JP3949337B2 - 非水電解液およびそれを用いた二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、電池等に用いられる非水電解液およびそれを利用した二次電池に関する。さらに詳しくは難燃性が高く、高電圧を発生でき、かつ電池の充放電特性に優れた非水電解液に関すると共に、この様な特性を有する非水電解液を含む二次電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
非水電解液は、リチウム電池などエネルギー貯蔵デバイスの電解液として使用されており、そのデバイスは高電圧かつ高エネルギー密度を有し、また信頼性が高いことから、広く民生用電子機器の電源などに用いられている。非水電解液は、非水溶媒と電解質とから構成されているが、その内非水溶媒としては、一般に高誘電率の有機溶媒であるプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、あるいは低粘度の有機溶媒であるジメチルカーボネート、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランなどが用いられ、また電解質としてはLiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiSiF6などが用いられている。
【0003】
最近この二次電池の分野で、エネルギー密度の高い電池へのニーズが強いことから、高電圧電池について研究が進められている。例えば、電池の正極にLiCoO2、LiNiO2,LiMn2O4等のリチウムと遷移金属の複合酸化物を使用し、負極に炭素材料を使用した、ロッキングチェア型と呼ばれる二次電池がある。この電池は、4V以上の電池電圧を発生させることでき、しかも金属リチウムの析出がないため、過充電、外部ショート、釘刺し、押しつぶし等の安全性実験によって優れた成績が得られており、実際に民生用の電池として流通している。
【0004】
一方、今後一層の高エネルギー密度化と大型化が期待されており、電池の高容量化を目指して電極の研究も進められており、二次電池の負極として、リチウムの吸蔵、放出が可能な黒鉛などの高結晶性炭素は、放電電位が平坦であるなどの特徴を有していることから、現在市販されているリチウムイオン二次電池の大半の負極として採用されている。
【0005】
ところが、高結晶性炭素を負極に用いる場合、電解液用の非水溶媒として、高誘電率溶媒であるプロピレンカーボネートや1,2−ブチレンカーボネートを用いると、充電時に溶媒の還元分解反応が起こり、充放電効率、特に初回充放電効率が低下するという傾向がある。
【0006】
このため、還元分解反応が継続的に起こりにくく、かつ粘度特性が改善された非水電解液を得るため、非水溶媒の組み合わせ方を工夫したり、様々な添加剤を加えたりすることが提案されている。これらの対策により、電池の充放電特性及び低温特性の向上が図られてきたが、なおより高性能の非水電解液が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の要請に応えるために、黒鉛などの高結晶性炭素を負極に用いた場合であっても、溶媒の還元分解反応が抑制され、電池にすぐれた充放電効率、負荷特性及び低温特性を与える非水電解液の提供を目的とする。また、この非水電解液を含む二次電池の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式[1]で表されるエステル誘導体を含む非水溶媒と電解質よりなる非水電解液を提供する。
R1((O)kCOO(CH2)mCR2=CR3R4)n [1]
(式中、R1は水素または炭素数1〜30の炭化水素基であり、R2、R3およびR4は水素、または同じでも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、kは0であり、mは1であり、nは1〜4の整数である。)
【0009】
また本発明は、前記一般式[1]で表される化合物の好ましい例である下記式[3]で表されるカルボン酸エステルを含む非水溶媒中と、電解質とよりなる非水電解液を提供する。
R1(COO(CH2)mCR2=CR3R4)n [3]
(式中、R1は水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3およびR4は水素、または同じでも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基でありmは0または1であり、nは1〜4の整数である。)
【0010】
また本発明は、前記の非水溶媒が、前記一般式[1]で表されるエステル誘導体と、一般式[4a]もしくは[4b]で表される環状炭酸エステルおよび/または前記一般式[1]に含まれる炭酸エステル以外の鎖状炭酸エステルとを含む非水溶媒を含む非水電解液を提供する。
【化5】
【化6】
(式中、R11〜R14は水素原子または同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0011】
また、本発明は、前記非水電解液を含む二次電池を提供する。
【0012】
またさらに、本発明は、負極活物質として金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料のいずれかを含む負極と、正極活物質としてリチウムと遷移金属の複合酸化物、炭素材料またはこれらの混合物のいずれかを含む正極と、前記非水電解液とを含むリチウムイオン二次電池を提供する。
【0013】
【発明の具体的説明】
次に、本発明に係る非水電解液およびこの非水電解液を用いた非水電解液二次電池について具体的に説明する。
非 水 電 解 液
本発明に係る非水電解液は、特定のエステル誘導体を含む非水溶媒と、電解質とからなっており、各々について詳述する。
【0014】
エ ス テ ル 誘 導 体
本発明で用いられるエステル誘導体として、下記一般式[1]で表される化合物が使用される。
