以下に、添付の図面を参照して、本発明の誘電性構造体(プラズマ発生体)の複数の実施の形態について詳細に説明する。なお、第1〜第6の実施形態間において、構造(形状や材料)及び機能(作用)が類似又は同一の構成要素については同一の符号を付す。第1〜第5の実施形態間において(図36,図38,図39の符号を除いて)、構造(特に形状)が異なり、機能が類似又は同一の構成要素については、50の倍数が加算又は減算されたときに同一となる符号を付す。このように、複数の実施形態に亘って互いに対応する符号を付すことにより、重複する説明については省略することがある。換言すれば、一の実施形態の構成要素又はその組み合わせについて説明された好適な形状、材料、製造方法、使用方法等は、他の実施形態の対応する構成要素又はその組み合わせに対して適用されてよい。
(第1の実施形態)
図1及び図2に示すように、本実施の形態による誘電性構造体1は、誘電体からなる基体2を備える。この基体2は、第1表面2aおよびその裏側の第2表面2bと、第1表面2aおよび第2表面2bの間を貫通する第1貫通孔5とを有する。基体2の内部には、第1表面2aと第2表面2bとの間に設けられるとともに、第1貫通孔5に対応する位置に第2貫通孔25を有する第1電極8が配設される。また、基体2の内部には第1電極8に対向して設けられるとともに、第1貫通孔5に対応する位置に第3貫通孔26を有する第2電極9が配設される。さらに、基体2の内部には第1電極8と第2電極9の間で、第1電極8および第2電極9に対向して設けられ、第1貫通孔5に対応する位置に第4貫通孔27を有する第3電極10が配設される。
また、第1電極8、第2電極9及び第3電極10は、第1貫通孔5の貫通方向に沿って、第1表面2a側から、第1電極8、第3電極10、第2電極9の順に配列されている。第1貫通孔5は、第2貫通孔25、第4貫通孔27及び第3貫通孔26を通過している。
基体2の端面には、第1電極8、第2電極9、第3電極10に電力を供給するために、対応する第1電極8、第2電極9、第3電極10と電気的に接続された外部端子14、15、16がそれぞれ設けられる。
ここで、図3乃至図5は、図1に示された誘電性構造体1を第1電極8、第2電極9、および第3電極10に沿ってそれぞれ切断した切断面を示している。
本実施の形態による誘電性構造体1では、第3電極10に基準電位を供給し、第1電極8と第3電極10との間に交流高電圧を印加することにより、基体2内部における第1電極8と第3電極10との間の領域に対応する第1貫通孔5内の領域(以下、第1空間23という。)に沿面放電を発生させることができる。また、第2電極9と第3電極10との間に直流高電圧を印加することにより、第1空間23に発生する電子または陽イオンを、基体2内部における第2電極9と第3電極10との間の領域に対応する第1貫通孔5内の領域(以下、第2空間24という。)に電気的に引き付けることができる。このため、第1貫通孔5に、第1電極8側の開口部から排気ガス等微粒子状不純物を含む流体を供給すると、第1空間23においてプラズマの効果により流体を改質できる。また、第2空間24において、第2空間24に引き付けられた電子または陽イオンにより、流体中の微粒子状不純物を帯電させることができる。これにより、基体2における第2電極9に対向する表面又は第2電極9近傍の表面に、帯電した微粒子状不純物を電気的に吸着させることができる。例えば、第2電極9に正の直流高電位を印加すると、負に帯電した不純物を基体2の表面に吸着させることができる。そして、微粒子状不純物以外の流体が、第1貫通孔5の第3電極10側の開口部から排出される。このようにして、供給された流体中から微粒子状不純物を取り除くことができる。なお、微粒子状不純物が第1貫通孔5内のどの領域で帯電するかは、微粒子状不純物の種類、およびプラズマの特性等によって異なり、第1空間23中において帯電させることも可能である。
また、第2電極9に負の直流高電位を供給した場合には、正に帯電した不純物を基体2の表面に吸着させることができる。
以上のとおり、本実施の形態による誘電性構造体は、第1電極8、第2電極9、および第3電極10を含む電極群を備える。第1電極8及び第3電極10は、交流電圧に応じて第1空間23にプラズマを発生する第1電極対6を構成している。また、第2電極9及び第3電極10は、直流電圧に応じて、第2空間24に電界を生じさせる第2電極対7を構成している。ここで、第3電極10は、第1電極対6および第2電極対7によって共有されている。また、言い換えると、第1電極8及び第3電極10は、交流電圧に応じて第1空間23にプラズマを発生する第1組み合わせ集合6を構成している。また、第2電極9及び第3電極10は、直流電圧に応じて、第2空間24に電界を生じさせる第2組み合わせ集合7を構成している。第1組み合わせ集合6と第2組み合わせ集合7とは、第3電極10を共有している。
上記構成によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。また、第1組み合わせ集合6と第2組み合わせ集合7をともに基体2中に設けることにより、プラズマを発生させるプラズマ発生部と微粒子状不純物を集める集塵部とを一体化したプラズマ発生体を得ることができる。これにより、プラズマ発生機能と集塵機能とを備えた小型のプラズマ発生体を実現することができる。
なお、上述の誘電性構造体1では、第3電極10を、第1組み合わせ集合6と第2組み合わせ集合7とで共有しているが、第1組み合わせ集合6および第2組み合わせ集合7をそれぞれ異なる電極によって構成してもよい。例えば、図40のように、第1組み合わせ集合6を第1電極8と第3電極10とで構成し、第2組み合わせ集合7を第2電極9と第4電極11とで構成する。ここで、第4電極11は、第2電極9と第3電極10との間に設けられる。また、第4電極11は、図5で示した第3電極10の構成と同様である。すなわち、第4電極11は、第1貫通孔5に対応する位置に第5貫通孔28を有する。
そして、第3電極10および第4電極11に基準電位を供給するとともに、第1電極8と第3電極10との間に交流電圧を印加し、第2電極9と第4電極11との間に直流電圧を印加すると、上述の誘電性構造体1の作用効果と同様の作用効果が得られる。この際、第3電極10と第4電極11との間の距離は、第1電極8と第3電極10との間の距離よりも小さくすると、誘電性構造体の小型化に寄与する。さらに、基準電位を供給する電極を第1組み合わせ集合6と第2組み合わせ集合7とで共有すれば、電極の数を減らすことができ、誘電性構造体を小型化することができる。
基体2は電気絶縁材料から成り、例えば、セラミックスから成る。具体的に、基体2を製造する場合には、セラミックグリーンシートを準備し、次に準備したセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、高温(約1300〜1800℃)で焼成する。電気絶縁材料としては、例えば、酸化アルミニウム焼結体(アルミナセラミックス)がある。例えば酸化アルミニウム質焼結体から成るグリーンシートは、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、およびマグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤および溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用し、シート状に成形することによって得られる。
セラミックグリーンシートの積層体を作製する場合には、セラミックグリーンシートを積層した後圧着を行なう。圧着は3.0〜8.0MPa程度の圧力を加えて行ない、必要に応じて35〜80℃で加熱を行なう。このとき、第1貫通孔5を形成するために、グリーンシートに打ち抜き加工を施す。また、セラミックグリーンシート同士の十分な接着性を得るために、溶剤と樹脂バインダーを混合するなどして作製した接着剤を用いてもよい。なお、電気絶縁材料としては、酸化アルミニウム質焼結体以外にも、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、コーディライト質焼結体、または炭化珪素質焼結体等が挙げられる。
第1電極8、第2電極9および第3電極10はそれぞれ、その端部が基体2の外表面近傍まで導出されており、対応する外部端子14,15、16に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。第1電極8、第2電極9および第3電極10は、タングステン、モリブデン、銅、または銀等の金属粉末導電体からなり、スクリーン印刷法等の印刷手段を用いて、基体2用のセラミックグリーンシートの所定の位置に第1電極8、第2電極9および第3電極10用の導電体ペーストを印刷塗布し、基体2用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって基体2の内部に所定のパターンに形成することができる。導電体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダーおよび有機溶剤、並びに必要に応じて分散剤等を加えて、ボールミル、三本ロールミル、またはプラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで製作される。導電体ペーストには、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼結後の基体2との接合強度を高めたりするためにガラスやセラミックスの粉末を添加しても良い。
基体2の外表面には、外部端子14、15および16が被着形成されている。外部端子14、15および16は、外部電源から第1電極8、第2電極9および第3電極10に電圧を印加するための導電路として機能し、基体2の外表面に導出された第1電極8、第2電極9および第3電極10のそれぞれに電気的に接続されている。外部端子14、15および16の材料や製造方法は、第1電極8等と同様である。外部端子14、15および16用の導電体ペーストは、第1電極8、第2電極9および第3電極10用の導電体ペーストと同様にして作製されるが、有機バインダーおよび有機溶剤の量により印刷に適した粘度に調製される。
なお、外部端子14、15および16の露出する表面には、ニッケルまたは金等の耐蝕性に優れる金属を被着しておくことが好ましい。なお、外部端子14、15および16が酸化腐食するのを抑制するとともに、外部端子14、15および16と外部電源の電源端子との接合を強固なものとするために、厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚みが0.1〜3μm程度の金めっき層とが順次被着されていることが好ましい。
あるいは、外部端子14、15および16は、基体2用のセラミックグリーンシートの焼成後に、所定の位置に貼り付けられた金属板でもよい。
そして、外部交流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子14に電気的に接続し、高圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子15に電気的に接続して電圧を印加すると第1空間23に沿面放電を発生させることができる。また、外部直流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子14に電気的に接続し、高圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子16に電気的に接続して電圧を印加すると、第1空間23にて発生した電子または陽イオンを第2空間24に電気的に引き付け、第2空間24を電気的に正または負に帯電させることができる。
