JPWO2010047263A1 - アントラピリドン色素又はその塩、インク組成物及び着色体 - Google Patents
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Abstract
インクジェット記録に適する色相及び鮮明性を有し、且つ記録物の耐光性、耐オゾンガス性等の堅牢性に優れたマゼンタの水性インク組成物、及び該インク組成物に適するマゼンタ色素を提供する。該インク組成物は、少なくとも1種の下記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩を、色素として含有する。[式中、m、n、及びpは1の整数等を表し、Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、置換アニリノ基;置換モノ又はジアルキルアミノ基;ヒドロキシ基等を表し、Yは非置換フェニル基等を表し、R1はアルキル基等を表し、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に水素原子等を表す。]
Description
本発明は新規なアントラピリドン色素又はその塩、アントラピリドン色素又はその塩を含有するマゼンタインク組成物、及びこの組成物等により着色された着色体に関する。
各種カラー記録法の中で、その代表的方法の1つであるインクジェットプリンタによる記録方法は、インクの各種吐出方式が開発されているが、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。これは、記録ヘッドと被記録材とが接触しないため、音の発生がなく静かである。また、小型化、高速化、カラー化が容易という特長を有するため、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。
従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用のインクとしては、水溶性染料を水性媒体中に溶解した水性インクが使用されている。また、これらの水性インクにおいては、ペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性有機溶剤が添加されている。これらの従来のインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求され、また形成される画像には、耐水性、耐光性、耐湿性等の各種堅牢性が求められている。
従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用のインクとしては、水溶性染料を水性媒体中に溶解した水性インクが使用されている。また、これらの水性インクにおいては、ペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性有機溶剤が添加されている。これらの従来のインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求され、また形成される画像には、耐水性、耐光性、耐湿性等の各種堅牢性が求められている。
一方、コンピュータのカラーディスプレイ上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタによりカラーで記録するには、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレイ等のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色画像を減法混色画像で出来るだけ忠実に再現するには、Y、M、Cのそれぞれが、それぞれの標準に出来るだけ近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。
インクジェットプリンタの用途はOA用小型プリンタから産業用の大型プリンタにまで拡大されてきており、耐水性、耐湿性、耐光性、耐ガス性等の各種堅牢性がこれまで以上に求められている。
耐水性については、多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、アルミナゾル、特殊セラミック等のインク中の色素を吸着し得る無機微粒子をPVA樹脂等と共に被記録材の表面にコーティングすることにより、大幅に改良されてきている。
耐湿性とは、着色された被記録材を高湿度の雰囲気下に保存した際に被記録材中の色素が滲んでくるという現象に対する耐性のことである。色素の滲みがあると、特に写真調の高精細な画質を求められる画像においては著しく画像品位が低下するため、このような滲みを出来るだけ少なくすることが重要である。
耐光性については、大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、特にY、M、C、Kの4原色のうちマゼンタの色素はもともと耐光性が弱いものが多く、その改良が重要な課題となっている。また、最近のデジタルカメラの浸透と共に家庭でも写真をプリントする機会が増しており、得られた記録物を保管する際に、空気中の酸化性ガスによる画像の変退色も問題視されている。その酸化性ガスは、被記録材上又は被記録材中で色素と反応し、印刷された画像を変退色させる。酸化性ガスの中でも、オゾンガスはインクジェット記録画像の変退色現象を促進させる主原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上も重要な課題となっている。
耐水性については、多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、アルミナゾル、特殊セラミック等のインク中の色素を吸着し得る無機微粒子をPVA樹脂等と共に被記録材の表面にコーティングすることにより、大幅に改良されてきている。
耐湿性とは、着色された被記録材を高湿度の雰囲気下に保存した際に被記録材中の色素が滲んでくるという現象に対する耐性のことである。色素の滲みがあると、特に写真調の高精細な画質を求められる画像においては著しく画像品位が低下するため、このような滲みを出来るだけ少なくすることが重要である。
耐光性については、大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、特にY、M、C、Kの4原色のうちマゼンタの色素はもともと耐光性が弱いものが多く、その改良が重要な課題となっている。また、最近のデジタルカメラの浸透と共に家庭でも写真をプリントする機会が増しており、得られた記録物を保管する際に、空気中の酸化性ガスによる画像の変退色も問題視されている。その酸化性ガスは、被記録材上又は被記録材中で色素と反応し、印刷された画像を変退色させる。酸化性ガスの中でも、オゾンガスはインクジェット記録画像の変退色現象を促進させる主原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上も重要な課題となっている。
インクジェット記録用水性インクに用いられているマゼンタ色素としては、キサンテン系色素とH酸を用いたアゾ系色素とが代表的である。しかし、キサンテン系色素については、色相及び鮮明性は非常に優れるが、耐光性が非常に劣る。一方、H酸を用いたアゾ系色素については、色相及び耐水性の点では良いものがあるが、耐光性、耐ガス性、及び鮮明性が劣る。このタイプでは、鮮明性及び耐光性の優れたマゼンタ色素も開発されているが、銅フタロシアニン系色素に代表されるシアン色素やイエロー色素等の他の色相の色素に比べ耐光性が依然劣る水準である。
鮮明性及び耐光性の優れるマゼンタ色素としてはアントラピリドン系色素(例えば、特許文献1〜12参照)があるが、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性、及び溶液安定性の全てを満足させるものは得られていない。
本発明は水に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相及び鮮明性を有し、且つ記録物の耐水性、耐湿性、耐ガス性等の各種堅牢性に優れたマゼンタ色素を含有するインク組成物、及びその色素を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、特定の式で表されるアントラピリドン色素が上記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
1)
少なくとも1種の下記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩を、色素として含有するインク組成物、
[式(1)中、
mは0乃至2の整数、
nは1の整数、
pは1の整数、
Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアニリノ基(ただし、スルホ基又はカルボキシ基のみで置換されたもの、及びスルホ基と、C1−C12アルキル基、C1−C6アルコキシ基、及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基とで置換されたものを除く。)、又は非置換アニリノ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、非置換アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びフェニル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基(ただし、カルボキシ基のみで置換されたものを除く。)、又は非置換モノ若しくはジアルキルアミノ基;非置換ナフチルアミノ基;ヒドロキシ基を有してもよいモノ又はジアルキルアミノアルキルアミノ基;非置換アミノ基;ハロゲン原子;又はヒドロキシ基;を表すが、Xa乃至Xcの少なくとも1つはハロゲン原子及びヒドロキシ基から選択される基以外の基であり、
Yはスルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルコキシ基、又は非置換アルコキシ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、
R1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル基、又はシアノ低級アルキル基を表し、
R2は水素原子、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、又はハロゲン原子を表し、
R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
R1乃至R4、Xa乃至Xc、及びYで表される上記全ての基及び置換基は、水素原子以外の基でさらに置換されてもよい。]
1)
少なくとも1種の下記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩を、色素として含有するインク組成物、
mは0乃至2の整数、
nは1の整数、
pは1の整数、
Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアニリノ基(ただし、スルホ基又はカルボキシ基のみで置換されたもの、及びスルホ基と、C1−C12アルキル基、C1−C6アルコキシ基、及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基とで置換されたものを除く。)、又は非置換アニリノ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、非置換アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びフェニル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基(ただし、カルボキシ基のみで置換されたものを除く。)、又は非置換モノ若しくはジアルキルアミノ基;非置換ナフチルアミノ基;ヒドロキシ基を有してもよいモノ又はジアルキルアミノアルキルアミノ基;非置換アミノ基;ハロゲン原子;又はヒドロキシ基;を表すが、Xa乃至Xcの少なくとも1つはハロゲン原子及びヒドロキシ基から選択される基以外の基であり、
Yはスルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルコキシ基、又は非置換アルコキシ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、
