JPWO2008096873A1 - ラウロラクタムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

シクロドデカノンおよびヒドロキシルアミンから、簡単な工程により効率よくラウロラクタムを製造する方法を提供する。この製造方法は、(a)シクロドデカノンと水溶液中のヒドロキシルアミンとを、過剰のシクロドデカノンの存在下または溶媒の存在下で反応させ、シクロドデカノンオキシムを生成する工程、(b)前記オキシム化工程後の反応液を油相と水相に分離し、シクロドデカノンオキシムの溶液を油相として取得する工程、(c)前記油/水分離工程により油相として取得した前記シクロドデカノンオキシムの溶液から溶解水分を除去する工程、(d)芳香環含有化合物を転位触媒として用いて、転位反応により、シクロドデカノンオキシムからラウロラクタムを生成する工程、および(e)前記転位工程後、生成したラウロラクタムを分離し、精製する工程を有する。

Description

本発明は、シクロドデカノンとヒドロキシルアミンから、工業的に有利で簡便なプロセスによりラウロラクタムを製造する方法に関する。
工業的にアミド化合物を製造する方法としては、対応するオキシム化合物をベックマン転位する方法が一般的である。例えば、工業的に有用であるε−カプロラクタムはシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によって製造される。転位触媒には濃硫酸および発煙硫酸が用いられるが、これら強酸は化学量論量以上に必要であり、中和の際に大量の硫酸アンモニウムが副生する。ナイロン12の原料であるラウロラクタムも同様の方法で製造されるが、中間生成物であるシクロドデカノンオキシムが高融点であるため、製造プロセスはさらに複雑である。ε−カプロラクタムの製造では、シクロヘキサノンオキシム、ε−カプロラクタムとも比較的低融点であるため、無溶媒でオキシム化、転位を行うことができるが、ラウロラクタムの製造では反応溶媒が必要となる。この反応溶媒はシクロドデカノンオキシムの溶解度が高いこと、濃硫酸、発煙硫酸と反応しないことが必須であり、その選択は非常に制約される。
シクロドデカノンとヒドロキシルアミン水溶液から、ラウロラクタムを工業的に製造する方法としては2例のみ知られている。一つはデグッサ社により実用化されたものである。この方法は以下の通りである。イソプロピルシクロヘキサンを溶媒に用いてシクロドデカノンをオキシム化した後、分液して得られたシクロドデカノンオキシムのイソプロピルシクロヘキサン溶液を低温下で濃硫酸中に徐々に加えてシクロドデカノンオキシム硫酸付加体の硫酸溶液をつくり、イソプロピルシクロヘキサンを分離回収後、残存するシクロドデカノンオキシム硫酸付加体の硫酸溶液を昇温して、オキシムのベックマン転位を行う。転位反応後、水を加えて硫酸を希釈した後、生成したラウロラクタムを有機溶媒で抽出する。ここで、抽出溶媒としては、イソプロピルシクロヘキサンまたはシクロドデカノンが用いられる。得られた抽出溶液から抽出溶媒を蒸留・回収し、残渣中のラウロラクタムを蒸留精製する(特許文献1参照)。
この方法では、転位反応工程での硫酸アンモニウムの副生はないが、大量の廃希硫酸の処理に膨大な設備とエネルギーが必要である。また、シクロドデカノンは濃硫酸と反応し、副生物が生成するため、シクロドデカノンが残存しないようにオキシム化反応を完結させる必要があるが、イソプロピルシクロヘキサンが疎水性のため、油/水界面での物質移動速度が遅く、オキシム化に長時間を要する。なお、プロセス全体をみても、溶媒の分離、回収、リサイクル工程が多く、多大な設備費とエネルギーが必要なプロセスである。
もう一つの工業化プロセスは、宇部興産−EMS社で実用化されたものである。この方法は、シクロヘキサノンオキシム、カプロラクタムがそれぞれシクロドデカノンオキシム、ラウロラクタムの良溶媒であることを利用したプロセスである(例えば、特許文献2参照)。すなわち、シクロドデカノンとシクロヘキサノンの混合液とヒドキシルアミン水溶液を混合し、オキシム化を行う。生成するシクロヘキサノンオキシムは融点が低く、シクロドデカノンオキシムの良溶媒であるため、反応は100℃以下、常圧で行うことができる。また、シクロヘキサノンオキシムは適度な親水性を有するため、オキシム化反応は速やかに進行し、シクロヘキサノン、シクロドデカノンは残存することなく、転位工程に送られる。転位触媒としては濃硫酸および発煙硫酸が用いられる。生成するラウロラクタムは高融点であるが、低融点のカプロラクタムへの溶解性が高いため、100℃以下の温度でも反応を行うことができる。得られた転位反応液はアンモニア水で中和し、有機溶媒で抽出する。カプロラクタムはある程度の水溶性を示すが硫酸アンモニウムの塩析効果によって、有機溶媒側に抽出される。次に、抽出されたラウロラクタムおよびカプロラクタムを含む溶液に大量の水を加え、カプロラクタムを水相側に抽出する。分離された有機相からは有機溶媒を回収し、ラウロラクタムを蒸留・精製する。水相を濃縮後、不純物を除去し、カプロラクタムを精製する。
この方法はラウロラクタムとカプロラクタムを併産できる優れた方法であるが、ラウロラクタム製造プロセスとしては、次のような問題がある。(1)カプロラクタムの分離、精製に多大な設備費が必要であり、投資効率が悪い。また、カプロラクタム水溶液の濃縮等エネルギー効率も悪い。(2)ラウロラクタム/カプロラクタムの生産比率に制約がある。(3)カプロラクタムはラウロラクタムより低付加価値であり、ヒドロキシルアミンの利用効率が低い。
一方、近年、大量の硫酸、発煙硫酸を用いない転位触媒の研究も盛んに行われている。強酸を含むものとしては、過酸化レニウムのアンモニウム塩とトリフルオロメタンスルホン酸の混合系(非特許文献1)、インジウムトリフラート(非特許文献2)、イッテルビウムトリフラート(非特許文献3)が報告されている。酸と脱水剤を含むものとしては、N,N−二置換アミド化合物溶媒中で五酸化リンまたは縮合リン酸化合物と、非含フッ素スルホン酸無水物またはスルホカルボン酸無水物を用いて転位反応を行う方法(特許文献3、特許文献4)、予め酸を含む水溶液で処理したゼオライト触媒(特許文献5)を用いる方法が知られている。酸を用いない方法としては、レニウム化合物と含窒素複素環化合物の共存下で転位反応を行う方法(特許文献6,特許文献7)、酸化亜鉛を含有させる方法(特許文献8)が提案されている。特許文献9には、カルボン酸溶媒中で塩化シアヌル酸(トリクロロトリアジン)を脱水剤に用い、オキシムとカルボン酸のエステルを生成させ、転位させる方法が開示されている。特許文献10には、オキシムの塩酸塩を塩化シアヌル酸(トリクロロトリアジン)等を開始剤にし転位させる方法が開示されている。
これらの触媒、製造方法の中には高い転位収率を示すものもあるが、触媒、溶媒が特殊であり、その回収・リサイクル方法等も明確ではなく、工業的プロセスとして完成されてはいない。
また、特許文献11には、(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含み、(2)芳香環を構成する原子として、ヘテロ原子または電子吸引基を有する炭素原子のいずれかの一方または両方を少なくとも3つ含み、(3)前記のヘテロ原子または電子吸引基を有する炭素原子のうち2つが、前記脱離基を有する炭素原子のオルトあるいはパラ位に位置する芳香環含有化合物を転位触媒として、極性溶媒中でオキシム化合物のベックマン転位を行う方法が開示されている。同様の内容は非特許文献4にも開示されている。また、非特許文献5には、特許文献11に類似した複素環構造を持つ燐酸塩がベックマン転位活性を持つことも示されている。
