本発明は、レンズを光軸方向に変位駆動して被写体の像を結像させるレンズ駆動装置に関する。
近年、カメラが搭載されたカメラ付き携帯電話機が普及するにつれ、その携帯電話機を用いて様々な被写体を撮影する機会が増えている。例えば、友人や風景など、カメラのレンズからある程度離れた被写体を撮影(通常撮影)したり、バスの時刻表や花びらなど、カメラのレンズと近接した位置にある被写体を撮影(接写撮影)したりする場合がある。
接写撮影(マクロ撮影)の場合、カメラのレンズ位置は、通常撮影時のレンズ位置よりも、僅かに被写体側に近づいた位置にする必要がある。そのため、この種の撮影レンズ系では、レンズを光軸方向に変位駆動する駆動機構を備えており、スイッチの切り替えによってこの駆動機構を駆動し、レンズを光軸方向に移動させることができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたレンズ駆動装置は、移動レンズ体と、移動レンズ体を光軸方向に移動させる駆動機構と、移動レンズ体を光軸方向に移動可能に支持する固定体(ヨーク)と、移動レンズ体の移動を規制する規制手段(板バネ)とを有している。また、駆動機構は、マグネットとコイルを有している。このような構成において、コイルに電流を供給して電磁力を発生させる一方、規制手段によって電磁力に対向する規制力を発生させ、両者の大きさを調整することによって、移動レンズ体を所望の位置に停止させることができる。
しかしながら、上述したヨークや板バネを組み立てる際には、光軸方向かつ径方向において位置決めする必要がある。具体的には、例えば、台座に鏡筒(またはレンズ)とほぼ同じ径を有する円柱が立てられたジグを用いて組立られる。このジグを用いて、例えば、カバー、ヨーク,板バネ,マグネットなどを、光軸方向及び径方向に位置決めしながら順番に固定する必要がある。このように、レンズ駆動装置を製造する工程には、これら部品精度や接着、溶着固定等による組立精度の影響を受けて何度も位置決め作業が必要になることから、作業効率が良いとはいえない。特に、外形寸法を決定するヨークは、従来は曲げ加工により成形していたので、寸法公差(寸法許容差)を小さくすることは難しく、そのため、径方向にガタつきが発生しやすく、組立時に径方向の位置決めしながら固定する必要がある。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、位置決め作業の回数を減らし、作業効率を向上させることが可能なレンズ駆動装置を提供することにある。
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
(1) レンズを保持するとともに光軸方向に移動可能な移動体と、バネ部材を介して前記移動体を支持する支持体と、を有し、レンズを光軸方向に変位駆動して被写体の像を結像させるレンズ駆動装置において、前記支持体は、被写体からの反射光をレンズに取り込む入射窓をもつカバー部と、前記移動体の外周を覆うケース部とを備え、前記カバー部と前記ケース部は一体に形成されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、移動体と支持体を有し、レンズを光軸方向に変位駆動して被写体の像を結像させるレンズ駆動装置において、この支持体は、被写体からの反射光をレンズに取り込む入射窓をもつカバー部と、移動体の外周を覆うケース部とを備えており、これらカバー部とケース部は一体に形成されている。
したがって、例えば、カバー部及びケース部からなる略箱型に、バネ部材,移動体等を収納する際は、カバー部によって光軸方向の位置決めをすることができる。また、ケース部によって径方向(光軸方向と直交する方向)の位置決めをすることができる。その結果、従来のように位置決め用ジグを用いる必要がない。このように、収納作業と同時に位置決め作業も行うことで、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
(2) 前記カバー部及び前記ケース部は、絞り加工によって形成されたひとつの部材からなるものであることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、カバー部及びケース部は、絞り加工によって形成されたひとつの部材からなるものとしたので、従来の曲げ加工に比べ寸法許容差も小さく抑えることができ、加工精度が高いカバー部及びケース部を容易に形成することができる。
(3) 前記カバー部の内側には、前記バネ部材を取り付けるためのスペーサと、前記バネ部材と、前記ケース部に固定されるマグネットとが、前記カバー部に近い方からこの順で重ねて配置されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、上述したカバー部の内側には、バネ部材を取り付けるためのスペーサと、バネ部材と、ケース部に固定されるマグネットとが、カバー部に近い方からこの順で重ねて配置されていることとしたので、カバー部とマグネットによって、スペーサとバネ部材の光軸方向における位置決めが可能となり、ひいては作業効率を向上させることができる。
(4)前記スペーサは、前記ケース部の内面に当接することにより、前記光軸方向と直交する方向の位置が決められているとともに、前記スペーサの前記カバー部側の面が前記カバー部の内面に当接することにより、前記スペーサは、前記光軸方向の位置が決められていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、前記スペーサは、前記ケース部の内面に当接することにより、前記光軸方向と直交する方向の位置が決められているとともに、前記スペーサの前記カバー部側の面が前記カバー部の内面に当接することにより、前記スペーサは、前記光軸方向の位置が決められていることとしたので、その結果、従来のように位置決め用ジグを用いる必要がない。このように、収納作業と同時に位置決め作業も行うことで、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
(5)前記移動体を光軸方向に移動させるための、マグネットと、コイルと、前記マグネットを固定したヨークとを備え、前記カバー部及び前記ケース部は、絞り加工によって形成された前記ヨークであることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、前記移動体を光軸方向に移動させるための、マグネットと、コイルと、前記マグネットを固定したヨークとを備え、前記カバー部及び前記ケース部は、絞り加工によって形成された前記ヨークであることとしたので、その結果、前述の作業効率を向上させることができることに加えて、マグネットからの磁束が、カバー部及びケース部の外側へ漏れることを防止しつつ、磁路の一部を構成することができるので磁気抵抗を小さくし、可動体の推力向上に資することができる。
