JP3891879B2 - Ac型ガス放電表示装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、AC(交流放電)型ガス放電表示装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明な第1基板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のAC型ガス放電表示装置が知られている。このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に用いられているAC型ガス放電表示装置の形式の一つに、上記の維持電極を相互に平行な複数対で構成すると共に、その維持電極との間で書込放電を発生させることにより発光区画を選択するための書込電極を備えた3電極構造のものがある。このような3電極構造の表示装置では、例えば光の射出側となる前面板に維持電極が設けられ、背面板側に書込電極が設けられることから、可及的に光を透過させる必要がある前面板は、維持電極がITO(酸化インジウム錫)膜等から成る透明電極およびその導電性を補うための金属または厚膜導体から成るバス電極で構成される。そのため、前面板の製造工程では、ガラス基板上に(a)ITO膜と基板との密着性を確保するためのSiO2膜、(b)ITO膜、(c)バス電極、(d)ブラック・ストライプ、(e)誘電体層、(f)MgO膜等が順次形成されていた。上記のITO膜は、例えばスパッタ等で設けられた後、レジスト塗布・露光・現像・エッチング処理・レジスト剥離を行うフォト法でパターン形成される。また、バス電極は、Cr-Cu-Cr等の薄膜で構成される場合にはITO膜の場合と同様な方法で、厚膜銀等の厚膜導体で構成される場合には厚膜スクリーン印刷法等の厚膜プロセスで形成される。また、誘電体層およびMgO膜は、高い透光性を有するように高い品質が要求される。すなわち、従来の3電極構造では、前面板側に透光性が要求されることに起因して、その内面に形成される導体膜や誘電体膜等の製造工程が複雑になっていた。
【0004】
しかも、上記の製造工程のうち誘電体層や厚膜導体で構成される場合のバス電極を形成する際には、それらの焼成のために基板に加熱処理が施される。そのため、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して、前面板に歪みが生じると共に厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題もあった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等を抑制できる3電極構造のAC型ガス放電表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明のAC型ガス放電表示装置の要旨とするところは、透明な第1基板と、その第1基板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板と、それら第1基板および第2基板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々でガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極と、その維持電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択するために前記第2基板上に一方向に沿って設けられた互いに平行な複数本の書込電極とを備え、前記複数対の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1基板を通して観察する形式のAC型ガス放電表示装置であって、(a)格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、(b)前記一方向に直交する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層の少なくとも一面に積層され且つその格子の交点間に位置する部分が前記維持電極として機能させられる複数本の導体膜から成る厚膜導体層と、(c)前記厚膜導体層を覆う厚膜誘電体から成る被覆誘電体層とを備えて、前記第1基板および前記第2基板の間にそれらに平行に配置されたシート部材を含むことにある。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、格子状を成すシート部材の少なくとも一面に設けられた厚膜導体層によって複数対の維持電極が構成される。そのため、シート部材を第1基板および第2基板の間に配置するだけで維持電極が設けられることから、維持電極を内面に形成するための熱処理が第1基板に施されない。また、電極や誘電体等は光の射出側となる第1基板内面に形成されないので、その第1基板の透光性を可及的に高めるために電極等の形成工程が複雑になることもない。したがって、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制された3電極構造のAC型ガス放電表示装置が得られる。
【0008】
【第1発明の他の態様】
ここで、好適には、前記厚膜導体層は、相互に隣接する前記導体膜の前記交点間に位置する部分に、前記コア誘電体層の格子の内壁面の一部を覆い且つ相互に対向するように固着された対向部を備えたものである。このようにすれば、厚膜導体層には、シート部材の格子内で互いに対向させられる対向部がその内壁面に設けられるため、その対向部で実質的に維持電極の放電面が構成される。そのため、放電面が互いに平行に設けられた対向放電構造であることから、一平面上に維持電極が配置された従来の3電極構造に比較して効率が高められると共に、局部的に放電が強くなることに起因する被覆誘電体層(MgO等から成る保護膜が設けられる場合には被覆誘電体層および保護膜)の局部的な劣化が抑制され延いては表示装置の寿命が長くなる利点がある。特に、放電空間内に蛍光体層が設けられた形式のガス放電表示装置では、放電面が第1基板と第2基板との中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面に沿った方向となることから、第1基板内面および第2基板内面上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、その広い範囲に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点もある。
【0009】
因みに、従来の面放電型のガス放電表示装置では、一平面上に配置された互いに平行な維持電極間で放電させられることから、その放電面の大きさや相互間隔がセル・ピッチ等の制限を受けるため、設計上の制約が大きい問題があった。しかも、対を成す維持電極の放電面間距離がその内側と外側とで著しく相違することから、発光区画(画素すなわちセル)全体から発光させるために外側位置で放電を生じさせようとすると放電効率が低くなると共に、放電の生じ易い内側では放電集中による被覆誘電体層の劣化が生じ易くなる不都合もあった。
【0010】
また、好適には、前記導体膜は、相互に隣接するものが前記コア誘電体層の一面および他面に交互に配置されたものである。このようにすれば、相互に隣接する導体膜がコア誘電体層の互いに反対側の面に固着されていることから、導体膜のうちそのコア誘電体層の一面および他面にそれぞれ固着されている部分による面放電が抑制される。そのため、放電ギャップ(対を成す維持電極の相互間隔)の大きさとセル・ピッチの大きさとの関係に起因して、一方の維持電極を備えた導体膜と隣接する他のセルの導体膜との間のコア誘電体層の面方向における相互間隔がその放電ギャップよりも小さくなるような場合にも、それらの間の誤放電が好適に抑制される利点がある。
【0011】
また、好適には、前記厚膜導体層は、前記対向部が前記複数本の導体膜の各々の幅方向における両側に備えられたものである。このようにすれば、シート部材に備えられる格子の全てに実質的に放電電極として機能させられる対向部の対が設けられることになる。そのため、端部から数えて奇数列の放電空間内で放電させる対の組合せと、偶数列の放電空間内で放電させる対の組合せとを交互に切り替えて、2枚のフィールドで1枚のフレーム(すなわち1画像)を表示する2:1インタレース(飛び越し走査)を採用することにより、導体膜の本数を増加させることなく、従来の3電極構造よりも走査線本数を倍増させて解像度を高めることが可能となる。
【0012】
また、好適には、前記ガス放電表示装置は、前記複数本の書込電極に平行な一方向に沿って伸びる複数本の凹溝をそれら複数本の書込電極の相互間に対応するの位置において前記第1基板の内面に備えたものである。すなわち、第1基板の内面には、シート部材がそこに密着することを抑制するための隔壁を上記一方向に沿って伸びるように設けることができるが、上記のようにすれば、その隔壁が実質的に凹溝間の凸部によって構成されることになるため、隔壁を設けるために焼成処理を伴う厚膜プロセスを用いる必要が無くなる。特に、放電空間内に蛍光体層を備える形式のカラー表示用表示装置では、シート部材と蛍光体層との接触を防止しつつその凹溝内に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点がある。本発明によれば第1基板に維持電極を設ける必要がないので、上記のような凹溝を設けることが可能となる。
【0013】
また、好適には、上記の凹溝或いは放電空間を形成するために第1基板および第2基板の少なくとも一方に設けられるリブ状壁は、シート部材の格子の一方向に沿って伸びる部分が、第1基板および第2基板の相対的に凸に成った部分上に位置させられる位置関係に設けられる。このようにすれば、放電空間内のうちシート部材を挟んで観視側とは反対側の部分で生じた光、例えばその反対側の部分に備えられている蛍光体層の発光がシート部材によって遮られることが抑制されるので、ガス放電表示装置の輝度が一層高められる。
【0014】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の製造方法の要旨とするところは、透明な第1基板と、その第1基板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板と、それら第1基板および第2基板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々でガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極と、その維持電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択するために前記第2基板上に一方向に沿って設けられた互いに平行な複数本の書込電極とを備え、前記複数対の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1基板を通して観察する形式のAC型ガス放電表示装置を、前記第1基板および前記第2基板を重ね合わせて気密に封着することにより製造する方法であって、(a)格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、(b)前記一方向に直交する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層の少なくとも一面に積層され且つその格子の交点間に位置する部分を前記維持電極として機能させるための複数本の導体膜から成る厚膜導体層と、(c)その厚膜導体層を覆う厚膜誘電体から成る被覆誘電体層とを備えたシート部材を、前記第1基板および前記第2基板の一方の内面上に固着するシート部材固着工程を含むことにある。
【0015】
【第2発明の効果】
このようにすれば、第1基板および第2基板を重ね合わせて固着することによりガス放電表示装置を製造するに際して、厚膜導体層が格子状の厚膜誘電体層の少なくとも一面に積層されて成るシート部材が第1基板または第2基板に固着されることにより、維持電極が放電空間内に備えられる。そのため、シート部材上に維持電極を構成するための厚膜導体層が備えられていることから、第1基板および第2基板の間にそのシート部材を配置するだけで維持電極を設けることができるため、第1基板上に維持電極を設ける場合におけるその形成時の熱処理に起因する第1基板および維持電極の歪みが好適に抑制される。したがって、電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制された3電極構造のAC型ガス放電表示装置を簡単な製造工程で得ることができる。
【0016】
【第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記のガス放電表示装置の製造方法は、(d)所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する支持体準備工程と、(e)前記第1温度で焼結させられる厚膜誘電体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る誘電体ペースト膜を前記膜形成面上に前記コア誘電体層に対応する格子状パターンで形成する誘電体ペースト膜形成工程と、(f)前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る導体ペースト膜を前記膜形成面上に前記厚膜導体層に対応する複数に分割された所定パターンで形成する導体ペースト膜形成工程と、(g)前記支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなく前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜を焼結させて、それら導体ペースト膜および誘電体ペースト膜から前記厚膜導体層および前記コア誘電体層を生成する焼成工程とを、含む工程により前記シート部材を製造するものである。
【0017】
このようにすれば、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結温度(第1温度)よりも高い融点を有する高融点粒子層で構成された膜形成面に厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜がそれぞれ所定パターンで形成された後、それら厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結させられる第1温度で加熱処理が施されることにより、厚膜誘電体層の表面に厚膜導体層が形成されたシート部材が生成される。そのため、その加熱処理温度では焼結させられない高融点粒子層は樹脂が焼失させられることにより高融点粒子のみが並ぶ層となることから、生成された厚膜は支持体に固着されないため、その膜形成面から容易に剥離することができる。このとき、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜は、材料や用途に応じた適宜の方法を用いることにより、簡便な設備を用いて所望のパターンで膜形成面に形成することが可能である。しかも、加熱処理により焼結させられるまでは膜形成面に塗布されることにより一時的に固着された状態で取り扱われることから、取扱いが容易である。したがって、維持電極を設けるためのシート部材を容易に製造し且つガス放電表示装置の製造に用いることができる。