これにより、誘電性構造体1の第1貫通孔5に、第1電極8が形成されている側の開口部から供給される流体は、第1空間23において沿面放電領域を通過することとなるので、プラズマの効果により改質される。例えば、NOX(窒素酸化物)は、酸素濃度が1%程度以下の低酸素条件下において、下記の式(1)および(2)に示された反応より分解して、N2およびO2が生成される。
2NO2 → 2NO+O2・・・・・・・・・・(1)
2NO+O2 → N2+2O2・・・・・・・・・・(2)
つぎに、第2空間24において流体中の微粒子状不純物を帯電させることができ、かつ、第3電極10近傍の基体2の表面に帯電した微粒子状不純物を電気的に吸着させることができるので、流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。
なお、第1電極8と第3電極10との間に沿面放電を発生させるために、周波数の高い交流電圧が印加される。印加される交流電圧は、必要とされる沿面放電の強度等によって適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOX(窒素酸化物)を変化させる誘電性構造体1において印加される交流電圧の周波数は、例えば、1kHz〜100MHzである。
また、第1電極8と第3電極10との間に印加する電圧は、交流電圧以外に、パルス電圧であってもよい。なお、交流電圧は、正弦波電圧に限らず、矩形波電圧若しくは方形波電圧等であってよい。
また、第1空間23にて発生した電子または陽イオンを第2空間24に電気的に引き付け、第2空間24を電気的に正または負に帯電させ、かつ、第2電極9近傍の基体2の表面において帯電した微粒子状不純物を電気的に吸着させるために、第3電極10を基準電位として第2電極9と第3電極10との間に直流高電圧を印加する。印加される直流高電圧は、必要とされる電界強度の大きさ等により適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPM(Particulate Matter)を第2空間24にて帯電させ、帯電したPMを第3電極10近傍の基体2の表面において電気的に吸着させるときに印加される直流電圧の大きさは1kV〜50kVあるいは−50kV〜−1kVである。
本実施の形態による誘電性構造体1においては、第1電極8、第2電極9および第3電極10に形成される第2貫通孔25、第3貫通孔26、第4貫通孔27は、平面視したときに第1貫通孔5よりも大きくすることが好ましい。すなわち、第2貫通孔25、第3貫通孔26、第4貫通孔27は、その内周面が第1貫通孔5の内周面よりも外側に位置されることが好ましい。
第2貫通孔25、第3貫通孔26、第4貫通孔27を、平面視したときに第1貫通孔5よりも大きくすることにより、第1電極8、第2電極9および第3電極10が第1貫通孔5の内表面に露出することを抑制することができ、第1貫通孔5に供給される流体により、第1電極8、第2電極9および第3電極10が腐食されることを抑制できる。
また、本実施の形態による誘電性構造体1においては、第1電極8と第3電極10との間の距離は、第2電極9と第3電極10との間の距離よりも短いことが好ましい。
第1電極8と第3電極10との間の距離を、第2電極9と第3電極10との間の距離よりも短くすることにより、第1電極8と第3電極10との間で沿面放電を生じさせる際に、第2電極9と第3電極10との間での不要な沿面放電が発生することを抑制することができる。
また、本実施の形態による誘電性構造体1においては、第1貫通孔5は複数個存在することが好ましい。第1貫通孔5が複数個存在することにより、誘電性構造体1に供給できる流体量を増すことができ、流体の圧力損失を低減することができる。なお、この場合に、第2貫通孔25、第3貫通孔26、第4貫通孔27も第1貫通孔5と同数ずつ存在する。
また、図2では、第1電極8、第2電極9、および第3電極10(図40では、第1電極8、第2電極9、第3電極10、および第4電極11)を平行に設けたが、そうでなくとも、第1電極8、第2電極9、および第3電極10を、基体2の内部に互いに離間した状態で、第2貫通孔25、第3貫通孔26、および第4貫通孔2(図40では、第2貫通孔25、第3貫通孔26、第4貫通孔27、および第5貫通孔28)の内周面が第1貫通孔5の内周面に沿うように設けると、印加する交流電圧および直流電圧の条件によって、第1空間23に沿面放電を発生させることができ、第2空間24に電界を生じさせることが可能であり、誘電性構造体1と同様の作用効果が得られる。
なお、誘電性構造体1は、基体2が、セラミックグリーンシートを同時焼成することにより形成され、第1電極8、第2電極9、第3電極10、および外部端子14、15、16が、導電体ペーストをセラミックグリーンシートと同時に焼成することにより形成されることが好ましい。このことにより、誘電性構造体1はセラミックスと導電体ペーストを同時焼成することにより一体化されているので、高温、高振動等の環境下で長期間使用される場合にも、誘電性構造体1の変形を小さなものとし、第1貫通孔5の形状を安定したものとすることができる。従って、第1貫通孔5内を通過するPMや酸化性成分等を含む流体を長期間にわたって安定して反応させ、良好に改質することができる。
なお、プラズマ発生体単独ではなく、他の排気ガスの改質機構をともに用いてもよい。例えば、プラズマ発生体の前後にフィルターや触媒を付着しておいても良く、これにより排気ガス中のPMや酸化成分等の排出をさらに低減させることができる。このようなフィルターとして、セラミック製のDPF(Diesel Particulate Filter)等があり、触媒として白金等を用いることができる。
(第2の実施形態)
図6から図11に示されるように、本実施の形態による誘電性構造体201は、基体202を備える。この基体202は、一方向に配列された複数の平板状の誘電体からなる基板部203と、複数の基板部203を所定の間隔をあけて支持する支持部204とを備える。基板部203と支持部204は、放電空間となる貫通孔205を構成する。さらに、各基板部203の内部には、第1電極208と、第2電極209と、第3電極210とを備える。ここで、第3電極210には、基準電位が供給される。そして、第2電極209と第3電極210との間に直流電圧が印加され、第1電極208と第3電極210との間に交流電圧が印加される。また、第1電極208と第3電極210の間に交流電圧が印加されると、貫通孔205に沿面放電が発生する。
図8〜図10に示されるように、第1電極208および第3電極210は、各基板部203の内部にそれぞれ複数個設けられた部分電極からなる。また、第3電極210は、第1電極208の間に設けられる。第1電極208および第3電極210を構成する部分電極は、それぞれ柱状であり、その端部は、基板部203同士の間の空間(貫通孔205)に接する表面に沿って位置している。各基板部203において、第1電極208を構成する部分電極(以下、「第1部分電極」ともいう。)同士は、その基板部203の内部に設けられた配線導体218により電気的に接続され、第3電極210を構成する部分電極(以下、「第3部分電極」ともいう。)同士も、その基板部203の内部に設けられた配線導体220により電気的に接続される。なお、本実施の形態による誘電性構造体201においては、柱状の第1部分電極および第3部分電極をそれぞれ複数個設けているが、単数でもよく、形状も柱状に限らない。発生させるプラズマの強度およびプラズマ発生領域の大きさ等の観点から、形状および数は適宜設定される。
また、図11に示されるように、第2電極209を構成する部分電極(以下、「第2部分電極」ともいう。)も各基板部203において複数設けられ、それぞれ柱状であるとともに、両端部が基板部203同士の間の空間に接する表面に沿って位置している。なお、本実施の形態による誘電性構造体201においては、柱状の第2部分電極を複数個設けているが、単数でもよく、形状も柱状に限らない。電界の強度および範囲等の観点から、形状および数は適宜設定される。
なお、貫通孔205の内部において、第1電極208と第3電極210との間に交流電圧が印加されたときに沿面放電が生じる領域を領域P(第1空間223)、基板部203の第2電極209が設けられている領域に対向する領域を領域Qとする。ここで、基板部203に複数の第2部分電極が設けられている場合の「第2電極209が設けられている領域」とは、基板部203を平面視したときに、それらの複数の第2部分電極を取り囲むとともに、少なくとも一辺が第3電極210に接する長方形又は正方形の領域であって、その面積が最小となる領域をいう。また、領域Pと領域Qとの間の空間を第2空間224とする。
また、基体202の端面には、第1電極208、第2電極209、第3電極210に電力を供給するために、第1電極208、第2電極209、第3電極210に電気的に接続された外部端子214、215、216がそれぞれ設けられる。
なお、本明細書で基体202とは、内部に形成された第1電極208等の他の部品を除いた部分をいい、誘電性構造体201が複数のセラミックグリーンシートの積層体とその各セラミックグリーンシートの表面に形成された導電体ペーストを同時焼成して得られる場合には、その積層体のみをいう。
本実施の形態による誘電性構造体201では、隣接する第1電極208と第3電極210との間に交流高電圧を印加して貫通孔205内に沿面放電を発生させ、この貫通孔205内に例えば排気ガス等の流体を通過させることにより、流体中の化学物質を反応および分解させる。
また、第2電極209と第3電極210との間に直流高電圧を印加することにより、領域P(第1空間223)に発生する電子または陽イオンを貫通孔205の領域Qに電気的に引き付けることができ、領域Pと領域Qとで挟まれた第2空間224を電子または陽イオンで満たすことができる。このため、貫通孔205の第1電極208および第3電極209側の開口部から、排気ガス等微粒子状不純物を含む流体を供給すると、領域Pにおいてプラズマの効果により流体を改質できる。また、領域Pと領域Qとの間において流体中の微粒子状不純物を帯電させることができ、基板部203における領域Qに接する表面において、帯電した微粒子状不純物を電気的に吸着させることができる。例えば、流体中の不純物が負に帯電しやすい物質であり、第3電極210に基準電位を供給するとともに、第2電極209と第3電極210との間に正の直流電圧を印加した場合には、その不純物は、基板部203における領域Qに接する表面に吸着される。これにより、流体から微粒子状不純物を取り除くことができる。なお、微粒子状不純物が貫通孔205内のどの領域で帯電するかは、微粒子状不純物の種類、およびプラズマの特性等によって異なり、領域Pと領域Qの間に限らず、領域P中および領域Q中の少なくとも一方において帯電する場合もある。また、第2電極209と第3電極210との間に負の直流電圧を印加した場合には、正に帯電した不純物を基板部203の表面に吸着させることができる。
