JP2009283351A - 保護膜、保護膜の製造方法、プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents

保護膜、保護膜の製造方法、プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好に不純物が除去され、良好な二次電子放出特性を備える保護膜、保護膜の製造方法、プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】ゾルゲル法によって形成されたMgO溶液中に、AlF等の金属フッ化物を分散させ、誘電体層上に塗布し、仮焼成する。更に溶液の塗布と仮焼成の工程を繰り返し、所望の厚みに形成した後、本焼成を行う。MgO中に分散されたAlFによって、製造工程中に水、二酸化炭素が混入すること、また膜を製造した後に、これらが吸着することを抑制することができ、不純物が良好に除去された保護膜を形成することができる。更に、AlFによって、保護膜の二次電子放出特性を向上させることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、保護膜、保護膜の製造方法、プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
近年、大画面で薄型軽量化を実現することが可能なディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されている。プラズマディスプレイパネルには、DC(直流)型とAC(交流)型とがあり、信頼性、画質などの点から、現在のPDPの主流はAC型となっている。
このようなAC型のプラズマディスプレイパネルの各画素を構成するセルは、例えば特許文献1に開示されているように、光を取り出す側の基板である前面基板と、前面基板上に形成された維持電極と、前面基板上に形成された走査電極と、維持電極と走査電極とを覆うように形成された誘電膜と、誘電膜を覆うように形成された保護膜と、前面基板と対向するように設置された背面基板と、背面基板上に形成されたアドレス電極と、アドレス電極上に形成された誘電膜と、誘電膜上に形成されたリブと、リブ間に形成された蛍光体層と、を備える。
このようなプラズマディスプレイパネルのセルでは、走査電極とアドレス電極との間に予備放電を行い、発光させる画素を選択し、選択されたセルで維持電極と走査電極との間で放電を行い、各リブ間に充填されたキセノン等によって紫外線が発生する。この紫外線によって蛍光体層が発光する。
AC型のプラズマディスプレイパネルでは、誘電体層はコンデンサとして機能するため、誘電体層がイオン等の衝撃を受け、厚みが変化すると容量の変化にもつながる。保護膜は、このようなイオン等の衝撃、ダメージから誘電体層を保護するものであり、保護膜には、イオン等に対する耐衝撃性が求められている。更に、誘電体層がプラズマ放電に必要な二次電子放出の効率が低いため、保護膜は良好な二次電子放出特性が求められている。保護膜としては、例えばMgOが用いられている。
特開2006−202765号公報
ところで、保護膜は、プラズマ中のイオン等の衝突により結晶構造が壊れた場合でも、自己再生能力があり、結晶構造が再生する。しかし、保護膜中に二酸化炭素、水等の不純物を含むと、結晶構造には戻らず非晶質化してしまい、保護膜が劣化するという問題がある。
このため、不純物が良好に除去された保護膜が求められている。また、プラズマディスプレイパネルの発光効率を上昇させるため、良好な二次電子放出特性を備える保護膜が求められている。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、良好に不純物が除去され、良好な二次電子放出特性を備える保護膜、保護膜の製造方法、プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る保護膜の製造方法は、
ゾルゲル法によって形成された金属酸化物溶液中に金属フッ化物を分散させる工程と、
金属フッ化物が分散された溶液を基板上に塗布する工程と、
前記溶液を焼成する工程と、を備えることを特徴とする。
前記金属酸化物は、MgO、CaO、BaO、SrCaOのいずれかであってもよい。
前記金属フッ化物は、AlF、LiF、BaF、CaF、MgF、LaFのいずれかであってもよい。
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る保護膜は、
金属酸化物中に金属フッ化物が分散されたことを特徴とする。
前記金属酸化物は、MgO、CaO、BaO、SrCaOのいずれかであってもよい。
