JP2011070861A - 電池ケース及びそれを用いたリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極缶11内にチタン製又はニッケル製のスペーサー13、正極活物質ペレット14及びセパレータ15を充填する。一方、負極キャップ12内にチタン製又はニッケル製の波座金16、チタン製又はニッケル製のスペーサー17及びリチウム負極活物質18を充填する。そして、正極缶11内に電解液を入れた後、絶縁ガスケット19を介して負極キャップ12を載置してかしめて密封してリチウムイオン電池とする。
【選択図】図5
Description
なお、LiPF6及び/又はLiBF4とLiTFSI及び/又はLiBETIとを共存させる場合、LiPF6及び/又はLiBF4の添加量は、LiPF6及び/又はLiBF4に対してモル比で0.5〜4倍の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2倍である。また、LiPF6及び/又はLiBF4の濃度は0.5mol/L以上が好ましく、さらに好ましいのは1mol/L以上である。
以上より、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステル及び/又は環状カルボン酸エステルとを併用することが好ましい。更に好ましくは、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステルとの併用である。具体的には、ジメチルカーボネートとエチレンカーボネートとを併用する。両者の配合割合は特に限定されない。
チタン、ニッケル及びアルミニウムがリチウムイオン電池用電解液中において高い正電位を付与されることにより、優れた耐食性皮膜が形成される。このことは、以下の試験例1〜4より明らかにされた。
試験例1では、純チタン電極をリチウムイオン電池用電解液中で電位走査し、電位−電流曲線を測定した。電解液は次のように調製した。すなわち、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとセバコニトリルとを容量比で25:25:50となるように混合液を調製し、さらにLiBF4を1mol/Lとなるように溶解した溶液を電解液とし、三極式電解セル容器に入れた。
試験例2では、純ニッケル電極について、実験例1と同様の条件で電位−電流曲線を複数回測定した。また、X線光電子分析法(XPS)により、電位走査後のニッケル電極の表面分析を行なった。
試験例3では、ステンレス(SUS304)からなる電極について、実験例1と同様の条件で電位−電流曲線を複数回測定した。SUS304はオーステナイト系ステンレスに属し、主成分であるFeの他、Ni8〜10.5重量%、Cr18〜20重量%を含む合金である。
試験例4では、純アルミニウムからなる電極について、実験例1と同様の条件で電位掃印を行った。
(1)電位電流曲線
・純チタン電極
試験例1(純チタン電極)及び試験例3(SUS304電極)についての結果を図1に示す。この図から分かるように、試験例1(純チタン電極)では、第1回目の掃引では4.5V位から酸化電流が流れ始め、電位が高くなるにつれて大きな酸化電流が流れたが、さらに大きな電位とするにつれ、徐々に電流値が低下した。また、第2回目の掃引では、酸化電流はほとんど流れなくなくなり、7V以上まで電池ケースとして充分耐えうることが分かった。以上の結果から、純チタン電極では、耐食性に優れた不動態皮膜が形成されることが分かった。
これに対して試験例3(SUS304電極)では、第1回目の掃引では4.6V位から酸化電流が流れ始め、電位が高くなるにつれて大きな酸化電流が流れ、第2回目以降においても、5.8V以降で大きな酸化電流が流れ、耐食性は不十分であることが分かった。
試験例2(純チタン電極)及び試験例3(SUS304電極)についての結果を図2に示す。この図からわかるように、試験例2(純ニッケル電極)では、第1回目の掃引では4V位から酸化電流が流れ始め、電位が高くなるにつれて大きな酸化電流が流れたが、第2回目の掃引では、4.5V位から僅かに酸化電流が流れるものの、6.3Vくらいまでほとんど電流は増加せず、6Vまでは充分電池ケースとして耐えうることが分かった。以上の結果から、純ニッケル電極でも、耐食性に優れた不動態皮膜が形成されることが分かった。
試験例1(純チタン電極)、試験例2(純ニッケル電極)及び試験例4(純アルミニウム電極)における、電位走査後の電極表面のXPS測定の結果を表1(元素組成)及び表2(ピーク分割)に示す。表1の元素組成から、いずれの電極も、表面に窒素及びフッ素が検出されており、チタンやニッケルやアルミニウムの量は少ないことが分かった。このことから、フッ素化合物からなる皮膜に加えて、窒素化合物からなる皮膜の形成が示唆された。また、表2のピーク分割の結果から、ニトリル由来と考えられるCN三重結合、−C−N結合が検出され、ニトリルの添加が耐食性の皮膜形成に貢献していることが示唆された。またフッ素化合物はピーク分離の結果よりP−F結合、C−F結合を有する化合物である。
