JPWO2008156176A1 - フッ素化剤による酸化物ガラスの表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、これらの方法は、気相成長法を利用するため、酸化物ガラスとのフッ素の密着性に劣るという問題点がある。
また、気相成長しうる原料に制限があり、高価な原料を使わざるを得ず、製造コストが高くなる。
本明細書におけるフッ素化剤とは、フッ素原子をその化学構造の一部として含有し、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成することのできる物質、または、例えば熱等による分解の結果、フッ素原子をその化学構造の一部として含有し、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成することのできる物質を意味する。
フッ素化剤としてフッ化水素を使用した場合、酸化物ガラスの表面に存在するフッ化水素が当然問題となるが、フッ化水素以外のフッ素化剤を使用した場合であっても、水分や揮発性有機物の混入によりフッ化水素が副生するため、酸化物ガラスの表面に存在するフッ化水素が問題となる。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、酸化物ガラスの表面にフッ素化剤のガスまたはフッ素化剤を不活性なガスで希釈した混合ガスを接触させる酸化物ガラスの表面処理方法であって、
前記フッ素化剤が、フッ素単体、または、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断して、フッ素原子と金属原子との結合を形成しうるフッ素化合物であり、
前記フッ素化剤が接触している前記酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御することを特徴とする酸化物ガラスの表面処理方法を提供する。
本発明の酸化物ガラスの表面処理方法によれば、酸化物ガラスの表層にフッ素を導入することにより、該酸化物ガラスの表面に所望の特性を付与することができる。例えば、酸化物ガラスの表面の親水性を向上させることにより、酸化物ガラスの表面に防汚性を付与することができる。
また、酸化物ガラスの表層にフッ素を導入することで、該表層の酸化物ガラスの軟化点を下げることもできる。ガラス基板の表面に存在する微細な凹凸、例えば、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板の表面に存在する傷を、レーザ照射により平滑化する方法が提案されている(特開2007−284270号公報)。このような方法が適用されるガラス基板の表面を本発明の方法で予め処理した場合、ガラス基板の表面へのレーザ光線の照射エネルギーを低くすることができる。ガラス基板の表面へのレーザ光線の照射エネルギーを低くすることにより、ガラス基板の変形、ガラス基板における熱的応力の発生、ガラス基板表面の局所的な蒸発等の問題を防止することができる。
また、本発明の方法を適用する酸化物ガラスが微粒子状のガラスフリットである場合、表層での酸化物ガラスの軟化点の低下は、ガラスフリットを構成する酸化物ガラス全体の軟化点の低下につながるので、ガラスフリットの焼成温度を下げることができる。表層での酸化物ガラスの軟化点の低下がガラスフリットを構成する酸化物ガラス全体の軟化点の低下につながることの原理についてはわかっていないが、表面抵抗の低いフッ素が導入されることにより、熔融粘性が低下し、ガラスフリットを構成する酸化物ガラス全体の流動性が向上することにより軟化点が低下すると考えられる。
2 ヒータ
3 冷却手段
10 酸化物ガラス
<定義等>
<酸化物ガラス>
本発明において、「酸化物ガラス」とは、酸化物を主要骨格成分とするガラスであり、具体的には、ソーダライムガラス、合成石英ガラス、リン酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。なお、予めフッ素が導入された酸化物ガラスであっても、本発明の表面処理方法によって、酸化物ガラスの内部よりも多くのフッ素が導入された表層を形成することができる。
なお、酸化物ガラスに表面処理を施す際、酸化物ガラスの表面全体に対して表面処理を施してもよいし、酸化物ガラスの表面のうち一部のみに対して表面処理を施してもよい。後者の場合、表面処理を施したくない部位をマスキングした状態で表面処理を施せばよい。
