JPWO2007086226A1 - 高品質粒状ビスフェノールaの製造方法 - Google Patents

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Abstract

粒状ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)を造粒工程以降に設けられた金属捕集部材に接触させることにより、造粒工程以降において混入される金属粉や製造装置内の各種機器を定期的に若しくは不定期的に開放点検や補修した場合に発生する金属粉を粒状ビスフェノールAから効率よく除去して高品質の粒状ビスフェノールAを製造する方法を提供する。

Description

本発明は、高品質粒状ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)の製造方法に関する。さらに詳しくは、造粒工程以降に設けられた金属捕集部材によって粒状ビスフェノールA中の金属粉を捕集することにより,鉄分含有量を低減させることを特徴とする高品質粒状ビスフェノールAの製造方法に関する。
従来、ビスフェノールAはポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリアクリレートなどのポリマー原料として広く用いられている。このようなビスフェノールAから得られるポリマーの中でもポリカーボネートは、近年、光ディスク用基板材などの光学材料として需要が急速に伸びている。
光学材料として用いられるポリカーボネートは、含有する異物を限りなく少なくすることと、限りなく透明(低い色相)であることが求められており、当然、原料であるビスフェノールAに対しても同じことが求められている。
異物を除去して製品品質を向上させるビスフェノールAの製造方法として、特許文献1には、フェノール類とケトン類とを反応させてビスフェノール類を生成させ、得られた液状ビスフェノール類又は該ビスフェノール類とフェノール類との混合液を焼成金属フィルターにより濾過することを特徴とするビスフェノール類の製造方法が開示されており、特許文献2には、ビスフェノールAの製造工程中にグラスファイバー製のフィルターを設置し、ビスフェノールAの溶液を該ガラスフィルターに通液することにより異物を除去するビスフェノールAの製造方法が開示されている。
一般にビスフェノールAの製造は、(A)酸性触媒の存在下、過剰のフェノールとアセトンを縮合させてビスフェノールAを生成させ、反応混合液を得る工程、(B)工程(A)で得られた反応混合液を濃縮する工程、(C)工程(B)で得られた濃縮残液からビスフェノールAとフェノールとの付加物を晶析・分離する工程、(D)工程(C)で晶析・分離されたビスフェノールAとフェノールとの付加物を、フェノール含有溶液を用いて溶解する工程、(E)工程(D)で得られた溶液からビスフェノールAとフェノールとの付加物を晶析・分離し、場合により、さらに、当該付加物をフェノール含有溶液を用いて溶解した後、晶析・分離する操作を1回以上繰り返す工程及び(F)工程(E)で晶析・分離されたビスフェノールAとフェノールとの付加物を加熱溶融後、フェノールを留去する工程、(G)工程(F)で得られた溶融ビスフェノールAを冷却、固化し、造粒して粒状ビスフェノールAを得る造粒工程を経て行われている。そして、工程(G)で得られた粒状ビスフェノールAを製品サイロへ搬送し、貯蔵若しくは出荷される。
該粒状ビスフェノールAを製品サイロへ搬送する手段としては、ロータリーバルブやバケットコンベア等の搬送機が一般的に使用されている。これら搬送機には内部部品としてステンレス製や鉄製の部品が使用されており、これら搬送機内部の金属同士の磨耗によって発生するステンレス粉や鉄粉といった金属粉が粒状ビスフェノールAに混入する。
したがって、造粒工程より前の前記各工程において、ビスフェノールAの溶液中の異物をフィルター等で除去しても、造粒工程以降の工程で発生した金属粉が異物となって製品の粒状ビスフェノールAに混入してしまうと、出荷先であるポリカーボネート製造工程において品質上問題になる。しかも、この問題はポリカーボネート製造工程内のビスフェノールA受け入れ設備(受入サイロ等)においても同様の問題となる。
さらには、ビスフェノールAの製造装置内の各種機器を定期的に若しくは不定期的に開放点検や補修した場合、該機器内部の部品が大気に触れて錆(酸化鉄)が発生する場合がある。このような状態のまま運転を再開すると、金属粉の発生は異常なものとなり、運転開始時に発生した多量の金属粉が混入した製品ビスフェノールAの処理の問題が生じる。
特開平11−180920号公報 特開2000−327614公報
