JP4358497B2 - ビスフェノールaの造粒方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はビスフェノールA〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〕の造粒方法に関し、さらに詳しくは、粒径が均一で、流動性に富み、嵩密度が大きく、しかも硬度が高いビスフェノールAの粒子状製品を効率良く製造することができる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビスフェノールA(以下、BPAと略すことがある。)はポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂などのエンジニアリングプラスチック、あるいはエポキシ樹脂などの原料として重要な化合物であることが知られており、近年その需要はますます増大する傾向にある。このビスフェノールAは、酸性触媒及び場合により用いられる硫黄化合物などの助触媒の存在下に、過剰のフェノールとアセトンとを縮合させることにより製造される。
このビスフェノールAの製造プロセスにおいては、通常各種用途に対応するため、造粒工程を設け、加熱溶融ビスフェノールAを造粒して粒子状製品(プリル)とすることが行われている。そして、この造粒工程においては、例えばスプレードライヤーなどの造粒装置が用いられ、ビスフェノールAを液滴にした後、冷却固化することにより、造粒することが行われている。
造粒工程におけるBPA液滴が大きいと、冷却固化の際の冷却効果が低下するため、BPAプリルの温度が高くなってしまう。製造されたBPAプリルは、フレコンバッグ等に入れて出荷されるが、BPAプリルの温度が高いと、輸送に際して安全性の問題が生じる。この問題を解消するために、ガススライドクーラー等を用いてBPAプリルの温度を35℃程度にまで低下させる二次冷却工程を設けているため、設備費が高いものとなっている。
【0003】
従来、BPAの造粒は、BPA溶融液を特定の温度に保ち、ノズル出口における溶融液の液深や造粒塔の高さを特定のものとした条件により行われている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような造粒方法では、粒径が均一なBPAプリルを得ることが極めて困難である。
BPAプリルの粒径が不揃いであると、特に大粒径のものが冷却結晶化されず、溶融BPAが残存することとなる。この溶融BPAは、▲1▼造粒塔の底部に付着して造粒塔の運転異常を生じさせる原因となる、▲2▼溶融BPAの蒸気が冷却固化してBPA微粒子を発生させる、▲3▼結晶化することができても、高温状態にあると昇華により微粒子が発生するという問題がある。また、上記製造方法では、BPAの蒸発等により、鳥の巣のような隙間を有するBPAプリルが製造され易く、このようなBPAプリルは、もろいため、割れてBPA微粉が発生し易くなる。そして、このBPA微粉や上記BPA微粒子は、フィルター等の目詰まりや装置の汚染等を生じさせるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特公昭47−8060号公報(第1−3頁、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、粒径が均一で、流動性に富み、嵩密度が大きく、しかも硬度が高いビスフェノールAプリルを効率良く製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ビスフェノールAの溶融液を粒子状に造粒するビスフェノールAの造粒方法において、ビスフェノールAの溶融液を特定の流出速度でノズルから流出させ、かつビスフェノールAの溶融液に振動を与えながら造粒することにより、上記目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、ビスフェノールAの溶融液を流出速度0.5〜3m/sでノズルから流出させ、かつビスフェノールAの溶融液に振動を与えながら造粒することを特徴とするビスフェノールAの造粒方