JP2004303548A - タイル型表示装置用パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】パネル相互の境界における表示品質低下を抑制し得るタイル型表示装置用パネルを提供する。
【解決手段】外周部42の発光区画で表示放電が発生させられた際には、背面板18上、隔壁22の側面、および前面板16上の蛍光体層32,36が発光させられ、その光が前面板16を通して射出されるが、内周部46で表示放電が発生させられた場合には、前面板16上には蛍光体層が設けられていないため、背面板18上および隔壁22の側面の蛍光体層32のみが発光させられ、その光が前面板16を通して射出される。そのため、画素相互の光量の差が小さくされ、或いは無くなり、タイル型表示装置におけるPDP10相互の境界における輝度低下が好適に抑制されるので、高い表示品質が得られる。
【選択図】 図6
【解決手段】外周部42の発光区画で表示放電が発生させられた際には、背面板18上、隔壁22の側面、および前面板16上の蛍光体層32,36が発光させられ、その光が前面板16を通して射出されるが、内周部46で表示放電が発生させられた場合には、前面板16上には蛍光体層が設けられていないため、背面板18上および隔壁22の側面の蛍光体層32のみが発光させられ、その光が前面板16を通して射出される。そのため、画素相互の光量の差が小さくされ、或いは無くなり、タイル型表示装置におけるPDP10相互の境界における輝度低下が好適に抑制されるので、高い表示品質が得られる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイル型表示装置用パネルの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透光性を有する第1平板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数本の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための複数対の表示電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用してその蛍光体層を励起して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のガス放電表示装置が知られている。
【0003】
上記のガス放電表示装置は、例えば、所望の大きさの表示面積を得るためにそれに応じた大きさの第1平板および第2平板を用いて構成されるが、表示面積が大きくなると単独の表示装置で構成することが製造上および取扱い上著しく困難になる。そこで、例えば対角100インチもの大型の表示装置を構成する場合には、複数枚の表示装置を一面内に相互に略密接して配列することにより、全体で大表示面を構成することが行われている。このような表示装置は例えばタイル型表示装置と称される。
【0004】
ところで、上記のタイル型表示装置に用いられる個々のパネルは、発光効率を可及的に高くすると共に表示品質を高める目的で、放電空間相互を区分する隔壁が例えば60(μm)〜1(mm)程度の小さな幅寸法とされている。一画素がRGB3色で表示されるカラー表示装置における画素相互の境界もこの隔壁で構成されるため、画素相互の間隔も隔壁幅寸法に一致する。これに対して、タイル状に並べれられるパネル相互間には個々のパネルの封止部分が備えられることから、パネル相互の境界における画素相互の間隔は、この封止部分の大きさが加算されるので隔壁幅寸法よりも大きくなる。一方、放電空間の長手方向に沿った方向においては、駆動方法に従って電気的に発光区画相互、画素相互の境界が形成されるが、この方向においてもパネル相互の境界では封止部分等に起因して画素相互の間隔が大きくなる。すなわち、何れの方向においてもパネル相互間では画素の中心間隔がパネル内における値よりも大きくなる。そのため、そのパネル相互間と内周部とで画素の中心間隔を一致させて表示品質を高める目的で、個々のパネルの周縁部に位置する発光区画の幅寸法や長さ寸法を内周部に位置するものよりも小さくしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−240152号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載されたように周縁部の発光区画の幅寸法や長さ寸法を小さくすると、その面積が小さくなり延いては蛍光体層の固着面積が小さくなるため、周縁部における輝度が著しく低下する。そのため、パネル相互間における画素の中心間隔をパネル内周部と同様にしても、その輝度の差に起因してパネル相互の境界が目立ち、表示画像の連続性が妨げられる問題があった。なお、上記公報には、この輝度低下を制御回路で補正することも提案されているが、このような補正が可能であるのはパネルのうち表示電極の長手方向に沿った二辺だけであるので、表示品質を高めることは困難である。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、パネル相互の境界における表示品質低下を抑制し得るタイル型表示装置用パネルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させてその蛍光体層を励起して発光させるための複数対の表示電極とを備え、複数個が一面内に並んで配置されることにより大表示面を構成するために用いられるタイル型表示装置用パネルにおいて、前記複数の発光区画のうち外周縁部の所定範囲に位置する複数の周縁部発光区画の前記一面に沿い且つ各々の位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、その所定範囲よりも内周部に位置する内周部発光区画に比較して小さくされたものであって、(a)前記周縁部発光区画では前記第1平板内面にも前記蛍光体層が設けられることにより、前記放電空間内の蛍光体層のその周縁部発光区画における固着面積が前記内周部発光区画における固着面積よりも大きくされたことにある。
【0009】
【第1発明の効果】
このようにすれば、内周部発光区画に比較して区画の面積が小さくされた周縁部発光区画では、第1平板内面にも蛍光体層が設けられることにより、蛍光体層の固着面積が内周部発光区画に比較して大きくされているため、画像を表示させるためにガス放電を発生させると、内周部発光区画では第2平板内面や隔壁側面に設けられた蛍光体層が励起されて発光させられるのに対し、周縁部発光区画では、これらに加えて第1平板内面の蛍光体層も発光させられる。そのため、発光させられる蛍光体層の面積が増大させられたことに基づき、周縁部発光区画の輝度が内周部発光区画よりも高められるので、パネル相互の境界部において発光区画の面積が相対的に小さくされることに起因する輝度低下が好適に抑制され、その表示品質の低下が抑制される。
【0010】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させてその蛍光体層を励起して発光させるための複数対の表示電極とを備え、複数個が一面内に並んで配置されることにより大表示面を構成するために用いられるタイル型表示装置用パネルにおいて、前記複数の発光区画のうち外周縁部の所定範囲に位置する複数の周縁部発光区画の前記一面に沿い且つ各々の位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、その所定範囲よりも内周部に位置する内周部発光区画に比較して小さくされたものであって、(a)前記周縁部発光区画の前記第1平板から前記第2平板に向かう方向における前記放電空間の高さ寸法が前記内周部発光区画よりも高くされることにより、その放電空間の高さ寸法が一様な場合に比較して、前記第2平板内面および前記隔壁側面における前記蛍光体層の固着面積のそれら周縁部発光区画および内周部発光区画相互の差が小さくされたことにある。
【0011】
【第2発明の効果】
このようにすれば、内周部発光区画に比較して区画の面積が小さくされた周縁部発光区画では、放電空間の高さ寸法がその内周部発光区画に比較して高くされることにより、区画面積が相対的に小さくされたことに起因する蛍光体層の固着面積の差が小さくされる。そのため、発光区画の面積の相違に起因する光量の差が小さくされるので、パネル相互の境界部において発光区画の面積が相対的に小さくされることに起因する輝度低下が好適に抑制され、その表示品質の低下が抑制される。しかも、この態様によれば、内周部発光区画および周縁部発光区画の何れの前面板内面にも蛍光体層を設け得るため、前記第1発明に比較して、パネル相互間における輝度低下を抑制することに伴ってパネル全体の輝度が低下させられない利点もある。
【0012】
好適には、前記周縁部発光区画における前記放電空間の高さ寸法は、前記第2平板内面および前記隔壁側面における蛍光体層の固着面積が、周縁部発光区画および内周部発光区画相互に同一となるように定められる。このようにすれば、輝度の一様性が一層高められ延いては表示品質が一層高められる。
【0013】
【第1、第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記タイル型表示装置用パネルは、格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、前記一方向に交叉する他方向に沿って互いに平行に伸びるようにそのコア誘電体層に積層された複数本の帯状厚膜導体を備えた導体層とを備え且つ前記第1平板および前記第2平板の間にそれらに平行に配置された格子状のシート部材を含み、それら複数本の帯状厚膜導体で前記複数対の表示電極が構成されたものである。このようにすれば、格子状を成すコア誘電体層に導体層が層状に設けられたシート部材に備えられた複数本の帯状厚膜導体で複数対の表示電極が構成されることから、第1平板内面に表示電極が設けられる場合に比較して、その内面の一層広い面積に亘って蛍光体層を設け得る利点がある。
【0014】
