JP4863572B2 - 非水電解液、およびそれを用いた二次電池 - Google Patents

非水電解液、およびそれを用いた二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液およびそれを使用する二次電池に関する。さらに詳しくは、非水溶媒と添加剤とリチウム塩を含有する安全性と寿命特性に優れた電池を可能とする非水電解液およびそれを使用する二次電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
非水電解液を用いた電池は、高電圧でかつ高エネルギー密度を有しており、また貯蔵性などの信頼性も高いので、民生用電子機器の電源として広く用いられている。
【0003】
このような電池として非水電解液二次電池があり、その代表はリチウム電池である。それに用いられる電解液として、非プロトン性有機溶媒に、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiSiFなどのLi電解質を混合した溶液が用いられている(Jean-Paul Gabano編、"Lithium Battery",ACADEMIC PRESS(1983) )。
【0004】
非プロトン性有機溶媒として、カーボネート類が知られており、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの各種カーボネート化合物の使用が提案されている(特開平4−184872号報、特開平10−27625号報など)。その他に使用しうる非プロトン性溶媒として、イオウ系溶媒が提案されている。例えば、環状スルホン(特開昭57−187878号報、特開昭61−16478号報)、鎖状スルホン(特開平3−152879号報、特開平8−241732号報)、スルホキシド類(特開昭57−141878、特開昭61―16478など)、スルトン類(特開昭63−102173)、スルファイト類(特開昭61−64080号報)などを例示することができる。また、エステル類(特開平4―14769号報、特開平4−284374)、芳香族化合物類(特開平4―249870号報)の使用なども提案されている。
【0005】
現在主流のリチウム二次電池の一つとして、リチウムイオン二次電池を挙げることができる。この電池は、リチウムを吸蔵、放出が可能な活物質からなる負極、リチウムと遷移金属の複合酸化物からなる正極、電解液などから構成されている。
【0006】
リチウムイオン二次電池の負極活物質には、リチウムの吸蔵、放出が可能な炭素材料が多く使用されており、特に黒鉛などの高結晶性炭素は、放電電位が平坦であり、真密度が高く、かつ充填性が良いなどの特徴を有しており、現在市販されているリチウムイオン二次電池の大半の負極活物質として採用されている。
【0007】
また電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどの高誘電率カーボネート溶媒と、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートやジメチルカーボネートなどの低粘度カーボネート溶媒の混合溶媒に、LiBF、LiPF、LiN(SOCFやLiN(SOCFCFなどのLi電解質を混合した溶液が用いられている。
【0008】
黒鉛などの高結晶性炭素を負極に用いる場合、黒鉛負極上で電解液の還元分解反応を抑制することが重要である。
このため、電解液に使用される高誘電率の非水溶媒として、常温で固体ではあるものの、還元分解反応が継続的に起こりにくいエチレンカーボネートや、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合溶媒を併使用することによって、非水溶媒の還元分解反応を抑えることが提案されている。
【0009】
しかしながら、エチレンカーボネートを使用しても、負極表面で微量の電解液の還元分解反応が継続して起こることが知られており(J.Electrochem.Soc.,147(10),3628-3632(2000)、J.Electrochem.Soc.,146(11),4014-4018(1999)、J.Power Sources No.81-82, 8-12(1999))、例えば、充放電を何度も長期間繰り返すサイクル使用や、高温で電池を貯蔵したりすると、電池の容量が低下することが考えられ、必ずしも十分ではない。
【0010】
また、安全性の観点から引火点の高い電解液が望まれている。ところが、負荷特性と寿命特性に優れ、かつ高い安全性を有するという要請を完全に満たした電解液は、まだ得られておらず、そのような電解質の開発が求められている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
引火点が高く安全性に優れ、かつ溶媒の分解反応が抑制され、高温保存時の容量低下および負荷特性の劣化が少ない優れた寿命特性を有する電池を可能とする電解液を提供することを目的とする。さらにこの非水電解液を含む二次電池の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、環状カルボン酸エステルを含む非水溶媒、スルホン酸誘導体およびリチウム塩を含有する非水電解液を提供する。
【0013】
本発明のスルホン酸誘導体は、ベンゼンジスルホン酸ジエステル、ベンゼンジスルホン酸ジリチウム塩またはベンゼンスルホン酸エステルである
【0014】
前記環状カルボン酸エステルが、γ−ブチロラクトンである前記の非水電解液は、本発明の好ましい態様である。
【0015】