以上のとおり、本実施の形態による誘電性構造体は、第1電極208、第2電極209、および第3電極210を含む電極群を備える。第1電極208及び第3電極210は、交流電圧が印加されると第1空間223にプラズマを発生する第1電極対206を構成している。また、第2電極209及び第3電極210は、直流電圧が印加されると、第2空間224に電界を生じさせる第2電極対207を構成している。ここで、第3電極210は、第1電極対206および第2電極対207によって共有されている。また、言い換えると、第1電極208及び第3電極210は、交流電圧が印加されると第1空間223にプラズマを発生する第1組み合わせ集合206を構成している。また、第2電極209及び第3電極210は、直流電圧が印加されると、第2空間224に電界を生じさせる第2組み合わせ集合207を構成している。第1組み合わせ集合206と第2組み合わせ集合207とは、第3電極210を共有している。
上記構成によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。また、第1組み合わせ集合206と第2組み合わせ集合207をともに1つの基板部203に設けることにより、プラズマを発生させるプラズマ発生部と微粒子状不純物を集める集塵部とを一体化したプラズマ発生体を得ることができる。
なお、上述の誘電性構造体201では、第1電極208を、第1組み合わせ集合206と第2組み合わせ集合207とで共有しているが、第1組み合わせ集合206および第2組み合わせ集合207を異なる電極によって構成してもよい。ただし、基準電位を供給する電極を第1組み合わせ集合206と第2組み合わせ集合207とで共有すれば、電極の数を減らすことができ、誘電性構造体1を小型化することができる。
なお、上述のように第1電極208および第3電極210が複数の部分電極からなる場合、第2部分電極を第1部分電極の間に設けることにより、沿面放電が複数個所で発生し、電子および陽イオンが多数発生して、流体の改質効率および不純物の除去効率が高くなる。また、図8に示すように、縦横に交互に配列する等、第1電極208および第2電極209を規則的に配列することにより、沿面放電を均一に発生させることができるため、場所によって発生するプラズマ濃度に偏りがなく、流体全体をより均一に改質することができる。
基体202の材料や製造方法は第1の実施形態の基体2の材料や製造方法と同様である。例えば、基板部203だけでなく、支持部204も誘電体からなり、基体202は、適当な打ち抜き加工が施されたセラミックグリーンシートが複数枚積層されることなどにより形成される。
複数の第1部分電極同士は配線導体218によって接続され、その配線導体218の端部は、基体202の外表面近傍まで導出されて、外部端子214に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。また、第2部分電極および第3部分電極も同様に、配線導体219、220によってそれぞれ接続され、その配線導体219、220の端部は、基体202の外表面近傍まで導出されて、外部端子215,216に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。第1電極208、第2電極209、第3電極210、および各配線導体218、219、220の材料及び製造方法は、第1の実施形態の第1電極8等の材料や製造方法と同様である。
次に、基板部203の外表面には、外部端子214、215および216が被着形成されている。外部端子214、215および216は、外部電源から第1電極208、第2電極209および第3電極210に電圧を印加するための導電路として機能し、第1電極208、第2電極209および第3電極210のそれぞれに電気的に接続されている。外部端子214,215,216の材料や製造方法は、第1の実施形態の外部端子14等の材料や製造方法と同様である。
そして、外部交流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子214に電気的に接続し、高圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子215に電気的に接続して電圧を印加すると、領域P(第1空間223)に沿面放電を発生させることができる。また、外部直流電源の基準電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子214に電気的に接続し、高圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子216に電気的に接続して電圧を印加すると、領域Pにて発生した電子または陽イオンを領域Qに電気的に引き付け、領域Pと領域Qとで挟まれた第2空間224を電気的に正または負に帯電させることができる。
本実施の形態による誘電性構造体201においては、図6から図11に示すように、配列方向における両端部以外の基板部203において、第1電極208を構成する第1部分電極および第3電極210を構成する第3部分電極はそれぞれ柱状である。そして、第1部分電極の一方の端部および第3部分電極の一方の端部は、その基板部203に隣接する一方の貫通孔205に接する表面に沿って設けられ、第1部分電極の他方の端部および第3部分電極の他方の端部は、基板板203に接する他方の貫通孔205に接する表面に沿って設けられている。しかし、各基板部203において、第1部分電極および第3部分電極も一部が貫通孔205に接する表面に沿って設けられていればよい。例えば、第1電極208についていうならば、各基板部203において、その基板部203が隣接する一方の貫通孔205に接する表面に沿って部分電極Aを設け、他方の貫通孔205に接する表面に沿って、部分電極Aとは別個に部分電極Bを設け、それぞれに基準電位を供給してもよい。また、別個に設けた場合に、基板部203の内部において部分電極Aおよび部分電極Bを電気的に接続する配線導体を設けてもよい。ここで、配線導体としてビア導体を採用し、一組の部分電極Aおよび部分電極Bをビア導体で接続した場合には、本実施の形態による誘電性構造体201による第1電極208、すなわち柱状の第1電極208となる。これは、第2電極209および第3電極210についても同様である。
上述のように一組の部分電極A,Bをビア導体によって接続すると、各部分電極A,Bを同電位に保持することができることから、各貫通孔205において、第1電極208に対応する電極と第3電極210に対応する電極との間に交流電圧を印加した場合に発生する沿面放電をより安定化させることができる。また、第2電極209を、上述のように一組の電極とビア導体とで構成した場合には、第2電極209が各領域Qに電子または陽イオンを引きつけようとする力をより安定化させることができる。
また、図12および図13に示されるように、基板部203の内部または表面における領域Pに対応する領域と領域Qに対応する領域との間に、貫通孔205に接する表面に沿って設けられるとともに、第2電極209に電気的に接続された導体222が設けられてもよい。図12および図13は、そのような場合の誘電性構造体の構成を示す断面図であり、図8及び図11にそれぞれ対応している。
このように、基板部203において、第2電極209に電気的に接続された導体222を設けることにより、領域Pで生成された電子または陽イオンを領域Qへと引きつけようとする力をより強くすることができる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る誘電性構造体301の斜視図は、第2の実施形態に係る誘電性構造体201の斜視図(図6)と同様であることから図示を省略する。なお、本実施形態において図6を参照する際には、符号214を符号216に、符号216を符号217にそれぞれ置換して参照されたい。また、誘電性構造体301の側面図は、誘電性構造体201の側面図(図7(a))と同様であることから図示を省略する。なお、本実施形態において図7(a)を参照する際には、符号216を符号216に、符号215を符号214にそれぞれ置換して参照されたい。図14は、誘電性構造体301の平面図である。
第3の実施形態に係る誘電性構造体301は、その外観から把握される構造に関しては、第2の実施形態に係る誘電性構造体201に、別の外部端子を付加した構成となっている。具体的には、図7(b)と図14とを比較した場合に、誘電性構造体201に図14でいう外部端子215を付加した構成となっている。
図15(a)は、第3の実施形態における、図7(a)のB1−B1’線に対応する断面図である。図15(b)は、第3の実施形態における、図7(a)のB4−B4’線に対応する断面図である。図16(a)は、図14のD1−D1’線における断面図である。図16(b)は、図14のD2−D2’線における断面図である。
複数の基板部203は、第1電極308及び第2電極309が内部に設けられたもの(本実施形態では、便宜的に、「第1基板部203A」という。)と、第3電極310及び第4電極311が内部に設けられたもの(本実施形態では、便宜的に、「第2基板部203B」という。)とを有する。第1基板部203Aと第2基板部203Bは、交互に配列される。第1電極308および第3電極310は、貫通孔205を挟んで対向し、第2電極309および第4電極311は、貫通孔205を挟んで対向する。
さらに、基体202の端面には、第1電極308に電気的に接続される外部端子214と、第2電極309に電気的に接続される外部端子215と、第3電極310に電気的に接続される外部端子216と、第4電極311に電気的に接続される外部端子217がそれぞれ設けられる。
本実施形態による誘電性構造体301では、第3電極310に基準電位を供給し、第1電極308と第3電極310との間に交流電圧を印加することにより、貫通孔205における第1電極308と第3電極310との間に誘電体バリア放電を発生させることができる。また、第2電極309に正の直流電位を、第4電極311に負の直流電位を供給することにより、貫通孔205における第1電極308と第3電極310との間の領域に発生する電子または陽イオンを、貫通孔205における第2電極309と第4電極311との間の領域に電気的に引き付けることができる。例えば、貫通孔205の第1電極308,第3電極310側の開口部から排気ガス等微粒子状不純物を含む流体を供給した場合を考える。図17は、このような場合の誘電性構造体の動作を説明するための模式的な図である。貫通孔205に、第1電極308,第3電極310側の開口部から排気ガス等の微粒子状不純物を含む流体を供給すると、貫通孔205の第1空間323においてバリア放電によるプラズマが発生し、そのプラズマの効果により流体を改質できる。また、貫通孔205の第2空間324近傍において流体中の微粒子状不純物Mを帯電させることができ、第1基板部203Aおよび第2基板部203Bの貫通孔205側の表面において、帯電した微粒子状不純物Mを電気的に吸着させることができる。そして、微粒子状不純物M以外の流体が、貫通孔205の第2電極309,第4電極311側の開口部から排出される。このようにして供給された流体中から微粒子状不純物Mを取り除くことができる。なお、微粒子状不純物Mが貫通孔205内のどの領域で帯電するかは、微粒子状不純物Mの種類、およびプラズマの特性等によって異なり、第1空間323中若しくは第2空間324中において帯電する場合もある。
