JP2004206977A - 導体配設方法および厚膜シート部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】厚膜導体形成時の熱処理に起因する基板の歪み等を抑制できる導体配設方法およびその導体配設方法に好適に用いられるシート状の厚膜を提供する。
【解決手段】分離工程において、シート部材92の切取り部94が分離され、導体塗布工程および重ね合わせ工程において、複数個の接続電極を備えた背面板の一面にそのシート部材92の内周部が固定される。そのため、シート部材20に帯状厚膜導体が備えられていることから、そのシート部材20を背面板上に固定するだけでそこに維持電極を配設することができるので、維持電極やそれを覆う誘電体を形成するに際して、厚膜生成のための熱処理が背面板に施されない。したがって、厚膜導体形成時の熱処理に起因する背面板の歪み等を抑制できる。しかも、その切取り部94が分離されるとシート部材20の端面にその導体層が露出させられるので、その端面を用いて、導体層を接続電極に接続することができる。
【選択図】 図3
【解決手段】分離工程において、シート部材92の切取り部94が分離され、導体塗布工程および重ね合わせ工程において、複数個の接続電極を備えた背面板の一面にそのシート部材92の内周部が固定される。そのため、シート部材20に帯状厚膜導体が備えられていることから、そのシート部材20を背面板上に固定するだけでそこに維持電極を配設することができるので、維持電極やそれを覆う誘電体を形成するに際して、厚膜生成のための熱処理が背面板に施されない。したがって、厚膜導体形成時の熱処理に起因する背面板の歪み等を抑制できる。しかも、その切取り部94が分離されるとシート部材20の端面にその導体層が露出させられるので、その端面を用いて、導体層を接続電極に接続することができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上への導体配設方法の改良、およびその導体配設方法に好適に用いられる導体と誘電体とが一体的に備えられたシート状の厚膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透明な第1基板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の放電電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のAC型ガス放電表示装置が知られている。このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
谷 千束著「ディスプレイ先端技術」初版第1刷、共立出版、1998年12月28日、p.78-88
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記放電電極は、一般に、前面板および背面板の少なくとも一方に設けられた厚膜導体で構成され、これを覆う誘電体は厚膜誘電体で構成される。そのため、これら厚膜導体および厚膜誘電体の形成過程において焼成処理が施されることから、基板が繰り返し加熱されることとなる。そのため、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、厚膜誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して、基板に歪みが生じると共に厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題があった。このような問題は、ガス放電表示装置に限られず、基板上に厚膜導体を設ける種々の装置において同様に生じ得る。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、厚膜導体形成時の熱処理に起因する基板の歪み等を抑制できる導体配設方法およびその導体配設方法に好適に用いられるシート状の厚膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、所定の基板上に導体を配設する方法であって、(a)所定の平面形状を有する厚膜誘電体層上にその周縁部に端部が位置する複数本の導体配線を有する厚膜導体層が積層され且つそれらの積層体の外周面全体が厚膜誘電体皮膜で覆われた厚膜シート部材のその周縁部をその内周部から分離することにより、その内周部の外周端面にそれら複数本の導体配線の各々を露出させる分離工程と、(b)前記複数本の導体配線の各々に接続するための複数個の接続電極を備えた前記基板の一面に前記厚膜シート部材の内周部を固定する固定工程とを、含むことにある。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、分離工程において、厚膜誘電体層上に厚膜導体層が積層され且つそれらを厚膜誘電体皮膜で覆った厚膜シート部材の周縁部が分離され、固定工程において、複数個の接続電極を備えた基板の一面にその厚膜シート部材の内周部が固定される。そのため、厚膜シート部材に導体配線が備えられていることから、その厚膜シート部材の内周部を基板上に固定するだけでその基板上に導体配線を配設することができるので、基板上に導体配線およびこれを覆う厚膜誘電体皮膜を形成するに際して、厚膜生成のための熱処理が基板に施されない。したがって、基板上に導体を配設するに際して、厚膜導体形成時の熱処理に起因する基板の歪み等を抑制できる。しかも、厚膜シート部材は、周縁部の分離前においては厚膜誘電体皮膜で覆われていることから厚膜導体層が露出していないが、その周縁部が分離されると内周部の端面にその導体配線が露出させられる。そのため、基板に固定した際に、その端面を用いて、容易に厚膜シート部材内の導体配線をその基板上の接続電極に接続することができる。なお、外周縁全体のうち除去する「周縁部」の範囲は、露出させようとする導体配線の形成状態に応じて適宜定められるものであり、例えば矩形の一辺のみであってもよい。
【0008】
因みに、上記のような厚膜誘電体皮膜で覆われた厚膜シート部材を製造するに際して、厚膜誘電体皮膜は、例えば、厚膜誘電体層および厚膜導体層の積層体を厚膜誘電体ペースト中に浸漬(ディッピング)し、これを焼成することで設けるのが簡便且つ確実な方法として一般に用いられる。しかしながら、このような皮膜形成方法では、積層体の全面に厚膜誘電体ペーストが塗布されるため、基板上の接続電極との接続に用いる目的で導体配線が露出する部分を積層体に設けていても、これが塗布された厚膜誘電体ペーストで覆われることとなる。そのため、浸漬処理後、焼成処理の前に、導体上の厚膜誘電体ペーストを拭き取ってこれを露出させる必要があり、工程が煩雑になると共に導通不良や被覆不良等が生じ易い不都合があった。本発明によれば、厚膜誘電体皮膜を形成した後すなわち焼成後に生成される内周部の端面に導体配線が露出させられることとなるので、導通の確保が容易であると共に、厚膜誘電体皮膜による被覆も確実となるのである。
【0009】
しかも、本発明によれば、内周部の外周端面が導体配線と基板上の接続電極との接続に用いられるので、厚膜シート部材の基板側に位置する一面に導体配線と接続電極との接続用に用いられる取出端子を設ける場合に比較して、基板の表面において導体相互の接続に必要な面積、すなわち機能上無効な面積を小さくすることが容易になる利点もある。このため、導体配線が設けられた内周部の大きさを維持しつつ厚膜シート部材が固定される基板の外形寸法を小さくし、延いては、その基板を備えた装置の一層の小型化が可能となる。例えば、基板がPDP等の表示装置の構成部品である場合には、内周部の有効表示領域の大きさを保ちつつ表示に寄与しない周縁部の領域(マージン)を小さくすることができる。このため、例えば複数個のPDPを一面に密接して配置した所謂タイル型表示装置を構成する場合に、PDP相互間における非表示部分の大きさを小さくできるので、表示品質が改善される。
【0010】
【第1発明の他の態様】
ここで、好適には、前記厚膜シート部材は、前記積層体を厚さ方向に貫通し且つ前記複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上にそれら複数本の導体配線の各々がその配列線を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔を備えたものであり、前記分離工程は、前記配列線上において前記周縁部をその内周部から分離するものである。このようにすれば、多数の貫通孔が並ぶ配列線上では厚膜シート部材の断面積が小さくなるので、その配列線上で、周縁部を内周部から容易に分離することができる。このとき、貫通孔は、導体配線の各々が配列線を跨いで連続する位置、すなわち複数本の導体配線の何れをも切断しない位置に設けられているため、その配列線上で周縁部を分離すると、生成された内周部の端面には複数本の導体配線の全てが露出させられる。すなわち、周縁部の分離を容易にしつつ、導体配線を確実に露出させることができる。なお、「貫通孔が配列線上に並ぶ」とは、例えば貫通孔の中心がその配列線上に位置することを言うものである。
【0011】
また、好適には、前記導体配設方法は、前記複数個の接続電極の各々に重なるように前記基板の一面に導体ペーストを所定の厚さ寸法で塗布する導体塗布工程を含み、前記固定工程は、前記内周部の外周端縁が前記複数本の導体配線の各々の露出させられた部分で前記導体ペーストに重なるように前記厚膜シート部材を前記基板上に載せて固定するものである。このようにすれば、厚膜シート部材内周部は、その端部で導体ペーストを部分的に押し潰した状態で基板上に固定されるため、導体ペーストのうち内周部端縁よりも外側に位置する部分すなわちその内周部によって押し潰されなかった部分によって、その外周端面のうち少なくとも基板側の下端部が覆われることとなる。そのため、導体ペーストの塗布厚みを適当な所定の厚さ寸法、例えば厚膜シート部材の導体配線よりも下側(基板側)部分の厚さ寸法よりも大きい値等に設定することにより、導体配線の外周端面に露出する部分のうち少なくとも一部がその導体ペーストで覆われる基板上に厚膜シート部材の内周部を固定すると同時にその基板上の接続電極との電気的接続を確保できる利点がある。
【0012】
また、好適には、前記厚膜シート部材は、所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する支持体準備工程と、前記第1温度で焼結させられる厚膜誘電体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る誘電体ペースト膜を前記膜形成面上に前記厚膜誘電体層に対応する所定の平面形状で形成する誘電体ペースト膜形成工程と、前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る導体ペースト膜を前記膜形成面上に前記厚膜導体層に対応する所定の平面形状で形成する導体ペースト膜形成工程と、前記支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなく前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜を焼結させて、それら導体ペースト膜および誘電体ペースト膜から前記厚膜導体層および前記厚膜誘電体層を生成する焼成工程と、得られた焼結体を前記膜形成面から剥離する剥離工程と、剥離した焼結体の外周面を前記厚膜誘電体皮膜で覆う被覆工程とを、含む工程により前記厚膜シート部材を製造するものである。
【0013】
このようにすれば、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結温度(第1温度)よりも高い融点を有する高融点粒子層で構成された膜形成面に厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜がそれぞれ所定の平面形状で形成された後、それら厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結させられる第1温度で加熱処理が施されることにより、厚膜誘電体層および厚膜導体層が積層された厚膜積層体が生成される。このとき、その加熱処理温度では焼結させられない高融点粒子層は樹脂が焼失させられることにより高融点粒子のみが並ぶ層となることから、生成された厚膜積層体は何ら支持体に固着されないため、その膜形成面から容易に剥離することができる。そのため、この厚膜積層体に厚膜誘電体皮膜を被覆することで、前記厚膜シート部材を得ることができる。
【0014】
なお、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜は、材料や用途に応じた適宜の方法を用いることにより、簡便な設備を用いて所望の平面形状となるように膜形成面に形成することが可能である。しかも、加熱処理により焼結させられるまでは膜形成面に塗布されることにより一時的に固着された状態で取り扱われることから、取扱いが容易である。したがって、基板の一面に導体配線を設けるための厚膜シート部材を容易に製造し且つ導体配設に用いることができる。ここで、上記の誘電体ペースト膜形成工程および導体ペースト膜形成工程は、厚膜シート部材の構成に応じて定められる回数だけ交互に繰り返される。
【0015】
また、好適には、前記支持体準備工程は、所定の基板の表面に前記高融点粒子層を形成するものである。このようにすれば、ペースト膜が基板上に形成されることから、加熱処理後にも支持体の形状が維持されるため、高融点粒子層のみで支持体が構成されている場合(例えば、セラミック生シートで支持体が構成されている場合)に比較して厚膜シート部材の取扱いが容易になる利点がある。しかも、このような支持体が用いられる場合には、ペースト膜との間に高融点粒子層が介在させられる基板は加熱処理の際にそのペースト膜を何ら拘束せず、且つそのペースト膜の表面粗度は高融点粒子層の表面粗度のみが反映されることから、基板の平坦度、表面粗度、膨張係数等のシート部材の品質に及ぼす影響が小さくなるため、基板に高い品質は要求されない。