前記非水溶媒がγ−ブチロラクトンに加え、環状カーボネートおよび環状スルホンから選ばれた少なくとも一つの他の環状構造の非水溶媒を含有する非水溶媒である非水電解液は、本発明の好ましい態様である。
【0016】
前記リチウム塩がLiPFを含有するリチウム塩である前記の非水電解液は、本発明の好ましい態様である。
【0017】
前記リチウム塩が、LiPFに加え、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(SO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF(C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)から選ばれた少なくとも1種のリチウム塩を含有する前記の非水電解液は、本発明の好ましい態様である。
【0018】
本発明において、前記非水電解液が、さらに一般式(1)に示すビニレンカーボネート誘導体を含有する非水電解液は、本発明の好ましい態様である。
【化2】
Figure 0004863572
(R、Rは、水素、メチル基、エチル基、またはプロピル基である。)
【0019】
本発明は、負極活物質として金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料、またはこれらの混合物のいずれかを含む負極と、
正極活物質として遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属の複合酸化物、またはこれらの混合物のいずれかを含む正極と、
上記の非水電解液とを含むリチウム二次電池を提供する。
【0020】
【発明の実施の具体的形態】
本発明に係る非水電解液およびこの非水電解液を用いた非水電解液二次電池について具体的に説明する。本発明において、非水電解液は、環状カルボン酸エステル、スルホン酸誘導体および電解質を含有する非水電解液を提供するものであり、また、本発明はこの非水電解液を用いた非水電解液二次電池を提供する。
【0021】
非水溶媒
本発明の電解液を構成する非水溶媒は、少なくとも環状カルボン酸エステルを含有するものである。環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高い。このため、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができるので、電解液の引火性を高くすることなく電池の負荷特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができる。
【0022】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびδ−バレロラクトンなどのラクトン類、およびメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−バレロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのラクトン類のアルキル置換体などを例示することができる。なかでもγ−ブチロラクトンが特に好ましく使用される。
【0023】
本発明の非水溶媒としては、環状カルボン酸エステルを単独で使用してもよいが、他の非水溶媒とともに使用することもできる。
【0024】
本発明の電解液で、環状カルボン酸エステルともに使用できる他の非水溶媒としては、非水電池用に一般的に使用されるものであればいずれでも使用できる。その好ましい例としては、エチレンカーボネートのような環状カーボネート、スルホランのような環状スルホン、N−メチルオキサゾリジノンなどの環状カーバメート、ジオキソランのような環状エーテル、ジメチルカーボネートのような鎖状カーボネート、プロピオン酸メチルのような鎖状カルボン酸エステル、ジメトキシエタンのような鎖状エーテル、ジエチルスルホンのような鎖状スルホン、メチル−N,N−ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、リン酸トリメチルのような鎖状リン酸エステルを挙げることができる。
【0025】
これらのうち、電気化学的な安定性から、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状スルホン、鎖状スルホンが好ましい。
【0026】
環状カーボネートの具体的として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2‐ブチレンカーボネート、2,3‐ブチレンカーボネート、1,2‐ペンチレンカーボネート、2,3‐ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。特に、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。
【0027】
鎖状カーボネートの具体的として、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0028】
スルホン類の具体的として、スルホラン、2−メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
【0029】
負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、特にエチレンカーボネートを含有することが望ましい。
【0030】
非水溶媒の組み合わせの例として具体的には、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0031】
