本発明は、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置および方法に関する。
ウェハ、例えば半導体ウェハ(Si、化合物等により形成)に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置では、処理容器内に設けられたウェハ保持装置の載置面にウェハを載置して保持した状態にて、ウェハに対するエッチング等のプラズマ処理が行われる。このようなウェハ保持装置では、一般的にESCと呼ばれる静電チャックが載置面内に内蔵されており、静電チャックによって発生されるクーロン力および/あるいはジョンソンラーベック力による静電吸着力を用いたウェハの保持が行われている。
このような従来のウェハ保持装置では、ESCによる静電吸着を停止した後であっても、載置面とウェハに蓄積された電荷により静電吸着力(以降、「残留静電吸着力」とする。)が残留するため、ウェハ保持装置の載置面からウェハを離脱するための様々な手法が従来において提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−217356号公報
特開2007−109770号公報
近年、イメージセンサ等に代表されるデバイスを製造するために、ガラス板に半導体ウェハが貼り付けられたガラス貼り付け基板が用いられている。しかしながら、ガラス板貼り付け構造を有する基板が用いられるような場合では、半導体ウェハ単体が用いられるような場合と比して、その残留静電吸着力は大きくなる。そのため、特許文献1に開示されているように、単に突き上げピンによりウェハを突き上げて離脱させるような方法では、強い残留静電吸着力を有する基板において割れ等の損傷が生じる場合や、基板が載置面より離脱される時に、基板が跳ねること等による位置ずれが生じる場合がある。
また、このような残留静電吸着力により生じる問題は、ガラス貼り合わせ基板だけに限られるものではない。例えば、特許文献2に開示されているようなトレイにより基板が保持された状態にて、基板の搬送やプラズマ処理が行われるような形態においても、残留静電吸着により同様な問題が生じている。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、基板に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、静電吸着による基板の保持を行う基板保持装置から基板を離脱させることができるプラズマ処理装置および方法を提供することにある。
なお、本発明の基板としては、例えば、ガラス板にウェハが貼り合わせられたガラス貼り合わせ基板や、トレイに保持されたウェハを対象とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面の基板配置領域に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
載置面に配置された基板の少なくとも外周縁部を、載置面から上方に直接的または間接的に持ち上げるように、複数の突き上げピンを昇降させて基板を突き上げる突き上げ装置と、
突き上げ装置の複数の突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部と、を備え、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、突き上げ装置の突き上げピンを上昇させて、基板の外周縁部を載置面の基板配置領域から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置とを備える、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第2態様によれば、厚み方向に貫通する基板収容孔が設けられ、基板収容孔内に配置された基板の下面の外周縁部を支持する基板支持部を有するトレイに支持されたウェハを、トレイとともに基板保持装置の載置面に配置して、載置面の周囲に位置するトレイの配置領域にトレイを配置させるとともに、載置面内にてトレイの配置領域よりも突出して形成された基板配置領域にウェハを直接保持させ、このウェハを上記基板として、プラズマ処理容器にてプラズマ処理が行われ、
突き上げ装置において、載置面のトレイの配置領域に、複数の突き上げピンが、載置面より突出可能に配置されており、
制御装置は、複数の突き上げピンにより、トレイを突き上げて、トレイの基板支持部を介して、ウェハの外周縁部が載置面内の基板配置領域より持ち上げられるように、ステップ上昇動作を実施する、第1態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第3態様によれば、ガラス板にウェハが貼り合わせられたガラス貼り合わせ基板を上記基板として、プラズマ処理容器にてプラズマ処理が行われる、第1態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第4態様によれば、基板保持装置による静電吸着を解除した後の基板と載置面との間の残留静電吸着力を除去するための除電プラズマを発生する除電プラズマ発生部をさらに備え、
制御装置は、除電プラズマ発生部によりプラズマ処理容器内に除電プラズマを発生させた状態にて、複数の突き上げピンの上昇動作を制御することにより基板配置領域の少なくとも外側領域からの基板の離脱動作を行い、基板の外周縁部と基板配置領域の外周領域との間に除電プラズマを進入させることにより、残留静電吸着力を低減させる、第2態様または第3態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第5態様によれば、突き上げ装置は、
載置面の基板配置領域の外側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第1突き上げピンを、一体的に昇降させる第1突き上げ装置と、
載置面の基板配置領域の内側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第2突き上げピンを、一体的に昇降させる第2突き上げ装置と、を備え、
制御装置は、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、複数の第1突き上げピンを一体的に上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させた後、複数の第2突き上げピンの一体的な上昇によるステップ上昇動作を開始させるように、第1突き上げ装置および第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う、第3態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第6態様によれば、基板保持装置は、
基板が載置される載置面を有する載置部材と、
載置部材の内部に配置され、環状かつ帯状に形成された第1双極電極と、
載置部材の内部に配置され、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状に配置された環状かつ帯状に形成された第2双極電極と、
第1双極電極および第2双極電極に対して電圧を印加して、第1双極電極および第2双極電極から、載置面上に載置された基板に対して静電吸着力を発生させる静電吸着用電源とを備え、
基板に対するプラズマ処理中において、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも、少なくとも相対的に低い状態にて、載置面上での基板の保持が行われる、第3態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第7態様によれば、ガラス板にウェハが貼り合わせられたガラス貼り合わせ基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
プラズマ処理容器内に配置された電極に対して高周波電圧を印加する高周波電圧印加装置と、
を備え、
基板保持装置は、
電圧印加により静電吸着力を発生させて、載置面に載置された基板を保持する静電チャックと、
静電チャックへ電圧を印加する静電チャック用電源と、
静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を制御して、発生される静電吸着力の大きさを制御する電圧制御装置とを備え、
電圧制御装置は、プラズマ処理中に高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により発生される静電吸着力を減少させるように、静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を制御する、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第8態様によれば、電圧制御装置は、高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加が開始された後、静電チャックへの電圧の印加量を減少させる、第7態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第9態様によれば、載置面に配置された基板の少なくとも外周縁部を、載置面から上方に直接的または間接的に持ち上げるように、複数の突き上げピンを昇降させて基板を突き上げる突き上げ装置と、
突き上げ装置の複数の突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部と、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、突き上げ装置の突き上げピンを上昇させて、基板の外周縁部を載置面の基板配置領域から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置とをさらに備える、第7態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第10態様によれば、突き上げ装置は、
載置面の基板配置領域の外側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第1突き上げピンを、一体的に昇降させる第1突き上げ装置と、
載置面の基板配置領域の内側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第2突き上げピンを、一体的に昇降させる第2突き上げ装置と、を備え、
制御装置は、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、複数の第1突き上げピンを一体的に上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させた後、複数の第2突き上げピンの一体的な上昇によるステップ上昇動作を開始させるように、第1突き上げ装置および第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う、第9態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第11態様によれば、基板保持装置は、環状かつ帯状に形成された第1双極電極と、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状に配置された環状かつ帯状に形成された第2双極電極とを静電チャックとして備え、
電圧制御装置は、基板に対するプラズマ処理中において、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも、少なくとも相対的に低い状態にて、載置面上での基板の保持が行われるように、静電チャック用電源より第1双極電極および第2双極電極への電圧の印加量を制御する、第9態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第12態様によれば、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理方法であって、
基板保持装置の載置面に基板を載置するとともに、静電吸着により載置面に基板を保持し、
静電吸着によって保持された基板に対してプラズマ処理を行い、
プラズマ処理の完了後、静電吸着を停止し、
その後、基板保持装置の載置面より複数の突き上げピンを上昇させて、基板の外周縁部を載置面の基板配置領域から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力の検出を行い、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇動作を停止し、その後、検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンの上昇動作を再開するという突上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、
ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇動作の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続して、載置面の基板配置領域より基板を離脱させる、プラズマ処理方法を提供する。
本発明の第13態様によれば、ガラス板にウェハが貼り合わせられたガラス貼り合わせ基板に対するプラズマ処理方法であって、
基板保持装置の載置面に基板を載置し、
載置面内に内蔵された静電チャックへの電圧印加により生じる静電吸着力により基板を保持し、
その後、電極への高周波電圧の印加を開始して、保持された基板に対してプラズマ処理を行うとともに、高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により生じる静電吸着力を減少させるように、静電チャックへの電圧の印加量を減少させて、基板の保持を継続する、プラズマ処理方法を提供する。
本発明の一の態様によれば、プラズマ処理装置が備える制御装置により、プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、突き上げ装置の突上げピンを上昇させるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせ、検知閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値以下になり、かつ基板が載置面より離脱完了していない場合は、突上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始させる構成を採用している。さらに、制御装置により、ステップ上昇動作において、突上げピンの上昇後の停止時に基板の載置面からの離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合はステップ上昇動作を継続させるように突き上げ装置の動作タイミングの制御が行われる構成が採用されている。このように突き上げピンによる第1回目の突き上げ動作を実施した後、基板が載置面より離脱完了していない場合に、このような突き上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して行うステップ上昇動作を行うことにより、基板に対して損傷等を生じさせることなく、徐々に載置面からの離脱を促進させることができ、円滑な基板の離脱動作を行うことができる。また、このような複数の突き上げピンによる基板の突き上げ動作が、基板に対して直接的に行われるような場合だけでなく、基板に対して間接的に行われるような場合であってもよい。
本発明の別の一の態様によれば、載置面の基板配置領域の外側領域に配置された複数の第1突き上げピンと、内側領域に配置された複数の第2突き上げピンとを用いて、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、まず、複数の第1突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させ、その後、複数の第2突き上げピンを上昇させて、基板配置領域の内側領域より基板を離脱させることができる。すなわち、複数の第1突き上げピンによる基板の外側領域の突き上げ動作のタイミングと、複数の第2突き上げピンによる基板の内側領域の突き上げ動作のタイミングとを異ならせて、まず基板の外側領域を載置面から離脱させた後に、内側領域の離脱を行うというように、外側から内側へ向けて徐々にかつ段階的に基板の離脱動作を行うことができる。したがって、単なるウェハよりもその残留静電吸着力が高くなるという傾向があるガラス貼り付け構造を有する基板に対して、損傷や位置ずれ等を生じさせることなく、載置面からの離脱動作を行うことができる。
本発明の別の一の態様によれば、プラズマ処理中に基板に生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により生じる静電吸着力を減少させながら、基板の保持を継続して、基板に対するプラズマ処理を行うため、プラズマ処理が完了した後に基板に残留する残留静電吸着力の大きさを低減させることができる。したがって、その後、基板を載置面から離脱させる際に、基板を損傷等させることなく、円滑に離脱動作を行うことができる。
本発明の別の一の態様によれば、プラズマ処理装置の基板保持装置において、環状かつ帯状の第1双極電極と、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状の配置された環状かつ帯状の第2双極電極とを備えた構成が採用されている。このようなプラズマ処理装置において、基板に対するプラズマ処理中に、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも少なくとも相対的に低く設定された状態で、載置面上での基板の保持が行われる。したがって、基板の外周側(外縁付近領域)に比して基板の外周側に対し内周側である中央付近領域の残留静電吸着力が低減される。これにより、基板の縁部および/あるいはその近傍の領域に対して、基板の載置面から複数の突き上げピンを一体的に上昇させることにより基板の離脱が行われる場合、基板の中央付近領域の載置面からの離脱性が改善され、基板の載置面からの離脱時に離脱による損傷や位置ずれを生じさせることなく、静電吸着による基板の保持を行って、プラズマ処理を行うことができる。
本発明のこれらの態様と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
本発明の第1実施形態にかかるプラズマ処理装置の模式図であり、
第1実施形態のプラズマ処理装置の載置面の模式平面図であり、
第1実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図(第1突き上げピンによる突き上げ動作)であり、
第1実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図(第1および第2突き上げピンによる突き上げ動作)であり、
第1実施形態の基板離脱動作のフローチャートであり、
図5の基板離脱動作において、(A)は突き上げ力の変化を示すグラフ、(B)は第1突き上げピンのストローク変化を示すグラフ、(C)は第2突き上げピンのストローク変化を示すグラフであり、
図3の突き上げ動作における突き上げピン周囲の模式部分拡大図であり、
図4の突き上げ動作における突き上げピン周囲の模式部分拡大図であり、
第1実施形態の変形例にかかる突き上げ動作における突き上げピン周囲の模式部分拡大図であり、
第1実施形態の変形例にかかる突き上げピンの配置(突き上げピン上昇前の状態)を示す模式断面図であり、
第1実施形態の変形例にかかる突き上げピンの配置(突き上げピン上昇後の状態)を示す模式断面図であり、
第1実施形態の変形例にかかる突き上げピンの配置を示す模式平面図であり、
本発明の第2実施形態の比較例にかかるプラズマ処理装置において、(A)はESC印加電圧の時間変化を示すグラフ、(B)は電極への印加電力のON/OFF状態を示すグラフ、(C)は載置面に対する基板の静電吸着力の変化を示すグラフ、(D)はHeガスの供給状態を示すグラフであり、
第2実施形態のプラズマ処理装置における残留静電吸着力の低減方法を説明するための図であって、(A)はESCへの印加電圧を示すグラフ、(B)はESCにて印加電圧から得られる静電吸着力を示すグラフ、(C)は基板の帯電にて生じる静電吸着力(残留静電吸着力)を示すグラフ、(D)は合計吸着力((B)+(C))を示すグラフであり、
第2実施形態のプラズマ処理装置の模式図であり、
第2実施形態のプラズマ処理において、(A)はESCへの印加電圧の変化を示すグラフ、(B)は電極への印加電力の変化を示すグラフ、(C)はHeガスの供給状態を示すグラフであり、
第1実施形態の比較例にかかるプラズマ処理装置における基板の突き上げ動作を示す模式図であり、
図15の比較例のプラズマ処理装置における基板の突き上げ動作を示す模式図であり、
本発明の第3実施形態にかかるプラズマ処理装置の模式図であり、
第3実施形態のプラズマ処理装置にて取り扱われるトレイの斜視図であり、
第3実施形態のプラズマ処理装置の誘電体板の斜視図であり、
図18Aのトレイの平面図であり、
図19AのトレイのA−A線断面図であり、
第3実施形態のトレイおよび誘電体板の部分拡大断面図(トレイ載置前)であり、
第3実施形態のトレイおよび誘電体板の部分拡大断面図(トレイ載置後)であり、
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図であり、
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図であり、
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図であり、
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図であり、
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図であり、
第3実施形態の基板離脱動作のフローチャートであり、
図22の基板離脱動作において、(A)は突き上げ力の変化を示すグラフ、(B)は突き上げピンのストローク変化を示すグラフであり、
本発明の第3実施形態の変形例にかかるプラズマ処理装置の模式図であり、
本発明の第4実施形態にかかるプラズマ処理装置の模式図であり、
第4実施形態のプラズマ処理装置の載置面の模式平面図であり、
第4実施形態のプラズマ処理装置の載置面に内蔵されているESCの模式平面図であり、
図27のESCによる静電吸着力の発生原理の模式説明図であり、
第4実施形態のプラズマ処理方法の手順のフローチャートであり、
第4実施形態のプラズマ処理におけるESCへの印加電圧を示すグラフであって、(A)は第1双極電極への印加電圧、(B)は第2双極電極への印加電圧、(C)は電極への印加電力(上部電極及び/あるいは下部電極)、(D)は、第1双極電極の印加電圧と電極印加電力による基板の帯電で得られる静電吸着力、(E)は第2双極電極の印加電圧と電極印加電力による基板の帯電で得られる静電吸着力を示すグラフであり、
第4実施形態のプラズマ処理装置において、突き上げ動作時におけるプラズマ処理装置の模式図であり、
第4実施形態のプラズマ処理装置の基板保持装置の載置台端部の部分拡大模式図であり、
従来のESCの構成を示す模式図であり、
図25のプラズマ処理装置におけるESCの詳細構成を示す模式図であり、
第4実施形態の変形例にかかるESCの構成を示す模式図である。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかるプラズマ処理装置10の主要な構成を示す模式図を図1に示す。本第1実施形態のプラズマ処理装置10には、絶縁材料であるガラス板2上に、ウェハ、例えば半導体ウェハの一例であるシリコンウェハ(Siおよびその化合物等により形成された半導体ウェハ)3が貼付剤4を介して貼り付けられたガラス貼り付け構造を有するガラス貼り付け基板1(以降、「基板1」とする。)が、プラズマ処理の対象物として取り扱われる。ここで、シリコンウェハ3としては、例えば25〜400μm、特に50〜200μmの厚さを有するものが用いられる。ガラス基板2としては、例えば300〜500μm、特に400μm程度の厚さを有するものが用いられる。また、貼付剤4としては、例えばレジストや粘着剤が用いられる。このような基板1のシリコンウェハ3に対して、所定のプラズマ処理を施すことにより、イメージセンサ等のデバイスが製造される。また、基板1は、例えば直径200mmの円盤形状を有している。
図1に示すように、プラズマ処理装置10は、その内部空間(プラズマ処理空間)にて所定のプラズマ処理が行われるプラズマ処理容器11と、プラズマ処理容器11内に設置され、基板1のガラス板2側が載置される載置面12aを有し、載置面12aに載置された基板1に対して、静電吸着による保持を行う基板保持装置12とを備えている。さらに、図1に示すように、プラズマ処理容器11の内側上部には上部電極13が設置され、基板保持装置12の内部には下部電極14が設置されている。上部電極13には、上部電極用高周波電源15(高周波電圧印加装置の一例である。)が接続されており、下部電極14には下部電極用高周波電源16が接続されている。さらに、基板保持装置12の載置面12aには、静電吸着を行うための静電チャックの一例であるESC17が内蔵されており、ESC17にはESC用電源18(静電チャック用電源の一例である。)が接続されている。
このような構成のプラズマ処理装置10では、基板保持装置12の載置面12aに基板1を載置させて、ESC17の静電吸着により基板1の保持を行った後、プラズマ処理容器11の内部を所定の圧力に保持しながら所定のプラズマ処理用ガスを供給して充填する。その後、上部電極用高周波電源15より上部電極13への電圧印加を行うとともに、下部電極用高周波電源16より下部電極14への電圧印加を行って、プラズマを発生させ、基板1のシリコンウェハ3に対するプラズマ処理を行う。プラズマ処理が完了すると、それぞれの高周波電源15、16による電圧印加を停止し、プラズマ処理容器11内のガスを排気して、基板1に対するプラズマ処理が完了する。プラズマ処理が完了すると、ESC用電源18によるESC17への電力供給が停止される。
次に、プラズマ処理装置10において、載置面12aと基板1との間に存在する残留静電吸着力に抗して、プラズマ処理が完了した基板1を載置面12aから離脱させるために備えられている構成について説明する。ここで、基板保持装置12の載置面12aの模式平面図を図2に示す。
図1および図2に示すように、基板保持装置12には、載置面12aの基板配置領域Rの外側領域R1に配置された複数の第1突き上げピン21を、載置面12aより一体的に昇降させて載置面12aより突出させるあるいは載置面12a内に格納させるように動作させる第1突き上げ装置20と、載置面12aの基板配置領域Rの内側領域R2に配置された複数の第2突き上げピン31を、載置面12aより一体的に昇降させて載置面12aより突出させるあるいは載置面12a内に格納させるように動作させる第2突き上げ装置30とが備えられている。また、第1突き上げ装置20は、それぞれの第1突き上げピン21を一体的に昇降させる第1昇降装置22を備えており、第2突き上げ装置30は、それぞれの第2突き上げピン31を一体的に昇降させる第2昇降装置32を備えている。なお、第1昇降装置22と、第2昇降装置32とは、互いに個別に動作することが可能となっている。
また、本第1実施形態のプラズマ処理装置10では、図2に示すように、載置面12a全体が基板1に対する基板配置領域Rとなっているが、このような場合に代えて、載置面12aの一部が基板配置領域として設定されるような場合であってもよく、あるいは載置面12aより基板配置領域Rが大きく設定されているような場合であってもよい。載置面12aより基板配置領域Rが小さい場合には、基板1の周縁部におけるプロセス特性(例えば、エッチングレート等)の均一性が向上するが、載置面12aのESC17の電極が基板配置領域Rよりも大きい場合には、ESC17の電極がプラズマにさらされ、その寿命が短くなる場合がある。これに対して、載置面12aより基板配置領域Rが大きい場合には、ESC17の電極が基板1の周縁よりも小さくなるため、プラズマにさらされるという問題は生じず、プロセス特性の均一性を確保するために、ESC17の電極を基板1の周縁よりも0.5mm〜1mm程度と僅かに小さくするのが好ましい。しかしESC17の電極が基板1の周縁よりも小さくなりすぎると、基板1の周縁部におけるプロセス特性が不均一となる場合がある。また、基板配置領域Rの外側領域R1は、基板配置領域R内でかつ載置面12aに載置される基板1の縁部およびその近傍の領域、および/あるいは載置面12aに載置される基板1の半径の1/2以上の基板1の外周側に位置する領域であり、基板配置領域Rの内側領域R2は、基板配置領域Rの外側領域R1の縁部およびその近傍の領域よりも相対的に内側の領域である。
図2に示すように、例えば8本の第1突き上げピン21が、載置面12aの中心をその中心とする第1の同心円C1上に等間隔にて配置されており、例えば4本の第2突き上げピン31が、載置面12aの中心をその中心とする第2の同心円C2上に等間隔にて配置されている。なお、第1の同心円C1の径は、第2の同心円C2の径よりも大きく設定されている。
さらに、図1に示すように、第1突き上げ装置20には、基板1を突き上げる際に、第1昇降装置22によりそれぞれの第1突き上げピン21に付加される突き上げ力(あるいは突き上げ反力)を検出するための突き上げ力検出部の一例である第1ロードセル23が備えられている。同様に、第2突き上げ装置30には、基板1を突き上げる際に、第2昇降装置32によりそれぞれの第2突き上げピン31に付加される突き上げ力(あるいは突き上げ反力)を検出するための突き上げ力検出部の一例である第2ロードセル33が備えられている。
また、図1に示すように、プラズマ処理装置10には、第1昇降装置22による第1突き上げピン21の昇降動作、第2昇降装置32による第2突き上げピン31の昇降動作、第1ロードセル23による突き上げ力の検出動作、第2ロードセル33による突き上げ力の検出動作、上部電源用高周波電源15による電圧印加動作、下部電源用高周波電源16による電圧印加動作、およびESC用電源18による電力供給動作を、互いの動作を関連づけながら制御する制御装置9が備えられている。さらに制御装置9は、第1昇降装置22および第2昇降装置32を通じて、第1突き上げピン21の載置面12aよりの突き上げ量(ストローク)および第2突き上げピン31の載置面12aよりの突き上げ量(ストローク)を検出することが可能となっている。
このような構成のプラズマ処理装置10にて、プラズマ処理が完了した基板1を載置面12aから離脱させる動作について説明する。この説明にあたって、図3および図4にプラズマ処理装置10の動作の模式説明図を示し、図5に離脱動作の手順のフローチャートを示し、図6に第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の突き上げ力(反力)および突き上げストロークの時間的な変化を表すグラフを示す。また、突き上げ状態における突き上げピン近傍の部分模式拡大図を図7Aおよび図7Bに示す。
まず、プラズマ処理容器11の内部空間にて、基板1と載置面12aとの間に存在する残留静電吸着力を除去するための比較的弱いプラズマである除電プラズマを発生させる(図5のフローチャートのステップS1)。例えば、プラズマ処理容器11の内部空間に、シリコンウェハ3に対するプラズマ処理(例えばエッチング等)が進行しない不活性ガス(Ar、N2、O2等)を供給した状態にて、上部電極13および/あるいは下部電極14に電圧を印加することにより、除電プラズマPが発生される。ただし、残留静電吸着力により基板1は載置面12aに保持された状態であるため、このような状態においては、除電プラズマPは基板1と載置面12aとの間に進入することができない。なお、本第1実施形態では、上部電極13、上部電極用高周波電源15、下部電極14、下部電極用高周波電源16、および図示しないガス供給装置が、除電プラズマ発生部の一例を構成している。
次に、図6(A)に示す時間区分T0〜T1にて、第1突き上げ装置20の第1昇降装置22により8本の第1突き上げピン21を一体的に上昇させて、載置面12aよりも上方に突出させる(ステップS2)。その結果、図3、より詳細には図7Aに示すように、基板1の外周部分がそれぞれの第1突き上げピン21により突き上げられた状態とされ、載置面12aの基板配置領域Rの外側領域R1から基板1が部分的に離脱される。
ここで、図6(A)の突き上げ力の変化を示すグラフと、図6(B)の第1突き上げピン21のストロークの変化を示すグラフとに示すように、第1昇降装置22によるそれぞれの第1突き上げピン21の突き上げ(上昇)動作は、第1ロードセル23にて検出される突き上げ力を参照しながら行われる。具体的には、基板1に対して割れ等の損傷や跳ね等の位置ずれが生じない限度荷重であるF2を超えることなく、かつ2回目の突き上げ動作を開始するための基準荷重である検知閾値F1を超える荷重範囲に入るように、第1突き上げピン21の突き上げストロークが調整されて、突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの第1突き上げピン21の先端は、ストローク(あるいは高さ)H1に位置された状態とされる。
このように基板1の縁部が載置面12aより離脱された状態とされることにより、プラズマ処理容器11の内部空間に発生されている除電プラズマPが、基板1と載置面12aとの間に進入することができる。その結果、時間区分T1〜T2にて、除電プラズマPと接触した表面において、基板1と載置面12aとの間に存在する残留静電吸着力が低減されて、載置面12aからの基板1の離脱(剥離)が、基板1の外側から内側に向けて拡がるように促進される。
また、この時間区分T1〜T2では、第1ロードセル23による突き上げ力の検出が継続して行われ、検出された突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したかどうかの検出が行われる(ステップS3)。
やがて、時間T2にて、第1ロードセル23によって第1突き上げピン21による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したことが検出されると、第1突き上げ装置20および/あるいは第2突き上げ装置30による突き上げ動作が開始される(ステップS4)。具体的には、例えば、図6(A)に示す時間区分T2〜T3にて、第1突き上げ装置20の第1昇降装置22により4本の第1突き上げピン21を一体的にさらに上昇させるとともに、第2突き上げ装置30の第2昇降装置32により4本の第2突き上げピン31を一体的に上昇させて載置面12aよりも上方に突出させる。この突き上げ動作により、それぞれの第1突き上げピン21はその先端がストロークH2に位置された状態とされ、それぞれの第2突き上げピン31はその先端がストロークH1に位置された状態とされる。
このように第1突き上げピン21による突き上げ動作に加えて、さらに第2突き上げピン31による突き上げ動作を行うことにより、図4、より詳細には図7Bに示すように、載置面12aの基板配置領域Rの内側領域R2にて基板1を載置面12aから完全にあるいは部分的に離脱させることができる。部分的に離脱されている場合には、除電プラズマPを基板1と載置面12aとの間にさらに進入させて、残留静電吸着力を低減させることができ、基板1の離脱がさらに促進される。
なお、2回目の突き上げ動作の時、第1突き上げピン21による突き上げ動作に加えて、さらに第2突き上げピン31による突き上げ動作を行うとしたが、基板1が載置面12aよりの離脱にともなって突き上げピン21、31による突き上げ力が限度荷重F2に近づきすぎる場合は、第1突き上げピン21をさらに上昇させずに第2突き上げピン31のみを突上げ動作させて第2突き上げピン31はその先端が第1突き上げピン21と同じ突上げ高さ位置であるストロークH1に位置された状態とさせても良い。このことにより、載置面12aからの突上げ動作により基板1に発生する応力の発生をより低減させることができる。