また、好適には、前記複数本の帯状厚膜導体は、相互に隣接するものの前記放電面が、前記シート部材の格子の交点間においてその格子の内壁面上で相互に対向させられたものである。このようにすれば、シート部材の格子内で互いに対向させられた放電面間で放電させられる対向放電構造に構成されるため、放電させられる放電面相互の間隔がその放電面内で一様になる。そのため、一平面上に表示電極が配置された従来の3電極構造に比較して効率が高められると共に、局部的に放電が強くなることに起因する表示電極を覆う誘電体層(MgO等から成る保護膜が設けられる場合には誘電体層および保護膜)の局部的な劣化が抑制され延いては表示装置の寿命が長くなる利点がある。しかも、放電面が第1平板と第2平板との中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面に沿った方向となることから、第1平板内面および第2平板内面上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、その広い範囲に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点もある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明のタイル型表示装置用パネル10が縦横に複数枚(図においては縦横共に4枚)が並べられることによって構成された大型表示装置を表している。この大型表示装置は、例えば対角寸法が80〜100インチ程度の大きさを備えたものであって、例えば屋外に設置されることにより、映像や案内等を表示するために用いられる。上記タイル型表示装置用パネル10は、例えばAC型ガス放電表示装置であり、例えば、対角20〜25インチ程度の大きさを備えている。
【0017】
図2は、上記のタイル型表示装置用パネルすなわちAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法であって透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものであって、例えば450×350(mm)程度の大きさを備えるものである。本実施例においては、上記の前面板16が第1平板に、背面板18が第2平板にそれぞれ相当する。
【0018】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0019】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0020】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0021】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成るものであるが、例えばブラック・ストライプとしても機能させる場合には、例えば隔壁22と同じ材料系に黒色顔料粉末(例えば黒色金属酸化物粉末)を分散させた材料で構成され、何れの場合にも、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。PDP10の周縁部では、前面板内面12のこの隔壁34相互間に蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0022】
図3は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に積層された導体層44と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。本実施例においては、上記誘電体層38,40の一方または両方がコア誘電体層に相当する。
【0023】
上記のシート部材20の格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22の長手方向に沿って延びる部分が、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば250(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。一方、隔壁22に直交する方向に沿って伸びる部分の幅寸法は、例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。また、中心間隔は例えば200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度であり、隣接するもの相互の間隔は例えば300(μm)程度になっている。そのため、このシート部材20の格子の開口寸法は例えば750×300(μm)程度であり、例えば6つの開口部で一つの発光区画が構成され、RGBの3色から成る画素の中心間隔は、縦方向および横方向の何れにおいても例えば3(mm)程度である。
【0024】
また、前記の上側誘電体層38および下側誘電体層40は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、例えばそれらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。これら誘電体層38,40は、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系、例えばAl2O3−SiO2−PbO等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。
【0025】
また、前記の導体層44は、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であって、例えば10〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。この導体層44は、誘電体層38,40の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の横方向部分57の各々に備えられており、前記書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。
【0026】
また、左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0027】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0028】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0029】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0030】
ところで、PDP10は、その表示領域が、図4に示される一点鎖線よりも外周側の周縁部42と、その一点鎖線よりも内周側の内周部46とに区分される。周縁部42は、例えば1画素を構成する3本の放電空間24に相当する幅寸法を有している。
【0031】
図5は、上記の周縁部42の構成を説明するための4枚のPDP10相互の境界部分を拡大して示した図である。図において一点鎖線は画素相互の境界を表しており、PDPD10の各々において最も外周側に描かれている縦方向および横方向各々一本の一点鎖線が外周部42および内周部46の境界に対応する。図に外周部42の範囲を斜線で示した。前述したようにPDP10の一画素はRGB3色で構成されているため、画素相互の境界を隔壁22の幅方向の中央としたときの画素幅寸法は、それら3色のうちの1色の蛍光体層32がそれぞれ設けられた放電空間22の中心間隔の3倍の大きさを有している。この画素幅寸法は、図に示されるように外周部42では内周部46よりも小さい値になっており、内周部46において例えばWh=3(mm)程度の場合には、周縁部42ではWmh=2.1(mm)程度である。隔壁22の幅寸法はPDP10の全面で一様な寸法、例えば上記の画素幅寸法のときは0.2(mm)程度になっているので、各発光区画の幅寸法は、内周部46において0.8(mm)程度、外周部42において0.5(mm)程度になる。
【0032】
このため、PDP10の外周縁部に設けられた封止部分(すなわちシール・ガラス)の例えば0.8(mm)程度の厚さ寸法を考慮した非表示領域56の幅寸法mhは、例えば0.9(mm)程度になるので、隣接するPDP10相互間における画素ピッチは、外周部42の画素幅寸法にこれを加算した3(mm)程度になる。上記内周部46における画素幅寸法Whは、その内周部46における画素ピッチに等しい値であり、したがって、本実施例においては、画素幅寸法が小さくされた外周部42においても、内周部46と同じ画素ピッチに維持されている。なお、上記図5においては、説明に必要な背面板18および隔壁22のみを示しており、また、PDP10の外周端面に設けられている封止部分も省略している。
【0033】
また、隔壁22に沿った図における上下方向においては、駆動上形成される発光区画の大きさは、外周部42における長さ寸法Wmvが内周部46における長さ寸法Wvよりも短くされている。このため、上下方向においても、非表示領域56の幅寸法mvを加算した長さ寸法がWvに一致するものとされており、PDP10相互の境界における画素ピッチが内周部におけるそれと同じ値になっている。したがって、本実施例においては、図の上下方向および左右方向の何れにおいても、外周部42では、発光区画の各々が位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、内周部46に位置する発光区画に比較して小さくされている。
【0034】
また、上記の外周部42には、図6にPDP10の断面構造を示すように、前面板16の隔壁34相互間に蛍光体層36が設けられている。すなわち、隔壁34は前面板16の全面に設けられているが、前面板16側の蛍光体層36は、図における右端に位置する3つの放電空間24上のみに設けられており、内周部46では背面板18側だけに蛍光体層32が備えられる。この蛍光体層36は、発光区画の面積が内周部46に比較して小さい部分、すなわち背面板18上の蛍光体層32の固着面積が相対的に小さい部分に設けられているのであり、図に示される隔壁22の長手方向に沿った辺だけでなく、これに垂直な辺においても、発光区画の面積が小さくされている部分には同様に設けられている。このため、前面板16の内面には、図7に示されるように、蛍光体層36の設けられている領域が矩形枠状に形成されている。なお、上記の図6においては、説明の便宜上、シート部材20と前面板16および背面板18とを相互に離隔させた状態で描いた。
【0035】
以上のように構成されたPDP10は、例えば、発光区画を選択するためのアドレス期間と表示放電を発生させるための表示期間とを分離した所謂ADS駆動方法によって駆動される。アドレス期間においては、前記帯状厚膜導体52のうち走査電極として機能させられるものに所定の交流パルス(走査パルス)を印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のものに所定の交流パルス(書込パルス)を印加すると、それらの間で書込放電が発生させられ、選択された発光区画において走査電極上に壁電荷が蓄積された状態になる。
