JP2010186734A - 二次電池用正極及び二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い電位で充電反応が行われる正極活物質を用いた二次電池においても、導電助剤が充電時の高い電位において酸化されてしまったり、溶媒が分解したりしてしまうことのない二次電池用正極を提供する。
【解決手段】本発明の二次電池用正極は、正極活物質として、酸化物系正極活物質、オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質、オリビンフッ化物系正極活物質の少なくとも1種が電子伝導部材を介して集電体に電気的に接続されている。
【選択図】図1

Description

本発明は二次電池用正極及び二次電池に関し、LiNiPOF、LiNiPO、LiCoPO、LiCoPOF等、高い電位で充電反応が行われる正極活物質を利用した二次電池に好適に用いることができる。
従来、二次電池の正極活物質にカーボン粉を混合し、正極に必要な電子伝導性を付与することが行なわれている。例えば、リチウムイオン電池用の正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、これらの固溶体、マンガン酸リチウム(LiMn24)等が用いられており、これら正極材料に導電助剤としてのカーボンを混合して正極に必要な電子伝導性を付与し、さらにはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂を結着剤として用いることにより正極が成形されている。
そして、さらなる大出力化及び高速充電の要請に応えるため、電極を作製する時に原料を炭化したり、電極活物質と導電助剤と溶媒とを湿式法により混合粉砕した後、溶媒を除去したり(特許文献1)して、電子伝導性を向上させることが行なわれている。また、金属で表面を被覆した高分子材料を導電助剤として用いたり(特許文献2)、活物質層に導電助剤として金属粒子を含ませたり(特許文献3)して、電子伝導性を向上させることも提案されている。
一方、リチウムイオン電池のエネルギー密度をさらに高めるべく、新たな正極活物質の探索も進められている。例えば、特許文献4や特許文献5にはLiCoPOFがエネルギー密度の高い正極活物質として提案されている。これらの大きなエネルギー密度を有する正極活物質をリチウムイオン電池に利用すれば、理論的には、大きな充電容量のリチウムイオン電池となるはずである。
特開2008−147024号公報 特開2007−311057号公報 特開2006−164823号公報
しかし、上記のLiNiPOF、LiNiPO、LiCoPO、LiCoPOF等の高い電位で充電反応が行われる正極活物質では、導電助剤としてこれらの正極活物質に添加したグラファイト粉等が、充電時の高い電位において酸化されてしまったり、グラファイト粉上での電気化学反応によって溶媒が分解されてしまったりするという問題があった。
また、本発明者らの試験結果によれば、正極活物質であるLiNiPOFや、LiCoPOFは等の、導電助剤としてのカーボンを添加して正極としても充放電を円滑に行うことができず、このため大きなエネルギー密度を有するにもかかわらず、それを有効に活用することが困難であった。
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、高い電位で充電反応が行われる、エネルギー密度の高い正極活物質を用いて充電及び放電を迅速に行うことができ、エネルギーを有効に活用することができる、二次電池用正極及び二次電池を提供することを目的とする。
本発明の二次電池用正極は、正極活物質としてオリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質及び/又はオリビンフッ化物系正極活物質が電子伝導部材を介して集電体に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の二次電池用正極では、正極活物質として、高い電位で充電反応が行われる、オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質及び/又はオリビンフッ化物系正極活物質を用いるため、エネルギー密度が高くなる。そして、正極活物質と集電体との間に電子伝導部材を介在させることにより、正極活物質と集電体との電気的な接触抵抗を低下させることができる。以上のことから、エネルギー密度が高く、しかも充電及び放電を迅速に行うことができ、ひいては、エネルギーを有効に活用することができる、
ここで、オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質とは、Li1−xNiPO (x=0〜1)、Li1−xCoPO (x=0〜1)、Li1−xMnPO (x=0〜1)、Li1−xFePO (x=0〜1)及びこれらの固溶体(ここで固溶体とは、上記リン酸塩系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)を挙げることができる。ここでxは充放電にともなうリチウムのインターカレーション−デインターカレーションによって変化する。このため、本出願においては、例えばLi1−xNiPO (x=0〜1)をLiNiPO と表現する場合がある。また、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又は2種以上を用いることができる(特開2008−130525号参照)。