特許文献11で開示された触媒は、シクロドデカノンオキシムの転位反応の活性が高く、ラウロラクタムが高収率で得られることから、ラウロラクタム製造時の転位反応触媒として好適である。しかし、溶媒として推奨されるニトリルは、ヒドロキシルアミンと反応しアミドキシムを生成するため、オキシム化反応工程には使用できない。また、加水分解を受けやすく、触媒除去等の工程での損失が避けられない。水との親和性が高く、転位原料の脱水プロセスが複雑になる等の問題がある。従って、実用可能な工業的プロセスを構築するには、オキシム化工程を含め、原料から最終製品に至るまでの各工程を考慮した溶媒及びプロセスの選定が必要である。
特公昭52−033118 特開平5−4964 特開2001−302602号公報 特開2001−302603号公報 特開2001−072658号公報 特開平09−301951号公報 特開平09−301952号公報 特開2001−019670号公報 特公昭46−23740号公報 特公昭47−18114号公報 特開2006−219470号公報 K.Narasaka,et.al.,Chemistry Letter,pp.489−492(1993) J.S.Sandhu,et.al.,Indian Journal of Chemistry,pp154−156(2002) J.S. Yadav,et.al.,Journal of Chemical Research(S),pp.236−238(2002) K.Ishihara,et.al.,Journal of American Chemical Sociaty,pp.11240−11241(2005) M.Zhu,et.al.,Tetrahedron Letters,pp4861−4863(2006)
本発明は、シクロドデカノンおよびヒドロキシルアミンから、簡単な工程により効率よくラウロラクタムを製造する方法を提供することを目的とする。また、安価な設備の組み合わせでラウロラクタムを製造するプロセスを提供することを目的とする。
本発明は以下の事項に関する。
1. (a)シクロドデカノンと水溶液中のヒドロキシルアミンとを、過剰のシクロドデカノンの存在下または溶媒の存在下で反応させ、シクロドデカノンオキシムを生成する工程(以下、オキシム化工程という)と、
(b)前記オキシム化工程後の反応液を油相と水相に分離し、シクロドデカノンオキシムの溶液を油相として取得する工程(以下、油/水分離工程という)と、
(c)前記油/水分離工程により油相として取得した前記シクロドデカノンオキシムの溶液から溶解水分を除去する工程(以下、脱水工程という)と、
(d)芳香環含有化合物を転位触媒として用いて、転位反応により、シクロドデカノンオキシムからラウロラクタムを生成する工程(以下、転位工程という)と、
(e)前記転位工程後の反応液から、生成したラウロラクタムを分離し、精製する工程(以下、分離・精製工程という)と
を有することを特徴とするラウロラクタムの製造方法。
2. 前記芳香環含有化合物の芳香環が、(1)芳香環を構成する原子として脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含み、(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくとも2つ含み、(3)芳香環を構成する窒素原子または電子吸引基を有する炭素原子のうち3つが(1)記載の脱離基を有する炭素原子のオルトおよびパラ位に位置する構造を有することを特徴とする上記1記載のラウロラクタムの製造方法。
3. 前記芳香環が、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環またはトリアジン環であって、前記脱離基としてハロゲン原子を含むことを特徴とする上記2記載のラウロタクタムの製造方法。
4. 前記芳香環含有化合物が、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、2−クロロ−3,5―ジニトロピリジンおよびトリクロロトリアジンからなる群より選ばれることを特徴とする上記2記載のラウロラウタムの製造方法。
5. 前記脱水工程において、シクロドデカノンオキシムの溶液中に残存する水分量を、1000ppm以下まで低減することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
6. 前記脱水工程において、シクロドデカノンオキシムの溶液中に残存する水分量を、100ppm以下まで低減することを特徴とする上記5記載のラウロラクタムの製造方法。
7. 前記オキシム化工程において、反応がカルボン酸エステルおよび第3級アルコールから選ばれる溶媒の存在下で行われることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
8. 前記オキシム化工程において、反応を過剰のシクロドデカノンの存在下で行い、前記分離・精製工程において、シクロドデカノンを回収し、その少なくとも一部を、前記オキシム化工程にリサイクルすることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
9. 前記分離・精製工程において、転位工程後の反応液に水を混合し、転位触媒の前記芳香環含有化合物を水溶性化合物に転換し、ラウロラクタムの溶液と分離することを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
10. 前記分離・精製工程において、転位工程後の反応液から前記転位触媒を回収し、前記転位工程にリサイクルすることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
11. 前記分離・精製工程において、転位工程後の反応液からラウロラクタムを晶析させて取得し、晶析母液中に前記転位触媒を回収して前記転位工程にリサイクルすることを特徴とする上記10記載のラウロラクタムの製造方法。
12. 前記転位工程において、シクロドデカノンオキシムの転化率を95%以下とすることを特徴とする上記10または11記載のラウロラクタムの製造方法。
本発明では、濃硫酸や発煙硫酸を用いないため、硫安等の副生物が生成せず、従来に比べ、中和、抽出分離、蒸留回収工程等の工程が大幅に削減され、簡単なプロセスでラウロラクタムを製造することができる。
また、オキシム化反応、転位反応を同一の溶媒で行うため、製造プロセスが簡素化され、容易に溶媒をリサイクルすることができる。
図1は、「(1)触媒を失活させる方法」を採用したときの態様の1例を示すフローチャートである。図中、*1)「回収溶媒」、「溶媒追加分」は、溶媒を使用した場合であり、*2)「回収シクロドデカノン」は、シクロドデカノン過剰の条件でオキシム化反応を行った場合である。 図2は、「(2−1)蒸留により触媒を回収する方法」を採用したときの1例を示すフローチャートである。この図は、シクロドデカノン過剰の条件でオキシム化反応を行った場合を示す。 図3は、「(2−2)ラウロラクタムを晶析分離する方法」によりラウロラクタムと触媒と分離する方法を採用したときの1例を示すフローチャートである。
以下、本発明について詳細に説明する。
ラウロラクタムの製造方法においては、転位触媒の選定が重要である。本発明に使用される転位触媒は芳香環含有化合物が好適に用いられる。転位触媒として使用される芳香環含有化合物は、(1)芳香環を構成する原子として脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含み、(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくとも2つ含み、(3)芳香環を構成する窒素原子または電子吸引基を有する炭素原子のうち3つが(1)記載の脱離基を有する炭素原子のオルトおよびパラ位に位置する有機化合物が好ましい。
