JPWO2009081589A1 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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Abstract

PDPの2次電子放出係数を向上させるのに適した材料を提供することによって、PDPの高効率化を図ることを目的とする。そのため、PDP200において、保護層7がMgOで形成され、結晶性化合物からなる電子放出性の粒子が、保護層7上に散布されて電子放出層20が形成されている。結晶性化合物は、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれらの2種以上を相互に固溶させた固溶体[(Ca,Sr)SnO3、(Sr,Ba)SnO3等]である。

Description

本発明は、プラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレィパネル(以下PDPと略す)は、薄型ディスプレィパネルの中で、大型化が容易、高速表示が可能、低コストといった特徴から、実用化され、急速に普及している。
現在実用化されている一般的なPDPの構造は、前面基板及び背面基板となる2枚のガラス基板を対向配置し、それぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、これらの電極を被覆するように低融点ガラス等の誘電体層を設けている。そして、背面基板の誘電体層上には蛍光体層を設け、前面基板の誘電体層上には、誘電体層をイオン衝撃から保護するとともに2次電子放出性を向上させるためにMgOからなる保護層が設けられている。そして2枚の基板間には、Ne、Xe等の不活性ガスを主体とするガスを封入している。
このようなPDPは、電極間に電圧を印加して放電を発生させて蛍光体を発光させることによって表示を行う。
PDPにおいて、従来から発光効率を高めることが強く要求されており、その手段として、誘電体層を低誘電率化する方法や、放電ガスのXe分圧を上げる方法が知られている。しかしながら、このような手段を用いると、放電開始電圧や維持電圧が上昇してしまう問題点があった。
そして、このような課題に対して、2次電子放出係数の高い材料を保護層に用いることによって、放電開始電圧や維持電圧を下げる事が可能であって、高効率化並びに耐圧の低い素子を用いる事による低コスト化を実現できることが知られている。
例えば、特許文献1,2においては、MgOの代わりに、同じアルカリ土類金属酸化物であるが、より2次電子放出係数の高い、CaO,SrO,BaOを用いたり、これら化合部の固溶体を用いる事が検討されている。
特開昭52−63663号公報 特開2007−95436号公報
しかしながら、CaO、SrO、BaOなどは、MgOに比べて化学的に不安定であって、空気中の水分や炭酸ガスと容易に反応して水酸化物や炭酸化物を形成する。このような化合物が形成されると、2次電子放出係数が低下して、期待どおりに放電開始電圧や維持電圧を低減できなくなったり、あるいは電圧低減に必要とされるエージング時間が非常に長くなってしまうため、実用的ではなくなるといった問題がある。
こうしたCaO、SrO、BaOなどの化学反応による劣化は、実験室レベルで少量を作製する場合には、作業の雰囲気ガスを制御するといった方法で回避可能であるが、製造工場での全ての工程の雰囲気を管理するのは困難であり、また可能であっても高コスト化につながる。
また、MgO以外の材料を保護腹として用いた場合、イオン衝撃耐性が低いために、PDP駆動時のガスによるスパッタリング量が大きくなり、寿命が短くなるという問題もある。
そのため、従来から2次電子放出係数の高い材料の使用が検討されてきたにもかかわらず、未だに実用化されている保護層材料はMgOのみである。
本発明は、上記課題に鑑み、PDPの2次電子放出係数を向上させるのに適した材料を提供することによって、PDPの高効率化を図ることを目的とする。
本発明は、電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するPDPにおいて、放電空間に臨む領域に、Ca(カルシウム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム)から選ばれた一種類以上と、Sn(スズ)とO(酸素)とを主成分とする化合物からなる電子放出性材料を配設することとした。
ここで「放電空間に臨む領域」は、放電空間での放電に伴って荷電粒子などが照射される領域であって、具体的には、保護層の表面、蛍光体層の表面、隔壁の表面をはじめとして、保護層の内部、蛍光体層の内部、隔壁の内部もこれに該当する。
特に、MgO保護層の上に、上記化合物を、粒子の状態で、被覆率1%以上20%以下の状態で分散配置することが望ましい。
ここで、「被覆率」は、保護層の表面に上記化合物の粒子を投影したときに、粒子が占める面積の割合を指す。
また、上記「主成分」は、化合物を構成する元素の中、主要なものを指すので、化合部には、主成分以外の元素が少量含まれていてもよい。特に、本発明にかかる化合物においては、主成分以外の元素が、主成分を構成する元素に代わって含まれている場合もり、その量が主成分の元素より少量であれば許容される。
上記化合物としては、Ca、Sr、Baの一種類以上とSnとを特定の比率で含む結晶性酸化物が望ましい。より具体的には、次のものが望ましい。
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれら相互の固溶体。
Sr3Sn27、Ba3Sn27、あるいはこれら相互の固溶体。
Ca2SnO4、Sr2SnO4、Ba2SnO4、あるいはこれら相互の固溶体。
詳しくは実施の形態のところで説明するが、Ca,Sr,Baから選ばれた一種類以上と、SnとO(酸素)とを主成分とする化合物は、化学的に安定であって、且つ2次電子放出係数が高い。従って、この化合物をPDPにおける放電空間に臨むところに配設することによって、PDPの駆動電圧を低くでき、実用性もある。
また、保護層としては従来どおり、イオン衝撃耐性の高いMgO膜を用い、上記化合物を電子放出材料として用いれば、駆動電圧が低く且つ長毒命のPDPを提供できる。
本発明の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図1に示したPDPの縦断面図である。 本発明の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図3に示したPDPの縦断面図である。 XPSによる価電子帯スペクトルの測定例である。 XPSによるC1sスペクトルの測定例である。
符号の説明
1 前面板
2 前面ガラス基板
3 透明導電膜
4 バス電極
5 表示電極
6 誘電体層
7 保護層
8 背面板
9 背面ガラス基板
10 アドレス電極
11 誘電体層
12 隔壁
13 蛍光体層
14 放電空間
20 電子放出層
まず、本発明にかかるPDPに用いる電子放出性材料について説明する。
発明者等は、2次電子放出効率は高いが化学的に不安定なCaO、SrO、BaOの原料と各種の金属、B、Al、Si、P、Ga、Ge、Sn、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W等の酸化物を反応させて、非常に多種にわたる化合物を合成し、その化学的安定性と2次電子放出能を詳細に検討した結果、SnO2を反応させ、Ca,Sr,Baのいずれか一種類以上とSnとOを含む化合物とする事により、2次電子放出効率をあまり低下させることなく、化学的な安定性を高めることが出来ることを見出した。そして、この電子放出性材料をPDPに用いる事によって、MgOだけを用いたPDPと比べて、駆動電圧を低下できる事を見出した。
(電子放出性材料の組成)
本発明でPDPに用いる電子放出性材料は、Ca,Sr,Baのいずれか一種類以上とSnとOとを主成分とする化合物である。
この化合物は、アモルファス状態のものでもかまわないが、より安定性を高めるためには、結晶性化合物であることが望ましい。
基本的に好ましい結晶性化合物としては、次のものが挙げられる。
(1)CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれらの2種以上を相互に固溶させた固溶体[(Ca,Sr)SnO3、(Sr,Ba)SnO3等]。
(2)Sr3Sn27、Ba3Sn27、あるいはこれらを相互に固溶させた固溶体[(Sr,Ba)3Sn27]。
(3)Ca2SnO4、Sr2SnO4、Ba2SnO4、あるいはこれらの2種以上を相互に固溶させた固溶体[(Ca,Sr)2SnO4等]
これらの結晶性化合物の間で2次電子放出効率を比較すると、組成中にCaOを含む化合物よりもSrOを含む化合物の方が2次電子放出効率が高く、SrOを含む化合物よりもBaOを含む化合物の方が2次電子放出効率が高い。
また、組成中に同じBaOを含む化合物であれば、その含有量が多い方が、2次電子放出効率が高いと考えられる。例えば、BaSnO3よりもBa3Sn27の方が2次電子放出効率が高く、さらに、Ba2SnO4の方が2次電子放出効率が高い。
一方、化学的安定性についてはその逆の順序になる。
必要とされる化学的安定性は、実際にPDPの製造を行う工程条件により様々であるので、一概にどの化合物が良いと決めることは難しいが、これらの化合物の中で、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3は、MgOと同程度以上に安定な化合物であって、特に雰囲気制御等を行わなくても使用可能であり、かつMgOよりも電子放出効率が高いので、最も望ましい。
また、これら3種の中では、低電圧化の観点から、BaSnO3とSrSnO3が望ましく、CaSnO3は若干劣る。
ただし、PDP製造工程において、ある程度の雰囲気制御等を行う事が可能であれば、他の組成の化合物も使用可能であり、その場合は、環境に応じて適当な組成の化合物を用いれば良い。
(固溶体について)
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3については、単独で用いるよりも、相互の固溶体にして用いる事が望ましい。固溶体とする事によって、化学的安定性はほとんど変化しないが、2次電子放出効率は、両者の平均よりも若干高くなるためである。
なお、CaSnO3とSrSnO3、SrSnO3とBaSnO3とは、いずれも全量固溶するが、CaSnO3とBaSnO3とは、格子定数が違いすぎるため、部分固溶しかしない。
(結晶性化合物における部分置換)
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3は、結晶中におけるアルカリ土類のサイトを3価金属であるLaで部分置換したり、Snのサイトを3価金属であるInやY、5価金属であるNbで部分置換したり、OをFで部分置換しても、電子放出性材料として用いることができる。
この際、より高価数の金属で置換(アルカリ土類をLaで部分置換、SnをNbで部分置換など)すると、安定性は若干低下するが、2次電子放出効率は向上する。よって、これらの置換により、その特性を微調整する事が可能となる。特に、SnをIn置換することは,2次電子放出効率を高める点で効果的である。また結晶中におけるSnサイトを、CeやZrによって部分置換することも可能である。
ただし、こうして置換した場合も、組成における主成分は、あくまでアルカリ土類とSnとOである必要がある。例えば、SnサイトをInによって置換する場合、全域置換が可能ではあるが、置換量は、50%未満に設定することが必要であり、20%以下、さらには10%以下であることが望ましい。
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3あるいはこれらの固溶体を、雰囲気調整を行わない通常の製造プロセスで用いる場合、Snのモル数に対するアルカリ土類の合計モル数の比率(Ca+Sr+Ba)/Snは、0.995以下に設定する事が望ましい。
ただし、アルカリ土類サイトやSnのサイトを上述したように部分置換している場合は、それら置換元素を合わせた合計について、当該比率を0.995以下に設定することが好ましい。
これは上記比率が0.995を超えると、2次電子放出係数が低下しやすいためであるが、その理由は、上記比率が1.000の場合でも、組成の不均一性により、アルカリ土類酸化物原料とSnO2の反応過程で、Ba3Sn27相等の、アルカリ土類が多い組成が一旦生成すると、これらの相が粒子表面を覆ってしまい、 雰囲気調整を行わない条件下では、さらにBaCO3が分離析出するなど、表面が不安定化するためと考えられる。
なお、上記比率をさらに低くすると、ある程度以下ではSnO2が余剰となって析出するので、結晶性化合物とSnO2との混合物となるが、そのような状態になっても、上述したアルカリ土類の多い組成の生成を抑える効果は得られる。
(電子放出性材料の合成方法)
Ca,Sr,Baのいずれか一種類以上とSnとOとを主成分とする化合物を合成する方法としては、その形態として、固相法、液相法、気相法が挙げられる。
