JPWO2006098275A1 - 定着装置、加熱ローラ、および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
整磁材料を用いてウォームアップ時間の短縮、加熱時の効率向上、および用紙幅外の過昇温の抑制を実現することができる定着装置。本装置においては、電磁誘導で加熱される整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、かつ、連続通紙時の記録材が通過する部分に対応する発熱体の定着設定温度を整磁材料の比透磁率が降下し始める温度よりも低い値に設定した。これにより、発熱部と非発熱部の差を大きく確保でき、幅の狭い記録材を連続通紙したときの記録材幅外の過昇温を確実に防止し、かつ、ウォームアップ時間を短縮するとともに加熱効率を向上することができる。
Description
本発明は、電子写真方式または静電記録方式の複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に用いられる定着装置に関し、特に、電磁誘導加熱方式によって未定着画像を記録材に加熱定着する定着装置およびこれに用いる加熱ローラ、ならびにこの定着装置を用いた画像形成装置に関する。
近年、複写機やファクシミリ、プリンタなどに用いられる定着装置に、電磁誘導加熱方式を採用することが盛んに検討されている。電磁誘導加熱方式の定着装置においては、励磁コイルに交流電流が印加され、この励磁コイルの周囲に交番磁束(生成消滅を繰り返す磁束)を発生する。そして、発生した交番磁束が導電体を透過することによって渦電流が発生し、この渦電流により導電体で生じた熱が未定着画像の定着に用いられる。
具体的には、例えば、2つのローラによって形成されるニップ部に導電体で生じた熱が伝達され、記録材がニップ部を通過する際に、ローラによる圧力と伝達された熱とによって記録材上のトナーが定着する。導電体で生じた熱をニップ部へ伝達するには、例えば、ニップ部を形成するローラそのものを導電体で形成したり、導電体とニップ部を形成するローラの1つとに薄膜のベルトを懸架したりすればよい。このとき、ニップ部へ伝達された熱はニップ部を通過する記録材や周囲の部材によって奪われるため、ニップ部へ熱を伝達するローラやベルトの温度は低下する。しかし、ニップ部を通過する記録材の幅は多様であるため、常にローラやベルトの幅全体から万遍なく熱が奪われるとは限らない。
すなわち、例えば、ニップ部を形成するローラそのものを導電体で形成するローラ方式を例にとると、導電体で形成された発熱ローラのローラ幅全体が常にニップ部で記録材に接するわけではなく、幅の狭い記録材がニップ部を通過する際には記録材に接することがない部分からは熱が奪われることはない。したがって、例えば、発熱ローラのローラ幅の両端部分などは温度が高くなりすぎることがある。そして、このような部分の温度がトナーの定着に適した定着温度よりも高くなった状態で幅の広い記録材を通過させると、一旦記録材に転写されたトナーが発熱ローラに再び付着するという現象(ホットオフセット)が生じる。
このような過昇温の問題に対しては、キュリー温度が設定された整磁金属を導電体として用いて自己温度制御を行うことが考えられる。キュリー温度とは、整磁金属が有する磁性の有無の閾値となる温度であり、通常温度では強磁性を有する整磁金属でも、キュリー温度を超えた温度では磁性が消失する。このような整磁金属の特性を利用した場合、例えば、特許文献1に開示されているように、発熱するフィルムの導電層の材料としてキュリー温度が定着温度に等しいものを使用することにより、キュリー温度以上での渦電流が減少して発熱が抑制される。
また、他の具体例としては、特許文献2に開示されているように、定着器の熱容量を極力低減し、ウォームアップ時間を短縮した構成として、ベルト定着と電磁誘導加熱を組み合わせた定着器がある。この構成では、励磁コイルによって発熱ローラが電磁誘導加熱され、発熱ローラで発生した熱を定着ベルトで記録紙(記録材)と接触する定着ニップ部まで搬送し、トナー像を溶融固着するようにしている。
一般に、定着器においては、上記のように、ニップ部を通過する記録紙が定着ベルトの熱を吸収するため、記録紙に接触した部分の定着ベルトや定着ローラの温度は低下する。したがって、幅の狭い記録紙を連続して定着通紙すると、通紙幅の部分は温度制御されて一定の温度を保つが、用紙幅外の部分は、加熱はされるものの記録紙によって冷やされることがないため、異常に昇温し、その結果、軸受けが損傷したり加圧ローラや定着ローラが損傷したりするなど種々のトラブルを発生することがある。
したがって、この場合においても、このような用紙幅外の過昇温の問題に対して、キュリー温度が所定温度に設定された整磁金属を発熱体として用いて自己温度制御を行うことが考えられる。例えば、特許文献3に開示されているように、被加熱材である加熱ローラの温度を所定の定着温度に制御した状態で幅の狭い用紙を連続して通紙する場合、用紙幅外の温度は定着温度以上に昇温するが、温度がキュリー温度近傍になるとその部分の発熱量が減少するため、用紙幅外の過昇温が自動的に抑制される。