以上のとおり、本実施の形態による誘電性構造体は、第1電極308、第2電極309、および第3電極310を有する電極群を備える。第1電極308及び第3電極310は、交流電圧が印加されると第1空間323にプラズマを発生する第1電極対306を構成している。また、第2電極309及び第4電極311は、直流電圧が印加されると、第2空間324に電界を生じさせる第2電極対307を構成している。言い換えると、第1電極308及び第3電極310は、交流電圧が印加されると第1空間323にプラズマを発生する第1組み合わせ集合306を構成している。また、第2電極309及び第4電極311は、直流電圧が印加されると、第2空間324に電界を生じさせる第2組み合わせ集合307を構成している。
上記構成によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。また、第1組み合わせ集合306の一部の電極308と第2組み合わせ集合307の一部の電極309を第1基板部203Aに設けていることから、プラズマを発生させるプラズマ発生部と微粒子状不純物を集める集塵部とを一体化したプラズマ発生体を得ることができる。
さらに、本実施の形態による誘電性構造体によれば、第1組み合わせ集合306の他の一部の電極310と第2組み合わせ集合307の他の一部の電極311を第2基板部203Bに設け、第1基板部203Aおよび第2基板部203Bを対向させていることから、プラズマを発生させるプラズマ発生部と微粒子状不純物を集める集塵部とを一体化した、構造上、より頑強で安定したプラズマ発生体を得ることができる。
本実施形態による誘電性構造体によれば、第1電極308〜第4電極311を基板部203の内部に設けたため、沿面放電によって発生するプラズマによる侵食、および貫通孔205内に供給される流体による腐食を抑制することが可能になる。
なお、図18(a)に示されるように、第2電極309,第4電極311は、第1基板部203Aと第2基板部203Bとの間に形成される第2空間324に露出するように、第1基板部203Aの表面および第2基板部203Bの表面にそれぞれ設けられてもよい。これにより、第1基板部203Aと第2基板部203Bとの間に形成される空間により強力な電磁界を生じさせ、より効率よく電子または陽イオンを引き付けることが可能になる。
また、図18(b)に示されるように、第2電極309,第4電極311を第1基板部203Aの表面および第2基板部203Bの表面にそれぞれ設けるとともに、第5電極312を第2電極309と対向させて第1基板部203Aの内部に配設し、第6電極313を第4電極311と対向させて第2基板部203Bの内部に配設してもよい。この場合において、第5電極312, 第6電極313に基準電圧を供給し、第5電極312と第2電極309との間に正の直流電圧を、第6電極313と第4電極311との間に負の直流電圧をそれぞれ印加する。これにより、第2電極309および第4電極311の間の直流電圧をより安定させることができる。
第1電極308、第2電極309、第3電極310、および第4電極311はそれぞれ、その端部が基体202の外表面近傍まで導出されており、外部端子215,216、214、217に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。第1電極308、第3電極310、第2電極309および第4電極311の材料や製造方法は、第1の実施形態の第1電極8等の材料や製造方法と同様である。
そして、外部交流電源の高電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子215に電気的に接続し、基準電圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子214に電気的に接続して電圧を印加すると貫通孔205における第1電極308と第3電極310の間(第1空間323)において誘電体バリア放電を発生させることができる。また、外部直流電源の正の高電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子217に電気的に接続し、負の高圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子216に電気的に接続して電圧を印加すると、貫通孔205における第1電極308と第3電極310の間において発生した電子または陽イオンを第2電極309および第4電極311近傍領域(第2空間324)に電気的に引き付け、第2電極309および第4電極311近傍領域を電気的に正または負に帯電させることができる。
なお、貫通孔205に流体を供給した場合の誘電性構造体301の動作を、第2電極309,第4電極311を基板部203の内部に設けた場合について説明してきたが、第2電極309,第4電極311を基板部203の表面に設けた場合、および、図18(b)に示すように第2電極309,第4電極311を基板部203の表面に設けるとともに基板部203の内部に第5電極312、第6電極313を設ける場合についても同様のことがいえる。
第5電極312,第6電極313の製造方法、並びに第5電極312,第6電極313の基板部203および外部端子に対する接続方法についても、他の第1電極308〜第4電極311と同様であってよい。
また、本実施形態による誘電性構造体においては、図19に示されるように、貫通孔205は複数個存在することが好ましい。この変形例の基体202は、多数の基板部203が積層されて構成されている。また、外部端子214及び215は、基板部203の積層数に応じた長さに形成されている。貫通孔205が複数個存在することにより、誘電性構造体に供給できる流体量を増加させることができ、流体の圧力損失を低減することができる。
なお、第2電極309,第4電極311を第1基板部203Aの表面および第2基板部203Bの表面にそれぞれ設ける場合には、図20に示されるように、端部以外の第1基板部203Aにおいて、第2電極309を、その第1基板部203Aに隣接する2つの第2基板部203Bに対向する表面にそれぞれ設けるとともに、端部以外の第2基板部203Bにおいて、第4電極311を、その第2基板部203Bに隣接する2つの第1基板部203Aに対向する表面にそれぞれ設けるとよい。これにより、誘電性構造体の全ての貫通孔205において流体を改質させることが可能になるので、改質効率をより向上させることができる。
基板部203を平板状としたが、基板部203間に流体が流れる流路を形成することができれば、基板部203は曲板状であってもよく、さらに、基板部203同士が同一形状でなくてもよい。
(第4の実施形態)
図21は、本発明の第4の実施形態による誘電性構造体401の構成例を示す斜視図である。なお、誘電性構造体401の側面図は、第2の実施形態に係る誘電性構造体201の側面図(図7(a))と同様であることから図示を省略する。また、誘電性構造体401の平面図は、第3の実施形態に係る誘電性構造体301の平面図(図14)と同様であることから図示を省略する。なお、本実施形態において図7(a)を参照する際には、符号214を符号216とし、符号215を符号214として参照されたい。また、図14を参照する際には、符号214と符号216とを相互に置換するとともに、符号215と符号217とを相互に置換して参照されたい。
第4の実施形態に係る誘電性構造体401は、その外観から把握される構造に関しては、第3の実施形態に係る誘電性構造体301の貫通孔205に接する表面に第2電極409が設けられた構造となっている。
基板部203の表面および内部には第1電極408、第2電極309、第3電極409a、409b(以下、a、bを省略することがある。)、及び第4電極311が配設される。具体的には、基板部203の内部には、第1電極408、第3電極409及び第4電極311が配設されており、表面には第1電極408が配設されている。図24に示されるように、貫通孔205の一方の開口部側において、第3電極409a、409bは、基板部203の内部に配設されているとともに、貫通孔205を挟んで対向している。また、内部に第3電極409aが設けられた基板部203(本実施形態では、便宜的に、「第1基板部203C」誘電体という。)と内部に第3電極409bが設けられた基板部203(本実施形態では、便宜的に、「第2基板部203D」という。)において、第1基板部203Cと第2基板部203Dとの間に形成される空間(貫通孔205)側の表面には、第1電極408が設けられる。ここで、第1基板部203Cの表面に設けられる第1電極408は、第3電極409aに対向するように設けられ、第2基板部203Dの表面に設けられる第1電極408は、第3電極409bに対向するように設けられる。
本実施形態による誘電性構造体では、第3電極409a、409bに基準電位を供給し第1電極408に交流高電位を供給することで、第1電極408の縁部近傍から沿面放電を発生させることができる。第3電極309及び第4電極311の作用は第3の実施形態と同様である。従って、図25に示すように、第3の実施形態と同様に、第1空間323において流体を改質し、第2空間324において流体中の帯電した微粒子状不純物Mを除去することができる。
以上のとおり、本実施の形態による誘電性構造体は、第1電極408、第2電極409、および第3電極410を有する電極群を備える。一組の第1電極408及び第3電極409は、交流電圧が印加されると第1空間323にプラズマを発生する第1電極対406または第3電極対407を構成している。また、第3の実施形態と同様に、第3電極309及び第4電極311は、直流電圧が印加されると、第2空間324に電界を生じさせる第2電極対307を構成している。言い換えると、一組の第1電極408及び第3電極409は、交流電圧が印加されると第1空間323にプラズマを発生する第1組み合わせ集合406または第3組み合わせ集合407を構成している。ここで、第3組み合わせ集合407は、第1空間323にプラズマを発生させる組み合わせ集合であり、好ましくは、第1空間323を挟んで第1組み合わせ集合406と対向している。また、第3の実施形態と同様に、第3電極309及び第4電極311は、直流電圧が印加されると、第2空間324に電界を生じさせる第2組み合わせ集合307を構成している。
上記構成によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。また、第1組み合わせ集合406と第2組み合わせ集合407の第3電極309とを1つの基板部203に設けることにより、プラズマを発生させるプラズマ発生部と微粒子状不純物を集める集塵部とを一体化したプラズマ発生体を得ることができる。
なお、第3電極309及び第4電極311は、第3の実施形態の図18(a)と同様に、基板部203の表面に設けられてもよい。加えて、図26に示されるように、第3の実施形態の図18(b)と同様に、第5電極312及び第6電極313が設けられてもよい。
