JP2004303670A - 厚膜シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】厚膜形成時の熱処理に起因する基板歪み等を抑制できる厚膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】厚膜誘電体ペーストおよび厚膜導体ペーストの焼結温度よりも高融点の剥離層上に誘電体印刷層および導体印刷層等を積層形成して加熱処理を施すことにより厚膜積層体が生成され、これを誘電体ペーストで覆って加熱処理を施すことにより、厚膜積層体が誘電体皮膜48で覆われたシート部材20が得られる。露出させられている多孔質の導体層44,46の側面が誘電体皮膜48で覆われるが、導体層44,46の層間には緻密質の中間誘電体層42が備えられるため、誘電体皮膜48の焼成時にそのガラス成分が導体層44,46に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する誘電体皮膜48の剥離が抑制され高い固着強度が得られる。
【選択図】 図4
【解決手段】厚膜誘電体ペーストおよび厚膜導体ペーストの焼結温度よりも高融点の剥離層上に誘電体印刷層および導体印刷層等を積層形成して加熱処理を施すことにより厚膜積層体が生成され、これを誘電体ペーストで覆って加熱処理を施すことにより、厚膜積層体が誘電体皮膜48で覆われたシート部材20が得られる。露出させられている多孔質の導体層44,46の側面が誘電体皮膜48で覆われるが、導体層44,46の層間には緻密質の中間誘電体層42が備えられるため、誘電体皮膜48の焼成時にそのガラス成分が導体層44,46に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する誘電体皮膜48の剥離が抑制され高い固着強度が得られる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数層の厚膜が積層され且つ基板に固定されていない厚膜シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透光性を有する第1平板(前面板)およびその第1平板に平行な第2平板(背面板)の間に形成され且つ所定のガスが封入された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための厚膜誘電体で覆われた複数対の放電電極とを備え、そのガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のガス放電表示装置が知られている。例えば、3電極構造のAC型PDPでは、複数本の放電空間が一方向に沿って設けられると共に、これに平行な方向に沿って書込電極が放電空間毎に設けられ、且つ複数対の放電電極(維持電極)がこれに直交する他方向に沿って設けられる。画像を表示させるに際しては、維持電極と書込電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択し、その後、全ての維持電極間に表示のための所定の交流電圧を印加することによって、選択された発光区画内でガス放電を発生させ且つ発光させる。
【0003】
このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】
谷 千束著「ディスプレイ先端技術」初版第1刷、共立出版、1998年12月28日、p.78−88
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のガス放電表示装置では、一般に、前面板および背面板の少なくとも一方の内面に導体材料を塗布して焼成処理等の加熱処理を施す厚膜形成プロセス等を利用することにより、上記の放電電極が形成されていた。
【0006】
すなわち、対向放電構造のガス放電表示装置では、前面板および背面板に互いに直交する一方向および他方向にそれぞれ沿って放電電極が設けられるが、この放電電極は、通常、何れも厚膜導体で構成される。また、3電極面放電構造のガス放電表示装置では、維持電極が一方向に沿って前面板および背面板の一方に互いに平行に設けられると共に、前面板および背面板の他方にはその一方向に直交する他方向に沿って書込電極が設けられる。この面放電構造では、可及的に光を透過させる必要がある維持電極側は、ITO(酸化インジウム錫)膜等から成る透明電極およびその導電性を補うための厚膜導体から成るバス電極で構成される。
【0007】
したがって、何れの電極構造が採られる場合にも、前面板および背面板(基板)の少なくとも一方の内面に厚膜形成プロセス等を利用して電極が形成されるが、この厚膜の焼成のために基板に熱処理が施されることから、それらに歪みが生じると共に、厚膜誘電体や厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題があった。すなわち、厚膜形成プロセスにおける加熱処理では、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、厚膜誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して基板等に歪み等が生じ得るのである。この結果、基板の平坦性や厚膜パターン精度等の確保が困難になっていた。このような問題は、ガス放電表示装置を構成するために基板上に厚膜導体を設ける場合に限られず、誘電体または導体から成る厚膜を高精度で設ける必要のある種々の基板において同様に生じ得る。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、厚膜形成時の熱処理に起因する基板歪み等を抑制できる厚膜およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するための第1発明の厚膜シートの要旨とするところは、(a)平面形状が格子状を成す第1厚膜層と、(b)その第1厚膜層上に積層された第2厚膜層と、(c)前記格子の内壁面にそれぞれ側面が露出させられた状態で前記第1厚膜層および前記第2厚膜層間に備えられ且つそれらよりも多孔質の厚膜から成る相互に積層された第1多孔質層および第2多孔質層と、(d)前記格子の内壁面に側面が露出させられた状態で前記第1多孔質層および第2多孔質層間に積層され且つそれらよりも緻密質の厚膜から成る緻密質層と、(e)前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、前記第1多孔質層、前記第2多孔質層、および前記緻密質層の積層体の表面に、それら第1多孔質層および第2多孔質層の側面を覆って設けられた緻密質の厚膜から成る被覆層とを含み、基板に固着されていないことにある。
【0010】
【第1発明の効果】
このようにすれば、全体として格子状の平面形状を有し且つ複数の厚膜層が積層された厚膜積層体の第1多孔質層および第2多孔質層が被覆層で覆われた厚膜シートは、基板に固着されていないことから、これを適宜の基板上に固定するだけでその基板に厚膜形成のための焼成処理を何ら施すことなくその基板上に厚膜を設けることができる。そのため、厚膜形成時の熱処理に起因する基板歪みが好適に抑制される。しかも、厚膜ペーストを積層して焼成処理を施すことにより形成される厚膜シートは、その塗布パターン、印刷厚み、積層数や厚膜ペーストの種類等を適宜選択することにより、用途に応じた種々の構成とすることができる。また、厚膜シートには多孔質の第1多孔質層および第2多孔質層が備えられているが、格子の内壁面に露出させられたその側面はそれらよりも緻密質の厚膜から成る被覆層によって覆われているため、その多孔質層の空隙に吸着された気体分子等が使用中に放出されて使用環境の雰囲気を乱すことや、多孔質層が厚膜導体で構成される場合において導体の電気的短絡が生じること等が好適に抑制される。更に、第1多孔質層および第2多孔質層の層間には緻密質層が備えられていることから、被覆層中のガラス成分が多孔質層に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する被覆層の剥離が抑制され高い固着強度が得られる。
【0011】
因みに、厚膜の焼成収縮率(焼成による縮み量の焼成前寸法に対する百分率)は一般に大きく例えば30(%)以上にもなるため、基板に固着されていない厚膜シートは、その製造過程における焼成時にその収縮に伴って寸法精度や形状精度が著しく低下させられ得る。これに対して、上記の多孔質層は焼成収縮率の小さい厚膜で構成されることから、その多孔質層が厚膜積層体全体の収縮を抑制するため、厚膜シートは高い寸法および形状精度を備えたものとなる。その反面、多孔質の厚膜には気体分子の吸着や電気的短絡等の不都合が生じ得るので、緻密質の被覆層はこのような不都合を抑制する目的でその多孔質層の側面全体をそれよりも広範囲に亘って覆って設けられる。このとき、被覆層のガラス成分が多孔質層内に染み込むと、固着力が低下して被覆層の周縁部が剥離し得るが、多孔質層間に備えられた緻密質層によってこのような不都合が好適に回避されるのである。なお、厚膜シート全体の機械的強度は、多孔質層よりも緻密な第1厚膜層および第2厚膜層が備えられることで十分に確保し得る。また、図1は、緻密質層が備えられていない厚膜シート140の要部構成を示す図であり、誘電体層142,144間にそれらよりも多孔質の多孔質層146を介在させることによって収縮変形を抑制したものであるが、積層体の形成後、厚膜から成る被覆層148を設ける際に、本来は左端に示すように密着形成されるべきものが、右端に示すように端部150において積層体から剥離する問題があった。
【0012】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の厚膜シートの製造方法の要旨とするところは、(a)所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する工程と、(b)それぞれ前記第1温度で焼結させられる厚膜材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る第1ペースト膜、第2ペースト膜、第3ペースト膜、第4ペースト膜、第5ペースト膜を、その第1ペースト膜が格子状を成し、且つそれら第2ペースト膜、第3ペースト膜、および第4ペースト膜の側面がその格子の内壁面にそれぞれ露出した所定の平面形状で順次に積層形成する工程と、(c)前記第1ペースト膜乃至前記第5ペースト膜が積層された支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなくそれら第1ペースト膜乃至第5ペースト膜を焼結させて、それら第1ペースト膜および第5ペースト膜から第1厚膜層および第2厚膜層を、前記第2ペースト膜および第4ペースト膜からそれら第1厚膜層および第2厚膜層よりも多孔質の第1多孔質層および第2多孔質層を、前記第3ペースト膜からそれら第1多孔質層および第2多孔質層よりも緻密質の緻密質層をそれぞれ生成する工程と、(d)前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、前記第1多孔質層、前記第2多孔質層、および前記緻密質層が積層された厚膜積層体を前記膜形成面から剥離する工程と、(e)所定の厚膜材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る第6ペースト膜で前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の側面を覆う工程と、(f)前記第6ペースト膜を塗布した前記厚膜積層体を所定の第2温度で加熱処理することにより、その第6ペースト膜から被覆層を生成する工程とを、含むことにある。
【0013】
【第2発明の効果】
このようにすれば、厚膜材料の焼結温度(第1温度)よりも高い融点を有する高融点粒子層で構成された膜形成面に第1ペースト膜乃至第5ペースト膜を積層形成した後、その第1温度で加熱処理を施すことにより全体として格子状を成す厚膜積層体が生成され、これを膜形成面から剥離して第6ペースト膜で覆い、更に第2温度で加熱処理を施すことにより、厚膜積層体が被覆層で覆われた厚膜シートが得られる。そのため、第1温度では焼結させられない高融点粒子層は、樹脂が焼失させられることにより高融点粒子のみが並ぶ層となることから、生成された厚膜シートは支持体に固着されないため、その膜形成面から容易に剥離して他の基板等に固定して用いることができる。したがって、厚膜形成時の熱処理に起因する基板歪み等が好適に抑制される。
【0014】
このとき、第2ペースト膜および第4ペースト膜は多孔質膜に生成されるものであることからその焼成収縮率が小さいので、厚膜積層体全体の焼成収縮率はこれら第2ペースト膜および第4ペースト膜によって律せられて小さくなる。そのため、収縮に伴う寸法精度および形状精度の低下が抑制される。一方、厚膜積層体全体の機械的強度は、相対的に緻密な第1厚膜層、第2厚膜層および緻密質層で確保されるので、多孔質層で収縮を抑制することに伴って機械的強度が不足することはない。また、露出させられている多孔質層の側面は被覆層で覆われることから、その多孔質層の空隙に吸着された気体分子等が使用中に放出されて使用環境の雰囲気を乱すことや、多孔質層が厚膜導体で構成される場合において導体の電気的短絡が生じること等が好適に抑制される。更に、第1多孔質層および第2多孔質層の層間には緻密質層が備えられることになるため、被覆層中のガラス成分が多孔質層に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する被覆層の剥離が抑制され高い固着強度が得られる。
