本発明は、構造色が見られる外装部品およびその製造方法に関するものである。
従来、外装部品に装飾効果を与える方法として、しぼ加工や成形後に2次加工を施したり、金型面に化粧線や文字を彫り込んで成形面で浮き上がらせたりする方法が知られている。特に、成形品の着色については、多色成形のような特殊成形によって着色したり、一定の色を有する成形品に、印刷や貼り付け、塗装などを行ったりする方法が一般的である。ただし、これらの方法による着色では、印刷や貼り付け、塗装などといった工程の分だけ製造コストが増加するという問題がある。
特に、塗装工程では、多くの二酸化炭素が排出される。また、各種の顔料や染料あるいは有機溶剤を用いるため、廃液処理などの後始末も必要となる。このため、多くの二酸化炭素が排出される点や、廃液処理などの後始末が必要となる点などが、作業面および環境面において大きな問題になってきている。
このような問題を解決するためにも、顔料や染料などの色素を使用しない技術が望まれている。これに答えるようにして、例えば、微小な凹凸面を有する転写シートのように、材質・形状などに起因して発色する技術(以下、構造色と呼称する。)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
構造色は、色素のように可視光の吸収または放出に起因した発色現象とは異なり、光の反射・干渉・回折などの物理現象に起因した発色現象である。例えば、構造色の発現に関わる光学現象としては、多層膜干渉、薄膜干渉、屈折、分散、光散乱、Mie散乱、回折、回折格子などがある。また、構造色の発現にあたって、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜技術で形成された膜厚1μm以下の光学薄膜が利用されることが多い。そして、このような構造色の発現を利用したものは、紫外線による経時変化が少なく、光沢が出やすいなどの利点を有する。このことから、外装部品への塗装方法や着色方法として構造色の発現を利用することが期待されている。
<転写シート>
ここで、構造色の発現を利用した転写シートについて説明する。
図10に示すように、転写シート10は、回折構造形成層13に微小凹凸パターンが形成されているものである。微小凹凸パターンは、回折格子を構成して構造色を有する色光を発生させることができるものである。
ここでは、転写シート10は、次の手順で製造されている。(a)まず、ガラス転移温度(Tg)250℃のポリアミドイミド樹脂を支持体11に塗布して耐熱保護層12を形成する。(b)次に、ウレタン樹脂を耐熱保護層12に塗布して回折構造形成層13を形成する。(c)次に、ロールエンボス法によって、微小凹凸パターンからなる回折格子を回折構造形成層13の表面に形成する。(d)そして、回折格子を形成したものに、金属反射性の回折効果層14を形成するとともに耐熱マスク層15をパターン印刷する。(e)パターン印刷して得られたものをNaOH溶液が入った浴槽に浸して耐熱マスク層15の不存在部から露出した部分の回折効果層14をエッチングする。(f)その後、エッチングして得られたものに接着層16を形成する。
しかしながら、転写シート10のように、ロールエンボス法によって一方向に溝が形成された被転写体においては、微小凹凸パターンからなる回折格子によって発生する回折光の射出方向が一方向に制限される。このため、特定の方向から被転写体を見たときに、構造色を有する色光が見えても、それ以外の方向から被転写体を見れば、構造色を有する色光が見えなくなる。そして、このことは、意匠性に富んだ外装部品を実現する上で大きな問題となる。
例えば、微小凹凸パターンからなる回折格子が形成された外装部品で製品の外側を装ったとする。この場合において、ユーザが製品を見ると、見る方向によっては、構造色を有する色光が見えたり、製品の内部が見えたりし、製品に対する印象が異なる。特に、製品の内部が見えたりすると、製品の意匠性を損なう場合もある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の方向から見ても、構造色を有する色光を見ることができる外装部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係わる外装部品は、下記に示す特徴を備える。
(CL1)本発明に係わる外装部品は、(a)構造色を有する色光が発生可能な凹凸構造が形成された外装部品であって、(b)前記凹凸構造が、複数の溝からなる凹凸パターンで形成されており、第1方向を向いた斜面が形成された第1構造色領域部分と、前記第1方向とは異なる第2方向を向いた斜面が形成された第2構造色領域部分とを有する。
(CL2)上記(CL1)記載の外装部品は、(a)前記第1構造色領域部分が、前記第1方向に配列された複数の溝からなる第1凹凸パターンで形成されており、(b)前記第2構造色領域部分が、前記第2方向に配列された複数の溝からなる第2凹凸パターンで形成されている。
(CL3)上記(CL2)記載の外装部品は、少なくとも前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とのいずれかが、複数の直線状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(CL4)上記(CL2)記載の外装部品は、少なくとも前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とのいずれかが、複数の曲線状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(CL5)上記(CL1)記載の外装部品は、前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とが、中心を共有して配列された複数の環状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(CL6)上記(CL1)記載の外装部品は、前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とが、所定の方向に配列された複数の波状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
なお、本発明は、外装部品として実現されるだけではなく、下記に示す外装部品の製造方法として実現されるとしてもよい。
(CL7)本発明に係わる外装部品の製造方法は、(a)構造色を有する色光が発生可能な凹凸構造が形成された外装部品の製造方法であって、(b)前記外装部品と前記外装部品の金型とのいずれかに対して、前記凹凸構造を形成する表面加工を、方位角を変えながら、複数回行い、第1方向を向いた斜面が形成された第1領域部分と、前記第1方向とは異なる第2方向を向いた斜面が形成された第2領域部分とを形成する。
本発明によれば、複数の方向を向いた斜面を有する微小凹凸構造が形成されるので、構造色を有する回折光が複数の方向に発生する。これによって、複数の方向に対して、目的とする色光を発生させることができる。そして、構造色を有する色光が複数の方向から見られるので、意匠性に富んだ外装部品を実現することができる。
図1Aは、本発明に係る実施の形態1における構造色領域の部分の上面図である。
図1Bは、本発明に係る実施の形態1における構造色領域の部分を切断線A−Aで切断して矢視方向に見た断面図である。
図2は、本発明に係る実施の形態1における構造色領域の部分の斜視図である。
図3Aは、本発明に係る実施の形態2における構造色領域の部分の上面図である。
図3Bは、本発明に係る実施の形態2における構造色領域の部分を切断線B−Bで切断して矢視方向に見た断面図である。
図4Aは、本発明に係る実施の形態3における構造色領域の部分の上面図である。
図4Bは、本発明に係る実施の形態3における構造色領域の部分を切断線C−Cで切断して矢視方向に見た断面図である。
図5Aは、本発明に係る実施の形態4における構造色領域の部分の上面図である。
図5Bは、本発明に係る実施の形態4における構造色領域の部分を切断線D−Dで切断して矢視方向に見た断面図である。
図6Aは、本発明に係る実施の形態5における構造色領域の部分の上面図である。
図6Bは、本発明に係る実施の形態5における構造色領域の部分を切断線E−Eで切断して矢視方向に見た断面図である。
図7Aは、本発明に係る実施の形態6における構造色領域の部分の上面図である。
図7Bは、本発明に係る実施の形態6における構造色領域の部分を切断線F−Fで切断して矢視方向に見た断面図である。
図8Aは、本発明に係る実施の形態7における構造色領域の部分の上面図である。
図8Bは、本発明に係る実施の形態7における構造色領域の部分を切断線G−Gで切断して矢視方向に見た断面図である。
図9Aは、本発明に係る実施の形態8における構造色領域の部分の上面図である。
図9Bは、本発明に係る実施の形態8における構造色領域の部分を切断線H−Hで切断して矢視方向に見た断面図である。
図10は、従来例における転写シートの構成を示す図である。
以下、本発明に係わる外装部品およびその製造の好適な実施の形態を添付の図面を参照しつつ説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明に係わる実施の形態1について説明する。
図1Aに示すように、樹脂製の外装部品100の表面(X−Y面)に構造色領域110が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域110は、第1構造色領域111と第2構造色領域112とからなる領域である。第1構造色領域111と第2構造色領域112とは、周期的に配列されている。
第1構造色領域111は、第1直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1直線状凹凸パターンは、第1方向(X方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第1直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1直線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(Y方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域112は、第2直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2直線状凹凸パターンは、第2方向(Y方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第2直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2直線状溝群の各溝は、第2方向の直交方向(X方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域111には、山111aと谷111bとが形成されており、3時の方位を向いた斜面と9時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第2構造色領域112には、山112aと谷112bとが形成されており、0時の方位を向いた斜面と6時の方位を向いた斜面とが形成されている。