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるビスフェノールAは、例えば、(A)酸性触媒の存在下、過剰のフェノールとアセトンを縮合させてビスフェノールAを生成させ、反応混合液を得る工程、(B)反応混合液を濃縮する工程、(C)上記(B)工程で得られた濃縮残液からビスフェノールAとフェノールとの付加物を晶析・分離する工程、(D)上記(C)工程で晶析・分離されたビスフェノールAとフェノールとの付加物をフェノール含有溶液を用いて溶解する工程、(E)上記(D)工程で得られた溶液からビスフェノールAとフェノールとの付加物を晶析・分離し、場合により、さらに当該付加物をフェノール含有溶液を用いて溶解したのち、晶析・分離する操作を1回以上繰り返す工程及び(F)上記(E)工程で晶析・分離されたビスフェノールAとフェノールとの付加物を加熱溶融後、フェノールを留去させる工程により製造することができる。
ビスフェノールAの製造方法の(A)工程においては、酸性触媒の存在下、過剰のフェノールとアセトンを縮合させて、ビスフェノールAを生成させる。上記酸性触媒としては、酸型イオン交換樹脂を用いることができる。この酸型イオン交換樹脂としては、特に制限はなく、従来ビスフェノールAの触媒として慣用されているものを用いることができるが、特に触媒活性などの点から、スルホン酸型陽イオン交換樹脂が好適である。
【0008】
スルホン酸型陽イオン交換樹脂については、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であればよく特に制限されず、例えばスルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノールホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼンホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
上記製造方法においては、上記酸型イオン交換樹脂と共に、通常助触媒として、メルカプタン類が併用される。このメルカプタン類は、分子内にSH基を遊離の形で有する化合物を指し、このようなものとしては、アルキルメルカプタンや、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基などの置換基一種以上を有するアルキルメルカプタン類、例えばメルカプトカルボン酸、アミノアルカンチオール、メルカプトアルコールなどを用いることができる。このようなメルカプタン類の例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸などのチオカルボン酸、2−アミノエタンチオールなどのアミノアルカンチオール、メルカプトエタノールなどのメルカプトアルコールなどが挙げられるが、これらの中で、アルキルメルカプタンが助触媒としての効果の点で、特に好ましい。また、これらのメルカプタン類は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのメルカプタン類は、上記酸型イオン交換樹脂上に固定化させ、助触媒として機能させることもできる。
【0010】
上記メルカプタン類の使用量は、一般に原料のアセトンに対して、0.1〜20モル%、好ましくは、1〜10モル%の範囲で選定される。
また、フェノールとアセトンとの使用割合については特に制限はないが、生成するビスフェノールAの精製の容易さや経済性などの点から、未反応のアセトンの量はできるだけ少ないことが望ましく、したがって、フェノールを化学量論的量よりも過剰に用いるのが有利である。通常、アセトン1モル当たり、3〜30モル、好ましくは5〜15モルのフェノールが用いられる。また、このビスフェノールAの製造においては、反応溶媒は、反応液の粘度が高すぎたり、凝固して運転が困難になるような低温で反応させる以外は、一般に必要ではない。
【0011】
