JP2004273158A - 放電表示装置の保護膜材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】放電表示装置の放電電圧および消費電力を低くできる保護膜材料を提供する。
【解決手段】アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、弗素との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて形成された保護膜50は、電気陰性度の差が大きいことに基づき、MgO膜に比較して二次電子放出係数が大きくなるため、PDP10の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができるのである。しかも、本実施例の保護膜材料は、1000(℃)以上の融点を有するため、MgOが用いられる場合と同等以上の耐スパッタリング性も有する。
【選択図】 図3
【解決手段】アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、弗素との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて形成された保護膜50は、電気陰性度の差が大きいことに基づき、MgO膜に比較して二次電子放出係数が大きくなるため、PDP10の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができるのである。しかも、本実施例の保護膜材料は、1000(℃)以上の融点を有するため、MgOが用いられる場合と同等以上の耐スパッタリング性も有する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電表示装置の保護膜材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画(すなわち画素或いはセル)に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間でガス放電を発生させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示して第1平板側から観察する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等の放電表示装置が知られている。このような放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴う可視光、例えばネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線や赤外線等により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている。
【0003】
上記の放電表示装置の一種に、前記複数対の放電電極をITO(酸化インジウム錫)等の透明導体材料を用いて一方向に沿って第1平板の内面に誘電体層で覆って設けると共に、第2平板上にその一方向に直交する他方向に沿って伸びる複数本の書込電極を設けた面放電3電極構造のAC型PDPがある。この形式の放電表示装置では、放電電極のうち走査電極として機能させられる一方と書込電極との間で放電を発生させることにより発光区画を選択した後、放電電極のうち表示電極として機能させられる他方とその走査電極との間で全面一斉に放電を発生させることにより、その選択された発光区画内で発光させて第1平板側からその光を射出する。そのため、放電時に発生する電子やイオンによるスパッタリングから誘電体層を保護すると共に放電電圧を低下させる目的で、二次電子放出係数γの高い誘電体材料から成る保護膜がその誘電体層を覆って設けられている(例えば特許文献1等を参照)。なお、原理は定かではないが、放電表示装置の放電電圧は、二次電子放出係数γが大きいほど低くなる傾向がある(例えば非特許文献1等を参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−075173号公報
【非特許文献1】
電気学会技術報告1998年9月10日 第688号p.19
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような面放電構造の表示装置では、保護膜が光の射出させられる第1平板側に設けられているため、保護膜には、可視光に対する透光性が要求される。そのため、一般に、二次電子放出係数γが高く且つ透光性を有する材料として、酸化マグネシウム(MgO)が用いられている。しかしながら、MgO保護膜を備えた放電表示装置は、放電電圧が180(V)程度と高いことから高耐圧の駆動ドライバを用いる必要があると共に、消費電力が0.8(W)程度と高いことから冷却構造が必須となって静粛化が困難であり且つ稼動費用も高くなる不都合があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、放電表示装置の放電電圧および消費電力を低くできる保護膜材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素と、弗素との化合物から成ることにある。
【0008】
【第1発明の効果】
このようにすれば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、弗素(F)との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。弗素は電気陰性度が4.0程度と大きいのに対し、アルカリ金属のそれは0.7〜1.0程度、アルカリ土類金属は0.9〜1.5程度、遷移金属は1.1〜2.4程度、およびランタノイドは1.1程度と小さいため、弗素とこれらとの化合物における電気陰性度の差は2.5〜3.3程度、すなわち、電気陰性度が1.2程度のMgおよび3.5程度のOから成りその差が2.3程度のMgOに比較して大きな値になる。電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があるので、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きい弗素化合物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、弗化物の融点は一般に1000(℃)以上になることから、耐スパッタリング性もMgOが用いられる場合と同等以上の特性を有する。
【0009】
なお、上記弗素化合物は、例えば化学式MFnで表され、例えばMがアルカリ金属の場合にはLiFやNaF等、アルカリ土類金属の場合にはMgF2やCaF2等、遷移金属の場合にはNiF2、CaF2等、ランタノイドの場合にはLaF3やCeF3等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。
【0010】
【課題を解決するための第2の手段】
斯かる目的を達成するため、第2発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、化学式RMO3(但し、Rはランタノイドの少なくとも一種の元素、Mは遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属のうちから選ばれた少なくとも一種の元素)で表されるペロフスカイト構造の酸化物から成ることにある。
【0011】
【第2発明の効果】
このようにすれば、ランタノイドのペロフスカイト化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。上記化学式でRに相当するランタノイドの電気陰性度は1.1程度であってマグネシウムに比較して僅かに小さく、Mに相当するアルカリ金属等の電気陰性度はマグネシウムのそれに近似した値であるが、ペロフスカイト化合物においては、陰性元素である酸素数が陽性元素数よりも多いため、分子を構成する原子のモル数の差を考慮すると、電気陰性度の差はMgOに比較すると遙かに大きくなる。したがって、弗素化合物の場合と同様に、電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があることに基づき、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きいペロフスカイト化合物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、ペロフスカイト化合物も1500(℃)以上の高い融点を有するので、MgOが用いられる場合と同等以上の耐スパッタリング性を有する。
【0012】
なお、上記ランタノイド系ペロフスカイトは、例えば、La(Ni,Sr)O3やLa(Sr,Mn)O3、La(Sr,Co)O3等が挙げられるが、前記化学式中のMに相当する元素は、単一のものであっても、2以上の複数のものが適宜の割合で組み合わされたものであっても差し支えない。
【0013】
【課題を解決するための第3の手段】
斯かる目的を達成するため、第3発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、バリウム、ストロンチウム、カルシウムうちから選ばれた少なくとも一種の第1の元素と、ランタノイド、遷移金属、およびアルカリ金属から選ばれた少なくとも一種の第2の元素とを含む混合酸化物から成ることにある。
【0014】
【第3発明の効果】
このようにすれば、第1元素(すなわちバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)の少なくとも一種)と、第2元素(すなわちランタノイド、遷移金属、アルカリ金属の少なくとも一種)との混合酸化物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。上記第1元素は、Mgと同じアルカリ土類金属(周期表の2族)に属するものであって、それよりも僅かに小さい0.9〜1.0程度の電気陰性度を有するので、それらの酸化物の電気陰性度の差はMgOのそれよりも僅かに大きい。そして、その酸化物が保護膜として用いられた場合には、MgO保護膜と同程度の放電開始電圧を有することが知られているが(例えば、EURODISPLAY 2002のp.747−750等参照)、空気中において水分を吸着し易く安定性が著しく低いので、実験室レベルで使用できるに過ぎない。このような吸着水分は、放電表示装置の製造工程において除去することが極めて困難である。しかしながら、本発明者等がその特性を維持しつつ安定性を高めるべく種々実験を重ねたところ、上記第2元素との混合酸化物(複酸化物とも称する)の形態とすれば十分な安定性が得られ、しかも、MgOに比較して高い二次電子放出係数が得られることが判明した。また、上記混合酸化物は1000(℃)以上の高い融点を有しているため、MgOと同等以上の高い耐スパッタリング性も有するのである。
【0015】
なお、上記混合酸化物は、例えば、化学式(Rx,My)Onで表され、例えばRがBaの場合には、BaTiO3、BaZrO3、BaSnO3、BaNb2O6、BaFe12O19等が、Srの場合には、SrTiO3、SrZrO3、SrSnO3、SrFe12O19等が、Caの場合には、CaCrO、CaTiO3、CaZrO3、CaSnO3等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。
【0016】
【課題を解決するための第4の手段】
斯かる目的を達成するため、第4発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素と、硼素との化合物から成ることにある。
【0017】
【第4発明の効果】
このようにすれば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、硼素(B)との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。硼素の電気陰性度は例えば2.0程度であって、酸素に比較して著しく小さい。しかしながら、硼素は共有結合性を有するので、これとアルカリ金属等との化合物は、1個のアルカリ金属等の原子に対して複数個の硼素が結合した形態をとる。そのため、結合している原子のモル数の差を考慮すると、電気陰性度の差がMgOに比較して遙かに大きくなる。したがって、弗素化合物の場合と同様に、電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があることに基づき、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きい硼素化合物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、硼化物は、2000(℃)以上の高い融点を有するので、MgOが用いられる場合よりも遙かに高い耐スパッタリング性を有する。
【0018】
なお、上記硼素化合物は、例えば、化学式MBnで表され、例えばMがアルカリ土類金属の場合にはMgB2、BaB6、CaB6等、遷移金属の場合にはNiB、FeB等、ランタノイドの場合にはLaB6やCeB6、YB6等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。
【0019】
【課題を解決するための第5の手段】
斯かる目的を達成するため、第5発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、リチウムの酸化物、またはリチウムとアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素との混合酸化物から成ることにある。
【0020】
【第5発明の効果】
このようにすれば、リチウム(Li)の酸化物、またはリチウムとアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドとの混合酸化物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。リチウムは電気陰性度が1.0程度とマグネシウムに比較して小さいため、その酸化物や、更にアルカリ金属等を含む混合酸化物における電気陰性度の差は、MgOの場合に比較して少なくとも0.2以上大きくなる。前述したように電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があるので、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きいリチウム酸化物或いはリチウムの混合酸化物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、リチウム系酸化物の融点は一般に1000(℃)以上になることから、耐スパッタリング性もMgOが用いられる場合と同等以上の特性を有する。
【0021】