【0036】
上記のようにして全ての走査電極を走査した後、次いで、表示期間では、全ての走査電極および表示電極間に所定の交流パルス(放電維持パルス)を印加すると、電荷が蓄積されている発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、それらの間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。そして、走査電極の走査の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。
【0037】
このとき、本実施例においては、前面板16側の蛍光体層36が外周部42だけに備えられていることから、その外周部42の発光区画内で表示放電が発生させられた際には、背面板18上、隔壁22の側面、および前面板16上の蛍光体層32,36が発光させられ、その光が前面板16を通して射出される。しかしながら、内周部46で表示放電が発生させられた場合には、前面板16上には蛍光体層が設けられていないため、背面板18上および隔壁22の側面の蛍光体層32のみが発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることとなる。そのため、外周部42では、背面板18側の蛍光体層固着面積が相対的に小さいことからそこで発生させられる光が内周部46に比較して少なくなるが、その差は前面板16側の蛍光体層36の発光で補われる。
【0038】
したがって、前記の図5に示されるように周縁部42において画素が相対的に小さく構成されていても、その画素の輝度すなわち単位面積当たりの光量は内周部46よりも高められるので、画素相互の光量の差が小さくされ、或いは無くなる。これにより、タイル型表示装置におけるPDP10相互の境界における輝度低下が好適に抑制されるので、高い表示品質が得られることになる。本実施例では、シート部材20内に走査電極および表示電極を構成するための帯状厚膜導体52が備えられていることから、前面板16内面には何ら電極が設けられないため、その内面12に蛍光体層36を設けて外周部42における輝度の低下を補うことができるのである。本実施例においては、蛍光体層36を設けない場合に比較して外周部42における輝度が1.5倍程度に向上し、非表示領域56を含めた外周部42の画素の輝度と、内周部46の画素の輝度との差を10(%)以下に抑えることができた。
【0039】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図8に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0040】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0041】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0042】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0043】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0044】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図9に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図10(a)〜(e)および図11(f)〜(j)を参照して説明する。
【0045】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図10参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0046】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のシリカ、アルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば700(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図10(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図10(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図10(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程(すなわち支持体を用意する工程)に対応する。
【0047】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38,40を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44を形成するための厚膜導体ペースト98(図10(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38,40を形成するための誘電体印刷層100,104、導体層44を形成するための多数本の帯状印刷膜106から成る導体印刷層102が、その積層順序に従って形成される。
【0048】
上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末や銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図10(c)〜(e)は、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104がそれぞれ形成された段階を示している。なお、誘電体印刷層100,104は、例えばそれぞれ70(μm)程度の厚さ寸法に形成され、導体印刷層102は、例えば35(μm)程度の厚さ寸法に形成される。一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0049】
上記のようにして厚膜印刷層100〜104を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図11(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0050】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜104は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38,40および導体層44すなわちシート部材20の基本構成要素が生成される。図11(g)は、この状態を示している。このとき、剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図12参照)のみから成る粒子層116となる。
【0051】
図12は、図11(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜104が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜104の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0052】
なお、本実施例においては、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0053】
図9に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40および導体層44の積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0054】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図11(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0055】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト124に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。図11(i)は、焼成後の段階を示している。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0056】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に、例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。図11(j)は、この段階を示している。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されず、また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されないのである。
【0057】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、前述した実施例と共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図13は、他の実施例のPDP132の構成の要部を説明する断面図であって、前述の実施例の図6に対応する図である。図において、PDP132は、図における右端に位置し且つ放電空間24の幅寸法の小さくされた(すなわち発光区画の幅寸法の小さくされた)外周部42では、例えば背面板18内面(或いはオーバ・コート30の表面)に凹所134が形成されることにより、放電空間24の高さ寸法hmが180(μm)程度とされ、内周部46における高さ寸法h=50(μm)程度に比較して例えば3〜4倍程度に高くされている。そのため、本実施例においては、外周部42における放電空間24の幅寸法が相対的に小さくされているにも拘わらず、蛍光体層32の塗布面積が外周部42と内周部46とで略同一になっている。なお、前記の図4に示される矩形枠状の外周部42の全体において、このように放電空間24の高さ寸法が高くされている。すなわち、図13において内周部46に位置する放電空間24も、その長手方向における両端部の一つの発光区画に対応する位置では高さ寸法がhm程度に高くされている。また、前面板16の内面12には、そこに設けられている複数本の隔壁34の全ての相互間に蛍光体層36が設けられている。その他の構成は、前述した実施例のPDP10と同様である。