固相法は、それぞれの金属を含む原料粉末(金属酸化物、金属炭酸塩等)を混合し、ある程度以上の温度で熱処理して反応させる方法である。
液相法は、それぞれの金属を含む溶液を作り、これより固相を沈殿させたり、あるいは基板上にこの溶液を塗布後、乾燥し、ある程度以上の温度で熱処理等を行って固相とする方法である。
気相法は、蒸着、スパッタリング、CVD等の方法であって、膜状の固相を得ることができる。
気相法によれば、上述した、Ca、Sr、BaとSnが特定の比率となる結晶性酸化物以外にも、Ca、Sr、Baより選ばれた一種類以上と、Snと、O(酸素)を主成分とするアモルファス状態の化合物を得ることも出来る。
このアモルファス状態の膜も、CaO、SrO、BaOと比較すれば化学的により安定であり、かつMgOよりも高い二次電子放出効率を持つため、PDPの駆動電圧を低減する事が出来る。しかし、化学的安定性は結晶性化合物の方が高く、また合成法として、気相法は固相法等よりも高コストとなるため、結晶性化合物の方がより望ましい。
(電子放出性材料を配設する位置および形態)
上記の電子放出性材料をPDPパネルのどの部分に形成するかについては、一般的には、前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成すれば良い。しかしながら、他の部位、例えば蛍光体部やリブ表面等の位置に形成したり、蛍光体に混合したりしても、放電空間に面した位置であれば、形成しないものに比べて、駆動電圧低下の効果は認められる。
電子放出性材料を配設する形態については、例えば前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成する場合を考えると、誘電体層の上に通常保護膜として形成されるMgO膜のかわりに、これらの化合物で膜を形成したり、これらの粉末を散布する。あるいはMgO膜を形成したさらに上に、これらの化合物の膜を形成したり、これらの化合物の粉末を散布するといった方法をとれば良い。
ただし、これら化合物で保護層を形成した場合、これらの化合物も高融点で安定な化合物ではあるが、MgOに比べるとスバッタリング耐性はやや劣り、透明性もやや劣る。粉末散布の場合は、さらに透明性低下による輝度劣化が問題となることもある。よって、保護層としては従来どおりMgO膜を用い.その上に透過率が問題とならないレべルで粉末を分散散布する方法が望ましい。
透過率が問題とならないレベルとしては、被覆率が20%以下.より望ましくは10以下が良い。粉末で用いる場合の粒子径は、0.1μm〜10μm程度の範囲内で、セルサイズ等にあわせて選択すれば良いが、分散配置させる場合は、MgO膜上での粉末の移動や落下が生じないように、3μm以下、より望ましくは1μm以下が良い。
このような構成とすると、保護膜としては従来どおり、高融点のMgO腹がその役割をはたし、2次電子放出は、本発明の化合物がその役割をにない、被覆率が低いために輝度低下もなく、低電圧で、かつ長寿命なPDPパネルを得ることができる。
(化合物の表記方法について)
本明細書においては、結晶性化合物を、例えばBaSnO3のように記載しているが、Snは、Sn4+以外に、その一部がSn2+となりやすい元素であり、その場合には酸素欠陥が生じる。従って、より正確にはBaSnO3-δと記載すべきであるが、このδは、製造条件等によって変動し、必ずしも一定値とはならないので、便宜上BaSnO3のように記載している。従って、このような表記は酸素欠陥の存在を否定しているものではない。BaSnO3以外の化合物についても同様である。
また、Snのサイトは同じ4価となるTi、Zrや、3価のIn、5価のNb等で部分置換可能であり、Ca、Sr、Baも、同じ2価のMg、3価のLa、1価のK等で部分的に置換可能であるが、主成分が、Ca、Sr、Baから選ばれた1種類以上とSnとOであって、本発明の化合物の特性(化学的に安定かつ二次電子放出効率が高い)を本質的に損なうものでない限り、これらの少量の置換はかまわない。

(PDPの構成)
上記電子放出性材料を適用したPDPの具体例について、図を用いて説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかるPDP100の一例を示すものであって、図1は、PDP100の分解斜視図、図2は、当該PDP100の縦断面図(図1、I−I線断面図)である。
図1および2に示すように、PDP100は、前面パネル1と背面パネル8とを有している。前面パネル1と背面パネル8との間には、放電空間14が形成されている。このPDPは、AC面放電型であって、保護層に上述した電子放出性材料が配されている以外は従来例にかかるPDPと同様の構成を有する。
前面板1は、前面ガラス基板2と、その内側面(放電空間14に臨む面)に形成された透明導電膜3およびバス電極4からなる表示電極5と、表示電極5を覆うように形成された誘電体層6と、誘電体層6上に形成された保護層7とを備えている。上記表示電極5は、ITOまたは酸化スズからなる透明導電膜3に、良好な導電性を確保するためAg等からなるバス電極4が積層されて形成されている。
背面板8は、背面ガラス基板9と、その片面に形成したアドレス電極10と、アドレス電極10を覆うように形成された誘電体層11と、誘電体層11の上面に設けられた隔壁12と、隔壁12どうしの間に形成された各色蛍光体層13とを備えている。各色蛍光体層13は、赤色蛍光体層13(R)、緑色蛍光体層13(G)および青色蛍光体層13(B)がこの順に配列されている。
上記蛍光体層13を構成する蛍光体としては、例えば、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Eu、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mn、赤色蛍光体としてY23:Euを用いることができる。
前面板1および背面板8は、表示電極5とアドレス電極10の各々の長手方向が互いに直交し、かつ互いに対向するように配置し、封着部材(図示せず)を用いて接合される。
放電空間14には、He、Xe、Ne等の希ガス成分からなる放電ガスが封入されている。
表示電極5とアドレス電極10は、それぞれ外部の駆動回路(図示せず)と接続され、駆動回路から印加される電圧によって放電空間14で放電が発生し、放電に伴って発生する短波長(波長147nm)の紫外線で蛍光体層13が励起されて可視光を発光する。
このようなPDP100において、上述したように電子放出性材料を用いて保護層7を形成することよって、電子放出性材料が放電空間14に臨み、駆動電圧を低減する効果を奏する。
図3,4に示すPDP200は、別の実施形態にかかるものである。
図3は、PDP200の分解斜視図であり、図4は、当該PDP200の縦断面図(図3、I−I線断面図)である。
このPDP200は、PDP100と同様の構造を有するが、保護層7がMgOで形成され、上述した電子放出性材料からなる粒子が、当該保護層7上に散布されて電子放出層20が形成されている。
このようなPDP200においても、電子放出層20が放電空間14に面しており、駆動電圧を低減する効果を奏する。
なお、本発明において、電子放出性材料を配設するPDPは、面放放電型に限らず、対向放電型でもよい。また、必ずしも前面板、背面板、及び隔壁を備えたPDPには限られず、電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するPDPであればよい。例えば、内部に蛍光体を配設した放電チューブを複数配列し、各放電チューブ内で放電して発光するタイプのPDPにおいても、放電チューブ内に電子放出性材料を配設することによって、駆動電圧を低減することができる。
(PDPの製造方法)
PDPの作製方法について、ここではまず、上記PDP200のように、保護層7としてMgO膜を形成し、その上に、電子放出性材料の粉末を散布する場合を説明する。
ます前面板を作製する。
この工程では、平坦な前面ガラス基板の一主面に、複数のライン状の透明電極を形成する。引き続き、透明電極上に銀ペーストを塗布した後、前面ガラス基板全体を加熱することによって、銀ペーストを焼成し、表示電極5を形成する。
表示電極を覆うように、前面ガラス基板2の主面に、誘電体層用のガラスを含むガラスペーストをブレードコーター法によって塗布する。その後、前面ガラス基板全体を90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、次いで、580℃前後の温度で10分間焼成を行う。
誘電体層6上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって成膜し、焼成を行い、保護層7を形成する。この時の焼成温度は500℃前後である。
保護層7上に、エチルセルロース等のビヒクルに、粉末状の電子放出性材料を混合してペースト状としたものを準備し、このペーストを印刷法等により塗布し、乾燥し、500℃前後の温度で焼成することによって、電子放出層20を形成する。
次に、背面板を作製する。
この工程では、平坦な背面ガラス基板の一主面に、銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、背面ガラス基板全体を加熱して銀ペーストを焼成することによって、アドレス電極を形成する。
隣り合うアドレス電極の間にガラスペーストを塗布し、背面ガラス基板全体を加熱してガラスペーストを焼成することによって、隔壁を形成する。
隣り合う隔壁同士の間に、R、G、B各色の蛍光体インクを塗布し、背面ガラス基板を約500℃に加熱して上記蛍光体インクを焼成することによって、蛍光体インク内の樹脂成分(バインダー)等を除去して蛍光体層を形成する。
次に、こうして得た前面板と背面板とを封着ガラスを用いて貼り合わせる。この時の温度は500℃前後である。
その後、封止された内部を高真空排気した後、希ガスを封入する。以上のようにしてPDPが作製される。
一方、上記PDP100のように、誘電体層6上に電子放出性材料からなる保護層7を形成するには、MgO保護層を形成するのと同様に、電子ビーム蒸着等、通常の薄膜プロセスを適宜用いて形成することができる。
あるいは、電子放出性材料の粉末をビヒクルや溶媒等と混合して、比較的粉末含有率の高いペースト状にし、このペーストを印刷法等の方法で、誘電体層6上に薄く広げた後、焼成することによっても、電子放出性材料からなる薄膜状あるいは厚膜状の膜を形成することができる。
電子放出性材料の粉末を誘電体層6上に散布することによって保護層7を形成する方法としては、比較的粉末含有率の低いペーストを用意して印刷法を用いたり、溶媒に粉末を分散させて散布したり、スピンコーター等を用いたりすれば良い。
なお、以上説明したPDPの構成および製造方法は一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
本実施例では、CaO、SrO、BaOに、SnO2を固相粉末法により反応させて、の電子放出性材料(結晶性化合物)を合成し、化学的安定性改善効果を確認する実験を行った。
(結晶性化合物の合成)
出発原料として、試薬特級以上のCaCO3、SrCO3、BaCO3およびSnO2を用いた。これらの原料を、各金属イオンのモル比が、表1のNo.4〜11に示すようになるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。
これらの混合粉末を白金坩堝に入れ、電気炉にて、空気中で1200℃〜1500℃で2時間焼成した。得られた粉末の平均粒径を測定し、粒径の大きいものについては、エタノールを溶媒に用いて湿式ボールミル粉砕し、いずれの組成においても、平均粒径約3μmとした。
粉砕粉末の一部を、X線回折法を用いて分析し、生成相を同定した。
(重量増加率の測定)
次に、粉砕粉末の一部を秤量した後、吸湿性のない多孔質のセルに充填し、このセルを温度35℃湿度60%空気中の恒温恒湿槽に入れて12時間放置し、放置後再度重量を測定し、重量増加率を測定した。その後、さらに温度65℃湿度80%空気中の恒温恒湿槽に入れて12時間放置し、放置後再度重量を測定し、重量増加率(積算値)を算出した。
この重量増加率が低いほど、化合物が、化学的な安定性に優れていることを意味する。
一部の試料に対しては、恒温恒湿槽処理後にX線回折測定も行った。
また比較のため、試料No.0として、MgO粉末、No.12としてSnO2粉末を用いて、同様の重量増加率を測定した。さらに、SnO2以外の金属酸化物として、Al23、SiO2、GeO2,TiO2、ZrO2、CeO2、V25を用い、上記実施例と同様の方法でSrCO3やBaCO3と反応させて、No.13〜21の化合物を合成し、これらに対しても、同様の評価を行った。
なお、発明者等の検討した比較例の組成は、ここに挙げたものよりも、はるかに多種類であるが、比較的安定性が高く、後述するX-ray Photo electron Spectroscopy(XPS)測定や、パネル化まで行ったものを中心に、その一部を示した。
Figure 2009081589