試験例5では、SUS304、SUS316、SUS316L、純ニッケル、純チタン及び純アルミニウムについて正電位側への電位掃印を行い、電位電流曲線を測定した。ここで、SUS316はオーステナイト系ステンレスに属し、主成分であるFeの他、Ni10〜14重量%、Cr16〜18重量%、Mo2〜3重量%を含む合金である。また、SUS316LはSUS316とFe、Ni、Cr及びMoについてはSUS316と同様のオーステナイト系ステンレスであるが、さらに炭素含有量が0.03重量%以下とされているものである。
SUS304、SUS316、SUS316L、純ニッケル、純チタン、純アルミニウム及び純銅について負電位側への電位掃印を行い、電位電流曲線を測定した。
電解液の溶媒は、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:セバコニトリル=25:25:50(容量比)とし、さらにLiBF4を1mol/Lとなるように溶解した溶液を電解液とし、三極式電解セル容器に入れた。
高電位側での酸化電流は、電極や電解液の酸化を示すものである。したがって、以上の結果から、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:セバコニトリル=25:25:50(容量比)とし、さらにLiBF4を1mol/Lとなるように溶解した溶液を電解液とした場合には、正極に接触する電池ケースの材料としてチタン、アルミニウム、SUS304、SUS316L、ニッケル及びSUS316が適用可能であり、好ましいのはチタン、アルミニウム、SUS316L及びニッケルであり、さらに好ましいのはチタン、アルミニウム及びSUS316Lであることが分かった。
低電位側での還元電流は、電解液の還元を示すと考えられ、還元電流が小さい方が、電解液の変質が少ないと考えられる。したがって、以上の結果から、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:セバコニトリル=25:25:50(容量比)とし、さらにLiBF4を1mol/Lとなるように溶解した溶液を電解液とした場合には、負極に接触する電池ケースの材料として好ましいのはニッケル、チタン、SUS316L、SUS304、SUS316、及びアルミニウム、であり、特に好ましいのはニッケル、チタン及びSUS316Lであることが分かった。なお、従来から負極用集電体としてよく用いられているCuは好ましくないことが分かった。
試験例6では、電解質としてLiPF6を用い、これを1mol/Lとなるように溶解し、その他は試験例5と同様にして電位電流曲線を測定した。
低電位側での還元電流は、電解液の還元を示すと考えられ、還元電流が小さい方が、電解液の変質が少ないと考えられる。したがって、以上の結果から、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:セバコニトリル=25:25:50(容量比)とし、さらにLiPF6を1mol/Lとなるように溶解した溶液を電解液とした場合には、負極に接触する電池ケースの材料として好ましいのはニッケル、チタン、アルミニウム及びSUS304であり、特に好ましいのはニッケル、チタンであることが分かった。
ただし、負極活物質の動作する電位は種類によって異なっており、チタン酸リチウム系やFe2O3系の負極活物質を用いた場合には、酸化還元電位がLi/Li+に対して1.5V程度であり、リチウムの析出電位よりも高くなる。このため、そのような高い酸化還元電位を有する負極活物質を用いたリチウムイオン電池においては、銅やSUS316やSUS316Lを負極に接触する電池ケースの材料として用いることもできる。
試験例7では、作用極としてニッケル板を用い、リチウム塩としてLiPF6及びLITFSIを両方含む電解液を用いた。すなわち、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとセバコニトリルとを容量比で25:25:50となるように混合し、ここへLITFSI(1mol/L)とLiPF6(0〜1mol/L)とを溶解した液を電解液とし、三極式電解セル容器に入れた。電気化学的測定は、試験例5と同様とした。
試験例8では、試験例7と同様の電解液を用い、アルミニウムについて正電位側への電位掃印を行い、電位電流曲線を測定した。測定条件は試験例5と同様とした。
試験例9では、LiTFSIとLiPF6とを1:0〜1:0.5の割合で含む電解液を用いた。すなわち、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとセバコニトリルとを質量比で25:25:50となるように混合し、ここへLiTFSI(1mol/L)とLiPF6(0〜0.5mol/L)とを溶解した液を電解液を用い、チタンについて正電位側への電位掃印を行い、電位電流曲線を測定した。測定条件は実験例1〜5と同様とした。