環状カルボン酸エステルの非水溶媒中の混合割合は、重量比で表して、100〜10%、さらに好ましくは90〜20%、特に好ましくは80〜30%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0032】
電池の安全性向上のために、溶媒の引火点の向上を目指す場合は、非水溶媒として、環状構造の非水溶媒(以下環状非水溶媒という)を使用するのが好ましい。環状非水溶媒は、単独であっても複数を混合してもよい。また、溶媒の引火点の向上を目指す場合、環状非水溶媒と鎖状構造の非水溶媒を混合で使用してもよい。この場合、鎖状構造が非水溶媒全体に対して重量比で20%未満となるように使用することが望ましい。環状非水溶媒と鎖状構造の非水溶媒はそれぞれ単独を混合しても複数を混合してもよい。
【0033】
この場合、環状非水溶媒同士の望ましい組み合わせの例として、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホランを例示することができる。
【0034】
環状非水溶媒に混合して使用するのに好ましい鎖状構造の非水溶媒の例として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホンなどを挙げることができる。
【0035】
本発明の非水電解液では、本発明の目的を損なわない限り、上記以外の一般的な他の非水溶媒を含んでいてもよく、その具体例として、ジメチルホルムアミドなどのアミド、N‐メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N‐ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、およびポリエチレングリコール誘導体、オリゴエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
【0036】
スルホン酸誘導体
本発明の電解液は、非水溶媒に加えてスルホン酸誘導体を添加剤として含有する。
スルホン酸誘導体としては、スルホン酸類のエステル、塩などを挙げることができる。スルホン酸誘導体の具体例としては、メタンスルホン酸メチルエステルのようなアルカンスルホン酸のエステルや塩などのアルカンスルホン酸誘導体、ベンゼンスルホン酸メチルエステルやベンゼンスルホン酸リチウム塩のようなアリールスルホン酸のエステルや塩などのアリールスルホン酸誘導体などである。
【0037】
これらのスルホン酸誘導体の好ましい例として、アリールスルホン酸誘導体、より好ましくはベンゼンスルホン酸誘導体を挙げることができる。ベンゼンスルホン酸誘導体の具体例は、下記一般式(2)の構造を有する化合物である。
【化3】
Figure 0004863572
(Rは、アルキル基または金属である。R〜Rは互いに同一でも異なっても良く、互いに結合して環を形成しても良く、水素、ハロゲン、スルホン酸エステル基、スルホン酸金属基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属基、炭素数1〜10の有機基から選ばれる。)
【0038】
金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、特にアルカリ金属が望ましい。アルカリ金属として具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウムが例示されリチウムが最も望ましい。炭素数1〜10の有機基としては、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ヘテロ原子を含有する炭化水素基、ヘテロ原子を含有するハロゲン化炭化水素基などが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素等が挙げられる。
ハロゲンとしてはフッ素、塩素が挙げられる。
【0039】
炭素数1〜10の有機基として具体的には、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエチル基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロエトキシ基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、ビニル基、ビニロキシ基、エチニル基、プロピル基、プロピロキシ意、イソプロピル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、アリロキシ基、プロパルギロキシ基、ブチル基、ブトキシ基、sec-ブチル基、t-ブチル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチレンプロピル基、1-メチル-2-プロペニル基、1,2-ジメチルビニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ブテニロキシ基、ブチニロキシ基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-メチル-2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基、フェノキシ基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビニルフェニル基、エチニルフェニル基、フルオロビニルフェニル基、フルオロエチニルフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基、フルオロメトキシフェニル基、ジフルオロメトキシフェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、トリフルオロエトキシカルボニル基、トリフルオロメチルカルボニル基などが例示される。
