JPWO2008093837A1 - エステル化合物、それを用いた非水電解液及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
また、リチウム二次電池の負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵・放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
更に、負極材料として、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水電解液溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。
一方、正極として、例えばLiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電状態で高温になった場合に、正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより、該分解物が電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、電池性能の低下を生じる。
以上のように、正極や負極上で電解液が分解するとガスを発生することで電池が膨れたり、正負極の電極間にガスが溜まりリチウムイオンの移動を阻害し、電池性能を低下させる一因となっていた。そのような状況にも関わらず、リチウム二次電池が搭載されている電子機器はますます電力消費量が増大する流れにあり、それに伴ってリチウム二次電池の高容量化が進んでおり、電解液の分解はますます起こり易い方向へ進み、サイクル特性等の電池特性が悪化してしまう問題があった。
特許文献3や特許文献4には、安息香酸メチルや安息香酸ビニルを溶解した非水電解液が開示され、炭素材料との親和性や初回の充放電効率に効果がある電池が提案されている。しかしながら、サイクル特性に関しては全く触れられておらず、未だ満足いくものではなかった。
特許文献5には抗菌剤の製造原料として、ジメチル硫酸を用いて、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸から3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸メチルを得る方法が開示されている。
特許文献6には、一部をフッ素原子等で置換した安息香酸メチルを溶解した非水電解液を用いたリチウム二次電池が開示され、フッ素原子等で置換していない安息香酸メチルを溶解した非水電解液を用いたリチウム二次電池に比べて高い放電容量を有することが示されている。しかしながら、この電池においても初期の電池容量やサイクル特性が十分に満足できるものではなかった。
また、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、フッ素原子をベンゼン環に有し、かつ不飽和結合部位を有する2,4−トリフルオロ安息香酸プロパルギル等を非水電解液に添加することで、初期の電池容量やサイクル特性に優れたリチウム二次電池が得られることを見出し、本発明を完成した。
(1)下記一般式(I)又は(II)で表されるエステル化合物。
(2)非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、下記一般式(III)で表されるエステル化合物を、非水電解液に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とするリチウム二次電池用非水電解液。
(3)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(II)及び/又は(IV)で表されるエステル化合物を、非水電解液に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とする非水電解液。
本発明のエステル化合物は、下記一般式(I)又は(II)で表される。
〔一般式(I)で表されるエステル化合物〕
R2である炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖のアルケニル基としては、ビニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基等が挙げられる。R2である炭素数3〜6の直鎖又は分枝鎖のアルキニル基としては、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基、1−メチル−2−プロピニル、1−メチル−2−ブチニル、1,1−ジメチル−2−プロピニル等が挙げられる。
R2であるフェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基やフッ素原子で置換されていてもよく、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、フルオロフェニル基等が挙げられる。また、R2であるビフェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基やフッ素原子で置換されていてもよい。
L1である炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖のアルキレン基(アルカンジイル基)としては、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,3−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、2,4−ペンチレン基、1,5−ヘキシレン基、1,6−ヘキシレン基、2,4−ヘキシレン基等が挙げられる。これらの中でも、1,2−プロピレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,4−ペンチレン基、2,4−ペンチレン基、2,4−ヘキシレン基等の分枝鎖のアルキレン基が好ましく、1,2−プロピレン基(プロパン−1,2−ジイル基)、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基等のメチル基を分枝として有するアルキレン基が特に好ましい。
L1である炭素数4〜6の直鎖又は分枝鎖のアルケニレン基としては、2−ブテニレン基、2−ペンチニレン基、2−ヘキシニレン、3−ヘキシニレン基、1,4−ジメチル−2−ブテニレン基等が挙げられる。
L1である炭素数4〜6の直鎖又は分枝鎖のアルキニル基としては、2−ブチニレン基、2−ペンチニレン基、2−ヘキシニレン、3−ヘキシニレン基、1,4−ジメチル−2−ブチニレン基等が挙げられる。
また、L1であるフェニル基及びビフェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基やフッ素原子で置換されていてもよい。
本発明の前記一般式(I)で表されるエステル化合物は、下記の(a)エステル交換法、及び(b)酸クロリド法により合成することができるが、これらの製法に限定されるものではない。
(a)エステル交換法
エステル交換法は、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸(以下、「MTFBA」という)を溶媒中又は無溶媒で、塩基及び金属触媒の存在下で、エステル交換反応させることによって、目的とするエステル化合物を得る方法である。
