JP2004296145A - Ac型ガス放電表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低電圧で大きな発光面積を確保できる3電極構造のAC型ガス放電表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】発光区画毎に複数箇所で放電させられるように複数対の放電面がそれぞれ備えられることから、隔壁22の長手方向における発光区画の中心間隔Pvが大きくされる場合にも、各発光区画内の一箇所だけで放電するように構成されていた従来に比較して駆動電圧を高くすることなく発光面積を大きくできる。しかも、各発光区画内における放電面55の相互間隔は、第1小区画42が他の第2小区画46よりも小さくされることによって不均等にされていることから、第1小区画42では低電圧で放電が開始させられ、この放電により発生させられた荷電粒子のプライミング効果で第2小区画46で放電が引き起こされるため、低電圧で駆動可能としつつ発光面積を大きくすることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】発光区画毎に複数箇所で放電させられるように複数対の放電面がそれぞれ備えられることから、隔壁22の長手方向における発光区画の中心間隔Pvが大きくされる場合にも、各発光区画内の一箇所だけで放電するように構成されていた従来に比較して駆動電圧を高くすることなく発光面積を大きくできる。しかも、各発光区画内における放電面55の相互間隔は、第1小区画42が他の第2小区画46よりも小さくされることによって不均等にされていることから、第1小区画42では低電圧で放電が開始させられ、この放電により発生させられた荷電粒子のプライミング効果で第2小区画46で放電が引き起こされるため、低電圧で駆動可能としつつ発光面積を大きくすることができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、AC(交流放電)型ガス放電表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
透光性を有する第1平板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に一方向に沿って形成され且つ各々が複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のAC型ガス放電表示装置が知られている。
【0003】
このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている。上記AC型ガス放電表示装置の形式の一つに、上記の維持電極を相互に平行な複数対で構成すると共に、その維持電極との間で書込放電を発生させることにより発光区画を選択するための書込電極を備えた3電極構造のものがある(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
なお、「一方向に沿った放電空間」は、例えば真っ直ぐな隔壁で気密空間を区画することで形成されるが、本願においては、その隔壁が幅方向の両側に交互に屈曲しながら一方向に向かって延びることにより、相互に隣接する発光区画、例えばRGB三色がそれぞれ割り当てられた3区画が所謂デルタ配列となるようなものも含まれる。
【0005】
【非特許文献1】
谷 千束著「ディスプレイ先端技術」初版第1刷、共立出版、1998年12月28日、p.78−88
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような3電極構造の表示装置では、例えば光の射出側となる前面板に維持電極が設けられ、背面板側に書込電極が設けられることから、可及的に光を透過させる必要がある前面板は、維持電極がITO(酸化インジウム錫)膜等から成る透明電極およびその導電性を補うための金属または厚膜導体から成るバス電極で構成される。そのため、前面板の製造工程では、ガラス基板上に(a)ITO膜と基板との密着性を確保するためのSiO2膜、(b)ITO膜、(c)バス電極、(d)ブラック・ストライプ、(e)誘電体層、(f)MgO膜等から成る保護膜が順次形成されていた。上記のITO膜は、例えばスパッタ等で設けられた後、レジスト塗布・露光・現像・エッチング処理・レジスト剥離を行うフォト法でパターン形成される。また、バス電極は、Cr−Cu−Cr等の薄膜で構成される場合にはITO膜の場合と同様な方法で、厚膜銀等の厚膜導体で構成される場合には厚膜スクリーン印刷法等の厚膜プロセスで形成される。また、誘電体層およびMgO膜も、高い透光性を有するように高い品質が要求される。すなわち、従来の3電極構造では、前面板側に透光性が要求されることに起因して、その内面に形成される導体膜や誘電体膜等の製造工程が複雑になっていた。
【0007】
しかも、上記の製造工程のうち誘電体層や厚膜導体で構成される場合のバス電極を形成する際には、それらの焼成のために基板に加熱処理が施される。そのため、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して、前面板に歪みが生じると共に厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題もあった。
【0008】
更に、上記のような構造では、選択された発光区画内のうち発光させられるのは、プラズマや紫外線の及ぶ範囲すなわち対を成す維持電極よりも僅かに外側までの範囲に留まる。そのため、大型表示装置を構成する場合に、発光区画の各々における発光面積をその発光区画の大きさに応じて大きくしようとする場合には、維持電極の相互間隔を大きくし、或いはその面積を大きくする必要が生じる。しかしながら、対を成す維持電極の相互間隔は、放電開始電圧を駆動ドライバに要求される耐電圧が過大とならない適正な値とするためにガス圧との関係で発光区画の大きさに拘わらず略一定の値に保つ必要がある。一方、放電効率は対を成す他方の電極からの距離(すなわち放電距離)が増大するほど低下する。したがって、発光区画の大きさに合わせて電極間隔を大きくすると放電開始電圧が高くなり、反対に放電開始電圧を適正に保ちつつ発光区画を大きくすると、維持電極の面積が大きくなることに起因して電極全体としての放電効率が低下するため、放電装置としての効率が著しく低下する問題もあった。しかも、放電距離が長くなると、放電によって電極間に形成される陽光柱が長くなるため、発光区画のうちその陽光柱が形成された部分の輝度が相対的に高くなって、輝度斑が生じる不都合もあった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等を抑制でき且つ駆動効率を低下させることなく低電圧で発光区画毎に大きな発光面積を確保できる3電極構造のAC型ガス放電表示装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々が複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々でガス放電を発生させるためにその一方向に交叉する他方向に沿って形成された複数本の維持電極と、それら維持電極との間でガス放電を発生させることにより前記発光区画を選択するために前記一方向に沿って形成された複数本の書込電極とを備え、前記複数本の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1平板を通して射出する形式のAC型ガス放電表示装置であって、(a)格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、(b)前記一方向に交叉する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層に積層されると共に相互に隣接するものとの間で放電可能な複数の放電面をそれぞれ有し且つ前記複数の発光区画の各々のその一方向における複数箇所に少なくとも一の放電面間隔が他の放電面間隔よりも小さくされた複数対の放電面が位置させられることにより前記複数本の維持電極として機能させられる複数本の帯状厚膜導体を備えた導体層と、(c)前記導体層を覆う厚膜誘電体から成る誘電体皮膜とを備えて、前記第1平板および前記第2平板の間にそれらに平行に配置された格子状のシート部材を含むことにある。
【0011】
【発明の効果】
このようにすれば、第1平板および第2平板間に、格子状を成すコア誘電体層に導体層が層状に設けられたシート部材が配置されるが、その導体層内には、複数の発光区画の各々において放電空間の長手方向に沿った複数箇所で放電させられる複数対の放電面を設けるための複数本の帯状厚膜導体が備えられ、それら複数本の帯状厚膜導体で複数本の維持電極が構成される。そのため、シート部材を第1平板および第2平板の間に配置するだけで複数本の維持電極が設けられることから、これを内面に形成するための熱処理を第1平板に施す必要がない。また、電極や誘電体等が光の射出側となる第1平板内面に形成されないので、その第1平板側に高い透光性が要求されることに起因して電極等の形成工程が複雑になることもない。しかも、発光区画毎に放電空間および書込電極の長手方向において複数箇所で放電させられるように複数対の放電面がそれぞれ備えられることから、それらの長手方向における発光区画の中心間隔が大きくされる場合にも、各発光区画内の一箇所だけで放電するように構成されていた従来に比較して駆動電圧を高くすることなく発光面積を大きくできる。更に、各発光区画内における放電面間隔は、少なくとも一つが他のものよりも小さくされることによって不均等にされているため、放電面間隔が相対的に小さい放電面間では他の放電面間よりも低電圧で放電が開始させられ、この放電が荷電粒子の供給源となって放電面間隔が相対的に大きい他の放電面間でもそのプライミング効果によって放電が引き起こされることから、その放電面間隔が小さい放電面間における放電開始電圧を印加することで発光区画全体の放電を発生させ得る。したがって、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制され且つ低電圧で発光区画毎の発光面積を大きくし得る3電極構造のAC型ガス放電表示装置が得られる。