【0016】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するため、第2発明の厚膜シート部材の要旨とするところは、(a)所定の平面形状を有する厚膜誘電体層と、(b)前記厚膜誘電体層に積層され且つその周縁部に端部が位置する複数本の導体配線を有する厚膜導体層と、(c)前記厚膜誘電体層および前記厚膜導体層の積層体の外周面全体を覆う厚膜誘電体皮膜と、(d)前記積層体および前記厚膜誘電体皮膜を厚さ方向に貫通し且つ前記複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上にそれら複数本の導体配線の各々がその配列線を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔とを、含むことにある。
【0017】
【第2発明の効果】
このようにすれば、厚膜誘電体層および厚膜導体層が積層され且つその積層体が厚膜誘電体皮膜で覆われた厚膜シート部材には、複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上に並ぶ多数の貫通孔が備えられる。そのため、この厚膜シート部材は、その配列線上でそれよりも外周側に位置する部分(周縁部)をそれよりも内周側の部分から容易に分離することができる。このとき、厚膜シート部材はその外周面全体が厚膜誘電体皮膜で覆われているが、周縁部を分離することにより新たに生成される内周部の端面には、その配列線を跨いで連続するように形成されている複数本の導体配線が露出させられる。したがって、全体が厚膜誘電体皮膜で覆われ且つ導体配線がその端部において露出させられた厚膜シート部材を容易に得ることができ、基板上への導体配線の配設すなわち前記第1発明の導体配設方法に好適に用いることができる。
【0018】
【第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記多数の貫通孔は、前記複数本の導体配線の相互間に設けられたものである。このようにすれば、貫通孔が設けられることに起因して導体配線の通電断面積が縮小されることが抑制される利点がある。なお、「導体配線の相互間」には、貫通孔が導体配線に全く重ならない位置に限られず、断面積の変化が問題とならない程度に僅かに重なるような態様も含まれる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の導体配設方法が製造工程に適用されたAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、対角20インチ(400×300(mm))程度の表示領域寸法を備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより大画面を構成する所謂タイル型表示装置の素子として用いられる。このPDP10には、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板(第1平板)16および背面板(第2平板)18が備えられている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも450×350(mm)程度の大きさと1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法とを備えると共に透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものである。
【0021】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0022】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0023】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば15〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0024】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成り、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止すると共に、駆動時に放電が生じる範囲から蛍光体層36を十分に離隔させるために、その表面が蛍光体層36の表面よりも十分に高くなるように定められている。
【0025】
図2は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に中間誘電体層42を介して積層された上側導体層44および下側導体層46と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。
【0026】
上記の上側誘電体層38,下側誘電体層40,および中間誘電体層42(以下、特に区別しないときは誘電体層38等という)は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、それらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。本実施例においては、これら誘電体層38等が格子状誘電体層に相当する。また、これらの格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22に沿った方向においては、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。また、隔壁22に直交する方向においては、それよりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば150(μm)程度の幅寸法を備え、200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の大きさは、例えば700×350(μm)程度である。
【0027】
また、上記の誘電体層38等は、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。なお、図において、上側導体層44および下側導体層46(以下、特に区別しないときは導体層44,46という)が備えられていない部分では、積層された誘電体層38等を一体的に示した。
【0028】
また、上記の導体層44,46は、例えば銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であって、例えば何れも5〜20(μm)の範囲内、例えば8(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。これら導体層44,46は、それぞれ誘電体層38等の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。この帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の中心間隔に等しい例えば500(μm)程度の中心間隔を以て、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。また、帯状厚膜導体52のうち中間誘電体層42を介して重なるものは、シート部材20内において或いは気密空間の外部において、相互に共通の配線に接続されている。
【0029】
また、図2において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0030】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0031】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44,46を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0032】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる誘電体皮膜48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0033】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、図3に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。このとき、中間誘電体層42を介して積層された2本の帯状厚膜導体52,52がそれぞれ形成する電界は、それらを覆う保護膜50上において重ね合わされることによって一つの電界を成す。そのため、保護膜50上には、書込電極28との間の放電によって、厚さ方向において帯状厚膜導体52,52が設けられている範囲内で電荷が連続的に蓄積されることとなる。すなわち、本実施例においてはこの範囲が放電面56として機能する。
【0034】
上記のようにして走査電極として機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図3に他の矢印で示すように放電面56,56間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。なお、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、上記維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面56の全面に広がることとなる。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、図3は、PDP10の前記の隔壁22の長手方向に沿った断面すなわち帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な断面を示す図である。
【0035】
また、維持放電は帯状厚膜導体52,52間で発生させられるが、放電空間24は隔壁22の長手方向に沿って連続しているため、その放電により発生させられた紫外線はその方向において帯状厚膜導体52,52の外側に広がる。そのため、その外側に位置する蛍光体層32,36もその紫外線が及ぶ範囲では発光させられることとなる。PDP10における発光単位(セル)の区切りは、隔壁22に垂直な方向すなわち図における左右方向ではその隔壁22によって区切られ、隔壁22の長手方向すなわち図における上下方向では実質的にはこの紫外線の及ぶ範囲によって画定される。
【0036】
但し、本実施例においては、隔壁22の長手方向における発光区画の区切りすなわちセル・ピッチは例えば100(μm)〜3.0(mm)の範囲内、例えば3.0(mm)程度であり、前記シート部材20の格子の中心間隔の6倍に相当する。すなわち、本実施例においては1セル内にシート部材20の格子の開口が6つ設けられており、それら6つの開口に面する3対の放電面56間で維持放電させることとなる。なお、前述したように隔壁22の中心間隔は1.0(mm)程度であり、RGB3色で1画素(ピクセル)が構成されるので、画素ピッチは格子の2方向の何れにおいても3.0(mm)程度、1画素の大きさは3.0×3.0(mm)程度となる。
【0037】
なお、上記のようにして放電空間22内において蛍光体層32から発生させられた光は、図1に示されるPDP10の構成から明らかなように、格子状を成したシート部材20の開口部を経由して前面板12から射出される。そのため、蛍光体層32から発生した光のうち一部はシート部材20で遮られ、表示に寄与し得ないこととなる。このとき、本実施例においては、前述したように格子の開口部内に突き出した突出部54が放電空間22の長手方向において、その幅方向の一端側および他端側に交互に設けられているため、突出部54の遮光による視覚上の影響が緩和されるので、突出部54が存在することに起因する表示品質の低下が実質的に解消されている。放電開始電圧を低下させるための突出部54は、その存在に起因する遮光が許容される範囲で可及的に放電開始電圧を低くできるようにその大きさが定められる。また、格子構成部分のうち隔壁22に垂直な方向に沿って伸びる部分は、例えば150(μm)程度の細幅寸法で設けられており、且つ隔壁34によって前万板16から離隔させられているので、これによる遮光も殆ど問題とならない。
【0038】
図4は、シート部材20の背面板18上における固定状態を説明するための平面図である。前記の図1、図2では、放電および発光に寄与するシート部材20の内周部のみを示したが、その全体は図4に示すように背面板18よりもやや小さな略矩形を成している。図において、シート部材20は、その外周部分を構成する枠部58と、その内周側に位置する格子部60とから構成される。
【0039】
上記の枠部58は、略周期的に凸部62および半円弧状の凹部64が備えられた凹凸を有する外周縁形状を成すものであり、例えば、背面板18上に備えられた複数個の接続電極66にその凸部62が載せられ、それらの間に接続導体68が設けられている。また、上記の格子部60は、前記の図2に示されるような誘電体層38等が格子状に設けられた部分である。
【0040】
図5は、シート部材20の周縁部を拡大して、内部に設けられた帯状厚膜導体52と接続電極66との接続構造を説明する図である。図において、格子部60内に備えられている帯状厚膜導体52は、その外周側に備えられた枠部58内まで延長され、その枠部58内の周縁部に備えられた接続部70に接続されている。なお、前述したように帯状厚膜導体52は、走査電極を兼ねたものと維持電極としてのみ用いられるものとの2種類があるが、図において右側に導出されたものが前者であり、左側に導出されたものが後者である。前述したように6つの開口部72が1セル内に位置することから、前者は3本が一つの接続部70に共通に接続されており、一括して駆動電圧を印加される後者は全てが共通の接続部70に接続されている。なお、図において74は後述するシート部材20の製造時において各層相互の位置決めに用いられた位置決め孔である。
【0041】
また、上記の接続部70は、図6に外周端面の正面視にて示すように、接続導体68の上方となる水平位置においてシート部材20の外周端面にその先端面が露出させられている。前記の凸部62は、接続部70上にその一部が位置させられており、図5乃至図7を相互に対比すれば明らかなように、接続部70のうちその凸部62に露出させられた部分が接続導体68と接触させられることでそれらの導通が確保されている。
【0042】
なお、前記の図4においては接続電極66および接続導体68が一つの凸部62毎に設けられているように描かれているが、その接続形態はPDP10の構造に応じて適宜のものが用いられ、図5に示すように凹部64にの正面にこれらが設けられていても差し支えない。また、図6、図7においては、帯状厚膜導体52が便宜上一層に描かれているが、実際にこのような構造に構成されていても、動作には何ら支障がない。なお、これらの図においては、導体層44,46を覆う誘電体層38等および誘電体皮膜48等の境界を省略すると共に、帯状厚膜導体52および接続部70を一体的に描いている。図10等においても同様である。