ニッケル板を用いた試験例7では、図5に示すように、リチウム塩がLITFSI単独の場合、及びLITFSIの濃度が1mol/Lに対してLiPF6がその1/10の0.1mol/Lと少ない場合には電位窓がそれほどは広くならないのに対し、LiPF6を0.5mol/L以上添加した場合には、電位窓が大きく貴の方向に広がり、耐食性に優れた不動態皮膜が形成されることが分かった。
また、アルミニウム板を用いた試験例8でも、図6に示すように、LiPF6をLiTFSIと共存させることにより、電位窓が飛躍的に広がることが分かった。同様に、チタン板を用いた実験例9でも、図7に示すように、LiPF6をLiTFSIと共存させることにより、電位窓が飛躍的に広がることが分かった。
電池ケースの材質は、電極活物質の作動電位及び電解液の種類を考慮して選択されることが好ましい。図7に各種電極活物質の電位電流曲線及び酸化還元電位(図中矢印の位置)を示す。
負極活物質の動作する電位は、カーボン系やシリコン系ではリチウムの析出電位に近い位置にあるが、チタン酸リチウム系やFe2O3系の負極活物質を用いた場合には、酸化還元電位がLi/Li+に対して1.5V程度であり、リチウムの析出電位よりもかなり高くなる。このため、たとえば、チタン酸リチウム系やFe2O3系の負極活物質を用いたリチウムイオン電池において、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:セバコニトリル=25:25:50(容量比)とし、さらにLiBF4を1mol/Lとなるように溶解した溶液を電解液としとなるように溶解した溶液を電解液とした場合には、図3に示すように、チタン、ニッケル、アルミニウム、SUS304、SUS316及びSUS316Lを負極に接触する電池ケースの材料として用いることもできる。なぜならば、これらの材料は、チタン酸リチウム系やFe2O3系の作動電位において、還元電流が小さいことから、電池ケースの負極や電解液の変質のおそれが小さいからである。
これに対して、カーボン系やシリコン系の負極活物質を用いたリチウムイオン電池においては、チタン、ニッケル、アルミニウム、SUS304、SUS316及びSUS316Lを用いることが好ましい。なぜならば、これらの材料は、カーボン系やシリコン系の作動電位において、還元電流が小さくなっており、電池ケースの負極や電解液の変質のおそれが小さいからである。
これに対して、カーボン系やシリコン系の負極活物質を用いたリチウムイオン電池においては、チタン、ニッケル、アルミニウム、SUS304を用いることが好ましい。なぜならば、これらの材料は、カーボン系やシリコン系の作動電位において、還元電流が小さくなっており、電池ケースの負極や電解液の変質のおそれが小さいからである。
本発明の電池ケースを用いたリチウムイオン電池の作製例を以下に示す。すなわち、まず、図8に示すように、有底円筒状のチタン製又はニッケル製の正極缶11と、有底円筒状で扁平状のチタン製又はニッケル製の負極キャップ12とを用意する。正極缶11と負極キャップ12とで電池ケースが構成される。
ここに、リチウムイオン電池は電解液、正極、負極、セパレータ及びケースを備えてなる。
電解液はLi塩(電解質)と有機溶媒とを含んでいる。
Li塩には、Liイオン電池用の一般的なLi塩を用いることができる。例えば、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF4(四フッ化ホウ酸リチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiBETI(リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド)又はこれらの2種以上を用いることができる。
なかでも、正極の酸化還元電位が4.5V以上のものについては、LiPF6、及び/又はLiBF4を使用することが好ましい。また、LiTFSIやLiTFSやLiBETIを用いる場合、LiPF6又はLiBF4を添加することが好ましい。
更にはニトリル化合物を有機溶媒として用いることができる。ここで、ニトリル化合物としては、鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物を挙げることができる。
シアノ酢酸エステルとしてはシアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸プロピル、シアノ酢酸ブチル等が挙げられる。これらのシアノ酢酸エステルは、炭素数は特に限定されないが、20以下であることが好ましい。
電位窓を広げる作用の観点からジニトリル化合物が好ましい。中でも、セバコニトリルの採用が更に好ましい。