この正極活物質の酸化還元電位は、上記酸化物系とは異なり300℃未満では発熱反応が小さい上、酸素は発生せず、安全性が高い。また、リン酸塩系のうち、LiCoPO系は放電電位が4.8V程度であり、急速充電に際しては5V以上で耐電圧を有する電解液が必要とされる。
また、オリビンフッ化物系正極活物質とは、Li2−xNiPOF (x=0〜2)、Li2−xCoPOF (x=0〜2)が知られており、その他Li2−xMnPOF (x=0〜2)、Li2−xFePOF (x=0〜2)が挙げられる。ここでxは充放電にともなうリチウムのインターカレーション−デインターカレーションによって変化する。このため、本出願においては、例えばLi2−xNiPOF (x=0〜2)をLiNiPOFと表現する場合がある。また、これらの固溶体(ここで固溶体とは、上記オリビンフッ化物系の正極活物質において金属原子が自由な割合で混合された物質を指す。)も含まれる。さらに、これらのうちの金属原子を他の金属原子でドープしたものも含まれる。ドーパントとしては酸化還元反応において電気化学的な特性を変化させられるものであれば特に限定されるものではない。例えば、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb及びMoの1種又はそれ以上を用いることができる。
オリビンフッ化物系正極活物質の酸化還元電位はオリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質と同様に、300℃未満の分解では、発熱反応が小さい上、酸素発生がないため、正極活物質由来の電池発火の影響は小さいと考えられ安全性である。また、電池の電気容量密度(mAh/g)を上記オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質よりも高くできる(特開2003−229126号公報参照)。オリビンフッ化物系正極活物質の中でもLiNiPOFは、電気的抵抗が大きいため、本発明の効果が大きい。
電子伝導部材は正極活物質と集電体との間に電子伝導パスを形成できればその形態は特に限定されるものではなく、例えばアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト粉、ダイヤモンドライクカーボン、グラッシーカーボン等の導電性粉体(導電助剤)を用いることができる。ダイヤモンドライクカーボン及びグラッシーカーボンは、カーボンブラックやグラファイトよりもはるかに広い電位窓を有しており、高電位を付与した場合の耐食性に優れているため、好適に用いることができる。また、これらの導電助剤に金属微粒子が担持されていることも好ましい。金属微粒子としては、例えばPt、Au、Ni等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、これらの合金であっても良い。
電子伝導材料として、正極活物質を被覆する導電性皮膜(DLC膜等)、正極活物質を埋入させた導電性薄膜(金の薄膜等)を用いることができる。
特に、LiNiPOF系の正極活物質はそれ自身の及び/又はその表面皮膜の導電性が小さいので、これを集電体へ単に担持させてなるものではリチウムイオン電池の正極として機能しない場合がある。LiNiPOF系の正極活物質の性能評価のために、これを金等の導電薄膜へハンマー等で物理的に打ち込み、電池の正極を形成することができる。
ここにLiNiPOF系正極活物質とはLiNiPOF及びこれへ適宜ドーパントをドープしたものを指す。
本発明の二次電池用正極を用いて二次電極とすることができる。すなわち、本発明の二次電池は、電解液と、本発明の二次電池用正極と、負極と、を備える。
電解液としては、ニトリル化合物を含む電解液が好ましい。それは、次の理由による。すなわち、本発明の二次電池用正極は、高い電位で充電反応が行われる、オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質及び/又はオリビンフッ化物系正極活物質を用いる。これに対し、ニトリル化合物を含む電解液は広い電位窓を有する。このため、高い電位で充放電を行っても、電解液が分解したり、変質したりするおそれが小さい。このため、エネルギー密度が高く、しかも充電及び放電を迅速に行うことができ、ひいては、エネルギーを有効に活用することができる、
実施形態1の二次電池の断面模式図である。 実施形態1の二次電池用正極の拡大模式図である。 実験例1〜3の二次電池用正極の電位−電流曲線である。 実施例2のリチウムイオン電池用正極のサイクリックボルタモグラムである。 参考例1の電極のサイクリックボルタモグラムである。 実施例のリチウムイオン電池用正極の作製に用いたLiNiPOFのXRDチャートである。 実施例のリチウムイオン電池用正極の条件1におけるサイクリックボルタンメトリーのチャートである。 実施例のリチウムイオン電池用正極の条件2におけるサイクリックボルタンメトリーのチャートである。 実施形態2のリチウムイオン電池の電池ケースの断面図である。 実施形態1のリチウムイオン電池の模式断面図である。 実施形態1のリチウムイオン電池の模式断面図である。
以下、本発明を具体化した実施形態について説明する。
(実施形態1)