さらに、本実施形態による誘電性構造体では、第1基板部203Cと第2基板部203Dとの間の距離が一定であることにより、貫通孔205を挟んで対向する電極間の距離を一定にすることができ、放電を安定させることができる。また、図27(a)に示されるように、第1基板部403Cの表面と第2基板部403Dの表面を貫通孔205の一方の開口部側から他方の開口部に向かって傾斜させてもよい。また、図27(b)に示されるように、第1基板部403Cの貫通孔205側表面における、第1電極408が設けられた領域と第3電極309に対向する領域との間の少なくとも一部を傾斜させ、第2基板部403Dの貫通孔205側表面における、第1電極408が設けられた領域と第4電極311に対向する領域との間の少なくとも一部を傾斜させてもよい。このように、第2空間324における第1空間323から第2空間324への配列方向に垂直な断面の断面積を、第1空間323の同様の断面の断面積よりも大きくして、基板部の表面に傾斜をつけることにより、流体が傾斜面に沿って流れ易くなることから、流体を貫通孔205の内部で効率よく流すことができる。なお、これらの場合であっても、第3電極309,第4電極311を、基板部の表面にそれぞれ設けてもよい。さらには、第5電極312及び第6電極313が設けられてもよい。
また、図27のように、基板部の表面の一部を傾斜させることにより、基板部の表面に段差が形成される場合には、その段差部分の表面に触媒を設けてもよい。段差部分においては流体が一旦留まる傾向があるため、その際に流体中の物質を触媒と反応させて、その流体を改質させることができる。
また、図28に示されるように、第1電極408を分離した複数の第1電極459を配列して構成することにより、誘電体間の絶縁領域における導電体の縁部を増やすことができるため、効率よく沿面放電を発生させることができる。
第1電極408、第2電極309、第3電極409及び第4電極311はそれぞれ、その端部が基体202の外表面近傍まで導出されており、対応する外部端子214,215、216、217に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。第1電極408、第2電極309、第3電極409及び第4電極311の材料や製造方法は、第1の実施形態の第1電極8等の材料や製造方法と同様である。
そして、外部交流電源の基準電圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子216に電気的に接続し、高電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子214に電気的に接続して電圧を印加すると第1電極408の近傍領域に沿面放電を発生させることができる。また、外部直流電源の正の高電位側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子215に電気的に接続し、負の高圧側電源端子を圧接または接合等の手段により外部端子217に電気的に接続して電圧を印加すると、第1電極408近傍領域にて発生した電子または陽イオンを第2電極309および第4電極311近傍領域に電気的に引き付け、第2電極309近傍の第1部材の表面領域を電気的に負に帯電させ、第4電極311近傍の第2誘電体の表面領域を電気的に正に帯電させることができる。
本実施形態による誘電性構造体401においては、図29に示されるように、貫通孔205は複数個存在することが好ましい。貫通孔205が複数個存在することにより、誘電性構造体1に供給できる流体量を増すことができ、流体の圧力損失を低減することができる。
なお、各基板部203において、第1電極408は、その基板部203に隣接する基板部203に対向する表面に設けられるため、端部以外の基板部203においては、隣接する2つの基板部203に対向する表面にそれぞれ設けられる。また、第2電極409,第4電極311を第1基板部203Cの表面および第2基板部203Dの表面にそれぞれ設ける場合には、図30に示されるように、端部以外の第1基板部203Cにおいて、第2電極409を、その第1基板部203Cに隣接する2つの第2基板部203Dに対向する表面にそれぞれ設けるとともに、端部以外の第2基板部203Dにおいて、第4電極311を、その第2基板部203Dに隣接する2つの第1基板部203Cに対向する表面にそれぞれ設けるとよい。これにより、誘電性構造体の全ての貫通孔205において流体を改質させることが可能になるので、改質効率をより向上させることができる。
なお、図29および図30に示すように、貫通孔205が複数個存在する場合、端部以外の基板部203においては、第1組み合わせ集合と第3組み合わせ集合とで第1電極409を共有する構成となっている。これにより、誘電性構造体を小型化できる。ただし、第1組み合わせ集合と第3組み合わせ集合とで個別に第1電極409を有していてもよい。
(第5の実施の形態)
図31は、本発明の第5の実施の形態による誘電性構造体501の構成例を示す斜視図である。図32は、図31の誘電性構造体の上面図である。誘電性構造体501のH1側から見た図(側面図)は、図7(a)と同様であるので図示は省略する。なお、本実施形態において図7(a)を参照する際には、符号215を符号214に置換して参照されたい。
誘電性構造体501は、第2の実施形態等と同様に基体202を有している。外部端子214、215及び216の配置は、第2の実施形態とは異なり、貫通孔205に対して側方となる両面にそれぞれ、外部端子214、216、215の順で配置されている。
図33(a)は、第5の実施形態における、図7(a)のB4−B4’線に対応する断面図である。図33(b)は、図32のE−E’線における断面図である。
各基板部203の内部には第1電極508〜第3電極510が配設される。第1電極508〜第3電極510は、各基板部203の内部において、貫通孔205の一方の開口側より、所定の方向に沿って第1電極508、第3電極510、第2電極509の順に並んで設けられている。第1電極508〜第3電極510は、平板状であり、その外縁部の一部が、基板部203の貫通孔205側の表面に沿って配置されている。ここで、各第1電極508〜第3電極510の外縁部の一部は、基板部203の貫通孔に露出しているが、基板部203の内部に配置されていてもよい。なお、図33(b)は、第2電極509および外部端子215に関して切断したときの断面図であるが、第1電極508および外部端子214に関して切断したときの断面図、および第3電極510および外部端子216に関して切断したときの断面図も同様である。
本実施の形態による誘電性構造体501では、第3電極510に基準電位を供給し第3電極510と第1電極508との間に交流電圧を印加することにより、貫通孔205における第1電極508と第3電極510との間に対応する第1空間523(図34)に沿面放電を発生させることができる。また、第2電極509と第3電極510との間に直流電圧を印加することにより、貫通孔205における第2電極509と第3電極510との間に対応する第2空間524(図34)に、第1空間523で発生した電子または陽イオンを電気的に引き付けることができる。例えば、貫通孔205に、第1電極508側の開口部から排気ガス等微粒子状不純物を含む流体を供給した場合を考える。図34は、このような場合の誘電性構造体の動作を説明するための模式的な図である。貫通孔205に、第1電極508側の開口部から排気ガス等の微粒子状不純物を含む流体を供給すると、第1空間523においてプラズマの効果により流体を改質できる。また、第2空間524において流体中の微粒子状不純物Mを帯電させることができ、基体203における第2電極509近傍の表面に、帯電した微粒子状不純物Mを電気的に吸着させることができる。例えば、流体中の不純物が負に帯電しやすい物質であり、第2電極509に正の直流高電位を供給した場合には、その不純物は基板部における第2電極509近傍の表面に引き付けられる。これにより供給された流体中から微粒子状不純物Mを取り除くことができる。なお、微粒子状不純物Mが貫通孔205内のどの領域で帯電するかは、微粒子状不純物Mの種類、およびプラズマの特性等によって異なり、第1空間523中において帯電する場合もある。また、第2電極509に負の直流高電圧を印加した場合には、正に帯電した不純物を基板部203の表面に吸着させることができる。
以上のとおり、本実施の形態による誘電性構造体は、第1電極508、第2電極509、および第3電極510を有する電極群を備える。第1電極508及び第3電極510は、交流電圧が印加されると第1空間523にプラズマを発生する第1電極対506を構成している。また、第2電極509及び第3電極510は、直流電圧が印加されると、第2空間524に電界を生じさせる第2電極対507を構成している。ここで、第3電極510は、第1電極対506および第2電極対507によって共有されている。また、言い換えると、第1電極508及び第3電極510は、交流電圧が印加されると第1空間523にプラズマを発生する第1組み合わせ集合506を構成している。また、第2電極509及び第3電極510は、直流電圧が印加されると、第2空間524に電界を生じさせる第2組み合わせ集合507を構成している。第1組み合わせ集合506と第2組み合わせ集合507とは、第3電極510を共有している。
上記構成によれば、処理流体の圧力損失を低減でき、また、高効率で処理流体中の微粒子状不純物を取り除くことができる。また、第1組み合わせ集合506と第2組み合わせ集合507とを基板部203に設けたことから、プラズマを発生させるプラズマ発生部と微粒子状不純物を集める集塵部とを一体化したプラズマ発生体を得ることができる。
なお、上述の誘電性構造体501では、第3電極510を、第1組み合わせ集合506と第2組み合わせ集合507とで共有しているが、第1組み合わせ集合506および第2組み合わせ集合507を異なる電極によって構成してもよい。例えば、図41のように、第1組み合わせ集合506を第1電極508と第3電極510とで構成し、第2組み合わせ集合507を第2電極509と第4電極511とで構成する。ここで、第4電極511は、第2電極509と第3電極510との間に設けられる。また、第4電極511は、第3電極510の構成と同様である。そして、第3電極510および第4電極511に基準電位を供給するとともに、第1電極508と第3電極510との間に交流電圧を印加し、第2電極509と第4電極511との間に直流電圧を印加すると、上述の誘電性構造体501の作用効果と同様の作用効果が得られる。この際、第3電極510と第4電極511との間の距離は、第1電極508と第3電極510との間の距離および第2電極509と第4電極411との間の距離よりも小さくすると、誘電性構造体の小型化に寄与する。ただし、図31〜34等で示したように、基準電位を供給する電極を第1組み合わせ集合506と第2組み合わせ集合507とで共有すれば、電極の数を減らすことができ、誘電性構造体を小型化することができる。
第1電極508、第2電極509、第3電極510はそれぞれ、その端部が基体202の外表面近傍まで導出されており、対応する外部端子214、215、216に直接に、または補助導電体を介して電気的に接続される。第1電極508、第2電極509、第3電極510の材料や製造方法は、第1の実施形態の第1電極8等と同様である。
また、本実施の形態による誘電性構造体501においては、第1の実施形態と同様に、第1電極508と第3電極310との間の距離は、第2電極509と第3電極510との間の距離よりも短いことが好ましい。
