JPWO2010137225A1 - 結晶性化合物、その製造方法及びプラズマディスプレイパネル - Google Patents

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Abstract

実用的な製造条件下で、二次電子放出係数の優れた材料を提供することによって、PDPを低電圧で駆動できるようにすることを目的とする。そのために、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物において、その表面近傍におけるCa、Sr又はBaの量を減少させる処理を施したものを、保護層材料として用い、プラズマディスプレイパネルを構成する。

Description

本発明は、結晶性化合物及びこれを用いたプラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレイパネル(以下PDPと略す)は、薄型ディスプレイパネルの中で、大型化が容易、高速表示が可能、低コストといった特徴から、実用化され、急速に普及している。
現在実用化されている一般的なPDPの構造は、前面基板及び背面基板となる2枚のガラス基板を対向配置し、それぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、これらの電極を被覆するように低融点ガラス等の誘電体層を設けている。そして、背面基板の誘電体層上には蛍光体層を設け、前面基板の誘電体層上には、誘電体層をイオン衝撃から保護するとともに二次電子放出性を向上させるためにMgOからなる保護層が設けられている。そして2枚の基板間には、Ne、Xe等の不活性ガスを主体とするガスを封入している。
このようなPDPは、電極間に電圧を印加して放電を発生させて蛍光体を発光させることによって表示を行う。
PDPにおいて、従来から発光効率を高めることが強く要求されており、その手段として、誘電体層を低誘電率化する方法や、放電ガスのXe分圧を上げる方法が知られている。
しかしながら、このような手段を用いると、放電開始電圧や維持電圧が上昇してしまう問題点があった。
また、近年のディスプレイの高精細化に伴い、セルサイズを微細化すると、放電電圧がさらに上昇してしまうという問題点もあった。
そして、このような課題に対して、二次電子放出係数の高い材料を保護層に用いることによって、放電開始電圧や維持電圧を下げる事が可能であって、高効率化並びに耐圧の低い素子を用いる事による低コスト化を実現できることが知られている。
例えば、特許文献1,2においては、MgOの代わりに、同じアルカリ土類金属酸化物であるが、より二次電子放出係数の高い、CaO,SrO,BaOを用いたり、これら化合物どうしの固溶体を用いる事が検討されている。
また、アルカリ土類金属酸化物を、他の金属酸化物との混合化合物とすることによって安定化し、この混合化合物で保護膜を形成する方法も報告されている。例えば特許文献3では、BaTiO3、BaZrO3、BaSnO3、BaNb26、BaFe1219等で保護膜を形成することが報告されている。
特開昭52−63663号公報 特開2007−95436号公報 特開2004−273158号公報
しかしながら、CaO、SrO、BaOなどは、MgOに比べて化学的に不安定であって、空気中の炭酸ガスと容易に反応して炭酸化物に変質してしまう。
また、他の金属酸化物と化合物を形成して安定化させた場合、化合物を形成していないものと比べれば、遥かに安定化するが、それでも化合物粒子の最外表面に露出しているアルカリ土類金属原子が、空気中の炭酸ガスにより炭酸化され、さらにPDPの製造プロセスで各種の熱処理等を経るため、この最表面においてより炭酸化が進行してしまう。
このように、化合物粒子の表面に炭酸化物が形成されると、二次電子放出係数が低下して、期待どおりに放電開始電圧や維持電圧を低減できなくなる。
こうした化学反応による二次電子放出性能の劣化は、実験室レベルで少量を作製する場合には、作業の雰囲気ガスを制御するといった方法で回避可能である。しかしながら、製造工場では、全ての工程の雰囲気を管理するのは困難であり、また可能であっても高コスト化につながる。
従って、製造工場においては、駆動電圧を低減するために、非常に長いエージング時間が必要となってしまい、実用的でないといった問題がある。
さらに、MgO以外の材料で保護膜を形成した場合、イオン衝撃耐性が低いために、PDP駆動時に放電ガスによってスパッタリングされる量が大きくなり、保護膜の寿命が短くなるという問題もある。
このような理由で、従来から二次電子放出係数の高い材料を使用することが検討されてきたにもかかわらず、未だに実用化されている保護層材料はMgOのみである。
本発明は、上記課題に鑑み、実用的な製造条件下で、二次電子放出係数の優れた材料を提供することによって、PDPを低電圧で駆動できるようにし、PDPの高効率化を実現することを目的とする。
本発明にかかる材料は、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物からなり、その表面近傍におけるSnに対するアルカリ土類の量(Ca、Sr,Baの合計量)を減少させる処理を施すこととした。この場合、結晶性酸化物表面における、Ca、Sr、Baの合計量の減量率は、5%以上50%以下である事が望ましい。
上記の結晶性酸化物の表面近傍におけるCa、Sr、Baの量を減少させる処理としては、結晶性酸化物の表面を極性溶媒で洗浄すること、特に水を主成分とする溶剤で洗浄することが好ましい。
また、本発明にかかる材料は、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性化合物であって、表面近傍におけるSnの量に対するアルカリ土類のモル比率が1未満である。
そして、上記本発明の電子放出材料をPDPにおける放電空間に臨む領域に配設した。
電子放出材料を配設する形態としては、MgO保護層の上に、粉末粒子の状態で分散配置することが望ましい。
上記本発明による電子放出材料は、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物からなるので、化学的に安定化され、基本的に2次電子放出係数が高い。また、その最外表面におけるCa、Sr、Ba、あるいはこれらの合計量を減少させる処理が施されているので、処理前の結晶性酸化物の表面に炭酸化物が存在していても、当該処理に伴って炭酸化物の量が低減され、また、処理後の結晶性酸化物は、表面の炭酸化が進行しにくい。
従って、この電子放出材料を、PDPにおける放電空間に臨む領域に配設することによって、実用的な製造条件下で、低電圧で駆動できるPDPを提供できる。
また、従来どおりイオン衝撃耐性の高いMgO保護層を形成して、そのMgO保護層の表面に、上記結晶性酸化物からなる電子放出材料を分散配置すれば、駆動電圧が低く、且つ長寿命のPDPを提供できる。
本発明の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図1に示したPDPの縦断面図である。 本発明の別の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図3に示したPDPの縦断面図である。 本発明の実施例にかかる電子放出材料のX線回折図である。 実施例にかかる電子放出材料のXPSによる価電子帯スペクトル測定結果である。 実施例にかかる電子放出材料のXPSによるC1sスペクトル測定結果である。
まず、本発明にかかるPDPに用いる電子放出性材料について説明する。
(電子放出性材料の組成)
本発明者は、2次電子放出効率は高いが化学的に不安定なCaO、SrO、BaOの原料と各種の金属、B、Al、Si、P、Ga、Ge、Sn、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W等の酸化物を反応させて、非常に多種にわたる化合物を合成した。そして、その化学的安定性と2次電子放出能を詳細に検討した。その結果、各種化合物の中で、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれら2種類以上の固溶体からなる結晶性酸化物は、他の化合物と比べて、2次電子放出効率をあまり低下させずに化学的な安定性を高めることが出来ること、そして、MgOを用いる場合よりも駆動電圧を低下できることを確認した。
しかしながら、これらの結晶性酸化物はその最外表面が炭酸化しているため、実際にPDPを作製する場合、長時間のエージング処理を行うことによって結晶性酸化物表面の炭酸ガスを除去する必要があり、実用性は低い。そこで発明者は、この表面炭酸化を防止する手段について種々検討を加えて、本発明に到った。
すなわち、結晶性酸化物の各粒子表面のアルカリ土類量を減量する処理を施すことによって、結晶性酸化物が化学的に安定化され、2次電子放出係数の高く、かつ表面の炭酸化がより進行しにくいものになることがわかった。
ここで、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3あるいはこれら相互の固溶体において、アルカリ土類のサイトを3価金属であるLaで部分置換したり、Snのサイトを3価金属であるInやY、5価金属であるNbで部分置換したり、OをFで部分置換しても良い。この際、より高価数の金属で置換(アルカリ土類のLaによる置換、SnのNb置換など)すると、より安定性が高まるが2次電子放出効率は若干低下する。逆により低価数の金属で置換する(SnのIn置換など)と、安定性は若干低下するが、2次電子放出効率は改善される。よって、これらの置換により、その特性を微調整する事が可能となる。特に、SnサイトをInで部分置換することは、2次電子放出効率を高める点で効果的である。またSnサイトを、CeやZrによって部分置換することも可能である。
ただし、こうした置換組成においても、あくまで主成分はアルカリ土類とSnとOである必要がある。従って、SnサイトをInによって置換する場合のように例え全域置換可能であったとしても、その置換量は50%未満である必要が有り、より望ましくは20%以下、さらには10%以下が良い。
なお、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれらの固溶体において、洗浄処理前において、粒子内のアルカリ土類の合計量とSnとのモル比(Ca+Sr+Ba)/Snは基本的に1であるが、上記のように表面近傍におけるアルカリ土類の量を低減させる処理を行うことによって、粒子表面近傍におけるアルカリ土類の合計量とSnとのモル比(Ca+Sr+Ba)/Snは低減されて1未満となる。
なお、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれらの固溶体を形成する上で、粒子表面近傍におけるアルカリ土類の合計量とSnの配合モル比(Ca+Sr+Ba)/Snは、0.995以下とする事が、表面安定化にとって望ましい。これは、当該比率が1.000の場合でも、組成の不均一性により、アルカリ土類酸化物原料とSnO2の反応過程で、Ba3Sn27相等の、アルカリ土類が多い組成が一旦生成すると、これらの相が粒子表面を覆ってしまい、雰囲気調整を行わない条件下では、さらにBaCO3が分離析出するなど、表面が不安定化し、2次電子放出係数が低下してしまうためと考えられる。
なお、アルカリ土類サイトやSnのサイトを前述した部分置換を行っている場合は、それら置換元素を合わせた合計の比率を0.995以下とすれば良い。また、この比率をさらに低下させると、ある程度以下ではSnO2が余剰となって析出するが、このような状態では、前述したアルカリ土類の多い組成の生成は妨げられるため、SnO2との混合物となっているのも良い。
(結晶性化合物の合成方法)