【0012】
なお、上記導体層は、コア誘電体層の表面または裏面の一面に積層して設けることができるが、両面に積層して設けても良く、或いは、コア誘電体層を二層以上の厚膜誘電体層の積層体で構成することをにより、その厚膜誘電体層と交互に積層された一層または二層以上の厚膜導体層で構成しても良い。
【0013】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記一の放電面間隔は放電開始電圧が低くなるように前記放電空間内のガスの種類および圧力に基づいてその距離が設定され、前記他の放電面間隔は放電維持電圧がその一の放電面間における放電開始電圧に一致するようにその距離が設定されているものである。ここで、「一致する」とは、略同一であれば足り、完全に同一である場合に限られず、前者が後者よりも僅かに低い場合や、高い場合も含まれる。
【0014】
また、好適には、前記複数本の帯状厚膜導体は、相互に隣接するものの前記放電面が、前記シート部材の格子の交点間においてその格子の内壁面上で相互に対向させられたものである。このようにすれば、シート部材の格子内で互いに対向させられた放電面間で放電させられる対向放電構造に構成されるため、対を成す放電面相互の間隔がその放電面内で一様になる。そのため、放電面間距離が相対的に小さくされた前記一の放電面間では、一平面上に維持電極が配置された従来の3電極構造に比較して一層放電電圧が低下させられると共に、効率が高められ、更に、局部的に放電が強くなることに起因する維持電極を覆う誘電体層(MgO等から成る保護膜が設けられる場合には誘電体層および保護膜)の局部的な劣化が抑制され延いては表示装置の寿命が長くなる利点がある。特に、放電空間内に蛍光体層が設けられたガス放電表示装置では、放電面が第1平板と第2平板との中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面に沿った方向となることから、第1平板内面および第2平板内面上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、その広い範囲に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点もある。
【0015】
因みに、従来の面放電型のガス放電表示装置では、一平面上に配置された互いに平行な維持電極間で放電させられることから、その放電面の大きさや相互間隔がセル・ピッチ等の制限を受けるため、設計上の制約が大きい問題があった。しかも、対を成す維持電極の放電面間距離がその内側と外側とで著しく相違することから、発光区画(画素すなわちセル)全体から発光させるために維持電極の外側位置でも放電を発生させようとすると放電効率が低くなると共に、放電の生じ易い内側では放電集中による誘電体層の劣化が生じ易くなる不都合もあった。
【0016】
また、好適には、前記複数本の帯状厚膜導体は、各々の両側に隣接する両方の帯状厚膜導体との間で放電させられるものである。このようにすれば、帯状厚膜導体がそれに隣接する一方の帯状厚膜導体との間だけで放電させられる場合に比較して放電が発生させられる面積を飛躍的に大きくすることができると共に、少ない帯状厚膜導体本数で高い輝度を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明のガス放電表示装置の一例であるAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法であって透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものであって、単独の表示装置として用いられる場合には例えば900×500(mm)程度の大きさを備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより所謂タイル型表示装置として用いられる場合には例えば450×350(mm)程度の大きさを備えるものである。本実施例においては、上記の前面板16が第2平板に、背面板18が第1平板にそれぞれ相当する。
【0019】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0020】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0021】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0022】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成るものであるが、例えばブラック・ストライプとしても機能させる場合には、例えば隔壁22と同じ材料系に黒色顔料粉末(例えば黒色金属酸化物粉末)を分散させた材料で構成され、何れの場合にも、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0023】
図2は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に積層された導体層44と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。本実施例においては、上記誘電体層38,40の一方または両方がコア誘電体層に相当する。
【0024】
図3は、上記のシート部材20のRGB3色から成る一画素に相当する部分を表した平面図である。図における上下方向が隔壁22および書込電極28の長手方向に一致し、一画素は、各色毎に5つの小区画に分割されている。シート部材20の格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分56,57は、隔壁22の長手方向に沿った図における上下方向に延びる縦方向部分56が、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば250(μm)程度の幅寸法Whを備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の水平方向(図の左右方向)における幅寸法は例えばGh=750(μm)程度である。
【0025】
また、隔壁22に直交する方向に延びる横方向部分57は、上記縦方向部分56よりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば200(μm)程度の幅寸法Wvを備えている。また、横方向部分57の相互間隔は、隔壁22の長手方向における一画素の中央に位置する一つの第1小区画42では、開口幅寸法Gv1が50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度であり、他の4つの第2小区画46では開口幅寸法Gv2が100〜1000(μm)の範囲内、例えば450(μm)程度である。すなわち、一画素を構成する3色の発光区画の各々は、隔壁22の長手方向における中央に位置し且つ相対的に小さい第1小区画42と、その前後に位置し且つ相対的に大きい第2小区画46とから構成されており、発光区画毎に不均等な大きさの5つの小区画に分割されている。なお、一画素の大きさすなわち画素ピッチは、隔壁22の長手方向に沿った方向においても、これに垂直な方向においても、Pv=Ph=3(mm)程度である。この発光区画の区切りは、後述する駆動方法から明らかなように、隔壁22に沿った方向においては選択された走査電極Sとの間で放電が発生させられる範囲により画定される。
【0026】
したがって、シート部材20は、複数本の縦方向部分56および複数本の横方向部分57が互いに直交し且つそれぞれ平行に並んだ形状を備えたものであるが、その縦方向部分56は一様な相互間隔で配列されている一方、横方向部分57は、4本置きに相互間隔が小さくなる不均等な相互間隔で配列された構造となっている。
【0027】
図2に戻って、前記の上側誘電体層38および下側誘電体層40は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、例えばそれらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。これら誘電体層38,40は、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系、例えばAl2O3−SiO2−PbO等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。
【0028】
また、前記の導体層44は、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であって、例えば10〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。この導体層44は、誘電体層38,40の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の横方向部分57の各々に備えられており、前記書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。したがって、前記の隔壁22に沿った方向における横方向部分57の相互間隔Gv1、Gv2は、相互に隣接する帯状厚膜導体52の相互間隔に略一致することとなる。
【0029】
なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。例えば、前記の図3において、右端部にDと記された横方向部分57に備えられている帯状厚膜導体52は、全面で共通の表示電極として機能させられるものであり、Sと記された横方向部分57に備えられている帯状厚膜導体52は、図の上下方向に並ぶ画素毎に異なる配線に接続されることにより走査電極として機能させられるものである。すなわち、本実施例においては、表示電極Dと走査電極Sとが交互に配置された構造となっており、それら2種の放電電極の相互間隔は、各発光区画の中央部において例えばGv1=200(μm)程度であり、他の部分において例えばGv2=450(μm)程度である。
【0030】
また、図2において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0031】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0032】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0033】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0034】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方(すなわち走査電極D)に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、図4に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。
【0035】
上記のようにして走査電極Sとして機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図4に矢印Bで示すように放電面55,55間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、図4は、PDP10の隔壁22の長手方向に沿った断面すなわち帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な断面を示す図である。この図から明らかなように、本実施例においては、放電面55が前面板16の内面12に平行な方向に放電させられるように対向させられた対向放電構造となっている。
【0036】
このとき、本実施例においては、前述したように各発光区画内に電極間隔すなわち放電面55の相互間隔Gvが小さい第1小区画42が一つずつ備えられているため、その第1小区画42における放電開始電圧が他の第2小区画46よりも相対的に低くなっている。そのため、各画素において表示のための交流パルスが印加されると、選択されている発光区画では、先ずその第1小区画42で放電が開始させられ、次いで、その放電によって発生した荷電粒子がプライミングとなって放電面間隔の相対的に大きい第2小区画46の放電が引き起こされる。すなわち、第2小区画46内においても、第1小区画42で放電が開始する電圧と同じ電圧で放電が発生することになる。したがって、走査電極Sおよび表示電極Dに印加される交流パルスは、第1小区画42で放電が発生し得るように、例えば160(V)程度の電圧となるように設定されている。
【0037】
なお、放電開始電圧Vbdは、良く知られたパッシェンの法則に従い、放電空間24内のガス圧pと、電極間隔(放電面間隔)dとの積pdの関数として与えられる。そのため、第1小区画42における放電面間隔Gv1は、pd積がパッシェン曲線において放電開始電圧Vbdの極小値を与える値或いはその近傍の値となるように、例えば200(μm)程度に定められているのであり、この値は、放電空間24内に封入された放電ガスの種類や圧力に応じて適宜変更される。すなわち、放電面間隔Gv1を定めるに際して、これを小さくすることに伴う輝度低下は何ら考慮されていない。
【0038】
これに対して、第2小区画46では、放電面間隔Gv2が450(μm)程度の比較的大きな値に設定されているが、これは、荷電粒子によるプライミングによって上記のような低電圧で放電が発生させられる範囲内で、できるだけ大きい値が選ばれたものである。そのため、第2小区画46内での放電では、負グローや暗部だけでなく陽光柱も生成されることから、これによる輝度向上効果が得られるので、低電圧で駆動可能としながら発光効率も、例えば一様な電極間隔に構成された従来に比較して20(%)程度高められている。このように、本実施例のPDP10では、第2小区画46の大きさが輝度を考慮して定められることから、第1小区画42は、放電開始電圧だけを考慮してその大きさを定めても差し支えないのである。すなわち、発光区画内に放電開始電圧を低下させるための小区画と、輝度を高めるための小区画とが備えられているので、従来は両立し難かった輝度向上および放電開始電圧の低下とが同時に実現される。
【0039】
なお、陽光柱は陰極から比較的離れた範囲だけに形成されることから、一つの第2小区画46内では陰極側が相対的に暗く且つ陽極側が相対的に明るくなるので輝度斑が生じ得る。しかしながら、本実施例においては、発光区画毎に複数(4つ)の第2小区画46が備えられていることから、発光区画全体として略一様に発光させられるので、陽光柱が生じるような放電距離で用いられることに起因する表示品質の低下は生じず、輝度および効率向上効果を専ら享受することができる。例えば、前記のような構造および駆動条件では、画素相互の輝度ばらつきは10(%)以下に留められた。
【0040】
また、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、各小区画42,46内において、維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面55の全面に広がる。そのため、この突起部54も放電開始電圧の低下に寄与している。
【0041】
また、複数本の帯状厚膜導体56の各々は、シート部材20の格子の横方向部分57の幅方向における略全体に亘る大きさで設けられていることから、前記の図3に示すように、その両側に隣接する帯状厚膜導体56との間で放電させられることとなる。そのため、本実施例においては、発光区画の各々においてその全面で放電が発生させられることから、その一部で放電させられていた従来に比較して、一層高い輝度が得られる。なお、図においてαが一の発光区画内で発生させられる放電を、βがその一の発光区画に隣接する発光区画内で発生させられる放電を表している。
【0042】
要するに、本実施例によれば、発光区画毎に複数箇所で放電させられるように複数対の放電面55がそれぞれ備えられることから、隔壁22の長手方向における発光区画の中心間隔Pvが3(mm)程度と大きくされる場合にも、各発光区画内の一箇所だけで放電するように構成されていた従来に比較して駆動電圧を高くすることなく発光面積を大きくできる。しかも、各発光区画内における放電面55の相互間隔は、第1小区画42が他の第2小区画46よりも小さくされることによって不均等にされていることから、相対的に小さい第1小区画42では低電圧で放電が開始させられ、この放電により発生させられた荷電粒子のプライミング効果で相対的に大きい他の第2小区画46で放電が引き起こされるため、その第1小区画42における放電開始電圧を印加することで発光区画全体の放電を発生させ得る。したがって、低電圧で駆動可能としつつ発光面積を大きくすることができるのである。
【0043】
また、本実施例においては、各発光区画内の中央位置に第1小区画42が設けられ且つそこで表示放電が開始させられるため、第1小区画42が発光区画相互の境界近傍に設けられている場合に比較して、誤放電が生じ難い利点もある。
【0044】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0045】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0046】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0047】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0048】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0049】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(j)を参照して説明する。
【0050】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0051】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のシリカ、アルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば700(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程(すなわち支持体を用意する工程)に対応する。
【0052】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38,40を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44を形成するための厚膜導体ペースト98(図7(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38,40を形成するための誘電体印刷層100,104、導体層44を形成するための多数本の帯状印刷膜106から成る導体印刷層102が、その積層順序に従って形成される。
【0053】