【0018】
なお、上記の導体ペースト膜形成工程は、シート部材の構成に応じて、誘電体ペースト膜形成工程に先立って或いはそれに続いて、厚膜誘電体層の一方の面だけに対して行われ、または、誘電体ペースト膜形成工程の前後の両方に、厚膜誘電体層の両面に対して行われる。また、上記のように高融点粒子のみが並ぶ層の上で焼結させられる厚膜は、通常の厚膜形成とは異なり、その収縮時に何ら形成面に拘束されない。そのため、形成面との間の収縮抵抗に起因する反りや変形等が抑制され、延いてはそれら反りや変形に伴う亀裂等の発生も抑制される。したがって、維持電極の歪み等が一層抑制される利点がある。
【0019】
また、好適には、前記厚膜導体層は、相互に隣接する前記導体膜の前記交点間に位置する部分に、前記コア誘電体層の格子の内壁面の一部を覆い且つ相互に対向するように固着された対向部を備えたものであり、前記誘電体ペースト膜の格子の内壁面に前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る壁面導体ペースト膜を前記対向部に対応するパターンで形成する壁面導体ペースト膜形成工程を含むものである。このようにすれば、壁面導体ペースト膜形成工程において、前記対向部を構成するための壁面導体ペースト膜が設けられることから、厚膜導体層は対向部を備えて形成されるため、シート部材を第1基板または第2基板上に固着することによって、実質的に維持電極として機能する対向部を備えたガス放電表示装置を製造できる。
【0020】
また、好適には、前記支持体準備工程は、所定の基板の表面に前記高融点粒子層を形成するものである。このようにすれば、ペースト膜が基板上に形成されることから、加熱処理後にも支持体の形状が維持されるため、高融点粒子層のみで支持体が構成されている場合(例えば、セラミック生シートで支持体が構成されている場合)に比較して放電空間内に維持電極を設けるためのシート部材の取扱いが容易になる利点がある。しかも、このような支持体が用いられる場合には、ペースト膜との間に高融点粒子層が介在させられる基板は加熱処理の際にそのペースト膜を何ら拘束せず、且つそのペースト膜の表面粗度は高融点粒子層の表面粗度のみが反映されることから、基板の平坦度、表面粗度、膨張係数等のシート部材の品質に及ぼす影響が小さくなるため、基板に高い品質は要求されない。
【0021】
また、好適には、前記基板は、前記焼成温度で変形しないものである。このようにすれば、厚膜誘電体層および厚膜導体層を生成するための加熱処理が施される際にも膜形成面の形状が初期の形状に保たれるため、高融点粒子層を表面に形成することにより、支持体として繰り返し使用可能となる利点がある。基板は、上記の条件を満たす適宜のものが選ばれるが、例えば、一般ガラス、耐熱ガラス、セラミック板、金属板等を用いることができる。
【0022】
また、好適には、前記製造方法は、前記厚膜導体層が積層された前記コア誘電体層の外周に厚膜誘電体ペーストを塗布して加熱処理を施すことにより前記被覆誘電体層を設ける被覆工程を含むものである。このようにすれば、厚膜導体層を覆う被覆誘電体層を容易に設けることができる。一層好適には、上記厚膜誘電体ペーストの塗布は、ディッピング処理によって行われる。
【0023】
また、好適には、前記ペースト膜を形成する工程は、厚膜スクリーン印刷法を用いて前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜をそれぞれ形成するものである。ペースト膜の形成方法としては、例えば、印刷、サンド・ブラスト、リフトオフ、感光性ペーストを用いたフォト・プロセス等の種々の方法からコスト、必要精度、他の工程との兼ね合い等に応じて選択した適宜の方法を用いることができるが、上記のように印刷法による場合には、膜形成面のうち無用な部分には膜構成材料が塗布されないことから、材料の無駄がない利点がある。すなわち、セラミック生シートのプレス加工、或いはセラミック・シートのレーザ加工や金属材料の化学エッチング等によるもの等に比較して加工時に除去される材料の無駄が極めて少なくなる。
【0024】
また、好適には、前記高融点粒子は、セラミックス或いはガラス・フリット等の無機材料から成るものである。高融点粒子としては、高融点粒子層を構成する樹脂が焼失した後も何ら軟化等するものでなければ、適宜の無機材料を用いることができる。なお、具体的な材質は、シート部材を構成する厚膜材料の種類やその焼成温度等に応じて適宜選択される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明のガス放電表示装置の一例であるAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも900×500(mm)程度の大きさと1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法とを備えると共に透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものである。本実施例においては、上記の前面板16が第2基板に、背面板18が第1基板にそれぞれ相当する。
【0027】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が200〜500(μm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が80〜200(μm)程度、高さ寸法が30〜100(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0028】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0029】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0030】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成り、例えば20〜50(μm)程度の厚さ寸法で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば10〜20(μm)程度の範囲内の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0031】
図2は、隔壁22の長手方向に沿い且つ前記書込電極28の幅方向における中央部を通る断面において、PDP10の断面構造を説明する図である。前記のシート部材20は、その骨格を構成する格子状(前記図1参照)のコア誘電体層38と、その一面40(図における上面)から側面(すなわち格子の内壁面)の一方に亘る範囲に積層して固着された維持配線層42と、これを覆って設けられた被覆誘電体層44と、その被覆誘電体層44を更に覆って設けられてシート部材20の表層部を構成する保護膜46とから構成されている。本実施例においては、上記の維持配線層42が厚膜導体層に相当する。
【0032】
上記のコア誘電体層38は、30〜50(μm)程度、例えば40(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分の幅寸法は、例えば隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば100〜150(μm)程度である。また、このコア誘電体層38は、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。
【0033】
また、上記の維持配線層42は、例えば銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であり、例えば5〜10(μm)程度の厚さ寸法で設けられている。維持配線層42のうちコア誘電体層38の側面を覆う部分48は、放電空間24内でガス放電を発生させるための維持電極として機能させられるものである。図に示されるように、維持電極48は、シート部材20を構成する格子の内壁面において互いに平行且つ対向する位置に配置されている。すなわち、PDP10は、その放電空間24内において互いに対向する維持電極48、48間で放電させられる対向放電構造に構成されている。なお、放電空間24毎に一対が備えられているこれら維持電極48、48のうちの一方は、後述するように発光区画(セル)選択のために前記の書込電極28との間で書込放電させられる走査電極としても機能させられるものであり、他方は維持放電のみに用いられる。
【0034】
また、前記の被覆誘電体層44は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この被覆誘電体層44は、表面に電荷を蓄えることにより維持電極48、48間で交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される維持電極48を露出させないことによって、これからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0035】
また、前記の保護膜46は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜46は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層44のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0036】
図3は、シート部材20の一部を切り欠いて維持配線層42の構成を詳しく説明する図である。図において、維持配線層42は、シート部材20を構成する格子の一方向に沿って伸びる複数本の配線部50を備えている。この配線部50の長手方向は、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きである。また、配線部50は、50〜80(μm)程度の一定の幅寸法を備えたものであり、格子状のコア誘電体層38の各構成部分の幅方向における中央部に位置する。
【0037】
また、配線部50には、その長手方向における複数箇所にその側方すなわちその長手方向に略垂直な向きにその幅寸法を拡大するように突き出す突出部52が備えられている。前記の維持電極48は、この突出部52の先端部から連続し且つそれと垂直を成すように設けられている。これら突出部52および維持電極48の幅寸法(配線部50の長手方向における寸法)は、例えば100(μm)程度であり、維持電極48の高さ寸法はシート部材20の厚さ寸法に略等しい30〜50(μm)程度、例えば40(μm)程度である。すなわち、維持電極48はコア誘電体層38の側面の一部を覆って設けられている。
【0038】
図4に維持配線層42の複数本の配線部50の接続関係を書込電極28との位置関係も含めて模式的に示した。図において左右方向に沿って伸びる複数本の配線部50は、格子状のコア誘電体層38のその左右方向に沿って伸びる部分の全てに一本ずつが設けられている。維持電極48は、図における左右方向に連なったものが共通の配線部50に接続されている。また、配線部50は、他の全ての配線部50と独立させられたものと、共通の配線に接続されたものとが図の上下方向において交互に位置するように設けられている。
【0039】
なお、図に示されるように、シート部材42の格子構成部分の相互間隔は一様ではない。すなわち、配線部50に垂直な方向に沿って伸びる部分は、例えば200(μm)程度の一定の相互間隔Gwで設けられているが、維持配線層42の配線部50に沿って伸びる部分は、例えば100(μm)程度の相対的に小さい相互間隔Gs1および600(μm)程度の相対的に大きい相互間隔Gs2が交互に現れる。維持電極48,46は、相対的に小さい相互間隔Gs1の部分で対向させられている。図4における左端中央に例示するように、本実施例では、この維持電極48,48間で表示のための維持放電をさせるので、放電ギャップは相互間隔Gs1に略等しい100(μm)程度である。また、図4を前記の図1と対比すれば明らかなように、シート部材20は、配線部50に垂直な方向に沿って伸びる格子の構成部分が隔壁22の頂部上に位置させられている。なお、前記の図2は、上記の図4におけるA−A視断面に対応する図である。
【0040】
このため、対向させられる維持電極48,48のうち個々に独立させられているものが接続されている複数本の配線部50に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、それらの間で書込放電が発生させられ、維持電極48上の保護膜46上に電荷が蓄積される。このようにして走査電極として機能させられる全ての維持電極48を走査した後、全ての維持電極48,48間に配線部50を介して所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、維持電極48,48間で放電が発生させられ、且つ保護膜46上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。そして、走査側電極(維持電極48)の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、上記の説明から明らかなように、維持電極48のうち、個々に独立させられている一方は、書込電極28との間で走査電極として機能させられるが、他方の維持電極48との間では維持電極(表示放電電極)として機能させられる。
【0041】
このとき、図4に示されるように、放電は、100(μm)程度の僅かな距離Gs1だけ相互に離隔させられた電極48,48間で発生させられるが、放電空間24は図における上下方向に連続しているため、その放電により発生させられた紫外線は、図4に一点鎖線で模式的に示すように、その放電空間24の長手方向に沿って放電電極48,48の外側に広がる。そのため、放電空間24内に設けられている蛍光体層32,36のうち、その一点鎖線で囲まれた範囲内に位置するものが、図の左端中央に示す電極48,48間の放電で発生した紫外線で励起発光させられることとなる。
【0042】
したがって、PDP10における発光単位(セル)の区切りは、隔壁22に垂直な方向すなわち図における左右方向ではその隔壁22によって区切られ、隔壁22の長手方向すなわち図における上下方向では実質的にはこの紫外線の及ぶ範囲によって画定される。この結果、発光単位の中心間隔は、図の左右方向においてはPc=0.3(mm)程度のカラー・セル・ピッチに、図の上下方向においてはPd=0.9(mm)程度のドット・ピッチになっている。なお、本実施例のようなRGB3色から成るカラー表示用のPDP10においては、図の左右方向において相互に隣接する3つの発光区画で一画素が構成されている。そのため、画素ピッチは、左右方向および上下方向の何れにおいても0.9(mm)程度である。
【0043】
