JP2008287966A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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一樹 高木
Minoru Hasegawa
実 長谷川
Shinya Fukuda
晋也 福田
Hajime Inoue
一 井上
康一 ▲崎▼田
Koichi Sakida
Tomoya Misawa
智也 三澤
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Abstract

【課題】輝度を低下させることなく放電遅れを短縮させることができるPDPを提供する。
【解決手段】本発明のPDPは、対向配置され且つ間に気密な放電空間を有する前面側基板構体と背面側基板構体とを備え、前記前面側基板構体は、基板と、基板上に複数の表示電極対と、前記表示電極対を覆う誘電体層と、隣接する2つの前記表示電極対間の非放電領域に設けられたブラックストライプとを備え、前記ブラックストライプは、前記放電空間に露出するように前記誘電体層よりも前記放電空間側に設けられ且つプライミング粒子放出材料を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と呼ぶ。)に関する。
図8は、従来のPDPの構成を示す斜視図である。PDPは、前面側基板構体1と、背面側基板構体2を貼り合わせた構造をしている。前面側基板構体1は、ガラス基板からなる前面側基板1a上に、透明電極3aと金属電極3bからなる複数の表示電極3が配置され、対をなす2本の表示電極3は、電極間で面放電が生じる間隔を隔てて配列されて表示ラインを構成し、かつ各表示電極ペアの間には、隣接電極間で放電が生じない間隔(非放電領域)が設けられている。そして、これら表示電極3は、誘電体層4で覆われている。誘電体層4の上にさらに2次電子放出係数の高い酸化マグネシウム層からなる保護層5が形成されている。背面側基板構体2には、ガラス基板からなる背面側基板2a上に、表示電極と直交するように複数のアドレス電極6を配置し、かつアドレス電極6間には、発光領域を規定するために隔壁7が設けられ、アドレス電極6上の隔壁7で区分けされた領域には、赤、緑、青の蛍光体層8が形成されている。貼り合わせた前面側基板構体1と背面側基板構体2の内部に形成された気密な放電空間には、Ne−Xeガスからなる放電ガスが封入されている。なお、図示していないが、アドレス電極6は、誘電体層で被覆されており、隔壁7及び蛍光体層8は、この誘電体層上に設けられている。また、アドレス電極6は、前面側基板構体の誘電体層内に表示電極と交差するように配設されることもある。
このようなPDPでは、アドレス電極6と、スキャン電極を兼ねる表示電極3の間に電圧を印加することによって、アドレス放電を生じさせ、対をなす2本の表示電極3の間に電圧を印加することによって、リセット放電や表示のためのサステイン放電を生じさせる。
PDPは、大型薄型テレビとして実用化されており、近年は高精細化が進んでいる。高精細化すると画素数が増えるため、セルの点灯非点灯を決めるアドレス操作の時間が増大する。アドレス操作時間の増大を抑えるためには、アドレス放電用電圧(アドレス電圧ともいう)のパルス幅を小さくする必要がある。しかし、電圧を印加してから放電が起こるまでの時間(放電遅れ)にばらつきがあるため、アドレス電圧のパルス幅が小さ過ぎると放電が起きないことがあり得る。その場合、表示期間においてセルが正しく点灯しないため、画質の劣化を招くという問題がある。
この問題を解決するため、放電空間内にプライミング粒子生成層を設けることによって表示画像の品質を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照。)また、放電空間内に酸化マグネシウム結晶体層を設けることによって放電遅れを短縮させる技術も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
特開2002−110051号公報 特開2006−114484号公報
しかし、プライミング粒子生成層や酸化マグネシウム結晶体層は、蛍光体からの光を完全には透過させないため、このような層を前面側基板構体に設けると輝度が低下するという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、輝度を低下させることなく放電遅れを短縮させることができるPDPを提供するものである。