【0015】
R1((O)kCOO(CH2)mCR2=CR3R4)n [1]
(式中、R1は水素または炭素数1〜30の炭化水素基であり、R2、R3およびR4は水素、または同じでも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、kは0であり、mは1であり、nは1〜4の整数である。)
R1は水素または炭素数1〜30、好ましくは1〜10の炭化水素基である。
R1の例としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、アルキレン基;炭素数1〜30、好ましくは1〜10の不飽和炭化水素基;炭素数6〜30、好ましくは6から15の芳香族炭化水素基が挙げられる。
前記不飽和炭化水素基の好適な例として、R5R6C=CR7(CH2)p−基(ここでR5〜R7は水素または炭素数1〜8の炭化水素基であり、pは0または1である)で表されるアルケニル基を挙げることができる。
さらに具体的には、R1は例えば、
(1)炭素数1のとき、メチル、メチレンまたはメチリジン基であり、
(2)炭素数2のとき、エチル、ビニル、エチニル、エチレン、エチリデン、エチリジン、ビニレンまたはビニリデン基であり、
(3)炭素数3のとき、プロピル、イソプロピル、1−プロペニル、2−プロペニル、メタクリル、1−プロピニル、2−プロピニル、プロピリデン、プロピレン基等の炭素数3の同族体であり、
【0016】
(4)炭素数4のとき、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−メチレンプロピル、1−メチル−2−プロペニル、1,2−ジメチルビニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、ブチレン、イソブチレン、sec‐ブチレン、t−ブチレン基等の炭素数4の同族体であり、
【0017】
(5)炭素数4のとき、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−メチル−2−メチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ペンチレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、2−メチルブチリデン、1−メチル−2−メチルプロピリデン、1,3−シクロペンチレン基等の炭素数5の同族体であり、
【0018】
(6)その他炭素数6以上のとき、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖または分岐アルキル基、あるいはそれらのアルキレン基、シクロヘキシル基、フェニル基、フェニレン基、ベンジル基、さらに前記の炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基がフェニル基に結合した置換フェニル基などである。
【0019】
中でも炭素数1ないし6のアルキル基およびアルケニル基、フェニル基、および炭素数1〜4のアルキル基がフェニル基に結合した置換フェニル基が好ましい。
【0020】
R2、R3およびR4は互いに同じでも異なっていてもよく、水素もしくは炭素数1〜8のアルキル基である。具体的には、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を挙げることができるが、中でも水素またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、中でも水素がより好ましい。
【0021】
上記式[1]において、kが0のとき化合物は下記式[3]のごとくカルボン酸エステルである。
R1(COO(CH2)mCR2=CR3R4)n [3]
(式中、R1は水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3およびR4は水素、または同じでも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基でありmは0または1であり、nは1〜4の整数である。)
R1並びにR2、R3およびR4の好ましい例は前述のとおりである。
【0022】
前記式[3]で表される具体的な化合物としては、次式で示される化合物を挙げることができる。
CH3(CH2)6COOCH=CH2、CH3COOCH2CH=CH2、
CH3CH2COOCH2CH=CH2、
CH3(CH2)6COOCH2CH=CH2、
【0023】
【化7】
【化8】
【0024】
このような式[1]で表されるエステル誘導体には、充電時における非水溶媒の還元分解反応を抑制し、充放電効率を改善する効果がある。
【0025】
非 水 溶 媒
本発明に係る非水電解液では、前記のエステル誘導体を含む非水溶媒が使用される。すなわち本発明の非水溶媒は、前記のエステル誘導体と他の非水溶媒との混合物である。
【0026】
前記[1]式で表されるエステル誘導体は、それを含む非水溶媒全体に対して0.001重量%以上、好ましくは0.01〜70重量%、さらに好ましくは0.05〜30重量%の量で含まれていることが望ましい。このような混合割合で一般式[1]で表されるエステル誘導体が含まれていると、充電時に起こる溶媒の還元分解反応を低く抑えることができ、電池の充放電効率の向上および低温特性の改善を図ることができる。
【0027】
本発明の非水溶媒において、前記式[1]で表されるエステル誘導体の他に存在しうる好ましい非水溶媒として、次に示す一般式[4a]もしくは[4b]で表される環状炭酸エステルおよび/または前記一般式[1]に含まれる炭酸エステル以外の鎖状炭酸エステルを挙げることができる
【化9】
【0028】
【化10】
(式中、R11〜R14は水素原子または同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0029】