ここで、本実施例においては、格子状のシート部材20の一面40に維持配線層42が設けられると共に、その維持配線層42のうちの格子の内壁面の互いに対向する位置に固着された部分によって維持電極48、48が構成される。そのため、放電面が互いに平行に設けられた対向放電構造であることから、一平面上に維持電極が配置された従来の3電極構造に比較して効率が高められると共に、局部的に放電が強くなることに起因する被覆誘電体層44および保護膜46の局部的な劣化が抑制され延いてはPDP10の寿命が長くなる利点がある。また、対向放電構造であることから、隔壁22の頂部や前面板16にうねり等があったとしても、それによって隔壁22と前面板16との間に生じる隙間に起因してクロストークの生じることが抑制される。
【0044】
しかも、維持電極48,48の放電面が前面板16および背面板18の何れからも離隔したこれらの中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面12,14に沿った方向となることから、前面板内面12および背面板内面14上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、前述したようにそれらの何れにも広い範囲に亘って蛍光体層32,36が設けられる。そのため、蛍光体層32を維持電極が固着された基板とは反対側の基板上にのみ設けることが可能であった面放電構造の場合に比較して輝度を飛躍的に高め得る利点もある。
【0045】
また、維持電極48が前面板16上に設けられていないため、厚膜銀から構成される場合にもその銀の黄変色が観察されることがない。したがって、酸化ルテニウム等の高価な黒色導電材料を維持電極48の構成材料に用いる必要もない利点もある。
【0046】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0047】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程54で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程56では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程58においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0048】
次いで、隔壁形成工程60では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁28を形成する。なお、一回の印刷で隔壁28の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程54乃至オーバ・コート形成工程58も同様である。そして、蛍光体層形成工程62においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁28相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0049】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程64において、上記の工程60と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程66において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0050】
そして、シート部材作製工程68において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程70において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0051】
上記の製造工程において、シート部材作製工程68は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(h)を参照して説明する。
【0052】
先ず、基板を用意する工程74では、厚膜印刷を施す基板76(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板76は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10-7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板76の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面78の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0053】
次いで、剥離層形成工程80では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層82を、基板76の表面78に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のアルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば550(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば550(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層82は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト84を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板76の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層82を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、86はスクリーン、88はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層82を備えた基板76が支持体に、その剥離層82の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程74および剥離層形成工程80が支持体準備工程に対応する。
【0054】
続く厚膜ペースト層形成工程90では、前記の維持配線層42および維持電極48を形成するための厚膜導体ペースト92と、前記のコア誘電体層38を形成するための厚膜誘電体ペースト94(図7(a)参照)を、無機材料ペースト84と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層82上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、コア誘電体層38を形成するための厚膜誘電体層98、維持配線層42のうちの配線部50および突出部52を形成するための導体印刷層100、維持電極48を形成するための導体印刷層102が順に形成される。上記の厚膜導体ペースト92は、例えば、銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜誘電体ペースト94は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-TiO2系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト84と同様なものが用いられる。
【0055】
このとき、維持配線層42の配線部50、突出部52、およびコア誘電体層38を形成する際には、スクリーン86は、前記の図1および図3等に示されるようなそれらの形状にそれぞれ対応する開口パターンを備えたものが用いられ、焼成収縮後にそれぞれ前記の膜厚が得られるように設定された所定の厚さ寸法で厚膜導体ペースト92および厚膜誘電体ペースト94が塗布される。一方、維持電極48を形成する際には、例えばコア誘電体層38により形成された格子の内壁面よりも僅かに内側にはみ出した形状の開口を備えたスクリーン86を用いることにより、厚膜導体ペースト92がコア誘電体層38の上面からその内壁面に沿って流れ落ちるように塗布される。図7(c)〜(e)は、誘電体印刷層98、導体印刷層100、導体印刷層102がそれぞれ形成された段階を示している。なお、導体印刷層100,102は、5〜10(μm)程度の厚さ寸法であるため、一回の印刷で形成されるが、誘電体印刷層98は30(μm)程度の厚さ寸法であることから、適当な厚さ寸法が得られるまで3回程度の印刷および乾燥を繰り返して積層形成される。また、導体印刷層102を形成する際に用いられる厚膜導体ペースト92は、内壁面に沿って流れ落とすべく例えば10〜50(Pa・s)程度の比較的低粘度に調製される。流れ落ちた厚膜導体ペースト92は、剥離層82に溶剤が吸収されるため、その剥離層82の表面で広がることはない。
【0056】
上記のようにして厚膜印刷層98〜102を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程104においては、基板76を所定の焼成装置の炉室106内に入れ、厚膜導体ペースト92および厚膜誘電体ペースト94の種類に応じた例えば550(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0057】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層98〜102は、その焼結温度が例えば550(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、コア誘電体層38および厚膜導体層(維持配線層42と書込配線層40)すなわちシート部材20の基本的部分が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、前記の剥離層82は、前述したようにその無機成分粒子が550(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層82は高融点粒子108(図9参照)のみから成る粒子層110となる。
【0058】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層82の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層110は、単に高融点粒子108が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子108は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層98〜102が収縮するときには、その高融点粒子108がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層98〜102の下面側でも基板76との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0059】
なお、本実施例においては、基板76の熱膨張係数は誘電体材料と略同じであり、厚膜印刷層98〜102の焼結が開始するまで、すなわち、樹脂成分は焼失させられたがガラスフリット、誘電体材料粉末や導体粉末の結合力が未だ小さい温度範囲ではこれらの熱膨張量に殆ど差はない。一方、厚膜印刷層98〜102の焼結が開始するときには、上述したように粒子層110の作用によって基板76はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板76の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板76を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10-7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10-7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板76の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0060】
図6に戻って、剥離工程112では、生成された厚膜すなわちコア誘電体層38および配線層36,40の積層体を基板76から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層110は高融点粒子108が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子108が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板76は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0061】
次いで、誘電体ペースト塗布工程114においては、剥離した積層体をディッピング槽116内に蓄えられた誘電体ペースト118中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト118が塗布される。この誘電体ペースト118は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト94に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト94に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網120等に載せられた状態で誘電体ペースト118中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0062】
続く焼成工程122では、ディッピング槽116から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト118に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(被覆誘電体層44)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された被覆誘電体層44は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程114および焼成工程122から被覆工程が構成されている。
【0063】
このとき、上記の焼成工程122が比較的高温に設定される場合には、内側に位置するコア誘電体層38および維持配線層42から残留していた有機成分が焼失させられること等によりガスが発生する。このガスは、被覆誘電体層44内に気泡を生成するものであるが、ガスの移動方向は図10に矢印で示されるように上方となる。そのため、被覆誘電体層44内に生成する気泡は、専ら図における上部に形成され、維持配線層42のうち放電面として機能させられる部分すなわちコア誘電体層38の側面を覆う部分には発生しない。したがって、焼成工程122における処理温度が高温であっても、それに起因して維持電極48上の被覆誘電体層44内に気泡が生じることがないので、その焼成温度を高くして緻密化させ、耐電圧等の特性を高めることが可能となる。