本発明は、上記のような状況下における問題点を解決するためになされたもので、造粒工程以降において混入される金属粉や製造装置内の各種機器を定期的に若しくは不定期的に開放点検や補修した際に発生する金属粉を粒状ビスフェノールAから効率よく除去して高品質の粒状ビスフェノールAを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、粒状ビスフェノールAを造粒工程以降に設けられた金属捕集部材に接触させて、その中の金属粉を捕集することにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)粒状ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)を造粒工程以降に設けられた金属捕集部材に接触させてその中の金属粉を捕集することにより、鉄分含有量を低減させたことを特徴とする高品質粒状ビスフェノールAの製造方法、
(2)金属捕集部材が、造粒塔の塔底の粒状ビスフェノールAの抜出配管、製品サイロ入口若しくは出口又は出荷先の粒状ビスフェノーA受入サイロ入口若しくは出口に設けられている上記(1)に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法、
(3)金属粉がステンレス粉及び/又は鉄粉である上記(1)又は(2)に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法、
(4)造粒工程後の粒状ビスフェノールA中の鉄分の含有量が、1質量ppm未満である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法、
(5)金属捕集部材が磁石を具備したものである上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法、
(6)磁石の表面磁束密度が0.7テスラ(T)以上である上記(5)に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法、
(7)金属捕集部材が、棒状磁石を移送中の粒状ビスフェノールAの流れ方向に対して垂直に配置したものである上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法、
である。
本発明の金属捕集部材の縦断面を表す模式図である。 本発明の金属捕集部材の棒磁石部の平面を表す模式図である。
符号の説明
1:金属捕集部材の粒状ビスフェノールAの入口
2:棒状磁石
3:金属捕集部材の粒状ビスフェノールAの出口
本発明の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法は、造粒工程以降に設けられた金属捕集部材に粒状ビスフェノールAを接触させて金属粉を捕集することにより、その中の鉄分含有量を低減させたことを特徴とする。
一般に、ビスフェノールAの製造方法は、(A)酸性触媒の存在下、過剰のフェノールとアセトンを縮合させてビスフェノールAを生成させ、反応混合溶液を得る工程、(B)工程(A)で得られた反応混合溶液を濃縮する工程、(C)工程(B)で得られた濃縮残液からビスフェノールAとフェノールとの付加物を晶析・分離する工程、(D)工程(C)で晶析・分離されたビスフェノールAとフェノールとの付加物をフェノール含有溶液を用いて溶解する工程、(E)工程(D)で得られた溶液からビスフェノールAとフェノールとの付加物を晶析・分離し、場合により、さらに当該付加物をフェノール含有溶液を用いて溶解した後、晶析・分離する操作を1回以上繰り返す工程及び(F)工程(E)で晶析・分離されたビスフェノールAとフェノールとの付加物を加熱溶融後、フェノールを留去する工程、(G)工程(F)で得られた溶融ビスフェノールAを冷却、固化し、造粒して粒状ビスフェノールAを得る造粒工程を経て行われる。そして、工程(G)で得られた粒状ビスフェノールAは製品サイロへ搬送し、貯蔵若しくは出荷される。
次に各工程について説明する。
工程(A)
工程(A)においては、酸性触媒の存在下、過剰のフェノールとアセトンを縮合させて、ビスフェノールAを生成させる。該酸性触媒としては、酸型イオン交換樹脂を用いることができる。この酸型イオン交換樹脂としては、特に制限はなく、従来、ビスフェノールAの触媒として慣用されているものを用いることができるが、特に触媒活性等の点から、スルホン酸型陽イオン交換樹脂が好適である。
