JP4029159B2 - オキシム化合物のベックマン転位反応用触媒、及びそれを用いたアミド化合物の製造方法 - Google Patents
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(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくとも2つ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうち3つが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する
や、[2]芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする前記[1]記載のアミド化合物の製造方法や、[3]ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子の両端に隣接していることを特徴とする前記[2]記載のアミド化合物の製造方法や、[4]ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする前記[2]又は[3]記載のアミド化合物の製造方法や、[5]ベンゼン環含有化合物が、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする前記[2]〜[4]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法や、[6]4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリルを、オキシム化合物に対して5mol%〜20mol%用いることを特徴とする前記[5]記載のアミド化合物の製造方法や、[7]芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする前記[1]に記載のアミド化合物の製造方法や、[8]ピリジン環の窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置していることを特徴とする前記[7]に記載のアミド化合物の製造方法や、[9]ピリジン環含有化合物が、2-クロロ−3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする前記[8]に記載のアミド化合物の製造方法や、[10]トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする前記[7]記載のアミド化合物の製造方法に関する。
(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくとも2つ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちの3つが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する
や、[21]芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする前記[20]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[22]ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子のオルトあるいはパラ位に位置していることを特徴とする前記[21]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[23]ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする前記[21]又は[22]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[24]ベンゼン環含有化合物が、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする前記[22]〜[23]のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[25]芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする前記[20]に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[26]ピリジン環の窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置していることを特徴とする前記[25]に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[27]ピリジン環含有化合物が、2-クロロ−3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする前記[26]に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[28]トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする前記[25]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[29]脱離基が、ハロゲン原子であること特徴とする前記[20]〜[28]のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[30]ハロゲン原子が、塩素であることを特徴とする前記[29]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[31]オキシム化合物が、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ−メトキシアセトフェノンオキシム、オルト−メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ−フルオロアセトフェノンオキシムであることを特徴とする前記[20]〜[30]のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒に関する。
2mmolのシクロドデカノンオキシム(394.6mg)と0.1mmolの4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル(5mol%,22.8mg)をモレキュラーシーブス3Aで乾燥させたアセトニトリル(2mL)溶媒中、共沸脱水条件下、2時間反応させた。その後、大部分の溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、目的のラクタム化合物が100%収率で得られた。このように、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリルはベックマン転位反応に高い触媒活性を示したが、クロロ基、及びクロロ基の両オルト位のニトロ基が触媒能の発現に重要であるかどうかについて調べた。例えば、ニトロ基がオルト位に一つしかない4−クロロ−3−ニトロベンゾニトリルではシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応において活性が全くみられなかった。また、クロロ基のパラ位をシアノ基から他の電子吸引基であるトリフルオロメチル基に代えたところ活性が減少したことから、パラ位の電子吸引基も触媒活性に関係していることが分かる。これらの実験結果はクロロ基の置換反応が促進されるほど、ベックマン転位反応の触媒活性も加速されることを示しており、置換基の組み合わせ次第でさらに反応性の高い触媒を作ることが期待できることがわかった。
本発明のベックマン転位反応用触媒を用いた反応系における触媒の適否について検討した。非プロトン性極性溶媒であるアセトニトリル、非極性溶媒であるトルエン、エーテル系溶媒である1,4−ジオキサンを、それぞれモレキュラーシーブス3Aで乾燥させて用いた。2mmolのアセトフェノンオキシムと0.1mmolの4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル(5mol%)の各溶媒2mL中、共沸脱水条件下、2時間反応させた。その後、大部分の溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、本触媒系では極性溶媒を用いることが重要で、ニトリル系溶媒が最も良く、トルエン等の非極性溶媒や、テトラヒドロフランや1,4−ジオキサン等の比較的低極性なエーテル系溶媒では触媒活性をほとんど示さなかった。
アセトニトリル中、加熱還流条件下、様々なケトオキシムを基質に用い、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリルの基質一般性を検討した。パラ及びオルトーメトキシアセトフェノンは速やかに反応が進行し高い収率で目的とするアミド化合物を得られた。またシクロドデカノンオキシムは僅か5mol%の触媒量で転位生成物であるラウロラクタムを定量的に得ることができた。反応性の低いアセトフェノンオキシムやパラ−フルオロアセトフェノンオキシムは触媒を20mol%用いることで生成物を良好な収率で得ることができた。
不活性ガス雰囲気下で調製した2mmolのシクロヘキサノンオキシム(226.32mg)と0.1mmolの4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル(5mol%,22.8mg)のベンゾニトリル(1mL、モレキュラーシーブス4Aで乾燥させたもの)溶液1mLをマイクロ波照射下、200℃、5分間加熱した。室温まで冷却した後、得られた混合物をプロトンNMRで解析した結果、ε−カプロラクタムが73%の変換率であった。
触媒活性を補う方法として触媒に加え、共触媒を用いる方法を検討した。様々な金属化合物及び有機酸化合物を触媒量用い、アセトフェノンオキシムのベックマン転位反応について検討した。例えば、セリウムトリフラートを共触媒に用いる場合、2mmolのアセトフェノンオキシム(270.32mg)と0.2mmolの4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル(10mol%,45.6 mg)及び0.2mmolのセリウムトリフラート(10mol%,117.4 mg)をモレキュラーシーブス3Aで乾燥させたアセトニトリル(2mL)溶媒中、共沸脱水条件下、2時間反応させた。室温まで冷却した後、反応溶液に炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。大部分の溶媒を留去した後、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、目的のアセトアニリドが93%の収率で得られた。他の共触媒についても同様に行った。その結果、ランタノイド金属トリフラートが触媒活性を飛躍的に向上させることがわかった。ランタノイド金属系は何でも良く、上記セリウムトリフラートの他、例えば、共触媒としてランタントリフラートを用いた場合82%の変換率で、プラセオジムトリフラートを用いた場合90%の変換率で、ネオジムトリフラートを用いた場合95%の変換率で、アミド化合物を得ることができた。また、1mol%のセリウムトリフラートと5mol%の4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリルを合わせて用いた場合の4時間後の変換率は82%であったのに対し、1mol%のセリウムトリフラートあるいは5mol%の4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリルを単独で用いた場合の4時間後の変換率は10〜20%であり、共存させることで触媒の活性を向上させることができることがわかった。
