ないし半透明材料を用いることができる。或いはまた、Si、GaAsなどの結晶性基板のように不透明な材料を用いることもできる。更に、ガラス等のほか、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施した材料、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、及びポリカーボネート等の熱可塑性樹脂などを用いることもできる。
(スイッチング素子34)
基板32上には、複数のスイッチング素子、並びにこれらを外部駆動回路に接続するための配線及び外部接続端子部分が形成されている。
スイッチング素子34は、例えば、薄膜トランジスタ素子(TFT素子)とすることができ、ゲート電極をゲート絶縁膜の下に設けたボトムゲートタイプであって、能動層として多結晶シリコン膜を用いた構造体とすることができる。具体的には、従来の多結晶シリコンのTFT素子を用いることができる。
なお、TFT素子は、各画素の端部であって後述する反射電極38に、図示しない配線電極を介して接続できるように形成する。形成方法は、公知のいずれの方法を用いてもよい。TFT素子の寸法は10〜30μm程度であることが好ましい。ちなみに、画素の寸法は、通常、20μm×20μm〜300μm×300μm程度である。
(平坦化層36)
平坦化層36は、スイッチング素子34を覆うようにして形成する任意選択的な構成要素である。
平坦化層36は、当該技術において知られている任意の樹脂を任意の方法で形成することができる。
(パッシベーション層)
図3には示さないが、平坦化層36を形成する樹脂から発生するガスの拡散を防止するために、平坦化層36上にパッシベーション層を任選択的に配設してもよい。
パッシベーション層は、単一層とすることも、また、複数の層からなる積層体とすることもできる。パッシベーション層は、無機酸化物(SiOなど)、無機窒化物(SiNなど)、及び無機酸窒化物(SiONなど)などから形成することができる。パッシベーション層は、スパッタ法、CVD法などにより形成することができる。
なお、平坦化層36及びパッシベーション層には、スイッチング素子34と後述する反射電極38とを接続するための複数のコンタクトホールを設けることが肝要である。コンタクトホールの形成には、ドライエッチングなどの方法を用いることができる。
(下地層)
図3には示さないが、スイッチング素子34と反射電極38との密着性を保証するための下地層を配設してもよい。下地層は、IZO、ITOなどの導電性酸化物を用いて、スパッタ法などによって形成することができる。下地層は、ウェットエッチングなどの方法を用いて、反射電極38を構成する複数の部分電極に1対1に対応する複数の部分に分割して形成することができる。
(反射電極38)
反射電極38は、高反射率の金属(Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなど)若しくはこれらを含む合金、アモルファス合金(NiP、NiB、CrP、CrBなど)、又は微結晶性合金(NiAlなど)を用いて形成することができる。
反射電極38は、複数のスイッチング素子34と1対1に対応する複数の部分電極から構成することができ、それぞれの部分電極が発光部を画定する。
図3に示す例においては、反射電極38を構成するそれぞれの発光部は長方形の区域として構成されている。反射電極38は、平坦化層36とパッシベーション層とにより画成された領域に、マスクを使用するドライプロセス(蒸着法、又はスパッタ法など)によって、部分的に形成することができる。また、反射電極38は、平坦化層36の全面に上記材料を堆積した後にウェットエッチングなどの方法によって複数の部分に分割して形成してもよい。
(キャップ層)
反射電極38と後述する有機EL層42との間に、図3には示さないキャップ層を任意選択的に形成してもよい。キャップ層は、下地層と同様に、IZO、ITOなどの導電性酸化物を用いて、スパッタ法などによって形成することができる。
キャップ層は、ウェットエッチングなどの方法を用いて、反射電極38を構成する複数の部分電極に1対1に対応する複数の部分に分割して形成することができる。下地層及びキャップ層の両方を形成する場合には、それらの層を同一の材料を用いて形成することが好ましい。また、この場合、下地層及びキャップ層を同時に処理して複数の部分へと分割することが簡便であるためより好ましい。
(絶縁層40)
反射電極38を構成する複数の部分電極間の短絡を防止するために、反射電極38間に絶縁層40を設けてもよい。絶縁層40は、図3に示すように、発光部に相当する位置に開口部を画成するように形成する。
絶縁層40が反射電極38の一部を覆う場合には、反射電極38の絶縁層に覆われていない区域(反射電極38から有機EL層42へのキャリア注入が行われる区域、即ち、発光部)が長方形となるように形成することが好ましい。