【0015】
【発明の他の態様】
ここで、前記第1発明および第2発明において、好適には、前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、および前記被覆層は厚膜誘電体から成り、且つ、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は厚膜導体から成るものであり、前記厚膜シートは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させて発光させるための複数対の表示電極とを備えたAC型ガス放電表示装置を構成するために前記第1平板および前記第2平板間に配置され、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層でそれら複数対の表示電極を構成するものである。このようにすれば、放電表示装置の構造に応じた適宜の寸法および形状で導体層すなわち第1多孔質層および第2多孔質層を設けた厚膜シートを用いることにより、表示放電を発生させるための複数対の表示電極を容易に得ることができる。厚膜シートは、例えば、第1平板および第2平板の一方の内面に固着することができる。
【0016】
また、上記のようにAC型ガス放電表示装置の表示電極を構成するために厚膜シートが用いられる場合において、一層好適には、前記緻密質層は、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の積層範囲の下端から上端までの距離の1/12乃至9/10の範囲内の厚さ寸法を備えたものであり、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は、一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体から成り且つ上下に重なるものが相互に電気的に接続されたものである。このようにすれば、第1多孔質層および第2多孔質層が積層されている範囲全体に対して1/12以上の十分に大きい割合を占める厚さ寸法で緻密質層が設けられることから、その緻密質層を設けることに基づく多孔質層へのガラスの染み込み抑制効果延いては被覆層の剥離抑制効果を好適に享受しつつ、緻密質層の占める割合が9/10以下に留められることにより、放電面を十分な大きさで確保することが可能となる。
【0017】
因みに、一方向に沿って伸びる複数本の表示電極が誘電体で覆われたAC型ガス放電表示装置では、交流放電が発生させられることから、表示電極を構成する多孔質層は実質的に電極リードとして機能するに過ぎず、それを覆う被覆層が真の電極として機能する。そのため、第1多孔質層および第2多孔質層が相互に電気的に接続されていれば同時に駆動パルスが印加されるので、積層範囲全体に亘って電荷が連続的に形成され、積層されたそれら多孔質層がその積層範囲の全体に亘る厚さ寸法を有する一つの導体と同等に機能する。すなわち、第1多孔質層および第2多孔質層の側面がある程度の大きさで厚膜積層体の側面に露出させられていれば、実際のそれらの厚さ寸法が薄くなっていても、駆動上何らの不都合が無く一体的に設けられていた場合と同様に機能する。したがって、放電面が上記積層範囲に応じた面積を以て対向させられることになるため、対向放電構造を備えた3電極AC型のガス放電表示装置が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図2は、本発明の厚膜シートが放電電極を構成するために用いられたAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法であって透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものであって、単独の表示装置として用いられる場合には例えば900×500(mm)程度の大きさを備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより所謂タイル型表示装置として用いられる場合には例えば450×350(mm)程度の大きさを備えるものである。本実施例においては、上記の前面板16が第1平板に、背面板18が第2平板にそれぞれ相当する。
【0020】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0021】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0022】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0023】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成るものであるが、例えばブラック・ストライプとしても機能させる場合には、例えば隔壁22と同じ材料系に黒色顔料粉末(例えば黒色金属酸化物粉末)を分散させた材料で構成され、何れの場合にも、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0024】
図3は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図であり、図4は、そのシート部材20の断面を拡大して示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば180(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に中間誘電体層42を介して積層された上側導体層44および下側導体層46と、これらの積層体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。なお、図4においては、各層の積層状態や誘電体皮膜48の形状等を比較的忠実に描いているが、図3ではこれを簡略化して平坦に描いているので、これらの図は相互に一致していない。また、図4では保護膜50を省略した。
【0025】
上記の上側誘電体層38,下側誘電体層40,および中間誘電体層42(以下、特に区別しないときは誘電体層38等という)は、相互に同様な格子状の平面形状を成すものであって、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で例えば10(%)程度の気孔率の緻密質に構成されている。なお、中間誘電体層42は、例えばフィラーを含まない材料で構成することにより、例えば3(%)程度の更に緻密な層としても良い。また、これらの格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分の幅寸法は、例えば隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば100〜150(μm)程度である。また、上側誘電体層38は、例えば20〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度、中間誘電体層42は、例えば5〜500(μm)の範囲内、例えば70(μm)程度、下側誘電体層40は、例えば20〜50(μm)の範囲内、例えば35(μm)程度の厚さ寸法にそれぞれ構成されている。本実施例においては、上記の上側誘電体層38および下側誘電体層40が第1厚膜層および第2厚膜層にそれぞれ相当し、中間誘電体層42が緻密質層に相当する。
【0026】
また、これら誘電体層38等の格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22に沿った方向においては、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。また、隔壁22に直交する方向においては、それよりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば150(μm)程度の幅寸法を備え、200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の大きさは、例えば700×350(μm)程度である。
【0027】
また、上記の導体層44,46は、例えばアルミニウム(Al)を導電成分として含む例えば30(%)程度の気孔率を有する厚膜導体であって誘電体層38等よりも多孔質に構成されており、例えば何れも10〜50(μm)の範囲内、例えば25(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。このため、本実施例においては、中間誘電層42が導体層44,46の積層範囲の7/12程度の厚さ寸法で設けられている。これら導体層44,46は、それぞれ誘電体層38等の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。この帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備え、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。また、中間誘電体層42を介して上下に重なる帯状厚膜導体52,52の各組は、シート部材20内において或いは気密空間の外部において、相互に共通の配線に接続されている。本実施例においては、これら導体層44,46が第1多孔質層および第2多孔質層にそれぞれ相当する。
【0028】
このように、本実施例においては、シート部材20を構成する厚膜層のうち導体層44,46が多孔質になっているが、厚膜層の残部すなわち誘電体層38,40,42が緻密質に構成されていることから、シート部材20全体としての機械的強度はこれら誘電体層38等によって確保されている。
【0029】
また、図3において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜200(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば30〜150(μm)の範囲内、例えば75(μm)程度である。
【0030】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0031】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、導体が露出させられることによる電気的短絡を防止し、且つ、多孔質な厚膜材料で構成される導体層44,46の側面を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。このため、誘電体皮膜48は、例えば図4に示されるように、厚膜積層体の側面のうち導体層44,46の側面が位置する部分よりも広い範囲に亘って設けられているが、それら導体層44,46の間には中間誘電体層42が備えられているため、これも同時に覆うものとなっている。本実施例においては、この誘電体皮膜48が被覆層に相当する。
【0032】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0033】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、前記の図4に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。このとき、中間誘電体層42を介して積層された2本の帯状厚膜導体52,52がそれぞれ形成する電界は、それらを覆う保護膜50上において重ね合わされることによって一つの電界を成す。そのため、保護膜50上には、書込電極28との間の放電によって、帯状厚膜導体52,52が設けられている範囲内で電荷が厚さ方向において連続的に蓄積されることとなる。すなわち、本実施例においては導体層44,46の積層範囲全体に亘る範囲が放電面56として機能する。
【0034】
上記のようにして走査電極として機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図4に矢印Bで示すように放電面56,56間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。なお、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、上記維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面56の全面に広がることとなる。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。