特開平7−114276号公報 特開2002−82549号公報 特開2000−35724号公報
しかしながら、上記した従来の定着装置においては、次のような問題がある。
一般に、整磁金属は、磁束の浸透によって内部に発生する誘導電流により発熱するため、材料の電気特性の影響を大きく受ける。このため、抵抗値や結合時のインダクタンスの制限により、発熱部の形状に大きな制約があるという課題があった。
すなわち、抵抗値やインダクタンスを発熱部で一様にする必要から、誘導電流を阻害するような接合や、不均一または不連続な形状を取ることができず、均一な厚みの無端状にする必要性から、ベルト形状やローラ形状にする必要がある。
このとき、整磁金属は、磁束の浸透によって内部に発生する誘導電流により発熱するため、発熱の状態は材料の磁気特性の影響を大きく受ける。すなわち、キュリー温度近傍での磁気特性の変化が緩やかであると、設定温度制御での温度変化に対する追従も緩慢となり、記録材に転写されたトナーに熱が移動した場合の回復が遅く、高速の定着ができないという課題があった。
一方、定着を安定してオフセットなどを発生させることなく継続するためには、定着時の処理を抑える必要があり、高速化が困難であった。
温度の追従性を上げるために、制御設定温度に対して整磁材料のキュリー温度が5〜30℃高い材料を使用すると、定着処理時の温度変化に対する追従性が向上し、処理速度を向上させることはできるが、定着処理時以外の加熱状態では、温度が最適値よりも高くなるために、ホットオフセットが発生しやすくなるという課題や、トナーの使用温度幅を広く取る必要があるという課題もあった。
また、整磁金属を用いた発熱体は、設定温度制御での温度変化に対する追従が緩慢であるため、定着に必要な温度に達するまでのウォームアップに時間がかかるという課題があった。
すなわち、複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置は、電源投入時やスリープ状態からの復帰時に、定着装置をトナーの定着に必要な温度にまで昇温させるが、整磁金属の温度上昇が緩やかであるため、実際に画像形成が可能となるまでに長時間を要してしまう。また、定着装置の温度が十分に高くなっていない状態でトナーの定着を行うと、記録材に転写されたトナーが十分に溶けずにコールドオフセットが生じる。
また、整磁金属のキュリー温度を高く設定すると、用紙幅外の温度はそれに従って高くなり、例えば、加熱ローラの温度が220℃程度以上になると、加圧ローラのゴムの耐久性の劣化や軸受けの損傷を招くことになる。
一方、キュリー温度を定着温度に近づけ過ぎると、ウォームアップ時に定着温度近傍で発熱量が減少し、ウォームアップ時間が長くなるという問題が発生する。
また、キュリー温度は高く設定しても、整磁金属の比透磁率の温度に対する変化の割合が緩やかであると、定着温度付近での発熱量が減少し、定着時のエネルギー効率が低下するとともに、上記のようにウォームアップ時間が長くなるという問題が発生する。
本発明の目的は、電磁加熱による過昇温を防止しつつウォームアップの時間を短縮するとともに、オフセットの発生を防止して良好かつ高速な定着を実現することができる定着装置を提供することである。
本発明の他の目的は、電磁誘導で加熱する発熱部材に整磁材料を用いた構成により、定着装置のウォームアップの時間を最大限短縮すると同時に、定着時のエネルギー効率を良好な状態に保ち、かつ、用紙幅外の過昇温を確実に防止し、良好な定着性能を実現することができる定着装置およびこれに用いる加熱ローラ、ならびにこれを用いた画像形成装置を提供することである。
本発明の定着装置は、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、記録材の幅方向に全域にわたる発熱体と、前記発熱体に対向して前記記録材の走行方向と直交する幅方向全域を励磁加熱する励磁コイルを備えた励磁手段と、前記発熱体で発生した熱を前記記録材に接触させるための加圧手段と、を有し、前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、連続通紙時の前記記録材が通過する部分に対応する前記発熱体の定着設定温度を前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い値に設定した、構成をとる。
本発明の加熱ローラは、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、かつ、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsを定着温度よりも高い温度に設定した定着装置に用いる電磁誘導加熱ローラである。
すなわち、本発明の一態様によれば、定着装置は、電圧が印加されると周囲に磁場を形成する励磁手段と、少なくとも一部が前記励磁手段によって形成される磁場内に配置され、前記磁場内に発生する磁束を内部に浸透させて発熱する発熱手段と、前記発熱手段で発生した熱を用いて記録材に担持形成された像を加熱定着する定着手段とを有し、前記発熱手段は、均一な厚みの無端状のベルトやローラなどの形状加工後に、600℃以上で焼鈍工程を経た、所定の温度以上になると磁性が無くなるキュリー温度を調整した磁性材料である整磁材料からなり、前記磁束の浸透によって内部に誘導電流が発生する導電性の透磁性導電層が、前記形状加工後にアニール処理された構成をとる。
