JP6242059B2 - 放電プラズマリアクタ - Google Patents
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Description
多くの場合、SOFはエンジン排気系の最上流に設けたディーゼル酸化触媒(DOC)で過半を酸化して浄化しているが、触媒が活性化するためには200℃以上の温度が必要である。
一方、ススについてはハニカムセラミック製のDPF(Diesel Particulate Filter)で捕集しているが、ススの蓄積に伴いDPFの背圧が40kPa程度に高くなった時点で、未燃燃料を供給するなどしてDPFを600℃以上に昇温し、またはエンジン停止時に電気ヒータなどによる加熱によって、ススを酸化燃焼することによりDPFを再生させるようにしているため、燃費の悪化に繋がる。
さらに、発進及び停止が頻繁に繰り返される市街地の低速走行では排気温度が100〜200℃に低下するため、従来の後処理装置ではススの燃焼は勿論、SOFの酸化もできない。しかも、150℃以上ではSOFの80%以上が気体であるため、200℃以下の排気温度では、その多くがDOCとDPFの両者を素通りしてしまい、市街地走行のような条件ではPMの捕集が不十分になると危惧されている。(非特許文献2)
しかしながら、前記文献の放電プラズマを利用した排ガスの浄化装置では、放電ストリーマが処理ガス流路を横切るような構造になっており、表面プラズマの特長が十分に利用されているとは言い難い。また、排ガスの処理以外に考えられているプラズマリアクタも同様である。
請求項4記載の発明は、上記1項、2項、3項のうち、何れか1項において、放電プラズマの駆動電源として1kHz〜100kHzの高周波交流高電圧に正の直流高電圧を重畳した出力電圧を発生する電源装置を備え、該出力電圧を前記励起電極(20c,20c´)のみに給電し,正の直流電圧成分によって選択的に発達する正ストリーマで表面プラズマの化学作用を強化するとともに,前記スライディング電極(20a,20a´)および背面電極(20f,20f´)を接地可能とすることにより、該励起電極(20c,20c´)以外に対する絶縁手段を省略可能にした電源装置並びに電極構造を備えたことを特徴としている。
ここでは、まず円管型プラズマ発生装置をディーゼルエンジンのPM浄化装置に利用する場合について述べ、次に一般のプラズマリアクタへの応用を念頭にした平板型プラズマ発生装置について説明する。
各電極(30b、30c)によって電界集塵層(30a)には、直流高電圧により高電界が印加されていることから、帯電した粒子状物質あるいは液滴を電界集塵層(30a)によって効果的に捕集することができる。
また、当該電界集塵層(30a)には粒子充填層あるいは通気性セラミック層を使用し、捕集物の酸化を目的にした触媒が担持されており、プラズマ発生装置(20)によって生成された化学的活性種の作用を促進する。後述の実施例においてはPM酸化触媒にセリア(CeO2)を用いたが、PMの酸化に多用される貴金属触媒や酸化鉄系触媒、銅系触媒など、多種・多様のものが利用できる。こうして浄化された排気はガス出口(10d)から排出される。
発振器(21)からの高周波信号は、電力増幅器(22)を経て、昇圧トランス(23a)、インダクタ(23b)、コンデンサ(23c)からなる共振回路(23)に供給され、高周波高電圧交流を得る。これに高電圧直流電源(24)からの直流成分を重畳し、安定化抵抗(25a)、バイパスコンデンサ(バリア放電電流用)(25b)を備えた安定化回路(25)を経由してプラズマリアクタの励起電極(20c´)に供給している。
なお、安定したスライディング放電は、励起電極(20c,20c´)がスライディング電極(20a,20a´)に対し、正電位の時にのみ生じるので、交流に重畳する直流は正極性に限られる。(非特許文献5)
図3は、スライディング放電用の電極(3電極系バリア放電)並びにプラズマリアクタに使用される絶縁誘電体との関係を示す説明図である。図3のようなスライディング放電電極構造を使用すると表面プラズマが広い面を覆うようになるため、プラズマの化学作用を一層強化でき、かつコンパクトな電極設計が可能である。