R1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル基、又はシアノ低級アルキル基を表し、
R2は水素原子、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、又はハロゲン原子を表し、
R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
R1乃至R4、Xa乃至Xc、及びYで表される上記全ての基及び置換基は、水素原子以外の基でさらに置換されてもよい。]
2)
R1が水素原子又はメチル基であり、
R2が水素原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、又はフェノキシ基である、上記1)に記載のインク組成物、
3)
上記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(2)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記1)又は2)に記載のインク組成物、
[式(2)中、
Xa乃至Xcは式(1)におけるのと同じ意味を表し、
Yはカルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、
R11は水素原子又はメチル基を表す。]
R1が水素原子又はメチル基であり、
R2が水素原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、又はフェノキシ基である、上記1)に記載のインク組成物、
3)
上記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(2)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記1)又は2)に記載のインク組成物、
Xa乃至Xcは式(1)におけるのと同じ意味を表し、
Yはカルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、
R11は水素原子又はメチル基を表す。]
4)
上記式(2)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(3)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記3)に記載のインク組成物、
[式(3)中、
Rは水素原子、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を表し、
Xa乃至Xcは式(2)におけるのと同じ意味を表す。]
上記式(2)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(3)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記3)に記載のインク組成物、
Rは水素原子、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を表し、
Xa乃至Xcは式(2)におけるのと同じ意味を表す。]
5)
上記式(3)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(4)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記4)に記載のインク組成物、
[式(4)中、
Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミノ基;又はヒドロキシ基;を表し、Xa乃至Xcの少なくとも1つはヒドロキシ基以外の基である。]
上記式(3)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(4)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記4)に記載のインク組成物、
Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミノ基;又はヒドロキシ基;を表し、Xa乃至Xcの少なくとも1つはヒドロキシ基以外の基である。]
6)
スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリン;スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミン;よりなる群から選択される少なくとも1種のアミンと、下記式(5)で表される化合物とを反応させることにより得られる請求項5に記載の色素又はその塩の少なくとも1種を、色素として含有するインク組成物。
[式(5)中、Qはハロゲン原子を表す。]
スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリン;スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミン;よりなる群から選択される少なくとも1種のアミンと、下記式(5)で表される化合物とを反応させることにより得られる請求項5に記載の色素又はその塩の少なくとも1種を、色素として含有するインク組成物。
7)
上記式(4)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(7)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記5)に記載のインク組成物、
[式(7)中、
Xdはスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;又はスルホ基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基;を表し、h及びjはいずれも平均値で、hが1.6以上2.5以下、jが0.5以上1.4以下であり、hとjとの和は3.0である。]
上記式(4)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(7)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、上記5)に記載のインク組成物、
Xdはスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;又はスルホ基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基;を表し、h及びjはいずれも平均値で、hが1.6以上2.5以下、jが0.5以上1.4以下であり、hとjとの和は3.0である。]
8)
水及び水溶性有機溶剤を含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のインク組成物、
9)
インク組成物中に色素として含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のアントラピリドン色素又はその塩の総質量中における無機不純物の含有量が、1質量%以下である上記1)乃至8)のいずれか一項に記載のインク組成物、
10)
インク組成物中に色素として含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のアントラピリドン色素の含有量が、インク組成物の総質量に対して、0.1〜20質量%である上記1)乃至9)のいずれか一項に記載のインク組成物、
11)
インクジェット記録用である上記1)乃至10)に記載のインク組成物、
12)
上記1)乃至11)のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に記録を行うインクジェット記録方法、
13)
上記被記録材が情報伝達用シートである上記12)に記載のインクジェット記録方法、
14)
上記情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである上記13)に記載のインクジェット記録方法、
15)
上記1)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体、
16)
着色がインクジェットプリンタによりなされた上記15)に記載の着色体、
17)
上記1)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ、
水及び水溶性有機溶剤を含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のインク組成物、
9)
インク組成物中に色素として含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のアントラピリドン色素又はその塩の総質量中における無機不純物の含有量が、1質量%以下である上記1)乃至8)のいずれか一項に記載のインク組成物、
10)
インク組成物中に色素として含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のアントラピリドン色素の含有量が、インク組成物の総質量に対して、0.1〜20質量%である上記1)乃至9)のいずれか一項に記載のインク組成物、
11)
インクジェット記録用である上記1)乃至10)に記載のインク組成物、
12)
上記1)乃至11)のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に記録を行うインクジェット記録方法、
13)
上記被記録材が情報伝達用シートである上記12)に記載のインクジェット記録方法、
14)
上記情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである上記13)に記載のインクジェット記録方法、
15)
上記1)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体、
16)
着色がインクジェットプリンタによりなされた上記15)に記載の着色体、
17)
上記1)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ、
18)
下記式(7)で表されるアントラピリドン色素又はその塩、
[式(7)中、
Xdはスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;又はスルホ基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基;を表し、h及びjはいずれも平均値で、hが1.6以上2.5以下、jが0.5以上1.4以下であり、hとjとの和は3.0である。]
下記式(7)で表されるアントラピリドン色素又はその塩、
Xdはスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;又はスルホ基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基;を表し、h及びjはいずれも平均値で、hが1.6以上2.5以下、jが0.5以上1.4以下であり、hとjとの和は3.0である。]
本発明の上記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩は、インクジェット記録紙上で非常に鮮明性、明度の高い色相であり、インク組成物の製造過程でのメンブランフィルタに対する濾過性が良好であるという特徴を有する。また、この色素又はその塩を含有する本発明のインク組成物は、長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。そして、本発明のアントラピリドン色素又はその塩をインクジェット記録用のマゼンタインクとして使用した印刷物は、被記録材(紙、フィルム等)を選択することなく理想的なマゼンタの色相である。さらに、本発明のマゼンタインク組成物は、写真調のカラー画像の色相を紙の上に忠実に再現させることも可能である。また、写真画質用インクジェット専用紙(フィルム)のような無機微粒子を表面に塗工した被記録材に記録しても耐オゾン性、耐水性、耐湿性等の各種堅牢性が良好であり、記録画像の長期保存安定性に優れている。したがって、上記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩、及びこれを含有するインク組成物は、インクジェット記録用途に極めて有用である。