以上例示したR〜Rの置換基のうち、フェニルスルホン酸またはフェニルスルホン酸金属の電解液への溶解性の点から、置換基の炭素数は3以下であることが望ましい。
【0040】
本発明では、特に、R〜Rのうち少なくとも一つが、スルホン酸エステル基、スルホン酸金属基のいずれかであることが望ましい。
【0041】
以上説明してきたベンゼンスルホン酸誘導体として具体的には、以下に示す化合物を挙げることができる。以下にエステルというのは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、フェニルエステル、トリフルオロメチルエステル、ペンタフルオロプロピルエステルのいずれかであることを示す。
【0042】
ナフタレンスルホン酸エステル、ベンゼンスルホン酸エステル、ベンゼンジ(スルホン酸エステル)、ベンゼントリ(スルホン酸エステル)、スルホ安息香酸ジエステル、トルエンスルホン酸エステル、トルエンジ(スルホン酸エステル)、トルエントリ(スルホン酸エステル)、トリフルオロメチルベンゼン(スルホン酸エステル)、トリフルオロメチルベンゼンジ(スルホン酸エステル)、トリフルオロメチルベンゼントリ(スルホン酸エステル)、ナフタレンスルホン酸リチウム塩、ベンゼンスルホン酸リチウム塩、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸リチウム塩、ベンゼンジスルホン酸ジリチウム塩、トリフルオロメチルベンゼンジスルホン酸ジリチウム塩、ベンゼントリスルホン酸トリリチウム塩、スルホ安息香酸ジリチウム塩、メトキシカルボニルベンゼンスルホン酸リチウム塩、エトキシカルボニルスルホン酸リチウム塩、ビニルオキシカルボニルスルホン酸リチウム塩、アリルオキシカルボニルスルホン酸リチウム塩、エチニルオキシカルボニルスルホン酸リチウム塩、プロパルギルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸リチウム塩、トリフルオロエチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸リチウム塩、トルエンスルホン酸リチウム塩、トルエンジスルホン酸ジリチウム塩、
【0043】
以上に例示してきたベンゼン−スルホン酸誘導体の中で、特に、ベンゼンジ(スルホン酸エステル)、ベンゼンジスルホン酸ジリチウム塩が望ましく、さらにはメタ−ベンゼンジ(スルホン酸エステル)とオルト−ベンゼンジスルホン酸ジリチウムが望ましい。より具体的には、メタ−ベンゼンジスルホン酸ジメチルエステル、メタ−ベンゼンジスルホン酸ジエチルエステル、メタ−ベンゼンジスルホン酸ジプロピルエステル、オルト−ベンゼンジスルホン酸ジリチウム塩が最も望ましい。
【0044】
スルホン酸誘導体を、γ−ブチロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを含有する電解液に使用することによって、負極上の電解液の還元分解反応を抑制する効果が高く、高温保存時やサイクル使用時の電池の容量低下を抑制する。
【0045】
また、スルホン酸誘導体は、高温保存試験やサイクル試験時の正極のインピーダンスの上昇を抑制して、負荷特性の劣化を抑制する。この作用は、特に電解質にリチウム塩としてLiPFを使用した場合に顕著に現れる。
以上説明してきたスルホン酸誘導体は、単独の物を電解液に添加しても良いし、複数のスルホン酸誘導体の混合物を添加しても良い。
【0046】
スルホン酸誘導体の電解液への添加量が少ない場合は、効果が発現し難くなり、多すぎる場合には、負極の界面インピーダンスが上昇する場合がある。
このため電解液中への添加量は、電解液あたり0.0001重量%〜30重量%が好ましく、0.001重量%〜10重量%がより好ましく、0.1重量%〜7重量%がさらに好ましく、0.2重量%〜5重量%が最も好ましい。
【0047】
他の添加剤
本発明において、本発明のスルホン酸誘導体のほかに、他の添加剤を共に含有させることにより、電解液にさらに優れた特性を付与することが可能である。
本発明において添加してもよい他の添加剤として、それ単独でも負極上の電気分解を抑制する作用を持つものを選ぶと、負極上の電気分解がさらに抑制され、さらに電池の自己放電を小さく抑制できる。この結果、電池の負荷特性、高温保存特性、サイクル特性が向上するようになるという効果が得られる。
【0048】
スルホン酸誘導体と同時に含有させる化合物は、その化合物単独でも負極上の電気分解を抑制する作用を持つことが望ましい。この構成にすると、負極上の電気分解がさらに抑制され、さらに電池の自己放電を小さく抑制できる。この結果、電池の負荷特性、高温保存特性、サイクル特性が向上するようになる。
【0049】
負極上の電気分解を抑制する作用を持つ他の添加剤としては、下記一般式(1)に示すビニレンカーボネート誘導体;ビニルエチレンカーボネートやジビニルエチレンカーボネートなどのビニル基を有する環状カーボネート;無水マレイン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、ジグリコール酸、ビニル無水フタル酸などのカルボン酸無水物類;メチルプロパルギルカーボネート、ジプロパルギルカーボネート、エチニル無水フタル酸などの炭素炭素三重結合を有する化合物;ビニルメチルスルホン、ジビニルスルホン、ビニルフェニルスルホンなどのビニルスルホン類などが例示される。
【0050】
【化4】
Figure 0004863572