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物を合成する方法としては、その形態として、固相法、液相法、気相法が挙げられる。
固相法は、それぞれの金属を含む原料粉末(金属酸化物、金属炭酸塩等)を混合し、ある程度以上の温度で熱処理して反応させる方法である。
液相法は、それぞれの金属を含む溶液を作り、これより固相を沈殿させたり、あるいは基板上にこの溶液を塗布後、乾燥し、ある程度以上の温度で熱処理等を行って固相とする方法である。気相法は、蒸着、スパッタリング、CVD等の方法によって膜状の固相を得る方法である。
いずれの方法を用いる事も不可能ではないが、粉末形態とするのであれば、通常は、比較的製造コストが低く、大量に製造する事も容易な固相法を用いれば良い。
(結晶性酸化物の表面近傍におけるアルカリ土類の減量)
上記の結晶性酸化物の表面近傍におけるアルカリ土類量を減量する処置を施す。この処理は、結晶性酸化物の各粒子に対して、その表面近傍の領域において、Snの量に対するアルカリ土類の量(Ca、Sr、Baの量、あるいはこれらの合計量)の比率を小さくする処理である。ここで粒子の「表面近傍」は、粒子をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)で測定するときに測定される範囲を指す。
結晶性酸化物の表面近傍におけるアルカリ土類量を減量させる具体的方法として、スパッタリング等の方法を用いても良いが、アルカリ土類が水をはじめとする極性溶媒(水の他に、例えば水とアルコールの混合溶媒)に溶解するため、通常は、水存在下で洗浄処理を行うことが容易であり実用的である。ここで、洗浄水として、単純に純水を用いても良いし、アルカリ土類の溶出速度、溶出量を制御する等の目的で、酸溶液を用いたり、アルカリ溶液を用いても良く、また有機溶媒との混合溶媒を用いても良い。ただし、あまり強い酸で洗浄を行うと、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3の結晶性酸化物自体が溶解してしまうため、好ましくない。
洗浄処理の目的は、粉末粒子表面近傍のアルカリ土類やその炭酸化物を除去する事にある。粒子表面近傍の炭酸化物がどの程度除去されたかについては、表面分析的手法で評価する事が出来る。例えばXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)が、有効に用いられる。XPSは、試料表面にX線を照射して放出される電子のスペクトルを測定するものであって、その分析深さは、通常数原子〜十数原子層とされている。上記の「表面近傍」は、この分析深さの範囲に相当し、通常、粒子の最表面から粒子内方に向かって深さ20Å以内の範囲である。
洗浄処理前と洗浄処理後において、XPSにおけるアルカリ土類のピーク強度及び炭酸化物起因のピーク強度を測定して、表面近傍のアルカリ土類量や炭酸化物起因のカーボン量の低下を求めれば、粒子表面からのアルカリ土類の減量率、並びに炭酸化物起因のカーボンが除去された程度を評価できる。
粒子表面近傍からのアルカリ土類の減量率(%)
=[1−(洗浄処理前のピーク強度/洗浄処理前のピーク強度)]×100
粒子表面近傍におけるアルカリ土類の減量率は、5%以上50%以下であることが好ましい。その理由は、減量率5%未満では炭酸化防止の効果が弱く、50%を超えると、表面近傍のアルカリ土類量が減少し過ぎて、駆動電圧低減効果が弱くなるためである。
また本発明者の検討によれば、XPSにより、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸化物起因のカーボン量を測定比較すれば、PDPの放電電圧を低下出来る材料の選別が、ある程度可能である事を見出した。
なぜならば、XPSでは、PDPにおける2次電子放出と比較的近い、試料の表面近傍の情報が得られるが、2次電子放出係数は、一般にバンドギャップ幅と電子親和力の和が小さいほど大きくなるとされており、価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあるほどバンドギャップ幅は小さくなるので、2次電子放出係数は大きくなる。
一方、試料表面の炭酸化物起因のカーボン量は、アルカリ土類金属を含む化合物において、化学的安定性の指標である。試料が化学的に不安定であれば、空気中の炭酸ガスと反応して、表面カーボン量は増加し、この量がある程度以上多いと、粒子表面が、BaCO3等の、2次電子放出係数の低いアルカリ土類炭酸塩で完全に覆われてしまう事になり、例え価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあっても、高い2次電子放出係数は得られない。
よって、XPSにより、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸塩起因のカーボン量の両方を測定して比較することによって、価電子帯端のエネルギー位置が低く、且つカーボン量が少ない材料を選択すれば、PDPの放電電圧を低下するのに適した材料を、ある程度選定できる。
また本発明者は、洗浄処理の程度を観察するもう一つの方法として、比表面積の変化が有効である事も見出した。これは、粉末表面のアルカリ土類金属が選択的に溶出し、錫は残留するために、粉末表面に原子レベルの凹凸が生じ、結果として、洗浄が進むほど比表面積が増加するためと考えられる。
(電子放出性材料を配設する位置および形態)
表面近傍のアルカリ土類を減少させる処理を行った結晶性酸化物を、PDPのどの部分に配設するかについては、一般的には、前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成すれば良い。しかしながら、他の部位、例えば蛍光体層やリブ表面等の位置に形成したり、蛍光体に混合したりしても、放電空間に面した位置に存在すれば、形成しないものに比べて、駆動電圧低下の効果は認められる。
次に、これら結晶性酸化物を配設する形態については、例えば前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成する場合、誘電体層の上に通常保護層として形成されるMgO膜の代わりに、これら結晶性酸化物の膜を形成したり、これら結晶性酸化物の粉末を散布する方法、あるいは、MgO膜を形成した上に、これら結晶性酸化物の膜を形成したり、これら結晶性酸化物の粉末を散布する方法をとれば良い。
ただし、結晶性酸化物も高融点で安定な化合物ではあるが、上記結晶性酸化物を保護層の代わりに形成した場合、MgO膜と比べるとスパッタリング耐性はやや劣り、透明性もやや劣る。また粉末散布の場合は、さらに透明性低下による輝度劣化が問題となることもある。従って、保護層として従来どおりMgO膜を設け、その上に、透過率が問題とならないレベルで結晶性酸化物の粉末を分散散布する方法が望ましい。その被覆率については、透過率が問題とならないレベルとして被覆率20%以下が良い。
結晶性酸化物を粉末で配設する場合、その粒子径は、0.1μm〜10μm程度の範囲内で、セルサイズ等に合わせて選択すれば良いが、結晶性酸化物の粉末をMgO膜上に分散配置する場合、MgO膜上で粉末の移動や落下が生じないように、3μm以下、より望ましくは1μm以下が良い。
このような構成にすると、高融点のMgO膜が保護層しての役割を果たすと共に、上記
表面処理を行った結晶性酸化物が2次電子放出の役割を果たし、且つ当該結晶性酸化物の被覆率が低いために輝度の低下も少ない。従って、低電圧で駆動でき、且つ長寿命のPDPを得る事が出来る。
なお、配設する表面処理を行った結晶性酸化物の種類は1種類とは限らない。すなわち、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物(表面処理を行ったもの)を2種類以上ブレンドして、誘電体層の上、あるいはMgO膜の上に配設してもよい。
ところで、最近になって、PDPの高精細化に伴う放電遅れの問題を解決するために、初期の電子放出効率が良い、結晶性のMgO粉末を、MgO保護層の上に分散散布する事が行われており、分散する方法として、MgO粉末に有機成分を混合してペースト状にしてMgO保護層上に印刷した後、適当な温度で熱処理して、有機成分を除去するといった方法が採られている。
従って、これと同じプロセスで、上記表面処理を行った結晶性酸化物粉末と、結晶性のMgO粉末とを、共にMgO保護層上に分散散布して、適当な温度で熱処理して有機成分を除去してもよい。
この場合、MgO粉末のペーストと、表面処理を行った結晶性酸化物粉末のペーストを作製し、その2種類のペーストをそれぞれ印刷しても良いが、表面処理を行った結晶性酸化物粉末と結晶性のMgO粉末とを含むペーストを作製して、MgO保護層上に印刷すれば、一回のプロセスで両者とも分散散布できるため、より望ましい。
このように、表面処理を行った結晶性酸化物粉末と、結晶性のMgO粉末とを、共にMgO保護層の上に分散散布することによって、保護と低電圧化と放電遅れ解消という3つの機能を、MgO膜、表面処理を行った結晶性酸化物、結晶性MgO粉末が、それぞれ果たすことになる。
すなわち、MgO膜だけでこれら3つの機能を担わせる場合と比べて、上記のようにMgO膜と、表面処理を行った結晶性酸化物粉末と、結晶性のMgO粉末とで、3つの機能を分担させて担わせれば、各機能を向上させるのが容易である。従って、PDPにおいて、この3つの機能を向上させるのに適している。
(化合物の表記方法について)
本明細書においては、結晶性酸化物を、例えばBaSnO3のように記載している。
しかしながら、Snは、Sn4+以外に、その一部がSn2+となりやすい元素であり、その場合には酸素欠陥が生じる。従って、より正確にはBaSnO3-δと記載すべきであるが、このδは、製造条件等によって変動し、必ずしも一定値とはならない。
よって便宜上BaSnO3のように記載しているが、このような表記は、酸素欠陥の存在を否定しているものではない。BaSnO3以外の化合物についても同様である。
(PDPの構成)
次に、本発明のPDPの具体例について図を用いて説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかるPDP100の一例を示すものであって、図1は、PDP100の分解斜視図、図2は、当該PDP100の縦断面図(図1、I−I線断面図)である。
図1および2に示すように、PDP100は、前面パネル1と背面パネル8とを有している。前面パネル1と背面パネル8との間には、放電空間14が形成されている。このPDPは、AC面放電型であって、保護層が上述した結晶性酸化物粉末で形成されている以外は従来例にかかるPDPと同様の構成を有する。
前面パネル1は、前面ガラス基板2と、その内側面(放電空間14に臨む面)に形成された透明導電膜3およびバス電極4からなる表示電極5と、表示電極5を覆うように形成された誘電体層6と、誘電体層6上に形成された保護層(電子放出層)7とを備えている。表示電極5は、ITOまたは酸化スズからなる透明導電膜3に、良好な導電性を確保するためAg等からなるバス電極4が積層されて形成されている。
保護層(電子放出層)7は、上述した表面処理した結晶性酸化物で形成されている。
背面パネル8は、背面ガラス基板9と、その片面に形成したアドレス電極10と、アドレス電極10を覆うように形成された誘電体層11と、誘電体層11の上面に設けられた隔壁12と、隔壁12の間に形成された蛍光体層とを備えている。蛍光体層は、赤色蛍光体層13(R)、緑色蛍光体層13(G)および青色蛍光体層13(B)がこの順に配列するように形成されている。
上記蛍光体層を構成する蛍光体としては、例えば、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Eu、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mn、赤色蛍光体としてY23:Euを用いることができる。