芳香環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環、トリフェニル環等の単環または多環式芳香環ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環、アズレン環、ピレン環等の縮合多環式芳香環や;ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、フラザンピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等の芳香族複素環が好ましく、特にベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましい。
脱離基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、スルホニルオキシ基(ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基(トシル基)OTs等のアリールスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基OMs、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(トリフラート基)OTf、トリクロロメタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基等のアルカンスルホニルオキシ基など)、スルホニルハライド基(スルホニルクロリド、スルホニルブロミド基等)、ジアゾニウム基、カルボニルハライド基(カルボニルクロリド基など)などを例示することができる。特に、ハロゲン原子が好ましく、中でも塩素原子が好ましい。
電子吸引基としては、公知の電子吸引基であれば特に制限されないが、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ニトロ基、ハライド基、カルボニル基、スルホニル基等などを例示することができ、中でもシアノ基、ニトロ基が好ましい。
転位触媒として具体的には、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル、4−フルオロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル、4−ブロモ−3,5−ジニトロベンゾニトリル、4−クロロ−1,3,5−トリニトロベンゼン、4−トリフルオロメチル−3,5−ジニトロベンゾニトリル、4−p−トルエンスルホニルオキシ−3,5−ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロリド、ピクリルブロミド、ピクリルフルオリド等のベンゼン環式化合物、および2−クロロ−3,5−ジニトロピリジン、2−ブロモ−3,5−ジニトロピリジン、2−フルオロ−3,5−ジニトロピリジン、トリクロロトリアジン、トリブロモトリアジン、トリフルオロトリアジン等の複素環式化合物を挙げることができる。
特に好ましくは、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、2−クロロ−3,5―ジニトロピリジン、トリクロロトリアジン等が挙げられるが、トリクロロトリアジンは高活性で安価であり、特に好適である。
本発明の製造方法において、シクロドデカノンとヒドロキシルアミンが、原料として使用される。シクロドデカノンは、工業薬品として容易に入手することができる。例えば、インビスタ社はシクロドデカノン、シクロドデカノール混合物を販売しているので、混合物中のシクロドデカノールを脱水素しシクロドデカノンに転換して使用することができる。
もう一つの出発原料であるヒドロキシルアミンは不安定なため、ヒドロキシルアミン硫酸塩又はヒドロキシルアミン炭酸塩等のヒドロキシルアミンの酸塩の水溶液として製造、販売されている。反応時に、アンモニア水等の塩基を加えて、ヒドロキシルアミンを遊離させて使用する。オキシム化工程中には、予めヒドロキシルアミンを遊離させたヒドロキシルアミン水溶液を供給してもよいが、通常は、オキシム化反応装置中に、ヒドロキシルアミンの酸塩(好ましくは硫酸塩)の水溶液と、塩基(好ましくはアンモニア水)を供給して、反応装置中でヒドロキシルアミンを遊離させる。
生成するシクロドデカノンオキシムが高融点であるため、オキシム化反応および転位反応には、シクロドデカノンオキシムを溶解する溶媒が必要である。そのため本発明では、原料のシクロドデカノンをヒドロキシルアミンに対して過剰の割合で供給して、反応にあずからない過剰のシクロドデカノンを溶媒として使用するか、原料以外の化合物を溶媒として使用して反応を行う。
以下の説明で、用語「溶媒」には、明示しないかぎり、シクロドデカノンを含まないものとする。
本発明で、好適に使用される溶媒は、オキシム化反応の溶媒(オキシム化溶媒という)として好ましく、且つ転位反応の溶媒(転位溶媒という)として好ましいものである。
オキシム化溶媒に求められる要件は、まずシクロドデカノンオキシムの溶解性が高いことである。下式で定義される溶解度パラメーターを指標にすると7.5から13.0、特に8.0から12.5の溶媒がシクロドデカノンオキシムの溶解性が優れている。
ここで、溶解度パラメーターは、水素結合等、分子間の結合力の強さを示し、大きいほど極性が高い。溶解度パラメーターが近いものは相溶性が高くなる。同パラメーターは、ΔH、標準沸点、密度のデータから計算でき、ΔHについては分子構造から推算できる。本発明においては、いくつかの溶媒について、シクロドデカンオキシムの溶解度を実測し、計算で求めた溶解度パラメーターとの対応を比較し、指標を定めた。
δ=((ΔH−RT)/V)1/2
ここで、δ:溶解度パラメータ、ΔH:蒸発のエンタルピー変化、R:気体定数、T:絶対温度、V:モル容積)
シクロドデカノンオキシムの溶解性に優れる溶媒であってもシクロドデカノン及び/又はヒドロキシルアミンと反応する溶媒は除外される。例えば、ケトン、アルデヒドはヒドロキシルアミンと反応し、ケトキシム、アルドキシムを生成するため、使用できない。ニトリルはヒドロキシルアミンと反応しアミドキシムを生成する。アミドもヒドロキシルアミンと付加体を生成する。一方、アミンはシクロドデカノンと反応し、シッフベースを形成する。これらの溶媒はシクロドデカノンオキシムの溶解性が良好であっても、除外される。
シクロドデカノンオキシムの溶解性に優れ、シクロドデカノン及び/又はヒドロキシルアミンと反応しなければ、オキシム化溶媒として使用でき、例えば脂環式炭化水素、縮合芳香環水添物、芳香族炭化水素、中高級アルコール、エーテル類、グライム類、エステル類等が挙げられる。
上記溶媒のうち疎水性の高いものはオキシム化速度が遅く、反応に長時間を要する。一方、親水性の高いものは水相に溶解するため、油、水両相から溶媒を回収しなければならず、設備面、エネルギー面で不利である。例えば、n−ヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、n−ドデカン等の鎖式炭化水素や、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の水溶性の炭素数1〜2のアルコール、エーテル類は上記理由で不利である。逆に、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、テトラリン、デカリン等縮合芳香環水添物、イソプロピルシクロヘキサン等の側鎖を持った脂環式炭化水素等にはヒドロキシルアミンが溶け難く、オキシム化反応速度が遅い。