まず、正極活物質の粉末を用意し、これに電子伝導部材としてのグラシーカーボン粉末(及び/又はダイヤモンドライクカーボン粉体)と、結合剤としてのポリテトラエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂粉末とを加え、ホットプレスによって所望の形状に成形し、実施形態の二次電池用正極を得る。正極活物質としては、例えばLiNiPOF、LiNiPO、LiCoPO、LiCoPOF等のいずれか、あるいはこれらの混合物を用いることができる。これらの混合割合は、正極として必要とされる電子伝導性や、結合剤としての機能を奏するために必要なフッ素樹脂の添加量等を勘案して、適宜決定すればよい。代表的な割合としては、正極活物質粉末が60〜80重量%、グラシーカーボン粉末が15〜35重量%、フッ素樹脂粉末が3〜10重量%である。
このようにして成形したリチウムイオン電池用正極ペレットを用いて、図1に示すようなリチウムイオン電池8を製造することができる。すなわち、電解液が浸透可能なセパレータ1をリチウムイオン電池用正極ペレット2とグラファイトからなる負極3とで挟んで接合体4とし、電解液に浸漬する。そして、パッキン5を装填した負極用集電ケース6に負極3が接触するように接合体4を収容し、さらにリチウムイオン電池用正極ペレット2側から正極用集電板7を嵌挿した後、負極用集電ケース6と正極用集電板7とをかしめて密閉する。こうして、実施形態のリチウムイオン電池8を製造することができる。
上記実施形態のリチウムイオン電池8では、図2に示すように、正極活物質粉末2a上にグラシーカーボン粉末2bとフッ素樹脂粉末2cが付着しており、フッ素樹脂粉末2cが結合剤として各粉末をつなぎとめて電極形状を保持している。そして、グラシーカーボン粉末2bが電子伝導性を担う導電補助剤としての役割を果たす。後述するように、グラシーカーボン粉末2b(あるいはダイヤモンドライクカーボン粉末)は、リチウムイオン電池の電解液中において、単なるカーボンブラック粉末やグラファイト粉末よりも広い電位窓を有している。このため、正極活物質の充電過程における高い電位においても、安定に存在し、電解液溶媒の分解もほとんど発生しない。このため、導電助剤が充電時の高い電位において酸化されてしまったり、溶媒が分解したりしてしまうことがなく、ひいては、高い電位で充電反応が行われ、エネルギー密度の高い正極活物質を有効に活用することができる。
<実験例>
以下、本発明の二次電池用正極の発明の効果について立証するため、様々な導電性物質粉体をPTFE粉体と混合してホットプレス法によって円盤状電極を作製し、電位−電流曲線を測定した。
(実験例1)
実験例1では、グラシーカーボン粉砕品(平均粒径0.5μm)4mgとPTFE粉体1mgとを混合し、ホットプレスによって8mmφの円盤状の電極を作製した。
(実験例2)
実験例2では、グラシーカーボン粉砕品(平均粒径8μm)4mgとPTFE粉体1mgとを混合し、ホットプレスによって8mmφの円盤状の電極を作製した。
(実験例3)
実験例3では、ダイヤモンドライクカーボン粉末(平均粒径0.03μm)4mgとPTFE粉体1mgとを混合し、ホットプレスによって8mmφの円盤状の電極を作製した。
<電位−電流曲線の測定>
上記のようにして作製した実験例1〜3の電極について、リチウムイオン電池用電解液中で電位走査し、電位−電流曲線を測定した。電解液は次のように調製した。すなわち、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとセバコニトリルとを質量比で25:25:50となるように混合液を調製し、さらにLiPFを1mol/Lとなるように溶解した溶液を電解液とし、三極式電解セル容器に入れた。
電位−電流曲線の測定は、作用極として上記電極(面積0.5cm)、対極として白金網、参照電極としてLi金属を用いた。掃引速度は5mV/secとした。
その結果、図3に示すように、グラシーカーボン粉末を用いた実験例1、2及びダイヤモンドライクカーボンを用いた実験例3の電極では、広い電位窓を有していることが分かった。
以上の結果から、導電助剤としてグラシーカーボン粉末やダイヤモンドライクカーボン粉末をリチウム電池の正極活物質粉末に添加した実施形態のリチウムイオン電池では、リチウムイオン電池用の充電時に高い電位とされる正極においても、分解されることなく、溶媒を分解するおそれも少ないことが分かった。そして、この結果から、高い電位で充電反応が行われるエネルギー密度の高い正極活物質を有効に活用できることが分かった。
(実施形態2)
実施形態2では、正極活物質の表面に付着した電子伝導性微粒子を電子伝導部材とした。
すなわち、正極活物質の粉末を用意し、乾式めっき法によって、正極活物質の粉末の表面にダイヤモンドライクカーボンを付着させる。この付着したダイヤモンドライクカーボンが電子伝導部材である。
ダイヤモンドライクカーボンを正極活物質の粉末に付着させるための乾式めっき法としては、特に限定はされないが、例えばイオン化蒸着法を用いることができる。すなわち、真空チャンバー中にベンゼンや炭化水素ガスを導入し、直流アーク放電プラズマ中でイオンを生成させ、直流の負電圧にバイアスされた正極活物質の粉末にバイアス電圧に応じたエネルギーで衝突させて正極活物質の粉末の表面にダイヤモンドライクカーボンを付着させる方法である。