絶縁層40は、樹脂、無機酸化物(SiOなど)、無機窒化物(SiNなど)、無機酸窒化物(SiONなど)の絶縁性材料を用いて形成することができる。絶縁層40のパターニングは、フォトリソグラフ法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて行うことができる。
(陰極バッファ層)
反射電極38を陰極(電子注入電極)として使用する場合、任意選択的に、反射電極38又はキャップ層と、後述する有機EL層42との間に、電子注入効率を向上させるための陰極バッファ層を配設してもよい。陰極バッファ層の材料としては、Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属、Ba、Srなどのアルカリ土類金属、若しくはそれらを含む合金、希土類金属、又はそれら金属のフッ化物などを用いることができる。しかしながら、上記の材料に限定されるものではない。陰極バッファ層の膜厚は、駆動電圧などを考慮して適宜選択することができるが、通常、10nm以下とすることが好ましい。
(有機EL膜42)
有機EL膜42は、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、及び電子注入層などの複数の層を積層してなり、基板全面に画素領域を開口した蒸着マスクを用い、真空蒸着法により各層を順次形成することができる。以下に、例示的な有機EL膜42の構成を、その両側に配置する陽極(反射電極38)及び陰極(透明電極44)とともに示す。
(1)陽極/有機発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/有機発光層/陰極
(3)陽極/有機発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極
有機EL膜42における各層の材料は、特に限定されるものではなく、公知のいかなる材料を使用することもできる。
正孔注入層には、フタロシアニン(Pc)類(銅フタロシアニン(CuPc)などを含む)、又はインダンスレン系化合物などを用いることができる。
正孔輸送層には、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、又はオキサジアゾール部分構造の各材料(例えば、TPD、α−NPD、PBD、m−MTDATAなど)を用いることができる。また、これらにF4−TCNQなどのルイス酸化合物をドーピングした材料を用いることもできる。
有機発光層には、所望する色調に応じて材料を適宜選択することができる。
青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などを用いることができる。
具体的には、ホスト材料に、ドーパントを添加することで、有機発光層を形成することができる。
ホスト材料としては、アルミキレート、4 ,4 ’−ビス(2 ,2 ’−ジフェニルビニル)、2 ,5 −ビス(5 −tert −ブチル−2 −ベンゾオキサゾルイル)−チオフェン(BBOT)、ビフェニル(DPVBi)を用いることができる。
青色ドーパントとしては、ぺリレン、2 ,5 ,8 ,11 −テトラ−t −ブチルペリレン(TBP)、4,4’−ビス[2 −{4 −(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)などを0.1〜5%添加することができる。
赤色ドーパントとしては、4 −(ジシアノメチレン)−2−メチル−6 −(p −ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、4 ,4 −ジフロロ−1 ,3 ,5 ,7 −テトラフェニル−4 −ボラ−3a ,4a ,−ジアザ−S −インダセン、プロパンディニトリル(DCJT1)、ナイルレッドなどを0.1〜5%添加することできる。
電子輸送層としては、Alq(トリス8−キノリノラトアルミニウム錯体)を用いることができ、これにLiなどのアルカリ金属をドープしたものを用いてもよい。
電子注入層としては、Alqのようなアルミニウム錯体、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属をドープしたアルミニウム錯体、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を添加したバソフェナントロリンなどを用いることができる。更に、LiFを用いることもできる。
(ダメージ緩和層)
有機EL層42と後述する透明電極44との間に、ダメージ緩和層を、任意選択的に配設してもよい。ダメージ緩和層は、スパッタ法によって透明電極44を形成する際に、有機EL層42がダメージを受けることを防止又は緩和する構成要素である。ダメージ緩和層は、MgAg又はAuなどの透過率の高い金属を用いて蒸着法によって形成することができる。また、透明性を保証するため、ダメージ緩和層は、数nm〜10nm程度の膜厚とすることが好ましい。
(透明電極44)