スルホン酸型陽イオン交換樹脂は、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であればよく特に制限されず、例えば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノールホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼンホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記製造方法においては、上記酸型イオン交換樹脂と共に、通常、助触媒として、メルカプタン類が併用される。このメルカプタン類は、分子内にSH基を遊離の形で有する化合物であり、アルキルメルカプタンや、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基等の置換基の一種以上を有するアルキルメルカプタン類、例えば、メルカプトカルボン酸、アミノアルカンチオール、メルカプトアルコール等を挙げることができる。
該メルカプタン類の例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸等のチオカルボン酸;2−アミノエタンチオール等のアミノアルカンチオール、メルカプトエタノール等のメルカプトアルコール等が挙げられるが、これらの中で、アルキルメルカプタンが助触媒としての効果の点で、特に好ましい。
また、これらのメルカプタン類は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのメルカプタン類は、上記酸型イオン交換樹脂上に固定化し、助触媒として機能させることもできる。
メルカプタン類の使用量は、一般に、原料のアセトンに対して、0.1〜20モル%、好ましくは、1〜10モル%の範囲で選定される。
フェノールとアセトンとの使用割合については特に制限はないが、生成するビスフェノールAの精製の容易さや経済性等の点から、未反応のアセトンの量はできるだけ少ないことが望ましく、従って、フェノールを化学量論的量よりも過剰に用いるのが有利である。通常、アセトン1モル当たり、3〜30モル、好ましくは5〜15モルのフェノールが用いられる。
また、ビスフェノールAの製造においては、反応溶媒は、反応液の粘度が高くなりすぎたり、凝固して運転が困難になるような低温で反応させる以外は、一般に必要ではない。
上記フェノールとアセトンとの縮合反応は、回分式及び連続式のいずれであってもよいが、酸型イオン交換樹脂を充填した反応塔に、フェノールとアセトンとメルカプタン類(メルカプタン類が酸型イオン交換樹脂に固定化されない場合)を連続的に供給してアセトンとフェノールを反応させる固定床連続反応方式を用いるのが有利である。この際、反応塔は1基でもよく、また2基以上を直列に配置してもよいが、工業的には、酸型イオン交換樹脂を充填した反応塔を2基以上直列に連結し、固定床多段連続反応方式を採用するのが、特に有利である。
この固定床連続反応方式における反応条件について説明する。
まず、アセトン/フェノールモル比は、通常1/30〜1/3、好ましくは1/15〜1/5の範囲で選ばれる。モル比が1/30より小さい場合、反応速度が遅くなりすぎるおそれがあり、1/3より大きいと不純物の生成が多くなり、ビスフェノールAの選択率が低下する傾向がある。
一方、メルカプタン類が酸型イオン交換樹脂に固定化されない場合、メルカプタン類/アセトンのモル比は、通常0.1/100〜20/100、好ましくは1/100〜10/100の範囲で選ばれる。モル比が0.1/100より小さい場合、反応速度やビスフェノールAの選択率の向上効果が十分に発揮されないおそれがあり、20/100より大きいとその量の割りに効果の向上があまり認められない。
反応温度は、通常、40〜150℃、好ましくは60〜110℃の範囲で選ばれる。該温度が40℃未満では反応速度が遅い上、反応液の粘度が極めて高くなり、場合によっては、固化するおそれがある。また、反応温度が150℃を超えると反応制御が困難となり、かつビスフェノールA(p,p′−体)の選択率が低下する上、触媒の酸型イオン交換樹脂が分解又は劣化することがある。さらに、原料混合物のLHSV(液空間速度)は、通常0.2〜30hr-1、好ましくは0.5〜10hr-1の範囲で選ばれる。
上記製造方法においては、このようにして得られた反応混合溶液を、まず、フィルターでろ過することが好ましい。ビスフェノールA含有反応混合溶液をフィルターでろ過することにより、該溶液中に含まれる夾雑物を取り除くことができ、後工程での高温条件下でのビスフェノールAの分解及び色相の悪化を防止することができる。