これにより、前記磁性材料は、交番磁束の浸透によって、昇温が発生する際に、キュリー温度近傍での透磁率の低下が小さいため、定着装置における速やかな昇温を実現するとともに過昇温を防止しつつ、オフセットの発生を防止して良好な定着性能を実現することができる。
本発明の他の態様によれば、定着装置は、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料を含めてなる記録材幅方向に全域にわたる発熱体と、前記発熱体に対向して記録材走行方向と直交する幅方向全域を励磁加熱する励磁コイルを備えた励磁手段と、前記発熱体で発生した熱を記録材に接触させるための加圧手段とを具備し、かつ、前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、連続通紙時の記録用紙が通過する部分に対応する前記発熱体の定着設定温度を前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い値に設定した構成をとる。
さらに、好ましくは、前記整磁材料のキュリー温度Tcと、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsとは、Tc−Ts≦30℃となるように設定されている。
また、好ましくは、前記発熱体は、前記整磁材料の前記励磁コイル側に非磁性導電層を積層した構成を採り、また、前記整磁材料の厚さを0.1mm以上0.7mm以下に設定した構成をとる。
さらに、好ましくは、前記整磁材料は、整磁金属材料を塑性加工により薄肉の円筒状とした後、アニール処理を施して作成される。
また、好ましくは、前記発熱体を挟んで前記励磁コイルに対向して設けられた非磁性導電体を備え、前記発熱体の温度が上昇し透磁率が低下することにより、前記励磁手段によって形成された磁束が前記発熱体を透過し前記非磁性導電体の内部を貫通するように構成されている。
また、好ましくは、前記定着装置は、前記整磁材料の外周に接触懸架され、前記加圧手段と接触して前記記録材を挟持搬送しつつ前記記録材へ熱を供給する無端状の定着ベルトを備えたベルト定着器の構成をとる。
さらに、好ましくは、前記整磁材料は非回転の部材であり、前記定着ベルトは、この整磁材料と接触摺動して回転移動する構成をとる。
また、好ましくは、前記定着ベルトは、前記励磁手段によって自らが発熱する導電発熱層を有し、かつ、前記整磁材料は、自らは発熱しない磁路形成手段とした構成をとる。
さらに、好ましくは、前記定着装置は、記録用紙が通過する部分に対応する前記発熱体の温度を検知する定着温度検知手段と、前記定着温度検知手段の検知情報に基づいて前記励磁手段への電力供給を制御する制御手段とを有し、前記制御手段によって、前記記録用紙が通過する部分の定着温度を一定に制御するとともに、記録用紙幅外の温度が、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsと前記整磁材料のキュリー温度Tcの間の温度に自己温度制御されるように構成されている。
また、好ましくは、電磁誘導加熱ローラは、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、前記整磁材料のキュリー温度Tcは220℃以下であり、かつ、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsは定着温度よりも高い温度に設定され、前記整磁材料のキュリー温度Tcと前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsとは、Tc−Ts≦30℃に設定されている。
これらの構成によれば、定着ローラまたは定着ベルトの温度は220℃を大きく上回って上昇することはなく、用紙幅外の過昇温が確実に防止でき、ゴム材の寿命の低下や、軸受けの損傷を発生することがない。また、抑制したい温度の近傍まで発熱体の比透磁率を高い状態に保っておくことができるため、定着時の発熱効率が良く、かつ、ウォームアップ時に定着温度近傍で発熱量が低下してウォームアップ時間が長くなるということがなく、ウォームアップ時間の短縮と用紙幅外の過昇温防止を両立する使い勝手の良い定着装置を実現できる。
本発明によれば、均一な厚みの無端状のベルトやローラなどの形状加工後に、600℃以上で焼鈍工程を経た、所定の温度以上になると磁性が無くなるキュリー温度を調整した磁性材料を用いることにより、電磁加熱方式の定着装置において過昇温を防止しつつオフセットの発生を防止して良好な定着性能を実現することができる。