前記金属フッ化物は、AlF、LiF、BaF、CaF、MgF、LaFのいずれかであってもよい。
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプラズマディスプレイパネルの製造方法は、
基板上に電極を形成する工程と、
前記電極を覆うように前記基板上に誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記基板に対向する対向基板上に蛍光体を形成する工程とを備え、
前記保護膜形成工程は、
ゾルゲル法によって形成された金属酸化物溶液中に金属フッ化物を分散させる工程と、
金属フッ化物が分散された溶液を基板上に塗布する工程と、
前記溶液を焼成する工程と、を備えることを特徴とする。
前記金属酸化物は、MgO、CaO、BaO、SrCaOのいずれかであってもよい。
前記金属フッ化物は、AlF、LiF、BaF、CaF、MgF、LaFのいずれかであってもよい。
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係るプラズマディスプレイパネルは、
基板上に形成された電極と、
前記電極を覆うように前記基板上に形成された誘電体層と、
前記誘電体層上に形成された保護膜と、
前記基板に対向する対向基板と、
前記対向基板上に形成された蛍光体と、を備え、
前記保護膜は、金属フッ化物が分散された金属酸化物から形成されることを特徴とする。
本発明によれば、金属フッ化物を混入することによって良好に不純物が除去され、良好な二次電子放出特性を備える保護膜、保護膜の製造方法、プラズマディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法について図を用いて説明する。なお、本実施形態では、交流(AC)型プラズマディスプレイパネルを例に挙げて説明する。
図1は、プラズマディスプレイパネル10の構成例を模式的に示す図である。また、図2は、画素20の構成例を示す断面図である。
プラズマディスプレイパネル10は、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色を発する3つのセル30を有する複数の画素20を備える。複数の画素20は、背面基板上に、行方向に繰り返し複数配列されるとともに、列方向に同一色のセル30が複数配列されているストライプ配列である。なお、RGBのセル30は、互いに隣接することによって三角形の配置となるデルタ配列であってもよい。
セル30は、図2に示すように、前面基板31と、走査電極32と、維持電極33と、誘電体層34と、保護膜35と、背面基板36と、アドレス電極37と、アドレス保護膜38と、隔壁39と、蛍光体40と、を備える。
前面基板31は、例えば、所定の厚さのガラス基板から構成される。前面基板31の一方の面には走査電極32と、維持電極33と、これらの電極上に形成された誘電体層34と、誘電体層34上に形成された保護膜35とが形成される。また、前面基板31の他方の面から光が取り出されるため、前面基板31は透光性を備える材料から形成される。
走査電極32は、導電体から構成され、前面基板31上に形成される。本実施形態では、前面基板31側から光が取り出されるため、透光性を備える材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)、酸化スズ(SnO)等から形成される。更に走査電極32には、低抵抗化を図るため、例えばクロム/銅/クロムから形成された低抵抗化層(図示せず)が形成されている。なお、点灯させるセル30では、まず走査電極32と、アドレス電極37との間でアドレス放電を行い、セル30内に壁電荷を堆積させる。
維持電極33は、導電体から構成され、前面基板31上に形成される。本実施形態では前面基板31側から光が取り出されるため、維持電極33は、透光性を備える材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)、酸化スズ(SnO)等から形成される。更に維持電極33には、低抵抗化を図るため、例えばクロム/銅/クロムから形成された低抵抗化層(図示せず)が形成されている。また、走査電極32と維持電極33との間で表示放電を行う。また、走査電極32と維持電極33とは、同一方向に平行に設置される。
誘電体層34は、誘電体、例えばガラス等から構成され、前面基板31上に形成された走査電極32と維持電極33とを覆うように形成される。また、本実施形態では前面基板31から光を取り出す構成であるため、誘電体層34は、光学的な透過率の高い材料から形成される。誘電体層34は、走査電極32と維持電極33とを保護し、更に放電時に誘電体層34表面に壁電荷を形成してメモリ機能を持たせる。誘電体層34に発生する静電容量は、放電時の電流を制限し、アーク放電へと移行しないように放電状態を制限する機能も有している。