【0035】
このとき、放電空間24内で対向させられている帯状厚膜導体52,52の厚さ寸法が小さいことから、対向させられた電極面積は積層された2つの帯状厚膜導体52,52の厚さ寸法を合計しても例えば50(μm)程度に過ぎない。しかしながら、本実施例によれば、上述した電荷の連続性に基づいて広い放電面56が形成されるので、そのような放電面56,56が対向させられた対向放電構造が実現されている。すなわち、本実施例においては、積層された帯状厚膜導体52,52が一体となって維持電極を構成する。なお、中間誘電体層42の厚さ寸法で決定される導体層44,46の相互間隔は例えば70(μm)程度であるが、この厚さ寸法は、上記のように壁電荷を形成するのに支障のない範囲で比較的大きい値に定められている。
【0036】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0037】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0038】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0039】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0040】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0041】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(j)を参照して説明する。
【0042】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0043】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のアルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば620(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程に対応する。
【0044】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38等を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44,46を形成するための厚膜導体ペースト98(図7(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38等を形成するための誘電体印刷層100,104、108、導体層44、46を形成するための導体印刷層102、106が、その積層順序に従って形成される。上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図7(c)〜(e)は、それぞれ、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104乃至108がそれぞれ形成された段階を示している。なお、何れの印刷層も、一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0045】
なお、上記のアルミニウム粉末は、例えば平均粒径が5(μm)程度で3〜20(μm)程度の範囲に粒径が分布するものであって、個々の粒子は例えば球形状を備えている。このようなアルミニウム粉末が上記のような低軟化点ガラスと混合された厚膜アルミニウム・ペーストは、焼成収縮し難く、例えば90(%)程度の高い残存率を有している。また、導体印刷層102,106の厚さ寸法は、上記のように厚膜印刷により形成する場合に安定した膜厚が得られ、且つ焼成後にある程度の放電面積が確保できる範囲で小さい値に定められている。これら導体印刷層102,106から生成される導体層44,46が多孔質であって機械的強度が低いことから、前述したようにシート部材20の機械的強度が誘電体印刷層100,104,108から生成される誘電体層38,40,42で確保されるため、導体印刷層102,106の膜厚は薄い方が好ましいのである。中間誘電体層42を形成するための誘電体印刷層104は、このような導体印刷層102,106の厚さ寸法の条件の下、前述したように導体層44,46の厚さ寸法とは実質的に関係なくそれらの積層範囲で定められる放電面56の大きさが、放電電圧を十分に低くできる程度まで大きくなるように定められることとなる。
【0046】
上記のようにして厚膜印刷層100〜108を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0047】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜108は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38、40,42および導体層44、46の積層体すなわちシート部材20の構成部分である厚膜積層体が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、アルミニウム粉末を導体成分として含む厚膜導体ペースト98は、上述したように残存率が大きいことから面方向における収縮量が極めて小さいので、基板80上に固定されていることと相俟って、格子状の誘電体層38、40,42および縞状の導体層44、46のそれぞれの中心間隔延いてはトータルピッチは、厚膜印刷層100〜108のそれから殆ど変化しない。なお、生成された厚膜の断面を観察したところ、アルミニウム粉末は殆ど溶けておらず、多孔質な組織が形成されていることが確かめられた。
【0048】
一方、厚膜誘電体ペースト96は例えば70(%)程度の焼成残存率を有して大きな収縮率を有するものであるが、上記の焼成過程においては、面方向における収縮が厚膜導体ペースト98によって妨げられるため、専ら厚み方向に収縮することで緻密化させられる。本実施例においては、このようにして、多孔質な導体層44,46と緻密質な誘電体層38,40,42とが交互に積層された厚膜シート20が得られるのである。上述した説明から明らかなように、本実施例においては、誘電体印刷層100が第1ペースト膜に、導体印刷層102が第2ペースト膜に、誘電体印刷層104が第3ペースト膜に、導体印刷層106が第4ペースト膜に、誘電体印刷層108が第5ペースト膜にそれぞれ相当する。
【0049】
また、前記の剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図9参照)のみから成る粒子層116となる。
【0050】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜108が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜108の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。低収縮率の導体印刷層102,106は、このように基板80上に印刷積層された厚膜が比較的自由に収縮させられることから、却って寸法精度や形状精度の確保が困難になることを鑑みて、低収縮材料が選択されているのである。
【0051】
なお、本実施例においては、厚膜印刷層100〜108の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0052】
図6に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0053】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図8(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。これにより、厚膜積層体が誘電体ペースト膜125で覆われるが、例えば余剰の誘電体ペースト24を拭き取る等の処置が施されることにより、図10に示されるように、誘電体ペースト膜125が専ら積層体の側面(すなわち格子の内壁面)だけに付着させられ、上側誘電体層38の上面および下側誘電体層40の下面は略露出させられた状態となっている。本実施例においては、この誘電体ペースト膜125が第6ペースト膜に相当する。
【0054】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、誘電体ペースト膜125に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。これにより、誘電体ペースト膜125から前記の誘電体皮膜48が生成される。そのため、上述したように一部が露出した状態で誘電体ペースト膜125が形成されていることから、前記の図4に示されるような断面形状で誘電体皮膜48が設けられるのである。図8(i)は、ディッピングによる塗布後から焼成後までの何れかの段階を示している。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0055】
上記の焼成処理の際に、温度上昇に伴って、誘電体ペースト膜125中のガラス粉末が軟化させられ延いてはその粘性が十分に低下させられると、多孔質の導体層44,46にそのガラスが染み込むことになる。このとき、本実施例においては、その導体層44,46が緻密質の誘電体層38,40,42に挟まれ且つその膜厚が十分に薄いことから、そのガラスの染み込みが抑制される。そのため、誘電体皮膜48の特に外縁部においてガラス成分の不足による固着力低下が生じ、延いてはその外延部が厚膜積層体から剥離することが抑制される。導体層44,46の厚さ寸法や中間誘電体層42の厚さ寸法は、このようなガラスの染み込みを可及的に抑制するという観点からも、前者が比較的薄く且つ後者が比較的厚い方が好ましいことから、前述したような厚さ寸法にそれぞれ定められているのである。前記の中間誘電体層42の膜厚の下限値は、このような理由で定められているものでもある。また、一般的な厚膜スクリーン印刷プロセスで著しく厚いペースト膜を得ることは困難であるため、前記の膜厚の上限値は、このような工程上の限界で実質的に決められている。
【0056】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されないのである。また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。
【0057】
ここで、本実施例においては、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の585(℃)程度の焼結温度よりも高い融点を有する高融点粒子114を含む剥離層86上に誘電体印刷層100,104、108および導体印刷層102、106を積層形成した後、それらの焼結温度で加熱処理を施すことにより全体として格子状を成す厚膜積層体が生成され、これを基板表面82から剥離して誘電体ペースト124で覆い、更に550(℃)程度のその焼結温度で加熱処理を施すことにより、厚膜積層体が誘電体皮膜48で覆われたシート部材20(厚膜シート電極)が得られる。そのため、585(℃)では焼結させられない剥離層86は、樹脂が焼失させられることにより高融点粒子114のみが並ぶ粒子層116となることから、生成されたシート部材20は基板80に固着されないため、その表面82から容易に剥離して背面板18に固定するだけで維持電極として用いることができる。したがって、電極形成時の熱処理に起因する基板歪み等が好適に抑制される。
【0058】
このとき、導体印刷層102、106は、アルミニウム粉末を導体成分として含むことから多孔質膜に生成されるものであることからその焼成収縮率が小さいので、厚膜積層体全体の焼成収縮率はこれら導体印刷層102,104によって律せられて小さくなる。そのため、収縮に伴う寸法精度および形状精度の低下が抑制される。一方、厚膜積層体全体の機械的強度は、相対的に緻密な誘電体層38等で確保されるので、多孔質の導体層44,46で収縮を抑制することに伴って機械的強度が不足することはない。また、露出させられている多孔質の導体層44,46の側面は誘電体皮膜48で覆われることから、その導体層44,46の空隙に吸着された気体分子等がPDP10の使用中に放電空間24内に放出されて雰囲気を乱すことや、導体の電気的短絡が生じること等が好適に抑制される。更に、導体層44,46の層間には緻密質の中間誘電体層42が備えられるため、誘電体皮膜48の焼成時にそのガラス成分が導体層44,46に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する誘電体皮膜48の剥離(図1参照)が抑制され高い固着強度が得られる。
【0059】
また、本実施例においては、導体層44、46間に設けられた中間誘電体層42が、それらの積層範囲の下端から上端までの距離の7/12程度の厚さ寸法を備えたものであり、それら導体層44,46を構成する帯状厚膜導体52が上下に重なるもの相互に電気的に接続されているため、多孔質な導体層44,46へのガラスの染み込み抑制効果延いては誘電体皮膜48の剥離抑制効果を好適に享受しつつ、放電面が十分な大きさで確保されている。