【0043】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図8に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0044】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程76で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程78では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。なお、前記の接続電極66は、例えばこの段階で同時に形成されるが、別工程で形成しても差し支えない。続くオーバ・コート形成工程80においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0045】
次いで、隔壁形成工程82では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程76乃至オーバ・コート形成工程80も同様である。そして、蛍光体層形成工程84においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0046】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程86において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程88において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0047】
また、電極(本実施例では維持電極)の処理工程においては、シート部材作製工程90において前記のシート部材20を製造する。なお、この工程で製造されるのは、例えば図9に示す平面形状を備えたシート部材92である。図において、シート部材92は、前記のシート部材20の外周側に矩形枠状の切取り部94が付加されたものであり、全体としてシート部材20を一回り、例えば幅寸法で10(mm)程度だけ大きくした矩形に構成されている。これらシート部材20と切取り部94との境界には、外周縁すなわち四辺に平行な切取線96に沿って並ぶ多数の貫通孔98が備えられている。貫通孔98は、例えば各々が100(μm)〜1.0(mm)程度の直径寸法を備えてシート部材92を厚さ方向に貫通するものである。また、その中心間隔は例えば100(μm)〜1.0(mm)程度の微小な値であるが、異なる間隔で設けられている部分も存在する。
【0048】
なお、図10(a)に図9におけるX−X視断面の右端部を、(b)にその右側面の要部を正面視にてそれぞれ模式的に示すように、シート部材92はその全体が誘電体皮膜48等で覆われたものであり、内部に備えられている帯状厚膜導体52はその端部がシート部材92の表面に露出していない。また、貫通孔98は、帯状厚膜導体52(および接続部70)の端部よりも内周側に位置させられている。すなわち、帯状厚膜導体52の先端部は、切取り部94内に位置する。
【0049】
図8に戻って、分離工程100においては、シート部材92の切取り部94を内周部すなわちシート部材20から分離する。図11は、この分離工程100の実施状態を説明する図である。前記の切取線96上には、多数の貫通孔98が微小間隔で並んでいることから、その切取線96上は断面積が極めて小さいので低強度になる。そのため、切取り部94を例えば矢印Cに示すように内周部から離隔する方向に引張ると、切取り部94がその切取線96上すなわち貫通孔98の配列線上で破断させられ、その内周部から分離されるので、前記図4に示されるようなシート部材20が得られる。なお、図11においては右側に位置する切取り部94のみが分離されている状態を示しているが、他の切取り部94も同様にして除去される。
【0050】
図12(a)(b)は、分離工程100の実施後におけるシート部材20の状態を説明するための前記図10(a)(b)に対応する図である。この図から明らかなように、貫通孔98上で切取り部94が分離させられると、シート部材20の新たに生成された外周端面には、接続部70の先端面が露出させられる。また、その外周端面には、貫通孔98を構成していた円筒面のうちの半分が存在するが、これが前記凹部64に相当する。すなわち、シート部材20は、このように切取り部94を分離することで得られるものであるため、その外周縁部が凹凸形状を成すと共に、その外周端面に接続部70が露出させられるのである。したがって、本実施例においては、上記の切取り部94が「厚膜シート部材の周縁部」に相当し、切取線96が配列線に相当する。なお、本図と図5、図9等を照らし合わせれば明らかなように、貫通孔98は、切取線96上において接続部70が連続した状態に保たれるように、その位置や大きさが定められている。また、分離工程100は、上記のように手作業或いは機械装置によって切取り部94を引張ることで行う他、切取り部94を折り取る方法や、切取線96上に剪断力を作用させる等、適宜の方法で実施し得る。
【0051】
図8に戻って、導体塗布工程102においては、背面板内面14に備えられた複数個の接続電極66の各々の上に導体ペースト104を塗布する。図13は、この導体ペースト104の塗布後の状態を表している。導体ペースト104は、例えばAg、Al、Ni、および低軟化点ガラス等から成るものであって、例えば10〜200(μm)程度の厚さに塗布される。次いで、重ね合わせ工程106においては、その導体ペースト104が乾燥する前に、シート部材20を介して前面板16および背面板18を重ね合わせる。このとき、シート部材20は、図14に示すようにその外周端部が導体ペースト104と重なるように背面板18に載せられる。そのため、シート部材20は、端面に接続部70が露出させられた部分においてその導体ペースト104を押し潰しつつ載せられることから、それらが接触させられた状態でその導体ペースト104が硬化させられことによって前記の接続導体66が生成されるので、帯状厚膜導体52が接続部70および接続導体64を介して接続電極66に接続されることとなる。すなわち、シート部材20を背面板18上に固定することにより、その上に維持電極が設けられると共にその維持電極が背面板18上の導体配線に接続されることとなる。導体ペースト104の塗布厚みは、このようにシート部材20を載せた際にその端面に露出する接続部70に確実に接するように厚くされている。本実施例においては、これら導体塗布工程102および重ね合わせ工程106が固定工程に対応する。
【0052】
そして、封着工程110において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程112において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0053】
図15は、上記の製造工程におけるシート部材作製工程90の要部を説明する工程図である。シート部材92は、よく知られた厚膜印刷技術を利用して製造されるものであり、以下、その製造方法を製造工程の要部段階における状態を表した図16(a)〜(e)および図17(f)〜(h)等を参照して説明する。
【0054】
先ず、基板を用意する工程114では、厚膜印刷を施す基板116(図16参照)を用意し、その表面118等に適宜の清浄化処理を施す。この基板116は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10-7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板116の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面118の大きさは前記のシート部材92よりも十分に大きくされている。
【0055】
次いで、剥離層形成工程120では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層122を、基板116の表面118に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のアルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば550(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば550(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層122は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト124を、例えば図16(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板116の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図16(b)は、このようにして剥離層122を形成した段階を示している。なお、図16(a)において、126はスクリーン、128はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層122を備えた基板116が支持体に、その剥離層122の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程114および剥離層形成工程120が支持体準備工程に対応する。
【0056】
続く厚膜ペースト層形成工程130では、前記の誘電体層38等を形成するための厚膜誘電体ペースト132と、導体層44,46を形成するための厚膜導体ペースト134(図16(a)参照)を、無機材料ペースト124と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層122上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38等を形成するための誘電体印刷層136,140,144、導体層44,46を形成するための導体印刷層138,142が、その積層順序に従って形成される。上記の厚膜誘電体ペースト132は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト134は、例えば、銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-TiO2系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト124と同様なものが用いられる。図16(c)〜(e)は、それぞれ、誘電体印刷層136、導体印刷層138、誘電体印刷層140乃至誘電体印刷層144がそれぞれ形成された段階を示している。なお、一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。また、前記の貫通孔98は、この厚膜印刷の過程で形成されている。すなわち、厚膜印刷層136〜144は、前記貫通孔98の設けられる位置に厚膜印刷ペースト132,134が塗布されない穴明きパターンで形成される。
【0057】
上記のようにして厚膜印刷層136〜144を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程146においては、基板116を所定の焼成装置の炉室148内に入れ、厚膜誘電体ペースト132および厚膜導体ペースト134の種類に応じた例えば550(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図17(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0058】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層136〜144は、その焼結温度が例えば550(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38等および導体層44,46すなわちシート部材92の基本的部分が生成される。図17(g)は、この状態を示している。このとき、前記の剥離層122は、前述したようにその無機成分粒子が550(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層122は高融点粒子150(図18参照)のみから成る粒子層116となる。
【0059】
図18は、図17(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層122の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層152は、単に高融点粒子150が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子150は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層136〜144が収縮するときには、その高融点粒子150がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層136〜144の下面側でも基板116との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0060】
なお、本実施例においては、基板116の熱膨張係数は誘電体材料と略同じであり、厚膜印刷層136〜144の焼結が開始するまで、すなわち、樹脂成分は焼失させられたがガラスフリット、誘電体材料粉末や導体粉末の結合力が未だ小さい温度範囲ではこれらの熱膨張量に殆ど差はない。一方、厚膜印刷層136〜144の焼結が開始するときには、上述したように粒子層152の作用によって基板116はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板116の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板116を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10-7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10-7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板116の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0061】