上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末や銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図7(c)〜(e)は、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104がそれぞれ形成された段階を示している。なお、誘電体印刷層100,104は、例えばそれぞれ70(μm)程度の厚さ寸法に形成され、導体印刷層102は、例えば35(μm)程度の厚さ寸法に形成される。一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0054】
上記のようにして厚膜印刷層100〜104を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0055】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜104は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38,40および導体層44すなわちシート部材20の基本構成要素が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図9参照)のみから成る粒子層116となる。
【0056】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜104が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜104の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0057】
なお、本実施例においては、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0058】
図6に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40および導体層44の積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0059】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図8(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0060】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト124に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。図8(i)は、焼成後の段階を示している。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0061】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に、例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。図8(j)は、この段階を示している。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面55,55間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されず、また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されないのである。
【0062】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、前述した実施例と共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図10は、前記のPDP10にシート部材20に代えて用い得る他のシート部材132の一画素に相当する部分の構成を示したものであって、前記図3に対応する図である。図において、一画素を構成する各発光色の発光区画は、隔壁22の長手方向における長さ寸法が相対的に小さい2つの第1小区画134と、相対的に大きい4つの第2小区画136の合計6つの小区画から構成されている。すなわち、本実施例においても、各発光区画は、隔壁22の長手方向に沿った長さ寸法が不均一な複数の小区画で構成されている。なお、2つの第1小区画134は、図に示されるように、両隣に第2小区画136が位置するように相互に離隔して発光区画の中央から外れ位置に設けられている。
【0064】
また、第1小区画134は、隔壁22の長手方向に沿った方向における長さ寸法Gv1が50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度であり、第2小区画136は、長さ寸法Gv2が100〜1000(μm)の範囲内、例えば330(μm)程度である。したがって、本実施例においても、一画素の長さ寸法すなわち発光区画の長さ寸法Pvは、3(mm)程度である。
【0065】
上記のように構成されたシート部材132が備えられたPDPにおいても、駆動するに際しては、相対的に放電面間隔の小さい第1小区画134で放電が開始させられるので、各発光区画における放電開始電圧が低下させられると共に、その放電によって発生させられた荷電粒子をプライミングとして放電させられる第2小区画136は陽光柱が生じる程度の大きい放電面間隔に構成されていることから、高輝度の発光が得られる等、前述の実施例と同様な効果を享受し得る。
【0066】
しかも、本実施例においては、発光区画の各々に相対的に放電面間隔の小さい第1小区画134が2つずつ備えられており、それらが相互に離隔させられていることから、その第1小区画134において放電により発生した荷電粒子が一層発光区画全体に広がり易い。そのため、中央に一つだけ第1小区画が設けられた場合に比較して、一層確実に発光区画全体から発光させ得ると共に、発光区画の一層の大面積化にも容易に対応できる利点がある。しかも、複数対の電極間に同時に放電開始電圧を印加しても、実際に放電が開始するまでの時間には必ずばらつきがあるが、本実施例によれば、第1小区画134が複数個備えられていることから、その放電開始までの時間が平均化されるので、放電特性が安定する利点もある。
【0067】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0068】
例えば、実施例においては、カラー表示用のAC型PDP10およびその製造方法に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、モノクロ表示用のAC型PDPおよびその製造方法にも同様に適用される。
【0069】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0070】
また、実施例においては、発光区画の各々に1つまたは2つの第1小区画42,134が設けられた場合について説明したが、放電開始電圧を低下させるための第1小区画は、3つ以上が設けられても良い。但し、その数が必要以上に増えると第2小区画の総面積が減少し、延いては却って輝度が低下させられる傾向が生じるので、第1小区画の数は、発光区画全体で放電を確実に発生させ得る範囲で少なくすることが望ましい。
【0071】
また、実施例においては、発光区画が5つまたは6つの小区画に区分されていたが、その数は、1画素の大きさや許容される放電開始電圧、輝度斑の程度等に応じて適宜変更される。例えば発光区画が実施例に示した場合よりも大きい場合には、更に多くの小区画に区分すればよく、反対に小さい場合には、少ない数、例えば2乃至3個の小区画に区分されても良い。
【0072】
また、第1小区画42、134および第2小区画46、136の各々における放電面間隔Gv1,Gv2は、実施例に示した大きさに限られず、それぞれ放電空間24内のガス圧や所望とする放電開始電圧、放電維持電圧等に応じて適宜定められる。
【0073】
また、PDP10全体の各部の寸法、シート部材20、132の各部の寸法や構成材料等は、実施例で示したものに限られず、得ようとする表示領域の大きさや画素密度、輝度等に応じて適宜定められる。
【0074】
また、実施例においては、シート部材20内に層状に設けられた帯状厚膜導体52の側面が電極として用いられることによって対向放電構造に構成されていたが、本発明は、従来のPDPのような面放電構造のものにも同様に適用される。
【0075】
また、実施例においては、隔壁22が一方向に沿って伸びるストライプ状(縞状)に設けられていたが、格子状の隔壁をこれに代えて設けてもよい。このようにすれば、隔壁22に沿った方向における誤放電が一層抑制される。
【0076】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の3電極構造AC型ガス放電表示装置の一例であるカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図3】図1のPDPの一画素の構成を説明する図である。
【図4】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造の要部を説明する図である。
【図5】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】(f)〜(j)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図10】一画素の他の構成例を説明するための図3に対応する図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
20:シート部材
24:放電空間
38:コア誘電体層
42:第1小区画
44:導体層
46:第2小区画
52:帯状厚膜導体
55:放電面
【発明の属する技術分野】
本発明は、AC(交流放電)型ガス放電表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