(試験結果についての考察)
表1において、生成相のX線回折による分析では、SnO2と反応させないNo.1〜3の内、No.1はCaOの生成が認められたが、No.2はSrOに一部Sr(OH)2が混在しており、No.3ではBaO自体は観察されず、Ba(OH)2とBaCO3の混合物であった。このような結果が生じたのは、CaOよりもSrO、SrOの方が化学的に不安定であり、さらにBaOの方が化学的に不安定となるため、焼成後の冷却中に空気中の水分や炭酸ガスと反応し、水酸化物や炭酸塩となったためと考えられる。
No.3では、既にBaOが存在しなかったので最も不安定である事は明白であり、恒温恒湿槽での重量増加率測定は行わなかった。
一方、No.4〜11、13〜21については、それぞれ目的とする結晶性化合物の生成が認められた。
次に、恒温恒湿処理における重量増加率測定では、比較例にかかるNo.2、No.3のCaOやSrOでは、35℃60%12h放置でも増加率が非常に大きく、処理後の試料のX線回折では、酸化物の回折ピークは消失し、水酸化物と炭酸塩の生成が認められた。従って、これらもNo.3のBaOについで不安定である事は明白であり、65℃80%12hの追加条件は行わなかった。
これに対して、実施例にかかるNo.4〜11は、No.2,3に比べて重量増加率が小さくなっており、化合物形成による安定化効果が確認出来た。特に、No.4、6、9のCaSnO3、SrSnO3、BaSnO3では、65℃80%12hの条件でもほとんど重量増加を示さず、処理後のX線回折でも、それぞれCaSnO3、SrSnO3、BaSnO3の回折ピークのみが認められ、比較例であるNo.12のMgOと同等以上の安定性が確認された。
比較例の中でSnO2以外の金属酸化物として、同じ4価の金属酸化物となる、Si、Ge,Ti,Zr,Ceや、3価金属のAl 、5価金属のVと反応させて化合物を形成したNo.13〜21と、実施例の中でアルカリ土類金属酸化物の含有量が比較的近いNo.4,6,9とを比較すると、実施例にかかるNo.4,6,9の方が重量増加率は少ないことがわかる。これは、Al,Si,Geなどを反応させるよりも、Snと反応させた方が、化合物を安定化させる効果が高いことを示している。
なお、比較例にかかるNo.13〜21においても、No.2,3と比較すると、重量増加率は大幅に少なく、特にNo.16,17においては、実施例にかかるNo.4,6,9と重量増加率が同等であることも認められるので、Al,Si,Ge,Ceと反応させた場合も安定化効果があり、特にTiやZrと反応させることで実施例と同等の安定化効果が得られると認められる。
しかし、結晶性化合物において、安定化効果だけでなく、2次電子放出係数が良好なことが重要である。よって次に、その目安となるXPS測定を行った結果を示す。
(XPS)
PDPにおける2次電子放出係数を粉末に対して直接測定する事は容易ではない。間接的な証拠としては、PDPの放電電圧が低下するのを確認すれば良いが、全ての材料に対してPDPを作製するのも容易ではない。
発明者等は詳細な検討の結果、XPSにより、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸塩起因のカーボン量を測定比較する事により、PDPの放電電圧を低下出来る材料の選別が、ある程度可能である事を見出した。XPSは、試料表面にX線を照射して放出される電子のスペクトルを測定するものであり、その分析深さは、通常数原子層〜十数原子層とされており、PDPにおける2次電子放出と比較的近い、試料の表面の情報が得られる。
2次電子放出係数は、一般にバンドギャップ幅と電子親和力の和が小さいほど大きくなるとされており、価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあるほどバンドギャップ幅は小さくなるので、2次電子放出係数は大きくなる。
一方、アルカリ土類金属を含む化合物において、試料表面の炭酸塩起因のカーボン量を測定すれば、化学的安定性に対する指標が、上記表1に示す重量増加率よりも高感度で得られる。
すなわち、試料が化学的に不安定であれば、空気中の炭酸ガスと反応して、表面カーボン量は増加する。そして、この量がある程度以上多くなると、粒子表面がBaCO3等の2次電子放出係数の低いアルカリ土類炭酸塩で完全に覆われてしまう事になるので、例え価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあっても、高い2次電子放出係数は得られない。
よって、XPSによって、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸塩起因のカーボン量の両方を測定して比較することによって、価電子帯端のエネルギー位置が低く、且つカーボン量が少ない材料を選択すれば、PDPの放電電圧を低下するのに適した材料を、ある程度選定できることを見出した。
以下、具体例に基づいて説明する。
図5は、表1のNo.0,6,14,18(すなわちMgO、SrSnO3、SrSiO3、SrCeO3)について、価電子帯端のXPSスペクトルを示している。図6は、C1s軌道のXPSスペクトルを示している。これら図5,6において、バックグラウンドノイズを差し引いて示している。
図5において、各ピークの右縁の位置が右にあるほど(すなわち、Binding Energyの値が低いほど)、価電子帯端が低エネルギー側にあることを示している。
当該図5より、MgOと比較して、SrSiO3の価電子帯端位置は高エネルギー側にあり、SrSnO3、SrCeO3の価電子帯端位置は低エネルギー側にある事が分かる。
図6において、炭酸化合物起因のCのピークは288〜290eV付近に現れるので、この領域のピークが高いほど表面C量が多いことを示している。
図6において、MgOと比べて、SrSiO3及びSrCeO3はピークが高いので表面C量が多く、SrSnO3は若干ではあるが低いので表面C量が少ない。
以上の結果より、SrSiO3は、MgOと比べて、価電子帯端位置が高エネルギー側にあるため、2次電子放出効率が高くなる可能性は低いと考えられ、SrCeO3は、MgOと比べて表面C量が多いため、2次電子放出効率が高くなる可能性は低いと考えられる。これに対して、SrSnO3は、MgOと比べて、価電子帯端位置が低エネルギー側にあり、且つ表面C量も少ないので、2次電子放出効率が高くなる可能性が高いと考えられる。
上記表1に示した各種化合物について、価電子帯端位置とC量を半定量的に示すために、XPSを測定した。
表2には、XPSにおける3eVおよび2eVでのIntensityと、288〜290eV付近に現れる炭酸化合物起源のC1sピークのIntensityを示す。表2に示す値は、いずれもバックグラウンド値を差し引いたものである。
3eVおよび2eVにおけるIntensityの値が大きいほど、価電子帯端が低エネルギー側にあることを示し、C peakの値が小さいほど化学的に安定であることを示す。
Figure 2009081589
(XPS測定結果に基づく考察)
表2より、実施例にかかるNo.4〜11の化合物は全て、比較例にかかるNo.0〜3の化合物、及びNo.12のSnO2と比べて、3eVおよび2eVのXPS Intensityが大きいこと、すなわち価電子帯端が低エネルギー側にあることが分かる。
C量については、今回の試料作製を、特に雰囲気調整を行わない大気中で行ったため、アルカリ土類を多く含むNo.5、7、8、10、11ではMgOと比べてC量が多くなっているが、アルカリ土類が50%以下のNo.4,6,9では、MgOよりもC量が少なかった。
一方、アルカリ土類酸化物をSnO2以外の金属酸化物と反応させた比較例No.13〜21の中で、Al、Si,Geを用いたNo.13〜15は、3eVおよび2eVのXPSのIntensityが小さいが、それ以外のTi,Zr,Ce,Vを用いたNo.16〜21では、MgOと比べて、3eVおよび2eVのXPSのIntensityが大きい。特にCeを用いたNo.18と20では、Snを用いた実施例と比べても3eVおよび2eVのXPSのIntensityが大きくなった。ただし、Ceを用いたNo.18、20では、MgOと比べてC量がかなり多かった。
よって、C量がMgOより少ないものの中で、3eVおよび2eVのXPSのIntensityが大きいものを選ぶと、実施例にかかるNo.4、6、9のCaSnO3、SrSnO3、BaSnO3となる。
(PDPの製造と放電電圧測定)
以上説明した実施例及び比較例にかかる結晶性化合物を用いて以下のようにPDPを作製し、放電電圧を測定した。
厚さ約2.8mmの平坦なソーダライムガラスからなる前面ガラス基板を用意した。この前面ガラス基板の面上に、ITO(透明電極)の材料を所定のパターンで塗布し、乾燥した。次いで、銀粉末と有機ビヒクルとの混合物である銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、上記前面ガラス基板を加熱することにより、上記銀ペーストを焼成して表示電極を形成した。
表示電極を作製したフロントパネルに、ガラスペーストをブレードコーター法を用いて塗布し、90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、585℃の温度で10分間焼成することによって、厚さ約30μmの誘電体層を形成した。
上記誘電体層上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって蒸着した後、500℃で焼成することによって保護層を形成した。
次に、No.1〜6,9,12,13,17,20,21の各化合物について、当該化合物の粉末約3重量部をエチルセルロース系のビヒクル100重量部と混合し、3本ロールを通してペーストとし、印刷法により、MgO層上に薄く塗布し、90℃で乾燥させた後、500℃、空気中で焼成した。この際、ペーストの濃度調整によって、焼成後のMgO層が粉末によって被覆される割合(被覆率)が20%弱程度となるようにした。
比較のため、No.0として、下地MgO膜のみで、粉末散布を行わないものも作製した。
一方、以下の方法で背面板を作製した。
まず、ソーダライムガラスからなる背面ガラス基板上にスクリーン印刷によって銀を主体とするアドレス電極をストライプ状に形成し、引き続き、前面板と同様の方法で、厚さ約8μmの誘電体層を形成した。
次に、誘電体層上に、隣り合うアドレス電極の間に、ガラスペーストを用いて隔壁を形成した。当該隔壁は、スクリーン印刷および焼成を繰り返すことによって形成した。
引き続き、隔壁の壁面と隔壁間で露出している誘電体層の表面に、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体ペーストを塗布し、乾燥および焼成して蛍光体層を作製した。
作製した前面板、背面板を封着ガラスを用いて500℃で貼り合わせた。そして、放電空間の内部を排気した後、放電ガスとしてXeを封入することによって、PDPを作製した。
作製したPDPを駆動回路に接続して発光させ、発光状態で100時間保持してエージングした後、放電維持電圧を測定した。ここでエージング処理は、MgO膜や散布粉末の表面を、スパッタリングにより、ある程度清浄化するために行うものであり、PDPの製造工程では普通に実施され、これを行わないパネルは、粉末散布の有無にかかわらず、放電電圧が高いものとなる。
エージング後に測定した放電電圧を表3に示す。
Figure 2009081589
(放電電圧測定結果に基づく考察)
実施例にかかるNo.4,5,6,9の粉末を散布したPDPでは、MgO薄膜のみのNo.0と比べて放電電圧が低下し、特にSrSnO3、BaSnO3を用いたNo.6,9では放電電圧の低下が大きく、本発明による駆動電圧低減効果を確認する事が出来た。
一方、比較例にかかるNo.1、2、3の粉末を散布したPDPでは、MgO薄膜のみのNo.0と比較して、放電電圧の低下は認められなかった。
比較例にかかるアルカリ土類を含まないSnO2のみのNo.12、およびアルカリ土類を含んでもSnを含まないNo.13、17、20、21の粉末を散布したPDPにおいても、No.12,17,21のPDPは、理由は不明であるが、エージング途中で発光しなくなった。また、発光したNo.13,20のPDPでも、MgO薄膜のみのNo.0と比較して、放電電圧の低下は認められず、むしろ上昇した。
このようにNo.13のPDPの放電電圧が低下しなかったのは、CaAl24のXPS測定でわかるように、価電子帯端位置が高エネルギー側にあるためと考えられ、No.20のPDPの放電電圧が低下しなかったのは、BaCeO3のC量が多いためと考えられる。
比較例にかかるNo.17のSrZrO3とNo.21のSr328については、実施例にかかるNo.4,6,9等と比べると、価電子帯端位置が高エネルギー側にあるが、No.0のMgOと比べると低エネルギー側にあり、C量も多くないので、No.0のPDPよりも放電電圧が低下しても良いと考えられるが、実際には表3からわかるように低電圧化しなかった。