(6) 前記カバー部は、前記入射窓付近が光軸方向外側に突出し、段部が形成されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、上述したカバー部は、入射窓付近が光軸方向外側に突出し、段部が形成されていることとしたので、この段部によって作られる空間は、例えば、バネ部材の移動量よりも厚みの厚いスペーサとしての機能を有するように構成することができる。したがって、この場合には、スペーサを取り去ることができ、ひいてはレンズ駆動装置の薄型化又は軽量化を図ることができる。
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。また、カバー部とケース部は、従来の曲げ加工に比べ加工精度が高い絞り加工によって一体的に形成されているため、作業効率を高めることができる。
本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置の外観構成を示す斜視図である。
本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置の機械構成を示す分解斜視図である。
レンズ駆動装置からヨークのみを取り出したときの斜視図である。
レンズ駆動装置の組み立て手順の概略を説明するためのフローチャートである。
図3に示すヨークに、スペーサを載置したときの様子を示す斜視図である。
図3に示すヨークに、スペーサと第1の板バネを載置したときの様子を示す斜視図である。
図3に示すヨークに、スペーサと第1の板バネを載置し、その後マグネットを取り付けたときの様子を示す斜視図である。
本発明の他の実施の形態に係るレンズ駆動装置におけるヨークを説明するための説明図である。
符号の説明
1 レンズ駆動装置
11 ヨーク
11a カバー部
11b ケース部
12 スペーサ
13 移動体(スリーブ)
14 第1の板バネ
15 第2の板バネ
16 ワイヤースプリング
17 マグネット
18 コイル
19 ホルダ
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
[機械構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の外観構成を示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の機械構成を示す分解斜視図である。
図1及び図2において、レンズ駆動装置1は、ヨーク11と、スペーサ12と、スリーブ13と、第1の板バネ14と、第2の板バネ15と、ワイヤースプリング16と、マグネット17と、コイル18(第1のコイル181及び第2のコイル182)と、ホルダ19と、を有し、レンズをレンズの光軸Lの方向に変位駆動して、被写体の像を結像させるものである。
なお、レンズが組み込まれたレンズバレル(鏡筒)については、図示を省略している。また、レンズ駆動装置1は、円筒形状のスリーブ13を光軸Lの方向に沿って、被写体(撮像対象)に近づくA方向(前側)、被写体とは反対側(像側)に近づくB方向(後側)の双方向に移動させるものである(図1参照)。また、一又は複数枚のレンズが組み込まれたレンズバレル(上述のとおり図示せず)を保持するスリーブ13は、ワイヤースプリング16等と併せて光軸Lの方向に移動可能に構成されており、「移動体」の一例に相当する。また、ヨーク11、スペーサ12やホルダ19などは、第1の板バネ14及び第2の板バネ15を介してスリーブ13等を光軸Lの方向に移動可能に支持する「支持体」の一例に相当する。また、スリーブ13等は、コイル18やマグネット17によって、光軸Lの方向に駆動される。
ヨーク11は、レンズ駆動装置1の前面及び側面で露出し、その中央には、被写体からの反射光をレンズに取り込むための円形の入射窓111をもつカバー部11aが形成されている(図2参照)。また、ヨーク11は、スリーブ13の外周を覆うケース部11bを有している(図2参照)。そして、これらカバー部11aとケース部11bとは一体に形成されている。かかるヨーク11を用いれば、スペーサ12や第1の板バネ14の位置決めを容易に行うことができる。位置決めの詳細については、[ヨークによる位置決め]において後述する。
スペーサ12は、ヨーク11に取付けられ、その中央には、被写体からの反射光をレンズに取り込むための円形の入射窓121が形成されている。ホルダ19は、像側で撮像素子(図示せず)を保持するものである。
コイル18は、第1のコイル181及び第2のコイル182から構成され、これらは光軸Lの方向に2段に配置され、いずれも円環状となっている。そして、スリーブ13の外周面に所定の間隔をおいて巻き付けられる。また、8個のマグネット17が光軸方向に2段に重ねて配置されており、各段のマグネット17は、前側のマグネット17が第1のコイル181に対して及び後側のマグネット17は第2のコイル182に対して外周側で対向し、図2等に示すように、外形がほぼ四角形状したヨーク11の内周面のうち4箇所の角部分に固定される。
本実施形態では、マグネット17は、いずれにおいても内面と外面とが異なる極に着磁されている。例えば、前側に配置された4個のマグネット17は、その内面がN極に着磁され、外面がS極に着磁され、後側に配置された4個のマグネット17は、その内面がS極に着磁され、外面がN極に着磁されている。
第1の板バネ14及び第2の板バネ15は、双方とも金属製の薄板から形成されており、光軸Lの方向における厚さを同じにしている。また、図2に示すように、第1の板バネ14はスリーブ13の光軸方向の前端面に取り付けられ、第2の板バネ15はスリーブ13の光軸方向の後端面に取り付けられている。なお、本実施の形態では、図2に示すように、第1の板バネ14、第2の板バネ15には、符号を付記していないが、それぞれ円弧状のスリーブ側取り付け部と、スペーサ12に取り付けられるスペーサ側取り付け部と、スリーブ側取り付け部とスペーサ側取り付け部との間に形成され、スリーブ13の光軸方向への移動を規制(付勢)するアーム部と、を有し、各取り付け部は、溶着、接着またはこれら両者を用いてスペーサ12またはホルダ19に固定されている。
また、第2の板バネ15は、電気的に分離された2つのバネ片から構成され、外部電源からの電流をコイル18に供給する際の媒体となるもので、コイル18の巻き始めを一方のバネ片に、巻き終わりを他方のバネ片に電気的に接続されている。
ヨーク11のケース部11bは、第1のコイル181及び第2のコイル182が配置されている領域の光軸方向の寸法、および、マグネット17の光軸方向の寸法よりも大きくなっているため、前側のマグネット17と第1のコイル181との間に構成される磁路、及び、後側のマグネット17と第2のコイル182との間に構成される磁路からの漏れ磁束を少なくすることができ、その結果、スリーブ13の移動量と、第1のコイル181及び第2のコイル182に流す電流との間のリニアリティを向上させることができるようになっている。
レンズ駆動装置1は、円環状のワイヤースプリング16を備えている。ワイヤースプリング16は、マグネット17との間に作用する磁気吸引力により、スリーブ13に対して光軸Lの方向の付勢力を印加する。このため、移動体(スリーブ13等)がコイルの非通電時に自重で変位することを防止することができ、ひいては移動体(スリーブ13等)に所望の姿勢を維持させることができるようになっている。さらに、耐衝撃性を向上させている。