【0064】
そして、保護膜形成工程124において、上記の被覆誘電体層44の表面に例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜46が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。なお、保護膜46は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては維持電極48,48間で対向放電させることから電極表面間距離が一様であるため、保護膜46の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜46に要求されないのである。また、保護膜46は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。
【0065】
ここで、本実施例においては、前面板16および背面板18を重ね合わせて固着することによりPDP10を製造するに際して、以上のようにして製造された維持配線層42を備えたシート部材20が前面板16または背面板18に固着されることにより、維持電極48が放電空間24内に設けられる。そのため、シート部材20上に維持電極48を構成するための厚膜導体層すなわち維持配線層42が備えられていることから、前面板16および背面板18の間にそのシート部材20を配置するだけで維持電極48を設けることができるため、前面板16上に維持電極を設ける場合におけるその形成時の熱処理に起因する前面板16および電極48等の歪みが好適に抑制されたPDP10を製造することができる。したがって、電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制された3電極構造のAC型PDP10を簡単な製造工程で得ることができる。すなわち、SiO2のコートやITO、バス電極等を設ける複雑なプロセスが無用になる。
【0066】
また、本実施例においては、厚膜導体ペースト92および厚膜誘電体ペースト94の焼結温度よりも高い融点を有する剥離層82で構成された膜形成面に誘電体印刷層98および導体印刷層100等が所定パターンで形成された後、それらの焼結させられる温度で加熱処理が施されることにより、コア誘電体層38の一面40に維持配線層42を構成する厚膜導体層が形成されたシート部材20が生成される。そのため、その加熱処理温度では焼結させられない剥離層82は樹脂が焼失させられることにより高融点粒子108のみが並ぶ粒子層110となることから、生成された厚膜は基板76に固着されないため、その表面78から容易に剥離することができる。したがって、維持電極48を構成するためのシート部材20を容易に製造し且つPDP10の製造に用いることができる。
【0067】
また、本実施例においては、厚膜ペースト92,94の塗布される支持体は、基板76の表面に剥離層82が形成されることにより構成されるため、加熱処理後にも支持体の形状が維持されるため、剥離層82のみで支持体が構成されている場合に比較してシート部材20の生成後の取扱いが容易になる利点がある。なお、厚膜印刷層98〜102と基板76との間には剥離層82が介在させられていることから、加熱処理の際にその厚膜印刷層98〜102を何ら拘束しないため、基板76の平坦度や表面粗度等は特に問題にならない。すなわち、基板表面78が反っている場合には、厚膜印刷層98〜102はその表面78に倣って反りを有して形成されるが、生成されるシート部材20は焼成後にも十分な柔軟性があるため、平坦面に置いた場合にその面に倣ってシート部材20も平坦になるのである。
【0068】
また、本実施例においては、厚膜印刷層98〜102は、厚膜スクリーン印刷法を用いて形成されることから、装置が簡単且つ材料の無駄が少ないため、低コストとなる利点がある。
【0069】
また、本実施例によれば、厚膜スクリーン印刷法を用いて膜形成がされることから所謂ウェット・プロセスがないため、排水処理が容易になる利点もある。因みに、ウェット・プロセスでは、溶液が膜内に浸透して残存すると、前面板16および背面板18を接着して真空容器を構成した後のアウトガスの原因になり得る。これを避けるためには、構成材料の耐熱温度を高くして気密封着後の排気温度を高め、或いは排気時間を長くする等の工程負荷が重くなるような処置が必要となる。
【0070】
図11および図12は、本発明の他の実施例のPDPに用いられるシート部材130の構成を説明するための図2および図3にそれぞれ対応する図である。この実施例においては、前記の維持配線層42に代えて、維持配線層132が一面40に設けられると共に、その反対側の他面134に維持・走査配線層136が設けられている。維持配線層132は、維持配線層42において配線部50等がコア誘電体層38の格子の一本おきに設けられたものである。また、維持・走査配線層136は、同様な配線部50が維持配線層132とは異なる格子の一本おきに設けられたものである。この維持・走査配線層136においても、配線部50の長手方向における複数箇所から維持電極48が格子の内壁面に沿って設けられており、格子内において対向する一対の電極48,48が備えられている。
【0071】
そのため、維持配線層130および維持・走査配線層136の配線部50、すなわち相互に隣接する配線部50が相互に反対側の面40,134に交互に設けられているので、前述したような駆動方法で上記のシート部材130を備えたPDPを駆動すると、配線部50や突出部52間の面放電が好適に抑制される利点がある。
【0072】
なお、上記のようなシート部材130は、前記の誘電体印刷層98を形成するに先立ち、維持・走査配線層136に生成される導体印刷層を形成することにより、前記のシート部材20と同様な工程で製造することができる。なお、維持電極48を構成するために格子の内壁面に沿って設けられる導体印刷層102は、維持配線層130および維持・走査配線層136の何れの側のものも、導体印刷層100を設けた後にその上側から導体ペーストを塗布することで設けることができる。
【0073】
図13は、前面板16に代えて用いられる前面板140の構成を説明する図である。図において、前面板140は、前記の前面板16と同様な寸法および形状を備え且つ同様な材料で構成されたものであるが、気密空間内に位置させられることとなるその一面142には、隔壁34に代えて互いに平行な一方向に沿って伸びる複数本の凹溝144が設けられている。この凹溝144は、相互間に形成される凸部が前記の隔壁34に対応する位置に位置するように設けられており、その内部には蛍光体層146が設けられている。このような前面板140を用いても、蛍光体層146をシート部材20等と接触させることなく前面板内面142に設け得るので、隔壁34を設けた場合と同様に高い輝度を得ることができる。しかも、凹溝144は、研削加工等によって容易に形成できるので、厚膜プロセスを用いて隔壁34を形成する場合に比較して製造工程が一層簡単になる利点もある。
【0074】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0075】
例えば、実施例においては、カラー表示用のAC型PDP10およびその製造方法に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、モノクロ表示用のAC型PDPおよびその製造方法にも同様に適用される。
【0076】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0077】
また、シート部材20、130の厚さ寸法およびそれを構成するコア誘電体層38や配線層42、132,136の厚さ寸法等は、シート部材20に取扱い上で要求される機械的強度や、導体に求められる導電性等に応じて定められるものであり、実施例に示した数値に限られずガス放電表示装置の大きさや構造等に応じて適宜定められる。
【0078】
また、実施例においては、シート部材20、130に設けられた配線層42,132,136が被覆誘電体層44で完全に覆われていたが、これらは表示のための放電や気密容器内の雰囲気等に影響を及ぼさない範囲で部分的に露出させられていても差し支えない。
【0079】
また、実施例においては、シート部材20が厚膜スクリーン印刷法を利用してコア誘電体層38や配線層42等を設けることで製造されていたが、コータやフィルム・ラミネート等を用いて膜形成面に「ベタ」に厚膜ペースト層を設け、フォト・プロセスを用いてパターニングすることもできる。
【0080】
また、実施例においては、シート部材20を製造するための支持体を、基板76の表面78に剥離槽82を設けることで構成していたが、セラミック生シート(未焼成のシート状セラミックス)を支持体として用いることもできる。この場合には、焼成工程104における熱処理温度が、このセラミック生シートは焼結しないがそれに含まれている樹脂成分は十分に燃え抜けるような温度となるように生シートの構成を定めればよい。
【0081】
また、実施例においては、シート部材20の内壁面を覆う維持電極48、48間で放電させられる対向放電構造に構成されていたが、この内壁面を覆う部分が設けられていないような面放電構造に構成することもできる。但し、その場合でも、所望の位置で放電を確実に発生させるためには、少なくとも突出部52が設けられることが好ましい。
【0082】
また、実施例においては、隔壁22がストライプ状に設けられていたが、封着後の排気・ガス封入に問題が無ければ格子状の隔壁で放電空間を区画形成してもよい。また、実施例においては、前面板16および背面板18の両方に隔壁22,34が形成されていたが、一方だけに設けても差し支えない。その場合、シート部材20と蛍光体との接触を避けるためには、隔壁を設けない側には蛍光体層を設けないことが好ましい。
【0083】
また、実施例では内面12,14の何れにも蛍光体層32,36が設けられていたが、何れか一方のみとすることもできる。
【0084】
また、放電空間24の相互の区切りと成る部分、すなわち、実施例においては隔壁22、34の頂部や基部または前面板16の凹溝144相互間となる部分には、黒色顔料を含むガラス・ペースト(厚膜絶縁体)等によってブラック・ストライプ(ブラック・マスク)を設けてもよい。
【0085】
また、実施例においては、維持電極48が各々の配線部50のその幅方向における片側に設けられていたが、これを両側に設けて2:1インタレース駆動するようなPDPにも本発明は好適に適用される。
【0086】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の3電極構造AC型ガス放電表示装置の一例であるカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造を説明する図である。
【図3】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図4】図3のシート部材内における配線層の形成状態を説明する図である。
【図5】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】 (a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】 (f)〜(h)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図10】被覆誘電体層の焼成工程におけるガスの抜ける方向を説明する図である。
【図11】本発明の他の実施例のPDPに用いられるシート部材を説明するための図2に対応する断面図である。
【図12】図11のシート部材の全体構造を説明するための図3に対応する斜視図である。
【図13】図1のPDPに用いられ得る前面板の他の構成例を説明する図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
20:シート部材
24:放電空間
38:コア誘電体層
42:維持配線層
48:維持電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、AC(交流放電)型ガス放電表示装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明な第1基板(前面板)と、その前面板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板(背面板)と、それら前面板および背面板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極とを備え、その気密空間内のガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のAC型ガス放電表示装置が知られている。このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に用いられているAC型ガス放電表示装置の形式の一つに、上記の維持電極を相互に平行な複数対で構成すると共に、その維持電極との間で書込放電を発生させることにより発光区画を選択するための書込電極を備えた3電極構造のものがある。このような3電極構造の表示装置では、例えば光の射出側となる前面板に維持電極が設けられ、背面板側に書込電極が設けられることから、可及的に光を透過させる必要がある前面板は、維持電極がITO(酸化インジウム錫)膜等から成る透明電極およびその導電性を補うための金属または厚膜導体から成るバス電極で構成される。そのため、前面板の製造工程では、ガラス基板上に(a)ITO膜と基板との密着性を確保するためのSiO2膜、(b)ITO膜、(c)バス電極、(d)ブラック・ストライプ、(e)誘電体層、(f)MgO膜等が順次形成されていた。上記のITO膜は、例えばスパッタ等で設けられた後、レジスト塗布・露光・現像・エッチング処理・レジスト剥離を行うフォト法でパターン形成される。また、バス電極は、Cr-Cu-Cr等の薄膜で構成される場合にはITO膜の場合と同様な方法で、厚膜銀等の厚膜導体で構成される場合には厚膜スクリーン印刷法等の厚膜プロセスで形成される。また、誘電体層およびMgO膜は、高い透光性を有するように高い品質が要求される。すなわち、従来の3電極構造では、前面板側に透光性が要求されることに起因して、その内面に形成される導体膜や誘電体膜等の製造工程が複雑になっていた。
【0004】