本発明を詳細に説明する。本発明のアントラピリドン色素又はその塩は、マゼンタ色素であり、実質的に混合物である。また、本明細書においては煩雑さを避けるため、「本発明のアントラピリドン色素又はその塩」の両者を含めて、以下「本発明のアントラピリドン色素」と簡略して記載する。なお、本明細書においては特に断りがない限り、スルホ基、カルボキシ基等の官能基は遊離酸の形で表す。
本発明の色素は、前記式(1)で表される。
式(1)におけるmは0乃至2の整数であり、nは1の整数、pは1の整数をそれぞれ表す。
上記mは、式(1)におけるYにより好ましいものが異なる。すなわち、Yが置換又は非置換フェニル基の場合は1又は2が好ましく、より好ましくは1である。Yが非置換アルキル基の場合は1又は2が好ましい。Yがこれら以外の基の場合は0が好ましい。
式(1)におけるmは0乃至2の整数であり、nは1の整数、pは1の整数をそれぞれ表す。
上記mは、式(1)におけるYにより好ましいものが異なる。すなわち、Yが置換又は非置換フェニル基の場合は1又は2が好ましく、より好ましくは1である。Yが非置換アルキル基の場合は1又は2が好ましい。Yがこれら以外の基の場合は0が好ましい。
上記式(1)中、Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアニリノ基(ただし、スルホ基又はカルボキシ基のみで置換されたもの、及びスルホ基と、C1−C12アルキル基、C1−C6アルコキシ基、及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基とで置換されたものを除く。)、又は非置換アニリノ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、非置換アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びフェニル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基(ただし、カルボキシ基のみで置換されたものを除く。)、又は非置換モノ若しくはジアルキルアミノ基;非置換ナフチルアミノ基;ヒドロキシ基を有してもよいモノ又はジアルキルアミノアルキルアミノ基;非置換アミノ基;ハロゲン原子;又はヒドロキシ基;を表すが、Xa乃至Xcの少なくとも1つはハロゲン原子及びヒドロキシ基から選択される基以外の基である。
上記Xa乃至Xcにおける、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアニリノ基(ただし、スルホ基又はカルボキシ基のみで置換されたもの、及びスルホ基と、C1−C12アルキル基、C1−C6アルコキシ基、及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基とで置換されたものを除く。)、又は非置換アニリノ基としては、例えば4−メトキシアニリノ等のアルコキシ置換のもの;3−(メチルチオ)アニリノ等のアルキルチオ置換のもの;3−アミノカルボニルアニリノ等のカルバモイル置換のもの;3−シアノアニリノ等のシアノ置換のもの;4−ブチルアニリノ等のアルキル置換のもの;4−フェノキシアニリノ等のフェノキシ置換のもの;4−アミノアニリノ等のアミノ置換のもの;4−ヒドロキシアニリノ等のヒドロキシ置換のもの;4−メルカプトアニリノ等のメルカプト置換のもの;非置換アニリノ基;等が挙げられる。
また、上記の群から選択される2種の基を有するものとしては、メチル基、メトキシ基、カルボキシ基、又はアニリノ基で置換されたスルホアニリノ基;又は、カルボキシ置換ヒドロキシアニリノ基;が挙げられる。具体例としては、4−メチル−2−スルホアニリノ、2−メチル−4−スルホアニリノ等のメチル置換スルホアニリノ基;4−メトキシ−2−スルホアニリノ等のメトキシ置換スルホアニリノ基;2−カルボキシ−5−スルホアニリノ、2−カルボキシ−4−スルホアニリノ等のカルボキシ置換スルホアニリノ基;4−アニリノ−3−スルホアニリノ等のアニリノ置換スルホアニリノ;3−カルボキシ−4−ヒドロキシアニリノ等のカルボキシ置換ヒドロキシアニリノ基;等が挙げられる。
これらの中ではカルボキシ置換スルホアニリノ基が好ましい。
上記置換基の数は通常1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは2である。
また、上記の群から選択される2種の基を有するものとしては、メチル基、メトキシ基、カルボキシ基、又はアニリノ基で置換されたスルホアニリノ基;又は、カルボキシ置換ヒドロキシアニリノ基;が挙げられる。具体例としては、4−メチル−2−スルホアニリノ、2−メチル−4−スルホアニリノ等のメチル置換スルホアニリノ基;4−メトキシ−2−スルホアニリノ等のメトキシ置換スルホアニリノ基;2−カルボキシ−5−スルホアニリノ、2−カルボキシ−4−スルホアニリノ等のカルボキシ置換スルホアニリノ基;4−アニリノ−3−スルホアニリノ等のアニリノ置換スルホアニリノ;3−カルボキシ−4−ヒドロキシアニリノ等のカルボキシ置換ヒドロキシアニリノ基;等が挙げられる。
これらの中ではカルボキシ置換スルホアニリノ基が好ましい。
上記置換基の数は通常1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは2である。
上記Xa乃至Xcにおける、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、非置換アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びフェニル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基(ただし、カルボキシ基のみで置換されたものを除く。)、又は非置換モノ若しくはジアルキルアミノ基としては、直鎖、分岐鎖、又は環状のC1−C10、好ましくはC1−C6、より好ましくはC1−C4のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。直鎖、分岐鎖、又は環状のものが挙げられ、モノアルキルアミノ基としては直鎖のものが、ジアルキルアミノ基としては直鎖又は環状のものが好ましい。上記モノアルキルアミノ基の具体例としては、例えば2−スルホエチルアミノ等のスルホ置換のもの;3−エトキシプロピルアミノ等のアルコキシ置換のもの;3−メチルチオプロピルアミノ等のアルキルチオ置換のもの;3−オキソブチルアミノ等のオキソ置換のもの;2−アミノカルボニルエチルアミノ等のカルバモイル置換のもの;3−シアノプロピルアミノ等のシアノ置換のもの;3−フェニルアミノプロピルアミノ等のアニリノ置換のもの;2−フェノキシエチルアミノ等のフェノキシ置換のもの;2−アミノエチルアミノ等のアミノ置換のもの;2−ヒドロキシエチルアミノ等のヒドロキシ置換のもの;2−チオエチルアミノ等のメルカプト置換のもの;ベンジルアミノ等のフェニル置換のもの;メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ等の非置換直鎖のもの;2−エチルヘキシルアミノ等の非置換分岐鎖のもの;シクロヘキシルアミノ等の非置換環状のもの;等が挙げられる。
モノアルキルアミノ基としては、モノ(スルホ置換直鎖C1−C4アルキル)アミノ基が好ましく、2−スルホエチルアミノがより好ましい。
上記ジアルキルアミノ基における直鎖のものとしては、モノアルキルアミノ基における置換基の中から独立に選択される基を置換基として有するものを意味する。好ましくはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ等の非置換直鎖のもの;ビス(2−スルホエチル)アミノ等のスルホ置換直鎖C1−C4のもの;ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ等のヒドロキシ置換のもの;等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基における環状のものとしては、ピペリジン、ピロリジン等の窒素原子を環構成原子として1又は2、好ましくは1含む5又は6員環の含窒素脂肪族複素環アミノ基;4−スルホピペリジン、2−スルホピロリジン等のスルホ置換5又は6員環の含窒素脂肪族複素環アミノ基;等が挙げられる。
より好ましくはビス(スルホ置換直鎖C1−C4アルキル)アミノ基、又はスルホ置換5又は6員環の含窒素脂肪族複素環アミノ基である。
置換基の数に制限は無いが、通常1乃至4、好ましくは1乃至3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
モノアルキルアミノ基としては、モノ(スルホ置換直鎖C1−C4アルキル)アミノ基が好ましく、2−スルホエチルアミノがより好ましい。
上記ジアルキルアミノ基における直鎖のものとしては、モノアルキルアミノ基における置換基の中から独立に選択される基を置換基として有するものを意味する。好ましくはジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ等の非置換直鎖のもの;ビス(2−スルホエチル)アミノ等のスルホ置換直鎖C1−C4のもの;ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ等のヒドロキシ置換のもの;等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基における環状のものとしては、ピペリジン、ピロリジン等の窒素原子を環構成原子として1又は2、好ましくは1含む5又は6員環の含窒素脂肪族複素環アミノ基;4−スルホピペリジン、2−スルホピロリジン等のスルホ置換5又は6員環の含窒素脂肪族複素環アミノ基;等が挙げられる。
より好ましくはビス(スルホ置換直鎖C1−C4アルキル)アミノ基、又はスルホ置換5又は6員環の含窒素脂肪族複素環アミノ基である。
置換基の数に制限は無いが、通常1乃至4、好ましくは1乃至3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
Xa乃至Xcにおける、ヒドロキシ基を有してもよいモノ又はジアルキルアミノアルキルアミノ基としては、通常モノ又はジC1−C4アルキルアミノC1−C10アルキルアミノ基、好ましくはモノ又はジC1−C4アルキルアミノC1−C6アルキルアミノ基、より好ましくはモノ又はジC1−C4アルキルアミノC1−C4アルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、例えば、2−メチルアミノ−エチルアミノ、3−メチルアミノ−プロピルアミノ、3−エチルアミノ−プロピルアミノ、4−メチルアミノ−ブチルアミノ等の、アルキル部分が非置換のもの等が挙げられる。
Xa乃至Xcが、ジアルキルアミノアルキルアミノ基の場合、上記のモノアルキルアミノアルキルアミノ基の「モノアルキル」部分を独立に2つ有するもの等を意味する。具体例としては、例えば2−[N−(3−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミノ]エチルアミノ等のヒドロキシ基を有するもの;3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアミノ、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアミノ等のアルキル部分が非置換のもの;等が挙げられる。
モノアルキルアミノアルキルアミノ基としてはアルキル部分が非置換のものが好ましく、ジアルキルアミノアルキルアミノ基としては非置換又はヒドロキシ置換のものが好ましい。
Xa乃至Xcが、ジアルキルアミノアルキルアミノ基の場合、上記のモノアルキルアミノアルキルアミノ基の「モノアルキル」部分を独立に2つ有するもの等を意味する。具体例としては、例えば2−[N−(3−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミノ]エチルアミノ等のヒドロキシ基を有するもの;3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアミノ、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアミノ等のアルキル部分が非置換のもの;等が挙げられる。
モノアルキルアミノアルキルアミノ基としてはアルキル部分が非置換のものが好ましく、ジアルキルアミノアルキルアミノ基としては非置換又はヒドロキシ置換のものが好ましい。
上記Xa乃至Xcとしては、スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミノ基;及びヒドロキシよりなる群から選択される基が好ましく、且つXa乃至Xcの少なくとも1つはヒドロキシ以外の基である。