ここで、本実施形態に係るレンズ駆動装置1では、ヨーク11の形状に特徴があり、スペーサ12や第1の板バネ14を、ヨーク11によって位置決めすることができるようになっている。以下、図3〜図7を用いて、このヨーク11及びそれによる位置決めについて詳述する。
[ヨークによる位置決め]
図3は、レンズ駆動装置1からヨーク11のみを取り出したときの斜視図である。特に、図3(a)は、ヨーク11を前側から見たときの斜視図であり、図3(b)は、ヨーク11を後側から見たときの斜視図である。
図3及び図4に示すように、本実施形態におけるヨーク11は、入射窓111を有するカバー部11aと、側面に相当し、スリーブ13(或いはマグネット17)の外周を覆うケース部11bと、から構成されている。これらカバー部11aとケース部11bは、例えば鋼板などの強磁性板(磁性体)などの材質からなり、絞り加工によって形成されている。これにより、加工容易性を高めることができる。さらに、従来の曲げ加工に比べて、絞り加工は加工精度を高めることができる。一例で言えば、曲げ加工の精度は、寸法許容差(または公差)を1/10のオーダーで加工していたが、本実施の形態に示す絞り加工では、寸法許容差(または公差)を1/100のオーダーで加工できるようになっている。また、カバー部11aが磁性体であることで、磁路の一部を構成することができ、磁気抵抗を小さくし、ひいてはスリーブ13の推力向上に資することができる。なお、本発明はこれに限られず、材質や加工法の如何は問わない。
このようなヨーク11を使って、レンズ駆動装置1を組み立てる手順について説明する。図4は、レンズ駆動装置1の組み立て手順の概略を説明するためのフローチャートである。図5は、図3に示すヨーク11に、スペーサ12を載置したときの様子を示す斜視図である(図4のステップS2)。図6は、図3に示すヨーク11に、スペーサ12と第1の板バネ14を載置したときの様子を示す斜視図である(図4のステップS3)。図7は、図3に示すヨーク11に、スペーサ12と第1の板バネ14を載置し、その後、マグネット17を取り付けたときの様子を示す斜視図である(図4のステップS4)。なお、図4に示す組み立て手順については、機械工業的に行うこともできるし、手工業的に行うこともできる。
図4において、まず、後側を上にしたヨーク11を、作業台に載置する(ステップS1)。具体的には、図3(b)に示すように、カバー部11aすなわち、光軸方向における上面(前側面)が底面となるように、逆さに載置する。次に、スペーサ12をヨーク11の内部に載置する(ステップS2)。具体的には、図5に示すとおりである。このとき、接着剤は用いなくてもよい。また、ヨーク11のケース部11bによって、光軸Lに対する径方向の位置決めが載置と同時に行われる。加えて、ヨーク11のカバー部11aによって、光軸方向の位置決めが載置と同時に行われる。ここで、図2において光軸方向と直交する2方向X方向、Y方向を、図中記載の2方向に定義する。スペーサ12の4隅に位置する側端面a面からa’面までのX方向の長さと、側端面b面からb’面までのX方向長さは、図3(b)に示すヨーク11のケース部11bにおける内面A面からA’面までのX方向の長さに等しく設定している。同様に、スペーサ12の4隅に位置する側端面c面からc’面までのY方向の長さと、側端面d面からd’面までのY方向の長さが、図3のヨーク11のケース部11bにおける内面C面からC’面まで、内面D面からD’面までのY方向の長さにそれぞれ等しく設定しているので、スペーサ12をヨーク11の内部に載置すると、スペーサ12をヨーク11に対して位置決めすることができる。即ち、スペーサ12を光軸Lに対して径方向の位置を決めることができる。また、スペーサ12のカバー部11a側の面である上面12Z面は、ヨーク11のカバー部11aの下面と隙間なく当接し、カバー部11aの下面に載置した際に光軸方向の位置が決まる。本実施の形態では、スペーサ12の4隅に配置された側端面と、ヨーク11のケース部11bにおける内面とでスペーサ12の位置を決めるようにしたが他の面、例えば、中央部で前記2部品が位置決めされてもよい。
次に、第1の板バネ14をスペーサ12の上から取り付ける(ステップS3)。具体的には、図6に示すとおり、第1の板バネ14のスペーサ側取り付け部がスペーサ12の所定の位置に設けたピン12Pにより接着剤を介して取り付けられている。すなわちステップS3で、ヨーク11に対し、スペーサ12の径方向が位置決められ、その上でスペーサ12の所定位置に設けたピン12Pを基準として板バネ14が固定され、また、ピン12Pは、スペーサ12の4隅の位置にそれぞれ設けられているため、板バネ14も、光軸Lに対して径方向の位置決めが取りつけと同時に行われる。本例では、ヨーク11と板バネ14は、スペーサ14に設けたピン12Pを介して位置決めしたが、ヨーク11に対するスペーサ12の位置決めと同様に、ヨーク11に対して板バネ14を位置決めしてもよい。
次に、マグネット17を第1の板バネ14の上から取り付ける(ステップS4)。具体的には、図7に示すとおりである。このとき、ヨーク11のケース部11bによって、径方向の位置決めが取り付けと同時に行われる。すなわち、マグネット17の側面17X面は、ヨーク11のケース部11bにおける内側面A’面に当接し、側面17Y面は、ヨーク11の内側面D面に当接する。マグネット17の側面17Xと17Yは角部17S面を挟んでいるので、ヨーク11内部の4隅が直角でなく角部17S面と接しない程度のR部があっても、マグネット17の前記側面17X、17Yの2面がヨーク内面に当接し、径方向の位置決めを確実に行うことができる。ここでは、4隅の上下に配置されているマグネットのうち、コイル181に対向し被写体側(前側)のみのマグネットの一つについてのみ説明したが、他の位置にあるマグネットも同様にヨーク11内面に当接している。
このように、ステップS1〜ステップS4の一連の工程において、ヨーク11のカバー部11aやケース部11bによって光軸方向及び径方向における位置決めが行われるため、作業効率の高い製造工程になる。
一方で、スリーブ13にコイル18が巻回され(ステップS5)、第2の板バネ15のスリーブ側取り付け部がスリーブ13の後側端面に取り付けられ(ステップS6)、第2の板バネ15を挟みこむようにスリーブ13にホルダ19が取り付けられ(ステップS7)、その結果、スリーブ組が完成している(ステップS8)。このスリーブ組を、ヨーク11の後側から挿入する(ステップS9)。