しかも、上記の製造工程のうち誘電体層や厚膜導体で構成される場合のバス電極を形成する際には、それらの焼成のために基板に加熱処理が施される。そのため、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して、前面板に歪みが生じると共に厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題もあった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等を抑制できる3電極構造のAC型ガス放電表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するため、第1発明のAC型ガス放電表示装置の要旨とするところは、透明な第1基板と、その第1基板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板と、それら第1基板および第2基板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々でガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極と、その維持電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択するために前記第2基板上に一方向に沿って設けられた互いに平行な複数本の書込電極とを備え、前記複数対の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1基板を通して観察する形式のAC型ガス放電表示装置であって、(a)格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、(b)前記一方向に直交する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層の少なくとも一面に積層され且つその格子の交点間に位置する部分が前記維持電極として機能させられる複数本の導体膜から成る厚膜導体層と、(c)前記厚膜導体層を覆う厚膜誘電体から成る被覆誘電体層とを備えて、前記第1基板および前記第2基板の間にそれらに平行に配置されたシート部材を含むことにある。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、格子状を成すシート部材の少なくとも一面に設けられた厚膜導体層によって複数対の維持電極が構成される。そのため、シート部材を第1基板および第2基板の間に配置するだけで維持電極が設けられることから、維持電極を内面に形成するための熱処理が第1基板に施されない。また、電極や誘電体等は光の射出側となる第1基板内面に形成されないので、その第1基板の透光性を可及的に高めるために電極等の形成工程が複雑になることもない。したがって、製造工程が簡単で電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制された3電極構造のAC型ガス放電表示装置が得られる。
【0008】
【第1発明の他の態様】
ここで、好適には、前記厚膜導体層は、相互に隣接する前記導体膜の前記交点間に位置する部分に、前記コア誘電体層の格子の内壁面の一部を覆い且つ相互に対向するように固着された対向部を備えたものである。このようにすれば、厚膜導体層には、シート部材の格子内で互いに対向させられる対向部がその内壁面に設けられるため、その対向部で実質的に維持電極の放電面が構成される。そのため、放電面が互いに平行に設けられた対向放電構造であることから、一平面上に維持電極が配置された従来の3電極構造に比較して効率が高められると共に、局部的に放電が強くなることに起因する被覆誘電体層(MgO等から成る保護膜が設けられる場合には被覆誘電体層および保護膜)の局部的な劣化が抑制され延いては表示装置の寿命が長くなる利点がある。特に、放電空間内に蛍光体層が設けられた形式のガス放電表示装置では、放電面が第1基板と第2基板との中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面に沿った方向となることから、第1基板内面および第2基板内面上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、その広い範囲に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点もある。
【0009】
因みに、従来の面放電型のガス放電表示装置では、一平面上に配置された互いに平行な維持電極間で放電させられることから、その放電面の大きさや相互間隔がセル・ピッチ等の制限を受けるため、設計上の制約が大きい問題があった。しかも、対を成す維持電極の放電面間距離がその内側と外側とで著しく相違することから、発光区画(画素すなわちセル)全体から発光させるために外側位置で放電を生じさせようとすると放電効率が低くなると共に、放電の生じ易い内側では放電集中による被覆誘電体層の劣化が生じ易くなる不都合もあった。
【0010】
また、好適には、前記導体膜は、相互に隣接するものが前記コア誘電体層の一面および他面に交互に配置されたものである。このようにすれば、相互に隣接する導体膜がコア誘電体層の互いに反対側の面に固着されていることから、導体膜のうちそのコア誘電体層の一面および他面にそれぞれ固着されている部分による面放電が抑制される。そのため、放電ギャップ(対を成す維持電極の相互間隔)の大きさとセル・ピッチの大きさとの関係に起因して、一方の維持電極を備えた導体膜と隣接する他のセルの導体膜との間のコア誘電体層の面方向における相互間隔がその放電ギャップよりも小さくなるような場合にも、それらの間の誤放電が好適に抑制される利点がある。
【0011】
また、好適には、前記厚膜導体層は、前記対向部が前記複数本の導体膜の各々の幅方向における両側に備えられたものである。このようにすれば、シート部材に備えられる格子の全てに実質的に放電電極として機能させられる対向部の対が設けられることになる。そのため、端部から数えて奇数列の放電空間内で放電させる対の組合せと、偶数列の放電空間内で放電させる対の組合せとを交互に切り替えて、2枚のフィールドで1枚のフレーム(すなわち1画像)を表示する2:1インタレース(飛び越し走査)を採用することにより、導体膜の本数を増加させることなく、従来の3電極構造よりも走査線本数を倍増させて解像度を高めることが可能となる。
【0012】
また、好適には、前記ガス放電表示装置は、前記複数本の書込電極に平行な一方向に沿って伸びる複数本の凹溝をそれら複数本の書込電極の相互間に対応するの位置において前記第1基板の内面に備えたものである。すなわち、第1基板の内面には、シート部材がそこに密着することを抑制するための隔壁を上記一方向に沿って伸びるように設けることができるが、上記のようにすれば、その隔壁が実質的に凹溝間の凸部によって構成されることになるため、隔壁を設けるために焼成処理を伴う厚膜プロセスを用いる必要が無くなる。特に、放電空間内に蛍光体層を備える形式のカラー表示用表示装置では、シート部材と蛍光体層との接触を防止しつつその凹溝内に蛍光体層を設けて輝度を高め得る利点がある。本発明によれば第1基板に維持電極を設ける必要がないので、上記のような凹溝を設けることが可能となる。
【0013】
また、好適には、上記の凹溝或いは放電空間を形成するために第1基板および第2基板の少なくとも一方に設けられるリブ状壁は、シート部材の格子の一方向に沿って伸びる部分が、第1基板および第2基板の相対的に凸に成った部分上に位置させられる位置関係に設けられる。このようにすれば、放電空間内のうちシート部材を挟んで観視側とは反対側の部分で生じた光、例えばその反対側の部分に備えられている蛍光体層の発光がシート部材によって遮られることが抑制されるので、ガス放電表示装置の輝度が一層高められる。
【0014】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の製造方法の要旨とするところは、透明な第1基板と、その第1基板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板と、それら第1基板および第2基板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々でガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極と、その維持電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択するために前記第2基板上に一方向に沿って設けられた互いに平行な複数本の書込電極とを備え、前記複数対の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1基板を通して観察する形式のAC型ガス放電表示装置を、前記第1基板および前記第2基板を重ね合わせて気密に封着することにより製造する方法であって、(a)格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、(b)前記一方向に直交する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層の少なくとも一面に積層され且つその格子の交点間に位置する部分を前記維持電極として機能させるための複数本の導体膜から成る厚膜導体層と、(c)その厚膜導体層を覆う厚膜誘電体から成る被覆誘電体層とを備えたシート部材を、前記第1基板および前記第2基板の一方の内面上に固着するシート部材固着工程を含むことにある。
【0015】
【第2発明の効果】
このようにすれば、第1基板および第2基板を重ね合わせて固着することによりガス放電表示装置を製造するに際して、厚膜導体層が格子状の厚膜誘電体層の少なくとも一面に積層されて成るシート部材が第1基板または第2基板に固着されることにより、維持電極が放電空間内に備えられる。そのため、シート部材上に維持電極を構成するための厚膜導体層が備えられていることから、第1基板および第2基板の間にそのシート部材を配置するだけで維持電極を設けることができるため、第1基板上に維持電極を設ける場合におけるその形成時の熱処理に起因する第1基板および維持電極の歪みが好適に抑制される。したがって、電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制された3電極構造のAC型ガス放電表示装置を簡単な製造工程で得ることができる。
【0016】
【第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記のガス放電表示装置の製造方法は、(d)所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する支持体準備工程と、(e)前記第1温度で焼結させられる厚膜誘電体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る誘電体ペースト膜を前記膜形成面上に前記コア誘電体層に対応する格子状パターンで形成する誘電体ペースト膜形成工程と、(f)前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る導体ペースト膜を前記膜形成面上に前記厚膜導体層に対応する複数に分割された所定パターンで形成する導体ペースト膜形成工程と、(g)前記支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなく前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜を焼結させて、それら導体ペースト膜および誘電体ペースト膜から前記厚膜導体層および前記コア誘電体層を生成する焼成工程とを、含む工程により前記シート部材を製造するものである。
【0017】
このようにすれば、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結温度(第1温度)よりも高い融点を有する高融点粒子層で構成された膜形成面に厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜がそれぞれ所定パターンで形成された後、それら厚膜誘電体材料および厚膜導体材料の焼結させられる第1温度で加熱処理が施されることにより、厚膜誘電体層の表面に厚膜導体層が形成されたシート部材が生成される。そのため、その加熱処理温度では焼結させられない高融点粒子層は樹脂が焼失させられることにより高融点粒子のみが並ぶ層となることから、生成された厚膜は支持体に固着されないため、その膜形成面から容易に剥離することができる。このとき、厚膜誘電体材料および厚膜導体材料のペースト膜は、材料や用途に応じた適宜の方法を用いることにより、簡便な設備を用いて所望のパターンで膜形成面に形成することが可能である。しかも、加熱処理により焼結させられるまでは膜形成面に塗布されることにより一時的に固着された状態で取り扱われることから、取扱いが容易である。したがって、維持電極を設けるためのシート部材を容易に製造し且つガス放電表示装置の製造に用いることができる。
【0018】
なお、上記の導体ペースト膜形成工程は、シート部材の構成に応じて、誘電体ペースト膜形成工程に先立って或いはそれに続いて、厚膜誘電体層の一方の面だけに対して行われ、または、誘電体ペースト膜形成工程の前後の両方に、厚膜誘電体層の両面に対して行われる。また、上記のように高融点粒子のみが並ぶ層の上で焼結させられる厚膜は、通常の厚膜形成とは異なり、その収縮時に何ら形成面に拘束されない。そのため、形成面との間の収縮抵抗に起因する反りや変形等が抑制され、延いてはそれら反りや変形に伴う亀裂等の発生も抑制される。したがって、維持電極の歪み等が一層抑制される利点がある。
【0019】
また、好適には、前記厚膜導体層は、相互に隣接する前記導体膜の前記交点間に位置する部分に、前記コア誘電体層の格子の内壁面の一部を覆い且つ相互に対向するように固着された対向部を備えたものであり、前記誘電体ペースト膜の格子の内壁面に前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る壁面導体ペースト膜を前記対向部に対応するパターンで形成する壁面導体ペースト膜形成工程を含むものである。このようにすれば、壁面導体ペースト膜形成工程において、前記対向部を構成するための壁面導体ペースト膜が設けられることから、厚膜導体層は対向部を備えて形成されるため、シート部材を第1基板または第2基板上に固着することによって、実質的に維持電極として機能する対向部を備えたガス放電表示装置を製造できる。
【0020】
また、好適には、前記支持体準備工程は、所定の基板の表面に前記高融点粒子層を形成するものである。このようにすれば、ペースト膜が基板上に形成されることから、加熱処理後にも支持体の形状が維持されるため、高融点粒子層のみで支持体が構成されている場合(例えば、セラミック生シートで支持体が構成されている場合)に比較して放電空間内に維持電極を設けるためのシート部材の取扱いが容易になる利点がある。しかも、このような支持体が用いられる場合には、ペースト膜との間に高融点粒子層が介在させられる基板は加熱処理の際にそのペースト膜を何ら拘束せず、且つそのペースト膜の表面粗度は高融点粒子層の表面粗度のみが反映されることから、基板の平坦度、表面粗度、膨張係数等のシート部材の品質に及ぼす影響が小さくなるため、基板に高い品質は要求されない。
【0021】
また、好適には、前記基板は、前記焼成温度で変形しないものである。このようにすれば、厚膜誘電体層および厚膜導体層を生成するための加熱処理が施される際にも膜形成面の形状が初期の形状に保たれるため、高融点粒子層を表面に形成することにより、支持体として繰り返し使用可能となる利点がある。基板は、上記の条件を満たす適宜のものが選ばれるが、例えば、一般ガラス、耐熱ガラス、セラミック板、金属板等を用いることができる。
【0022】