ここでは、一例として、図1Bに示すように、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々は、先端が96度の加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである直線状溝を外装部品100に複数掘ることで形成される。
また、第1構造色領域111と第2構造色領域112とについては、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θが48度であり、ピッチpが0.5μmまたは0.7μmである。さらに、ピッチpが0.5μmである場合には、深さhが225nmである。ピッチpが0.7μmである場合には、深さhが315nmである。
なお、第1構造色領域111と第2構造色領域112とで、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
なお、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々を保護するために、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々を保護層でコーティングするとしてもよい。
そして、図2に示すように、第1構造色領域111に光が入射すると、入射した光が第1直線状溝群で回折され、3時と9時との2方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域112に光が入射すると、入射した光が第2直線状溝群で回折され、0時と6時との2方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域110に光が入射すると、0時、3時、6時、および9時の4方位に回折光が発生する。4方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品100の代わりに、外装部品100の金型(不図示)に、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々が形成された外装部品100を射出成形で生産することができる。
<まとめ>
以上、従来では、1方向に沿った溝によって、2方位を向いた斜面を有する凹凸構造が形成されていたので、2方位にしか回折光が発生せず、2方位からしか構造色を有する色光が見られなかった。しかしながら、本実施の形態によれば、第1直線状溝群と第2直線状溝群とによって、複数の方位を向いた斜面を有する凹凸構造が形成されるので、構造色を有する回折光が複数の方位に発生する。これによって、複数の方位に対して、目的とする色光を発生させることができる。そして、構造色を有する色光が複数の方位から見られるので、意匠性に富んだ外装部品を実現することができる。
(実施の形態2)
以下、本発明に係わる実施の形態2について説明する。
図3Aに示すように、樹脂製の外装部品200の表面(X−Y面)に構造色領域210が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域210は、第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213からなる領域である。第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213は、周期的に配列されている。
第1構造色領域211は、第1直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1直線状凹凸パターンは、第1方向(X方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第1直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1直線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(Y方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域212は、第2直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2直線状凹凸パターンは、第2方向(1時または7時の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第2直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2直線状溝群の各溝は、第2方向の直交方向(4時または10時の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第3構造色領域213は、第3直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第3直線状凹凸パターンは、第3方向(5時または11時の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第3直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第3直線状溝群の各溝は、第3方向の直交方向(2時または8時の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域211には、山211aと谷211bとが形成されており、3時の方位を向いた斜面と9時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第2構造色領域212には、山212aと谷212bとが形成されており、1時の方位を向いた斜面と7時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第3構造色領域213には、山213aと谷213bとが形成されており、5時の方位を向いた斜面と11時の方位を向いた斜面とが形成されている。
ここでは、一例として、図3Bに示すように、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである直線状溝を外装部品200に複数掘ることで形成される。
また、第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
なお、第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213の各々で、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
なお、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々を保護するために、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々を保護層でコーティングするとしてもよい。
そして、第1構造色領域211に光が入射すると、入射した光が第1直線状溝群で回折され、3時と9時との2方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域212に光が入射すると、入射した光が第2直線状溝群で回折され、1時と7時との2方位に回折光が発生する。また、第3構造色領域213に光が入射すると、入射した光が第3直線状溝群で回折され、5時と11時との方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域210に光が入射すると、1時、3時、5時、7時、9時、および11時の6方位に回折光が発生する。6方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品200の代わりに、外装部品200の金型(不図示)に、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々が形成された外装部品200を射出成形で生産することができる。
(実施の形態3)
以下、本発明に係わる実施の形態3について説明する。
図4Aに示すように、樹脂製の外装部品300の表面(X−Y面)に構造色領域310が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域310は、第1構造色領域311、第2構造色領域312、第3構造色領域313、および第4構造色領域314からなる領域である。第1構造色領域311、第2構造色領域312、第3構造色領域313、および第4構造色領域314は、周期的に配列されている。