MTFBAとエステル交換反応させるエステル化合物としては、酢酸ビニル等の酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル等の脂肪酸エステルが挙げられ、それらの中でも酢酸エステルがより好ましい。前記エステルの使用量は、MTFBA 1モルに対して1〜50モルが好ましく、より好ましくは4〜20モルである。
前記金属触媒の使用量は、反応液の総重量に対して好ましくは0.001〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%である。
また、塩基触媒としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及びこれら混合物等が挙げられる。具体的には、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化リチウムが好適に使用される。前記塩基触媒の使用量は、反応液の総重量に対して好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜10重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%である。
反応時間は、前記反応温度やスケールによるが、好ましくは0.5〜30時間、より好ましくは1〜48時間である。反応時間が短すぎると未反応物が残り、逆に反応時間が長すぎると生成物の分解や副反応の恐れが生じる。
酸クロリド法は、MTFBAの酸クロリドを溶媒中又は無溶媒で、塩基の存在下で、アルコールとエステル化反応させることによって、目的とするエステル化合物を得る方法である。
MTFBAの酸クロリドと反応させるアルコールの使用量は、MTFBA 1モルに対し、好ましくは1〜20モル、より好ましくは1〜5モルである。なお、MTFBAの酸クロリドは、MTFBAに塩化チオニルを反応させることにより得ることができる。
酸クロリドからエステル化合物を合成する際、塩酸ガスを副生する。塩酸ガスは捕獲せずに、反応系外へ除去して中和槽で吸収させるか、又は反応系に塩基を混在させ、反応系内で中和捕獲する手法が採用される。反応系外へ塩酸ガスを除去する手法としては、不活性ガスを反応液にバブリングする方法、反応液を減圧する方法等が挙げられ、操作温度の範囲はいずれの場合も0〜100℃が好ましい。
これらの中でも、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン、ピリジン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,3−ジメチルイミダゾリジノンがより好ましい。前記塩基の使用量は、MTFBA 1モルに対して好ましくは0.8〜5モル、より好ましくは1〜3モルであり、特に1〜1.5モルを使用すると副生物が押さえられ好ましい。
反応時間は、前記反応温度やスケールによるが、好ましくは0.1〜12時間、より好ましくは0.2〜6時間である。反応時間が短すぎると未反応物が残り、逆に反応時間が長すぎると生成物の分解や副反応の恐れが生じる。
本発明の一般式(II)で表されるエステル化合物は、前記の(b)酸クロリド法により合成することができる。すなわち、MTFBAの酸クロリドを溶媒中又は無溶媒で、塩基の存在下で、ジオールとエステル化反応させることにより合成することができるが、この製法に限定されるものではない。
MTFBAの酸クロリドと反応させるジオールの使用量は、MTFBA 1モルに対し、好ましくは1〜20モル、より好ましくは1〜5モルである。
使用する不活性溶媒及び塩基の種類と量は、前記と同様であり、反応温度及び反応時間も前記と同様である。
本願発明の非水電解液中に含有される化合物は、下記一般式(III)で表される。
L2である炭素数3〜6のアルキニル基としては、2−プロピニル基(プロパルギル基)、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基等の直鎖アルキニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−メチル−2−ブチニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル等の分枝鎖のアルキニル基が挙げられる。
L2であるフェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基やフッ素原子で置換されていてもよく、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、フルオロフェニル基等が挙げられる。また、ビフェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基やフッ素原子で置換されていてもよい。
本願発明の非水電解液中に含有される化合物は、下記一般式(IV)で表される。
R5である炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、1−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
R5である炭素数2〜6の直鎖又は分枝のアルケニル基としては、ビニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基等が挙げられ、炭素数3〜6の直鎖又は分枝のアルキニル基としては、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基、1−メチル−2−プロピニル基等が挙げられる。
R5であるフェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基やフッ素原子で置換されていてもよく、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、フルオロフェニル基等が挙げられる。また、ビフェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基やフッ素原子で置換されていてもよい。
これらの中でも、R5に炭素数1〜3のアルキル基を有する場合が、負極表面上に緻密な被膜を形成し充放電による電解液の還元分解を抑制することができるためより好ましく、メチル基又はエチル基を有する場合が最も好ましい。
これらの中でも、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸メチル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸エチル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ビニル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸2−プロペニル[R5=2−プロペニル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸2−プロピニル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸フェニル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸トリル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ビフェニルが好ましく、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸メチル、3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸エチルがより好ましい。