ダイヤモンドライクカーボンを正極活物質の粉末に付着させるためのその他の方法としては、高周波プラズマ法が挙げられる。この方法は、メタンガスを原料に使い、容量結合型のプラズマ電極を用いる方法である。
さらには、炭化水素ガスの熱分解によってダイヤモンドライクカーボンを正極活物質の粉末に付着させることもできる(例えば特開2008−260670号公報)。
また、スパッタリングの手法で正極活物質の粉末の表面にダイヤモンドライクカーボンを付着させることもできる(例えば特開2004−339564号公報)。
すなわち、真空中において、電子を電界によって加速してアルゴンガスに衝突させてアルゴンをイオン化し、これを電界によって加速して固体カーボンターゲット衝突させてスパッタリングさせ、正極活物質の粉末上にダイヤモンドライクカーボンを形成させる方法である(このとき、正極活物質に印加する負のバイアス電圧をかけてもよい。)。
上記のような、様々な乾式めっき法によって、表面にダイヤモンドライクカーボンを付着させた正極活物質の粉末を用意し、これに結合剤としてのポリテトラエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂粉末とを加え、ホットプレスによって所望の形状に成形し、実施形態の二次電池用正極を得る。正極活物質としては、例えばLiNiPOF、LiNiPO、LiCoPO、LiCoPOF等のいずれか、あるいはこれらの混合物を用いることができる。これらの混合割合は、正極として必要とされる電子伝導性や、結合剤としての機能を奏するために必要なフッ素樹脂の添加量等を勘案して、適宜決定すればよい。
このようにして成形したリチウムイオン電池用正極を用いて、実施例1と同様の方法により、リチウムイオン電池を製造することができる。
また、こうして得られたリチウムイオン電池用正極では、ダイヤモンドライクカーボンが電子伝導性を担う導電補助剤としての役割を果たす。ダイヤモンドライクカーボンは、リチウムイオン電池の電解液中において、単なるカーボンブラック粉末やグラファイト粉末よりも広い電位窓を有している。このため、正極活物質の充電過程における高い電位においても、安定に存在し、電解液溶媒の分解もほとんど発生しない。このため、導電助剤が充電時の高い電位において酸化されてしまったり、溶媒が分解したりしてしまうことがなく、ひいては、高い電位で充電反応が行われ、エネルギー密度の高い正極活物質を有効に活用することができる。
(実施形態3)
実施形態3では、リチウムイオン電池用正極活物質に混合される、触媒になる金属が担持され担持カーボンを電子伝導部材とした。
すなわち、触媒になる金属が担持され担持カーボンには、カーボンブラックにPt微粉末が担持されたものを用いることができる。Ptの担持量については、酸化還元反応の活性化エネルギー低減の効果や電気抵抗の低減効果、並びに製造コストを勘案して適宜決めればよいが、Ptが10〜50wt%が好ましく、さらに好ましいのは20〜50wt%、最も好ましいのは40〜50wt%である。
また、本発明のリチウムイオン電池に用いられる負極としては、グラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、チタン酸リチウム−カーボン複合体等を用いることができる。
以下本発明のリチウムイオン電池用正極を具体化した実施例についてさらに詳細に述べる。
<リチウムイオン電池用正極の作製>
(実施例2)
LiCoPOFとPt担持カーボン(CABOT社製:バルカンXC−72R Pt40wt%)とを乳鉢で混合した後、さらにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を加えて混合し、プレス成形により円盤状のペレットとした。これらの混合割合はLiCoPOF:Pt担持カーボン:PTFE=60:35:5(重量比)とした。Pt担持カーボンが電子伝導部材である。
こうして得られたペレットを2枚のPtメッシュに挟み、ホットプレス法(プレス条件:140℃、2分、500kg/cm2)によってホットプレスすることにより、実施例1のリチウムイオン電池用正極を得た。Ptメッシュが正極用集電体である。
(参考例)
参考例では、正極活物質であるLiCoPOFを加えることなく、Pt担持カーボン(CABOT社製:バルカンXC−72R Pt40wt%)とPTFEとを90:10の割合でプレス成形し、円盤状のペレットを作製し、実施例2と同様のホットプレス法により参考例1の電極を得た。
<リチウムイオン電池の作製およびサイクリックボルタモグラムによる充放電特性の測定>
上記実施例2のリチウムイオン電池用正極を用い、以下のようにしてリチウムイオン電池を作製し、サイクリックボルタモグラムによる放充電特性の測定を行なった。
すなわち、セバコニトリルとエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを容量比で50:25:25の割合で混合しい、これにリチウム塩としてLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を1mol/Lとなるように溶解させて,リチウムイオン電池用電解液とした。また、負極にはチタン酸リチウム(LiTi12)を用いた。
充放電特性の測定には3極式ガラスセルを用い、上記のようにして調製したリチウムイオン電池用電解液を入れ、作用極をリチウムイオン電池用正極とし、参照電極は(Ag/Ag+)を用い、参照電極の充填液の銀イオン源として過塩素酸銀を用いた。また、対極にはチタン酸リチウム(LiTi12)を用いた。