第1構造色領域311は、第1直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1直線状凹凸パターンは、第1方向(X方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第1直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1直線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(Y方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域312は、第2直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2直線状凹凸パターンは、第2方向(4時半または10時半の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第2直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2直線状溝群の各溝は、第2方向の直交方向(1時半または7時半の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第3構造色領域313は、第3直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第3直線状凹凸パターンは、第3方向(Y方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第3直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第3直線状溝群の各溝は、第3方向の直交方向(X方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第4構造色領域314は、第4直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第4直線状凹凸パターンは、第4方向(1時半または7時半の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第4直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第4直線状溝群の各溝は、第4方向の直交方向(4時半または10時半の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域311には、山311aと谷311bとが形成されており、3時の方位を向いた斜面と9時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第2構造色領域312には、山312aと谷312bとが形成されており、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第3構造色領域313には、山313aと谷313bとが形成されており、0時の方位を向いた斜面と6時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第4構造色領域314には、山314aと谷314bとが形成されており、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面とが形成されている。
ここでは、一例として、図4Bに示すように、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである直線状溝を外装部品300に複数掘ることで形成される。
また、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
なお、第1構造色領域311、第2構造色領域312、第3構造色領域313、および第4構造色領域314の各々で、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
なお、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々を保護するために、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々を保護層でコーティングするとしてもよい。
そして、第1構造色領域311に光が入射すると、入射した光が第1直線状溝群で回折され、3時と9時との2方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域312に光が入射すると、入射した光が第2直線状溝群で回折され、4時半と10時半との2方位に回折光が発生する。また、第3構造色領域313に光が入射すると、入射した光が第3直線状溝群で回折され、0時と6時との2方位に回折光が発生する。また、第4構造色領域314に光が入射すると、入射した光が第4直線状溝群で回折され、1時半と7時半との2方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域310に光が入射すると、0時、1時半、3時、4時半、6時、7時半、9時、および10時半の8方位に回折光が発生する。8方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品300の代わりに、外装部品300の金型(不図示)に、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々が形成された外装部品300を射出成形で生産することができる。
(実施の形態4)
以下、本発明に係わる実施の形態4について説明する。
図5Aに示すように、樹脂製の外装部品400の表面(X−Y面)に複数の構造色領域410が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域410(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域410は、環状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。環状凹凸パターンは、中心を共有しながらが配列された複数の四角形状溝(以下、同心四角形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。同心四角形状溝群の各溝は、径が異なっており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域410には、山410aと谷410bとが形成されており、1時半、4時半、7時半、および10時半の各方位を向いた各斜面が形成されている。
すなわち、構造色領域410は、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面とが形成された部分と、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図5Bに示すように、同心四角形状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである四角形状溝を外装部品400に同心状で複数掘ることで形成される。
また、同心四角形状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域410に光が入射すると、入射した光が同心四角形状溝群で回折され、1時半、4時半、7時半、および10時半の4方位に回折光が発生する。4方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品400の代わりに、外装部品400の金型(不図示)に、同心四角形状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、同心四角形状溝群が形成された外装部品400を射出成形で生成することができる。
(実施の形態5)
以下、本発明に係わる実施の形態5について説明する。
図6Aに示すように、樹脂製の外装部品500の表面(X−Y面)に複数の構造色領域510が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域510(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域510は、波状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。波状凹凸パターンは、第1方向(Y方向)に配列された複数の折線状溝(以下、折線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。折線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(X方向)にジグザグ状に伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域510には、山510aと谷510bとが形成されており、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面と、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成されている。
すなわち、構造色領域510は、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面とが形成された部分と、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図6Bに示すように、折線状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである折線状溝を外装部品500に複数掘ることで形成される。このとき、隣接する構造色領域510の間で、折線状溝群の溝が途切れることなく、一つながりになるように形成される。
また、折線状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域510に光が入射すると、入射した光が折線状溝群で回折され、1時半、4時半、7時半、および10時半の4方位に回折光が発生する。4方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品500の代わりに、外装部品500の金型(不図示)に、折線状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、折線状溝群が形成された外装部品500を射出成形で生成することができる。
(実施の形態6)
以下、本発明に係わる実施の形態6について説明する。
図7Aに示すように、樹脂製の外装部品600の表面(X−Y面)に構造色領域610が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域610は、第1構造色領域611、第2構造色領域612、第3構造色領域613、および第4構造色領域614からなる領域である。第1構造色領域611、第2構造色領域612、第3構造色領域613、および第4構造色領域614は、周期的に配列されている。