前面パネル1および背面パネル8は、表示電極5とアドレス電極10の各々の長手方向が互いに直交し、かつ互いに対向するように配置し、封着部材(図示せず)を用いて接合される。
放電空間14には、He、Xe、Ne等の希ガス成分からなる放電ガスが封入されている。
表示電極5とアドレス電極10は、それぞれ外部の駆動回路(図示せず)と接続され、駆動回路から印加される電圧によって放電空間14で放電が発生し、放電に伴って発生する短波長(波長147nm)の紫外線で蛍光体層13が励起されて可視光を発光する。保護層7に、上述した化合物が使用される。
本発明によるPDPの他の一例を、図3および4に示す。図3は、当該PDP200の分解斜視図である。図4は、当該PDP200の縦断面図(図3、I−I線断面図)である。PDP200は、保護層7がMgOからなり、上述した表面処理された結晶性酸化物からなる電子放出性材料が、当該保護層7上に散布されて電子放出層20が形成されている。
このPDP200においても、電子放出性材料からなる電子放出層20が放電空間14に面しており、駆動電圧を低減する効果を奏する。
なお、本発明において、電子放出性材料を配設する場所は、放電空間に臨む場所であればよく、例えば隔壁上や蛍光体層上などでもよい。また、電子放出性材料が配設されたPDPは、面放放電型に限らず、対向放電型でもよい。また、必ずしも前面板、背面板、及び隔壁を備えたPDPには限られず、電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するPDPであればよい。例えば、内部に蛍光体を配設した放電チューブを複数配列し、各放電チューブ内で放電して発光するタイプのPDPにおいても、放電チューブ内に電子放出性材料を配設することによって、駆動電圧を低減することができる。
(PDPの製造方法)
PDPの作製方法について、ここではまず、上記PDP200のように、保護層7としてMgO膜を形成し、その上に、表面処理した結晶性酸化物からなる電子放出性材料を散布する場合を説明する。
まず、前面板を作製する。平坦な前面ガラス基板の一主面に、複数のライン状の透明電極を形成する。引き続き、透明電極上に銀ペーストを塗布した後、前面ガラス基板全体を加熱することによって、銀ペーストを焼成し、表示電極を形成する。
表示電極を覆うように、前面ガラス基板の上記主面に本発明のPDPにおける誘電体層用ガラスを含むガラスペーストをブレードコーター法によって塗布する。その後、前面ガラス基板全体を90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、次いで、580℃前後の温度で10分間焼成を行う。
誘電体層上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって成膜し、焼成を行い、保護層を形成する。この時の焼成温度は500℃前後である。
MgO層上に、エチルセルロース等のビヒクルに粉末状の本発明の化合物を混合し、ペースト状としたものを印刷法等により塗布し、乾燥し、500℃前後の温度で焼成して、散布層を形成する。
次に背面板を作製する。平坦な背面ガラス基板の一主面に、銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、背面ガラス基板全体を加熱して銀ペーストを焼成することによって、アドレス電極を形成する。
隣り合うアドレス電極の間にガラスペーストを塗布し、背面ガラス基板全体を加熱してガラスペーストを焼成することによって、隔壁を形成する。
隣り合う隔壁同士の間に、R、G、B各色の蛍光体インクを塗布し、背面ガラス基板を約500℃に加熱して上記蛍光体インクを焼成することによって、蛍光体インク内の樹脂成分(バインダー)等を除去して蛍光体層を形成する。
こうして得た前面板と背面板とを封着ガラスを用いて貼り合わせる。この時の温度は500℃前後である。その後、封止された内部を高真空排気した後、希ガスを封入する。以上のようにしてPDPが作製される。
一方、上記PDP100のように、誘電体層6上に、表面処理した結晶性酸化物からなる保護層7を形成する場合には、表面処理した結晶性酸化物粉末をビヒクルや溶媒等と混合して、比較的粉末含有率の高いペースト状とし、これを印刷法等の方法で薄く広げた後、焼成して薄膜状、あるいは厚膜状とすれば良い。
また、表面処理した結晶性酸化物の粉末を誘電体層6上に散布する場合、比較的粉末含有率の低いペーストを、印刷法を用いて散布したり、溶媒に粉末を分散させて散布したり、スピンコーター等を用いて散布すれば良い。
なお、以上説明したPDPの構成および製造方法は一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、実施例として、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体の中から、BaSnO3とSrSnO3を選び、粉末を合成して、これを洗浄して表面のBa量あるいはSr量を減少させる場合について詳細に説明するが、CaSnO3を用いる場合、あるいは、BaSnO3、CaSnO3、SrSnO3から選択する2種類以上の固溶体を用いる場合も、類似する効果が得られる。
[実施例1]
(BaSnO3結晶性酸化物の合成と表面処理)
出発原料として、試薬特級以上のBaCO3およびSnO2を用いた。これらの原料を、BaとSnの原子比が1:1になるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。この粉末を坩堝に入れ、空気中にて1100℃で焼成し、平均粒径0.49μmの焼成粉末を得た(表1のNo.1)。
次に、得られた焼成粉末の一定量を秤量した後、表1に示す各条件(No.2〜6)で、純水、または塩酸水溶液に投入し、一定時間攪拌混合した後、濾過により粉末を分離し、乾燥させた。ここで、表1のNo.2と3は、同じ純水による洗浄であるが、粉末重量に対する水の量がNo.2よりもNo.3の方が多いため、No.3の方がより強い洗浄条件である。また、No.4〜6は塩酸を用いた洗浄であるのでNo2、3よりも強く、No.4〜6の比較では、下へいくほど酸の量が多くなるので、より強い洗浄条件である。すなわち、No.2〜6では、下へいくほど強い洗浄条件となる。
次に表1のNo.6の粉末の一部に対して、再度空気中において1100℃で焼成し、No.7の粉末とした。
比較のため、BaとSnの原子比が0.95:1.00となるようにBaCO3およびSnO2を混合して、空気中で1100℃で焼成した粉末も作製した(表1のNo.8)。
Figure 2010137225
No.1〜8の各粉末に対して、平均粒径の測定、BETによる比表面積測定を行った。その結果を表1に示す。また、表1の試料No.1、2、5、6、7、8について、X線回折(CuKα線使用)を測定した。その結果を図5に示す。
図5の結果より、No.1の試料で認められる回折ピークは、全てペロブスカイト構造をとるBaSnO3のものである。このNo.1を、水洗処理または酸洗浄処理したNo.2、5、6の試料では、最も処理の強いNo.6でも、X線回折においてNo.1と差異が認められない。なお、ここでは示していないが、No.2と5の中間的条件であるNo.3、4についても同様であった。
ところが、No.6を再度焼成したNo.7では、図中の矢印の位置に、弱いピークが現れた。このピーク位置は、Baを減らして合成したNo.8で認められるピーク位置と同じであり、SnO2による回折ピークと同定することが出来る。
一方、再焼成を行っていないNo.1〜6では、このSnO2による回折ピークは認められない。この事は、No.1〜6の粉末では、表面近傍のBaが減少しているものの、そのBa減少効果は粉末の表面近傍に留まっている事を示している。
なお、No.7は、洗浄による効果が失われているので、比較例としている。すなわち、No.7では、洗浄処理を施すことによって表面近傍におけるSnに対するBaの量は一旦減少したものの、再び焼成処理を施すことによって、表面近傍の組成と粒子内部の組成とが均一化したことによって、効果が失われていると考えられる。
次に、表1に示される粒径、比表面積についてみると、洗浄処理を行わないNo.1と比較して、洗浄処理を行ったNo.2〜6では、粒径がさほど減少していないにもかかわらず、No.2からNo.6にかけて比表面積は急激に増大している。このような結果は、水や酸に対するBaOの溶解度が、SnO2の溶解度に比べて高いので、洗浄によって、粉末表面近傍のBaが選択的に溶出してSnが残留し、粉末表面に原子レベルの凹凸が生じ、洗浄が進むほど比表面積が増加することを示していると考えられる。
(XPS)
洗浄処理による粒子表面近傍におけるBaの減少と、それによる効果をより直接的に観察するために、粒子粉末についてXPS測定を行った。例として、表1の試料No.1、4、6について、図6には、価電子帯のXPSスペクトルを示し、図7には、C1s軌道のXPSスペクトルを示す。なお、これらの図では、バックグラウンドノイズを差し引いて示している。
図6において、13eV及び15eV付近に見られるピークは、Baに起因するものであるが、未処理のNo.1に比較して、No.4ではピーク強度が低下し、No.6ではさらにピーク強度が低下している。この結果から、洗浄処理を強めていくに従って、粒子表面近傍のBa量が減少していることがわかる。
一方、価電子帯端の位置については、No.4ではNo.1とほとんど変わらないが、No.6では高エネルギー側にシフトしている。これは、No.6では表面のBa量が減少し過ぎていることを示していると考えられる。
次に図7において、炭酸化合物起因のCのピークは288〜290eV付近に現れるが、未処理のNo.1に比較して、洗浄処理を施したNo.4、6ではピーク強度が低下しており、洗浄処理によって表面C量が減少することが分かる。
(XPS測定)
表1のNo.1〜6、8の各粉末、および比較としてMgO粉末(No.10)に対してXPS測定を行った。
表2に、粒子表面におけるBa量と価電子帯端位置とC量を半定量的に示す。具体的に、13eV付近に現れるBaに起因するピークのIntensity(このピークが大きいほどBa量が多い。)と、3eVにおけるピークIntensity(このピークが大きいほど価電子帯端が低エネルギー側にシフトしている。)と、288〜290eV付近に現れる、炭酸化合物起因のC1sピークIntensity(このピークが小さいほどC量が小さく化学的に安定である。)を示す。これらの値は、いずれもバックグラウンド値を差し引いたものである。
また、これらの粉末にバインダー、有機溶媒を混合してペーストとし、ガラス基板上に印刷し、大気中において510℃で焼成して有機成分を燃焼させた後、回収した粉末(厚膜焼成後)についてもXPSを測定した。表2に厚膜焼成後における炭酸化合物起源のC1sピークのIntensity測定結果も合わせて示す。なお、厚膜焼成プロセスは、粉末で膜を形成したり、MgO膜上に分散配置したりする場合に一般に用いられるプロセスである。
Figure 2010137225
(XPS測定結果に基づく考察)
表2に示すBaに起因するピークIntensity、Cに起因するピークIntensityから明らかなように、洗浄処理によって表面Ba量が減少すると共に、表面C量も減少している。これは、BaSnO3において、粒子表面近傍に生成する炭酸化物(BaCO3)が洗い流され、その後も、表面に炭酸化物が生成しにくいことを示している。
また、未洗浄のNo.1やNo.8、MgO粉末のNo.10では、厚膜焼成によって表面C量が増加するが、洗浄処理を行ったNo.2〜6では、表面C量がほとんど増加しないか、減少する場合もある。