本発明のPDPは、対向配置され且つ間に気密な放電空間を有する前面側基板構体と背面側基板構体とを備え、前記前面側基板構体は、基板と、基板上に複数の表示電極対と、前記表示電極対を覆う誘電体層と、隣接する2つの前記表示電極対間の非放電領域に設けられたブラックストライプとを備え、前記ブラックストライプは、前記放電空間に露出するように前記誘電体層よりも前記放電空間側に設けられ且つプライミング粒子放出材料を含む。
本発明のPDPでは、放電空間に露出するように非放電領域に設けられたブラックストライプがプライミング粒子(以下、「P粒子」と呼ぶ。)放出材料を含んでいる。本発明によれば、ブラックストライプ中のP粒子放出材料が放電開始のためのP粒子を放出するので放電遅れを短縮させることができる。また、ブラックストライプは元々光を遮っているので、P粒子放出材料をブラックストライプに含めても輝度低下は起こらない。従って、本発明によれば、輝度を低下させることなく放電遅れを短縮させることができ、放電ミスのない高画質なPDPを提供することができる。
また、本発明によれば、ブラックストライプがP粒子放出材料を含むので、P粒子放出層を別途設ける必要がない。従って、PDPの構成が単純になり、製造コストの低減に繋がる。
以下、種々の実施形態を例示する。
前記前面側基板構体は、前記ブラックストライプを部分的に覆う保護層をさらに備えてもよい。この場合、放電時のプラズマに対するブラックストライプの耐スパッタ性を向上させることができる。
前記プライミング粒子放出材料は、酸化マグネシウム結晶体(以下、「MgO結晶体」と呼ぶ。)からなってもよい。この場合、放電遅れの改善効果が大きい。
前記プライミング粒子放出材料は、ハロゲン元素が1〜10000ppm添加されたMgO結晶体からなってもよい。この場合、放電遅れの改善効果が長時間持続する。放電遅れの改善効果が長時間持続する理由は必ずしも明らかではないが、添加したハロゲン元素がMgO結晶体中の酸素と置換され、これが電子トラップとなって、電子放出特性が向上したためであると推測される。また、放電遅れの改善効果が長時間持続するため、比較的少量であっても休止期間が長い場合の放電遅れを効果的に抑制することができ、コスト低減に繋がる。
ここで示した種々の構成は、互いに組み合わせることができる。
以下、本発明の種々の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。以下の実施形態では、3電極面放電型PDPを例にとって説明を進める。
1.PDPの構造及び製造方法について
図1(a)〜(c)は、本発明の一実施形態のPDPの構造を示し、図1(a)は、正面図であり、図1(b)及び(c)は、それぞれ、図1(a)中のI−I断面図及びII−II断面図である。
本実施形態のPDPは、対向配置された前面側基板構体1及び背面側基板構体2を有する。前面側基板構体1と背面側基板構体2とは、周縁部が封着材で貼り合わされており、前面側基板構体1と背面側基板構体2の間の気密な放電空間内には放電ガス(例えば、ネオンに数%程度のキセノンを混合させたもの)が封入されている。
前面側基板構体1は、基板1aと、基板1a上に複数の表示ラインを構成する複数の表示電極対3Pと、各表示電極対3Pを覆う誘電体層4と、隣接する2つの表示電極対3P間の非放電領域(非発光領域)11に設けられたブラックストライプ13とを備える。ブラックストライプ13は、暗色又は黒色の材料層からなり、表示ライン間の非放電領域におけるパネル内部からの放出光を遮蔽したり、材料の色(暗色、黒色)によって当該表示ライン間を常時暗くして表示コントラストを向上させる機能を持っているが、本発明ではさらに放電空間に露出するように誘電体層4よりも放電空間側に設けられ且つP粒子放出材料を含むことによりアドレス放電時のプライミング効果を発揮させている。誘電体層4上には保護層5が設けられ、ブラックストライプ13は、保護層5上に設けられている。
背面側基板構体2は、背面側基板1b上に表示電極3に交差(好ましくは、直交)するアドレス電極6、アドレス電極6を覆う誘電体層9、誘電体層9上に隔壁7及び蛍光体層8を有する。
以下、各構成要素について詳細に説明する。
1−1.基板、表示電極対、誘電体層、保護層(前面側基板構体)
前面側の基板1aは、特に限定されず、当該分野で公知の基板をいずれも使用することができる。具体的には、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板が挙げられる。