第1構造色領域611は、第1曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1曲線状凹凸パターンは、第1径方向(1時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第1扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1扇形状溝群の各溝は、第1象限(0時から3時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域612は、第2曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2曲線状凹凸パターンは、第2径方向(10時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第2扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2扇形状溝群の各溝は、第2象限(9時から12時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第3構造色領域613は、第3曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第3曲線状凹凸パターンは、第3径方向(7時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第3扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第3扇形状溝群の各溝は、第3象限(6時から9時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第4構造色領域614は、第4曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第4曲線状凹凸パターンは、第4径方向(4時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第4扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第4扇形状溝群の各溝は、第4象限(3時から6時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域611には、山611aと谷611bとが形成されており、第1径方向(1時半の方向)を挟んで0時から3時までの方位を向いた斜面が形成されている。また、第2構造色領域612には、山612aと谷612bとが形成されており、第2径方向(10時半の方向)を挟んで9時から12時までの方位を向いた斜面が形成されている。また、第3構造色領域613には、山613aと谷613bとが形成されており、第3径方向(7時半の方向)を挟んで6時から9時までの方位を向いた斜面が形成されている。また、第4構造色領域614には、山614aと谷614bとが形成されており、第4径方向(4時半の方向)を挟んで3時から6時までの方位を向いた斜面が形成されている。
ここでは、一例として、図7Bに示すように、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである扇形状溝を外装部品600に複数掘ることで形成される。
また、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
なお、第1構造色領域611、第2構造色領域612、第3構造色領域613、および第4構造色領域614の各々で、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
そして、第1構造色領域611に光が入射すると、入射した光が第1扇形状溝群で回折され、0時から3時までの方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域612に光が入射すると、入射した光が第2扇形状溝群で回折され、9時から12時までの方位に回折光が発生する。また、第3構造色領域613に光が入射すると、入射した光が第3扇形状溝群で回折され、6時から9時までの方位に回折光が発生する。また、第4構造色領域614に光が入射すると、入射した光が第4扇形状溝群で回折され、3時から6時までの方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域610に光が入射すると、全方位に回折光が発生する。全方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品600の代わりに、外装部品600の金型(不図示)に、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々が形成された外装部品600を射出成形で生産することができる。
(実施の形態7)
以下、本発明に係わる実施の形態7について説明する。
図8Aに示すように、樹脂製の外装部品700の表面(X−Y面)に複数の構造色領域710が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域710(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域710は、環状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。環状凹凸パターンは、中心を共有しながら配列された複数の円形状溝(以下、同心円形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。同心円形状溝群の各溝は、径が異なっており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域710には、山710aと谷710bとが形成されており、全方位を向いた斜面が形成されている。
すなわち、構造色領域710は、0時から3時までを向いた斜面が形成された部分と、3時から6時までを向いた斜面が形成された部分と、6時から9時までを向いた斜面が形成された部分と、9時から12時(0時)までを向いた斜面が形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図8Bに示すように、同心円形状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである円形状溝を外装部品700に同心状で複数掘ることで形成される。
また、同心円形状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域710に光が入射すると、入射した光が同心円形状溝群で回折され、全方位に回折光が発生する。全方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品700の代わりに、外装部品700の金型(不図示)に、同心円形状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、同心円形状溝群が形成された外装部品700を射出成形で生産することができる。
(実施の形態8)
以下、本発明に係わる実施の形態8について説明する。
図9Aに示すように、樹脂製の外装部品800の表面(X−Y面)に複数の構造色領域810が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域810(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域810は、波状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。波状凹凸パターンは、第1方向(Y方向)に配列された複数の波状溝(以下、波状溝群と呼称する。)からなるパターンである。波状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(X方向)に蛇行状に伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域810には、山810aと谷810bとが形成されており、6時から3時までを向いた斜面と、9時から12時までを向いた斜面と、0時から3時までを向いた斜面と、9時から6時までを向いた斜面とが形成されている。
すなわち、構造色領域810は、6時から3時までを向いた斜面が形成された部分と、9時から12時(0時)までを向いた斜面が形成された部分と、0時から3時までを向いた斜面が形成された部分と、9時から6時までを向いた斜面が形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図9Bに示すように、波状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである半円形状溝を外装部品800に複数掘ることで形成される。このとき、隣接する構造色領域810の間で、波状溝群の溝が途切れることなく、一つながりになるように形成される。
また、波状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域810に光が入射すると、入射した光が波状溝群で回折され、全方位に回折光が発生する。全方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品800の代わりに、外装部品800の金型(不図示)に、波状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、波状溝群が形成された外装部品800を射出成形で生産することができる。
(その他)
なお、本発明に係わる外装部品は、下記(1)−(5)の条件を満たすものであれば、上記の実施の形態1−8に限定されるものではない。もちろん、実施の形態1−8を適宜組み合わせたものでもよい。例えば、直線状凹凸パターンで形成された構造色領域と、曲線状凹凸パターンで形成された構造色領域とを組み合わせたものであるとしてもよい。
(1)本発明に係わる外装部品は、表側または裏側に凹凸構造を有するものである。
(2)その凹凸構造は、数十μm〜数μmの領域内に、複数の溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(3)それらの溝の幅・深さ・ピッチは、構造色を有する回折光(色光)が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
(4)第1方向を向いた斜面と、第1方向とは異なる第2方向を向いた斜面とを少なくとも含む複数の斜面が、それらの溝によって、その領域内に形成されている。
(5)その領域内に光が入射すると、それらの斜面によって、複数の方向に構造色を有する回折光(色光)が見られる。
なお、外装部品の裏側に凹凸構造が形成された場合には、外装部品の表側から入射した光が透過し難い着色膜で、凹凸構造をコーティングするとしてもよい。
本発明は、構造色が見られる外装部品およびその製造方法などとして利用することができる。
本発明は、構造色が見られる外装部品およびその製造方法に関するものである。
従来、外装部品に装飾効果を与える方法として、しぼ加工や成形後に2次加工を施したり、金型面に化粧線や文字を彫り込んで成形面で浮き上がらせたりする方法が知られている。特に、成形品の着色については、多色成形のような特殊成形によって着色したり、一定の色を有する成形品に、印刷や貼り付け、塗装などを行ったりする方法が一般的である。ただし、これらの方法による着色では、印刷や貼り付け、塗装などといった工程の分だけ製造コストが増加するという問題がある。