図5に両面型放電ユニットを4つの方向から視た概略を例示した。これは一面および他面の両面に片面型放電ユニットと同様なスライディング電極(20a)並びに励起電極(20c)を設け、背面電極(20f)は絶縁誘電体(20b)の中間面に埋め込む。
次いで、前述のように構成した放電プラズマリアクタのうち、円管型プラズマ発生装置を利用したPM浄化装置についての試験結果を実施例として説明する。なお、浄化試験には以下の機器を用いている。
供試機器;3000ccディーゼルエンジン用PM浄化装置
試験使用機器;ディーゼル発電機 30 kW(排ガス発生装置として使用)
ディーゼル排気量;3,000CC
負荷装置(電気ヒータ);7.5kW×4
計測装置;(NOX計,CO計、O2計、パーティクルカウンタ、ディジタルオシロ、ガス流量計、温度計、差圧計、データロガー等)
PMの捕集量は室温条件で秤量した後、150℃で3時間乾燥した残滓も測定した。これはエンジン内で燃料等が部分酸化などの化学変化を受け、150℃程度で揮発する成分が生成されることによる。(非特許文献2)
(A):未処理ガス
(B):触媒のみを使用したとき
(C):プラズマ発生装置のみを使用したとき(直流バイアス正)
(D):触媒+プラズマ発生装置(直流バイアス負)
(E):触媒+プラズマ発生装置(直流バイアス正)
(F):触媒+プラズマ発生装置(直流バイアス負)+電界集塵(15kV印加)
(G):触媒+プラズマ発生装置(直流バイアス正)+電界集塵(15kV印加)
エンジンに負荷をかけない場合のPM濃度測定結果を図8に示す。無負荷試験ではプラズマ発生装置に供給する直流バイアスの極性は正のみとした。
無負荷では排気温度が低く、図1の触媒付電界集塵層(30a)の平均温度は約90℃であった。図中の棒グラフの全長は室温で秤量したときのPM濃度、白抜き部分は150℃残渣成分の濃度に対応する。両者の差は150℃で気体状態をとるPM量と考えられ、この部分は気体であるため普通のDPFでは捕集できない。排気中の未燃炭化水素およびPM中のSOFはDOC(ディーゼル酸化触媒)で浄化するが、通常のDOCは200℃以下では十分に機能しないので、市街地を低速で走行するディーゼル車では相当量のPMが排出されているものと考えられる。(非特許文献2)
ディーゼルエンジンの負荷はディーゼル発電機の出力側に電気ヒータを接続して7.5kW、15kW、22.5kWの各負荷について試験した。この試験でもプラズマ発生のための放電電力は500Wとしたが、スライディング放電には極性効果があるためプラズマ発生装置に供給する直流バイアスは正(スライディング放電ON)と、負(スライディング放電OFF)の両極性について実施した。
さらに本発明をディーゼルエンジンの排気処理装置に利用できることは勿論であるが、多様な炭化水素の混合物であるSOFを処理できる以上、たとえばVOCの分解、燃料電池に使用するガスの改質装置など多方面での活用が可能であると期待できる。
また、従来におけるスライディング放電には直交2系統の配電を要する3電極系であるが、本発明では、高圧交流に高圧直流を重畳する1系統の配電方式としたので、絶縁が必要な電極の数を減少させることができ、給電系の構造を簡素化することが可能となる。
10b 処理装置ガス入口
10c ガス導入管
10d 処理装置ガス出口
20 プラズマ発生装置
20a スライディング電極
20b 絶縁誘電体
20c,c´ 励起電極
20d,d´ 放電ギャップ(スライディング放電)
20e バリア放電荷電電極
20f 背面電極
20g バリア放電接地電極
20h, h´ 励起用バリア放電
21 発振器
22 電力増幅器(インバータ)
23 交流高電圧電源(共振回路)
23a 昇圧トランス
23b 共振用インダクタ
23c 共振用コンデンサ
24 高電圧直流電源
25 安定化回路
25a 安定化抵抗
25b バイパスコンデンサ(バリア放電電流用)
26a, b 高電圧ブッシング
26c 高電圧給電線
30a 触媒付電界集塵層
30b 集塵層用直流高電圧電極
30c 集塵層用接地電極
40 処理ガス流路のための間隙