有機EL膜42上に形成する透明電極44は、例えば、蒸着法、スパッタリング法などによりバッファ層を成膜し、その上に透明電極材料である金属酸化物を更に成膜することにより形成することができる。透明電極44は、表示部全面に均一に形成され、共通電極として機能する。
バッファ層としては、リチウム、ナトリウム、若しくはカリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、若しくはストロンチウム等のアルカリ土類金属、又はこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金、若しくは化合物を用いることができる。
電子注入性を向上させるためには、上記のような仕事関数の小さい材料を用いることが好ましい。バッファ層の膜厚は、駆動電圧及び透明性等を考慮して適宜選択することができるが、特に10nm以下とすることが好ましい。
金属酸化物としては、ITO、酸化スズ、酸化インジウム、IZO、酸化亜鉛、亜鉛−アルミニウム酸化物、亜鉛−ガリウム酸化物、又はこれらの酸化物に対してF、Sbなどのドーパントを添加した導電性透明金属酸化物が挙げられる。当該酸化物は、蒸着法、スパッタ法またはCVD法を用いて形成することができるが、スパッタ法を用いて形成することが好ましい。
(無機バリア層46)
有機EL層42の酸素ないし水分による失活を防止するため、図3に示すように、基板32上に形成した各構成要素34〜44を覆うように、任意選択的に、無機バリア層46を配設してもよい。
無機バリア層46は、単一層とすることができ、又は複数の層からなる積層体としてもよい。無機バリア層46は、無機酸化物(SiOなどのSiOx)、無機窒化物(SiNなどのSiNx)、及び無機酸窒化物(SiONなどのSiOxNy)などから形成することができる。無機バリア層46は、スパッタ法、CVD法などを用いて形成することができる。
以上のようにして、複数のスイッチング素子34を用い、複数の部分電極からなる反射電極38と共通電極としての一体型の透明電極44とを用いるアクティブマトリクス駆動型の有機EL基板を得ることができる。この有機EL基板は、後述するように、図1A〜図1C及び図2A〜図2Cに示す色変換フィルター基板10a,10bと貼り合わせて有機ELディスプレイを形成する構成要素である。
これに対し、本発明においては、上記のようなアクティブマトリクス駆動型の有機EL基板に代わり、複数のスイッチング素子を用いることなく、第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分電極からなる反射電極と、第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分電極からなる透明電極とを用いて構成される、いわゆるパッシブマトリクス駆動型の有機EL基板を、有機ELディスプレイの構成要素とすることもできる。なお、上記の第1の方向は第2の方向と交差する方向であり、好ましくは直交する方向である。
[色変換フィルター基板と有機EL基板との貼り合わせ及び有機ELディスプレイ]
上述のように形成された、色変換フィルター基板10a又は10bと、アクティブマトリクス駆動型又はパッシブマトリクス駆動型の有機EL基板とを、バリア層26(図1A〜図1C又は図2A〜図2C)と無機バリア層46(図3)とが対向するように、重ね合わせる。具体的には、乾燥窒素雰囲気(酸素及び水分濃度ともに10ppm以下)のグローブボックス内に、これらの両基板を導入する。次いで、紫外硬化型樹脂からなる図示しないシール材をこれら基板の各端部間に配置し、有機ELディスプレイを得る。
以上のようにして形成された有機ELディスプレイは、優れた色変換効率を発揮する色変換フィルター基板を、大画面ディスプレイに適用したものである。また、上記形成方法によれば、低コストでの量産が可能である。
以下、実施例1では、バンクが水平方向に張り出した、上記タイプ1の色変換フィルター基板についての効果を実証する。
<有機ELディスプレイの形成>
[本発明例1]
(色変換フィルター基板の形成)
本発明例1の色変換フィルター基板は、図1A〜図1Cに示すタイプの基板10aとした。
《基板12へのブラックマトリクス14の形成》
ガラス(Eagle2000:コーニング製)上に、フォトリソグラフ法にてブラックマトリクス(CK−7001:富士フィルム製)を形成した。副画素間のギャップは縦方向30μm、横方向10μmとした。開口の寸法は300μm×100μmとし、1画素あたり330μmピッチとした。
《カラーフィルター16(R,G,B)の形成》
ブラックマトリクスを形成したガラス上に、赤色カラーフィルター(CR−7001:富士フィルム製)、緑色カラーフィルター(CG−7001:富士フィルム製)、及び青色カラーフィルター(CB−7001:富士フィルム製)を用い、フォトリソグラフ法にてカラーフィルターを形成した。各層の膜厚はそれぞれ1μmであった。形成したカラーフィルターの幅寸法は106μmであり、各色のカラーフィルターはストライプパターンに形成した。