最後に、カバー部11aの入射窓111(前側)から、ワイヤースプリング16をヨーク11内に入れる(ステップS10)。そのため、本実施形態に係るレンズ駆動装置1では、入射窓111(及びスペーサ12の入射窓121)の直径は、ワイヤースプリング16の直径よりも大きくなっている。したがって、組み立て手順の最終段階でワイヤースプリング16を入れることができ(図4参照)、ひいては作業自由度を高めることができる。また、ワイヤースプリング16は、カバー部11aの入射窓111を通じて容易に入れることができるので、(顧客の要望などで)急な設計変更があったとしても、迅速に対応することができる。本実施形態ではワイヤースプリング16を入るように入射窓111の直径を大きくしているが、第1の板バネ14の移動量よりも厚みの厚いスペーサ12、すなわち、可動体(スリーブ13)が光軸方向の移動量よりも厚みの厚いスペーサ12を、カバー部11aと板バネ間に配置しているので、可動体が最大に移動したとしても、カバー部11aから飛び出すことを避けることができる。また、仮にワイヤースプリング16を入れる必要がない場合は、入射窓111の直径を小さく構成することもできるが、第1の板バネ14の移動量よりも厚みの厚いスペーサ12を載置することにより、可動体(スリーブ13)が最大に移動したとしても、カバー部11aとの接触を防止することができる。
このように、本実施形態に係るレンズ駆動装置1を組み立てる際には、ヨーク11のカバー部11aの内側に、第1の板バネの移動量よりも厚みの厚いスペーサ12と、第1の板バネ14と、ケース部11bに固定されるマグネット17と、がカバー部11aに近い方から順にこの順で重ねて配置される。そのため、スペーサ12や第1の板バネ14は、ケース部11bによって位置決めされることになり、ひいては作業効率を高めることができる。換言すれば、本実施の形態では、カバー部11aとケース部11bとを一体に形成したヨーク11を絞り加工により成形したので、従来に比べて高い加工精度で成形できる。このため、ケース部11bの内周面に沿って、スペーサ12、第1の板バネ14、マグネット17を順番に入れ込むことで、径方向の位置精度を保つことができる。同様にして、カバー部11aを基準面として上記した構成要素を積み重ねることで光軸方向の位置決めも従来に比べて容易にできる。
[基本動作]
本実施形態に係るレンズ駆動装置1において、移動体は、通常(第1のコイル181及び第2のコイル182のコイルの非通電時)は、撮像素子側(像側)に位置する。このとき、ワイヤースプリング16は、マグネット17との間に作用する磁気吸引力によって、移動体の変位を規制している。ただし、ワイヤースプリング16とマグネット17との距離はある程度保たれているため、ワイヤースプリング16とマグネット17との磁気吸引力が強くなり過ぎることはない。これにより、移動体の中心軸がずれるのを防ぎ、ひいてはチルト特性の悪化を防ぐことができる。
このような状態において、第1のコイル181及び第2のコイル182に電流を流すと、第1のコイル181及び第2のコイル182は、それぞれ上向き(前側)の電磁力を受けることになる。これにより、第1のコイル181及び第2のコイル182並びにスリーブ13は、被写体側(前側)に移動し始める。
このとき、第1の板バネ14とスリーブ13の前端との間、及び第2の板バネ15とスリーブ13の後端との間には、それぞれスリーブ13の移動を規制する弾性力が発生する。このため、スリーブ13を前側に移動させようとする電磁力と、スリーブ13の移動を規制する弾性力が釣り合ったとき、スリーブ13は停止する。また、第1のコイル181及び第2のコイル182に、逆方向の電流を流すと、第1のコイル181及び第2のコイル182は、それぞれ下向き(後側)の電磁力を受けることになる。
その際、第1のコイル181及び第2のコイル182に流す電流量と、第1の板バネ14及び第2の板バネ15によってスリーブ13に働く弾性力を調整することで、スリーブ13(移動体)を所望の位置に停止させることができる。なお、電磁力と弾性力との釣り合いを利用してスリーブ13を停止させることで、係止部等と係止させるように部材同士を接触させる場合と異なり、衝突音の発生を防ぐことができる。
[実施形態の主な効果]
本実施形態に係るレンズ駆動装置1によれば、ヨーク11はカバー部11aとケース部11bとを一体に形成した略箱型の形状をしており(図3参照)、このヨーク11にスペーサ12、第1の板バネ14、マグネット17等を収納する際は、カバー部11aによって光軸方向の位置決めがなされる。また、ケース部11bによって径方向の位置決めがなされる。したがって、従来のような位置決め用ジグなどを用いなくてもスペーサ12や第1の板バネ14等の各構成要素を位置決めすることができ、その結果、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
また、ヨーク11は、絞り加工によって形成されたひとつの部材からなるものであるので、従来の曲げ加工に比べ寸法許容差も小さく抑えることができ、加工精度が高い部材を容易に形成することができる。
また、カバー部11aとマグネット17によって、スペーサ12と第1の板バネ14を挟んだ状態になるので(図7参照)、スペーサ12と第1の板バネ14の光軸方向における位置決めが可能となり、ひいては作業効率を高めることができる。
[変形例]
図8は、本発明の他の実施の形態に係るレンズ駆動装置1におけるヨーク11を説明するための説明図である。なお、図8(a)及び図8(b)は、本実施形態に係るものである。また、図8(a)及び図8(b)は、図2における太線矢印Xの方向から見たときの側面図である。
図8(c)に示すように、ヨーク11のカバー部11aは、入射窓111付近が光軸L方向外側に突出し、上段面11a'と下段面11a''によって段部が形成されている。このように、上段面11a'と下段面11a''によって空間を確保すれば、図8(b)に示すようにスペーサ12としての機能も発揮することができる。なお、上段面11a'と下段面11a''の段部は、上述した実施の形態と同様に、絞り加工によって成形されているので、加工が容易であり、さらに、加工精度も高くできる。
したがって、ヨーク11のカバー部11aを、図8(c)に示すように上段面11a'と下段面11a''から構成されるようにすれば、スペーサ12を取り去ることができ、ひいてはレンズ駆動装置1の薄型化又は軽量化を図ることができる。
なお、スペーサ12を用いる場合において、スペーサ12の形状については如何なる形状であってもよい。例えば、板状であってもよいし、四隅に配置するパーツ状であってもよい。後者の場合には、板状のスペーサ12と比べればレンズ駆動装置1の軽量化を図ることができる。
また、レンズ駆動装置1は、カメラ付き携帯電話機の他にも、様々な電子機器に取り付けることが可能である。例えば、PHS,PDA,バーコードリーダ,薄型のデジタルカメラ,監視カメラ,車の背後確認用カメラ,光学的認証機能を有するドア等である。
本発明に係るレンズ駆動装置は、位置決めに関する作業効率を高めるものとして有用である。
本発明は、レンズを光軸方向に変位駆動して被写体の像を結像させるレンズ駆動装置に関する。
近年、カメラが搭載されたカメラ付き携帯電話機が普及するにつれ、その携帯電話機を用いて様々な被写体を撮影する機会が増えている。例えば、友人や風景など、カメラのレンズからある程度離れた被写体を撮影(通常撮影)したり、バスの時刻表や花びらなど、カメラのレンズと近接した位置にある被写体を撮影(接写撮影)したりする場合がある。