【0059】
このように構成されたPDP132によれば、前記のPDP10と同様に駆動されると、外周部42および内周部46にそれぞれ設けられている蛍光体層32の面積が相互に同様であるため、発光区画が相対的に小面積となった外周部42の輝度が内周部46の輝度よりも高められる。そのため、本実施例においても、PDP132相互の境界に非表示領域56が存在することに起因する光量低下が外周部42における輝度が高められたことによって補われるので、その非表示領域56を含む外周部42の画素と内周部46の画素との輝度の差が減じられ、或いは輝度の差が無くなるので、PDP132相互の境界部に低輝度部分が生じることに起因する表示品質の低下が好適に抑制される。
【0060】
しかも、本実施例によれば、背面板18上における蛍光体層32の塗布面積の差が減じられ或いは差が無くされることによって外周部42における輝度が高められているので、前面板内面12の全面に蛍光体層36を設けることができる。したがって、PDP10に比較してタイル型表示装置全体の輝度が高められる利点もある。
【0061】
なお、PDPの四隅では、隔壁22に沿った方向およびこれに直交する方向の2方向において、発光区画の外形寸法が内周部46の発光区画に比較して小さくなる。そのため、PDPの輝度は、全面に一様に蛍光体層を設けた場合には、内周部46>外周部42(四隅を除く)>四隅 の順に低くなる。本実施例のPDP132では、外周部42の放電空間24の高さ寸法を変更することで、所望の輝度を得ることができるので、例えば、放電空間24の高さ寸法を内周部46よりも外周部42が高く、その外周部42の辺に位置する部分よりも四隅が更に高くなるように構成すれば、上記の輝度の差を一層緩和して、表示品質を一層高めることができる。
【0062】
図14は、上記の図13に示されるPDP132において、背面板18に代えて用いられ得る背面板136の外周縁近傍における断面の要部を説明する図である。図において、この背面板136の内面には、隔壁22やアンダ・コート26等が設けられることに代えて、例えば紙面に垂直な一方向に沿って伸びる複数本の凹溝138が設けられている。そのため、この実施例では、背面板136のうちその凹溝138の相互間に位置する部分が、放電空間140を相互に区分する隔壁として機能する。なお、書込電極28,オーバ・コート30,および蛍光体層32は、この凹溝138内に備えられている。
【0063】
また、図における右端に位置する外周部42の画素は、前面板16との間に形成される上記放電空間140の幅寸法(すなわち発光区画の幅寸法)が、内周部46の画素に比較して小さくなっている。その一方、この外周部42の画素では、上記の凹溝138の深さ寸法が例えば内周部のそれの3〜4倍程度に深く形成されており、本実施例においても、外周部42における放電空間140の幅寸法が相対的に小さくされているにも拘わらず、蛍光体層32の塗布面積が外周部42と内周部46とで略同一になっている。外周部42および内周部46の各々における放電空間140の高さ寸法は、前記の図13に示される実施例と同様に例えば180(μm)程度および50(μm)程度である。なお、シート部材20および前面板16側の構成は、PDP132と同様である。
【0064】
したがって、本実施例においても、PDP132の場合と同様に、背面板136側の蛍光体層32の固着面積が外周部42と内周部46とで略同一になっているため、発光区画が相対的に小面積となった外周部42の輝度が内周部46の輝度よりも高められるので、PDP相互の境界に非表示領域56が存在することに起因する光量低下が外周部42における輝度が高められたことによって補われるので、その非表示領域56を含む外周部42の画素と内周部46の画素との輝度の差が減じられ、或いは輝度の差が無くなるので、PDP相互の境界部に低輝度部分が生じることに起因する表示品質の低下が好適に抑制される。また、前面板内面12の全体に蛍光体層36を設け得るため、表示装置全体の輝度も同様に高められる。
【0065】
しかも、本実施例によれば、背面板136に凹溝138が設けられることによって放電空間140の高さ寸法が調節されると共に、書込電極28がその凹溝138内にオーバ・コート30で覆われた状態で設けられていることから、書込電極28を覆う誘電体層の厚さ寸法がパネル全体で一様である。そのため、図13に示されるようにオーバ・コート30の厚さ寸法が薄くされることによって放電空間24の高さ寸法が調節されている場合に比較して、外周部42と内周部46との書込電極28の放電特性の相違が抑制される利点がある。なお、図から明らかなように、外周部42ではシート部材20内に備えられている走査電極(帯状厚膜導体52)との相互間隔が大きくなる。それに起因して書込放電が発生し難くなる場合には、例えば、内周部46と同じ電圧で確実に放電が発生するように、書込電極28上のオーバ・コート30(誘電体層)の厚さ寸法を薄くする等の構造を採用すればよい。
【0066】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0067】
例えば、実施例においては、タイル型表示装置を構成するためのカラー表示用のADS駆動により駆動されるAC型PDP10に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、蛍光体層32を備えたPDPであれば、他の単純マトリックス駆動されるPDPや、DC型のPDP等にも同様に適用される。
【0068】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0069】
また、実施例においては、シート部材20内に走査電極および表示電極が内蔵されることにより、前面板内面12に電極が備えられておらず、走査電極および表示電極が対向放電させられるPDPに本発明が適用されていたが、例えば格子状の隔壁の高さ方向における中間位置に走査電極および表示電極が設けられたPDPや、前面板内面12に表示電極対が設けられる面放電型PDPにも本発明は適用し得る。
【0070】
また、実施例においては、発光区画内に複数対の表示電極および走査電極が備えられていたが、発光区画毎の電極対の数は適宜変更され、また、発光区画毎に一対の表示電極および走査電極が備えられた構造とされていても、本発明は適用される。
【0071】
また、PDP10全体の各部の寸法、シート部材20の各部の寸法や構成材料等は、実施例で示したものに限られず、得ようとする表示領域の大きさや画素密度、輝度等に応じて適宜定められる。例えば、外周部42における画素寸法は、PDP10,132を複数枚並べたときに相互間に形成される非表示領域56の大きさに応じて定められるので、この幅寸法が小さいときには内周部46の画素寸法との差が小さくされ、反対に非表示領域56の幅寸法が大きくなる場合には、その画素寸法の差が大きくされる。
【0072】
また、実施例においては、シート部材20内に層状に設けられた帯状厚膜導体52の側面が電極として用いられることによって対向放電構造に構成されていたが、本発明は、従来のPDPのような面放電構造のものにも同様に適用される。
【0073】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイル型表示装置用パネルで大型の表示装置を構成した形態の一例を示した図である。
【図2】図1のパネルの一例であるカラーPDPの構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】図2のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図4】図2のPDPにおける周縁部と内周部とを示す図である。
【図5】図2のPDPの隅部における画素ピッチをこれに隣接する他のPDPと併せて説明する図である。
【図6】隔壁の長手方向に垂直な断面において、図2のPDPの断面構造の要部を説明する図である。
【図7】前面板内面の蛍光体層の形成状態を説明する図である。
【図8】図2のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図9】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図10】(a)〜(e)は、図9の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図11】(f)〜(j)は、図9の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図10(e)に続く図である。
【図12】図9の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図13】本発明の他の実施例のPDPの断面構造を説明する図である。
【図14】本発明の更に他の実施例のPDPを構成するための背面板の断面構造の要部を説明する図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
24:放電空間
32、36:蛍光体層
42:外周部
46:内周部
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイル型表示装置用パネルの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透光性を有する第1平板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数本の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための複数対の表示電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用してその蛍光体層を励起して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のガス放電表示装置が知られている。
【0003】
上記のガス放電表示装置は、例えば、所望の大きさの表示面積を得るためにそれに応じた大きさの第1平板および第2平板を用いて構成されるが、表示面積が大きくなると単独の表示装置で構成することが製造上および取扱い上著しく困難になる。そこで、例えば対角100インチもの大型の表示装置を構成する場合には、複数枚の表示装置を一面内に相互に略密接して配列することにより、全体で大表示面を構成することが行われている。このような表示装置は例えばタイル型表示装置と称される。