【0060】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0061】
例えば、実施例においては、AC型PDP10の電極を構成するためのシート部材20およびその製造方法に本発明が適用された場合について説明したが、多孔質の厚膜層を含む複数の厚膜が積層された厚膜積層体の表面が厚膜から成る被覆層で覆われた厚膜シートであれば、多孔質層が導体層44,46で構成されたものに限られず、導体層と誘電体層との積層構成が反対になったものや、全体が導体層または誘電体層で構成されたような厚膜シートにも本発明は同様に適用される。
【0062】
また、実施例においては、多孔質の導体層44,46間に備えられる緻密層が厚膜誘電体から成る中間誘電体層42で構成されていたが、導体層44,46はシート部材20内において或いは外部において相互に接続されるものであるので、これに代えて厚膜導体から成る緻密層を設けても良い。このような導体材料から成る緻密質層としては、例えば、金、銀、銅、或いは銀−パラジウム(Ag−Pd)等の厚膜導体が挙げられる。
【0063】
また、実施例においては、シート部材20の導体層44の全体が焼成収縮の小さい導体で構成されていたが、その厚み方向の一部だけ、或いは面方向の一部だけが焼成収縮の小さい材料で構成されていてもよい。同様に、誘電体層38,40を焼成収縮の小さい材料で構成する場合にも、その全体に限られず、厚み方向や面方向の一部だけを焼成収縮の小さい材料で構成してもよい。要するに、厚み方向の中間に低収縮の層が設けられていれば、その構成材料の如何に拘わらず本発明の効果を享受できる。
【0064】
また、実施例においては、アルミニウム粉末を導体成分として用いることによって導体層44、46に収縮抑制機能を与えていたが、必要な導電率を確保できるのであれば、他の導体材料を用い、或いは、無機フィラーを添加することで導体層44、46に収縮抑制機能を与えることもできる。例えば、導体材料としては、Ni、Cu等を用い得る。
【0065】
また、実施例においては、厚膜形成のための第1温度が585(℃)程度に、誘電体被膜形成のための第2温度が550(℃)程度にそれぞれ設定されていたが、第1温度および第2温度は、それぞれ厚膜ペーストの焼成温度に応じて定められるものであり、同一の温度であっても、第2温度の方が高温であっても差し支えない。
【0066】
また、シート部材20の各部の寸法や構成材料などは、実施例で示したものに限られず、その目的に応じて適宜変更される。
【0067】
また、実施例においては、厚膜スクリーン印刷法を用いて中間誘電体層42を構成していたが、感光性ペーストを用いたフォト法、サンド・ブラスト法等の他の厚膜形成技術を用いることもできる。また、別に例えば1(mm)を越えるような厚い膜を作成しておき、これを下側誘電体層40を構成するための印刷膜100の上に重ねる等の方法を用いることも可能であり、その場合には、工法上の膜厚制限は実質的に無くなる。
【0068】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆層の剥離を説明する図である。
【図2】本発明の厚膜シートが用いられたカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】図2のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図4】隔壁の長手方向に沿った断面において、シート部材の断面構造を説明する図である。
【図5】図2のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】(f)〜(i)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図10】図6の誘電体ペースト塗布工程の後の誘電体ペースト膜の生成状態を示す断面図である。
【符号の説明】
20:シート部材
42:中間誘電体層
44,46:導体層
48:誘電体皮膜
86:剥離層
96:厚膜誘電体ペースト
98:厚膜導体ペースト
100,104、108:誘電体印刷層
102、106:導体印刷層
124:誘電体ペースト
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数層の厚膜が積層され且つ基板に固定されていない厚膜シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、透光性を有する第1平板(前面板)およびその第1平板に平行な第2平板(背面板)の間に形成され且つ所定のガスが封入された複数の放電空間と、それら複数の放電空間の各々で選択的にガス放電を発生させるための厚膜誘電体で覆われた複数対の放電電極とを備え、そのガス放電を利用して発光させることにより、文字、記号、或いは図形等の所望の画像を表示する形式のプラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:PDP)等のガス放電表示装置が知られている。例えば、3電極構造のAC型PDPでは、複数本の放電空間が一方向に沿って設けられると共に、これに平行な方向に沿って書込電極が放電空間毎に設けられ、且つ複数対の放電電極(維持電極)がこれに直交する他方向に沿って設けられる。画像を表示させるに際しては、維持電極と書込電極との間でガス放電を発生させることにより発光区画を選択し、その後、全ての維持電極間に表示のための所定の交流電圧を印加することによって、選択された発光区画内でガス放電を発生させ且つ発光させる。
【0003】
このようなガス放電表示装置は、例えば、ガス放電によって生じたプラズマの生成に伴うネオン・オレンジ等の発光を直接利用し、或いは、発光区画(画素或いはセル)内に蛍光体が備えられてプラズマによって生じた紫外線により励起させられたその蛍光体の発光を利用して画像を表示する。そのため、平板型で大画面化、薄型化、および軽量化が容易であると共に、CRT並の広い視野角および早い応答速度を有しているため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】
谷 千束著「ディスプレイ先端技術」初版第1刷、共立出版、1998年12月28日、p.78−88
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のガス放電表示装置では、一般に、前面板および背面板の少なくとも一方の内面に導体材料を塗布して焼成処理等の加熱処理を施す厚膜形成プロセス等を利用することにより、上記の放電電極が形成されていた。
【0006】
すなわち、対向放電構造のガス放電表示装置では、前面板および背面板に互いに直交する一方向および他方向にそれぞれ沿って放電電極が設けられるが、この放電電極は、通常、何れも厚膜導体で構成される。また、3電極面放電構造のガス放電表示装置では、維持電極が一方向に沿って前面板および背面板の一方に互いに平行に設けられると共に、前面板および背面板の他方にはその一方向に直交する他方向に沿って書込電極が設けられる。この面放電構造では、可及的に光を透過させる必要がある維持電極側は、ITO(酸化インジウム錫)膜等から成る透明電極およびその導電性を補うための厚膜導体から成るバス電極で構成される。
【0007】
したがって、何れの電極構造が採られる場合にも、前面板および背面板(基板)の少なくとも一方の内面に厚膜形成プロセス等を利用して電極が形成されるが、この厚膜の焼成のために基板に熱処理が施されることから、それらに歪みが生じると共に、厚膜誘電体や厚膜導体にも亀裂や変形等が生じる問題があった。すなわち、厚膜形成プロセスにおける加熱処理では、基板内の温度分布に基づく熱膨張量のばらつきや、厚膜誘電体および厚膜導体との熱膨張係数の相違等に起因して基板等に歪み等が生じ得るのである。この結果、基板の平坦性や厚膜パターン精度等の確保が困難になっていた。このような問題は、ガス放電表示装置を構成するために基板上に厚膜導体を設ける場合に限られず、誘電体または導体から成る厚膜を高精度で設ける必要のある種々の基板において同様に生じ得る。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、厚膜形成時の熱処理に起因する基板歪み等を抑制できる厚膜およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するための第1発明の厚膜シートの要旨とするところは、(a)平面形状が格子状を成す第1厚膜層と、(b)その第1厚膜層上に積層された第2厚膜層と、(c)前記格子の内壁面にそれぞれ側面が露出させられた状態で前記第1厚膜層および前記第2厚膜層間に備えられ且つそれらよりも多孔質の厚膜から成る相互に積層された第1多孔質層および第2多孔質層と、(d)前記格子の内壁面に側面が露出させられた状態で前記第1多孔質層および第2多孔質層間に積層され且つそれらよりも緻密質の厚膜から成る緻密質層と、(e)前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、前記第1多孔質層、前記第2多孔質層、および前記緻密質層の積層体の表面に、それら第1多孔質層および第2多孔質層の側面を覆って設けられた緻密質の厚膜から成る被覆層とを含み、基板に固着されていないことにある。
【0010】
【第1発明の効果】
このようにすれば、全体として格子状の平面形状を有し且つ複数の厚膜層が積層された厚膜積層体の第1多孔質層および第2多孔質層が被覆層で覆われた厚膜シートは、基板に固着されていないことから、これを適宜の基板上に固定するだけでその基板に厚膜形成のための焼成処理を何ら施すことなくその基板上に厚膜を設けることができる。そのため、厚膜形成時の熱処理に起因する基板歪みが好適に抑制される。しかも、厚膜ペーストを積層して焼成処理を施すことにより形成される厚膜シートは、その塗布パターン、印刷厚み、積層数や厚膜ペーストの種類等を適宜選択することにより、用途に応じた種々の構成とすることができる。また、厚膜シートには多孔質の第1多孔質層および第2多孔質層が備えられているが、格子の内壁面に露出させられたその側面はそれらよりも緻密質の厚膜から成る被覆層によって覆われているため、その多孔質層の空隙に吸着された気体分子等が使用中に放出されて使用環境の雰囲気を乱すことや、多孔質層が厚膜導体で構成される場合において導体の電気的短絡が生じること等が好適に抑制される。更に、第1多孔質層および第2多孔質層の層間には緻密質層が備えられていることから、被覆層中のガラス成分が多孔質層に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する被覆層の剥離が抑制され高い固着強度が得られる。
【0011】
因みに、厚膜の焼成収縮率(焼成による縮み量の焼成前寸法に対する百分率)は一般に大きく例えば30(%)以上にもなるため、基板に固着されていない厚膜シートは、その製造過程における焼成時にその収縮に伴って寸法精度や形状精度が著しく低下させられ得る。これに対して、上記の多孔質層は焼成収縮率の小さい厚膜で構成されることから、その多孔質層が厚膜積層体全体の収縮を抑制するため、厚膜シートは高い寸法および形状精度を備えたものとなる。その反面、多孔質の厚膜には気体分子の吸着や電気的短絡等の不都合が生じ得るので、緻密質の被覆層はこのような不都合を抑制する目的でその多孔質層の側面全体をそれよりも広範囲に亘って覆って設けられる。このとき、被覆層のガラス成分が多孔質層内に染み込むと、固着力が低下して被覆層の周縁部が剥離し得るが、多孔質層間に備えられた緻密質層によってこのような不都合が好適に回避されるのである。なお、厚膜シート全体の機械的強度は、多孔質層よりも緻密な第1厚膜層および第2厚膜層が備えられることで十分に確保し得る。また、図1は、緻密質層が備えられていない厚膜シート140の要部構成を示す図であり、誘電体層142,144間にそれらよりも多孔質の多孔質層146を介在させることによって収縮変形を抑制したものであるが、積層体の形成後、厚膜から成る被覆層148を設ける際に、本来は左端に示すように密着形成されるべきものが、右端に示すように端部150において積層体から剥離する問題があった。