一方、3eVのピークIntensityについては、No.1と比べて、洗浄処理したNo.2〜6では低下している。なお、No.6ではNo.1と比べて3eVのピークIntensityが1/4程度となっているが、これは、酸洗浄によって表面Ba量が極端に低下したためである。
No.2〜5のように、洗浄前と比べて、洗浄後のBa強度が50%以上、洗浄後の比表面積が2倍程度までの範囲にあることが望ましいと考えられる。
(PDPの製造と放電電圧測定)
本実施例では、本発明の結晶性酸化物粉末を用いたPDPについて示す。厚さ約2.8mmの平坦なソーダライムガラスからなる前面ガラス基板を用意し、この基板上に、ITO(透明電極)の材料を所定のパターンで塗布し、乾燥した。次いで、銀粉末と有機ビヒクルとの混合物である銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、上記前面ガラス基板を加熱することにより、上記銀ペーストを焼成して表示電極を形成した。
表示電極を作製したフロントパネルに、ガラスペーストをブレードコーター法で塗布し、90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、585℃の温度で10分間焼成することによって、厚さ約30μmの誘電体層を形成した。
上記誘電体層上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって蒸着した後、500℃で焼成することによって保護層を形成した。
次に、No.1〜6、8の各粉末1重量部を、エチルセルロース系のビヒクル100重量部と混合し、3本ロールを通してペーストとし、印刷法により、MgO層上に薄く塗布し、90℃で乾燥させた後、500℃、空気中で焼成した。この際、焼成後のMgO膜が粉末によって被覆される割合は10%程度であった。比較のため、下地MgO膜のみで、ペースト印刷を行わないものも作製した。
一方、以下の方法で背面板を作製した。まず、ソーダライムガラスからなる背面ガラス基板上にスクリーン印刷によって銀を主体とするアドレス電極をストライプ状に形成し、引き続き、前面板と同様の方法で、厚さ約8μmの誘電体層を形成した。
次に、誘電体層上に、隣り合うアドレス電極の間に、ガラスペーストを用いて隔壁を形成した。隔壁は、スクリーン印刷および焼成を繰り返すことによって形成した。
引き続き、隔壁の壁面と隔壁間で露出している誘電体層の表面に、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体ペーストを塗布し、乾燥および焼成して蛍光体層を作製した。
作製した前面板、背面板を封着ガラスを用いて500℃で貼り合わせた。そして、放電空間の内部を排気した後、放電ガスとしてXeを封入し、PDPを作製した。
作製したパネルを駆動回路に接続して発光させ、発光状態で所定時間保持してエージングした後、放電維持電圧を測定した。ここでエージング処理は、MgO膜や散布粉末の表面を、スパッタリングにより、ある程度清浄化するために行うものであり、PDPの製造工程では普通に実施され、これを行わないパネルは、粉末散布の有無にかかわらず、駆動電圧が高いものとなる。エージング後の結果を表3に示す。なお、No.0は、粉末散布を行わなかった、MgO下地膜のみの結果である。
Figure 2010137225

(放電電圧測定結果に基づく考察)
表より明らかなように、MgO下地膜のみのNo.0では、エージングにより電圧が上昇する傾向が認められた。一方、BaSnO3粉末を散布したNo.1〜6では、いずれもエージングにより電圧が低下し、一旦電圧が下がった後も、MgO下地膜のみのNo.0と比べて安定した電圧を示した。
しかし、No.1〜6の間で、放電電圧が低下するのに必要な時間を比較すると、洗浄処理を行っていないNo.1では12時間では明らかに放電電圧の低下が不足で、24時間でも放電電圧の低下は十分ではなかった。また配合比でBaを減らしたNo.8でも、12時間では明らかに放電電圧の低下は不足であった。このように放電電圧の低下に長時間要するのは、表面のC量が多く、これを除去するためのスパッタリングに長時間必要になるためと考えられる。
これに対して水洗処理を行ったNo.2〜6では、6時間でも十分に放電電圧が低下している。これは、もともと表面C量が少ない上に、厚膜焼成を行うときに表面C量が増加することもないためと考えられる。
なお、No.1,8でも、エージングを24時間行えば放電電圧が低下するが、そのようにエージングを長時間行う事は、実際の製造の現場では困難であるか、可能であっても高コストとなり、実用性は低い。従って、No.2〜6のように、短時間のエージングで十分に放電電圧が低下することによって、生産性向上効果を奏することが明らかである。ただし、No.6では、No.2〜6と比べて、放電電圧の下がり幅が小さいことが認められる。これは、No.6の洗浄条件では、洗浄が強くなりすぎる傾向にあることを示している。
(被覆率について)
次にNo.3の洗浄BaSnO3粉末を用いて、ペースト濃度を変える事により、MgO膜上の被覆率を変えたPDPを作製した。作製したPDPパネルを駆動回路に接続して発光させ、発光状態で所定時間保持してエージングした後、放電維持電圧を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2010137225
表4の結果より、被覆率が高くなると低電圧化に要するエージング時間が長くなり、被覆率が100%に近いNo.34では、100h後でも電圧低下が不十分であることがわかる。このような結果は、被覆率が高いほど粉末量が多いため、粉末表面のクリーニングに長時間要することによって生じたものと考えられる。
なお、被覆率が高くなるほど光の損失量が増え、輝度上も不利である。
一方、被覆率1.0%のNo.31は、短時間のエージングでも低電圧化してはいるものの、低下幅がやや少なく、長時間のエージングでは、若干の電圧上昇も認められる。これは粉末量が少ないためと考えられる。
このように、被覆率が1.0%を切ると、低電圧化の効果が少なくなり、一方、被覆率が20%を越えると、エージング時間が長くなるので、望ましい被覆率は1.0%以上20%以下である。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、出発原料として、試薬特級以上のSrCO3およびSnO2を用い、SrとSnの原子比が1:1になるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。この粉末を坩堝に入れ、空気中にて1100℃で焼成し、SrSnO3粉末を合成した。
次に、得られた焼成粉末の2gを秤量し、純水100gに投入し、一定時間攪拌混合した後、濾過により粉末を分離し、乾燥させた。
この水洗処理前後の粉末について、BET法により比表面積を測定したところ、水洗前は3.44m2/gであったのに対して、水洗後は3.59m2/gであった。
またX線回折測定を行った結果、いずれもペロブスカイト構造をとるSrSnO3であることが示され、特に差は見られなかった。
次に、上記実施例1と同様に、これら水洗処理前後の粉末、およびこれらの粉末にバインダー、有機溶媒を混合してペーストとし、ガラス基板上に印刷し、大気中において510℃で焼成して有機成分を燃焼させた後、回収した粉末(厚膜焼成後)について、XPSを測定した。
上記実施例1にかかるBaSnO3では、Baに起因するピークが13eV〜15eV付近に見られたが、本実施例2にかかるSrSnO3では、Srに起因するピークが18〜20eVに現れた。一方、炭酸化合物起因のCのピークは、BaSnO3の場合と同じく288〜290eV付近に現れた。
表5に、水洗処理前後の各粉末について、粒子表面近傍におけるSr量と価電子帯端位置とC量を半定量的に示す。具体的には、18〜20eV付近に現れるSrに起因するピークのIntensity(このピークが大きいほどSr量が多いことを示す。)と、3eVにおけるピークIntensity(このピークが大きいほど価電子帯端が低エネルギー側にシフトしていることを示す。)と、288〜290eV付近に現れる、炭酸化合物起因のC1sピークIntensity(このピークが小さいほどC量が小さく化学的に安定であることを示す)を示す。これらの値は、いずれもバックグラウンド値を差し引いたものである。
Figure 2010137225
表5より明らかなように、洗浄処理によって粒子表面近傍のSr量が減少すると共に、粒子表面近傍のC量も減少している。また、未処理の粒子では、厚膜焼成によって粒子表面近傍のC量が増加するが、洗浄処理を行った場合、粒子表面近傍のC量が増加していない。
このように水洗浄によって粒子表面近傍におけるSnに対するSrの割合が減少するのは、SrOがSnO2と比べて水に溶解しやいためである。また、粒子表面近傍におけるC量が減少するのは、表面近傍に生成している炭酸化物(SrCO3)が洗浄処理によって洗い流されるためである。
次に、これらの各粉末を用いて、実施例1と同様の方法で、粉末による被覆率が約10%のPDPを作製し、エージング12時間後の放電電圧を測定したところ、未処理のものでは放電電圧が237Vであったのに対して、水洗処理を行ったものでは、放電電圧が226Vと低く、短時間のエージングでも放電電圧の低下が認められた。
なお、上記実施例1,2では、SrSnO3、BaSnO3からなる結晶性化合物について、水洗浄によって表面近傍におけるSnに対するBa,Srの割合が減少する効果を確認したが、BaO,SrOがSnO2と比べて水に溶解しやすいのと同様に、CaOもSnO2と比べて水に溶解しやすいため、CaSnO3も、これを水洗すると、表面近傍におけるSnに対するCaの量は減少する。
また、上記実施例1,2では、SrSnO3、BaSnO3からなる結晶性化合物について、水洗浄によって粒子表面近傍のC量が減少することを確認したが、SrSnO3、BaSnO3において、粒子表面近傍に生成する炭酸化物(SrCO3、BaCO3)が水洗浄で洗い流されるのと同様に、CaSnO3においても、粒子表面近傍に生成する炭酸化物(CaCO3)が水洗浄で洗い流されるので、粒子表面近傍のC量は減少する。
また、SrSnO3、BaSnO3、CaSnO3から選択される2種類以上の固溶体についても同様であって、これを水洗すると、表面近傍におけるSnに対するSr、Ba、Caの量は減少し、表面近傍に生成する炭酸化物(SrCO3、BaCO3、CaCO3)が洗い流されるので、粒子表面近傍のC量は減少する。
本発明によれば、高γかつ化学的に安定で有り、表面C量が少ない電子放出材料を提供することができるので、プラズマディスプレイパネルの放電特性を改善するのに有効な技術である。
1 前面パネル
2 前面ガラス基板
3 透明導電膜
4 バス電極
5 表示電極
6 誘電体層
7 保護層
8 背面パネル
9 背面ガラス基板
10 アドレス電極
11 誘電体層
12 隔壁
13 蛍光体層
14 放電空間
20 電子放出層
本発明は、結晶性化合物及びこれを用いたプラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレイパネル(以下PDPと略す)は、薄型ディスプレイパネルの中で、大型化が容易、高速表示が可能、低コストといった特徴から、実用化され、急速に普及している。
現在実用化されている一般的なPDPの構造は、前面基板及び背面基板となる2枚のガラス基板を対向配置し、それぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、これらの電極を被覆するように低融点ガラス等の誘電体層を設けている。そして、背面基板の誘電体層上には蛍光体層を設け、前面基板の誘電体層上には、誘電体層をイオン衝撃から保護するとともに二次電子放出性を向上させるためにMgOからなる保護層が設けられている。そして2枚の基板間には、Ne、Xe等の不活性ガスを主体とするガスを封入している。