接写撮影(マクロ撮影)の場合、カメラのレンズ位置は、通常撮影時のレンズ位置よりも、僅かに被写体側に近づいた位置にする必要がある。そのため、この種の撮影レンズ系では、レンズを光軸方向に変位駆動する駆動機構を備えており、スイッチの切り替えによってこの駆動機構を駆動し、レンズを光軸方向に移動させることができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたレンズ駆動装置は、移動レンズ体と、移動レンズ体を光軸方向に移動させる駆動機構と、移動レンズ体を光軸方向に移動可能に支持する固定体(ヨーク)と、移動レンズ体の移動を規制する規制手段(板バネ)とを有している。また、駆動機構は、マグネットとコイルを有している。このような構成において、コイルに電流を供給して電磁力を発生させる一方、規制手段によって電磁力に対向する規制力を発生させ、両者の大きさを調整することによって、移動レンズ体を所望の位置に停止させることができる。
しかしながら、上述したヨークや板バネを組み立てる際には、光軸方向かつ径方向において位置決めする必要がある。具体的には、例えば、台座に鏡筒(またはレンズ)とほぼ同じ径を有する円柱が立てられたジグを用いて組立られる。このジグを用いて、例えば、カバー、ヨーク,板バネ,マグネットなどを、光軸方向及び径方向に位置決めしながら順番に固定する必要がある。このように、レンズ駆動装置を製造する工程には、これら部品精度や接着、溶着固定等による組立精度の影響を受けて何度も位置決め作業が必要になることから、作業効率が良いとはいえない。特に、外形寸法を決定するヨークは、従来は曲げ加工により成形していたので、寸法公差(寸法許容差)を小さくすることは難しく、そのため、径方向にガタつきが発生しやすく、組立時に径方向の位置決めしながら固定する必要がある。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、位置決め作業の回数を減らし、作業効率を向上させることが可能なレンズ駆動装置を提供することにある。
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
(1) レンズを保持するとともに光軸方向に移動可能な移動体と、バネ部材を介して前記移動体を支持する支持体と、を有し、レンズを光軸方向に変位駆動して被写体の像を結像させるレンズ駆動装置において、前記移動体を光軸方向に移動させるための、マグネットと、前記移動体に取り付けられたコイルと、前記マグネットを固定したヨークとを備え、前記ヨークは、絞り加工によって形成されることにより、被写体からの反射光をレンズに取り込む入射窓をもつとともに前記レンズ駆動装置の前面で露出するカバー部と、前記移動体の外周を覆うとともに前記レンズ駆動装置の側面で露出するケース部とを一体に備えるように構成され、前記ヨークによって前記支持体を構成していることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、移動体と支持体を有し、レンズを光軸方向に変位駆動して被写体の像を結像させるレンズ駆動装置において、前記移動体を光軸方向に移動させるための、マグネットと、前記移動体に取り付けられたコイルと、前記マグネットを固定したヨークとを備え、前記支持体を、被写体からの反射光をレンズに取り込む入射窓をもつカバー部と、前記移動体の外周を覆うケース部とを備えた前記ヨークにより構成し、前記ヨークを絞り加工によって形成している。
したがって、例えば、カバー部及びケース部からなる略箱型のヨークに、バネ部材,移動体等を収納する際は、カバー部によって光軸方向の位置決めをすることができる。また、ケース部によって径方向(光軸方向と直交する方向)の位置決めをすることができる。その結果、従来のように位置決め用ジグを用いる必要がない。このように、収納作業と同時に位置決め作業も行うことで、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。また、カバー部及びケース部は、絞り加工によって形成されたひとつのヨークからなるものであるので、従来の曲げ加工に比べ寸法許容差も小さく抑えることができ、加工精度が高いカバー部及びケース部を容易に形成することができる。更に、マグネットからの磁束が、カバー部及びケース部の外側へ漏れることを防止しつつ、磁路の一部を構成することができるので磁気抵抗を小さくし、可動体の推力向上に資することができる。
(2) 前記カバー部の内側には、前記バネ部材を取り付けるためのスペーサと、前記バネ部材と、前記ケース部に固定されるマグネットとが、前記カバー部に近い方からこの順で重ねて配置されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、上述したカバー部の内側には、バネ部材を取り付けるためのスペーサと、バネ部材と、ケース部に固定されるマグネットとが、カバー部に近い方からこの順で重ねて配置されていることとしたので、カバー部とマグネットによって、スペーサとバネ部材の光軸方向における位置決めが可能となり、ひいては作業効率を向上させることができる。
(3) 前記スペーサは、前記ケース部の内面に当接することにより、前記光軸方向と直交する方向の位置が決められており、前記スペーサを介して前記ヨークに対する前記バネ部材の前記光軸方向と直交する方向の位置が決められていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、前記スペーサは、前記ケース部の内面に当接することにより、前記光軸方向と直交する方向の位置が決められるので、その結果、従来のように位置決め用ジグを用いる必要がない。このように、収納作業と同時に位置決め作業も行うことで、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
(4) 前記スペーサは、前記スペーサの前記カバー部側の面が前記カバー部の内面に当接することにより、前記スペーサは、前記光軸方向の位置が決められており、前記スペーサを介して前記ヨークに対する前記マグネットの前記光軸方向に対する位置を決めるようにしたことを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、前記スペーサは、前記スペーサの前記カバー部側の面が前記カバー部の内面に当接することにより、前記スペーサは、前記光軸方向の位置が決められていることとしたので、その結果、従来のように位置決め用ジグを用いる必要がない。このように、収納作業と同時に位置決め作業も行うことで、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
(5) 前記ヨークは、外形が4箇所の角部分を有するほぼ四角形状をしており、前記マグネットは、前記ヨークの前記角部分に形成される2つの内側面にそれぞれ当接するように2つの側面が形成されており、前記マグネットの前記2つの側面が、前記ヨークの前記2つの内側面にそれぞれ当接することにより、前記ヨークの前記角部分において、前記マグネットは、前記光軸方向と直交する方向の位置が決められていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、前記ヨークは、外形が4箇所の角部分を有するほぼ四角形状をしており、前記マグネットは、前記ヨークの前記角部分に形成される2つの内側面にそれぞれ当接するように2つの側面が形成されており、前記マグネットの前記2つの側面が、前記ヨークの前記2つの内側面にそれぞれ当接することにより、前記ヨークの前記角部分において、前記マグネットは、前記光軸方向と直交する方向の位置が決められていることとしたので、収納作業と同時に位置決め作業も行うことで、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