また、本発明によれば、幅の狭い記録材を連続通紙したときの記録材幅外の過昇温を確実に防止し、かつ、ウォームアップの時間を短縮するとともに、過昇温による定着装置の寿命低下やオフセットなどの発生も防止して良好な定着性能を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置における定着ローラの表面温度の時間変化を示す図であり、電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合の定着ローラ表面温度の時間変化を示している。
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置における定着ローラの表面温度の時間変化を示す図であり、電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合の定着ローラ表面温度の時間変化を示している。
電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合、発熱は、磁束の浸透によって金属内部に発生する誘導電流(渦電流)と、導電体としての整磁金属の電気抵抗とによるジュール熱として発生する。したがって、整磁金属材料を均一に加熱するためには、一方で、電気抵抗値を均一にする必要があり、そのためには、整磁金属材料が固有抵抗値を有するため、その厚さを均一にしなければならず、他方で、整磁金属材料の形状を、内部で発生する渦電流を阻害するような不連続の形状や、組成の変性層を形成しない無端形状にしなければならない。
本発明は、キュリー温度を有する磁性材料が交番する電磁場により発熱する際に、均一な厚さの無端状のベルトやローラなどの形状加工後に、アニールなどの熱処理を行うことにより、キュリー温度近傍で温度変化に対する磁気特性の変化が緩慢になるという、整磁材料が本来有する特性劣化を、回復することが可能であることを見出したことにある。
すなわち、軟磁性材料の磁気特性を改善するために、磁気焼鈍を行うことは知られているが、パーマロイでは1050〜1100℃、鉄やケイ素鉄では900〜950℃で行う必要がある。
しかしながら、電磁加熱方式の定着装置においては、昇温速度を上げるために、熱容量を低く抑える必要があるため、発熱部および熱の保持部材は軽量・薄肉化される。このため、上記の温度で磁気焼鈍を行うと、軽量・薄肉化したベルトやローラは変形を起こしてしまうため、その実施は困難であった。
本実施の形態では、磁気焼鈍温度よりも低い温度でアニール処理を行う。具体的には、例えば、600〜1100℃、好ましくは、800℃以上で1時間アニールなどの熱処理を行う。整磁材料には、例えば、FeとNiの合金、または、FeとNiとCrの合金が用いられる。
整磁材料を所望のキュリー温度に調整することは、上記の合金比率を変えることによって実現することができる。複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置の定着装置の場合、トナーの定着に必要な温度を160〜230℃に設定することが一般的であり、FeとNiの合金の場合、Niの含有率はおおむね35±5%のものを使用する。
次に、上記の組成に調整した整磁材料を用いて、均一な厚さの無端状のベルトやローラを作製する。加工の方法としては、整磁材料のみを使用する場合は、圧延した板材を溶接した後、金型による絞り加工を1回以上行うか、または、金型による絞り加工のみを1回以上行って上記作製を行う。
また、キュリー温度以下の低温時において磁気発熱効率を高めるために、整磁材料からなる透磁性導電層の外周面にメッキ、メタライジング、溶着、電着、蒸着、またはクラッド材による加工を行う。これにより、透磁性導電層を単体で励磁するよりも磁気的な結合が良好となり、磁気発熱効率が向上する。具体的には、例えば、透磁性導電層の励磁手段側に、導電性の非磁性導電層として、望ましくは比抵抗が10×10−6Ωcm程度の、CuやAg、Al、Au、Atなどを積層する。
透磁性導電層と非磁性導電層を合わせた導電層の肉厚は、2〜30μm程度が望ましい。整磁材料からなる透磁性導電層に非磁性材料からなる非磁性導電層を積層して励磁すると、キュリー温度以下の低温時には、透磁性導電層を単体で励磁するよりも磁気的な結合が良好となり、発熱が促進される。
次に、絞り加工などにより所望のサイズに形状加工した材料に対して、熱処理を行う。熱処理を行う場合の雰囲気は、0.1mmT以下の真空、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、または、水素などを含む還元雰囲気が望ましい。
本実施の形態では、窒素ガス置換後に0.1mmT以下の減圧雰囲気で800℃到達後、1時間保持を行った後、200℃以下に徐冷して、上記材料を取り出した。処理温度が500℃以下の場合には、効果を確認することができなかった。
そして、取り出した材料を、電子写真方式によるレーザプリンタや複写機などの画像形成装置において、感光体などを用いてまたは直接記録紙などの記録材上にトナーなどの印材を転写付着させ、これを加熱および加圧して定着する定着装置に用いて、発熱させる。
図1において、符号1の実線で示す曲線は、アニール処理した整磁材料の昇温曲線を示し、符号2の破線で示す曲線は、アニール未処理の整磁材料の昇温曲線を示している。図1は、それぞれの特性曲線を比較した図である。