従って、特に好ましいものは、適度の親水性を有する中高級アルコール、エーテル類、グライム類(エチレングリコールを縮合して得られるポリエーテル)、エステル類等がオキシム化溶媒として好適と考えられる。
一方、転位溶媒としては、(1)シクロドデカノンオキシム及びラウロラクタムの溶解性に優れていること、(2)前記転位触媒を溶解し、転位触媒と反応しないこと、(3)回収、リサイクルが容易で熱的、化学的安定性が高いこと、が必要である。
オキシム化溶媒として挙げた脂環式炭化水素、縮合芳香環水添物、芳香族炭化水素、中高級アルコール、エーテル類、グライム類およびエステル類等は、転位触媒との反応性が小さいものであれば、一般に転位溶媒としても使用できる。オキシム化溶媒として好ましい中高級アルコール、エーテル類、グライム類、エステル類の中では、次のとおり特にエステル類、3級アルコールが好ましい。
エステル類は適度の親水性を持ち、転位触媒とも反応しないため、オキシム化工程、転位工程の両工程を通して好適な溶媒である。エステルとしては、カルボン酸エステルが好適であり、融点が100℃以下のエステルであれば、使用上の制約を受けない。アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アジピン酸ジブチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸メチル、イタコン酸ジエチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソペンチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペインチル、吉草酸エチル、グルタル酸ジエチル、クロトン酸エチル、コハク酸ジエチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、ノナン酸エチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、メタクリル酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸メチル等が溶媒として用いられるが酢酸エチル、酢酸nブチルは低粘度であると共に安価で容易に入手でき、溶媒として特に適している。
一方 、オキシム化溶媒として好適な中高級アルコールは、一般的には転位溶媒としては適当ではないと考えられた。なぜならば、アルコールは前記転位触媒と反応してアルキルアリールエーテルを生成するからである。例えば、1−プロパノールはトリクロロトリアジンと反応してプロポキシジクロロトリアジンが生成し、最終的にはトリプロポキシトリアジンとなる。これらアルキルアリールエーテルは転位触媒として作用しない。
しかし、発明者らは、アルコール共存下でのシクロドデカノンオキシムの転位反応について鋭意検討した結果、アルコールと触媒との反応はシクロドデカノンオキシムと触媒とのアリールエーテル生成反応に比べ遥かに遅く、特に第3級アルコールを用いた場合、シクロドデカノンオキシム存在下では触媒とアルコールによるエーテル形成反応は無視できることを発見した。すなわち、第3級アルコールを溶媒に用いることによって、オキシム化反応及び転位反応を同一溶媒で行うことが可能になり、ラウロラクタムを製造する簡単なプロセスを完成した。第3級アルコールの種類には、特に制約はなく、炭素数4〜18、好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8程度を有する脂肪族(脂環式を含む)アルコールが挙げられる。例えば、t−ブタノール、t−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール等が挙げられるが、安価で容易に入手可能なt−ブタノールが好適である。
エーテル類およびグライム類については、末端にヒドロキシ基を有するものは、上記アルコールと同様に転位触媒と反応して、転位活性を持たないアルキルアリールエーテルが生成するので、通常はヒドロキシ基を有さないものが好ましい。一方、末端をアルキル基で封じたエーテルは、疎水性が高くなるので、一般にオキシム化速度は遅くなる。
<<製造工程>>
以下、製造工程に沿って、ラウロラクタムの製造方法を説明する。特に明示しない場合には、過剰のシクロドデカノンを使用する場合と、溶媒を使用する場との両方の製造方法に当てはまる。
<オキシム化工程>
オキシム化工程は、シクロドデカノンとヒドロキシルアミン水溶液を反応させ、シクロドデカノンオキシムを生成する工程である。オキシム化工程中では、反応液は均一ではなく、ヒドロキシルアミン水溶液は水相として、シクロドデカノンまたはシクロドデカノン溶液は油相として存在している。反応により生成するシクロドデカノンオキシムは、油相に溶解する。
オキシム化反応は高温で行っても何ら差し支えないが、ヒドロキシルアミンが水溶液であるため、100℃以上で反応を行うには加圧容器が必要になる。従って、100℃以下、常圧で反応を行うのが好ましい。一方、低温での反応は反応速度が遅くなるだけである。従って、好ましくは60℃以上、より好ましくは75℃以上である。また、シクロドデカノンを過剰に使用する場合には、80℃以上、特には90℃以上とすることが好ましい。
本反応は、大気開放で行うこともできるが、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス又は窒素ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
オキシム化反応時間は温度によって異なるが、75℃〜95℃で反応を行った場合、0.5時間から10時間、好ましくは1時間から6時間である。反応時間が短い場合、未反応の原料(溶媒使用の場合:ヒドロキシルアミン及びシクロドデカノン; シクロドデカノン過剰の場合:ヒドロキシルアミン)が残る。未反応原料は原料製造工程等に循環することも可能であるが、循環設備が必要になり好ましくない。反応時間が長い場合、オキシム化装置が長大になり好ましくない。
オキシム化反応装置は回分式反応装置、半回分式反応装置、管型連続反応装置、攪拌槽型連続反応装置等の一般に用いられる反応装置を使用することができるが、攪拌槽型連続多段反応装置が適している。攪拌槽型連続多段反応装置を用いる場合、第1槽にヒドロキシルアミン水溶液をフィードし、最終槽にシクロドデカノン溶液(またはシクロドデカノンのみ)をフィードし、水相は後段の槽に向け、油相は前段の槽に向けて逐次送液して、未反応原料を残すことなく反応させることが望ましい。
シクロドデカノン過剰で反応させるときは、オキシム化工程にフィードされるシクロドデカノンとヒドロキシルアミンの比は、シクロドデカノンオキシムのシクロドデカノンへの溶解度によって下限が規定される。シクロドデカノン量が過小の場合、オキシム化工程から転位工程でシクロドデカノンオキシムが析出する場合があり、ハンドリング性が悪化する。溶解度は温度によって異なるため、オキシム化工程から転位工程で、シクロドデカノンオキシムが析出しない範囲で、比と工程の温度が決められることが好ましい。オキシム化工程から転位工程までの間の最低温度が95℃の場合、ヒドロキシルアミン純分100重量部に対し、シクロドデカノン400から1400重量部、好ましくは600から900重量部である。シクロドデカノン量が過大の場合、生成するシクロドデカノンオキシム、ラウロラクタムの濃度が低く、過大な反応装置やシクロドデカノン回収塔が必要となり、生産性が悪い。