(6) 前記カバー部は、前記入射窓付近が光軸方向外側に突出し、段部が形成されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
本発明によれば、上述したカバー部は、入射窓付近が光軸方向外側に突出し、段部が形成されていることとしたので、この段部によって作られる空間は、例えば、バネ部材の移動量よりも厚みの厚いスペーサとしての機能を有するように構成することができる。したがって、この場合には、スペーサを取り去ることができ、ひいてはレンズ駆動装置の薄型化又は軽量化を図ることができる。
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。また、カバー部とケース部は、従来の曲げ加工に比べ加工精度が高い絞り加工によってヨークとして一体的に形成されているため、作業効率を高めることができる。
本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置の外観構成を示す斜視図である。
本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置の機械構成を示す分解斜視図である。
レンズ駆動装置からヨークのみを取り出したときの斜視図である。
レンズ駆動装置の組み立て手順の概略を説明するためのフローチャートである。
図3に示すヨークに、スペーサを載置したときの様子を示す斜視図である。
図3に示すヨークに、スペーサと第1の板バネを載置したときの様子を示す斜視図である。
図3に示すヨークに、スペーサと第1の板バネを載置し、その後マグネットを取り付けたときの様子を示す斜視図である。
本発明の他の実施の形態に係るレンズ駆動装置におけるヨークを説明するための説明図である。
1 レンズ駆動装置
11 ヨーク
11a カバー部
11b ケース部
12 スペーサ
13 移動体(スリーブ)
14 第1の板バネ
15 第2の板バネ
16 ワイヤースプリング
17 マグネット
18 コイル
19 ホルダ
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
[機械構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の外観構成を示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の機械構成を示す分解斜視図である。
図1及び図2において、レンズ駆動装置1は、ヨーク11と、スペーサ12と、スリーブ13と、第1の板バネ14と、第2の板バネ15と、ワイヤースプリング16と、マグネット17と、コイル18(第1のコイル181及び第2のコイル182)と、ホルダ19と、を有し、レンズをレンズの光軸Lの方向に変位駆動して、被写体の像を結像させるものである。
なお、レンズが組み込まれたレンズバレル(鏡筒)については、図示を省略している。また、レンズ駆動装置1は、円筒形状のスリーブ13を光軸Lの方向に沿って、被写体(撮像対象)に近づくA方向(前側)、被写体とは反対側(像側)に近づくB方向(後側)の双方向に移動させるものである(図1参照)。また、一又は複数枚のレンズが組み込まれたレンズバレル(上述のとおり図示せず)を保持するスリーブ13は、ワイヤースプリング16等と併せて光軸Lの方向に移動可能に構成されており、「移動体」の一例に相当する。また、ヨーク11、スペーサ12やホルダ19などは、第1の板バネ14及び第2の板バネ15を介してスリーブ13等を光軸Lの方向に移動可能に支持する「支持体」の一例に相当する。また、スリーブ13等は、コイル18やマグネット17によって、光軸Lの方向に駆動される。
ヨーク11は、レンズ駆動装置1の前面及び側面で露出し、その中央には、被写体からの反射光をレンズに取り込むための円形の入射窓111をもつカバー部11aが形成されている(図2参照)。また、ヨーク11は、スリーブ13の外周を覆うケース部11bを有している(図2参照)。そして、これらカバー部11aとケース部11bとは一体に形成されている。かかるヨーク11を用いれば、スペーサ12や第1の板バネ14の位置決めを容易に行うことができる。位置決めの詳細については、[ヨークによる位置決め]において後述する。
スペーサ12は、ヨーク11に取付けられ、その中央には、被写体からの反射光をレンズに取り込むための円形の入射窓121が形成されている。ホルダ19は、像側で撮像素子(図示せず)を保持するものである。
コイル18は、第1のコイル181及び第2のコイル182から構成され、これらは光軸Lの方向に2段に配置され、いずれも円環状となっている。そして、スリーブ13の外周面に所定の間隔をおいて巻き付けられる。また、8個のマグネット17が光軸方向に2段に重ねて配置されており、各段のマグネット17は、前側のマグネット17が第1のコイル181に対して及び後側のマグネット17は第2のコイル182に対して外周側で対向し、図2等に示すように、外形がほぼ四角形状したヨーク11の内周面のうち4箇所の角部分に固定される。
本実施形態では、マグネット17は、いずれにおいても内面と外面とが異なる極に着磁されている。例えば、前側に配置された4個のマグネット17は、その内面がN極に着磁され、外面がS極に着磁され、後側に配置された4個のマグネット17は、その内面がS極に着磁され、外面がN極に着磁されている。
第1の板バネ14及び第2の板バネ15は、双方とも金属製の薄板から形成されており、光軸Lの方向における厚さを同じにしている。また、図2に示すように、第1の板バネ14はスリーブ13の光軸方向の前端面に取り付けられ、第2の板バネ15はスリーブ13の光軸方向の後端面に取り付けられている。なお、本実施の形態では、図2に示すように、第1の板バネ14、第2の板バネ15には、符号を付記していないが、それぞれ円弧状のスリーブ側取り付け部と、スペーサ12に取り付けられるスペーサ側取り付け部と、スリーブ側取り付け部とスペーサ側取り付け部との間に形成され、スリーブ13の光軸方向への移動を規制(付勢)するアーム部と、を有し、各取り付け部は、溶着、接着またはこれら両者を用いてスペーサ12またはホルダ19に固定されている。
また、第2の板バネ15は、電気的に分離された2つのバネ片から構成され、外部電源からの電流をコイル18に供給する際の媒体となるもので、コイル18の巻き始めを一方のバネ片に、巻き終わりを他方のバネ片に電気的に接続されている。
ヨーク11のケース部11bは、第1のコイル181及び第2のコイル182が配置されている領域の光軸方向の寸法、および、マグネット17の光軸方向の寸法よりも大きくなっているため、前側のマグネット17と第1のコイル181との間に構成される磁路、及び、後側のマグネット17と第2のコイル182との間に構成される磁路からの漏れ磁束を少なくすることができ、その結果、スリーブ13の移動量と、第1のコイル181及び第2のコイル182に流す電流との間のリニアリティを向上させることができるようになっている。