【0012】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の厚膜シートの製造方法の要旨とするところは、(a)所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する工程と、(b)それぞれ前記第1温度で焼結させられる厚膜材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る第1ペースト膜、第2ペースト膜、第3ペースト膜、第4ペースト膜、第5ペースト膜を、その第1ペースト膜が格子状を成し、且つそれら第2ペースト膜、第3ペースト膜、および第4ペースト膜の側面がその格子の内壁面にそれぞれ露出した所定の平面形状で順次に積層形成する工程と、(c)前記第1ペースト膜乃至前記第5ペースト膜が積層された支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなくそれら第1ペースト膜乃至第5ペースト膜を焼結させて、それら第1ペースト膜および第5ペースト膜から第1厚膜層および第2厚膜層を、前記第2ペースト膜および第4ペースト膜からそれら第1厚膜層および第2厚膜層よりも多孔質の第1多孔質層および第2多孔質層を、前記第3ペースト膜からそれら第1多孔質層および第2多孔質層よりも緻密質の緻密質層をそれぞれ生成する工程と、(d)前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、前記第1多孔質層、前記第2多孔質層、および前記緻密質層が積層された厚膜積層体を前記膜形成面から剥離する工程と、(e)所定の厚膜材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る第6ペースト膜で前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の側面を覆う工程と、(f)前記第6ペースト膜を塗布した前記厚膜積層体を所定の第2温度で加熱処理することにより、その第6ペースト膜から被覆層を生成する工程とを、含むことにある。
【0013】
【第2発明の効果】
このようにすれば、厚膜材料の焼結温度(第1温度)よりも高い融点を有する高融点粒子層で構成された膜形成面に第1ペースト膜乃至第5ペースト膜を積層形成した後、その第1温度で加熱処理を施すことにより全体として格子状を成す厚膜積層体が生成され、これを膜形成面から剥離して第6ペースト膜で覆い、更に第2温度で加熱処理を施すことにより、厚膜積層体が被覆層で覆われた厚膜シートが得られる。そのため、第1温度では焼結させられない高融点粒子層は、樹脂が焼失させられることにより高融点粒子のみが並ぶ層となることから、生成された厚膜シートは支持体に固着されないため、その膜形成面から容易に剥離して他の基板等に固定して用いることができる。したがって、厚膜形成時の熱処理に起因する基板歪み等が好適に抑制される。
【0014】
このとき、第2ペースト膜および第4ペースト膜は多孔質膜に生成されるものであることからその焼成収縮率が小さいので、厚膜積層体全体の焼成収縮率はこれら第2ペースト膜および第4ペースト膜によって律せられて小さくなる。そのため、収縮に伴う寸法精度および形状精度の低下が抑制される。一方、厚膜積層体全体の機械的強度は、相対的に緻密な第1厚膜層、第2厚膜層および緻密質層で確保されるので、多孔質層で収縮を抑制することに伴って機械的強度が不足することはない。また、露出させられている多孔質層の側面は被覆層で覆われることから、その多孔質層の空隙に吸着された気体分子等が使用中に放出されて使用環境の雰囲気を乱すことや、多孔質層が厚膜導体で構成される場合において導体の電気的短絡が生じること等が好適に抑制される。更に、第1多孔質層および第2多孔質層の層間には緻密質層が備えられることになるため、被覆層中のガラス成分が多孔質層に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する被覆層の剥離が抑制され高い固着強度が得られる。
【0015】
【発明の他の態様】
ここで、前記第1発明および第2発明において、好適には、前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、および前記被覆層は厚膜誘電体から成り、且つ、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は厚膜導体から成るものであり、前記厚膜シートは、透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させて発光させるための複数対の表示電極とを備えたAC型ガス放電表示装置を構成するために前記第1平板および前記第2平板間に配置され、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層でそれら複数対の表示電極を構成するものである。このようにすれば、放電表示装置の構造に応じた適宜の寸法および形状で導体層すなわち第1多孔質層および第2多孔質層を設けた厚膜シートを用いることにより、表示放電を発生させるための複数対の表示電極を容易に得ることができる。厚膜シートは、例えば、第1平板および第2平板の一方の内面に固着することができる。
【0016】
また、上記のようにAC型ガス放電表示装置の表示電極を構成するために厚膜シートが用いられる場合において、一層好適には、前記緻密質層は、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の積層範囲の下端から上端までの距離の1/12乃至9/10の範囲内の厚さ寸法を備えたものであり、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は、一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体から成り且つ上下に重なるものが相互に電気的に接続されたものである。このようにすれば、第1多孔質層および第2多孔質層が積層されている範囲全体に対して1/12以上の十分に大きい割合を占める厚さ寸法で緻密質層が設けられることから、その緻密質層を設けることに基づく多孔質層へのガラスの染み込み抑制効果延いては被覆層の剥離抑制効果を好適に享受しつつ、緻密質層の占める割合が9/10以下に留められることにより、放電面を十分な大きさで確保することが可能となる。
【0017】
因みに、一方向に沿って伸びる複数本の表示電極が誘電体で覆われたAC型ガス放電表示装置では、交流放電が発生させられることから、表示電極を構成する多孔質層は実質的に電極リードとして機能するに過ぎず、それを覆う被覆層が真の電極として機能する。そのため、第1多孔質層および第2多孔質層が相互に電気的に接続されていれば同時に駆動パルスが印加されるので、積層範囲全体に亘って電荷が連続的に形成され、積層されたそれら多孔質層がその積層範囲の全体に亘る厚さ寸法を有する一つの導体と同等に機能する。すなわち、第1多孔質層および第2多孔質層の側面がある程度の大きさで厚膜積層体の側面に露出させられていれば、実際のそれらの厚さ寸法が薄くなっていても、駆動上何らの不都合が無く一体的に設けられていた場合と同様に機能する。したがって、放電面が上記積層範囲に応じた面積を以て対向させられることになるため、対向放電構造を備えた3電極AC型のガス放電表示装置が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図2は、本発明の厚膜シートが放電電極を構成するために用いられたAC型カラーPDP(以下、単にPDPという)10の構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。図において、PDP10は、それぞれの略平坦な一面12,14が対向するように所定間隔を隔てて互いに平行に配置された前面板16および背面板18を備えている。それら前面板16および背面板18は、格子状のシート部材20を介してその周縁部において気密に封着されており、これによりPDP10の内部に気密空間が形成されている。これら前面板16および背面板18は、何れも1.1〜3(mm)程度の均一な厚さ寸法であって透光性を有し且つ軟化点が700(℃)程度の相互に同様なソーダライム・ガラス等から成るものであって、単独の表示装置として用いられる場合には例えば900×500(mm)程度の大きさを備え、複数枚が縦横に密接して並べられることにより所謂タイル型表示装置として用いられる場合には例えば450×350(mm)程度の大きさを備えるものである。本実施例においては、上記の前面板16が第1平板に、背面板18が第2平板にそれぞれ相当する。
【0020】
上記の背面板18上には、一方向に沿って伸び且つ互いに平行な複数本の長手状の隔壁22が0.2〜3(mm)の範囲内、例えば1.0(mm)程度の一定の中心間隔で備えられており、前面板16および背面板18間の気密空間が複数本の放電空間24に区分されている。この隔壁22は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスを主成分とする厚膜材料から成り、幅寸法が60(μm)〜1.0(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度、高さ寸法が5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の大きさを備えたものである。また、隔壁22には、例えばアルミナ等の無機充填材(フィラー)やその他の無機顔料等が適宜添加されることにより、膜の緻密度や強度、保形性等が調節されている。前記のシート部材20は、その一方向に沿って伸びる部分がこの隔壁22の頂部上に重なる位置関係にある。
【0021】
また、背面板18上には、その内面14の略全面を覆う低アルカリ・ガラス或いは無アルカリ・ガラス等から成るアンダ・コート26が設けられ、その上に厚膜銀等から成る複数本の書込電極28が前記複数の隔壁22の長手方向に沿ってそれらの間の位置に、低軟化点ガラスおよび白色の酸化チタン等の無機フィラー等から成るオーバ・コート30に覆われて設けられている。上記の隔壁22は、このオーバ・コート30上に突設されている。
【0022】
また、オーバ・コート30の表面および隔壁22の側面には、放電空間24毎に塗り分けられた蛍光体層32が例えば10〜20(μm)程度の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層32は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する3色の蛍光体の何れかから成るものであり、隣接する放電空間24相互に異なる発光色となるように設けられている。なお、前記のアンダ・コート26およびオーバ・コート30は、厚膜銀から成る書込電極28と背面板18との反応および上記の蛍光体層32の汚染を防止する目的で設けられたものである。
【0023】
一方、前記の前面板16の内面12には、前記隔壁22に対向する位置に隔壁34がストライプ状に設けられている。この隔壁34は、例えば隔壁22と同じ材料から成るものであるが、例えばブラック・ストライプとしても機能させる場合には、例えば隔壁22と同じ材料系に黒色顔料粉末(例えば黒色金属酸化物粉末)を分散させた材料で構成され、何れの場合にも、例えば5〜300(μm)程度の範囲内、例えば50(μm)程度の高さ寸法(厚さ寸法)で設けられたものである。前面板内面12のこの隔壁34相互間には、蛍光体層36が例えば3〜50(μm)程度の範囲内例えば5(μm)程度の厚さ寸法でストライプ状に設けられている。この蛍光体層36は、放電空間24毎に単一の発光色が得られるように、背面板18上に設けられた蛍光体層32と同じ発光色のものが設けられている。上記隔壁34の高さ寸法は、シート部材20が蛍光体層36に接することを防止するために、その表面が蛍光体層36の表面よりも高くなるように定められている。
【0024】
図3は、前記のシート部材20の構成の要部を、その一部を切り欠いて示す図であり、図4は、そのシート部材20の断面を拡大して示す図である。図において、シート部材20は、例えば全体で50〜500(μm)の範囲内、例えば180(μm)程度の厚さ寸法を備えたものであって、格子状を成し、その表面および裏面にそれぞれ位置する上側誘電体層38および下側誘電体層40と、それらの間に中間誘電体層42を介して積層された上側導体層44および下側導体層46と、これらの積層体を覆って設けられた誘電体皮膜48と、その誘電体皮膜48を更に覆って設けられ且つシート部材20の表層部を構成する保護膜50とから構成されている。なお、図4においては、各層の積層状態や誘電体皮膜48の形状等を比較的忠実に描いているが、図3ではこれを簡略化して平坦に描いているので、これらの図は相互に一致していない。また、図4では保護膜50を省略した。
【0025】
上記の上側誘電体層38,下側誘電体層40,および中間誘電体層42(以下、特に区別しないときは誘電体層38等という)は、相互に同様な格子状の平面形状を成すものであって、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラスおよびアルミナ等のセラミック・フィラー等の厚膜誘電体材料で例えば10(%)程度の気孔率の緻密質に構成されている。なお、中間誘電体層42は、例えばフィラーを含まない材料で構成することにより、例えば3(%)程度の更に緻密な層としても良い。また、これらの格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分の幅寸法は、例えば隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば100〜150(μm)程度である。また、上側誘電体層38は、例えば20〜50(μm)の範囲内、例えば30(μm)程度、中間誘電体層42は、例えば5〜500(μm)の範囲内、例えば70(μm)程度、下側誘電体層40は、例えば20〜50(μm)の範囲内、例えば35(μm)程度の厚さ寸法にそれぞれ構成されている。本実施例においては、上記の上側誘電体層38および下側誘電体層40が第1厚膜層および第2厚膜層にそれぞれ相当し、中間誘電体層42が緻密質層に相当する。