また、好適には、前記製造方法は、前記厚膜導体層が積層された前記コア誘電体層の外周に厚膜誘電体ペーストを塗布して加熱処理を施すことにより前記被覆誘電体層を設ける被覆工程を含むものである。このようにすれば、厚膜導体層を覆う被覆誘電体層を容易に設けることができる。一層好適には、上記厚膜誘電体ペーストの塗布は、ディッピング処理によって行われる。
【0023】
また、好適には、前記ペースト膜を形成する工程は、厚膜スクリーン印刷法を用いて前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜をそれぞれ形成するものである。ペースト膜の形成方法としては、例えば、印刷、サンド・ブラスト、リフトオフ、感光性ペーストを用いたフォト・プロセス等の種々の方法からコスト、必要精度、他の工程との兼ね合い等に応じて選択した適宜の方法を用いることができるが、上記のように印刷法による場合には、膜形成面のうち無用な部分には膜構成材料が塗布されないことから、材料の無駄がない利点がある。すなわち、セラミック生シートのプレス加工、或いはセラミック・シートのレーザ加工や金属材料の化学エッチング等によるもの等に比較して加工時に除去される材料の無駄が極めて少なくなる。
【0024】
また、好適には、前記高融点粒子は、セラミックス或いはガラス・フリット等の無機材料から成るものである。高融点粒子としては、高融点粒子層を構成する樹脂が焼失した後も何ら軟化等するものでなければ、適宜の無機材料を用いることができる。なお、具体的な材質は、シート部材を構成する厚膜材料の種類やその焼成温度等に応じて適宜選択される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明のガス放電表示装置の一例であるAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも900×500(mm)程度の大きさと1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法とを備えると共に透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものである。本実施例においては、上記の前面板16が第2基板に、背面板18が第1基板にそれぞれ相当する。
【0027】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が200〜500(μm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が80〜200(μm)程度、高さ寸法が30〜100(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0028】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0029】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0030】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成り、例えば20〜50(μm)程度の厚さ寸法で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば10〜20(μm)程度の範囲内の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0031】
図2は、隔壁22の長手方向に沿い且つ前記書込電極28の幅方向における中央部を通る断面において、PDP10の断面構造を説明する図である。前記のシート部材20は、その骨格を構成する格子状(前記図1参照)のコア誘電体層38と、その一面40(図における上面)から側面(すなわち格子の内壁面)の一方に亘る範囲に積層して固着された維持配線層42と、これを覆って設けられた被覆誘電体層44と、その被覆誘電体層44を更に覆って設けられてシート部材20の表層部を構成する保護膜46とから構成されている。本実施例においては、上記の維持配線層42が厚膜導体層に相当する。
【0032】
上記のコア誘電体層38は、30〜50(μm)程度、例えば40(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分の幅寸法は、例えば隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば100〜150(μm)程度である。また、このコア誘電体層38は、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で構成されている。
【0033】
また、上記の維持配線層42は、例えば銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)等を導電成分として含む厚膜導体であり、例えば5〜10(μm)程度の厚さ寸法で設けられている。維持配線層42のうちコア誘電体層38の側面を覆う部分48は、放電空間24内でガス放電を発生させるための維持電極として機能させられるものである。図に示されるように、維持電極48は、シート部材20を構成する格子の内壁面において互いに平行且つ対向する位置に配置されている。すなわち、PDP10は、その放電空間24内において互いに対向する維持電極48、48間で放電させられる対向放電構造に構成されている。なお、放電空間24毎に一対が備えられているこれら維持電極48、48のうちの一方は、後述するように発光区画(セル)選択のために前記の書込電極28との間で書込放電させられる走査電極としても機能させられるものであり、他方は維持放電のみに用いられる。
【0034】
また、前記の被覆誘電体層44は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この被覆誘電体層44は、表面に電荷を蓄えることにより維持電極48、48間で交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、厚膜材料で構成される維持電極48を露出させないことによって、これからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。
【0035】
また、前記の保護膜46は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜46は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層44のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0036】
図3は、シート部材20の一部を切り欠いて維持配線層42の構成を詳しく説明する図である。図において、維持配線層42は、シート部材20を構成する格子の一方向に沿って伸びる複数本の配線部50を備えている。この配線部50の長手方向は、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きである。また、配線部50は、50〜80(μm)程度の一定の幅寸法を備えたものであり、格子状のコア誘電体層38の各構成部分の幅方向における中央部に位置する。
【0037】
また、配線部50には、その長手方向における複数箇所にその側方すなわちその長手方向に略垂直な向きにその幅寸法を拡大するように突き出す突出部52が備えられている。前記の維持電極48は、この突出部52の先端部から連続し且つそれと垂直を成すように設けられている。これら突出部52および維持電極48の幅寸法(配線部50の長手方向における寸法)は、例えば100(μm)程度であり、維持電極48の高さ寸法はシート部材20の厚さ寸法に略等しい30〜50(μm)程度、例えば40(μm)程度である。すなわち、維持電極48はコア誘電体層38の側面の一部を覆って設けられている。
【0038】
図4に維持配線層42の複数本の配線部50の接続関係を書込電極28との位置関係も含めて模式的に示した。図において左右方向に沿って伸びる複数本の配線部50は、格子状のコア誘電体層38のその左右方向に沿って伸びる部分の全てに一本ずつが設けられている。維持電極48は、図における左右方向に連なったものが共通の配線部50に接続されている。また、配線部50は、他の全ての配線部50と独立させられたものと、共通の配線に接続されたものとが図の上下方向において交互に位置するように設けられている。
【0039】
なお、図に示されるように、シート部材42の格子構成部分の相互間隔は一様ではない。すなわち、配線部50に垂直な方向に沿って伸びる部分は、例えば200(μm)程度の一定の相互間隔Gwで設けられているが、維持配線層42の配線部50に沿って伸びる部分は、例えば100(μm)程度の相対的に小さい相互間隔Gs1および600(μm)程度の相対的に大きい相互間隔Gs2が交互に現れる。維持電極48,46は、相対的に小さい相互間隔Gs1の部分で対向させられている。図4における左端中央に例示するように、本実施例では、この維持電極48,48間で表示のための維持放電をさせるので、放電ギャップは相互間隔Gs1に略等しい100(μm)程度である。また、図4を前記の図1と対比すれば明らかなように、シート部材20は、配線部50に垂直な方向に沿って伸びる格子の構成部分が隔壁22の頂部上に位置させられている。なお、前記の図2は、上記の図4におけるA−A視断面に対応する図である。
【0040】
このため、対向させられる維持電極48,48のうち個々に独立させられているものが接続されている複数本の配線部50に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、それらの間で書込放電が発生させられ、維持電極48上の保護膜46上に電荷が蓄積される。このようにして走査電極として機能させられる全ての維持電極48を走査した後、全ての維持電極48,48間に配線部50を介して所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、維持電極48,48間で放電が発生させられ、且つ保護膜46上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。そして、走査側電極(維持電極48)の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。なお、上記の説明から明らかなように、維持電極48のうち、個々に独立させられている一方は、書込電極28との間で走査電極として機能させられるが、他方の維持電極48との間では維持電極(表示放電電極)として機能させられる。
【0041】
このとき、図4に示されるように、放電は、100(μm)程度の僅かな距離Gs1だけ相互に離隔させられた電極48,48間で発生させられるが、放電空間24は図における上下方向に連続しているため、その放電により発生させられた紫外線は、図4に一点鎖線で模式的に示すように、その放電空間24の長手方向に沿って放電電極48,48の外側に広がる。そのため、放電空間24内に設けられている蛍光体層32,36のうち、その一点鎖線で囲まれた範囲内に位置するものが、図の左端中央に示す電極48,48間の放電で発生した紫外線で励起発光させられることとなる。
【0042】
したがって、PDP10における発光単位(セル)の区切りは、隔壁22に垂直な方向すなわち図における左右方向ではその隔壁22によって区切られ、隔壁22の長手方向すなわち図における上下方向では実質的にはこの紫外線の及ぶ範囲によって画定される。この結果、発光単位の中心間隔は、図の左右方向においてはPc=0.3(mm)程度のカラー・セル・ピッチに、図の上下方向においてはPd=0.9(mm)程度のドット・ピッチになっている。なお、本実施例のようなRGB3色から成るカラー表示用のPDP10においては、図の左右方向において相互に隣接する3つの発光区画で一画素が構成されている。そのため、画素ピッチは、左右方向および上下方向の何れにおいても0.9(mm)程度である。
【0043】
ここで、本実施例においては、格子状のシート部材20の一面40に維持配線層42が設けられると共に、その維持配線層42のうちの格子の内壁面の互いに対向する位置に固着された部分によって維持電極48、48が構成される。そのため、放電面が互いに平行に設けられた対向放電構造であることから、一平面上に維持電極が配置された従来の3電極構造に比較して効率が高められると共に、局部的に放電が強くなることに起因する被覆誘電体層44および保護膜46の局部的な劣化が抑制され延いてはPDP10の寿命が長くなる利点がある。また、対向放電構造であることから、隔壁22の頂部や前面板16にうねり等があったとしても、それによって隔壁22と前面板16との間に生じる隙間に起因してクロストークの生じることが抑制される。
【0044】
しかも、維持電極48,48の放電面が前面板16および背面板18の何れからも離隔したこれらの中間の高さ位置に位置し且つ放電方向がそれらの内面12,14に沿った方向となることから、前面板内面12および背面板内面14上における放電ガス・イオンの影響が少ないので、前述したようにそれらの何れにも広い範囲に亘って蛍光体層32,36が設けられる。そのため、蛍光体層32を維持電極が固着された基板とは反対側の基板上にのみ設けることが可能であった面放電構造の場合に比較して輝度を飛躍的に高め得る利点もある。
【0045】
また、維持電極48が前面板16上に設けられていないため、厚膜銀から構成される場合にもその銀の黄変色が観察されることがない。したがって、酸化ルテニウム等の高価な黒色導電材料を維持電極48の構成材料に用いる必要もない利点もある。
【0046】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0047】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程54で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程56では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程58においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0048】
次いで、隔壁形成工程60では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁28を形成する。なお、一回の印刷で隔壁28の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程54乃至オーバ・コート形成工程58も同様である。そして、蛍光体層形成工程62においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁28相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0049】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程64において、上記の工程60と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程66において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0050】