特に、塗装工程では、多くの二酸化炭素が排出される。また、各種の顔料や染料あるいは有機溶剤を用いるため、廃液処理などの後始末も必要となる。このため、多くの二酸化炭素が排出される点や、廃液処理などの後始末が必要となる点などが、作業面および環境面において大きな問題になってきている。
このような問題を解決するためにも、顔料や染料などの色素を使用しない技術が望まれている。これに答えるようにして、例えば、微小な凹凸面を有する転写シートのように、材質・形状などに起因して発色する技術(以下、構造色と呼称する。)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
構造色は、色素のように可視光の吸収または放出に起因した発色現象とは異なり、光の反射・干渉・回折などの物理現象に起因した発色現象である。例えば、構造色の発現に関わる光学現象としては、多層膜干渉、薄膜干渉、屈折、分散、光散乱、Mie散乱、回折、回折格子などがある。また、構造色の発現にあたって、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜技術で形成された膜厚1μm以下の光学薄膜が利用されることが多い。そして、このような構造色の発現を利用したものは、紫外線による経時変化が少なく、光沢が出やすいなどの利点を有する。このことから、外装部品への塗装方法や着色方法として構造色の発現を利用することが期待されている。
<転写シート>
ここで、構造色の発現を利用した転写シートについて説明する。
図10に示すように、転写シート10は、回折構造形成層13に微小凹凸パターンが形成されているものである。微小凹凸パターンは、回折格子を構成して構造色を有する色光を発生させることができるものである。
ここでは、転写シート10は、次の手順で製造されている。(a)まず、ガラス転移温度(Tg)250℃のポリアミドイミド樹脂を支持体11に塗布して耐熱保護層12を形成する。(b)次に、ウレタン樹脂を耐熱保護層12に塗布して回折構造形成層13を形成する。(c)次に、ロールエンボス法によって、微小凹凸パターンからなる回折格子を回折構造形成層13の表面に形成する。(d)そして、回折格子を形成したものに、金属反射性の回折効果層14を形成するとともに耐熱マスク層15をパターン印刷する。(e)パターン印刷して得られたものをNaOH溶液が入った浴槽に浸して耐熱マスク層15の不存在部から露出した部分の回折効果層14をエッチングする。(f)その後、エッチングして得られたものに接着層16を形成する。
しかしながら、転写シート10のように、ロールエンボス法によって一方向に溝が形成された被転写体においては、微小凹凸パターンからなる回折格子によって発生する回折光の射出方向が一方向に制限される。このため、特定の方向から被転写体を見たときに、構造色を有する色光が見えても、それ以外の方向から被転写体を見れば、構造色を有する色光が見えなくなる。そして、このことは、意匠性に富んだ外装部品を実現する上で大きな問題となる。
例えば、微小凹凸パターンからなる回折格子が形成された外装部品で製品の外側を装ったとする。この場合において、ユーザが製品を見ると、見る方向によっては、構造色を有する色光が見えたり、製品の内部が見えたりし、製品に対する印象が異なる。特に、製品の内部が見えたりすると、製品の意匠性を損なう場合もある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の方向から見ても、構造色を有する色光を見ることができる外装部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係わる外装部品は、下記に示す特徴を備える。
(CL1)本発明に係わる外装部品は、(a)構造色を有する色光が発生可能な凹凸構造が形成された外装部品であって、(b)前記凹凸構造が、複数の溝からなる凹凸パターンで形成されており、第1方向を向いた斜面が形成された第1構造色領域部分と、前記第1方向とは異なる第2方向を向いた斜面が形成された第2構造色領域部分とを有する。
(CL2)上記(CL1)記載の外装部品は、(a)前記第1構造色領域部分が、前記第1方向に配列された複数の溝からなる第1凹凸パターンで形成されており、(b)前記第2構造色領域部分が、前記第2方向に配列された複数の溝からなる第2凹凸パターンで形成されている。
(CL3)上記(CL2)記載の外装部品は、少なくとも前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とのいずれかが、複数の直線状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(CL4)上記(CL2)記載の外装部品は、少なくとも前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とのいずれかが、複数の曲線状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(CL5)上記(CL1)記載の外装部品は、前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とが、中心を共有して配列された複数の環状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(CL6)上記(CL1)記載の外装部品は、前記第1構造色領域部分と前記第2構造色領域部分とが、所定の方向に配列された複数の波状溝からなる凹凸パターンで形成されている。
なお、本発明は、外装部品として実現されるだけではなく、下記に示す外装部品の製造方法として実現されるとしてもよい。
(CL7)本発明に係わる外装部品の製造方法は、(a)構造色を有する色光が発生可能な凹凸構造が形成された外装部品の製造方法であって、(b)前記外装部品と前記外装部品の金型とのいずれかに対して、前記凹凸構造を形成する表面加工を、方位角を変えながら、複数回行い、第1方向を向いた斜面が形成された第1領域部分と、前記第1方向とは異なる第2方向を向いた斜面が形成された第2領域部分とを形成する。
本発明によれば、複数の方向を向いた斜面を有する微小凹凸構造が形成されるので、構造色を有する回折光が複数の方向に発生する。これによって、複数の方向に対して、目的とする色光を発生させることができる。そして、構造色を有する色光が複数の方向から見られるので、意匠性に富んだ外装部品を実現することができる。
本発明に係る実施の形態1における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態1における構造色領域の部分を切断線A−Aで切断して矢視方向に見た断面図
本発明に係る実施の形態1における構造色領域の部分の斜視図
本発明に係る実施の形態2における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態2における構造色領域の部分を切断線B−Bで切断して矢視方向に見た断面図
本発明に係る実施の形態3における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態3における構造色領域の部分を切断線C−Cで切断して矢視方向に見た断面図
本発明に係る実施の形態4における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態4における構造色領域の部分を切断線D−Dで切断して矢視方向に見た断面図
本発明に係る実施の形態5における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態5における構造色領域の部分を切断線E−Eで切断して矢視方向に見た断面図
本発明に係る実施の形態6における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態6における構造色領域の部分を切断線F−Fで切断して矢視方向に見た断面図
本発明に係る実施の形態7における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態7における構造色領域の部分を切断線G−Gで切断して矢視方向に見た断面図
本発明に係る実施の形態8における構造色領域の部分の上面図
本発明に係る実施の形態8における構造色領域の部分を切断線H−Hで切断して矢視方向に見た断面図
従来例における転写シートの構成を示す図
以下、本発明に係わる外装部品およびその製造の好適な実施の形態を添付の図面を参照しつつ説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明に係わる実施の形態1について説明する。
図1Aに示すように、樹脂製の外装部品100の表面(X−Y面)に構造色領域110が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域110は、第1構造色領域111と第2構造色領域112とからなる領域である。第1構造色領域111と第2構造色領域112とは、周期的に配列されている。
第1構造色領域111は、第1直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1直線状凹凸パターンは、第1方向(X方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第1直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1直線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(Y方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域112は、第2直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2直線状凹凸パターンは、第2方向(Y方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第2直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2直線状溝群の各溝は、第2方向の直交方向(X方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域111には、山111aと谷111bとが形成されており、3時の方位を向いた斜面と9時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第2構造色領域112には、山112aと谷112bとが形成されており、0時の方位を向いた斜面と6時の方位を向いた斜面とが形成されている。