レンズ駆動装置1は、円環状のワイヤースプリング16を備えている。ワイヤースプリング16は、マグネット17との間に作用する磁気吸引力により、スリーブ13に対して光軸Lの方向の付勢力を印加する。このため、移動体(スリーブ13等)がコイルの非通電時に自重で変位することを防止することができ、ひいては移動体(スリーブ13等)に所望の姿勢を維持させることができるようになっている。さらに、耐衝撃性を向上させている。
ここで、本実施形態に係るレンズ駆動装置1では、ヨーク11の形状に特徴があり、スペーサ12や第1の板バネ14を、ヨーク11によって位置決めすることができるようになっている。以下、図3〜図7を用いて、このヨーク11及びそれによる位置決めについて詳述する。
[ヨークによる位置決め]
図3は、レンズ駆動装置1からヨーク11のみを取り出したときの斜視図である。特に、図3(a)は、ヨーク11を前側から見たときの斜視図であり、図3(b)は、ヨーク11を後側から見たときの斜視図である。
図3及び図4に示すように、本実施形態におけるヨーク11は、入射窓111を有するカバー部11aと、側面に相当し、スリーブ13(或いはマグネット17)の外周を覆うケース部11bと、から構成されている。これらカバー部11aとケース部11bは、例えば鋼板などの強磁性板(磁性体)などの材質からなり、絞り加工によって形成されている。これにより、加工容易性を高めることができる。さらに、従来の曲げ加工に比べて、絞り加工は加工精度を高めることができる。一例で言えば、曲げ加工の精度は、寸法許容差(または公差)を1/10のオーダーで加工していたが、本実施の形態に示す絞り加工では、寸法許容差(または公差)を1/100のオーダーで加工できるようになっている。また、カバー部11aが磁性体であることで、磁路の一部を構成することができ、磁気抵抗を小さくし、ひいてはスリーブ13の推力向上に資することができる。なお、本発明はこれに限られず、材質や加工法の如何は問わない。
このようなヨーク11を使って、レンズ駆動装置1を組み立てる手順について説明する。図4は、レンズ駆動装置1の組み立て手順の概略を説明するためのフローチャートである。図5は、図3に示すヨーク11に、スペーサ12を載置したときの様子を示す斜視図である(図4のステップS2)。図6は、図3に示すヨーク11に、スペーサ12と第1の板バネ14を載置したときの様子を示す斜視図である(図4のステップS3)。図7は、図3に示すヨーク11に、スペーサ12と第1の板バネ14を載置し、その後、マグネット17を取り付けたときの様子を示す斜視図である(図4のステップS4)。なお、図4に示す組み立て手順については、機械工業的に行うこともできるし、手工業的に行うこともできる。
図4において、まず、後側を上にしたヨーク11を、作業台に載置する(ステップS1)。具体的には、図3(b)に示すように、カバー部11aすなわち、光軸方向における上面(前側面)が底面となるように、逆さに載置する。次に、スペーサ12をヨーク11の内部に載置する(ステップS2)。具体的には、図5に示すとおりである。このとき、接着剤は用いなくてもよい。また、ヨーク11のケース部11bによって、光軸Lに対する径方向の位置決めが載置と同時に行われる。加えて、ヨーク11のカバー部11aによって、光軸方向の位置決めが載置と同時に行われる。ここで、図2において光軸方向と直交する2方向X方向、Y方向を、図中記載の2方向に定義する。スペーサ12の4隅に位置する側端面a面からa'面までのX方向の長さと、側端面b面からb'面までのX方向長さは、図3(b)に示すヨーク11のケース部11bにおける内面A面からA'面までのX方向の長さに等しく設定している。同様に、スペーサ12の4隅に位置する側端面c面からc'面までのY方向の長さと、側端面d面からd'面までのY方向の長さが、図3のヨーク11のケース部11bにおける内面C面からC'面まで、内面D面からD'面までのY方向の長さにそれぞれ等しく設定しているので、スペーサ12をヨーク11の内部に載置すると、スペーサ12をヨーク11に対して位置決めすることができる。即ち、スペーサ12を光軸Lに対して径方向の位置を決めることができる。また、スペーサ12のカバー部11a側の面である上面12Z面は、ヨーク11のカバー部11aの下面と隙間なく当接し、カバー部11aの下面に載置した際に光軸方向の位置が決まる。本実施の形態では、スペーサ12の4隅に配置された側端面と、ヨーク11のケース部11bにおける内面とでスペーサ12の位置を決めるようにしたが他の面、例えば、中央部で前記2部品が位置決めされてもよい。
次に、第1の板バネ14をスペーサ12の上から取り付ける(ステップS3)。具体的には、図6に示すとおり、第1の板バネ14のスペーサ側取り付け部がスペーサ12の所定の位置に設けたピン12Pにより接着剤を介して取り付けられている。すなわちステップS3で、ヨーク11に対し、スペーサ12の径方向が位置決められ、その上でスペーサ12の所定位置に設けたピン12Pを基準として板バネ14が固定され、また、ピン12Pは、スペーサ12の4隅の位置にそれぞれ設けられているため、板バネ14も、光軸Lに対して径方向の位置決めが取りつけと同時に行われる。本例では、ヨーク11と板バネ14は、スペーサ14に設けたピン12Pを介して位置決めしたが、ヨーク11に対するスペーサ12の位置決めと同様に、ヨーク11に対して板バネ14を位置決めしてもよい。
次に、マグネット17を第1の板バネ14の上から取り付ける(ステップS4)。具体的には、図7に示すとおりである。このとき、ヨーク11のケース部11bによって、径方向の位置決めが取り付けと同時に行われる。すなわち、マグネット17の側面17X面は、ヨーク11のケース部11bにおける内側面A'面に当接し、側面17Y面は、ヨーク11の内側面D面に当接する。マグネット17の側面17Xと17Yは角部17S面を挟んでいるので、ヨーク11内部の4隅が直角でなく角部17S面と接しない程度のR部があっても、マグネット17の前記側面17X、17Yの2面がヨーク内面に当接し、径方向の位置決めを確実に行うことができる。ここでは、4隅の上下に配置されているマグネットのうち、コイル181に対向し被写体側(前側)のみのマグネットの一つについてのみ説明したが、他の位置にあるマグネットも同様にヨーク11内面に当接している。
このように、ステップS1〜ステップS4の一連の工程において、ヨーク11のカバー部11aやケース部11bによって光軸方向及び径方向における位置決めが行われるため、作業効率の高い製造工程になる。
一方で、スリーブ13にコイル18が巻回され(ステップS5)、第2の板バネ15のスリーブ側取り付け部がスリーブ13の後側端面に取り付けられ(ステップS6)、第2の板バネ15を挟みこむようにスリーブ13にホルダ19が取り付けられ(ステップS7)、その結果、スリーブ組が完成している(ステップS8)。このスリーブ組を、ヨーク11の後側から挿入する(ステップS9)。