本発明の第1の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、前記一般式(III)で表されるエステル化合物を、該非水電解液の重量に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とする。
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類、アミド類、リン酸エステル類、スルホン類、ラクトン類、ニトリル類、S=O結合含有化合物等が挙げられる。
環状カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらの環状カーボネートは1種類で使用してもよいが、特に、高誘電率を有するEC、PC、VC、FECから選ばれる少なくとも2種以上を含むと、電解液の電導度が上がり、サイクル特性が向上するので好ましく、とりわけ3〜4種類を組み合わせると更に好ましい。
環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総容量に対して、10〜40容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が10容量%未満であると電解液の電気伝導度が低下し、サイクル特性が低下する傾向があり、40容量%を超えると電解液の粘度が上昇し、サイクル特性が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
これらの鎖状カーボネート類は1種類で使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用すると、サイクル特性が向上するので好ましい。
鎖状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総容量に対して、60〜90容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60容量%未満であると電解液の粘度が上昇し、サイクル特性が低下する傾向がある。また、90容量%を超えると電解液の電気伝導度が低下し、サイクル特性が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
アミド類としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、リン酸エステル類としては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等が挙げられ、スルホン類としてはジビニルスルホン、スルホラン等が挙げられ、ラクトン類としてはγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等、ニトリル類としてはアセトニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル等が挙げられる。これらニトリルとS=O結合含有化合物を組み合わせて使用すると、サイクル特性が向上するので好ましい。
S=O結合含有化合物の具体例としては、1,3−プロパンスルトン(PS)、1,4−プロパンスルトン、1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、ジビニルスルホン、エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、ビニルエチレンサルファイト、ビニレンサルファイト、メチル2−プロピニルサルファイト、エチル2−プロピニルサルファイト、ジプロピニルサルファイト、シクロヘキシルサルファイト、エチレンサルフェート、プロピレンサルフェート等が挙げられる。
これらの中でも、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の組合せが好ましく、具体的には、EC、PC、VC、FEC等の環状カーボネート類と、DMC、MEC、DEC等の鎖状カーボネート類との組合せが、サイクル特性を向上できるので特に好ましい。
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の割合は、サイクル特性向上の観点から、環状カーボネート類:鎖状カーボネート類(容量比)が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜35:65がより好ましく、20:80〜30:70が特に好ましい。
本発明に使用される電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のLi塩、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF2)2(SO2)2NLi、(CF2)3(SO2)2NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を含有するリチウム塩が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2であり、最も好ましい電解質塩はLiPF6、LiBF4及びLiN(SO2CF3)2である。これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電解質塩は任意の割合で混合することができるが、LiPF6と組み合わせて使用する場合のLiBF4、LiN(SO2CF3)2及びLiN(SO2C2F5)2を除く他の電解質塩が全電解質塩に占める割合(モル比)は、0.01%に満たないと高温保存特性の向上効果が乏しく、45%を超えると高温保存特性は低下する場合がある。したがって、その割合(モル比)は、好ましくは0.01〜45%、より好ましくは0.03〜20%、更に好ましくは0.05〜10%、最も好ましくは0.05〜5%である。
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.7M以上が最も好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が更に好ましく、1.2M以下が最も好ましい。
本発明の非水電解液には、芳香族化合物を含有させることにより、過充電時の電池の安全性を確保することができる。かかる芳香族化合物の好適例としては、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ−tert−ブチルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等が挙げられる。これらの芳香族化合物は、1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液の重量に対して、前記一般式(II)、(III)及び(IV)で表される化合物から選ばれる1種以上を0.01〜10重量%溶解させることにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒、及び電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
本発明の非水電解液には、例えば、空気や二酸化炭素を含ませることにより、さらに電解液の分解によるガス発生の抑制や、長期にわたるサイクル特性や充電保存特性等の電池特性を向上させることができる。