なお、上記シクロドデカノンフィード量を過剰率(フィードするシクロドデカノン量/反応するシクロドデカノン量(%))で表すと172から353%、好ましくは208から263%に相当する。
また、溶媒を使用する場合、ヒドロキシアミンとシクロドデカノンのフィード割合は、一般にほぼ等モルとなるように供給することが好ましい。供給されるシクロドデカノンと溶媒の比は、溶媒量が過小の場合、オキシム化工程から転位工程でシクロドデカノンオキシムが析出する場合があり、ハンドリング性が悪化する。溶解度は、使用する溶媒および温度によって異なるため、オキシム化工程から転位工程で、シクロドデカノンオキシムが析出しない範囲で、比と工程の温度が決められることが好ましい。オキシム化工程から転位工程までの間の最低温度が75℃の場合、シクロドデカノン100重量部に対し、溶媒5〜30重量部、好ましくは15〜27重量部である。溶媒量が過大の場合、生成するシクロドデカノンオキシム、ラウロラクタムの濃度が低く、過大な反応装置や溶媒回収塔が必要となり、生産性が悪い。
尚、シクロドデカノンを過剰で使用する場合に、油相−水相間の物質移動を促進し、オキシム化速度を向上させる目的で、必要により界面活性剤や親水性のある溶剤を添加してもよい。親水性溶剤はヒドロキシルアミンと反応しないものであれば、特に制約はないが、水より低沸点のアルコール類が適している。親水性のある溶剤の添加量はシクロドデカノンに対し、20%以下、好ましくは10%以下である。
<油/水分離工程>
次の油/水分離工程では、オキシム化工程後の反応液を、油相と水相に分離し、シクロドデカノンオキシムが溶解している油相を取得する。油相と水相の分離方法としては、静置分離、遠心分離、サイクロンを用いた分離等の一般的な分離方法が利用できるが、工業的な連続工程では、オキシム化反応装置から反応液が分液装置に送られ、そこで油相と水相が分離されて抜き出される。オキシム化反応装置の形式によっては、反応装置から油相と水相を抜き出してもよい。
ヒドロキシルアミン硫酸塩{Rashig法(亜硫安法:硝酸アンモニウム水溶液を硫酸水素イオンの存在下、二酸化イオウで還元してヒドロキシアミド−N,N−ジスルフェートとし、これを加水分解してヒドロキシルアミン硫酸塩を得る方法)で製造されたヒドロキシルアミン}水溶液とアンモニア水を用いてオキシム化を行った場合、分離された水相からは、硫安が副生成物として得られる。この硫安はオキシム硫安と呼ばれ、背景技術述べた転位工程で副生する硫安(転位硫安と呼ばれる)に比べ容易に精製され、商品として出荷できる。なお、HPO法(リン酸ヒドロキシルアミンを製造する方法)で製造されたヒドロキシルアミンを用いる場合はオキシム化工程においても硫安は生成しない。
また、水相に溶解したシクロドデカノンオキシムを回収する目的で、例えば次工程で水と共に留去した溶媒またはシクロドデカノンを水相と交流接触させ、シクロドデカノンオキシムを抽出してもよい。また、水蒸気蒸留等の方法で、水相に溶解したシクロドデカノンオキシム、溶媒および/またはシクロドデカノンを回収してもよい。
<脱水工程>
次の脱水工程は、油/水分離工程で取得した油相中に溶解した水を除去する。油相中に存在する水分(溶解水)は微量であるが、水は転位触媒を失活させ、転位反応自体にも悪影響を及ぼすため、脱水を行うことが好ましい。脱水は吸着剤、脱水剤と接触するなどの方法を用いることもできるが、溶解水を溶媒またはシクロドデカノンと共に(共沸)留去する方法が好ましい。また、窒素等の不活性ガスを吹き込む方法も好ましい。
留出した含水溶媒(エステル、第3級アルコール等)および/またはシクロドデカノンはオキシム化工程にリサイクルされる。残渣(シクロドデカノンオキシム溶液)は転位工程に送られる。油相中の水分濃度が1000ppm以下、好ましくは100ppm以下となるように水分を除去する。
<転位工程>
脱水したシクロドデカノンオキシムの溶液は、転位工程に送られる。転位工程では、前述した芳香環含有化合物を転位触媒として用いて、転位反応により、シクロドデカノンオキシムからラウロラクタムを生成させる。
なお、助触媒として塩化亜鉛等のルイス酸性を有する金属塩または塩化水素等のブレンステッド酸を加え、転位反応速度を向上させることもできる。特にルイス酸は、シクロドデカノンオキシムの加水分解を加速することなく、転位反応速度を向上させることができるので好ましい。ルイス酸としては、特に制約はなく塩化亜鉛、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、四塩化スズ等が一般的であるが、塩化亜鉛、四塩化スズが好適であり、塩化亜鉛は反応速度向上効果が顕著であり、特に好ましい。
転位触媒の添加量はシクロドデカノンオキシム中の水分量の影響によって異なるが、シクロドデカノンオキシムに対し、0.01モル%から20モル%、好ましくは0.1モル%から5モル%である。触媒の添加量が過少である場合には、転位速度が遅く、反応器が長大になり好ましくない。一方、触媒の添加量が過多の場合には、触媒コストが上がり、触媒の後処理またはリサイクルのためのコストが増大し好ましくない。助触媒の添加量は触媒に対し0.1倍モル量から10倍モル量、好ましくは0.5倍モル量から5倍モル量である。助触媒添加量が過少な場合、転位速度向上効果が乏しく、必要以上に添加してもさらに転位速度が向上することはない。
転位工程の反応温度は50℃から160℃、好ましくは70℃(または80℃)から110℃である。反応温度が低すぎる場合、反応速度が遅く、反応時間が長くなるため好ましくない。また、低温ではシクロドデカノンオキシムの転位溶媒またはシクロドデカノン(シクロドデカノン過剰使用の場合)への溶解度が低くなり、溶媒またはシクロドデカノンの回収・リサイクル量が増大し好ましくない。一方、反応温度が高すぎる場合、転位発熱によって温度が急上昇し、反応が制御できなくなるため好ましくない。更に、反応温度が高すぎる場合、縮合反応等のため転位収率が低下すると共に、着色等製品品質が低下するため好ましくない。
転位工程の反応時間は5分から10時間、好ましくは20分から4時間である。反応時間は触媒の種類、触媒濃度、反応温度によって異なるが、反応の制御が容易で、反応器容積が過大にならないように前記反応条件を調整する。
転位工程のシクロドデカノンオキシム転化率は反応時間によって調節される。シクロドデカノンオキシム転化率を100%にすれば、シクロドデカノンオキシムとラウロラクタムの分離が不要であり、ラウロラクタムの精製が容易で精製コストが軽減されるメリットがある。しかし、本発明に用いる触媒はシクロドデカノンオキシム濃度が低くなると溶存する微量の水と反応して、失活するため、意図的にシクロドデカノンオキシム転化率が100%に達しないうちに転位反応を終了し、次の分離・精製工程において、ラウロラクタムの一部を分離後、残存するシクロドデカノンオキシム、溶媒またはシクロドデカノン(シクロドデカノン過剰使用の場合)、触媒、残存するラウロラクタムを転位工程前段にリサイクルすることもできる。このプロセスを採用した場合、触媒のターンオーバーが改善され、触媒コストが軽減される。
転化率に関してはプロセス全体の経済性を考慮し、いずれを選択しても差支えない。なお、触媒をリサイクルする場合はシクロドデカノンオキシムの転化率80%〜95%が好適である。シクロドデカノンオキシムの転化率80%未満の場合、リサイクルされるシクロドデカノンオキシムが多く、反応器あたりの生産効率が低くなり好ましくない。一方、転化率が95%を越えた場合、水によって失活する触媒の割合が増し、触媒のターンオーバーが望めなくなる。