このようなPDPは、電極間に電圧を印加して放電を発生させて蛍光体を発光させることによって表示を行う。
PDPにおいて、従来から発光効率を高めることが強く要求されており、その手段として、誘電体層を低誘電率化する方法や、放電ガスのXe分圧を上げる方法が知られている。
しかしながら、このような手段を用いると、放電開始電圧や維持電圧が上昇してしまう問題点があった。
また、近年のディスプレイの高精細化に伴い、セルサイズを微細化すると、放電電圧がさらに上昇してしまうという問題点もあった。
そして、このような課題に対して、二次電子放出係数の高い材料を保護層に用いることによって、放電開始電圧や維持電圧を下げる事が可能であって、高効率化並びに耐圧の低い素子を用いる事による低コスト化を実現できることが知られている。
例えば、特許文献1,2においては、MgOの代わりに、同じアルカリ土類金属酸化物であるが、より二次電子放出係数の高い、CaO,SrO,BaOを用いたり、これら化合物どうしの固溶体を用いる事が検討されている。
また、アルカリ土類金属酸化物を、他の金属酸化物との混合化合物とすることによって安定化し、この混合化合物で保護膜を形成する方法も報告されている。例えば特許文献3では、BaTiO3、BaZrO3、BaSnO3、BaNb26、BaFe1219等で保護膜を形成することが報告されている。
特開昭52−63663号公報 特開2007−95436号公報 特開2004−273158号公報
しかしながら、CaO、SrO、BaOなどは、MgOに比べて化学的に不安定であって、空気中の炭酸ガスと容易に反応して炭酸化物に変質してしまう。
また、他の金属酸化物と化合物を形成して安定化させた場合、化合物を形成していないものと比べれば、遥かに安定化するが、それでも化合物粒子の最外表面に露出しているアルカリ土類金属原子が、空気中の炭酸ガスにより炭酸化され、さらにPDPの製造プロセスで各種の熱処理等を経るため、この最表面においてより炭酸化が進行してしまう。
このように、化合物粒子の表面に炭酸化物が形成されると、二次電子放出係数が低下して、期待どおりに放電開始電圧や維持電圧を低減できなくなる。
こうした化学反応による二次電子放出性能の劣化は、実験室レベルで少量を作製する場合には、作業の雰囲気ガスを制御するといった方法で回避可能である。しかしながら、製造工場では、全ての工程の雰囲気を管理するのは困難であり、また可能であっても高コスト化につながる。
従って、製造工場においては、駆動電圧を低減するために、非常に長いエージング時間が必要となってしまい、実用的でないといった問題がある。
さらに、MgO以外の材料で保護膜を形成した場合、イオン衝撃耐性が低いために、PDP駆動時に放電ガスによってスパッタリングされる量が大きくなり、保護膜の寿命が短くなるという問題もある。
このような理由で、従来から二次電子放出係数の高い材料を使用することが検討されてきたにもかかわらず、未だに実用化されている保護層材料はMgOのみである。
本発明は、上記課題に鑑み、実用的な製造条件下で、二次電子放出係数の優れた材料を提供することによって、PDPを低電圧で駆動できるようにし、PDPの高効率化を実現することを目的とする。
本発明にかかる材料は、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物からなり、その表面近傍におけるSnに対するアルカリ土類の量(Ca、Sr,Baの合計量)を減少させる処理を施すこととした。この場合、結晶性酸化物表面における、Ca、Sr、Baの合計量の減量率は、5%以上50%以下である事が望ましい。
上記の結晶性酸化物の表面近傍におけるCa、Sr、Baの量を減少させる処理としては、結晶性酸化物の表面を極性溶媒で洗浄すること、特に水を主成分とする溶剤で洗浄することが好ましい。
また、本発明にかかる材料は、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性化合物であって、表面近傍におけるSnの量に対するアルカリ土類のモル比率が1未満である。
そして、上記本発明の電子放出材料をPDPにおける放電空間に臨む領域に配設した。
電子放出材料を配設する形態としては、MgO保護層の上に、粉末粒子の状態で分散配置することが望ましい。
上記本発明による電子放出材料は、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物からなるので、化学的に安定化され、基本的に2次電子放出係数が高い。また、その最外表面におけるCa、Sr、Ba、あるいはこれらの合計量を減少させる処理が施されているので、処理前の結晶性酸化物の表面に炭酸化物が存在していても、当該処理に伴って炭酸化物の量が低減され、また、処理後の結晶性酸化物は、表面の炭酸化が進行しにくい。
従って、この電子放出材料を、PDPにおける放電空間に臨む領域に配設することによって、実用的な製造条件下で、低電圧で駆動できるPDPを提供できる。
また、従来どおりイオン衝撃耐性の高いMgO保護層を形成して、そのMgO保護層の表面に、上記結晶性酸化物からなる電子放出材料を分散配置すれば、駆動電圧が低く、且つ長寿命のPDPを提供できる。
本発明の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図1に示したPDPの縦断面図である。 本発明の別の実施形態にかかるPDPの斜視図である。 図3に示したPDPの縦断面図である。 本発明の実施例にかかる電子放出材料のX線回折図である。 実施例にかかる電子放出材料のXPSによる価電子帯スペクトル測定結果である。 実施例にかかる電子放出材料のXPSによるC1sスペクトル測定結果である。
まず、本発明にかかるPDPに用いる電子放出性材料について説明する。
(電子放出性材料の組成)
本発明者は、2次電子放出効率は高いが化学的に不安定なCaO、SrO、BaOの原料と各種の金属、B、Al、Si、P、Ga、Ge、Sn、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W等の酸化物を反応させて、非常に多種にわたる化合物を合成した。そして、その化学的安定性と2次電子放出能を詳細に検討した。その結果、各種化合物の中で、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれら2種類以上の固溶体からなる結晶性酸化物は、他の化合物と比べて、2次電子放出効率をあまり低下させずに化学的な安定性を高めることが出来ること、そして、MgOを用いる場合よりも駆動電圧を低下できることを確認した。
しかしながら、これらの結晶性酸化物はその最外表面が炭酸化しているため、実際にPDPを作製する場合、長時間のエージング処理を行うことによって結晶性酸化物表面の炭酸ガスを除去する必要があり、実用性は低い。そこで発明者は、この表面炭酸化を防止する手段について種々検討を加えて、本発明に到った。
すなわち、結晶性酸化物の各粒子表面のアルカリ土類量を減量する処理を施すことによって、結晶性酸化物が化学的に安定化され、2次電子放出係数の高く、かつ表面の炭酸化がより進行しにくいものになることがわかった。
ここで、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3あるいはこれら相互の固溶体において、アルカリ土類のサイトを3価金属であるLaで部分置換したり、Snのサイトを3価金属であるInやY、5価金属であるNbで部分置換したり、OをFで部分置換しても良い。この際、より高価数の金属で置換(アルカリ土類のLaによる置換、SnのNb置換など)すると、より安定性が高まるが2次電子放出効率は若干低下する。逆により低価数の金属で置換する(SnのIn置換など)と、安定性は若干低下するが、2次電子放出効率は改善される。よって、これらの置換により、その特性を微調整する事が可能となる。特に、SnサイトをInで部分置換することは、2次電子放出効率を高める点で効果的である。またSnサイトを、CeやZrによって部分置換することも可能である。
ただし、こうした置換組成においても、あくまで主成分はアルカリ土類とSnとOである必要がある。従って、SnサイトをInによって置換する場合のように例え全域置換可能であったとしても、その置換量は50%未満である必要が有り、より望ましくは20%以下、さらには10%以下が良い。
なお、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれらの固溶体において、洗浄処理前において、粒子内のアルカリ土類の合計量とSnとのモル比(Ca+Sr+Ba)/Snは基本的に1であるが、上記のように表面近傍におけるアルカリ土類の量を低減させる処理を行うことによって、粒子表面近傍におけるアルカリ土類の合計量とSnとのモル比(Ca+Sr+Ba)/Snは低減されて1未満となる。
なお、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれらの固溶体を形成する上で、粒子表面近傍におけるアルカリ土類の合計量とSnの配合モル比(Ca+Sr+Ba)/Snは、0.995以下とする事が、表面安定化にとって望ましい。これは、当該比率が1.000の場合でも、組成の不均一性により、アルカリ土類酸化物原料とSnO2の反応過程で、Ba3Sn27相等の、アルカリ土類が多い組成が一旦生成すると、これらの相が粒子表面を覆ってしまい、雰囲気調整を行わない条件下では、さらにBaCO3が分離析出するなど、表面が不安定化し、2次電子放出係数が低下してしまうためと考えられる。
なお、アルカリ土類サイトやSnのサイトを前述した部分置換を行っている場合は、それら置換元素を合わせた合計の比率を0.995以下とすれば良い。また、この比率をさらに低下させると、ある程度以下ではSnO2が余剰となって析出するが、このような状態では、前述したアルカリ土類の多い組成の生成は妨げられるため、SnO2との混合物となっているのも良い。
(結晶性化合物の合成方法)
CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、あるいはこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物を合成する方法としては、その形態として、固相法、液相法、気相法が挙げられる。
固相法は、それぞれの金属を含む原料粉末(金属酸化物、金属炭酸塩等)を混合し、ある程度以上の温度で熱処理して反応させる方法である。
液相法は、それぞれの金属を含む溶液を作り、これより固相を沈殿させたり、あるいは基板上にこの溶液を塗布後、乾燥し、ある程度以上の温度で熱処理等を行って固相とする方法である。気相法は、蒸着、スパッタリング、CVD等の方法によって膜状の固相を得る方法である。
いずれの方法を用いる事も不可能ではないが、粉末形態とするのであれば、通常は、比較的製造コストが低く、大量に製造する事も容易な固相法を用いれば良い。
(結晶性酸化物の表面近傍におけるアルカリ土類の減量)
上記の結晶性酸化物の表面近傍におけるアルカリ土類量を減量する処置を施す。この処理は、結晶性酸化物の各粒子に対して、その表面近傍の領域において、Snの量に対するアルカリ土類の量(Ca、Sr、Baの量、あるいはこれらの合計量)の比率を小さくする処理である。ここで粒子の「表面近傍」は、粒子をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)で測定するときに測定される範囲を指す。