上記式(1)において、Yはスルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルコキシ基、又は非置換アルコキシ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表す。
上記Yにおける、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基としては、3−スルホフェニル等のスルホ置換のもの;3−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル等のカルボキシ置換のもの;3−メトキシフェニル、3−エトキシフェニル等のアルコキシ置換のもの;2−エチルチオフェニル等のアルキルチオ置換のもの;2−カルバモイルフェニル等のカルバモイル置換のもの;3−シアノフェニル等のシアノ置換のもの;4−ブチルフェニル、3,5−ジイソプロピルフェニル等のアルキル置換のもの;4−アニリノフェニル等のアニリノ置換のもの;4−フェノキシフェニル等のフェノキシ置換のもの;4−アミノフェニル、3,5−ジアミノフェニル等のアミノ置換のもの;3−ヒドロキシフェニル等のヒドロキシ基置換のもの;4−メルカプトフェニル等のメルカプト置換のもの;4−クロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、4−フルオロフェニル等のハロゲン原子、好ましくは塩素原子又はフッ素原子置換のもの;3−(N,N―ジメチルアミノスルホニル)フェニル等のスルファモイル置換のもの;又は非置換フェニル;等が挙げられる。
上記のうち、スルホ置換、アルコキシ置換、又は非置換が好ましく、アルコキシ置換又は非置換がより好ましく、非置換がさらに好ましい。
置換フェニル基の場合、置換基の数は通常1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
上記のうち、スルホ置換、アルコキシ置換、又は非置換が好ましく、アルコキシ置換又は非置換がより好ましく、非置換がさらに好ましい。
置換フェニル基の場合、置換基の数は通常1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
上記Yにおける、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルコキシ基、又は非置換アルコキシ基としては、置換基の数は通常1〜3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。その具体例としては、スルホメトキシ、スルホプロポキシ等のスルホ置換のもの;2−カルボキシエトキシ等のカルボキシ置換のもの;メトキシメトキシ、エトキシメトキシ等のアルコキシ置換のもの;2−エチルチオエトキシ等のアルキルチオ基置換のもの;2−カルバモイルエトキシ等のカルバモイル置換のもの;シアノメトキシ、シアノエトキシ等のシアノ置換のもの;3−アニリノブトキシ等アニリノ置換のもの;3−フェノキシブトキシ等のフェノキシ置換のもの;2−アミノエトキシ等のアミノ置換のもの;3−ヒドロキシブトキシ等のヒドロキシ置換のもの;3−メルカプトブトキシ等のメルカプト置換のもの;クロロメトキシ等のハロゲン原子、好ましくは塩素原子置換のもの;2−(N,N−ジメチルスルホニル)エトキシ等のスルファモイル置換のもの;メトキシ、エトキシ等の非置換アルコキシ基;等が挙げられる。
上記Yにおける、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基としては、2−スルホエチル、3−スルホプロピル等のスルホ置換のもの;4−カルボキシブチル、6−カルボキシヘキシル等のカルボキシ置換のもの;2−メトキシエチル、2−エトキシエチル等のアルコキシ置換のもの;2−ブチルチオエチル等のアルキルチオ置換のもの;2−カルバモイルエチル等のカルバモイル置換のもの;シアノエチル、シアノブチル等のシアノ置換のもの;2−アニリノエチル、3−アニリノプロピル等のアニリノ置換のもの;2−フェノキシエチル、3−フェノキシプロピル等のフェノキシ置換のもの;2−アミノエチル、4−アミノブチル等のアミノ置換のもの;2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ置換のもの;2−メルカプトエチル、4−メルカプトブチル等のメルカプト置換のもの;2−クロロエチル、トリフルオロメチル等のハロゲン原子、好ましくは塩素原子又はフッ素原子置換のもの;2−(N,N−ジメチルスルホニル)エチル等のスルファモイル置換のもの;メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等の非置換直鎖C1−C4アルキル基;2−エチルヘキシル、イソプロピル等の非置換分岐鎖C3−C8アルキル基;等が挙げられる。
上記アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は通常1〜3、好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
上記のうちでは非置換のものが好ましい。
上記アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は通常1〜3、好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
上記のうちでは非置換のものが好ましい。
上記Yにおける、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基としては、3−スルホピリジル等のスルホ置換のもの;2−カルボキシピリジル等のカルボキシ置換のもの;3−メトキシピリジル等のアルコキシ置換のもの;2−エチルチオピリジル等のアルキルチオ置換のもの;2−カルバモイルピリジル等のカルバモイル置換のもの;2−シアノピリジル等のシアノ置換のもの;3−ブチルピリジル等のアルキル置換のもの;2−アニリノピリジル等のアニリノ置換のもの;2−フェノキシピリジル等のフェノキシ置換のもの;2−アミノピリジル等のアミノ置換のもの;2−ヒドロキシピリジル等のヒドロキシ置換のもの;3−メルカプトピリジル等のメルカプト置換のもの;2−クロロピリジル等のハロゲン原子、好ましくは塩素原子置換のもの;2−(N,N−ジメチルスルホニル)ピリジル等のスルファモイル置換のもの;等が挙げられる。置換基の数は通常1〜3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。上記のうちでは非置換のものが好ましい。
上記Yにおける含窒素複素環基とは、環の構成原子として窒素原子を1又は2、好ましくは1含有する、5又は6員複素芳香環基を意味する。6員環のものが好ましく、ピリジル基がより好ましい。
上記Yにおける含窒素複素環基とは、環の構成原子として窒素原子を1又は2、好ましくは1含有する、5又は6員複素芳香環基を意味する。6員環のものが好ましく、ピリジル基がより好ましい。
上記Yとしてはカルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;が好ましい。より好ましくは、アルコキシ置換フェニル基;非置換フェニル基;ハロゲン原子置換アルキル基;非置換アルキル基である。さらに好ましくは非置換フェニル基である。
上記式(1)において、R1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル基、又はシアノ低級アルキル基を表す。
R1におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1におけるヒドロキシ低級アルキル基としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1におけるモノ又はジアルキルアミノアルキル基としては、ジメチルアミノメチル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジエチルアミノエチル等のモノ又はジC1−C4アルキルアミノC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1におけるシアノ低級アルキル基としては、シアノメチル、2−シアノエチル、3−シアノプロピル、4−シアノブチル等のシアノC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1としては水素原子又はアルキル基が好ましく、C1−C4アルキル基がより好ましく、非置換直鎖C1−C3アルキル基がさらに好ましく、メチルが特に好ましい。
R1におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1におけるヒドロキシ低級アルキル基としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1におけるモノ又はジアルキルアミノアルキル基としては、ジメチルアミノメチル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジエチルアミノエチル等のモノ又はジC1−C4アルキルアミノC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1におけるシアノ低級アルキル基としては、シアノメチル、2−シアノエチル、3−シアノプロピル、4−シアノブチル等のシアノC1−C4アルキル基が挙げられる。
R1としては水素原子又はアルキル基が好ましく、C1−C4アルキル基がより好ましく、非置換直鎖C1−C3アルキル基がさらに好ましく、メチルが特に好ましい。
上記式(1)におけるR2は、水素原子、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、又はハロゲン原子を表す。中でも水素原子が好ましい。
R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。
R3及びR4におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル等の直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。炭素数の範囲としては、通常C1−C8、好ましくはC1−C6、より好ましくはC1−C4のものが挙げられる。
R3及びR4としては、いずれも水素原子が好ましい。
R3及びR4におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル等の直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。炭素数の範囲としては、通常C1−C8、好ましくはC1−C6、より好ましくはC1−C4のものが挙げられる。
R3及びR4としては、いずれも水素原子が好ましい。
上記R1乃至R4、Xa乃至Xc、及びYで表される上記全ての基及び置換基は、水素原子以外の基でさらに置換されてもよい。該置換基としては上記R1乃至R4、Xa乃至Xc、及びYにおける基及びその置換基として記載したもののいずれでもよく、置換基の数は通常1乃至4、好ましくは1乃至3、より好ましくは1乃至2、さらに好ましくは1である。
しかし、上記R1乃至R4、Xa乃至Xc、及びYで表される上記全ての基及び置換基は、水素原子以外の基でさらに置換されないのが特に好ましい。
しかし、上記R1乃至R4、Xa乃至Xc、及びYで表される上記全ての基及び置換基は、水素原子以外の基でさらに置換されないのが特に好ましい。
上記式(1)で表される色素の好ましいものが、上記式(2)で表される色素である。
式(2)中、Xa乃至Xcは式(1)におけるのと同じ意味を表し、Yはカルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、R11は水素原子又はメチル基、好ましくはメチルを表す。
なお、式(2)におけるYは、上記式(1)におけるYの中から相当するものと同じ意味を表し、好ましいもの、より好ましいもの等についても同様である。
式(2)中、Xa乃至Xcは式(1)におけるのと同じ意味を表し、Yはカルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、R11は水素原子又はメチル基、好ましくはメチルを表す。
なお、式(2)におけるYは、上記式(1)におけるYの中から相当するものと同じ意味を表し、好ましいもの、より好ましいもの等についても同様である。