反応混合溶液の後処理又は上記ろ過に引き続いて行われる後処理としては、以下に示す工程(B)〜工程(F)と共に、ビスフェノールAとフェノールとの付加物をフェノール含有溶液を用いて溶解する工程と、この溶液から当該付加物を晶析・分離する工程の間の少なくとも一つに、フィルターによるろ過工程を施すことが行われる。
工程(B)
工程(B)は、上記の実質上酸型イオン交換樹脂を含まない反応混合溶液を濃縮する工程である。この濃縮工程においては、通常、まず、蒸留塔を用いた減圧蒸留により、未反応アセトン、副生水及びアルキルメルカプタン等の低沸点物質を除去することが行われる。
この減圧蒸留は、一般に圧力6.5〜80kPa程度及び温度70〜180℃程度の条件で実施される。この際、未反応フェノールが共沸し、その一部が上記低沸点物質と共に、蒸留塔の塔頂より系外へ排出される。この減圧蒸留においては、ビスフェノールAの熱分解を防止するために、使用する加熱源の温度は190℃以下とすることが望ましい。
次に、反応混合溶液から低沸点物質を除いた、ビスフェノールA及びフェノール等を含む塔底液に減圧蒸留を施してフェノールを留去し、ビスフェノールAを濃縮する。この濃縮条件については特に制限はないが、通常、温度100〜170℃程度及び圧力5〜70kPa程度の条件が採用される。この温度が100℃より低いと高真空が必要となり、170℃より高いと次の晶析工程で余分の除熱が必要となる。
また、濃縮残液中のビスフェノールAの濃度は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%の範囲である。濃度が20質量%未満ではビスフェノールAの回収率が低く、50質量%を超えると晶析後のスラリー移送が困難となるおそれがある。
工程(C)
工程(C)は、上記工程(B)で得られた濃縮残液からビスフェノールAとフェノールとの1:1付加物(以下、フェノールアダクトということがある)を晶析・分離する工程である。この工程においては、まず、上記濃縮残液を40〜70℃程度に冷却し、フェノールアダクトを晶析させ、スラリーとする。この際の冷却は、外部熱交換器を用いて行ってもよく、また、濃縮残液に水を加え、減圧下での水の蒸発潜熱を利用して冷却する真空蒸発晶析法によって行ってもよい。この真空蒸発晶析法においては、該濃縮残液に、水を3〜20質量%程度添加し、通常、温度40〜70℃程度、圧力3〜13kPa程度の条件で晶析処理が行われる。上記水の添加量が3質量%未満では除熱能力が十分ではなく、20質量%を超えるとビスフェノールAの溶解ロスが大きくなる。
この晶析操作において、晶析温度が40℃未満では晶析液の粘度の増大や固化をもたらすおそれがあり、70℃を超えるとビスフェノールAの溶解ロスが大きくなる。
次に、このようにして晶析されたフェノールアダクトを含むスラリーを、ろ過や遠心分離等の公知の手段により、フェノールアダクトと、反応副生物を含む晶析母液とに分離する。
工程(D)
工程(D)は、上記工程(C)で晶析・分離されたフェノールアダクトを、フェノール含有溶液を用いて溶解する工程である。この工程において用いられるフェノール含有溶液としては特に制限はなく、例えば、上記工程(B)の濃縮工程で得られた回収フェノール、工程(C)の晶析・分離工程で生成するフェノールアダクトの洗浄液、本工程(D)以降の工程で生成する、晶析したフェノールアダクトの固液分離における母液や該フェノールアダクトの洗浄液等を挙げることができる。
工程(C)で得られたフェノールアダクトに上記フェノール含有溶液を加え、80〜110℃程度に加熱し、該フェノールアダクトを加熱溶解させ、次工程の晶析操作に好ましいビスフェノールA濃度を有するビスフェノールA含有溶液を調製する。このようにして調製されたビスフェノールA含有溶液は、比較的低い温度でも粘度が低くて取扱いが比較的容易であり、次工程において、晶析したフェノールアダクトの固液分離をフィルターで行うのに適している。
工程(E)
工程(E)は、上記工程(D)で得られたビスフェノールA含有溶液から、フェノールアダクトを晶析・分離し、場合により高純度の製品を得るために、さらに当該フェノールアダクトをフェノール含有溶液を用いて溶解した後、晶析・分離する操作を1回以上繰り返す工程である。この工程におけるフェノールアダクトの晶析・分離操作及びフェノールアダクトのフェノール含有溶液による溶解操作は、それぞれ上記の工程(C)及び工程(D)と同様である。
工程(F)
工程(F)は、上記工程(E)で晶析・分離されたフェノールアダクトを加熱溶融後、フェノールを留去させる工程である。この工程においては、まず、フェノールアダクトを100〜160℃程度に加熱、溶融して液状混合物となし、次いで、減圧蒸留によってフェノールを留去し、溶融状態のビスフェノールAを回収する。この減圧蒸留は、一般に、圧力1〜11kPa、温度150〜190℃の範囲の条件で実施される。残存フェノールは、さらに、スチームストリッピングにより除去することができる。