保護膜35は、誘電体層34を保護し、二次電子放出を行う膜であり、前面基板31上に設けられた誘電体層34上に形成されている。前面基板31上に誘電体層34のみが形成されていると、放電によるイオンの衝撃で、膜がダメージを受け、パネルの寿命が短くなるため、更にプラズマ放電に必要な二次電子放出の効率が悪く、放電電圧が高くなるため、保護膜35が形成されている。保護膜35は、このような目的で形成されるため、イオン衝撃に強く、二次電子放出の高い材料から形成されることが好ましく、MgO、CaO、BaO、SrCaO等から形成される。更に、本実施形態では、保護膜35中にAlF、LiF、BaF、CaF、MgF、LaF等の金属フッ化物が分散されている。この金属フッ化物に含有されているフッ素によって保護膜35のガス吸着性が低下する、つまり大気中に存在するCO、HO等の吸着を抑制することができる。このため保護膜35は、成膜工程中の不純物の吸着を抑制し、更に成膜後も不純物が吸着しにくいため、良好に不純物が除去され、エージング等の不純物除去工程を省略又は短縮させることが可能である。更に、詳細に後述するように金属フッ化物の混入により、保護膜の二次電子放出特性を向上させることができる。
背面基板36は、例えば所定の厚さのガラス基板から構成される。前面基板31と対向するように設置される。背面基板36の上面には、アドレス電極37と、隔壁39と、蛍光体層40と、が形成される。
アドレス電極37は、背面基板36上に形成され、導電材料、例えば、銀、クロム/銅/クロム、アルミニウム等から形成される。アドレス電極37は、図1に示すように、走査電極32、維持電極33と直交する方向に延びるように形成される。アドレス電極37は表示の有無を決めるデータを書き込むために使用される。
アドレス保護膜38は、誘電体、例えばガラス等から構成され、背面基板36上に形成されたアドレス電極37を覆うように形成される。
隔壁39は、背面基板36上に形成され、ストライプ状、またはワッフル状に形成されている。また、隔壁39と、前面基板31と、背面基板36とで囲われた放電空間内には、例えばNe、Xe等を含む混合ガスが封入されている。この混合ガスが放電により、Xeから紫外線が放射され、紫外線によって赤、緑、青の蛍光体が励起され可視光が放射される。
蛍光体層40は、R(赤)G(緑)B(青)のいずれかの色を発する蛍光体から構成される。発光面積を確保するため、蛍光体層40は背面基板36の上面と隔壁39の側面上に形成される。紫外線によって、各蛍光体が励起され、赤、緑、青の光が発生する。青色の蛍光体材料としては、例えばBAM系(BaMgAl1017:Eu)を用い、赤色の蛍光体材料としては、例えばボレイト系((Y.Ga)BO:Eu)、緑色の蛍光体材料としては例えばジンクシリケート系(ZnSiO:Mn)を用いる。
このような構成のプラズマディスプレイパネル10のセル30では、まず、アドレス電極37と走査電極32との間で、アドレス放電を行う。アドレス放電時には、一本の走査電極と全てのアドレス電極間で放電を行う。このとき、走査電極には1ライン分の全セルの電流が流れるが、アドレス電極側には1セル分の電流のみ流れる。アドレス放電に必要な電圧はアドレス電圧とスキャン電圧との組み合わせで決まり、このアドレス放電によりセル内に壁電荷が蓄積する。続いて、走査電極と維持電極との間で100〜200kHzの交流パルス電圧を印加し、表示、発光のための放電を行う。このときの電圧はセル中の混合ガスの組成、圧力などに依存するが、一般に160〜180Vが必要である。これにより、セル内に封入された混合ガスが励起し、紫外線が発生する。この紫外線によって蛍光体層40内の蛍光体が励起されて可視光が発せられる。可視光は前面基板31を介して外部に取り出される。
本実施形態では、保護膜35中にAlF、LiF等の金属フッ化物を混入することにより、MgOのみで保護膜を形成した場合と比較して、CO、HO等の吸着性を低下させることができる。このため、不純物の混入が少なく、保護膜からは良好に不純物が除去される。更に、詳細に後述するように金属フッ化物を混入させることにより保護膜の二次電子放出特性を向上させることができる。
次に、プラズマディスプレイパネルの製造方法について図3及び4を用いて説明する。
まず、ガラス基板等からなる前面基板31を用意する。