【0004】
ところで、上記のタイル型表示装置に用いられる個々のパネルは、発光効率を可及的に高くすると共に表示品質を高める目的で、放電空間相互を区分する隔壁が例えば60(μm)〜1(mm)程度の小さな幅寸法とされている。一画素がRGB3色で表示されるカラー表示装置における画素相互の境界もこの隔壁で構成されるため、画素相互の間隔も隔壁幅寸法に一致する。これに対して、タイル状に並べれられるパネル相互間には個々のパネルの封止部分が備えられることから、パネル相互の境界における画素相互の間隔は、この封止部分の大きさが加算されるので隔壁幅寸法よりも大きくなる。一方、放電空間の長手方向に沿った方向においては、駆動方法に従って電気的に発光区画相互、画素相互の境界が形成されるが、この方向においてもパネル相互の境界では封止部分等に起因して画素相互の間隔が大きくなる。すなわち、何れの方向においてもパネル相互間では画素の中心間隔がパネル内における値よりも大きくなる。そのため、そのパネル相互間と内周部とで画素の中心間隔を一致させて表示品質を高める目的で、個々のパネルの周縁部に位置する発光区画の幅寸法や長さ寸法を内周部に位置するものよりも小さくしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−240152号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載されたように周縁部の発光区画の幅寸法や長さ寸法を小さくすると、その面積が小さくなり延いては蛍光体層の固着面積が小さくなるため、周縁部における輝度が著しく低下する。そのため、パネル相互間における画素の中心間隔をパネル内周部と同様にしても、その輝度の差に起因してパネル相互の境界が目立ち、表示画像の連続性が妨げられる問題があった。なお、上記公報には、この輝度低下を制御回路で補正することも提案されているが、このような補正が可能であるのはパネルのうち表示電極の長手方向に沿った二辺だけであるので、表示品質を高めることは困難である。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、パネル相互の境界における表示品質低下を抑制し得るタイル型表示装置用パネルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させてその蛍光体層を励起して発光させるための複数対の表示電極とを備え、複数個が一面内に並んで配置されることにより大表示面を構成するために用いられるタイル型表示装置用パネルにおいて、前記複数の発光区画のうち外周縁部の所定範囲に位置する複数の周縁部発光区画の前記一面に沿い且つ各々の位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、その所定範囲よりも内周部に位置する内周部発光区画に比較して小さくされたものであって、(a)前記周縁部発光区画では前記第1平板内面にも前記蛍光体層が設けられることにより、前記放電空間内の蛍光体層のその周縁部発光区画における固着面積が前記内周部発光区画における固着面積よりも大きくされたことにある。
【0009】
【第1発明の効果】
このようにすれば、内周部発光区画に比較して区画の面積が小さくされた周縁部発光区画では、第1平板内面にも蛍光体層が設けられることにより、蛍光体層の固着面積が内周部発光区画に比較して大きくされているため、画像を表示させるためにガス放電を発生させると、内周部発光区画では第2平板内面や隔壁側面に設けられた蛍光体層が励起されて発光させられるのに対し、周縁部発光区画では、これらに加えて第1平板内面の蛍光体層も発光させられる。そのため、発光させられる蛍光体層の面積が増大させられたことに基づき、周縁部発光区画の輝度が内周部発光区画よりも高められるので、パネル相互の境界部において発光区画の面積が相対的に小さくされることに起因する輝度低下が好適に抑制され、その表示品質の低下が抑制される。
【0010】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させてその蛍光体層を励起して発光させるための複数対の表示電極とを備え、複数個が一面内に並んで配置されることにより大表示面を構成するために用いられるタイル型表示装置用パネルにおいて、前記複数の発光区画のうち外周縁部の所定範囲に位置する複数の周縁部発光区画の前記一面に沿い且つ各々の位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、その所定範囲よりも内周部に位置する内周部発光区画に比較して小さくされたものであって、(a)前記周縁部発光区画の前記第1平板から前記第2平板に向かう方向における前記放電空間の高さ寸法が前記内周部発光区画よりも高くされることにより、その放電空間の高さ寸法が一様な場合に比較して、前記第2平板内面および前記隔壁側面における前記蛍光体層の固着面積のそれら周縁部発光区画および内周部発光区画相互の差が小さくされたことにある。
【0011】
【第2発明の効果】
このようにすれば、内周部発光区画に比較して区画の面積が小さくされた周縁部発光区画では、放電空間の高さ寸法がその内周部発光区画に比較して高くされることにより、区画面積が相対的に小さくされたことに起因する蛍光体層の固着面積の差が小さくされる。そのため、発光区画の面積の相違に起因する光量の差が小さくされるので、パネル相互の境界部において発光区画の面積が相対的に小さくされることに起因する輝度低下が好適に抑制され、その表示品質の低下が抑制される。しかも、この態様によれば、内周部発光区画および周縁部発光区画の何れの前面板内面にも蛍光体層を設け得るため、前記第1発明に比較して、パネル相互間における輝度低下を抑制することに伴ってパネル全体の輝度が低下させられない利点もある。
【0012】
好適には、前記周縁部発光区画における前記放電空間の高さ寸法は、前記第2平板内面および前記隔壁側面における蛍光体層の固着面積が、周縁部発光区画および内周部発光区画相互に同一となるように定められる。このようにすれば、輝度の一様性が一層高められ延いては表示品質が一層高められる。
【0013】
【第1、第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記タイル型表示装置用パネルは、格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、前記一方向に交叉する他方向に沿って互いに平行に伸びるようにそのコア誘電体層に積層された複数本の帯状厚膜導体を備えた導体層とを備え且つ前記第1平板および前記第2平板の間にそれらに平行に配置された格子状のシート部材を含み、それら複数本の帯状厚膜導体で前記複数対の表示電極が構成されたものである。このようにすれば、格子状を成すコア誘電体層に導体層が層状に設けられたシート部材に備えられた複数本の帯状厚膜導体で複数対の表示電極が構成されることから、第1平板内面に表示電極が設けられる場合に比較して、その内面の一層広い面積に亘って蛍光体層を設け得る利点がある。
【0014】
また、好適には、前記複数本の帯状厚膜導体は、相互に隣接するものの前記放電面が、前記シート部材の格子の交点間においてその格子の内壁面上で相互に対向させられたものである。このようにすれば、シート部材の格子内で互いに対向させられた放電面間で放電させられる対向放電構造に構成されるため、放電させられる放電面相互の間隔がその放電面内で一様になる。そのため、一平面上に表示電極が配置された従来の3電極構造に比較して効率が高められると共に、局部的に放電が強くなることに起因する表示電極を覆う誘電体層(MgO等から成る保護膜が設けられる場合には誘電体層および保護膜)の局部的な劣化が抑制され延いては表示装置の寿命が長くなる利点がある。しかも、放電面が第1平板と第2平板との中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面に沿った方向となることから、第1平板内面および第2平板内面上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、その広い範囲に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点もある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明のタイル型表示装置用パネル10が縦横に複数枚(図においては縦横共に4枚)が並べられることによって構成された大型表示装置を表している。この大型表示装置は、例えば対角寸法が80〜100インチ程度の大きさを備えたものであって、例えば屋外に設置されることにより、映像や案内等を表示するために用いられる。上記タイル型表示装置用パネル10は、例えばAC型ガス放電表示装置であり、例えば、対角20〜25インチ程度の大きさを備えている。
【0017】
図2は、上記のタイル型表示装置用パネルすなわちAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法であって透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものであって、例えば450×350(mm)程度の大きさを備えるものである。本実施例においては、上記の前面板16が第1平板に、背面板18が第2平板にそれぞれ相当する。
【0018】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0019】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0020】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0021】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成るものであるが、例えばブラック・ストライプとしても機能させる場合には、例えば隔壁22と同じ材料系に黒色顔料粉末(例えば黒色金属酸化物粉末)を分散させた材料で構成され、何れの場合にも、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。PDP10の周縁部では、前面板内面12のこの隔壁34相互間に蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0022】