(R、Rは、水素、メチル基、エチル基、またはプロピル基である。)
【0051】
これらの化合物のうち、一般式(1)に示すビニレンカーボネート誘導体が好ましい。一般式(1)に示すビニレンカーボネート誘導体として具体的には、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルエチレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ジプロピルビニレンカーボネートなどが例示される。これらのうち、より好ましいものとしてビニレンカーボネートを挙げることができる。
【0052】
本発明の電解液において、スルホン酸誘導体と上述の負極上の電気分解を抑制する作用を持つ化合物を電解液に同時に添加する場合、その添加比率は、重量比で1:100〜100:1、好ましくは1:20〜20:1、さらに好ましくは、1:10〜20:1が望ましい。特に、負極上の電気分解を抑制する作用を持つ化合物がビニレンカーボネートの場合は、スルホン酸誘導体とビニレンカーボネートの比率が1:5〜20:1が望ましい。スルホン酸誘導体と上述の負極上の電気分解を抑制する作用を持つ化合物を電解液に同時に添加する場合の合計の添加量は、非水電解液全体に対して40重量%以下にすることが望ましい。
【0053】
リチウム塩
本発明の電解質としては、リチウム塩が好ましい。リチウム塩の具体例としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiOSO(2k+1) (k=1〜8の整数)、LiPF(C(2k+1)(6−n) (n=1〜5、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で示されるリチウム塩も使用することができる。LiC(SO)(SO10)(SO11)、LiN(SOOR12)(SOOR13)、LiN(SO14)(SOOR15)(ここで、R〜R15は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらのリチウム塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、(CNPF、(CNBF、(CNClO、(CNAsF、(CSiF、(CNOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、(CNPF(C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩などを含有していてもよい。
【0054】
本発明のリチウム塩としては、LiPFを含有することが望ましい。LiPFは、解離度が高いため電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。
【0055】
本発明の電解液において、LiPFを単独で使用するか、LiPFとそれ以外のリチウム塩を使用することが推奨される。LiPF以外に使用される電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。具体的には、前記したリチウム塩の具体例のうちLiPF以外のリチウム塩を例示することができる。
【0056】
LiPFと他のリチウム塩との組み合わせの具体例としては、LiPFとLiBF、LiPFとLiN(SO(2k+1) (k=1〜8の整数)、LiPFとLiBFとLiN(SO(2k+1)(k=1〜8の整数)などが例示される。
【0057】
リチウム塩中に占めるLiPFの比率は、100〜1重量%、好ましくは100〜10重量%、さらに好ましくは100〜50重量%が望ましい。
【0058】
リチウム塩の電解液への混合量は、非水電解液に対しては、0.1〜3モル/リットル、好ましくは0.5〜2モル/リットルの濃度で含まれていることが望ましい。
【0059】
非水電解液
本発明の非水電解液は、環状カルボン酸エステル、スルホン酸誘導体およびリチウム塩を含有する。
【0060】
本発明における好適な非水電解液は、環状カルボン酸エステルとスルホン酸誘導体とLiPFを含有するが、必要に応じて他の添加剤等を加えてもよい。
添加剤としては、前述した化合物以外に、フッ化水素、水、酸素、窒素なども挙げられる。
【0061】
フッ化水素を添加剤に使用する場合、電解液への添加方法は、直接、電解液にフッ化水素ガスを所定量吹き込むことが挙げられる。また、本発明で使用するリチウム塩がLiPFやLiBFなどのフッ素を含有するリチウム塩である場合は、下記(式1)に示した水と電解質の反応を利用して、水を電解液に添加し、電解液中で発生させても良い。
LiMF + HO → LiPF(n−2)O +2HF (式1)
(ただし、M=P、Bなど、 MがPの時はn=6、MがBの時はn=4)
【0062】
水を電解液に添加する方法は、電解液に直接水を添加しても良いし、電池の電極中にあらかじめ水を含有させて、電池中に電解液を注液した後に、電極中から電解液中に水を供給させても良い。
【0063】
水を電解液に添加し、間接的にHFを電解液中に生成させる場合、水1分子からHFがほぼ定量的に2分子生成するので、水の添加量は、望みのHF添加濃度にあわせて計算し添加する。具体的には、所望のHF量の0.45倍(重量比)の水を添加する。
【0064】
電解質と水の反応を利用して、HFを発生させる化合物は、水以外にも酸性度の強いプロトン性化合物を使用できる。このような化合物として、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸、アクリル酸、マレイン酸、1、4―ジカルボキシー2―ブテンなどを上げることができる。フッ化水素としての添加量は電解液全体に対して0.0001〜0.7重量%が好ましく、0.001〜0.3重量%がより好ましく、0.001〜0.2重量%がさらに好ましく、0.001〜0.1重量%が特に好ましい。