上記式(2)で表される色素の好ましいものが、上記式(3)で表される色素である。
式(3)中、Rは、水素原子、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基、好ましくは水素原子又はアルコキシ基、より好ましくは水素原子を表し、Xa乃至Xcは、上記式(2)におけるのと同じ意味を表す。
式(3)中、Rは、水素原子、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基、好ましくは水素原子又はアルコキシ基、より好ましくは水素原子を表し、Xa乃至Xcは、上記式(2)におけるのと同じ意味を表す。
上記式(3)で表される色素の好ましいものが、上記式(4)で表される色素である。
式(4)中、Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミノ基;又はヒドロキシ基;を表し、Xa乃至Xcの少なくとも1つはヒドロキシ基以外の基である。
式(4)中、Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミノ基;又はヒドロキシ基;を表し、Xa乃至Xcの少なくとも1つはヒドロキシ基以外の基である。
上記式(4)で表される色素の好ましいものが、上記式(7)で表される色素である。
式(7)中、Xdはスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;又はスルホ基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基;を表し、h及びjはいずれも平均値で、hが1.6以上2.5以下、jが0.5以上1.4以下であり、hとjとの和は3.0である。
式(7)中、Xdはスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;又はスルホ基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基;を表し、h及びjはいずれも平均値で、hが1.6以上2.5以下、jが0.5以上1.4以下であり、hとjとの和は3.0である。
上記Xdにおけるスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリノ基;スルホ基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基;としては、上記Xa乃至Xcにおける相当するものと同じ意味を表す。
式(7)におけるh及びjは、それぞれXdを有する置換スルファモイル基と、スルホ基との置換数を表す平均値であり、hとjとの和は3.0である。
hは通常1.6以上2.5以下、好ましくは1.7以上2.5以下、より好ましくは1.8以上2.4以下である。
jは通常0.5以上1.4以下、好ましくは0.5以上1.3以下、より好ましくは0.6以上1.2以下である。
本発明の式(7)で表される色素は、実質的に「−SO2Xd」で表される基と、「−SO3H」で表されるスルホ基とが、アントラピリドン構造に合計で3つ置換した色素の混合物である。したがって、該色素混合物のHPLC分析を行い、該色素混合物を構成する、それぞれ単一の色素のHPLCにおける面積比を測定することにより、式(7)におけるh及びjの値を算出することができる。一例として、以下の構成である色素混合物(A)におけるhの計算方法を下記する。
色素混合物(A)のHPLC分析結果:
「−SO2Xd」の置換数 HPLC面積比(%)
0 A1
1 A2
2 A3
3 A4
色素混合物(A)における平均値hの計算方法
h=[(0×A1)+(1×A2)+(2×A3)+(3×A4)]/(A1+A2+A3+A4)
本明細書においては、HPLCの面積比は実測値の小数点以下1桁までを計算に使用し、算出されたhについては小数点以下2桁目を四捨五入して小数点以下1桁とした値を記載する。なお、平均値jは、上記hの計算方法と同様にして算出することもできるが、簡便には、「j=3.0−h」として算出してもよい。
hは通常1.6以上2.5以下、好ましくは1.7以上2.5以下、より好ましくは1.8以上2.4以下である。
jは通常0.5以上1.4以下、好ましくは0.5以上1.3以下、より好ましくは0.6以上1.2以下である。
本発明の式(7)で表される色素は、実質的に「−SO2Xd」で表される基と、「−SO3H」で表されるスルホ基とが、アントラピリドン構造に合計で3つ置換した色素の混合物である。したがって、該色素混合物のHPLC分析を行い、該色素混合物を構成する、それぞれ単一の色素のHPLCにおける面積比を測定することにより、式(7)におけるh及びjの値を算出することができる。一例として、以下の構成である色素混合物(A)におけるhの計算方法を下記する。
色素混合物(A)のHPLC分析結果:
「−SO2Xd」の置換数 HPLC面積比(%)
0 A1
1 A2
2 A3
3 A4
色素混合物(A)における平均値hの計算方法
h=[(0×A1)+(1×A2)+(2×A3)+(3×A4)]/(A1+A2+A3+A4)
本明細書においては、HPLCの面積比は実測値の小数点以下1桁までを計算に使用し、算出されたhについては小数点以下2桁目を四捨五入して小数点以下1桁とした値を記載する。なお、平均値jは、上記hの計算方法と同様にして算出することもできるが、簡便には、「j=3.0−h」として算出してもよい。
上記HPLC分析における「−SO2Xd」の置換数は、例えばHPLCで検出された各単一色素のピークを分取して質量分析等の機器分析をすれば、その質量から容易に決定できる。簡便にはLC/MSのように、LCの測定と同時に質量分析を行い、その質量から求めることもできる。
本発明のインク組成物に含有する色素の総質量における、上記式(1)で表される色素の含有量は、いずれも質量基準で通常75%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは85%〜100%である。
上記式(1)乃至(4)、及び(7)で表される色素及び該色素における全ての基及び置換基について、好ましいもの同士を組み合わせた色素はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせた色素はさらに好ましい。さらに好ましいもの同士、特に好ましいもの同士等についても同様である。
上記式(1)で表される色素の塩は、無機又は有機の陽イオンとの塩である。無機塩の具体例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられ、好ましい無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩、及びアンモニウム塩である。また、有機の陽イオンの塩としては、例えば下記式(6)で表される4級アンモニウムとの塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、遊離酸、及びそれらの各種の塩が混合物であってもよい。例えば、ナトリウム塩とアンモニウム塩との混合物、遊離酸とナトリウム塩との混合物、リチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩の混合物など、いずれの組み合わせを用いてもよい。塩の種類によって溶解性等の物性値が異なる場合もあり、必要に応じて適宜塩の種類を選択すること;複数の塩等を含む場合にはその比率を変化させること;等により目的に適う物性を有する混合物を得ることもできる。
式(6)中、Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はヒドロキシアルコキシアルキル基を表し、少なくとも1つは水素原子以外の基である。
式(6)で表される4級アンモニウム中、Z1〜Z4におけるアルキル基の例としては、メチル、エチル等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等が挙げられ、さらにヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等が挙げられる。
式(6)で表される4級アンモニウム中、Z1〜Z4におけるアルキル基の例としては、メチル、エチル等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等が挙げられ、さらにヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等が挙げられる。
上記式(1)で表される色素の好ましい塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンの各塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。より好ましいものは、リチウム、アンモニウム、及びナトリウム塩である。
上記式(1)で表される色素の塩を得るには、例えば、上記式(1)で表される色素を含有する反応液、あるいは該色素のウェットケーキ又は乾燥品を水に溶解したものに塩化ナトリウムを加えて塩析、濾過すればよい。これにより、該色素のナトリウム塩をウェットケーキとして得ることができる。また、そのウェットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えてpHを1〜2に調整して得られる固体を濾過すれば、遊離酸又は遊離酸とナトリウム塩との混合物を得ることができる。さらに、式(1)で表される色素の遊離酸又はそのウェットケーキを水と共に撹拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、式(6)で表される4級アンモニウム(通常は、カウンターアニオンとしてハロゲンイオン等を有する4級アンモニウム塩)を添加してアルカリ性にすれば、各々相当するカリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、上記式(6)で表される4級アンモニウム塩が得られる。
本発明のインク組成物に含有する上記式(1)で表されるアントラピリドン色素の具体例を下記表1に示すが、特にこれらに限定されるものではない。なお、表1に示した化合物No.1乃至71の具体例は、いずれも式(1)におけるR2乃至R4が水素原子で表される色素である。
本発明のアントラピリドン色素は、例えば次の方法により製造される。なお、下記式(9)〜(11)において適宜使用される、Xa乃至Xc、R1乃至R4、及びYは、いずれも上記したものと同じ意味を有する。
具体的には、特公平7−45629号公報等に記載の公知の方法に準じて得られる下記式(9)で表されるアントラキノン化合物1モルに、Y(CO)CH2COOR’(R’はメチル、エチル等のアルキル基、好ましくはエチル)で表されるアシル酢酸エステル、触媒として炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムのような塩基の存在下、オルソジクロロベンゼン、モノクロロベンゼン、ニトロベンゼン、キシレン等の溶媒中、100〜200℃、3〜30時間反応を行う。反応終了後冷却し、メタノール、エタノール、プロパノール等の溶剤で希釈して得られる析出固体を濾過分離した後、必要により、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類で洗浄し、さらに水又は温水で洗浄し、乾燥することにより、下記式(10)で表される化合物を得る。
具体的には、特公平7−45629号公報等に記載の公知の方法に準じて得られる下記式(9)で表されるアントラキノン化合物1モルに、Y(CO)CH2COOR’(R’はメチル、エチル等のアルキル基、好ましくはエチル)で表されるアシル酢酸エステル、触媒として炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムのような塩基の存在下、オルソジクロロベンゼン、モノクロロベンゼン、ニトロベンゼン、キシレン等の溶媒中、100〜200℃、3〜30時間反応を行う。反応終了後冷却し、メタノール、エタノール、プロパノール等の溶剤で希釈して得られる析出固体を濾過分離した後、必要により、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類で洗浄し、さらに水又は温水で洗浄し、乾燥することにより、下記式(10)で表される化合物を得る。
得られた上記式(10)で表される化合物をクロロスルホン酸中40〜120℃、次いで塩化チオニルを加え70〜80℃でクロロスルホニル化することにより、下記式(11)で表される化合物を得る。