結晶性酸化物の表面近傍におけるアルカリ土類量を減量させる具体的方法として、スパッタリング等の方法を用いても良いが、アルカリ土類が水をはじめとする極性溶媒(水の他に、例えば水とアルコールの混合溶媒)に溶解するため、通常は、水存在下で洗浄処理を行うことが容易であり実用的である。ここで、洗浄水として、単純に純水を用いても良いし、アルカリ土類の溶出速度、溶出量を制御する等の目的で、酸溶液を用いたり、アルカリ溶液を用いても良く、また有機溶媒との混合溶媒を用いても良い。ただし、あまり強い酸で洗浄を行うと、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3の結晶性酸化物自体が溶解してしまうため、好ましくない。
洗浄処理の目的は、粉末粒子表面近傍のアルカリ土類やその炭酸化物を除去する事にある。粒子表面近傍の炭酸化物がどの程度除去されたかについては、表面分析的手法で評価する事が出来る。例えばXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)が、有効に用いられる。XPSは、試料表面にX線を照射して放出される電子のスペクトルを測定するものであって、その分析深さは、通常数原子〜十数原子層とされている。上記の「表面近傍」は、この分析深さの範囲に相当し、通常、粒子の最表面から粒子内方に向かって深さ20Å以内の範囲である。
洗浄処理前と洗浄処理後において、XPSにおけるアルカリ土類のピーク強度及び炭酸化物起因のピーク強度を測定して、表面近傍のアルカリ土類量や炭酸化物起因のカーボン量の低下を求めれば、粒子表面からのアルカリ土類の減量率、並びに炭酸化物起因のカーボンが除去された程度を評価できる。
粒子表面近傍からのアルカリ土類の減量率(%)
=[1−(洗浄処理前のピーク強度/洗浄処理前のピーク強度)]×100
粒子表面近傍におけるアルカリ土類の減量率は、5%以上50%以下であることが好ましい。その理由は、減量率5%未満では炭酸化防止の効果が弱く、50%を超えると、表面近傍のアルカリ土類量が減少し過ぎて、駆動電圧低減効果が弱くなるためである。
また本発明者の検討によれば、XPSにより、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸化物起因のカーボン量を測定比較すれば、PDPの放電電圧を低下出来る材料の選別が、ある程度可能である事を見出した。
なぜならば、XPSでは、PDPにおける2次電子放出と比較的近い、試料の表面近傍の情報が得られるが、2次電子放出係数は、一般にバンドギャップ幅と電子親和力の和が小さいほど大きくなるとされており、価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあるほどバンドギャップ幅は小さくなるので、2次電子放出係数は大きくなる。
一方、試料表面の炭酸化物起因のカーボン量は、アルカリ土類金属を含む化合物において、化学的安定性の指標である。試料が化学的に不安定であれば、空気中の炭酸ガスと反応して、表面カーボン量は増加し、この量がある程度以上多いと、粒子表面が、BaCO3等の、2次電子放出係数の低いアルカリ土類炭酸塩で完全に覆われてしまう事になり、例え価電子帯端のエネルギー位置が低エネルギー側にあっても、高い2次電子放出係数は得られない。
よって、XPSにより、価電子帯端のエネルギー位置と、炭酸塩起因のカーボン量の両方を測定して比較することによって、価電子帯端のエネルギー位置が低く、且つカーボン量が少ない材料を選択すれば、PDPの放電電圧を低下するのに適した材料を、ある程度選定できる。
また本発明者は、洗浄処理の程度を観察するもう一つの方法として、比表面積の変化が有効である事も見出した。これは、粉末表面のアルカリ土類金属が選択的に溶出し、錫は残留するために、粉末表面に原子レベルの凹凸が生じ、結果として、洗浄が進むほど比表面積が増加するためと考えられる。
(電子放出性材料を配設する位置および形態)
表面近傍のアルカリ土類を減少させる処理を行った結晶性酸化物を、PDPのどの部分に配設するかについては、一般的には、前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成すれば良い。しかしながら、他の部位、例えば蛍光体層やリブ表面等の位置に形成したり、蛍光体に混合したりしても、放電空間に面した位置に存在すれば、形成しないものに比べて、駆動電圧低下の効果は認められる。
次に、これら結晶性酸化物を配設する形態については、例えば前面板の電極を覆う誘電体層の上に形成する場合、誘電体層の上に通常保護層として形成されるMgO膜の代わりに、これら結晶性酸化物の膜を形成したり、これら結晶性酸化物の粉末を散布する方法、あるいは、MgO膜を形成した上に、これら結晶性酸化物の膜を形成したり、これら結晶性酸化物の粉末を散布する方法をとれば良い。
ただし、結晶性酸化物も高融点で安定な化合物ではあるが、上記結晶性酸化物を保護層の代わりに形成した場合、MgO膜と比べるとスパッタリング耐性はやや劣り、透明性もやや劣る。また粉末散布の場合は、さらに透明性低下による輝度劣化が問題となることもある。従って、保護層として従来どおりMgO膜を設け、その上に、透過率が問題とならないレベルで結晶性酸化物の粉末を分散散布する方法が望ましい。その被覆率については、透過率が問題とならないレベルとして被覆率20%以下が良い。
結晶性酸化物を粉末で配設する場合、その粒子径は、0.1μm〜10μm程度の範囲内で、セルサイズ等に合わせて選択すれば良いが、結晶性酸化物の粉末をMgO膜上に分散配置する場合、MgO膜上で粉末の移動や落下が生じないように、3μm以下、より望ましくは1μm以下が良い。
このような構成にすると、高融点のMgO膜が保護層しての役割を果たすと共に、上記
表面処理を行った結晶性酸化物が2次電子放出の役割を果たし、且つ当該結晶性酸化物の被覆率が低いために輝度の低下も少ない。従って、低電圧で駆動でき、且つ長寿命のPDPを得る事が出来る。
なお、配設する表面処理を行った結晶性酸化物の種類は1種類とは限らない。すなわち、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性酸化物(表面処理を行ったもの)を2種類以上ブレンドして、誘電体層の上、あるいはMgO膜の上に配設してもよい。
ところで、最近になって、PDPの高精細化に伴う放電遅れの問題を解決するために、初期の電子放出効率が良い、結晶性のMgO粉末を、MgO保護層の上に分散散布する事が行われており、分散する方法として、MgO粉末に有機成分を混合してペースト状にしてMgO保護層上に印刷した後、適当な温度で熱処理して、有機成分を除去するといった方法が採られている。
従って、これと同じプロセスで、上記表面処理を行った結晶性酸化物粉末と、結晶性のMgO粉末とを、共にMgO保護層上に分散散布して、適当な温度で熱処理して有機成分を除去してもよい。
この場合、MgO粉末のペーストと、表面処理を行った結晶性酸化物粉末のペーストを作製し、その2種類のペーストをそれぞれ印刷しても良いが、表面処理を行った結晶性酸化物粉末と結晶性のMgO粉末とを含むペーストを作製して、MgO保護層上に印刷すれば、一回のプロセスで両者とも分散散布できるため、より望ましい。
このように、表面処理を行った結晶性酸化物粉末と、結晶性のMgO粉末とを、共にMgO保護層の上に分散散布することによって、保護と低電圧化と放電遅れ解消という3つの機能を、MgO膜、表面処理を行った結晶性酸化物、結晶性MgO粉末が、それぞれ果たすことになる。
すなわち、MgO膜だけでこれら3つの機能を担わせる場合と比べて、上記のようにMgO膜と、表面処理を行った結晶性酸化物粉末と、結晶性のMgO粉末とで、3つの機能を分担させて担わせれば、各機能を向上させるのが容易である。従って、PDPにおいて、この3つの機能を向上させるのに適している。
(化合物の表記方法について)
本明細書においては、結晶性酸化物を、例えばBaSnO3のように記載している。
しかしながら、Snは、Sn4+以外に、その一部がSn2+となりやすい元素であり、その場合には酸素欠陥が生じる。従って、より正確にはBaSnO3-δと記載すべきであるが、このδは、製造条件等によって変動し、必ずしも一定値とはならない。
よって便宜上BaSnO3のように記載しているが、このような表記は、酸素欠陥の存在を否定しているものではない。BaSnO3以外の化合物についても同様である。
(PDPの構成)
次に、本発明のPDPの具体例について図を用いて説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかるPDP100の一例を示すものであって、図1は、PDP100の分解斜視図、図2は、当該PDP100の縦断面図(図1、I−I線断面図)である。
図1および2に示すように、PDP100は、前面パネル1と背面パネル8とを有している。前面パネル1と背面パネル8との間には、放電空間14が形成されている。このPDPは、AC面放電型であって、保護層が上述した結晶性酸化物粉末で形成されている以外は従来例にかかるPDPと同様の構成を有する。
前面パネル1は、前面ガラス基板2と、その内側面(放電空間14に臨む面)に形成された透明導電膜3およびバス電極4からなる表示電極5と、表示電極5を覆うように形成された誘電体層6と、誘電体層6上に形成された保護層(電子放出層)7とを備えている。表示電極5は、ITOまたは酸化スズからなる透明導電膜3に、良好な導電性を確保するためAg等からなるバス電極4が積層されて形成されている。
保護層(電子放出層)7は、上述した表面処理した結晶性酸化物で形成されている。
背面パネル8は、背面ガラス基板9と、その片面に形成したアドレス電極10と、アドレス電極10を覆うように形成された誘電体層11と、誘電体層11の上面に設けられた隔壁12と、隔壁12の間に形成された蛍光体層とを備えている。蛍光体層は、赤色蛍光体層13(R)、緑色蛍光体層13(G)および青色蛍光体層13(B)がこの順に配列するように形成されている。
上記蛍光体層を構成する蛍光体としては、例えば、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Eu、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mn、赤色蛍光体としてY23:Euを用いることができる。
前面パネル1および背面パネル8は、表示電極5とアドレス電極10の各々の長手方向が互いに直交し、かつ互いに対向するように配置し、封着部材(図示せず)を用いて接合される。
放電空間14には、He、Xe、Ne等の希ガス成分からなる放電ガスが封入されている。
表示電極5とアドレス電極10は、それぞれ外部の駆動回路(図示せず)と接続され、駆動回路から印加される電圧によって放電空間14で放電が発生し、放電に伴って発生する短波長(波長147nm)の紫外線で蛍光体層13が励起されて可視光を発光する。保護層7に、上述した化合物が使用される。
本発明によるPDPの他の一例を、図3および4に示す。図3は、当該PDP200の分解斜視図である。図4は、当該PDP200の縦断面図(図3、I−I線断面図)である。PDP200は、保護層7がMgOからなり、上述した表面処理された結晶性酸化物からなる電子放出性材料が、当該保護層7上に散布されて電子放出層20が形成されている。
このPDP200においても、電子放出性材料からなる電子放出層20が放電空間14に面しており、駆動電圧を低減する効果を奏する。
なお、本発明において、電子放出性材料を配設する場所は、放電空間に臨む場所であればよく、例えば隔壁上や蛍光体層上などでもよい。また、電子放出性材料が配設されたPDPは、面放放電型に限らず、対向放電型でもよい。また、必ずしも前面板、背面板、及び隔壁を備えたPDPには限られず、電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するPDPであればよい。例えば、内部に蛍光体を配設した放電チューブを複数配列し、各放電チューブ内で放電して発光するタイプのPDPにおいても、放電チューブ内に電子放出性材料を配設することによって、駆動電圧を低減することができる。