図15に戻って、剥離工程154では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40,42および導体層44,46の積層体を基板116から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層152は高融点粒子150が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子150が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板116は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0062】
次いで、誘電体ペースト塗布工程156においては、剥離した積層体をディッピング槽158内に蓄えられた誘電体ペースト160中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト160が塗布される。このため、前記の印刷積層の過程では導体層44,46の一部が誘電体層38等から露出させられているが、この誘電体ペースト160でその露出部分が覆われることになる。前記の誘電体皮膜48は、この誘電体ペースト160から生成されたものであり、そのため、切取り部94が分離される前のシート部材92は、その外周面全体が誘電体皮膜48で覆われているのである。また、この誘電体ペースト160は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト132に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト132に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網162等に載せられた状態で誘電体ペースト160中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0063】
続く焼成工程164では、ディッピング槽158から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト160に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。なお、導体層44,46は、前述したように厚さ寸法が8(μm)程度の薄い膜であるので、その幅寸法が略一様に形成され、積層体の側面において導体層44,46の幅方向端部に厚膜パターンのがたつきは生じておらず、積層体の側面全体が滑らかになっている。そのため、そこに形成される誘電体皮膜48は凹凸の少ない平滑面になるので、放電開始電圧のばらつきが抑制されると共に、耐電圧が一層高められる。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程156および焼成工程164から被覆工程が構成されている。
【0064】
そして、保護膜形成工程166において、上記の誘電体皮膜48の表面に例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材92が得られる。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されないのである。また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。
【0065】
ここで、本実施例においては、分離工程100において、誘電体層38等の上に導体層44,46が積層され且つそれらを誘電体皮膜48で覆ったシート部材92の切取り部94が分離され、導体塗布工程102および重ね合わせ工程106において、複数個の接続電極70を備えた背面板18の一面14にそのシート部材92の内周部すなわちシート部材20が固定される。そのため、シート部材20に帯状厚膜導体52が備えられていることから、そのシート部材20を背面板18上に固定するだけでそこに維持電極を配設することができるので、維持電極やそれを覆う誘電体を形成するに際して、厚膜生成のための熱処理が背面板18に施されない。したがって、厚膜導体形成時の熱処理に起因する背面板18の歪み等を抑制できる。しかも、シート部材20は、切取り部94の分離前においては誘電体皮膜48で覆われていることから導体層44,46が露出していないが、その切取り部94が分離されるとシート部材20の端面にその導体層44,46が露出させられる。そのため、背面板18に固定した際に、その端面を用いて、容易にシート部材20内の導体層44,46を接続電極66に接続することができる。
【0066】
しかも、本実施例においては、接続部70の接続にその端面が用いられることから、シート部材20の裏面に接続部70を露出させて背面板18上の接続電極66と面接触させる場合に比較して、格子部60の外側に導体接続のために必要な幅すなわち表示領域として機能しないマージンを著しく小さくできる利点もある。
【0067】
また、本実施例においては、シート部材92は、厚さ方向に貫通し且つ複数本の帯状厚膜導体52の端部に交叉する切取線96上にそれら複数本の帯状厚膜導体52の各々がその切取線96を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔98を備えたものであり、前記分離工程100は、その切取線96上において切取り部94をその内周部(シート部材20)から分離するものである。そのため、切取り部94を切取線96上においてその内周部から容易に分離することができる利点がある。
【0068】
また、本実施例においては、導体塗布工程102において、接続電極66の各々に重なるように導体ペースト104が塗布され、且つ重ね合わせ工程106において、外周端縁が接続部70の露出させられた部分で導体ペースト104に重なるようにシート部材20が背面板18上に載せられる。そのため、シート部材20は、その端部で導体ペースト104を部分的に押し潰した状態で背面板18上に固定されるため、シート部材20を載せて固定するだけで、導体ペースト104とシート部材20の接続部70とが好適に接続される利点がある。
【0069】
また、本実施例においては、誘電体層38,40,42および導体層44,46が積層され且つその積層体が誘電体皮膜48で覆われたシート部材92には、複数本の帯状厚膜導体52(接続部70)の端部に交叉する切取線96上に並ぶ多数の貫通孔98が備えられる。そのため、このシート部材92は、その切取線96上でそれよりも外周側に位置する部分(切取り部94)をそれよりも内周側の部分(シート部材20)から容易に分離することができる利点がある。
【0070】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0071】
例えば、実施例においては、カラー表示用のAC型PDP10の製造に好適に用いうるシート部材20(92)およびこれを用いた導体配設方法に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、モノクロ表示用のAC型PDPにおける導体配設やその他種々の回路基板等における導体配設にも同様に用いられ得る。
【0072】
また、実施例においては、シート部材92の外周縁全体を矩形枠状に除去していたが、導体接続に必要な部分だけ導体を露出させれば足りるので、必ずしも外周縁全体を除去する必要は無い。但し、シート部材92の外周縁部は、その焼成過程で反りが生じ易いことから、分離工程100において外周縁部すなわち切取り部94を分離すれば、導体を露出させると同時に、反りの生じた部分を除去することができる利点もある。すなわち、シート部材92の製造過程において、比較的大きな反りが生じても許容されるので工程管理が容易になる利点もある。
【0073】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0074】
また、実施例においては、帯状厚膜導体52はその幅方向の両側に隣接する帯状厚膜導体52との間で放電させられるように構成されていたが、一方に隣接するものとだけ放電するように構成しても差し支えない。
【0075】
また、実施例においては、2層の導体層44,46が中間誘電体層42を介して設けられていたが、維持電極を構成するための導体層の層数は、所望とする放電面56の面積に応じて適宜定められるものであり、1層で構成しても、3層以上の導体層を2層以上の中間誘電体層を介在させて積層してもよい。
【0076】
また、実施例においては、実施例においては、接続部70と交叉する切取線96上に多数の貫通孔98が設けられていたが、接続部70と交叉する線上でシート部材の外周部が分離されれば本発明の効果は享受できるので、貫通孔98は必須ではない。すなわち、適当な目印を設けておく等により、予め定められた位置でシート部材の外周部を分離し、生成された内周部の端面に接続部70を露出させるようにしてもよい。
【0077】
また、実施例においては、接続電極66上に導体ペースト104を塗布した後に、その導体ペースト104の一部を押し潰しつつシート部材20を載せることで接続部70と接続電極66との導通を確保していたが、シート部材20を載せた後、接続電極66と接続部70の端面との間に導体を塗布しても差し支えない。
【0078】
また、実施例においては、維持電極を構成する帯状厚膜導体52がシート部材20内に備えられていたが、放電空間24の長手方向に直交する方向に沿って伸びる平行電極対を設け得るのであればその配設形態は問わない。例えば、前面板16の内面に隔壁22と直交する方向に沿って伸びる隔壁を突設し、これに帯状厚膜導体52,52を誘電体層を介して積層して設けることもできる。
【0079】
また、実施例においては、隔壁22がストライプ状に設けられていたが、封着後の排気・ガス封入に問題が無ければ格子状の隔壁で放電空間を区画形成してもよい。このようにする場合には、その格子状の隔壁に導体層44,46を設けることもできる。また、実施例においては、前面板16および背面板18の両方に隔壁22,34が形成されていたが、一方だけに設けても差し支えない。その場合、シート部材20と蛍光体との接触を避けるためには、隔壁を設けない側には蛍光体層を設けないことが好ましい。
【0080】
また、導体層44,46の厚さ寸法や相互間隔等は所望とする電気的特性や機械的強度等に応じて適宜定められるものであり、実施例に記載された数値のものに限定されない。
【0081】
また、実施例においては、シート部材20はその全面が誘電体皮膜48で覆われていたが、少なくとも導体層44,46が覆われていれば足り、誘電体層38等の上には誘電体皮膜48が設けられていなくとも差し支えない。すなわち、請求の範囲にいう「外周面全体が厚膜誘電体皮膜で覆われた」とは、導体が厚膜誘電体で覆われることにより外周面に露出させられていない状態を言うものであり、誘電体層38等が皮膜を兼ねていても差し支えないのである。
【0082】
また、実施例においては、シート部材20が厚膜スクリーン印刷法を利用して誘電体層38等を設けることで製造されていたが、コータやフィルム・ラミネート等を用いて膜形成面に「ベタ」に厚膜ペースト層を設け、フォト・プロセスを用いてパターニングすることもできる。
【0083】
また、実施例では内面12,14の何れにも蛍光体層32,36が設けられていたが、何れか一方のみとすることもできる。
【0084】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の3電極構造AC型ガス放電表示装置の一例であるカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図3】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造を説明する図である。
【図4】シート部材の固定状態を示す全体図である。
【図5】シート部材の周縁部を拡大して示す図である。
【図6】シート部材の外周端面の要部を示す図である。
【図7】図6におけるVII−VII視断面図である。
【図8】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図9】図8に示す製造工程で用いられるシート部材を示す平面図である。
【図10】(a)は図9におけるX−X視断面の要部を示す図、(b)は(a)における右側面図である。
【図11】図8の分離工程の実施状態を説明する図である。
【図12】(a),(b)はそれぞれ分離工程の後における図10の(a),(b)に対応する図である。
【図13】図8における導体塗布工程の実施状態を説明する図である。
【図14】図8の重ね合わせ工程において背面板上にシート部材を載せようとする段階を説明する図である。
【図15】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図16】(a)〜(e)は、図15の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図17】(f)〜(h)は、図15の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図16(e)に続く図である。
【図18】図15の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【符号の説明】
20:シート部材
92:シート部材
94:切取り部
96:切取線
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上への導体配設方法の改良、およびその導体配設方法に好適に用いられる導体と誘電体とが一体的に備えられたシート状の厚膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透明な第1基板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の放電電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のAC型ガス放電表示装置が知られている。このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