上述したように、本明細書におけるフッ素化剤とは、フッ素原子をその化学構造の一部として含有し、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成することのできる物質、または、例えば熱等による分解の結果、フッ素原子をその化学構造の一部として含有し、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成することのできる物質である。
このようなフッ素化剤の具体例としては、フッ素単体(F2)、または、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成しうるフッ素化合物(以下、本明細書において、「反応性フッ素化合物」という。)が挙げられる。反応性フッ素化合物の具体例としては、四フッ化ケイ素(SiF4)、五フッ化リン(PF5)、三フッ化リン(PF3)、三フッ化ホウ素(BF3)、三フッ化窒素(NF3)、三フッ化塩素(ClF3)が挙げられる。なお、本発明の方法では、酸化物ガラスの表面におけるフッ化水素濃度を1.0mol%以下に制御するため、フッ化水素はフッ素化剤として使用しない。これらのフッ素化剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上の混合物を使用してもよい。上記のフッ素化剤の中でも、熱などの分解を介する必要がなく、そのままでも反応性が高いため、装置の簡略化ができ、反応時間を短縮できる観点から、フッ素単体が最も好ましい。
混合ガスに使用される不活性なガスとしては、具体的には、窒素ガス、若しくはヘリウムガスやアルゴンガスのような希ガスが挙げられる。但し、不活性なガス中に水分が含まれると、混合ガスとして使用する際にフッ素化剤と反応し、フッ化水素が生成する可能性があり注意が必要である。この観点において、不活性なガスの露点が−10℃以下であることが好ましく、より好ましくは−40℃以下であり、−60℃以下が特に好ましい。
反応の制御のしやすさ、および経済的な観点から、ガス状のフッ素化剤はフッ素化剤を不活性なガスで希釈した混合ガスとして使用することが好ましく、特にフッ素化剤を窒素ガスで希釈した混合ガスとして使用することが好ましく、最も好ましくは、フッ素単体を窒素ガスで希釈した混合ガスとして使用する。
なお、フッ素単体を窒素ガスで希釈した混合ガスとして使用する場合、反応の制御のしやすさ、および経済的な観点から、フッ素単体の濃度が100molppm〜50mol%であることが好ましく、1000molppm〜20mol%であることがより好ましい。100molppm未満であると、反応速度が遅くなり処理時間が長くなる。一方で50mol%を越えると、反応速度が速くなり反応の制御が困難となる。他のフッ素化剤を用いる場合もこの濃度に希釈された希釈フッ素化剤を用いることが好ましい。
本発明の方法では、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる際に、フッ素化剤が接触している酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御することにより、過度のエッチング作用による表面特性の悪化を生じることなしに、酸化物ガラスの表面をフッ素化することができる。
フッ素の導入により、酸化物ガラスの表面にあるケイ素原子のSi−O結合がすべてフッ素原子に置換されると、そのケイ素原子はSiF4となってガス化し、表面から脱離すると考えられる。表面のケイ素原子の脱離は表面の侵食(エッチング)となる。
なお、これら合成石英ガラス以外の酸化物ガラスの場合も、ガラスの骨格を構成する金属原子に結合した酸素原子以外の原子や基(例えば、水酸基)を有している場合はそれらがフッ素原子に置換する反応も生じると推測される。
例えば、エッチング作用により酸化物ガラスの表面に微細な空隙が形成された場合、酸化物ガラスの表面の屈折率が、酸化物ガラスの内部よりも低くなると考えられる。また、酸化物ガラスの表面にフッ素が導入されることによっても、酸化物ガラスの表面の屈折率が、酸化物ガラスの内部よりも低くなる。これらの作用により、ガス状のフッ素化剤を接触させた酸化物ガラスの表面は、酸化物ガラスの内部よりも屈折率が低くなる。これにより、酸化物ガラスの光線透過率が向上することが期待される。
また、酸化物ガラスの表面にフッ素が導入されることによって、酸化物ガラスの表面に極性基が存在している状態となると考えられる。
また、酸化物ガラスの組成によっては、ガス状のフッ素化剤を接触させたことにより、酸化物ガラスの表面に水に対する親和性が高いフッ化物が形成される場合がある。
これらの作用によって、ガス状のフッ素化剤を接触させた酸化物ガラスの表面は、親水性が向上することが期待される。