このような式[4a]で表される環状炭酸エステルの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2‐ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。特に、誘電率が高く、粘度及び凝固点の低いプロピレンカーボネートが好適に使用される。また、これら環状炭酸エステルは2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
またこのような式[4b]で表される環状炭酸エステルの例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネートなどを挙げることができる。
【0031】
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状炭酸エステルは2種以上混合して使用してもよい。
【0032】
このような鎖状炭酸エステルが非水溶媒中に含まれていると、非水電解液の粘度を低くすることが可能となり、電解質の溶解度をさらに高め、常温または低温での電気伝導性に優れた電解液とすることできる。このため電池の充放電効率、および、例えば、低温における充放電効率や、低温における負荷特性のような低温特性を改善することができる。
【0033】
非水溶媒として、一般式[4a]、[4b]で示される環状炭酸エステルおよび/または前記[1]に含まれる炭酸エステル以外の鎖状を用いる場合は、前記[1]に含まれるエステル誘導体は、非水溶媒(前記[1]に含まれる炭酸エステル
と前記炭酸エステルの合計量)に対して0.001重量%以上、好ましくは、0.001〜70重量%、さらに好ましくは、0.05から30重量%の量で含まれていることが好ましい。
【0034】
また、非水溶媒中の、一般式[4a]、[4b]で表される環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの混合割合は、重量比で表して、環状炭酸エステル:鎖状炭酸エステルが、0:100〜100:0、好ましくは5:95〜95:5、特に好ましくは20:80〜85:15である。
【0035】
したがって、本発明に係わる好ましい非水溶媒は、一般式[1]で表されるエステル誘導体と、一般式[4a]、[4b]で表される環状炭酸エステル及び/又は前記鎖状炭酸エステルを含むものである。
【0036】
他 の 非 水 溶 媒
本発明において、前述の非水溶媒のはかに、一般式[1]で表されるエステル誘導体、一般式[4a]、[4b]で表される環状炭酸エステルおよび前記の鎖状炭酸エステル以外の非水溶媒であって、通常電池用非水溶媒として使用されうる溶媒をさらに混合使用することも可能である。使用できる溶媒の例としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの鎖状エステル、リン酸トリメチルなどのリン酸エステル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル‐N,N‐ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、γ‐ブチロラクトンなどの環状エステル、スルホランなどの環状スルホン、N‐メチルオキサゾリジノンなどの環状カーバメート、N‐メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N‐ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレアおよび特願平10−138782号、特願平10−221164号、特願平10−305573号などに記載の溶媒を挙げることができる。
これらのその他の非水溶媒は、前述の一般式[1]で表されるエステル誘導体と、一般式[4]で表される環状炭酸エステル及び/又は前記鎖状炭酸エステル100重量部に対して0〜100重量部で使用することができる。
【0037】
非 水 電 解 液
本発明の非水電解液は、前述した非水溶媒に電解質を溶解して構成されるが、使用される電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
【0038】
電解質の具体例としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiSiF6、LiC4F9SO3、LiC8F17SO3などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で示されるリチウム塩も使用することができる。LiOSO2R6、LiN(SO2R7)(SO2R8)、LiC(SO2R9)(SO2R10)(SO2R11)、LiN(SO2OR12)(SO2OR13)(ここで、R6〜R13は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である)。これらのリチウム塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
これらの内、特に、LiPF6、LiBF4、LiOSO2R6、LiN(SO2R7)(SO2R8)、LiC(SO2R9)(SO2R10)(SO2R11)、LiN(SO2OR12)(SO2OR13)が好ましい。
【0040】
このような電解質は、通常、0.1〜3モル/リットル、好ましくは0.5〜2モル/リットルの濃度で非水電解液中に含まれていることが望ましい。
【0041】
以上のような本発明に係る非水電解液は、リチウムイオン二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液としても用いることが出来る。
【0042】
二 次 電 池
本発明に係る非水電解液二次電池は、負極と、正極と、前記の非水電解液とを基本的に含んで構成されており、通常負極と正極との間にセパレータが設けられている。
【0043】