図3は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば150(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に積層された導体層44と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。本実施例においては、上記誘電体層38,40の一方または両方がコア誘電体層に相当する。
【0023】
上記のシート部材20の格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22の長手方向に沿って延びる部分が、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば250(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。一方、隔壁22に直交する方向に沿って伸びる部分の幅寸法は、例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。また、中心間隔は例えば200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度であり、隣接するもの相互の間隔は例えば300(μm)程度になっている。そのため、このシート部材20の格子の開口寸法は例えば750×300(μm)程度であり、例えば6つの開口部で一つの発光区画が構成され、RGBの3色から成る画素の中心間隔は、縦方向および横方向の何れにおいても例えば3(mm)程度である。
【0024】
また、前記の上側誘電体層38および下側誘電体層40は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、例えばそれらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。これら誘電体層38,40は、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系、例えばAl2O3−SiO2−PbO等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。
【0025】
また、前記の導体層44は、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であって、例えば10〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。この導体層44は、誘電体層38,40の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の横方向部分57の各々に備えられており、前記書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。
【0026】
また、左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0027】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0028】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0029】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0030】
ところで、PDP10は、その表示領域が、図4に示される一点鎖線よりも外周側の周縁部42と、その一点鎖線よりも内周側の内周部46とに区分される。周縁部42は、例えば1画素を構成する3本の放電空間24に相当する幅寸法を有している。
【0031】
図5は、上記の周縁部42の構成を説明するための4枚のPDP10相互の境界部分を拡大して示した図である。図において一点鎖線は画素相互の境界を表しており、PDPD10の各々において最も外周側に描かれている縦方向および横方向各々一本の一点鎖線が外周部42および内周部46の境界に対応する。図に外周部42の範囲を斜線で示した。前述したようにPDP10の一画素はRGB3色で構成されているため、画素相互の境界を隔壁22の幅方向の中央としたときの画素幅寸法は、それら3色のうちの1色の蛍光体層32がそれぞれ設けられた放電空間22の中心間隔の3倍の大きさを有している。この画素幅寸法は、図に示されるように外周部42では内周部46よりも小さい値になっており、内周部46において例えばWh=3(mm)程度の場合には、周縁部42ではWmh=2.1(mm)程度である。隔壁22の幅寸法はPDP10の全面で一様な寸法、例えば上記の画素幅寸法のときは0.2(mm)程度になっているので、各発光区画の幅寸法は、内周部46において0.8(mm)程度、外周部42において0.5(mm)程度になる。
【0032】
このため、PDP10の外周縁部に設けられた封止部分(すなわちシール・ガラス)の例えば0.8(mm)程度の厚さ寸法を考慮した非表示領域56の幅寸法mhは、例えば0.9(mm)程度になるので、隣接するPDP10相互間における画素ピッチは、外周部42の画素幅寸法にこれを加算した3(mm)程度になる。上記内周部46における画素幅寸法Whは、その内周部46における画素ピッチに等しい値であり、したがって、本実施例においては、画素幅寸法が小さくされた外周部42においても、内周部46と同じ画素ピッチに維持されている。なお、上記図5においては、説明に必要な背面板18および隔壁22のみを示しており、また、PDP10の外周端面に設けられている封止部分も省略している。
【0033】
また、隔壁22に沿った図における上下方向においては、駆動上形成される発光区画の大きさは、外周部42における長さ寸法Wmvが内周部46における長さ寸法Wvよりも短くされている。このため、上下方向においても、非表示領域56の幅寸法mvを加算した長さ寸法がWvに一致するものとされており、PDP10相互の境界における画素ピッチが内周部におけるそれと同じ値になっている。したがって、本実施例においては、図の上下方向および左右方向の何れにおいても、外周部42では、発光区画の各々が位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、内周部46に位置する発光区画に比較して小さくされている。
【0034】
また、上記の外周部42には、図6にPDP10の断面構造を示すように、前面板16の隔壁34相互間に蛍光体層36が設けられている。すなわち、隔壁34は前面板16の全面に設けられているが、前面板16側の蛍光体層36は、図における右端に位置する3つの放電空間24上のみに設けられており、内周部46では背面板18側だけに蛍光体層32が備えられる。この蛍光体層36は、発光区画の面積が内周部46に比較して小さい部分、すなわち背面板18上の蛍光体層32の固着面積が相対的に小さい部分に設けられているのであり、図に示される隔壁22の長手方向に沿った辺だけでなく、これに垂直な辺においても、発光区画の面積が小さくされている部分には同様に設けられている。このため、前面板16の内面には、図7に示されるように、蛍光体層36の設けられている領域が矩形枠状に形成されている。なお、上記の図6においては、説明の便宜上、シート部材20と前面板16および背面板18とを相互に離隔させた状態で描いた。
【0035】
以上のように構成されたPDP10は、例えば、発光区画を選択するためのアドレス期間と表示放電を発生させるための表示期間とを分離した所謂ADS駆動方法によって駆動される。アドレス期間においては、前記帯状厚膜導体52のうち走査電極として機能させられるものに所定の交流パルス(走査パルス)を印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のものに所定の交流パルス(書込パルス)を印加すると、それらの間で書込放電が発生させられ、選択された発光区画において走査電極上に壁電荷が蓄積された状態になる。
【0036】
上記のようにして全ての走査電極を走査した後、次いで、表示期間では、全ての走査電極および表示電極間に所定の交流パルス(放電維持パルス)を印加すると、電荷が蓄積されている発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、それらの間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。そして、走査電極の走査の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。
【0037】
このとき、本実施例においては、前面板16側の蛍光体層36が外周部42だけに備えられていることから、その外周部42の発光区画内で表示放電が発生させられた際には、背面板18上、隔壁22の側面、および前面板16上の蛍光体層32,36が発光させられ、その光が前面板16を通して射出される。しかしながら、内周部46で表示放電が発生させられた場合には、前面板16上には蛍光体層が設けられていないため、背面板18上および隔壁22の側面の蛍光体層32のみが発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることとなる。そのため、外周部42では、背面板18側の蛍光体層固着面積が相対的に小さいことからそこで発生させられる光が内周部46に比較して少なくなるが、その差は前面板16側の蛍光体層36の発光で補われる。
【0038】
したがって、前記の図5に示されるように周縁部42において画素が相対的に小さく構成されていても、その画素の輝度すなわち単位面積当たりの光量は内周部46よりも高められるので、画素相互の光量の差が小さくされ、或いは無くなる。これにより、タイル型表示装置におけるPDP10相互の境界における輝度低下が好適に抑制されるので、高い表示品質が得られることになる。本実施例では、シート部材20内に走査電極および表示電極を構成するための帯状厚膜導体52が備えられていることから、前面板16内面には何ら電極が設けられないため、その内面12に蛍光体層36を設けて外周部42における輝度の低下を補うことができるのである。本実施例においては、蛍光体層36を設けない場合に比較して外周部42における輝度が1.5倍程度に向上し、非表示領域56を含めた外周部42の画素の輝度と、内周部46の画素の輝度との差を10(%)以下に抑えることができた。