なお、上記リチウム酸化物は、例えば、Li2O或いはLi2O2であり、混合酸化物は、例えば、LixMyOz或いはLiMO3等で表され、例えばMがアルカリ金属の場合にはNi(Li,K)O等、アルカリ土類金属の場合には(Ba,Li)TiO3等、遷移金属の場合にはNiLiO等、ランタノイドの場合にはLa(Sr,Li)O3等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。但し、アルカリ金属であるリチウムの酸化物は、アルカリ土類金属の酸化物よりも不安定な傾向にあるため、混合酸化物として用いることが特に好ましい。
【0022】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記複数対の放電電極は、前記第1平板に平行な一平面内に位置し且つ前記放電面が各対相互に対向させられたものである。このようにすれば、放電空間内で第1平板の面方向に沿って対向放電させられ且つその対向放電に基づいて発生した光が放電電極の相互間を通って第1平板から射出されるので、発生した光の進路を放電電極が妨げない。そのため、放電電圧を一層低くできると共に、保護膜を可視光に対して透明な材料で構成する必要もない。すなわち、前記第1発明乃至第5発明の各材料は、透光性の如何に拘わらず利用可能であり、しかも、透光性を高める目的で高価な設備を用いて膜を緻密に形成する必要もない利点がある。特に、白色等の可視光反射率の高い化合物が用いられる場合には、保護膜における光の反射が輝度向上に寄与する利点もある。本発明の保護膜材料は、このような対向放電構造の放電表示装置に好適に用いられる。なお、本願において「一平面内に位置する」とは、放電電極全体が厚みの無い一平面内に含まれることを意味するものでは無く、一定の厚さ寸法を有する放電電極が一平面上に並んで配置された状態を意味する。
【0023】
また、好適には、前記放電表示装置は、格子状を成す厚膜誘電体層にその格子を構成する一方向に沿って複数本の厚膜導体層が積層されたシート状部材が前記第1平板および前記第2平板間に備えられ、前記複数対の放電電極はそれら複数本の厚膜導体層で構成されたものである。このようにすれば、シート状部材を第1,第2平板間に設けるだけで放電面が対向させられた放電電極を配設できるため、本発明の保護膜材料の適用対象として一層好適である。
【0024】
また、好適には、前記保護膜材料は、前記誘電体層上に厚膜印刷法を用いて保護膜を形成するために用いられるものである。このようにすれば、厚膜印刷法で形成される保護膜は、薄膜法で形成されるものに比較して保護膜材料粒子が粗大になり且つ粒子相互間にガラスが介在させられることから、保護膜材料の連続性が低下させられるため、保護膜上での電荷の移動が構造的に抑制される。そのため、保護膜材料が導電性を有していても壁電荷の蓄積機能を確保できるため、材料選択の自由度が一層高められる利点がある。しかも、このような厚膜は薄膜に比較して表面の凹凸が大きくなることから、電荷を蓄積する壁面の表面積が拡大されるので、一層多量の壁電荷を蓄えて一層放電電圧および消費電力を低下させ得る利点がある。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の厚膜シートが用いられたAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、対角20インチ(400×300(mm))程度の表示領域寸法を備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより大画面を構成する所謂タイル型表示装置の素子として用いられる。このPDP10には、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板(第1平板)16および背面板(第2平板)18が備えられている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20(厚膜シート電極)を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも450×350(mm)程度の大きさと1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法とを備えると共に透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものである。本実施例においては、上記の前面板16が第1平板に、背面板18が第2平板にそれぞれ相当する。
【0027】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0028】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0029】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0030】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成り、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0031】
図2は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に積層された導体層44と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。
【0032】
上記の上側誘電体層38および下側誘電体層40は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、それらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。これら誘電体層38,40は、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系、例えばAl2O3−SiO2−PbO等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。本実施例においては、これら誘電体層38等が格子状誘電体層に相当する。また、これらの格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22に沿った方向においては、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。また、隔壁22に直交する方向においては、それよりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば150(μm)程度の幅寸法を備え、200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の大きさは、例えば700×350(μm)程度である。
【0033】
また、上記の導体層44は、例えばアルミニウム(Al)等を導電成分として含む例えば30(%)程度の気孔率を有する比較的多孔質な厚膜導体であって、例えば10〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。この導体層44は、誘電体層38,40の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。帯状厚膜導体52は、後述するように、PDP10の表示放電を発生させるための放電電極として機能させられるものであって、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の中心間隔に等しい例えば500(μm)程度の中心間隔を以て、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。また、帯状厚膜導体52すなわち放電電極は、前面板16と平行な一平面内に位置する。
【0034】
また、図2において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0035】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0036】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0037】
また、前記の保護膜50は、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を備えた厚膜誘電体から成るものである。この保護膜50は、放電ガス・イオンによる誘電体皮膜48のスパッタリングを防止するためのものであるが、後述するように高い二次電子放出係数を有する誘電体材料で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0038】
図4(a)は、上記の保護膜50の構成を説明するための断面を模式的に示す図である。図において、保護膜50は、多数の誘電体粒子42がよく知られた低軟化点ガラス、例えば軟化点が500(℃)程度の鉛ガラス等のから成る無機結合剤46で結合させられることによって膜状に構成されている。上記の誘電体粒子42は、弗化物、ランタノイド系ペロフスカイト、Ba,Sr,Ca系混合酸化物、硼化物、或いはLi酸化物等で構成され、或いはこれらを主成分とするものである。例えば、弗化物としては、平均粒径が1(μm)程度のMgF2等が挙げられる。図に示されるように、誘電体粒子42の相互間には無機結合剤46が存在しており、粒子相互の連続性が阻害されている。また、保護膜50の表面は、構成する誘電体粒子42が比較的粗大であることに起因して、図4(b)に示されるような微細な誘電体粒子108が緻密に並ぶ蒸着膜等により形成された従来の薄膜に比較すると、誘電体粒子42の結合が緩やかで著しく凹凸の大きな粗い面となっている。
【0039】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、図3に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。
【0040】
上記のようにして走査電極として機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図3に他の矢印で示すように放電面56,56間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。なお、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、上記維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面56の全面に広がることとなる。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、図3は、PDP10の前記の隔壁22の長手方向に沿った断面すなわち帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な断面を示す図である。
【0041】
このとき、本実施例においては、前述したように保護膜50が高い二次電子放出係数を有することから、上記のように放電が発生させられると共に電荷が蓄積される際には、比較的低電圧で放電させ得ると共に、壁電荷の形成および維持が容易であるため、放電効率が一層高められ、消費電力も低くなる。後述するように、弗化物等から成る本実施例の保護膜50は、MgO膜よりも一層高い二次電子放出係数を有するので、そのMgO膜が用いられていた従来のPDPに比較して、駆動ドライバに要求される耐圧が低くなると共に、低消費電力のPDP10が得られる利点がある。
【0042】
また、維持放電は帯状厚膜導体52,52間で発生させられるが、放電空間24は隔壁22の長手方向に沿って連続しているため、その放電により発生させられた紫外線はその方向において帯状厚膜導体52,52の外側に広がる。そのため、その外側に位置する蛍光体層32,36もその紫外線が及ぶ範囲では発光させられることとなる。PDP10における発光単位(セル)の区切りは、隔壁22に垂直な方向すなわち図における左右方向ではその隔壁22によって区切られ、隔壁22の長手方向すなわち図における上下方向では実質的にはこの紫外線の及ぶ範囲によって画定される。
【0043】
但し、本実施例においては、隔壁22の長手方向における発光区画の区切りすなわちセル・ピッチは例えば100(μm)〜3.0(mm)の範囲内、例えば3.0(mm)程度であり、前記シート部材20の格子の中心間隔の6倍に相当する。すなわち、本実施例においては1セル内にシート部材20の格子の開口が6つ設けられており、それら6つの開口に面する3対の放電面56間で維持放電させることとなる。なお、前述したように隔壁22の中心間隔は1.0(mm)程度であり、RGB3色で1画素(ピクセル)が構成されるので、画素ピッチは格子の2方向の何れにおいても3.0(mm)程度、1画素の大きさは3.0×3.0(mm)程度となる。
【0044】
なお、上記のようにして放電空間22内において蛍光体層32から発生させられた光は、図1に示されるPDP10の構成から明らかなように、格子状を成したシート部材20の開口部を経由して前面板16から射出される。そのため、蛍光体層32から発生した光のうち一部はシート部材20で遮られ、表示に寄与し得ないが、大部分の光はシート部材20にその進路を妨げられることなく前面板16を通過して射出されるので、可視光に対して不透明な材料から成るシート部材20による遮光は実質的に問題とはならない。また、格子構成部分のうち隔壁22に垂直な方向に沿って伸びる部分は、例えば150(μm)程度の細幅寸法で設けられており、且つ隔壁34によって前面板16から離隔させられているので、これによる遮光も殆ど問題とならない。しかも、本実施例においては、前述したように格子の開口部内に突き出した突出部54が放電空間22の長手方向において、その幅方向の一端側および他端側に交互に設けられているため、突出部54の遮光による視覚上の影響が緩和されるので、突出部54が存在することに起因する表示品質の低下も実質的に解消されている。なお、放電開始電圧を低下させるための突出部54は、その存在に起因する遮光が許容される範囲で可及的に放電開始電圧を低くできるようにその大きさが定められる。
【0045】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0046】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0047】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0048】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0049】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0050】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(j)を参照して説明する。
【0051】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0052】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のシリカ、アルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば700(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程(すなわち支持体を用意する工程)に対応する。