透光性を有する第1平板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に一方向に沿って形成され且つ各々が複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のAC型ガス放電表示装置が知られている。
【0003】
このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている。上記AC型ガス放電表示装置の形式の一つに、上記の維持電極を相互に平行な複数対で構成すると共に、その維持電極との間で書込放電を発生させることにより発光区画を選択するための書込電極を備えた3電極構造のものがある(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
なお、「一方向に沿った放電空間」は、例えば真っ直ぐな隔壁で気密空間を区画することで形成されるが、本願においては、その隔壁が幅方向の両側に交互に屈曲しながら一方向に向かって延びることにより、相互に隣接する発光区画、例えばRGB三色がそれぞれ割り当てられた3区画が所謂デルタ配列となるようなものも含まれる。
【0005】
【非特許文献1】
谷 千束著「ディスプレイ先端技術」初版第1刷、共立出版、1998年12月28日、p.78−88
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような3電極構造の表示装置では、例えば光の射出側となる前面板に維持電極が設けられ、背面板側に書込電極が設けられることから、可及的に光を透過させる必要がある前面板は、維持電極がITO(酸化インジウム錫)膜等から成る透明電極およびその導電性を補うための金属または厚膜導体から成るバス電極で構成される。そのため、前面板の製造工程では、ガラス基板上に(a)ITO膜と基板との密着性を確保するためのSiO2膜、(b)ITO膜、(c)バス電極、(d)ブラック・ストライプ、(e)誘電体層、(f)MgO膜等から成る保護膜が順次形成されていた。上記のITO膜は、例えばスパッタ等で設けられた後、レジスト塗布・露光・現像・エッチング処理・レジスト剥離を行うフォト法でパターン形成される。また、バス電極は、Cr−Cu−Cr等の薄膜で構成される場合にはITO膜の場合と同様な方法で、厚膜銀等の厚膜導体で構成される場合には厚膜スクリーン印刷法等の厚膜プロセスで形成される。また、誘電体層およびMgO膜も、高い透光性を有するように高い品質が要求される。すなわち、従来の3電極構造では、前面板側に透光性が要求されることに起因して、その内面に形成される導体膜や誘電体膜等の製造工程が複雑になっていた。
【0007】
しかも、上記の製造工程のうち誘電体層や厚膜導体で構成される場合のバス電極を形成する際には、それらの焼成のために基板に加熱処理が施される。そのため、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して、前面板に歪みが生じると共に厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題もあった。
【0008】
更に、上記のような構造では、選択された発光区画内のうち発光させられるのは、プラズマや紫外線の及ぶ範囲すなわち対を成す維持電極よりも僅かに外側までの範囲に留まる。そのため、大型表示装置を構成する場合に、発光区画の各々における発光面積をその発光区画の大きさに応じて大きくしようとする場合には、維持電極の相互間隔を大きくし、或いはその面積を大きくする必要が生じる。しかしながら、対を成す維持電極の相互間隔は、放電開始電圧を駆動ドライバに要求される耐電圧が過大とならない適正な値とするためにガス圧との関係で発光区画の大きさに拘わらず略一定の値に保つ必要がある。一方、放電効率は対を成す他方の電極からの距離(すなわち放電距離)が増大するほど低下する。したがって、発光区画の大きさに合わせて電極間隔を大きくすると放電開始電圧が高くなり、反対に放電開始電圧を適正に保ちつつ発光区画を大きくすると、維持電極の面積が大きくなることに起因して電極全体としての放電効率が低下するため、放電装置としての効率が著しく低下する問題もあった。しかも、放電距離が長くなると、放電によって電極間に形成される陽光柱が長くなるため、発光区画のうちその陽光柱が形成された部分の輝度が相対的に高くなって、輝度斑が生じる不都合もあった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等を抑制でき且つ駆動効率を低下させることなく低電圧で発光区画毎に大きな発光面積を確保できる3電極構造のAC型ガス放電表示装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々が複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々でガス放電を発生させるためにその一方向に交叉する他方向に沿って形成された複数本の維持電極と、それら維持電極との間でガス放電を発生させることにより前記発光区画を選択するために前記一方向に沿って形成された複数本の書込電極とを備え、前記複数本の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1平板を通して射出する形式のAC型ガス放電表示装置であって、(a)格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、(b)前記一方向に交叉する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層に積層されると共に相互に隣接するものとの間で放電可能な複数の放電面をそれぞれ有し且つ前記複数の発光区画の各々のその一方向における複数箇所に少なくとも一の放電面間隔が他の放電面間隔よりも小さくされた複数対の放電面が位置させられることにより前記複数本の維持電極として機能させられる複数本の帯状厚膜導体を備えた導体層と、(c)前記導体層を覆う厚膜誘電体から成る誘電体皮膜とを備えて、前記第1平板および前記第2平板の間にそれらに平行に配置された格子状のシート部材を含むことにある。
【0011】
【発明の効果】
このようにすれば、第1平板および第2平板間に、格子状を成すコア誘電体層に導体層が層状に設けられたシート部材が配置されるが、その導体層内には、複数の発光区画の各々において放電空間の長手方向に沿った複数箇所で放電させられる複数対の放電面を設けるための複数本の帯状厚膜導体が備えられ、それら複数本の帯状厚膜導体で複数本の維持電極が構成される。そのため、シート部材を第1平板および第2平板の間に配置するだけで複数本の維持電極が設けられることから、これを内面に形成するための熱処理を第1平板に施す必要がない。また、電極や誘電体等が光の射出側となる第1平板内面に形成されないので、その第1平板側に高い透光性が要求されることに起因して電極等の形成工程が複雑になることもない。しかも、発光区画毎に放電空間および書込電極の長手方向において複数箇所で放電させられるように複数対の放電面がそれぞれ備えられることから、それらの長手方向における発光区画の中心間隔が大きくされる場合にも、各発光区画内の一箇所だけで放電するように構成されていた従来に比較して駆動電圧を高くすることなく発光面積を大きくできる。更に、各発光区画内における放電面間隔は、少なくとも一つが他のものよりも小さくされることによって不均等にされているため、放電面間隔が相対的に小さい放電面間では他の放電面間よりも低電圧で放電が開始させられ、この放電が荷電粒子の供給源となって放電面間隔が相対的に大きい他の放電面間でもそのプライミング効果によって放電が引き起こされることから、その放電面間隔が小さい放電面間における放電開始電圧を印加することで発光区画全体の放電を発生させ得る。したがって、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制され且つ低電圧で発光区画毎の発光面積を大きくし得る3電極構造のAC型ガス放電表示装置が得られる。
【0012】
なお、上記導体層は、コア誘電体層の表面または裏面の一面に積層して設けることができるが、両面に積層して設けても良く、或いは、コア誘電体層を二層以上の厚膜誘電体層の積層体で構成することをにより、その厚膜誘電体層と交互に積層された一層または二層以上の厚膜導体層で構成しても良い。
【0013】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記一の放電面間隔は放電開始電圧が低くなるように前記放電空間内のガスの種類および圧力に基づいてその距離が設定され、前記他の放電面間隔は放電維持電圧がその一の放電面間における放電開始電圧に一致するようにその距離が設定されているものである。ここで、「一致する」とは、略同一であれば足り、完全に同一である場合に限られず、前者が後者よりも僅かに低い場合や、高い場合も含まれる。
【0014】
また、好適には、前記複数本の帯状厚膜導体は、相互に隣接するものの前記放電面が、前記シート部材の格子の交点間においてその格子の内壁面上で相互に対向させられたものである。このようにすれば、シート部材の格子内で互いに対向させられた放電面間で放電させられる対向放電構造に構成されるため、対を成す放電面相互の間隔がその放電面内で一様になる。そのため、放電面間距離が相対的に小さくされた前記一の放電面間では、一平面上に維持電極が配置された従来の3電極構造に比較して一層放電電圧が低下させられると共に、効率が高められ、更に、局部的に放電が強くなることに起因する維持電極を覆う誘電体層(MgO等から成る保護膜が設けられる場合には誘電体層および保護膜)の局部的な劣化が抑制され延いては表示装置の寿命が長くなる利点がある。特に、放電空間内に蛍光体層が設けられたガス放電表示装置では、放電面が第1平板と第2平板との中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面に沿った方向となることから、第1平板内面および第2平板内面上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、その広い範囲に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点もある。