谷 千束著「ディスプレイ先端技術」初版第1刷、共立出版、1998年12月28日、p.78-88
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記放電電極は、一般に、前面板および背面板の少なくとも一方に設けられた厚膜導体で構成され、これを覆う誘電体は厚膜誘電体で構成される。そのため、これら厚膜導体および厚膜誘電体の形成過程において焼成処理が施されることから、基板が繰り返し加熱されることとなる。そのため、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、厚膜誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して、基板に歪みが生じると共に厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題があった。このような問題は、ガス放電表示装置に限られず、基板上に厚膜導体を設ける種々の装置において同様に生じ得る。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、厚膜導体形成時の熱処理に起因する基板の歪み等を抑制できる導体配設方法およびその導体配設方法に好適に用いられるシート状の厚膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明の要旨とするところは、所定の基板上に導体を配設する方法であって、(a)所定の平面形状を有する厚膜誘電体層上にその周縁部に端部が位置する複数本の導体配線を有する厚膜導体層が積層され且つそれらの積層体の外周面全体が厚膜誘電体皮膜で覆われた厚膜シート部材のその周縁部をその内周部から分離することにより、その内周部の外周端面にそれら複数本の導体配線の各々を露出させる分離工程と、(b)前記複数本の導体配線の各々に接続するための複数個の接続電極を備えた前記基板の一面に前記厚膜シート部材の内周部を固定する固定工程とを、含むことにある。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、分離工程において、厚膜誘電体層上に厚膜導体層が積層され且つそれらを厚膜誘電体皮膜で覆った厚膜シート部材の周縁部が分離され、固定工程において、複数個の接続電極を備えた基板の一面にその厚膜シート部材の内周部が固定される。そのため、厚膜シート部材に導体配線が備えられていることから、その厚膜シート部材の内周部を基板上に固定するだけでその基板上に導体配線を配設することができるので、基板上に導体配線およびこれを覆う厚膜誘電体皮膜を形成するに際して、厚膜生成のための熱処理が基板に施されない。したがって、基板上に導体を配設するに際して、厚膜導体形成時の熱処理に起因する基板の歪み等を抑制できる。しかも、厚膜シート部材は、周縁部の分離前においては厚膜誘電体皮膜で覆われていることから厚膜導体層が露出していないが、その周縁部が分離されると内周部の端面にその導体配線が露出させられる。そのため、基板に固定した際に、その端面を用いて、容易に厚膜シート部材内の導体配線をその基板上の接続電極に接続することができる。なお、外周縁全体のうち除去する「周縁部」の範囲は、露出させようとする導体配線の形成状態に応じて適宜定められるものであり、例えば矩形の一辺のみであってもよい。
【0008】
因みに、上記のような厚膜誘電体皮膜で覆われた厚膜シート部材を製造するに際して、厚膜誘電体皮膜は、例えば、厚膜誘電体層および厚膜導体層の積層体を厚膜誘電体ペースト中に浸漬(ディッピング)し、これを焼成することで設けるのが簡便且つ確実な方法として一般に用いられる。しかしながら、このような皮膜形成方法では、積層体の全面に厚膜誘電体ペーストが塗布されるため、基板上の接続電極との接続に用いる目的で導体配線が露出する部分を積層体に設けていても、これが塗布された厚膜誘電体ペーストで覆われることとなる。そのため、浸漬処理後、焼成処理の前に、導体上の厚膜誘電体ペーストを拭き取ってこれを露出させる必要があり、工程が煩雑になると共に導通不良や被覆不良等が生じ易い不都合があった。本発明によれば、厚膜誘電体皮膜を形成した後すなわち焼成後に生成される内周部の端面に導体配線が露出させられることとなるので、導通の確保が容易であると共に、厚膜誘電体皮膜による被覆も確実となるのである。
【0009】
しかも、本発明によれば、内周部の外周端面が導体配線と基板上の接続電極との接続に用いられるので、厚膜シート部材の基板側に位置する一面に導体配線と接続電極との接続用に用いられる取出端子を設ける場合に比較して、基板の表面において導体相互の接続に必要な面積、すなわち機能上無効な面積を小さくすることが容易になる利点もある。このため、導体配線が設けられた内周部の大きさを維持しつつ厚膜シート部材が固定される基板の外形寸法を小さくし、延いては、その基板を備えた装置の一層の小型化が可能となる。例えば、基板がPDP等の表示装置の構成部品である場合には、内周部の有効表示領域の大きさを保ちつつ表示に寄与しない周縁部の領域(マージン)を小さくすることができる。このため、例えば複数個のPDPを一面に密接して配置した所謂タイル型表示装置を構成する場合に、PDP相互間における非表示部分の大きさを小さくできるので、表示品質が改善される。
【0010】
【第1発明の他の態様】
ここで、好適には、前記厚膜シート部材は、前記積層体を厚さ方向に貫通し且つ前記複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上にそれら複数本の導体配線の各々がその配列線を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔を備えたものであり、前記分離工程は、前記配列線上において前記周縁部をその内周部から分離するものである。このようにすれば、多数の貫通孔が並ぶ配列線上では厚膜シート部材の断面積が小さくなるので、その配列線上で、周縁部を内周部から容易に分離することができる。このとき、貫通孔は、導体配線の各々が配列線を跨いで連続する位置、すなわち複数本の導体配線の何れをも切断しない位置に設けられているため、その配列線上で周縁部を分離すると、生成された内周部の端面には複数本の導体配線の全てが露出させられる。すなわち、周縁部の分離を容易にしつつ、導体配線を確実に露出させることができる。なお、「貫通孔が配列線上に並ぶ」とは、例えば貫通孔の中心がその配列線上に位置することを言うものである。
【0011】
また、好適には、前記導体配設方法は、前記複数個の接続電極の各々に重なるように前記基板の一面に導体ペーストを所定の厚さ寸法で塗布する導体塗布工程を含み、前記固定工程は、前記内周部の外周端縁が前記複数本の導体配線の各々の露出させられた部分で前記導体ペーストに重なるように前記厚膜シート部材を前記基板上に載せて固定するものである。このようにすれば、厚膜シート部材内周部は、その端部で導体ペーストを部分的に押し潰した状態で基板上に固定されるため、導体ペーストのうち内周部端縁よりも外側に位置する部分すなわちその内周部によって押し潰されなかった部分によって、その外周端面のうち少なくとも基板側の下端部が覆われることとなる。そのため、導体ペーストの塗布厚みを適当な所定の厚さ寸法、例えば厚膜シート部材の導体配線よりも下側(基板側)部分の厚さ寸法よりも大きい値等に設定することにより、導体配線の外周端面に露出する部分のうち少なくとも一部がその導体ペーストで覆われる基板上に厚膜シート部材の内周部を固定すると同時にその基板上の接続電極との電気的接続を確保できる利点がある。
【0012】
また、好適には、前記厚膜シート部材は、所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する支持体準備工程と、前記第1温度で焼結させられる厚膜誘電体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る誘電体ペースト膜を前記膜形成面上に前記厚膜誘電体層に対応する所定の平面形状で形成する誘電体ペースト膜形成工程と、前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る導体ペースト膜を前記膜形成面上に前記厚膜導体層に対応する所定の平面形状で形成する導体ペースト膜形成工程と、前記支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなく前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜を焼結させて、それら導体ペースト膜および誘電体ペースト膜から前記厚膜導体層および前記厚膜誘電体層を生成する焼成工程と、得られた焼結体を前記膜形成面から剥離する剥離工程と、剥離した焼結体の外周面を前記厚膜誘電体皮膜で覆う被覆工程とを、含む工程により前記厚膜シート部材を製造するものである。
【0013】
このようにすれば、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結温度(第1温度)よりも高い融点を有する高融点粒子層で構成された膜形成面に厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜がそれぞれ所定の平面形状で形成された後、それら厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結させられる第1温度で加熱処理が施されることにより、厚膜誘電体層および厚膜導体層が積層された厚膜積層体が生成される。このとき、その加熱処理温度では焼結させられない高融点粒子層は樹脂が焼失させられることにより高融点粒子のみが並ぶ層となることから、生成された厚膜積層体は何ら支持体に固着されないため、その膜形成面から容易に剥離することができる。そのため、この厚膜積層体に厚膜誘電体皮膜を被覆することで、前記厚膜シート部材を得ることができる。
【0014】
なお、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜は、材料や用途に応じた適宜の方法を用いることにより、簡便な設備を用いて所望の平面形状となるように膜形成面に形成することが可能である。しかも、加熱処理により焼結させられるまでは膜形成面に塗布されることにより一時的に固着された状態で取り扱われることから、取扱いが容易である。したがって、基板の一面に導体配線を設けるための厚膜シート部材を容易に製造し且つ導体配設に用いることができる。ここで、上記の誘電体ペースト膜形成工程および導体ペースト膜形成工程は、厚膜シート部材の構成に応じて定められる回数だけ交互に繰り返される。
【0015】
また、好適には、前記支持体準備工程は、所定の基板の表面に前記高融点粒子層を形成するものである。このようにすれば、ペースト膜が基板上に形成されることから、加熱処理後にも支持体の形状が維持されるため、高融点粒子層のみで支持体が構成されている場合(例えば、セラミック生シートで支持体が構成されている場合)に比較して厚膜シート部材の取扱いが容易になる利点がある。しかも、このような支持体が用いられる場合には、ペースト膜との間に高融点粒子層が介在させられる基板は加熱処理の際にそのペースト膜を何ら拘束せず、且つそのペースト膜の表面粗度は高融点粒子層の表面粗度のみが反映されることから、基板の平坦度、表面粗度、膨張係数等のシート部材の品質に及ぼす影響が小さくなるため、基板に高い品質は要求されない。
【0016】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するため、第2発明の厚膜シート部材の要旨とするところは、(a)所定の平面形状を有する厚膜誘電体層と、(b)前記厚膜誘電体層に積層され且つその周縁部に端部が位置する複数本の導体配線を有する厚膜導体層と、(c)前記厚膜誘電体層および前記厚膜導体層の積層体の外周面全体を覆う厚膜誘電体皮膜と、(d)前記積層体および前記厚膜誘電体皮膜を厚さ方向に貫通し且つ前記複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上にそれら複数本の導体配線の各々がその配列線を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔とを、含むことにある。
【0017】
【第2発明の効果】
このようにすれば、厚膜誘電体層および厚膜導体層が積層され且つその積層体が厚膜誘電体皮膜で覆われた厚膜シート部材には、複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上に並ぶ多数の貫通孔が備えられる。そのため、この厚膜シート部材は、その配列線上でそれよりも外周側に位置する部分(周縁部)をそれよりも内周側の部分から容易に分離することができる。このとき、厚膜シート部材はその外周面全体が厚膜誘電体皮膜で覆われているが、周縁部を分離することにより新たに生成される内周部の端面には、その配列線を跨いで連続するように形成されている複数本の導体配線が露出させられる。したがって、全体が厚膜誘電体皮膜で覆われ且つ導体配線がその端部において露出させられた厚膜シート部材を容易に得ることができ、基板上への導体配線の配設すなわち前記第1発明の導体配設方法に好適に用いることができる。
【0018】
【第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記多数の貫通孔は、前記複数本の導体配線の相互間に設けられたものである。このようにすれば、貫通孔が設けられることに起因して導体配線の通電断面積が縮小されることが抑制される利点がある。なお、「導体配線の相互間」には、貫通孔が導体配線に全く重ならない位置に限られず、断面積の変化が問題とならない程度に僅かに重なるような態様も含まれる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の導体配設方法が製造工程に適用されたAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、対角20インチ(400×300(mm))程度の表示領域寸法を備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより大画面を構成する所謂タイル型表示装置の素子として用いられる。このPDP10には、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板(第1平板)16および背面板(第2平板)18が備えられている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも450×350(mm)程度の大きさと1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法とを備えると共に透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものである。