この2回目の突き上げ動作により、基板1が載置面12aより完全に離脱されていない場合には、第1突き上げピン21による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T4〜T5にて、再び、第1突き上げピン21および/あるいは第2突き上げピン31による突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの第1突き上げピン21はその先端がストロークH3に位置された状態とされ、それぞれの第2突き上げピン31はその先端がストロークH2に位置された状態とされる。また、この時間T4における突き上げ動作の開始の際には、第2ロードセル33により第2突き上げピン31の突き上げ力が検知閾値F1にまで減少していることを確認することが好ましい。なお、第1突き上げピン21に対する検知閾値と第2突き上げピン31に対する検知閾値とは、互いに異なる値が採用される場合であってもよい。
この3回目の突き上げ動作により、基板1が載置面12aよりまだ完全に離脱されていない場合には、例えば、第2突き上げピン31の突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T6〜T7にて、第2突き上げピン31による突き上げ動作を行う。その結果、それぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31は、共にその先端がストロークH3に位置された状態とされ、さらに載置面12aからの基板1の離脱が促進される、あるいは載置面12aから基板1が完全に離脱される。
一方、載置面12aより基板1が完全に離脱されていることが確認されると(ステップS5)、基板1の載置面12aからの離脱のための突き上げ動作が完了する。なお、載置面12aより基板1が完全に離脱されていることの確認は、例えば、第1ロードセル23および/あるいは第2ロードセル33にて検出される突き上げ力が基板1の自重に相当する荷重となっていること、あるいは、載置面12aから基板1が離脱したことを示す離脱閾値F3以下になっていることを検出すること、および/あるいは第1突き上げピン21および第2突き上げピン31のストロークが所定のストロークに達していることなどにより行うことができる。
ここで、本第1実施形態のプラズマ処理装置10における基板1の離脱方法と対比される比較例にかかる離脱方法として、例えば、特許文献1に開示の離脱方法をガラス貼り付け基板1に仮に適用した場合について、図15および図16の模式図を用いて説明する。
図15に示すように、比較例にかかるプラズマ処理装置201において、基板保持装置202の載置面203に、ガラス貼り付け基板1を、ガラス板2側を下面側として載置した状態にて、半導体ウェハ3に対するプラズマ処理を行う。このプラズマ処理が行われている際には、基板1は載置面203内に内蔵されたESC204により静電吸着による保持が行われている。その後、プラズマ処理が完了すると、ESC204による静電吸着が停止される。
プラズマ処理装置201には、基板保持装置202の載置面203の縁部に同心円状に配置された複数の突き上げピン205の昇降動作を行う突き上げ装置206が備えられている。これらの突き上げピン205は、基板1が載置された状態では、載置面203内に格納された状態とされている。
ESC204による静電吸着が停止されると、突き上げ装置206にてそれぞれの突き上げピン205が例えば一体的に上昇されて、載置面203上に載置された状態の基板1が突き上げられて、残留静電吸着力に抗して、基板1の縁部のみが載置面203より離脱される。
しかしながら、基板1は、単なる半導体ウェハではなく、ガラス板貼り付け構造を有しているため、半導体ウェハ単体が用いられるような場合と比して、その残留静電吸着力は大きくなる。そのため、基板1の縁部近傍を複数の突き上げピン205により突き上げても、基板1の中央付近には、高い残留静電吸着力が存在したままの状態とされている。その結果、突き上げピン205により突き上げられた部分、すなわち基板1の縁部のみが載置面203より離脱されるだけであり、基板1の中央付近は載置面203より離脱されない。このような状態では、図16に示すように、基板1において割れ等の損傷が生じる場合や、基板1が載置面203より離脱される時に、基板1が跳ねること等による位置ずれが生じる場合がある。
特許文献1に開示されているように、除電プラズマを用いて、残留静電吸着力を減少させることも可能であるが、ガラス貼り付け構造を有し、通常の半導体ウェハよりも高い残留静電吸着力が生じる基板1では、除電プラズマにより残留静電吸着力を減少させるために必要な時間も長くなり、プラズマ処理プロセスの生産性を低下させることが考えられる。
この比較例にかかる基板1の離脱方法に対して、本第1実施形態の基板の離脱方法では、このようなガラス貼り付け基板1に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、載置面12aからの安定した離脱を行うことができる。具体的には、載置面12aの基板配置領域Rの外側領域R1に同心円状に配置された複数の第1突き上げピン21と、内側領域R2に同心円状に配置された複数の第2突き上げピン31とを用いて、まず第1突き上げピン21による突き上げ動作を行って、基板1の縁部を載置面12aから離脱させ、その後、第2突き上げピン31による突き上げ動作を行って、基板1の内側部分を載置面12aから離脱させるという、基板1の外側から内側に向かっての段階的な突上げの上昇と停止を行い、突上げ上昇の停止時に突上げ力が検知閾値以下なっていることを検知して突き上げピンの再上昇を繰り返すステップ動作による離脱動作を行うことにより、通常のシリコンウェハよりも残留静電吸着力が高いという特徴を有するガラス貼付構造の基板1に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、載置面12aからの安定した離脱を行うことができる。
また、このような第1突き上げピン21と第2突き上げピン31を用いた段階的な突き上げ動作を行う際に、突き上げ部分あるいはその近傍にて基板1にたわみが生じることになるが、基板1の物性や仕様に応じて基板1に割れ等の損傷が生じない程度の曲率を超えないように、第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の突き上げストローク(量)を制御することにより、突き上げ動作により基板1に損傷が生じることを防止することができる。
さらに、これらの突き上げ動作を行う際に、除電プラズマを併用することにより、除電プラズマを基板1の外側から内側に向けて徐々に進入させることができ、さらに基板1の離脱を促進させることができる。
また、それぞれの第1突き上げピン21の突き上げにより生じる突き上げ力を、第1ロードセル23にて検出しながら突き上げ動作を行うことにより、基板1の破壊や位置ずれが生じる限度荷重F2を突き上げ力が超過しないようにすることができ、基板1の損傷等を確実に防止することができる。
さらに、第1突き上げピン21による突き上げ動作を行った後、突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、第2突き上げピン31による突き上げ動作を開始するという手法を採用していることにより、突き上げ動作による直接的な離脱効果と、突き上げ状態の保持および除電プラズマによる間接的な離脱効果(すなわち基板1の離脱範囲の拡大効果)とを良好なバランスにて得ることができ、基板に対して損傷や位置ずれを生じない離脱動作を実現することができる。
なお、このような第1突き上げピン21と第2突き上げピン31を用いた段階的な突き上げ動作、すなわち基板1の載置面12aからの離脱動作は、図6、図7Aおよび図7Bを用いて説明した方法にのみ限られるものではない。この離脱動作の変形例について、図7Aおよび図8に示す模式説明図を用いて説明する。
まず、図7Aに示すように、第1突き上げピン21をストロークH1にまで上昇させて、基板1の突き上げを行う。その後、この突き上げ状態を保持して、例えば第1突き上げピン21による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待つ。検知閾値F1にまで減少したことが確認されると、それぞれの第1突き上げピン21の高さはストロークH1に保持したままの状態にて、それぞれの第2突き上げピン31を上昇させる。この時、1回目の突き上げ動作における第1突き上げピン21の上昇速度よりも十分に低い速度にて、それぞれの第2突き上げピン31の上昇を行う。このようにゆっくりとそれぞれの第2突き上げピン31の上昇を行うことで、基板1に対して急激な応力負荷変化を与えることなく、載置面12aから基板1が剥離されている領域を拡大することができる。このようにゆっくりと上昇されるそれぞれの第2突き上げピン31は、例えば、図8に示すように、ストロークH1にまで最終的に上昇される。なお、第2突き上げピン31の上昇は、このようにゆっくりとした速度にて行うような場合に代えて、例えば、ストロークH1よりも小さなストロークにて段階的な上昇を複数回実施することもできる。
また、このように突上げピンの上昇速度をより低くすることで、基板1の載置面12aからの離脱動作において、突き上げピンの突上げ上昇動作を途中で停止することなく、突上げ力の検知閾値F1を越えることの無いように連続して突き上げ上昇動作を行っても良い。
また、限度荷重F2以下の検知閾値F1以下になったら突上げピンの再上昇としたが、検知閾値を突き上げピン上昇の目標値の検知閾値F1a(F1<F1a<F2)として設定し、第1回目の突上げ動作において、突上げピンを所定の一定あるいは可変の速度で上昇させ、検知閾値F1aが検知されたら、突き上げピンの上昇を停止させる。その後、突き上げ力が検知閾値F1a以下になり、基板1が載置面12aより離脱完了していない場合は、第2回目の突上げ動作として再度突上げピンの上昇動作を行う。この時、再度の上昇動作は上昇と停止の繰り返しのステップ上昇動作として微小のステップ上昇動作(例えば一の上昇動作における上昇高さが0.1〜0.2mmであり、少なくとも一の上昇動作における上昇高さは、第1回目の突き上げピンの上昇動作における上昇高さよりも小さい。)を行い、突上げピンの上昇後の停止時に基板1の載置面12aからの離脱完了の検知動作を行う。この微小ステップ上昇動作により載置面12aからの突上げ動作により基板1に発生する応力の発生がより低減され、基板1の載置面12aの離脱がより促進される。
なお、微小のステップ上昇動作において突上げピンの上昇後の停止時に基板1の載置面12aからの離脱完了の検知動作を行うとしたが、基板1の載置面12aからの離脱動作に悪影響がなければ、微小のステップ上昇動作中に連続して離脱完了の検知動作を行っても良い。
次に、基板保持装置12の載置面12aにおけるそれぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の配置について説明する。
このようなプラズマ処理装置10では、プラズマ処理の際に、基板1と載置面12aとを冷却することを目的として、載置面12aと基板1との間にHeガスが供給されるように構成される。そのため、載置面12aには、Heガスを流す、あるいは溜めておくための凹部が形成されている。このような載置面12aに形成された凹部12bとの関係からは、図9Aおよび図9Bに示すように、第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の形成位置は、平面視にて、凹部12bの溝部内とすることが好ましい。また、プラズマ処理中のHeガスによる基板1の冷却中は、凹部12b内をHeガスが流れ易いように突上げピンの先端高さを凹部12bの底部以下とすることが望ましい。このような突き上げピンの配置を採用することにより、Heガスの漏出量を低減させることができる。
また、載置面12aにおけるそれぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の平面的な配置としては、様々な配置を採用することができる。略円盤形状の基板1に対して大きな荷重負荷を加えることなく、載置面12aより離脱のための突き上げ動作を行うという観点からは、基板1に対して負荷される突き上げ力は、より均一に負荷されることが好ましい。そのため、図2に示すように、載置面12aの中心をその中心とする第1の同心円C1上に等間隔にてそれぞれの第1突き上げピン21が配置されることが好ましく、同様に、載置面12aの中心をその中心とする第2の同心円C2上に等間隔にてそれぞれの第2突き上げピン31が配置されることが好ましい。さらに、載置面12aから離脱された基板1を基板搬送アーム41にてその下面側から保持して搬送を行うような場合にあっては、図2、図10に示すように、基板1と載置面12aとの間に基板搬送アーム41の挿入ルートを確保するように、それぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の配置を決定することが好ましい。
なお、上記第1実施形態の説明では、載置面12aに複数の第1突き上げピン21と第2突き上げピン31が備えられ、第1突き上げピン21と第2突き上げピン31との段階的な突き上げ動作を行うような場合について説明したが、本第1実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、載置面12aの少なくとも外周領域に複数の第1突き上げピン21のみが備えられ、複数の第1突き上げピン21を一体的に上昇させながら、突き上げ力を検出して、限度荷重F2を超過しないように、その突き上げストロークの制御を行って、段階的な突き上げ動作を行うような場合あるいは第1回目の突上げ動作において、突上げピンを所定の一定あるいは可変の速度で上昇させ、検知閾値F1aが検知されたら、突き上げピンの上昇を停止させ、突き上げ力が検知閾値F1a以下になり、基板1が載置面12aより離脱完了していない場合は、第2回目の突上げ動作として再度突上げピンの上昇動作を微小のステップ上昇動作で行う場合であってもよい。このような第1突き上げピン21のみによる突き上げ動作は、例えば、基板1が小径であるような場合、あるいは、基板1の離脱に要する時間がある程度確保できるような場合に対して有効である。
また、上記第1実施形態では、対象物をガラス貼り付け基板1としたが、シリコンウェハ3の裏面に絶縁膜を形成したウェハ、絶縁材であるガラス板上に半導体や金属絶縁膜を形成したウェハ、あるいはガラスやシリコンウェハ3そのものを突き上げ対象物とすることもできる。シリコンウェハ3単体では、その残留静電吸着力はガラス貼り付け基板1よりも比較的小さくなる傾向にあるが、300mm以上の大径化されたシリコンウェハ3に対しては、上記第1実施形態の突き上げ動作による載置面12aからの離脱方法をより有効に適用することができる。
また、第1突き上げピン21と第2突き上げピン31の突き上げ動作により生じる突き上げ力を、第1ロードセル23および第2ロードセル33により検出して、突き上げストロークや段階的な突き上げのタイミングが制御されるような場合について説明したが、本第1実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、第1昇降装置22および第2昇降装置32のモータトルクを検出する装置を用いることもできる。
また、突き上げ動作の際に、突き上げ力を検出することなく、突き上げストロークのみを制御することによっても、上記第1実施形態の突き上げ動作を実施することが可能である。例えば、突き上げ対象物である基板1の物性や仕様等に基づいて、突き上げ力を適正な範囲に保つことができる突き上げストロークに関する時間シーケンスを実験等により作成し、この時間シーケンスを用いて突き上げストロークを制御しながら突き上げ動作を実施することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態のプラズマ処理装置10では、基板1に対するプラズマ処理が行われた後に、残留静電吸着力に抗して、基板1に損傷が生じることなく、載置面12aから基板1を離脱させる基板の突き上げ動作について説明を行った。本第2実施形態では、この突き上げ動作を行う前に、すなわち基板1に対するプラズマ処理を完了させた時点にて発生している残留静電吸着力を低減させることで、基板1を載置面12aから離脱させる方法について説明する。
本第2実施形態について説明を行うにあたって、まず、本第2実施形態の構成および方法が適用されていないプラズマ処理装置として、本第2実施形態の比較例のプラズマ処理装置において生じる残留静電吸着保持力について図面を用いて説明する。
図11は、従来のプラズマ処理装置にてプラズマ処理の際に生じる基板に対する静電吸着力等の時間変化を、本第2実施形態に対する比較例として示す図である。具体的には、図11(A)は、ESC印加電圧の時間変化を示すグラフであり、図11(B)は、上部電極および/あるいは下部電極への電力印加の有無(すなわちエッチング等のプラズマ処理を実施しているかどうか)を示すグラフであり、図11(C)は、ESC印加電圧と、電極印加電力による基板の帯電とによる載置面に対する基板の静電吸着力の時間変化を示すグラフであり、図11(D)は、基板と載置面とを冷却することを目的とした載置面と基板との間へのHeガスの供給の有無を示すグラフである。
まず、図11(A)、(C)に示すように、時間Taにて、載置面に基板が載置されると、ESCに電圧が印加されて静電吸着力F11が発生され、時間区間Ta−Tbにて基板の吸着保持が行われる。さらに時間区間Ta−Tbでは、図11(D)に示すように、基板と載置面との間にHeガスの供給が行われて、Heガスが圧力Pに保たれた状態とされる。その後、時間Tbにて、図11(B)に示すように、上部電極および/あるいは下部電極への電力印加(例えば、電力W1の印加)が開始され、時間区間Tb−Tcにて基板に対するプラズマ処理が行われる。
一方、このように時間Tbにてそれぞれの電極への電力印加が開始されると、基板のガラス板などに残留電荷が蓄積されて、残留静電吸着力が生じる。図11(C)に示すように、残留静電吸着力は時間の経過とともに増加し、例えばプラズマ処理が完了する時間Tcでは、ESCによる静電吸着力F11と残留静電吸着力の合計である合計静電吸着力が、F12にまで増大する。すなわち、基板を確実に保持するための静電吸着力F11よりも大きな静電吸着力F12にて基板の保持が行われている状態となる。なお、図11(C)では、図示ハッチング模様を付した部分が残留電荷などにより生じた残留静電吸着力となる。
その後、時間Tcにて、上部電極および/あるいは下部電極等への電極への電力供給が停止されるが、この電力供給の停止では、残留静電吸着力は減少しない。また、時間Tcでは、Heガスの供給も停止され、プラズマ処理が完了する。
プラズマ処理が完了すると、時間Tdにて、ESCへの電圧印加が停止されて、ESCによる静電吸着が解除される。仮に残留静電吸着力が発生しなければ、このESCによる吸着解除に伴って、基板に対する静電吸着力がF11からF13にまで減少することになるが(図11(C)点線参照)、実際には残留静電吸着力が存在するため、静電吸着力はF12からF14にまでしか減少しない。すなわち、ESCによる静電吸着の解除を行った後(時間Td以降)でも、F13よりも明らかに大きな静電吸着力(残留静電吸着力)F14が残留することになる。このように大きな静電吸着力が残留するような場合にあっては、載置面からの基板の離脱を行うことが困難になる、あるいは離脱のための突き上げ動作の実施により基板を損傷させる等という問題が発生する可能性がある。
特にガラス貼り付け基板が用いられるような場合にあっては、基板に反りが生じやすく(例えば山形に600〜800μm程度の反りが生じやすく)、このような反りを矯正するためにも、高い電圧をESCに印加して、強い吸着力にて基板の保持を行う必要がある。例えば、一般的なウェハ単体の吸着には600〜900V程度の電圧の印加が必要であるのに対して、ガラス貼り付け基板ではその3〜4倍程度、すなわち2500V程度の電圧の印加が必要となる。また、ガラス板は強い分極が生じる傾向にあるため、残留静電吸着力が極めて強く、載置面からの基板の適切な離脱を行うことがより困難となる。
本第2実施形態のプラズマ処理装置および方法は、このような残留静電吸着力の残留量を低減させて、プラズマ処理完了後における載置面からの基板の離脱動作を円滑に行えるようにすることを目的とするものである。
まず、本第2実施形態の残留静電吸着力の残留量を低減させる考え方について、図12(A)〜(D)の図面(グラフ)を用いて説明する。図12(A)は、ESC印加電圧の時間変化を示すグラフであり、図12(B)は、ESC印加電圧から得られるESCの静電吸着力の時間変化を示すグラフであり、図12(C)は、電極の印加電圧による基板の帯電により生じる静電吸着力、すなわち残留静電吸着力の時間変化を示すグラフであり、図12(D)は、図12(B)の静電吸着力と、図12(C)の残留静電吸着力との合計である合計吸着力の時間変化を示すグラフである。なお、時間Ta、Tb、Tc、Tdは、図11と共通する。
図12(C)に示すように、時間Tbにて、上部電極および/あるいは下部電極等の電極への電力印加(高周波電圧の印加)が開始されてプラズマ処理が開始されると、残留静電吸着力が増加して、最終的には時間TdにてF16にまで達する。本第2実施形態では、このような時間TbからTdの間に残留静電吸着力の増加が生じるような場合であっても、図12(D)に示すように、時間区間Ta−Tdにて合計吸着力を増加させることなく、例えばF11に一定に保つというものである。
具体的には、図12(A)および(B)に示すように、時間Taにて印加電圧V1にてESCに静電吸着力F11を発生させ、その後、時間Tbから印加電圧を徐々に減少させて電圧V2とすることで、ESCへの電圧印加により生じる静電吸着力をF11からF15に減少させる。すなわち、高周波電圧の印加が開始された後、それに伴って発生する残留静電吸着力の増加量に応じて、ESCへの電圧の印加量を低減させている。ここで、吸着力はおおよそ(F11−F15)=F16に近い関係にある。このようにすることで、図12(D)に示すように、残留吸着力の大きさの増加を、ESCへの電圧印加により生じる静電吸着力の減少により抑制あるいは相殺することができ、時間区間Ta−Tdにおける合計吸着力をほぼ一定に保つことができる。
このように、合計吸着力がほぼ一定に保たれることで、載置面から基板を離脱させる際に残留している残留静電吸着力を低減することができ、その後に行われる離脱動作を円滑に行うことができる。なお、ESCへの電圧印加により生じる静電吸着力F15は、例えば、その力F15のみでは基板の確実な保持のために必要とされる力を下回るような吸着力であり、確実な保持のために必要な力の不足分を残留静電吸着力にて補うことで、合計吸着力が確実な保持のために必要な力を上回るようにしている。
次に、このような本第2実施形態のプラズマ処理装置および方法の具体的な実施形態について図面を用いて説明する。
まず、本第2の実施形態にかかるプラズマ処理装置50の主要な構成の模式図を図13に示す。本第2実施形態のプラズマ処理装置50は、基板保持装置の構成が、上記第1実施形態のプラズマ処理装置10とは異なっている。以下、この異なる構成を主として説明する。なお、図13の本第2実施形態のプラズマ処理装置50にて、図1の上記第1実施形態のプラズマ処理装置10と同じ構成部材には同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図13に示すように、プラズマ処理装置50の基板保持装置は、載置面12aに載置された基板1を静電吸着力により保持するESC57と、このESC57に直流電圧(DC電圧)を印加するESC用電源58とを備えている。さらに基板保持装置は、ESC用電源58からESC57に印加する電圧の大きさを制御する電圧制御装置の一例である電圧制御装置59が備えられている。この電圧制御装置59は、制御装置9により他の構成部材の動作と関連付けられながら統括的に制御されている。具体的には、上部電極13および/あるいは下部電極14への電力の印加のタイミングに関連付けて、制御装置9により電圧制御装置59が制御される。このような関連付けは、予めそれぞれの構成部材の動作を行うタイミングが設定されたプログラムを用いてシーケンス的な制御として行うことができる。なお、このようなプログラムが用いられるような場合に代えて、構成部材の動作開始/停止のタイミング信号を用いて制御されるような場合であってもよい。
このような構成を有するプラズマ処理装置50を用いて、基板1に対して付与される吸着力の増加を抑制しながら、基板に対してプラズマ処理を行う方法について、図14(A)〜(C)に示すグラフを用いて説明する。図14(A)はESC57に印加される電圧の時間変化を示すグラフであり、図14(B)は上部電極13および/あるいは下部電極14に印加される電力の時間変化を示すグラフであり、図14(C)はHeガスの圧力の時間変化を示すグラフである。
まず、プラズマ処理装置50にて、載置面12aに基板1を載置する。その後、時間Taにて、ESC用電源58からESC57に対して直流電圧が印加される。このタイミングにて印加される電圧の大きさは、例えば、そのタイミングと関連付けてプログラム等にて設定されている。このようなプログラムに基づいて電圧制御装置59により印加電圧が制御されて、図14(A)に示すように、例えば2500Vの直流電圧がESC57に印加される。電圧印加によりESC57にて電圧の大きさに比例した静電吸着力が発生して、載置面12a上の基板1が吸着保持される。また、2500Vという印加電圧は、ガラス貼り付け基板1に反り(あるいはたわみ)が生じている場合に、この反りを確実に矯正できるような大きさの電圧として設定されており、ESC57にて発生される静電吸着力により基板1の反りが矯正されるとともに、基板1の吸着保持が行われる。このように初期吸着保持にて反りの矯正が行われると、時間Ta1にて印加電圧を例えば2000Vに下げて、基板1の保持のための適切な静電吸着力が保たれる。また、図14(C)に示すように、基板1と載置面12aとの間にHeガスの供給が開示され、所定の圧力Pに保たれる。
次に、時間Tbにて、基板1に対するプラズマ処理が開始される。具体的には、プラズマ処理容器11内に所定のガスが供給された状態にて、上部電極13および/あるいは下部電極14に電力W1が印加されることによりプラズマを発生させ、基板1に対するエッチング等のプラズマ処理が開始される。
このように、それぞれの電極13および14への電力の印加が開始されると、ガラス貼り付け基板1のガラス板2に電荷が蓄積されて残留静電吸着力が発生するとともに、その大きさが徐々に増加する。そのため、時間Tb1にて、電圧制御装置59によりプログラムに基づいてESC57への印加電圧が、例えば、2000Vから400Vにまで低減される。これにより、ESC57にて電圧印加によって発生される静電吸着力は低減されるが、この低減量に相当する残留静電吸着力が発生しているため、合計吸着力は、ほぼ一定に保つことができるため、載置面12aに基板1が保持された状態が保たれて、プラズマ処理が継続される。その後、さらに時間Tb2に達すると、残留静電吸着力もさらに増加するため、この増加分を実質的に相殺するように、ESC57への印加電圧を、例えば400Vから100Vにまで低減させる。これにより、残留静電吸着力の増加にも拘わらず、基板1に対して付与される合計吸着力は増加することなく、ほぼ一定の大きさに保つことができる。
その後、時間Tcにて、上部電極13および/あるいは下部電極14への電力の印加が停止され、基板1に対するプラズマ処理が完了する。それとともに、Heガスの供給を停止して、He圧力が減少する。その後、時間Tdにて、ESC用電源58によりESC57に対して、正負を反転させた電圧、例えば−3000Vの電圧の印加(正負反転大電圧の印加)を行う。これにより、残留している残留静電吸着力を大幅に減少させることができる。
その後、時間TeからTfにかけて、上部電極13および/あるいは下部電極14に比較的弱い電力W2を印加して除電プラズマを発生させる。このように除電プラズマが発生された状態にて、上記第1実施形態の突き上げピン21、31による基板1の段階的な突き上げ動作を行う、基板1が載置面12aから離間される。
本第2実施形態によれば、プラズマ処理中に生じかつ時間の経過とともに増加する残留静電吸着力の増加量に応じて、ESC57への印加電圧を減少させて、残留静電吸着力の増加を、ESC57への電圧印加により生じる静電吸着力の減少により抑制するあるいは相殺することができる。したがって、プラズマ処理中にて基板1を確実に保持するための吸着力を確保しながら、その吸着力(合計吸着力)が増加しないようにすることができるため、プラズマ処理が完了後の残留静電吸着力の残留量を低減することができる。よって、その後に基板1を載置面12aから離間させるための突き上げ動作を円滑かつ適正を行うことが可能となる。また、このような残留静電吸着力低減の効果は、ウェハ単体に比してその残留静電吸着力が大きくなる傾向にあるガラス貼り合わせ基板に対して特に有効である。
なお、ESC用電源58からESC57に印加される電圧の大きさおよび印加のタイミングは、電圧制御装置59によりプログラムに基づいてシーケンス的に制御されるが、このような電圧および印加のタイミングは、予め基板1に生じる残留静電吸着力の時間的な変化状態の測定を行い、この測定結果に基づいて決定することができる。
また、図14(A)に示すように、ESC57への印加電圧の制御が、段階的(ステップダウン的)に制御されるような場合について説明したが、このような場合に代えて、連続的(リニア的)に印加電圧の制御が行われるような場合であってもよい。
なお、以上、ESCは単極型のESCの印加電圧を説明したが、ESCが双極型の場合は、±の電圧の印加電圧となり、ESC電極が単極の場合には、プラス電圧あるいはマイナス電圧の印加となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態にかかるプラズマ処理装置101の主要な構成を示す模式図を図17に示す。本第3実施形態のプラズマ処理装置101では、プラズマ処理が施される基板として、後述するようにトレイに保持された複数枚のウェハが取り扱われる点において、上記それぞれの実施形態とは異なる構成を有している。ここでトレイに保持されて取り扱われるウェハの材質としては、例えばLED用としてサファイヤ基板、GaN/サフィヤ基板、GaN/GaN基板、GaN/SiC基板、GaN/Si基板、パワーデバイス用としてSiC基板、その他にGaP基板、ZnO基板、LiGaO2基板、βGaO3基板等がある。まず、本第3実施形態のプラズマ処理装置101の構成について、図面を用いて説明する。なお、本第3実施形態のプラズマ処理装置101は、ICP(誘導結合プラズマ)型のドライエッチング装置である。
プラズマ処理装置101は、基板(例えばウェハ)102に対してプラズマ処理を行う処理室を構成するチャンバ(真空容器あるいはプラズマ処理容器)103を備える。チャンバ103の上端開口は石英等の誘電体からなる天板104により密閉状態で閉鎖されている。天板104上にはICPコイル(上部電極)105が配設されている。ICPコイル105にはマッチング回路106を介して、高周波電源(上部電極用高周波電源)107が電気的に接続されている。天板104と対向するチャンバ103内の底部側には、バイアス電圧が印加される下部電極としての機能及び基板102の保持台としての機能を有する基板サセプタ(基板保持装置の一例である)109が配設されている。チャンバ103には、隣接するロードドック室(図示せず)と連通する開閉可能な搬入出用のゲート103aが設けられている。また、チャンバ103に設けられたエッチングガス供給口103bには、エッチングガス供給源112が接続されている。エッチングガス供給源112はMFC(マスフローコントローラ)等を備え、エッチングガス供給口103bから所望の流量でエッチングガスを供給できる。さらに、チャンバ103に設けられた排気口103cには、真空ポンプ等を備える真空排気装置113が接続されている。
本第3実施形態では、図18Aから図19Bに示す1個のトレイ115に4枚の基板102が収容され、トレイ115はゲート103aを通ってロードドック室からチャンバ103内(処理室)に搬入される。なお、このようなトレイ115の搬入は、例えば、水平方向の直進移動と水平面内での回転移動が可能な搬送アームを用いて行われる。また、チャンバ103内には、基板サセプタ109を貫通し、かつ駆動装置(突き上げ装置の一例である)117で駆動されて昇降する複数の突き上げピン118が設けられている。複数の突き上げピン118は、例えば同心円状に等間隔にて配置されており、その上端にて、トレイ115の下面を突き上げるとともに、トレイ115を突き上げた状態にて支持することが可能となっている。トレイ115の搬入時には、トレイ115を支持した搬送アームがゲート103aを通ってロードドック室からチャンバ103内に進入する。この際、図1において二点鎖線で示すように突き上げピン118は上昇位置にあり、チャンバ3内に進入した搬送アーム116から突き上げピン118の上端にトレイ115が移載される。この状態では、トレイ115は基板サセプタ109の上方に間隔をあけて位置している。続いて、突き上げピン118が図1において実線で示す降下位置に降下し、それによってトレイ115に保持されて取り扱われる基板(ウェハ)102がトレイ115とともに基板サセプタ109上に載置される。一方、プラズマ処理終了後のトレイ115の搬出時には、突き上げピン118が上昇位置まで上昇し、続いてロードドック室からチャンバ103内に進入した搬送アームにトレイ115が移載される。なお、プラズマ処理終了後の基板サセプタ109上からのトレイ115および基板102の離脱動作については後述する。また、図17に示すように、駆動装置117には、トレイ115を突き上げる際に、駆動装置117よりそれぞれの突き上げピン118に付加される突き上げ力を検出するための突き上げ力検出部の一例であるロードセル190が備えられている。
次に、図18Aから図19Bを参照して、トレイ115について説明する。トレイ115は薄板円板状のトレイ本体115aを備える。トレイ115の材質としては、例えばアルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y2O3)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)等のセラミクス材や、アルマイトで被覆したアルミニウム、表面にセラミクスを溶射したアルミニウム、樹脂材料で被覆したアルミニウム等の金属がある。Cl系プロセスの場合にはアルミナ、イットリア、炭化シリコン、窒化アルミニウム等、F系プロセスの場合には石英、水晶、イットリア、炭化シリコン、アルマイトを容射したアルミニウム等を採用することが考えられる。
トレイ本体115aには、上面115bから下面115cまで厚み方向に貫通する例えば4個の基板収容孔119A〜119Dが設けられている。基板収容孔119A〜119Dは、上面115b及び下面115cから見てトレイ本体115aの中心に対して等角度間隔で配置されている。図20A及び図20Bに最も明瞭に示すように、基板収容孔119A〜119Dの孔壁115dの下面115c側には、基板収容孔119A〜119Dの中心に向けて突出する基板支持部121が設けられている。本第3実施形態では、基板支持部121は、例えば孔壁115dの全周に設けられており、平面視で円環状である。
個々の基板収容孔119A〜119Bにはそれぞれ1枚の基板102が収容される。図20Aに示すように、基板収容孔119A〜119Bに収容された基板102は、その下面102aの外周縁部分が基板支持部121の上面121aに支持される。また、前述のように基板収容孔119A〜119Dはトレイ本体115aを厚み方向に貫通するように形成されているので、トレイ本体115aの下面115c側から見ると、基板収容孔119A〜119Dにより基板102の下面102aが露出している。
トレイ本体115aには、外周縁を部分的に切り欠いた位置決め切欠115eが設けられている。前述の搬入出用の搬送アームにトレイを載置する際に、位置決め切欠115eに搬送アームの位置決め突起が嵌め込まれる。位置決め切欠115e及び位置決め突起をロードドック室内に設けられたセンサ等で検出することにより、トレイ115の回転角度位置を検出できる。