工程(G)
工程(G)は、工程(F)で得られた溶融状態のビスフェノールAを固化し、造粒する工程である。造粒方法としては、例えば、冷却ドラムに溶融ビスフェノールAを供給しフレーク状の固体とする方法や、溶融ビスフェノールAを造粒塔の塔頂より噴霧し、塔底から吹き込まれた冷却ガスにより固化する噴霧造粒法がある。
製品の粒状ビスフェノールAの貯蔵・出荷
工程(G)で固化し、造粒された粒状ビスフェノールAは、工程(G)より多岐にわたる設備へ搬送される。例えば、出荷設備、製品サイロ等に搬送される。搬送手段としては、ロータリーバルブやバケットコンベア等の搬送機を挙げることができる。
本発明の金属捕集部材は、該工程(G)以降に設置される。具体的には、上記造粒塔の塔底の粒状ビスフェノールAの抜出配管や、製品サイロ入口若しくは出口、出荷先の粒状ビスフェノールA受入サイロ入口若しくは出口が金属捕集部材の設置位置として挙げられる。
また、金属捕集部材は磁石を具備したものが好ましく、該磁石の表面磁束密度としては、好ましくは0.7テスラ(T)以上、より好ましくは0.9テスラ(T)以上である。0.7テスラ未満の表面磁束密度となると磁性が弱いステンレス微粉を捕集することができないおそれがある。なお、表面磁束密度とは、1cm2あたりの磁石表面からどれだけの磁束本数が出ているかを示すものである。磁石の種類としては、工業的に一般的なものでよく、例としてネオジウム希土類磁石が挙げられる。
なお、金属捕集部材へ磁石を具備させる方法としては、磁石を内部に挿入したステンレスの棒を一段に複数本装着したものが好ましく、これを複数段装着したものが金属粉捕集能力を高める上でより好ましい。ステンレスの棒の形状は特に限定されないが、粒状ビスフェノールAが堆積しにくい丸棒が好ましい。複数本装着される該ステンレス棒同士の間隔は特に限定されないが、金属粉捕集能力を高め、かつ、閉塞を防止する観点から粒状ビスフェノールAの粒径の20〜100倍程度とすることが好ましい。
また、該金属捕集部材の棒状磁石は、移送中の粒状ビスフェノールAの流れ方向に対してどのように配置してもよいが、特に、流れ方向に対して垂直に配置することが金属粉捕集能力を高める上で好ましい。
粒状ビスフェノールAに混入している金属粉は磁石が具備された金属捕集部材を粒状ビスフェノールAが通過することによって除去され、その結果、該粒状ビスフェノールA中の鉄分の含有量は、1質量ppm未満、より好ましくは0.2質量ppm以下、さらに好ましくは0.1質量ppm以下にすることができる。1質量ppm以上の鉄分の混入は製品ビスフェノールAの色相を悪化させるだけでなく、該ビスフェノールAを原料として製造したポリカーボネートの色相の悪化や異物問題を引き起こすことになる。
なお、粒状ビスフェノールA中の鉄分の含有量測定は、一般的な分析法、例えば、分光光度計を使ったオルソ−フェナントロリン吸光光度法(JIS K 0102)等で測定することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって、なんら限定されるものではない。
参考例
陽イオン交換樹脂〔三菱化学(株)製、「ダイヤイオンSK104H」〕のスルホン酸基を2−メルカプトエチルアミンを用いて20モル%、部分中和した触媒を充填した固定床反応塔に、フェノールとアセトン(フェノール:32t/hr,アセトン:3t/hr)を連続的にLHSV3hr-1で通液し、75℃で反応を行った。得られた反応混合溶液を減圧蒸留塔へ導入し、塔底温度170℃、圧力67kPa−Aの条件で減圧蒸留によりアセトン、水等を除去した後、さらに温度130℃、圧力14kPa−Aの条件で減圧蒸留し、フェノールを留去させて、ビスフェノールA濃度が40質量%になるまで濃縮し、ビスフェノールA・フェノール溶液15t/hrを得た。
次に、このビスフェノールA濃度が40質量%のビスフェノールA・フェノール溶液に水1t/hrを加え、5.3kPa−Aで50℃に冷却保持することにより、ビスフェノールA・フェノールアダクトを晶析させてスラリー溶液16t/hrを得た。
次いで、得られたスラリー溶液を固液分離することにより、ビスフェノールA・フェノールアダクトを得た。得られたビスフェノールA・フェノールアダクトにフェノールを加え、90℃に加熱してフェノール60質量%及びビスフェノールA40質量%を含む溶液を調製し、10ミクロンサイズのフィルターにてろ過した後、再度、同様の真空蒸発晶析を行い、スラリー溶液16t/hrを得た。