【0021】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0022】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0023】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば15〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0024】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成り、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止すると共に、駆動時に放電が生じる範囲から蛍光体層36を十分に離隔させるために、その表面が蛍光体層36の表面よりも十分に高くなるように定められている。
【0025】
図2は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に中間誘電体層42を介して積層された上側導体層44および下側導体層46と、これらの積層体全体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。
【0026】
上記の上側誘電体層38,下側誘電体層40,および中間誘電体層42(以下、特に区別しないときは誘電体層38等という)は、何れも例えば10〜200(μm)の範囲内、例えば50(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、それらの平面形状は全て同様であって格子状を成す。本実施例においては、これら誘電体層38等が格子状誘電体層に相当する。また、これらの格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22に沿った方向においては、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。また、隔壁22に直交する方向においては、それよりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば150(μm)程度の幅寸法を備え、200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の大きさは、例えば700×350(μm)程度である。
【0027】
また、上記の誘電体層38等は、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。なお、図において、上側導体層44および下側導体層46(以下、特に区別しないときは導体層44,46という)が備えられていない部分では、積層された誘電体層38等を一体的に示した。
【0028】
また、上記の導体層44,46は、例えば銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であって、例えば何れも5〜20(μm)の範囲内、例えば8(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。これら導体層44,46は、それぞれ誘電体層38等の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。この帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備えて格子の中心間隔に等しい例えば500(μm)程度の中心間隔を以て、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。また、帯状厚膜導体52のうち中間誘電体層42を介して重なるものは、シート部材20内において或いは気密空間の外部において、相互に共通の配線に接続されている。
【0029】
また、図2において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜300(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば50〜500(μm)の範囲内、例えば200(μm)程度である。
【0030】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0031】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される導体層44,46を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0032】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる誘電体皮膜48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0033】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、図3に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。このとき、中間誘電体層42を介して積層された2本の帯状厚膜導体52,52がそれぞれ形成する電界は、それらを覆う保護膜50上において重ね合わされることによって一つの電界を成す。そのため、保護膜50上には、書込電極28との間の放電によって、厚さ方向において帯状厚膜導体52,52が設けられている範囲内で電荷が連続的に蓄積されることとなる。すなわち、本実施例においてはこの範囲が放電面56として機能する。
【0034】
上記のようにして走査電極として機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図3に他の矢印で示すように放電面56,56間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。なお、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、上記維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面56の全面に広がることとなる。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、図3は、PDP10の前記の隔壁22の長手方向に沿った断面すなわち帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な断面を示す図である。
【0035】
また、維持放電は帯状厚膜導体52,52間で発生させられるが、放電空間24は隔壁22の長手方向に沿って連続しているため、その放電により発生させられた紫外線はその方向において帯状厚膜導体52,52の外側に広がる。そのため、その外側に位置する蛍光体層32,36もその紫外線が及ぶ範囲では発光させられることとなる。PDP10における発光単位(セル)の区切りは、隔壁22に垂直な方向すなわち図における左右方向ではその隔壁22によって区切られ、隔壁22の長手方向すなわち図における上下方向では実質的にはこの紫外線の及ぶ範囲によって画定される。
【0036】
但し、本実施例においては、隔壁22の長手方向における発光区画の区切りすなわちセル・ピッチは例えば100(μm)〜3.0(mm)の範囲内、例えば3.0(mm)程度であり、前記シート部材20の格子の中心間隔の6倍に相当する。すなわち、本実施例においては1セル内にシート部材20の格子の開口が6つ設けられており、それら6つの開口に面する3対の放電面56間で維持放電させることとなる。なお、前述したように隔壁22の中心間隔は1.0(mm)程度であり、RGB3色で1画素(ピクセル)が構成されるので、画素ピッチは格子の2方向の何れにおいても3.0(mm)程度、1画素の大きさは3.0×3.0(mm)程度となる。
【0037】
なお、上記のようにして放電空間22内において蛍光体層32から発生させられた光は、図1に示されるPDP10の構成から明らかなように、格子状を成したシート部材20の開口部を経由して前面板12から射出される。そのため、蛍光体層32から発生した光のうち一部はシート部材20で遮られ、表示に寄与し得ないこととなる。このとき、本実施例においては、前述したように格子の開口部内に突き出した突出部54が放電空間22の長手方向において、その幅方向の一端側および他端側に交互に設けられているため、突出部54の遮光による視覚上の影響が緩和されるので、突出部54が存在することに起因する表示品質の低下が実質的に解消されている。放電開始電圧を低下させるための突出部54は、その存在に起因する遮光が許容される範囲で可及的に放電開始電圧を低くできるようにその大きさが定められる。また、格子構成部分のうち隔壁22に垂直な方向に沿って伸びる部分は、例えば150(μm)程度の細幅寸法で設けられており、且つ隔壁34によって前万板16から離隔させられているので、これによる遮光も殆ど問題とならない。
【0038】
図4は、シート部材20の背面板18上における固定状態を説明するための平面図である。前記の図1、図2では、放電および発光に寄与するシート部材20の内周部のみを示したが、その全体は図4に示すように背面板18よりもやや小さな略矩形を成している。図において、シート部材20は、その外周部分を構成する枠部58と、その内周側に位置する格子部60とから構成される。
【0039】
上記の枠部58は、略周期的に凸部62および半円弧状の凹部64が備えられた凹凸を有する外周縁形状を成すものであり、例えば、背面板18上に備えられた複数個の接続電極66にその凸部62が載せられ、それらの間に接続導体68が設けられている。また、上記の格子部60は、前記の図2に示されるような誘電体層38等が格子状に設けられた部分である。
【0040】
図5は、シート部材20の周縁部を拡大して、内部に設けられた帯状厚膜導体52と接続電極66との接続構造を説明する図である。図において、格子部60内に備えられている帯状厚膜導体52は、その外周側に備えられた枠部58内まで延長され、その枠部58内の周縁部に備えられた接続部70に接続されている。なお、前述したように帯状厚膜導体52は、走査電極を兼ねたものと維持電極としてのみ用いられるものとの2種類があるが、図において右側に導出されたものが前者であり、左側に導出されたものが後者である。前述したように6つの開口部72が1セル内に位置することから、前者は3本が一つの接続部70に共通に接続されており、一括して駆動電圧を印加される後者は全てが共通の接続部70に接続されている。なお、図において74は後述するシート部材20の製造時において各層相互の位置決めに用いられた位置決め孔である。
【0041】
また、上記の接続部70は、図6に外周端面の正面視にて示すように、接続導体68の上方となる水平位置においてシート部材20の外周端面にその先端面が露出させられている。前記の凸部62は、接続部70上にその一部が位置させられており、図5乃至図7を相互に対比すれば明らかなように、接続部70のうちその凸部62に露出させられた部分が接続導体68と接触させられることでそれらの導通が確保されている。
【0042】
なお、前記の図4においては接続電極66および接続導体68が一つの凸部62毎に設けられているように描かれているが、その接続形態はPDP10の構造に応じて適宜のものが用いられ、図5に示すように凹部64にの正面にこれらが設けられていても差し支えない。また、図6、図7においては、帯状厚膜導体52が便宜上一層に描かれているが、実際にこのような構造に構成されていても、動作には何ら支障がない。なお、これらの図においては、導体層44,46を覆う誘電体層38等および誘電体皮膜48等の境界を省略すると共に、帯状厚膜導体52および接続部70を一体的に描いている。図10等においても同様である。
【0043】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図8に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0044】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程76で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程78では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。なお、前記の接続電極66は、例えばこの段階で同時に形成されるが、別工程で形成しても差し支えない。続くオーバ・コート形成工程80においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0045】
次いで、隔壁形成工程82では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程76乃至オーバ・コート形成工程80も同様である。そして、蛍光体層形成工程84においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0046】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程86において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程88において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0047】