次に、図17、図18A、図18B、図20A、及び図20Bを参照して、基板サセプタ109について説明する。まず、図17を参照すると、基板サセプタ109は、セラミクス等からなる誘電体板(誘電体部材)123、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等からなり、本第3実施形態ではペデスタル電極として機能する金属板(支持部材)124、セラミクス等からなるスペーサ板125、セラミクス等からなるガイド筒体126、及び金属製のアースシールド127を備える。基板サセプタ109の最上部を構成する誘電体板123は、金属板124の上面に固定されている。また、金属板124はスペーサ板125上に固定されている。さらに、誘電体板123と金属板124の外周をガイド筒126が覆い、その外側とスペーサ板125の外周をアースシールド127が覆っている。
図18A、図18B、図20A、及び図20Bを参照すると、誘電体板123は全体として薄い円板状であり、平面視での外形が円形である。誘電体板123の上端面は、トレイ115の下面115cを支持するトレイ支持面(トレイ支持部、あるいはトレイの配置領域)128を構成する。また、それぞれトレイ115の基板収容孔119A〜119Dと対応する短円柱状の4個の基板載置部129A〜129Dがトレイ支持面128から上向きに突出している。
基板載置部129A〜129Dの上端面は、基板102の下面102aが直接載置される基板載置面(基板配置領域R)131を構成する。また、基板載置部129A〜129Dには、基板載置面131の外周縁部から上向きに突出し、その上端面が基板102の下面102aを支持する円環状突出部132が設けられている。また、基板載置面131の円環状突出部132で囲まれた部分には、基板載置面131よりも十分径が小さい円柱状突起133が、均一に分布するように複数個設けられている。円柱状突起133と円環状突出部132の基板載置面131への突出量は同一であり、円環状突出部132のみでなく円柱状突起133の上端面も基板102の下面102aを支持する。
図20A及び図20Bを参照すると、基板載置部129A〜129Dの外径D1は、基板支持部121の先端面121bで囲まれた円形開口136の径D2よりも小さく設定されている。従って、前述の搬入時にトレイ115が誘電体板123に向けて降下すると、個々の基板載置部129A〜129Dは対応する基板収容孔119A〜119Dにトレイ本体115aの下面115c側から進入し、トレイ115の下面115cは誘電体板123のトレイ支持面(トレイの配置領域)128上に載置される。また、トレイ本体115aの下面115cからの基板支持部121の上面121aの高さH11は、トレイ支持面128からの基板載置面131の高さH12よりも低く設定している。従って、トレイ115の下面115cがトレイ支持面128上に載置された状態では、基板載置部129A〜129Dの上端の基板載置面131で押し上げられ、トレイ115の基板支持部121から浮き上がっている。換言すれば、トレイ115の基板収容孔119A〜119Dに収容され保持されて取り扱われる基板(ウェハ)102をトレイ115とともに基板サセプタ109上に搬入して、基板サセプタ109の誘電体板123のトレイ支持面128上に、トレイ115の下面115cを載置することにより、トレイ支持面128の側から上向きに突出した基板載置部129A〜129Dの上端面である基板載置面131の基板配置領域Rに、基板102をトレイ115の基板支持部121より浮き上がらせて受け渡すこととなる。なお、本第3実施形態においては、誘電体板123の上面内に、複数の基板載置部129A〜129Dが形成され、それぞれの基板載置部129A〜129Dの上面を基板載置面131、すなわち基板配置領域Rとして、それぞれの基板載置部129A〜129Dの周囲における誘電体板123の上面にトレイ115の配置領域が配置されている。
また、図20A及び図20Bに示すように、基板載置部129A〜129Dの外周面138と基板載置面131との接続部分は丸面に面取りしている。従って、基板載置部129A〜129Dの上端側では基板収容孔119A〜119Dの貫通方向から見た外径が、基板載置面131側からトレイ支持面128に向けて増大している。一方、基板載置部129A〜129Dの外周面138の下端側では基板収容孔119A〜119Dの貫通方向から見た外径が一定となっている。
また、図24に示す本第3実施形態の変形例のプラズマ処理装置201のように、外周側よりトレイ215を誘電体板123に対して位置決めするための円環状のガイドプレート267を備えても良い。ガイドプレート267はガイド筒体126の上面に固定されており、誘電体板123の4つの基板載置部129A〜129Dの周囲を取り囲んでいる。ガイドプレート267の内周面267aは下面267bから上面267cに向けて拡がるテーパ面である。また、ガイドプレート267の厚みはトレイ215の厚みとほぼ同程度に設定されている。なお、図24に示す変形例にかかるプラズマ処理装置201では、図17のプラズマ処理装置101と同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその説明を省略する。
図17を併せて参照すると、本第3実施形態の変形例では、トレイ215の外周面215fは下面215cから上面215bに向けて外径が拡大するテーパ面である。ガイドプレート267の内周面267aとトレイ215の外周面215fのテーパ度を含む寸法及び形状は、トレイ215の下面215cをトレイ支持面128上に載置する時、ガイドプレート167の内周面167aによりトレイ215の外周面215fが位置決め案内されるように設定されている。
図24において二点鎖線で示す上昇位置からトレイ215が誘電体板123に向けて降下すると、トレイ215の外周面215fがガイドプレート267の内周面267aに案内される。基板載置部129A〜129Dがトレイ215の基板収容孔119A〜119Fに挿入されることにより基板収容孔119A〜119D内の基板102が誘電体板123の基板載置面131に対して位置決めされるだけでなく、基板102を保持したトレイ215自体がガイドプレート267により誘電体板123に対して位置決めされる。その結果、誘電体部材123の基板載置面131に対する基板102の位置決め精度がさらに向上させることができる。
図17を参照すると、本第3実施形態のプラズマ処理装置101において、誘電体板123の個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131付近には単極型の静電吸着用電極(静電チャックの一例である)140が内蔵されている。これらの静電吸着用電極140は電気的に互いに絶縁されており、直流電源141と調整用の抵抗142等を備える共通の直流電圧印加機構143から静電吸着用の直流電圧が印加される。
図18A、及び図18Bを参照すると、個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131には、伝熱ガス(本第3実施形態ではヘリウム)の供給孔144が設けられている。これらの供給孔144は共通の伝熱ガス供給機構145(図17に図示する)に接続されている。伝熱ガス供給機構145は、伝熱ガス源(本第3実施形態ではヘリウムガス源)146、伝熱ガス源146から供給孔144に到る供給流路147、供給流路147の伝熱ガス源146側から順に設けられた流量計148、流量制御バルブ149、及び圧力計150を備える。また、伝熱ガス供給機構145は、供給流路147から分岐する排出流路151と、この排出流路151に設けられたカットオフバルブ152を備える。さらに、伝熱ガス供給機構145は、供給流路147の圧力計150よりも供給孔144側と排出流路151を接続するバイパス流路153を備える。個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131とその上に載置された基板102の下面102aとの間、詳細には基板102の下面102aと円環状突出部132で囲まれた閉鎖された空間に、伝熱ガス供給機構145によって伝熱ガスが供給される。伝熱ガスの供給時にはカットオフバルブ152は閉弁され、伝熱ガス供給源146から供給路147を経て供給孔144へ伝熱ガスが送られる。流量計148と圧力計150で検出される供給流路147の流量及び圧力に基づき、後述するコントローラ163が流量制御バルブ149を制御する。一方、伝熱ガスの排出時にはカットオフバルブ152が開弁され、基板102の下面102aと基板載置面131の間の伝熱ガスは、供給孔144、供給流路147、及び排出流路151を経て排気口154から排気される。
金属板(下部電極)124には、バイアス電圧としての高周波を印加する高周波印加機構156が電気的に接続されている。高周波印加機構156は、高周波電源(下部電極用高周波電源)157とマッチング用の可変容量コンデンサ158とを備える。
また、金属板124を冷却する冷却機構159が設けられている。冷却機構159は金属板124内に形成された冷媒流路160と、温調された冷媒を冷媒流路160中で循環させる冷媒循環装置161とを備える。
図17にのみ模式的に示すコントローラ(制御装置)163は、流量計148及び圧力計150を含む種々のセンサや操作入力に基づいて、高周波電源107、エッチングガス供給源112、搬送アーム、真空排気装置113、駆動装置117、直流電圧印加機構143、伝熱ガス供給機構145、高周波電圧印加機構156、及び冷却機構159を含むプラズマ処理装置101全体の動作を制御する。また、コントローラ163は、駆動装置117による突き上げピン118のトレイ115に対する突き上げ動作により生じる突き上げ力を、ロードセル190を通じて検出する突き上げ力の検出動作を制御することが可能となっている。さらに、コントローラ163は、駆動装置117を制御して、突き上げピン118を所望の駆動量だけ駆動させる、すなわち所望の高さまで突き上げピン118を上昇させることができる。
次に、本第3実施形態のプラズマ処理装置101において、トレイ115に保持されたそれぞれの基板102に対して、プラズマ処理を行う方法について説明する。
まず、トレイ115の基板収容孔119A〜119Dにそれぞれ基板102が収容される。トレイ115の基板支持部121aで支持された基板102は、トレイ本体115aの下面側から見ると基板収容孔119A〜119Dによりトレイ本体115aの下面115cから露出している。
次に、基板収容孔119A〜119Dにそれぞれ基板102が収容されたトレイ115が搬送アームで支持され、ロードドック室からゲート103aを通ってチャンバ103内に搬入される。図17において二点鎖線で示すように、トレイ115は基板サセプタ109の上方に間隔をあけて配置される。
駆動装置107によって駆動された突き上げピン118が上昇し、搬送アームから突き上げピン118の上端にトレイ115が移載される。トレイ115の移載後、搬送アームはロードロック室に待避し、ゲート103aが閉鎖される。
それぞれの上端にてトレイ115を支持した状態の突き上げピン118は、図17において二点鎖線で示す上昇位置から基板サセプタ109に向けて降下する。図20A及び図20Bを参照すると、トレイ115は下面115cが基板サセプタ109の誘電体板123のトレイ支持面128まで降下し、トレイ115は誘電体板123のトレイ支持面128によって支持される。トレイ115がトレイ支持面128に向けて降下する際に、誘電体板123のトレイ支持面128の側から上向きに突出した基板載置部129A〜129Dがトレイ115の対応する基板収容孔119A〜119D内にトレイ115の下面115c側から進入する。トレイ115の下面115cがトレイ支持面128に近付くのに伴い、基板載置部129A〜129Dの先端の基板載置面131は基板収容孔119A〜119D内をトレイ115の上面115bに向かって進む。図20Bに示すように、トレイ115の下面115cが誘電体板123のトレイ支持面128に載置されると、個々の基板収容孔119A〜119D内の基板102は基板載置部129A〜129Dによって基板支持部121の上面121aから持ち上げられる。詳細には、基板102はその下面102aが基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に載置され、トレイ115の基板支持部121の上面121aに対して間隔をあけて上方に配置される。
このようにトレイ115の基板収容孔119A〜119D内に基板載置部129A〜129Dが進入することにより、トレイ支持面128の側から上向きに突出した基板載置部129A〜129Dの上端面である基板載置面131に、トレイ115の基板支持部121より基板102を浮き上がらせて受け渡され、基板102は基板載置面131に直接載置される。従って、トレイ115に収容された4枚の基板102は、いずれも高い位置決め精度で基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に載置される。また、前述のように基板載置部129A〜129Dの外周面138と基板載置面131との接続部分は丸面に面取りしているので、仮に基板収容孔119A〜119Dと基板載置部129A〜129Dの平面視での位置に微細なずれが存在している場合でも、基板載置部129A〜129Dの面取りされた部分が基板支持部121の先端面121bと接触する。その結果、基板載置部129A〜129Dが基板収容孔119A〜119D内に円滑かつ確実に挿入される。この点でも基板102は基板載置面131に対して高い位置決め精度で載置される。
次に、誘電体板123のトレイ支持面128の側から上向きに突出した複数の基板載置部129A〜129Dにそれぞれ内蔵された静電吸着用電極140に対して直流電圧印加機構143から直流電圧が印加されて静電吸着力が発生され、個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131の基板配置領域Rに受け渡された基板102がそれぞれ静電吸着されて保持される。基板102の下面102aはトレイ115を介することなく基板載置面131上に直接載置されている。従って、基板102は基板載置面131に対して高い密着度で保持される。
続いて、個々の基板載置部129A〜129Dの円環状突出部132と基板102の下面102aで囲まれた空間に、供給孔144を通って伝熱ガス供給装置145から伝熱ガスが供給され、この空間にHeガス等の伝熱ガスが充填される。
その後、エッチングガス供給源112からチャンバ103内にエッチングガスが供給され、真空排気装置113によりチャンバ103内は所定圧力に維持される。続いて、高周波電源107からICPコイル105に高周波電圧を印加すると共に、高周波印加機構156により基板サセプタ109の金属板124にバイアス電圧を印加し、チャンバ103内にプラズマを発生させる。このプラズマにより基板102がエッチングされる。本第3実施形態の例では、1枚のトレイ115で4枚の基板102を基板サセプタ109上に載置できるので、バッチ処理が可能である。
エッチング中は、冷媒循環装置161によって冷媒流路160中で冷媒を循環させて金属板124を冷却し、それによって誘電体板123及び誘電体板123の基板載置面131に保持された基板102を冷却する。上述のように、基板102はその下面102aがトレイ115を介することなく基板載置面131に直接載置され、高い密着度で保持されている。従って、円環状突出部132と基板102の下面102aで囲まれた伝熱ガスが充填されている空間の密閉度が高く、Heガスの伝熱ガスを介した基板102と基板載置面131との間の熱伝導性が良好となる。その結果、個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に保持された基板102を高い冷却効率で冷却できると共に、基板102の温度を高精度で制御できる。また、個々の基板102毎に基板載置部129A〜129Dの円環状突出部132と下面102aで囲まれた空間に伝熱ガスが充填される。換言すれば、伝熱ガスが充填される空間は個々の基板102毎に異なる。この点でも個々の基板102と誘電体板123の基板載置面131との熱伝導性が良好であり、高い冷却効率と高精度の温度制御を実現できる。
また、上述したように、それぞれの基板102は突出して形成されたそれぞれの基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に直接載置され、かつ静電吸着されるので、基板載置面131に対する密着度が高い。従って、基板102の上面の外周縁部分を誘電体板123に対して機械的に加熱するためのクランプリング等の部材は不要である。換言すれば、基板102の上面には、その中央部分だけでなく外周縁付近にもプラズマの状態が不安定化する原因となる部材が存在しない。従って、外周縁付近を含む基板102の表面の全領域で均一なプラズマ処理を実現できる。
また、トレイ115に保持されて取り扱われる基板(ウェハ)102としては、例えば青色や白色のLEDやLDは、サファイヤ基板上にGaNをエピ成長させた基板(GaN/サフィヤ基板)、GaN/GaN基板、GaN/SiC基板、GaN/Si基板やサファイヤ基板等が用いられる。これらの基板は2インチから3インチ程度の小さいサイズが主流であり、特にGaN/サファイヤ基板は、基板102に絶縁体であるサファイヤ基板を用いるため、基板102を静電吸着保持するために静電吸着力の強い静電吸着用電極(ESC電極)140が必要である。
GaN/サファイヤ基板を確実に静電吸着(ESC吸着)するとともに、基板102の下面102aの広い範囲と基板載置部129A〜129Dの基板載置面131との間に基板102を冷却する為の伝熱ガスであるHeガスを充填して、基板102を高効率で冷却するためには、低抵抗型(体積抵抗率(25℃)1010〜1011Ω・cm)のモノポーラ(単極型)の静電吸着用電極140を用いて、高い電圧で印加し、微弱な数十〜数百μA程度の漏れ電流を生じさせて、より強いクーロン力および/あるいはジョンソンテーベック力で基板を静電吸着することが好ましい。具体的には、次のように静電吸着を行うことが好ましい。
まず、基板載置部129A〜129Dの円環状突出部132と基板102の下面102aで囲まれた空間に、基板102を冷却する為の伝熱ガスであるHeガスを充填する。基板載置面131の円環状突出部132で囲まれた部分には、基板載置面131よりも十分径が小さい円柱状突起133が、均一に分布するように複数個設けられている。基板載置面131における円柱状突起133と円環状突出部132の突出量は実質的に同一であり、円環状突出部132のみでなく円柱状突起133の上端面も基板102の下面102aを支持する。基板102の下面102aに対する基板載置部129A〜129Dのそれぞれの接触面積の割合は、5〜30%、好ましくは10〜20%である。基板102と基板載置面131との接触面積の割合が大きい程、基板102の静電吸着力が大きいが、伝熱ガスを充填する空間の面積が狭くなり、基板102の冷却能力が低下する。
また、接触面積の割合を小さくして、静電吸着力を大きくするためには、局所的に流れる漏れ電流を大きくする方が好ましく、基板102の下面102aへの基板載置面131の接触部の基板載置面131の円環状突出部132で囲まれた部分には、接触する面積の小さい島状の円柱状突起133が複数あるのが望ましい。また、特に、絶縁抵抗値が高いようなサファイヤやガラス等の基板を静電吸着する場合は、低抵抗値のセラミックス材で構成された基板載置部内に、単極型の静電吸着電極を用いて、高い電圧を印加することが望ましい。そうすると、低抵抗値のセラミック材で構成された基板載置部の内部に電荷の分極が起こり、基板載置面の表面と基板との間に強いクーロン力を働かせて静電吸着保持することができる。以上のことから基板載置面131は、基板102の下面102aと接触する接触面積の割合を10〜20%になるように構成した円環状突出部132で囲まれた部分の空間内に設けられた接触する面積の小さい島状の複数の円柱状突起133とするが好ましい。基板載置部129A〜129Dに内蔵された静電吸着用電極140と基板102の下面102aを載置し支持する基板載置面131との距離は0.2mm〜1.0mm、好ましくは0.3〜0.8mmである。静電吸着力を強くするためには、距離を短くする方がよいが、絶縁耐圧が悪くなる。より強い静電吸着力とするために印加電圧を最大3.0KVとして、絶縁耐圧26.0KV程度を確保するためには、静電吸着用電極140と基板102の下面102aを載置し支持する基板載置面131との距離は0.3〜0.8mmするのが好ましい。なお、基板102の下面102aと基板載置面131との間に伝熱ガスを充填する空間を形成するために、ウェハ状の基板に対応する場合は基板載置面131の形状を円環状の円環状突出部132としたが、四角状の基板に対応する場合は、四角状あるいは多角状の突出部としてもよい。上述のような場合にあっては、残留吸着力もより強いものになってしまうが、後述する基板載置面131の基板配置領域Rからの基板102の離脱動作を行うことで、GaN/サファイヤ基板の離脱を行うことができる。
基板載置面131に対する基板102の位置決め精度を確保しつつ、エッチング処理中にプラズマが基板102の下面102a側に回り込むのを防止するためには、基板102の外周縁とトレイ115の基板収容孔119A〜119Dの孔壁115dとの間の隙間δ1が0.1〜0.2mm程度、基板102の下面102aとトレイ115の基板支持部121の上面121aとの間の隙間δ2が0.2〜0.3mm程度、基板載置部129A〜129Dの側壁と基板支持部121の先端との隙間δ3が0.5mm程度であることが好ましい。
エッチング終了後、高周波電源107からICPコイル105への高周波電圧の印加と、高周波印加機構156から金属板124へのバイアス電圧の印加を停止する。続いて、真空排気装置113によりエッチングガスをチャンバ103内から排気する。また、伝熱ガス供給機構145により基板載置面131と基板102の下面102aから伝熱ガスを排気する。さらに、直流電圧印加機構143から静電吸着用電極140への直流電圧の印加を停止して基板102の静電吸着を解除する。その後、後述するように、それぞれの突き上げピン118によるトレイ115の突き上げ動作を行うことにより、それぞれの突出した基板載置面131の基板配置領域Rからの基板102の離脱動作を行う。この離脱動作の詳細については、後述する。
その後、駆動装置117により上昇位置にまで上昇されたそれぞれの突き上げピン118の上端で、それぞれの基板102を保持するトレイ115が支持された状態とされる。その後、ゲート103aを通ってロードドック室からチャンバ103内に進入した搬送アームに、トレイ115が移載される。トレイ115は搬送アームによってロードドック室へ搬出される。これにより、トレイ115により保持されたそれぞれの基板102に対するプラズマ処理が完了する。
次に、このようにトレイ115に保持された4枚の基板102に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置101において、プラズマ処理が完了したそれぞれの基板102を基板載置面131から離脱させる動作について説明する。この説明にあたって、図21A〜図21Eにプラズマ処理装置101の動作の模式説明図を示し、図22に離脱動作の手順のフローチャートを示し、図23に突き上げピン118の突き上げ力(反力)および突き上げストロークの時間的な変化を表すグラフを示す。なお、図21A〜図21Eに示す模式説明図では、上述の変形例にかかるプラズマ処理装置201にて用いられるガイドプレート267が、プラズマ処理装置101にても用いられる場合を例として説明する。
まず、直流電圧印加機構143から静電吸着用電極140への直流電圧の印加を停止して、静電吸着力による基板102の静電吸着を停止するとともに、チャンバ103の内部空間にて、それぞれの基板102と基板載置面131との間に存在する残留静電吸着力を除去するための比較的弱いプラズマである除電プラズマを発生させる(図22のフローチャートのステップS11)。図21Aに示すように、残留静電吸着力によりそれぞれの基板102は、基板載置面131の基板配置領域Rに保持された状態であるため、このような状態においては、発生された除電プラズマは、基板102と基板載置面131との間に進入することができない。
次に、図23(A)に示す時間区分T0〜T1にて、駆動装置117によりそれぞれの突き上げピン118を一体的に上昇させて、トレイ支持面128よりも上方に突出させる(ステップS12)。その結果、図21Bに示すように、トレイ115がそれぞれの突き上げピン118により突き上げられた状態とされ、トレイ115が、トレイ支持面128より持ち上げられた状態とされる。また、この状態において、それぞれの基板載置面131に保持された状態の基板102の下面の外周縁部に、トレイ115の基板支持部121の上面121aが接触した状態となる。さらに、駆動装置117によりそれぞれの突き上げピン118が一体的に上昇されると、図21Cに示すように、トレイ115全体がそれぞれの突き上げピン118によりさらに持ち上げられるとともに、それぞれの基板102の外周縁部が、トレイ115のそれぞれの基板支持部121により持ち上げられる。その結果、それぞれの基板載置面131の基板配置領域Rの外側領域R1から基板102が部分的に離脱される。
ここで、図23(A)の突き上げ力の変化を示すグラフと、図23(B)の突き上げピン118のストロークの変化を示すグラフとに示すように、駆動装置117によるそれぞれの突き上げピン118の突き上げ(上昇)動作は、ロードセル190にて検出される突き上げ力を参照しながら行われる。具体的には、基板102に対して間接的に付与される突き上げ力が、基板102に対して割れ等の損傷や跳ね等の位置ずれが生じない限度荷重であるF2を超えることなく、かつ2回目の突き上げ動作を開始するための基準荷重である検知閾値F1を超える荷重範囲に入るように、突き上げピン118の突き上げストロークが調整されて、突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの突き上げピン118の先端(上端)は、ストローク(あるいは高さ)H1に位置された状態とされる。
このようにトレイ115全体がトレイ支持面128より上方に持ち上げられ、かつ、それぞれの基板102の外周縁部が突出した基板載置面131より離脱された状態とされることにより、チャンバ103の内部空間に発生されている除電プラズマPが、トレイ115とトレイ支持面128との間に進入し、さらに進入した除電プラズマが、それぞれの基板102と基板載置面131との間に進入することができる。その結果、時間区分T1〜T2にて、除電プラズマPと接触した表面において、それぞれの基板102と基板載置面131との間に存在する残留静電吸着力が低減されて、基板載置面131からの基板102の離脱(剥離)が、基板102の外側から内側に向けて拡がるように促進される。
また、この時間区分T1〜T2では、ロードセル190による突き上げ力の検出が継続して行われ、検出された突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したかどうかの検出が行われる(ステップS13)。
その後、時間T2にて、ロードセル190によって突き上げピン118による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したことが検出されると、基板102が基板載置面131より完全に離脱されていない場合(ステップS14)には、駆動装置117による突き上げ動作が再び開始される(ステップS12)。具体的には、例えば、図23(A)に示す時間区分T2〜T3にて、駆動装置によりそれぞれの突き上げピン118を一体的にさらに上昇させる。この突き上げ動作により、それぞれの突き上げピン118はその先端がストロークH2に位置された状態とされる。
このように、さらに突き上げピン118を上昇させて突き上げ動作を行うことにより、図21Dに示すように、それぞれの突き上げピン118によりトレイ115全体をさらに持ち上げて、それぞれの基板102の外周縁部を持ち上げることができ、それぞれの基板載置面131の基板配置領域Rの内側領域R2にて基板102を突出した基板載置面131から完全にあるいは部分的に離脱させることができる。部分的に離脱されている場合には、トレイ115とトレイ支持面128との間の隙間に進入した除電プラズマPを、基板102と基板載置面131との間にさらに進入させて、残留静電吸着力を低減させることができ、基板102の離脱がさらに促進される。
この2回目の突き上げ動作により、基板102が基板載置面131より完全に離脱されていない場合には、突き上げピン118による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T4〜T5にて、再び、突き上げピン118による突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの突き上げピン118はその先端がストロークH3に位置された状態とされる。
この3回目の突き上げ動作により、それぞれの基板102が基板載置面131よりまだ完全に離脱されていない場合には、例えば、突き上げピン118の突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T6以降にて、それぞれの突き上げピン118による突き上げ動作を行う。一方、図21Eに示すように、それぞれの基板載置面131より基板102が完全に離脱されていることが確認されると(ステップS14)、それぞれの基板102の基板載置面131からの離脱のための突き上げ動作が完了する。なお、それぞれの基板載置面131より基板102が完全に離脱されていることの確認は、例えば、ロードセル190にて検出される突き上げ力がそれぞれの基板102およびトレイ115の合計自重に相当する荷重となっていること、基板載置面131から基板102が離脱したことを示す離脱閾値F3以下になっていることを検出すること、および、突き上げピン118のストロークが所定のストロークに達していることのいずれか1つあるいは複数の組み合わせなどにより行うことができる。
このように、トレイ115の保持された複数の基板102を、それぞれの基板載置面131から離脱させる場合に、同心円状に配置された複数の突き上げピン118を用いて、トレイ115全体をトレイ支持面128から持ち上げて、この持ち上げられたトレイ115のそれぞれの基板支持部121により、基板102の外周縁部を持ち上げることができる。すなわち、トレイ115に保持されている比較的その径が小さな複数の基板102を、それぞれの突き上げピン118により直接的に突き上げることなく、トレイ115を介して間接的に突き上げる(持ち上げる)ことができる。したがって、装置構成を複雑化することなく、複数の基板102に対する基板載置面131よりの離脱動作を行うことができる。また、それぞれの突き上げピン118によるトレイ115の突き上げ動作は、突き上げ力を検知しながら突き上げピン118の上昇動作を繰り返すというステップ動作となるため、残留静電吸着力が高い場合であっても、それぞれの基板102に損傷や位置ずれを生じさせることなく、基板載置面131からの安定した離脱を行うことができる。
さらに、このようなトレイ115を介した間接的な突き上げ動作を行う際に、除電プラズマを併用することにより、除電プラズマを持ち上げられたトレイ115とトレイ支持面128との間に進入させて、この進入した除電プラズマを基板102の外側から内側に向けて徐々に進入させることができ、それぞれの基板102の離脱を促進させることができる。
また、本第3実施形態のプラズマ処理装置101においても、上記第2実施形態のプラズマ処理装置50と同様に、それぞれの基板102に対して付与される静電吸着力の増加を抑制しながら、それぞれの基板102に対するプラズマ処理を行うことができる。すなわち、プラズマ処理中において、それぞれの基板102が基板載置面131に静電吸着力により確実に吸着保持された後は、例えば、直流電圧印加機構143から静電吸着用電極140に対して印加される電圧を段階的に下げていくことで、それぞれの基板102を離脱させる際に存在している残留静電吸着力を低減させることができる。なお、本第3実施形態のプラズマ処理装置101は、このような静電吸着用電極140への印加電圧の段階的な制御が実施される場合のみに限られるものではない。すなわち、本第3実施形態のプラズマ処理装置101において、静電吸着用電極140への印加電圧の段階的な制御が行われることなく、それぞれの突き上げピン118の段階的な上昇による基板の離脱動作のみが行われるような場合であっても、それぞれの基板102に対する損傷等の発生を抑制しながら、基板の離脱動作を行うことができる。
なお、上述の説明では、それぞれの突き上げピン118が、トレイ115の外周縁部を均等に突き上げることができるように同心円状に配置されている場合を例として説明したが、突き上げピンの配置としては、様々な形態を採用することが可能である。特に、本第3実施形態では、トレイ支持面128に静電吸着力により吸着保持されない(吸着保持され難い)材料にて形成されたトレイ115を突き上げることで、間接的にそれぞれの基板102を持ち上げるような離脱方法が採用されている。また、トレイ115自体は、基板102に比してたわみが生じにくい材料および形状にて形成されている。そのため、トレイ115に対して略均一な突き上げ力が付与されるようにそれぞれの突き上げピン118が配置されていれば良く、例えば、トレイ115の中央付近を突き上げるようにそれぞれの突き上げピン118を配置することもできる。また、トレイ115の径が比較的大きくなるような場合(例えば、300mm以上の径を有する場合)にあっては、安定した突き上げ動作を行うために、外周縁部側を突き上げる突き上げピンに加えて、その内側領域を突き上げる突き上げピンを配置しても良い。
また、上述の説明では除電プラズマの発生タイミングは、基板102あるいはトレイ115の突き上げ動作を開始する前に行うとしたが、載置面からの基板102の離脱に悪影響が無ければ、突き上げ動作を開始してから除電プラズマを発生されても良い。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態にかかるプラズマ処理装置について説明する。本第4実施形態のプラズマ処理装置の構成を説明するに先立って、静電吸着によりウェハの保持を行う従来のウェハ保持装置の構成について説明する。
ウェハ、例えば半導体ウェハ(Si、化合物等により形成)に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置では、処理容器内に設けられたウェハ保持装置の載置面にウェハを載置して保持した状態にて、ウェハに対するエッチング等のプラズマ処理が行われる。このようなウェハ保持装置では、一般的にESC(Electrostatic Chuck)と呼ばれる静電チャックが載置面内に内蔵されており、静電チャックによって発生されるクーロン力および/あるいはジョンソンラーベック力による静電吸着力を用いたウェハの保持が行われている。
このような従来のウェハ保持装置にて用いられているESCの構造について、図33に示す模式説明図を用いて説明する。
図33に示すように、ウェハ保持装置の載置面内にはESC501が内蔵されている。ESC501は、平面的に一方の側から他方の側に延在する複数の帯状の電極により大略くし形状に形成された第1の電極502と、他方の側から一方の側に延在する複数の帯状の電極により大略くし形状に形成された第2の電極503とを備えている。また、ESC501において、一方の帯状の電極の端部が、他方の帯状の電極の間に配置されるように、第1および第2の電極502、503が互いに接触することなく組み合わされた状態で配置されている。
このような従来のESC501において、載置面上に載置されたウェハの静電吸着による保持を行う際には、例えば、第1の電極502に正電圧を印加し、第2の電極503に負電圧を印加することにより静電吸着力を発生させて、発生された静電吸着力により載置面へのウェハの保持が行われる。また、このような従来のESCでは、載置面における静電吸着力を均一化させるための様々な提案がなされている(例えば、特許第3527823号公報参照。)。
しかしながら、このような従来のウェハ保持装置では、ESCによる静電吸着を停止した後であっても、載置面とウェハに蓄積された電荷により静電吸着力(以降、「残留静電吸着力」とする。)が残留する。そのため、残留静電吸着力により、載置面からウェハを離脱することが阻害されるという問題がある。
特に、ウェハが単なる半導体ウェハ単体ではなく、ガラス板貼り付け構造を有する基板であるような場合には、ウェハ単体が取り扱われるような場合と比して、その残留静電吸着力は大きくなる。そのため、ガラス板貼り付け構造を有する基板が取り扱われる場合には、載置面からの基板の離脱がさらに困難となる。