次いで、このスラリー溶液を固液分離し、フェノール1.6t/hrにより洗浄を行い、ビスフェノールA・フェノールアダクト結晶を得た。得られたアダクト結晶を130℃にて加熱溶融して、フェノールを除去した後、噴霧造粒塔にて平均粒径1mmの粒状ビスフェノールAを4.3t/hrで得た。得られたビスフェノールA中の鉄分は、0.1質量ppmで、目視にて色相評価をした結果、色相はAHPA15であった。
比較例1
上記参考例で得られた粒状ビスフェノールAを、ロータリーバルブ(回転羽根:ステンレス製)及びバケットコンベア(バケット:ステンレス製、内部チェーン:鉄製)にて4.3t/hrで製品サイロへ搬送した。製品サイロ入口には、金属捕集部材を設置しなかった。製品サイロからサンプリングした製品の粒状ビスフェノールAの鉄分を測定したところ、その含有量は1.15質量ppmであり、ビスフェノールAを空気雰囲気下で220℃、40分間加熱し、APHA標準色を用い、目視にて色相評価した結果、APHA40であった
実施例1
上記参考例で得られた粒状ビスフェノールAを、ロータリーバルブ(回転羽根:ステンレス製)及びバケットコンベア(バケット:ステンレス製、内部チェーン:鉄製)にて4.3t/hrで製品サイロへ搬送した。製品サイロ入口には、直径25mm、長さ40cmのステンレス管に磁石を挿入した棒状磁石(ネオジウム希土類、表面磁束密度:0.9テスラ)をステンレス管間隔50mmで2段装着した金属捕集部材が設置(段間隔60mm)されており、製品サイロ出口でサンプリングした製品の粒状ビスフェノールAの鉄分を測定したところ、その含有量は0.1質量ppmであり、ビスフェノールAを空気雰囲気下で220℃、40分間加熱し、APHA標準色を用い、目視にて色相評価した結果、APHA15であった。
実施例2
製品サイロ入口に、ステンレス管に表面磁束密度0.7テスラの磁石を挿入した棒状磁石を2段装着した金属捕集部材を設置する以外は実施例1と同様にして粒状ビスフェノールAを製造した。製品サイロ出口でサンプリングした製品の粒状ビスフェノールAの鉄分を測定したところ、その含有量は0.1質量ppmであり、ビスフェノールAを空気雰囲気下で220℃、40分間加熱し、APHA標準色を用い、目視にて色相評価した結果、APHA15であった。
本発明によれば、造粒工程以降において混入される金属粉や製造装置内の各種機器を定期的に若しくは不定期的に開放点検や補修した場合に発生し、粒状ビスフェノールA中に混入した金属粉を効率よく除去して高品質の粒状ビスフェノールAを製造する方法を提供することができる。さらには、該製品の粒状ビスフェノールAの出荷先であるポリカーボネート製造工程やポリカーボネート製造工程内の粒状ビスフェノールA受け入れ設備(受入サイロ等)においても金属粉に起因する品質不良等の問題の発生を防止することができる。

Claims (7)

  1. 粒状ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)を造粒工程以降に設けられた金属捕集部材に接触させてその中の金属粉を捕集することにより,鉄分含有量を低減させたことを特徴とする高品質粒状ビスフェノールAの製造方法。
  2. 金属捕集部材が,造粒塔の塔底の粒状ビスフェノールAの抜出配管、製品サイロ入口若しくは出口又は出荷先の粒状ビスフェノーA受入サイロ入口若しくは出口に設けられている請求項1に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法。
  3. 金属粉が、ステンレス粉及び/又は鉄粉である請求項1又は2に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法。
  4. 造粒工程後の粒状ビスフェノールA中の鉄分の含有量が、1質量ppm未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法。
  5. 金属捕集部材が磁石を具備したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法。
  6. 磁石の表面磁束密度が0.7テスラ(T)以上である請求項5に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法。
  7. 金属捕集部材が、棒状磁石を移送中の粒状ビスフェノールAの流れ方向に対して垂直に配置したものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の高品質粒状ビスフェノールAの製造方法。
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