次に、この前面基板31上に、ITO等の導電材料を、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)等によって成膜する。この膜上にフォトレジストを形成し、フォトレジストを走査電極及び維持電極に対応する形状に露光、現像する。続いて、このフォトレジストを用いてエッチングを行い、図3(a)に示すように走査電極32及び維持電極33を形成する。なお、導電材料としてSnOを用いる場合は、いわゆるリフトオフ法を用いる。具体的には前面基板31上に査電極及び維持電極に対応するパターンを有するレジストを形成し、その上からSnOを成膜し、最後にレジストを除去し、走査電極32及び維持電極33を形成する。
また、走査電極32及び維持電極33上に、電気抵抗を低下させるための低抵抗化層(図示せず)を形成する。低抵抗化層は、例えば銀を用いる場合は、感光性銀ペーストを印刷し、フォトリソグラフィによって成膜し、クロム/銅/クロムを用いる場合はスパッタリング法等の真空成膜を行った後、フォトリソグラフィ、エッチングを行い、所望のパターンに形成する。また、パネル上の放電していない領域に、感光性材料を用いたフォトリソグラフィ、スクリーン印刷法等によりブラックストライプを形成し、外光反射率を下げてもよい。
次に、走査電極32及び維持電極33上に、例えば低融点ガラス粉末とバインダ樹脂とが有機溶剤に分散された誘電体ペーストを、スクリーン印刷法で印刷する方法、ロールコート、カーテンコート、ダイコータ等によってコーティングする方法によって塗布し、又は、誘電体シートをラミネータ等で貼り付け、誘電体層を形成する。続いて、有機溶剤を揮発させ焼成炉で樹脂成分を除去し、低融点ガラス粉末を溶融・軟化させてガラス化する。これにより、図3(b)に示すように誘電体層34を形成する。
次に誘電体層34上に、有機金属化合物や無機金属塩等の加水分解反応、縮合反応を利用したゾル−ゲル反応を用いて作製された、金属酸化物のゾル溶液を塗布する。なお、本実施形態では、このゾル溶液中に、AlF等の金属フッ化物が含有されている。このゾル溶液を誘電体層34上に塗布し仮焼成を行い、この塗布と仮焼成との工程を複数繰り返すことによって、ゾル溶液を所定の厚みに形成する。その後、本焼成を行い、図3(c)に示すように保護膜35を形成する。本実施形態では詳細に後述するようにゾル溶液に金属フッ化物が含有されており、このフッ素によってHO、CO、CO等の吸着性を低下させることが可能である。換言すれば、膜の脱ガス性を向上させることが可能である。このため、HO、CO、CO等の不純物は良好に保護膜中から離脱するため、これまでこれらの不純物を離脱させるために必要とされていた仮焼成、本焼成の時間を減少させることができる。また、金属フッ化物の添加量は、良好な脱ガス性を得るためには所定の程度以上に添加することが好ましいが、添加しすぎると保護膜の透光性が低下するため、保護膜35の透光性を妨げない程度に留めるとよい。
次に、ガラス基板等からなる背面基板36を用意する。
この背面基板36上に、図4(a)に示すようにアドレス電極37を形成する。アドレス電極37として、例えば銀を用いる場合は、感光性銀ペーストを印刷し、フォトリソグラフィによって成膜する。アドレス電極37として、、クロム/銅/クロムを用いる場合はスパッタリング法等の真空成膜を行った後、フォトリソグラフィ、エッチングを行い、所望のパターンに形成する。
次に、アドレス電極37上に、例えば低融点ガラス粉末とバインダ樹脂とが有機溶剤に分散された誘電体ペーストを、スクリーン印刷法で印刷する方法、ロールコート、カーテンコート、ダイコータ等によってコーティングする方法によって塗布し、又は、誘電体シートをラミネータ等で貼り付け、誘電体層を形成する。続いて、有機溶剤を揮発させ焼成炉で樹脂成分を除去し、低融点ガラス粉末を溶融・軟化させてガラス化する。これにより、図4(b)に示すようにアドレス保護膜38を形成する。
次に、アドレス保護膜38上に、例えばサンドブラスト法によって、隔壁39を形成する。具体的には、低融点ガラスペーストを背面基板36の表面全体に塗布し、乾燥させる。続いて、感光性のマスク材をガラスペースト上に貼り付けた後、フォトリソグラフィによってマスクを形成する。ガラスビーズや炭酸カルシウム等からなる研磨剤を吹き付け、マスクに覆われていない部分を削ってリブを形成する。マスクを剥離した後、焼成することによって、図4(c)に示すように隔壁39が形成される。この他に、ウエットエッチング法、感光性リブ、転写法、埋め込み法、積層印刷法等の方法によって隔壁39を形成してもよい。
次に、所定の溶剤に溶解させたR,G,Bの蛍光体をスクリーン印刷法、ディスペンサ等による塗布によって、隔壁39間に塗布し、溶媒を乾燥させ蛍光体層40を形成する。