また、No.20のBaCeO3を含め、遷移金属を主成分として含む化合物を用いたPDPは、安定性やXPSの結果と関係なく、放電電圧低下は認められなかった。
遷移金属を含む組成の化合物において、2次電子放出係数が高くならない理由は明らかではないが、価電子帯端にd軌道電子があるか、あるいは伝導帯に空のd電子軌道があり、価電子帯のd電子は、軌道がs軌道電子やp軌道電子に比べて局在化しており、バンドギャップを超えて伝導帯へ遷移しにくく、またバンドギャップを超えて遷移してきた電子が伝導帯にあるd電子軌道にトラップされた場合にも、その軌道の局在化のために、真空中へ放出されにくいためと考えられる。
これに対して、実施例にかかる化合物では、当該化合物に含まれるSnは典型金属であり、軌道に広がりのあるs軌道またはp軌道が電子放出に寄与するため、2次電子放出が容易と考えられる。
[実施例2]
本実施例では、BaSnO3を中心に、元素の組成比率を変えた場合、各種金属酸化物との固溶体を形成した場合、BaあるいはSnを他の金属で置換した場合について示す。
実施例1と同様の方法で、出発原料として試薬特級以上のCaCO3、SrCO3、BaCO3、SnO2および各種金属の酸化物を用い、これらの原料を、各元素比が、表4に示す組成比(原子比)となるように秤量し、混合、乾燥、焼成することによって、表4に示す各種化合物粉末を合成した。
生成した化合物について、X線回折による同定、吸湿性の評価、XPSの測定を行った。また一部の粉末を用いて、実施例1と同様に、PDPを作製し、放電電圧を測定した。この際、実施例1では、発光状態で100時間保持エージングした後、放電電圧を測定したが、本実施例では、エージング時間25時間と100時間で、それぞれ放電電圧を測定した。
その結果を表4に示す。
Figure 2009081589
(Snに対するBaの比率についての考察)
No.9、31〜35は、BaCO3とSnO2とを混合してBaSnO3を合成する際に、混合する原料におけるSnに対するBaのモル比率を0.98〜1.01の間で変化させて得られた結晶性化合物である。表4に示す結果から、Baの比率が多いほど吸湿性は高くなり、C量(C peak)が増加していることがわかる。
一方、これら結晶性化合物を用いてパネル化した場合、Snに対するBaのモル比率が1.000より少ないNo.33、34では、エージング100時間後のみならず24時間後で既に放電電圧が低くなっているが、Snに対するBaの比率が1.000より多いNo.31,32では、エージング24時間では放電電圧は低下せず、Snに対するBaの比率が最も多いNo.32では、エージング100時間後でも、放電電圧はあまり低下しなかった。
これは、原料混合時においてSnに対するBaのモル比率が1.000以上であると、組成の不均一性により、極僅かに、よりBaを多く含む化合物(Ba3Sn27等)が生成し、これが、雰囲気調整をしない条件下では、炭酸ガスと反応しやすいために粒子表面を覆ってしまい、またBa量が多くなるほど、その生成量が増加するので、これをスパッタリングで除去するのに必要なエージング時間が長くなるためと考えられる。
ここで、エージングに長時間かかるほど、パネルの生産効率は低下するため、エージング時間が短くて済むように、Snに対するBaのモル比率は、1.000より小さく、0.995以下とすることが望ましい。
なお、この比率が0.99以下の場合、SnO2が分離析出することがX線回折で認められた。このように、Ba原料とSn原料と反応させた結果、SnO2の残渣が認められることは、SnよりBaをより多く含む化合物が生成していない証拠であるから、BaSnO3に少量のSnO2が混合した混合物が生成することは望ましいことといえる。
一方、Snに対するBaのモル比率の下限については特に制限はないが、実施例1で見たようにSnO2自体には低電圧化効果は認められないので、この比率をあまり下げると、SnO2が無駄になるだけである。よって、この比率は0.90以上とするのが望ましく、0.95以上とするのがより望ましい。
以上、BaSnO3について説明したが、SrSnO3やCaSnO3、あるいはこれら相互の固溶体においても同様の結果が認められた。
(固溶体についての考察)
No.36〜41は、BaSnO3とSrSnO3との固溶体、あるいはBaSnO3とCaSnO2との固溶体である。
このように固溶体とすることによって、その理由はあきらかではないが、No.6のSrSnO3やNo.9のBaSnO3と比べて、XPSのC量は同程度のまま、2eVのIntensityが上昇し、放電電圧も若干ではあるが低下した。
また、No.41では、No.37と比べてSrの比率が若干低く設定され、その結果アルカリ土類の合計量が若干低くなっているが、C量低減等の効果が認められる。このように固溶体においても、アルカリ土類の合計量を減らすことによって、C量低減等の効果が得られる。
表4には示していないが、SrSnO3とCaSnO3の固溶体でも、同様の効果が認められた。なお、BaSnO3にCaSnO3を固溶させる割合は7%程度が上限であった。
(Ba、Snの置換についての考察)
No.42〜50は、BaSnO3におけるBaまたはSnを、原子価の異なる金属で置換したものである。
No.9のBaSnO3におけるSnを、InあるいはYで置換したNo.42〜48では、XPSにおける2eVのIntensityが高く、No.43ではエージング100時間後の放電電圧が若干低下している。このように、Snを、より価数の低い金属元素で置換することによって、XPSにおける2eVのIntensityが上昇することがわかる。ただし、No.45や46のように置換量が多すぎるとC量が大幅に増加する。
一方、No.9のBaSnO3に対して、SnをNbで置換したNo.49や、BaをLaで置換したNo.50では、XPSの2eVのIntensityは低下しているが、C量は減少し、エージング24時間後の放電電圧が低下している。このように、SnやBaを、より価数の高い金属元素で置換することによって、C量の減少と、放電電圧の低下が見られる。
なお、表4には示していないが、SrSnO3において、SrまたはSnを、同様に原子価の異なる金属で置換した場合にも、同様の効果が確認できた。ただし、SrSnO3は、置換固溶出来る組成範囲がBaSnO3より狭く、BaSnO3ではSnをInで全域置換できるが、SrSnO3ではSnをInで置換するときに割合は5〜10%程度が上限であった。
No.47は、No.9のBaSnO3におけるSnをIn置換した組成において、SnとInの合計モル数に対するBaモル数の比率を1.000より少なくしたものであって、No.9と比べるとエージング24時間後の放電電圧が低くなっている。このように、置換系においても、アルカリ土類の比率を減らすことのよる放電電圧低減効果が認められる。
[実施例3]
本実施例では、BaSnO3粉末を用いて上記実施例1と同様の方法でPDPを作製したが、BaSnO3粉末をMgO層上に散布するときの被覆率をいろいろと変えた。そして作製した各PDPについて特性を調べた。
BaSnO3粉末をMgO層上に散布する方法は次のとおりである。
BaSnO3粉末は、BaとSnの比率が0.995:1となるように原料を配合し、空気中1150℃で2時間焼成することによって合成した。
得られた粒径約1μmのBaSnO3粉末を用いて、実施例1と同様の方法で印刷用ペーストを作製した。この時、ペースト濃度(ペースト中の固形分濃度)が0.2%、1%、2%、4.3%、20%となる5種類のペーストを作製した。
各ペーストを、実施例1と同様の方法で、MgO層上に塗布し、乾燥、焼成することによって、BaSnO3粉末をMgO層上に散布し、各々について、BaSnO3粉末によるMgO層の被覆率を測定した。
この被覆率は、BaSnO3粉末を保護層に投影したときにBaSnO3粉末が占める面積の割合であって、BaSnO3粉末が散布された保護層の表面の画像について、BaSnO3粉末が保護層上に占める面積の割合を算出することによって測定した。
このようにして、BaSnO3粉末がMgO層上を被覆する被覆率が異なる5種類のPDPを作製した。
作製した各PDP及びBaSnO3粉末を散布していない被覆率0%のPDPについて、上記実施例2で説明したのと同様に、エージング24時間後および100時間後の放電電圧を測定した。
表5に、ペースト濃度ごとの被覆率、及び放電電圧測定結果示す。
Figure 2009081589
表5に示すように、当然であるがペースト濃度が高いほど被覆率が高くなっている。
また、MgO層をBaSnO3粉末で被覆したNo.51〜54は、MgO層をBaSnO3粉末で被覆していないNo.0と比べて、エージング24時間後および100時間後の放電電圧の低下が認められたが、被覆率が36.5%と高いNo.54では、エージング24時間後の放電電圧低下効果は少なく、被覆率が100%に近いNo.55では、エージング24時間後の放電電圧低下は認められず、エージング100時間後の放電電圧低下も不十分であった。
これは、被覆率が高いほど粉末量が多いので、粉末表面のクリーニングに長時間を要し、エージング時間も長くなるためと考えられる。
また、被覆率は、光の直線透過率と関係が深い一方、PDPの輝度と直接相関する散乱透過率とは直接的に関係しないが、被覆率を大きくしすぎると、直線透過率が小さくなると共に散乱透過率も低下するので好ましくない。さらに、被覆率が高いほど輝度のセル間バラツキが大きくなるという問題点も認められた。
一方、被覆率1.1%のNo.51では、エージング24時間後でも放電電圧が低下しているものの、その低下幅は少ない。これは粉末量が少ないためと考えられる。
以上より、結晶性化合物で保護層を被覆する場合、放電電圧を低下させる効果を得るためには、被覆率を1.0%以上とすることが好ましく、一方、エージング時間が長くならないように被覆率を20%以下に抑えることが好ましく、実用的には、被覆率を10%以下にすることが望ましいと考察される。
[実施例4]
本実施例では、BaSnO3粉末を、前面板のMgO層上ではなく、背面板の蛍光体層中に分散させた。
蛍光体層中にBaSnO3粉末を分散させる方法は次のとおりである。
実施例1と同様の方法で、BaとSnの比率を0.99:1として配合し、空気中1250℃で2時間焼成することによって、粒径約2μmのBaSnO3粉末を合成した。
得られた粉末を、蛍光体粉末に対して5重量%混合したもので蛍光体ペーストを作製し、当該蛍光体ペーストを用いて蛍光体層を形成する以外は、実施例1と同様の方法でPDPを作製した。
作製したPDPについて、実施例2と同様に、エージング24時間後の放電電圧を測定したところ、No.0のPDPと比べて放電電圧が15V低下した。
本実施例のように蛍光体にBaSnO3粉末を混合する場合、蛍光体に対するBaSnO3粉末の混合率を1重量%未満にした場合は、放電電圧低下効果が認められなかったので、当該混合率を1重量%以上とすることが好ましい。一方、当該混合率を高くすると、蛍光体量が減少することによる輝度低下が認められた。従って、このような輝度低下を抑えるために、当該混合率は10%以下とすることが好ましい。
本発明によれば、PDPにおいて、その放電特性を改善し、駆動電圧を低減できるので、低消費電力で駆動できるPDPを実現する上で有用である。
本発明は、プラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレィパネル(以下PDPと略す)は、薄型ディスプレィパネルの中で、大型化が容易、高速表示が可能、低コストといった特徴から、実用化され、急速に普及している。
現在実用化されている一般的なPDPの構造は、前面基板及び背面基板となる2枚のガラス基板を対向配置し、それぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、これらの電極を被覆するように低融点ガラス等の誘電体層を設けている。そして、背面基板の誘電体層上には蛍光体層を設け、前面基板の誘電体層上には、誘電体層をイオン衝撃から保護するとともに2次電子放出性を向上させるためにMgOからなる保護層が設けられている。そして2枚の基板間には、Ne、Xe等の不活性ガスを主体とするガスを封入している。
このようなPDPは、電極間に電圧を印加して放電を発生させて蛍光体を発光させることによって表示を行う。
PDPにおいて、従来から発光効率を高めることが強く要求されており、その手段として、誘電体層を低誘電率化する方法や、放電ガスのXe分圧を上げる方法が知られている。しかしながら、このような手段を用いると、放電開始電圧や維持電圧が上昇してしまう問題点があった。
そして、このような課題に対して、2次電子放出係数の高い材料を保護層に用いることによって、放電開始電圧や維持電圧を下げる事が可能であって、高効率化並びに耐圧の低い素子を用いる事による低コスト化を実現できることが知られている。
例えば、特許文献1,2においては、MgOの代わりに、同じアルカリ土類金属酸化物であるが、より2次電子放出係数の高い、CaO,SrO,BaOを用いたり、これら化合部の固溶体を用いる事が検討されている。
特開昭52−63663号公報 特開2007−95436号公報