表示ラインを構成する表示電極対3Pは、面放電のための放電スリット10を隔てて配置された2本の表示電極3、即ちアドレス電極6との間のアドレス放電に用いられるスキャン電極3Yと、スキャン電極3Yとの間のサステイン放電等に用いられるサステイン電極3Xとで構成される。隣接する2つの表示電極対3P間には、隣接電極間で放電が生じないスリット(逆スリットともいう。)が形成されており、この非放電領域11が非発光領域になる。
表示電極3は、例えば、ITO、SnO2 などの幅の広い透明電極3aと、電極の抵抗を下げるための、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr及びそれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層構造)等からなる幅の狭い金属電極3bとで構成することができる。図1(a)〜(c)には、透明電極3a及び金属電極3bがストレート形の場合を示しているが、透明電極3a及び金属電極3bの形状は、特に限定されず、T字形や梯子形であってもよい。透明電極3aと金属電極3bの形状は、同じであっても互いに異なっていてもよい。例えば、透明電極3aをT字形や梯子形にして、金属電極3bをストレート形にしてもよい。また、透明電極3aは、省略することもでき、この場合、表示電極3は、金属電極3bのみからなる。
誘電体層4は、例えば、低融点ガラスフリットにバインダと溶剤を加えた低融点ガラスペーストを、表示電極3形成後の基板上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成することによって形成することができる。誘電体層4は、表示電極3形成後の基板上にCVD法などで酸化シリコンを堆積することによって形成してもよい。
保護層5は、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウム等の金属(より具体的には2価の金属)酸化物からなり、好ましくは、酸化マグネシウムからなる。保護層5は、蒸着法、スパッタ法又は塗布法等で形成される。
1−2.基板、アドレス電極、誘電体層、隔壁、蛍光体層(背面側基板構体)
背面側の基板2aは、特に限定されず、当該分野で公知の基板をいずれも使用することができる。具体的には、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板が挙げられる。
アドレス電極6は、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr及びそれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層構造)等で構成することができる。
誘電体層9は、誘電体層4と同様の材料及び方法で形成することができる。
隔壁7は、誘電体層9上に低融点ガラスペースト等の隔壁形成材料層を形成し、この隔壁形成材料層をサンドブラスト等によりパターニングし、焼成することによって形成することができる。隔壁7は、これ以外の方法で形成してもよい。隔壁7の形状は、限定されず、例えば、ストライプ形、ミアンダ形、格子形又は梯子形にすることができる。
蛍光体層8は、例えば、蛍光体粉末とバインダとを含む蛍光体ペーストを隣接する隔壁7間の溝内にスクリーン印刷、又はディスペンサーを用いた方法などで塗布し、これを各色(R、G、B)毎に繰り返した後、焼成することにより形成することができる。
1−3.ブラックストライプ
ブラックストライプ13は、隣接する2つの表示電極対3P(表示ライン)間の非放電領域11に設けられる。非放電領域11にブラックストライプ13を設けることによって、蛍光体層8への外光入射を低減することができる。また、表示電極3間の放電により発生した紫外線によって蛍光体層8の蛍光体が励起されて光を発生させるが、ブラックストライプ13を非放電領域11に設けることによって蛍光体からの光が非放電領域11から外部に漏れることを防ぐことができる。さらにブラックストライプ13は、暗色又は黒色であることから表示ライン間を常に暗くすることができる。従って、非放電領域11にブラックストライプ13を設けることによって表示のコントラストを向上させることができる。ブラックストライプ13の幅は、非放電領域11と同程度であることが好ましいが、非放電領域11よりも広くても狭くてもよい。
ブラックストライプ13は、放電空間に露出するように誘電体層4よりも放電空間側に設けられる。ブラックストライプ13は、図1(a)〜(c)では、保護層5を介して誘電体層4上に配置されているが、例えば、図2に示すように、誘電体層4上に直接配置してもよい。この場合、図2に示すようにブラックストライプ13を部分的に覆う保護層5を備えることが好ましい。ブラックストライプ13の全体が露出しているとブラックストライプ13全体が放電時にプラズマに曝されるのでブラックストライプ13がスパッタされやすいが、図2に示すように必要な部分のみを露出させることによって耐スパッタ性を向上させることができる。