ここでは、一例として、図1Bに示すように、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々は、先端が96度の加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである直線状溝を外装部品100に複数掘ることで形成される。
また、第1構造色領域111と第2構造色領域112とについては、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θが48度であり、ピッチpが0.5μmまたは0.7μmである。さらに、ピッチpが0.5μmである場合には、深さhが225nmである。ピッチpが0.7μmである場合には、深さhが315nmである。
なお、第1構造色領域111と第2構造色領域112とで、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
なお、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々を保護するために、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々を保護層でコーティングするとしてもよい。
そして、図2に示すように、第1構造色領域111に光が入射すると、入射した光が第1直線状溝群で回折され、3時と9時との2方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域112に光が入射すると、入射した光が第2直線状溝群で回折され、0時と6時との2方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域110に光が入射すると、0時、3時、6時、および9時の4方位に回折光が発生する。4方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品100の代わりに、外装部品100の金型(不図示)に、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1直線状溝群と第2直線状溝群との各々が形成された外装部品100を射出成形で生産することができる。
<まとめ>
以上、従来では、1方向に沿った溝によって、2方位を向いた斜面を有する凹凸構造が形成されていたので、2方位にしか回折光が発生せず、2方位からしか構造色を有する色光が見られなかった。しかしながら、本実施の形態によれば、第1直線状溝群と第2直線状溝群とによって、複数の方位を向いた斜面を有する凹凸構造が形成されるので、構造色を有する回折光が複数の方位に発生する。これによって、複数の方位に対して、目的とする色光を発生させることができる。そして、構造色を有する色光が複数の方位から見られるので、意匠性に富んだ外装部品を実現することができる。
(実施の形態2)
以下、本発明に係わる実施の形態2について説明する。
図3Aに示すように、樹脂製の外装部品200の表面(X−Y面)に構造色領域210が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域210は、第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213からなる領域である。第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213は、周期的に配列されている。
第1構造色領域211は、第1直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1直線状凹凸パターンは、第1方向(X方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第1直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1直線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(Y方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域212は、第2直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2直線状凹凸パターンは、第2方向(1時または7時の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第2直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2直線状溝群の各溝は、第2方向の直交方向(4時または10時の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第3構造色領域213は、第3直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第3直線状凹凸パターンは、第3方向(5時または11時の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第3直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第3直線状溝群の各溝は、第3方向の直交方向(2時または8時の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域211には、山211aと谷211bとが形成されており、3時の方位を向いた斜面と9時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第2構造色領域212には、山212aと谷212bとが形成されており、1時の方位を向いた斜面と7時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第3構造色領域213には、山213aと谷213bとが形成されており、5時の方位を向いた斜面と11時の方位を向いた斜面とが形成されている。
ここでは、一例として、図3Bに示すように、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである直線状溝を外装部品200に複数掘ることで形成される。
また、第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
なお、第1構造色領域211、第2構造色領域212、および第3構造色領域213の各々で、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
なお、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々を保護するために、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々を保護層でコーティングするとしてもよい。
そして、第1構造色領域211に光が入射すると、入射した光が第1直線状溝群で回折され、3時と9時との2方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域212に光が入射すると、入射した光が第2直線状溝群で回折され、1時と7時との2方位に回折光が発生する。また、第3構造色領域213に光が入射すると、入射した光が第3直線状溝群で回折され、5時と11時との方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域210に光が入射すると、1時、3時、5時、7時、9時、および11時の6方位に回折光が発生する。6方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品200の代わりに、外装部品200の金型(不図示)に、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1直線状溝群、第2直線状溝群、および第3直線状溝群の各々が形成された外装部品200を射出成形で生産することができる。
(実施の形態3)
以下、本発明に係わる実施の形態3について説明する。
図4Aに示すように、樹脂製の外装部品300の表面(X−Y面)に構造色領域310が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域310は、第1構造色領域311、第2構造色領域312、第3構造色領域313、および第4構造色領域314からなる領域である。第1構造色領域311、第2構造色領域312、第3構造色領域313、および第4構造色領域314は、周期的に配列されている。
第1構造色領域311は、第1直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1直線状凹凸パターンは、第1方向(X方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第1直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1直線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(Y方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域312は、第2直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2直線状凹凸パターンは、第2方向(4時半または10時半の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第2直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2直線状溝群の各溝は、第2方向の直交方向(1時半または7時半の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第3構造色領域313は、第3直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第3直線状凹凸パターンは、第3方向(Y方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第3直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第3直線状溝群の各溝は、第3方向の直交方向(X方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第4構造色領域314は、第4直線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第4直線状凹凸パターンは、第4方向(1時半または7時半の方向)に配列された複数の直線状溝(以下、第4直線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第4直線状溝群の各溝は、第4方向の直交方向(4時半または10時半の方向)に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域311には、山311aと谷311bとが形成されており、3時の方位を向いた斜面と9時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第2構造色領域312には、山312aと谷312bとが形成されており、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第3構造色領域313には、山313aと谷313bとが形成されており、0時の方位を向いた斜面と6時の方位を向いた斜面とが形成されている。また、第4構造色領域314には、山314aと谷314bとが形成されており、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面とが形成されている。