反応は減圧、常圧、加圧のいずれで行っても差支えない。積極的に加圧下で反応を行う必要はないが、密閉して反応を行うことによって、触媒から一旦脱離した成分(例えば脱離基がハロゲン原子である場合、ハロゲン化水素)の反応系外への飛散を防ぐことができる。クローズドプロセスの採用は脱離基の吸着・除害設備を軽減すると共に脱離基自身が酸であり、助触媒として転位反応を促進するため、好ましいプロセスである。また、常圧での反応も反応装置が安価で、反応の制御も容易である点で好ましい。さらに、シクロドデカノンを過剰に使用する場合には、ラウロラクタムのシクロドデカノンへの溶解度がシクロドデカノンオキシムより高いことを利用して、減圧下でシクロドデカノンを留去しなから転位反応を行い、反応器の単位容積当たりの生産効率を上げることも可能である。これは、シクロドデカノンオキシムよりラウロラクタムの溶解度が高い溶媒を使用する場合も同じである。
転位反応装置は回分式反応装置、管型連続反応装置、攪拌槽型連続反応装置等の一般に用いられる反応装置を使用することができるが、反応温度の制御が容易で運転操作も簡単である槽型連続多段反応装置が適している。
<分離・精製工程>
転位反応後の反応液に含まれるラウロラクタムを、分離して精製する工程を総称して分離・精製工程というものとする。分離・精製工程は、その一工程として、ラウロラクタムと転位触媒を分離(除去を含む)する工程を含む。尚、以下の説明中、触媒分離(または除去)工程、ラウロラクタムの晶析工程等は、ラウロラクタムと転位触媒を分離を行う工程である。
触媒の分離・除去は、大別すると、(1)触媒を失活させる方法と、(2)触媒を回収する方法がある。
(1)触媒を失活させる方法(触媒を水溶性化合物に変化させる方法):
本発明で使用される転位触媒は、水を添加してクエンチすることができる。触媒の脱離基はヒドロキシル基に変換され、水溶性化合物となって水相側に移行する。例えば、トリクロロトリアジンはシアヌル酸となって水相に溶解する。触媒の除去を容易にするため、アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いても差し支えない。なお、触媒を回収・リサイクルする場合でも触媒残渣を完全に除去するため、ラウロラクタムを水洗またはアルカリ洗浄してもよい。
(2)触媒を回収する方法:
(2−1)触媒が溶媒等より低沸点の場合には、蒸留により触媒を回収することができる。例えば、トリクロロトリアジンはシクロドデカノン(シクロドデカノン過剰使用の場合)より沸点が低いため、減圧蒸留によって回収できる。回収した触媒は好ましくは、転位工程にリサイクルされる。
(2−2)ラウロラクタムを晶析分離し、触媒を母液に残す方法も好適である。転位反応後の反応液を、必要により濃縮する。このとき、溶媒が触媒より低沸点であることが有利である。留去して回収した溶媒は、好ましくはオキシム化工程にリサイクルされる。晶析温度は溶媒の融点以上であれば、低温の方が、母液中のラウロラクタムの濃度が低くなり、生産効率が向上する。例えば、溶媒に酢酸ブチルを用いれば、氷点下でも晶析は可能である。溶媒にターシャリーブタノールを用いた場合の晶析温度は26℃以上である。ラウロラクタムを分離した晶析母液は、触媒および溶媒を含有し、好ましくは転位工程にリサイクルされる。
以上のように、触媒と分離されたラウロラクタムは、次のように精製される。まず、触媒分離として、「(1)触媒を失活させる方法」または「(2−1)蒸留により触媒を回収する方法」を採用した場合は、好ましくは、触媒を回収または分離した反応液から、シクロドデカノン(過剰に使用した場合)または溶媒を蒸留により回収し、ラウロラクタムをさらに蒸留精製する方法が一般的である。回収されたシクロドデカノンまたは溶媒は、好ましくはオキシム化工程にリサイクルされる。ラウロラクタムをさらに精製するには、典型的には、蒸留操作(留出液として抜き出すこと、缶出液として抜き出すこと、および精留等を含む)を、好ましくは多段で組み合わせて行う。例えば、上記のシクロドデカノンまたは溶媒の蒸留によって回収した釜残(缶出液)を抜き出し、蒸留操作を一回以上行うことで精製することができる。減圧蒸留により行うことが好ましい。
また、「(2−2)ラウロラクタムを晶析分離する方法」により触媒と分離した場合、晶析したラウロラクタムを、所望によりさらに精製することもできる。ラウロラクタムをさらに精製するには、蒸留が適している。ラウロラクタムは晶析により精製されているので、蒸留操作を一回行うことで高品質製品を得ることができるが、蒸留収率を上げる目的で、留出分や釜残をリサイクルさせながら多段蒸留を行ってもよい。
ラウロラクタムの蒸留条件および蒸留装置は特に制約を受けないが、ラウロラクタムの開環および重合を防止するため、ボトム温度が250℃以下、好ましくは220℃以下となるように10torr以下の真空度で減圧蒸留することが望ましい。
図1のフローチャートに、「(1)触媒を失活させる方法」を採用したときの態様の1例を示す。図中、*1)「回収溶媒」、「溶媒追加分」は、溶媒を使用した場合であり、*2)「回収シクロドデカノン」は、シクロドデカノン過剰の条件でオキシム化反応を行った場合である。
また、図2のフローチャートに、「(2−1)蒸留により触媒を回収する方法」を採用したときの1例を示す。この図は、シクロドデカノン過剰の条件でオキシム化反応を行った場合である。
さらに、図3のフローチャートに、「(2−2)ラウロラクタムを晶析分離する方法」によりラウロラクタムと触媒と分離する方法を採用したときの1例を示す。
以上の説明から明らかなように、本発明の製造方法の各工程は、2つ以上のサブ工程の組み合わせであってもよく、また可能であるならば、2つ以上の工程を同一の装置で行ったり、同時に進行させてもよい。また、本発明は、例えば工業的に利用されるような連続した製造プロセスの中で利用されることが好ましいが、一部またはすべての工程を独立して実施することも可能である。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例は本発明の実施態様の一例を示すものであり、本発明は本実施例に限定されるものではない。
{実施形態A}
実施形態Aでは、ヒドロキシルアミンに対して過剰のシクロドデカノンを使用した例を説明する。
[実施例A−1]
(オキシム化工程、油/水分離工程、脱水工程)
内部が4室に分割され、各室毎に攪拌翼が設けられた液相部容積10Lの枕型反応容器に、80℃に加温、溶融したシクロドデカノン(東京化成社製)と後述する回収シクロドデカノンとを合わせ1kg/h、ヒドロキシルアミン硫酸塩(和光純薬工業社製)の15.2%水溶液を1.2kg/h、でフィードし、25%アンモニア水を加えながら、水相pHを6に調整しながら、97℃で反応を行った(平均滞留時間4時間)。反応器からの流出液を冷却することなく油相と水相に分液した。
得られた油相に窒素ガスを吹き込み、油相中の水分を脱水した。脱水後の油相中の水分濃度をカールフィシャー法で測定した結果、60ppmであった。また、油相の一部を採取しガスクロマトグラフィーで分析した結果、シクロドデカノンオキシムの生成量は0.428kg/hであり、フィードしたヒドロキシルアミンを基準にした収率は97.5%であった。なお、反応および窒素吹込みの際に昇華したシクロドデカノンはサブリメーターで採取し、溶融してオキシム化反応槽にリサイクルした。
(転位工程)
内部が3室に分割され、各室毎に攪拌翼が設けられた液相部容積1.5Lの枕型反応容器に、前工程で取得したシクロドデカノンオキシムのシクロドデカノン溶液および後述する回収シクロドデカノンに溶解した10重量%トリクロロトリアジン溶液をそれぞれ1.03kg/h、0.13kg/hでフィードし、92℃で転位反応を行った(平均滞留時間1.5時間)。流出液の一部を採取しガスクロマトグラフィーで分析した結果、ラウロラクタムの生成量は0.411kg/hであり、転位収率は96.0%であった。