さらに、本実施の形態による誘電性構造体501において、第1電極508〜第3電極510は平板状であるとしたが、外縁部の少なくとも一部が、基板部203の貫通孔205側の表面に沿って配置されているのであれば、平板状である必要はなく、曲板状、または直線状あってもよい。また、第1電極508〜第3電極510が例えば平板状である場合に、その第1電極508〜第3電極510の主面が、基板部203の貫通孔205側の表面に対して垂直である必要はなく、例えば第1電極508〜第3電極510の少なくとも1つの主面が、基板部203の貫通孔205側の表面に対して45度傾いていてもよい。
さらに、第1電極508〜第3電極510は、図33(a)に示したように基板部203の配列方向に垂直な方向に配列されている必要はなく、例えば、基板部203の内部において、第2電極509のみを貫通孔205側から内側に配置してもよい。
また、本実施の形態による誘電性構造体においては、図35に示されるように、貫通孔205は複数個存在することが好ましい。
貫通孔205が複数個存在することにより、誘電性構造体に供給できる流体量を増すことができ、流体の圧力損失を低減することができる。
なお、上述の第1〜第5の実施形態においては、こ誘電性構造体に流体が供給されたとき、その流体が、第1空間を通過した後、第2空間を通過するような構成であればよい。すなわち、プラズマが発生する第1空間と電界が生じる第2空間とは必ずしも連続している必要はなく、通じていればよい。
(誘電性粒子)
第1〜第5の実施形態においては、誘電体からなる基体(2等)の表面に誘電性粒子が設けられてもよい。なお、誘電性粒子は、誘電体とともに基体(2等)の一部を構成すると捉えられてもよいが、以下では、説明の便宜上、誘電体からなる部分を基体とし、誘電性粒子は、基体とは別個の部材であるものとする。また、以下では、第1〜第5の実施形態を代表して、第3の実施形態において誘電性粒子が設けられた場合について説明する。
図36は、図16の領域Fに対応する断面図である。貫通孔205には、複数の誘電性粒子31が設けられている。誘電性粒子31は、貫通孔205の中央部から貫通孔205の内周面に向かうにつれて粒径が小さくなっている。複数の誘電性粒子31は、例えば、基体202の表面上に積層された複数の誘電性粒子層32を形成している。
誘電性粒子31は、基体202を構成する誘電体よりも誘電率が大きい。例えば、基体202にアルミナ材料を用いる場合は、アルミナの誘電率は8程度なので、誘電性粒子31として、誘電率が8よりも大きなチタン酸バリウム等を用いる。
基体202と誘電性粒子31、および誘電性粒子31同士は互いに接合されている。それらは、例えば、基体202と誘電性粒子31の固相焼結、またはSiO2、MgO、およびCaO等の焼結助剤を用いた液相焼結により接合されている。
例えば、基体202および誘電性粒子31は、その表面に、白金またはその合金からなる触媒33を有する。白金またはその合金は、基体202および誘電性粒子31と焼結により接合されている。尚、白金またはその合金からなる触媒33は、誘電性粒子31の表面に蒸着法またはめっき法により形成され得る。また、予め誘電性粒子31の原料に添加しておいてもよい。
このように、基体202および誘電性粒子31の少なくとも一方が触媒33を有する場合には、基体202間を流れる流体をプラズマによって改質する際に、活性化エネルギーを低減させることができる。このため流体の改質効率を向上させることが可能になる。
なお、図36では、基体202に、ヒータ116や温度検出素子115が設けられている。ヒータ116は、基体202の適宜な位置に、適宜な形状で埋設されている。例えば、ヒータ116は、基体202に埋設され、蛇行する、または渦巻状に存在するなどして第2電極309等に沿う平面に広がっている。温度検出素子115は、例えば、抵抗体により構成されている。温度検出素子115は、基体202の適宜な位置、例えば、第1電極308と貫通孔205との間に埋設されている。ヒータ116や温度検出素子115は、第2電極309等と同様に、焼成前の誘電層に導電ペーストが配置され、積層された誘電層と共に焼成されることにより、基体202に埋設、固定されて形成される。これらの作用については、後述する第6の実施形態において述べる。
以下に、誘電性粒子31が設けられる誘電性構造体の製造方法について説明する。まず、有機バインダーの重量比がそれぞれ異なる第1から第4のセラミックグリーンシートを準備する。
有機バインダーの重量比が最も小さい複数の第1セラミックグリーンシートの材料は、セラミック粉末および有機バインダーである。セラミック粉末の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素等が挙げられる。また、フィラー成分としては、例えばAl2O3,SiO2,またはZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,またはコージライト)等が挙げられる。また有機バインダーとしては、アクリル樹脂やエチルセルロース樹脂等が挙げられる。
なお、放電により発生した熱を外部に放熱するという観点からは、熱伝導性の高い窒化ケイ素または窒化アルミニウムを用いるのがよい。また、基体202の破損を抑制するという観点からは、高強度の炭化ケイ素を用いるのがよい。
具体的には、第1セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末,有機バインダー,可塑剤,および有機溶剤等を添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法によりシート状に成形する。この第1セラミックグリーンシートは、焼成後に基体202となる。
また、基体202は、貫通孔205に露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率よりも高い方がよい。この構成により、貫通孔205内で発生したプラズマによって基体202がエッチングされることを有効に抑制できる。すなわち、貫通孔205に露出した基体202の表面において、非常に結合力の高い共有結合で結合した結晶相の割合を高めることによって、プラズマによるエッチングに対して抵抗力を高めることができる。
より好ましくは、基体202の貫通孔205に露出した表面において、結晶相の面積率が90〜100%であるのがよい。ここで、結晶相が100%の場合は、単結晶組成であり、結晶相が100%より小さい場合は、隣り合う結晶相同士がその間に介在する非結晶相によって接合された構成である。結晶相の面積率が90%以上であると、貫通孔205内で発生したプラズマによる非結晶相のエッチングが抑制され、基体202のエッチングに対する抵抗力が大きくなる。
この構成により、貫通孔205に露出した表面のプラズマ対する耐久性を向上できるとともに、基体202の熱膨張率を低減して熱応力が生じるのを有効に抑制できる。
このような結晶相の割合を高めるためには、基体202の材料としてアルミナ、ジルコニア、またはコージライトを用い、原料としての焼結助剤などの添加物の含有量および焼成条件を調整することにより、所望のものとすることができる。
なお、高熱環境下で使用され、耐熱衝撃性が必要という観点からは、基体202は、少なくとも貫通孔205に露出した部位の主成分がコージライトであるのがよい。コージライトは線熱膨張係数が約2ppm/℃程度であり、プラズマ発生時の熱による基体202の熱膨張を低減して、熱応力が生じるのを有効に抑制できる。
このような結晶相の面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)等による表面状態観察により求めることができる。また、結晶性の判断については、X線回折を用いることにより分析できる。
また、有機バインダーの重量比が第1セラミックグリーンシートよりも大きい第2セラミックグリーンシート、有機バインダーの重量比が第2セラミックグリーンシートよりも大きい第3セラミックグリーンシート、及び有機バインダーの重量比が最も大きい第4セラミックグリーンシートの材料は、セラミック粉末、金属酸化物粉末、および有機バインダーである。セラミック粉末の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素等が挙げられる。また、フィラー成分としては、例えばAl2O3,SiO2,またはZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,またはコージライト)等が挙げられる。金属酸化物粉末としてはチタン酸バリウム等が挙げられる。また、有機バインダーとしてはアクリル樹脂またはエチルセルロース樹脂等が挙げられる。
次に、第2セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤、および有機溶剤等に、有機バインダーを第1セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
また、第3セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤、及び有機溶剤等に、有機バインダーを第2セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
さらに、第4セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤、及び有機溶剤等に、有機バインダーを第2セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
次に、必要に応じて第1セラミックグリーンシート上に、焼成後、例えば第2電極309等となる導体ペーストを塗布する。導体ペーストの塗布は、例えばスクリーン印刷法またはインクジェット印刷法にて行われる。そして、複数の第1セラミックグリーンシートを積層して第1セラミックグリーンシートの積層体を得る。ここで、第1セラミックグリーンシートの圧着は、例えば、熱圧着法または加圧圧着法にて行われる。好適には、第1セラミックグリーンシートを40から150℃に加熱し、10から200kg/cm2に加圧して行われる。
次に、基体202となる第1セラミックグリーンシートの積層体上に、有機バインダーの重量比が第1セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの第2セラミックグリーンシートと有機バインダーの重量比が第2セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの第3セラミックグリーンシートと有機バインダーの重量比が最も大きい少なくとも1つの第4セラミックグリーンシートを順に積層して圧着し、第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を得る。セラミックグリーンシートの圧着は、例えば、熱圧着法や加圧圧着法にて行われる。好適には、セラミックグリーンシートを40から150℃に加熱し、10から200kg/cm2に加圧して行われる。
次に、第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を焼成する。焼成は、例えば800から1600℃に加熱することで行われる。この焼成の過程においてセラミックグリーンシートに含まれている有機バインダーが熱により炭化を経て気化し、セラミック粉末、および金属酸化物粉末のみからなる仮焼構造体となる。これにより、有機バインダーの重量比が大きいセラミックグリーンシート程、焼成過程における仮焼構造体の気孔比率が大きくなり、仮焼構造体におけるセラミック粉体どうしの焼結が促進され、誘電性粒子は成長していく。本発明における実施例では、基体202となる第1セラミックグリーンシート、誘電性粒子層32となる、第2セラミックグリーンシート、第3セラミックグリーンシートおよび第4セラミックグリーンシートの順に誘電性粒子の大きさが大きく形成される。