本発明においては、高温における充放電特性向上の観点から、非水電解液中に二酸化炭素を溶解させた電解液を用いることが特に好ましい。二酸化炭素の溶解量は、非水電解液の重量に対して0.001重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、非水電解液に二酸化炭素を飽和するまで溶解させることが最も好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、正極活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケルを含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4、LiCo0.98Mg0.02O2等が挙げられる。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように併用してもよい。
これらの中では、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2のような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo1-xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから表される少なくとも1種類以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4のような4.4V以上で使用可能なリチウム複合酸化物がより好ましい。高充電電圧のリチウム遷移金属複合酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応によりガス発生が生じやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではガス発生を抑制することができる。
リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば、前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵・放出能力において人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。また、高結晶性の炭素材料は低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、ガス発生が抑制されるので好ましい。高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において電解液と反応してガスを発生しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではその反応を抑制することができる。
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
また、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いた場合、正極(正極合剤層)の密度は1.3g/cm3以上が好ましく、1.4g/cm3以上がより好ましく、1.5g/cm3以上が最も好ましい。またその上限は、4.0g/cm3を超えると実質上作製が困難となる場合があるため、4.0g/cm3以下が好ましく、3.5g/cm3以下がより好ましく、3.0g/cm3以下が最も好ましい。
一方、銅箔上に形成される負極(負極合剤層)の密度は、1.3g/cm3以上が好ましく、1.4g/cm3以上がより好ましく、1.5g/cm3以上が最も好ましい。その上限は、2.0g/cm3を超えると実質上作製が困難となる場合があるため、2.0g/cm3以下が好ましく、1.9g/cm3以下がより好ましく、1.8g/cm3以下が最も好ましい。
負極の電極層の厚さ(集電体片面当たり)は薄すぎると、電極材料層での活物質量が低下して電池容量が小さくなるため、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、その厚さが厚すぎると、サイクル特性やレート特性が低下するので好ましくない。したがって、負極の電極層の厚さは、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましい。
補助層の厚さ(片面当たり)は薄すぎると、電解液の分解を抑制できないため、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、その厚さが厚すぎると、イオンの移動を阻害し、サイクル特性やレート特性が低下するので好ましくない。したがって、補助層の厚さは、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
電池用セパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
電池用セパレータは、製造条件によっても異なるが、ガーレー値(通気度)が高すぎるとリチウムイオン伝導性が低下し、電池用セパレータとしての機能が十分でなくなる。そのため、ガーレー値は1000秒/100cc以下が好ましく、800秒/100cc以下がより好ましく、500秒/100cc以下が最も好ましい。また逆に、ガーレー値が低すぎると機械的強度が低下するので、50秒/100cc以上が好ましく、100秒/100cc以上がより好ましく、300秒/100cc以上が最も好ましい。その空孔率は、電池容量特性向上の観点から、30〜60%が好ましく、35〜55%がより好ましく、40〜50%が最も好ましい。
さらに、電池用セパレータの厚みは、薄い方がエネルギー密度を高くできるため、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、25μm以下が最も好ましい。また、機械的強度の面から、その厚みは5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
本発明におけるリチウム二次電池は、必要に応じて複数本を直列及び/又は並列に組んで電池パックに収納される。電池パックには、PTC素子、温度ヒューズ、バイメタル等の過電流防止素子のほか、安全回路(各電池及び/又は組電池全体の電圧、温度、電流等をモニターし、電流を遮断する機能を有する回路)を設けることができる。
合成例1〔3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ビニル(化合物−2)の合成〕
得られた3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ビニルについて、1H−NMR、13C−NMR(日本電子株式会社製、型式:AL300使用)及び質量分析(株式会社日立製作所製、型式:M80B使用)の測定を行い、その構造を確認した。結果を以下に示す。
(1)1H−NMR(300 MHz, CDCl3):δ= 7.9-7.4(m, 1 H), 5.1(dxd, J = 7.0x1.0 Hz, 1 H), 4.8(dxd, J = 3.1x0.9 Hz, 1 H), 4.1(t, J = 1.2 Hz, 3 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl3) δ= 159.7-159.6(m), 154.4-145.2(m), 141.0, 112.4-112.1(m), 99.4, 62.3(t, J = 3.7 Hz)
(3)質量分析:MS(EI) m/z(%) = 232(10) [M+], 189(100), 161(27), 146(31), 113(22), 81(9), 43(4), 18(8)