【0053】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38,40を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44を形成するための厚膜導体ペースト98(図7(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38,40を形成するための誘電体印刷層100,104、導体層44を形成するための導体印刷層102が、その積層順序に従って形成される。
【0054】
上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図7(c)〜(e)は、それぞれ、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104がそれぞれ形成された段階を示している。なお、誘電体印刷層100,104は、例えばそれぞれ70(μm)程度の厚さ寸法に形成され、導体印刷層102は、例えば35(μm)程度の厚さ寸法に形成される。一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0055】
なお、上記のアルミニウム粉末は、例えば平均粒径が10(μm)程度で、1〜15(μm)程度の範囲に粒径が分布するものであって、個々の粒子は例えば球形状を備えている。このようなアルミニウム粉末が上記のような低軟化点ガラスと混合された厚膜アルミニウム・ペーストは、焼成収縮し難く、例えば90(%)程度の高い残存率を有している。そのため、前記の30(μm)程度の膜厚が得られるように、印刷厚みが35(μm)程度に設定されているのである。これに対して、前記の厚膜誘電体ペースト96は例えば70(%)程度の焼成残存率を有することから、前記の50(μm)程度の膜厚が得られるように、誘電体印刷層100,104は、70(μm)程度の厚さ寸法に形成される。したがって、本実施例においては、相対的に収縮率の小さい導体印刷層102が、相対的に収縮率の大きい誘電体印刷層100,104の間(層間)に形成されている。
【0056】
上記のようにして厚膜印刷層100〜104を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0057】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜104は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38,40および導体層44すなわちシート部材20の基本構成要素が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、アルミニウム粉末を導体成分として含む厚膜導体ペースト98は、上述したように残存率が大きいことから面方向においても収縮量が極めて小さいので、基板80上に固定されていることと相俟って、格子状の誘電体層38,40および縞状の導体層44のそれぞれの中心間隔延いてはトータルピッチは、厚膜印刷層100〜104のそれから殆ど変化しない。なお、生成された厚膜の断面を観察したところ、アルミニウム粉末は殆ど溶けておらず、多孔質な組織が形成されていることが確かめられた。
【0058】
しかも、本実施例においては、前記の剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図9参照)のみから成る粒子層116となる。
【0059】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜104が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜104の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0060】
なお、本実施例においては、基板80の熱膨張係数は誘電体材料と略同じであり、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するまで、すなわち、樹脂成分は焼失させられたがガラスフリット、誘電体材料粉末や導体粉末の結合力が未だ小さい温度範囲ではこれらの熱膨張量に殆ど差はない。一方、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0061】
図6に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40および導体層44の積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0062】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図8(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0063】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト124に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。図8(i)は、焼成後の段階を示している。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0064】
このため、本実施例においては、厚膜積層体が基板80から剥離された後、焼成処理が2回繰り返されることとなる。しかしながら、この焼成処理の際にも、格子状の誘電体層38,40および縞状の導体層44のそれぞれ中心間隔延いてはトータルピッチは、厚膜印刷層100〜104のそれから殆ど変化しない。すなわち、焼成処理に伴う収縮は殆ど見られなかった。
【0065】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に、例えば前記誘電体粒子42を含む保護膜材料ペーストを用いたディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。図8(j)は、この段階を示している。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されないのである。また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。このようなことから、前述したような粗大粒子が疎に結合させられた厚膜で保護膜50が構成されていても差し支え無いのであり、この結果、シート部材20内に電極が備えられたPDP10の構造によれば、保護膜50の製造コスト延いてはPDPの製造コストが低くなる利点がある。。
【0066】
ところで、ディッピング処理が適用される場合に用いられる保護膜材料ペーストは、例えば、以下のようにして調製される。すなわち、先ず、例えば前記誘電体粒子42の原料となる粗大粒子を、原料を混合して例えばアルミナ坩堝に入れ、必要に応じてO2、F2ガス等を供給しつつ、材料毎に定められる例えば1300〜1500(℃)程度の範囲内の温度で焼成処理を施して合成することによって製造し、例えばボールミル等の粉砕装置を用いて所望の大きさ、例えば1(μm)程度の平均粒径に粉砕する。また、前記無機結合剤46を構成するための鉛ガラス等を同様にして1(μm)程度の平均粒径に粉砕する。そして、これら誘電体粉末およびガラス粉末を例えば70:30程度の割合で混合し、例えばターピネオール等の有機溶剤およびエチルセルロース等の樹脂結合剤と混合してペースト化することにより、上述したような保護膜50を形成するためのペーストが得られる。
【0067】
上記のようにして弗化物等から成る保護膜50を形成したPDP10の特性を、MgOから成る従来の保護膜を備えたPDPと比較した結果を下記の表1に示す。なお、何れも膜厚は1(μm)程度とした。また、MgOの場合の放電維持電圧は160(V)程度であった。
【0068】
【0069】
上記の表1に示されるように、弗化物で保護膜50を構成した本実施例のPDP10によれば、その保護膜50の二次電子放出係数がMgO膜のそれに比較して大きいことから放電開始電圧も低くなるので、放電電極52a,52bおよび書込電極28の駆動ドライバに要求される耐圧が低くなるので、絶縁破壊等の不具合が発生し難く、且つ、ドライバ・コストも抑えることができる利点がある。また、二次電子放出係数が大きいので放電効率が高められた結果として、消費電力が低下し、冷却構造も簡便になり或いは無用になる利点がある。
【0070】
なお、上記の表1のうち、CeF3、LaF3は可視光に対して不透明な材料であるが、前述したように本実施例のPDP10では保護膜50に透光性は要求されないので、不透明であることは何ら問題にならない。
【0071】
また、MgO膜を備えた比較例のPDPは、以下のようにして製造した。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(2)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。次いで、(3)そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(4)次いで、例えば三菱マテリアル(株)製MgOを真空蒸着装置の蒸発源としてセットし、上記の無機シートを装置内にセットして、例えば成膜速度10(Å/sec)にて厚さ5000(Å)で成膜する。(5)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0072】
また、上記表1に示す弗化物は、例えば、目的の組成となる割合で用意した原料を混合し、焼結させることにより合成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、MgF2の場合には、Mg(OH)2を出発原料としてF2ガス中において1300(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。なお、上記の表1は、このようにして製造した弗化物を用いて、上記のMgO膜の場合と同様な評価用PDPを製造して評価した結果である。なお、弗化物の成膜方法は、厚膜プロセスであっても、MgO膜と同様な薄膜プロセスであっても良い。
【0073】
要するに、本実施例によれば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、弗素との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて形成された保護膜50は、電気陰性度の差が大きいことに基づき、MgO膜に比較して二次電子放出係数が大きくなるため、PDP10の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができるのである。しかも、本実施例の保護膜材料は、1000(℃)以上の融点を有するため、MgOが用いられる場合と同等以上の耐スパッタリング性も有する。
【0074】
また、下記の表2は、弗化物に代えてランタノイド系ペロフスカイトを用いた場合のPDP10の特性等を弗化物の場合と同様に評価したものである。各項目の意味するところは前記の表1と同一である。表に示されるように、ランタノイド系ペロフスカイトで保護膜50を構成した場合にも、その二次電子放出係数がMgO膜のそれに比較して大きいことから放電開始電圧も低くなるので、駆動ドライバに要求される耐圧が低くなると共にドライバ・コストが抑えられ、また、消費電力が低下し、冷却構造も簡便になる等の弗化物と同様な利点がある。すなわち、ランタノイドの電気陰性度はMgのそれと同程度であるが、ペロフスカイト化合物においては結晶中の酸素数が多いことから、電気陰性度の差がMgOよりも遙かに大きくなるため、二次電子放出係数が大きくなるのである。なお、下記の各材料において、放電維持電圧は例えば155(V)程度であった。
【0075】
【0076】
なお、本実施例に用いたLa系ペロフスカイトは、例えば、所定の出発原料を組成毎に定められる温度で焼結させることによりペロフスカイト構造を生成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、La(Ni,Sr)O3の場合には、LaNiSrOを出発原料として1300(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。
【0077】
また、例えば、La(Sr,Co)O3の場合の評価用パネル(PDP)の製造方法は、例えば以下の通りである。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径1(μm)程度のLa2O3、平均粒径7(μm)程度のSrCO3、および平均粒径2(μm)程度のCoOを1:1:1程度のmol比(重量比では325.84:147.64:74.94程度)で秤量し、例えばアルミナ製ボールミル(容量3.5リットル)を用いて混合を1時間程度行う。なお、上記原料は、例えば何れも(株)高純度化学研究所製である。(2)次いで、ボールミル容器から取り出された混合粉末をアルミナ製坩堝に移し、最高温度1350〜1450(℃)に設定した釜の中に坩堝ごと配置し、室温より最高温度まで10(℃/min)程度の速度で昇温し最高温度で2時間程度保持した後、10(℃/min)以下の平均速度で室温まで冷却する。(3)次いで、坩堝内の焼結体を焼結アルミナ製乳鉢に移して粉砕した後、アルミナ製坩堝内に移し、粉砕された焼結体に対し、イソプロピルアルコール(IPA)とφ5(mm)程度のアルミナ製玉石を例えば10:10:100の重量比となるように加え、ポット回転架台上で100rpmにて50時間程度回転させることにより、焼結体を更に粉砕する。(4)次いで、アルミナポットより玉石と分離し取り出した溶液を例えば還流式オーブンにて80(℃)程度の温度で3時間程度乾燥し、IPAを蒸発させる。これらの粉砕処理および乾燥処理は、未焼結原料を十分に除去するために例えば2回繰り返される。このようにして保護膜50を構成するための原料粉末が得られる。(5)次いで、例えばテルピネオールとエチルセルロースを95:5の重量比で混合し、例えば70(℃)程度に加熱されエチルセルロースが溶解されたビヒクルと上記の合成した原料粉末を例えば20:80程度の重量比で混合し、3本ロール・ミルにて混合しLa(Sr,Co)O3ペーストを得る。
【0078】
(6)次いで、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(7)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。(8)次いで、そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(9)次いで、上記の無機シートの誘電体上に前記のようにして調製したLa(Sr,Co)O3ペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷にて塗布し、最高温度500(℃)にて焼成を行うことにより、例えば厚み1(μm)程度のLa(Sr,Co)O3から成る保護膜50が得られる。(10)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0079】