(PDPの製造方法)
PDPの作製方法について、ここではまず、上記PDP200のように、保護層7としてMgO膜を形成し、その上に、表面処理した結晶性酸化物からなる電子放出性材料を散布する場合を説明する。
まず、前面板を作製する。平坦な前面ガラス基板の一主面に、複数のライン状の透明電極を形成する。引き続き、透明電極上に銀ペーストを塗布した後、前面ガラス基板全体を加熱することによって、銀ペーストを焼成し、表示電極を形成する。
表示電極を覆うように、前面ガラス基板の上記主面に本発明のPDPにおける誘電体層用ガラスを含むガラスペーストをブレードコーター法によって塗布する。その後、前面ガラス基板全体を90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、次いで、580℃前後の温度で10分間焼成を行う。
誘電体層上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって成膜し、焼成を行い、保護層を形成する。この時の焼成温度は500℃前後である。
MgO層上に、エチルセルロース等のビヒクルに粉末状の本発明の化合物を混合し、ペースト状としたものを印刷法等により塗布し、乾燥し、500℃前後の温度で焼成して、散布層を形成する。
次に背面板を作製する。平坦な背面ガラス基板の一主面に、銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、背面ガラス基板全体を加熱して銀ペーストを焼成することによって、アドレス電極を形成する。
隣り合うアドレス電極の間にガラスペーストを塗布し、背面ガラス基板全体を加熱してガラスペーストを焼成することによって、隔壁を形成する。
隣り合う隔壁同士の間に、R、G、B各色の蛍光体インクを塗布し、背面ガラス基板を約500℃に加熱して上記蛍光体インクを焼成することによって、蛍光体インク内の樹脂成分(バインダー)等を除去して蛍光体層を形成する。
こうして得た前面板と背面板とを封着ガラスを用いて貼り合わせる。この時の温度は500℃前後である。その後、封止された内部を高真空排気した後、希ガスを封入する。以上のようにしてPDPが作製される。
一方、上記PDP100のように、誘電体層6上に、表面処理した結晶性酸化物からなる保護層7を形成する場合には、表面処理した結晶性酸化物粉末をビヒクルや溶媒等と混合して、比較的粉末含有率の高いペースト状とし、これを印刷法等の方法で薄く広げた後、焼成して薄膜状、あるいは厚膜状とすれば良い。
また、表面処理した結晶性酸化物の粉末を誘電体層6上に散布する場合、比較的粉末含有率の低いペーストを、印刷法を用いて散布したり、溶媒に粉末を分散させて散布したり、スピンコーター等を用いて散布すれば良い。
なお、以上説明したPDPの構成および製造方法は一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、実施例として、CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体の中から、BaSnO3とSrSnO3を選び、粉末を合成して、これを洗浄して表面のBa量あるいはSr量を減少させる場合について詳細に説明するが、CaSnO3を用いる場合、あるいは、BaSnO3、CaSnO3、SrSnO3から選択する2種類以上の固溶体を用いる場合も、類似する効果が得られる。
[実施例1]
(BaSnO3結晶性酸化物の合成と表面処理)
出発原料として、試薬特級以上のBaCO3およびSnO2を用いた。これらの原料を、BaとSnの原子比が1:1になるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。この粉末を坩堝に入れ、空気中にて1100℃で焼成し、平均粒径0.49μmの焼成粉末を得た(表1のNo.1)。
次に、得られた焼成粉末の一定量を秤量した後、表1に示す各条件(No.2〜6)で、純水、または塩酸水溶液に投入し、一定時間攪拌混合した後、濾過により粉末を分離し、乾燥させた。ここで、表1のNo.2と3は、同じ純水による洗浄であるが、粉末重量に対する水の量がNo.2よりもNo.3の方が多いため、No.3の方がより強い洗浄条件である。また、No.4〜6は塩酸を用いた洗浄であるのでNo2、3よりも強く、No.4〜6の比較では、下へいくほど酸の量が多くなるので、より強い洗浄条件である。すなわち、No.2〜6では、下へいくほど強い洗浄条件となる。
次に表1のNo.6の粉末の一部に対して、再度空気中において1100℃で焼成し、No.7の粉末とした。
比較のため、BaとSnの原子比が0.95:1.00となるようにBaCO3およびSnO2を混合して、空気中で1100℃で焼成した粉末も作製した(表1のNo.8)。
Figure 2010137225

No.1〜8の各粉末に対して、平均粒径の測定、BETによる比表面積測定を行った。その結果を表1に示す。また、表1の試料No.1、2、5、6、7、8について、X線回折(CuKα線使用)を測定した。その結果を図5に示す。
図5の結果より、No.1の試料で認められる回折ピークは、全てペロブスカイト構造をとるBaSnO3のものである。このNo.1を、水洗処理または酸洗浄処理したNo.2、5、6の試料では、最も処理の強いNo.6でも、X線回折においてNo.1と差異が認められない。なお、ここでは示していないが、No.2と5の中間的条件であるNo.3、4についても同様であった。
ところが、No.6を再度焼成したNo.7では、図中の矢印の位置に、弱いピークが現れた。このピーク位置は、Baを減らして合成したNo.8で認められるピーク位置と同じであり、SnO2による回折ピークと同定することが出来る。
一方、再焼成を行っていないNo.1〜6では、このSnO2による回折ピークは認められない。この事は、No.1〜6の粉末では、表面近傍のBaが減少しているものの、そのBa減少効果は粉末の表面近傍に留まっている事を示している。
なお、No.7は、洗浄による効果が失われているので、比較例としている。すなわち、No.7では、洗浄処理を施すことによって表面近傍におけるSnに対するBaの量は一旦減少したものの、再び焼成処理を施すことによって、表面近傍の組成と粒子内部の組成とが均一化したことによって、効果が失われていると考えられる。
次に、表1に示される粒径、比表面積についてみると、洗浄処理を行わないNo.1と比較して、洗浄処理を行ったNo.2〜6では、粒径がさほど減少していないにもかかわらず、No.2からNo.6にかけて比表面積は急激に増大している。このような結果は、水や酸に対するBaOの溶解度が、SnO2の溶解度に比べて高いので、洗浄によって、粉末表面近傍のBaが選択的に溶出してSnが残留し、粉末表面に原子レベルの凹凸が生じ、洗浄が進むほど比表面積が増加することを示していると考えられる。
(XPS)
洗浄処理による粒子表面近傍におけるBaの減少と、それによる効果をより直接的に観察するために、粒子粉末についてXPS測定を行った。例として、表1の試料No.1、4、6について、図6には、価電子帯のXPSスペクトルを示し、図7には、C1s軌道のXPSスペクトルを示す。なお、これらの図では、バックグラウンドノイズを差し引いて示している。
図6において、13eV及び15eV付近に見られるピークは、Baに起因するものであるが、未処理のNo.1に比較して、No.4ではピーク強度が低下し、No.6ではさらにピーク強度が低下している。この結果から、洗浄処理を強めていくに従って、粒子表面近傍のBa量が減少していることがわかる。
一方、価電子帯端の位置については、No.4ではNo.1とほとんど変わらないが、No.6では高エネルギー側にシフトしている。これは、No.6では表面のBa量が減少し過ぎていることを示していると考えられる。
次に図7において、炭酸化合物起因のCのピークは288〜290eV付近に現れるが、未処理のNo.1に比較して、洗浄処理を施したNo.4、6ではピーク強度が低下しており、洗浄処理によって表面C量が減少することが分かる。
(XPS測定)
表1のNo.1〜6、8の各粉末、および比較としてMgO粉末(No.10)に対してXPS測定を行った。
表2に、粒子表面におけるBa量と価電子帯端位置とC量を半定量的に示す。具体的に、13eV付近に現れるBaに起因するピークのIntensity(このピークが大きいほどBa量が多い。)と、3eVにおけるピークIntensity(このピークが大きいほど価電子帯端が低エネルギー側にシフトしている。)と、288〜290eV付近に現れる、炭酸化合物起因のC1sピークIntensity(このピークが小さいほどC量が小さく化学的に安定である。)を示す。これらの値は、いずれもバックグラウンド値を差し引いたものである。
また、これらの粉末にバインダー、有機溶媒を混合してペーストとし、ガラス基板上に印刷し、大気中において510℃で焼成して有機成分を燃焼させた後、回収した粉末(厚膜焼成後)についてもXPSを測定した。表2に厚膜焼成後における炭酸化合物起源のC1sピークのIntensity測定結果も合わせて示す。なお、厚膜焼成プロセスは、粉末で膜を形成したり、MgO膜上に分散配置したりする場合に一般に用いられるプロセスである。
Figure 2010137225

(XPS測定結果に基づく考察)
表2に示すBaに起因するピークIntensity、Cに起因するピークIntensityから明らかなように、洗浄処理によって表面Ba量が減少すると共に、表面C量も減少している。これは、BaSnO3において、粒子表面近傍に生成する炭酸化物(BaCO3)が洗い流され、その後も、表面に炭酸化物が生成しにくいことを示している。
また、未洗浄のNo.1やNo.8、MgO粉末のNo.10では、厚膜焼成によって表面C量が増加するが、洗浄処理を行ったNo.2〜6では、表面C量がほとんど増加しないか、減少する場合もある。
一方、3eVのピークIntensityについては、No.1と比べて、洗浄処理したNo.2〜6では低下している。なお、No.6ではNo.1と比べて3eVのピークIntensityが1/4程度となっているが、これは、酸洗浄によって表面Ba量が極端に低下したためである。
No.2〜5のように、洗浄前と比べて、洗浄後のBa強度が50%以上、洗浄後の比表面積が2倍程度までの範囲にあることが望ましいと考えられる。
(PDPの製造と放電電圧測定)
本実施例では、本発明の結晶性酸化物粉末を用いたPDPについて示す。厚さ約2.8mmの平坦なソーダライムガラスからなる前面ガラス基板を用意し、この基板上に、ITO(透明電極)の材料を所定のパターンで塗布し、乾燥した。次いで、銀粉末と有機ビヒクルとの混合物である銀ペーストをライン状に複数本塗布した後、上記前面ガラス基板を加熱することにより、上記銀ペーストを焼成して表示電極を形成した。
表示電極を作製したフロントパネルに、ガラスペーストをブレードコーター法で塗布し、90℃で30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、585℃の温度で10分間焼成することによって、厚さ約30μmの誘電体層を形成した。
上記誘電体層上に酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって蒸着した後、500℃で焼成することによって保護層を形成した。
次に、No.1〜6、8の各粉末1重量部を、エチルセルロース系のビヒクル100重量部と混合し、3本ロールを通してペーストとし、印刷法により、MgO層上に薄く塗布し、90℃で乾燥させた後、500℃、空気中で焼成した。この際、焼成後のMgO膜が粉末によって被覆される割合は10%程度であった。比較のため、下地MgO膜のみで、ペースト印刷を行わないものも作製した。