ただし、ニトリル化合物は粘度が高いので、上述の鎖状炭酸エステル、環状炭酸エステル及び/又は環状カルボン酸エステルと併用することが好ましい。更に好ましくはニトリル化合物と鎖状炭酸エステル及び環状炭酸エステルとを併用する。鎖状炭酸エステルとしてはジメチルカーボネートを採用することができ、環状炭酸エステルとしてはエチレンカーボネートを採用することができる。
この場合、有機溶媒全体に占めるニトリル化合物の配合割合は1〜90容量%とすることが好ましい。更に好ましくは5〜70容量%であり、更に更に好ましくは、10〜50容量%である。
正極は正極活物質と集電体とを備える。
(正極活物質)
正極活物質とは「負極よりも高い電位で結晶構造内にリチウムが挿入/離脱され、それに伴って酸化/還元が行われる物質」をいう。
正極活物質としては(1)酸化物系、(2)オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系、及び(3)オリビンフッ化物系を挙げることができる。
1−1具体的物質
酸化物系としては、Li1−xCoO2(x=0〜1:層状構造)、Li1−xNiO2(x=0〜1:層状構造)、Li1−xMn2O4(x=0〜1:スピネル構造)、Li2−yMnO3系(y=0〜2)及びこれらの固溶体(ここで固溶体とは、上記酸化物系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)を挙げることができる。また、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Li、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又はそれ以上を用いることができる。
1−2 特性
この正極活物質の一般的な放電電位は5V (vs Li/Li+)未満である。但し、LiMn2O4系でNiに一部置換した、LiNi0.5Mn1.5O4は、放電電位が4.7Vであり、急速充電をおこなう際には過電圧分を加味し、5Vを超える充電電圧を必要とする場合がある。また、LiCoMnO4は放電電圧が5.2V程度から始まるため、これも充電電圧は5Vを超える。また、酸化物系は一般に300℃未満で分解し、酸素発生とともに比較的大きな発熱反応がある。このため、過充電が起こらないような制御回路が必要とされる。
2−1具体的物質
オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系としては、Li1−xNiPO4 (x=0〜1)、Li1−xCoPO4 (x=0〜1)、Li1−xMnPO4 (x=0〜1)、Li1−xFePO4 (x=0〜1)及びこれらの固溶体(ここで固溶体とは、上記リン酸塩系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)を挙げることができる。また、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又は2種以上を用いることができる(特開2008−130525号参照)。
2−2 特性
この正極活物質の酸化還元電位は、上記酸化物系とは異なり300℃未満では発熱反応が小さい上、酸素は発生せず、安全性が高いことから注目されている。また、リン酸塩系のうち、LiCoPO4系は放電電位が4.8V程度であり、急速充電に際しては5V以上で耐電圧を有する電解液が必要とされる。LiNiPO4の放電電位は5.2V (vs Li/Li+)が示唆されている。
3−1 具体的物質
Li2−xNiPO4F (x=0〜2)、Li2−xCoPO4F (x=0〜2)が知られており、その他Li2−xMnPO4F (x=0〜2)、Li2−xFePO4F (x=0〜2)が考えられる。
また、これらの固溶体(ここで固溶体とは、上記オリビンフッ化物系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)も挙げることができる。さらに、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又はそれ以上を用いることができる。
3−2 特性
この正極活物質の酸化還元電位はオリビン系と同様に、上記酸化物系とは異なり、300℃未満の分解では、発熱反応が小さい上、酸素発生がないため、正極活物質由来の電池発火の影響は小さいと考えられ安全性の面で注目されている。また、電池の電気容量密度(mAh/g)を上記リン酸塩系よりも高くできる(特開2003−229126号公報参照)。しかし、例えばLi2CoPO4F系は、平均放電電位が4.8V程度であり、急速充電に際しては5V以上で耐電圧を有する電解液が必要とされる。また、Li2NiPO4F系の放電電位は5.2V(vs Li/Li+)程度であり、5V以上で耐電圧を有する電解液が必要とされる。