しかしながら、CaO、SrO、BaOなどは、MgOに比べて化学的に不安定であって、空気中の水分や炭酸ガスと容易に反応して水酸化物や炭酸化物を形成する。このような化合物が形成されると、2次電子放出係数が低下して、期待どおりに放電開始電圧や維持電圧を低減できなくなったり、あるいは電圧低減に必要とされるエージング時間が非常に長くなってしまうため、実用的ではなくなるといった問題がある。
こうしたCaO、SrO、BaOなどの化学反応による劣化は、実験室レベルで少量を作製する場合には、作業の雰囲気ガスを制御するといった方法で回避可能であるが、製造工場での全ての工程の雰囲気を管理するのは困難であり、また可能であっても高コスト化につながる。
また、MgO以外の材料を保護腹として用いた場合、イオン衝撃耐性が低いために、PDP駆動時のガスによるスパッタリング量が大きくなり、寿命が短くなるという問題もある。
そのため、従来から2次電子放出係数の高い材料の使用が検討されてきたにもかかわらず、未だに実用化されている保護層材料はMgOのみである。
本発明は、上記課題に鑑み、PDPの2次電子放出係数を向上させるのに適した材料を提供することによって、PDPの高効率化を図ることを目的とする。
本発明は、電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するPDPにおいて、放電空間に臨む領域に、Ca(カルシウム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム)から選ばれた一種類以上と、Sn(スズ)とO(酸素)とを主成分とする化合物からなる電子放出性材料を配設することとした。
ここで「放電空間に臨む領域」は、放電空間での放電に伴って荷電粒子などが照射される領域であって、具体的には、保護層の表面、蛍光体層の表面、隔壁の表面をはじめとして、保護層の内部、蛍光体層の内部、隔壁の内部もこれに該当する。
特に、MgO保護層の上に、上記化合物を、粒子の状態で、被覆率1%以上20%以下の状態で分散配置することが望ましい。
ここで、「被覆率」は、保護層の表面に上記化合物の粒子を投影したときに、粒子が占める面積の割合を指す。
また、上記「主成分」は、化合物を構成する元素の中、主要なものを指すので、化合部には、主成分以外の元素が少量含まれていてもよい。特に、本発明にかかる化合物においては、主成分以外の元素が、主成分を構成する元素に代わって含まれている場合もあり、その量が主成分の元素より少量であれば許容される。
上記化合物としては、Ca、Sr、Baの一種類以上とSnとを特定の比率で含む結晶性酸化物が望ましい。より具体的には、次のものが望ましい。
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれら相互の固溶体。
Sr3Sn27、Ba3Sn27、あるいはこれら相互の固溶体。
Ca2SnO4、Sr2SnO4、Ba2SnO4、あるいはこれら相互の固溶体。
詳しくは実施の形態のところで説明するが、Ca,Sr,Baから選ばれた一種類以上と、SnとO(酸素)とを主成分とする化合物は、化学的に安定であって、且つ2次電子放出係数が高い。従って、この化合物をPDPにおける放電空間に臨むところに配設することによって、PDPの駆動電圧を低くでき、実用性もある。
また、保護層としては従来どおり、イオン衝撃耐性の高いMgO膜を用い、上記化合物を電子放出材料として用いれば、駆動電圧が低く且つ長毒命のPDPを提供できる。
本発明の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図1に示したPDPの縦断面図である。 本発明の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図3に示したPDPの縦断面図である。 XPSによる価電子帯スペクトルの測定例である。 XPSによるC1sスペクトルの測定例である。
まず、本発明にかかるPDPに用いる電子放出性材料について説明する。
発明者等は、2次電子放出効率は高いが化学的に不安定なCaO、SrO、BaOの原料と各種の金属、B、Al、Si、P、Ga、Ge、Sn、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W等の酸化物を反応させて、非常に多種にわたる化合物を合成し、その化学的安定性と2次電子放出能を詳細に検討した結果、SnO2を反応させ、Ca,Sr,Baのいずれか一種類以上とSnとOを含む化合物とする事により、2次電子放出効率をあまり低下させることなく、化学的な安定性を高めることが出来ることを見出した。そして、この電子放出性材料をPDPに用いる事によって、MgOだけを用いたPDPと比べて、駆動電圧を低下できる事を見出した。
(電子放出性材料の組成)
本発明でPDPに用いる電子放出性材料は、Ca,Sr,Baのいずれか一種類以上とSnとOとを主成分とする化合物である。
この化合物は、アモルファス状態のものでもかまわないが、より安定性を高めるためには、結晶性化合物であることが望ましい。
基本的に好ましい結晶性化合物としては、次のものが挙げられる。
(1)CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれらの2種以上を相互に固溶させた固溶体[(Ca,Sr)SnO3、(Sr,Ba)SnO3等]。
(2)Sr3Sn27、Ba3Sn27、あるいはこれらを相互に固溶させた固溶体[(Sr,Ba)3Sn27]。
(3)Ca2SnO4、Sr2SnO4、Ba2SnO4、あるいはこれらの2種以上を相互に固溶させた固溶体[(Ca,Sr)2SnO4等]
これらの結晶性化合物の間で2次電子放出効率を比較すると、組成中にCaOを含む化合物よりもSrOを含む化合物の方が2次電子放出効率が高く、SrOを含む化合物よりもBaOを含む化合物の方が2次電子放出効率が高い。
また、組成中に同じBaOを含む化合物であれば、その含有量が多い方が、2次電子放出効率が高いと考えられる。例えば、BaSnO3よりもBa3Sn27の方が2次電子放出効率が高く、さらに、Ba2SnO4の方が2次電子放出効率が高い。
一方、化学的安定性についてはその逆の順序になる。
必要とされる化学的安定性は、実際にPDPの製造を行う工程条件により様々であるので、一概にどの化合物が良いと決めることは難しいが、これらの化合物の中で、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3は、MgOと同程度以上に安定な化合物であって、特に雰囲気制御等を行わなくても使用可能であり、かつMgOよりも電子放出効率が高いので、最も望ましい。
また、これら3種の中では、低電圧化の観点から、BaSnO3とSrSnO3が望ましく、CaSnO3は若干劣る。
ただし、PDP製造工程において、ある程度の雰囲気制御等を行う事が可能であれば、他の組成の化合物も使用可能であり、その場合は、環境に応じて適当な組成の化合物を用いれば良い。
(固溶体について)
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3については、単独で用いるよりも、相互の固溶体にして用いる事が望ましい。固溶体とする事によって、化学的安定性はほとんど変化しないが、2次電子放出効率は、両者の平均よりも若干高くなるためである。
なお、CaSnO3とSrSnO3、SrSnO3とBaSnO3とは、いずれも全量固溶するが、CaSnO3とBaSnO3とは、格子定数が違いすぎるため、部分固溶しかしない。
(結晶性化合物における部分置換)
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3は、結晶中におけるアルカリ土類のサイトを3価金属であるLaで部分置換したり、Snのサイトを3価金属であるInやY、5価金属であるNbで部分置換したり、OをFで部分置換しても、電子放出性材料として用いることができる。
この際、より高価数の金属で置換(アルカリ土類をLaで部分置換、SnをNbで部分置換など)すると、安定性は若干低下するが、2次電子放出効率は向上する。よって、これらの置換により、その特性を微調整する事が可能となる。特に、SnをIn置換することは,2次電子放出効率を高める点で効果的である。また結晶中におけるSnサイトを、CeやZrによって部分置換することも可能である。
ただし、こうして置換した場合も、組成における主成分は、あくまでアルカリ土類とSnとOである必要がある。例えば、SnサイトをInによって置換する場合、全域置換が可能ではあるが、置換量は、50%未満に設定することが必要であり、20%以下、さらには10%以下であることが望ましい。
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3あるいはこれらの固溶体を、雰囲気調整を行わない通常の製造プロセスで用いる場合、Snのモル数に対するアルカリ土類の合計モル数の比率(Ca+Sr+Ba)/Snは、0.995以下に設定する事が望ましい。
ただし、アルカリ土類サイトやSnのサイトを上述したように部分置換している場合は、それら置換元素を合わせた合計について、当該比率を0.995以下に設定することが好ましい。
これは上記比率が0.995を超えると、2次電子放出係数が低下しやすいためであるが、その理由は、上記比率が1.000の場合でも、組成の不均一性により、アルカリ土類酸化物原料とSnO2の反応過程で、Ba3Sn27相等の、アルカリ土類が多い組成が一旦生成すると、これらの相が粒子表面を覆ってしまい、 雰囲気調整を行わない条件下では、さらにBaCO3が分離析出するなど、表面が不安定化するためと考えられる。
なお、上記比率をさらに低くすると、ある程度以下ではSnO2が余剰となって析出するので、結晶性化合物とSnO2との混合物となるが、そのような状態になっても、上述したアルカリ土類の多い組成の生成を抑える効果は得られる。
(電子放出性材料の合成方法)
Ca,Sr,Baのいずれか一種類以上とSnとOとを主成分とする化合物を合成する方法としては、その形態として、固相法、液相法、気相法が挙げられる。
固相法は、それぞれの金属を含む原料粉末(金属酸化物、金属炭酸塩等)を混合し、ある程度以上の温度で熱処理して反応させる方法である。
液相法は、それぞれの金属を含む溶液を作り、これより固相を沈殿させたり、あるいは基板上にこの溶液を塗布後、乾燥し、ある程度以上の温度で熱処理等を行って固相とする方法である。
気相法は、蒸着、スパッタリング、CVD等の方法であって、膜状の固相を得ることができる。
気相法によれば、上述した、Ca、Sr、BaとSnが特定の比率となる結晶性酸化物以外にも、Ca、Sr、Baより選ばれた一種類以上と、Snと、O(酸素)を主成分とするアモルファス状態の化合物を得ることも出来る。
このアモルファス状態の膜も、CaO、SrO、BaOと比較すれば化学的により安定であり、かつMgOよりも高い二次電子放出効率を持つため、PDPの駆動電圧を低減する事が出来る。しかし、化学的安定性は結晶性化合物の方が高く、また合成法として、気相法は固相法等よりも高コストとなるため、結晶性化合物の方がより望ましい。
(電子放出性材料を配設する位置および形態)
上記の電子放出性材料をPDPパネルのどの部分に形成するかについては、一般的には、前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成すれば良い。しかしながら、他の部位、例えば蛍光体部やリブ表面等の位置に形成したり、蛍光体に混合したりしても、放電空間に面した位置であれば、形成しないものに比べて、駆動電圧低下の効果は認められる。
電子放出性材料を配設する形態については、例えば前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成する場合を考えると、誘電体層の上に通常保護膜として形成されるMgO膜のかわりに、これらの化合物で膜を形成したり、これらの粉末を散布する。あるいはMgO膜を形成したさらに上に、これらの化合物の膜を形成したり、これらの化合物の粉末を散布するといった方法をとれば良い。
ただし、これら化合物で保護層を形成した場合、これらの化合物も高融点で安定な化合物ではあるが、MgOに比べるとスバッタリング耐性はやや劣り、透明性もやや劣る。粉末散布の場合は、さらに透明性低下による輝度劣化が問題となることもある。よって、保護層としては従来どおりMgO膜を用い.その上に透過率が問題とならないレべルで粉末を分散散布する方法が望ましい。
透過率が問題とならないレベルとしては、被覆率が20%以下.より望ましくは10以下が良い。粉末で用いる場合の粒子径は、0.1μm〜10μm程度の範囲内で、セルサイズ等にあわせて選択すれば良いが、分散配置させる場合は、MgO膜上での粉末の移動や落下が生じないように、3μm以下、より望ましくは1μm以下が良い。
このような構成とすると、保護膜としては従来どおり、高融点のMgO腹がその役割をはたし、2次電子放出は、本発明の化合物がその役割をにない、被覆率が低いために輝度低下もなく、低電圧で、かつ長寿命なPDPパネルを得ることができる。
(化合物の表記方法について)