一方、以下の方法で背面板を作製した。まず、ソーダライムガラスからなる背面ガラス基板上にスクリーン印刷によって銀を主体とするアドレス電極をストライプ状に形成し、引き続き、前面板と同様の方法で、厚さ約8μmの誘電体層を形成した。
次に、誘電体層上に、隣り合うアドレス電極の間に、ガラスペーストを用いて隔壁を形成した。隔壁は、スクリーン印刷および焼成を繰り返すことによって形成した。
引き続き、隔壁の壁面と隔壁間で露出している誘電体層の表面に、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体ペーストを塗布し、乾燥および焼成して蛍光体層を作製した。
作製した前面板、背面板を封着ガラスを用いて500℃で貼り合わせた。そして、放電空間の内部を排気した後、放電ガスとしてXeを封入し、PDPを作製した。
作製したパネルを駆動回路に接続して発光させ、発光状態で所定時間保持してエージングした後、放電維持電圧を測定した。ここでエージング処理は、MgO膜や散布粉末の表面を、スパッタリングにより、ある程度清浄化するために行うものであり、PDPの製造工程では普通に実施され、これを行わないパネルは、粉末散布の有無にかかわらず、駆動電圧が高いものとなる。エージング後の結果を表3に示す。なお、No.0は、粉末散布を行わなかった、MgO下地膜のみの結果である。
Figure 2010137225


(放電電圧測定結果に基づく考察)
表より明らかなように、MgO下地膜のみのNo.0では、エージングにより電圧が上昇する傾向が認められた。一方、BaSnO3粉末を散布したNo.1〜6では、いずれもエージングにより電圧が低下し、一旦電圧が下がった後も、MgO下地膜のみのNo.0と比べて安定した電圧を示した。
しかし、No.1〜6の間で、放電電圧が低下するのに必要な時間を比較すると、洗浄処理を行っていないNo.1では12時間では明らかに放電電圧の低下が不足で、24時間でも放電電圧の低下は十分ではなかった。また配合比でBaを減らしたNo.8でも、12時間では明らかに放電電圧の低下は不足であった。このように放電電圧の低下に長時間要するのは、表面のC量が多く、これを除去するためのスパッタリングに長時間必要になるためと考えられる。
これに対して水洗処理を行ったNo.2〜6では、6時間でも十分に放電電圧が低下している。これは、もともと表面C量が少ない上に、厚膜焼成を行うときに表面C量が増加することもないためと考えられる。
なお、No.1,8でも、エージングを24時間行えば放電電圧が低下するが、そのようにエージングを長時間行う事は、実際の製造の現場では困難であるか、可能であっても高コストとなり、実用性は低い。従って、No.2〜6のように、短時間のエージングで十分に放電電圧が低下することによって、生産性向上効果を奏することが明らかである。ただし、No.6では、No.2〜6と比べて、放電電圧の下がり幅が小さいことが認められる。これは、No.6の洗浄条件では、洗浄が強くなりすぎる傾向にあることを示している。
(被覆率について)
次にNo.3の洗浄BaSnO3粉末を用いて、ペースト濃度を変える事により、MgO膜上の被覆率を変えたPDPを作製した。作製したPDPパネルを駆動回路に接続して発光させ、発光状態で所定時間保持してエージングした後、放電維持電圧を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2010137225

表4の結果より、被覆率が高くなると低電圧化に要するエージング時間が長くなり、被覆率が100%に近いNo.34では、100h後でも電圧低下が不十分であることがわかる。このような結果は、被覆率が高いほど粉末量が多いため、粉末表面のクリーニングに長時間要することによって生じたものと考えられる。
なお、被覆率が高くなるほど光の損失量が増え、輝度上も不利である。
一方、被覆率1.0%のNo.31は、短時間のエージングでも低電圧化してはいるものの、低下幅がやや少なく、長時間のエージングでは、若干の電圧上昇も認められる。これは粉末量が少ないためと考えられる。
このように、被覆率が1.0%を切ると、低電圧化の効果が少なくなり、一方、被覆率が20%を越えると、エージング時間が長くなるので、望ましい被覆率は1.0%以上20%以下である。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、出発原料として、試薬特級以上のSrCO3およびSnO2を用い、SrとSnの原子比が1:1になるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。この粉末を坩堝に入れ、空気中にて1100℃で焼成し、SrSnO3粉末を合成した。
次に、得られた焼成粉末の2gを秤量し、純水100gに投入し、一定時間攪拌混合した後、濾過により粉末を分離し、乾燥させた。
この水洗処理前後の粉末について、BET法により比表面積を測定したところ、水洗前は3.44m2/gであったのに対して、水洗後は3.59m2/gであった。
またX線回折測定を行った結果、いずれもペロブスカイト構造をとるSrSnO3であることが示され、特に差は見られなかった。
次に、上記実施例1と同様に、これら水洗処理前後の粉末、およびこれらの粉末にバインダー、有機溶媒を混合してペーストとし、ガラス基板上に印刷し、大気中において510℃で焼成して有機成分を燃焼させた後、回収した粉末(厚膜焼成後)について、XPSを測定した。
上記実施例1にかかるBaSnO3では、Baに起因するピークが13eV〜15eV付近に見られたが、本実施例2にかかるSrSnO3では、Srに起因するピークが18〜20eVに現れた。一方、炭酸化合物起因のCのピークは、BaSnO3の場合と同じく288〜290eV付近に現れた。
表5に、水洗処理前後の各粉末について、粒子表面近傍におけるSr量と価電子帯端位置とC量を半定量的に示す。具体的には、18〜20eV付近に現れるSrに起因するピークのIntensity(このピークが大きいほどSr量が多いことを示す。)と、3eVにおけるピークIntensity(このピークが大きいほど価電子帯端が低エネルギー側にシフトしていることを示す。)と、288〜290eV付近に現れる、炭酸化合物起因のC1sピークIntensity(このピークが小さいほどC量が小さく化学的に安定であることを示す)を示す。これらの値は、いずれもバックグラウンド値を差し引いたものである。
Figure 2010137225

表5より明らかなように、洗浄処理によって粒子表面近傍のSr量が減少すると共に、粒子表面近傍のC量も減少している。また、未処理の粒子では、厚膜焼成によって粒子表面近傍のC量が増加するが、洗浄処理を行った場合、粒子表面近傍のC量が増加していない。
このように水洗浄によって粒子表面近傍におけるSnに対するSrの割合が減少するのは、SrOがSnO2と比べて水に溶解しやいためである。また、粒子表面近傍におけるC量が減少するのは、表面近傍に生成している炭酸化物(SrCO3)が洗浄処理によって洗い流されるためである。
次に、これらの各粉末を用いて、実施例1と同様の方法で、粉末による被覆率が約10%のPDPを作製し、エージング12時間後の放電電圧を測定したところ、未処理のものでは放電電圧が237Vであったのに対して、水洗処理を行ったものでは、放電電圧が226Vと低く、短時間のエージングでも放電電圧の低下が認められた。
なお、上記実施例1,2では、SrSnO3、BaSnO3からなる結晶性化合物について、水洗浄によって表面近傍におけるSnに対するBa,Srの割合が減少する効果を確認したが、BaO,SrOがSnO2と比べて水に溶解しやすいのと同様に、CaOもSnO2と比べて水に溶解しやすいため、CaSnO3も、これを水洗すると、表面近傍におけるSnに対するCaの量は減少する。
また、上記実施例1,2では、SrSnO3、BaSnO3からなる結晶性化合物について、水洗浄によって粒子表面近傍のC量が減少することを確認したが、SrSnO3、BaSnO3において、粒子表面近傍に生成する炭酸化物(SrCO3、BaCO3)が水洗浄で洗い流されるのと同様に、CaSnO3においても、粒子表面近傍に生成する炭酸化物(CaCO3)が水洗浄で洗い流されるので、粒子表面近傍のC量は減少する。
また、SrSnO3、BaSnO3、CaSnO3から選択される2種類以上の固溶体についても同様であって、これを水洗すると、表面近傍におけるSnに対するSr、Ba、Caの量は減少し、表面近傍に生成する炭酸化物(SrCO3、BaCO3、CaCO3)が洗い流されるので、粒子表面近傍のC量は減少する。
本発明によれば、高γかつ化学的に安定で有り、表面C量が少ない電子放出材料を提供することができるので、プラズマディスプレイパネルの放電特性を改善するのに有効な技術である。
1 前面パネル
2 前面ガラス基板
3 透明導電膜
4 バス電極
5 表示電極
6 誘電体層
7 保護層
8 背面パネル
9 背面ガラス基板
10 アドレス電極
11 誘電体層
12 隔壁
13 蛍光体層
14 放電空間
20 電子放出層

Claims (11)

  1. CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性化合物であって、
    表面近傍におけるSnの量に対するCa、Sr又はBaの比率を小さくする処理が施されている結晶性化合物。
  2. 前記処理におけるCa、Sr、Baの合計量の減量率が、5%以上50%以下である請求項1記載の結晶性化合物。
  3. 前記処理は、水による洗浄処理である請求項1記載の結晶性化合物。
  4. CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性化合物であって、
    表面近傍におけるSnの量に対するアルカリ土類のモル比率が1未満である結晶性化合物。
  5. 電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するプラズマディスプレイパネルにおいて、
    前記放電空間に臨む領域に、請求項1又は4記載の結晶性化合物が配されているプラズマディスプレイパネル。
  6. 電極間に電圧を印加して放電空間内で放電させ、蛍光体で可視光に変換することによって発光するプラズマディスプレイパネルにおいて、
    第一基板上に、第一電極、当該第一電極を覆う第一の誘電体層、前記第1の誘電体層上に主成分がMgOからなる保護層が形成されている第一パネルと、第二基板上に、第二電極、当該第二電極を覆う第二誘電体層、蛍光体層が形成された第二パネルとが、対向配置され、
    前記第一パネルと前記第二パネルとの間に前記放電空間が形成され、
    請求項1又は4記載の結晶性化合物が、前記保護層上に、粉末粒子の状態で分散配置されているプラズマディスプレイパネル。
  7. 前記保護層上に粉末粒子の状態で分散配置されている前記結晶性化合物の、前記保護層に対する被覆率が、1%以上20%以下である請求項6記載のプラズマディスプレイパネル。
  8. 前記保護層上に、さらに、MgOを主成分とする粉末が、粒子の状態で分散配置されている請求項7記載のプラズマディスプレイパネル。
  9. CaSnO3、SrSnO3、BaSnO3、及びこれら2種類以上の固溶体から選択される結晶性化合物を合成する合成ステップと、
    前記合成ステップで合成された結晶性酸化物の表面を、極性溶媒で洗浄する洗浄ステップとを備える結晶性化合物の製造方法。
  10. 前記洗浄ステップでは、
    前記合成ステップで合成された結晶性酸化物の表面を、水を主成分とする溶剤で洗浄する請求項9記載の結晶性化合物の製造方法。
  11. 前記洗浄ステップにおいて、
    Ca、Sr、Baの合計量を、5%以上50%以下減量する請求項9記載の結晶性化合物の製造方法。
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