測定にあたっては、自然電位から正方向、あるいは負方向に1mV/秒の速度で電位の掃引を行い、充放電特性の測定を行なった。さらに、作用極に参考例1の電極を用いて同様の充放電特性の測定を行なった。
その結果、図4に示すように、Pt担持カーボンを導電助剤として用いた実施例1のリチウムイオン電池用正極では、正方向への電位掃引及び負方向への電位掃引において、可逆的な正逆両方向への電流が流れたのに対し、Ptを担持していないカーボンを導電助剤として用いた比較例1のリチウムイオン電池用正極では、正方向への電位掃引においてのみ小さな電流が流れ、負方向への電位掃引ではほとんど電流が流れなかった。
以上の結果から、実施例2のリチウムイオン電池用正極では、正極活物質としてLiCoPOFを用いて充電及び放電を迅速に行うことができ、蓄積されたエネルギーを有効に利用することができることが分かった。
また、図5に示すように、正極活物質であるLiCoPOFを加えることなくPt担持カーボンとPTFEとから作製した参考例1の電極では、正方向への電位掃引においてのみ電流が流れ、負方向への電位掃引ではほとんど電流が流れなかった。このことと、図4における実施例2の充放電特性との比較から、実施例1のリチウムイオン電池用正極では、正極活物質としてのLiCoPOFに起因する充放電電流が流れることが確認された。
以上の結果から、実施例2の電極を正極として用いたリチウムイオン電池は、正極活物質としてLiCoPOFを用いて充電及び放電を迅速に行うことができ、蓄積されたエネルギーを有効に利用することができることが分かった。
(実施例3)
実施例3は、LiNiPOFが物理的な衝撃力によって金板からなる正極用集電体に打ち込まれたリチウムイオン電池用正極であり、以下のようにして作製した。
<LiNiPOFの調製>
本発明において正極活物質となるLiNiPOFは、以下のようにして調製した。すなわち、先ず、炭酸リチウム(LiCO)と、酸化ニッケル(NiO)と、五酸化二リン(P)とが化学量論比0.5:1.0:0.5となるように秤量した後、めのう乳鉢を用いてよく混合する。そしてこの混合物を大気中500℃で12時間の仮焼を行なった後、780℃で48時間の本焼成を行った。こうして得られた焼成物をと化学量論比で等量のフッ化リチウム(LiF)を添加し、白金るつぼに入れた後、石英真空封管中で780℃で72時間の焼成を行い、LiNiPOFを得た。こうして得られたLiNiPOFのX線回折パターンを図6に示す。
<リチウムイオン電池用正極の作製>
上述のようにして得られたLiNiPOFをめのう乳鉢に入れ、LiNiPOFの上に金からなる薄板を載せ、さらにその上にLiNiPOFをふりかけた後、乳棒で強く押し付けてLiNiPOFとAu薄膜とを圧着させることにより、実施例のリチウムイオン電池用正極を得た。
−評 価−
(サイクリックボルタンメトリー測定)
上記のようにして作製した実施例のリチウムイオン電池用正極について、以下の2つの条件によりサイクリックボルタンメトリーの測定を行った。
・条件1
条件1では、電解液としてセバコニトリル:エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)=50::25:25(容量比)の混合有機溶媒にLiBFを1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。この電解液に実施例のリチウムイオン電池用正極を浸漬し、対極及び参照極としてLi金属を用い、電位の掃引速度は100mV/秒とし、Li/Li+参照電極に対して2.5〜6.0Vの範囲で電位掃引を行った。
・条件2
条件2では、電解液としてセバコニトリル:エチレンカーボネート(EC)=50:50の混合有機溶媒にLiBFを1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。その他については、条件1と同様であり、説明を省略する。
その結果、条件1の測定では、図7に示すように、Li/Li+参照電極に対して5V付近にLiNiPOFの酸化還元に基づく明確な酸化還元電流が観察された。
また、条件2の測定においても、図8に示すように、条件1と同様、Li/Li+参照電極に対して5V付近にLiNiPOFの酸化還元に基づく明確な酸化還元電流が観察された。
従来、LiNiPOFの酸化還元電流については、予測はされていたものの、実際にこのような酸化還元電流が観察された例はなく、LiNiPOFが乳棒によって金からなる薄板状の集電体に強く押し付けられることにより、LiNiPOFの酸化還元電流が確認されるという顕著な効果が、条件1及び条件2において認められた。
以上の結果は、次のように説明される。すなわち、実施例4のリチウム電池用正極は、LiNiPOFが金の薄板上に乳棒で強くこすり付けられることにより、図9に示すように、金からなる正極用集電体101にLiNiPOFからなる粒子102の一部が打ち込まれた状態となっている。このため、LiNiPOFからなる粒子102は正極用集電体101に確実に接触し、電気的な接触抵抗が小さくなり、充電時や放電時の電子の出入りを円滑に行うことができる。また、LiNiPOFからなる粒子102のうち正極用集電体101から露出した部分は電解液103と接触し、充放電に伴うリチウムイオンのインターカレーション−デインターカレーションを円滑に行うことができる。このため、ひいては充放電の電流密度を大きくすることができるのである。