上記製造方法におけるフェノールとアセトンとの縮合反応は、回分式及び連続式のいずれであってもよいが、酸型イオン交換樹脂を充填した反応塔に、フェノールとアセトンとメルカプタン類(メルカプタン類が酸型イオン交換樹脂に固定化されない場合)を連続的に供給して反応させる固定床連続反応方式を用いるのが有利である。この際、反応塔は1基でもよく、また2基以上を直列に配置してもよいが、工業的には、酸型イオン交換樹脂を充填した反応塔を2基以上直列に連結し、固定床多段連続反応方式を採用するのが、特に有利である。
【0012】
この固定床連続反応方式における反応条件について説明する。
まず、アセトン/フェノールモル比は、通常1/30〜1/3、好ましくは1/15〜1/5の範囲で選ばれる。このモル比が1/30より小さい場合、反応速度が遅くなりすぎるおそれがあり、1/3より大きいと不純物の生成が多くなり、ビスフェノールAの選択率が低下する傾向がある。一方、メルカプタン類が酸型イオン交換樹脂に固定化されない場合、メルカプタン類/アセトンモル比は、通常0.1/100〜20/100、好ましくは1/100〜10/100の範囲で選ばれる。このモル比が0.1/100より小さい場合、反応速度やビスフェノールAの選択率の向上効果が十分に発揮されないおそれがあり、20/100より大きいとその量の割りには効果の向上はあまり認められない。
【0013】
また、反応温度は、通常40〜150℃、好ましくは60〜110℃の範囲で選ばれる。該温度が40℃未満では反応速度が遅い上、反応液の粘度が極めて高く、場合により、固化するおそれがあり、150℃を超えると反応制御が困難となり、かつビスフェノールA(p,p′−体)の選択率が低下する上、触媒の酸型イオン交換樹脂が分解又は劣化することがある。さらに、原料混合物のLHSV(液空間速度)は、通常0.2〜30hr-1、好ましくは0.5〜10hr-1の範囲で選ばれる。
【0014】
上記製造方法においては、このようにして得られた反応混合液を、まず、フィルターによりろ過することが好ましい。(A)工程と(B)工程との間に設けるフィルターとしては、フィルターであれば制限はないが、例えば、デブスタイプフィルターとして、ガラス繊維フィルター及びセラミックスフィルターなどが挙げられ、スクリーンタイプフィルターとして、焼成金属フィルター、メンブレンフィルター及び巻線フィルターなどが挙げられる。
ガラス繊維フィルターとしては、ガラス繊維を規則正しく渦巻き状に巻いたカートリッジフィルターが挙げられ、焼成金属フィルターとしては、ステンレス鋼(SUS)等の金属を用いたものが挙げられ、メンブレンフィルターとしては、フッ素樹脂製のものが挙げられ、巻線フィルターとしては、波打ち多角管にワイヤをワインディングしたフィルターエレメントからなる、ステンレス鋼製のものが挙げられる。
ろ過精度(フィルターによっては孔径を示す)は、ガラス繊維フィルター、焼成金属フィルター及びセラミックスフィルターでは、20μm以下、好ましくは10μm以下であり、メンブレンフィルター及び巻線フィルターでは30μm以下、好ましくは20μm以下である。
このようなろ過により、触媒残渣や触媒破砕物を除去する。触媒残渣や触媒破砕物は、製品のビスフェノールAの分解を助長し、色相を悪化させるからである。
反応混合液の後処理又は上記ろ過に引き続いて行われる後処理としては、以下に示す(B)工程〜(F)工程と共に、ビスフェノールAとフェノールとの付加物をフェノール含有溶液を用いて溶解する工程と、この溶液から当該付加物を晶析・分離する工程の間の少なくとも一つに、フィルターによるろ過工程を施すことが行われる。
【0015】
次に、(B)工程〜(F)工程について説明する。
(B)工程
この(B)工程は、上記の実質上酸型イオン交換樹脂を含まない反応混合液を濃縮する工程である。この濃縮工程においては、通常、まず、蒸留塔を用いた減圧蒸留により、未反応アセトン、副生水及びアルキルメルカプタンなどの低沸点物質を除去することが行われる。
この減圧蒸留は、一般に圧力6.5〜80kPa程度及び温度70〜180℃程度の条件で実施される。この際、未反応フェノールが共沸し、その一部が上記低沸点物質と共に、蒸留塔の塔頂より系外へ除かれる。この蒸留においては、ビスフェノールAの熱分解を防止するために、使用する加熱源の温度は190℃以下とすることが望ましい。また、機器の材料としては、一般にSUS304、SUS316及びSUS316Lが用いられる。