【0015】
因みに、従来の面放電型のガス放電表示装置では、一平面上に配置された互いに平行な維持電極間で放電させられることから、その放電面の大きさや相互間隔がセル・ピッチ等の制限を受けるため、設計上の制約が大きい問題があった。しかも、対を成す維持電極の放電面間距離がその内側と外側とで著しく相違することから、発光区画(画素すなわちセル)全体から発光させるために維持電極の外側位置でも放電を発生させようとすると放電効率が低くなると共に、放電の生じ易い内側では放電集中による誘電体層の劣化が生じ易くなる不都合もあった。
【0016】
また、好適には、前記複数本の帯状厚膜導体は、各々の両側に隣接する両方の帯状厚膜導体との間で放電させられるものである。このようにすれば、帯状厚膜導体がそれに隣接する一方の帯状厚膜導体との間だけで放電させられる場合に比較して放電が発生させられる面積を飛躍的に大きくすることができると共に、少ない帯状厚膜導体本数で高い輝度を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明のガス放電表示装置の一例であるAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法であって透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものであって、単独の表示装置として用いられる場合には例えば900×500(mm)程度の大きさを備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより所謂タイル型表示装置として用いられる場合には例えば450×350(mm)程度の大きさを備えるものである。本実施例においては、上記の前面板16が第2平板に、背面板18が第1平板にそれぞれ相当する。
【0019】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0020】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0021】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0022】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成るものであるが、例えばブラック・ストライプとしても機能させる場合には、例えば隔壁22と同じ材料系に黒色顔料粉末(例えば黒色金属酸化物粉末)を分散させた材料で構成され、何れの場合にも、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0023】
図2は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に積層された導体層44と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。本実施例においては、上記誘電体層38,40の一方または両方がコア誘電体層に相当する。
【0024】
図3は、上記のシート部材20のRGB3色から成る一画素に相当する部分を表した平面図である。図における上下方向が隔壁22および書込電極28の長手方向に一致し、一画素は、各色毎に5つの小区画に分割されている。シート部材20の格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分56,57は、隔壁22の長手方向に沿った図における上下方向に延びる縦方向部分56が、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば250(μm)程度の幅寸法Whを備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の水平方向(図の左右方向)における幅寸法は例えばGh=750(μm)程度である。
【0025】
また、隔壁22に直交する方向に延びる横方向部分57は、上記縦方向部分56よりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば200(μm)程度の幅寸法Wvを備えている。また、横方向部分57の相互間隔は、隔壁22の長手方向における一画素の中央に位置する一つの第1小区画42では、開口幅寸法Gv1が50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度であり、他の4つの第2小区画46では開口幅寸法Gv2が100〜1000(μm)の範囲内、例えば450(μm)程度である。すなわち、一画素を構成する3色の発光区画の各々は、隔壁22の長手方向における中央に位置し且つ相対的に小さい第1小区画42と、その前後に位置し且つ相対的に大きい第2小区画46とから構成されており、発光区画毎に不均等な大きさの5つの小区画に分割されている。なお、一画素の大きさすなわち画素ピッチは、隔壁22の長手方向に沿った方向においても、これに垂直な方向においても、Pv=Ph=3(mm)程度である。この発光区画の区切りは、後述する駆動方法から明らかなように、隔壁22に沿った方向においては選択された走査電極Sとの間で放電が発生させられる範囲により画定される。
【0026】
したがって、シート部材20は、複数本の縦方向部分56および複数本の横方向部分57が互いに直交し且つそれぞれ平行に並んだ形状を備えたものであるが、その縦方向部分56は一様な相互間隔で配列されている一方、横方向部分57は、4本置きに相互間隔が小さくなる不均等な相互間隔で配列された構造となっている。
【0027】
図2に戻って、前記の上側誘電体層38および下側誘電体層40は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、例えばそれらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。これら誘電体層38,40は、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系、例えばAl2O3−SiO2−PbO等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。
【0028】
また、前記の導体層44は、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であって、例えば10〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。この導体層44は、誘電体層38,40の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の横方向部分57の各々に備えられており、前記書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。したがって、前記の隔壁22に沿った方向における横方向部分57の相互間隔Gv1、Gv2は、相互に隣接する帯状厚膜導体52の相互間隔に略一致することとなる。
【0029】
なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。例えば、前記の図3において、右端部にDと記された横方向部分57に備えられている帯状厚膜導体52は、全面で共通の表示電極として機能させられるものであり、Sと記された横方向部分57に備えられている帯状厚膜導体52は、図の上下方向に並ぶ画素毎に異なる配線に接続されることにより走査電極として機能させられるものである。すなわち、本実施例においては、表示電極Dと走査電極Sとが交互に配置された構造となっており、それら2種の放電電極の相互間隔は、各発光区画の中央部において例えばGv1=200(μm)程度であり、他の部分において例えばGv2=450(μm)程度である。
【0030】
また、図2において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0031】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0032】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0033】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0034】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方(すなわち走査電極D)に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、図4に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。
【0035】
上記のようにして走査電極Sとして機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図4に矢印Bで示すように放電面55,55間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、図4は、PDP10の隔壁22の長手方向に沿った断面すなわち帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な断面を示す図である。この図から明らかなように、本実施例においては、放電面55が前面板16の内面12に平行な方向に放電させられるように対向させられた対向放電構造となっている。