また、載置面からのウェハや基板の離脱動作としては、ESCによる静電吸着を解除した後、例えば、載置面から複数の突き上げピンを一体的に上昇させることにより行われる方法が多く採用されている。しかしながら、大きな残留静電吸着力が残存している状態で、このような突き上げピンによる基板等の突き上げ動作が行われると、基板において割れ等の損傷が生じる場合や、基板が載置面から離脱される時に、基板が飛び跳ねること等による位置ずれが生じる場合がある。
本第4実施形態のプラズマ処理装置は、ESCに採用されている構造的および機能的特徴によって、このような問題を解決するものである。
本第4実施形態にかかるプラズマ処理装置310の主要な構成を示す模式図を図25に示す。本実施形態のプラズマ処理装置310には、絶縁材料であるガラス板302上に、ウェハ、例えば半導体ウェハの一例であるシリコンウェハ(Siおよびその化合物等により形成された半導体ウェハ)303が貼付材304を介して貼り付けられたガラス貼り付け構造を有するガラス貼り付け基板301(以降、「基板301」とする。)が、プラズマ処理の対象物として取り扱われる。ここで、シリコンウェハ303としては、例えば25〜400μm、特に50〜200μmの厚さを有するものが用いられる。ガラス基板302としては、例えば300〜500μm、特に400μm程度の厚さを有するものが用いられる。また、貼付材304としては、例えばレジストや粘着剤あるいは粘着シートが用いられる。このような基板301のシリコンウェハ303に対して、所定のプラズマ処理を施すことにより、イメージセンサ等のデバイスが製造される。また、基板301は、例えば直径200mmの円盤形状を有している。
図25に示すように、プラズマ処理装置310は、その内部空間(プラズマ処理空間)にて所定のプラズマ処理が行われるプラズマ処理容器311と、プラズマ処理容器311内に設置され、基板301のガラス板302側が載置される載置面305aを有する載置部材の一例である載置台305を備え、載置面305aに載置された基板301に対して、静電吸着による保持を行う基板保持装置312とを備えている。さらに、図25に示すように、プラズマ処理容器311の内側上部には上部電極313が設置され、基板保持装置312の内部には下部電極314が設置されている。上部電極313には、上部電極用高周波電源315が接続されており、下部電極314には下部電極用高周波電源316が接続されている。さらに、基板保持装置312の載置台305の内部、すなわち載置面305aの内部には、静電吸着を行うための静電チャックの一例であるESC330が内蔵されており、ESC330にはESC用電源(静電チャック用電源の一例である。)が接続されている。なお、ESC330およびESC用電源の詳細については後述する。
このような構成のプラズマ処理装置310では、基板保持装置312の載置面305aに基板301を載置させて、ESC330の静電吸着により基板301の保持を行った後、プラズマ処理容器311の内部を所定の圧力に保持しながら所定のプラズマ処理用ガスを供給して充填する。その後、上部電極用高周波電源315より上部電極313への電圧印加を行うとともに、下部電極用高周波電源316より下部電極314への電圧印加を行って、プラズマを発生させ、基板301のシリコンウェハ303に対するプラズマ処理を行う。プラズマ処理が完了すると、それぞれの高周波電源315、316による電圧印加を停止し、プラズマ処理容器311内のガスを排気して、基板301に対するプラズマ処理が完了する。それとともに、ESC用電源によるESC330への電力供給が停止され、ESC330による基板301に対する静電吸着が解除される。
次に、プラズマ処理装置310において、載置面305aと基板301との間に存在する残留静電吸着力に抗して、プラズマ処理が完了した基板301を載置面305aから離脱させるために備えられている構成について説明する。ここで、基板保持装置312の載置面305aの模式平面図を図26に示す。
図25および図26に示すように、基板保持装置312には、載置面305aの基板配置領域Rの外縁近傍の領域に配置された複数の突き上げピン321と、これらの突き上げピン321を載置面305aより一体的に昇降させて載置面305aより突出させるあるいは載置面305a内に格納させるように動作させる昇降装置322とを有する突き上げ装置320が備えられている。図26に示すように、4本の突き上げピン321が、載置面305aの基板配置領域Rの中心をその中心とする一つの円である同心円C1の円周上に、例えば等間隔にて配置されている。なお、それぞれの突き上げピン321が配置される同心円C1は、基板配置領域R内でかつ載置面305aに載置される基板301の縁部およびその近傍の領域、あるいは載置面305aに載置される基板301の半径の1/2以上の基板301の外周側に位置する領域に位置される。
また、図25に示す本実施形態のプラズマ処理装置310では、図26に示すように、載置面305a全体が基板301に対する基板配置領域Rとなっているが、このような場合に代えて、載置面の一部が基板配置領域として設定されるような場合であってもよく、あるいは載置面305aより基板配置領域Rが大きく設定されているような場合であってもよい。載置面305aより基板配置領域Rが小さい場合には、基板301の周縁部におけるプロセス特性(例えば、エッチングレート等)の均一性が向上するが、載置面305aに備えたESC330の電極が基板配置領域Rよりも大きい場合には、ESC330の電極がプラズマにさらされ、その寿命が短くなる場合がある。これに対して、載置面305aより基板配置領域Rが大きい場合には、載置面305aに備えたESC330の電極が基板301の周縁よりも小さくなるため、プラズマにさらされるという問題は生じないが、基板301の周縁部におけるプロセス特性が不均一となる場合がある。
また、図25に示すように、プラズマ処理装置310には、昇降装置322による突き上げピン321の昇降動作、上部電源用高周波電源315による電圧印加動作、下部電源用高周波電源316による電圧印加動作、およびESC用電源によるESC330への電圧印加動作を、互いの動作を関連づけながら制御する制御装置309が備えられている。さらに制御装置309は、昇降装置322を通じて、突き上げピン321の載置面305aよりの突き上げ量(ストローク)を検出することが可能となっている。
次に、プラズマ処理装置310において、静電吸着力により基板301を載置面305aに確実に保持しながら、載置面305aと基板301との間に存在する残留静電吸着力を低減させることを可能とするESC330の構成について説明する。ESC330の電極の配置構成の模式平面図を図27に示す。
図27に示すように、ESC330は、載置台305の載置面305aの内部(下方)に配置された複数の双極電極を備えている。具体的には、正電圧が印加される第1正極部331aと、負電圧が印加される第1負極部331bとが一対に構成された第1双極電極331と、正電圧が印加される第2正極部332aと、負電圧が印加される第2負極部332bとが一対に構成された第2双極電極332とが、ESC330の電極として備えられている。第1正極部331aは、帯状の電極が環状に形成された構成を有しており、その環状の中心が載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの中心mと一致するように、載置面305aの外縁近傍に配置されている。第1負極部331bも、第1正極部331aと同様に、帯状の電極が環状に形成された構成を有しており、その環状の中心が中心mと一致するように、第1正極部331aの内縁から所定の距離だけ離間した状態で、第1正極部331aよりも内側に配置されている。さらに、帯状の電極が環状に形成された構成を有する第2正極部332aが、その中心を中心mと一致させるとともに、第1負極部331bの内縁から所定の距離だけ離間した状態で、第1負極部331bよりも内側に配置されている。また、さらに、第2正極部332aよりも内側には、帯状の電極が環状あるいは円状に形成された構成を有する第2負極部332bが、その中心を中心mと一致させるとともに、第2正極部332aの内縁から所定の距離だけ離間した状態で配置されている。各々の帯状の電極(第1正極部331a等)の帯状の幅は、個々の電極においてそれぞれに一定の最適な幅に形成されている。ただし、このような場合に代えて全ての帯状の電極において帯状の幅が同じ寸法にて形成されているような場合であってもよい。同様に、隣接する帯状の電極間の所定の離間距離は、個々の電極間において最適な寸法に設定されている。なお、第1双極電極331および第2双極電極332が環状に形成されるような場合に代えて、例えば、帯状の部分円弧状に形成された電極を複数個、環状に配列させて形成されるような場合であっても良い。
ここで、図25に示すESC330の構成を、詳細に示す模式図を図34に示す。図34に示すように、第1正極部331aおよび第1負極部331bにより構成された第1双極電極331には、第1双極電極用電源333が電気的に接続されている。具体的には、第1正極部331aの正電圧を印加して、第1負極部331bに負電圧を印加可能なように、第1双極電極用電源333が接続されている。同様に、第2正極部332aおよび第2負極部332bにより構成された第2双極電極332には、第2双極電極用電源334が電気的に接続されている。具体的には、第2正極部332aの正電圧を印加して、第2負極部332bに負電圧を印加可能なように、第2双極電極用電源334が接続されている。なお、本実施形態では、第1双極電極用電源333および第2双極電極用電源334が、ESC用電源、すなわち静電吸着用電源の一例を構成している。
ここで双極電極に電圧を印加させることにより、静電吸着力を発生させて、基板301を保持する原理について、図28の模式図を用いて説明する。図28に示すように、第1双極電極331において、第1正極部331aに正電圧を印加するとともに、第1負極部331bに負電圧を印加すると、載置面305a上に載置された基板301の表裏面において誘電分極が生じる。これより、載置面305aに面する基板301の上面側の面である基板301の表面において、第1正極部331aと対向する基板301の表面が正電荷に帯電し、第1負極部331bと対向する基板301の表面が負電荷に帯電され、その反対側の面である基板301の裏面では、逆の電荷に帯電された状態となる。このように基板301において誘電分極が生じることにより、第1正極部331aと第1負極部331bとの間には、ジョンソンベッカー力Fと称されるクーロン力Fが生じ、このクーロン力Fにより基板301が載置面305aに対して保持された状態となる。第2双極電極332においても電圧を印加することにより、同様にジョンソンベッカー力Fが生じて、基板301が載置面305aに保持される。
また、図25に示すように、プラズマ処理装置310には、第1双極電極用電源333から第1双極電極331に印加される電圧の大きさおよびタイミングを制御するとともに、第2双極電極用電源334から第2双極電極332に印加される電圧の大きさおよびタイミングを制御するESC用の電圧制御装置308が備えられている。この電圧制御装置308は、第1双極電極用電源333による印加電圧の大きさおよびタイミングと、第2双極電極用電源334による印加電圧の大きさおよびタイミングとを互いに異ならせるように制御することが可能となっている。なお、電圧制御装置308は、他の構成装置と同様に制御装置309により統括的に制御される。
次に、このような構成のプラズマ処理装置310にて、基板保持装置312の載置面305aに載置された基板301に対して、プラズマ処理を行い、その後、載置面305aから離脱させる方法について説明する。この説明にあたって、具体的な手順のフローチャートを図29に示し、第1双極電極331および第2双極電極332への印加電圧の大きさと印加のタイミングを示すグラフを図30(A)および(B)に示す。また、プラズマ処理を実施するために上部電極313および/または下部電極314への電力印加のタイミングを示すグラフを図30(C)に示し、さらに、基板外縁付近領域および基板中央付近領域の静電吸着力の大きさの変化を示すグラフを図30(D)および(E)に示す。なお、以降に説明するそれぞれの手順における動作は、プラズマ処理装置310が備えるそれぞれの構成装置が、制御装置309により制御されることにより行われる。
まず、図29のフローチャートのステップS21において、プラズマ処理装置310のプラズマ処理容器311内に基板301を搬入して、基板301を載置面305a上に載置する。その後、電圧制御装置308によりESC330用の第1双極電極用電源333および第2双極電極用電源334が制御されて、第1双極電極用電源333により第1双極電極331に電圧が印加されるとともに、第2双極電極用電源334により第2双極電極332に電圧が印加される(ステップS22)。
具体的には、図30のグラフに示すように、時間T1において電圧印加が開始され、載置面305aにおいて外周側に位置される第1双極電極331には、例えば2500V(±2500V)の電圧が印加されるとともに、載置面305aにおいて内周側に位置される第2双極電極332には、例えば2500V(±2500V)の電圧が印加される。この印加される2500Vという電圧は、後述するプラズマ処理を行っている間に印加され続ける電圧よりも比較的大きな電圧として印加される。この電圧の印加により、載置面305aにおいて静電吸着力が生じ、例えば単に載置された状態では、基板301に反りやたわみが生じているような場合には、静電吸着力により反りやたわみが矯正された状態で、基板301が載置面305aに静電吸着保持される(ステップS23)。
その後、図30(C)のグラフに示すように、上部電極313および下部電極314への電圧印加が、時間T2において開始されて、載置面305aに保持された状態の基板301に対するプラズマ処理が行われる(ステップS24)。
ガラス板302にウェハが張り合わされたガラス貼り合わせ基板である基板301が用いられる本実施形態においては、プラズマ処理完了後も静電吸着力として残留静電吸着力が強く残留する。このように残留静電吸着力が強く残留している状態にて、載置面305aからの基板301の離脱が複数の突き上げピンを一体的に上昇させて、基板301の外縁付近領域を突き上げることにより行われる場合、複数の突き上げピンにより基板301の載置面305aより離脱し始めている基板301の外縁付近領域に比して中央付近領域は、基板301と載置面305aの間に大きな残留静電吸着力が残存しているため、載置面305aからの離脱が困難となる。これに対し、基板301全体のESC330による静電吸着力を下げると、基板301の裏面を載置面305a側よりHeガスにて冷却する場合などでは特に、基板301の外縁からのHeガスのリーク量が大きくなり、基板のプラズマ処理品質が低下してしまう。このため、載置面305aから基板301の離脱性が基板の外縁付近領域に比して低い中央付近領域に対し、載置面305aからの離脱性向上の為に相対的に残留吸着力低減させるようにすることが好ましい。すなわち、基板301の中央付近領域の静電吸着力は、外縁付近領域に対して付与される静電吸着力よりも相対的に低く設定された状態で、載置面305a上での基板301の静電吸着保持を行うのが好ましい。
このような観点から、本実施形態では、時間T1から時間T3にまで達すると、電圧制御装置308によりそれぞれのESC330用の双極電極用電源333、334が制御されて、印加されている電圧が低減される(ステップS25)。具体的には、第1双極電極用電源333から第1双極電極331に対して印加される電圧が、2500Vから2000Vにまで低減されるとともに、第2双極電極用電源334から第2双極電極332に対して印加される電圧が、2500Vから1500Vにまで低減される。すなわち、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの中央付近領域に位置される第2双極電極332への印加電圧が、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの外周側に位置される第1双極電極331への印加電圧よりも小さくなるように、それぞれの印加電圧が制御される。その結果、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの中央付近領域におけるESC330の基板301に対する静電吸着力F22は、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの外周側の静電吸着力F21よりも低くされる。ここで、基板301の「外縁付近領域」とは、載置面305aに対する基板301の少なくとも基板配置領域Rを含み、かつ載置面305aに載置される基板301の縁部および/あるいはその近傍の領域、あるいは載置面305aに載置される基板301の半径の1/2以上の基板301の外周側に位置する領域に位置されるものであり、基板301の「中央付近領域」とは、基板301の外縁付近領域に対し、基板301の中心側に位置する領域と定義する。
このように、その中央付近領域と外縁付近領域とで大きさを異ならせて発生されたESC330による静電吸着力により、プラズマ処理中に基板301が載置面305aとの間で受ける残留吸着力を含めた相対静電吸着力を基板301の外縁付近領域とその中央付近領域において異ならせて低減させることが可能である。これによりプラズマ処理後の基板301の載置面305aから離脱前の基板301が載置面305aとの間で受けている中央付近の残留吸着力を相対的に低減することができる。ここで、プラズマ処理中に基板301の中央付近領域の静電吸着力は、外縁付近領域に対して付与される静電吸着力よりも少なくとも相対的に低く設定された状態で、載置面305a上での基板301の静電吸着保持を行うとしたが、プラズマ処理前であっても、プラズマ処理品質に基板301のそりや温度等による問題がなければ、基板301の中央付近領域の静電吸着力を外縁付近領域に対して付与される静電吸着力よりも相対的に低く設定あるいは切り替えを行っても良い。なお、プラズマ処理実施のための詳細手順については、上述したため、ここでは省略する。
図30のグラフの時間T4にて、基板301に対するプラズマ処理が完了すると、それぞれの双極電極用電源333、334からESC330の双極電極331、332への電圧の印加が停止される(ステップS26)。このように電圧印加が停止されても、図30(D)、(E)のグラフの時間T4においては、基板301と載置面305aとの間に存在する残留吸着力として、基板301の中央付近領域は、外縁付近領域の残留吸着力F23に比して低減された残留静電吸着力F24となっている。
その後、プラズマ処理容器311の内部空間にて、基板301と載置面305aとの間に存在する残留静電吸着力F23、F24を除去するための比較的弱いプラズマである除電プラズマを発生させる(ステップS27)。例えば、プラズマ処理容器311の内部空間に、シリコンウェハ303に対するプラズマ処理(例えばエッチング等)が進行しない不活性ガス(Ar、N2、O2等)を供給した状態にて、上部電極313および/あるいは下部電極314に電圧を印加することにより、除電プラズマPが発生される。ただし、残留静電吸着力により基板301は載置面312aに保持された状態であるため、このような状態においては、除電プラズマPは基板301と載置面312aとの間に進入することが困難である。なお、本実施形態では、上部電極313、上部電極用高周波電源315、下部電極314、下部電極用高周波電源316、および図示しないガス供給装置が、除電プラズマ発生部の一例を構成している。
次に、図31のプラズマ処理得装置310の模式図に示すように、突き上げ装置320の昇降装置322により4本の突き上げピン321を一体的に上昇させて、載置面305aよりも上方に突出させる(ステップS28)。その結果、図31に示すように、基板301の外周部分がそれぞれの突き上げピン321により突き上げられた状態とされ、載置面305aの基板配置領域Rの外縁付近領域において基板301が部分的に離脱される。すなわち、基板301の縁部が載置面305aから離脱した状態とされる。
このように基板301の縁部が載置面305aより離脱された状態とされることにより、プラズマ処理容器311の内部空間に発生されている除電プラズマPが、基板301の外周側より基板301と載置面305aとの間に進入することができる。その結果、図30のグラフの時間区分T4〜T5にて、除電プラズマPと接触した表面において、基板301と載置面305aとの間に存在する残留静電吸着力が低減されて、載置面305aからの基板301の離脱(剥離)領域が、基板301の外側から内側に向けて拡がるように促進される。
その後、例えばこのような複数の突き上げピン321による一体的な上昇が再度実施されることなどにより、除電プラズマPが、ESC330の第2双極電極により相対的に残留吸着力が予め低減されている基板301と載置面305aとの間における中央付近領域にまで達し、中央付近の残留静電吸着力も取り除かれて、基板301が載置面305aから離脱する(ステップS29、時間T5)。
本実施形態のプラズマ処理装置310によれば、基板保持装置312の載置台305の載置面305aに内蔵されているESC330が、同心円状に配置された環状かつ帯状の複数の双極電極331、332により構成されていることにより、基板301の中心を基準として偏りのない静電吸着力を発生することができ、安定した基板の静電吸着保持を行うことができる。
さらに、載置面305aにおいて、同心円の中心側に配置される第2双極電極332に対して第2双極電極用電源334から印加される電圧が、外周側に配置される第1双極電極331に対して第1双極電極用電源333から印加される電圧よりも小さくなるように、それぞれの印加電圧の大きさが制御されることにより、基板301の中央付近領域にて生じる静電吸着力を、基板301の外縁付近領域にて生じる静電吸着力よりも小さくすることができる。載置面305a上に載置された基板301は、外縁付近領域にてそれぞれの突き上げピン321により突き上げられるため、基板301の外縁付近領域では、比較的容易に載置面305aからの局所的な離脱を行うことができる。さらに、外縁付近領域にて局所的に離脱された基板301に対しては、基板301と載置面305aとの間に、除電プラズマPを接触的に導くことができるため、基板301の外縁から中央付近領域に向けて基板301の離脱範囲を拡げることができる。特に、本実施形態のように、基板301の中央付近領域の静電吸着力を比較的小さく制御していることにより、このような除電プラズマPの導入による離脱効果を効果的に得ることができる。それとともに、それぞれの突き上げピン321による基板301の外縁付近領域の突き上げ動作によって基板301が離脱する範囲を、基板301の中央付近領域に向けて拡大することができる。
したがって、通常のシリコンウェハよりも残留静電吸着力が高いという特徴を有するガラス貼付構造の基板1に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、載置面305aからの安定した離脱を行うことができる。
また、基板301はガラス貼り付け構造を有しているため、反りやたわみが生じているような場合もある。そのため、載置面305aに基板301を載置して静電吸着力を付与する際に、比較的高い電圧(プラズマ処理中において印加される電圧と比して高い電圧)を、それぞれの双極電極331、332に印加することにより、比較的高い静電吸着力を発生させて、基板301の反りやたわみを矯正して取り除くことができる。このような反りやたわみの矯正を行った後、基板301の保持のために必要な程度にまで印加電圧を下げるとともに、基板301の中央付近領域と外縁付近領域にて付与される静電吸着力を個別に制御することにより、載置面305aへの基板301の確実な保持(反りやたわみが矯正された状態での保持)を実現しながら、残留静電吸着力を低減させて、載置面からの基板の安定した離脱を行うことができる。
このようなプラズマ処理装置310では、プラズマ処理の際に、基板301と載置面305aとを冷却することを目的として、載置面305aと基板301との間にHeガスが供給されるように構成される。そのため、載置面305aには、Heガスを流す、あるいは留めておくための凹部305bが形成されている。このような載置面305aに形成された凹部305bとの関係から、図32に示すように、平面視にて凹部305bの溝部内に突き上げピン321を配置することが好ましい。また、プラズマ処理中のHeガスによる基板301の冷却中は、凹部305b内をHeガスが流れ易いように突き上げピン321の先端高さを凹部305bの底部以下とすることが望ましい。このような突き上げピンの配置を採用することにより、Heガスの漏洩量を低減させることができる。なお、この凹部305bは、例えば深さdが100μmにて形成される。
また、このようにプラズマ処理の際にHeガスが用いられるため、基板301の縁部と載置面305aとの間からは、Heガスが漏洩しないように(あるいは漏洩量を少なくするように)、静電吸着力により確実な保持を行うことが好ましい。そのため、本第4実施形態では、図27に示すように、載置面305aの最外周に第1双極電極331の第1正極部331aを配置している。プラズマ処理中では基板301はマイナスに帯電する為、正極部の方が基板301とESC電極の電位差が大きくなるので、正極部にて生じる静電吸着力は、負極部にて生じる静電吸着力よりも大きいため、第1双極電極331にて第1負極部331bよりも外周側に第1正極部331aを配置することにより、基板301の外縁をより確実に保持することができる。
本第4実施形態では、載置面305aにおいて外周側に配置されている第1双極電極331に対して第1双極電極用電源333により電圧を印加し、中心側に配置されている第2双極電極332に対して第2双極電極用電源334により電圧を印加して、それぞれの双極電極331、332に印加される電圧を制御するような場合について説明したが、本実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、1台の共通の双極電極用電源を用いて、この共通の電源からの電圧を分岐して、それぞれの双極電極に電圧を印加して、分岐比率を可変することにより印加される電圧を可変させるような構成を採用することもできる。具体的には、図35の模式図に示すESC430のように、1台の双極電極用電源433を用いて、第1双極電極331の第1正極部331aおよび第1負極部331bと、第2双極電極332の第2正極部332aおよび第2負極部332bとに、電源433からの回路を分岐して、第2双極電極332への回路の途中に、第2双極電極332に印加される電圧を、第1双極電極331に印加される電圧とは異なるように制御可能な分岐比率調整部434を設けるような構成を採用することもできる。このように共通の電源433を用いれば、装置コストを低減することができる。
また、載置面305aの外縁付近領域と中央付近領域とで発生される静電吸着力の大きさを相違させるように制御する手段は、第1双極電極331と第2双極電極332とに印加される電圧の大きさを異ならせる手段のみに限られるものではない。このような手段に代えて、例えば、載置面305aの外周側に配置される第1双極電極の面積を大きくし、中心側に配置される第2双極電極の面積を小さくすることにより、中心側の静電吸着力を外周側の静電吸着力よりも小さくすることができる。また、各々の双極電極から載置面305aまでの距離を相違させることによっても静電吸着力の大きさを異ならせることができる。具体的には、第2双極電極から載置面305aまでの距離を、第1双極電極から載置面305aまでの距離よりも遠くすることにより、中心側の静電吸着力を外周側の静電吸着力よりも小さくすることができる。これらの手段の中では、内外における静電吸着力を所望の大きさに可変できるという点において、印加電圧の大きさを可変させる手段が利点を有する。
上記第4実施形態では、同心円上に配置された複数の突き上げピン321が一体的に上昇されて基板301の外縁付近領域に対し突き上げる方法が用いられる場合を例として説明したが、このような突き上げピン321の動作制御方法としては、様々な方法を適用することができる。例えば、突き上げ装置320に突き上げピン321による基板301の突き上げに伴って生じる荷重を検出するロードセルを備えさせて、ロードセルにより検出された荷重の大きさに基づいて、突き上げピン321による突き上げストロークや動作回数を制御することもできる。また、このようなロードセルにより検出される荷重に基づいて、基板301が載置面305aから離脱したことを検出することもできる。また、突き上げピンの配置は、1つの同心円上に配置される場合のみに限られず、複数の同心円上に分けて配置されるような構成を採用することもできる。
また、上記第4実施形態では、円形状の基板を前提として、それぞれの双極電極が、同心円上に配置された環状あるいは円状の電極であるような場合について説明したが、双極電極の形状としては、その他様々な形態を採用することができる。例えば、基板の載置面への保持、離脱、およびプラズマ処理品質に問題が生じなければ、双曲電極の形態として、三角形状や四角形状などの多角形状の形態が採用されるような場合であってもよい。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。例えば、上記第4実施形態のESCの構成を、上記第1〜第3実施形態のプラズマ処理装置の構成に組み合わせて採用することもできる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
2008年5月30日に出願された日本国特許出願No.2008−142338号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容、2008年5月30日に出願された日本国特許出願No.2008−142341号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容、2008年8月12日に出願された日本国特許出願No.2008−207694号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容、および2009年3月11日に出願された日本国特許出願No.2009−058375号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
本発明は、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置および方法に関する。
ウェハ、例えば半導体ウェハ(Si、化合物等により形成)に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置では、処理容器内に設けられたウェハ保持装置の載置面にウェハを載置して保持した状態にて、ウェハに対するエッチング等のプラズマ処理が行われる。このようなウェハ保持装置では、一般的にESCと呼ばれる静電チャックが載置面内に内蔵されており、静電チャックによって発生されるクーロン力および/あるいはジョンソンラーベック力による静電吸着力を用いたウェハの保持が行われている。
このような従来のウェハ保持装置では、ESCによる静電吸着を停止した後であっても、載置面とウェハに蓄積された電荷により静電吸着力(以降、「残留静電吸着力」とする。)が残留するため、ウェハ保持装置の載置面からウェハを離脱するための様々な手法が従来において提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−217356号公報
特開2007−109770号公報
近年、イメージセンサ等に代表されるデバイスを製造するために、ガラス板に半導体ウェハが貼り付けられたガラス貼り付け基板が用いられている。しかしながら、ガラス板貼り付け構造を有する基板が用いられるような場合では、半導体ウェハ単体が用いられるような場合と比して、その残留静電吸着力は大きくなる。そのため、特許文献1に開示されているように、単に突き上げピンによりウェハを突き上げて離脱させるような方法では、強い残留静電吸着力を有する基板において割れ等の損傷が生じる場合や、基板が載置面より離脱される時に、基板が跳ねること等による位置ずれが生じる場合がある。
また、このような残留静電吸着力により生じる問題は、ガラス貼り合わせ基板だけに限られるものではない。例えば、特許文献2に開示されているようなトレイにより基板が保持された状態にて、基板の搬送やプラズマ処理が行われるような形態においても、残留静電吸着により同様な問題が生じている。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、基板に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、静電吸着による基板の保持を行う基板保持装置から基板を離脱させることができるプラズマ処理装置および方法を提供することにある。
なお、本発明の基板としては、例えば、ガラス板にウェハが貼り合わせられたガラス貼り合わせ基板や、トレイに保持されたウェハを対象とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面の基板配置領域に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
載置面の基板配置領域の外側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第1突き上げピンを昇降させる第1突き上げ装置と、
載置面の基板配置領域の内側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第2突き上げピンを昇降させる第2突き上げ装置と、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピン上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させた後、第2突き上げ装置の複数の第2突き上げピンの上昇動作を開始させて、載置面の基板配置領域の内側領域にて基板を突き上げるように、第1突き上げ装置および第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置とを備える、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第2態様によれば、第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力、および第2突き上げ装置の複数の第2突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部をさらに備え、
制御装置は、プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、第1突き上げ装置の第1突き上げピンまたは第2突き上げ装置の第2突き上げピンを上昇させて基板の突き上げ動作を行う際に、第1または第2突き上げピンを上昇させて基板を載置面から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、第1または第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う、第1態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第3態様によれば、ガラス板にウェハが貼り合わせられたガラス貼り合わせ基板を上記基板として、プラズマ処理容器にてプラズマ処理が行われる、第1態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第4態様によれば、基板保持装置による静電吸着を解除した後の基板と載置面との間の残留静電吸着力を除去するための除電プラズマを発生する除電プラズマ発生部をさらに備え、
制御装置は、除電プラズマ発生部によりプラズマ処理容器内に除電プラズマを発生させた状態にて、第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピンの上昇動作を制御することにより基板配置領域の少なくとも外側領域からの基板の離脱動作を行い、基板の外周縁部と基板配置領域の外周領域との間に除電プラズマを進入させることにより、残留静電吸着力を低減させる、第1から第3態様のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第5態様によれば、基板保持装置は、