(触媒分離除去)
転位工程で得られた反応液を攪拌槽型中和槽に導き、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を0.1kg/hの速度で加えて中和後、分離槽(滞留時間10分)で油/水分離を行った。
(シクロドデカノン回収・ラウロラクタム精製工程)
分離された油相を連続式減圧蒸留装置に導き、まず水、軽質副生物、シクロドデカノンを除去した。この微量の水分を含むシクロドデカノンはオキシム化工程にリサイクルした。釜残は第2の蒸留装置に導き、シクロドデカノンおよびラウロラクタムを留出させた。ラウロラクタムを含む釜残は触媒除去工程にリサイクルした。第2の蒸留装置の留出分を第3の蒸留塔に送り、シクロドデカノンとラウロラクタムを分離した。塔頂から留出したシクロドデカノンは転位工程にリサイクルしてトリクロロトリアジンの溶解に用いた。8時間の連続運転を行い、消費したシクロドデカノンに対し、92モル%のラウロラクタムを取得した。
{実施形態B}
実施形態Bでは、溶媒としてエステル類を使用した例を説明する。
[実施例B−1]
(オキシム化工程、油/水分離工程)
内部が4室に分割され、各室毎に攪拌翼が設けられた液相部容積30Lの枕型オキシム化第1反応器に、ヒドロキシルアミン硫酸塩(和光純薬工業社製)の15重量%水溶液を3kg/h及びオキシム化第2反応器から送液される油相をフィードした。反応温度を80℃に設定し、各室に25重量%アンモニア水を63g/hでフィードしオキシム化反応を行った。反応液は分液し、シクロドデカノンオキシム、酢酸ブチルからなる油相は脱水・溶媒交換工程へ送り、水相はオキシム化第2反応器へフィードした。オキシム化第2反応器は15Lで内部が4室に分割された枕型反応器で、前記オキシム化反応液水相と20重量%のシクロドデカノンの酢酸ブチル溶液5kg/h(ヒドロキシルアミン硫酸塩と等モル量フィード)を同反応器にフィードし(第1反応器へのヒドロキシルアミン硫酸塩と等モル量)、反応温度を90℃に設定し、各室に25重量%アンモニア水を31g/hでフィードしオキシム化反応を行った。
得られた反応液を分液し、油相をオキシム化第1反応器にフィードした。水相は105℃に加熱し、水相に溶解している酢酸ブチル及びシクロドデカノンオキシムを回収し、オキシム化第2槽に送った。酢酸ブチル、シクロドデカノンオキシムを回収した水相は濃縮し、析出する硫酸アンモニウムを取得後、廃水として処理した。
(脱水工程)
前記油/水分離工程で得られたシクロドデカノンオキシムを蒸留装置に送り、溶解している水を酢酸ブチルと共に共沸留去した。留出液はシクロドデカノンの溶媒としてオキシム化工程にリサイクルした。残液をカールフィシャー法で水分濃度測定した結果85ppmであった。残液は転位工程にフィードした。
(転位工程)
内部が3室に分割され、各室毎に攪拌翼が設けられた液相部容積5Lの枕型反応容器に、前工程で取得したシクロドデカノンオキシムの酢酸ブチル溶液および3重量%のトリクロロトリアジンの酢酸ブチル溶液をそれぞれ3200g/h、1000g/hでフィードし、80℃で転位反応を行った(平均滞留時間1.0時間)。流出液の一部を採取しガスクロマトグラフィーで分析した結果、ラウロラクタムの生成量は925g/hであり、シクロドデカノンオキシムが119g/h残存していた。シクロドデカノンを基準にしたラウロラクタムの収率は85.4%、シクロドデカノンオキシム収率は11.0%(オキシム化工程の収率を100%とした場合の転位工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率は89%)であった。転位工程は5時間定常的に運転した。
(ラウロラクタムの晶析分離)
上記転位反応液を単蒸留装置に導き、約12kgの酢酸ブチルを留去後、20℃まで冷却してラウロラクタムを析出させた。ラウロラクタムを濾別後少量の酢酸ブチルでリンスし、乾燥後重量を計測した結果3672gであり、ガスクロマトグラフィーで純度を測定した結果99.5%であり、シクロドデカノンオキシムは検出されなかった。一方、濾液、リンス液を合わせてガスクロマトグラフィー分析を行った結果、ラウロラクタム960g、シクロドデカノン18g、シクロドデカノンオキシム595gを含有していた。シクロドデカノンを基準にしたそれぞれの収率は晶析ラウロラクタム67.5%、溶解ラウロラクタム17.7%、シクロドデカノンオキシム11.0%であった。
(触媒のリサイクル実験)
前記ラウロラクタム晶析分離工程で得られた濾液を全量5kgになるまで濃縮し、500g/hの速度で転位工程にフィードした。一方脱水工程からのフィード液量は3200g/hのままとし、トリクロロトリアジン溶液のフィード液量を500g/hに下げた。流出液の一部を採取しガスクロマトグラフィーで分析した結果、ラウロラクタム、シクロドデカノンオキシムの工程出口流量はそれぞれ1069g/h(晶析母液中のラウロラクタム含有量を1桁間違えたために生じた計算ミスです)、128g/hであった。転位工程で生成したラウロラクタムの収率は85.2%、シクロドデカノンオキシムの転化率は88.8%であった。
[実施例B−2]
オキシム化工程、油/水分離工程、脱水工程の運転条件を実施例B−1と同様とし、転位工程にシクロドデカノンオキシムの酢酸ブチル溶液を3200g/hでフィードした。一方、3重量%トリクロロトリアジンの酢酸ブチル溶液フィード量は330g/hに変え、新たに10重量%塩化亜鉛の酢酸ブチル溶液を75g/hフィードし、反応温度を100℃に設定して反応を行った。転位反応槽流出液の一部を採取し、GC分析を行った結果、シクロドデカノンオキシムは検出されず、ラウロラクタムの流量は1035g/hであり、シクロドデカノンを基準にしたラウロラクタムの収率は95.6%であった。定常運転を5時間行い、得られた転位液に1kgの水を加えて90℃で30分水洗し、分液して油相を取得し、エバポレータで酢酸ブチルを留去後、0.2kPaの減圧下170℃でラウロラクタムを蒸留精製した4100gのラウロラクタムを得た。ラウロラクタムの純度99.9%であった。なお、前留、釜残中に含有するラウロラクタムも含めたラウロラクタム収量は5070gで、シクロドデカノンを基準にしたラウロラクタムの収率は93.7%であった。
{実施形態C}
実施形態Cでは、溶媒として第3級アルコールを使用した例を説明する。
[実施例C−1]
(オキシム化工程、油/水分離工程)
実施例B−1において、溶媒を酢酸ブチルからt−ブタノールに変更し、同じ装置を使用し、オキシム化第2反応器での反応温度を90℃から80℃に変更した。それ以外は、実施例B−1のオキシム化工程、油/水分離工程と同じ条件を採用してオキシム化工程、油/水分離工程を実施した。
(脱水工程)
前記油/水分離工程で得られたシクロドデカノンオキシムを蒸留装置に送り、溶解している水をt−ブタノールと共に共沸留去した。留出液はシクロドデカノンの溶媒としてオキシム化工程にリサイクルした。残液をカールフィシャー法で水分濃度測定した結果90ppmであった。残液は転位工程にフィードした。
(転位工程)
実施例B−1の転位工程を繰り返した。但し、溶媒はt−ブタノールである。流出液の分析した結果では、ラウロラクタムの生成量は876g/hであり、シクロドデカノンオキシムが162g/h残存していた。シクロドデカノンを基準にしたラウロラクタムの収率は80.9%、シクロドデカノンオキシム収率は15.0%(オキシム化工程の収率を100%とした場合の転位工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率は85%)であった。転位工程は5時間定常的に運転した。
(ラウロラクタムの晶析分離)