そして、シート部材作製工程68において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程70において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0051】
上記の製造工程において、シート部材作製工程68は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(h)を参照して説明する。
【0052】
先ず、基板を用意する工程74では、厚膜印刷を施す基板76(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板76は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10-7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板76の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面78の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0053】
次いで、剥離層形成工程80では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層82を、基板76の表面78に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のアルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば550(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば550(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層82は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト84を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板76の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層82を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、86はスクリーン、88はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層82を備えた基板76が支持体に、その剥離層82の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程74および剥離層形成工程80が支持体準備工程に対応する。
【0054】
続く厚膜ペースト層形成工程90では、前記の維持配線層42および維持電極48を形成するための厚膜導体ペースト92と、前記のコア誘電体層38を形成するための厚膜誘電体ペースト94(図7(a)参照)を、無機材料ペースト84と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層82上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、コア誘電体層38を形成するための厚膜誘電体層98、維持配線層42のうちの配線部50および突出部52を形成するための導体印刷層100、維持電極48を形成するための導体印刷層102が順に形成される。上記の厚膜導体ペースト92は、例えば、銀粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜誘電体ペースト94は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばPbO-B2O3-SiO2-Al2O3-TiO2系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト84と同様なものが用いられる。
【0055】
このとき、維持配線層42の配線部50、突出部52、およびコア誘電体層38を形成する際には、スクリーン86は、前記の図1および図3等に示されるようなそれらの形状にそれぞれ対応する開口パターンを備えたものが用いられ、焼成収縮後にそれぞれ前記の膜厚が得られるように設定された所定の厚さ寸法で厚膜導体ペースト92および厚膜誘電体ペースト94が塗布される。一方、維持電極48を形成する際には、例えばコア誘電体層38により形成された格子の内壁面よりも僅かに内側にはみ出した形状の開口を備えたスクリーン86を用いることにより、厚膜導体ペースト92がコア誘電体層38の上面からその内壁面に沿って流れ落ちるように塗布される。図7(c)〜(e)は、誘電体印刷層98、導体印刷層100、導体印刷層102がそれぞれ形成された段階を示している。なお、導体印刷層100,102は、5〜10(μm)程度の厚さ寸法であるため、一回の印刷で形成されるが、誘電体印刷層98は30(μm)程度の厚さ寸法であることから、適当な厚さ寸法が得られるまで3回程度の印刷および乾燥を繰り返して積層形成される。また、導体印刷層102を形成する際に用いられる厚膜導体ペースト92は、内壁面に沿って流れ落とすべく例えば10〜50(Pa・s)程度の比較的低粘度に調製される。流れ落ちた厚膜導体ペースト92は、剥離層82に溶剤が吸収されるため、その剥離層82の表面で広がることはない。
【0056】
上記のようにして厚膜印刷層98〜102を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程104においては、基板76を所定の焼成装置の炉室106内に入れ、厚膜導体ペースト92および厚膜誘電体ペースト94の種類に応じた例えば550(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0057】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層98〜102は、その焼結温度が例えば550(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、コア誘電体層38および厚膜導体層(維持配線層42と書込配線層40)すなわちシート部材20の基本的部分が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、前記の剥離層82は、前述したようにその無機成分粒子が550(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層82は高融点粒子108(図9参照)のみから成る粒子層110となる。
【0058】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層82の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層110は、単に高融点粒子108が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子108は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層98〜102が収縮するときには、その高融点粒子108がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層98〜102の下面側でも基板76との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。
【0059】
なお、本実施例においては、基板76の熱膨張係数は誘電体材料と略同じであり、厚膜印刷層98〜102の焼結が開始するまで、すなわち、樹脂成分は焼失させられたがガラスフリット、誘電体材料粉末や導体粉末の結合力が未だ小さい温度範囲ではこれらの熱膨張量に殆ど差はない。一方、厚膜印刷層98〜102の焼結が開始するときには、上述したように粒子層110の作用によって基板76はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板76の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板76を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10-7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10-7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板76の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0060】
図6に戻って、剥離工程112では、生成された厚膜すなわちコア誘電体層38および配線層36,40の積層体を基板76から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層110は高融点粒子108が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子108が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板76は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0061】
次いで、誘電体ペースト塗布工程114においては、剥離した積層体をディッピング槽116内に蓄えられた誘電体ペースト118中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト118が塗布される。この誘電体ペースト118は、例えば、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-ZnO-TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト94に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト94に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網120等に載せられた状態で誘電体ペースト118中に静かに沈められ、且つ取り出される。
【0062】
続く焼成工程122では、ディッピング槽116から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、前記誘電体ペースト118に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度で加熱処理(焼成処理)を施される。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(被覆誘電体層44)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された被覆誘電体層44は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程114および焼成工程122から被覆工程が構成されている。
【0063】
このとき、上記の焼成工程122が比較的高温に設定される場合には、内側に位置するコア誘電体層38および維持配線層42から残留していた有機成分が焼失させられること等によりガスが発生する。このガスは、被覆誘電体層44内に気泡を生成するものであるが、ガスの移動方向は図10に矢印で示されるように上方となる。そのため、被覆誘電体層44内に生成する気泡は、専ら図における上部に形成され、維持配線層42のうち放電面として機能させられる部分すなわちコア誘電体層38の側面を覆う部分には発生しない。したがって、焼成工程122における処理温度が高温であっても、それに起因して維持電極48上の被覆誘電体層44内に気泡が生じることがないので、その焼成温度を高くして緻密化させ、耐電圧等の特性を高めることが可能となる。
【0064】
そして、保護膜形成工程124において、上記の被覆誘電体層44の表面に例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜46が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。なお、保護膜46は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては維持電極48,48間で対向放電させることから電極表面間距離が一様であるため、保護膜46の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜46に要求されないのである。また、保護膜46は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。
【0065】
ここで、本実施例においては、前面板16および背面板18を重ね合わせて固着することによりPDP10を製造するに際して、以上のようにして製造された維持配線層42を備えたシート部材20が前面板16または背面板18に固着されることにより、維持電極48が放電空間24内に設けられる。そのため、シート部材20上に維持電極48を構成するための厚膜導体層すなわち維持配線層42が備えられていることから、前面板16および背面板18の間にそのシート部材20を配置するだけで維持電極48を設けることができるため、前面板16上に維持電極を設ける場合におけるその形成時の熱処理に起因する前面板16および電極48等の歪みが好適に抑制されたPDP10を製造することができる。したがって、電極等の形成に伴う熱処理に起因する歪み等の抑制された3電極構造のAC型PDP10を簡単な製造工程で得ることができる。すなわち、SiO2のコートやITO、バス電極等を設ける複雑なプロセスが無用になる。
【0066】
また、本実施例においては、厚膜導体ペースト92および厚膜誘電体ペースト94の焼結温度よりも高い融点を有する剥離層82で構成された膜形成面に誘電体印刷層98および導体印刷層100等が所定パターンで形成された後、それらの焼結させられる温度で加熱処理が施されることにより、コア誘電体層38の一面40に維持配線層42を構成する厚膜導体層が形成されたシート部材20が生成される。そのため、その加熱処理温度では焼結させられない剥離層82は樹脂が焼失させられることにより高融点粒子108のみが並ぶ粒子層110となることから、生成された厚膜は基板76に固着されないため、その表面78から容易に剥離することができる。したがって、維持電極48を構成するためのシート部材20を容易に製造し且つPDP10の製造に用いることができる。
【0067】