式(11)中、Qa乃至Qcは、塩素原子又はヒドロキシ基を表し、少なくとも1つは塩素原子である。
得られた式(11)で表される化合物と、置換又は非置換アニリン、置換又は非置換モノ若しくはジアルキルアミン、非置換ナフチルアミン、ヒドロキシ基を有してもよいモノ又はジアルキルアミノアルキルアミン、及びアンモニアよりなる群から選択される少なくとも1種のアミンとを、塩基を用いてpHを調整し、室温又は必要に応じて冷却等しながら攪拌を行い反応することにより、本発明の上記式(1)で表される色素が得られる。
式(11)で表される化合物と反応させる、上記の置換又は非置換アニリン、置換又は非置換モノ若しくはジアルキルアミン、非置換ナフチルアミン、ヒドロキシ基を有してもよいモノ又はジアルキルアミノアルキルアミン、及びアンモニアよりなる群から選択される少なくとも1種のアミンとしては、スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリン;スルホ基又はヒドロキシ基で置換されたモノ又はジアルキルアミン;が好ましい。より好ましくは、スルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリン、スルホ基で置換されたモノ又はジアルキルアミンである。さらに好ましくはスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリン、並びにスルホ置換直鎖C1−C4アルキルアミンよりなる群から選択される1種のアミンである。
具体例としては、2−カルボキシ−5−スルホアニリン等のスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリン;2−スルホエチルアミン等のスルホ基が1つ置換した直鎖C1−C4アルキルアミン;;等が挙げられる。
なお、上記式(11)で表される化合物は、熱等により分解を生じ、上記の群から選択されるアミンとの反応時に、Qa乃至Qcの全てがヒドロキシである副生成物を生じる。この副生成物の含有量が多いと本発明の効果を阻害する要因となるため、該副生成物の含有量は、HPLC分析における該副生成物及び本発明の色素の面積比の総和に対して、HPLCの面積比で通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下とするのがよい。下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。
具体例としては、2−カルボキシ−5−スルホアニリン等のスルホ基及びカルボキシ基で置換されたアニリン;2−スルホエチルアミン等のスルホ基が1つ置換した直鎖C1−C4アルキルアミン;;等が挙げられる。
なお、上記式(11)で表される化合物は、熱等により分解を生じ、上記の群から選択されるアミンとの反応時に、Qa乃至Qcの全てがヒドロキシである副生成物を生じる。この副生成物の含有量が多いと本発明の効果を阻害する要因となるため、該副生成物の含有量は、HPLC分析における該副生成物及び本発明の色素の面積比の総和に対して、HPLCの面積比で通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下とするのがよい。下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。
上記式(11)で表される化合物の好ましいものが、上記式(5)で表される化合物である。式(5)中、Qはハロゲン原子;好ましくは臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子;より好ましくは塩素原子;を表す。
本発明のインク組成物に含有する上記式(1)で表される色素中、Xa乃至Xcにおいて、ハロゲン原子及びヒドロキシ基以外の基の比率が高くなると、該インク組成物を用いた記録画像の堅牢性は向上するが、水に対する色素の溶解性は低下する。本発明のインク組成物は、実質的に水を含有しなくてもよいが、水を含有するもの、すなわち水系インク組成物であるのが好ましい。
したがって、水系インク組成物としての保存安定性及び記録画像の堅牢性とを考慮して、Xa乃至Xcにおけるハロゲン原子及びヒドロキシ基以外の基の比率を設定するのと共に、水に対する溶解性を向上させる目的で、上記式(1)で表される本発明の色素を1種以上、好ましくは1種以上4種以下、より好ましくは1種以上3種以下の色素混合物を含有するインク組成物とするのが好ましい。
したがって、水系インク組成物としての保存安定性及び記録画像の堅牢性とを考慮して、Xa乃至Xcにおけるハロゲン原子及びヒドロキシ基以外の基の比率を設定するのと共に、水に対する溶解性を向上させる目的で、上記式(1)で表される本発明の色素を1種以上、好ましくは1種以上4種以下、より好ましくは1種以上3種以下の色素混合物を含有するインク組成物とするのが好ましい。
本発明の色素はマゼンタ色素として、天然及び合成繊維材料又は混紡品の染色に適しており、さらにこれらの色素は、筆記用インク及びインクジェット記録用インク組成物の製造に適している。
上記式(1)で表される色素は、インク組成物に含有させる色素として使用する場合、色素の総量中に含有される金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム);硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム);等の無機物、すなわち「無機不純物」の含有量の少ないものを用いるのが好ましい。その含有量の目安は例えば1質量%以下程度である。無機不純物の少ない色素を製造するには、例えば逆浸透膜による方法等、通常の方法で脱塩処理すればよい。
本発明のインク組成物は、式(1)で表される色素を水又は水性溶媒(後記する水溶性有機溶剤を含有する水)に溶解したものであるが、例えば、本発明の色素の合成における最終工程終了後の反応液等は、インク組成物の製造に直接使用することができる。また、反応液から目的物を単離し、乾燥、例えばスプレー乾燥させ、次にインク組成物に加工することもできる。本発明のインク組成物は、本発明の色素を通常0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%含有する。本発明のインク組成物には、水溶性有機溶剤0〜30質量%、インク調製剤0〜5質量%をそれぞれ含有してもよい。
上記式(1)で表される色素は、インク組成物に含有させる色素として使用する場合、色素の総量中に含有される金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム);硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム);等の無機物、すなわち「無機不純物」の含有量の少ないものを用いるのが好ましい。その含有量の目安は例えば1質量%以下程度である。無機不純物の少ない色素を製造するには、例えば逆浸透膜による方法等、通常の方法で脱塩処理すればよい。
本発明のインク組成物は、式(1)で表される色素を水又は水性溶媒(後記する水溶性有機溶剤を含有する水)に溶解したものであるが、例えば、本発明の色素の合成における最終工程終了後の反応液等は、インク組成物の製造に直接使用することができる。また、反応液から目的物を単離し、乾燥、例えばスプレー乾燥させ、次にインク組成物に加工することもできる。本発明のインク組成物は、本発明の色素を通常0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%含有する。本発明のインク組成物には、水溶性有機溶剤0〜30質量%、インク調製剤0〜5質量%をそれぞれ含有してもよい。
本発明で使用できる水溶性有機溶剤の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のトリオール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルカルビトール等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は、単独又は混合して用いられる。
これらのうち好ましいものは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、モノ、ジ、又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコールであり、より好ましくは2−ピロリドン、N−メチル2−ピロリドン、ジエチレングリコール、ブチルカルビトールである。
これらのうち好ましいものは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、モノ、ジ、又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコールであり、より好ましくは2−ピロリドン、N−メチル2−ピロリドン、ジエチレングリコール、ブチルカルビトールである。
本発明のインク組成物の調製に使用できるインク調製剤について説明する。インク調製剤の具体例としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、界面活性剤等が挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤として、無水酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム、等が挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤として、無水酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム、等が挙げられる。
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを8.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、スルホン化されたベンゾフェノン、スルホン化されたベンゾトリアゾール等が挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば、尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤の具体例としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤の具体例としては、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル挙のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系(例えば、日信化学社製、商品名サーフィノール104、105、82、465、オルフィンSTG等);ポリグリコールエーテル系(例えばSIGMA−ALDRICH社製のTergitol 15−S−7等)等が挙げられる。これらのインク調製剤は、単独又は混合して用いられる。
本発明のインク組成物の製造法において、各成分を溶解させる順序には特に制限はない。あらかじめ水又は上記水性溶媒(水溶性有機溶剤含有水)に色素を溶解させ、これにインク調製剤を加えて溶解させてもよいし、色素を水に溶解させたのち、水溶性有機溶剤、インク調製剤を加えて溶解させてもよい。また、色素の反応液に直接;又は色素を含有する水溶液を逆浸透膜を用いて脱塩処理することにより得られる水溶液に、水溶性有機溶剤、インク調製剤を加えてインク組成物を製造してもよい。インク組成物の調製に用いる水は挙イオン交換水、蒸留水等の不純物の少ないものが好ましい。さらに、必要に応じメンブランフィルタ等を用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよい。特に、インクジェット記録インクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルタの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは0.8μm〜0.1μmである。