また、電極(本実施例では維持電極)の処理工程においては、シート部材作製工程90において前記のシート部材20を製造する。なお、この工程で製造されるのは、例えば図9に示す平面形状を備えたシート部材92である。図において、シート部材92は、前記のシート部材20の外周側に矩形枠状の切取り部94が付加されたものであり、全体としてシート部材20を一回り、例えば幅寸法で10(mm)程度だけ大きくした矩形に構成されている。これらシート部材20と切取り部94との境界には、外周縁すなわち四辺に平行な切取線96に沿って並ぶ多数の貫通孔98が備えられている。貫通孔98は、例えば各々が100(μm)〜1.0(mm)程度の直径寸法を備えてシート部材92を厚さ方向に貫通するものである。また、その中心間隔は例えば100(μm)〜1.0(mm)程度の微小な値であるが、異なる間隔で設けられている部分も存在する。
【0048】
なお、図10(a)に図9におけるX−X視断面の右端部を、(b)にその右側面の要部を正面視にてそれぞれ模式的に示すように、シート部材92はその全体が誘電体皮膜48等で覆われたものであり、内部に備えられている帯状厚膜導体52はその端部がシート部材92の表面に露出していない。また、貫通孔98は、帯状厚膜導体52(および接続部70)の端部よりも内周側に位置させられている。すなわち、帯状厚膜導体52の先端部は、切取り部94内に位置する。
【0049】
図8に戻って、分離工程100においては、シート部材92の切取り部94を内周部すなわちシート部材20から分離する。図11は、この分離工程100の実施状態を説明する図である。前記の切取線96上には、多数の貫通孔98が微小間隔で並んでいることから、その切取線96上は断面積が極めて小さいので低強度になる。そのため、切取り部94を例えば矢印Cに示すように内周部から離隔する方向に引張ると、切取り部94がその切取線96上すなわち貫通孔98の配列線上で破断させられ、その内周部から分離されるので、前記図4に示されるようなシート部材20が得られる。なお、図11においては右側に位置する切取り部94のみが分離されている状態を示しているが、他の切取り部94も同様にして除去される。
【0050】
図12(a)(b)は、分離工程100の実施後におけるシート部材20の状態を説明するための前記図10(a)(b)に対応する図である。この図から明らかなように、貫通孔98上で切取り部94が分離させられると、シート部材20の新たに生成された外周端面には、接続部70の先端面が露出させられる。また、その外周端面には、貫通孔98を構成していた円筒面のうちの半分が存在するが、これが前記凹部64に相当する。すなわち、シート部材20は、このように切取り部94を分離することで得られるものであるため、その外周縁部が凹凸形状を成すと共に、その外周端面に接続部70が露出させられるのである。したがって、本実施例においては、上記の切取り部94が「厚膜シート部材の周縁部」に相当し、切取線96が配列線に相当する。なお、本図と図5、図9等を照らし合わせれば明らかなように、貫通孔98は、切取線96上において接続部70が連続した状態に保たれるように、その位置や大きさが定められている。また、分離工程100は、上記のように手作業或いは機械装置によって切取り部94を引張ることで行う他、切取り部94を折り取る方法や、切取線96上に剪断力を作用させる等、適宜の方法で実施し得る。
【0051】
図8に戻って、導体塗布工程102においては、背面板内面14に備えられた複数個の接続電極66の各々の上に導体ペースト104を塗布する。図13は、この導体ペースト104の塗布後の状態を表している。導体ペースト104は、例えばAg、Al、Ni、および低軟化点ガラス等から成るものであって、例えば10〜200(μm)程度の厚さに塗布される。次いで、重ね合わせ工程106においては、その導体ペースト104が乾燥する前に、シート部材20を介して前面板16および背面板18を重ね合わせる。このとき、シート部材20は、図14に示すようにその外周端部が導体ペースト104と重なるように背面板18に載せられる。そのため、シート部材20は、端面に接続部70が露出させられた部分においてその導体ペースト104を押し潰しつつ載せられることから、それらが接触させられた状態でその導体ペースト104が硬化させられことによって前記の接続導体66が生成されるので、帯状厚膜導体52が接続部70および接続導体64を介して接続電極66に接続されることとなる。すなわち、シート部材20を背面板18上に固定することにより、その上に維持電極が設けられると共にその維持電極が背面板18上の導体配線に接続されることとなる。導体ペースト104の塗布厚みは、このようにシート部材20を載せた際にその端面に露出する接続部70に確実に接するように厚くされている。本実施例においては、これら導体塗布工程102および重ね合わせ工程106が固定工程に対応する。
【0052】
そして、封着工程110において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程112において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0053】
図15は、上記の製造工程におけるシート部材作製工程90の要部を説明する工程図である。シート部材92は、よく知られた厚膜印刷技術を利用して製造されるものであり、以下、その製造方法を製造工程の要部段階における状態を表した図16(a)〜(e)および図17(f)〜(h)等を参照して説明する。
【0054】
先ず、基板を用意する工程114では、厚膜印刷を施す基板116(図16参照)を用意し、その表面118等に適宜の清浄化処理を施す。この基板116は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10-7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板116の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面118の大きさは前記のシート部材92よりも十分に大きくされている。
【0055】
次いで、剥離層形成工程120では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層122を、基板116の表面118に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のアルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば550(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば550(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層122は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト124を、例えば図16(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板116の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図16(b)は、このようにして剥離層122を形成した段階を示している。なお、図16(a)において、126はスクリーン、128はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層122を備えた基板116が支持体に、その剥離層122の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程114および剥離層形成工程120が支持体準備工程に対応する。
【0056】
続く厚膜ペースト層形成工程130では、前記の誘電体層38等を形成するための厚膜誘電体ペースト132と、導体層44,46を形成するための厚膜導体ペースト134(図16(a)参照)を、無機材料ペースト124と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層122上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38等を形成するための誘電体印刷層136,140,144、導体層44,46を形成するための導体印刷層138,142が、その積層順序に従って形成される。上記の厚膜誘電体ペースト132は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト134は、例えば、銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-TiO2系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト124と同様なものが用いられる。図16(c)〜(e)は、それぞれ、誘電体印刷層136、導体印刷層138、誘電体印刷層140乃至誘電体印刷層144がそれぞれ形成された段階を示している。なお、一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。また、前記の貫通孔98は、この厚膜印刷の過程で形成されている。すなわち、厚膜印刷層136〜144は、前記貫通孔98の設けられる位置に厚膜印刷ペースト132,134が塗布されない穴明きパターンで形成される。
【0057】
上記のようにして厚膜印刷層136〜144を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程146においては、基板116を所定の焼成装置の炉室148内に入れ、厚膜誘電体ペースト132および厚膜導体ペースト134の種類に応じた例えば550(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図17(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0058】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層136〜144は、その焼結温度が例えば550(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38等および導体層44,46すなわちシート部材92の基本的部分が生成される。図17(g)は、この状態を示している。このとき、前記の剥離層122は、前述したようにその無機成分粒子が550(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層122は高融点粒子150(図18参照)のみから成る粒子層116となる。
【0059】
図18は、図17(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層122の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層152は、単に高融点粒子150が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子150は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層136〜144が収縮するときには、その高融点粒子150がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層136〜144の下面側でも基板116との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0060】
なお、本実施例においては、基板116の熱膨張係数は誘電体材料と略同じであり、厚膜印刷層136〜144の焼結が開始するまで、すなわち、樹脂成分は焼失させられたがガラスフリット、誘電体材料粉末や導体粉末の結合力が未だ小さい温度範囲ではこれらの熱膨張量に殆ど差はない。一方、厚膜印刷層136〜144の焼結が開始するときには、上述したように粒子層152の作用によって基板116はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板116の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板116を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10-7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10-7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板116の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0061】
図15に戻って、剥離工程154では、生成された厚膜すなわち誘電体層38,40,42および導体層44,46の積層体を基板116から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層152は高融点粒子150が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子150が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板116は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0062】
次いで、誘電体ペースト塗布工程156においては、剥離した積層体をディッピング槽158内に蓄えられた誘電体ペースト160中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト160が塗布される。このため、前記の印刷積層の過程では導体層44,46の一部が誘電体層38等から露出させられているが、この誘電体ペースト160でその露出部分が覆われることになる。前記の誘電体皮膜48は、この誘電体ペースト160から生成されたものであり、そのため、切取り部94が分離される前のシート部材92は、その外周面全体が誘電体皮膜48で覆われているのである。また、この誘電体ペースト160は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト132に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト132に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網162等に載せられた状態で誘電体ペースト160中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0063】