<リチウムイオン電池>
上記のようにして作製した実施例4のリチウム電池用正極を用い、以下に示す方法で、リチウムイオン電池を作製することができる。以下にその詳細を述べる。
すなわち、図10に示すように、SUS316Lからなる有底円筒状の電極缶11と、SUS316Lからなる有底円筒状で扁平状の電極キャップ12とを用意する。
ついで、図11に示すように、電極缶11内に、SUS316Lからなるスペーサ13、リチウムペレット14及びセパレータ15を充填する。一方、電極キャップ12内に、SUS304からなる波座金16、SUS316Lからなるスペーサ17及び電極材ペレット18を充填する。そして、電極缶11内にニトリル化合物含有電解液を入れた後、絶縁ガスケット19を介して電極キャップ12を載置してかしめて密封してリチウムイオン電池とする。ここで、ニトリル化合物含有電解液は、例えば下記の組成の電解液を用いることができる。
エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:セバコニトリル=25:25:50(容量比)の混合溶媒にLiBFを1mol/Lとなるように溶解した溶液
この発明はリチウムイオン電池に適用される。
ここに、リチウムイオン電池は電解液、正極、負極、セパレータ及びケースを備えてなる。
(電解液)
電解液はLi塩(電解質)と有機溶媒とを含んでいる。
Li塩には、Liイオン電池用の一般的なLi塩を用いることができる。例えば、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(四フッ化ホウ酸リチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiBETI(リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド)又はこれらの2種以上を用いることができる。
なかでも、正極の酸化還元電位が4.5V以上のものについては、LiPF、及び/又はLiBFを使用することが好ましい。また、LiTFSIやLiTFSやLiBETIを用いる場合、LiPF又はLiBFを添加することが好ましい。
有機溶媒もLiイオン電池に用いられる一般的なものを採用できる。かかる有機溶媒としては環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状炭酸エステルの中から選ばれる1種、又は2種以上が好ましい。更に好ましくは、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとを併用する。具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを併用することが特に好ましい。両者の配合割合は特に限定されない。環状カルボン酸エステルとしてはγ−ブチロラクトンを用いることができる。
更にはニトリル化合物を有機溶媒として用いることができる。ここで、ニトリル化合物としては、鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物、鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物及びシアノ酢酸エステルのうち少なくとも一つのニトリル化合物を挙げることができる。
鎖式飽和炭化水素化合物の両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリルNC(CHCN、グルタロニトリルNC(CHCN、アジポニトリルNC(CHCN、セバコニトリルNC(CHCN、ドデカンジニトリルNC(CH10CNなどのような直鎖状のジニトリル化合物の他、2−メチルグルタロニトリルNCCH(CH)CHCHCN等のように分枝を有していても良い。これらの鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物は、炭素数は特に限定されないが20以下であることが好ましい。更に好ましくは7〜12である。
鎖式エーテル化合物の末端の少なくとも一つにニトリル基が結合した鎖式エーテルニトリル化合物としては、オキシジプロピオニトリルNCCHCH−O−CHCHCNや、3−メトキシプロピオニトリルCH−O−CHCHCN等が挙げられる。これらの鎖式エーテルニトリル化合物は、炭素数は特に限定されないが、20以下であることが好ましい。
シアノ酢酸エステルとしてはシアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸プロピル、シアノ酢酸ブチル等が挙げられる。これらのシアノ酢酸エステルは、炭素数は特に限定されないが、20以下であることが好ましい。
これらニトリル化合物は電解液において電位窓を特に正方向に広げる作用を奏する。
電位窓を広げる作用の観点からジニトリル化合物が好ましい。中でも、セバコニトリルの採用が更に好ましい。
ただし、ニトリル化合物は粘度が高いので、上述の鎖状炭酸エステル、環状炭酸エステル及び/又は環状カルボン酸エステルと併用することが好ましい。更に好ましくはニトリル化合物と鎖状炭酸エステル及び環状炭酸エステルとを併用する。鎖状炭酸エステルとしてはジメチルカーボネートを採用することができ、環状炭酸エステルとしてはエチレンカーボネートを採用することができる。