得られた3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸アリルについて、前記と同様にして、その構造を確認した。なお、MTFBAの消失は、反応液の一部を一定量取出し、メタノールを加え撹拌した後、メチルエステル体としてHPLCにて定量し確認した(以下の合成例においても同様である)。結果を以下に示す。
(1)1H−NMR(300 MHz, CDCl3):δ= 7.5-7.4(m, 1 H), 6.1-5.9(m, 1 H), 5.4(dxq, J = 7.5x1.5 Hz, 1 H), 5.3 (dxq, J = 5.2x2.1 Hz, 1 H), 4.8(dxt, J = 2.8x1.5 Hz, 2 H), 4.1(t, J = 1.2 Hz, 3 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl3) δ= 162.4, 154.0-153.9(m), 150.6-145.1(m), 131.5, 118.9, 112.3-112.0(m), 66.4, 62.3(t, J = 3.1 Hz)
(3)質量分析:MS(EI) m/z(%) = 246(11) [M+] , 189(100), 116(7), 146(8), 118(7), 81(3), 41(26), 39(15), 18(6)
得られた3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸プロパルギルについて、前記と同様にして、その構造を確認した。結果を以下に示す。
(1)1H−NMR(300 MHz, CDCl3):δ= 7.6-7.5(m, 1 H), 4.9(d, J = 2.4 Hz, 2 H), 4.1(t, J = 1.1 Hz, 3 H), 2.6(t, J = 4.9 Hz, 1 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl3):δ= 161.9, 154.2-145.2(m), 112.4-112.0(m), 77.0, 75.6, 62.3(t, J = 3.4 Hz), 53.1
(3)質量分析:MS(EI) m/z(%) = 224(17) [M+] , 189(100), 161(10), 146(11), 99(11), 68(9), 39(49), 18(14)
得られた3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸フェニルについて、前記と同様にして、その構造を確認した。結果を以下に示す。
(1)1H−NMR(300 MHz, CDCl3):δ= 7.6-7.2(m, 6 H), 4.1(t, J = 1.2 Hz, 3 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl3):δ= 161.2, 154.4-145.2(m), 153.4, 129.6, 126.4, 121.5, 112.6-112.3(m), 62.4(t, J = 3.8 Hz)
(3)質量分析:MS(EI) m/z(%) = 282(9) [M+] , 189(100), 161(9), 146(10), 113(6), 81(3), 39(9)
得られた3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ビフェニルについて、前記と同様にして、その構造を確認した。結果を以下に示す。
(1)1H−NMR(300 MHz, CDCl3):δ= 7.7-7.3(m, 10 H), 4.1(t, J = 1.1 Hz, 3 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl3):δ= 161.2, 154.2-145.2(m), 149.8, 140.2, 139.5, 128.3, 128.3, 127.5, 127.2, 112.5(d, J = 10.6 Hz), 62.4(d, J = 3.7Hz)
(3)質量分析: MS(EI) m/z(%) = 358(20) [M+], 189(100), 161(7), 146(8), 115(11), 63(4)
得られた2−ブチン−1,4−ジオール ビス(3−メトキシ−2,4,5−トリフルオロベンゾエート)について、前記と同様にして、その構造を確認した。結果を以下に示す。
(1)1H−NMR(300 MHz, CDCl3):δ=7.6-7.5(m, 2 H), 4.9(s, 4 H) , 4.1(t, J = 1.2 Hz, 6 H)
(2)IR(KBr法): 1730, 1621, 1504, 1479, 1438, 1384, 1353, 1276, 1222, 1102, 957, 784, 569 cm-1
(3)質量分析: MS(EI) m/z(%) = 462(5) [M+], 418(4), 257(4), 189(100), 146(5), 32(4)
〔電解液の調製〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、さらに下記の化合物−1を非水電解液に対して2重量%加え非水電解液を調製した。
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3O2(正極活物質)を92重量%、アセチレンブラック(導電剤)を3重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものをアルミニウム箔集電体上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。人造黒鉛(負極活物質)を95重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものを銅箔集電体上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて設計容量が2200mAhの円筒型電池を作製した。なお、正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて接続し、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
〔サイクル特性の測定〕
上記の方法で作製した電池を用いて25℃の恒温槽中、440mAh(0.2C)の定電流及び定電圧で、終止電圧4.35Vまで7時間充電し、次に440mAh(0.2C)の定電流下、放電電圧2.7Vまで放電し、初期容量を測定した。初期容量を測定した電池に対し45℃の恒温槽中、2200mAh(1C)の定電流及び定電圧で、終止電圧4.35Vまで3時間充電し、次に2200mAh(1C)の定電流下、放電電圧2.7Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式によりサイクル後の容量維持率を求めた結果、100サイクル後の容量維持率は90%であった。
容量維持率(%)=(100サイクル後の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
実施例A−1において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1を添加する代わりに化合物−2〜化合物−7を非水電解液に対して2重量%加えた以外は、実施例A-1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表A−1に示す。
実施例1において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1を非水電解液に対して、それぞれ0.01重量%、1重量%、5重量%、10重量%加えた以外は、実施例A−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表A−1に示す。