《親液層18の形成》
プラズマCVD装置にて、原料ガスとしてモノシラン(SiH)、アンモニア(NH)及び窒素(N)を用い、プラズマCVD法にて、膜厚300μmの窒化シリコン(SiN)を形成した。
《バンク20の形成》
アクリル系樹脂VPA100(新日鐵化学製)を用い、フォトリソグラフ法でカラーフィルターのストライプパターンの両側にバンクを形成した。バンクの幅は10μm、カラーフィルター表面からの高さは5μmとした。この際、青色カラーフィルターライン下部の30μm幅のブラックマトリクスライン上に、側方断面視で、縦25μm×横20μmの張り出し部を同時に形成した。
《スペーサー22の形成》
アクリル系樹脂VPA100(新日鐵化学製)を用い、フォトリソグラフ法で1画素に1つずつ配設されるように、330μm間隔で、平面視でΦ7μmのドットパターンのスペーサーを形成した。スペーサーの高さは、バンク表面から1.5μmとなるようにスピンコーターの回転数を調整し、青色カラーフィルターライン上部の30μm幅のブラックマトリクスライン上に形成されたバンク張りだし部の上にスペーサーを形成した。
《表面処理》
色変換膜の形成前に、2000SCCMのNガスを流して印加電力0.5kWとし、120sec間プラズマ処理を行った。その後1時間以内に続けて後述する色変換膜の形成を行った。
《色変換膜24(R,G)の形成》
緑色変換膜は、以下のようにして形成した。即ち、トルエン1000重量部、第1色素:クマリン6+第2色素:DEQ50重量部(モル比はクマリン6:DEQ=48:2)のインクを調整し、インクジェット装置(ライトレックス製Litrex 120L)を用い、窒素雰囲気中で膜厚500nmの緑色変換膜を作成した。インクの乾燥は、窒素雰囲気を破ることなく、真空乾燥炉を用い、真空度1.0×10−3Pa、温度100℃で行った。
赤色変換膜は、以下のようにして形成した。即ち、トルエン1000重量部、第1色素:クマリン6+第2色素:DCM50重量部(モル比はクマリン6:DCM=48:2)のインクを調整し、インクジェット装置(ライトレックス製Litrex 120L)を用い、窒素雰囲気中で膜厚500nmの赤色変換膜を作成した。インクの乾燥は、窒素雰囲気を破ることなく、真空乾燥炉を用い、真空度1.0×10−3Pa、温度100℃で行った。
《バリア層26の形成》
真空を破ることなく、プラズマCVD装置を使用し、原料ガスとしてモノシラン(SiH)、アンモニア(NH)及び窒素(N)を用いるプラズマCVD法にて、膜厚1μmの窒化シリコン(SiN)を堆積させてバリア層を形成した。ここで、SiNを堆積する際に基板温度は100℃以下とした。
以上のようにして、本発明例1の色変換フィルター基板10aを得た。
(有機EL素子基板の形成)
本発明例1の有機EL素子基板は、図3に示すタイプの基板30とした。
《基板32へのTFT素子34、配線、外部接続端子部、平坦化層36、及びパッシベーション層の形成》
200×200mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の上の、6個の独立した副画素に相当する位置に、TFT素子(スイッチング素子)、配線及び外部接続端子部分を形成し、これらを覆うように2μmの膜厚を有する平坦化層、及び300nmの膜厚を有するSiNxパッシベーション層を形成した。ここで、平坦化層及びパッシベーション層には、TFT素子と反射電極とを接続するためのコンタクトホールを形成した。
《下地層、及び反射電極38の形成》
次に、RF−プレーナマグネトロンスパッタ装置を用いて、Ar雰囲気中で、膜厚100nmのIZO膜(下地層)を形成した。
続いて、スパッタ法にて、膜厚100nmのアルミニウム層を形成した。更に、レジスト剤「OFRP−800」(東京応化工業株式会社製)により形成されたマスクを用いて、アルミニウム層をウェットエッチングし、複数の部分からなる反射電極を形成した。反射電極の複数の部分のそれぞれは、IZO膜を介するとともに、平坦化層及びパッシベーション層に設けられた複数のコンタクトホールを介し、スイッチング素子であるTFT素子と1対1に接続された。反射電極の複数の部分のそれぞれの寸法は、縦方向280μm及び横方向90μmであった。
《キャップ層の形成》
スパッタ法にて、反射電極を覆うように、膜厚50nmのIZO膜(キャップ層)を形成した。続いて、2つのIZO膜を一括してウェットエッチングすることにより、反射電極下の下地層及び反射電極上のキャップ層を形成した。下地層及びキャップ層は、反射電極の複数の部分に対応する位置に形成される複数の部分からなり、複数の部分のそれぞれの寸法は、縦方向300μm、横方向100μmであった。
《絶縁層40の形成》
スパッタリング装置を用いて、画素分離膜としてSiO膜(絶縁層)を300nm成膜した。その際の条件は、ターゲットとして単結晶シリコンを用いるとともに、スパッタガスとしてアルゴンと酸素との分圧比が1対1であるスパッタガスを用い、パワー2.5kW、ガス圧0.5Paとした。