この焼結過程において、基体202となる第1セラミックグリーンシート、誘電性粒子層32となる第2乃至第4のセラミックグリーンシートが互いに焼結し接合されることにより、基体202と誘電性粒子層32は焼結し接合される。
さらに、第1乃至第4のセラミックグリーンシートを焼結して得られるセラミック積層体を2つ準備し、それらのセラミック積層体を、隣接するセラミック積層体の焼成前の第4セラミックグリーンシート側における一部の表面同士が対向するように、該表面の対向方向に配列する。
なお、基体202と誘電性粒子層32は、気孔比率が異なり、気体の通過しやすさが異なる。基体202と誘電性粒子層32とは、誘電性構造体の一部を切り出して電子走査型顕微鏡(SEM)によって観察することにより容易に区別できる。
また、基体202と誘電性粒子層32は吸水率を測定することで区別することも可能である。吸水率の測定は、例えば、日本工業規格(JIS)法によるものが挙げられる。この方法では、まず、誘電性構造体の一部(以下、「測定試料」という。)を切り出して、水に入れて加圧し、その後測定試料の重量(以下、第1の重量Aという。)を測定する。次に、測定試料をオーブンで完全乾燥させ、その乾燥した測定試料の重量(以下、第2の重量Bという。)を測定する。そして、第1の重量と第2の重量の差から吸水率を求める((B−A) ÷ A ×100 )。基体202の吸水率は3%未満であり、誘電性粒子層32の吸水率は3%以上である。吸水率が高いことは、気孔比率が高く、気孔同士が連続してつながっていることを示す。このように、吸水率が高い場合には、気孔同士がつながっており、気体が通過する際の圧力損失が小さいことを表すことから、吸水率を測定することにより、基体202と誘電性粒子層32とを区別することができる。
上述の製造方法によれば、基体202と誘電性粒子31、および誘電性粒子31同士が接合されているので、粒径の小さな粒子と中程度の粒子、及び大きな粒子が、振動等で所定の位置から動くことがなく、また第2電極309等を内蔵した基体202の表面には常に粒径の小さな誘電性粒子31が配置される。よって、誘電性構造体を長期間使用してもプラズマの発生電圧に変化やばらつきを生じることなく安定したプラズマ発生状態を得ることができる。
なお、上述の説明では、基体202と3層の誘電性粒子31からなる誘電性粒子層32の構造について記載したが、誘電性粒子層32は、2層でもよく、また4層、5層、それ以上の層数であってもよい。
誘電性構造体は、貫通孔205に設けられた複数の誘電性粒子31を備え、誘電性粒子31は、貫通孔205の中央部から各貫通孔205の内周面に向かうにつれて、粒径が小さくなっている。この構成によれば、貫通孔205に誘電性粒子31が存在し、第1空間223における誘電率(静電容量)が大きくなるので、プラズマを発生させるための開始電圧(閾値電圧)を低くすることができる。
また、誘電性粒子31は、基体202の表面に近づくにつれて小さくなっているので、基体202に近づくにつれて誘電性粒子31の比表面積が大きくなり、誘電性粒子31の表面に電荷を蓄積しやすい状態となるため、第1電極対306に電圧が印加された場合、比較的低い電圧で誘電性粒子31が帯電し、帯電した電荷は、更に隣接した誘電性粒子31へ帯電して、連続的な帯電が発生する。この帯電現象は一度発生すると、粒径が小さい誘電性粒子から、粒径の大きい粒子へ順に発生していく。このため、プラズマの発生開始電圧を低くすることができる。
なお、基体202よりも誘電性粒子31の誘電率が高い場合には、基体202と誘電性粒子31の誘電率が同程度か、誘電性粒子31の誘電率が低い場合と比較して、誘電性粒子31の表面に電荷をより蓄積しやすい状態となるため、電圧が印加された場合、より低い電圧で誘電性粒子31が帯電し、帯電した電荷は、更に隣接した誘電性粒子31へ帯電し、連続的な帯電が発生する。これにより、プラズマ発生の閾値電圧をより低くすることができる。
このように、プラズマ発生の閾値電圧を低くすることができれば、誘電性構造体を搭載した機器において、プラズマ発生に関する消費電力量も小さくなる。これは、特にトータル使用可能電力の制限がある自動車や小型発電機、船舶等の移動体において、この誘電性構造体を利用する際に非常に有効である。
なお、2つの基板部203のうち一方の基板部203と貫通孔205の中央部との間に誘電性粒子31が設けられ、その誘電性粒子31が、貫通孔205の中央部からその一方の基板部203に向かうにつれて、粒径が小さくなっていてもよい。
また、貫通孔205が誘電性粒子で満たされ、その誘電性粒子の粒径が貫通孔205の中央部から貫通孔205の内周面に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
(放電装置)
第1の実施形態に係る誘電性構造体1と、第1組み合わせ集合6に交流電圧を印加する交流電源と、第2組み合わせ集合7に直流電圧を印加する直流電源とを組み合わせて、貫通孔5に供給される流体を改質し、流体中の微粒子状不純物を除去することのできる放電装置を構成することができる。第2〜第5の実施形態に係る誘電性構造体201、301、401、501についても同様である。
なお、第3の実施形態において、第2組み合わせ集合307(第3電極310及び第4電極311)に電圧を印加する直流電源は、第3電極310及び第4電極311に、正負の電圧を直接印加する直流電源であってもよいし、第2電極309と第3電極310との間に正の直流電圧を印加する電源と、第1電極308と第4電極311との間に負の直流電圧を印加する電源とを組み合わせたものであってもよい。第4の実施形態においても同様である。
また、例えば、第2組み合わせ集合に直流電圧を印加して基体2の表面に微粒子状不純物を吸着させた後、第2組み合わせ集合に交流電圧を印加してもよい。交流電圧の印加により、放電領域が形成され、基体2の表面に吸着させた微粒子状不純物をプラズマによって分解し、流体を改質することができる。
このように電極間に印加する電圧を制御するためには、図37に示すように、直流電源V1、交流電源V2、および第2組み合わせ集合に接続する電源を直流電源V1と交流電源V2との間で切り換えるスイッチ等の切り換え部SW1を用いることができる。
このように電極間に印加する電圧を制御すると、流体供給部SUPから供給された流体中に含まれ、最初に発生したプラズマによって分解できなかった微粒子状不純物も、帯電させて基体の表面に吸着させた後、再びプラズマにより分解し、流体を改質させることができることから、微粒子状不純物の除去をより十分に行うことができる。さらに、基体に付着した微粒子状不純物も除去することが可能であるから、流体の圧力損失の増大をより抑制することが可能となり、その結果、流体中の微粒子状不純物を長期に渡ってより安定して反応させて、流体を改質することができる。
なお、ここでは、第3の実施の形態による誘電性構造体を用いて説明したが、第1、第2、および第4、第5の実施の形態による誘電性構造体に対しても適用可能である。
(第6の実施形態)
図38は、本発明の第6の実施形態に係る反応装置100の構造的な構成を示す概念図である。
反応装置100は、上述した第1〜第5の実施形態の誘電性構造体のいずれかを備える。なお、以下では、第1〜第5の実施形態を代表して、第1の実施形態の符号を用いて説明する。
反応装置100は、誘電性構造体1により被処理流体を処理して排出する装置として構成されている。被処理流体は、例えば、自動車の内燃機関の排気ガスであり、貫通孔5(以下、「放電空間」ともいう。)における化学変化によりNOxが分解される。また、例えば、被処理流体は、冷蔵庫やエアコンに冷却媒体として使用されたフロンであり、放電空間5における化学変化によりフロンが分解される。なお、以下では、反応装置100のうち、誘電性構造体1以外の部分を、反応装置本体部101ということがある。
反応装置本体部101は、被処理流体を供給する流体源103と、流体源103から誘電性構造体1に被処理流体を導く供給管105(供給部の一例)と、誘電性構造体1により処理された被処理流体を排出する排出管107と、被処理流体の流動を制御するための被処理流体用ポンプ109と、冷却媒体を供給する冷媒源111と、冷媒源111から誘電性構造体1に冷却媒体を導く供給用流動管106A(冷却部の一例)と、誘電性構造体1から冷媒源111に冷却媒体を導く排出用流動管106Bと、冷却媒体の流動を制御するための冷却媒体用ポンプ113(冷却部の一例)とを備えている。
流体源103は、被処理流体としての排気ガスを排出する自動車の内燃機関等、被処理流体を生成するものである。あるいは、流体源103は、使用済みの冷蔵庫やエアコンの冷却媒体を保持したタンク等、被処理流体を保持するものである。
供給管105は、一端側が、流体源103の被処理流体を生成又は保持する空間に連通し、他端側が、誘電性構造体1の放電空間5に連通している。供給管105の誘電性構造体1側は、放電空間5の数に対応して第1分岐部105aA、第2分岐部105aB、第3分岐部105aC(以下、単に「分岐部105a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部105aA〜第3分岐部105aCは、それぞれ放電空間5A〜放電空間5Cに連通している。
排出管107は、一端側が、誘電性構造体1の放電空間5に、供給管105とは反対側から連通し、他端側が、大気に開放され、又は、処理後の被処理流体を保持若しくは処理後の被処理流体に別の処理を施す不図示の空間に連通している。排出管107の誘電性構造体1側は、放電空間5の数に対応して第1分岐部107aA、第2分岐部107aB、第3分岐部107aC(以下、単に「分岐部107a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部107aA〜第3分岐部107aCは、それぞれ放電空間5A〜放電空間5Cに連通している。なお、排出管107は、省略されてもよい。例えば、処理後の被処理流体が放電空間5から大気へ直接的に排出されてもよい。
供給管105及び排出管107は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。供給管105及び排出管107は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。分岐部105a及び分岐部107aと、第1貫通孔5との接続は、例えば、分岐部105aや分岐部107aの端部を、基体2における第1貫通孔5の開口を有していない側面に当接させて、接着剤や螺合部材などの適宜な固定部材により分岐部105aや分岐部107aと基体2とを固定することにより行われる。なお、分岐部105aや分岐部107aを放電空間5に嵌合挿入したり、流出用接続管等の突出した環状部分を放電空間5の端部に基体2と一体的に形成し、その突出部分を分岐部105aや分岐部107aに嵌合挿入することにより行われてもよい。