また、下記の表3は、Ba,Sr,Ca系混合酸化物で保護膜50を構成した場合の評価結果を示したものである。評価方法や評価項目は弗化物の場合と同様である。表に示されるように、このような混合酸化物を用いた場合にも、Ba,Sr,Caの酸化物がMgOと同等以上の二次電子放出係数を有し、しかも、アルカリ金属等が混合されることによって混合酸化物とされることで二次電子放出係数が一層増大させられ且つ化合物の化学的安定性も高められるため、弗化物の場合と同様に、放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。なお、Baは電気陰性度が0.9程度、SrおよびCaは1.0程度と小さいため、それらの酸化物(BaO、SrO、CaO)は何れもMgOよりも高い二次電子放出係数を有する。しかしながら、これらの酸化物は吸湿性が高いので空気中において水を吸着し易く、PDP10の使用中の放電で出てくるため雰囲気を乱す欠点がある。これに対して、下記のような混合酸化物の形態を採れば、MgOよりも高い二次電子放出係数を維持しつつ、高い安定性を得ることができるのである。なお、BaTiO3およびSrTiO3で保護膜50を構成した場合の放電維持電圧は、例えば155(V)程度であり、CaTiO3で保護膜50を構成した場合の放電維持電圧は、例えば150(V)程度であった。
【0080】
【0081】
なお、上記表に記載したような混合酸化物は、例えば、固相反応法や液相反応法等を用いてBa、Sr、或いはCaを含む適宜の出発原料を製造した後、これに遷移金属等の混合しようとする元素の酸化物を混合して焼結させることによって合成され、これをボールミル等を用いて所望の平均粒径、例えば1(μm)程度に粉砕して用いられる。例えば、(Ba,Ni)Oを製造しようとする場合には、炭酸バリウム(BaCO3)と酸化ニッケル(NiO)等とを原料として用いればよい。
【0082】
また、例えば、BaTiO3の場合の評価用パネル(PDP)の製造方法は、例えば以下の通りである。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径1(μm)程度のBaCO3および平均粒径1(μm)程度のTiO2を1:1程度のmol比(重量比では192.35:79.9程度)で秤量し、例えばアルミナ製ボールミル(容量3.5リットル)を用いて混合を1時間程度行う。なお、上記原料は、例えば何れも(株)高純度化学研究所製である。(2)次いで、ボールミル容器から取り出された混合粉末をアルミナ製坩堝に移し、最高温度1350〜1450(℃)に設定した釜の中に坩堝ごと配置し、室温より最高温度まで10(℃/min)程度の速度で昇温し最高温度で2時間程度保持した後、10(℃/min)以下の平均速度で室温まで冷却する。(3)次いで、坩堝内の焼結体を焼結アルミナ製乳鉢に移して粉砕した後、アルミナ製坩堝内に移し、粉砕された焼結体に対し、イソプロピルアルコール(IPA)とφ5(mm)程度のアルミナ製玉石を例えば10:10:100の重量比となるように加え、ポット回転架台上で100rpmにて50時間程度回転させることにより、焼結体を更に粉砕する。(4)次いで、アルミナポットより玉石と分離し取り出した溶液を例えば還流式オーブンにて80(℃)程度の温度で3時間程度乾燥し、IPAを蒸発させる。これらの粉砕処理および乾燥処理は、未焼結原料を十分に除去するために例えば2回繰り返される。このようにして保護膜50を構成するための原料粉末が得られる。(5)次いで、例えばテルピネオールとエチルセルロースを95:5の重量比で混合し、例えば70(℃)程度に加熱されエチルセルロースが溶解されたビヒクルと上記の合成した原料粉末を例えば20:80程度の重量比で混合し、3本ロール・ミルにて混合しBaTiO3ペーストを得る。
【0083】
(6)次いで、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(7)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。(8)次いで、そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(9)次いで、上記の無機シートの誘電体上に前記のようにして調製したBaTiO3ペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷にて塗布し、最高温度500(℃)にて焼成を行うことにより、例えば厚み1(μm)程度のBaTiO3から成る保護膜50が得られる。(10)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0084】
また、SrTiO3、CaTiO3で保護膜50を構成する場合には、上記のBaTiO3の場合の製造方法において、出発原料としてBaCO3に代えてそれぞれSrCO3或いはCaCO3を用いればよい。この場合、TiO2との混合割合はmol比では同様に1:1であるが、重量比ではそれぞれ147.84:79.9、100.09:79.9程度になる。また、他の工程はBaCO3と同様である。
【0085】
また、下記の表4は、硼化物で保護膜50を構成した場合の評価結果を示したものである。評価方法や評価項目は弗化物の場合と同様である。表に示されるように、硼化物を用いた場合にも、MgOよりも高い二次電子放出係数を有するため、弗化物の場合と同様に、放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。なお、硼素は電気陰性度が2.0程度であるが、表4において化合物を構成しているアルカリ金属の電気陰性度が0.7〜1.0程度、アルカリ土類金属が0.9〜1.5程度、遷移金属が1.3〜2.4程度、およびランタノイド1.1程度であることから、硼素との電気陰性度の差は、大きいものでも1.3程度に過ぎない。しかしながら、硼素は共有結合性を有するので、これとアルカリ金属等との化合物は、1個のアルカリ金属等の原子に対して複数個の硼素が結合した形態をとる。そのため、結合している原子のモル数の差を考慮すると、電気陰性度の差がMgOに比較して遙かに大きくなる。したがって、弗化物の場合と同様に、MgO膜に比較して二次電子放出係数の大きな保護膜50が得られる。
【0086】
【0087】
なお、上記のような硼化物は、例えば、目的の組成となる割合で用意した原料を混合し、焼結させることにより合成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、LaB6の場合には、La、Bを出発原料として1500(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。
【0088】
また、上記表4に記載された化合物のうち、LaB6、NiB等は導電性を有しているが、本実施例のようにディッピング或いは厚膜印刷法で構成される保護膜50は、前記の図4(a)に示されるように多孔質の膜組織を有するため、構造的に低い導電性を有する。したがって、構成材料が僅かな導電性を有することは何ら問題にならない。なお、保護膜50のうち異なる電極上に設けられているものが蛍光体層32,36を介して相互に短絡するような場合には、シート部材20に保護膜50を形成するに際して、無用な部分には形成されないようにマスキング処理を施せばよい。このマスキング処理は、例えば、加熱により除去可能な材料、例えばエチルセルロースやアクリル等の樹脂を溶剤に溶かしてペースト化して、例えばスクリーン印刷等で予めパターン形成し、その上から全面に材料を塗布した後、加熱することで行われる。
【0089】
また、下記の表5は、Li酸化物またはLi混合酸化物で保護膜50を構成した場合の評価結果を示したものである。評価方法や評価項目は弗化物の場合と同様である。表に示されるように、Li酸化物を用いた場合にも、Liが1.0程度とMgよりも小さい電気陰性度を有すること等に基づいて、MgOよりも高い二次電子放出係数を有するため、弗化物の場合と同様に、放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。なお、NiLiOで保護膜50を構成した場合の放電維持電圧は、155(V)程度であった。
【0090】
【0091】
なお、上記のようなLi酸化物やLi混合酸化物は、例えば、目的の組成となる割合で用意した原料を混合し、焼結させることにより合成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、NiLiOの場合には、NiO、Li2Oを出発原料として1300(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。
【0092】
具体的には、下記のような工程を経て評価用PDPが製造される。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径1(μm)程度のLi2Oおよび平均粒径7(μm)程度のNiOを1:1程度のmol比(重量比では29.88:74.71程度)で秤量し、例えばアルミナ製ボールミル(容量3.5リットル)を用いて混合を1時間程度行う。なお、上記原料は、例えば何れも(株)高純度化学研究所製である。(2)次いで、ボールミル容器から取り出された混合粉末をアルミナ製坩堝に移し、最高温度1350〜1450(℃)に設定した釜の中に坩堝ごと配置し、室温より最高温度まで10(℃/min)程度の速度で昇温し最高温度で2時間程度保持した後、10(℃/min)以下の平均速度で室温まで冷却する。(3)次いで、坩堝内の焼結体を焼結アルミナ製乳鉢に移して粉砕した後、アルミナ製坩堝内に移し、粉砕された焼結体に対し、イソプロピルアルコール(IPA)とφ5(mm)程度のアルミナ製玉石を例えば10:10:100の重量比となるように加え、ポット回転架台上で100rpmにて50時間程度回転させることにより、焼結体を更に粉砕する。(4)次いで、アルミナポットより玉石と分離し取り出した溶液を例えば還流式オーブンにて80(℃)程度の温度で3時間程度乾燥し、IPAを蒸発させる。これらの粉砕処理および乾燥処理は、未焼結原料を十分に除去するために例えば2回繰り返される。このようにして保護膜50を構成するための原料粉末が得られる。(5)次いで、例えばテルピネオールとエチルセルロースを95:5の重量比で混合し、例えば70(℃)程度に加熱されエチルセルロースが溶解されたビヒクルと上記の合成した原料粉末を例えば20:80程度の重量比で混合し、3本ロール・ミルにて混合しNiLiOペーストを得る。
【0093】
(6)次いで、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(7)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。(8)次いで、そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(9)次いで、上記の無機シートの誘電体上に前記のようにして調製したNiLiOペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷にて塗布し、最高温度500(℃)にて焼成を行うことにより、例えば厚み1(μm)程度のNiLiOから成る保護膜50が得られる。(10)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0094】
また、アルカリ金属であるLiの酸化物は化学的安定性が比較的低い傾向にあるが、例えば、NiLiOやLiMO3(Mはペロフスカイト構造を構成し得る適宜の元素)等の混合酸化物の形態で用いた場合には、高い二次電子放出係数を維持しつつ、安定性も確保し得る。
【0095】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0096】
例えば、実施例においては、対向放電構造のAC型PDP10の保護膜50を構成するための保護膜材料に本発明が適用された場合について説明したが、可視光に対する十分な透光性を有する材料については、従来の面放電構造のPDPの保護膜材料にも本発明は適用され得る。
【0097】
また、実施例においては、厚膜誘電体層38,40で厚膜導体層44が挟まれたシート部材20を前面板16および背面板18間に配置することにより、その導体層44で放電電極が構成される形式のPDP10の保護膜50の構成材料に本発明が適用されていたが、本発明は、光の射出経路に放電電極が存在しない対向放電構造のPDPであれば好適に適用される。例えば、隔壁22の高さ方向の中間位置に導体層を積層することによって放電電極を構成する構造であっても差し支えない。
【0098】
また、実施例においては、保護膜50が専ら厚膜プロセスで設けられる場合について説明したが、本発明の保護膜材料を用いる効果は、製造プロセスの如何に拘わらず享受できるので、例えば、蒸着やスパッタ等の薄膜プロセスが用いられてもよい。
【0099】
また、PDP10の各部の形状や寸法、構成材料等の構成は、実施例で示したものに限られず、所望とする表示品質や表示パネルの大きさ等に応じて適宜変更され、何れの場合にも本発明の保護膜材料を用い得る。
【0100】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の保護膜材料で形成された保護膜を備えたカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図3】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造を説明する図である。
【図4】(a)は、図2のシート部材表面に設けられた保護膜の構成を模式的に示す断面図であり、(b)は、従来のMgO蒸着膜の構成を模式的に示す図である。
【図5】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】(f)〜(j)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
20:シート部材
50:保護膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電表示装置の保護膜材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画(すなわち画素或いはセル)に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間でガス放電を発生させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示して第1平板側から観察する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等の放電表示装置が知られている。このような放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴う可視光、例えばネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線や赤外線等により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている。