また、図2では、保護層5に開口を設けることによってブラックストライプ13を放電空間に露出させているが、保護層5を薄く形成すること等によってブラックストライプ13に含まれるP粒子放出材料中の比較的大きな粒子が保護層5を突き抜けて放電空間に露出されるようにしてもよい。また、図2では、保護層5がブラックストライプ13を部分的に覆っているが、ブラックストライプ13とは重なりをもたないように保護層5を形成してもよい。この場合、保護層5とブラックストライプ13のどちらを先に形成してもよい。
ブラックストライプ13は、誘電体層4に窪みを形成し、その窪みの中に配置してもよく、平坦な誘電体層4上に配置してもよい。ブラックストライプ13は、好ましくは数μm程度の厚さを有しており、平坦な誘電体層4上にブラックストライプ13を配置すると、表面に凹凸が形成される。この凹凸のために、前面側基板構体1と背面側基板構体2を重ね合わせたときに、前面側基板構体1の表面と、隔壁7との間に隙間ができる。この隙間によって放電空間内を排気する際や放電空間内に放電ガス導入する際に、ガスの移動がスムーズになるという利点が得られる。
ブラックストライプ13は、暗色又は黒色の遮光性材料とP粒子放出材料を含む。ブラックストライプ13は、遮光性材料とP粒子放出材料以外の成分を含んでいてもよく、遮光性材料とP粒子放出材料を主成分としてもよく、遮光性材料とP粒子放出材料のみからなってもよい。本実施形態では、ブラックストライプ13に含まれるP粒子放出材料からのP粒子によって放電遅れが改善される。例えば、ブラックストライプ13にはP粒子放出材料を含めずに別途P粒子放出層を形成した場合、2種類の層を作る必要があるので、製造に手間がかかるが、本実施形態では、ブラックストライプ13が遮光とP粒子放出という2つの機能を担うので、P粒子放出層を別途形成する必要がなく、PDPの構造が単純になり製造コストの低減に繋がる。
ブラックストライプ13の形成方法は、特に限定されない。ブラックストライプ13は、例えば、遮光性材料とP粒子放出材料と分散媒を含む材料を印刷法やインクジェット法等によって必要な部位に塗布して、熱処理(焼成又は乾燥)することによって形成することができる。塗布する材料には、バインダ樹脂等他の成分を含めてもよい。インクジェット法による場合、通常、塗布する材料にバインダ樹脂を含めないが、この場合、高温での熱処理が不要になる。
P粒子放出材料の割合は、特に限定されない。但し、P粒子放出材料の割合が多くなりすぎると、遮光性材料の割合が小さくなってブラックストライプ13が光を十分に遮光しなくなる等の問題が生じ得るので、P粒子放出材料の割合は、50wt%以下が好ましい。また、この場合、(1)印刷性がよい、(2)膜厚の均一性がよいという理由でブラックストライプ13の形成が容易になるという利点が得られる。
遮光性材料は、遮光性を有する材料であればよいが、コントラストをより高くするために暗色又は黒色の材料が好ましい。また、遮光性材料は、放電時のプラズマに曝されるため、耐スパッタ性が高い材料が好ましい。遮光性材料としては、例えば、酸化クロム,酸化珪素などのほか,鉄,銅,マンガンなどの酸化物が挙げられる。
P粒子放出材料とは、過去の放電によって励起され放電開始のためのP粒子(電子などの荷電粒子)を放出する材料であり、その種類は、特に限定されない。P粒子放出材料は、透明体である必要はない。P粒子放出材料は、例えば、以下に示す気相法で形成された金属(より具体的には2価の金属)酸化物結晶体(例えば、MgO結晶体、酸化カルシウム結晶体、酸化ストロンチウム結晶体又は酸化バリウム結晶体など)や、このような結晶体にハロゲン元素が添加されたものからなる。上記金属酸化物結晶体は、MgO結晶体に構成が類似しているので同様の効果が得られると考えられる。
以下、P粒子放出材料が、MgO結晶体にハロゲン元素が添加されたもの(以下、「ハロゲン添加MgO結晶体」と呼ぶ。)からなる場合を例にとって説明を進める。また、以下の説明中のMgO結晶体は、無添加のままでもP粒子放出材料として利用可能である。
ハロゲン添加MgO結晶体に添加されるハロゲン元素の種類は、特に限定されない。ハロゲン元素は、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のうちの一種又は二種以上からなる。フッ素の場合に放電遅れの改善効果が長時間持続することが確認されているが、電子状態の類似性からフッ素以外のハロゲンを添加した場合にも同様の効果が得られると考えられる。