【0065】
以上のような本発明に係る非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサ用の電解液としても用いることができる。
【0066】
二次電池
本発明に係る非水電解液二次電池は、負極と、正極と、前記の非水電解液とを基本的に含んで構成されており、通常、負極と正極との間にセパレータが設けられている。
【0067】
負極を構成する負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料、またはこれらの混合物のいずれをも用いることができる。
【0068】
リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物としては、酸化スズ、酸化シリコンや、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属酸化物などを挙げることができる。
【0069】
これらの中でもリチウムイオンをドーブ・脱ドーブすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料は、カーボンブラック、活性炭、人造黒鉛、天然黒鉛であっても非晶質炭素であってもよく、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状のいずれの形態であってもよい。
【0070】
非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示され、黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛があり、人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができ、また、金、白金、銀、銅、Sn等金属で被覆した物、非晶質炭素で被覆したり、非晶質炭素と黒鉛を混合した物も使用することができる。これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
【0071】
炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましく、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛またはそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料が好ましい。このような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0072】
正極を構成する正極活物質としては、FeS、MoS、TiS、MnO、Vなどの遷移金属酸化物または遷移金属硫化物、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1−x)、LiNiCoMn(1−x−y)などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール/ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料、フッ素化炭素、活性炭などの炭素材料等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。正極活物質は1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。正極活物質は通常導電性が不十分であるため、導電助剤とともに使用して正極を構成する。導電助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0074】
セパレータは正極と負極を電気的に絶縁しかつリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。特に、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、または多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされていても良い。
【0075】
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。本発明の電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用しても良い。
【0076】
このような非水電解液二次電池は、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。次に、円筒型およびコイン型電池の構造について説明するが、各電池を構成する負極活物質、正極活物質およびセパレータは、前記したものが共通して使用される。
【0077】
例えば、円筒型非水電解液二次電池の場合には、銅箔などの負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極と、Al箔などの正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極とを、非水電解液を注入したセパレータを介して巻回し、巻回体の上下に絶縁板を載置した状態で電池缶に収納されている。