【0039】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図8に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0040】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0041】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0042】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0043】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0044】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図9に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図10(a)〜(e)および図11(f)〜(j)を参照して説明する。
【0045】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図10参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0046】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のシリカ、アルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば700(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図10(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図10(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図10(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程(すなわち支持体を用意する工程)に対応する。
【0047】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38,40を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44を形成するための厚膜導体ペースト98(図10(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38,40を形成するための誘電体印刷層100,104、導体層44を形成するための多数本の帯状印刷膜106から成る導体印刷層102が、その積層順序に従って形成される。
【0048】
上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末や銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図10(c)〜(e)は、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104がそれぞれ形成された段階を示している。なお、誘電体印刷層100,104は、例えばそれぞれ70(μm)程度の厚さ寸法に形成され、導体印刷層102は、例えば35(μm)程度の厚さ寸法に形成される。一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0049】
上記のようにして厚膜印刷層100〜104を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図11(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0050】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜104は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38,40および導体層44すなわちシート部材20の基本構成要素が生成される。図11(g)は、この状態を示している。このとき、剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図12参照)のみから成る粒子層116となる。
【0051】
図12は、図11(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜104が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜104の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0052】
なお、本実施例においては、厚膜印刷層100〜104の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0053】
図9に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40および導体層44の積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0054】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図11(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0055】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト124に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。図11(i)は、焼成後の段階を示している。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0056】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に、例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。図11(j)は、この段階を示している。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されず、また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されないのである。
【0057】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、前述した実施例と共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図13は、他の実施例のPDP132の構成の要部を説明する断面図であって、前述の実施例の図6に対応する図である。図において、PDP132は、図における右端に位置し且つ放電空間24の幅寸法の小さくされた(すなわち発光区画の幅寸法の小さくされた)外周部42では、例えば背面板18内面(或いはオーバ・コート30の表面)に凹所134が形成されることにより、放電空間24の高さ寸法hmが180(μm)程度とされ、内周部46における高さ寸法h=50(μm)程度に比較して例えば3〜4倍程度に高くされている。そのため、本実施例においては、外周部42における放電空間24の幅寸法が相対的に小さくされているにも拘わらず、蛍光体層32の塗布面積が外周部42と内周部46とで略同一になっている。なお、前記の図4に示される矩形枠状の外周部42の全体において、このように放電空間24の高さ寸法が高くされている。すなわち、図13において内周部46に位置する放電空間24も、その長手方向における両端部の一つの発光区画に対応する位置では高さ寸法がhm程度に高くされている。また、前面板16の内面12には、そこに設けられている複数本の隔壁34の全ての相互間に蛍光体層36が設けられている。その他の構成は、前述した実施例のPDP10と同様である。
【0059】
このように構成されたPDP132によれば、前記のPDP10と同様に駆動されると、外周部42および内周部46にそれぞれ設けられている蛍光体層32の面積が相互に同様であるため、発光区画が相対的に小面積となった外周部42の輝度が内周部46の輝度よりも高められる。そのため、本実施例においても、PDP132相互の境界に非表示領域56が存在することに起因する光量低下が外周部42における輝度が高められたことによって補われるので、その非表示領域56を含む外周部42の画素と内周部46の画素との輝度の差が減じられ、或いは輝度の差が無くなるので、PDP132相互の境界部に低輝度部分が生じることに起因する表示品質の低下が好適に抑制される。
【0060】
しかも、本実施例によれば、背面板18上における蛍光体層32の塗布面積の差が減じられ或いは差が無くされることによって外周部42における輝度が高められているので、前面板内面12の全面に蛍光体層36を設けることができる。したがって、PDP10に比較してタイル型表示装置全体の輝度が高められる利点もある。
【0061】
なお、PDPの四隅では、隔壁22に沿った方向およびこれに直交する方向の2方向において、発光区画の外形寸法が内周部46の発光区画に比較して小さくなる。そのため、PDPの輝度は、全面に一様に蛍光体層を設けた場合には、内周部46>外周部42(四隅を除く)>四隅 の順に低くなる。本実施例のPDP132では、外周部42の放電空間24の高さ寸法を変更することで、所望の輝度を得ることができるので、例えば、放電空間24の高さ寸法を内周部46よりも外周部42が高く、その外周部42の辺に位置する部分よりも四隅が更に高くなるように構成すれば、上記の輝度の差を一層緩和して、表示品質を一層高めることができる。
【0062】
図14は、上記の図13に示されるPDP132において、背面板18に代えて用いられ得る背面板136の外周縁近傍における断面の要部を説明する図である。図において、この背面板136の内面には、隔壁22やアンダ・コート26等が設けられることに代えて、例えば紙面に垂直な一方向に沿って伸びる複数本の凹溝138が設けられている。そのため、この実施例では、背面板136のうちその凹溝138の相互間に位置する部分が、放電空間140を相互に区分する隔壁として機能する。なお、書込電極28,オーバ・コート30,および蛍光体層32は、この凹溝138内に備えられている。