ハロゲン元素の添加量は、特に限定されない。ハロゲン元素の添加量は、例えば、1〜10000ppmである。本明細書では、「ppm」は、重量濃度である。
参考実験例では、24〜440ppmの範囲でハロゲン元素の添加量を変化させてもほぼ同様の効果が得られることが確認されていることから、ハロゲン元素の添加量が放電遅れの改善効果に与える影響は大きくないと考えられ、添加量が1〜10000ppm程度の範囲であれば、放電遅れの改善効果が長時間持続すると考えられる。ハロゲン元素の添加量は、例えば、1,5,10,15,20,30,40,50,60,70,80,90,100,120,140,160,180,200,250,300,350,400,450,500,600,700,800,900,1000,1500、2000,3000,4000,5000,6000,7000,8000,9000又は10000ppmである。ハロゲン元素の添加量は、ここで例示した何れか2つの数値の間の範囲内であってもよい。ハロゲン元素の添加量は、燃焼−イオンクロマトグラフ分析によって測定することができる。
ハロゲン添加MgO結晶体の製造方法は、特に限定されない。ハロゲン添加MgO結晶体は、一例では、MgO結晶体とハロゲン含有物質を混合して焼成し、解砕することによって製造することができる。MgO結晶体については、後述する。ハロゲン含有物質としては、例えば、マグネシウムのハロゲン化物(フッ化マグネシウム等)やAl,Li,Mn,Zn,Ca,Ceのハロゲン化物が挙げられる。焼成は、1000〜1700℃で行うことが好ましい。焼成の温度は、例えば、1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600又は1700℃である。焼成の温度は、ここで例示した何れか2つの数値の間の範囲内であってもよい。焼成物の解砕を行う方法は、特に限定されないが、例えば、焼成物を乳鉢に入れて、それを乳棒ですり潰して粉体状にする方法が挙げられる。
ハロゲン添加MgO結晶体は、好ましくは、粉体状であり、そのサイズや形状は特に限定されないが、平均粒径が0.05〜20μmであることが好ましい。ハロゲン添加MgO結晶体は、平均粒径が小さすぎると、放電遅れの改善効果が小さく、平均粒径が大きすぎると、ブラックストライプ13が均一に形成されにくいからである。
ハロゲン添加MgO結晶体の平均粒径は、次の式に従って求めることができる。
式:平均粒径=a/(S×ρ)
(但し、aは、形状係数で6、Sは、窒素吸着法により求まるBET比表面積、ρは、ハロゲン添加MgO結晶体の真密度である。)
ハロゲン添加MgO結晶体の平均粒径は、具体的には、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20μmである。ハロゲン添加MgO結晶体の平均粒径の範囲は、上記具体的な平均粒径として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
MgO結晶体は、電子線の照射によって波長域200〜300nm内にピークを有するカソードルミネッセンス発光を行うという特性を有している。MgO結晶体は、好ましくは、粉体状であり、そのサイズや形状は特に限定されないが、平均粒径が0.05〜20μmであることが好ましい。MgO結晶体は、平均粒径が小さすぎると、放電遅れの改善効果が小さく、平均粒径が大きすぎると、ブラックストライプ13が均一に形成されにくいからである。
MgO結晶体の平均粒径は、式1に従って求めることができる。
式1:平均粒径=a/(S×ρ)
(但し、aは、形状係数で6、Sは、窒素吸着法により求まるBET比表面積、ρは、酸化マグネシウムの真密度である。)
MgO結晶体の平均粒径は、具体的には、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20μmである。MgO結晶体の平均粒径の範囲は、上記具体的な平均粒径として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
MgO結晶体の製造方法は、特に限定されないが、マグネシウム蒸気と酸素とを反応させる気相法で製造することが好ましく、例えば、特開2004−182521号公報に記載された方法や、『材料』昭和62年11月号、第36巻第410号の第1157〜1161頁の『気相法によるマグネシア粉末の合成とその性質』に記載された方法で製造することができる。また、MgO結晶体は、宇部マテリアルズ株式会社から購入してもよい。気相法で製造することが好ましいのは、気相法によりMgO結晶体を製造すると、純度の高い単結晶体が得られるからである。