芳香環や、該芳香環を構成する原子の違いによる触媒能を検討するため、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゼンニトリル、ピクリルクロリド、2−クロロ−3,5−ジニトロピリジン、トリクロロトリアジン、4−クロロ−3,5−ジニトロトリフルオロメチルベンゼン、4−クロロ−3−ニトロベンゼンニトリル、3,5−ジニトロベンゼンニトリル、3,5−ジメトキシクロロトリアジン、トリヒドロキシトリアジンをアセトフェノンオキシムのベックマン転位反応用触媒として試した。4mLのアセトニトリル溶媒中で、5mol%の触媒を添加し、共沸脱水条件下で2時間反応させたところ、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゼンニトリル、ピクリルクロリド、2−クロロ−3,5−ジニトロピリジン、トリクロロトリアジンを用いたとき、それぞれ15%、43%、44%、80%の変換率で、目的のアセトアニリドを得ることができた。これらの結果より、クロロ基が置換されやすいπ電子欠損型芳香族化合物に高い触媒活性があることがわかった。
1951年にランパートとボードウェルはケトオキシムのピクリルエーテルがベックマン転位の基質となることを明らかにしている。そこで、本発明の反応系においてオキシムのアリールエーテルが触媒中間体となっていることを確かめるために、アセトニトリル溶媒中で、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル及び2-クロロ−3,5-ジニトロピリジンをトリエチルアミン共存下、アセトフェノンオキシムと室温で1時間反応させ、オキシムアリールエーテルを合成し、このオキシムアリールエーテルを5mol%用い、アセトフェノンオキシムを基質にアセトニトリル溶媒中、共沸脱水条件下でベックマン転位反応を行った。
Claims (31)
- 芳香環含有化合物の存在下、極性溶媒中で、オキシム化合物のベックマン転位反応を行うことによりアミド化合物を製造する方法であって、該芳香環含有化合物の芳香環が、次の条件(1)〜(3)すべてを満足するベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であり、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなく反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法。
(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくとも2つ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちの3つが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する - 芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする請求項1記載のアミド化合物の製造方法。
- ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子の両端に隣接していることを特徴とする請求項2記載のアミド化合物の製造方法。
- ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする請求項2又は3記載のアミド化合物の製造方法。
- ベンゼン環含有化合物が、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
- 4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリルを、オキシム化合物に対して5mol%〜20mol%用いることを特徴とする請求項5記載のアミド化合物の製造方法。
- 芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする請求項1に記載のアミド化合物の製造方法。
- ピリジン環の窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置していることを特徴とする請求項7に記載のアミド化合物の製造方法。
- ピリジン環含有化合物が、2-クロロ−3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする請求項8に記載のアミド化合物の製造方法。
- トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする請求項7記載のアミド化合物の製造方法。
- 脱離基が、ハロゲン原子であること特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
- ハロゲン原子が、塩素であることを特徴とする請求項11記載のアミド化合物の製造方法。
- オキシム化合物が、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ−メトキシアセトフェノンオキシム、オルト−メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ−フルオロアセトフェノンオキシムであることを特徴とする請求項1〜12記載のアミド化合物の製造方法。
- 極性溶媒が、ニトリル系溶媒であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
- ニトリル系溶媒が、アセトニトリル又はベンゾニトリルであることを特徴とする請求項14記載のアミド化合物の製造方法。
- 共触媒を用いて、ベックマン転位反応を行うことを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
- 共触媒が、ルイス酸性を有する金属塩であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
- 共触媒が、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸から選ばれるブレンステッド酸であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
- ベックマン転位反応を加熱還流下に行うことを特徴とする請求項1〜18のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
- 次の条件(1)〜(3)すべてを満足する芳香環含有化合物であって、該芳香環含有化合物の芳香環が、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であり、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなくベックマン転位反応を行う際に使用されること特徴とするオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくとも2つ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちの3つが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する - 芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする請求項20記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子のオルトあるいはパラ位に位置していることを特徴とする請求項21記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする請求項21又は22記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- ベンゼン環含有化合物が、4−クロロ−3,5−ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする請求項22〜23のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- 芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする請求項20に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- ピリジン環の窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置していることを特徴とする請求項25に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- ピリジン環含有化合物が、2-クロロ−3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする請求項26に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする請求項25記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- 脱離基が、ハロゲン原子であること特徴とする請求項20〜28のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- ハロゲン原子が、塩素であることを特徴とする請求項29記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
- オキシム化合物が、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ−メトキシアセトフェノンオキシム、オルト−メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ−フルオロアセトフェノンオキシムであることを特徴とする請求項20〜30のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
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