実施例A−1において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1を加えなかったこと以外は、実施例A−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表A−1に示す。
実施例A−1において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1を添加する代わりに、下記の比較化合物−1〜2を非水電解液に対して2重量%加えた以外は、実施例A−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表A−1に示す。
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):フルオロエチレンカーボネート(FEC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC)(容量比)=(3:10:15:2:70)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、非水電解液に対して、化合物−1を2重量%、アジポニトリルを1重量%、シクロヘキシルサルファイトを0.5重量%加えた以外は、実施例A−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表A−2に示す。
実施例A−12において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):フルオロエチレンカーボネート(FEC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC)(容量比)=(3:10:15:2:70)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1、アジポニトリル、およびシクロヘキシルサルファイトを加えなかった以外は、実施例A−12と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表A−2に示す。
実施例A−1で用いた正極活物質に変えて、LiFePO4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。LiFePO4(正極活物質)を90重量%、アセチレンブラック(導電剤)を5重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものをアルミニウム箔集電体上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、実施例A−1で調整した電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて設計容量が1200mAhの円筒型電池を作製した。なお正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
〔サイクル特性の測定〕
上記の方法で作製した電池を用いて25℃の恒温槽中、240mAh(0.2C)の定電流及び定電圧で、終止電圧3.6Vまで7時間充電し、次に240mAh(0.2C)の定電流下、放電電圧2.0Vまで放電し、初期容量を測定した。初期容量を測定した電池に対し45℃の恒温槽中、1200mAh(1C)の定電流及び定電圧で、終止電圧3.6まで3時間充電し、次に1200mAh(1C)の定電流下、放電電圧2.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式によりサイクル後の容量維持率を求めた。容量維持率は83%であった。
容量維持率(%)=(100サイクル後の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
実施例A−12において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1を添加する代わりに、前記の化合物−2〜7を非水電解液に対して2重量%加えた以外は、実施例B−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表B−1に示す。
実施例B−1において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1を加えなかったこと以外は、実施例B−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表B−1に示す。
実施例B−1において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(18:10:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、化合物−1を添加する代わりに、比較化合物−1〜2を非水電解液に対して2重量%加えた以外は、実施例B−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表B−1に示す。
本発明の実施例B−1〜B−7においては、負極が黒鉛の場合に優れたサイクル特性を示すことを実証しているが、本発明の電解液は、黒鉛負極に限らず、シリコン負極、スズ負極、及びLi負極の場合においても、これらの実施例と同様にサイクル特性の向上効果があることが分かった。
〔電解液の調製〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(8:20:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mになるように溶解し、さらに2,4−ジフルオロ安息香酸プロパルギルを非水電解液に対して0.5重量%加え非水電解液を調製した。
LiCoO2(正極活物質)を85重量%、黒鉛(導電剤)を10重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものをアルミニウム箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。また、人造黒鉛(負極活物質)を95重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものを銅箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
〔サイクル特性の測定〕
上記の方法で作製した電池を用いて25℃の恒温槽中、1mA/cm2の定電流で4.2Vまで充電した後、4.35Vの定電圧で2.5時間充電し、次に0.33mA/cm2の定電流で、放電電圧3.0Vまで放電し、初期の放電容量を測定した。初期効率は85%であった。
次いで、60℃の恒温槽中、1mA/cm2の定電流で4.35Vまで充電した後、4.35Vの定電圧で2.5時間充電し、次に1mA/cm2の定電流で、放電電圧3.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式によりサイクル後の容量維持率を求めた結果、100サイクル後の容量維持率は85%であった。結果を表C−1に示す。