酸化物ガラスの表面の親水性が向上することによって、該表面の防汚性が向上することが期待される。
したがって、過度なエッチング作用が起こらないように、ガス状のフッ素化剤を酸化物ガラスの表面に接触させる際の条件、例えば、ガス状のフッ素化剤の温度、ガス状のフッ素化剤の圧力(フッ素化剤のガスを使用する場合は全圧、混合ガスを使用する場合フッ素化剤の分圧)、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる時間等の条件を制御する必要がある。
なお、当然のことではあるが、酸化物ガラスの表面へのフッ素の導入の程度を制御するうえでも、上述した条件を制御する必要がある。例えば、ガス状のフッ素化剤の温度を高くする、および/または、ガス状のフッ素化剤の圧力を高くすることにより、酸化物ガラス表面のフッ素原子濃度を高くすることができる。また、ガス状のフッ素化剤の温度を低くし、かつ、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる時間を長くすることにより、または、ガス状のフッ素化剤の圧力を低くし、かつ、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる時間を長くすることにより、フッ素が導入される深さを深くすることができる。
したがって、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる際には、フッ素化剤を接触させている酸化物ガラスの表面におけるフッ化水素の濃度を低く保つ必要がある。具体的には、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる際には、フッ素化剤を接触させている酸化物ガラスの表面におけるフッ化水素を1mol%以下に制御するする必要がある。
なお、酸化物ガラス表面のフッ化水素濃度は、赤外分光法により測定することができる。
本発明において、ガス状のフッ素化剤が接触している酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を0.5mol%以下に制御することがより好ましい。
本発明の第1の態様では、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる手順を、ガス状のフッ素化剤と、固体金属フッ化物と、を含有する密閉容器内で実施することにより、ガス状のフッ素化剤が接触している酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御する。
本発明の第1の態様では、水分や揮発性有機物の混入によりフッ素化剤から副生したフッ化水素を固体金属フッ化物に吸着させることで、フッ素化剤が接触している酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御する。
使用する固体金属フッ化物は特に限定されないが、アルカリ金属のフッ化物、アルカリ土類金属のフッ化物およびこれらの混合物からなる群より選ばれたものが好ましく、その中でもフッ化ナトリウムがとりわけ好ましい。固体金属フッ化物の形状は特に限定されず、密閉容器内に配置するのに適した任意の形状を選択することができる。
フッ素化剤の圧力は、より好ましくは1Pa〜200kPaであり、更に好ましくは1Pa〜100kPaである。
不活性なガスで希釈した混合ガスとして使用する場合、密閉容器内における混合ガスの全圧は特に制限されないが、全圧が高いほど密閉容器を耐圧仕様にする必要があり、装置コストが大きくなる。一方で、全圧が低く、大気圧より小さくなると、外気が密閉装置内にリークし、フッ素化反応を阻害する危険性がある。コストおよび安全性の観点からは、混合ガスの全圧は0〜1MPa(ゲージ圧)が好ましい。
酸化物ガラスの温度は、ガス状のフッ素化剤の温度と同一であっても異なっていてもよい。例えば、酸化物ガラスを伝熱性の良い基板上におき、その基板を冷却しながら、ガス状のフッ素化剤を接触させた場合には、酸化物ガラス内でのフッ素の拡散速度が低下するので、そのような冷却を行わない場合に比べ、酸化物ガラス内におけるフッ素濃度勾配を変えることができる。
酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる時間は、1分〜1週間、特に10分〜2日間が好ましい。
本発明の第2の態様では、酸化物ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる手順を、ガス状のフッ素化剤が連続的に流通している管路内に酸化物ガラスを設置して実施することで、フッ素化剤が接触している酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御する。