【0016】
次に、反応混合物から低沸点物質を除いた、ビスフェノールA及びフェノールなどを含む塔底液に減圧蒸留を施してフェノールを留去させ、ビスフェノールAを濃縮する。この濃縮条件については特に制限はないが、通常温度100〜170℃程度及び圧力5〜70kPa程度の条件が採用される。この温度が100℃よい低いと高真空が必要となり、170℃より高いと次の晶析工程で余分の除熱が必要となり、好ましくない。また、濃縮残液中のビスフェノールAの濃度は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%の範囲である。この濃度が20質量%未満ではビスフェノールAの回収率が低く、50質量%を超えると晶析後のスラリー移送が困難となるおそれがある。
【0017】
(C)工程
この(C)工程は、上記(B)工程で得られた濃縮残液からビスフェノールAとフェノールとの1:1付加物(以下、フェノールアダクト称することがある。)を晶析・分離する工程である。この工程においては、まず、上記濃縮残液を40〜70℃程度に冷却し、フェノールアダクトを晶析させ、スラリーとする。この際の冷却は、外部熱交換器を用いて行ってもよく、また、濃縮残液に水を加え、減圧下での水の蒸発潜熱を利用して冷却する真空冷却晶析法によって行ってもよい。この真空冷却晶析法においては、該濃縮残液に、水を3〜20質量%程度添加し、通常温度40〜70℃、圧力3〜13kPaの条件で晶析処理が行われる。上記水の添加量が3質量%未満では除熱能力が十分ではなく、20質量%を超えるとビスフェノールAの溶解ロスが大きくなり、好ましくない。このような晶析操作において、晶析温度が40℃未満では晶析液の粘度の増大や固化をもたらすおそれがあり、70℃を超えるとビスフェノールAの溶解ロスが大きくなり、好ましくない。
次に、このようにして晶析されたフェノールアダクトを含むスラリーを、ろ過や遠心分離などの公知の手段により、フェノールアダクトと、反応副生物を含む晶析母液とに分離する。この晶析母液はそのまま一部を反応器へリサイクルしたり、一部又は全部をアルカリ分解処理して、フェノールとイソプロペニルフェノールとして回収してもよい。また、一部又は全部を異性化して、晶析原料にリサイクルすることもできる。
【0018】
(D)工程
この(D)工程は、上記(C)工程で晶析・分離されたフェノールアダクトを、フェノール含有溶液を用いて溶解する工程である。この工程において用いられるフェノール含有溶液としては特に制限はなく、例えば上記(B)工程の濃縮工程で得られた回収フェノール、(C)工程の晶析・分離工程で生成するフェノールアダクトの洗浄液、本(D)工程以降の工程で生成する、晶析したフェノールアダクトの固液分離における母液や該フェノールアダクトの洗浄液などを挙げることができる。
【0019】
この工程においては、(C)工程で得られたフェノールアダクトに上記フェノール含有溶液を加え、80〜110℃程度に加熱し、該フェノールアダクトを加熱溶解させ、次工程の晶析操作に好ましいビスフェノールA濃度を有するビスフェノールA含有溶液を調製する。このようにして調製されたビスフェノールA含有溶液は、比較的低い温度でも粘度が低くて取扱いが比較的容易であり、次工程において晶析したフェノールアダクトの固液分離をフィルターで行うのに適している。
【0020】
(E)工程
この(E)工程は、上記(D)工程で得られたビスフェノールA含有溶液から、フェノールアダクトを晶析・分離し、場合により高純度の製品を得るために、さらに当該フェノールアダクトをフェノール含有溶液を用いて溶解したのち、晶析・分離する操作を1回以上繰り返す工程である。この工程におけるフェノールアダクトの晶析・分離操作及びフェノールアダクトのフェノール含有溶液による溶解操作は、それぞれ上記の(C)工程及び(D)工程と同じである。
【0021】
(F)工程
この(F)工程は、上記(E)工程で晶析・分離されたフェノールアダクトを加熱溶融後、フェノールを留去させる工程である。この工程においては、まず、フェノールアダクトを100〜160℃程度に加熱・溶融して液状混合物となし、次いで減圧蒸留によってフェノールを留去し、溶融状態のビスフェノールAを回収する。上記減圧蒸留は、一般に圧力1〜11kPa、温度150〜190℃の範囲の条件で実施される。残存フェノールは、さらにスチームストリッピングにより除去することができる。