次に、ポジ型レジスト(東京応化工業株式会社製:TFR−1250)を塗布して、所定のパターンのマスクを用い、露光、現像を行い、レジストパターンを形成した。
更に、ICPプラズマ型ドライエッチング装置を用い、SFガス:100SCCM、CHFガス:100SCCM、Arガス:250SCCMを流し、ガス圧20Pa、印加電力1500Wの下、エッチングを行った。その後、上記装置でOガス:500SCCMを流し、40Pa、印加電力2kWの下、アッシングを行ってレジストを除去し、反射電極の複数の部分に対応するキャップ層以下の構造を覆う位置に、縦方向260μm、横方向86μmの複数の開口部を有する絶縁層を得た。
《陰極バッファ層、及び有機EL層42の形成》
以上のように得られた積層体を蒸着装置内に配置し、陰極バッファ層及び有機EL層を積層した。真空を破ることなく、膜厚1.5nmのLiからなる陰極バッファ層、膜厚20nmのトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)からなる電子輸送層、膜厚30nmの4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)からなる有機発光層、膜厚10nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)からなる正孔輸送層、及び膜厚100nmの銅フタロシアニン(CuPc)からなる正孔注入層を順次形成した。これらの層の成膜の際には、蒸着装置内の真空槽の内圧を1×10−4Paまで減圧し、それぞれの層を0.1nm/sの蒸着速度で堆積させた。
《透明電極44の形成》
次いで、真空を破らずに有機EL層を形成した積層体を対向スパッタ装置に移動させ、スパッタ法を用いて150nmの膜厚を有するIZO膜を形成して、透明電極を得た。
《無機バリア層46の形成》
更に、真空を破らずに透明電極を形成した積層体をCVD装置に移動させ、全面にわたって、膜厚2μmのSiN膜を堆積させて無機バリア層を形成した。
以上のようにして、有機EL素子基板を得た。
(色変換フィルター基板10aと有機EL基板30との貼り合わせ)
以上のようにして得られた色変換フィルター基板と有機EL基板とを、内部が酸素濃度5ppm及び水分濃度5ppm以下に制御された貼り合せ装置に移動させた。そして、プロセス面(色変換フィルタ膜が形成された面)を上側となるように色変換フィルター基板をセットし、ディスペンサーを用いて複数の表示部のそれぞれの外周に、エポキシ系紫外線硬化接着剤を切れ目無く塗布して接着層を形成した。次いで、各表示部の中央の一点に、接着層用の紫外線硬化型エポキシ系接着剤よりも粘度の低い熱硬化型エポキシ接着剤を滴下した。
そして、プロセス面(有機EL層などを形成した面)を下に向けた状態で有機EL素子基板をセットし、プロセス面同士を対向させた。この状態で、貼り合わせ装置内を約10Pa程度まで減圧し、有機EL素子基板及び色変換フィルターを約20μmの間隔まで接近させた。貼り合わせ装置のアライメント機構を用いて、両基板の位置合わせを行った。
次いで、貼り合わせ装置内を大気圧に戻しつつ、両基板に対して、それら基板が接近する方向に向かって荷重を付加した。この段階において、装置内の圧力変化によって両基板は更に接近させ、色変換フィルター基板上のバンクが有機EL基板に接触した時点で接近を停止した。両基板の接近に伴って、滴下された充填剤は、表示部の周縁部に向かって移動し、全方位的に広がって表示部全体を充填した。
引き続いて、色変換フィルター基板側から接着層のみに紫外線を照射して接着層を仮硬化させ、一般環境に取り出した。自動ガラススクライバー及びブレイク装置を使って、得られた貼り合わせ物を、6個の独立した有機ELディスプレイに分割した。
得られた有機ELディスプレイを、1時間にわたって加熱炉中で80℃に加熱し、充填剤の硬化、及び接着層の本硬化を実施した。加熱工程の終了後、有機ELディスプレイを、30分間にわたって炉内で自然冷却して取り出した。最後に、有機ELディスプレイを、ドライエッチング装置内に配置し、外部接続端子部分を覆うバリア層を除去した。
以上のようにして、本発明例1の有機ELディスプレイを得た。
[本発明例2]
本発明例2においては、色変換フィルター基板は図2A〜図2Cに示すタイプの基板10bとし、有機EL素子基板は図3に示すタイプの基板30とした。
本発明例1と同様に、カラーフィルター、新液層、色変換層、バリア層等の形成を行った。また、本発明例1と同様に有機EL基板も形成した。
なお、バンクの幅は8μm、カラーフィルター表面からの高さは3.5μmとした。その上にバンク着色部(CK−7001:富士フィルム製)で1.5μmの被覆を行った。この結果、バンク着色部の被覆後のバンク全体の幅は10μmとなっていた。スペーサーについてはバンク形成後、塗布を行いバンク上に1.5μmの厚さとなるように形成した。
以上のようにして、本発明例2の有機ELディスプレイを得た。
[比較例1]