【0063】
また、図における右端に位置する外周部42の画素は、前面板16との間に形成される上記放電空間140の幅寸法(すなわち発光区画の幅寸法)が、内周部46の画素に比較して小さくなっている。その一方、この外周部42の画素では、上記の凹溝138の深さ寸法が例えば内周部のそれの3〜4倍程度に深く形成されており、本実施例においても、外周部42における放電空間140の幅寸法が相対的に小さくされているにも拘わらず、蛍光体層32の塗布面積が外周部42と内周部46とで略同一になっている。外周部42および内周部46の各々における放電空間140の高さ寸法は、前記の図13に示される実施例と同様に例えば180(μm)程度および50(μm)程度である。なお、シート部材20および前面板16側の構成は、PDP132と同様である。
【0064】
したがって、本実施例においても、PDP132の場合と同様に、背面板136側の蛍光体層32の固着面積が外周部42と内周部46とで略同一になっているため、発光区画が相対的に小面積となった外周部42の輝度が内周部46の輝度よりも高められるので、PDP相互の境界に非表示領域56が存在することに起因する光量低下が外周部42における輝度が高められたことによって補われるので、その非表示領域56を含む外周部42の画素と内周部46の画素との輝度の差が減じられ、或いは輝度の差が無くなるので、PDP相互の境界部に低輝度部分が生じることに起因する表示品質の低下が好適に抑制される。また、前面板内面12の全体に蛍光体層36を設け得るため、表示装置全体の輝度も同様に高められる。
【0065】
しかも、本実施例によれば、背面板136に凹溝138が設けられることによって放電空間140の高さ寸法が調節されると共に、書込電極28がその凹溝138内にオーバ・コート30で覆われた状態で設けられていることから、書込電極28を覆う誘電体層の厚さ寸法がパネル全体で一様である。そのため、図13に示されるようにオーバ・コート30の厚さ寸法が薄くされることによって放電空間24の高さ寸法が調節されている場合に比較して、外周部42と内周部46との書込電極28の放電特性の相違が抑制される利点がある。なお、図から明らかなように、外周部42ではシート部材20内に備えられている走査電極(帯状厚膜導体52)との相互間隔が大きくなる。それに起因して書込放電が発生し難くなる場合には、例えば、内周部46と同じ電圧で確実に放電が発生するように、書込電極28上のオーバ・コート30(誘電体層)の厚さ寸法を薄くする等の構造を採用すればよい。
【0066】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0067】
例えば、実施例においては、タイル型表示装置を構成するためのカラー表示用のADS駆動により駆動されるAC型PDP10に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、蛍光体層32を備えたPDPであれば、他の単純マトリックス駆動されるPDPや、DC型のPDP等にも同様に適用される。
【0068】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0069】
また、実施例においては、シート部材20内に走査電極および表示電極が内蔵されることにより、前面板内面12に電極が備えられておらず、走査電極および表示電極が対向放電させられるPDPに本発明が適用されていたが、例えば格子状の隔壁の高さ方向における中間位置に走査電極および表示電極が設けられたPDPや、前面板内面12に表示電極対が設けられる面放電型PDPにも本発明は適用し得る。
【0070】
また、実施例においては、発光区画内に複数対の表示電極および走査電極が備えられていたが、発光区画毎の電極対の数は適宜変更され、また、発光区画毎に一対の表示電極および走査電極が備えられた構造とされていても、本発明は適用される。
【0071】
また、PDP10全体の各部の寸法、シート部材20の各部の寸法や構成材料等は、実施例で示したものに限られず、得ようとする表示領域の大きさや画素密度、輝度等に応じて適宜定められる。例えば、外周部42における画素寸法は、PDP10,132を複数枚並べたときに相互間に形成される非表示領域56の大きさに応じて定められるので、この幅寸法が小さいときには内周部46の画素寸法との差が小さくされ、反対に非表示領域56の幅寸法が大きくなる場合には、その画素寸法の差が大きくされる。
【0072】
また、実施例においては、シート部材20内に層状に設けられた帯状厚膜導体52の側面が電極として用いられることによって対向放電構造に構成されていたが、本発明は、従来のPDPのような面放電構造のものにも同様に適用される。
【0073】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイル型表示装置用パネルで大型の表示装置を構成した形態の一例を示した図である。
【図2】図1のパネルの一例であるカラーPDPの構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】図2のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図4】図2のPDPにおける周縁部と内周部とを示す図である。
【図5】図2のPDPの隅部における画素ピッチをこれに隣接する他のPDPと併せて説明する図である。
【図6】隔壁の長手方向に垂直な断面において、図2のPDPの断面構造の要部を説明する図である。
【図7】前面板内面の蛍光体層の形成状態を説明する図である。
【図8】図2のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図9】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図10】(a)〜(e)は、図9の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図11】(f)〜(j)は、図9の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図10(e)に続く図である。
【図12】図9の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図13】本発明の他の実施例のPDPの断面構造を説明する図である。
【図14】本発明の更に他の実施例のPDPを構成するための背面板の断面構造の要部を説明する図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
24:放電空間
32、36:蛍光体層
42:外周部
46:内周部
Claims (3)
- 透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させてその蛍光体層を励起して発光させるための複数対の表示電極とを備え、複数個が一面内に並んで配置されることにより大表示面を構成するために用いられるタイル型表示装置用パネルにおいて、前記複数の発光区画のうち外周縁部の所定範囲に位置する複数の周縁部発光区画の前記一面に沿い且つ各々の位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、その所定範囲よりも内周部に位置する内周部発光区画に比較して小さくされたものであって、
前記周縁部発光区画では前記第1平板内面にも前記蛍光体層が設けられることにより、前記放電空間内の蛍光体層のその周縁部発光区画における固着面積が前記内周部発光区画における固着面積よりも大きくされたことを特徴とするタイル型表示装置用パネル。 - 透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数本の放電空間の各々に設けられた蛍光体層と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させてその蛍光体層を励起して発光させるための複数対の表示電極とを備え、複数個が一面内に並んで配置されることにより大表示面を構成するために用いられるタイル型表示装置用パネルにおいて、前記複数の発光区画のうち外周縁部の所定範囲に位置する複数の周縁部発光区画の前記一面に沿い且つ各々の位置する辺に垂直な方向における長さ寸法が、その所定範囲よりも内周部に位置する内周部発光区画に比較して小さくされたものであって、
前記周縁部発光区画の前記第1平板から前記第2平板に向かう方向における前記放電空間の高さ寸法が前記内周部発光区画よりも高くされることにより、その放電空間の高さ寸法が一様な場合に比較して、前記第2平板内面および前記隔壁側面における前記蛍光体層の固着面積のそれら周縁部発光区画および内周部発光区画相互の差が小さくされたことを特徴とするタイル型表示装置用パネル。 - 格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、前記一方向に交叉する他方向に沿って互いに平行に伸びるようにそのコア誘電体層に積層された複数本の帯状厚膜導体を備えた導体層とを備え且つ前記第1平板および前記第2平板の間にそれらに平行に配置された格子状のシート部材を含み、それら複数本の帯状厚膜導体で前記複数対の表示電極が構成されたものである請求項1または請求項2のタイル型表示装置用パネル。
Priority Applications (1)
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JP2003094290A JP2004303548A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | タイル型表示装置用パネル |
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JP2003094290A JP2004303548A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | タイル型表示装置用パネル |
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2003
- 2003-03-31 JP JP2003094290A patent/JP2004303548A/ja active Pending
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