【0078】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、コイン型非水電解液二次電池にも適用することができる。コイン型電池では、円盤状負極、非水電解液を注入したセパレータ、円盤状正極、必要に応じて、ステンレス、またはアルミニウムなどのスペーサー板が、この順序に積層された状態でコイン型電池缶に収納されている。
【0079】
【実施例】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0080】
(実施例1〜3、および参考例1)
1.電池の作製
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とγ−ブチロラクトン(γ−BL)とジブチルカーボネート(DBC)を、EC:γ−BL:DBC=30:65:5(重量比)の割合で混合し、次に電解質として、LiPFを電解質濃度が1モル/リットルとなるように非水電解液を調製した。
次にこの非水溶媒に対して、添加剤をそれぞれメタ−ベンゼンスルホン酸ジメチルエステル1重量%(実施例1)、メタ−ベンゼンスルホン酸ジメチルエステル2重量%(実施例2)、メタ−ベンゼンスルホン酸ジメチルエステル2重量%とビニレンカーボネート2重量%の混合物(実施例3)となるように添加して、本発明の非水電解液を得た。また、添加剤の添加を省略した場合を参考例1(ブランク1)とした。
【0081】
<負極の作製>
天然黒鉛(中越黒鉛製LF−18A)87重量部と結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)13重量部を混合し、溶剤のN−メチルピロリジノンに分散させ、天然黒鉛合剤スラリーを調製した。次に、この負極合剤スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布して乾燥した。
コイン型電池用には、これを圧縮成型し、14mmの円盤状に打ち抜いて、コイン状の天然黒鉛電極を得た。この天然黒鉛電極合剤の厚さは110μm、重量は直径14mmの円の面積あたり20mgであった。
【0082】
<LiCoO電極の作製>
LiCoO(本荘FMCエナジーシステムズ(株)製 HLC−21)90重量部と、導電剤の黒鉛6重量部及びアセチレンブラック1重量部と結着剤のポリフッ化ビニリデン3重量部を混合し、溶剤のN−メチルピロリドンに分散させ、LiCoO合剤スラリーを調製した。このLiCoO合剤スラリーを厚さ20ミクロンのアルミ箔に塗布して乾燥した。
コイン型電池用には、これを圧縮成型し、13.5mmの円盤状に打ち抜き、コイン状のLiCoO電極を得た。このLiCoO合剤の厚さは90ミクロン、重量は直径13.5mmの円の面積あたり40mgであった。
【0083】
<コイン型電池の作製>
直径14mmの天然黒鉛電極、直径13.5mmのLiCoO電極、厚さ25μm、直径16mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムからできたセパレータを、ステンレス製の2032サイズの電池缶内に、天然黒鉛電極、セパレーター、LiCoO電極の順序で積層した。その後、セパレータに前記非水電解液0.03mlを注入し、アルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm、およびバネを収納した。最後に、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより、電池内の気密性を保持し、直径20mm、高さ3.2mmのコイン型電池を作製した。
【0084】
2.電池特性の評価
<コイン型電池による高温保存特性の評価>
前述のように作製したコイン型電池を使用し、この電池を0.3mA定電流、4.2V定電圧の条件で、4.2V定電圧の時の電流値が0.05mAになるまで充電し、その後、1mA定電流、3.0V定電圧の条件で、3.0V定電圧の時の電流値が0.05mAになるまで放電した。次に、この電池を1mA定電流、3.85V定電圧の条件で、3.85V定電圧の時の電流値が0.05mAになるまで充電した。
その後、この電池を、45℃の恒温槽で7日間保存(「エージング」)を行なった。
エージング後、1mAの定電流・定電圧条件で、終了条件を定電圧時の電流値0.05mAとして、4.2V〜3.0Vの充放電を一回行ない放電容量を測定した(「低負荷放電容量」)。この時に、放電開始から2分後の電池電圧の変化から、電池の「抵抗」を求めた。次に、同様の条件で4.2Vに充電した後、5mA定電流放電し、電池電圧が3.0Vになった時点で放電を終了する条件で放電を行い放電容量を測定した(「高負荷放電容量」)。そして、この時の低負荷放電容量に対する高負荷放電容量の比率をもとめ、これを「負荷特性指標」とした。
この電池を一旦3.0Vに放電した後、再び4.2Vに充電した時の容量(「充電容量」)を測定した後、60℃で4日間保存(「高温保存」)を行った。
高温保存後に3.0Vまで放電した時の容量(「残存容量」)を測定した。また、エージング時と同じ方法で高温保存試験後の負荷特性指標を測定した。
【0085】
以上の実施例の結果を以下の指標から解析した。
電池の自己放電性、すなわち、電解液の電気分解性を表わす指標として、高温保存前の充電容量と高温保存後の残存容量の差分を求め、無添加の電解液の差分に対する、添加剤入り電解液の差分の比率を「自己放電比」とした。
自己放電比={(添加剤入り電解液の充電容量―添加剤入り電解液の残存容量)/(ブランクでの充電容量−ブランクでの残存容量)}× 100(%)
「エージング後の負荷特性指標」に対する「高温保存後の負荷特性指標」の比率を「負荷特性変化率」とした。
負荷特性変化率=(「高温保存後の負荷特性指標」/「エージング後の負荷特性指標」)×100(%)