【0022】
上記製造方法においては、(A)〜(F)工程において、(A)工程と(B)工程との間にフィルターを設けるとともに、フェノールアダクトをフェノール含有溶液を用いて溶解する工程と、この溶液から当該フェノールアダクトを晶析・分離する工程の間の少なくとも一つにフィルターによるろ過工程を設けることである。
すなわち、上記(D)工程と(E)工程の間、あるいは該(E)工程で晶析・分離−溶解−晶析・分離操作を、さらに一回以上行う場合には、この溶解操作と晶析・分離操作の間に、フィルターによるろ過工程を少なくとも一つ設ける。このように、ビスフェノールA含有溶解液をフィルターでろ過することにより、該溶解液中に含まれる夾雑物を取り除くことができ、後工程の高温条件下におけるビスフェノールAの分解を防止することができる。その結果、着色物質の生成が抑制され、色相の向上した製品ビスフェノールAが得られる。
この際、用いられるフィルターとしては、上述したフィルターと同様のものを用いることができる。この中で一般的に使用されているガラス繊維フィルターが取扱いが容易で好適である。
また、(A)工程と(B)工程の間のフィルター(前段フィルター)とその後の工程で設けるフィルター(後段フィルター)との組合せには、特に制限はなく、上述したフィルターを適宜組合わせて使用すればよい。例えば、前段フィルター−後段フィルターとして、巻線フィルター−ガラス繊維フィルター、ガラス繊維フィルター−ガラス繊維フィルターの組合せを使用することができる。
【0023】
このようにして得られた溶融状態のビスフェノールAは、本発明で用いるBPAの溶融液(以下、BPA溶融液という)として好適である。また、本発明においては、粒子状ビスフェノールAを溶融したものもBPA溶融液として使用することができる。BPA溶融液は、スプレードライヤーなどの造粒装置により、液滴にされ、冷却固化されて製品となる。該液滴は噴霧、散布などにより形成され、窒素や空気などによって冷却される。
造粒装置としては、例えば図1に示すものを用いることができる。溶融槽(不図示)から送出されたBPA溶融液は、造粒ノズル1から流出してBPA液滴となり、造粒塔2内をシャワー状に落下する。このBPA液滴は、気体導入口3から導入された気体により冷却されてBPAプリルとなり、このBPAプリルは、製品送出口4から排出される。冷却に使用された気体は、気体排出口5から排出される。
BPA溶融液の温度は157〜200℃が好ましい。BPA溶融液の温度が157℃未満であると、固化するおそれがあり、200℃を超えると、着色するおそれがある。
【0024】
造粒ノズル1は、プレートにノズルが設けられたものである。ノズルの径を0.5〜1mmとすることにより、粒径が0.5〜1.5mmのBPAプリルを得ることができる。本発明においては、造粒ノズル1から流出されるBPA溶融液の流出速度を0.5〜3m/sとすることを要し、好ましくは1〜2m/sである。BPA溶融液の流出速度が0.5m/s未満であると、BPA液滴が大きくなりすぎ、BPA溶融液の流出速度が3m/sを超えると、BPA液滴の大きさが不均一となる。また、BPA溶融液の流出速度が0.5〜3m/sの範囲外であると、後述する振動の効果を得ることができない。BPA溶融液の流出は、スプレーにより噴霧状として流出させたり、自然落下などにより行う。なお、BPA溶融液の流出速度は、ノズルへのBPA溶融液の流量等により調整することができる。また、プレートに設けるノズルの数は、生産量やBPA溶融液の流出速度に応じて適宜決定すればよい。
気体導入口3から導入される冷却ガスとしては、窒素ガスなどを用いることができる。窒素ガスを用いる場合、造粒塔2への導入速度は0.7〜2m/sが好ましく、より好ましくは0.9〜1.3m/sである。窒素ガスを0.7〜2m/sで導入することにより、造粒塔2内部の温度を40〜90℃とすることができ、BPAプリルの温度を50〜60℃に冷却することができる。