被処理流体用ポンプ109は、供給管105及び排出管107の少なくともいずれかに設けられている。図38では、供給管105に設けられた場合を例示している。なお、流体源103が内燃機関である場合など、流体源103の動力により被処理流体が流動される場合には、被処理流体用ポンプ109は省略されてもよい。また、被処理流体用ポンプ109は、誘電性構造体1に設けることも可能である。被処理流体用ポンプ109は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
冷媒源111は、例えば、熱交換器を含んで構成され、排出用流動管106Bからの冷却媒体の温度を熱交換器により降下させて供給用流動管106Aに供給する。なお、冷媒源111は、冷却媒体を供給することができればよく、排出用流動管106Bからの冷却媒体を受け入れて冷却媒体を循環させるものでなくてもよい。すなわち、排出用流動管106Bからの冷却媒体は、冷媒源111とは異なる場所へ排出されてよい。例えば、冷却媒体として水道水が利用されるような場合に、排出用流動管106Bからの水は、冷媒源111としての水源とは異なる場所へ排出されてよい。逆に、冷却媒体が循環される構成である場合には、冷媒源111は省略されてもよい。
供給用流動管106Aは、一端が冷媒源111に連通するとともに、他端が、上述のように、流入用接続管等を介して誘電性構造体1の放電空間5(流路)に連通している。排出用流動管106Bは、一端が、基体2に一体的に設けられた流出用接続管等を介して誘電性構造体1の放電空間5に連通するとともに、他端が冷媒源111に連通している。流動管106は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。流動管106は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
冷却媒体用ポンプ113は、供給用流動管106A及び排出用流動管106Bの少なくともいずれかに設けられている。図38では、供給用流動管106Aに設けられた場合を例示している。なお、冷媒源111が高位置にあるタンクであり、重力により冷却媒体を流動させることができるなど、適宜に冷却媒体を流動させる動力が得られる場合には、冷却媒体用ポンプ113は省略されてもよい。また、冷却媒体用ポンプ113は、誘電性構造体1に設けることも可能である。冷却媒体用ポンプ113は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
図39は、反応装置100の電気系の構成を示すブロック図である。ここでは、例として、基体2の内部に基体2の温度を検出するための温度検出素子115と、基体2を加熱するためのヒータ116とが設けられているものする。また、基体2の表面に、温度検出素子115からの電気信号を出力ためのセンサ用端子118、ヒータ116に電力を供給するためのヒータ用端子119がそれぞれ露出しているものとする。なお、以下では、外部端子214〜216をまとめて、導電体用端子117という。
反応装置本体部101は、導電体用端子117、センサ用端子118、ヒータ用端子119に接続される装置側導電体用端子141、装置側センサ用端子143、装置側ヒータ用端子145を備えている。誘電性構造体1は、これら端子を介して反応装置本体部101から電力が供給されて駆動制御される。具体的には、以下のとおりである。
電源部121は、例えば、バッテリを含んで構成され、バッテリからの直流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。あるいは、商用周波数の交流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。電源部121の電力は、制御部123、放電制御部125、温度検出部127、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109、冷却媒体用ポンプ113に供給される。
放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び導電体用端子117を介して第1組み合わせ集合6に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。第1空間23では、放電制御部125により印加された電圧に応じた量の放電が行われる。
また、放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電圧に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び導電体用端子117を介して第2組み合わせ集合7に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。第2空間24では、放電制御部125により印加された電圧に応じた電位勾配が形成され、該電位勾配に対応して第2空間24は電気的に正または負に帯電し、第2空間24を通過した微粒子状不純物を帯電させることができる。
温度検出部127は、例えば、温度検出素子115が温度変化により抵抗値が変化する抵抗体により構成されている場合、電源部121から供給される電力を適宜な電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側センサ用端子143及びセンサ用端子118を介して温度検出素子115に供給する。そして、温度検出素子115は、温度検出素子115の抵抗値を検出し、その検出した抵抗値に応じた信号を制御部123に出力する。温度検出素子115は、検出した抵抗値に基づいて温度検出素子115の温度を算出し、その算出値に応じた信号を制御部123に出力してもよい。
ヒータ駆動部129は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側ヒータ用導電体145及びヒータ用端子119を介してヒータ116に供給する。ヒータ駆動部129は、例えば、整流回路や変圧器等の電源回路を含んで構成されている。ヒータ116では、ヒータ駆動部129により印加された電圧に応じた量の発熱が行われる。
被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113はそれぞれ、例えば、特に図示しないが、ポンプの駆動源としてのモータと、当該モータを駆動するモータドライバとを含んで構成されており、モータドライバは、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力又は直流電力に変換してモータに印加する。モータは、印加された電圧に応じた回転数で回転し、ひいては、印加された電圧に応じた力が被処理流体や冷却媒体に加えられる。
入力部131は、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作に応じた信号を制御部123に出力する。例えば、入力部131は、反応装置100の駆動開始操作、駆動停止操作、温度設定や流量制御に係る各種のパラメータの設定操作を受け付け、操作に応じた信号を出力する。入力部131は、例えば、各種スイッチを含んだ制御パネルやキーボードにより構成されている。
制御部123は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を備えたコンピュータにより構成されている。制御部123は、温度検出部127や入力部131からの信号に基づいて、放電制御部125、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113に制御信号を出力する。
例えば、制御部123は、入力部131から反応装置100の駆動開始操作に応じた信号が入力された場合には、導電体用端子117への電力の供給を開始するように放電制御部125に制御信号を出力し、入力部131から反応装置100の駆動停止操作に応じた信号が入力された場合には、導電体用端子117への電力の供給を停止するように放電制御部125に制御信号を出力する。
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、第1組み合わせ集合6へ供給する電力を、通常運転時に供給する電力よりも増加させるように、放電制御部125に制御信号を出力し、誘電性構造体1が目標温度に到達した場合には、第1組み合わせ集合6へ供給する電力を通常運転時に供給する電力に維持するように、放電制御部125に制御信号を出力する。
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、ヒータ116へ電力を供給し、又は、ヒータ116へ供給する電力を増加させるように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。そして、誘電性構造体1が目標温度に到達した場合には、ヒータ116へ供給する電力を減少させ、又は、ヒータ116への電力の供給を停止するように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度、あるいは、誘電性構造体1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の目標温度とを比較し、検出された温度が目標温度よりも高い場合には冷却媒体の流速を高く、低い場合には冷却媒体の流速を低くするように、冷却媒体用ポンプ113へ制御信号を出力する。
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、誘電性構造体1が効率的に沿面放電を発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、被処理流体の流速を低く、達したと判定した場合は、被処理流体の流速を高くするように、被処理流体用ポンプ109へ制御信号を出力する。
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、誘電性構造体1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の温度範囲とを比較し、検出された温度が設定された温度範囲を超えた場合には、不図示の表示装置やスピーカ等の報知部に、異常の発生を報知するように制御信号を出力する。
以上の第6の実施形態によれば、反応装置100は、第1の実施形態の誘電性構造体1と、放電空間5に被処理流体を供給する供給管105と、放電空間5でプラズマ発生を行なって被処理流体を化学変化させた反応流体を排出するための排出管107とを備えているから、第1の実施形態と同様に、誘電性構造体1の耐久性の向上や誘電性構造体1の小型化の効果が得られ、ひいては、反応装置100の耐久性の向上や小型化の効果が得られる。
なお、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述においては、自動車、船舶、発電機等に使用されるディーゼルエンジン等の排気ガスの改質について説明を行っているが、その他の用途に使用される誘電性構造体およびその反応装置に適用しても良い。例えば、消臭、ダイオキシン分解、花粉分解等に使用される空気洗浄機器やプラズマエッチング、薄膜装置等に搭載される誘電性構造体および反応装置等に適用することができる。また、沿面放電により放電空間を通過する流体を反応または分解させるための誘電性構造体およびその反応装置に適用することが可能である。