「エージング後の抵抗」に対する「高温保存後の抵抗」の比率を「抵抗変化率」とした。
抵抗変化率=(「高温保存後の抵抗」/「高温保存前(エージング後)の抵抗」)×100(%)
【0086】
<測定結果>
コイン型電池での高温保存試験の評価結果
表1に、評価した電解液の電池特性の測定結果を記した。
【0087】
【表1】
Figure 0004863572
【0088】
(実施例4および参考例2)
実施例2における<非水電解液の調製>において、非水溶媒における電解質として、LiPFとLiBFを混合しそれぞれ0.5モル/リットル、0.5モル/リットルとなるように非水電解液を調製したほかは同様にしてコイン型電池を作製し、高温保存特性の評価を行った。また、添加剤の添加を省略した場合を参考例2(ブランク2)とした。
表2に評価した電解液の電池特性の測定結果を記した。
【0089】
【表2】
Figure 0004863572
【0090】
参考例1、2に示すように、添加剤を含まない電解液は、高温保存試験後に抵抗が大幅に上昇し、負荷特性が大幅に低下することに対して、実施例1、2,4に示した本発明のスルホン酸誘導体を添加した電解液は、特に負荷特性および抵抗の劣化抑制について優れた効果を示した。また、実施例3に示したようにビニレンカーボネートをさらに添加した電解液は、負荷特性、抵抗の劣化抑制および自己放電の改善に優れた効果を示した。
【0091】
【発明の効果】
環状カルボン酸エステルを含有し、電解質としてリチウム塩、好ましくはLiPFを使用し、かつスルホン酸誘導体を含有させた電解液を使用することによって、高温保存時の負荷特性、抵抗の劣化が大幅に抑制された寿命特性に優れた非水電解液二次電池を得ることができる。
また、本発明の非水電解液の使用によって、引火点が高く安全性に優れた非水電解液二次電池を得ることができる。

Claims (13)

  1. 環状カルボン酸エステルを含む非水溶媒、ベンゼンジスルホン酸ジエステル、ベンゼンジスルホン酸ジリチウム塩またはベンゼンスルホン酸エステルであるスルホン酸誘導体およびリチウム塩を含有する非水電解液。
  2. スルホン酸誘導体の添加量が0.01重量%〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液。
  3. 環状カルボン酸エステルがγ−ブチロラクトンであることを特徴とする請求項1または2に記載の非水電解液。
  4. 非水溶媒がγ−ブチロラクトンに加え、環状カーボネートおよび環状スルホンから選ばれた少なくとも一つの他の環状構造の非水溶媒を含有し、かつ非水溶媒中に含まれる環状化合物の割合が80重量%以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の非水電解液。
  5. 他の環状構造の非水溶媒がエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、スルホラン、メチルスルホランから選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする請求項4に記載の非水電解液。
  6. 前記リチウム塩がLiPFを含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の非水電解液。
  7. 前記リチウム塩が、LiPFに加え、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(SO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF(C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)から選ばれた少なくとも1種のリチウム塩を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の非水電解液。
  8. リチウム塩中のLiPFの含有率が100〜50重量%であることを特徴とする請求項6または7に記載の非水電解液。
  9. 非水電解液が、さらに一般式(1)に示すビニレンカーボネート誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の非水電解液。
    Figure 0004863572
    (R、Rは、水素、メチル基、エチル基、またはプロピル基である。)
  10. スルホン酸誘導体と一般式(1)に示すビニレンカーボネート誘導体の比率が、重量比で1:100〜100:1であることを特徴とする請求項9に記載の非水電解液。
  11. 負極活物質として金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料、またはこれらの混合物のいずれかを含む負極と、
    正極活物質として遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属の複合酸化物、またはこれらの混合物のいずれかを含む正極と、
    請求項1〜10のいずれかに記載の非水電解液とを含むことを特徴とするリチウム二次電池。
  12. 負極活物質がリチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料であることを特徴とする請求項11に記載のリチウム二次電池。
  13. 正極活物質がリチウムと遷移金属の複合酸化物であることを特徴とする請求項11に記載のリチウム二次電池。
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