Claims (4)
- 処理ガスが導入される筐体(10a)を有し、該筐体(10a)内部には表面プラズマによってガスに化学作用を及ぼすプラズマ発生装置(20)が設けられている放電プラズマリアクタであって、
前記プラズマ発生装置(20)の構成部材として、円管型の絶縁誘電体(20b)が用いられ、該円管型の絶縁誘電体(20b)の外周部両端にスライディング電極(20a,20a´)が設けられているとともに、
該2個のスライディング電極(20a,20a´)それぞれから、該絶縁誘電体(20b)の円管管軸方向に放電ギャップ(20d,20d´)を隔てて2個の励起電極(20c,20c´)が円管表面に設けられ、該励起電極(20c,20c´)は、円管表面に密着して設置したコイル状あるいは網目状のバリア放電荷電電極(20e)によって電気的に接続され、
前記絶縁誘電体(20b)の円管内周面には前記放電ギャップ(20d,20d´)と対応する反対側の位置に2つの背面電極(20f、20f’)が管内壁に密着して設けられているとともに、該絶縁誘電体(20b)の内周側における前記バリア放電荷電電極(20e)と対応する位置に、線状あるいは網目状のバリア放電接地電極(20g)が管内壁に密着して設けられ、該バリア放電接地電極(20g)は前記スライディング電極(20a,20a´)、並びに前記背面電極(20f、20f´)とともに接地されており、
前記励起電極(20c,20c´)に正の直流高電圧を重畳した高周波交流高電圧を印加することにより、前記バリア放電荷電電極(20e)、バリア放電接地電極(20g)の周辺および前記励起電極(20c,20c´)の端部(20h,20h´)に、前記絶縁誘電体(20b)の表面に沿うバリア放電を発生させるとともに、前記放電ギャップ(20d,20d´)にはスライディング放電による表面プラズマを発生させるようにしたことを特徴とする放電プラズマリアクタ。 - 請求項1に記載の放電プラズマリアクタにおける前記筐体(10a)には処理ガスが導入される処理装置ガス入口(10b)、並びに、処理装置ガス出口(10d)が各々設置されており、
前記筐体(10a)内に設置された前記プラズマ発生装置(20)のガス通路(40)の前記処理装置ガス出口(10d)側に、触媒付電界集塵層(30a)が設けられ、該触媒付電界集塵層(30a)は集塵層用直流高電圧電極(30b)及び集塵層用接地電極(30C)を具備し、
処理ガス中に固体粒子あるいは液滴粒子を含む場合には、前記プラズマ発生装置(20)の正ストリーマ、これに加えてバリア放電荷電電極(20e)から放出される正イオンによって、固体粒子あるいは液滴粒子に電荷を与えて帯電微粒子として、該帯電微粒子を前記触媒付電界集塵層(30a)により静電的に捕集するとともに、前記プラズマ発生装置(20)によって生成された化学的活性種により、捕集した微粒子を酸化し気化する処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の放電プラズマリアクタ。 - 前記プラズマ発生装置(20)の絶縁誘電体(20b)の表面,あるいは該プラズマ発生装置(20)の下流に設けた通気性を有する担体に触媒を担持し,放電プラズマと触媒の相乗効果を利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の放電プラズマリアクタ。
- 放電プラズマの駆動電源として1kHz〜100kHzの高周波交流高電圧に正の直流高電圧を重畳した出力電圧を発生する電源装置を備え、
該出力電圧を前記励起電極(20c,20c´)のみに給電し,正の直流電圧成分によって選択的に発達する正ストリーマで表面プラズマの化学作用を強化するとともに,
前記スライディング電極(20a,20a´)および背面電極(20f,20f´)を接地可能とすることにより、該励起電極(20c,20c´)以外に対する絶縁手段を省略可能にした電源装置並びに電極構造を備えたことを特徴とする請求項1〜3のうち、何れか1項に記載の放電プラズマリアクタ。
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