ここでは、一例として、図4Bに示すように、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである直線状溝を外装部品300に複数掘ることで形成される。
また、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
なお、第1構造色領域311、第2構造色領域312、第3構造色領域313、および第4構造色領域314の各々で、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
なお、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々を保護するために、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々を保護層でコーティングするとしてもよい。
そして、第1構造色領域311に光が入射すると、入射した光が第1直線状溝群で回折され、3時と9時との2方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域312に光が入射すると、入射した光が第2直線状溝群で回折され、4時半と10時半との2方位に回折光が発生する。また、第3構造色領域313に光が入射すると、入射した光が第3直線状溝群で回折され、0時と6時との2方位に回折光が発生する。また、第4構造色領域314に光が入射すると、入射した光が第4直線状溝群で回折され、1時半と7時半との2方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域310に光が入射すると、0時、1時半、3時、4時半、6時、7時半、9時、および10時半の8方位に回折光が発生する。8方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品300の代わりに、外装部品300の金型(不図示)に、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1直線状溝群、第2直線状溝群、第3直線状溝群、および第4直線状溝群の各々が形成された外装部品300を射出成形で生産することができる。
(実施の形態4)
以下、本発明に係わる実施の形態4について説明する。
図5Aに示すように、樹脂製の外装部品400の表面(X−Y面)に複数の構造色領域410が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域410(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域410は、環状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。環状凹凸パターンは、中心を共有しながらが配列された複数の四角形状溝(以下、同心四角形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。同心四角形状溝群の各溝は、径が異なっており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域410には、山410aと谷410bとが形成されており、1時半、4時半、7時半、および10時半の各方位を向いた各斜面が形成されている。
すなわち、構造色領域410は、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面とが形成された部分と、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図5Bに示すように、同心四角形状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである四角形状溝を外装部品400に同心状で複数掘ることで形成される。
また、同心四角形状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域410に光が入射すると、入射した光が同心四角形状溝群で回折され、1時半、4時半、7時半、および10時半の4方位に回折光が発生する。4方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品400の代わりに、外装部品400の金型(不図示)に、同心四角形状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、同心四角形状溝群が形成された外装部品400を射出成形で生成することができる。
(実施の形態5)
以下、本発明に係わる実施の形態5について説明する。
図6Aに示すように、樹脂製の外装部品500の表面(X−Y面)に複数の構造色領域510が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域510(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域510は、波状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。波状凹凸パターンは、第1方向(Y方向)に配列された複数の折線状溝(以下、折線状溝群と呼称する。)からなるパターンである。折線状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(X方向)にジグザグ状に伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域510には、山510aと谷510bとが形成されており、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面と、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成されている。
すなわち、構造色領域510は、1時半の方位を向いた斜面と7時半の方位を向いた斜面とが形成された部分と、4時半の方位を向いた斜面と10時半の方位を向いた斜面とが形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図6Bに示すように、折線状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである折線状溝を外装部品500に複数掘ることで形成される。このとき、隣接する構造色領域510の間で、折線状溝群の溝が途切れることなく、一つながりになるように形成される。
また、折線状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域510に光が入射すると、入射した光が折線状溝群で回折され、1時半、4時半、7時半、および10時半の4方位に回折光が発生する。4方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品500の代わりに、外装部品500の金型(不図示)に、折線状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、折線状溝群が形成された外装部品500を射出成形で生成することができる。
(実施の形態6)
以下、本発明に係わる実施の形態6について説明する。
図7Aに示すように、樹脂製の外装部品600の表面(X−Y面)に構造色領域610が形成されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域610は、第1構造色領域611、第2構造色領域612、第3構造色領域613、および第4構造色領域614からなる領域である。第1構造色領域611、第2構造色領域612、第3構造色領域613、および第4構造色領域614は、周期的に配列されている。
第1構造色領域611は、第1曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第1曲線状凹凸パターンは、第1径方向(1時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第1扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第1扇形状溝群の各溝は、第1象限(0時から3時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第2構造色領域612は、第2曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第2曲線状凹凸パターンは、第2径方向(10時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第2扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第2扇形状溝群の各溝は、第2象限(9時から12時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第3構造色領域613は、第3曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第3曲線状凹凸パターンは、第3径方向(7時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第3扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第3扇形状溝群の各溝は、第3象限(6時から9時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