基板が載置される載置面を有する載置部材と、
載置部材の内部に配置され、環状かつ帯状に形成された第1双極電極と、
載置部材の内部に配置され、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状に配置された環状かつ帯状に形成された第2双極電極と、
第1双極電極および第2双極電極に対して電圧を印加して、第1双極電極および第2双極電極から、載置面上に載置された基板に対して静電吸着力を発生させる静電吸着用電源とを備え、
基板に対するプラズマ処理中において、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも、少なくとも相対的に低い状態にて、載置面上での基板の保持が行われる、第1から第3態様のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第6態様によれば、絶縁体層を含む基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
プラズマ処理容器内に配置された電極に対して高周波電圧を印加する高周波電圧印加装置と、
を備え、
基板保持装置は、
電圧印加により静電吸着力を発生させて、載置面に載置された基板を保持する静電チャックと、
静電チャックへ電圧を印加する静電チャック用電源と、
静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を制御して、発生される静電吸着力の大きさを制御する電圧制御装置とを備え、
電圧制御装置は、静電チャック用電源から静電チャックへ第1電圧を印加させて、基板の反りを矯正しながら載置面に基板を保持させ、その後、静電チャック用電源から静電チャックへの印加電圧を第1電圧から第2電圧に低下させて、反りが矯正された状態の基板の保持を継続させ、高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加が開始された後、プラズマ処理中に高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により発生される静電吸着力を減少させるように、静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を段階的に減少させる、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第7態様によれば、載置面に配置された基板の少なくとも外周縁部を、載置面から上方に直接的または間接的に持ち上げるように、複数の突き上げピンを昇降させて基板を突き上げる突き上げ装置と、
突き上げ装置の複数の突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部と、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、突き上げ装置の突き上げピンを上昇させて、基板の外周縁部を載置面の基板配置領域から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置とをさらに備える、第6態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第8態様によれば、突き上げ装置は、
載置面の基板配置領域の外側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第1突き上げピンを、昇降させる第1突き上げ装置と、
載置面の基板配置領域の内側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第2突き上げピンを、昇降させる第2突き上げ装置と、を備え、
制御装置は、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、複数の第1突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させた後、複数の第2突き上げピンの上昇によるステップ上昇動作を開始させるように、第1突き上げ装置および第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う、第7態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第9態様によれば、基板保持装置は、環状かつ帯状に形成された第1双極電極と、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状に配置された環状かつ帯状に形成された第2双極電極とを静電チャックとして備え、
電圧制御装置は、基板に対するプラズマ処理中において、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも、少なくとも相対的に低い状態にて、載置面上での基板の保持が行われるように、静電チャック用電源より第1双極電極および第2双極電極への電圧の印加量を制御する、第7態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第10態様によれば、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理方法であって、
基板保持装置の載置面に基板を載置するとともに、静電吸着により載置面に基板を保持し、
静電吸着によって保持された基板に対してプラズマ処理を行い、
プラズマ処理の完了後、静電吸着を停止し、
その後、基板保持装置の載置面の基板配置領域の外側領域において、載置面より複数の第1突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させ、
その後、載置面の基板配置領域の内側領域において、載置面より複数の第2突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の内側領域より基板を離脱させる、プラズマ処理方法を提供する。
本発明の第11態様によれば、絶縁体層を含む基板に対するプラズマ処理方法であって、
基板保持装置の載置面に基板を載置し、
載置面内に内蔵された静電チャックへ第1電圧を印加して電圧印加により生じる静電吸着力により基板の反りを矯正しながら基板を保持し、
その後、静電チャックへの印加電圧を第1電圧から第2電圧に低下させて、反りが矯正された状態の基板の保持を継続し、
その後、電極への高周波電圧の印加を開始して、保持された基板に対してプラズマ処理を行うとともに、高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により生じる静電吸着力を減少させるように、静電チャックへの電圧の印加量を段階的に減少させて、基板の保持を継続する、プラズマ処理方法を提供する。
本発明の一の態様によれば、プラズマ処理装置が備える制御装置により、プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、突き上げ装置の突上げピンを上昇させるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせ、検知閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値以下になり、かつ基板が載置面より離脱完了していない場合は、突上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始させる構成を採用している。さらに、制御装置により、ステップ上昇動作において、突上げピンの上昇後の停止時に基板の載置面からの離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合はステップ上昇動作を継続させるように突き上げ装置の動作タイミングの制御が行われる構成が採用されている。このように突き上げピンによる第1回目の突き上げ動作を実施した後、基板が載置面より離脱完了していない場合に、このような突き上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して行うステップ上昇動作を行うことにより、基板に対して損傷等を生じさせることなく、徐々に載置面からの離脱を促進させることができ、円滑な基板の離脱動作を行うことができる。また、このような複数の突き上げピンによる基板の突き上げ動作が、基板に対して直接的に行われるような場合だけでなく、基板に対して間接的に行われるような場合であってもよい。
本発明の別の一の態様によれば、載置面の基板配置領域の外側領域に配置された複数の第1突き上げピンと、内側領域に配置された複数の第2突き上げピンとを用いて、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、まず、複数の第1突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させ、その後、複数の第2突き上げピンを上昇させて、基板配置領域の内側領域より基板を離脱させることができる。すなわち、複数の第1突き上げピンによる基板の外側領域の突き上げ動作のタイミングと、複数の第2突き上げピンによる基板の内側領域の突き上げ動作のタイミングとを異ならせて、まず基板の外側領域を載置面から離脱させた後に、内側領域の離脱を行うというように、外側から内側へ向けて徐々にかつ段階的に基板の離脱動作を行うことができる。したがって、単なるウェハよりもその残留静電吸着力が高くなるという傾向があるガラス貼り付け構造を有する基板に対して、損傷や位置ずれ等を生じさせることなく、載置面からの離脱動作を行うことができる。
本発明の別の一の態様によれば、プラズマ処理中に基板に生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により生じる静電吸着力を減少させながら、基板の保持を継続して、基板に対するプラズマ処理を行うため、プラズマ処理が完了した後に基板に残留する残留静電吸着力の大きさを低減させることができる。したがって、その後、基板を載置面から離脱させる際に、基板を損傷等させることなく、円滑に離脱動作を行うことができる。
本発明の別の一の態様によれば、プラズマ処理装置の基板保持装置において、環状かつ帯状の第1双極電極と、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状の配置された環状かつ帯状の第2双極電極とを備えた構成が採用されている。このようなプラズマ処理装置において、基板に対するプラズマ処理中に、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも少なくとも相対的に低く設定された状態で、載置面上での基板の保持が行われる。したがって、基板の外周側(外縁付近領域)に比して基板の外周側に対し内周側である中央付近領域の残留静電吸着力が低減される。これにより、基板の縁部および/あるいはその近傍の領域に対して、基板の載置面から複数の突き上げピンを一体的に上昇させることにより基板の離脱が行われる場合、基板の中央付近領域の載置面からの離脱性が改善され、基板の載置面からの離脱時に離脱による損傷や位置ずれを生じさせることなく、静電吸着による基板の保持を行って、プラズマ処理を行うことができる。
本発明の第1実施形態にかかるプラズマ処理装置の模式図
第1実施形態のプラズマ処理装置の載置面の模式平面図
第1実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図(第1突き上げピンによる突き上げ動作)
第1実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図(第1および第2突き上げピンによる突き上げ動作)
第1実施形態の基板離脱動作のフローチャート
図5の基板離脱動作において、(A)は突き上げ力の変化を示すグラフ、(B)は第1突き上げピンのストローク変化を示すグラフ、(C)は第2突き上げピンのストローク変化を示すグラフ
図3の突き上げ動作における突き上げピン周囲の模式部分拡大図
図4の突き上げ動作における突き上げピン周囲の模式部分拡大図
第1実施形態の変形例にかかる突き上げ動作における突き上げピン周囲の模式部分拡大図
第1実施形態の変形例にかかる突き上げピンの配置(突き上げピン上昇前の状態)を示す模式断面図
第1実施形態の変形例にかかる突き上げピンの配置(突き上げピン上昇後の状態)を示す模式断面図
第1実施形態の変形例にかかる突き上げピンの配置を示す模式平面図
本発明の第2実施形態の比較例にかかるプラズマ処理装置において、(A)はESC印加電圧の時間変化を示すグラフ、(B)は電極への印加電力のON/OFF状態を示すグラフ、(C)は載置面に対する基板の静電吸着力の変化を示すグラフ、(D)はHeガスの供給状態を示すグラフ
第2実施形態のプラズマ処理装置における残留静電吸着力の低減方法を説明するための図であって、(A)はESCへの印加電圧を示すグラフ、(B)はESCにて印加電圧から得られる静電吸着力を示すグラフ、(C)は基板の帯電にて生じる静電吸着力(残留静電吸着力)を示すグラフ、(D)は合計吸着力((B)+(C))を示すグラフ
第2実施形態のプラズマ処理装置の模式図
第2実施形態のプラズマ処理において、(A)はESCへの印加電圧の変化を示すグラフ、(B)は電極への印加電力の変化を示すグラフ、(C)はHeガスの供給状態を示すグラフ
第1実施形態の比較例にかかるプラズマ処理装置における基板の突き上げ動作を示す模式図
図15の比較例のプラズマ処理装置における基板の突き上げ動作を示す模式図
本発明の第3実施形態にかかるプラズマ処理装置の模式図
第3実施形態のプラズマ処理装置にて取り扱われるトレイの斜視図
第3実施形態のプラズマ処理装置の誘電体板の斜視図
図18Aのトレイの平面図
図19AのトレイのA−A線断面図
第3実施形態のトレイおよび誘電体板の部分拡大断面図(トレイ載置前)
第3実施形態のトレイおよび誘電体板の部分拡大断面図(トレイ載置後)
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図
第3実施形態のプラズマ処理装置における基板の離脱動作の模式説明図
第3実施形態の基板離脱動作のフローチャート
図22の基板離脱動作において、(A)は突き上げ力の変化を示すグラフ、(B)は突き上げピンのストローク変化を示すグラフ
本発明の第3実施形態の変形例にかかるプラズマ処理装置の模式図
本発明の第4実施形態にかかるプラズマ処理装置の模式図
第4実施形態のプラズマ処理装置の載置面の模式平面図
第4実施形態のプラズマ処理装置の載置面に内蔵されているESCの模式平面図
図27のESCによる静電吸着力の発生原理の模式説明図
第4実施形態のプラズマ処理方法の手順のフローチャート
第4実施形態のプラズマ処理におけるESCへの印加電圧を示すグラフであって、(A)は第1双極電極への印加電圧、(B)は第2双極電極への印加電圧、(C)は電極への印加電力(上部電極及び/あるいは下部電極)、(D)は、第1双極電極の印加電圧と電極印加電力による基板の帯電で得られる静電吸着力、(E)は第2双極電極の印加電圧と電極印加電力による基板の帯電で得られる静電吸着力を示すグラフ
第4実施形態のプラズマ処理装置において、突き上げ動作時におけるプラズマ処理装置の模式図
第4実施形態のプラズマ処理装置の基板保持装置の載置台端部の部分拡大模式図
従来のESCの構成を示す模式図
図25のプラズマ処理装置におけるESCの詳細構成を示す模式図
第4実施形態の変形例にかかるESCの構成を示す模式図
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかるプラズマ処理装置10の主要な構成を示す模式図を図1に示す。本第1実施形態のプラズマ処理装置10には、絶縁材料であるガラス板2上に、ウェハ、例えば半導体ウェハの一例であるシリコンウェハ(Siおよびその化合物等により形成された半導体ウェハ)3が貼付剤4を介して貼り付けられたガラス貼り付け構造を有するガラス貼り付け基板1(以降、「基板1」とする。)が、プラズマ処理の対象物として取り扱われる。ここで、シリコンウェハ3としては、例えば25〜400μm、特に50〜200μmの厚さを有するものが用いられる。ガラス基板2としては、例えば300〜500μm、特に400μm程度の厚さを有するものが用いられる。また、貼付剤4としては、例えばレジストや粘着剤が用いられる。このような基板1のシリコンウェハ3に対して、所定のプラズマ処理を施すことにより、イメージセンサ等のデバイスが製造される。また、基板1は、例えば直径200mmの円盤形状を有している。
図1に示すように、プラズマ処理装置10は、その内部空間(プラズマ処理空間)にて所定のプラズマ処理が行われるプラズマ処理容器11と、プラズマ処理容器11内に設置され、基板1のガラス板2側が載置される載置面12aを有し、載置面12aに載置された基板1に対して、静電吸着による保持を行う基板保持装置12とを備えている。さらに、図1に示すように、プラズマ処理容器11の内側上部には上部電極13が設置され、基板保持装置12の内部には下部電極14が設置されている。上部電極13には、上部電極用高周波電源15(高周波電圧印加装置の一例である。)が接続されており、下部電極14には下部電極用高周波電源16が接続されている。さらに、基板保持装置12の載置面12aには、静電吸着を行うための静電チャックの一例であるESC17が内蔵されており、ESC17にはESC用電源18(静電チャック用電源の一例である。)が接続されている。
このような構成のプラズマ処理装置10では、基板保持装置12の載置面12aに基板1を載置させて、ESC17の静電吸着により基板1の保持を行った後、プラズマ処理容器11の内部を所定の圧力に保持しながら所定のプラズマ処理用ガスを供給して充填する。その後、上部電極用高周波電源15より上部電極13への電圧印加を行うとともに、下部電極用高周波電源16より下部電極14への電圧印加を行って、プラズマを発生させ、基板1のシリコンウェハ3に対するプラズマ処理を行う。プラズマ処理が完了すると、それぞれの高周波電源15、16による電圧印加を停止し、プラズマ処理容器11内のガスを排気して、基板1に対するプラズマ処理が完了する。プラズマ処理が完了すると、ESC用電源18によるESC17への電力供給が停止される。
次に、プラズマ処理装置10において、載置面12aと基板1との間に存在する残留静電吸着力に抗して、プラズマ処理が完了した基板1を載置面12aから離脱させるために備えられている構成について説明する。ここで、基板保持装置12の載置面12aの模式平面図を図2に示す。
図1および図2に示すように、基板保持装置12には、載置面12aの基板配置領域Rの外側領域R1に配置された複数の第1突き上げピン21を、載置面12aより一体的に昇降させて載置面12aより突出させるあるいは載置面12a内に格納させるように動作させる第1突き上げ装置20と、載置面12aの基板配置領域Rの内側領域R2に配置された複数の第2突き上げピン31を、載置面12aより一体的に昇降させて載置面12aより突出させるあるいは載置面12a内に格納させるように動作させる第2突き上げ装置30とが備えられている。また、第1突き上げ装置20は、それぞれの第1突き上げピン21を一体的に昇降させる第1昇降装置22を備えており、第2突き上げ装置30は、それぞれの第2突き上げピン31を一体的に昇降させる第2昇降装置32を備えている。なお、第1昇降装置22と、第2昇降装置32とは、互いに個別に動作することが可能となっている。
また、本第1実施形態のプラズマ処理装置10では、図2に示すように、載置面12a全体が基板1に対する基板配置領域Rとなっているが、このような場合に代えて、載置面12aの一部が基板配置領域として設定されるような場合であってもよく、あるいは載置面12aより基板配置領域Rが大きく設定されているような場合であってもよい。載置面12aより基板配置領域Rが小さい場合には、基板1の周縁部におけるプロセス特性(例えば、エッチングレート等)の均一性が向上するが、載置面12aのESC17の電極が基板配置領域Rよりも大きい場合には、ESC17の電極がプラズマにさらされ、その寿命が短くなる場合がある。これに対して、載置面12aより基板配置領域Rが大きい場合には、ESC17の電極が基板1の周縁よりも小さくなるため、プラズマにさらされるという問題は生じず、プロセス特性の均一性を確保するために、ESC17の電極を基板1の周縁よりも0.5mm〜1mm程度と僅かに小さくするのが好ましい。しかしESC17の電極が基板1の周縁よりも小さくなりすぎると、基板1の周縁部におけるプロセス特性が不均一となる場合がある。また、基板配置領域Rの外側領域R1は、基板配置領域R内でかつ載置面12aに載置される基板1の縁部およびその近傍の領域、および/あるいは載置面12aに載置される基板1の半径の1/2以上の基板1の外周側に位置する領域であり、基板配置領域Rの内側領域R2は、基板配置領域Rの外側領域R1の縁部およびその近傍の領域よりも相対的に内側の領域である。
図2に示すように、例えば4本の第1突き上げピン21が、載置面12aの中心をその中心とする第1の同心円C1上に等間隔にて配置されており、例えば4本の第2突き上げピン31が、載置面12aの中心をその中心とする第2の同心円C2上に等間隔にて配置されている。なお、第1の同心円C1の径は、第2の同心円C2の径よりも大きく設定されている。
さらに、図1に示すように、第1突き上げ装置20には、基板1を突き上げる際に、第1昇降装置22によりそれぞれの第1突き上げピン21に付加される突き上げ力(あるいは突き上げ反力)を検出するための突き上げ力検出部の一例である第1ロードセル23が備えられている。同様に、第2突き上げ装置30には、基板1を突き上げる際に、第2昇降装置32によりそれぞれの第2突き上げピン31に付加される突き上げ力(あるいは突き上げ反力)を検出するための突き上げ力検出部の一例である第2ロードセル33が備えられている。
また、図1に示すように、プラズマ処理装置10には、第1昇降装置22による第1突き上げピン21の昇降動作、第2昇降装置32による第2突き上げピン31の昇降動作、第1ロードセル23による突き上げ力の検出動作、第2ロードセル33による突き上げ力の検出動作、上部電極用高周波電源15による電圧印加動作、下部電極用高周波電源16による電圧印加動作、およびESC用電源18による電力供給動作を、互いの動作を関連づけながら制御する制御装置9が備えられている。さらに制御装置9は、第1昇降装置22および第2昇降装置32を通じて、第1突き上げピン21の載置面12aよりの突き上げ量(ストローク)および第2突き上げピン31の載置面12aよりの突き上げ量(ストローク)を検出することが可能となっている。
このような構成のプラズマ処理装置10にて、プラズマ処理が完了した基板1を載置面12aから離脱させる動作について説明する。この説明にあたって、図3および図4にプラズマ処理装置10の動作の模式説明図を示し、図5に離脱動作の手順のフローチャートを示し、図6に第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の突き上げ力(反力)および突き上げストロークの時間的な変化を表すグラフを示す。また、突き上げ状態における突き上げピン近傍の部分模式拡大図を図7Aおよび図7Bに示す。
まず、プラズマ処理容器11の内部空間にて、基板1と載置面12aとの間に存在する残留静電吸着力を除去するための比較的弱いプラズマである除電プラズマを発生させる(図5のフローチャートのステップS1)。例えば、プラズマ処理容器11の内部空間に、シリコンウェハ3に対するプラズマ処理(例えばエッチング等)が進行しない不活性ガス(Ar、N2、O2等)を供給した状態にて、上部電極13および/あるいは下部電極14に電圧を印加することにより、除電プラズマPが発生される。ただし、残留静電吸着力により基板1は載置面12aに保持された状態であるため、このような状態においては、除電プラズマPは基板1と載置面12aとの間に進入することができない。なお、本第1実施形態では、上部電極13、上部電極用高周波電源15、下部電極14、下部電極用高周波電源16、および図示しないガス供給装置が、除電プラズマ発生部の一例を構成している。
次に、図6(A)に示す時間区分T0〜T1にて、第1突き上げ装置20の第1昇降装置22により8本の第1突き上げピン21を一体的に上昇させて、載置面12aよりも上方に突出させる(ステップS2)。その結果、図3、より詳細には図7Aに示すように、基板1の外周部分がそれぞれの第1突き上げピン21により突き上げられた状態とされ、載置面12aの基板配置領域Rの外側領域R1から基板1が部分的に離脱される。
ここで、図6(A)の突き上げ力の変化を示すグラフと、図6(B)の第1突き上げピン21のストロークの変化を示すグラフとに示すように、第1昇降装置22によるそれぞれの第1突き上げピン21の突き上げ(上昇)動作は、第1ロードセル23にて検出される突き上げ力を参照しながら行われる。具体的には、基板1に対して割れ等の損傷や跳ね等の位置ずれが生じない限度荷重であるF2を超えることなく、かつ2回目の突き上げ動作を開始するための基準荷重である検知閾値F1を超える荷重範囲に入るように、第1突き上げピン21の突き上げストロークが調整されて、突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの第1突き上げピン21の先端は、ストローク(あるいは高さ)H1に位置された状態とされる。
このように基板1の縁部が載置面12aより離脱された状態とされることにより、プラズマ処理容器11の内部空間に発生されている除電プラズマPが、基板1と載置面12aとの間に進入することができる。その結果、時間区分T1〜T2にて、除電プラズマPと接触した表面において、基板1と載置面12aとの間に存在する残留静電吸着力が低減されて、載置面12aからの基板1の離脱(剥離)が、基板1の外側から内側に向けて拡がるように促進される。
また、この時間区分T1〜T2では、第1ロードセル23による突き上げ力の検出が継続して行われ、検出された突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したかどうかの検出が行われる(ステップS3)。
やがて、時間T2にて、第1ロードセル23によって第1突き上げピン21による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したことが検出されると、第1突き上げ装置20および/あるいは第2突き上げ装置30による突き上げ動作が開始される(ステップS4)。具体的には、例えば、図6(A)に示す時間区分T2〜T3にて、第1突き上げ装置20の第1昇降装置22により4本の第1突き上げピン21を一体的にさらに上昇させるとともに、第2突き上げ装置30の第2昇降装置32により4本の第2突き上げピン31を一体的に上昇させて載置面12aよりも上方に突出させる。この突き上げ動作により、それぞれの第1突き上げピン21はその先端がストロークH2に位置された状態とされ、それぞれの第2突き上げピン31はその先端がストロークH1に位置された状態とされる。
このように第1突き上げピン21による突き上げ動作に加えて、さらに第2突き上げピン31による突き上げ動作を行うことにより、図4、より詳細には図7Bに示すように、載置面12aの基板配置領域Rの内側領域R2にて基板1を載置面12aから完全にあるいは部分的に離脱させることができる。部分的に離脱されている場合には、除電プラズマPを基板1と載置面12aとの間にさらに進入させて、残留静電吸着力を低減させることができ、基板1の離脱がさらに促進される。
なお、2回目の突き上げ動作の時、第1突き上げピン21による突き上げ動作に加えて、さらに第2突き上げピン31による突き上げ動作を行うとしたが、基板1が載置面12aよりの離脱にともなって突き上げピン21、31による突き上げ力が限度荷重F2に近づきすぎる場合は、第1突き上げピン21をさらに上昇させずに第2突き上げピン31のみを突上げ動作させて第2突き上げピン31はその先端が第1突き上げピン21と同じ突上げ高さ位置であるストロークH1に位置された状態とさせても良い。このことにより、載置面12aからの突上げ動作により基板1に発生する応力の発生をより低減させることができる。
この2回目の突き上げ動作により、基板1が載置面12aより完全に離脱されていない場合には、第1突き上げピン21による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T4〜T5にて、再び、第1突き上げピン21および/あるいは第2突き上げピン31による突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの第1突き上げピン21はその先端がストロークH3に位置された状態とされ、それぞれの第2突き上げピン31はその先端がストロークH2に位置された状態とされる。また、この時間T4における突き上げ動作の開始の際には、第2ロードセル33により第2突き上げピン31の突き上げ力が検知閾値F1にまで減少していることを確認することが好ましい。なお、第1突き上げピン21に対する検知閾値と第2突き上げピン31に対する検知閾値とは、互いに異なる値が採用される場合であってもよい。
この3回目の突き上げ動作により、基板1が載置面12aよりまだ完全に離脱されていない場合には、例えば、第2突き上げピン31の突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T6〜T7にて、第2突き上げピン31による突き上げ動作を行う。その結果、それぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31は、共にその先端がストロークH3に位置された状態とされ、さらに載置面12aからの基板1の離脱が促進される、あるいは載置面12aから基板1が完全に離脱される。
一方、載置面12aより基板1が完全に離脱されていることが確認されると(ステップS5)、基板1の載置面12aからの離脱のための突き上げ動作が完了する。なお、載置面12aより基板1が完全に離脱されていることの確認は、例えば、第1ロードセル23および/あるいは第2ロードセル33にて検出される突き上げ力が基板1の自重に相当する荷重となっていること、あるいは、載置面12aから基板1が離脱したことを示す離脱閾値F3以下になっていることを検出すること、および/あるいは第1突き上げピン21および第2突き上げピン31のストロークが所定のストロークに達していることなどにより行うことができる。
ここで、本第1実施形態のプラズマ処理装置10における基板1の離脱方法と対比される比較例にかかる離脱方法として、例えば、特許文献1に開示の離脱方法をガラス貼り付け基板1に仮に適用した場合について、図15および図16の模式図を用いて説明する。
図15に示すように、比較例にかかるプラズマ処理装置201において、基板保持装置202の載置面203に、ガラス貼り付け基板1を、ガラス板2側を下面側として載置した状態にて、半導体ウェハ3に対するプラズマ処理を行う。このプラズマ処理が行われている際には、基板1は載置面203内に内蔵されたESC204により静電吸着による保持が行われている。その後、プラズマ処理が完了すると、ESC204による静電吸着が停止される。
プラズマ処理装置201には、基板保持装置202の載置面203の縁部に同心円状に配置された複数の突き上げピン205の昇降動作を行う突き上げ装置206が備えられている。これらの突き上げピン205は、基板1が載置された状態では、載置面203内に格納された状態とされている。
ESC204による静電吸着が停止されると、突き上げ装置206にてそれぞれの突き上げピン205が例えば一体的に上昇されて、載置面203上に載置された状態の基板1が突き上げられて、残留静電吸着力に抗して、基板1の縁部のみが載置面203より離脱される。
しかしながら、基板1は、単なる半導体ウェハではなく、ガラス板貼り付け構造を有しているため、半導体ウェハ単体が用いられるような場合と比して、その残留静電吸着力は大きくなる。そのため、基板1の縁部近傍を複数の突き上げピン205により突き上げても、基板1の中央付近には、高い残留静電吸着力が存在したままの状態とされている。その結果、突き上げピン205により突き上げられた部分、すなわち基板1の縁部のみが載置面203より離脱されるだけであり、基板1の中央付近は載置面203より離脱されない。このような状態では、図16に示すように、基板1において割れ等の損傷が生じる場合や、基板1が載置面203より離脱される時に、基板1が跳ねること等による位置ずれが生じる場合がある。
特許文献1に開示されているように、除電プラズマを用いて、残留静電吸着力を減少させることも可能であるが、ガラス貼り付け構造を有し、通常の半導体ウェハよりも高い残留静電吸着力が生じる基板1では、除電プラズマにより残留静電吸着力を減少させるために必要な時間も長くなり、プラズマ処理プロセスの生産性を低下させることが考えられる。
この比較例にかかる基板1の離脱方法に対して、本第1実施形態の基板の離脱方法では、このようなガラス貼り付け基板1に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、載置面12aからの安定した離脱を行うことができる。具体的には、載置面12aの基板配置領域Rの外側領域R1に同心円状に配置された複数の第1突き上げピン21と、内側領域R2に同心円状に配置された複数の第2突き上げピン31とを用いて、まず第1突き上げピン21による突き上げ動作を行って、基板1の縁部を載置面12aから離脱させ、その後、第2突き上げピン31による突き上げ動作を行って、基板1の内側部分を載置面12aから離脱させるという、基板1の外側から内側に向かっての段階的な突上げの上昇と停止を行い、突上げ上昇の停止時に突上げ力が検知閾値以下なっていることを検知して突き上げピンの再上昇を繰り返すステップ動作による離脱動作を行うことにより、通常のシリコンウェハよりも残留静電吸着力が高いという特徴を有するガラス貼付構造の基板1に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、載置面12aからの安定した離脱を行うことができる。
また、このような第1突き上げピン21と第2突き上げピン31を用いた段階的な突き上げ動作を行う際に、突き上げ部分あるいはその近傍にて基板1にたわみが生じることになるが、基板1の物性や仕様に応じて基板1に割れ等の損傷が生じない程度の曲率を超えないように、第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の突き上げストローク(量)を制御することにより、突き上げ動作により基板1に損傷が生じることを防止することができる。
さらに、これらの突き上げ動作を行う際に、除電プラズマを併用することにより、除電プラズマを基板1の外側から内側に向けて徐々に進入させることができ、さらに基板1の離脱を促進させることができる。
また、それぞれの第1突き上げピン21の突き上げにより生じる突き上げ力を、第1ロードセル23にて検出しながら突き上げ動作を行うことにより、基板1の破壊や位置ずれが生じる限度荷重F2を突き上げ力が超過しないようにすることができ、基板1の損傷等を確実に防止することができる。
さらに、第1突き上げピン21による突き上げ動作を行った後、突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、第2突き上げピン31による突き上げ動作を開始するという手法を採用していることにより、突き上げ動作による直接的な離脱効果と、突き上げ状態の保持および除電プラズマによる間接的な離脱効果(すなわち基板1の離脱範囲の拡大効果)とを良好なバランスにて得ることができ、基板に対して損傷や位置ずれを生じない離脱動作を実現することができる。
なお、このような第1突き上げピン21と第2突き上げピン31を用いた段階的な突き上げ動作、すなわち基板1の載置面12aからの離脱動作は、図6、図7Aおよび図7Bを用いて説明した方法にのみ限られるものではない。この離脱動作の変形例について、図7Aおよび図8に示す模式説明図を用いて説明する。