2.ハロゲン添加MgO結晶体による放電遅れ改善効果を示す参考実験例
以下、ハロゲン添加MgO結晶体による放電遅れ改善効果を示す参考実験例を示す。
以下の実験例では、フッ素が添加されたMgO結晶体(以下、「F添加MgO結晶体」と呼ぶ。)を放電空間に露出するように配置することによる放電遅れ改善効果を調べた。また、フッ素が添加されていない通常のMgO結晶体を放電空間に露出するように配置した場合と比較した。
2−1.F添加MgO結晶体の製造方法
以下の方法でF添加量が互いに異なる5種類のF添加MgO結晶体(サンプルA〜Eと呼ぶ。)を作製した。
まず、MgO結晶体(宇部マテリアルズ株式会社製、商品名:気相法高純度超微粉マグネシア(2000A))と、MgF2(フルウチ化学株式会社製、純度:99.99%)をそれぞれ乳鉢と乳棒を用いて凝集解砕して粉体状にした。
次に、表1に示す混合量になるように、凝集解砕したMgO結晶体とMgF2を秤量し、タンブラー混合機で混合した。
次に、混合したものを大気中1450℃で1時間焼成した。
次に、焼成した粉を凝集解砕して粉体状にして、サンプルA〜EのF添加MgO結晶体を得た。
次に、サンプルAとCのF添加量を燃焼イオンクロマトグラフ分析によって測定した。その結果を表1に示す。また、サンプルAとCのF添加量の測定値から推測されるサンプルB,D,EのF添加量の推定値を図3のグラフに従って求めた。表1ではF添加量の推定値は括弧で囲んで表示した。
Figure 2008287966
2−2.PDPの製造方法
次に、サンプルA、B、C、D又はEのF添加MgO結晶体からなるP粒子放出層15を有する図4(a)〜(c)に示す構造のPDPを以下の方法で製造した。図4(a)〜(c)は、参考実験例のPDPの構造を示す断面図であり、図4(a)は、平面図であり、図4(b)及び(c)は、それぞれ、図4(a)中のI−I断面図及びII−II断面図である。
また、後述する放電遅れ試験の比較例に使用するために、F添加MgO結晶体の代わりにF添加を行っていないMgO結晶体(メーカ,商品名は同上)を用いてPDPを同様の方法及び条件で製造した。
2−2−1.概要
図4(a)〜(c)に示すようにガラス基板1a上に表示電極3、誘電体層4、保護層5、P粒子放出層15を形成することによって前面側基板構体1を作製した。また、ガラス基板2a上にアドレス電極6、誘電体層9、隔壁7及び蛍光体層8を形成することによって背面側基板構体2を作製した。次に、前面側基板構体1と背面側基板構体2を重ね合わせて周縁部を封着材で封止することによって内部に気密な放電空間を有するパネルを作製した。次に、放電空間内を排気後、放電ガスを封入し、PDPを完成させた。
2−2−2.P粒子放出層の形成方法
P粒子放出層15は、詳しくは、以下の方法で形成した。
まず、F添加MgO結晶体をIPA(関東化学株式会社製、電子工業用)1Lに対して2gの割合で混合し、超音波分散機で分散させて凝集解砕させ、スラリーを作製した。
次に、保護層5上に塗装用スプレーガンを用いて上記スラリーをスプレー塗布し、その後にドライエアを吹き付けて乾燥させる工程を数回繰り返すことによってP粒子放出層15を形成した。P粒子放出層15は、F添加MgO結晶体の重量が1m2当り2gとなるように形成した。
2−2−3.その他
その他の条件は、以下の通りにした。
前面側基板構体1:
表示電極3aの幅:270μm
金属電極3b幅:95μm
放電ギャップの幅:100μm
誘電体層4:低融点ガラスペーストの塗布焼成により形成、厚さ:30μm
保護層5:電子ビーム蒸着によるMgO層、厚さ:7500Å
背面側基板構体2:
アドレス電極6の幅:70μm
誘電体層9:低融点ガラスペーストの塗布焼成により形成、厚さ:10μm
アドレス電極6の真上での蛍光体層8の厚さ:20μm
蛍光体層8の材料:Zn2SiO4:Mn(緑蛍光体)
隔壁7の高さ:140μm 頂部での幅:50μm
隔壁7のピッチ(図4(a)の寸法A):360μm
放電ガス:Ne96%−Xe4%、500Torr
2−3.放電遅れ試験
次に、製造した各PDPについて放電遅れ試験を行った。放電遅れ試験は、図5に示す測定用の電圧波形によって行った。リセット放電期間ではサステイン電極3Xとスキャン電極3Yの間でリセット放電を起こさせて誘電体層の電荷状態をリセットし、以前の放電の影響を除去した。予備放電期間では特定のセルを選択した後にサステイン電極3Xとスキャン電極3Yの間で放電を起こさせてP粒子放出材料を励起した。その後、10μs〜50msの休止期間を経過した後、アドレス放電期間においてアドレス電極6に電圧を印加し、この電圧印加時から実際に放電が開始されるまでの時間を測定した。放電開始までの時間は1000回測定し、累積放電確率が90%となる時間を放電遅れと定義した。