比較例1においては、色変換フィルター基板は図4A〜図4Cに示すタイプの基板10cとし、有機EL素子基板は図3に示すタイプの基板30とした。即ち、本発明例1と同様に、カラーフィルター、新液層、色変換層、バリア層等の形成を行って、色変換フィルター基板を得、本発明例1と同様に有機EL基板も形成し、これらを貼り合わせて、比較例1の有機ELディスプレイを得た。
なお、図4A〜図4Cに示す色変換フィルター基板10cにおける構成要素12〜26は、図1A〜図1Cに示す色変換フィルター基板10aの対応する構成要素と同じである。
但し、比較例1の色変換フィルター基板10cにおいて、バンクの形成は、張りだし部を形成せず、単純なストライプパターンとした。更に、スペーサーについては、バンク形成後、塗布を行い、バンク上に1.5μmの厚さとなるように形成した。
以上のようにして、比較例1の有機ELディスプレイを得た。
<評価項目>
(充填樹脂の広がりに関する貼り合わせ評価)
各本発明例1,2及び比較例1の色変換フィルター基板のそれぞれについて、充填樹脂の広がりに関する評価を行った。
各例の色変換フィルター基板を貼り合せ装置に移動し、色変換フィルター基板のプロセス面を上に向けてセットし、ディスペンサーを用いてエポキシ系紫外線硬化接着剤を切れ目無く塗布して、いわゆる土手を形成した。次いで、画面中央付近に低粘度(300mPa・s)の熱硬化型エポキシ接着剤を滴下した。滴下装置としては、空気圧制御+シリンジのディスペンサシステムを使用した。
更に、有機EL基板を想定して、ガラス(Eagle2000:コーニング)を色変換フィルター基板とプロセス面同士を対向させた状態で、約10Pa程度まで減圧してから約20μmまで接近させ、画素位置を合わせ込んだ後に大気圧に戻しつつ僅かに荷重を付加した。
次に、色変換フィルター基板側から外周シール材接着部にだけ紫外線を照射して仮硬化させた。その後、これを加熱炉に入れて95℃で1時間加熱し、炉内で30分間自然冷却して取り出した後、気泡の混入の数をもって充填樹脂の広がりを評価した。
なお、各例について、封止を行った各10基板合計60パネルについて、熱硬化型エポキシ接着剤のはみ出し不良及び発光部における気泡の混入の発生数に関し評価した結果を表1に示す。
(混色評価)
各本発明例1,2及び比較例1の有機ELディスプレイのそれぞれについて、混色評価を、コニカミノルタ製CS1000を用い、白色D65に合わせたRGB各色の色度座標の平均値で評価した。その結果を表1に併記する。
Figure 2010106619
表1によれば、本発明例1,2においては、気泡の混入が認められたが、当該混入は比較例1と同程度であり、本発明例1,2と比較例1とにおける充填樹脂の広がりに差異はないことが判明した。
また、本発明例1においては、比較例1と比べ貼り合わせのばらつき(はみ出し不良)を抑えたことで色再現範囲が広がり、本発明例2においては、隣接画素からの光の進入を防止することができ、更に色再現範囲が広がったものと考えられる。
以上より、本発明の範囲内である本発明例1,2においては、インクジェット法による色変換フィルター基板の形成において、比較例と比べて同等の樹脂充填性を実現し、しかも色再現性に富む色変換フィルター基板を形成することができたといえる。
以下、実施例2では、バンク間に埋め込み部材が配設された、上記タイプ2の色変換フィルター基板についての効果を実証する。
<色変換フィルター基板の形成>
[本発明例3]
(色変換フィルター基板の形成)
本発明例3の色変換フィルター基板は図5に示すタイプの基板10dとした。
なお、図5に示す色変換フィルター基板10dにおける構成要素12〜26は、図1A〜図1Cに示す色変換フィルター基板10aの対応する構成要素と同じである。なお、図5に示す例では、バンク20と青色カラーフィルター16Bにより画成された領域に、埋め込み部材28が形成され、更にその上にスペーサー22が形成された点が、図1A〜図1Cに示す例と異なる。なお、本例では、バンク20と埋め込み部材28とが同時に同一材料で形成されているため、一体構造となっているが、図5においては、これらの部材20,28が別物であることを強調するため、それらの境界に破線を付した。
《基板12へのブラックマトリクス14、カラーフィルター16(R,G,B)の形成》
1737ガラス上に、ブラックマトリクス(CK−7001:富士フィルム製)、赤色カラーフィルター(CR−7001:富士フィルム製)、緑色カラーフィルター(CG−7001:富士フィルム製)、及び青色カラーフィルター(CB−7001:富士フィルム製)を用い、フォトリソグラフ法にてカラーフィルターを形成した。各層の膜厚はそれぞれ1μmであった。形成したカラーフィルターの副画素の寸法は300μm×100μmであり、副画素間のギャップは、縦方向30μm、横方向10μmであった。各色のカラーフィルターはストライプパターンに形成した。
《親液層18の形成》
プラズマCVD装置を使用し、原料ガスとしてモノシラン(SiH)、アンモニア(NH)及び窒素(N)を用いるプラズマCVD法にて、膜厚300μmの窒化シリコン(SiN)を堆積した。