本発明の色素を含有するマゼンタインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録方法、特にインクジェット記録における使用に適する。本発明のインク組成物を記録、特にインクジェット記録に用いた場合、水、日光、オゾン、及び摩擦に対する良好な耐性を有する高品質のマゼンタ記録物が得られる。また、必要に応じ、本発明のインク組成物等により得られる効果を阻害しない範囲で、本発明の色素に、さらに公知のイエロー、マゼンタ等の色素を配合することによって、マゼンタの色調をオレンジ、赤味等の、好みの色調に調色することもできる。また、本発明の色素を他色、特に配合ブラックインクに含有する調色色素として用いることもできる。
本発明の着色体は、本発明のインク組成物又は色素で着色された物質である。着色される物質に特に制限はなく、例えば紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。着色法としては、例えば浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェットプリンタによる記録方法等が挙げられるが、インクジェットプリンタによる記録方法が好ましい。
本発明のインクジェット記録方法を適用し得る被記録材(メディア)としては、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維、皮革等が挙げられ、情報伝達用シートが好ましい。情報伝達用シートについては、表面処理されたもの、具体的には紙、フィルム等を基材とし、これらにインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工すること;多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る多孔性白色無機物をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工すること;等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙(フィルム)あるいは光沢紙(フィルム)と呼ばれ、例えば旭硝子(株)製、商品名ピクトリコ;キャノン(株)製、商品名プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、マットフォトペーパー、写真用紙・光沢;エプソン(株)製、商品名写真用紙<光沢>、フォトマット紙、スーパーファイン専用光沢フィルム;日本ヒューレットパッカード(株)製、商品名アドバンスフォト用紙、プレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム、フォト用紙;コニカ(株)製、商品名フォトライクQP;等がある。なお、普通紙も当然使用できる。
これらのうち、多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録した画像は、オゾンガスによる変退色が特に大きくなることが知られているが、本発明の水性マゼンタインク組成物はガス耐性が優れているため、このような被記録材への記録の際に特に効果を発揮する。
上記多孔性白色無機物としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録方法で、被記録材に記録するには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法で、被記録材に記録すればよい。本発明のインクジェット記録方法では、公知のイエローインク組成物、シアンインク組成物に加えて、グリーンインク組成物、オレンジインク組成物、ブルー(又はバイオレット)インク組成物、本発明のマゼンタインク組成物、必要に応じてブラックインク組成物等と併用し得る。各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、これらの容器を、本発明の水性マゼンタインク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタの所定位置にセット(装填)して使用すればよい。インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタ;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式のプリンタ;等が挙げられる。
本発明のインク組成物は、鮮明なマゼンタ色の記録画像を与える水性インク組成物であり、特にインクジェット光沢紙において高鮮明な色相を有し、記録画像の堅牢性も高い。また、人に対する安全性も高い。
本発明のインク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、本発明のインクをインクジェット記録に使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインク組成物は連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間一定の再循環下での使用;又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用;等においても、物理的性質の変化を起こさない。
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。本文中「部」及び「%」とあるのは、特別に記載のない限りそれぞれ質量基準である。また、合成反応、晶析等の各操作は、特に断りのない限りいずれも撹拌下に行い、反応温度は反応系内温度の実測値を記載した。なお、実施例で合成した本発明の各色素については、水中でのλmax(最大吸収波長)を測定し、得られた測定値を記載した。
[実施例1]
(工程1)
オルソジクロロベンゼン75.0部中に、撹拌しながら、公知の方法で得られる下記式(101)で表される化合物23.6部、炭酸ナトリウム0.75部、ベンゾイル酢酸エチルエステル36.0部を順次加えて昇温し、170〜175℃の温度で3時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、30℃にてメタノール150部を添加して30分撹拌後、析出固体を濾過分離した。得られた固体をメタノール200部で洗浄し、次いで水洗した後、乾燥して、下記式(102)で表される化合物28.8部を赤色固体として得た。
(工程1)
オルソジクロロベンゼン75.0部中に、撹拌しながら、公知の方法で得られる下記式(101)で表される化合物23.6部、炭酸ナトリウム0.75部、ベンゾイル酢酸エチルエステル36.0部を順次加えて昇温し、170〜175℃の温度で3時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、30℃にてメタノール150部を添加して30分撹拌後、析出固体を濾過分離した。得られた固体をメタノール200部で洗浄し、次いで水洗した後、乾燥して、下記式(102)で表される化合物28.8部を赤色固体として得た。
(工程2)
室温下、クロロスルホン酸75.7部に上記式(102)で表される化合物9.1部を、60℃を超えないように加えた後、80℃に昇温して4時間撹拌した。反応液を70℃へ冷却し、60〜70℃を保持したまま塩化チオニル35.7部を30分間かけて滴下し、その後60℃で3時間反応させた。室温まで放冷した反応液を氷水400部中に加え、次いで30%過酸化水素水13.9部をさらに加えた。その間適宜氷を加え、液温を10℃以下に保持した。赤橙色の析出固体を濾過分離することにより、下記式(103)で表される化合物のウェットケーキ64.0部を得た。なお、下記式(103)で表される化合物は、上記式(5)におけるQが塩素原子で表される化合物である。
室温下、クロロスルホン酸75.7部に上記式(102)で表される化合物9.1部を、60℃を超えないように加えた後、80℃に昇温して4時間撹拌した。反応液を70℃へ冷却し、60〜70℃を保持したまま塩化チオニル35.7部を30分間かけて滴下し、その後60℃で3時間反応させた。室温まで放冷した反応液を氷水400部中に加え、次いで30%過酸化水素水13.9部をさらに加えた。その間適宜氷を加え、液温を10℃以下に保持した。赤橙色の析出固体を濾過分離することにより、下記式(103)で表される化合物のウェットケーキ64.0部を得た。なお、下記式(103)で表される化合物は、上記式(5)におけるQが塩素原子で表される化合物である。
(工程3)
氷水80部中に上記式(103)で表される化合物32.0部を加えて10分間撹拌した後、タウリン7.5部を加え、8%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0に調整し、液温を20〜25℃に保持して17時間反応させた。この反応液にイソプロピルアルコール300部を加えて生成したタール状固体を取り出した。この固体を水20部とメタノール20部との混合溶媒に溶解させた後、300部のイソプロピルアルコールを加え、析出した固体を濾過分離した。この操作を計3回繰り返した。この固体を乾燥し、上記式(7)におけるhが2.6、jが0.4、Xdが2−スルホエチルアミノである、下記式(104)で表される色素のナトリウム塩8.3部を赤色固体として得た。λmax:519.5nm。
HPLC分析結果:
−SO2Xdの置換数 HPLC面積比(%)
1 5.2
2 30.0
3 64.8
氷水80部中に上記式(103)で表される化合物32.0部を加えて10分間撹拌した後、タウリン7.5部を加え、8%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0に調整し、液温を20〜25℃に保持して17時間反応させた。この反応液にイソプロピルアルコール300部を加えて生成したタール状固体を取り出した。この固体を水20部とメタノール20部との混合溶媒に溶解させた後、300部のイソプロピルアルコールを加え、析出した固体を濾過分離した。この操作を計3回繰り返した。この固体を乾燥し、上記式(7)におけるhが2.6、jが0.4、Xdが2−スルホエチルアミノである、下記式(104)で表される色素のナトリウム塩8.3部を赤色固体として得た。λmax:519.5nm。
HPLC分析結果:
−SO2Xdの置換数 HPLC面積比(%)
1 5.2
2 30.0
3 64.8
[実施例2]
氷水80部中に上記式(103)で表される化合物32.0部を加えて10分間撹拌した後、4−スルホアンスラニル酸16.8部を加え、8%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0に調整し、20〜25℃を保持して15時間反応させた。反応液の温度を20〜25℃に保持して讃岐塩40部を加えた後、35%塩酸を用いてpH1.8に調整し撹拌した。析出した固体を濾過分離し、24%讃岐塩水50部で洗浄した。この固体を水60部に溶解させ、35%塩酸を用いてpH3.0に調整した後、讃岐塩12部を加え撹拌した。析出した固体を濾過分離し、24%讃岐塩水50部で洗浄した。この固体を水20部とメタノール20部との混合溶液に溶解した後、イソプロピルアルコール400部を加え、析出した固体を濾過分離した。この操作を計2回繰り返した。得られた固体を乾燥し、上記式(7)におけるhが1.8、jが1.2、Xdが2−カルボキシ−5−スルホアニリノである、下記式(105)で表される色素のナトリウム塩4.5部を赤色固体として得た。λmax:521.0nm。
HPLC分析結果:
−SO2Xdの置換数 HPLC面積比(%)
1 33.6
2 53.8
3 12.6
氷水80部中に上記式(103)で表される化合物32.0部を加えて10分間撹拌した後、4−スルホアンスラニル酸16.8部を加え、8%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0に調整し、20〜25℃を保持して15時間反応させた。反応液の温度を20〜25℃に保持して讃岐塩40部を加えた後、35%塩酸を用いてpH1.8に調整し撹拌した。析出した固体を濾過分離し、24%讃岐塩水50部で洗浄した。この固体を水60部に溶解させ、35%塩酸を用いてpH3.0に調整した後、讃岐塩12部を加え撹拌した。析出した固体を濾過分離し、24%讃岐塩水50部で洗浄した。この固体を水20部とメタノール20部との混合溶液に溶解した後、イソプロピルアルコール400部を加え、析出した固体を濾過分離した。この操作を計2回繰り返した。得られた固体を乾燥し、上記式(7)におけるhが1.8、jが1.2、Xdが2−カルボキシ−5−スルホアニリノである、下記式(105)で表される色素のナトリウム塩4.5部を赤色固体として得た。λmax:521.0nm。
HPLC分析結果:
−SO2Xdの置換数 HPLC面積比(%)
1 33.6
2 53.8
3 12.6
[実施例3乃至4]
[(A)インクの調製]