このように、それぞれ別の工程によって作製された前面基板31又は背面基板36上に例えば低融点ガラスからなるシール材を塗布した上で、前面基板31と背面基板36とを重ね合わせる。続いて、焼成によってシール材を溶融させ前面基板31と、背面基板36とを接着させる。次に、パネルを低温化し、排気管を通じてパネル内の大気を排気する。続いて、常温付近まで温度を下げ、ネオン、キセノン等のガスを排気管から導入する。ガスを導入した後、バーナー等によって排気管を封じる。
続いて、エージング工程で、長時間の点灯確認を行う。これにより保護膜35中の不純物をプラズマによって自己洗浄することができる。本実施形態では、上述したように保護膜を形成する工程で大幅にCO、CO、HO等の不純物の除去が可能であるため、エージング工程の時間を従来と比較して短縮する、又は工程そのものを省略することが可能である。
以上の工程から、図2に示すプラズマディスプレイパネル10が製造される。
本実施形態では、上述したように、保護膜35を形成する際に金属フッ化物を混入させることにより、製造工程中の保護膜中へのHO、CO、CO等の不純物の混入を抑制することができる。更に、金属フッ化物中の金属結合により自由電子が存在し、これらが放出されることによって、保護膜の二次電子放出特性も向上する。このように、不純物の混入が少なく、良好な二次電子放出特性を有する保護膜を形成することができる。本実施形態の製造方法では、HO、CO、CO等の混入が抑制されるため、保護膜を形成するための焼成工程の時間を短くでき、更にエージング工程で、これらの不純物を除去する時間を短く、もしくはエージング工程を省略することができる。
また、本実施形態では、ゾル−ゲル法によって作成した溶液中に金属フッ化物を添加しているため、真空成膜等によって金属酸化物膜中に金属フッ化物を混入させる場合と比較し、良好に膜中に金属フッ化物を分散させることができる。例えば、真空蒸着法によって、AlFを含むMgOを成膜する場合、るつぼ等にMgO,AlFをセットした上で、これらにイオンビームを照射して、MgO等を蒸発させ、基板上に付着させる。この際、MgOとAlFを均等に基板上に付着させることが難しく、AlFがMgO中に均等に分散された膜を形成することは困難である。これに対し、本実施形態では溶液中にAlFを分散させるため、容易にAlFをMgO膜中に分散させることが可能である。
(実施例)
上述した実施形態で示す保護膜の製造方法について、検証した結果を以下に示す。まず、本実施例では保護膜の材料としてMgOを用い、ゾル溶液としては表1に示す組成の溶液を用いた。この溶液6mlに対して、AlFを混入しなかった溶液、AlFを0.05g,0.1g,0.2g,0.4g,0.8gそれぞれ混入した溶液を作成した。この溶液をシリコン基板上に塗布した上で300℃、10分の仮焼成を行い、この塗布と仮焼成を5回繰り返した上で、900℃、1時間の本焼成を行った。
Figure 2009283351
上述したそれぞれの溶液を用いて形成した膜について、TDS法(Thermal Desorption Spectroscopy)によってCO、HO、COそれぞれに相当するの質量のガスの脱離量を測定した。具体的には、試料を一定の速度で昇温させ、試料表面から脱離するガスを質量分析計で検出し、所定の質量のガスの発生量を測定した。このTDS法による測定結果を図5〜図7に示す。図5は(M/z=44)、つまりCOのTDSスペクトルを示すグラフであり、図6は(M/z=18)、つまりHOのTDSスペクトルを示すグラフであり、図7は(M/z=28)、つまりCOのTDSスペクトルを示すグラフである。
図5〜図7から明らかなように、CO、HO、COのいずれについても、AlFの添加量が0.05g、0.1gの場合はAlFを添加した場合よりガスの脱離する量が同程度減少した。0.2g〜0.8g添加した場合では、0.05g、0.1g添加した場合と比較し、更にガスの脱離する量が同程度減少した。換言すれば、AlFを添加した場合よりも、添加した方がCO、HO、CO等が膜中に存在する量が減少し、更に添加量はあるレベルまでは、添加量の増加に従いCO、HO、CO膜中に残存する量を減らすことができることが言える。なお、0.8g以上、AlFを混入させるとMgO溶液に濁りが生じ、透光性が低下することから、これ以上の添加は望ましくないことが分かった。
更に、図8に、図5のCOの脱ガス量(molecules/cm3)を積算させた値と図6に示すHOの脱離量(脱ガス量)を積算させた値をAlFの添加量に対してプロットしたグラフを示す。図8から明らかなように、CO、HOのいずれについても、添加量0.05gと0.1gの場合の脱ガス量は、MgOのみとした場合の脱ガス量と比較し約3割程度に減少させることができた。更に0.2g以上混入させた場合は、約1割程度に減少させることができた。また、0.2gまでは、添加量を増加させるに従って脱ガス量(吸着量)脱離量は減少する傾向にあり、0.2gを超えると、添加量の増加によらず、ほぼ同じ量のガスが脱離している(膜中に吸着している)ことがわかった。