【0036】
このとき、本実施例においては、前述したように各発光区画内に電極間隔すなわち放電面55の相互間隔Gvが小さい第1小区画42が一つずつ備えられているため、その第1小区画42における放電開始電圧が他の第2小区画46よりも相対的に低くなっている。そのため、各画素において表示のための交流パルスが印加されると、選択されている発光区画では、先ずその第1小区画42で放電が開始させられ、次いで、その放電によって発生した荷電粒子がプライミングとなって放電面間隔の相対的に大きい第2小区画46の放電が引き起こされる。すなわち、第2小区画46内においても、第1小区画42で放電が開始する電圧と同じ電圧で放電が発生することになる。したがって、走査電極Sおよび表示電極Dに印加される交流パルスは、第1小区画42で放電が発生し得るように、例えば160(V)程度の電圧となるように設定されている。
【0037】
なお、放電開始電圧Vbdは、良く知られたパッシェンの法則に従い、放電空間24内のガス圧pと、電極間隔(放電面間隔)dとの積pdの関数として与えられる。そのため、第1小区画42における放電面間隔Gv1は、pd積がパッシェン曲線において放電開始電圧Vbdの極小値を与える値或いはその近傍の値となるように、例えば200(μm)程度に定められているのであり、この値は、放電空間24内に封入された放電ガスの種類や圧力に応じて適宜変更される。すなわち、放電面間隔Gv1を定めるに際して、これを小さくすることに伴う輝度低下は何ら考慮されていない。
【0038】
これに対して、第2小区画46では、放電面間隔Gv2が450(μm)程度の比較的大きな値に設定されているが、これは、荷電粒子によるプライミングによって上記のような低電圧で放電が発生させられる範囲内で、できるだけ大きい値が選ばれたものである。そのため、第2小区画46内での放電では、負グローや暗部だけでなく陽光柱も生成されることから、これによる輝度向上効果が得られるので、低電圧で駆動可能としながら発光効率も、例えば一様な電極間隔に構成された従来に比較して20(%)程度高められている。このように、本実施例のPDP10では、第2小区画46の大きさが輝度を考慮して定められることから、第1小区画42は、放電開始電圧だけを考慮してその大きさを定めても差し支えないのである。すなわち、発光区画内に放電開始電圧を低下させるための小区画と、輝度を高めるための小区画とが備えられているので、従来は両立し難かった輝度向上および放電開始電圧の低下とが同時に実現される。
【0039】
なお、陽光柱は陰極から比較的離れた範囲だけに形成されることから、一つの第2小区画46内では陰極側が相対的に暗く且つ陽極側が相対的に明るくなるので輝度斑が生じ得る。しかしながら、本実施例においては、発光区画毎に複数(4つ)の第2小区画46が備えられていることから、発光区画全体として略一様に発光させられるので、陽光柱が生じるような放電距離で用いられることに起因する表示品質の低下は生じず、輝度および効率向上効果を専ら享受することができる。例えば、前記のような構造および駆動条件では、画素相互の輝度ばらつきは10(%)以下に留められた。
【0040】
また、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、各小区画42,46内において、維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面55の全面に広がる。そのため、この突起部54も放電開始電圧の低下に寄与している。
【0041】
また、複数本の帯状厚膜導体56の各々は、シート部材20の格子の横方向部分57の幅方向における略全体に亘る大きさで設けられていることから、前記の図3に示すように、その両側に隣接する帯状厚膜導体56との間で放電させられることとなる。そのため、本実施例においては、発光区画の各々においてその全面で放電が発生させられることから、その一部で放電させられていた従来に比較して、一層高い輝度が得られる。なお、図においてαが一の発光区画内で発生させられる放電を、βがその一の発光区画に隣接する発光区画内で発生させられる放電を表している。
【0042】
要するに、本実施例によれば、発光区画毎に複数箇所で放電させられるように複数対の放電面55がそれぞれ備えられることから、隔壁22の長手方向における発光区画の中心間隔Pvが3(mm)程度と大きくされる場合にも、各発光区画内の一箇所だけで放電するように構成されていた従来に比較して駆動電圧を高くすることなく発光面積を大きくできる。しかも、各発光区画内における放電面55の相互間隔は、第1小区画42が他の第2小区画46よりも小さくされることによって不均等にされていることから、相対的に小さい第1小区画42では低電圧で放電が開始させられ、この放電により発生させられた荷電粒子のプライミング効果で相対的に大きい他の第2小区画46で放電が引き起こされるため、その第1小区画42における放電開始電圧を印加することで発光区画全体の放電を発生させ得る。したがって、低電圧で駆動可能としつつ発光面積を大きくすることができるのである。
【0043】
また、本実施例においては、各発光区画内の中央位置に第1小区画42が設けられ且つそこで表示放電が開始させられるため、第1小区画42が発光区画相互の境界近傍に設けられている場合に比較して、誤放電が生じ難い利点もある。
【0044】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0045】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0046】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0047】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0048】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0049】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(j)を参照して説明する。
【0050】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0051】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のシリカ、アルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば700(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程(すなわち支持体を用意する工程)に対応する。
【0052】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38,40を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44を形成するための厚膜導体ペースト98(図7(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38,40を形成するための誘電体印刷層100,104、導体層44を形成するための多数本の帯状印刷膜106から成る導体印刷層102が、その積層順序に従って形成される。
【0053】
上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末や銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図7(c)〜(e)は、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104がそれぞれ形成された段階を示している。なお、誘電体印刷層100,104は、例えばそれぞれ70(μm)程度の厚さ寸法に形成され、導体印刷層102は、例えば35(μm)程度の厚さ寸法に形成される。一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0054】
上記のようにして厚膜印刷層100〜104を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0055】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜104は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38,40および導体層44すなわちシート部材20の基本構成要素が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図9参照)のみから成る粒子層116となる。
【0056】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜104が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜104の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0057】
なお、本実施例においては、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0058】