その他、リチウム非含有のFeF3、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェブレル相化合物等を用いることもできる。また、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム塩、ニオブ酸化物およびそのリチウム塩、さらには、複数の異なった正極活物質を混合して用いることも可能である。
正極活物質粒子の平均粒径は、特に限定はされないが、10nm〜30μmであることが好ましい。
正極用集電体とは正極活物質を担持する導電性の基板である。
正極の集電体の成形材料は、充電時において安定であることが要求される。特に、酸化還元電位の高いオリビン型結晶構造を有するリン酸塩系及びオリビンフッ化物系の正極活物質を用いるときには、耐食性に優れた素材を使用することが好ましい。
例えば、電解質としてLiPF6、LiBF4を使用する場合、オーステナイト系ステンレス、Ni、Al、Ti等を用いることができるが、使用する正極活物質の動作電位を考慮し、適宜選択することが好ましい。例えば、電解質としてLiPF6を用いる場合は、Li/Li+電極に対して6Vでも使用することができるが、電解質としてLiBF4を用いる場合、SUS304はLi/Li+電極に対し5.8V以下で充放電可能な場合のみ用いることができる。また、電解質としてLiTFSIを使用する場合、正極集電体表面に耐食性皮膜を形成させるべく、LiPF6を共存させることが好ましい。LiBETI及びLiTFSもLiTFSIの場合と同様である。
また、Al等の導電金属材料へ導電性DLC(ダイヤモンドライクカーボン)を周知の方法で被覆したものを集電体として用いることもできる。電解質がLiBF4やLiPF6など、容易にフッ化物皮膜を形成するようなリチウム塩の場合は、アルミニウム上へ厚いフッ化皮膜が形成し、耐食性は向上するものの、電子伝導性が低下し、ひいてはオーミック過電圧増加に伴う、高出力化が阻害されることとなる。Al等の導電金属材料へ導電性DLCを被覆すれば、フッ化物皮膜は導電性DLCの欠陥部分の極わずかな面積でのみ発生するだけである。このため、高電圧化しても電子伝導性の低下は無視できる程度となり、懸念されている高電圧化による出力低下は防ぐことが可能となる。
ここで、導電性ダイヤモンドライクカーボンとは、ダイヤモンド結合(炭素同士のSP3混成軌道結合)とグラファイト結合(炭素同士のSP2混成軌道結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造をとるカーボンのうち、導電性が1000Ωcm以下のものをいう。ただし、アモルファス構造以外に、部分的にグラファイト構造からなる結晶構造(すなわちSP2混成軌道結合からなる六方晶系結晶構造)からなる相を有し、これにより導電性が発揮されるものも含まれる。グラファイトとダイヤモンドの中間の性質を有するダイヤモンドライクカーボンは、成膜時にダイヤモンドライクカーボンを構成する炭素原子のSP2混成軌道結合とSP3混成軌道結合の比率を調整することで、導電性を調節することができる。
勿論、上記耐食性導電性金属材料を導電性DLCで被覆してもよい。
集電体の形状及び構造は、正極活物質や電池の構造に応じて、任意に設計可能である。
リチウムイオン電池用正極は、リチウムイオン電池に組み込む前に、ニトリル化合物を1容量%以上含む有機溶媒中にリチウム塩が溶解した前処理用電解液中に正電極を浸漬する浸漬処理工程を行い、さらに電極に正電圧を付与する正電圧処理工程を行なう。こうして前処理された電極は、ニトリル化合物を全く含まない電解液や、ニトリル化合物の添加量の少ない電解液を用いたリチウムイオン電池に用いても、電位窓が広く、高い電位においても電解液を分解し難くなる(特願2009−180007号参照)。このような広い電位窓の電極となる理由は、電極上に窒素を成分として含む耐食性の皮膜が形成されるためであると推測される。
負極は負極活物質と集電体とを備える。
(負極活物質)
負極活物質とは「正極よりも低い電位で結晶構造内にリチウムが挿入/離脱され、それに伴って酸化/還元が行われる物質」をいう。
負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン等の種々の炭素材料やチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、H2Ti12O25、H2Ti6O13、Fe2O3などが挙げられる。また、これらを適宜混合した複合体も挙げることができる。さらには、Si微粒子やSi薄膜、これらのSiがSi−Ni、Si−Cu、Si−Nb、Si−Zn、Si−Sn等のSi系合金となった微粒子や薄膜が挙げられる。さらには、SiO酸化物、Si−SiO2複合体、Si−SiO2−カーボンなどの複合体等を挙げることができる。
負極用の集電体は汎用的な導電性金属材料、Cu、Al、Ni、Ti、オーステナイト系ステンレス等で形成することができる。