まず、図7Aに示すように、第1突き上げピン21をストロークH1にまで上昇させて、基板1の突き上げを行う。その後、この突き上げ状態を保持して、例えば第1突き上げピン21による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待つ。検知閾値F1にまで減少したことが確認されると、それぞれの第1突き上げピン21の高さはストロークH1に保持したままの状態にて、それぞれの第2突き上げピン31を上昇させる。この時、1回目の突き上げ動作における第1突き上げピン21の上昇速度よりも十分に低い速度にて、それぞれの第2突き上げピン31の上昇を行う。このようにゆっくりとそれぞれの第2突き上げピン31の上昇を行うことで、基板1に対して急激な応力負荷変化を与えることなく、載置面12aから基板1が剥離されている領域を拡大することができる。このようにゆっくりと上昇されるそれぞれの第2突き上げピン31は、例えば、図8に示すように、ストロークH1にまで最終的に上昇される。なお、第2突き上げピン31の上昇は、このようにゆっくりとした速度にて行うような場合に代えて、例えば、ストロークH1よりも小さなストロークにて段階的な上昇を複数回実施することもできる。
また、このように突上げピンの上昇速度をより低くすることで、基板1の載置面12aからの離脱動作において、突き上げピンの突上げ上昇動作を途中で停止することなく、突上げ力の検知閾値F1を越えることの無いように連続して突き上げ上昇動作を行っても良い。
また、限度荷重F2以下の検知閾値F1以下になったら突上げピンの再上昇としたが、検知閾値を突き上げピン上昇の目標値の検知閾値F1a(F1<F1a<F2)として設定し、第1回目の突上げ動作において、突上げピンを所定の一定あるいは可変の速度で上昇させ、検知閾値F1aが検知されたら、突き上げピンの上昇を停止させる。その後、突き上げ力が検知閾値F1a以下になり、基板1が載置面12aより離脱完了していない場合は、第2回目の突上げ動作として再度突上げピンの上昇動作を行う。この時、再度の上昇動作は上昇と停止の繰り返しのステップ上昇動作として微小のステップ上昇動作(例えば一の上昇動作における上昇高さが0.1〜0.2mmであり、少なくとも一の上昇動作における上昇高さは、第1回目の突き上げピンの上昇動作における上昇高さよりも小さい。)を行い、突上げピンの上昇後の停止時に基板1の載置面12aからの離脱完了の検知動作を行う。この微小ステップ上昇動作により載置面12aからの突上げ動作により基板1に発生する応力の発生がより低減され、基板1の載置面12aの離脱がより促進される。
なお、微小のステップ上昇動作において突上げピンの上昇後の停止時に基板1の載置面12aからの離脱完了の検知動作を行うとしたが、基板1の載置面12aからの離脱動作に悪影響がなければ、微小のステップ上昇動作中に連続して離脱完了の検知動作を行っても良い。
次に、基板保持装置12の載置面12aにおけるそれぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の配置について説明する。
このようなプラズマ処理装置10では、プラズマ処理の際に、基板1と載置面12aとを冷却することを目的として、載置面12aと基板1との間にHeガスが供給されるように構成される。そのため、載置面12aには、Heガスを流す、あるいは溜めておくための凹部が形成されている。このような載置面12aに形成された凹部12bとの関係からは、図9Aおよび図9Bに示すように、第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の形成位置は、平面視にて、凹部12bの溝部内とすることが好ましい。また、プラズマ処理中のHeガスによる基板1の冷却中は、凹部12b内をHeガスが流れ易いように突上げピンの先端高さを凹部12bの底部以下とすることが望ましい。このような突き上げピンの配置を採用することにより、Heガスの漏出量を低減させることができる。
また、載置面12aにおけるそれぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の平面的な配置としては、様々な配置を採用することができる。略円盤形状の基板1に対して大きな荷重負荷を加えることなく、載置面12aより離脱のための突き上げ動作を行うという観点からは、基板1に対して負荷される突き上げ力は、より均一に負荷されることが好ましい。そのため、図2に示すように、載置面12aの中心をその中心とする第1の同心円C1上に等間隔にてそれぞれの第1突き上げピン21が配置されることが好ましく、同様に、載置面12aの中心をその中心とする第2の同心円C2上に等間隔にてそれぞれの第2突き上げピン31が配置されることが好ましい。さらに、載置面12aから離脱された基板1を基板搬送アーム41にてその下面側から保持して搬送を行うような場合にあっては、図2、図10に示すように、基板1と載置面12aとの間に基板搬送アーム41の挿入ルートを確保するように、それぞれの第1突き上げピン21および第2突き上げピン31の配置を決定することが好ましい。
なお、上記第1実施形態の説明では、載置面12aに複数の第1突き上げピン21と第2突き上げピン31が備えられ、第1突き上げピン21と第2突き上げピン31との段階的な突き上げ動作を行うような場合について説明したが、本第1実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、載置面12aの少なくとも外周領域に複数の第1突き上げピン21のみが備えられ、複数の第1突き上げピン21を一体的に上昇させながら、突き上げ力を検出して、限度荷重F2を超過しないように、その突き上げストロークの制御を行って、段階的な突き上げ動作を行うような場合あるいは第1回目の突上げ動作において、突上げピンを所定の一定あるいは可変の速度で上昇させ、検知閾値F1aが検知されたら、突き上げピンの上昇を停止させ、突き上げ力が検知閾値F1a以下になり、基板1が載置面12aより離脱完了していない場合は、第2回目の突上げ動作として再度突上げピンの上昇動作を微小のステップ上昇動作で行う場合であってもよい。このような第1突き上げピン21のみによる突き上げ動作は、例えば、基板1が小径であるような場合、あるいは、基板1の離脱に要する時間がある程度確保できるような場合に対して有効である。
また、上記第1実施形態では、対象物をガラス貼り付け基板1としたが、シリコンウェハ3の裏面に絶縁膜を形成したウェハ、絶縁材であるガラス板上に半導体や金属絶縁膜を形成したウェハ、あるいはガラスやシリコンウェハ3そのものを突き上げ対象物とすることもできる。シリコンウェハ3単体では、その残留静電吸着力はガラス貼り付け基板1よりも比較的小さくなる傾向にあるが、300mm以上の大径化されたシリコンウェハ3に対しては、上記第1実施形態の突き上げ動作による載置面12aからの離脱方法をより有効に適用することができる。
また、第1突き上げピン21と第2突き上げピン31の突き上げ動作により生じる突き上げ力を、第1ロードセル23および第2ロードセル33により検出して、突き上げストロークや段階的な突き上げのタイミングが制御されるような場合について説明したが、本第1実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、第1昇降装置22および第2昇降装置32のモータトルクを検出する装置を用いることもできる。
また、突き上げ動作の際に、突き上げ力を検出することなく、突き上げストロークのみを制御することによっても、上記第1実施形態の突き上げ動作を実施することが可能である。例えば、突き上げ対象物である基板1の物性や仕様等に基づいて、突き上げ力を適正な範囲に保つことができる突き上げストロークに関する時間シーケンスを実験等により作成し、この時間シーケンスを用いて突き上げストロークを制御しながら突き上げ動作を実施することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態のプラズマ処理装置10では、基板1に対するプラズマ処理が行われた後に、残留静電吸着力に抗して、基板1に損傷が生じることなく、載置面12aから基板1を離脱させる基板の突き上げ動作について説明を行った。本第2実施形態では、この突き上げ動作を行う前に、すなわち基板1に対するプラズマ処理を完了させた時点にて発生している残留静電吸着力を低減させることで、基板1を載置面12aから離脱させる方法について説明する。
本第2実施形態について説明を行うにあたって、まず、本第2実施形態の構成および方法が適用されていないプラズマ処理装置として、本第2実施形態の比較例のプラズマ処理装置において生じる残留静電吸着保持力について図面を用いて説明する。
図11は、従来のプラズマ処理装置にてプラズマ処理の際に生じる基板に対する静電吸着力等の時間変化を、本第2実施形態に対する比較例として示す図である。具体的には、図11(A)は、ESC印加電圧の時間変化を示すグラフであり、図11(B)は、上部電極および/あるいは下部電極への電力印加の有無(すなわちエッチング等のプラズマ処理を実施しているかどうか)を示すグラフであり、図11(C)は、ESC印加電圧と、電極印加電力による基板の帯電とによる載置面に対する基板の静電吸着力の時間変化を示すグラフであり、図11(D)は、基板と載置面とを冷却することを目的とした載置面と基板との間へのHeガスの供給の有無を示すグラフである。
まず、図11(A)、(C)に示すように、時間Taにて、載置面に基板が載置されると、ESCに電圧が印加されて静電吸着力F11が発生され、時間区間Ta−Tbにて基板の吸着保持が行われる。さらに時間区間Ta−Tbでは、図11(D)に示すように、基板と載置面との間にHeガスの供給が行われて、Heガスが圧力Pに保たれた状態とされる。その後、時間Tbにて、図11(B)に示すように、上部電極および/あるいは下部電極への電力印加(例えば、電力W1の印加)が開始され、時間区間Tb−Tcにて基板に対するプラズマ処理が行われる。
一方、このように時間Tbにてそれぞれの電極への電力印加が開始されると、基板のガラス板などに残留電荷が蓄積されて、残留静電吸着力が生じる。図11(C)に示すように、残留静電吸着力は時間の経過とともに増加し、例えばプラズマ処理が完了する時間Tcでは、ESCによる静電吸着力F11と残留静電吸着力の合計である合計静電吸着力が、F12にまで増大する。すなわち、基板を確実に保持するための静電吸着力F11よりも大きな静電吸着力F12にて基板の保持が行われている状態となる。なお、図11(C)では、図示ハッチング模様を付した部分が残留電荷などにより生じた残留静電吸着力となる。
その後、時間Tcにて、上部電極および/あるいは下部電極等への電極への電力供給が停止されるが、この電力供給の停止では、残留静電吸着力は減少しない。また、時間Tcでは、Heガスの供給も停止され、プラズマ処理が完了する。
プラズマ処理が完了すると、時間Tdにて、ESCへの電圧印加が停止されて、ESCによる静電吸着が解除される。仮に残留静電吸着力が発生しなければ、このESCによる吸着解除に伴って、基板に対する静電吸着力がF11からF13にまで減少することになるが(図11(C)点線参照)、実際には残留静電吸着力が存在するため、静電吸着力はF12からF14にまでしか減少しない。すなわち、ESCによる静電吸着の解除を行った後(時間Td以降)でも、F13よりも明らかに大きな静電吸着力(残留静電吸着力)F14が残留することになる。このように大きな静電吸着力が残留するような場合にあっては、載置面からの基板の離脱を行うことが困難になる、あるいは離脱のための突き上げ動作の実施により基板を損傷させる等という問題が発生する可能性がある。
特にガラス貼り付け基板が用いられるような場合にあっては、基板に反りが生じやすく(例えば山形に600〜800μm程度の反りが生じやすく)、このような反りを矯正するためにも、高い電圧をESCに印加して、強い吸着力にて基板の保持を行う必要がある。例えば、一般的なウェハ単体の吸着には600〜900V程度の電圧の印加が必要であるのに対して、ガラス貼り付け基板ではその3〜4倍程度、すなわち2500V程度の電圧の印加が必要となる。また、ガラス板は強い分極が生じる傾向にあるため、残留静電吸着力が極めて強く、載置面からの基板の適切な離脱を行うことがより困難となる。
本第2実施形態のプラズマ処理装置および方法は、このような残留静電吸着力の残留量を低減させて、プラズマ処理完了後における載置面からの基板の離脱動作を円滑に行えるようにすることを目的とするものである。
まず、本第2実施形態の残留静電吸着力の残留量を低減させる考え方について、図12(A)〜(D)の図面(グラフ)を用いて説明する。図12(A)は、ESC印加電圧の時間変化を示すグラフであり、図12(B)は、ESC印加電圧から得られるESCの静電吸着力の時間変化を示すグラフであり、図12(C)は、電極の印加電圧による基板の帯電により生じる静電吸着力、すなわち残留静電吸着力の時間変化を示すグラフであり、図12(D)は、図12(B)の静電吸着力と、図12(C)の残留静電吸着力との合計である合計吸着力の時間変化を示すグラフである。なお、時間Ta、Tb、Tc、Tdは、図11と共通する。
図12(C)に示すように、時間Tbにて、上部電極および/あるいは下部電極等の電極への電力印加(高周波電圧の印加)が開始されてプラズマ処理が開始されると、残留静電吸着力が増加して、最終的には時間TdにてF16にまで達する。本第2実施形態では、このような時間TbからTdの間に残留静電吸着力の増加が生じるような場合であっても、図12(D)に示すように、時間区間Ta−Tdにて合計吸着力を増加させることなく、例えばF11に一定に保つというものである。
具体的には、図12(A)および(B)に示すように、時間Taにて印加電圧V1にてESCに静電吸着力F11を発生させ、その後、時間Tbから印加電圧を徐々に減少させて電圧V2とすることで、ESCへの電圧印加により生じる静電吸着力をF11からF15に減少させる。すなわち、高周波電圧の印加が開始された後、それに伴って発生する残留静電吸着力の増加量に応じて、ESCへの電圧の印加量を低減させている。ここで、吸着力はおおよそ(F11−F15)=F16に近い関係にある。このようにすることで、図12(D)に示すように、残留吸着力の大きさの増加を、ESCへの電圧印加により生じる静電吸着力の減少により抑制あるいは相殺することができ、時間区間Ta−Tdにおける合計吸着力をほぼ一定に保つことができる。
このように、合計吸着力がほぼ一定に保たれることで、載置面から基板を離脱させる際に残留している残留静電吸着力を低減することができ、その後に行われる離脱動作を円滑に行うことができる。なお、ESCへの電圧印加により生じる静電吸着力F15は、例えば、その力F15のみでは基板の確実な保持のために必要とされる力を下回るような吸着力であり、確実な保持のために必要な力の不足分を残留静電吸着力にて補うことで、合計吸着力が確実な保持のために必要な力を上回るようにしている。
次に、このような本第2実施形態のプラズマ処理装置および方法の具体的な実施形態について図面を用いて説明する。
まず、本第2の実施形態にかかるプラズマ処理装置50の主要な構成の模式図を図13に示す。本第2実施形態のプラズマ処理装置50は、基板保持装置の構成が、上記第1実施形態のプラズマ処理装置10とは異なっている。以下、この異なる構成を主として説明する。なお、図13の本第2実施形態のプラズマ処理装置50にて、図1の上記第1実施形態のプラズマ処理装置10と同じ構成部材には同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図13に示すように、プラズマ処理装置50の基板保持装置は、載置面12aに載置された基板1を静電吸着力により保持するESC57と、このESC57に直流電圧(DC電圧)を印加するESC用電源58とを備えている。さらに基板保持装置は、ESC用電源58からESC57に印加する電圧の大きさを制御する電圧制御装置の一例である電圧制御装置59が備えられている。この電圧制御装置59は、制御装置9により他の構成部材の動作と関連付けられながら統括的に制御されている。具体的には、上部電極13および/あるいは下部電極14への電力の印加のタイミングに関連付けて、制御装置9により電圧制御装置59が制御される。このような関連付けは、予めそれぞれの構成部材の動作を行うタイミングが設定されたプログラムを用いてシーケンス的な制御として行うことができる。なお、このようなプログラムが用いられるような場合に代えて、構成部材の動作開始/停止のタイミング信号を用いて制御されるような場合であってもよい。
このような構成を有するプラズマ処理装置50を用いて、基板1に対して付与される吸着力の増加を抑制しながら、基板に対してプラズマ処理を行う方法について、図14(A)〜(C)に示すグラフを用いて説明する。図14(A)はESC57に印加される電圧の時間変化を示すグラフであり、図14(B)は上部電極13および/あるいは下部電極14に印加される電力の時間変化を示すグラフであり、図14(C)はHeガスの圧力の時間変化を示すグラフである。
まず、プラズマ処理装置50にて、載置面12aに基板1を載置する。その後、時間Taにて、ESC用電源58からESC57に対して直流電圧が印加される。このタイミングにて印加される電圧の大きさは、例えば、そのタイミングと関連付けてプログラム等にて設定されている。このようなプログラムに基づいて電圧制御装置59により印加電圧が制御されて、図14(A)に示すように、例えば2500Vの直流電圧がESC57に印加される。電圧印加によりESC57にて電圧の大きさに比例した静電吸着力が発生して、載置面12a上の基板1が吸着保持される。また、2500Vという印加電圧は、ガラス貼り付け基板1に反り(あるいはたわみ)が生じている場合に、この反りを確実に矯正できるような大きさの電圧として設定されており、ESC57にて発生される静電吸着力により基板1の反りが矯正されるとともに、基板1の吸着保持が行われる。このように初期吸着保持にて反りの矯正が行われると、時間Ta1にて印加電圧を例えば2000Vに下げて、基板1の保持のための適切な静電吸着力が保たれる。また、図14(C)に示すように、基板1と載置面12aとの間にHeガスの供給が開示され、所定の圧力Pに保たれる。
次に、時間Tbにて、基板1に対するプラズマ処理が開始される。具体的には、プラズマ処理容器11内に所定のガスが供給された状態にて、上部電極13および/あるいは下部電極14に電力W1が印加されることによりプラズマを発生させ、基板1に対するエッチング等のプラズマ処理が開始される。
このように、それぞれの電極13および14への電力の印加が開始されると、ガラス貼り付け基板1のガラス板2に電荷が蓄積されて残留静電吸着力が発生するとともに、その大きさが徐々に増加する。そのため、時間Tb1にて、電圧制御装置59によりプログラムに基づいてESC57への印加電圧が、例えば、2000Vから400Vにまで低減される。これにより、ESC57にて電圧印加によって発生される静電吸着力は低減されるが、この低減量に相当する残留静電吸着力が発生しているため、合計吸着力は、ほぼ一定に保つことができるため、載置面12aに基板1が保持された状態が保たれて、プラズマ処理が継続される。その後、さらに時間Tb2に達すると、残留静電吸着力もさらに増加するため、この増加分を実質的に相殺するように、ESC57への印加電圧を、例えば400Vから100Vにまで低減させる。これにより、残留静電吸着力の増加にも拘わらず、基板1に対して付与される合計吸着力は増加することなく、ほぼ一定の大きさに保つことができる。
その後、時間Tcにて、上部電極13および/あるいは下部電極14への電力の印加が停止され、基板1に対するプラズマ処理が完了する。それとともに、Heガスの供給を停止して、He圧力が減少する。その後、時間Tdにて、ESC用電源58によりESC57に対して、正負を反転させた電圧、例えば−3000Vの電圧の印加(正負反転大電圧の印加)を行う。これにより、残留している残留静電吸着力を大幅に減少させることができる。
その後、時間TeからTfにかけて、上部電極13および/あるいは下部電極14に比較的弱い電力W2を印加して除電プラズマを発生させる。このように除電プラズマが発生された状態にて、上記第1実施形態の突き上げピン21、31による基板1の段階的な突き上げ動作を行う、基板1が載置面12aから離間される。
本第2実施形態によれば、プラズマ処理中に生じかつ時間の経過とともに増加する残留静電吸着力の増加量に応じて、ESC57への印加電圧を減少させて、残留静電吸着力の増加を、ESC57への電圧印加により生じる静電吸着力の減少により抑制するあるいは相殺することができる。したがって、プラズマ処理中にて基板1を確実に保持するための吸着力を確保しながら、その吸着力(合計吸着力)が増加しないようにすることができるため、プラズマ処理が完了後の残留静電吸着力の残留量を低減することができる。よって、その後に基板1を載置面12aから離間させるための突き上げ動作を円滑かつ適正を行うことが可能となる。また、このような残留静電吸着力低減の効果は、ウェハ単体に比してその残留静電吸着力が大きくなる傾向にあるガラス貼り合わせ基板に対して特に有効である。
なお、ESC用電源58からESC57に印加される電圧の大きさおよび印加のタイミングは、電圧制御装置59によりプログラムに基づいてシーケンス的に制御されるが、このような電圧および印加のタイミングは、予め基板1に生じる残留静電吸着力の時間的な変化状態の測定を行い、この測定結果に基づいて決定することができる。
また、図14(A)に示すように、ESC57への印加電圧の制御が、段階的(ステップダウン的)に制御されるような場合について説明したが、このような場合に代えて、連続的(リニア的)に印加電圧の制御が行われるような場合であってもよい。
なお、以上、ESCは単極型のESCの印加電圧を説明したが、ESCが双極型の場合は、±の電圧の印加電圧となり、ESC電極が単極の場合には、プラス電圧あるいはマイナス電圧の印加となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態にかかるプラズマ処理装置101の主要な構成を示す模式図を図17に示す。本第3実施形態のプラズマ処理装置101では、プラズマ処理が施される基板として、後述するようにトレイに保持された複数枚のウェハが取り扱われる点において、上記それぞれの実施形態とは異なる構成を有している。ここでトレイに保持されて取り扱われるウェハの材質としては、例えばLED用としてサファイヤ基板、GaN/サフィヤ基板、GaN/GaN基板、GaN/SiC基板、GaN/Si基板、パワーデバイス用としてSiC基板、その他にGaP基板、ZnO基板、LiGaO2基板、βGaO3基板等がある。まず、本第3実施形態のプラズマ処理装置101の構成について、図面を用いて説明する。なお、本第3実施形態のプラズマ処理装置101は、ICP(誘導結合プラズマ)型のドライエッチング装置である。
プラズマ処理装置101は、基板(例えばウェハ)102に対してプラズマ処理を行う処理室を構成するチャンバ(真空容器あるいはプラズマ処理容器)103を備える。チャンバ103の上端開口は石英等の誘電体からなる天板104により密閉状態で閉鎖されている。天板104上にはICPコイル(上部電極)105が配設されている。ICPコイル105にはマッチング回路106を介して、高周波電源(上部電極用高周波電源)107が電気的に接続されている。天板104と対向するチャンバ103内の底部側には、バイアス電圧が印加される下部電極としての機能及び基板102の保持台としての機能を有する基板サセプタ(基板保持装置の一例である)109が配設されている。チャンバ103には、隣接するロードロック室(図示せず)と連通する開閉可能な搬入出用のゲート103aが設けられている。また、チャンバ103に設けられたエッチングガス供給口103bには、エッチングガス供給源112が接続されている。エッチングガス供給源112はMFC(マスフローコントローラ)等を備え、エッチングガス供給口103bから所望の流量でエッチングガスを供給できる。さらに、チャンバ103に設けられた排気口103cには、真空ポンプ等を備える真空排気装置113が接続されている。
本第3実施形態では、図18Aから図19Bに示す1個のトレイ115に4枚の基板102が収容され、トレイ115はゲート103aを通ってロードドック室からチャンバ103内(処理室)に搬入される。なお、このようなトレイ115の搬入は、例えば、水平方向の直進移動と水平面内での回転移動が可能な搬送アームを用いて行われる。また、チャンバ103内には、基板サセプタ109を貫通し、かつ駆動装置(突き上げ装置の一例である)117で駆動されて昇降する複数の突き上げピン118が設けられている。複数の突き上げピン118は、例えば同心円状に等間隔にて配置されており、その上端にて、トレイ115の下面を突き上げるとともに、トレイ115を突き上げた状態にて支持することが可能となっている。トレイ115の搬入時には、トレイ115を支持した搬送アームがゲート103aを通ってロードドック室からチャンバ103内に進入する。この際、図1において二点鎖線で示すように突き上げピン118は上昇位置にあり、チャンバ103内に進入した搬送アーム116から突き上げピン118の上端にトレイ115が移載される。この状態では、トレイ115は基板サセプタ109の上方に間隔をあけて位置している。続いて、突き上げピン118が図1において実線で示す降下位置に降下し、それによってトレイ115に保持されて取り扱われる基板(ウェハ)102がトレイ115とともに基板サセプタ109上に載置される。一方、プラズマ処理終了後のトレイ115の搬出時には、突き上げピン118が上昇位置まで上昇し、続いてロードドック室からチャンバ103内に進入した搬送アームにトレイ115が移載される。なお、プラズマ処理終了後の基板サセプタ109上からのトレイ115および基板102の離脱動作については後述する。また、図17に示すように、駆動装置117には、トレイ115を突き上げる際に、駆動装置117よりそれぞれの突き上げピン118に付加される突き上げ力を検出するための突き上げ力検出部の一例であるロードセル190が備えられている。
次に、図18Aから図19Bを参照して、トレイ115について説明する。トレイ115は薄板円板状のトレイ本体115aを備える。トレイ115の材質としては、例えばアルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y2O3)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)等のセラミクス材や、アルマイトで被覆したアルミニウム、表面にセラミクスを溶射したアルミニウム、樹脂材料で被覆したアルミニウム等の金属がある。Cl系プロセスの場合にはアルミナ、イットリア、炭化シリコン、窒化アルミニウム等、F系プロセスの場合には石英、水晶、イットリア、炭化シリコン、アルマイトを容射したアルミニウム等を採用することが考えられる。
トレイ本体115aには、上面115bから下面115cまで厚み方向に貫通する例えば4個の基板収容孔119A〜119Dが設けられている。基板収容孔119A〜119Dは、上面115b及び下面115cから見てトレイ本体115aの中心に対して等角度間隔で配置されている。図20A及び図20Bに最も明瞭に示すように、基板収容孔119A〜119Dの孔壁115dの下面115c側には、基板収容孔119A〜119Dの中心に向けて突出する基板支持部121が設けられている。本第3実施形態では、基板支持部121は、例えば孔壁115dの全周に設けられており、平面視で円環状である。
個々の基板収容孔119A〜119Dにはそれぞれ1枚の基板102が収容される。図20Aに示すように、基板収容孔119A〜119Dに収容された基板102は、その下面102aの外周縁部分が基板支持部121の上面121aに支持される。また、前述のように基板収容孔119A〜119Dはトレイ本体115aを厚み方向に貫通するように形成されているので、トレイ本体115aの下面115c側から見ると、基板収容孔119A〜119Dにより基板102の下面102aが露出している。
トレイ本体115aには、外周縁を部分的に切り欠いた位置決め切欠115eが設けられている。前述の搬入出用の搬送アームにトレイを載置する際に、位置決め切欠115eに搬送アームの位置決め突起が嵌め込まれる。位置決め切欠115e及び位置決め突起をロードロック室内に設けられたセンサ等で検出することにより、トレイ115の回転角度位置を検出できる。
次に、図17、図18A、図18B、図20A、及び図20Bを参照して、基板サセプタ109について説明する。まず、図17を参照すると、基板サセプタ109は、セラミクス等からなる誘電体板(誘電体部材)123、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等からなり、本第3実施形態ではペデスタル電極として機能する金属板(支持部材)124、セラミクス等からなるスペーサ板125、セラミクス等からなるガイド筒体126、及び金属製のアースシールド127を備える。基板サセプタ109の最上部を構成する誘電体板123は、金属板124の上面に固定されている。また、金属板124はスペーサ板125上に固定されている。さらに、誘電体板123と金属板124の外周をガイド筒126が覆い、その外側とスペーサ板125の外周をアースシールド127が覆っている。
図18A、図18B、図20A、及び図20Bを参照すると、誘電体板123は全体として薄い円板状であり、平面視での外形が円形である。誘電体板123の上端面は、トレイ115の下面115cを支持するトレイ支持面(トレイ支持部、あるいはトレイの配置領域)128を構成する。また、それぞれトレイ115の基板収容孔119A〜119Dと対応する短円柱状の4個の基板載置部129A〜129Dがトレイ支持面128から上向きに突出している。
基板載置部129A〜129Dの上端面は、基板102の下面102aが直接載置される基板載置面(基板配置領域R)131を構成する。また、基板載置部129A〜129Dには、基板載置面131の外周縁部から上向きに突出し、その上端面が基板102の下面102aを支持する円環状突出部132が設けられている。また、基板載置面131の円環状突出部132で囲まれた部分には、基板載置面131よりも十分径が小さい円柱状突起133が、均一に分布するように複数個設けられている。円柱状突起133と円環状突出部132の基板載置面131への突出量は同一であり、円環状突出部132のみでなく円柱状突起133の上端面も基板102の下面102aを支持する。
図20A及び図20Bを参照すると、基板載置部129A〜129Dの外径D1は、基板支持部121の先端面121bで囲まれた円形開口136の径D2よりも小さく設定されている。従って、前述の搬入時にトレイ115が誘電体板123に向けて降下すると、個々の基板載置部129A〜129Dは対応する基板収容孔119A〜119Dにトレイ本体115aの下面115c側から進入し、トレイ115の下面115cは誘電体板123のトレイ支持面(トレイの配置領域)128上に載置される。また、トレイ本体115aの下面115cからの基板支持部121の上面121aの高さH11は、トレイ支持面128からの基板載置面131の高さH12よりも低く設定している。従って、トレイ115の下面115cがトレイ支持面128上に載置された状態では、基板載置部129A〜129Dの上端の基板載置面131で押し上げられ、トレイ115の基板支持部121から浮き上がっている。換言すれば、トレイ115の基板収容孔119A〜119Dに収容され保持されて取り扱われる基板(ウェハ)102をトレイ115とともに基板サセプタ109上に搬入して、基板サセプタ109の誘電体板123のトレイ支持面128上に、トレイ115の下面115cを載置することにより、トレイ支持面128の側から上向きに突出した基板載置部129A〜129Dの上端面である基板載置面131の基板配置領域Rに、基板102をトレイ115の基板支持部121より浮き上がらせて受け渡すこととなる。なお、本第3実施形態においては、誘電体板123の上面内に、複数の基板載置部129A〜129Dが形成され、それぞれの基板載置部129A〜129Dの上面を基板載置面131、すなわち基板配置領域Rとして、それぞれの基板載置部129A〜129Dの周囲における誘電体板123の上面にトレイ115の配置領域が配置されている。
また、図20A及び図20Bに示すように、基板載置部129A〜129Dの外周面138と基板載置面131との接続部分は丸面に面取りしている。従って、基板載置部129A〜129Dの上端側では基板収容孔119A〜119Dの貫通方向から見た外径が、基板載置面131側からトレイ支持面128に向けて増大している。一方、基板載置部129A〜129Dの外周面138の下端側では基板収容孔119A〜119Dの貫通方向から見た外径が一定となっている。
また、図24に示す本第3実施形態の変形例のプラズマ処理装置201のように、外周側よりトレイ215を誘電体板123に対して位置決めするための円環状のガイドプレート267を備えても良い。ガイドプレート267はガイド筒体126の上面に固定されており、誘電体板123の4つの基板載置部129A〜129Dの周囲を取り囲んでいる。ガイドプレート267の内周面267aは下面267bから上面267cに向けて拡がるテーパ面である。また、ガイドプレート267の厚みはトレイ215の厚みとほぼ同程度に設定されている。なお、図24に示す変形例にかかるプラズマ処理装置201では、図17のプラズマ処理装置101と同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその説明を省略する。
図17を併せて参照すると、本第3実施形態の変形例では、トレイ215の外周面215fは下面215cから上面215bに向けて外径が拡大するテーパ面である。ガイドプレート267の内周面267aとトレイ215の外周面215fのテーパ度を含む寸法及び形状は、トレイ215の下面215cをトレイ支持面128上に載置する時、ガイドプレート167の内周面167aによりトレイ215の外周面215fが位置決め案内されるように設定されている。
図24において二点鎖線で示す上昇位置からトレイ215が誘電体板123に向けて降下すると、トレイ215の外周面215fがガイドプレート267の内周面267aに案内される。基板載置部129A〜129Dがトレイ215の基板収容孔119A〜119Dに挿入されることにより基板収容孔119A〜119D内の基板102が誘電体板123の基板載置面131に対して位置決めされるだけでなく、基板102を保持したトレイ215自体がガイドプレート267により誘電体板123に対して位置決めされる。その結果、誘電体部材123の基板載置面131に対する基板102の位置決め精度がさらに向上させることができる。
図17を参照すると、本第3実施形態のプラズマ処理装置101において、誘電体板123の個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131付近には単極型の静電吸着用電極(静電チャックの一例である)140が内蔵されている。これらの静電吸着用電極140は電気的に互いに絶縁されており、直流電源141と調整用の抵抗142等を備える共通の直流電圧印加機構143から静電吸着用の直流電圧が印加される。
図18A、及び図18Bを参照すると、個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131には、伝熱ガス(本第3実施形態ではヘリウム)の供給孔144が設けられている。これらの供給孔144は共通の伝熱ガス供給機構145(図17に図示する)に接続されている。伝熱ガス供給機構145は、伝熱ガス源(本第3実施形態ではヘリウムガス源)146、伝熱ガス源146から供給孔144に到る供給流路147、供給流路147の伝熱ガス源146側から順に設けられた流量計148、流量制御バルブ149、及び圧力計150を備える。また、伝熱ガス供給機構145は、供給流路147から分岐する排出流路151と、この排出流路151に設けられたカットオフバルブ152を備える。さらに、伝熱ガス供給機構145は、供給流路147の圧力計150よりも供給孔144側と排出流路151を接続するバイパス流路153を備える。個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131とその上に載置された基板102の下面102aとの間、詳細には基板102の下面102aと円環状突出部132で囲まれた閉鎖された空間に、伝熱ガス供給機構145によって伝熱ガスが供給される。伝熱ガスの供給時にはカットオフバルブ152は閉弁され、伝熱ガス供給源146から供給路147を経て供給孔144へ伝熱ガスが送られる。流量計148と圧力計150で検出される供給流路147の流量及び圧力に基づき、後述するコントローラ163が流量制御バルブ149を制御する。一方、伝熱ガスの排出時にはカットオフバルブ152が開弁され、基板102の下面102aと基板載置面131の間の伝熱ガスは、供給孔144、供給流路147、及び排出流路151を経て排気口154から排気される。