負極を構成する負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料のいずれを用いることができる。これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料は、グラファイトであっても非晶質炭素であってもよく、活性炭、炭素繊維、カーボンブラック、メソカーボンマイクロビーズなどが用いられる。
【0044】
負極活物質として、特にX線解析で測定した(002))面の面間隔(d002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましく、密度が1.70g/cm3以上である黒鉛またはそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料が望ましい。このような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0045】
正極を構成する正極活物質としては、MoS2、TiS2、MnO2、V2O5などの遷移金属酸化物または遷移金属硫化物、LiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiO2などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が挙げられる。これ等の中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属またはリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属の複合酸化物と炭素材料との混合物を用いることもできる。
【0046】
セパレータは多孔性の膜であって、通常微多孔性ポリマーフィルムが好適に使用される。特に、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、または多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルムを例示することができる。
【0047】
このような非水電解液二次電池は、円筒型、コイン型、角型、その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。次に、円筒型およびコイン型電池の構造について説明するが、各電池を構成する負極活物質、正極活物質およびセバレータは、前記したものが共通して使用される。
【0048】
例えば、円筒型非水電解液二次電池の場合には、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極と、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極とを、非水電解液を注入したセバレータを介して巻回し、巻回体の上下に絶縁板を載置した状態で電池缶に収納されている。
【0049】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、コイン型非水電解液二次電池にも適用することができる。コイン型電池では、円盤状負極、セバレータ、円盤状正極、およびステンレスの板が、この順序に積層された状態でコイン型電池缶に収納されている。
【0050】
【実施例】
以下、実施例および比較例を通して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
<非水電解液の調製>
プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、PC:DEC=55:45(重量比)の割合で混合した後、そこへ混合液99重量部に対して酢酸アリル(AA)を1重量部(即ち、1重量%)添加し、非水溶媒を調製した。次に電解質であるLiPF6を非水溶媒に溶解し、電解質濃度が1.0mol/lとなるように非水電解液を調製した。
ここで使用した酢酸アリル(AA)は、次の構造を有している。
CH3COOCH2CH=CH2
【0052】
<負極の作製>
大阪ガス(株)製のメソカーボンマイクロビーズ(商品名;MCMB6−28、d002=0.337nm、密度2.17g/cm3)の炭素粉末90重量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)10重量部とを混合し、溶剤のN‐メチルピロリドンに分散させ、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。次に、この負極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し、乾燥させて帯状の炭素負極を得た。乾燥後の負極合剤の厚さは25μmであった。さらに、この帯状電極を直径15mmの円盤状に打ち抜いた後、圧縮成形して負極電極とした。
【0053】
<正極の作製>
本庄ケミカル(株)製のLiCoO2(製品名:HLC−21、平均粒径8μm)微粒子91重量部と、導電材としてのグラファイト6重量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン3重量部とを混合して正極合剤を調製し、N‐メチルピロリドンに分散させて正極合剤スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmの帯状アルミニウム箔製正極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成形によって帯状正極を得た。乾燥後の正極合剤の厚さは40μmであった。その後、この帯状電極を直径15mmの円盤状に打ち抜くことによって正極電極とした。
【0054】
<電池の作製>