但し、電解液にニトリル化合物を用いたとき(他の有機溶剤との併用を含む)には、電解液中のLi塩に応じて適宜選択する必要がある。すなわち、電解質としてLiPF6、LiBF4を使用する場合、オーステナイト系ステンレス、Ni、Al、Ti等の使用が可能となる。ただし、使用する負極活物質の動作電位に応じて、適宜選択する必要がある。負極活物質としてカーボン系やSi系を使用する場合において、電解質としてLiBF4を使用した場合は、Cu以外のAl、Ni、Ti、オーステナイト系ステンレス等からなる集電体を使用することができる。負極活物質としてチタン酸リチウムやFe2O3系の化合物を用いた場合は、Cuを含む上記材料の全てが適用可能である。一方、電解質としてLiPF6使用時はAl、Ni及びTiが好ましく、オーステナイト系ステンレス及びCuは好ましくない。また、電解質としてLiTFSIや、LiBETI、やLiTFSを使用する場合、Ni、Ti、Al、Cu、オーステナイト系ステンレスの何れも使用することができる。
正極活物質には導電性の小さいものがある。従って、正極活物質と集電体との間に導電性の電子伝導部材を介在させて、両者の間に十分な電子伝導パスを確保することが好ましい。
ここで電子伝導部材は正極活物質と集電体との間に電子伝導パスを形成できればその形態は特に限定されるものではなく、例えばアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト粉、ダイヤモンドライクカーボン、グラッシーカーボン等の導電性粉体(導電助剤)を用いることができる。ダイヤモンドライクカーボン及びグラッシーカーボンは、カーボンブラックやグラファイトよりもはるかに広い電位窓を有しており、高電位を付与した場合の耐食性に優れているため、好適に用いることができる。また、これらの導電助剤に金属微粒子が担持されていることも好ましい。金属微粒子としては、例えばPt、Au、Ni等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、これらの合金であっても良い。
電子伝導材料として、正極活物質を被覆する導電性皮膜(DLC膜等)、正極活物質を埋入させた導電性薄膜(金の薄膜等)を用いることができる。
特に、Li2NiPO4F系の正極活物質はそれ自身の及び/又はその表面皮膜の導電性が小さいので、これを集電体へ単に担持させてなるものではリチウムイオン電池の正極として機能しない場合がある。Li2NiPO4F系の正極活物質の性能評価のために、これを金等の導電薄膜へハンマー等で物理的に打ち込み、電池の正極を形成することができる。
ここにLi2NiPO4F系正極活物質とはLi2NiPO4F及びこれへ適宜ドーパントをドープしたものを指す。
正極用電子伝導部材と同様な物を用いることができる。
セパレータは電解液中へ浸漬され、正極と負極とを分離し両者の短絡を防ぐとともに、Liイオンの通過を許容する。
かかるセパレータには、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から成る多孔質フィルムが挙げられる。
13…スペーサー
14…正極活物質ペレット
15…セパレータ
16…波座金
17…スペーサー
18…リチウム負極活物質
19…絶縁ガスケット
Claims (8)
- リチウム塩が溶解している電解液を備えたリチウムイオン電池に用いられる電池ケースであって、少なくとも該電池ケースの電解液と接触する部分は、オーステナイト系ステンレスからなる基材、チタン、ニッケル又はアルミニウムを主要構成成分とする基材、の少なくとも1種からなることを特徴とする電池ケース。
- 前記リチウム塩にはLiPF6及び/又はLiBF4が含まれていることを特徴とする請求項1記載の電池ケース。
- 前記リチウム塩には、さらにLiTFSI及び/又はLiBETIが含まれていることを特徴とする請求項2記載の電池ケース。
- 前記電解液にはニトリル化合物が含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の電池ケース。
- 電池ケース内にリチウム塩が溶解している電解液を備えたリチウムイオン電池であって、
該電池ケースの少なくとも電解液と接触する部分は、オーステナイト系ステンレス基材、チタン、ニッケル又はアルミニウムを主要構成成分とする基材、の少なくとも1種からなることを特徴とするリチウムイオン電池。 - 前記リチウム塩にはLiPF6及び/又はLiBF4が含まれていることを特徴とする請求項5記載のリチウムイオン電池。
- 前記リチウム塩には、さらにLiTFSI及び/又はLiBETIが含まれていることを特徴とする請求項6記載のリチウムイオン電池。
- 前記電解液にはニトリル化合物が含まれていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項記載のリチウムイオン電池。
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