上記実施例1で得られた式(104)の化合物を用い、下記表2に示した組成を混合して本発明のインク組成物を調製し、0.45μmのメンブランフィルタで濾過することにより評価用のインクを得た。表2中の「水」は、アンモニア水の希釈用途のものを含めてイオン交換水を使用した。インク組成物のpHが8〜10、総量100部になるように水、12.5%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。このインクの調製を実施例3とする。また、実施例1で得た化合物の代わりに、実施例2で得た化合物(105)をそれぞれ使用する以外は実施例3と同様にして試験用のインクを調製した。この試験用インクの調製を、実施例4とする。なお、各実施例で得た化合物とは、各実施例における最終工程で得た本発明の化合物を意味する。例えば、実施例1で得た化合物とは、実施例1の(工程3)で得た本発明の化合物である。
[(A)インクの調製]
上記実施例1で得られた式(104)の化合物を用い、下記表2に示した組成を混合して本発明のインク組成物を調製し、0.45μmのメンブランフィルタで濾過することにより評価用のインクを得た。表2中の「水」は、アンモニア水の希釈用途のものを含めてイオン交換水を使用した。インク組成物のpHが8〜10、総量100部になるように水、12.5%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。このインクの調製を実施例3とする。また、実施例1で得た化合物の代わりに、実施例2で得た化合物(105)をそれぞれ使用する以外は実施例3と同様にして試験用のインクを調製した。この試験用インクの調製を、実施例4とする。なお、各実施例で得た化合物とは、各実施例における最終工程で得た本発明の化合物を意味する。例えば、実施例1で得た化合物とは、実施例1の(工程3)で得た本発明の化合物である。
[比較例1]
国際公開第2008/018495号パンフレットの実施例1の(1)乃至(3)に準じて合成したウェットケーキを、80℃で一晩乾燥することにより得た下記式(106)で表される色素を、上記実施例1の色素の代わりに用いる以外は実施例3と同様にして比較用のインクを調製した。この比較用インクの調製を比較例1とする。
国際公開第2008/018495号パンフレットの実施例1の(1)乃至(3)に準じて合成したウェットケーキを、80℃で一晩乾燥することにより得た下記式(106)で表される色素を、上記実施例1の色素の代わりに用いる以外は実施例3と同様にして比較用のインクを調製した。この比較用インクの調製を比較例1とする。
[(B)インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン社製 Pixus iP4100)を用いて、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有する光沢紙にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際、印刷濃度が数段階の諧調が得られるように画像パターンを作り記録物を作成し、これを試験片として評価試験を実施した。なお、使用した光沢紙は以下のとおりである。
光沢紙1:キヤノン社製 商品名写真用紙光沢プロ〔プラチナグレード〕
光沢紙2:キヤノン社製 商品名写真用紙光沢ゴールド
光沢紙3:エプソン社製 商品名写真用紙クリスピア<高光沢>
光沢紙4:HP社製 商品名アドバンスフォトペーパー
インクジェットプリンタ(キヤノン社製 Pixus iP4100)を用いて、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有する光沢紙にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際、印刷濃度が数段階の諧調が得られるように画像パターンを作り記録物を作成し、これを試験片として評価試験を実施した。なお、使用した光沢紙は以下のとおりである。
光沢紙1:キヤノン社製 商品名写真用紙光沢プロ〔プラチナグレード〕
光沢紙2:キヤノン社製 商品名写真用紙光沢ゴールド
光沢紙3:エプソン社製 商品名写真用紙クリスピア<高光沢>
光沢紙4:HP社製 商品名アドバンスフォトペーパー
[(C)記録画像の耐オゾンガス性試験]
上記[(B)インクジェット記録]にて得た各試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製)に設置し、オゾン濃度10ppm、湿度60%RH、温度24℃の環境下に24時間放置した。試験前の試験片におけるD値が1.0に最も近い階調部分について、試験前後のD値を測色システム(GRETAGRTM SPM50:GRETAG社製)を用いて光源D65、視野角2度、濃度基準:DINの条件で測定し、以下の計算式から色素残存率を測定し、評価を行った。結果を下記表3に示す。
色素残存率=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)
上記[(B)インクジェット記録]にて得た各試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製)に設置し、オゾン濃度10ppm、湿度60%RH、温度24℃の環境下に24時間放置した。試験前の試験片におけるD値が1.0に最も近い階調部分について、試験前後のD値を測色システム(GRETAGRTM SPM50:GRETAG社製)を用いて光源D65、視野角2度、濃度基準:DINの条件で測定し、以下の計算式から色素残存率を測定し、評価を行った。結果を下記表3に示す。
色素残存率=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)
表3より明らかなように、全ての光沢紙において実施例3乃至4の色素残存率は比較例1よりも非常に高く、耐オゾンガス性が優れていることが分かる。
以上のように、本発明の化合物はインクジェット記録用のインク組成物を調製するのに適しており、各種の堅牢性、特に光沢紙上での耐オゾンガス性に優れる。これらの特徴から、本発明のアントラピリドン化合物は各種の記録用インク色素、特にインクジェットインク用のマゼンタ色素として非常に有用な化合物であることが明らかである。
以上のように、本発明の化合物はインクジェット記録用のインク組成物を調製するのに適しており、各種の堅牢性、特に光沢紙上での耐オゾンガス性に優れる。これらの特徴から、本発明のアントラピリドン化合物は各種の記録用インク色素、特にインクジェットインク用のマゼンタ色素として非常に有用な化合物であることが明らかである。
Claims (19)
- 少なくとも1種の下記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩を、色素として含有するインク組成物。
mは0乃至2の整数、
nは1の整数、
pは1の整数、
Xa乃至Xcはそれぞれ独立に、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアニリノ基(ただし、スルホ基又はカルボキシ基のみで置換されたもの、及びスルホ基と、C1−C12アルキル基、C1−C6アルコキシ基、及びヒドロキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基とで置換されたものを除く。)、又は非置換アニリノ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキソ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、非置換アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びフェニル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたモノ若しくはジアルキルアミノ基(ただし、カルボキシ基のみで置換されたものを除く。)、又は非置換モノ若しくはジアルキルアミノ基;非置換ナフチルアミノ基;ヒドロキシ基を有してもよいモノ又はジアルキルアミノアルキルアミノ基;非置換アミノ基;ハロゲン原子;又はヒドロキシ基;を表すが、Xa乃至Xcの少なくとも1つはハロゲン原子及びヒドロキシ基から選択される基以外の基であり、
Yはスルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルコキシ基、又は非置換アルコキシ基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、及びスルファモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、
R1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル基、又はシアノ低級アルキル基を表し、
R2は水素原子、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、又はハロゲン原子を表し、
R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
R1乃至R4、Xa乃至Xc、及びYで表される上記全ての基及び置換基は、水素原子以外の基でさらに置換されてもよい。] - R1が水素原子又はメチル基であり、
R2が水素原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、又はフェノキシ基である、請求項1に記載のインク組成物。 - 前記式(1)で表されるアントラピリドン色素又はその塩が、下記式(2)で表されるアントラピリドン色素又はその塩である、請求項1又は2に記載のインク組成物。
Xa乃至Xcは式(1)におけるのと同じ意味を表し、
Yはカルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、及びメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたフェニル基、又は非置換フェニル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換されたアルキル基、又は非置換アルキル基;カルボキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルバモイル基、シアノ基、アルキル基、アニリノ基、フェノキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される少なくとも1種の基で置換された含窒素複素環基、又は非置換含窒素複素環基;を表し、
R11は水素原子又はメチル基を表す。] - 水及び水溶性有機溶剤を含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインク組成物。
- インク組成物中に色素として含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアントラピリドン色素又はその塩の総質量中における無機不純物の含有量が、1質量%以下である請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインク組成物。
- インク組成物中に色素として含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアントラピリドン色素の含有量が、インク組成物の総質量に対して、0.1〜20質量%である請求項1乃至9のいずれか一項に記載のインク組成物。
- インクジェット記録用である請求項1乃至10のいずれか一項に記載のインク組成物。
- 請求項1乃至11のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に記録を行うインクジェット記録方法。
- 前記被記録材が情報伝達用シートである請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- 前記情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項13に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体。
- 着色がインクジェットプリンタによりなされた請求項15に記載の着色体。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
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