第4構造色領域614は、第4曲線状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。第4曲線状凹凸パターンは、第4径方向(4時半の方向)に配列された複数の扇形状溝(以下、第4扇形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。第4扇形状溝群の各溝は、第4象限(3時から6時)の円弧に沿って伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、第1構造色領域611には、山611aと谷611bとが形成されており、第1径方向(1時半の方向)を挟んで0時から3時までの方位を向いた斜面が形成されている。また、第2構造色領域612には、山612aと谷612bとが形成されており、第2径方向(10時半の方向)を挟んで9時から12時までの方位を向いた斜面が形成されている。また、第3構造色領域613には、山613aと谷613bとが形成されており、第3径方向(7時半の方向)を挟んで6時から9時までの方位を向いた斜面が形成されている。また、第4構造色領域614には、山614aと谷614bとが形成されており、第4径方向(4時半の方向)を挟んで3時から6時までの方位を向いた斜面が形成されている。
ここでは、一例として、図7Bに示すように、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである扇形状溝を外装部品600に複数掘ることで形成される。
また、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
なお、第1構造色領域611、第2構造色領域612、第3構造色領域613、および第4構造色領域614の各々で、斜面角度θ・ピッチp・深さhが異なるとしてもよい。
そして、第1構造色領域611に光が入射すると、入射した光が第1扇形状溝群で回折され、0時から3時までの方位に回折光が発生する。同様に、第2構造色領域612に光が入射すると、入射した光が第2扇形状溝群で回折され、9時から12時までの方位に回折光が発生する。また、第3構造色領域613に光が入射すると、入射した光が第3扇形状溝群で回折され、6時から9時までの方位に回折光が発生する。また、第4構造色領域614に光が入射すると、入射した光が第4扇形状溝群で回折され、3時から6時までの方位に回折光が発生する。
すなわち、構造色領域610に光が入射すると、全方位に回折光が発生する。全方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品600の代わりに、外装部品600の金型(不図示)に、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々が形成されるとしてもよい。これによって、第1扇形状溝群、第2扇形状溝群、第3扇形状溝群、および第4扇形状溝群の各々が形成された外装部品600を射出成形で生産することができる。
(実施の形態7)
以下、本発明に係わる実施の形態7について説明する。
図8Aに示すように、樹脂製の外装部品700の表面(X−Y面)に複数の構造色領域710が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域710(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域710は、環状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。環状凹凸パターンは、中心を共有しながら配列された複数の円形状溝(以下、同心円形状溝群と呼称する。)からなるパターンである。同心円形状溝群の各溝は、径が異なっており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域710には、山710aと谷710bとが形成されており、全方位を向いた斜面が形成されている。
すなわち、構造色領域710は、0時から3時までを向いた斜面が形成された部分と、3時から6時までを向いた斜面が形成された部分と、6時から9時までを向いた斜面が形成された部分と、9時から12時(0時)までを向いた斜面が形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図8Bに示すように、同心円形状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである円形状溝を外装部品700に同心状で複数掘ることで形成される。
また、同心円形状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域710に光が入射すると、入射した光が同心円形状溝群で回折され、全方位に回折光が発生する。全方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品700の代わりに、外装部品700の金型(不図示)に、同心円形状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、同心円形状溝群が形成された外装部品700を射出成形で生産することができる。
(実施の形態8)
以下、本発明に係わる実施の形態8について説明する。
図9Aに示すように、樹脂製の外装部品800の表面(X−Y面)に複数の構造色領域810が形成されている。X方向とY方向との各方向に、各構造色領域810(図中の破線で囲まれている領域)が配列されている。図中において、点線が谷を示し、実線が山を示している。また、X−Y面について、上側を0時として、時計回りに30度ずつ回転させた方位を、1時〜11時とする。さらに、0時または6時の方位をY方向とし、3時または9時の方位をX方向とする。
構造色領域810は、波状凹凸パターンで凹凸構造が形成された矩形領域(X方向とY方向との寸法が数十〜数μm)である。波状凹凸パターンは、第1方向(Y方向)に配列された複数の波状溝(以下、波状溝群と呼称する。)からなるパターンである。波状溝群の各溝は、第1方向の直交方向(X方向)に蛇行状に伸びており、構造色を有する回折光が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
さらに、構造色領域810には、山810aと谷810bとが形成されており、6時から3時までを向いた斜面と、9時から12時までを向いた斜面と、0時から3時までを向いた斜面と、9時から6時までを向いた斜面とが形成されている。
すなわち、構造色領域810は、6時から3時までを向いた斜面が形成された部分と、9時から12時(0時)までを向いた斜面が形成された部分と、0時から3時までを向いた斜面が形成された部分と、9時から6時までを向いた斜面が形成された部分とからなる領域でもある。
ここでは、一例として、図9Bに示すように、波状溝群は、実施の形態1における加工バイトを使用して、断面がV字形状であって溝幅が数百nmである半円形状溝を外装部品800に複数掘ることで形成される。このとき、隣接する構造色領域810の間で、波状溝群の溝が途切れることなく、一つながりになるように形成される。
また、波状溝群については、溝を掘る方向が異なるだけであって、斜面角度θ・ピッチp・深さhが実施の形態1と同じである。
そして、構造色領域810に光が入射すると、入射した光が波状溝群で回折され、全方位に回折光が発生する。全方位に発生した回折光が、構造色を有する色光となってユーザに見える。
なお、外装部品800の代わりに、外装部品800の金型(不図示)に、波状溝群が形成されるとしてもよい。これによって、波状溝群が形成された外装部品800を射出成形で生産することができる。
(その他)
なお、本発明に係わる外装部品は、下記(1)−(5)の条件を満たすものであれば、上記の実施の形態1−8に限定されるものではない。もちろん、実施の形態1−8を適宜組み合わせたものでもよい。例えば、直線状凹凸パターンで形成された構造色領域と、曲線状凹凸パターンで形成された構造色領域とを組み合わせたものであるとしてもよい。
(1)本発明に係わる外装部品は、表側または裏側に凹凸構造を有するものである。
(2)その凹凸構造は、数十μm〜数μmの領域内に、複数の溝からなる凹凸パターンで形成されている。
(3)それらの溝の幅・深さ・ピッチは、構造色を有する回折光(色光)が発生可能な寸法(数百nm)で形成されている。
(4)第1方向を向いた斜面と、第1方向とは異なる第2方向を向いた斜面とを少なくとも含む複数の斜面が、それらの溝によって、その領域内に形成されている。
(5)その領域内に光が入射すると、それらの斜面によって、複数の方向に構造色を有する回折光(色光)が見られる。
なお、外装部品の裏側に凹凸構造が形成された場合には、外装部品の表側から入射した光が透過し難い着色膜で、凹凸構造をコーティングするとしてもよい。
本発明は、構造色が見られる外装部品およびその製造方法などとして利用することができる。
100 外装部品
110 構造色領域
111 第1構造色領域
111a 山
111b 谷
112 第2構造色領域
112a 山
112b 谷
200 外装部品
210 構造色領域
211 第1構造色領域
211a 山
211b 谷
212 第2構造色領域
212a 山
212b 谷
213 第3構造色領域
213a 山
213b 谷
300 外装部品
310 構造色領域
311 第1構造色領域
311a 山
311b 谷
312 第2構造色領域
312a 山
312b 谷
313 第3構造色領域
313a 山
313b 谷
314 第4構造色領域
314a 山
314b 谷
400 外装部品
410 構造色領域
410a 山
410b 谷
500 外装部品
510 構造色領域
510a 山
510b 谷
600 外装部品
610 構造色領域
611 第1構造色領域
611a 山
611b 谷
612 第2構造色領域
612a 山
612b 谷
613 第3構造色領域
613a 山
613b 谷
614 第4構造色領域
614a 山
614b 谷
700 外装部品
710 構造色領域
710a 山
710b 谷
800 外装部品
810 構造色領域
810a 山
810b 谷
900 外装部品
910 構造色領域
910a 山頂部
910b 山麓部
1000 外装部品
1010 構造色領域
1010a 山頂部
1010b 山麓部