金属板(下部電極)124には、バイアス電圧としての高周波を印加する高周波印加機構156が電気的に接続されている。高周波印加機構156は、高周波電源(下部電極用高周波電源)157とマッチング用の可変容量コンデンサ158とを備える。
また、金属板124を冷却する冷却機構159が設けられている。冷却機構159は金属板124内に形成された冷媒流路160と、温調された冷媒を冷媒流路160中で循環させる冷媒循環装置161とを備える。
図17にのみ模式的に示すコントローラ(制御装置)163は、流量計148及び圧力計150を含む種々のセンサや操作入力に基づいて、高周波電源107、エッチングガス供給源112、搬送アーム、真空排気装置113、駆動装置117、直流電圧印加機構143、伝熱ガス供給機構145、高周波電圧印加機構156、及び冷却機構159を含むプラズマ処理装置101全体の動作を制御する。また、コントローラ163は、駆動装置117による突き上げピン118のトレイ115に対する突き上げ動作により生じる突き上げ力を、ロードセル190を通じて検出する突き上げ力の検出動作を制御することが可能となっている。さらに、コントローラ163は、駆動装置117を制御して、突き上げピン118を所望の駆動量だけ駆動させる、すなわち所望の高さまで突き上げピン118を上昇させることができる。
次に、本第3実施形態のプラズマ処理装置101において、トレイ115に保持されたそれぞれの基板102に対して、プラズマ処理を行う方法について説明する。
まず、トレイ115の基板収容孔119A〜119Dにそれぞれ基板102が収容される。トレイ115の基板支持部121aで支持された基板102は、トレイ本体115aの下面側から見ると基板収容孔119A〜119Dによりトレイ本体115aの下面115cから露出している。
次に、基板収容孔119A〜119Dにそれぞれ基板102が収容されたトレイ115が搬送アームで支持され、ロードドック室からゲート103aを通ってチャンバ103内に搬入される。図17において二点鎖線で示すように、トレイ115は基板サセプタ109の上方に間隔をあけて配置される。
駆動装置117によって駆動された突き上げピン118が上昇し、搬送アームから突き上げピン118の上端にトレイ115が移載される。トレイ115の移載後、搬送アームはロードロック室に待避し、ゲート103aが閉鎖される。
それぞれの上端にてトレイ115を支持した状態の突き上げピン118は、図17において二点鎖線で示す上昇位置から基板サセプタ109に向けて降下する。図20A及び図20Bを参照すると、トレイ115は下面115cが基板サセプタ109の誘電体板123のトレイ支持面128まで降下し、トレイ115は誘電体板123のトレイ支持面128によって支持される。トレイ115がトレイ支持面128に向けて降下する際に、誘電体板123のトレイ支持面128の側から上向きに突出した基板載置部129A〜129Dがトレイ115の対応する基板収容孔119A〜119D内にトレイ115の下面115c側から進入する。トレイ115の下面115cがトレイ支持面128に近付くのに伴い、基板載置部129A〜129Dの先端の基板載置面131は基板収容孔119A〜119D内をトレイ115の上面115bに向かって進む。図20Bに示すように、トレイ115の下面115cが誘電体板123のトレイ支持面128に載置されると、個々の基板収容孔119A〜119D内の基板102は基板載置部129A〜129Dによって基板支持部121の上面121aから持ち上げられる。詳細には、基板102はその下面102aが基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に載置され、トレイ115の基板支持部121の上面121aに対して間隔をあけて上方に配置される。
このようにトレイ115の基板収容孔119A〜119D内に基板載置部129A〜129Dが進入することにより、トレイ支持面128の側から上向きに突出した基板載置部129A〜129Dの上端面である基板載置面131に、トレイ115の基板支持部121より基板102を浮き上がらせて受け渡され、基板102は基板載置面131に直接載置される。従って、トレイ115に収容された4枚の基板102は、いずれも高い位置決め精度で基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に載置される。また、前述のように基板載置部129A〜129Dの外周面138と基板載置面131との接続部分は丸面に面取りしているので、仮に基板収容孔119A〜119Dと基板載置部129A〜129Dの平面視での位置に微細なずれが存在している場合でも、基板載置部129A〜129Dの面取りされた部分が基板支持部121の先端面121bと接触する。その結果、基板載置部129A〜129Dが基板収容孔119A〜119D内に円滑かつ確実に挿入される。この点でも基板102は基板載置面131に対して高い位置決め精度で載置される。
次に、誘電体板123のトレイ支持面128の側から上向きに突出した複数の基板載置部129A〜129Dにそれぞれ内蔵された静電吸着用電極140に対して直流電圧印加機構143から直流電圧が印加されて静電吸着力が発生され、個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131の基板配置領域Rに受け渡された基板102がそれぞれ静電吸着されて保持される。基板102の下面102aはトレイ115を介することなく基板載置面131上に直接載置されている。従って、基板102は基板載置面131に対して高い密着度で保持される。
続いて、個々の基板載置部129A〜129Dの円環状突出部132と基板102の下面102aで囲まれた空間に、供給孔144を通って伝熱ガス供給装置145から伝熱ガスが供給され、この空間にHeガス等の伝熱ガスが充填される。
その後、エッチングガス供給源112からチャンバ103内にエッチングガスが供給され、真空排気装置113によりチャンバ103内は所定圧力に維持される。続いて、高周波電源107からICPコイル105に高周波電圧を印加すると共に、高周波印加機構156により基板サセプタ109の金属板124にバイアス電圧を印加し、チャンバ103内にプラズマを発生させる。このプラズマにより基板102がエッチングされる。本第3実施形態の例では、1枚のトレイ115で4枚の基板102を基板サセプタ109上に載置できるので、バッチ処理が可能である。
エッチング中は、冷媒循環装置161によって冷媒流路160中で冷媒を循環させて金属板124を冷却し、それによって誘電体板123及び誘電体板123の基板載置面131に保持された基板102を冷却する。上述のように、基板102はその下面102aがトレイ115を介することなく基板載置面131に直接載置され、高い密着度で保持されている。従って、円環状突出部132と基板102の下面102aで囲まれた伝熱ガスが充填されている空間の密閉度が高く、Heガスの伝熱ガスを介した基板102と基板載置面131との間の熱伝導性が良好となる。その結果、個々の基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に保持された基板102を高い冷却効率で冷却できると共に、基板102の温度を高精度で制御できる。また、個々の基板102毎に基板載置部129A〜129Dの円環状突出部132と下面102aで囲まれた空間に伝熱ガスが充填される。換言すれば、伝熱ガスが充填される空間は個々の基板102毎に異なる。この点でも個々の基板102と誘電体板123の基板載置面131との熱伝導性が良好であり、高い冷却効率と高精度の温度制御を実現できる。
また、上述したように、それぞれの基板102は突出して形成されたそれぞれの基板載置部129A〜129Dの基板載置面131に直接載置され、かつ静電吸着されるので、基板載置面131に対する密着度が高い。従って、基板102の上面の外周縁部分を誘電体板123に対して機械的に加圧するためのクランプリング等の部材は不要である。換言すれば、基板102の上面には、その中央部分だけでなく外周縁付近にもプラズマの状態が不安定化する原因となる部材が存在しない。従って、外周縁付近を含む基板102の表面の全領域で均一なプラズマ処理を実現できる。
また、トレイ115に保持されて取り扱われる基板(ウェハ)102としては、例えば青色や白色のLEDやLDは、サファイヤ基板上にGaNをエピ成長させた基板(GaN/サフィヤ基板)、GaN/GaN基板、GaN/SiC基板、GaN/Si基板やサファイヤ基板等が用いられる。これらの基板は2インチから3インチ程度の小さいサイズが主流であり、特にGaN/サファイヤ基板は、基板102に絶縁体であるサファイヤ基板を用いるため、基板102を静電吸着保持するために静電吸着力の強い静電吸着用電極(ESC電極)140が必要である。
GaN/サファイヤ基板を確実に静電吸着(ESC吸着)するとともに、基板102の下面102aの広い範囲と基板載置部129A〜129Dの基板載置面131との間に基板102を冷却する為の伝熱ガスであるHeガスを充填して、基板102を高効率で冷却するためには、低抵抗型(体積抵抗率(25℃)1010〜1011Ω・cm)のモノポーラ(単極型)の静電吸着用電極140を用いて、高い電圧で印加し、微弱な数十〜数百μA程度の漏れ電流を生じさせて、より強いクーロン力および/あるいはジョンソンラーベック力で基板を静電吸着することが好ましい。具体的には、次のように静電吸着を行うことが好ましい。
まず、基板載置部129A〜129Dの円環状突出部132と基板102の下面102aで囲まれた空間に、基板102を冷却する為の伝熱ガスであるHeガスを充填する。基板載置面131の円環状突出部132で囲まれた部分には、基板載置面131よりも十分径が小さい円柱状突起133が、均一に分布するように複数個設けられている。基板載置面131における円柱状突起133と円環状突出部132の突出量は実質的に同一であり、円環状突出部132のみでなく円柱状突起133の上端面も基板102の下面102aを支持する。基板102の下面102aに対する基板載置部129A〜129Dのそれぞれの接触面積の割合は、5〜30%、好ましくは10〜20%である。基板102と基板載置面131との接触面積の割合が大きい程、基板102の静電吸着力が大きいが、伝熱ガスを充填する空間の面積が狭くなり、基板102の冷却能力が低下する。
また、接触面積の割合を小さくして、静電吸着力を大きくするためには、局所的に流れる漏れ電流を大きくする方が好ましく、基板102の下面102aへの基板載置面131の接触部の基板載置面131の円環状突出部132で囲まれた部分には、接触する面積の小さい島状の円柱状突起133が複数あるのが望ましい。また、特に、絶縁抵抗値が高いようなサファイヤやガラス等の基板を静電吸着する場合は、低抵抗値のセラミックス材で構成された基板載置部内に、単極型の静電吸着電極を用いて、高い電圧を印加することが望ましい。そうすると、低抵抗値のセラミック材で構成された基板載置部の内部に電荷の分極が起こり、基板載置面の表面と基板との間に強いクーロン力を働かせて静電吸着保持することができる。以上のことから基板載置面131は、基板102の下面102aと接触する接触面積の割合を10〜20%になるように構成した円環状突出部132で囲まれた部分の空間内に設けられた接触する面積の小さい島状の複数の円柱状突起133とするが好ましい。基板載置部129A〜129Dに内蔵された静電吸着用電極140と基板102の下面102aを載置し支持する基板載置面131との距離は0.2mm〜1.0mm、好ましくは0.3〜0.8mmである。静電吸着力を強くするためには、距離を短くする方がよいが、絶縁耐圧が悪くなる。より強い静電吸着力とするために印加電圧を最大3.0KVとして、絶縁耐圧26.0KV程度を確保するためには、静電吸着用電極140と基板102の下面102aを載置し支持する基板載置面131との距離は0.3〜0.8mmするのが好ましい。なお、基板102の下面102aと基板載置面131との間に伝熱ガスを充填する空間を形成するために、ウェハ状の基板に対応する場合は基板載置面131の形状を円環状の円環状突出部132としたが、四角状の基板に対応する場合は、四角状あるいは多角状の突出部としてもよい。上述のような場合にあっては、残留吸着力もより強いものになってしまうが、後述する基板載置面131の基板配置領域Rからの基板102の離脱動作を行うことで、GaN/サファイヤ基板の離脱を行うことができる。
基板載置面131に対する基板102の位置決め精度を確保しつつ、エッチング処理中にプラズマが基板102の下面102a側に回り込むのを防止するためには、基板102の外周縁とトレイ115の基板収容孔119A〜119Dの孔壁115dとの間の隙間δ1が0.1〜0.2mm程度、基板102の下面102aとトレイ115の基板支持部121の上面121aとの間の隙間δ2が0.2〜0.3mm程度、基板載置部129A〜129Dの側壁と基板支持部121の先端との隙間δ3が0.5mm程度であることが好ましい。
エッチング終了後、高周波電源107からICPコイル105への高周波電圧の印加と、高周波印加機構156から金属板124へのバイアス電圧の印加を停止する。続いて、真空排気装置113によりエッチングガスをチャンバ103内から排気する。また、伝熱ガス供給機構145により基板載置面131と基板102の下面102aから伝熱ガスを排気する。さらに、直流電圧印加機構143から静電吸着用電極140への直流電圧の印加を停止して基板102の静電吸着を解除する。その後、後述するように、それぞれの突き上げピン118によるトレイ115の突き上げ動作を行うことにより、それぞれの突出した基板載置面131の基板配置領域Rからの基板102の離脱動作を行う。この離脱動作の詳細については、後述する。
その後、駆動装置117により上昇位置にまで上昇されたそれぞれの突き上げピン118の上端で、それぞれの基板102を保持するトレイ115が支持された状態とされる。その後、ゲート103aを通ってロードロック室からチャンバ103内に進入した搬送アームに、トレイ115が移載される。トレイ115は搬送アームによってロードロック室へ搬出される。これにより、トレイ115により保持されたそれぞれの基板102に対するプラズマ処理が完了する。
次に、このようにトレイ115に保持された4枚の基板102に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置101において、プラズマ処理が完了したそれぞれの基板102を基板載置面131から離脱させる動作について説明する。この説明にあたって、図21A〜図21Eにプラズマ処理装置101の動作の模式説明図を示し、図22に離脱動作の手順のフローチャートを示し、図23に突き上げピン118の突き上げ力(反力)および突き上げストロークの時間的な変化を表すグラフを示す。なお、図21A〜図21Eに示す模式説明図では、上述の変形例にかかるプラズマ処理装置201にて用いられるガイドプレート267が、プラズマ処理装置101にても用いられる場合を例として説明する。
まず、直流電圧印加機構143から静電吸着用電極140への直流電圧の印加を停止して、静電吸着力による基板102の静電吸着を停止するとともに、チャンバ103の内部空間にて、それぞれの基板102と基板載置面131との間に存在する残留静電吸着力を除去するための比較的弱いプラズマである除電プラズマを発生させる(図22のフローチャートのステップS11)。図21Aに示すように、残留静電吸着力によりそれぞれの基板102は、基板載置面131の基板配置領域Rに保持された状態であるため、このような状態においては、発生された除電プラズマは、基板102と基板載置面131との間に進入することができない。
次に、図23(A)に示す時間区分T0〜T1にて、駆動装置117によりそれぞれの突き上げピン118を一体的に上昇させて、トレイ支持面128よりも上方に突出させる(ステップS12)。その結果、図21Bに示すように、トレイ115がそれぞれの突き上げピン118により突き上げられた状態とされ、トレイ115が、トレイ支持面128より持ち上げられた状態とされる。また、この状態において、それぞれの基板載置面131に保持された状態の基板102の下面の外周縁部に、トレイ115の基板支持部121の上面121aが接触した状態となる。さらに、駆動装置117によりそれぞれの突き上げピン118が一体的に上昇されると、図21Cに示すように、トレイ115全体がそれぞれの突き上げピン118によりさらに持ち上げられるとともに、それぞれの基板102の外周縁部が、トレイ115のそれぞれの基板支持部121により持ち上げられる。その結果、それぞれの基板載置面131の基板配置領域Rの外側領域R1から基板102が部分的に離脱される。
ここで、図23(A)の突き上げ力の変化を示すグラフと、図23(B)の突き上げピン118のストロークの変化を示すグラフとに示すように、駆動装置117によるそれぞれの突き上げピン118の突き上げ(上昇)動作は、ロードセル190にて検出される突き上げ力を参照しながら行われる。具体的には、基板102に対して間接的に付与される突き上げ力が、基板102に対して割れ等の損傷や跳ね等の位置ずれが生じない限度荷重であるF2を超えることなく、かつ2回目の突き上げ動作を開始するための基準荷重である検知閾値F1を超える荷重範囲に入るように、突き上げピン118の突き上げストロークが調整されて、突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの突き上げピン118の先端(上端)は、ストローク(あるいは高さ)H1に位置された状態とされる。
このようにトレイ115全体がトレイ支持面128より上方に持ち上げられ、かつ、それぞれの基板102の外周縁部が突出した基板載置面131より離脱された状態とされることにより、チャンバ103の内部空間に発生されている除電プラズマPが、トレイ115とトレイ支持面128との間に進入し、さらに進入した除電プラズマが、それぞれの基板102と基板載置面131との間に進入することができる。その結果、時間区分T1〜T2にて、除電プラズマPと接触した表面において、それぞれの基板102と基板載置面131との間に存在する残留静電吸着力が低減されて、基板載置面131からの基板102の離脱(剥離)が、基板102の外側から内側に向けて拡がるように促進される。
また、この時間区分T1〜T2では、ロードセル190による突き上げ力の検出が継続して行われ、検出された突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したかどうかの検出が行われる(ステップS13)。
その後、時間T2にて、ロードセル190によって突き上げピン118による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少したことが検出されると、基板102が基板載置面131より完全に離脱されていない場合(ステップS14)には、駆動装置117による突き上げ動作が再び開始される(ステップS12)。具体的には、例えば、図23(A)に示す時間区分T2〜T3にて、駆動装置によりそれぞれの突き上げピン118を一体的にさらに上昇させる。この突き上げ動作により、それぞれの突き上げピン118はその先端がストロークH2に位置された状態とされる。
このように、さらに突き上げピン118を上昇させて突き上げ動作を行うことにより、図21Dに示すように、それぞれの突き上げピン118によりトレイ115全体をさらに持ち上げて、それぞれの基板102の外周縁部を持ち上げることができ、それぞれの基板載置面131の基板配置領域Rの内側領域R2にて基板102を突出した基板載置面131から完全にあるいは部分的に離脱させることができる。部分的に離脱されている場合には、トレイ115とトレイ支持面128との間の隙間に進入した除電プラズマPを、基板102と基板載置面131との間にさらに進入させて、残留静電吸着力を低減させることができ、基板102の離脱がさらに促進される。
この2回目の突き上げ動作により、基板102が基板載置面131より完全に離脱されていない場合には、突き上げピン118による突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T4〜T5にて、再び、突き上げピン118による突き上げ動作が行われる。その結果、それぞれの突き上げピン118はその先端がストロークH3に位置された状態とされる。
この3回目の突き上げ動作により、それぞれの基板102が基板載置面131よりまだ完全に離脱されていない場合には、例えば、突き上げピン118の突き上げ力が検知閾値F1にまで減少することを待って、時間区分T6以降にて、それぞれの突き上げピン118による突き上げ動作を行う。一方、図21Eに示すように、それぞれの基板載置面131より基板102が完全に離脱されていることが確認されると(ステップS14)、それぞれの基板102の基板載置面131からの離脱のための突き上げ動作が完了する。なお、それぞれの基板載置面131より基板102が完全に離脱されていることの確認は、例えば、ロードセル190にて検出される突き上げ力がそれぞれの基板102およびトレイ115の合計自重に相当する荷重となっていること、基板載置面131から基板102が離脱したことを示す離脱閾値F3以下になっていることを検出すること、および、突き上げピン118のストロークが所定のストロークに達していることのいずれか1つあるいは複数の組み合わせなどにより行うことができる。
このように、トレイ115の保持された複数の基板102を、それぞれの基板載置面131から離脱させる場合に、同心円状に配置された複数の突き上げピン118を用いて、トレイ115全体をトレイ支持面128から持ち上げて、この持ち上げられたトレイ115のそれぞれの基板支持部121により、基板102の外周縁部を持ち上げることができる。すなわち、トレイ115に保持されている比較的その径が小さな複数の基板102を、それぞれの突き上げピン118により直接的に突き上げることなく、トレイ115を介して間接的に突き上げる(持ち上げる)ことができる。したがって、装置構成を複雑化することなく、複数の基板102に対する基板載置面131よりの離脱動作を行うことができる。また、それぞれの突き上げピン118によるトレイ115の突き上げ動作は、突き上げ力を検知しながら突き上げピン118の上昇動作を繰り返すというステップ動作となるため、残留静電吸着力が高い場合であっても、それぞれの基板102に損傷や位置ずれを生じさせることなく、基板載置面131からの安定した離脱を行うことができる。
さらに、このようなトレイ115を介した間接的な突き上げ動作を行う際に、除電プラズマを併用することにより、除電プラズマを持ち上げられたトレイ115とトレイ支持面128との間に進入させて、この進入した除電プラズマを基板102の外側から内側に向けて徐々に進入させることができ、それぞれの基板102の離脱を促進させることができる。
また、本第3実施形態のプラズマ処理装置101においても、上記第2実施形態のプラズマ処理装置50と同様に、それぞれの基板102に対して付与される静電吸着力の増加を抑制しながら、それぞれの基板102に対するプラズマ処理を行うことができる。すなわち、プラズマ処理中において、それぞれの基板102が基板載置面131に静電吸着力により確実に吸着保持された後は、例えば、直流電圧印加機構143から静電吸着用電極140に対して印加される電圧を段階的に下げていくことで、それぞれの基板102を離脱させる際に存在している残留静電吸着力を低減させることができる。なお、本第3実施形態のプラズマ処理装置101は、このような静電吸着用電極140への印加電圧の段階的な制御が実施される場合のみに限られるものではない。すなわち、本第3実施形態のプラズマ処理装置101において、静電吸着用電極140への印加電圧の段階的な制御が行われることなく、それぞれの突き上げピン118の段階的な上昇による基板の離脱動作のみが行われるような場合であっても、それぞれの基板102に対する損傷等の発生を抑制しながら、基板の離脱動作を行うことができる。
なお、上述の説明では、それぞれの突き上げピン118が、トレイ115の外周縁部を均等に突き上げることができるように同心円状に配置されている場合を例として説明したが、突き上げピンの配置としては、様々な形態を採用することが可能である。特に、本第3実施形態では、トレイ支持面128に静電吸着力により吸着保持されない(吸着保持され難い)材料にて形成されたトレイ115を突き上げることで、間接的にそれぞれの基板102を持ち上げるような離脱方法が採用されている。また、トレイ115自体は、基板102に比してたわみが生じにくい材料および形状にて形成されている。そのため、トレイ115に対して略均一な突き上げ力が付与されるようにそれぞれの突き上げピン118が配置されていれば良く、例えば、トレイ115の中央付近を突き上げるようにそれぞれの突き上げピン118を配置することもできる。また、トレイ115の径が比較的大きくなるような場合(例えば、300mm以上の径を有する場合)にあっては、安定した突き上げ動作を行うために、外周縁部側を突き上げる突き上げピンに加えて、その内側領域を突き上げる突き上げピンを配置しても良い。
また、上述の説明では除電プラズマの発生タイミングは、基板102あるいはトレイ115の突き上げ動作を開始する前に行うとしたが、載置面からの基板102の離脱に悪影響が無ければ、突き上げ動作を開始してから除電プラズマを発生されても良い。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態にかかるプラズマ処理装置について説明する。本第4実施形態のプラズマ処理装置の構成を説明するに先立って、静電吸着によりウェハの保持を行う従来のウェハ保持装置の構成について説明する。
ウェハ、例えば半導体ウェハ(Si、化合物等により形成)に対するプラズマ処理を行うプラズマ処理装置では、処理容器内に設けられたウェハ保持装置の載置面にウェハを載置して保持した状態にて、ウェハに対するエッチング等のプラズマ処理が行われる。このようなウェハ保持装置では、一般的にESC(Electrostatic Chuck)と呼ばれる静電チャックが載置面内に内蔵されており、静電チャックによって発生されるクーロン力および/あるいはジョンソンラーベック力による静電吸着力を用いたウェハの保持が行われている。
このような従来のウェハ保持装置にて用いられているESCの構造について、図33に示す模式説明図を用いて説明する。
図33に示すように、ウェハ保持装置の載置面内にはESC501が内蔵されている。ESC501は、平面的に一方の側から他方の側に延在する複数の帯状の電極により大略くし形状に形成された第1の電極502と、他方の側から一方の側に延在する複数の帯状の電極により大略くし形状に形成された第2の電極503とを備えている。また、ESC501において、一方の帯状の電極の端部が、他方の帯状の電極の間に配置されるように、第1および第2の電極502、503が互いに接触することなく組み合わされた状態で配置されている。
このような従来のESC501において、載置面上に載置されたウェハの静電吸着による保持を行う際には、例えば、第1の電極502に正電圧を印加し、第2の電極503に負電圧を印加することにより静電吸着力を発生させて、発生された静電吸着力により載置面へのウェハの保持が行われる。また、このような従来のESCでは、載置面における静電吸着力を均一化させるための様々な提案がなされている(例えば、特許第3527823号公報参照。)。
しかしながら、このような従来のウェハ保持装置では、ESCによる静電吸着を停止した後であっても、載置面とウェハに蓄積された電荷により静電吸着力(以降、「残留静電吸着力」とする。)が残留する。そのため、残留静電吸着力により、載置面からウェハを離脱することが阻害されるという問題がある。
特に、ウェハが単なる半導体ウェハ単体ではなく、ガラス板貼り付け構造を有する基板であるような場合には、ウェハ単体が取り扱われるような場合と比して、その残留静電吸着力は大きくなる。そのため、ガラス板貼り付け構造を有する基板が取り扱われる場合には、載置面からの基板の離脱がさらに困難となる。
また、載置面からのウェハや基板の離脱動作としては、ESCによる静電吸着を解除した後、例えば、載置面から複数の突き上げピンを一体的に上昇させることにより行われる方法が多く採用されている。しかしながら、大きな残留静電吸着力が残存している状態で、このような突き上げピンによる基板等の突き上げ動作が行われると、基板において割れ等の損傷が生じる場合や、基板が載置面から離脱される時に、基板が飛び跳ねること等による位置ずれが生じる場合がある。
本第4実施形態のプラズマ処理装置は、ESCに採用されている構造的および機能的特徴によって、このような問題を解決するものである。
本第4実施形態にかかるプラズマ処理装置310の主要な構成を示す模式図を図25に示す。本実施形態のプラズマ処理装置310には、絶縁材料であるガラス板302上に、ウェハ、例えば半導体ウェハの一例であるシリコンウェハ(Siおよびその化合物等により形成された半導体ウェハ)303が貼付材304を介して貼り付けられたガラス貼り付け構造を有するガラス貼り付け基板301(以降、「基板301」とする。)が、プラズマ処理の対象物として取り扱われる。ここで、シリコンウェハ303としては、例えば25〜400μm、特に50〜200μmの厚さを有するものが用いられる。ガラス基板302としては、例えば300〜500μm、特に400μm程度の厚さを有するものが用いられる。また、貼付材304としては、例えばレジストや粘着剤あるいは粘着シートが用いられる。このような基板301のシリコンウェハ303に対して、所定のプラズマ処理を施すことにより、イメージセンサ等のデバイスが製造される。また、基板301は、例えば直径200mmの円盤形状を有している。
図25に示すように、プラズマ処理装置310は、その内部空間(プラズマ処理空間)にて所定のプラズマ処理が行われるプラズマ処理容器311と、プラズマ処理容器311内に設置され、基板301のガラス板302側が載置される載置面305aを有する載置部材の一例である載置台305を備え、載置面305aに載置された基板301に対して、静電吸着による保持を行う基板保持装置312とを備えている。さらに、図25に示すように、プラズマ処理容器311の内側上部には上部電極313が設置され、基板保持装置312の内部には下部電極314が設置されている。上部電極313には、上部電極用高周波電源315が接続されており、下部電極314には下部電極用高周波電源316が接続されている。さらに、基板保持装置312の載置台305の内部、すなわち載置面305aの内部には、静電吸着を行うための静電チャックの一例であるESC330が内蔵されており、ESC330にはESC用電源(静電チャック用電源の一例である。)が接続されている。なお、ESC330およびESC用電源の詳細については後述する。
このような構成のプラズマ処理装置310では、基板保持装置312の載置面305aに基板301を載置させて、ESC330の静電吸着により基板301の保持を行った後、プラズマ処理容器311の内部を所定の圧力に保持しながら所定のプラズマ処理用ガスを供給して充填する。その後、上部電極用高周波電源315より上部電極313への電圧印加を行うとともに、下部電極用高周波電源316より下部電極314への電圧印加を行って、プラズマを発生させ、基板301のシリコンウェハ303に対するプラズマ処理を行う。プラズマ処理が完了すると、それぞれの高周波電源315、316による電圧印加を停止し、プラズマ処理容器311内のガスを排気して、基板301に対するプラズマ処理が完了する。それとともに、ESC用電源によるESC330への電力供給が停止され、ESC330による基板301に対する静電吸着が解除される。
次に、プラズマ処理装置310において、載置面305aと基板301との間に存在する残留静電吸着力に抗して、プラズマ処理が完了した基板301を載置面305aから離脱させるために備えられている構成について説明する。ここで、基板保持装置312の載置面305aの模式平面図を図26に示す。
図25および図26に示すように、基板保持装置312には、載置面305aの基板配置領域Rの外縁近傍の領域に配置された複数の突き上げピン321と、これらの突き上げピン321を載置面305aより一体的に昇降させて載置面305aより突出させるあるいは載置面305a内に格納させるように動作させる昇降装置322とを有する突き上げ装置320が備えられている。図26に示すように、4本の突き上げピン321が、載置面305aの基板配置領域Rの中心をその中心とする一つの円である同心円C1の円周上に、例えば等間隔にて配置されている。なお、それぞれの突き上げピン321が配置される同心円C1は、基板配置領域R内でかつ載置面305aに載置される基板301の縁部およびその近傍の領域、あるいは載置面305aに載置される基板301の半径の1/2以上の基板301の外周側に位置する領域に位置される。
また、図25に示す本実施形態のプラズマ処理装置310では、図26に示すように、載置面305a全体が基板301に対する基板配置領域Rとなっているが、このような場合に代えて、載置面の一部が基板配置領域として設定されるような場合であってもよく、あるいは載置面305aより基板配置領域Rが大きく設定されているような場合であってもよい。載置面305aより基板配置領域Rが小さい場合には、基板301の周縁部におけるプロセス特性(例えば、エッチングレート等)の均一性が向上するが、載置面305aに備えたESC330の電極が基板配置領域Rよりも大きい場合には、ESC330の電極がプラズマにさらされ、その寿命が短くなる場合がある。これに対して、載置面305aより基板配置領域Rが大きい場合には、載置面305aに備えたESC330の電極が基板301の周縁よりも小さくなるため、プラズマにさらされるという問題は生じないが、基板301の周縁部におけるプロセス特性が不均一となる場合がある。
また、図25に示すように、プラズマ処理装置310には、昇降装置322による突き上げピン321の昇降動作、上部電極用高周波電源315による電圧印加動作、下部電極用高周波電源316による電圧印加動作、およびESC用電源によるESC330への電圧印加動作を、互いの動作を関連づけながら制御する制御装置309が備えられている。さらに制御装置309は、昇降装置322を通じて、突き上げピン321の載置面305aよりの突き上げ量(ストローク)を検出することが可能となっている。
次に、プラズマ処理装置310において、静電吸着力により基板301を載置面305aに確実に保持しながら、載置面305aと基板301との間に存在する残留静電吸着力を低減させることを可能とするESC330の構成について説明する。ESC330の電極の配置構成の模式平面図を図27に示す。
図27に示すように、ESC330は、載置台305の載置面305aの内部(下方)に配置された複数の双極電極を備えている。具体的には、正電圧が印加される第1正極部331aと、負電圧が印加される第1負極部331bとが一対に構成された第1双極電極331と、正電圧が印加される第2正極部332aと、負電圧が印加される第2負極部332bとが一対に構成された第2双極電極332とが、ESC330の電極として備えられている。第1正極部331aは、帯状の電極が環状に形成された構成を有しており、その環状の中心が載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの中心mと一致するように、載置面305aの外縁近傍に配置されている。第1負極部331bも、第1正極部331aと同様に、帯状の電極が環状に形成された構成を有しており、その環状の中心が中心mと一致するように、第1正極部331aの内縁から所定の距離だけ離間した状態で、第1正極部331aよりも内側に配置されている。さらに、帯状の電極が環状に形成された構成を有する第2正極部332aが、その中心を中心mと一致させるとともに、第1負極部331bの内縁から所定の距離だけ離間した状態で、第1負極部331bよりも内側に配置されている。また、さらに、第2正極部332aよりも内側には、帯状の電極が環状あるいは円状に形成された構成を有する第2負極部332bが、その中心を中心mと一致させるとともに、第2正極部332aの内縁から所定の距離だけ離間した状態で配置されている。各々の帯状の電極(第1正極部331a等)の帯状の幅は、個々の電極においてそれぞれに一定の最適な幅に形成されている。ただし、このような場合に代えて全ての帯状の電極において帯状の幅が同じ寸法にて形成されているような場合であってもよい。同様に、隣接する帯状の電極間の所定の離間距離は、個々の電極間において最適な寸法に設定されている。なお、第1双極電極331および第2双極電極332が環状に形成されるような場合に代えて、例えば、帯状の部分円弧状に形成された電極を複数個、環状に配列させて形成されるような場合であっても良い。