このようにして得られた円盤状負極および円盤状正極、さらに厚さ25μm、直径19mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムからできたセパレータを用意した。ステンレス製の2032サイズの電池缶内に、負極、セパレータ、正極の順序で各々を積層した後、セパレータに前記非水電解液を注入した。その後、電池缶内にステンレス製の板(厚さ2.4mm、直径15.4mm)を収納し、さらにポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶(蓋)をかしめた。この結果、電池内の気密性が保持でき、直径20mm、高さ3.2mmのボタン型非水電解液二次電池が得られた。
【0055】
<放電容量の測定>
このようにして得られた二次電池の放電容量を室温にて次の方法で測定した。なお、本実施例では、負極にLi+がドープされる電流方向を充電、脱ドープされる電流方向を放電とした。充電は、4.1V、1mA定電流定電圧充電方法で行い、充電電流が50μA以下になった時点で終了とした。放電は、1mAの定電流で行い、電圧が2.7Vに達した時点で終了した。この充放電サイクルの充電容量と放電容量とから、次式により充放電効率を計算し、その結果を表1に示した。
充放電効率(%)=
{放電容量(mAh/g)}/{充電容量(mAh/g)}×100
【0056】
(実施例2)
実施例1において、酢酸アリルの代わりにプロピオン酸アリル(AP)を使用した以外は実施例1と同様に行って、電池の充放電効率を評価した。結果を表1に記した。使用したAPは、次の通りであった。
CH3CH2COOCH2CH=CH2
【0057】
(実施例3)
実施例1において、酢酸アリルの代わりにカプリル酸アリル(ACa)を使用した以外は実施例1と同様に行って、電池の充放電効率を評価した。結果を表1に記した。使用したACaは、次の通り。
CH3(CH2)6COOCH2CH=CH2
【0058】
(実施例4)
実施例1において、酢酸アリルの代わりにマレイン酸ジアリル(DAM)を使用した以外は実施例1と同様に行って、電池の充放電効率を評価した。結果を表1に記した。使用したDAMは、次の通りであった。
【化11】
【0059】
(実施例5)
実施例1において、酢酸アリルの代わりにフタル酸ジアリル(DAP)を使用した以外は実施例1と同様に行って、電池の充放電効率を評価した。結果を表1に記した。使用したDAPは、次の通り。
【化12】
【0060】
(比較例1)
実施例1において、酢酸アリルを添加しなかった以外は、実施例1と同様に行って、電池の充放電効率を評価し、結果を表1に記した。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明の非水電解液は、黒鉛などの高結晶性炭素を負極に用いた場合に起こる溶媒の還元分解反応を低く抑制することができる。その結果、この非水電解液を用いた二次電池は、充放電特性、負荷特性、低温における電池特性に優れている。従って、この非水電解液は、リチウムイオン二次電池用の非水電解液として特に好適である。
Claims (11)
- 一般式[1]で表される化合物を含む非水溶媒と、電解質とよりなる非水電解液。
R1((O)kCOO(CH2)mCR2=CR3R4)n [1]
(式中、R1は水素または炭素数1〜30の炭化水素基であり、R2、R3およびR4は水素、または同じでも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、kは0であり、mは1であり、nは1〜4の整数である。) - 前記一般式[1]で表される化合物が、下記式[3]で表されるカルボン酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の非水電解液。
R1(COO(CH2)mCR2=CR3R4)n [3]
(式中、R1は水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3およびR4は水素、または同じでも異なっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基でありmは1であり、nは1〜4の整数である。) - 前記一般式[4]で表される環状炭酸エステルが、プロピレンカーボネートまたはブチレンカーボネートであることを特徴とする請求項4に記載の非水電解液。
- 前記鎖状炭酸エステルが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはメチルエチルカーボネートのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の非水電解液。
- 前記一般式[1]で表されるエステル誘導体が、非水溶媒中に少なくとも0.001重量%以上含まれていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の非水電解液。
- 電解質がリチウム塩であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の非水電解液。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載の非水電解液を含む二次電池。
- 負極活物質として金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料のいずれかを含む負極と、正極活物質としてリチウムと遷移金属の複合酸化物、炭素材料またはこれらの混合物のいずれかを含む正極と、請求項1ないし8のいずれかに記載の非水電解液とを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
- 前記リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料が、X線解析で測定した(002)面における面間隔距離(d002)が、0.340nm以下であることを特徴とする請求項10記載のリチウムイオン二次電池。
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