この場合、有機溶媒全体に占めるニトリル化合物の配合割合は1〜90容量%とすることが好ましい。更に好ましくは5〜70容量%であり、更に更に好ましくは、10〜50容量%である。
Li塩の濃度は0.01mol/L以上であって、飽和状態よりも低い濃度とする。Li塩の濃度が0.01mol/L未満であると、Liイオンによるイオン伝導が小さくなり、電解液の電気抵抗が高くなるので好ましくない。他方、飽和状態を超えると、温度等の環境変化によって溶解しているLi塩が析出するので好ましくない。
(正極)
正極は正極活物質と集電体とを備える。
(正極活物質)
正極活物質とは「負極よりも高い電位で結晶構造内にリチウムが挿入/離脱され、それに伴って酸化/還元が行われる物質」をいう。本発明においては、正極活物質としてオリビン型結晶構造を有するリン酸塩系及び/又はオリビンフッ化物系を用いる。
(正極用集電体)
正極用集電体とは正極活物質を担持する導電性の基体である。
正極の集電体の成形材料は、充電時において安定であることが要求される。特に、酸化還元電位の高いオリビン型結晶構造を有するリン酸塩系及びオリビンフッ化物系の正極活物質を用いるときには、耐食性に優れた素材を使用することが好ましい。
例えば、電解質としてLiPF、LiBFを使用する場合、オーステナイト系ステンレス、Ni、Al、Ti等を用いることができるが、使用する正極活物質の動作電位を考慮し、適宜選択することが好ましい。例えば、電解質としてLiPFを用いる場合は、Li/Li+電極に対して6Vでも使用することができるが、電解質としてLiBFを用いる場合、SUS304はLi/Li+電極に対し5.8V以下で充放電可能な場合のみ用いることができる。また、電解質としてLiTFSIを使用する場合、正極集電体表面に耐食性皮膜を形成させるべく、LiPFを共存させることが好ましい。LiBETI及びLiTFSもLiTFSIの場合と同様である。
また、Al等の導電金属材料へ導電性DLC(ダイヤモンドライクカーボン)を周知の方法で被覆したものを集電体として用いることもできる。電解質がLiBFやLiPFなど、容易にフッ化物皮膜を形成するようなリチウム塩の場合は、アルミニウム上へ厚いフッ化皮膜が形成し、耐食性は向上するものの、電子伝導性が低下し、ひいてはオーミック過電圧増加に伴う、高出力化が阻害されることとなる。Al等の導電金属材料へ導電性DLCを被覆すれば、フッ化物皮膜は導電性DLCの欠陥部分の極わずかな面積でのみ発生するだけである。このため、高電圧化しても電子伝導性の低下は無視できる程度となり、懸念されている高電圧化による出力低下は防ぐことが可能となる。
ここで、導電性ダイヤモンドライクカーボンとは、ダイヤモンド結合(炭素同士のSP混成軌道結合)とグラファイト結合(炭素同士のSP混成軌道結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造をとるカーボンのうち、導電性が1000Ωcm以下のものをいう。ただし、アモルファス構造以外に、部分的にグラファイト構造からなる結晶構造(すなわちSP混成軌道結合からなる六方晶系結晶構造)からなる相を有し、これにより導電性が発揮されるものも含まれる。グラファイトとダイヤモンドの中間の性質を有するダイヤモンドライクカーボンは、成膜時にダイヤモンドライクカーボンを構成する炭素原子のSP混成軌道結合とSP混成軌道結合の比率を調整することで、導電性を調節することができる。
勿論、上記耐食性導電性金属材料を導電性DLCで被覆してもよい。
集電体の形状及び構造は、正極活物質や電池の構造に応じて、任意に設計可能である。
(正極の前処理)
リチウムイオン電池用正極は、リチウムイオン電池に組み込む前に、ニトリル化合物を1容量%以上含む有機溶媒中にリチウム塩が溶解した前処理用電解液中に正電極を浸漬する浸漬処理工程を行い、さらに電極に正電圧を付与する正電圧処理工程を行なう。こうして前処理された電極は、ニトリル化合物を全く含まない電解液や、ニトリル化合物の添加量の少ない電解液を用いたリチウムイオン電池に用いても、電位窓が広く、高い電位においても電解液を分解し難くなる(特願2009−180007号参照)。このような広い電位窓の電極となる理由は、電極上に窒素を成分として含む耐食性の皮膜が形成されるためであると推測される。
(負極)
負極は負極活物質と集電体とを備える。
(負極活物質)
負極活物質とは「正極よりも低い電位で結晶構造内にリチウムが挿入/離脱され、それに伴って酸化/還元が行われる物質」をいう。
負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン等の種々の炭素材料やチタン酸リチウム(LiTi12)、HTi1225、HTi13、Feなどが挙げられる。また、これらを適宜混合した複合体も挙げることができる。さらには、Si微粒子やSi薄膜、これらのSiがSi−Ni、Si−Cu、Si−Nb、Si−Zn、Si−Sn等のSi系合金となった微粒子や薄膜が挙げられる。さらには、SiO酸化物、Si−SiO複合体、Si−SiO−カーボンなどの複合体等を挙げることができる。
(負極用集電体)
負極用の集電体は汎用的な導電性金属材料、Cu、Al、Ni、Ti、オーステナイト系ステンレス等で形成することができる。