容量維持率(%)=(100サイクル後の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(8:20:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、実施例C−1における2,4−ジフルオロ安息香酸プロパルギルを添加する代わりに、2−フルオロ安息香酸プロパルギル(実施例C−2)、4−フルオロ安息香酸プロパルギル(実施例C−3)、2,4−ジフルオロ安息香酸アリル(実施例C−4)、2,4−ジフルオロ安息香酸ビニル(実施例C−5)、2,4−ジフルオロ安息香酸フェニル(実施例C−6)、2,4−ジフルオロ安息香酸ビフェニル(実施例C−7)、2,6−ジフルオロ安息香酸プロパルギル(実施例C−8)、2,4、6−トリフルオロ安息香酸プロパルギル(実施例C−9)、2,3,4,6−テトラフルオロ安息香酸プロパルギル(実施例C−10)、ペンタフルオロ安息香酸プロパルギル(実施例C−11)を非水電解液に対して0.5重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例C−1と同様に電池特性を測定した。結果を表C−1に示す。
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(8:20:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、2,4−ジフルオロ安息香酸プロパルギルを非水電解液に対して、それぞれ0.01重量%(実施例C−12)、2重量%(実施例C−13)、5重量%(実施例C−14)、10重量%(実施例C−15)加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例C−1と同様に電池特性を測定した。結果を表C−1に示す。
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(8:20:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiBF4を0.05Mの濃度になるように溶解し、2,4−ジフルオロ安息香酸プロパルギルを非水電解液に対して、それぞれ0.5重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例C−1と同様に電池特性を測定した。結果を表C−1に示す。
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(8:20:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解した非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例C−1と同様に電池特性を測定した。結果を表C−1に示す。
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(8:20:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、実施例C−1における2,4−ジフルオロ安息香酸プロパルギルを添加する代わりに、2,4−ジフルオロ安息香酸メチル(比較例C−2)、2,6−ジフルオロ安息香酸メチル(比較例C−3)、2−フルオロ安息香酸メチル(比較例C−4)、4−フルオロ安息香酸メチル(比較例C−5)を非水電解液に対して0.5重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例C−1と同様に電池特性を測定した。結果を表C−1に示す。
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):フルオロエチレンカーボネート(FEC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC)(容量比)=(3:20:5:2:70)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、非水電解液に対して、2,4−ジフルオロ安息香酸プロパルギルを0.5重量%、アジポニトリルを1重量%、シクロヘキシルサルファイトを0.5重量%加えた以外は、実施例C−1と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表C−2に示す。
実施例A−17において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):フルオロエチレンカーボネート(FEC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC)(容量比)=(3:20:5:2:70)に調製した非水溶媒に、LiPF6を0.95M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mの濃度になるように溶解し、2,4−ジフルオロ安息香酸プロパルギル、アジポニトリル、およびシクロヘキシルサルファイトを加えなかった以外は、実施例C−17と同様に非水電解液を調製して円筒型電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表C−2に示す。
本発明の実施例C−1〜C−17においては、負極が黒鉛の場合に優れたサイクル特性を示すことを実証しているが、本発明の電解液は、黒鉛負極に限らず、シリコン負極、スズ負極、及びLi負極の場合においても、また、正極にリチウム含有オリビン型リン酸塩を用いた場合にも、これらの実施例と同様な効果が得られた。
本発明の非水電解液を用いたリチウム二次電池は、初期の電池容量やサイクル特性に優れ、長期にわたり電池性能を維持することができる。
Claims (9)
- 一般式(I)において、R1がメトキシ基であり、R2がビニル基、アリル基、プロパルギル基、フェニル基又はビフェニル基である請求項1に記載のエステル化合物。
- 非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、下記一般式(III)で表されるエステル化合物を、非水電解液に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とするリチウム二次電池用非水電解液。
- 一般式(III)において、L2がビニル基、アリル基又はプロパルギル基である請求項3に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
- 一般式(III)において、R11、R13及びR15のうちの2個以上がフッ素原子である請求項3又は4に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
- 電解液が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートから選ばれる2種以上を含む請求項3〜5のいずれかに記載のリチウム二次電池用非水電解液。
- 一般式(IV)において、R4がメトキシ基であり、R5がメチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、フェニル基又はビフェニル基である請求項7に記載の非水電解液。
- 正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に一般式(II)、(III)及び(IV)で表されるエステル化合物から選ばれる1種以上を、非水電解液の重量に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とするリチウム二次電池。
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