本発明の第2の態様では、水分や揮発性有機物の混入によりフッ素化剤から副生したフッ化水素を、連続的に流通しているガス状のフッ素化剤によって酸化物ガラスの表面から運び去ることにより、酸化物ガラスの表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御する。
ガス状のフッ素化剤として不活性なガスで希釈した混合ガスとして使用する場合、管路内における混合ガスの全圧は0〜1MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
但し、フッ素化剤の温度が酸化物ガラスの融点を超えると、酸化物ガラスの軟化や溶融などによって、酸化物ガラスの変形等の問題を生じるおそれがあることから、フッ素化剤の温度は表面処理する酸化物ガラスの融点よりも低くすることが好ましい。例えば、ソーダライムガラス(旭硝子社製 商品名:フロートガラス3mm)の場合、ガス状のフッ素化剤の温度は700℃以下であることが好ましい。ガス状のフッ素化剤の温度は、より好ましく0℃〜650℃であり、更に好ましくは100℃〜600℃である。
酸化物ガラスの温度は、ガス状のフッ素化剤の温度と同一であっても異なっていてもよい。例えば、酸化物ガラスを伝熱性の良い基板上におき、その基板を冷却しながら、ガス状のフッ素化剤を接触させた場合には、酸化物ガラス内でのフッ素の拡散速度が低下するので、そのような冷却を行わない場合に比べ、酸化物ガラス内におけるフッ素濃度勾配を変えることができる。
上述したように、本発明の第2の態様では、管路内におけるガス状のフッ素化剤の温度を高くすることで、酸化物ガラスの表面にフッ素化剤を接触させる時間を短縮できるので、上述したようなオンラインでの実施に適している。
<酸化物ガラスのフッ素原子濃度測定1>
酸化物ガラスの表面および内部のフッ素原子濃度はSIMS分析装置(アルバック・ファイ社製、ADEPT1010)により、一次イオン:Cs+、加速電圧:5kV、ビームカレント:100nA、ラスターサイズ:300×300μm2、試料角度:60°として測定した。このSIMS分析条件は、エッチングレートが約1.0nm/minとなるように決定され、分析間隔は3分とした。実施例における酸化物ガラス表面のフッ素原子濃度とは、酸化物ガラスの表面から約3nmまでの深さにおける平均フッ素原子濃度に相当する。フッ素原子濃度は、酸化物ガラス中のフッ素原子濃度が既知である標準試料を、前述の条件にてSIMS分析し、フッ素原子の相対二次イオン強度と濃度との検量線を作成することで求めた。ここで、フッ素原子の相対二次イオン強度とは、フッ素原子の二次イオン強度(19F-)からバックグラウンドシグナル強度(19F- BG)を差し引いた値と、母体材料のケイ素原子の二次イオン強度(28Si-)との強度比[(19F-−19F- BG)/28Si-]である。バックグラウンドシグナル強度(19F- BG)は、フッ素原子が含まれていない酸化物ガラスをSIMS分析することで求めた。また、表面からの深さは、SIMS分析によって形成されるスパッタクレータの深さを触針式膜厚計によって測定し求めた。
酸化物ガラスの表面および内部の組成を、X線光電子分光分析装置(XPS,アルバック・ファイ社製 QuanteraSXM)にて測定した。XPS分析の測定条件としては、X線源に単色化AlKα線を25Wで用い、光電子検出面積を100μmφ、光電子検出角を45度、パスエネルギーを224eVとし、スパッタイオンにはArイオンを用いた。XPS分析より検出される元素のそれぞれのピーク強度から、フッ素原子濃度プロファイルを求めた。また、表面からの深さは、Si基板上へスパッタ法で作製した、酸化物ガラスと同一組成の膜厚既知の薄膜を、同条件下でXPS分析し、得られた深さ方向の組成プロファイルより見積もった薄膜のスパッタレートから、求めた。
酸化物ガラス表面の算術平均粗さ(Ra)は原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製、Nanopics1000)を用いて測定した。測定領域を4μm×4μmとし、同一サンプル内の異なる3ヶ所において、それぞれRaの値を測定し、その平均を算出した。
酸化物ガラスの表面における、水またはn−ヘキサデカンの接触角を、接触角測定装置(協和界面化学製、製品名;CA−X150)を用いて測定した。被測定表面が清澄な状態で、接触角の測定をする必要がある。被測定表面を洗浄し清澄な状態とする方法としては、表面を壊さない範囲で、公知の洗浄方法が利用できる。例えば、アルコールなどによる溶媒洗浄、UVランプによる光洗浄などが挙げられる。本実施例では、アセトンによる溶媒洗浄を採用した。