本発明においては、BPA溶融液に振動を与える。BPA溶融液に振動を与えることにより、粒径の均一なBPAプリルを得ることができる。BPA溶融液に振動を与える方法としては、溶融槽中に所定の固有振動を持つ振動板を、ボールバイブレーター及び圧電素子等の振動子で加振することにより、溶融槽中のBPA溶融液を振動させる方法、造粒ノズル1から流出したBPA液滴の側面から、スピーカー等により所定の振動数の音波を与えて振動させる方法などが挙げられる。本発明において、振動数は、200〜2000Hzが好ましく、500〜1500Hzがより好ましい。この振動数が200Hz未満、あるいは2000Hzを超えると、均一なBPA液滴が得られないおそれがある。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
陽イオン交換樹脂〔三菱化学(株)製、「ダイヤイオンSK103H」〕を充填した固定床反応塔に、モル比10:1のフェノールとアセトンを、エチルメルカプタンと共に、連続的にLHSV3hr-1で通液し、75℃で反応を行った。
得られた反応混合液から、塔底温度170℃、圧力67kPaの条件で減圧蒸留によりアセトン、水、エチルメルカプタンなどを除去したのち、さらに温度130℃、圧力14kPaの条件で減圧蒸留し、フェノールを留去させ、ビスフェノールA濃度が40質量%になるまで濃縮し、フェノール・ビスフェノールA溶液を得た。
【0026】
次に、このビスフェノールA濃度が40質量%のフェノール・ビスフェノールA溶液に水を加え、減圧下で50℃に冷却保持することにより、ビスフェノールA・フェノールアダクトを晶析させてスラリー溶液を得た。
次いで、得られたスラリー溶液を固液分離することにより、ビスフェノールA・フェノールアダクトを得た。このアダクトにフェノールを加え、90℃に加熱してフェノール60質量%及びビスフェノールA40質量%を含む溶液を調製した。次いで、この溶液をガラス繊維フィルター[ロキテクノ(株)製ガラス繊維フィルター、ろ過精度10μm]で濾過したのち、同様の真空冷却晶析及び固液分離を行い、ビスフェノールA・フェノールアダクトを得た。次いでこのアダクトを精製フェノールにより洗浄を行い、ビスフェノールA・フェノールアダクト結晶を得た。このアダクト結晶を130℃にて加熱溶融したのち、脱フェノールしてビスフェノールAを得た。
上記ビスフェノールAを空気雰囲気下で220℃、40分間加熱し、APHA標準色を用い、目視にて色相評価した結果、APHA15であった。
【0027】
上記ビスフェノールAを用い、図2に示す装置により本発明の効果を確認した。図2に示す装置は、BPA溶融槽6に、直径0.5mmの単一ノズル7、固有振動数800Hzの振動板8及び振動板8を振動させる振動子9(ニューマチック ボールバイブレーター,スイスABB社製,基本振動数800Hz)を取り付けた装置である。BPA溶融槽6に170℃のBPA溶融液を仕込み、このBPA溶融液に、振動子9より振動板8を介して振動数800Hzの振動を与えながら、流出速度2m/sで単一ノズル7から、造粒塔10内にBPA溶融液を噴霧状に流出させた。得られた液滴11をカメラ12により撮影し、観察したところ、粒径が1.0mmで均一な液滴が等間隔に13個認められた。また、以下のように、BPA液滴の評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
<BPA液滴の評価>
(1)滞空時間
BPA液滴が造粒塔(高さ30m)に落ちるまでの時間を求めた。滞空時間は、BPA液滴が小さいほど長くなる。
(2)冷却所要時間
180℃において、BPA液滴の中心まで完全に固まるまでの時間を冷却所要時間とした。冷却所要時間は、BPA液滴が小さいほど短い。
(3)冷却効率
滞空時間/冷却所要時間で求め、実施例1の場合を100%として、その相対値で表した。
【0029】
実施例2
実施例1において、BPA溶融液に与える振動の振動数を600Hz、BPA溶融液の流出速度を1.2m/sとした以外は、実施例1と同様に観察したところ、粒径が1.0mmで均一な液滴が等間隔に認められた。上記評価試験の結果を表1に示す。
【0030】
参考例1