【0026】
また、これら誘電体層38等の格子を構成する縦横に沿ってそれぞれ伸びる部分は、隔壁22に沿った方向においては、その隔壁22の幅寸法と同程度かアライメント・マージンを考慮してそれよりも若干広く、例えば70(μm)〜1.1(mm)の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法を備え、隔壁22と同じ1.0(mm)程度の中心間隔で設けられている。また、隔壁22に直交する方向においては、それよりも十分に小さい例えば60(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば150(μm)程度の幅寸法を備え、200(μm)〜1.0(mm)の範囲内、例えば500(μm)程度の中心間隔で設けられている。このため、格子の開口部の大きさは、例えば700×350(μm)程度である。
【0027】
また、上記の導体層44,46は、例えばアルミニウム(Al)を導電成分として含む例えば30(%)程度の気孔率を有する厚膜導体であって誘電体層38等よりも多孔質に構成されており、例えば何れも10〜50(μm)の範囲内、例えば25(μm)程度の厚さ寸法を有するものである。このため、本実施例においては、中間誘電層42が導体層44,46の積層範囲の7/12程度の厚さ寸法で設けられている。これら導体層44,46は、それぞれ誘電体層38等の格子の一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体52で構成されている。この帯状厚膜導体52は、例えば誘電体層38等と同程度かそれよりも僅かに幅方向における両側にはみ出す程度の幅寸法を備え、前記の隔壁22の長手方向に垂直な方向すなわち書込電極28の長手方向と垂直を成す向きに沿って伸びるものである。なお、帯状厚膜導体52は、前記隔壁22の長手方向において、共通の配線に接続されたものと、各々独立の配線に接続されたものとが交互に設けられている。また、中間誘電体層42を介して上下に重なる帯状厚膜導体52,52の各組は、シート部材20内において或いは気密空間の外部において、相互に共通の配線に接続されている。本実施例においては、これら導体層44,46が第1多孔質層および第2多孔質層にそれぞれ相当する。
【0028】
このように、本実施例においては、シート部材20を構成する厚膜層のうち導体層44,46が多孔質になっているが、厚膜層の残部すなわち誘電体層38,40,42が緻密質に構成されていることから、シート部材20全体としての機械的強度はこれら誘電体層38等によって確保されている。
【0029】
また、図3において左端部に示すように、上記複数本の帯状厚膜導体52の各々には、その長手方向における複数箇所においてその幅方向に交互に突き出す複数個の突出部54が備えられている。これら複数個の突出部54は何れも格子の開口部の角部に位置するため、帯状厚膜導体52はその角部においては開口部の内周側に向かって突き出しているが、その突出し位置はその開口部を挟んで隣接する他の帯状厚膜導体52に備えられた突出部54に対向する位置である。なお、一つの開口内には、このような対向させられた突出部54,54が一組ずつ存在する。また、帯状厚膜導体52の幅方向において相互に隣接する開口部では、帯状厚膜導体52の長手方向において相互に反対側に位置する角部に突出し部54,54が備えられている。帯状厚膜導体52の幅方向における突出部54の突出し長さ寸法は、例えば50〜200(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度であり、その幅寸法は、例えば30〜150(μm)の範囲内、例えば75(μm)程度である。
【0030】
また、誘電体層38等も上記の突出部54が備えられた位置において格子の開口角部が内側に拡大された形状で設けられており、突出部54は、その一部がその拡大部分上に位置し、残部が帯状厚膜導体52の長手方向に垂直な格子の構成部分上に位置させられている。この結果、格子の開口部の各々は、シート部材20の厚さ方向において一様な形状を成している。
【0031】
また、前記の誘電体皮膜48は、例えば10〜30(μm)程度の範囲内、例えば20(μm)程度の厚さ寸法を備え、例えばPbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等の低軟化点ガラス等から成る厚膜である。この誘電体皮膜48は、表面に電荷を蓄えることにより後述するように交流放電をさせるために設けられたものであるが、同時に、導体が露出させられることによる電気的短絡を防止し、且つ、多孔質な厚膜材料で構成される導体層44,46の側面を露出させないことによって、これらからのアウト・ガスによる放電空間24内の雰囲気変化を抑制する役割も有する。このため、誘電体皮膜48は、例えば図4に示されるように、厚膜積層体の側面のうち導体層44,46の側面が位置する部分よりも広い範囲に亘って設けられているが、それら導体層44,46の間には中間誘電体層42が備えられているため、これも同時に覆うものとなっている。本実施例においては、この誘電体皮膜48が被覆層に相当する。
【0032】
また、前記の保護膜50は、例えば0.5(μm)程度の厚さ寸法を備え、MgO等を主成分とする薄膜或いは厚膜である。保護膜50は、放電ガス・イオンによる被覆誘電体層48のスパッタリングを防止するものであるが、二次電子放出係数の高い誘電体で構成されていることから、実質的に放電電極として機能する。
【0033】
以上のように電極構造が構成されたPDP10は、前記帯状厚膜導体52のうち個々に独立させられている一方に所定の交流パルスを印加して順次走査すると共に、その走査のタイミングに同期して書込電極28のうちのデータに対応する所望のもの(すなわち発光させる区画として選択されたものに対応する書込電極)に所定の交流パルスを印加すると、前記の図4に矢印Aで示すように、それらの間で書込放電が発生させられ、保護膜50上に電荷が蓄積される。このとき、中間誘電体層42を介して積層された2本の帯状厚膜導体52,52がそれぞれ形成する電界は、それらを覆う保護膜50上において重ね合わされることによって一つの電界を成す。そのため、保護膜50上には、書込電極28との間の放電によって、帯状厚膜導体52,52が設けられている範囲内で電荷が厚さ方向において連続的に蓄積されることとなる。すなわち、本実施例においては導体層44,46の積層範囲全体に亘る範囲が放電面56として機能する。
【0034】
上記のようにして走査電極として機能させられる全ての帯状厚膜導体52を走査した後、全ての帯状厚膜導体52,52間に所定の交流パルスを印加すると、電荷が蓄積された発光区画では印加電圧にその蓄積電荷による電位が重畳されて放電開始電圧を越えるため、図4に矢印Bで示すように放電面56,56間で放電が発生させられ、且つ保護膜50上に改めて発生させられた壁電荷等により予め定められた所定時間だけ維持される。これにより、ガス放電で発生した紫外線で選択された区画内の蛍光体層32、36が励起発光させられ、その光が前面板16を通して射出されることにより、一画像が表示される。なお、帯状厚膜導体52には突出部54が備えられていることから、上記維持放電は、対向する突起部54,54間で先ず発生し、次いで、放電面56の全面に広がることとなる。そして、走査側電極の1周期毎に、交流パルスを印加されるデータ側電極(書込電極28)が変化させられることにより、所望の画像が連続的に表示されることとなる。
【0035】
このとき、放電空間24内で対向させられている帯状厚膜導体52,52の厚さ寸法が小さいことから、対向させられた電極面積は積層された2つの帯状厚膜導体52,52の厚さ寸法を合計しても例えば50(μm)程度に過ぎない。しかしながら、本実施例によれば、上述した電荷の連続性に基づいて広い放電面56が形成されるので、そのような放電面56,56が対向させられた対向放電構造が実現されている。すなわち、本実施例においては、積層された帯状厚膜導体52,52が一体となって維持電極を構成する。なお、中間誘電体層42の厚さ寸法で決定される導体層44,46の相互間隔は例えば70(μm)程度であるが、この厚さ寸法は、上記のように壁電荷を形成するのに支障のない範囲で比較的大きい値に定められている。
【0036】
ところで、上記のようなPDP10は、例えば図5に示される工程図に従って別々に処理(或いは製造)されたシート部材20,前面板16,および背面板18を組み立てることで製造される。
【0037】
背面板18の処理工程においては、先ず、アンダ・コート形成工程58で、用意された平坦な背面板18の内面14に厚膜絶縁体ペーストを塗布して焼成することにより前記のアンダ・コート26を形成する。次いで、書込電極形成工程60では、そのアンダ・コート26上に例えば厚膜スクリーン印刷法やリフトオフ法等を用いて厚膜銀ペースト等の厚膜導電材料ペーストで前記書込電極28を形成する。続くオーバ・コート形成工程62においては、この書込電極28上から低軟化点ガラスおよび無機フィラーを含む厚膜絶縁ペーストをアンダ・コート26の略全面を覆って繰り返し塗布して焼成することにより前記オーバ・コート30を形成する。
【0038】
次いで、隔壁形成工程64では、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを塗着し、乾燥後、例えば500〜650(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の隔壁22を形成する。なお、一回の印刷で隔壁22の所望の高さ寸法を確保できない場合には、印刷および乾燥が必要な回数だけ繰り返される。上述したアンダ・コート形成工程58乃至オーバ・コート形成工程62も同様である。そして、蛍光体層形成工程66においては、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁22相互間であって色毎に定められた所定位置に厚膜スクリーン印刷法等によって或いは流し込みによって塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層32を設ける。
【0039】
一方、前面板16の処理工程においては、先ず、隔壁形成工程68において、上記の工程64と同様に、例えば低軟化点ガラスおよび無機フィラー等を主成分とする厚膜絶縁ペーストを厚膜スクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて内面12上に繰り返し塗布、乾燥して、更に厚膜絶縁ペーストの種類に応じて定められる例えば500〜650(℃)程度の範囲内の熱処理温度で焼成することにより、前記の隔壁34を形成する。次いで、蛍光体層形成工程70において、RGB3色に対応する3種の蛍光体ペーストを隔壁34相互間であって色毎に定められた所定位置に、隔壁34上から厚膜スクリーン印刷或いは落とし込み印刷等の手法で塗布し、例えば450(℃)程度の温度で焼成処理を施すことにより、前記の蛍光体層36を設ける。
【0040】
そして、シート部材作製工程72において作製された前記のようなシート部材20を介して上記の前面板16および背面板18を重ね合わせ、封着工程74において加熱処理を施すことにより、それらの界面に予め塗布されたシールガラス等の封着剤でこれらを気密に封着する。なお、封着に先立ち、必要に応じてシート部材20が前面板16および背面板18の何れかにガラスフリット等を用いて固着される。そして、排気・ガス封入工程72において、形成された気密容器内から排気し且つ所定の放電ガスを封入することにより、前記のPDP10が得られる。
【0041】
上記の製造工程において、シート部材作製工程72は、よく知られた厚膜印刷技術を応用した例えば図6に示される示す工程に従って実施される。以下、シート部材20の製造方法を、製造工程の要部段階における状態を表した図7(a)〜(e)および図8(f)〜(j)を参照して説明する。
【0042】
先ず、基板を用意する工程78では、厚膜印刷を施す基板80(図7参照)を用意し、その表面78等に適宜の清浄化処理を施す。この基板80は、後述する加熱処理の際に殆ど変形や変質の生じないものであって、例えば、熱膨張係数が87×10−7(/℃)程度で、740(℃)程度の軟化点および510(℃)程度の歪み点を備えたソーダライム・ガラス等から成るガラス基板が好適に用いられる。なお、基板80の厚さ寸法は例えば2〜3(mm)程度の範囲内、例えば2.8(mm)程度であり、その表面82の大きさは前記のシート部材20よりも十分に大きくされている。
【0043】