但し、電解液にニトリル化合物を用いたとき(他の有機溶剤との併用を含む)には、電解液中のLi塩に応じて適宜選択する必要がある。すなわち、電解質としてLiPF、LiBFを使用する場合、オーステナイト系ステンレス、Ni、Al、Ti等の使用が可能となる。ただし、使用する負極活物質の動作電位に応じて、適宜選択する必要がある。負極活物質としてカーボン系やSi系を使用する場合において、電解質としてLiBFを使用した場合は、Cu以外のAl、Ni、Ti、オーステナイト系ステンレス等からなる集電体を使用することができる。負極活物質としてチタン酸リチウムやFe系の化合物を用いた場合は、Cuを含む上記材料の全てが適用可能である。一方、電解質としてLiPF使用時はAl、Ni及びTiが好ましく、オーステナイト系ステンレス及びCuは好ましくない。また、電解質としてLiTFSIや、LiBETI、やLiTFSを使用する場合、Ni、Ti、Al、Cu、オーステナイト系ステンレスの何れも使用することができる。
(正極用電子伝導部材)
正極活物質には導電性の小さいものがある。従って、正極活物質と集電体との間に導電性の電子伝導部材を介在させて、両者の間に十分な電子伝導パスを確保することが好ましい。
ここで電子伝導部材は正極活物質と集電体との間に電子伝導パスを形成できればその形態は特に限定されるものではなく、例えばアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト粉、ダイヤモンドライクカーボン、グラッシーカーボン等の導電性粉体(導電助剤)を用いることができる。ダイヤモンドライクカーボン及びグラッシーカーボンは、カーボンブラックやグラファイトよりもはるかに広い電位窓を有しており、高電位を付与した場合の耐食性に優れているため、好適に用いることができる。また、これらの導電助剤に金属微粒子が担持されていることも好ましい。金属微粒子としては、例えばPt、Au、Ni等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、これらの合金であっても良い。
電子伝導材料として、正極活物質を被覆する導電性皮膜(DLC膜等)、正極活物質を埋入させた導電性薄膜(金の薄膜等)を用いることができる。
特に、LiNiPOF系の正極活物質はそれ自身の及び/又はその表面皮膜の導電性が小さいので、これを集電体へ単に担持させてなるものではリチウムイオン電池の正極として機能しない場合がある。LiNiPOF系の正極活物質の性能評価のために、これを金等の導電薄膜へハンマー等で物理的に打ち込み、電池の正極を形成することができる。
ここにLiNiPOF系正極活物質とはLiNiPOF及びこれへ適宜ドーパントをドープしたものを指す。
(負極用電子伝導部材)
正極用電子伝導部材と同様な物を用いることができる。
(セパレータ)
セパレータは電解液中へ浸漬され、正極と負極とを分離し両者の短絡を防ぐとともに、Liイオンの通過を許容する。
かかるセパレータには、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から成る多孔質フィルムが挙げられる。
(ケース)
ケースは電解液に対する耐食性を有する材質で形成される。その形状は、電池の目的用途に応じて任意に設計できる。
リチウム塩が溶解している電解液を使用する場合には、オーステナイト系ステンレスからなる基材、Ti、Ni及び/又はAlからなるケースを用いることができる。但し使用する正極、負極活物質の動作電位により適宜選択しなければならない場合もある。
ケースが集電体を兼ねる場合や集電体に電気的に結合される場合は、各電極の集電体形成材料と同一若しくは同種の材料で形成される。
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本発明の二次電池用正極は、高い電位で充電反応が行われるエネルギー密度の高い正極活物質を有効に活用可能な二次電池のための正極として、好適に用いることができる。
2a…正極活物質
2b…導電助剤(グラシーカーボン粉末)
2…二次電池用正極
3…負極
6…負極用集電ケース(集電体)
7…正極用集電板(集電体)
2、7…二次電池用正極(2…二次電池用正極ペレット、7…正極用集電板)
8…リチウムイオン電池

Claims (4)

  1. 正極活物質として、酸化物系正極活物質、オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質、オリビンフッ化物系正極活物質の少なくとも1種が電子伝導部材を介して集電体に電気的に接続されていることを特徴とする二次電池用正極。
  2. 前記電子伝導部材は導電性の粉体及び/又は導電性の基材を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の二次電池用正極。
  3. 正極活物質として、酸化物系正極活物質、オリビン型結晶構造を有するリン酸塩系正極活物質、オリビンフッ化物系正極活物質の少なくとも1種が電子伝導部材を介して集電体に電気的に接続されている二次電池用正極、
    負極、及び
    ニトリル化合物を含む電解液と、
    を含む二次電池。
  4. 前記正極活物質はLiNiPOFであり、前記電子伝導部材は導電性の粉体及び/又は導電性の基材を含むことを特徴とする、請求項3に記載の二次電池。
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