実施例1において、BPA溶融液に与える振動の振動数を1400Hz、BPA溶融液の流出速度を2.9m/sとし、振動板8によりBPA溶融液に振動を与える代わりに、造粒塔10の内側に設置したスピーカーによりBPA液滴11に振動を与えた以外は、実施例1と同様に撮影し、観察したところ、粒径が1.0mmで均一な液滴が等間隔に認められた。上記評価試験の結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
実施例1において、BPA溶融液に振動を与えない以外は、実施例1と同様に撮影し、観察したところ、液滴の合一が認められた。合一した液滴の直径は1.25mmであり、粒径1.0mmの液滴が8個、直径1.25mmの液滴が2個形成された。上記評価試験の結果を表1に示す。
【0032】
比較例2
実施例1において、BPA溶融液の流出速度を4m/sとした以外は、実施例1と同様に撮影し、観察したところ、2カ所で液滴の合一が認められた。合一した液滴の直径は1.25mmであり、粒径1.0mmの液滴が8個、直径1.25mmの液滴が2個形成された。上記評価試験の結果を表1に示す。
【0033】
比較例3
実施例1において、BPA溶融液の流出速度を2.9m/sとし、かつBPA溶融液に振動を与えない以外は、実施例1と同様に撮影し、観察したところ、液滴の合一が認められた。上記評価試験の結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004358497
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、粒径が均一で、流動性に富み、嵩密度が大きく、しかも硬度が高いビスフェノールAの粒子状製品を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる造粒装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施例及び比較例で用いた試験装置の概略図である。
【符号の説明】
1 造粒ノズル
2 造粒塔
3 気体導入口
4 製品送出口
5 気体排出口
6 BPA溶融槽
7 単一ノズル
8 振動板
9 振動子
10 架台(造粒塔)
11 液滴
12 カメラ

Claims (8)

  1. 溶融槽中のビスフェノールAの溶融液に振動を与えながら、流出速度0.5〜3m/sでビスフェノールAの溶融液をノズルから流出させ、造粒することを特徴とするビスフェノールAの造粒方法。
  2. 前記溶融槽中のビスフェノールAの溶融液に振動を与える手段が、振動板であることを特徴とする請求項1に記載のビスフェノールAの造粒方法。
  3. 前記溶融槽中のビスフェノールAの溶融液の温度が、157〜200℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のビスフェノールAの造粒方法。
  4. ビスフェノールAの造粒方法が、酸性触媒の存在下で過剰のフェノールとアセトンを縮合させて得られるビスフェノールAとフェノール溶液との反応混合液から、ビスフェノールAとフェノールとの付加物を晶析させ、生成したスラリーを固液分離した後、固体成分からフェノールを除去し、その後溶融することによって得られたビスフェノールAの溶融液を粒子状に造粒するものである請求項1〜3のいずれか記載のビスフェノールAの造粒方法。
  5. ビスフェノールAの溶融液に与える振動が、振動数200〜2000Hzである請求項1〜4のいずれかに記載の造粒方法。
  6. ビスフェノールAの溶融液の流出速度が1〜2m/sで、かつビスフェノールAの溶融液に与える振動が、振動数500〜1500Hzである請求項1〜5のいずれかに記載の造粒方法。
  7. 溶融槽中のビスフェノールAの溶融液に振動を与えながら、流出速度0.5〜3m/sでビスフェノールAの溶融液をノズルから流出させ、造粒する造粒工程を含むビスフェノールAプリルの製造方法。
  8. 前記溶融槽中のビスフェノールAの溶融液に振動を与える手段が、振動板であることを特徴とする請求項7に記載のビスフェノールAプリルの製造方法。
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