また、昇温50℃〜800℃の領域における、脱ガス量(molecules/cm3)を積算した数値を図9に示す。MgOのみの場合と、AlFを添加した場合とで、M/z=18(HO)については、約3.2倍の差があり、M/z=44(CO)については約4.0倍の差が生ずることが分かる。このように、AlFを添加することにより、膜中にCO、HOが吸着する量を1/3〜1/4に低減させることができる。
更に、上述した実施形態の方法で成膜した保護膜がどの程度ガスを吸着するかを測定するため、上述したTDS測定を行った後、大気雰囲気下で3日間放置したMgO膜をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)によって測定した結果を図10に示す。なお
、図10に示すグラフではAlFを添加せずMgOのみとした場合と、AlFを、0.1g添加した場合を例に挙げている。また、XPSによるMgO膜表面の組成分析結果を図11に示す。
図10からわかるように、AlFを添加しなかった場合には、図10で一点鎖線で示す領域でCOに依存するピークが強く検出される。これに対し、AlFを添加した場合は、この領域のピークは明らかに低く検出される。従って、特にCOの吸着を抑制する効果が得られていることがわかる。更に、XPSによるMgO膜表面の組成分析結果を示す図11から、C,O,Mg,Fの元素のうちCの割合は、AlFを添加しなかった場合は8.6%であるのに対し、AlFを添加した場合は5.8%と明らかに低下している。この点からも、AlFを添加したMgO膜では、COの吸着を抑制する効果が得られていることがわかる。
上述したTDS測定を行った後、大気雰囲気下で3日間放置したMgO膜を、再度TDS法によってCO、HO、COそれぞれに相当するの質量のガスの脱離量を測定した。具体的には、試料を一定の速度で昇温させ、試料表面から脱離するガスを質量分析計で検出し、所定の質量のガスの発生量を測定した。このTDS法による測定結果を図12〜図14に示す。図12〜図14では、AlFを添加せずMgOのみとした場合と、AlFを0.1g添加した場合を例に挙げている。図12は(M/z=44)、つまりCOのTDSスペクトルを示すグラフであり、図13は(M/z=18)、つまりHOのTDSスペクトルを示すグラフであり、図14は(M/z=28)、つまりCOのTDSスペクトルを示すグラフである。
図12〜図14から明らかなように、CO、HO、COのいずれについても、MgOのみの場合と比較して、AlFを添加した場合ではガスが脱離する量が減少した。これにより、MgO膜が成膜された後、膜にCO、HO、COが吸着することを抑制することができると言える。
更に、AlFを添加しなかった膜と、AlFを0.1g添加した膜について、二次電子放出係数を測定した結果を図12に示す。図12からわかるように、MgOのみの膜では二次電子放出係数δは1.0〜1.2程度であるが、AlFを添加した膜については、二次電子放出係数は1000eVまでは、一次電子エネルギーの増加とともに、二次電子放出係数が高くなる傾向にあり、1000eVより高い範囲では1.75程度であった。このように、いずれの一次電子エネルギーにおいても二次電子放出特性の増加がみられる。つまり、AlFの添加によってガスの吸着性を低下させるだけでなく、二次電子放出特性が向上することがわかる。
次に、AlFに代えて、LiFを添加した場合について、検証した結果を以下に示す。まず、保護膜の材料としてMgOを用い、ゾル溶液としては表1に示す組成の溶液を用いた。この溶液6mlに対して、LiFを混入しなかった溶液、LiFを0.0005g,0.001g,0.005g,0.01g,0.05g、それぞれ混入した溶液を作成した。この溶液をシリコン基板上に塗布した上で300℃、10分の仮焼成を行い、この塗布と仮焼成を5回繰り返した上で、900℃、1時間の本焼成を行った。
上述したそれぞれの溶液を用いて形成した膜について、TDS法(Thermal Desorption Spectroscopy)によってCO、HO、COそれぞれに相当するの質量のガスの脱離量を測定した。具体的には、試料を一定の速度で昇温させ、試料表面から脱離するガスを質量分析計で検出し、所定の質量のガスの発生量を測定した。このTDS法による測定結果を図16〜図18に示す。図16は(M/z=44)、つまりCOのTDSスペクトルを示すグラフであり、図17は(M/z=18)、つまりHOのTDSスペクトルを示すグラフであり、図18は(M/z=28)、つまりCOのTDSスペクトルを示すグラフである。更に、図19に、COの脱ガス量(molecules/cm3)を積算した値とHOの脱離量(脱ガス量)を積算した値とを、LiFの添加量に対してプロットしたグラフを示す。