ここで、図25に示すESC330の構成を、詳細に示す模式図を図34に示す。図34に示すように、第1正極部331aおよび第1負極部331bにより構成された第1双極電極331には、第1双極電極用電源333が電気的に接続されている。具体的には、第1正極部331aの正電圧を印加して、第1負極部331bに負電圧を印加可能なように、第1双極電極用電源333が接続されている。同様に、第2正極部332aおよび第2負極部332bにより構成された第2双極電極332には、第2双極電極用電源334が電気的に接続されている。具体的には、第2正極部332aの正電圧を印加して、第2負極部332bに負電圧を印加可能なように、第2双極電極用電源334が接続されている。なお、本実施形態では、第1双極電極用電源333および第2双極電極用電源334が、ESC用電源、すなわち静電吸着用電源の一例を構成している。
ここで双極電極に電圧を印加させることにより、静電吸着力を発生させて、基板301を保持する原理について、図28の模式図を用いて説明する。図28に示すように、第1双極電極331において、第1正極部331aに正電圧を印加するとともに、第1負極部331bに負電圧を印加すると、載置面305a上に載置された基板301の表裏面において誘電分極が生じる。これより、載置面305aに面する基板301の上面側の面である基板301の表面において、第1正極部331aと対向する基板301の表面が正電荷に帯電し、第1負極部331bと対向する基板301の表面が負電荷に帯電され、その反対側の面である基板301の裏面では、逆の電荷に帯電された状態となる。このように基板301において誘電分極が生じることにより、第1正極部331aと第1負極部331bとの間には、ジョンソンラーベック力Fと称されるクーロン力Fが生じ、このクーロン力Fにより基板301が載置面305aに対して保持された状態となる。第2双極電極332においても電圧を印加することにより、同様にジョンソンラーベック力Fが生じて、基板301が載置面305aに保持される。
また、図25に示すように、プラズマ処理装置310には、第1双極電極用電源333から第1双極電極331に印加される電圧の大きさおよびタイミングを制御するとともに、第2双極電極用電源334から第2双極電極332に印加される電圧の大きさおよびタイミングを制御するESC用の電圧制御装置308が備えられている。この電圧制御装置308は、第1双極電極用電源333による印加電圧の大きさおよびタイミングと、第2双極電極用電源334による印加電圧の大きさおよびタイミングとを互いに異ならせるように制御することが可能となっている。なお、電圧制御装置308は、他の構成装置と同様に制御装置309により統括的に制御される。
次に、このような構成のプラズマ処理装置310にて、基板保持装置312の載置面305aに載置された基板301に対して、プラズマ処理を行い、その後、載置面305aから離脱させる方法について説明する。この説明にあたって、具体的な手順のフローチャートを図29に示し、第1双極電極331および第2双極電極332への印加電圧の大きさと印加のタイミングを示すグラフを図30(A)および(B)に示す。また、プラズマ処理を実施するために上部電極313および/または下部電極314への電力印加のタイミングを示すグラフを図30(C)に示し、さらに、基板外縁付近領域および基板中央付近領域の静電吸着力の大きさの変化を示すグラフを図30(D)および(E)に示す。なお、以降に説明するそれぞれの手順における動作は、プラズマ処理装置310が備えるそれぞれの構成装置が、制御装置309により制御されることにより行われる。
まず、図29のフローチャートのステップS21において、プラズマ処理装置310のプラズマ処理容器311内に基板301を搬入して、基板301を載置面305a上に載置する。その後、電圧制御装置308によりESC330用の第1双極電極用電源333および第2双極電極用電源334が制御されて、第1双極電極用電源333により第1双極電極331に電圧が印加されるとともに、第2双極電極用電源334により第2双極電極332に電圧が印加される(ステップS22)。
具体的には、図30のグラフに示すように、時間T1において電圧印加が開始され、載置面305aにおいて外周側に位置される第1双極電極331には、例えば2500V(±2500V)の電圧が印加されるとともに、載置面305aにおいて内周側に位置される第2双極電極332には、例えば2500V(±2500V)の電圧が印加される。この印加される2500Vという電圧は、後述するプラズマ処理を行っている間に印加され続ける電圧よりも比較的大きな電圧として印加される。この電圧の印加により、載置面305aにおいて静電吸着力が生じ、例えば単に載置された状態では、基板301に反りやたわみが生じているような場合には、静電吸着力により反りやたわみが矯正された状態で、基板301が載置面305aに静電吸着保持される(ステップS23)。
その後、図30(C)のグラフに示すように、上部電極313および下部電極314への電圧印加が、時間T2において開始されて、載置面305aに保持された状態の基板301に対するプラズマ処理が行われる(ステップS24)。
ガラス板302にウェハが張り合わされたガラス貼り合わせ基板である基板301が用いられる本実施形態においては、プラズマ処理完了後も静電吸着力として残留静電吸着力が強く残留する。このように残留静電吸着力が強く残留している状態にて、載置面305aからの基板301の離脱が複数の突き上げピンを一体的に上昇させて、基板301の外縁付近領域を突き上げることにより行われる場合、複数の突き上げピンにより基板301の載置面305aより離脱し始めている基板301の外縁付近領域に比して中央付近領域は、基板301と載置面305aの間に大きな残留静電吸着力が残存しているため、載置面305aからの離脱が困難となる。これに対し、基板301全体のESC330による静電吸着力を下げると、基板301の裏面を載置面305a側よりHeガスにて冷却する場合などでは特に、基板301の外縁からのHeガスのリーク量が大きくなり、基板のプラズマ処理品質が低下してしまう。このため、載置面305aから基板301の離脱性が基板の外縁付近領域に比して低い中央付近領域に対し、載置面305aからの離脱性向上の為に相対的に残留吸着力低減させるようにすることが好ましい。すなわち、基板301の中央付近領域の静電吸着力は、外縁付近領域に対して付与される静電吸着力よりも相対的に低く設定された状態で、載置面305a上での基板301の静電吸着保持を行うのが好ましい。
このような観点から、本実施形態では、時間T1から時間T3にまで達すると、電圧制御装置308によりそれぞれのESC330用の双極電極用電源333、334が制御されて、印加されている電圧が低減される(ステップS25)。具体的には、第1双極電極用電源333から第1双極電極331に対して印加される電圧が、2500Vから2000Vにまで低減されるとともに、第2双極電極用電源334から第2双極電極332に対して印加される電圧が、2500Vから1500Vにまで低減される。すなわち、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの中央付近領域に位置される第2双極電極332への印加電圧が、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの外周側に位置される第1双極電極331への印加電圧よりも小さくなるように、それぞれの印加電圧が制御される。その結果、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの中央付近領域におけるESC330の基板301に対する静電吸着力F22は、載置面305aおよび/あるいは基板配置領域Rの外周側の静電吸着力F21よりも低くされる。ここで、基板301の「外縁付近領域」とは、載置面305aに対する基板301の少なくとも基板配置領域Rを含み、かつ載置面305aに載置される基板301の縁部および/あるいはその近傍の領域、あるいは載置面305aに載置される基板301の半径の1/2以上の基板301の外周側に位置する領域に位置されるものであり、基板301の「中央付近領域」とは、基板301の外縁付近領域に対し、基板301の中心側に位置する領域と定義する。
このように、その中央付近領域と外縁付近領域とで大きさを異ならせて発生されたESC330による静電吸着力により、プラズマ処理中に基板301が載置面305aとの間で受ける残留吸着力を含めた相対静電吸着力を基板301の外縁付近領域とその中央付近領域において異ならせて低減させることが可能である。これによりプラズマ処理後の基板301の載置面305aから離脱前の基板301が載置面305aとの間で受けている中央付近の残留吸着力を相対的に低減することができる。ここで、プラズマ処理中に基板301の中央付近領域の静電吸着力は、外縁付近領域に対して付与される静電吸着力よりも少なくとも相対的に低く設定された状態で、載置面305a上での基板301の静電吸着保持を行うとしたが、プラズマ処理前であっても、プラズマ処理品質に基板301のそりや温度等による問題がなければ、基板301の中央付近領域の静電吸着力を外縁付近領域に対して付与される静電吸着力よりも相対的に低く設定あるいは切り替えを行っても良い。なお、プラズマ処理実施のための詳細手順については、上述したため、ここでは省略する。
図30のグラフの時間T4にて、基板301に対するプラズマ処理が完了すると、それぞれの双極電極用電源333、334からESC330の双極電極331、332への電圧の印加が停止される(ステップS26)。このように電圧印加が停止されても、図30(D)、(E)のグラフの時間T4においては、基板301と載置面305aとの間に存在する残留吸着力として、基板301の中央付近領域は、外縁付近領域の残留吸着力F23に比して低減された残留静電吸着力F24となっている。
その後、プラズマ処理容器311の内部空間にて、基板301と載置面305aとの間に存在する残留静電吸着力F23、F24を除去するための比較的弱いプラズマである除電プラズマを発生させる(ステップS27)。例えば、プラズマ処理容器311の内部空間に、シリコンウェハ303に対するプラズマ処理(例えばエッチング等)が進行しない不活性ガス(Ar、N2、O2等)を供給した状態にて、上部電極313および/あるいは下部電極314に電圧を印加することにより、除電プラズマPが発生される。ただし、残留静電吸着力により基板301は載置面312aに保持された状態であるため、このような状態においては、除電プラズマPは基板301と載置面312aとの間に進入することが困難である。なお、本実施形態では、上部電極313、上部電極用高周波電源315、下部電極314、下部電極用高周波電源316、および図示しないガス供給装置が、除電プラズマ発生部の一例を構成している。
次に、図31のプラズマ処理得装置310の模式図に示すように、突き上げ装置320の昇降装置322により4本の突き上げピン321を一体的に上昇させて、載置面305aよりも上方に突出させる(ステップS28)。その結果、図31に示すように、基板301の外周部分がそれぞれの突き上げピン321により突き上げられた状態とされ、載置面305aの基板配置領域Rの外縁付近領域において基板301が部分的に離脱される。すなわち、基板301の縁部が載置面305aから離脱した状態とされる。
このように基板301の縁部が載置面305aより離脱された状態とされることにより、プラズマ処理容器311の内部空間に発生されている除電プラズマPが、基板301の外周側より基板301と載置面305aとの間に進入することができる。その結果、図30のグラフの時間区分T4〜T5にて、除電プラズマPと接触した表面において、基板301と載置面305aとの間に存在する残留静電吸着力が低減されて、載置面305aからの基板301の離脱(剥離)領域が、基板301の外側から内側に向けて拡がるように促進される。
その後、例えばこのような複数の突き上げピン321による一体的な上昇が再度実施されることなどにより、除電プラズマPが、ESC330の第2双極電極により相対的に残留吸着力が予め低減されている基板301と載置面305aとの間における中央付近領域にまで達し、中央付近の残留静電吸着力も取り除かれて、基板301が載置面305aから離脱する(ステップS29、時間T5)。
本実施形態のプラズマ処理装置310によれば、基板保持装置312の載置台305の載置面305aに内蔵されているESC330が、同心円状に配置された環状かつ帯状の複数の双極電極331、332により構成されていることにより、基板301の中心を基準として偏りのない静電吸着力を発生することができ、安定した基板の静電吸着保持を行うことができる。
さらに、載置面305aにおいて、同心円の中心側に配置される第2双極電極332に対して第2双極電極用電源334から印加される電圧が、外周側に配置される第1双極電極331に対して第1双極電極用電源333から印加される電圧よりも小さくなるように、それぞれの印加電圧の大きさが制御されることにより、基板301の中央付近領域にて生じる静電吸着力を、基板301の外縁付近領域にて生じる静電吸着力よりも小さくすることができる。載置面305a上に載置された基板301は、外縁付近領域にてそれぞれの突き上げピン321により突き上げられるため、基板301の外縁付近領域では、比較的容易に載置面305aからの局所的な離脱を行うことができる。さらに、外縁付近領域にて局所的に離脱された基板301に対しては、基板301と載置面305aとの間に、除電プラズマPを接触的に導くことができるため、基板301の外縁から中央付近領域に向けて基板301の離脱範囲を拡げることができる。特に、本実施形態のように、基板301の中央付近領域の静電吸着力を比較的小さく制御していることにより、このような除電プラズマPの導入による離脱効果を効果的に得ることができる。それとともに、それぞれの突き上げピン321による基板301の外縁付近領域の突き上げ動作によって基板301が離脱する範囲を、基板301の中央付近領域に向けて拡大することができる。
したがって、通常のシリコンウェハよりも残留静電吸着力が高いという特徴を有するガラス貼付構造の基板301に対して、損傷や位置ずれを生じさせることなく、載置面305aからの安定した離脱を行うことができる。
また、基板301はガラス貼り付け構造を有しているため、反りやたわみが生じているような場合もある。そのため、載置面305aに基板301を載置して静電吸着力を付与する際に、比較的高い電圧(プラズマ処理中において印加される電圧と比して高い電圧)を、それぞれの双極電極331、332に印加することにより、比較的高い静電吸着力を発生させて、基板301の反りやたわみを矯正して取り除くことができる。このような反りやたわみの矯正を行った後、基板301の保持のために必要な程度にまで印加電圧を下げるとともに、基板301の中央付近領域と外縁付近領域にて付与される静電吸着力を個別に制御することにより、載置面305aへの基板301の確実な保持(反りやたわみが矯正された状態での保持)を実現しながら、残留静電吸着力を低減させて、載置面からの基板の安定した離脱を行うことができる。
このようなプラズマ処理装置310では、プラズマ処理の際に、基板301と載置面305aとを冷却することを目的として、載置面305aと基板301との間にHeガスが供給されるように構成される。そのため、載置面305aには、Heガスを流す、あるいは留めておくための凹部305bが形成されている。このような載置面305aに形成された凹部305bとの関係から、図32に示すように、平面視にて凹部305bの溝部内に突き上げピン321を配置することが好ましい。また、プラズマ処理中のHeガスによる基板301の冷却中は、凹部305b内をHeガスが流れ易いように突き上げピン321の先端高さを凹部305bの底部以下とすることが望ましい。このような突き上げピンの配置を採用することにより、Heガスの漏洩量を低減させることができる。なお、この凹部305bは、例えば深さdが100μmにて形成される。
また、このようにプラズマ処理の際にHeガスが用いられるため、基板301の縁部と載置面305aとの間からは、Heガスが漏洩しないように(あるいは漏洩量を少なくするように)、静電吸着力により確実な保持を行うことが好ましい。そのため、本第4実施形態では、図27に示すように、載置面305aの最外周に第1双極電極331の第1正極部331aを配置している。プラズマ処理中では基板301はマイナスに帯電する為、正極部の方が基板301とESC電極の電位差が大きくなるので、正極部にて生じる静電吸着力は、負極部にて生じる静電吸着力よりも大きいため、第1双極電極331にて第1負極部331bよりも外周側に第1正極部331aを配置することにより、基板301の外縁をより確実に保持することができる。
本第4実施形態では、載置面305aにおいて外周側に配置されている第1双極電極331に対して第1双極電極用電源333により電圧を印加し、中心側に配置されている第2双極電極332に対して第2双極電極用電源334により電圧を印加して、それぞれの双極電極331、332に印加される電圧を制御するような場合について説明したが、本実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、1台の共通の双極電極用電源を用いて、この共通の電源からの電圧を分岐して、それぞれの双極電極に電圧を印加して、分岐比率を可変することにより印加される電圧を可変させるような構成を採用することもできる。具体的には、図35の模式図に示すESC430のように、1台の双極電極用電源433を用いて、第1双極電極331の第1正極部331aおよび第1負極部331bと、第2双極電極332の第2正極部332aおよび第2負極部332bとに、電源433からの回路を分岐して、第2双極電極332への回路の途中に、第2双極電極332に印加される電圧を、第1双極電極331に印加される電圧とは異なるように制御可能な分岐比率調整部434を設けるような構成を採用することもできる。このように共通の電源433を用いれば、装置コストを低減することができる。
また、載置面305aの外縁付近領域と中央付近領域とで発生される静電吸着力の大きさを相違させるように制御する手段は、第1双極電極331と第2双極電極332とに印加される電圧の大きさを異ならせる手段のみに限られるものではない。このような手段に代えて、例えば、載置面305aの外周側に配置される第1双極電極の面積を大きくし、中心側に配置される第2双極電極の面積を小さくすることにより、中心側の静電吸着力を外周側の静電吸着力よりも小さくすることができる。また、各々の双極電極から載置面305aまでの距離を相違させることによっても静電吸着力の大きさを異ならせることができる。具体的には、第2双極電極から載置面305aまでの距離を、第1双極電極から載置面305aまでの距離よりも遠くすることにより、中心側の静電吸着力を外周側の静電吸着力よりも小さくすることができる。これらの手段の中では、内外における静電吸着力を所望の大きさに可変できるという点において、印加電圧の大きさを可変させる手段が利点を有する。
上記第4実施形態では、同心円上に配置された複数の突き上げピン321が一体的に上昇されて基板301の外縁付近領域に対し突き上げる方法が用いられる場合を例として説明したが、このような突き上げピン321の動作制御方法としては、様々な方法を適用することができる。例えば、突き上げ装置320に突き上げピン321による基板301の突き上げに伴って生じる荷重を検出するロードセルを備えさせて、ロードセルにより検出された荷重の大きさに基づいて、突き上げピン321による突き上げストロークや動作回数を制御することもできる。また、このようなロードセルにより検出される荷重に基づいて、基板301が載置面305aから離脱したことを検出することもできる。また、突き上げピンの配置は、1つの同心円上に配置される場合のみに限られず、複数の同心円上に分けて配置されるような構成を採用することもできる。
また、上記第4実施形態では、円形状の基板を前提として、それぞれの双極電極が、同心円上に配置された環状あるいは円状の電極であるような場合について説明したが、双極電極の形状としては、その他様々な形態を採用することができる。例えば、基板の載置面への保持、離脱、およびプラズマ処理品質に問題が生じなければ、双極電極の形態として、三角形状や四角形状などの多角形状の形態が採用されるような場合であってもよい。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。例えば、上記第4実施形態のESCの構成を、上記第1〜第3実施形態のプラズマ処理装置の構成に組み合わせて採用することもできる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
2008年5月30日に出願された日本国特許出願No.2008−142338号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容、2008年5月30日に出願された日本国特許出願No.2008−142341号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容、2008年8月12日に出願された日本国特許出願No.2008−207694号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容、および2009年3月11日に出願された日本国特許出願No.2009−058375号の明細書、図面、及び特許請求の範囲の開示内容は、全体として参照されて本明細書の中に取り入れられるものである。
本発明の第1態様によれば、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面の基板配置領域に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
載置面の基板配置領域の外側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第1突き上げピンを昇降させる第1突き上げ装置と、
載置面の基板配置領域の内側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第2突き上げピンを昇降させる第2突き上げ装置と、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させた後、第2突き上げ装置の複数の第2突き上げピンの上昇動作を開始させて、載置面の基板配置領域の内側領域にて基板を突き上げるように、第1突き上げ装置および第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置とを備える、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第2態様によれば、第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力、および第2突き上げ装置の複数の第2突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部をさらに備え、
制御装置は、プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、第1突き上げ装置の第1突き上げピンまたは第2突き上げ装置の第2突き上げピンを上昇させて基板の突き上げ動作を行う際に、第1または第2突き上げピンを上昇させて基板を載置面から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突き上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、第1または第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う、第1態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第6態様によれば、絶縁体を含む基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
プラズマ処理容器内に配置された電極に対して高周波電圧を印加する高周波電圧印加装置と、
を備え、
基板保持装置は、
電圧印加により静電吸着力を発生させて、載置面に載置された基板を保持する静電チャックと、
静電チャックへ電圧を印加する静電チャック用電源と、
静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を制御して、発生される静電吸着力の大きさを制御する電圧制御装置とを備え、
電圧制御装置は、静電チャック用電源から静電チャックへ第1電圧を印加させて、基板の反りを矯正しながら載置面に基板を保持させ、その後、静電チャック用電源から静電チャックへの印加電圧を第1電圧から第2電圧に低下させて、反りが矯正された状態の基板の保持を継続させ、高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加が開始された後、プラズマ処理中に高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により発生される静電吸着力を減少させるように、静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を段階的に減少させる、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第7態様によれば、載置面に配置された基板の少なくとも外周縁部を、載置面から上方に直接的または間接的に持ち上げるように、複数の突き上げピンを昇降させて基板を突き上げる突き上げ装置と、
突き上げ装置の複数の突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部と、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、突き上げ装置の突き上げピンを上昇させて、基板の外周縁部を載置面の基板配置領域から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突き上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置とをさらに備える、第6態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第11態様によれば、絶縁体を含む基板に対するプラズマ処理方法であって、
基板保持装置の載置面に基板を載置し、
載置面内に内蔵された静電チャックへ第1電圧を印加して電圧印加により生じる静電吸着力により基板の反りを矯正しながら基板を保持し、
その後、静電チャックへの印加電圧を第1電圧から第2電圧に低下させて、反りが矯正された状態の基板の保持を継続し、
その後、電極への高周波電圧の印加を開始して、保持された基板に対してプラズマ処理を行うとともに、高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により生じる静電吸着力を減少させるように、静電チャックへの電圧の印加量を段階的に減少させて、基板の保持を継続する、プラズマ処理方法を提供する。
本発明の第1態様によれば、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面の基板配置領域に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
載置面の基板配置領域の外側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第1突き上げピンを昇降させる第1突き上げ装置と、
載置面の基板配置領域の内側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第2突き上げピンを昇降させる第2突き上げ装置と、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させた後、第2突き上げ装置の複数の第2突き上げピンの上昇動作を開始させて、載置面の基板配置領域の内側領域にて基板を突き上げるように、第1突き上げ装置および第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置と、
第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力、および第2突き上げ装置の複数の第2突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部とを備え、
制御装置は、プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、第1突き上げ装置の第1突き上げピンまたは第2突き上げ装置の第2突き上げピンを上昇させて基板の突き上げ動作を行う際に、第1または第2突き上げピンを上昇させて基板を載置面から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突き上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、第1または第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第2態様によれば、基板保持装置による静電吸着を解除した後の基板と載置面との間の残留静電吸着力を除去するための除電プラズマを発生する除電プラズマ発生部をさらに備え、
制御装置は、除電プラズマ発生部によりプラズマ処理容器内に除電プラズマを発生させた状態にて、第1突き上げ装置の複数の第1突き上げピンの上昇動作を制御することにより基板配置領域の少なくとも外側領域からの基板の離脱動作を行い、基板の外周縁部と基板配置領域の外周領域との間に除電プラズマを進入させることにより、残留静電吸着力を低減させる、第1態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第3態様によれば、基板保持装置は、
基板が載置される載置面を有する載置部材と、
載置部材の内部に配置され、環状かつ帯状に形成された第1双極電極と、
載置部材の内部に配置され、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状に配置された環状かつ帯状に形成された第2双極電極と、
第1双極電極および第2双極電極に対して電圧を印加して、第1双極電極および第2双極電極から、載置面上に載置された基板に対して静電吸着力を発生させる静電吸着用電源とを備え、
基板に対するプラズマ処理中において、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも、少なくとも相対的に低い状態にて、載置面上での基板の保持が行われる、第1態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第4態様によれば、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理容器と、
プラズマ処理容器内に設けられた基板の載置面を有し、載置面に載置された基板に対して静電吸着により保持を行う基板保持装置と、
プラズマ処理容器内に配置された電極に対して高周波電圧を印加する高周波電圧印加装置と、
を備え、
基板保持装置は、
電圧印加により静電吸着力を発生させて、載置面に載置された基板を保持する静電チャックと、
静電チャックへ電圧を印加する静電チャック用電源と、
静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を制御して、発生される静電吸着力の大きさを制御する電圧制御装置とを備え、
電圧制御装置は、静電チャック用電源から静電チャックへ基板の反りを矯正できるような第1電圧を印加させて、静電吸着力により基板の反りを矯正しながら載置面に基板を保持させ、その後、静電チャック用電源から静電チャックへの印加電圧を第1電圧から第2電圧に低下させて、反りが矯正された状態の基板の保持を継続させ、その後、高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加を開始し、その後、プラズマ処理中に高周波電圧印加装置による電極への高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により発生される静電吸着力を減少させるように、静電チャック用電源からの静電チャックへの電圧の印加量を段階的に減少させる、プラズマ処理装置を提供する。
本発明の第5態様によれば、載置面に配置された基板の少なくとも外周縁部を、載置面から上方に直接的または間接的に持ち上げるように、複数の突き上げピンを昇降させて基板を突き上げる突き上げ装置と、
突き上げ装置の複数の突き上げピンによる基板の突き上げの際に生じる突き上げ力を検出する突き上げ力検出部と、
プラズマ処理の完了後、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、突き上げ装置の突き上げピンを上昇させて、基板の外周縁部を載置面の基板配置領域から上方に持ち上げるとともに、突き上げ力検出部により突き上げ力の検出を行わせて、検出閾値が検出されたら突き上げピンの上昇を停止させ、その後、突き上げ力検出部により検出される突き上げ力が検知閾値よりも減少した場合は、突き上げピンを上昇させるという突き上げピンの上昇と停止とを複数回繰り返して実施するステップ上昇動作を開始し、ステップ上昇動作において、突き上げピンの上昇後の停止時に、載置面の基板配置領域からの基板の離脱完了の検知を行い、離脱完了していない場合にはステップ上昇動作を継続させるように、突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う制御装置とをさらに備える、第4態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第6態様によれば、突き上げ装置は、
載置面の基板配置領域の外側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第1突き上げピンを、昇降させる第1突き上げ装置と、
載置面の基板配置領域の内側領域に配置され、かつ載置面より突出可能に配置された複数の第2突き上げピンを、昇降させる第2突き上げ装置と、を備え、
制御装置は、基板保持装置による基板の静電吸着停止時に、複数の第1突き上げピンを上昇させて、載置面の基板配置領域の外側領域より基板を離脱させた後、複数の第2突き上げピンの上昇によるステップ上昇動作を開始させるように、第1突き上げ装置および第2突き上げ装置の動作タイミングの制御を行う、第5態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第7態様によれば、基板保持装置は、環状かつ帯状に形成された第1双極電極と、第1双極電極よりも内側にて第1双極電極と同心円状に配置された環状かつ帯状に形成された第2双極電極とを静電チャックとして備え、
電圧制御装置は、基板に対するプラズマ処理中において、第2双極電極により基板に対して付与される静電吸着力が、第1双極電極により基板に対して付与される静電吸着力よりも、少なくとも相対的に低い状態にて、載置面上での基板の保持が行われるように、静電チャック用電源より第1双極電極および第2双極電極への電圧の印加量を制御する、第5態様に記載のプラズマ処理装置を提供する。
本発明の第8態様によれば、絶縁板を含む基板に対するプラズマ処理方法であって、
基板保持装置の載置面に基板を載置し、
載置面内に内蔵された静電チャックへ基板の反りを矯正できるような第1電圧を印加して電圧印加により生じる静電吸着力により基板の反りを矯正しながら基板を保持し、
その後、静電チャックへの印加電圧を第1電圧から第2電圧に低下させて、反りが矯正された状態の基板の保持を継続し、
その後、電極への高周波電圧の印加を開始して、保持された基板に対してプラズマ処理を行うとともに、高周波電圧の印加により基板に対して生じる残留静電吸着力の増加量に応じて、静電チャックへの電圧印加により生じる静電吸着力を減少させるように、静電チャックへの電圧の印加量を段階的に減少させて、基板の保持を継続する、プラズマ処理方法を提供する。