【0003】
上記の放電表示装置の一種に、前記複数対の放電電極をITO(酸化インジウム錫)等の透明導体材料を用いて一方向に沿って第1平板の内面に誘電体層で覆って設けると共に、第2平板上にその一方向に直交する他方向に沿って伸びる複数本の書込電極を設けた面放電3電極構造のAC型PDPがある。この形式の放電表示装置では、放電電極のうち走査電極として機能させられる一方と書込電極との間で放電を発生させることにより発光区画を選択した後、放電電極のうち表示電極として機能させられる他方とその走査電極との間で全面一斉に放電を発生させることにより、その選択された発光区画内で発光させて第1平板側からその光を射出する。そのため、放電時に発生する電子やイオンによるスパッタリングから誘電体層を保護すると共に放電電圧を低下させる目的で、二次電子放出係数γの高い誘電体材料から成る保護膜がその誘電体層を覆って設けられている(例えば特許文献1等を参照)。なお、原理は定かではないが、放電表示装置の放電電圧は、二次電子放出係数γが大きいほど低くなる傾向がある(例えば非特許文献1等を参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−075173号公報
【非特許文献1】
電気学会技術報告1998年9月10日 第688号p.19
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような面放電構造の表示装置では、保護膜が光の射出させられる第1平板側に設けられているため、保護膜には、可視光に対する透光性が要求される。そのため、一般に、二次電子放出係数γが高く且つ透光性を有する材料として、酸化マグネシウム(MgO)が用いられている。しかしながら、MgO保護膜を備えた放電表示装置は、放電電圧が180(V)程度と高いことから高耐圧の駆動ドライバを用いる必要があると共に、消費電力が0.8(W)程度と高いことから冷却構造が必須となって静粛化が困難であり且つ稼動費用も高くなる不都合があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、放電表示装置の放電電圧および消費電力を低くできる保護膜材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素と、弗素との化合物から成ることにある。
【0008】
【第1発明の効果】
このようにすれば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、弗素(F)との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。弗素は電気陰性度が4.0程度と大きいのに対し、アルカリ金属のそれは0.7〜1.0程度、アルカリ土類金属は0.9〜1.5程度、遷移金属は1.1〜2.4程度、およびランタノイドは1.1程度と小さいため、弗素とこれらとの化合物における電気陰性度の差は2.5〜3.3程度、すなわち、電気陰性度が1.2程度のMgおよび3.5程度のOから成りその差が2.3程度のMgOに比較して大きな値になる。電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があるので、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きい弗素化合物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、弗化物の融点は一般に1000(℃)以上になることから、耐スパッタリング性もMgOが用いられる場合と同等以上の特性を有する。
【0009】
なお、上記弗素化合物は、例えば化学式MFnで表され、例えばMがアルカリ金属の場合にはLiFやNaF等、アルカリ土類金属の場合にはMgF2やCaF2等、遷移金属の場合にはNiF2、CaF2等、ランタノイドの場合にはLaF3やCeF3等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。
【0010】
【課題を解決するための第2の手段】
斯かる目的を達成するため、第2発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、化学式RMO3(但し、Rはランタノイドの少なくとも一種の元素、Mは遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属のうちから選ばれた少なくとも一種の元素)で表されるペロフスカイト構造の酸化物から成ることにある。
【0011】
【第2発明の効果】
このようにすれば、ランタノイドのペロフスカイト化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。上記化学式でRに相当するランタノイドの電気陰性度は1.1程度であってマグネシウムに比較して僅かに小さく、Mに相当するアルカリ金属等の電気陰性度はマグネシウムのそれに近似した値であるが、ペロフスカイト化合物においては、陰性元素である酸素数が陽性元素数よりも多いため、分子を構成する原子のモル数の差を考慮すると、電気陰性度の差はMgOに比較すると遙かに大きくなる。したがって、弗素化合物の場合と同様に、電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があることに基づき、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きいペロフスカイト化合物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、ペロフスカイト化合物も1500(℃)以上の高い融点を有するので、MgOが用いられる場合と同等以上の耐スパッタリング性を有する。
【0012】
なお、上記ランタノイド系ペロフスカイトは、例えば、La(Ni,Sr)O3やLa(Sr,Mn)O3、La(Sr,Co)O3等が挙げられるが、前記化学式中のMに相当する元素は、単一のものであっても、2以上の複数のものが適宜の割合で組み合わされたものであっても差し支えない。
【0013】
【課題を解決するための第3の手段】
斯かる目的を達成するため、第3発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、バリウム、ストロンチウム、カルシウムうちから選ばれた少なくとも一種の第1の元素と、ランタノイド、遷移金属、およびアルカリ金属から選ばれた少なくとも一種の第2の元素とを含む混合酸化物から成ることにある。
【0014】
【第3発明の効果】
このようにすれば、第1元素(すなわちバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)の少なくとも一種)と、第2元素(すなわちランタノイド、遷移金属、アルカリ金属の少なくとも一種)との混合酸化物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。上記第1元素は、Mgと同じアルカリ土類金属(周期表の2族)に属するものであって、それよりも僅かに小さい0.9〜1.0程度の電気陰性度を有するので、それらの酸化物の電気陰性度の差はMgOのそれよりも僅かに大きい。そして、その酸化物が保護膜として用いられた場合には、MgO保護膜と同程度の放電開始電圧を有することが知られているが(例えば、EURODISPLAY 2002のp.747−750等参照)、空気中において水分を吸着し易く安定性が著しく低いので、実験室レベルで使用できるに過ぎない。このような吸着水分は、放電表示装置の製造工程において除去することが極めて困難である。しかしながら、本発明者等がその特性を維持しつつ安定性を高めるべく種々実験を重ねたところ、上記第2元素との混合酸化物(複酸化物とも称する)の形態とすれば十分な安定性が得られ、しかも、MgOに比較して高い二次電子放出係数が得られることが判明した。また、上記混合酸化物は1000(℃)以上の高い融点を有しているため、MgOと同等以上の高い耐スパッタリング性も有するのである。
【0015】
なお、上記混合酸化物は、例えば、化学式(Rx,My)Onで表され、例えばRがBaの場合には、BaTiO3、BaZrO3、BaSnO3、BaNb2O6、BaFe12O19等が、Srの場合には、SrTiO3、SrZrO3、SrSnO3、SrFe12O19等が、Caの場合には、CaCrO、CaTiO3、CaZrO3、CaSnO3等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。
【0016】
【課題を解決するための第4の手段】
斯かる目的を達成するため、第4発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素と、硼素との化合物から成ることにある。
【0017】
【第4発明の効果】
このようにすれば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、硼素(B)との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。硼素の電気陰性度は例えば2.0程度であって、酸素に比較して著しく小さい。しかしながら、硼素は共有結合性を有するので、これとアルカリ金属等との化合物は、1個のアルカリ金属等の原子に対して複数個の硼素が結合した形態をとる。そのため、結合している原子のモル数の差を考慮すると、電気陰性度の差がMgOに比較して遙かに大きくなる。したがって、弗素化合物の場合と同様に、電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があることに基づき、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きい硼素化合物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、硼化物は、2000(℃)以上の高い融点を有するので、MgOが用いられる場合よりも遙かに高い耐スパッタリング性を有する。
【0018】
なお、上記硼素化合物は、例えば、化学式MBnで表され、例えばMがアルカリ土類金属の場合にはMgB2、BaB6、CaB6等、遷移金属の場合にはNiB、FeB等、ランタノイドの場合にはLaB6やCeB6、YB6等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。
【0019】
【課題を解決するための第5の手段】
斯かる目的を達成するため、第5発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、リチウムの酸化物、またはリチウムとアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素との混合酸化物から成ることにある。
【0020】
【第5発明の効果】
このようにすれば、リチウム(Li)の酸化物、またはリチウムとアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドとの混合酸化物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて保護膜を形成すると、MgOから成る保護膜に比較して二次電子放出係数が大きい保護膜が得られるため、放電表示装置の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。リチウムは電気陰性度が1.0程度とマグネシウムに比較して小さいため、その酸化物や、更にアルカリ金属等を含む混合酸化物における電気陰性度の差は、MgOの場合に比較して少なくとも0.2以上大きくなる。前述したように電気陰性度の差が大きい分子はエネルギ刺激を受けたときに電子を放出し易い傾向があるので、従来用いられていたMgOに比較して電気陰性度の差が大きいリチウム酸化物或いはリチウムの混合酸化物で保護膜を構成すれば、二次電子放出係数の大きな保護膜が得られるものと考えられるのである。しかも、リチウム系酸化物の融点は一般に1000(℃)以上になることから、耐スパッタリング性もMgOが用いられる場合と同等以上の特性を有する。
【0021】
なお、上記リチウム酸化物は、例えば、Li2O或いはLi2O2であり、混合酸化物は、例えば、LixMyOz或いはLiMO3等で表され、例えばMがアルカリ金属の場合にはNi(Li,K)O等、アルカリ土類金属の場合には(Ba,Li)TiO3等、遷移金属の場合にはNiLiO等、ランタノイドの場合にはLa(Sr,Li)O3等が挙げられるが、その組成は特に限定されない。但し、アルカリ金属であるリチウムの酸化物は、アルカリ土類金属の酸化物よりも不安定な傾向にあるため、混合酸化物として用いることが特に好ましい。
【0022】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記複数対の放電電極は、前記第1平板に平行な一平面内に位置し且つ前記放電面が各対相互に対向させられたものである。このようにすれば、放電空間内で第1平板の面方向に沿って対向放電させられ且つその対向放電に基づいて発生した光が放電電極の相互間を通って第1平板から射出されるので、発生した光の進路を放電電極が妨げない。そのため、放電電圧を一層低くできると共に、保護膜を可視光に対して透明な材料で構成する必要もない。すなわち、前記第1発明乃至第5発明の各材料は、透光性の如何に拘わらず利用可能であり、しかも、透光性を高める目的で高価な設備を用いて膜を緻密に形成する必要もない利点がある。特に、白色等の可視光反射率の高い化合物が用いられる場合には、保護膜における光の反射が輝度向上に寄与する利点もある。本発明の保護膜材料は、このような対向放電構造の放電表示装置に好適に用いられる。なお、本願において「一平面内に位置する」とは、放電電極全体が厚みの無い一平面内に含まれることを意味するものでは無く、一定の厚さ寸法を有する放電電極が一平面上に並んで配置された状態を意味する。
【0023】
また、好適には、前記放電表示装置は、格子状を成す厚膜誘電体層にその格子を構成する一方向に沿って複数本の厚膜導体層が積層されたシート状部材が前記第1平板および前記第2平板間に備えられ、前記複数対の放電電極はそれら複数本の厚膜導体層で構成されたものである。このようにすれば、シート状部材を第1,第2平板間に設けるだけで放電面が対向させられた放電電極を配設できるため、本発明の保護膜材料の適用対象として一層好適である。
【0024】