最後に、カバー部11aの入射窓111(前側)から、ワイヤースプリング16をヨーク11内に入れる(ステップS10)。そのため、本実施形態に係るレンズ駆動装置1では、入射窓111(及びスペーサ12の入射窓121)の直径は、ワイヤースプリング16の直径よりも大きくなっている。したがって、組み立て手順の最終段階でワイヤースプリング16を入れることができ(図4参照)、ひいては作業自由度を高めることができる。また、ワイヤースプリング16は、カバー部11aの入射窓111を通じて容易に入れることができるので、(顧客の要望などで)急な設計変更があったとしても、迅速に対応することができる。本実施形態ではワイヤースプリング16を入るように入射窓111の直径を大きくしているが、第1の板バネ14の移動量よりも厚みの厚いスペーサ12、すなわち、可動体(スリーブ13)が光軸方向の移動量よりも厚みの厚いスペーサ12を、カバー部11aと板バネ間に配置しているので、可動体が最大に移動したとしても、カバー部11aから飛び出すことを避けることができる。また、仮にワイヤースプリング16を入れる必要がない場合は、入射窓111の直径を小さく構成することもできるが、第1の板バネ14の移動量よりも厚みの厚いスペーサ12を載置することにより、可動体(スリーブ13)が最大に移動したとしても、カバー部11aとの接触を防止することができる。
このように、本実施形態に係るレンズ駆動装置1を組み立てる際には、ヨーク11のカバー部11aの内側に、第1の板バネの移動量よりも厚みの厚いスペーサ12と、第1の板バネ14と、ケース部11bに固定されるマグネット17と、がカバー部11aに近い方から順にこの順で重ねて配置される。そのため、スペーサ12や第1の板バネ14は、ケース部11bによって位置決めされることになり、ひいては作業効率を高めることができる。換言すれば、本実施の形態では、カバー部11aとケース部11bとを一体に形成したヨーク11を絞り加工により成形したので、従来に比べて高い加工精度で成形できる。このため、ケース部11bの内周面に沿って、スペーサ12、第1の板バネ14、マグネット17を順番に入れ込むことで、径方向の位置精度を保つことができる。同様にして、カバー部11aを基準面として上記した構成要素を積み重ねることで光軸方向の位置決めも従来に比べて容易にできる。
[基本動作]
本実施形態に係るレンズ駆動装置1において、移動体は、通常(第1のコイル181及び第2のコイル182のコイルの非通電時)は、撮像素子側(像側)に位置する。このとき、ワイヤースプリング16は、マグネット17との間に作用する磁気吸引力によって、移動体の変位を規制している。ただし、ワイヤースプリング16とマグネット17との距離はある程度保たれているため、ワイヤースプリング16とマグネット17との磁気吸引力が強くなり過ぎることはない。これにより、移動体の中心軸がずれるのを防ぎ、ひいてはチルト特性の悪化を防ぐことができる。
このような状態において、第1のコイル181及び第2のコイル182に電流を流すと、第1のコイル181及び第2のコイル182は、それぞれ上向き(前側)の電磁力を受けることになる。これにより、第1のコイル181及び第2のコイル182並びにスリーブ13は、被写体側(前側)に移動し始める。
このとき、第1の板バネ14とスリーブ13の前端との間、及び第2の板バネ15とスリーブ13の後端との間には、それぞれスリーブ13の移動を規制する弾性力が発生する。このため、スリーブ13を前側に移動させようとする電磁力と、スリーブ13の移動を規制する弾性力が釣り合ったとき、スリーブ13は停止する。また、第1のコイル181及び第2のコイル182に、逆方向の電流を流すと、第1のコイル181及び第2のコイル182は、それぞれ下向き(後側)の電磁力を受けることになる。
その際、第1のコイル181及び第2のコイル182に流す電流量と、第1の板バネ14及び第2の板バネ15によってスリーブ13に働く弾性力を調整することで、スリーブ13(移動体)を所望の位置に停止させることができる。なお、電磁力と弾性力との釣り合いを利用してスリーブ13を停止させることで、係止部等と係止させるように部材同士を接触させる場合と異なり、衝突音の発生を防ぐことができる。
[実施形態の主な効果]
本実施形態に係るレンズ駆動装置1によれば、ヨーク11はカバー部11aとケース部11bとを一体に形成した略箱型の形状をしており(図3参照)、このヨーク11にスペーサ12、第1の板バネ14、マグネット17等を収納する際は、カバー部11aによって光軸方向の位置決めがなされる。また、ケース部11bによって径方向の位置決めがなされる。したがって、従来のような位置決め用ジグなどを用いなくてもスペーサ12や第1の板バネ14等の各構成要素を位置決めすることができ、その結果、位置決め作業の回数を減らすことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
また、ヨーク11は、絞り加工によって形成されたひとつの部材からなるものであるので、従来の曲げ加工に比べ寸法許容差も小さく抑えることができ、加工精度が高い部材を容易に形成することができる。
また、カバー部11aとマグネット17によって、スペーサ12と第1の板バネ14を挟んだ状態になるので(図7参照)、スペーサ12と第1の板バネ14の光軸方向における位置決めが可能となり、ひいては作業効率を高めることができる。
[変形例]
図8は、本発明の他の実施の形態に係るレンズ駆動装置1におけるヨーク11を説明するための説明図である。なお、図8(a)及び図8(b)は、本実施形態に係るものである。また、図8(a)及び図8(b)は、図2における太線矢印Xの方向から見たときの側面図である。
図8(c)に示すように、ヨーク11のカバー部11aは、入射窓111付近が光軸L方向外側に突出し、上段面11a'と下段面11a''によって段部が形成されている。このように、上段面11a'と下段面11a''によって空間を確保すれば、図8(b)に示すようにスペーサ12としての機能も発揮することができる。なお、上段面11a'と下段面11a''の段部は、上述した実施の形態と同様に、絞り加工によって成形されているので、加工が容易であり、さらに、加工精度も高くできる。
したがって、ヨーク11のカバー部11aを、図8(c)に示すように上段面11a'と下段面11a''から構成されるようにすれば、スペーサ12を取り去ることができ、ひいてはレンズ駆動装置1の薄型化又は軽量化を図ることができる。
なお、スペーサ12を用いる場合において、スペーサ12の形状については如何なる形状であってもよい。例えば、板状であってもよいし、四隅に配置するパーツ状であってもよい。後者の場合には、板状のスペーサ12と比べればレンズ駆動装置1の軽量化を図ることができる。
また、レンズ駆動装置1は、カメラ付き携帯電話機の他にも、様々な電子機器に取り付けることが可能である。例えば、PHS,PDA,バーコードリーダ,薄型のデジタルカメラ,監視カメラ,車の背後確認用カメラ,光学的認証機能を有するドア等である。
本発明に係るレンズ駆動装置は、位置決めに関する作業効率を高めるものとして有用である。