本明細書においては、結晶性化合物を、例えばBaSnO3のように記載しているが、Snは、Sn4+以外に、その一部がSn2+となりやすい元素であり、その場合には酸素欠陥が生じる。従って、より正確にはBaSnO3−δと記載すべきであるが、このδは、製造条件等によって変動し、必ずしも一定値とはならないので、便宜上BaSnO3のように記載している。従って、このような表記は酸素欠陥の存在を否定しているものではない。BaSnO3以外の化合物についても同様である。
また、Snのサイトは同じ4価となるTi、Zrや、3価のIn、5価のNb等で部分置換可能であり、Ca、Sr、Baも、同じ2価のMg、3価のLa、1価のK等で部分的に置換可能であるが、主成分が、Ca、Sr、Baから選ばれた1種類以上とSnとOであって、本発明の化合物の特性(化学的に安定かつ二次電子放出効率が高い)を本質的に損なうものでない限り、これらの少量の置換はかまわない。

(PDPの構成)
上記電子放出性材料を適用したPDPの具体例について、図を用いて説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかるPDP100の一例を示すものであって、図1は、PDP100の分解斜視図、図2は、当該PDP100の縦断面図(図1、I−I線断面図)である。
図1および2に示すように、PDP100は、前面パネル1と背面パネル8とを有している。前面パネル1と背面パネル8との間には、放電空間14が形成されている。このPDPは、AC面放電型であって、保護層に上述した電子放出性材料が配されている以外は従来例にかかるPDPと同様の構成を有する。
前面板1は、前面ガラス基板2と、その内側面(放電空間14に臨む面)に形成された透明導電膜3およびバス電極4からなる表示電極5と、表示電極5を覆うように形成された誘電体層6と、誘電体層6上に形成された保護層7とを備えている。上記表示電極5は、ITOまたは酸化スズからなる透明導電膜3に、良好な導電性を確保するためAg等からなるバス電極4が積層されて形成されている。
背面板8は、背面ガラス基板9と、その片面に形成したアドレス電極10と、アドレス電極10を覆うように形成された誘電体層11と、誘電体層11の上面に設けられた隔壁12と、隔壁12どうしの間に形成された各色蛍光体層13とを備えている。各色蛍光体層13は、赤色蛍光体層13(R)、緑色蛍光体層13(G)および青色蛍光体層13(B)がこの順に配列されている。
上記蛍光体層13を構成する蛍光体としては、例えば、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Eu、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mn、赤色蛍光体としてY23:Euを用いることができる。
前面板1および背面板8は、表示電極5とアドレス電極10の各々の長手方向が互いに直交し、かつ互いに対向するように配置し、封着部材(図示せず)を用いて接合される。
放電空間14には、He、Xe、Ne等の希ガス成分からなる放電ガスが封入されている。
表示電極5とアドレス電極10は、それぞれ外部の駆動回路(図示せず)と接続され、駆動回路から印加される電圧によって放電空間14で放電が発生し、放電に伴って発生する短波長(波長147nm)の紫外線で蛍光体層13が励起されて可視光を発光する。
このようなPDP100において、上述したように電子放出性材料を用いて保護層7を形成することよって、電子放出性材料が放電空間14に臨み、駆動電圧を低減する効果を奏する。
図3,4に示すPDP200は、別の実施形態にかかるものである。
図3は、PDP200の分解斜視図であり、図4は、当該PDP200の縦断面図(図3、I−I線断面図)である。
このPDP200は、PDP100と同様の構造を有するが、保護層7がMgOで形成され、上述した電子放出性材料からなる粒子が、当該保護層7上に散布されて電子放出層20が形成されている。
このようなPDP200においても、電子放出層20が放電空間14に面しており、駆動電圧を低減する効果を奏する。
なお、本発明において、電子放出性材料を配設するPDPは、面放放電型に限らず、対向放電型でもよい。また、必ずしも前面板、背面板、及び隔壁を備えたPDPには限られず、電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するPDPであればよい。例えば、内部に蛍光体を配設した放電チューブを複数配列し、各放電チューブ内で放電して発光するタイプのPDPにおいても、放電チューブ内に電子放出性材料を配設することによって、駆動電圧を低減することができる。
(PDPの製造方法)
PDPの作製方法について、ここではまず、上記PDP200のように、保護層7としてMgO膜を形成し、その上に、電子放出性材料の粉末を散布する場合を説明する。
ます前面板を作製する。
この工程では、平坦な前面ガラス基板の一主面に、複数のライン状の透明電極を形成する。引き続き、透明電極上に銀ペーストを塗布した後、前面ガラス基板全体を加熱することによって、銀ペーストを焼成し、表示電極5を形成する。
表示電極を覆うように、前面ガラス基板2の主面に、誘電体層用のガラスを含むガラスペーストをブレードコーター法によって塗布する。その後、前面ガラス基板全体を90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、次いで、580℃前後の温度で10分間焼成を行う。
誘電体層6上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって成膜し、焼成を行い、保護層7を形成する。この時の焼成温度は500℃前後である。
保護層7上に、エチルセルロース等のビヒクルに、粉末状の電子放出性材料を混合してペースト状としたものを準備し、このペーストを印刷法等により塗布し、乾燥し、500℃前後の温度で焼成することによって、電子放出層20を形成する。
次に、背面板を作製する。
この工程では、平坦な背面ガラス基板の一主面に、銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、背面ガラス基板全体を加熱して銀ペーストを焼成することによって、アドレス電極を形成する。
隣り合うアドレス電極の間にガラスペーストを塗布し、背面ガラス基板全体を加熱してガラスペーストを焼成することによって、隔壁を形成する。
隣り合う隔壁同士の間に、R、G、B各色の蛍光体インクを塗布し、背面ガラス基板を約500℃に加熱して上記蛍光体インクを焼成することによって、蛍光体インク内の樹脂成分(バインダー)等を除去して蛍光体層を形成する。
次に、こうして得た前面板と背面板とを封着ガラスを用いて貼り合わせる。この時の温度は500℃前後である。
その後、封止された内部を高真空排気した後、希ガスを封入する。以上のようにしてPDPが作製される。
一方、上記PDP100のように、誘電体層6上に電子放出性材料からなる保護層7を形成するには、電子放出性材料の粉末をビヒクルや溶媒等と混合して、比較的粉末含有率の高いペースト状にし、このペーストを印刷法等の方法で、誘電体層6上に薄く広げた後、焼成することによって、電子放出性材料からなる薄膜状あるいは厚膜状の膜を形成することができる。
電子放出性材料の粉末を誘電体層6上に散布することによって保護層7を形成する方法としては、比較的粉末含有率の低いペーストを用意して印刷法を用いたり、溶媒に粉末を分散させて散布したり、スピンコーター等を用いたりすれば良い。
なお、以上説明したPDPの構成および製造方法は一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
本実施例では、CaO、SrO、BaOに、SnO2を固相粉末法により反応させて、の電子放出性材料(結晶性化合物)を合成し、化学的安定性改善効果を確認する実験を行った。
(結晶性化合物の合成)
出発原料として、試薬特級以上のCaCO3、SrCO3、BaCO3およびSnO2を用いた。これらの原料を、各金属イオンのモル比が、表1のNo.4〜11に示すようになるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。
これらの混合粉末を白金坩堝に入れ、電気炉にて、空気中で1200℃〜1500℃で2時間焼成した。得られた粉末の平均粒径を測定し、粒径の大きいものについては、エタノールを溶媒に用いて湿式ボールミル粉砕し、いずれの組成においても、平均粒径約3μmとした。
粉砕粉末の一部を、X線回折法を用いて分析し、生成相を同定した。
(重量増加率の測定)
次に、粉砕粉末の一部を秤量した後、吸湿性のない多孔質のセルに充填し、このセルを温度35℃湿度60%空気中の恒温恒湿槽に入れて12時間放置し、放置後再度重量を測定し、重量増加率を測定した。その後、さらに温度65℃湿度80%空気中の恒温恒湿槽に入れて12時間放置し、放置後再度重量を測定し、重量増加率(積算値)を算出した。
この重量増加率が低いほど、化合物が、化学的な安定性に優れていることを意味する。 一部の試料に対しては、恒温恒湿槽処理後にX線回折測定も行った。
また比較のため、試料No.0として、MgO粉末、No.12としてSnO2粉末を用いて、同様の重量増加率を測定した。さらに、SnO2以外の金属酸化物として、Al23、SiO2、GeO2,TiO2、ZrO2、CeO2、V25を用い、上記実施例と同様の方法でSrCO3やBaCO3と反応させて、No.13〜21の化合物を合成し、これらに対しても、同様の評価を行った。
なお、発明者等の検討した比較例の組成は、ここに挙げたものよりも、はるかに多種類であるが、比較的安定性が高く、後述するX-ray Photo electron Spectroscopy(XPS)測定や、パネル化まで行ったものを中心に、その一部を示した。
Figure 2009081589
(試験結果についての考察)
表1において、生成相のX線回折による分析では、SnO2と反応させないNo.1〜3の内、No.1はCaOの生成が認められたが、No.2はSrOに一部Sr(OH)が混在しており、No.3ではBaO自体は観察されず、Ba(OH)2とBaCO3の混合物であった。このような結果が生じたのは、CaOよりもSrO、SrOの方が化学的に不安定であり、さらにBaOの方が化学的に不安定となるため、焼成後の冷却中に空気中の水分や炭酸ガスと反応し、水酸化物や炭酸塩となったためと考えられる。
No.3では、既にBaOが存在しなかったので最も不安定である事は明白であり、恒温恒湿槽での重量増加率測定は行わなかった。
一方、No.4〜11、13〜21については、それぞれ目的とする結晶性化合物の生成が認められた。
次に、恒温恒湿処理における重量増加率測定では、比較例にかかるNo.2、No.3のCaOやSrOでは、35℃60%12h放置でも増加率が非常に大きく、処理後の試料のX線回折では、酸化物の回折ピークは消失し、水酸化物と炭酸塩の生成が認められた。従って、これらもNo.3のBaOについで不安定である事は明白であり、65℃80%12hの追加条件は行わなかった。
これに対して、実施例にかかるNo.4〜11は、No.2,3に比べて重量増加率が小さくなっており、化合物形成による安定化効果が確認出来た。特に、No.4、6、9のCaSnO3、SrSnO3、BaSnO3では、65℃80%12hの条件でもほとんど重量増加を示さず、処理後のX線回折でも、それぞれCaSnO3、SrSnO3、BaSnO3の回折ピークのみが認められ、比較例であるNo.12のMgOと同等以上の安定性が確認された。
比較例の中でSnO2以外の金属酸化物として、同じ4価の金属酸化物となる、Si、Ge,Ti,Zr,Ceや、3価金属のAl 、5価金属のVと反応させて化合物を形成したNo.13〜21と、実施例の中でアルカリ土類金属酸化物の含有量が比較的近いNo.4,6,9とを比較すると、実施例にかかるNo.4,6,9の方が重量増加率は少ないことがわかる。これは、Al,Si,Geなどを反応させるよりも、Snと反応させた方が、化合物を安定化させる効果が高いことを示している。
なお、比較例にかかるNo.13〜21においても、No.2,3と比較すると、重量増加率は大幅に少なく、特にNo.16,17においては、実施例にかかるNo.4,6,9と重量増加率が同等であることも認められるので、Al,Si,Ge,Ceと反応させた場合も安定化効果があり、特にTiやZrと反応させることで実施例と同等の安定化効果が得られると認められる。
しかし、結晶性化合物において、安定化効果だけでなく、2次電子放出係数が良好なことが重要である。よって次に、その目安となるXPS測定を行った結果を示す。
(XPS)
PDPにおける2次電子放出係数を粉末に対して直接測定する事は容易ではない。間接的な証拠としては、PDPの放電電圧が低下するのを確認すれば良いが、全ての材料に対してPDPを作製するのも容易ではない。