次いで、剥離層形成工程84では、高融点粒子が樹脂で結合させられた剥離層86を、基板80の表面82に例えば5〜50(μm)程度の範囲内、好適には10〜20(μm)程度の厚さ寸法で設ける。上記の高融点粒子は、例えば平均粒径が0.5〜3(μm)程度の高軟化点ガラスフリットおよび平均粒径が0.01〜5(μm)程度の範囲内、例えば1(μm)程度のアルミナやジルコニア等のセラミック・フィラーを、例えば30〜50(%)程度の割合で混合したものである。上記の高軟化点ガラスは、例えば620(℃)程度以上の軟化点を備えたものであり、混合物である高融点粒子の軟化点は、例えば2000(℃)程度以上になっている。また、樹脂は、例えば350(℃)程度で焼失させられるエチルセルロース系樹脂等である。この剥離層86は、例えば、上記の高融点粒子および樹脂がブチルカルビトールアセテート(BCA)やテルピネオール等の有機溶剤中に分散させられた無機材料ペースト88を、例えば図7(a)に示すようにスクリーン印刷法を用いて基板80の略全面に塗布し、乾燥炉或いは室温において乾燥させることで設けられるが、コータやフィルム・ラミネートの貼り付け等で設けることもできる。なお、乾燥炉は、膜の表面粗度が優れ且つ樹脂が一様に分散するように、好適には給排気を十分に行い得る遠赤外線乾燥炉が用いられる。図7(b)は、このようにして剥離層86を形成した段階を示している。なお、図7(a)において、90はスクリーン、92はスキージである。本実施例においては、上記の剥離層86を備えた基板80が支持体に、その剥離層86の表面が膜形成面にそれぞれ相当し、上記の基板用意工程78および剥離層形成工程84が支持体準備工程に対応する。
【0044】
続く厚膜ペースト層形成工程94では、前記の誘電体層38等を形成するための厚膜誘電体ペースト96と、導体層44,46を形成するための厚膜導体ペースト98(図7(a)参照)を、無機材料ペースト88と同様にスクリーン印刷法等を利用して剥離層86上に所定のパターンで順次に塗布・乾燥する。これにより、誘電体層38等を形成するための誘電体印刷層100,104、108、導体層44、46を形成するための導体印刷層102、106が、その積層順序に従って形成される。上記の厚膜誘電体ペースト96は、例えば、アルミナやジルコニア等の誘電体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。また、厚膜導体ペースト98は、例えば、アルミニウム粉末等の導体材料粉末、ガラスフリット、および樹脂が有機溶剤中に分散させられたものである。なお、上記のガラスフリットは、例えばAl2O3−SiO2−PbO系の低軟化点ガラス等が用いられ、樹脂および溶剤は例えば無機材料ペースト88と同様なものが用いられる。図7(c)〜(e)は、それぞれ、誘電体印刷層100、導体印刷層102、および誘電体印刷層104乃至108がそれぞれ形成された段階を示している。なお、何れの印刷層も、一回の印刷で所定の厚さ寸法が得られない場合には、必要な回数だけ印刷および乾燥が繰り返される。
【0045】
なお、上記のアルミニウム粉末は、例えば平均粒径が5(μm)程度で3〜20(μm)程度の範囲に粒径が分布するものであって、個々の粒子は例えば球形状を備えている。このようなアルミニウム粉末が上記のような低軟化点ガラスと混合された厚膜アルミニウム・ペーストは、焼成収縮し難く、例えば90(%)程度の高い残存率を有している。また、導体印刷層102,106の厚さ寸法は、上記のように厚膜印刷により形成する場合に安定した膜厚が得られ、且つ焼成後にある程度の放電面積が確保できる範囲で小さい値に定められている。これら導体印刷層102,106から生成される導体層44,46が多孔質であって機械的強度が低いことから、前述したようにシート部材20の機械的強度が誘電体印刷層100,104,108から生成される誘電体層38,40,42で確保されるため、導体印刷層102,106の膜厚は薄い方が好ましいのである。中間誘電体層42を形成するための誘電体印刷層104は、このような導体印刷層102,106の厚さ寸法の条件の下、前述したように導体層44,46の厚さ寸法とは実質的に関係なくそれらの積層範囲で定められる放電面56の大きさが、放電電圧を十分に低くできる程度まで大きくなるように定められることとなる。
【0046】
上記のようにして厚膜印刷層100〜108を形成し、乾燥して溶剤を除去した後、焼成工程110においては、基板80を所定の焼成装置の炉室112内に入れ、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の種類に応じた例えば585(℃)程度の焼成温度で加熱処理を施す。図8(f)は加熱処理中の状態を示している。
【0047】
上記の加熱処理過程において、厚膜印刷層100〜108は、その焼結温度が例えば585(℃)程度であるため、その樹脂成分が焼失させられると共に誘電体材料、導体材料、およびガラスフリットが焼結させられ、誘電体層38、40,42および導体層44、46の積層体すなわちシート部材20の構成部分である厚膜積層体が生成される。図8(g)は、この状態を示している。このとき、アルミニウム粉末を導体成分として含む厚膜導体ペースト98は、上述したように残存率が大きいことから面方向における収縮量が極めて小さいので、基板80上に固定されていることと相俟って、格子状の誘電体層38、40,42および縞状の導体層44、46のそれぞれの中心間隔延いてはトータルピッチは、厚膜印刷層100〜108のそれから殆ど変化しない。なお、生成された厚膜の断面を観察したところ、アルミニウム粉末は殆ど溶けておらず、多孔質な組織が形成されていることが確かめられた。
【0048】
一方、厚膜誘電体ペースト96は例えば70(%)程度の焼成残存率を有して大きな収縮率を有するものであるが、上記の焼成過程においては、面方向における収縮が厚膜導体ペースト98によって妨げられるため、専ら厚み方向に収縮することで緻密化させられる。本実施例においては、このようにして、多孔質な導体層44,46と緻密質な誘電体層38,40,42とが交互に積層された厚膜シート20が得られるのである。上述した説明から明らかなように、本実施例においては、誘電体印刷層100が第1ペースト膜に、導体印刷層102が第2ペースト膜に、誘電体印刷層104が第3ペースト膜に、導体印刷層106が第4ペースト膜に、誘電体印刷層108が第5ペースト膜にそれぞれ相当する。
【0049】
また、前記の剥離層86は、前述したようにその無機成分粒子が2000(℃)以上の軟化点を備えたものであるため、樹脂成分は焼失させられるが高融点粒子(ガラス粉末およびセラミック・フィラー)は焼結させられない。そのため、加熱処理の進行に伴って樹脂成分が焼失させられると、剥離層86は高融点粒子114(図9参照)のみから成る粒子層116となる。
【0050】
図9は、図8(g)の右端の一部を拡大して、上記の加熱処理における焼結の進行状態を模式的に示した図である。剥離層86の樹脂成分が焼失させられて生成された粒子層116は、単に高融点粒子114が積み重なっただけの層であり、その高融点粒子114は互いに拘束されていない。そのため、図に一点鎖線で示される焼成前の端部位置から厚膜印刷層100〜108が収縮するときには、その高融点粒子114がコロの如き作用をする。これにより、厚膜印刷層100〜108の下面側でも基板80との間にその収縮を妨げる力が作用しないので、上面側と同様に収縮させられることから、収縮量の相違に起因する密度差や反り等は何ら生じていない。低収縮率の導体印刷層102,106は、このように基板80上に印刷積層された厚膜が比較的自由に収縮させられることから、却って寸法精度や形状精度の確保が困難になることを鑑みて、低収縮材料が選択されているのである。
【0051】
なお、本実施例においては、厚膜印刷層100〜108の焼結が開始するときには、上述したように粒子層116の作用によって基板80はその焼成収縮を何ら妨げない。したがって、基板80の熱膨張は生成される厚膜の品質に実質的に影響しない。なお、基板80を繰り返し使用する場合や熱処理温度が高くなる場合には、歪み点の一層高い耐熱性ガラス(例えば、熱膨張係数が32×10−7(/℃)程度で軟化点が820(℃)程度の硼珪酸ガラスや、熱膨張係数が5×10−7(/℃)程度で軟化点が1580(℃)程度の石英ガラス等)を用いることができる。この場合にも、誘電体材料粉末等の結合力が小さい温度範囲では基板80の熱膨張量が極めて小さくなるので、その熱膨張が生成される厚膜の品質に影響することはない。
【0052】
図6に戻って、剥離工程118では、生成された厚膜積層体を基板80から剥離する。それらの間に介在させられている粒子層116は高融点粒子114が単に積み重なっただけであるので、上記剥離処理は何らの薬品や装置を用いることなく容易に行い得る。このとき、積層体の裏面には高融点粒子114が一層程度の厚みで付着し得るが、この付着粒子は、必要に応じて粘着テープやエアブロー等を用いて除去する。なお、厚膜が剥離された基板80は、前述したように前記の焼成温度では変形および変質し難いものであるため、同様な用途に繰り返し用いられる。
【0053】
次いで、誘電体ペースト塗布工程120においては、剥離した積層体をディッピング槽122内に蓄えられた誘電体ペースト124中にディッピングすることにより、全外周面に誘電体ペースト124が塗布される。図8(h)は、この段階を示している。この誘電体ペースト124は、例えば、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO−TiO2系或いはこれらを組み合わせた系等のガラス粉末およびPVA等の樹脂が水等の溶剤中に分散させられたものであり、前記の厚膜誘電体ペースト96に比較して低粘度に調製されている。なお、上記のガラス粉末は鉛を含まない軟化点が630(℃)程度以上のものも使用可能である。これは、前記の厚膜誘電体ペースト96に含まれるものの軟化点と同程度かそれよりも高いものである。また、低粘度に調製されたペーストを用いるのは、塗布の際に気泡が巻き込まれ延いては焼成後に欠陥の残ることを防止するためであり、積層体は、例えば水平な向きで金網126等に載せられた状態で誘電体ペースト124中に静かに沈められ、且つ取り出される。これにより、厚膜積層体が誘電体ペースト膜125で覆われるが、例えば余剰の誘電体ペースト24を拭き取る等の処置が施されることにより、図10に示されるように、誘電体ペースト膜125が専ら積層体の側面(すなわち格子の内壁面)だけに付着させられ、上側誘電体層38の上面および下側誘電体層40の下面は略露出させられた状態となっている。本実施例においては、この誘電体ペースト膜125が第6ペースト膜に相当する。
【0054】
続く焼成工程128では、ディッピング槽122から取り出され且つ十分に乾燥させられた積層体が焼成炉内に投入され、誘電体ペースト膜125に含まれるガラス粉末の種類に応じて定められる例えば550〜580(℃)程度の所定温度、例えば550(℃)で加熱処理(焼成処理)を施される。これにより、誘電体ペースト膜125から前記の誘電体皮膜48が生成される。そのため、上述したように一部が露出した状態で誘電体ペースト膜125が形成されていることから、前記の図4に示されるような断面形状で誘電体皮膜48が設けられるのである。図8(i)は、ディッピングによる塗布後から焼成後までの何れかの段階を示している。この焼成温度は、例えば、ガラス粉末が十分に軟化して緻密な誘電体層(誘電体皮膜48)が得られるように、ガラス粉末の軟化点に対して十分に高い温度に設定される。このため、このようにして形成された誘電体皮膜48は、ガラス粉末相互の粒界に起因する空隙等が殆ど無く、高い耐電圧を有するものとなる。本実施例においては、これら誘電体ペースト塗布工程120および焼成工程128から被覆工程が構成されている。また、本実施例において、一回のディッピングおよび焼成処理で形成される誘電体層(皮膜)の厚さ寸法は10(μm)程度であるので、前述した20(μm)の厚さ寸法を得るために被覆工程は2回繰り返される。
【0055】
上記の焼成処理の際に、温度上昇に伴って、誘電体ペースト膜125中のガラス粉末が軟化させられ延いてはその粘性が十分に低下させられると、多孔質の導体層44,46にそのガラスが染み込むことになる。このとき、本実施例においては、その導体層44,46が緻密質の誘電体層38,40,42に挟まれ且つその膜厚が十分に薄いことから、そのガラスの染み込みが抑制される。そのため、誘電体皮膜48の特に外縁部においてガラス成分の不足による固着力低下が生じ、延いてはその外延部が厚膜積層体から剥離することが抑制される。導体層44,46の厚さ寸法や中間誘電体層42の厚さ寸法は、このようなガラスの染み込みを可及的に抑制するという観点からも、前者が比較的薄く且つ後者が比較的厚い方が好ましいことから、前述したような厚さ寸法にそれぞれ定められているのである。前記の中間誘電体層42の膜厚の下限値は、このような理由で定められているものでもある。また、一般的な厚膜スクリーン印刷プロセスで著しく厚いペースト膜を得ることは困難であるため、前記の膜厚の上限値は、このような工程上の限界で実質的に決められている。
【0056】