上記転位反応液を単蒸留装置に導き、約10kgのt−ブタノールを留去後、室温まで放冷してラウロラクタムを析出させた。ラウロラクタムを濾別後少量のt−ブタノールでリンスし、乾燥後重量を計測した結果2890gであり、ガスクロマトグラフィーで純度を測定した結果99.5%であり、シクロドデカノンオキシムは検出されなかった。一方、濾液、リンス液を合してガスクロマトグラフィー分析を行った結果、ラウラクタム1480g、シクロドデカノン22g、シクロドデカノンオキシム800gを含有していた。シクロドデカノンを基準にしたそれぞれの収率は晶析ラウロラクタム53.4%、溶解ラウロラクタム27.3%、シクロドデカノンオキシム14.8%であった。
(触媒のリサイクル実験)
実施例B−1と同様にして触媒のリサイクル実験を行った。流出液の一部を分析した結果、ラウロラクタム、シクロドデカノンオキシムの工程出口流量はそれぞれ1079g/h、179g/hであった。転位工程で生成したラウロラクタムの収率は80.2%、シクロドデカノンオキシムの転化率は84.6%であった。
[実施例C−2]
転位工程における3重量%トリクロロトリアジンのt−ブタノール溶液フィード量を500g/hに変え、新たに10重量%塩化亜鉛のt−ブタノール溶液を75g/hフィードした以外は実施例C−1と同様に反応を行った。転位工程までのラウロラクタム収率は86.2%、シクロドデカノンオキシム収率は9.5%(オキシム化工程の収率を100%とした場合の転位工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率は90.5%)だった。実施例1と同様にしてリサイクル実験を行った結果、転位工程のシクロドデカノンオキシムの転化率は90.0%、ラウロラクタム収率は85.5%であった。
[実施例C−3]
反応溶媒をt−アミルアルコールに変えた以外は実施例C−1と同様に反応を行った。転位工程までのラウロラクタム収率は82.0%、シクロドデカノンオキシム収率は14.0%(オキシム化工程の収率を100%とした場合の転位工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率は86.0%)だった。実施例1と同様にしてリサイクル実験を行った結果、転位工程のシクロドデカノンオキシムの転化率は85.8%、ラウロラクタム収率は81.5%であった。
[比較例C−1]
反応溶媒を1−プロパノールに変えた以外は実施例C−1と同様に反応を行った。転位工程までのラウロラクタム収率は9.8%、シクロドデカノンオキシム収率は67.4%(オキシム化工程の収率を100%とした場合の転位工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率は32.6%)であり、多量のシクロドデカノンオキシムが残存し、ラウロラクタムへの転位選択率も低かった。
[比較例C−2]
反応溶媒をシクロヘキサノールに変えた以外は実施例−1と同様に反応を行った。転位工程までのラウロラクタム収率は26.7%、シクロドデカノンオキシム収率は61.4%(オキシム化工程の収率を100%とした場合の転位工程でのシクロドデカノンオキシムの転化率は38.6%)であった。
工業的に有利で簡便なラウロラクタムのプロセスが提供される。

Claims (12)

  1. (a)シクロドデカノンと水溶液中のヒドロキシルアミンとを、過剰のシクロドデカノンの存在下または溶媒の存在下で反応させ、シクロドデカノンオキシムを生成する工程(以下、オキシム化工程という)と、
    (b)前記オキシム化工程後の反応液を油相と水相に分離し、シクロドデカノンオキシムの溶液を油相として取得する工程(以下、油/水分離工程という)と、
    (c)前記油/水分離工程により油相として取得した前記シクロドデカノンオキシムの溶液から溶解水分を除去する工程(以下、脱水工程という)と、
    (d)芳香環含有化合物を転位触媒として用いて、転位反応により、シクロドデカノンオキシムからラウロラクタムを生成する工程(以下、転位工程という)と、
    (e)前記転位工程後の反応液から、生成したラウロラクタムを分離し、精製する工程(以下、分離・精製工程という)と
    を有することを特徴とするラウロラクタムの製造方法。
  2. 前記芳香環含有化合物の芳香環が、(1)芳香環を構成する原子として脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含み、(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくとも2つ含み、(3)芳香環を構成する窒素原子または電子吸引基を有する炭素原子のうち3つが(1)記載の脱離基を有する炭素原子のオルトおよびパラ位に位置する構造を有することを特徴とする請求項1記載のラウロラクタムの製造方法。
  3. 前記芳香環が、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環またはトリアジン環であって、前記脱離基としてハロゲン原子を含むことを特徴とする請求項2記載のラウロタクタムの製造方法。
  4. 前記芳香環含有化合物が、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、2−クロロ−3,5―ジニトロピリジンおよびトリクロロトリアジンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項記2記載のラウロラウタムの製造方法。
  5. 前記脱水工程において、シクロドデカノンオキシムの溶液中に残存する水分量を、1000ppm以下まで低減することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
  6. 前記脱水工程において、シクロドデカノンオキシムの溶液中に残存する水分量を、100ppm以下まで低減することを特徴とする請求項5記載のラウロラクタムの製造方法。
  7. 前記オキシム化工程において、反応がカルボン酸エステルおよび第3級アルコールから選ばれる溶媒の存在下で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
  8. 前記オキシム化工程において、反応を過剰のシクロドデカノンの存在下で行い、前記分離・精製工程において、シクロドデカノンを回収し、その少なくとも一部を、前記オキシム化工程にリサイクルすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
  9. 前記分離・精製工程において、転位工程後の反応液に水を混合し、転位触媒の前記芳香環含有化合物を水溶性化合物に転換し、ラウロラクタムの溶液と分離することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
  10. 前記分離・精製工程において、転位工程後の反応液から前記転位触媒を回収し、前記転位工程にリサイクルすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のラウロラクタムの製造方法。
  11. 前記分離・精製工程において、転位工程後の反応液からラウロラクタムを晶析させて取得し、晶析母液中に前記転位触媒を回収して前記転位工程にリサイクルすることを特徴とする請求項10記載のラウロラクタムの製造方法。
  12. 前記転位工程において、シクロドデカノンオキシムの転化率を95%以下とすることを特徴とする請求項10または11記載のラウロラクタムの製造方法。
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