また、本実施例においては、厚膜ペースト92,94の塗布される支持体は、基板76の表面に剥離層82が形成されることにより構成されるため、加熱処理後にも支持体の形状が維持されるため、剥離層82のみで支持体が構成されている場合に比較してシート部材20の生成後の取扱いが容易になる利点がある。なお、厚膜印刷層98〜102と基板76との間には剥離層82が介在させられていることから、加熱処理の際にその厚膜印刷層98〜102を何ら拘束しないため、基板76の平坦度や表面粗度等は特に問題にならない。すなわち、基板表面78が反っている場合には、厚膜印刷層98〜102はその表面78に倣って反りを有して形成されるが、生成されるシート部材20は焼成後にも十分な柔軟性があるため、平坦面に置いた場合にその面に倣ってシート部材20も平坦になるのである。
【0068】
また、本実施例においては、厚膜印刷層98〜102は、厚膜スクリーン印刷法を用いて形成されることから、装置が簡単且つ材料の無駄が少ないため、低コストとなる利点がある。
【0069】
また、本実施例によれば、厚膜スクリーン印刷法を用いて膜形成がされることから所謂ウェット・プロセスがないため、排水処理が容易になる利点もある。因みに、ウェット・プロセスでは、溶液が膜内に浸透して残存すると、前面板16および背面板18を接着して真空容器を構成した後のアウトガスの原因になり得る。これを避けるためには、構成材料の耐熱温度を高くして気密封着後の排気温度を高め、或いは排気時間を長くする等の工程負荷が重くなるような処置が必要となる。
【0070】
図11および図12は、本発明の他の実施例のPDPに用いられるシート部材130の構成を説明するための図2および図3にそれぞれ対応する図である。この実施例においては、前記の維持配線層42に代えて、維持配線層132が一面40に設けられると共に、その反対側の他面134に維持・走査配線層136が設けられている。維持配線層132は、維持配線層42において配線部50等がコア誘電体層38の格子の一本おきに設けられたものである。また、維持・走査配線層136は、同様な配線部50が維持配線層132とは異なる格子の一本おきに設けられたものである。この維持・走査配線層136においても、配線部50の長手方向における複数箇所から維持電極48が格子の内壁面に沿って設けられており、格子内において対向する一対の電極48,48が備えられている。
【0071】
そのため、維持配線層130および維持・走査配線層136の配線部50、すなわち相互に隣接する配線部50が相互に反対側の面40,134に交互に設けられているので、前述したような駆動方法で上記のシート部材130を備えたPDPを駆動すると、配線部50や突出部52間の面放電が好適に抑制される利点がある。
【0072】
なお、上記のようなシート部材130は、前記の誘電体印刷層98を形成するに先立ち、維持・走査配線層136に生成される導体印刷層を形成することにより、前記のシート部材20と同様な工程で製造することができる。なお、維持電極48を構成するために格子の内壁面に沿って設けられる導体印刷層102は、維持配線層130および維持・走査配線層136の何れの側のものも、導体印刷層100を設けた後にその上側から導体ペーストを塗布することで設けることができる。
【0073】
図13は、前面板16に代えて用いられる前面板140の構成を説明する図である。図において、前面板140は、前記の前面板16と同様な寸法および形状を備え且つ同様な材料で構成されたものであるが、気密空間内に位置させられることとなるその一面142には、隔壁34に代えて互いに平行な一方向に沿って伸びる複数本の凹溝144が設けられている。この凹溝144は、相互間に形成される凸部が前記の隔壁34に対応する位置に位置するように設けられており、その内部には蛍光体層146が設けられている。このような前面板140を用いても、蛍光体層146をシート部材20等と接触させることなく前面板内面142に設け得るので、隔壁34を設けた場合と同様に高い輝度を得ることができる。しかも、凹溝144は、研削加工等によって容易に形成できるので、厚膜プロセスを用いて隔壁34を形成する場合に比較して製造工程が一層簡単になる利点もある。
【0074】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0075】
例えば、実施例においては、カラー表示用のAC型PDP10およびその製造方法に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、モノクロ表示用のAC型PDPおよびその製造方法にも同様に適用される。
【0076】
また、実施例のPDP10は、3色の蛍光体層32、36を備えてフルカラー表示をさせる形式のものであったが、本発明は、1色或いは2色の蛍光体層を備えたPDPにも同様に適用される。
【0077】
また、シート部材20、130の厚さ寸法およびそれを構成するコア誘電体層38や配線層42、132,136の厚さ寸法等は、シート部材20に取扱い上で要求される機械的強度や、導体に求められる導電性等に応じて定められるものであり、実施例に示した数値に限られずガス放電表示装置の大きさや構造等に応じて適宜定められる。
【0078】
また、実施例においては、シート部材20、130に設けられた配線層42,132,136が被覆誘電体層44で完全に覆われていたが、これらは表示のための放電や気密容器内の雰囲気等に影響を及ぼさない範囲で部分的に露出させられていても差し支えない。
【0079】
また、実施例においては、シート部材20が厚膜スクリーン印刷法を利用してコア誘電体層38や配線層42等を設けることで製造されていたが、コータやフィルム・ラミネート等を用いて膜形成面に「ベタ」に厚膜ペースト層を設け、フォト・プロセスを用いてパターニングすることもできる。
【0080】
また、実施例においては、シート部材20を製造するための支持体を、基板76の表面78に剥離槽82を設けることで構成していたが、セラミック生シート(未焼成のシート状セラミックス)を支持体として用いることもできる。この場合には、焼成工程104における熱処理温度が、このセラミック生シートは焼結しないがそれに含まれている樹脂成分は十分に燃え抜けるような温度となるように生シートの構成を定めればよい。
【0081】
また、実施例においては、シート部材20の内壁面を覆う維持電極48、48間で放電させられる対向放電構造に構成されていたが、この内壁面を覆う部分が設けられていないような面放電構造に構成することもできる。但し、その場合でも、所望の位置で放電を確実に発生させるためには、少なくとも突出部52が設けられることが好ましい。
【0082】
また、実施例においては、隔壁22がストライプ状に設けられていたが、封着後の排気・ガス封入に問題が無ければ格子状の隔壁で放電空間を区画形成してもよい。また、実施例においては、前面板16および背面板18の両方に隔壁22,34が形成されていたが、一方だけに設けても差し支えない。その場合、シート部材20と蛍光体との接触を避けるためには、隔壁を設けない側には蛍光体層を設けないことが好ましい。
【0083】
また、実施例では内面12,14の何れにも蛍光体層32,36が設けられていたが、何れか一方のみとすることもできる。
【0084】
また、放電空間24の相互の区切りと成る部分、すなわち、実施例においては隔壁22、34の頂部や基部または前面板16の凹溝144相互間となる部分には、黒色顔料を含むガラス・ペースト(厚膜絶縁体)等によってブラック・ストライプ(ブラック・マスク)を設けてもよい。
【0085】
また、実施例においては、維持電極48が各々の配線部50のその幅方向における片側に設けられていたが、これを両側に設けて2:1インタレース駆動するようなPDPにも本発明は好適に適用される。
【0086】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の3電極構造AC型ガス放電表示装置の一例であるカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】隔壁の長手方向に沿った断面において、図1のPDPの断面構造を説明する図である。
【図3】図1のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図4】図3のシート部材内における配線層の形成状態を説明する図である。
【図5】図1のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】 (a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】 (f)〜(h)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図10】被覆誘電体層の焼成工程におけるガスの抜ける方向を説明する図である。
【図11】本発明の他の実施例のPDPに用いられるシート部材を説明するための図2に対応する断面図である。
【図12】図11のシート部材の全体構造を説明するための図3に対応する斜視図である。
【図13】図1のPDPに用いられ得る前面板の他の構成例を説明する図である。
【符号の説明】
10:PDP
16:前面板
18:背面板
20:シート部材
24:放電空間
38:コア誘電体層
42:維持配線層
48:維持電極
Claims (11)
- 透明な第1基板と、その第1基板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板と、それら第1基板および第2基板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々でガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極と、その維持電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択するために前記第2基板上に一方向に沿って設けられた互いに平行な複数本の書込電極とを備え、前記複数対の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1基板を通して観察する形式のAC型ガス放電表示装置であって、
格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、
前記一方向に直交する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層の少なくとも一面に積層され且つその格子の交点間に位置する部分が前記維持電極として機能させられる複数本の導体膜から成る厚膜導体層と、
前記厚膜導体層を覆う厚膜誘電体から成る被覆誘電体層と
を備えて、前記第1基板および前記第2基板の間にそれらに平行に配置されたシート部材を含むことを特徴とするガス放電表示装置。 - 前記厚膜導体層は、相互に隣接する前記導体膜の前記交点間に位置する部分に、前記コア誘電体層の格子の内壁面の一部を覆い且つ相互に対向するように固着された対向部を備えたものである請求項1のAC型ガス放電表示装置。
- 前記導体膜は、相互に隣接するものが前記コア誘電体層の一面および他面に交互に配置されたものである請求項1のAC型ガス放電表示装置。
- 前記対向部が前記複数本の導体膜の各々の幅方向における両側に備えられたものである請求項2または請求項3のAC型ガス放電表示装置。
- 透明な第1基板と、その第1基板から所定距離隔てて平行に配置された第2基板と、それら第1基板および第2基板間に備えられ且つ所定のガスが封入された気密空間内に形成された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々でガス放電を発生させるための誘電体で覆われた複数対の維持電極と、その維持電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択するために前記第2基板上に一方向に沿って設けられた互いに平行な複数本の書込電極とを備え、前記複数対の維持電極間のガス放電で発生した光を前記第1基板を通して観察する形式のAC型ガス放電表示装置を、前記第1基板および前記第2基板を重ね合わせて気密に封着することにより製造する方法であって、
格子状を成した所定厚さ寸法の厚膜誘電体から成るコア誘電体層と、
前記一方向に直交する他方向に沿って互いに平行に伸びるように前記コア誘電体層の少なくとも一面に積層され且つその格子の交点間に位置する部分を前記維持電極として機能させるための複数本の導体膜から成る厚膜導体層と、
その厚膜導体層を覆う厚膜誘電体から成る被覆誘電体層と
を備えたシート部材を、前記第1基板および前記第2基板の一方の内面上に固着するシート部材固着工程を含むことを特徴とするAC型ガス放電表示装置の製造方法。 - 所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する支持体準備工程と、
前記第1温度で焼結させられる厚膜誘電体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る誘電体ペースト膜を前記膜形成面上に前記コア誘電体層に対応する格子状パターンで形成する誘電体ペースト膜形成工程と、
前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る導体ペースト膜を前記膜形成面上に前記厚膜導体層に対応する複数に分割された所定パターンで形成する導体ペースト膜形成工程と、
前記支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなく前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜を焼結させて、それら導体ペースト膜および誘電体ペースト膜から前記厚膜導体層および前記コア誘電体層を生成する焼成工程と
を、含む工程により前記シート部材を製造するものである請求項5のAC型ガス放電表示装置の製造方法。 - 前記厚膜導体層は、相互に隣接する前記導体膜の前記交点間に位置する部分に、前記コア誘電体層の格子の内壁面の一部を覆い且つ相互に対向するように固着された対向部を備えたものであり、
前記誘電体ペースト膜の格子の内壁面に前記第1温度で焼結させられる厚膜導体材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る壁面導体ペースト膜を前記対向部に対応するパターンで形成する壁面導体ペースト膜形成工程を含むものである請求項6のAC型ガス放電表示装置の製造方法。 - 前記支持体準備工程は、所定の基板の表面に前記高融点粒子層を形成するものである請求項6または請求項7のAC型ガス放電表示装置の製造方法。
- 前記基板は、前記焼成温度で変形しないものである請求項8のAC型ガス放電表示装置の製造方法。
- 前記厚膜導体層が積層された前記コア誘電体層の外周に厚膜誘電体ペーストを塗布して加熱処理を施すことにより前記被覆誘電体層を設ける被覆工程を含むものである請求項5のAC型ガス放電表示装置の製造方法。
- 厚膜スクリーン印刷法を用いて前記導体ペースト膜および前記誘電体ペースト膜をそれぞれ形成するものである請求項6乃至請求項10の何れかのAC型ガス放電表示装置の製造方法。
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