また、好適には、前記保護膜材料は、前記誘電体層上に厚膜印刷法を用いて保護膜を形成するために用いられるものである。このようにすれば、厚膜印刷法で形成される保護膜は、薄膜法で形成されるものに比較して保護膜材料粒子が粗大になり且つ粒子相互間にガラスが介在させられることから、保護膜材料の連続性が低下させられるため、保護膜上での電荷の移動が構造的に抑制される。そのため、保護膜材料が導電性を有していても壁電荷の蓄積機能を確保できるため、材料選択の自由度が一層高められる利点がある。しかも、このような厚膜は薄膜に比較して表面の凹凸が大きくなることから、電荷を蓄積する壁面の表面積が拡大されるので、一層多量の壁電荷を蓄えて一層放電電圧および消費電力を低下させ得る利点がある。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の厚膜シートが用いられたAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、対角20インチ(400×300(mm))程度の表示領域寸法を備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより大画面を構成する所謂タイル型表示装置の素子として用いられる。このPDP10には、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板(第1平板)16および背面板(第2平板)18が備えられている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20(厚膜シート電極)を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも450×350(mm)程度の大きさと1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法とを備えると共に透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものである。本実施例においては、上記の前面板16が第1平板に、背面板18が第2平板にそれぞれ相当する。
【0027】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0028】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0029】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0030】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成り、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0031】
図2は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に積層された導体層44と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。
【0032】
上記の上側誘電体層38および下側誘電体層40は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、それらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。これら誘電体層38,40は、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系、例えばAl2O3−SiO2−PbO等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。本実施例においては、これら誘電体層38等が格子状誘電体層に相当する。また、これらの格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22に沿った方向においては、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。また、隔壁22に直交する方向においては、それよりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば150(μm)程度の幅寸法を備え、200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の大きさは、例えば700×350(μm)程度である。
【0033】
また、上記の導体層44は、例えばアルミニウム(Al)等を導電成分として含む例えば30(%)程度の気孔率を有する比較的多孔質な厚膜導体であって、例えば10〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。この導体層44は、誘電体層38,40の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。帯状厚膜導体52は、後述するように、PDP10の表示放電を発生させるための放電電極として機能させられるものであって、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の中心間隔に等しい例えば500(μm)程度の中心間隔を以て、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。また、帯状厚膜導体52すなわち放電電極は、前面板16と平行な一平面内に位置する。
【0034】
また、図2において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0035】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0036】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0037】
また、前記の保護膜50は、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を備えた厚膜誘電体から成るものである。この保護膜50は、放電ガス・イオンによる誘電体皮膜48のスパッタリングを防止するためのものであるが、後述するように高い二次電子放出係数を有する誘電体材料で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0038】
図4(a)は、上記の保護膜50の構成を説明するための断面を模式的に示す図である。図において、保護膜50は、多数の誘電体粒子42がよく知られた低軟化点ガラス、例えば軟化点が500(℃)程度の鉛ガラス等のから成る無機結合剤46で結合させられることによって膜状に構成されている。上記の誘電体粒子42は、弗化物、ランタノイド系ペロフスカイト、Ba,Sr,Ca系混合酸化物、硼化物、或いはLi酸化物等で構成され、或いはこれらを主成分とするものである。例えば、弗化物としては、平均粒径が1(μm)程度のMgF2等が挙げられる。図に示されるように、誘電体粒子42の相互間には無機結合剤46が存在しており、粒子相互の連続性が阻害されている。また、保護膜50の表面は、構成する誘電体粒子42が比較的粗大であることに起因して、図4(b)に示されるような微細な誘電体粒子108が緻密に並ぶ蒸着膜等により形成された従来の薄膜に比較すると、誘電体粒子42の結合が緩やかで著しく凹凸の大きな粗い面となっている。
【0039】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、図3に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。
【0040】
上記のようにして走査電極として機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図3に他の矢印で示すように放電面56,56間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。なお、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、上記維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面56の全面に広がることとなる。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、図3は、PDP10の前記の隔壁22の長手方向に沿った断面すなわち帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な断面を示す図である。
【0041】
このとき、本実施例においては、前述したように保護膜50が高い二次電子放出係数を有することから、上記のように放電が発生させられると共に電荷が蓄積される際には、比較的低電圧で放電させ得ると共に、壁電荷の形成および維持が容易であるため、放電効率が一層高められ、消費電力も低くなる。後述するように、弗化物等から成る本実施例の保護膜50は、MgO膜よりも一層高い二次電子放出係数を有するので、そのMgO膜が用いられていた従来のPDPに比較して、駆動ドライバに要求される耐圧が低くなると共に、低消費電力のPDP10が得られる利点がある。
【0042】
また、維持放電は帯状厚膜導体52,52間で発生させられるが、放電空間24は隔壁22の長手方向に沿って連続しているため、その放電により発生させられた紫外線はその方向において帯状厚膜導体52,52の外側に広がる。そのため、その外側に位置する蛍光体層32,36もその紫外線が及ぶ範囲では発光させられることとなる。PDP10における発光単位(セル)の区切りは、隔壁22に垂直な方向すなわち図における左右方向ではその隔壁22によって区切られ、隔壁22の長手方向すなわち図における上下方向では実質的にはこの紫外線の及ぶ範囲によって画定される。
【0043】
但し、本実施例においては、隔壁22の長手方向における発光区画の区切りすなわちセル・ピッチは例えば100(μm)〜3.0(mm)の範囲内、例えば3.0(mm)程度であり、前記シート部材20の格子の中心間隔の6倍に相当する。すなわち、本実施例においては1セル内にシート部材20の格子の開口が6つ設けられており、それら6つの開口に面する3対の放電面56間で維持放電させることとなる。なお、前述したように隔壁22の中心間隔は1.0(mm)程度であり、RGB3色で1画素(ピクセル)が構成されるので、画素ピッチは格子の2方向の何れにおいても3.0(mm)程度、1画素の大きさは3.0×3.0(mm)程度となる。
【0044】
なお、上記のようにして放電空間22内において蛍光体層32から発生させられた光は、図1に示されるPDP10の構成から明らかなように、格子状を成したシート部材20の開口部を経由して前面板16から射出される。そのため、蛍光体層32から発生した光のうち一部はシート部材20で遮られ、表示に寄与し得ないが、大部分の光はシート部材20にその進路を妨げられることなく前面板16を通過して射出されるので、可視光に対して不透明な材料から成るシート部材20による遮光は実質的に問題とはならない。また、格子構成部分のうち隔壁22に垂直な方向に沿って伸びる部分は、例えば150(μm)程度の細幅寸法で設けられており、且つ隔壁34によって前面板16から離隔させられているので、これによる遮光も殆ど問題とならない。しかも、本実施例においては、前述したように格子の開口部内に突き出した突出部54が放電空間22の長手方向において、その幅方向の一端側および他端側に交互に設けられているため、突出部54の遮光による視覚上の影響が緩和されるので、突出部54が存在することに起因する表示品質の低下も実質的に解消されている。なお、放電開始電圧を低下させるための突出部54は、その存在に起因する遮光が許容される範囲で可及的に放電開始電圧を低くできるようにその大きさが定められる。
【0045】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0046】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0047】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0048】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0049】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0050】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(j)を参照して説明する。
【0051】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0052】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のシリカ、アルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば700(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程(すなわち支持体を用意する工程)に対応する。
【0053】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38,40を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44を形成するための厚膜導体ペースト98(図7(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38,40を形成するための誘電体印刷層100,104、導体層44を形成するための導体印刷層102が、その積層順序に従って形成される。
【0054】
上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図7(c)〜(e)は、それぞれ、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104がそれぞれ形成された段階を示している。なお、誘電体印刷層100,104は、例えばそれぞれ70(μm)程度の厚さ寸法に形成され、導体印刷層102は、例えば35(μm)程度の厚さ寸法に形成される。一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0055】
なお、上記のアルミニウム粉末は、例えば平均粒径が10(μm)程度で、1〜15(μm)程度の範囲に粒径が分布するものであって、個々の粒子は例えば球形状を備えている。このようなアルミニウム粉末が上記のような低軟化点ガラスと混合された厚膜アルミニウム・ペーストは、焼成収縮し難く、例えば90(%)程度の高い残存率を有している。そのため、前記の30(μm)程度の膜厚が得られるように、印刷厚みが35(μm)程度に設定されているのである。これに対して、前記の厚膜誘電体ペースト96は例えば70(%)程度の焼成残存率を有することから、前記の50(μm)程度の膜厚が得られるように、誘電体印刷層100,104は、70(μm)程度の厚さ寸法に形成される。したがって、本実施例においては、相対的に収縮率の小さい導体印刷層102が、相対的に収縮率の大きい誘電体印刷層100,104の間(層間)に形成されている。
【0056】