図16に示すように、COについては、LiFを0.0005g添加した場合と、0.001g添加した場合とは、全く添加しなかった場合と比較して、50℃〜300℃の温度域で若干の減少が見られ、300℃〜600℃の温度域では、次第に減少量が増加する傾向を示した。0.005g、0.01g添加した場合は、50℃〜600℃の温度域で1/10程度の顕著な減少が見られた。更に添加量の多い0.05gでは、0.005g、0.01g添加した場合と比較してガスの発生量に若干の減少が見られた。このように、添加量が少ない場合は、ガスの発生量を減少させる効果は、特に本実施例ではLiFを0.005g以上添加することにより、COの混入を抑制することができることがわかった。
次に、図17に示すように、HOについてもLiFを0.0005g添加した場合と、0.001g添加した場合とは、全く添加しなかった場合と比較して、50℃〜800℃の温度域でガスの発生量に若干の減少が見られた。更に0.005g、0.01g、0.05g添加した場合では50℃〜800℃の温度域で0.0005g又は0.001g添加した場合と比較しガスの発生が減少した。COについても、図18に示すようにLiFを0.0005g添加した場合と、0.001g添加した場合とは、全く添加しなかった場合と比較して、50℃〜800℃の温度域で若干の減少が見られた。更に0.005g、0.01g、0.05g添加した場合では50℃〜800℃の温度域で0.0005g又は0.001g添加した場合と比較しガスの発生が減少した。
COの脱ガス量とHOの脱ガス量とを、LiFの添加量に対してプロットした図19から明らかなように、COについては添加量0.0005g、0.001gの場合の脱ガス量は、MgOのみとした場合の脱ガス量と比較し約6割程度に減少させることができた。更に0.005g以上添加した場合の脱ガス量は、MgOのみの場合と比較し約1割程度に減少させることができた。HOについては、添加量0.0005g、0.001gの場合の脱ガス量は、MgOのみとした場合の脱ガス量と比較し約7割程度に減少させることができた。更に0.005g以上添加した場合の脱ガス量は、MgOのみの場合と比較し約2割〜3割程度に減少させることができた。このようにLiFについても、ガスの吸着を抑制する効果が得られることを確認できた。
また、LiFの添加量を0g、0.05g、0.1g、0.2g、0.4g、0.8gとした場合のCOの脱ガス量(molecules/cm3)を積算した値とHOの脱離量(脱ガス量)を積算した値とを、LiFの添加量に対してプロットしたグラフを、図20に示す。図20に示すように、なお、0.05g以上添加した場合は、COについてもHOについても0.05gで示した効果以上は得られず、脱ガス量は同程度であることが分かった。なお、AlFを添加した場合と同様に、LiFの添加量を0.8gよりおおくするとMgO溶液に濁りが生じ透光性が低下するため、これ以上の低下が好ましくないことも分かった。
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、本実施形態の保護膜がAC型のプラズマディスプレイパネルに利用される場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、DC型のプラズマディスプレイパネルの保護膜として用いることも可能である。
本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構成例を示す図である。 本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの画素の構成例を示す断面図である。 本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの製造方法を示す図である。 本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの製造方法を示す図である。 AlFを添加したMgO膜の(M/z=44)のTDS測定スペクトルを示す図である。 AlFを添加したMgO膜の(M/z=18)のTDS測定スペクトルを示す図である。 AlFを添加したMgO膜の(M/z=28)のTDS測定スペクトルを示す図である。 