そして、保護膜形成工程130において、上記の誘電体皮膜48の表面に例えばディッピング処理および焼成処理により、或いは電子ビーム法やスパッタ等の薄膜プロセスにより、前記の保護膜50が所望の厚さ寸法で略全面に設けられることにより、前記のシート部材20が得られる。なお、保護膜50は、前述したように薄い膜であるので、ディッピング等の厚膜プロセスでは一様な膜を形成することが比較的困難である。しかしながら、本実施例においては略一様な膜厚で形成される誘電体被覆48で覆われた放電面56,56間で対向放電させることから、保護膜50の表面形状の如何に拘わらず放電集中は生じ難い。したがって、面放電構造を採る場合ほどの一様性は保護膜50に要求されないのである。また、保護膜50は光の射出経路上に存在しないので、その透明性も要求されない。
【0057】
ここで、本実施例においては、厚膜誘電体ペースト96および厚膜導体ペースト98の585(℃)程度の焼結温度よりも高い融点を有する高融点粒子114を含む剥離層86上に誘電体印刷層100,104、108および導体印刷層102、106を積層形成した後、それらの焼結温度で加熱処理を施すことにより全体として格子状を成す厚膜積層体が生成され、これを基板表面82から剥離して誘電体ペースト124で覆い、更に550(℃)程度のその焼結温度で加熱処理を施すことにより、厚膜積層体が誘電体皮膜48で覆われたシート部材20(厚膜シート電極)が得られる。そのため、585(℃)では焼結させられない剥離層86は、樹脂が焼失させられることにより高融点粒子114のみが並ぶ粒子層116となることから、生成されたシート部材20は基板80に固着されないため、その表面82から容易に剥離して背面板18に固定するだけで維持電極として用いることができる。したがって、電極形成時の熱処理に起因する基板歪み等が好適に抑制される。
【0058】
このとき、導体印刷層102、106は、アルミニウム粉末を導体成分として含むことから多孔質膜に生成されるものであることからその焼成収縮率が小さいので、厚膜積層体全体の焼成収縮率はこれら導体印刷層102,104によって律せられて小さくなる。そのため、収縮に伴う寸法精度および形状精度の低下が抑制される。一方、厚膜積層体全体の機械的強度は、相対的に緻密な誘電体層38等で確保されるので、多孔質の導体層44,46で収縮を抑制することに伴って機械的強度が不足することはない。また、露出させられている多孔質の導体層44,46の側面は誘電体皮膜48で覆われることから、その導体層44,46の空隙に吸着された気体分子等がPDP10の使用中に放電空間24内に放出されて雰囲気を乱すことや、導体の電気的短絡が生じること等が好適に抑制される。更に、導体層44,46の層間には緻密質の中間誘電体層42が備えられるため、誘電体皮膜48の焼成時にそのガラス成分が導体層44,46に染み込むことが好適に抑制されるので、その染み込みに起因する誘電体皮膜48の剥離(図1参照)が抑制され高い固着強度が得られる。
【0059】
また、本実施例においては、導体層44、46間に設けられた中間誘電体層42が、それらの積層範囲の下端から上端までの距離の7/12程度の厚さ寸法を備えたものであり、それら導体層44,46を構成する帯状厚膜導体52が上下に重なるもの相互に電気的に接続されているため、多孔質な導体層44,46へのガラスの染み込み抑制効果延いては誘電体皮膜48の剥離抑制効果を好適に享受しつつ、放電面が十分な大きさで確保されている。
【0060】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0061】
例えば、実施例においては、AC型PDP10の電極を構成するためのシート部材20およびその製造方法に本発明が適用された場合について説明したが、多孔質の厚膜層を含む複数の厚膜が積層された厚膜積層体の表面が厚膜から成る被覆層で覆われた厚膜シートであれば、多孔質層が導体層44,46で構成されたものに限られず、導体層と誘電体層との積層構成が反対になったものや、全体が導体層または誘電体層で構成されたような厚膜シートにも本発明は同様に適用される。
【0062】
また、実施例においては、多孔質の導体層44,46間に備えられる緻密層が厚膜誘電体から成る中間誘電体層42で構成されていたが、導体層44,46はシート部材20内において或いは外部において相互に接続されるものであるので、これに代えて厚膜導体から成る緻密層を設けても良い。このような導体材料から成る緻密質層としては、例えば、金、銀、銅、或いは銀−パラジウム(Ag−Pd)等の厚膜導体が挙げられる。
【0063】
また、実施例においては、シート部材20の導体層44の全体が焼成収縮の小さい導体で構成されていたが、その厚み方向の一部だけ、或いは面方向の一部だけが焼成収縮の小さい材料で構成されていてもよい。同様に、誘電体層38,40を焼成収縮の小さい材料で構成する場合にも、その全体に限られず、厚み方向や面方向の一部だけを焼成収縮の小さい材料で構成してもよい。要するに、厚み方向の中間に低収縮の層が設けられていれば、その構成材料の如何に拘わらず本発明の効果を享受できる。
【0064】
また、実施例においては、アルミニウム粉末を導体成分として用いることによって導体層44、46に収縮抑制機能を与えていたが、必要な導電率を確保できるのであれば、他の導体材料を用い、或いは、無機フィラーを添加することで導体層44、46に収縮抑制機能を与えることもできる。例えば、導体材料としては、Ni、Cu等を用い得る。
【0065】
また、実施例においては、厚膜形成のための第1温度が585(℃)程度に、誘電体被膜形成のための第2温度が550(℃)程度にそれぞれ設定されていたが、第1温度および第2温度は、それぞれ厚膜ペーストの焼成温度に応じて定められるものであり、同一の温度であっても、第2温度の方が高温であっても差し支えない。
【0066】
また、シート部材20の各部の寸法や構成材料などは、実施例で示したものに限られず、その目的に応じて適宜変更される。
【0067】
また、実施例においては、厚膜スクリーン印刷法を用いて中間誘電体層42を構成していたが、感光性ペーストを用いたフォト法、サンド・ブラスト法等の他の厚膜形成技術を用いることもできる。また、別に例えば1(mm)を越えるような厚い膜を作成しておき、これを下側誘電体層40を構成するための印刷膜100の上に重ねる等の方法を用いることも可能であり、その場合には、工法上の膜厚制限は実質的に無くなる。
【0068】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆層の剥離を説明する図である。
【図2】本発明の厚膜シートが用いられたカラーPDPを一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図3】図2のPDPに備えられたシート部材の構成を説明する図である。
【図4】隔壁の長手方向に沿った断面において、シート部材の断面構造を説明する図である。
【図5】図2のPDPの製造方法を説明する工程図である。
【図6】シート部材の製造方法を説明する工程図である。
【図7】(a)〜(e)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示す図である。
【図8】(f)〜(i)は、図6の製造工程の要部段階における基板および厚膜の状態を示すための図7(e)に続く図である。
【図9】図6の焼成工程における収縮挙動を説明するための図である。
【図10】図6の誘電体ペースト塗布工程の後の誘電体ペースト膜の生成状態を示す断面図である。
【符号の説明】
20:シート部材
42:中間誘電体層
44,46:導体層
48:誘電体皮膜
86:剥離層
96:厚膜誘電体ペースト
98:厚膜導体ペースト
100,104、108:誘電体印刷層
102、106:導体印刷層
124:誘電体ペースト
Claims (4)
- 平面形状が格子状を成す第1厚膜層と、
その第1厚膜層上に積層された第2厚膜層と、
前記格子の内壁面にそれぞれ側面が露出させられた状態で前記第1厚膜層および前記第2厚膜層間に備えられ且つそれらよりも多孔質の厚膜から成る相互に積層された第1多孔質層および第2多孔質層と、
前記格子の内壁面に側面が露出させられた状態で前記第1多孔質層および第2多孔質層間に積層され且つそれらよりも緻密質の厚膜から成る緻密質層と、
前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、前記第1多孔質層、前記第2多孔質層、および前記緻密質層の積層体の表面に、それら第1多孔質層および第2多孔質層の側面を覆って設けられた緻密質の厚膜から成る被覆層と
を含み、基板に固着されていないことを特徴とする厚膜シート。 - 前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、および前記被覆層は厚膜誘電体から成り、且つ、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は厚膜導体から成るものであり、
透光性を有する第1平板と、その第1平板から所定距離隔てて内面が相互に向かい合うように平行に配置された第2平板と、それら第1平板および第2平板間に一方向に沿って形成され且つ各々がその一方向に連なる複数の発光区画に区分される複数本の放電空間と、それら複数の発光区画の各々でガス放電を発生させて発光させるための複数対の表示電極とを備えたAC型ガス放電表示装置を構成するために前記第1平板および前記第2平板間に配置され、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層でそれら複数対の表示電極を構成するものである請求項2の厚膜シート。 - 前記緻密質層は、前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の積層範囲の下端から上端までの距離の1/12乃至9/10の範囲内の厚さ寸法を備えたものであり、
前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は、一方向に沿って伸びる複数本の帯状厚膜導体から成り且つ上下に重なるものが相互に電気的に接続されたものである請求項2の厚膜シート。 - 所定の第1温度よりも高い融点を有する粒子が樹脂で結合されて成る高融点粒子層で構成された膜形成面を有する支持体を用意する工程と、
それぞれ前記第1温度で焼結させられる厚膜材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る第1ペースト膜、第2ペースト膜、第3ペースト膜、第4ペースト膜、第5ペースト膜を、その第1ペースト膜が格子状を成し、且つそれら第2ペースト膜、第3ペースト膜、および第4ペースト膜の側面がその格子の内壁面にそれぞれ露出した所定の平面形状で順次に積層形成する工程と、
前記第1ペースト膜乃至前記第5ペースト膜が積層された支持体を前記第1温度で加熱処理することにより、前記高融点粒子層を焼結させることなくそれら第1ペースト膜乃至第5ペースト膜を焼結させて、それら第1ペースト膜および第5ペースト膜から第1厚膜層および第2厚膜層を、前記第2ペースト膜および第4ペースト膜からそれら第1厚膜層および第2厚膜層よりも多孔質の第1多孔質層および第2多孔質層を、前記第3ペースト膜からそれら第1多孔質層および第2多孔質層よりも緻密質の緻密質層をそれぞれ生成する工程と、
前記第1厚膜層、前記第2厚膜層、前記第1多孔質層、前記第2多孔質層、および前記緻密質層が積層された厚膜積層体を前記膜形成面から剥離する工程と、
所定の厚膜材料の構成粒子が樹脂で結合されて成る第6ペースト膜で前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の側面を覆う工程と、
前記第6ペースト膜を塗布した前記厚膜積層体を所定の第2温度で加熱処理することにより、その第6ペースト膜から被覆層を生成する工程と
を、含むことを特徴とする厚膜シートの製造方法。
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JP2003097498A JP2004303670A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 厚膜シートおよびその製造方法 |
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JP2003097498A JP2004303670A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 厚膜シートおよびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100768222B1 (ko) * | 2006-04-11 | 2007-10-18 | 삼성에스디아이 주식회사 | 플라즈마 디스플레이 패널과, 이의 제조 방법 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003097498A patent/JP2004303670A/ja active Pending
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