上記のようにして厚膜印刷層100〜104を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0057】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜104は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38,40および導体層44すなわちシート部材20の基本構成要素が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、アルミニウム粉末を導体成分として含む厚膜導体ペースト98は、上述したように残存率が大きいことから面方向においても収縮量が極めて小さいので、基板80上に固定されていることと相俟って、格子状の誘電体層38,40および縞状の導体層44のそれぞれの中心間隔延いてはトータルピッチは、厚膜印刷層100〜104のそれから殆ど変化しない。なお、生成された厚膜の断面を観察したところ、アルミニウム粉末は殆ど溶けておらず、多孔質な組織が形成されていることが確かめられた。
【0058】
しかも、本実施例においては、前記の剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図9参照)のみから成る粒子層116となる。
【0059】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜104が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜104の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0060】
なお、本実施例においては、基板80の熱膨張係数は誘電体材料と略同じであり、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するまで、すなわち、樹脂成分は焼失させられたがガラスフリット、誘電体材料粉末や導体粉末の結合力が未だ小さい温度範囲ではこれらの熱膨張量に殆ど差はない。一方、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0061】
図6に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40および導体層44の積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0062】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図8(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0063】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト124に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。図8(i)は、焼成後の段階を示している。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0064】
このため、本実施例においては、厚膜積層体が基板80から剥離された後、焼成処理が2回繰り返されることとなる。しかしながら、この焼成処理の際にも、格子状の誘電体層38,40および縞状の導体層44のそれぞれ中心間隔延いてはトータルピッチは、厚膜印刷層100〜104のそれから殆ど変化しない。すなわち、焼成処理に伴う収縮は殆ど見られなかった。
【0065】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に、例えば前記誘電体粒子42を含む保護膜材料ペーストを用いたディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。図8(j)は、この段階を示している。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されないのである。また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。このようなことから、前述したような粗大粒子が疎に結合させられた厚膜で保護膜50が構成されていても差し支え無いのであり、この結果、シート部材20内に電極が備えられたPDP10の構造によれば、保護膜50の製造コスト延いてはPDPの製造コストが低くなる利点がある。。
【0066】
ところで、ディッピング処理が適用される場合に用いられる保護膜材料ペーストは、例えば、以下のようにして調製される。すなわち、先ず、例えば前記誘電体粒子42の原料となる粗大粒子を、原料を混合して例えばアルミナ坩堝に入れ、必要に応じてO2、F2ガス等を供給しつつ、材料毎に定められる例えば1300〜1500(℃)程度の範囲内の温度で焼成処理を施して合成することによって製造し、例えばボールミル等の粉砕装置を用いて所望の大きさ、例えば1(μm)程度の平均粒径に粉砕する。また、前記無機結合剤46を構成するための鉛ガラス等を同様にして1(μm)程度の平均粒径に粉砕する。そして、これら誘電体粉末およびガラス粉末を例えば70:30程度の割合で混合し、例えばターピネオール等の有機溶剤およびエチルセルロース等の樹脂結合剤と混合してペースト化することにより、上述したような保護膜50を形成するためのペーストが得られる。
【0067】
上記のようにして弗化物等から成る保護膜50を形成したPDP10の特性を、MgOから成る従来の保護膜を備えたPDPと比較した結果を下記の表1に示す。なお、何れも膜厚は1(μm)程度とした。また、MgOの場合の放電維持電圧は160(V)程度であった。
【0068】
【0069】
上記の表1に示されるように、弗化物で保護膜50を構成した本実施例のPDP10によれば、その保護膜50の二次電子放出係数がMgO膜のそれに比較して大きいことから放電開始電圧も低くなるので、放電電極52a,52bおよび書込電極28の駆動ドライバに要求される耐圧が低くなるので、絶縁破壊等の不具合が発生し難く、且つ、ドライバ・コストも抑えることができる利点がある。また、二次電子放出係数が大きいので放電効率が高められた結果として、消費電力が低下し、冷却構造も簡便になり或いは無用になる利点がある。
【0070】
なお、上記の表1のうち、CeF3、LaF3は可視光に対して不透明な材料であるが、前述したように本実施例のPDP10では保護膜50に透光性は要求されないので、不透明であることは何ら問題にならない。
【0071】
また、MgO膜を備えた比較例のPDPは、以下のようにして製造した。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(2)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。次いで、(3)そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(4)次いで、例えば三菱マテリアル(株)製MgOを真空蒸着装置の蒸発源としてセットし、上記の無機シートを装置内にセットして、例えば成膜速度10(Å/sec)にて厚さ5000(Å)で成膜する。(5)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0072】
また、上記表1に示す弗化物は、例えば、目的の組成となる割合で用意した原料を混合し、焼結させることにより合成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、MgF2の場合には、Mg(OH)2を出発原料としてF2ガス中において1300(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。なお、上記の表1は、このようにして製造した弗化物を用いて、上記のMgO膜の場合と同様な評価用PDPを製造して評価した結果である。なお、弗化物の成膜方法は、厚膜プロセスであっても、MgO膜と同様な薄膜プロセスであっても良い。
【0073】
要するに、本実施例によれば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドと、弗素との化合物で保護膜材料が構成されることから、これを用いて形成された保護膜50は、電気陰性度の差が大きいことに基づき、MgO膜に比較して二次電子放出係数が大きくなるため、PDP10の放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができるのである。しかも、本実施例の保護膜材料は、1000(℃)以上の融点を有するため、MgOが用いられる場合と同等以上の耐スパッタリング性も有する。
【0074】
また、下記の表2は、弗化物に代えてランタノイド系ペロフスカイトを用いた場合のPDP10の特性等を弗化物の場合と同様に評価したものである。各項目の意味するところは前記の表1と同一である。表に示されるように、ランタノイド系ペロフスカイトで保護膜50を構成した場合にも、その二次電子放出係数がMgO膜のそれに比較して大きいことから放電開始電圧も低くなるので、駆動ドライバに要求される耐圧が低くなると共にドライバ・コストが抑えられ、また、消費電力が低下し、冷却構造も簡便になる等の弗化物と同様な利点がある。すなわち、ランタノイドの電気陰性度はMgのそれと同程度であるが、ペロフスカイト化合物においては結晶中の酸素数が多いことから、電気陰性度の差がMgOよりも遙かに大きくなるため、二次電子放出係数が大きくなるのである。なお、下記の各材料において、放電維持電圧は例えば155(V)程度であった。
【0075】
【0076】
なお、本実施例に用いたLa系ペロフスカイトは、例えば、所定の出発原料を組成毎に定められる温度で焼結させることによりペロフスカイト構造を生成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、La(Ni,Sr)O3の場合には、LaNiSrOを出発原料として1300(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。
【0077】
また、例えば、La(Sr,Co)O3の場合の評価用パネル(PDP)の製造方法は、例えば以下の通りである。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径1(μm)程度のLa2O3、平均粒径7(μm)程度のSrCO3、および平均粒径2(μm)程度のCoOを1:1:1程度のmol比(重量比では325.84:147.64:74.94程度)で秤量し、例えばアルミナ製ボールミル(容量3.5リットル)を用いて混合を1時間程度行う。なお、上記原料は、例えば何れも(株)高純度化学研究所製である。(2)次いで、ボールミル容器から取り出された混合粉末をアルミナ製坩堝に移し、最高温度1350〜1450(℃)に設定した釜の中に坩堝ごと配置し、室温より最高温度まで10(℃/min)程度の速度で昇温し最高温度で2時間程度保持した後、10(℃/min)以下の平均速度で室温まで冷却する。(3)次いで、坩堝内の焼結体を焼結アルミナ製乳鉢に移して粉砕した後、アルミナ製坩堝内に移し、粉砕された焼結体に対し、イソプロピルアルコール(IPA)とφ5(mm)程度のアルミナ製玉石を例えば10:10:100の重量比となるように加え、ポット回転架台上で100rpmにて50時間程度回転させることにより、焼結体を更に粉砕する。(4)次いで、アルミナポットより玉石と分離し取り出した溶液を例えば還流式オーブンにて80(℃)程度の温度で3時間程度乾燥し、IPAを蒸発させる。これらの粉砕処理および乾燥処理は、未焼結原料を十分に除去するために例えば2回繰り返される。このようにして保護膜50を構成するための原料粉末が得られる。(5)次いで、例えばテルピネオールとエチルセルロースを95:5の重量比で混合し、例えば70(℃)程度に加熱されエチルセルロースが溶解されたビヒクルと上記の合成した原料粉末を例えば20:80程度の重量比で混合し、3本ロール・ミルにて混合しLa(Sr,Co)O3ペーストを得る。
【0078】
(6)次いで、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(7)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。(8)次いで、そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(9)次いで、上記の無機シートの誘電体上に前記のようにして調製したLa(Sr,Co)O3ペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷にて塗布し、最高温度500(℃)にて焼成を行うことにより、例えば厚み1(μm)程度のLa(Sr,Co)O3から成る保護膜50が得られる。(10)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0079】
また、下記の表3は、Ba,Sr,Ca系混合酸化物で保護膜50を構成した場合の評価結果を示したものである。評価方法や評価項目は弗化物の場合と同様である。表に示されるように、このような混合酸化物を用いた場合にも、Ba,Sr,Caの酸化物がMgOと同等以上の二次電子放出係数を有し、しかも、アルカリ金属等が混合されることによって混合酸化物とされることで二次電子放出係数が一層増大させられ且つ化合物の化学的安定性も高められるため、弗化物の場合と同様に、放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。なお、Baは電気陰性度が0.9程度、SrおよびCaは1.0程度と小さいため、それらの酸化物(BaO、SrO、CaO)は何れもMgOよりも高い二次電子放出係数を有する。しかしながら、これらの酸化物は吸湿性が高いので空気中において水を吸着し易く、PDP10の使用中の放電で出てくるため雰囲気を乱す欠点がある。これに対して、下記のような混合酸化物の形態を採れば、MgOよりも高い二次電子放出係数を維持しつつ、高い安定性を得ることができるのである。なお、BaTiO3およびSrTiO3で保護膜50を構成した場合の放電維持電圧は、例えば155(V)程度であり、CaTiO3で保護膜50を構成した場合の放電維持電圧は、例えば150(V)程度であった。
【0080】
【0081】
なお、上記表に記載したような混合酸化物は、例えば、固相反応法や液相反応法等を用いてBa、Sr、或いはCaを含む適宜の出発原料を製造した後、これに遷移金属等の混合しようとする元素の酸化物を混合して焼結させることによって合成され、これをボールミル等を用いて所望の平均粒径、例えば1(μm)程度に粉砕して用いられる。例えば、(Ba,Ni)Oを製造しようとする場合には、炭酸バリウム(BaCO3)と酸化ニッケル(NiO)等とを原料として用いればよい。
【0082】