AlFの添加量に対して、脱ガス量をプロットしたグラフである。 昇温50℃〜800℃の領域における脱ガス量を積算した数値を示す図である。 大気雰囲気下で3日間放置したMgO膜のXPSスペクトルを示す図である。 XPSによるMgO膜表面の組成分析結果を示す図である。 大気雰囲気下で3日間放置したMgO膜の(M/z=44)のTDS測定スペクトルを示す図である。 大気雰囲気下で3日間放置したMgO膜の(M/z=18)のTDS測定スペクトルを示す図である。 大気雰囲気下で3日間放置したMgO膜の(M/z=28)のTDS測定スペクトルを示す図である。 AlFを添加しなかったMgO膜と、AlFを添加したMgO膜の二次電子放出係数を示す図である。 LiFを添加したMgO膜の(M/z=44)のTDS測定スペクトルを示す図である。 LiFを添加したMgO膜の(M/z=18)のTDS測定スペクトルを示す図である。 LiFを添加したMgO膜の(M/z=28)のTDS測定スペクトルを示す図である。 LiFの添加量に対して、脱ガス量をプロットしたグラフである。 LiFの添加量に対して、脱ガス量をプロットしたグラフである。
符号の説明
10 プラズマディスプレイパネル
20 画素
30 セル
31 前面基板
32 走査電極
33 維持電極
34 誘電体層
35 保護膜
36 背面基板
37 アドレス電極
38 アドレス保護膜
39 隔壁
40 蛍光体層

Claims (10)

  1. ゾルゲル法によって形成された金属酸化物溶液中に金属フッ化物を分散させる工程と、
    金属フッ化物が分散された溶液を基板上に塗布する工程と、
    前記溶液を焼成する工程と、を備えることを特徴とする保護膜の製造方法。
  2. 前記金属酸化物は、MgO、CaO、BaO、SrCaOのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の保護膜の製造方法。
  3. 前記金属フッ化物は、AlF、LiF、BaF、CaF、MgF、LaFのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の保護膜の製造方法。
  4. 金属酸化物中に金属フッ化物が分散されたことを特徴とする保護膜。
  5. 前記金属酸化物は、MgO、CaO、BaO、SrCaOのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の保護膜。
  6. 前記金属フッ化物は、AlF、LiF、BaF、CaF、MgF、LaFのいずれかであることを特徴とする請求項4又は5に記載の保護膜。
  7. 基板上に電極を形成する工程と、
    前記電極を覆うように前記基板上に誘電体層を形成する工程と、
    前記誘電体層上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
    前記基板に対向する対向基板上に蛍光体を形成する工程とを備え、
    前記保護膜形成工程は、
    ゾルゲル法によって形成された金属酸化物溶液中に金属フッ化物を分散させる工程と、
    金属フッ化物が分散された溶液を基板上に塗布する工程と、
    前記溶液を焼成する工程と、を備えることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  8. 前記金属酸化物は、MgO、CaO、BaO、SrCaOのいずれかであることを特徴とする請求項7に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  9. 前記金属フッ化物は、AlF、LiF、BaF、CaF、MgF、LaFのいずれかであることを特徴とする請求項7又は8に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  10. 基板上に形成された電極と、
    前記電極を覆うように前記基板上に形成された誘電体層と、
    前記誘電体層上に形成された保護膜と、
    前記基板に対向する対向基板と、
    前記対向基板上に形成された蛍光体と、を備え、
    前記保護膜は、金属フッ化物が分散された金属酸化物から形成されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010137225A1 (ja) * 2009-05-25 2010-12-02 パナソニック株式会社 結晶性化合物、その製造方法及びプラズマディスプレイパネル

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