発明者等は詳細な検討の結果、XPSにより、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸塩起因のカーボン量を測定比較する事により、PDPの放電電圧を低下出来る材料の選別が、ある程度可能である事を見出した。XPSは、試料表面にX線を照射して放出される電子のスペクトルを測定するものであり、その分析深さは、通常数原子層〜十数原子層とされており、PDPにおける2次電子放出と比較的近い、試料の表面の情報が得られる。
2次電子放出係数は、一般にバンドギャップ幅と電子親和力の和が小さいほど大きくなるとされており、価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあるほどバンドギャップ幅は小さくなるので、2次電子放出係数は大きくなる。
一方、アルカリ土類金属を含む化合物において、試料表面の炭酸塩起因のカーボン量を測定すれば、化学的安定性に対する指標が、上記表1に示す重量増加率よりも高感度で得られる。
すなわち、試料が化学的に不安定であれば、空気中の炭酸ガスと反応して、表面カーボン量は増加する。そして、この量がある程度以上多くなると、粒子表面がBaCO3等の2次電子放出係数の低いアルカリ土類炭酸塩で完全に覆われてしまう事になるので、例え価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあっても、高い2次電子放出係数は得られない。
よって、XPSによって、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸塩起因のカーボン量の両方を測定して比較することによって、価電子帯端のエネルギー位置が低く、且つカーボン量が少ない材料を選択すれば、PDPの放電電圧を低下するのに適した材料を、ある程度選定できることを見出した。
以下、具体例に基づいて説明する。
図5は、表1のNo.0,6,14,18(すなわちMgO、SrSnO3、SrSiO3、SrCeO3)について、価電子帯端のXPSスペクトルを示している。図6は、C1s軌道のXPSスペクトルを示している。これら図5,6において、バックグラウンドノイズを差し引いて示している。
図5において、各ピークの右縁の位置が右にあるほど(すなわち、Binding Energyの値が低いほど)、価電子帯端が低エネルギー側にあることを示している。
当該図5より、MgOと比較して、SrSiO3の価電子帯端位置は高エネルギー側にあり、SrSnO3、SrCeO3の価電子帯端位置は低エネルギー側にある事が分かる。
図6において、炭酸化合物起因のCのピークは288〜290eV付近に現れるので、この領域のピークが高いほど表面C量が多いことを示している。
図6において、MgOと比べて、SrSiO3及びSrCeO3はピークが高いので表面C量が多く、SrSnO3は若干ではあるが低いので表面C量が少ない。
以上の結果より、SrSiO3は、MgOと比べて、価電子帯端位置が高エネルギー側にあるため、2次電子放出効率が高くなる可能性は低いと考えられ、SrCeO3は、MgOと比べて表面C量が多いため、2次電子放出効率が高くなる可能性は低いと考えられる。これに対して、SrSnO3は、MgOと比べて、価電子帯端位置が低エネルギー側にあり、且つ表面C量も少ないので、2次電子放出効率が高くなる可能性が高いと考えられる。
上記表1に示した各種化合物について、価電子帯端位置とC量を半定量的に示すために、XPSを測定した。
表2には、XPSにおける3eVおよび2eVでのIntensityと、288〜290eV付近に現れる炭酸化合物起源のC1sピークのIntensityを示す。表2に示す値は、いずれもバックグラウンド値を差し引いたものである。
3eVおよび2eVにおけるIntensityの値が大きいほど、価電子帯端が低エネルギー側にあることを示し、C peakの値が小さいほど化学的に安定であることを示す。
Figure 2009081589
(XPS測定結果に基づく考察)
表2より、実施例にかかるNo.4〜11の化合物は全て、比較例にかかるNo.0〜3の化合物、及びNo.12のSnO2と比べて、3eVおよび2eVのXPS Intensityが大きいこと、すなわち価電子帯端が低エネルギー側にあることが分かる。
C量については、今回の試料作製を、特に雰囲気調整を行わない大気中で行ったため、アルカリ土類を多く含むNo.5、7、8、10、11ではMgOと比べてC量が多くなっているが、アルカリ土類が50%以下のNo.4,6,9では、MgOよりもC量が少なかった。
一方、アルカリ土類酸化物をSnO2以外の金属酸化物と反応させた比較例No.13〜21の中で、Al、Si,Geを用いたNo.13〜15は、3eVおよび2eVのXPSのIntensityが小さいが、それ以外のTi,Zr,Ce,Vを用いたNo.16〜21では、MgOと比べて、3eVおよび2eVのXPSのIntensityが大きい。特にCeを用いたNo.18と20では、Snを用いた実施例と比べても3eVおよび2eVのXPSのIntensityが大きくなった。ただし、Ceを用いたNo.18、20では、MgOと比べてC量がかなり多かった。
よって、C量がMgOより少ないものの中で、3eVおよび2eVのXPSのIntensityが大きいものを選ぶと、実施例にかかるNo.4、6、9のCaSnO3、SrSnO3、BaSnO3となる。
(PDPの製造と放電電圧測定)
以上説明した実施例及び比較例にかかる結晶性化合物を用いて以下のようにPDPを作製し、放電電圧を測定した。
厚さ約2.8mmの平坦なソーダライムガラスからなる前面ガラス基板を用意した。この前面ガラス基板の面上に、ITO(透明電極)の材料を所定のパターンで塗布し、乾燥した。次いで、銀粉末と有機ビヒクルとの混合物である銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、上記前面ガラス基板を加熱することにより、上記銀ペーストを焼成して表示電極を形成した。
表示電極を作製したフロントパネルに、ガラスペーストをブレードコーター法を用いて塗布し、90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、585℃の温度で10分間焼成することによって、厚さ約30μmの誘電体層を形成した。
上記誘電体層上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって蒸着した後、500℃で焼成することによって保護層を形成した。
次に、No.1〜6,9,12,13,17,20,21の各化合物について、当該化合物の粉末約3重量部をエチルセルロース系のビヒクル100重量部と混合し、3本ロールを通してペーストとし、印刷法により、MgO層上に薄く塗布し、90℃で乾燥させた後、500℃、空気中で焼成した。この際、ペーストの濃度調整によって、焼成後のMgO層が粉末によって被覆される割合(被覆率)が20%弱程度となるようにした。
比較のため、No.0として、下地MgO膜のみで、粉末散布を行わないものも作製した。
一方、以下の方法で背面板を作製した。
まず、ソーダライムガラスからなる背面ガラス基板上にスクリーン印刷によって銀を主体とするアドレス電極をストライプ状に形成し、引き続き、前面板と同様の方法で、厚さ約8μmの誘電体層を形成した。
次に、誘電体層上に、隣り合うアドレス電極の間に、ガラスペーストを用いて隔壁を形成した。当該隔壁は、スクリーン印刷および焼成を繰り返すことによって形成した。
引き続き、隔壁の壁面と隔壁間で露出している誘電体層の表面に、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体ペーストを塗布し、乾燥および焼成して蛍光体層を作製した。
作製した前面板、背面板を封着ガラスを用いて500℃で貼り合わせた。そして、放電空間の内部を排気した後、放電ガスとしてXeを封入することによって、PDPを作製した。
作製したPDPを駆動回路に接続して発光させ、発光状態で100時間保持してエージングした後、放電維持電圧を測定した。ここでエージング処理は、MgO膜や散布粉末の表面を、スパッタリングにより、ある程度清浄化するために行うものであり、PDPの製造工程では普通に実施され、これを行わないパネルは、粉末散布の有無にかかわらず、放電電圧が高いものとなる。
エージング後に測定した放電電圧を表3に示す。
Figure 2009081589
(放電電圧測定結果に基づく考察)
実施例にかかるNo.4,5,6,9の粉末を散布したPDPでは、MgO薄膜のみのNo.0と比べて放電電圧が低下し、特にSrSnO3、BaSnO3を用いたNo.6,9では放電電圧の低下が大きく、本発明による駆動電圧低減効果を確認する事が出来た。
一方、比較例にかかるNo.1、2、3の粉末を散布したPDPでは、MgO薄膜のみのNo.0と比較して、放電電圧の低下は認められなかった。
比較例にかかるアルカリ土類を含まないSnO2のみのNo.12、およびアルカリ土類を含んでもSnを含まないNo.13、17、20、21の粉末を散布したPDPにおいても、No.12,17,21のPDPは、理由は不明であるが、エージング途中で発光しなくなった。また、発光したNo.13,20のPDPでも、MgO薄膜のみのNo.0と比較して、放電電圧の低下は認められず、むしろ上昇した。
このようにNo.13のPDPの放電電圧が低下しなかったのは、CaAl24のXPS測定でわかるように、価電子帯端位置が高エネルギー側にあるためと考えられ、No.20のPDPの放電電圧が低下しなかったのは、BaCeO3のC量が多いためと考えられる。
比較例にかかるNo.17のSrZrO3とNo.21のSr328については、実施例にかかるNo.4,6,9等と比べると、価電子帯端位置が高エネルギー側にあるが、No.0のMgOと比べると低エネルギー側にあり、C量も多くないので、No.0のPDPよりも放電電圧が低下しても良いと考えられるが、実際には表3からわかるように低電圧化しなかった。
また、No.20のBaCeO3を含め、遷移金属を主成分として含む化合物を用いたPDPは、安定性やXPSの結果と関係なく、放電電圧低下は認められなかった。
遷移金属を含む組成の化合物において、2次電子放出係数が高くならない理由は明らかではないが、価電子帯端にd軌道電子があるか、あるいは伝導帯に空のd電子軌道があり、価電子帯のd電子は、軌道がs軌道電子やp軌道電子に比べて局在化しており、バンドギャップを超えて伝導帯へ遷移しにくく、またバンドギャップを超えて遷移してきた電子が伝導帯にあるd電子軌道にトラップされた場合にも、その軌道の局在化のために、真空中へ放出されにくいためと考えられる。
これに対して、実施例にかかる化合物では、当該化合物に含まれるSnは典型金属であり、軌道に広がりのあるs軌道またはp軌道が電子放出に寄与するため、2次電子放出が容易と考えられる。
[実施例2]
本実施例では、BaSnO3を中心に、元素の組成比率を変えた場合、各種金属酸化物との固溶体を形成した場合、BaあるいはSnを他の金属で置換した場合について示す。
実施例1と同様の方法で、出発原料として試薬特級以上のCaCO3、SrCO3、BaCO3、SnO2および各種金属の酸化物を用い、これらの原料を、各元素比が、表4に示す組成比(原子比)となるように秤量し、混合、乾燥、焼成することによって、表4に示す各種化合物粉末を合成した。
生成した化合物について、X線回折による同定、吸湿性の評価、XPSの測定を行った。また一部の粉末を用いて、実施例1と同様に、PDPを作製し、放電電圧を測定した。この際、実施例1では、発光状態で100時間保持エージングした後、放電電圧を測定したが、本実施例では、エージング時間25時間と100時間で、それぞれ放電電圧を測定した。
その結果を表4に示す。
Figure 2009081589

(Snに対するBaの比率についての考察)
No.9、31〜35は、BaCO3とSnO2とを混合してBaSnO3を合成する際に、混合する原料におけるSnに対するBaのモル比率を0.98〜1.01の間で変化させて得られた結晶性化合物である。表4に示す結果から、Baの比率が多いほど吸湿性は高くなり、C量(C peak)が増加していることがわかる。
一方、これら結晶性化合物を用いてパネル化した場合、Snに対するBaのモル比率が1.000より少ないNo.33、34では、エージング100時間後のみならず24時間後で既に放電電圧が低くなっているが、Snに対するBaの比率が1.000より多いNo.31,32では、エージング24時間では放電電圧は低下せず、Snに対するBaの比率が最も多いNo.32では、エージング100時間後でも、放電電圧はあまり低下しなかった。
これは、原料混合時においてSnに対するBaのモル比率が1.000以上であると、組成の不均一性により、極僅かに、よりBaを多く含む化合物(Ba3Sn27等)が生成し、これが、雰囲気調整をしない条件下では、炭酸ガスと反応しやすいために粒子表面を覆ってしまい、またBa量が多くなるほど、その生成量が増加するので、これをスパッタリングで除去するのに必要なエージング時間が長くなるためと考えられる。
ここで、エージングに長時間かかるほど、パネルの生産効率は低下するため、エージング時間が短くて済むように、Snに対するBaのモル比率は、1.000より小さく、0.995以下とすることが望ましい。