続く焼成工程164では、ディッピング槽158から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト160に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。なお、導体層44,46は、前述したように厚さ寸法が8(μm)程度の薄い膜であるので、その幅寸法が略一様に形成され、積層体の側面において導体層44,46の幅方向端部に厚膜パターンのがたつきは生じておらず、積層体の側面全体が滑らかになっている。そのため、そこに形成される誘電体皮膜48は凹凸の少ない平滑面になるので、放電開始電圧のばらつきが抑制されると共に、耐電圧が一層高められる。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程156および焼成工程164から被覆工程が構成されている。
【0064】
そして、保護膜形成工程166において、上記の誘電体皮膜48の表面に例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材92が得られる。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されないのである。また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。
【0065】
ここで、本実施例においては、分離工程100において、誘電体層38等の上に導体層44,46が積層され且つそれらを誘電体皮膜48で覆ったシート部材92の切取り部94が分離され、導体塗布工程102および重ね合わせ工程106において、複数個の接続電極70を備えた背面板18の一面14にそのシート部材92の内周部すなわちシート部材20が固定される。そのため、シート部材20に帯状厚膜導体52が備えられていることから、そのシート部材20を背面板18上に固定するだけでそこに維持電極を配設することができるので、維持電極やそれを覆う誘電体を形成するに際して、厚膜生成のための熱処理が背面板18に施されない。したがって、厚膜導体形成時の熱処理に起因する背面板18の歪み等を抑制できる。しかも、シート部材20は、切取り部94の分離前においては誘電体皮膜48で覆われていることから導体層44,46が露出していないが、その切取り部94が分離されるとシート部材20の端面にその導体層44,46が露出させられる。そのため、背面板18に固定した際に、その端面を用いて、容易にシート部材20内の導体層44,46を接続電極66に接続することができる。
【0066】
しかも、本実施例においては、接続部70の接続にその端面が用いられることから、シート部材20の裏面に接続部70を露出させて背面板18上の接続電極66と面接触させる場合に比較して、格子部60の外側に導体接続のために必要な幅すなわち表示領域として機能しないマージンを著しく小さくできる利点もある。
【0067】
また、本実施例においては、シート部材92は、厚さ方向に貫通し且つ複数本の帯状厚膜導体52の端部に交叉する切取線96上にそれら複数本の帯状厚膜導体52の各々がその切取線96を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔98を備えたものであり、前記分離工程100は、その切取線96上において切取り部94をその内周部(シート部材20)から分離するものである。そのため、切取り部94を切取線96上においてその内周部から容易に分離することができる利点がある。
【0068】
また、本実施例においては、導体塗布工程102において、接続電極66の各々に重なるように導体ペースト104が塗布され、且つ重ね合わせ工程106において、外周端縁が接続部70の露出させられた部分で導体ペースト104に重なるようにシート部材20が背面板18上に載せられる。そのため、シート部材20は、その端部で導体ペースト104を部分的に押し潰した状態で背面板18上に固定されるため、シート部材20を載せて固定するだけで、導体ペースト104とシート部材20の接続部70とが好適に接続される利点がある。
【0069】
また、本実施例においては、誘電体層38,40,42および導体層44,46が積層され且つその積層体が誘電体皮膜48で覆われたシート部材92には、複数本の帯状厚膜導体52(接続部70)の端部に交叉する切取線96上に並ぶ多数の貫通孔98が備えられる。そのため、このシート部材92は、その切取線96上でそれよりも外周側に位置する部分(切取り部94)をそれよりも内周側の部分(シート部材20)から容易に分離することができる利点がある。
【0070】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0071】
例えば、実施例においては、カラー表示用のAC型PDP10の製造に好適に用いうるシート部材20(92)およびこれを用いた導体配設方法に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、モノクロ表示用のAC型PDPにおける導体配設やその他種々の回路基板等における導体配設にも同様に用いられ得る。
【0072】
また、実施例においては、シート部材92の外周縁全体を矩形枠状に除去していたが、導体接続に必要な部分だけ導体を露出させれば足りるので、必ずしも外周縁全体を除去する必要は無い。但し、シート部材92の外周縁部は、その焼成過程で反りが生じ易いことから、分離工程100において外周縁部すなわち切取り部94を分離すれば、導体を露出させると同時に、反りの生じた部分を除去することができる利点もある。すなわち、シート部材92の製造過程において、比較的大きな反りが生じても許容されるので工程管理が容易になる利点もある。
【0073】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0074】
また、実施例においては、帯状厚膜導体52はその幅方向の両側に隣接する帯状厚膜導体52との間で放電させられるように構成されていたが、一方に隣接するものとだけ放電するように構成しても差し支えない。
【0075】
また、実施例においては、2層の導体層44,46が中間誘電体層42を介して設けられていたが、維持電極を構成するための導体層の層数は、所望とする放電面56の面積に応じて適宜定められるものであり、1層で構成しても、3層以上の導体層を2層以上の中間誘電体層を介在させて積層してもよい。
【0076】
また、実施例においては、実施例においては、接続部70と交叉する切取線96上に多数の貫通孔98が設けられていたが、接続部70と交叉する線上でシート部材の外周部が分離されれば本発明の効果は享受できるので、貫通孔98は必須ではない。すなわち、適当な目印を設けておく等により、予め定められた位置でシート部材の外周部を分離し、生成された内周部の端面に接続部70を露出させるようにしてもよい。
【0077】
また、実施例においては、接続電極66上に導体ペースト104を塗布した後に、その導体ペースト104の一部を押し潰しつつシート部材20を載せることで接続部70と接続電極66との導通を確保していたが、シート部材20を載せた後、接続電極66と接続部70の端面との間に導体を塗布しても差し支えない。
【0078】
また、実施例においては、維持電極を構成する帯状厚膜導体52がシート部材20内に備えられていたが、放電空間24の長手方向に直交する方向に沿って伸びる平行電極対を設け得るのであればその配設形態は問わない。例えば、前面板16の内面に隔壁22と直交する方向に沿って伸びる隔壁を突設し、これに帯状厚膜導体52,52を誘電体層を介して積層して設けることもできる。
【0079】
また、実施例においては、隔壁22がストライプ状に設けられていたが、封着後の排気・ガス封入に問題が無ければ格子状の隔壁で放電空間を区画形成してもよい。このようにする場合には、その格子状の隔壁に導体層44,46を設けることもできる。また、実施例においては、前面板16および背面板18の両方に隔壁22,34が形成されていたが、一方だけに設けても差し支えない。その場合、シート部材20と蛍光体との接触を避けるためには、隔壁を設けない側には蛍光体層を設けないことが好ましい。
【0080】
また、導体層44,46の厚さ寸法や相互間隔等は所望とする電気的特性や機械的強度等に応じて適宜定められるものであり、実施例に記載された数値のものに限定されない。
【0081】
また、実施例においては、シート部材20はその全面が誘電体皮膜48で覆われていたが、少なくとも導体層44,46が覆われていれば足り、誘電体層38等の上には誘電体皮膜48が設けられていなくとも差し支えない。すなわち、請求の範囲にいう「外周面全体が厚膜誘電体皮膜で覆われた」とは、導体が厚膜誘電体で覆われることにより外周面に露出させられていない状態を言うものであり、誘電体層38等が皮膜を兼ねていても差し支えないのである。
【0082】
また、実施例においては、シート部材20が厚膜スクリーン印刷法を利用して誘電体層38等を設けることで製造されていたが、コータやフィルム・ラミネート等を用いて膜形成面に「ベタ」に厚膜ペースト層を設け、フォト・プロセスを用いてパターニングすることもできる。
【0083】
また、実施例では内面12,14の何れにも蛍光体層32,36が設けられていたが、何れか一方のみとすることもできる。
【0084】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の3電極構造AC型ガス放電表示装置の一例であるカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図3】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造を説明する図である。
【図4】シート部材の固定状態を示す全体図である。
【図5】シート部材の周縁部を拡大して示す図である。
【図6】シート部材の外周端面の要部を示す図である。
【図7】図6におけるVII−VII視断面図である。
【図8】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図9】図8に示す製造工程で用いられるシート部材を示す平面図である。
【図10】(a)は図9におけるX−X視断面の要部を示す図、(b)は(a)における右側面図である。
【図11】図8の分離工程の実施状態を説明する図である。
【図12】(a),(b)はそれぞれ分離工程の後における図10の(a),(b)に対応する図である。
【図13】図8における導体塗布工程の実施状態を説明する図である。
【図14】図8の重ね合わせ工程において背面板上にシート部材を載せようとする段階を説明する図である。
【図15】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図16】(a)〜(e)は、図15の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図17】(f)〜(h)は、図15の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図16(e)に続く図である。
【図18】図15の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【符号の説明】
20:シート部材
92:シート部材
94:切取り部
96:切取線
Claims (5)
- 所定の基板上に導体を配設する方法であって、
所定の平面形状を有する厚膜誘電体層上にその周縁部に端部が位置する複数本の導体配線を有する厚膜導体層が積層され且つそれらの積層体の外周面全体が厚膜誘電体皮膜で覆われた厚膜シート部材のその周縁部をその内周部から分離することにより、その内周部の外周端面にそれら複数本の導体配線の各々を露出させる分離工程と、
前記複数本の導体配線の各々に接続するための複数個の接続電極を備えた前記基板の一面に前記厚膜シート部材の内周部を固定する固定工程と
を、含むことを特徴とする導体配設方法。 - 前記厚膜シート部材は、前記積層体を厚さ方向に貫通し且つ前記複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上にそれら複数本の導体配線の各々がその配列線を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔を備えたものであり、
前記分離工程は、前記配列線上において前記周縁部をその内周部から分離するものである請求項1の導体配設方法。 - 前記複数個の接続電極の各々に重なるように前記基板の一面に導体ペーストを所定の厚さ寸法で塗布する導体塗布工程を含み、
前記固定工程は、前記内周部の外周端縁が前記複数本の導体配線の各々の露出させられた部分で前記導体ペーストに重なるように前記厚膜シート部材を前記基板上に載せて固定するものである請求項1の導体配設方法。 - 所定の平面形状を有する厚膜誘電体層と、
前記厚膜誘電体層に積層され且つその周縁部に端部が位置する複数本の導体配線を有する厚膜導体層と、
前記厚膜誘電体層および前記厚膜導体層の積層体の外周面全体を覆う厚膜誘電体皮膜と、
前記積層体および前記厚膜誘電体皮膜を厚さ方向に貫通し且つ前記複数本の導体配線の端部に交叉する配列線上にそれら複数本の導体配線の各々がその配列線を跨いで連続するように並んで設けられた多数の貫通孔と
を、含むことを特徴とする厚膜シート部材。 - 前記多数の貫通孔は、前記複数本の導体配線の相互間に設けられたものである請求項4の厚膜シート部材。
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JP2007214133A (ja) * | 2006-02-10 | 2007-08-23 | Samsung Sdi Co Ltd | プラズマディスプレイパネル |
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-
2002
- 2002-12-24 JP JP2002373205A patent/JP2004206977A/ja active Pending
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