酸化物ガラスの真空紫外光透過率を、真空紫外分光計測装置(分光計器社製:VU−201)を用い、180nm〜230nmの測定波長領域で測定した。
<全光線透過率>
酸化物ガラスの全光線透過率を、ヘーズコンピュータ(スガ試験機社製:HZ−2)を用いて測定した。
例1では、図1に示す装置を用いて本発明の第1の態様を実施した。
酸化物ガラスとして合成石英ガラスの平板(2cm×2cm×t2.5mm)を使用した。該合成石英ガラスの平板をSUS316製の冶具に担持させ、冶具とともにニッケル製オートクレーブ(容積1L)に入れた。
次いで、NaFペレット(ステラケミファ製)15gを合成石英ガラス板と接しないようにオートクレーブ内に挿入した後、オイルバスを用いてオートクレーブ外部より加熱し、昇温速度0.5〜2℃/minの範囲で常温から80℃まで昇温した。
次いで、装置内を80℃に保ったまま、装置内の圧力が絶対圧266Pa以下となるまで真空脱気し、1時間保持した。この操作は混入した有機不純物や水分等を取るのが目的である。しかしながら、この操作を実施しても、混入した有機不純物や水分等を完全には除去することはできず、ガス状フッ素化剤を導入した際にフッ素化剤が上記混入物と反応しフッ化水素が副生する。副生したフッ化水素をNaFで吸着させることにより、ガス状フッ素化剤と接触している合成石英ガラスの表面におけるフッ素水素濃度を1mol%以下に制御する。
次いで、ガス状のフッ素化剤として、露点−60℃以下である高純度窒素ガスで1mol%に希釈したフッ素単体(F2)のガス(以下、希釈フッ素ガスと記す。)を、装置内の圧力をゲージ圧0.18MPaとなるまで導入した。希釈フッ素ガスを導入した後、1時間保持することで石英ガラスの表面にフッ素を導入した。
また、上述の方法により、表面にフッ素が導入された合成石英ガラスの表面におけるn−ヘキサデカンの接触角および水の接触角を測定した結果、n−ヘキサデカンの接触角が21°であり、水の接触角は25°であった。この結果は、合成石英ガラスの表面に親水性が付与されたこと、およびその結果として、撥油性が向上したことを示している。
さらに、上述の方法により、表面がフッ素化された合成石英ガラスの算術平均粗さ(Ra)を測定した結果、Raは0.3nmであった。
さらに、上述の方法により、真空紫外光透過率を測定した結果、波長193nmでの透過率は91.0%であった。
ガス状のフッ素化剤に含まれるF2の濃度、ガス状のフッ素化剤の温度、および、合成石英ガラスをガス状のフッ素化剤と接触させる時間を表1に記載したように変更した点を除いて例1と同様に実施して、表面のフッ素原子濃度、接触角(n−ヘキサデカン、水)および真空紫外光透過率を評価した。なお、温度の調整は、−2〜2℃/minの範囲の速度で所定の温度まで昇温もしくは冷却した。結果を表1に示す。また、HF濃度は、ガス中の不純物であるH2Oの濃度で決まるが、露点から換算したH2O濃度からすると、HF濃度は1mol%より少ないことは明らかである。
例1で使用したものと同一の合成石英ガラスの平板をガス状のフッ素化剤と接触させることなしに、表面のフッ素原子濃度、接触角(n−ヘキサデカン、水)および真空紫外光透過率を評価した。結果を表1に示す。
なお、例6では合成石英ガラス表面のフッ素濃度は本質的に0ppmであった。
また、合成石英ガラスの表面におけるn−ヘキサデカンの接触角および水の接触角を測定した結果、n−ヘキサデカンの接触角が6°であり、水の接触角は34°であった。この結果は、合成石英ガラスの表面に親水性が付与されていないこと、およびその結果として、撥油性が向上していないことを示している。
また、例6の合成石英ガラス表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した結果、Raは0.2nmであった。
また、例6の合成石英ガラスの真空紫外光透過率を測定した結果、波長193nmでの透過率は90.6%であった。
合成石英ガラスの代わりに、ソーダライムガラス製の平板(5cm×10cm×t3.0mm)を使用し、ガス状のフッ素化剤に含まれるF2の濃度、ガス状のフッ素化剤の温度、および、ソーダライムガラスの表面にガス状のフッ素化剤と接触させる時間を表2に記載したように変更し、酸化物ガラスのフッ素原子濃度測定2の方法により表面のフッ素原子濃度を、前述の方法により酸化物ガラスの全光線透過率を、それぞれ評価する点を除いて例1と同様に実施して、表面のフッ素原子濃度、水の接触角および全光線透過率を評価した。なお、温度の調整は、−2〜2℃/minの範囲の速度で所定の温度まで昇温もしくは冷却する。結果を表2に示す。