《バンク20及び埋め込み部材28の形成》
アクリル系樹脂V259PAP5(新日鐵化学製)を用い、フォトリソグラフ法で赤色カラーフィルター(CR−7001:富士フィルム製)、緑色カラーフィルター(CG−7001:富士フィルム製)の両側には、ストライプパターンに、幅10μm、厚さ5μmでバンクを形成した。青色カラーフィルター(CB−7001:富士フィルム製)の上には、バンクと一括で埋め込み部材を形成した。
《フォトスペーサー22の形成》
アクリル系樹脂V259PAP5(新日鐵化学製)を用い、青色カラーフィルター上に形成された埋め込み部材の上に、1画素に1つずつ配設されるように300μmの間隔で、平面視でΦ7μmのドットパターンで、厚さ2μmでフォトスペーサーを形成した。
《表面処理》
色変換膜の形成前に、2000SCCMのNガスを流し、印加電力0.5kWとし、120sec間プラズマ処理を行った。その後1時間以内に続けて色変換膜の形成を行った。
《色変換膜24(R,G)の形成》
緑色色変換膜については、トルエン1000重量部、第1色素:クマリン6+第2色素:DEQ50重量部(モル比はクマリン6:DEQ=48:2)のインクを調整し、インクジェット装置(ライトレックス製Litrex 120L)を用い、窒素雰囲気中で膜厚500nmの緑色色変換膜を形成した。インクの乾燥は、窒素雰囲気を破ることなく、真空乾燥炉を用い、真空度1.0×10−3Pa、温度100℃で行った。
赤色色変換膜については、トルエン1000重量部、第1色素:クマリン6+第2色素:DCM50重量部(モル比はクマリン6:DCM=48:2)のインクを調整し、インクジェット装置(ライトレックス製Litrex 120L)を用い、窒素雰囲気中で膜厚500nmの赤色色変換層を形成した。インクの乾燥は、窒素雰囲気を破ることなく、真空乾燥炉を用い、真空度1.0×10−3Pa、温度100℃で行った。
《バリア層26の形成》
真空を破ることなく、プラズマCVD装置にて、原料ガスとしてモノシラン(SiH)、アンモニア(NH)及び窒素(N)を使用するプラズマCVD法を用いて、膜厚1μmの窒化シリコン(SiN)を堆積させバリア層を形成した。ここで、SiNを堆積する際に基板温度は100℃以下にて行った。
以上のようにして、本発明例3の色変換フィルター基板10dを得た。
[本発明例4]
本発明例4の色変換フィルター基板は図6に示すタイプの基板10eとした。
なお、図6に示す色変換フィルター基板10eにおける構成要素12〜28は、図5に示す色変換フィルター基板10dの対応する構成要素と同じである。なお、図6に示す例では、バンク20と青色カラーフィルター16Bにより画成された領域に形成される、埋め込み部材28が、バンク20と同時に形成されていない点が、図5に示す例と異なる。
本発明例3と同様にして、カラーフィルター及び新液層を形成し、バンクをストライプパターンの両側に幅10μm、厚さ5μmで形成した。次に、青色カラーフィルターの上にアクリル系樹脂V259PAP5(新日鐵化学製)を用い、フォトリソグラフ法でバンクの間を厚さ5μmで埋め込み部材を形成した。フォトスペーサーは、本発明例3と同様に、フォトリソグラフ法で青色カラーフィルター上に形成された埋め込み部材の上に1画素に1つずつ配設されるように300μm間隔で、平面視でΦ7μmのドットパターンで形成した。
続いて、色変換層、バリア層を本発明例3と同様に形成し、本発明例4の色変換フィルター基板10eを得た。
[比較例2]
比較例2の色変換フィルター基板は図7に示すタイプの基板10fとした。
なお、図7に示す色変換フィルター基板10fにおける構成要素12〜26は、図5に示す色変換フィルター基板10dの対応する構成要素と同じである。なお、図7に示す例では、バンク20と青色カラーフィルター16Bにより画成された領域に埋め込み部材を形成していない点が、図5に示す例と異なる。
本発明例4と同様に、カラーフィルターを形成し、新液層、バンク、色変換層、バリア層を形成した。フォトスペーサーについてはバンク形成後、カラーフィルターのストライプパターン間に形成されたバンク上に2μmの厚さとなるように形成した。
以上のようにして、比較例2の色変換フィルター基板10fを得た。
<評価項目>
(充填樹脂の広がりに関する貼り合わせ評価)
各本発明例3,4及び比較例2の色変換フィルター基板のそれぞれについて、充填樹脂の広がりに関する評価を行った。
各例の色変換フィルター基板を貼り合せ装置に移動し、色変換フィルター基板のプロセス面を上に向けてセットし、ディスペンサーを用いてエポキシ系紫外線硬化接着剤を切れ目無く塗布し、いわゆる土手を形成した。次いで、画面中央付近に低粘度の熱硬化型エポキシ接着剤を滴下した。滴下装置としては、空気圧制御+シリンジのディスペンサシステムを使用した。
更に、有機EL基板を想定して、1737ガラスを、色変換フィルター基板とプロセス面同士を対向させた状態で、約10Pa程度まで減圧してから約20μmまで接近させ、画素位置を合わせ込んだ後に大気圧に戻しつつ僅かに荷重を付加した。