このようにして得られた結果を表2、図6及び図7に示す。図6は、サンプルCを用いて製造したPDPと、無添加のMgO結晶体を用いて製造したPDPについての、休止期間と放電遅れとの関係を示すグラフである。図7は、表2をプロットしたものである。
Figure 2008287966
図6から明らかなように、サンプルCを用いて製造したPDPでは、無添加MgO結晶体を用いて製造したPDPに比べて、休止期間が長いところでも放電遅れが短いことが分かる。このことは、サンプルCのような、F添加MgO結晶体は、無添加のMgO結晶体に比べて放電遅れを抑制する効果が長く持続することを意味している。F添加MgO結晶体において放電遅れの改善効果が長時間持続する理由は必ずしも明らかではないが、添加したハロゲン元素がMgO結晶体中の酸素と置換され,これが電子トラップとなって,電子放出特性が向上するためであると推測される。
また、表2及び図7から明らかなように、F添加量が24〜440ppmの範囲において、放電遅れの変化が小さいことが分かる。このことは、F元素の添加量が放電遅れの改善効果に与える影響は大きくないことを示しており、添加量が1〜10000ppm程度の範囲であれば、放電遅れの改善効果が長時間持続することを示唆していると考えられる。
(a)〜(c)は、本発明の一実施形態のPDPの構造を示し、(a)は、正面図であり、(b)及び(c)は、それぞれ(a)中のI−I断面図及びII−II断面図である。 本発明の一実施形態のPDPの構造の変形例を示す、図1(b)に対応した断面図である。 参考実験例において、実施例サンプルB,D,EのF添加量の推定値を求めるためのグラフである。 (a)〜(c)は、参考実験例のPDPの構造を示す断面図であり、(a)は、平面図であり、(b)及び(c)は、それぞれ、(a)中のI−I断面図及びII−II断面図である。 参考実験例の放電遅れの測定に用いた波形を示す。 サンプルCを用いて製造したPDPと、無添加のMgO結晶体を用いて製造したPDPについての、休止期間と放電遅れとの関係を示すグラフである。 参考実験例にかかる、F添加量の測定値又は推定値と、放電遅れとの関係を示すグラフである。 従来のPDPの構造を示す斜視図である。
符号の説明
1:前面側基板構体 1a:前面側基板 2:背面側基板構体 2a:背面側基板 3:表示電極 3a:透明電極 3b:金属電極 3X:サステイン電極 3Y:スキャン電極 4:誘電体層 5:保護層 6:アドレス電極 7:隔壁 8:蛍光体層 9:誘電体層 13:ブラックストライプ 15:プライミング粒子放出層

Claims (6)

  1. 対向配置され且つ間に気密な放電空間を有する前面側基板構体と背面側基板構体とを備え、
    前記前面側基板構体は、基板と、基板上に複数の表示電極対と、前記表示電極対を覆う誘電体層と、隣接する2つの前記表示電極対間の非放電領域に設けられたブラックストライプとを備え、
    前記ブラックストライプは、前記放電空間に露出するように前記誘電体層よりも前記放電空間側に設けられ且つプライミング粒子放出材料を含むプラズマディスプレイパネル。
  2. 前記前面側基板構体は、前記ブラックストライプを部分的に覆う保護層をさらに備える請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記プライミング粒子放出材料は、酸化マグネシウム結晶体からなる請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記プライミング粒子放出材料は、ハロゲン元素が1〜10000ppm添加された酸化マグネシウム結晶体からなる請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記ハロゲン元素は、フッ素である請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. 前記フッ素の添加量は、5〜1000ppmである請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013008643A (ja) * 2011-06-27 2013-01-10 Ulvac Japan Ltd プラズマディスプレイパネルとその製造方法

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