図6に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40および導体層44の積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0059】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図8(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0060】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト124に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。図8(i)は、焼成後の段階を示している。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0061】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に、例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。図8(j)は、この段階を示している。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面55,55間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されず、また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されないのである。
【0062】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、前述した実施例と共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図10は、前記のPDP10にシート部材20に代えて用い得る他のシート部材132の一画素に相当する部分の構成を示したものであって、前記図3に対応する図である。図において、一画素を構成する各発光色の発光区画は、隔壁22の長手方向における長さ寸法が相対的に小さい2つの第1小区画134と、相対的に大きい4つの第2小区画136の合計6つの小区画から構成されている。すなわち、本実施例においても、各発光区画は、隔壁22の長手方向に沿った長さ寸法が不均一な複数の小区画で構成されている。なお、2つの第1小区画134は、図に示されるように、両隣に第2小区画136が位置するように相互に離隔して発光区画の中央から外れ位置に設けられている。
【0064】
また、第1小区画134は、隔壁22の長手方向に沿った方向における長さ寸法Gv1が50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度であり、第2小区画136は、長さ寸法Gv2が100〜1000(μm)の範囲内、例えば330(μm)程度である。したがって、本実施例においても、一画素の長さ寸法すなわち発光区画の長さ寸法Pvは、3(mm)程度である。
【0065】
上記のように構成されたシート部材132が備えられたPDPにおいても、駆動するに際しては、相対的に放電面間隔の小さい第1小区画134で放電が開始させられるので、各発光区画における放電開始電圧が低下させられると共に、その放電によって発生させられた荷電粒子をプライミングとして放電させられる第2小区画136は陽光柱が生じる程度の大きい放電面間隔に構成されていることから、高輝度の発光が得られる等、前述の実施例と同様な効果を享受し得る。
【0066】
しかも、本実施例においては、発光区画の各々に相対的に放電面間隔の小さい第1小区画134が2つずつ備えられており、それらが相互に離隔させられていることから、その第1小区画134において放電により発生した荷電粒子が一層発光区画全体に広がり易い。そのため、中央に一つだけ第1小区画が設けられた場合に比較して、一層確実に発光区画全体から発光させ得ると共に、発光区画の一層の大面積化にも容易に対応できる利点がある。しかも、複数対の電極間に同時に放電開始電圧を印加しても、実際に放電が開始するまでの時間には必ずばらつきがあるが、本実施例によれば、第1小区画134が複数個備えられていることから、その放電開始までの時間が平均化されるので、放電特性が安定する利点もある。
【0067】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0068】
例えば、実施例においては、カラー表示用のAC型PDP10およびその製造方法に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、モノクロ表示用のAC型PDPおよびその製造方法にも同様に適用される。
【0069】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0070】
また、実施例においては、発光区画の各々に1つまたは2つの第1小区画42,134が設けられた場合について説明したが、放電開始電圧を低下させるための第1小区画は、3つ以上が設けられても良い。但し、その数が必要以上に増えると第2小区画の総面積が減少し、延いては却って輝度が低下させられる傾向が生じるので、第1小区画の数は、発光区画全体で放電を確実に発生させ得る範囲で少なくすることが望ましい。
【0071】
また、実施例においては、発光区画が5つまたは6つの小区画に区分されていたが、その数は、1画素の大きさや許容される放電開始電圧、輝度斑の程度等に応じて適宜変更される。例えば発光区画が実施例に示した場合よりも大きい場合には、更に多くの小区画に区分すればよく、反対に小さい場合には、少ない数、例えば2乃至3個の小区画に区分されても良い。
【0072】
また、第1小区画42、134および第2小区画46、136の各々における放電面間隔Gv1,Gv2は、実施例に示した大きさに限られず、それぞれ放電空間24内のガス圧や所望とする放電開始電圧、放電維持電圧等に応じて適宜定められる。
【0073】
また、PDP10全体の各部の寸法、シート部材20、132の各部の寸法や構成材料等は、実施例で示したものに限られず、得ようとする表示領域の大きさや画素密度、輝度等に応じて適宜定められる。
【0074】
また、実施例においては、シート部材20内に層状に設けられた帯状厚膜導体52の側面が電極として用いられることによって対向放電構造に構成されていたが、本発明は、従来のPDPのような面放電構造のものにも同様に適用される。
【0075】
また、実施例においては、隔壁22が一方向に沿って伸びるストライプ状(縞状)に設けられていたが、格子状の隔壁をこれに代えて設けてもよい。このようにすれば、隔壁22に沿った方向における誤放電が一層抑制される。
【0076】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の3電極構造AC型ガス放電表示装置の一例であるカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図3】図1のPDPの一画素の構成を説明する図である。
【図4】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造の要部を説明する図である。
【図5】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】(f)〜(j)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図10】一画素の他の構成例を説明するための図3に対応する図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
20:シート部材
24:放電空間
38:コア誘電体層
42:第1小区画
44:導体層
46:第2小区画
52:帯状厚膜導体
55:放電面
Claims (3)
- 透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々が複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々でガス放電を発生させるためにその一方向に交叉する他方向に沿って形成された複数本の維持電極と、それら維持電極との間でガス放電を発生させることにより前記発光区画を選択するために前記一方向に沿って形成された複数本の書込電極とを備え、前記複数本の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1平板を通して射出する形式のAC型ガス放電表示装置であって、
格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、
前記一方向に交叉する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層に積層されると共に相互に隣接するものとの間で放電可能な複数の放電面をそれぞれ有し且つ前記複数の発光区画の各々のその一方向における複数箇所に少なくとも一の放電面間隔が他の放電面間隔よりも小さくされた複数対の放電面が位置させられることにより前記複数本の維持電極として機能させられる複数本の帯状厚膜導体を備えた導体層と、
前記導体層を覆う厚膜誘電体から成る誘電体皮膜と
を備えて、前記第1平板および前記第2平板の間にそれらに平行に配置された格子状のシート部材を含むことを特徴とするAC型ガス放電表示装置。 - 前記複数本の帯状厚膜導体は、相互に隣接するものの前記放電面が、前記シート部材の格子の交点間においてその格子の内壁面上で相互に対向させられたものである請求項1のAC型ガス放電表示装置。
- 前記複数本の帯状厚膜導体は、各々の両側に隣接する両方の帯状厚膜導体との間で放電させられるものである請求項1のAC型ガス放電表示装置。
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2003
- 2003-03-25 JP JP2003083802A patent/JP2004296145A/ja active Pending
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