次に、色変換フィルター基板側から外周シール材接着部にだけ紫外線を照射して仮硬化させた。その後、これを加熱炉に入れて95℃で1時間加熱し、炉内で30分間自然冷却して取り出した後、気泡の混入の数をもって充填樹脂の広がりを評価した。
なお、各例について、封止を行った各12パネルを観察した結果、1パネルずつ気泡の混入が認められた。よって、本発明例3,4及び比較例2における充填樹脂の広がりに違いはないことが判明した。
(色変換インク漏れ評価)
色変換インクは、一般に青色発光を吸収し、緑色、赤色を発光させる。このため、青色カラーフィルター上に色変換インクが溢れ出した場合、青色強度の低下につながる。
そこで、本発明例3,4及び比較例2について、色変換インク塗布後各12パネルを蛍光顕微鏡にて観察した。
その結果、青色カラーフィルター上への色変換インクのインク漏れ箇所が、比較例2において、全12000ライン中478ラインにて発生していた。これに対し、本発明例3,4おいては、埋め込み部材を形成しているため、青色カラーフィルター上へ色変換インクが流れ込むことはなく、インク漏れを抑えることができた。
このように、貼り合わせ評価及び漏れ評価の結果から、本発明例3,4は、本発明例1,2と同様に、隣接画素からの光の進入を抑えることができ、優れた色再現範囲を実現できたといえる。
以上の実施例1,2から、本発明によれば、インクジェット法による色変換フィルター基板の形成において、封止性能を損なうことなく、かつ安定した保存寿命を実現できる色変換フィルター基板を得ることができる。このような色変換フィルター基板を用いることにより、良好な歩留まりと、高い信頼性とが実現され、該色変換フィルター基板を用い有機ELディスプレイにおいては、高精細化と低コスト化を実現することができる。
なお、特に、上記タイプ2の実施形態(実施例2における本発明例3,4)によれば、インク漏れによる青色発光強度の低下を高いレベルで抑えた色変換フィルター基板を形成することができる。

Claims (8)

  1. 基板と、
    前記基板上の少なくとも副画素部に形成された、異なる透過波長を有する複数のカラーフィルターと、
    前記基板の上方の非副画素部に形成された、硬化性樹脂からなるバンクと、
    少なくとも一部のカラーフィルターの上方領域であって、前記バンク間に画成された領域に、インクジェット法によってスリットパターンで形成された、光源の光を吸収し、吸収波長と異なる波長分布の光を発する色変換膜と、
    少なくとも一部のバンク上にフォトリソグラフ法によって形成された、スペーサーと
    を備える色変換フィルター基板において、
    前記スペーサーを形成するバンクが、他のバンクに比べて、側方断面視で、水平方向に張り出していることを特徴とする、色変換フィルター基板。
  2. 前記硬化性樹脂が、光硬化性樹脂又は光熱併用硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の色変換フィルター基板。
  3. 前記バンクが、前記基板上に形成されたブラックマトリクスの上方に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の色変換フィルター基板。
  4. 前記バンクの少なくとも一部が着色されていることを特徴とする、請求項1に記載の色変換フィルター基板。
  5. 前記着色が黒色によるものであり、且つ、前記バンクの可視域における透過率が10%以下であることを特徴とする、請求項4に記載の色変換フィルター基板。
  6. 基板と、
    前記基板上の少なくとも副画素部に形成された、異なる透過波長を有する複数のカラーフィルターと、
    前記基板の上方の非副画素部に形成された、硬化性樹脂からなるバンクと、
    少なくとも一部のカラーフィルターの上方領域であって、前記バンク間に画成された領域に、インクジェット法によってスリットパターンで形成された、光源の光を吸収し、吸収波長と異なる波長分布の光を発する色変換膜と、
    前記領域のうち前記色変換膜を形成しない領域の両側に位置するバンク間に形成された、光硬化性樹脂又は光熱併用硬化性樹脂からなる埋め込み部材と、
    前記埋め込み部材上にフォトリソグラフ法によって形成された、スペーサーと
    を備え、前記バンクと前記埋め込み部材とが同時に形成されたものであることを特徴とする、色変換フィルター基板。
  7. 前記光硬化性樹脂又は光熱併用硬化性樹脂の硬化後の、波長領域350〜500nmの光に対する屈折率が、少なくとも1.5より大きいことを特徴とする、請求項6に記載の色変換フィルター基板。
  8. 前記埋め込み部材が、側方断面視で、バンク上面に対して−1〜+1μmである平坦部を10μm以上含むことを特徴とする、請求項6に記載の色変換フィルター基板。
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