合成石英ガラスの代わりに、表3に示す組成のホウケイ酸ガラス製の粒子(粒子径:20μm)を使用し、ガス状のフッ素化剤に含まれるF2の濃度、ガス状のフッ素化剤の温度、および、ホウケイ酸ガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる時間を表4に記載したように変更し、酸化物ガラスのフッ素原子濃度測定2の方法により表面のフッ素原子濃度を評価する点を除いて例1と同様に実施して、表面のフッ素原子濃度を評価した。結果を表4に示す。
合成石英ガラスの代わりに、例14,例16では無アルカリガラス(旭硝子社製AN100)製の平板(2cm×2cm×t1.0mm)を使用し、例15では無アルカリガラス(旭硝子株式会社製AN100)製の粒子(粒子径:20μm)をそれぞれ使用し、ガス状のフッ素化剤に含まれるF2の濃度、ガス状のフッ素化剤の温度、および、無アルカリガラスの表面にガス状のフッ素化剤を接触させる時間を表5に記載したように変更し、酸化物ガラスのフッ素原子濃度測定2の方法により表面のフッ素原子濃度を、前述の方法により酸化物ガラスの全光線透過率を、それぞれ評価する点を除いて例1と同様に実施して、表面のフッ素原子濃度、水の接触角および全光線透過率を評価した。結果を表5に示す。
例17〜19では、図3に示す装置を用いて、本発明の第2の態様を実施した。図3に示す装置は、その内部にガス状のフッ素化剤を流通可能な管路1を有する。管路1の一部はヒータ2内に収容されている。管路1の下流側には管路1から排出されるガス状のフッ素化剤を冷却するための冷却手段3が設けられている。酸化物ガラス10は、ヒータ2に収容されている部分の管路1内に冶具を用いて設置される。冶具として合成石英ガラス製の平板を用い、酸化物ガラス10は合成石英ガラスと接している面は本質的にフッ素化処理されない。
管路1内に酸化物ガラス10としてソーダライムガラス製の平板(2cm×2cm×t1.0mm)を設置した後、管路1内を窒素ガスでパージしながらヒータ2を用いて管路1内の温度を表6に示す温度まで平均昇温速度15℃/minで加熱し、ついで、ガス状のフッ素化剤として希釈フッ素ガス(F2濃度:2mol%)を表6に示す流量で供給した。所定時間経過後、管路1内を置換し、管路1内を冷却した後、酸化物ガラス10を取り出し、酸化物ガラスのフッ素原子濃度測定2の方法により表面のフッ素原子濃度を、前述の方法により酸化物ガラスの全光線透過率を、それぞれ評価する点を除いて、例1と同様の手順で表面のフッ素原子濃度、水の接触角および全光線透過率を評価した。結果を表6に示す。
なお、2007年6月20日に出願された日本特許出願2007−162921号および2007年7月23日に出願された日本特許出願2007−191009号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (3)
- 酸化物ガラスの表面にフッ素化剤のガスまたはフッ素化剤を不活性なガスで希釈した混合ガスを接触させる酸化物ガラスの表面処理方法であって、
前記フッ素化剤が、フッ素単体、または、酸化物ガラスの骨格中の酸素原子と金属原子との結合を切断してフッ素原子と金属原子との結合を形成しうるフッ素化合物であり、
前記フッ素化剤が接触している前記酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御することを特徴とする酸化物ガラスの表面処理方法。 - 前記酸化物ガラスの表面にフッ素化剤のガスまたはフッ素化剤を不活性なガスで希釈した混合ガスを接触させる手順を、前記フッ素化剤のガスまたは前記フッ素化剤を不活性なガスで希釈した混合ガスと、固体金属フッ化物と、を含有する密閉容器内で実施することにより、前記フッ素化剤が接触している前記酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御することを特徴とする請求項1に記載の酸化物ガラスの表面処理方法。
- 前記酸化物ガラスの表面に前記フッ素化剤を気相で接触させる手順を、フッ素化剤のガスまたはフッ素化剤を不活性なガスで希釈した混合ガスが連続的に流通している管路内に前記酸化物ガラスを設置して実施することで、前記フッ素化剤が接触している前記酸化物ガラス表面におけるフッ化水素濃度を1mol%以下に制御することを特徴とする請求項1に記載の酸化物ガラスの表面処理方法。
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