なお、この比率が0.99以下の場合、SnO2が分離析出することがX線回折で認められた。このように、Ba原料とSn原料と反応させた結果、SnO2の残渣が認められることは、SnよりBaをより多く含む化合物が生成していない証拠であるから、BaSnO3に少量のSnO2が混合した混合物が生成することは望ましいことといえる。
一方、Snに対するBaのモル比率の下限については特に制限はないが、実施例1で見たようにSnO2自体には低電圧化効果は認められないので、この比率をあまり下げると、SnO2が無駄になるだけである。よって、この比率は0.90以上とするのが望ましく、0.95以上とするのがより望ましい。
以上、BaSnO3について説明したが、SrSnO3やCaSnO3、あるいはこれら相互の固溶体においても同様の結果が認められた。
(固溶体についての考察)
No.36〜41は、BaSnO3とSrSnO3との固溶体、あるいはBaSnO3とCaSnO2との固溶体である。
このように固溶体とすることによって、その理由はあきらかではないが、No.6のSrSnO3やNo.9のBaSnO3と比べて、XPSのC量は同程度のまま、2eVのIntensityが上昇し、放電電圧も若干ではあるが低下した。
また、No.41では、No.37と比べてSrの比率が若干低く設定され、その結果アルカリ土類の合計量が若干低くなっているが、C量低減等の効果が認められる。このように固溶体においても、アルカリ土類の合計量を減らすことによって、C量低減等の効果が得られる。
表4には示していないが、SrSnO3とCaSnO3の固溶体でも、同様の効果が認められた。なお、BaSnO3にCaSnO3を固溶させる割合は7%程度が上限であった。
(Ba、Snの置換についての考察)
No.42〜50は、BaSnO3におけるBaまたはSnを、原子価の異なる金属で置換したものである。
No.9のBaSnO3におけるSnを、InあるいはYで置換したNo.42〜48では、XPSにおける2eVのIntensityが高く、No.43ではエージング100時間後の放電電圧が若干低下している。このように、Snを、より価数の低い金属元素で置換することによって、XPSにおける2eVのIntensityが上昇することがわかる。ただし、No.45や46のように置換量が多すぎるとC量が大幅に増加する。
一方、No.9のBaSnO3に対して、SnをNbで置換したNo.49や、BaをLaで置換したNo.50では、XPSの2eVのIntensityは低下しているが、C量は減少し、エージング24時間後の放電電圧が低下している。このように、SnやBaを、より価数の高い金属元素で置換することによって、C量の減少と、放電電圧の低下が見られる。
なお、表4には示していないが、SrSnO3において、SrまたはSnを、同様に原子価の異なる金属で置換した場合にも、同様の効果が確認できた。ただし、SrSnO3は、置換固溶出来る組成範囲がBaSnO3より狭く、BaSnO3ではSnをInで全域置換できるが、SrSnO3ではSnをInで置換するときに割合は5〜10%程度が上限であった。
No.47は、No.9のBaSnO3におけるSnをIn置換した組成において、SnとInの合計モル数に対するBaモル数の比率を1.000より少なくしたものであって、No.9と比べるとエージング24時間後の放電電圧が低くなっている。このように、置換系においても、アルカリ土類の比率を減らすことのよる放電電圧低減効果が認められる。
[実施例3]
本実施例では、BaSnO3粉末を用いて上記実施例1と同様の方法でPDPを作製したが、BaSnO3粉末をMgO層上に散布するときの被覆率をいろいろと変えた。そして作製した各PDPについて特性を調べた。
BaSnO3粉末をMgO層上に散布する方法は次のとおりである。
BaSnO3粉末は、BaとSnの比率が0.995:1となるように原料を配合し、空気中1150℃で2時間焼成することによって合成した。
得られた粒径約1μmのBaSnO3粉末を用いて、実施例1と同様の方法で印刷用ペーストを作製した。この時、ペースト濃度(ペースト中の固形分濃度)が0.2%、1%、2%、4.3%、20%となる5種類のペーストを作製した。
各ペーストを、実施例1と同様の方法で、MgO層上に塗布し、乾燥、焼成することによって、BaSnO3粉末をMgO層上に散布し、各々について、BaSnO3粉末によるMgO層の被覆率を測定した。
この被覆率は、BaSnO3粉末を保護層に投影したときにBaSnO3粉末が占める面積の割合であって、BaSnO3粉末が散布された保護層の表面の画像について、BaSnO3粉末が保護層上に占める面積の割合を算出することによって測定した。
このようにして、BaSnO3粉末がMgO層上を被覆する被覆率が異なる5種類のPDPを作製した。
作製した各PDP及びBaSnO3粉末を散布していない被覆率0%のPDPについて、上記実施例2で説明したのと同様に、エージング24時間後および100時間後の放電電圧を測定した。
表5に、ペースト濃度ごとの被覆率、及び放電電圧測定結果示す。
Figure 2009081589
表5に示すように、当然であるがペースト濃度が高いほど被覆率が高くなっている。
また、MgO層をBaSnO3粉末で被覆したNo.51〜54は、MgO層をBaSnO3粉末で被覆していないNo.0と比べて、エージング24時間後および100時間後の放電電圧の低下が認められたが、被覆率が36.5%と高いNo.54では、エージング24時間後の放電電圧低下効果は少なく、被覆率が100%に近いNo.55では、エージング24時間後の放電電圧低下は認められず、エージング100時間後の放電電圧低下も不十分であった。
これは、被覆率が高いほど粉末量が多いので、粉末表面のクリーニングに長時間を要し、エージング時間も長くなるためと考えられる。
また、被覆率は、光の直線透過率と関係が深い一方、PDPの輝度と直接相関する散乱透過率とは直接的に関係しないが、被覆率を大きくしすぎると、直線透過率が小さくなると共に散乱透過率も低下するので好ましくない。さらに、被覆率が高いほど輝度のセル間バラツキが大きくなるという問題点も認められた。
一方、被覆率1.1%のNo.51では、エージング24時間後でも放電電圧が低下しているものの、その低下幅は少ない。これは粉末量が少ないためと考えられる。
以上より、結晶性化合物で保護層を被覆する場合、放電電圧を低下させる効果を得るためには、被覆率を1.0%以上とすることが好ましく、一方、エージング時間が長くならないように被覆率を20%以下に抑えることが好ましく、実用的には、被覆率を10%以下にすることが望ましいと考察される。
[実施例4]
本実施例では、BaSnO3粉末を、前面板のMgO層上ではなく、背面板の蛍光体層中に分散させた。
蛍光体層中にBaSnO3粉末を分散させる方法は次のとおりである。
実施例1と同様の方法で、BaとSnの比率を0.99:1として配合し、空気中1250℃で2時間焼成することによって、粒径約2μmのBaSnO3粉末を合成した。
得られた粉末を、蛍光体粉末に対して5重量%混合したもので蛍光体ペーストを作製し、当該蛍光体ペーストを用いて蛍光体層を形成する以外は、実施例1と同様の方法でPDPを作製した。
作製したPDPについて、実施例2と同様に、エージング24時間後の放電電圧を測定したところ、No.0のPDPと比べて放電電圧が15V低下した。
本実施例のように蛍光体にBaSnO3粉末を混合する場合、蛍光体に対するBaSnO3粉末の混合率を1重量%未満にした場合は、放電電圧低下効果が認められなかったので、当該混合率を1重量%以上とすることが好ましい。一方、当該混合率を高くすると、蛍光体量が減少することによる輝度低下が認められた。従って、このような輝度低下を抑えるために、当該混合率は10%以下とすることが好ましい。
本発明によれば、PDPにおいて、その放電特性を改善し、駆動電圧を低減できるので、低消費電力で駆動できるPDPを実現する上で有用である。
1 前面板
2 前面ガラス基板
3 透明導電膜
4 バス電極
5 表示電極
6 誘電体層
7 保護層
8 背面板
9 背面ガラス基板
10 アドレス電極
11 誘電体層
12 隔壁
13 蛍光体層
14 放電空間
20 電子放出層

Claims (22)

  1. 電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するプラズマディスプレイパネルにおいて、
    前記放電空間に臨む領域に、
    Ca,Sr,Baから選ばれた一種類以上と、SnとO(酸素)とを主成分とする化合物からなる電子放出性材料が配されているプラズマディスプレイパネル。
  2. 前記化合物は、
    Ca,Sr,Baから選択される一種類以上と、Snとを、特定の比率で含む結晶性酸化物である請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記結晶性酸化物は、
    CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3から選択される一種類以上からなる請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記結晶性酸化物は、
    CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3から選択される二種類以上が相互に固溶する固溶体からなる請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記結晶性酸化物におけるSn原子数に対するCa,Sr,Baの合計原子数の比が0.995以下である請求項3または4記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. 前記電子放出性材料には、
    前記結晶性酸化物とSnO2とが混合されている請求項3または4記載のプラズマディスプレイパネル。
  7. 前記結晶性酸化物において、
    Ca、Sr,Baから選択される一種類以上が、3価金属元素によって部分的に置換されている請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
  8. 前記結晶性酸化物において、
    Snが、3価金属元素あるいは5価金属元素によって部分的に置換されている請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
  9. 前記結晶性酸化物において、
    Snが、Inによって部分的に置換されている請求項8記載のプラズマディスプレイパネル。
  10. 前記結晶性酸化物は、
    Sr3Sn27、Ba3Sn27、あるいはこれら相互の固溶体からなる請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
  11. 前記結晶性酸化物は、
    Ca2SnO4、Sr2SnO4、Ba2SnO4、あるいはこれらから選択される二種類以上が相互に固溶する固溶体からなる請求項2記載のプラズマディスプレイパネル。
  12. 前記プラズマディスプレイパネルは、
    第1基板上に、第1電極、当該第1電極を覆う第1の誘電体層とが形成された第1パネルと、第2基板上に、第2電極、当該第2電極を覆う第2誘電体層、蛍光体層が形成された第2パネルとが、対向配置され、
    前記第1パネルと前記第2パネルとの間に前記放電空間が形成されている請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
  13. 前記化合物は、
    粒子および膜から選択される少なくとも1つの形態で配置されている請求項12記載のプラズマディスプレイパネル。
  14. 前記化合物は、
    前記第1パネルおよび第2パネルから選ばれる少なくとも1つのパネル上に配されている請求項12記載のプラズマディスプレイパネル。
  15. 前記第1誘電体上に保護層が形成されている請求項12記載のプラズマディスプレイパネル。
  16. 前記保護層は、
    主成分がMg0からなる請求項15記載のプラズマディスプレイパネル。
  17. 前記化合物は、前記保護層上に配されている請求項15記載のプラズマディスプレイパネル。
  18. 前記化合物は、粒子の状態で、前記保護層上に分散配置されている請求項17記載のプラズマディスプレイパネル。
  19. 前記保護層上に粒子の状態で分散配置されている前記化合物が、前記保護層を被覆する被覆率は、1%以上20%以下である請求項18記載のプラズマディスプレイパネル。
  20. 前記化合物は、前記保護層内に含まれている請求頃15記載のプラズマディスプレイパネル。
  21. 前記化合物は、粒子の状態で前記蛍光体層中に混合されている請求項12記載のプラズマディスプレイパネル。
  22. 前記蛍光体に対する前記化合物の混合割合が、
    1重量%以上10重量%以下である請求項21記載のプラズマディスプレイパネル。
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