また、例えば、BaTiO3の場合の評価用パネル(PDP)の製造方法は、例えば以下の通りである。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径1(μm)程度のBaCO3および平均粒径1(μm)程度のTiO2を1:1程度のmol比(重量比では192.35:79.9程度)で秤量し、例えばアルミナ製ボールミル(容量3.5リットル)を用いて混合を1時間程度行う。なお、上記原料は、例えば何れも(株)高純度化学研究所製である。(2)次いで、ボールミル容器から取り出された混合粉末をアルミナ製坩堝に移し、最高温度1350〜1450(℃)に設定した釜の中に坩堝ごと配置し、室温より最高温度まで10(℃/min)程度の速度で昇温し最高温度で2時間程度保持した後、10(℃/min)以下の平均速度で室温まで冷却する。(3)次いで、坩堝内の焼結体を焼結アルミナ製乳鉢に移して粉砕した後、アルミナ製坩堝内に移し、粉砕された焼結体に対し、イソプロピルアルコール(IPA)とφ5(mm)程度のアルミナ製玉石を例えば10:10:100の重量比となるように加え、ポット回転架台上で100rpmにて50時間程度回転させることにより、焼結体を更に粉砕する。(4)次いで、アルミナポットより玉石と分離し取り出した溶液を例えば還流式オーブンにて80(℃)程度の温度で3時間程度乾燥し、IPAを蒸発させる。これらの粉砕処理および乾燥処理は、未焼結原料を十分に除去するために例えば2回繰り返される。このようにして保護膜50を構成するための原料粉末が得られる。(5)次いで、例えばテルピネオールとエチルセルロースを95:5の重量比で混合し、例えば70(℃)程度に加熱されエチルセルロースが溶解されたビヒクルと上記の合成した原料粉末を例えば20:80程度の重量比で混合し、3本ロール・ミルにて混合しBaTiO3ペーストを得る。
【0083】
(6)次いで、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(7)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。(8)次いで、そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(9)次いで、上記の無機シートの誘電体上に前記のようにして調製したBaTiO3ペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷にて塗布し、最高温度500(℃)にて焼成を行うことにより、例えば厚み1(μm)程度のBaTiO3から成る保護膜50が得られる。(10)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0084】
また、SrTiO3、CaTiO3で保護膜50を構成する場合には、上記のBaTiO3の場合の製造方法において、出発原料としてBaCO3に代えてそれぞれSrCO3或いはCaCO3を用いればよい。この場合、TiO2との混合割合はmol比では同様に1:1であるが、重量比ではそれぞれ147.84:79.9、100.09:79.9程度になる。また、他の工程はBaCO3と同様である。
【0085】
また、下記の表4は、硼化物で保護膜50を構成した場合の評価結果を示したものである。評価方法や評価項目は弗化物の場合と同様である。表に示されるように、硼化物を用いた場合にも、MgOよりも高い二次電子放出係数を有するため、弗化物の場合と同様に、放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。なお、硼素は電気陰性度が2.0程度であるが、表4において化合物を構成しているアルカリ金属の電気陰性度が0.7〜1.0程度、アルカリ土類金属が0.9〜1.5程度、遷移金属が1.3〜2.4程度、およびランタノイド1.1程度であることから、硼素との電気陰性度の差は、大きいものでも1.3程度に過ぎない。しかしながら、硼素は共有結合性を有するので、これとアルカリ金属等との化合物は、1個のアルカリ金属等の原子に対して複数個の硼素が結合した形態をとる。そのため、結合している原子のモル数の差を考慮すると、電気陰性度の差がMgOに比較して遙かに大きくなる。したがって、弗化物の場合と同様に、MgO膜に比較して二次電子放出係数の大きな保護膜50が得られる。
【0086】
【0087】
なお、上記のような硼化物は、例えば、目的の組成となる割合で用意した原料を混合し、焼結させることにより合成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、LaB6の場合には、La、Bを出発原料として1500(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。
【0088】
また、上記表4に記載された化合物のうち、LaB6、NiB等は導電性を有しているが、本実施例のようにディッピング或いは厚膜印刷法で構成される保護膜50は、前記の図4(a)に示されるように多孔質の膜組織を有するため、構造的に低い導電性を有する。したがって、構成材料が僅かな導電性を有することは何ら問題にならない。なお、保護膜50のうち異なる電極上に設けられているものが蛍光体層32,36を介して相互に短絡するような場合には、シート部材20に保護膜50を形成するに際して、無用な部分には形成されないようにマスキング処理を施せばよい。このマスキング処理は、例えば、加熱により除去可能な材料、例えばエチルセルロースやアクリル等の樹脂を溶剤に溶かしてペースト化して、例えばスクリーン印刷等で予めパターン形成し、その上から全面に材料を塗布した後、加熱することで行われる。
【0089】
また、下記の表5は、Li酸化物またはLi混合酸化物で保護膜50を構成した場合の評価結果を示したものである。評価方法や評価項目は弗化物の場合と同様である。表に示されるように、Li酸化物を用いた場合にも、Liが1.0程度とMgよりも小さい電気陰性度を有すること等に基づいて、MgOよりも高い二次電子放出係数を有するため、弗化物の場合と同様に、放電電圧や消費電力を従来に比較して低くすることができる。なお、NiLiOで保護膜50を構成した場合の放電維持電圧は、155(V)程度であった。
【0090】
【0091】
なお、上記のようなLi酸化物やLi混合酸化物は、例えば、目的の組成となる割合で用意した原料を混合し、焼結させることにより合成した後、これをボールミル等を用いて適当な粒径に粉砕することで原料を製造したものである。例えば、NiLiOの場合には、NiO、Li2Oを出発原料として1300(℃)程度の温度で焼結させ、1(μm)程度の平均粒径に粉砕して製造される。
【0092】
具体的には、下記のような工程を経て評価用PDPが製造される。すなわち、(1)先ず、例えば平均粒径1(μm)程度のLi2Oおよび平均粒径7(μm)程度のNiOを1:1程度のmol比(重量比では29.88:74.71程度)で秤量し、例えばアルミナ製ボールミル(容量3.5リットル)を用いて混合を1時間程度行う。なお、上記原料は、例えば何れも(株)高純度化学研究所製である。(2)次いで、ボールミル容器から取り出された混合粉末をアルミナ製坩堝に移し、最高温度1350〜1450(℃)に設定した釜の中に坩堝ごと配置し、室温より最高温度まで10(℃/min)程度の速度で昇温し最高温度で2時間程度保持した後、10(℃/min)以下の平均速度で室温まで冷却する。(3)次いで、坩堝内の焼結体を焼結アルミナ製乳鉢に移して粉砕した後、アルミナ製坩堝内に移し、粉砕された焼結体に対し、イソプロピルアルコール(IPA)とφ5(mm)程度のアルミナ製玉石を例えば10:10:100の重量比となるように加え、ポット回転架台上で100rpmにて50時間程度回転させることにより、焼結体を更に粉砕する。(4)次いで、アルミナポットより玉石と分離し取り出した溶液を例えば還流式オーブンにて80(℃)程度の温度で3時間程度乾燥し、IPAを蒸発させる。これらの粉砕処理および乾燥処理は、未焼結原料を十分に除去するために例えば2回繰り返される。このようにして保護膜50を構成するための原料粉末が得られる。(5)次いで、例えばテルピネオールとエチルセルロースを95:5の重量比で混合し、例えば70(℃)程度に加熱されエチルセルロースが溶解されたビヒクルと上記の合成した原料粉末を例えば20:80程度の重量比で混合し、3本ロール・ミルにて混合しNiLiOペーストを得る。
【0093】
(6)次いで、例えば平均粒径3(μm)程度のSiO2と、重合度10程度のエチルセルロースおよびプチルカルビトールアセテートを1:4程度の割合で混合したビヒクルとを、1:1程度の重量比で混合してペーストを調製し、このペーストを乾燥後の厚みで約3(μm)程度になるようにガラス基板上に塗布する。(7)次いで、そのペースト膜上にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子形状に印刷した後、導体ペースト(例えばAlペースト)を格子状ペースト膜上にライン形状で形成し、更にSiO2・Al2O3・B2O3系ガラスペーストを格子状に印刷形成した後、最高温度580(℃)にて焼成を行い、Al電極を内蔵したシート状厚膜(すなわち、シート部材20と同様な厚膜)を得る。(8)次いで、そのシートをSiO2・Al2O3・B2O3系ガラス粉末とビヒクル、溶剤を混合した溶液中に浸漬してこれを塗布し、取り出して120(℃)で30分乾燥後、最高温度550(℃)にて焼成を行い、厚さ30(μm)程度の誘電体電極付無機シートを得る。(9)次いで、上記の無機シートの誘電体上に前記のようにして調製したNiLiOペーストを、例えば厚膜スクリーン印刷にて塗布し、最高温度500(℃)にて焼成を行うことにより、例えば厚み1(μm)程度のNiLiOから成る保護膜50が得られる。(10)次いで、この無機シートをガラス基板にて挟み込み、外周をPbO・SiO2系のフリットガラスを用いて電極等の形成が行われていないガラス基板と封止を行い、内部を真空排気を行った後Ne−Xe10(%)の混合希ガスを53.3(kPa)[=400(Torr)]程度の圧力で封入した後、気密に封止することにより評価用のPDPが得られる。
【0094】
また、アルカリ金属であるLiの酸化物は化学的安定性が比較的低い傾向にあるが、例えば、NiLiOやLiMO3(Mはペロフスカイト構造を構成し得る適宜の元素)等の混合酸化物の形態で用いた場合には、高い二次電子放出係数を維持しつつ、安定性も確保し得る。
【0095】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0096】
例えば、実施例においては、対向放電構造のAC型PDP10の保護膜50を構成するための保護膜材料に本発明が適用された場合について説明したが、可視光に対する十分な透光性を有する材料については、従来の面放電構造のPDPの保護膜材料にも本発明は適用され得る。
【0097】
また、実施例においては、厚膜誘電体層38,40で厚膜導体層44が挟まれたシート部材20を前面板16および背面板18間に配置することにより、その導体層44で放電電極が構成される形式のPDP10の保護膜50の構成材料に本発明が適用されていたが、本発明は、光の射出経路に放電電極が存在しない対向放電構造のPDPであれば好適に適用される。例えば、隔壁22の高さ方向の中間位置に導体層を積層することによって放電電極を構成する構造であっても差し支えない。
【0098】
また、実施例においては、保護膜50が専ら厚膜プロセスで設けられる場合について説明したが、本発明の保護膜材料を用いる効果は、製造プロセスの如何に拘わらず享受できるので、例えば、蒸着やスパッタ等の薄膜プロセスが用いられてもよい。
【0099】
また、PDP10の各部の形状や寸法、構成材料等の構成は、実施例で示したものに限られず、所望とする表示品質や表示パネルの大きさ等に応じて適宜変更され、何れの場合にも本発明の保護膜材料を用い得る。
【0100】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の保護膜材料で形成された保護膜を備えたカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図3】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造を説明する図である。
【図4】(a)は、図2のシート部材表面に設けられた保護膜の構成を模式的に示す断面図であり、(b)は、従来のMgO蒸着膜の構成を模式的に示す図である。
【図5】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】(f)〜(j)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
20:シート部材
50:保護膜
Claims (7)
- 透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、
アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素と、弗素との化合物から成ることを特徴とする放電表示装置の保護膜材料。 - 透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、
化学式RMO3(但し、Rはランタノイドの少なくとも一種の元素、Mは遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属のうちから選ばれた少なくとも一種の元素)で表されるペロフスカイト構造の酸化物から成ることを特徴とする放電表示装置の保護膜材料。 - 透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、
バリウム、ストロンチウム、カルシウムうちから選ばれた少なくとも一種の第1の元素と、ランタノイド、遷移金属、およびアルカリ金属から選ばれた少なくとも一種の第2の元素とを含む混合酸化物から成ることを特徴とする放電表示装置の保護膜材料。 - 透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、
アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素と、硼素との化合物から成ることを特徴とする放電表示装置の保護膜材料。 - 透光性を有する第1平板およびその第1平板に平行に配置された第2平板間に各々が複数の発光区画に区分された複数の放電空間と誘電体層で覆われた複数対の放電電極とを備え、それら複数対の放電電極間で放電させることにより所望の発光区画内で発生させられた光を前記第1平板から射出する形式の放電表示装置において、前記誘電体層を覆う保護膜を構成するための保護膜材料であって、
リチウムの酸化物、またはリチウムとアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、およびランタノイドのうちから選ばれた少なくとも1種の元素との混合酸化物から成ることを特徴とする放電表示装置の保護膜材料。 - 前記複数対の放電電極は、前記第1平板に平行な一平面内に位置し且つ前記放電面が各対相互に対向させられたものである請求項1乃至請求項5の何れかの放電表示装置の保護膜材料。
- 格子状を成す厚膜誘電体層にその格子を構成する一方向に沿って複数本の厚膜導体層が積層されたシート状部材が前記第1平板および前記第2平板間に備えられ、前記複数対の放電電極はそれら複数本の厚膜導体層で構成されたものである請求項1乃至請求項5の何れかの放電表示装置の保護膜材料。
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