図1に示すように、電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合、上記アニール処理を行っていない場合(曲線2)は、60秒経過後も設定温度に達しておらず、キュリー温度近傍で磁気特性が緩やかに低下していくのに対して、本実施の形態で生成した材料では、つまり、上記アニール処理を行った場合(曲線1)は、設定した170℃におよそ25秒で速やかに到達する。
図2から図6は、それぞれ、本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す断面図である。ここでは、加熱ローラ(および加熱ベルト)を電子写真方式によるレーザプリンタや複写機などの画像形成装置の定着装置に適用した場合に、感光体などを用いてまたは直接記録紙などの記録材上にトナーなどの印材を転写付着させ、これを加熱および加圧して定着する定着装置を例にとって説明する。
図2に示す定着装置は、発熱源としてのIH(induction heating)コイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱する。図2の定着装置では、この発熱ローラ3で発生する熱によってトナーなどの印材9を加熱・加圧する構成となっている。
このとき、発熱ローラ3は、樹脂層をかぶせて一体化した構成をとる。印材9を加熱・加圧する電子写真方式による画像形成装置(レーザプリンタや複写機など)の場合、樹脂層には、印材9との離型性を得るために、最外層の樹脂層として、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂その他のゴムを用いてもよい。また、耐摩耗性や離型性を高めるためには、PTFEやPFA、FEPなどの樹脂やゴムを単独でまたは混合して発熱ローラ3の外周面を被覆することが望ましい。
また、印材9との離型性を高めるため、上記最外層の樹脂と発熱ローラ3との間に、例えば、低硬度のシリコーンゴムなどの材料によって成形された蓄熱作用を有する柔軟層を形成することも望ましい。
一方、加圧ローラ7は、軸心に樹脂層をかぶせて一体化した構成となっている。例えば、加圧ローラ7の樹脂層は、硬度がJISA30度のシリコーンゴムなどの熱伝導性が小さい材料によって成形されている。
加圧ローラ7の材料としては、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂その他のゴムを用いてよい。また、耐摩耗性や離型性を高めるために、PTFEやPFA、FEPなどの樹脂やゴムを単独でまたは混合して加圧ローラ7の外周面を被覆することが望ましい。
また、加圧ローラ7は、記録紙などの記録材8とこの上の印材9に熱を与えるだけでなく、加圧する必要から、機械的剛性を有する金属材料として、鉄や鉄の合金、ステンレスやアルミニウムやこれらの合金、または、高剛性樹脂材料としてPEEK材やフェノール樹脂、もしくは、補強材としてガラス繊維や炭素繊維を用いた複合材が用いられる。これらの材料は、熱容量を低くするために、中空のパイプ形状や、断熱性に優れた樹脂の複合材料を用いることで、エネルギーロスを大幅に改善することができる。
図3に示す定着装置は、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3の外層側に、導電性の非磁性層10を有する。
この定着装置は、図2に示す定着装置と同様に、発熱源としてのIHコイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱する。このとき、例えば、固有抵抗が70×10−6Ωcm(オームセンチメートル)の整磁金属を周波数が25kHz(キロヘルツ)の交流電流で電磁誘導加熱する場合、整磁金属の表皮抵抗は、37×10−4〜45×10−4Ω(オーム)となる。
この値は誘導加熱しやすい鉄の表皮抵抗9.8×10Ω−4よりも過大であり、インダクタンスも大きいため、このままでは渦電流が流れにくく、発熱量は小さい。しかし、発熱ローラ3の外周面付近に、比抵抗が10×10−6Ωcm程度のCuやAg、Al、Au、Atなどを用いた導電性の非磁性層10が存在することにより、発熱ローラ3としての抵抗値が低下し、発熱効率を高めることができる。導電性の非磁性層10の肉厚は、2〜30μm程度であることが望ましい。
図4に示す定着装置は、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3の内層側に、導電性の非磁性板11を有する。
この定着装置は、図2および図3に示す定着装置と同様に、発熱源としてのIHコイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱する。発熱によりやがて発熱ローラ3がキュリー温度に達すると、透磁率が低下し、高周波交番磁場による磁束は発熱ローラ3を透過する。
発熱ローラ3の厚さが薄い場合は、厚さ方向に透過する磁束により発生する渦電流が一定であるため、電流値も大きくなる。そのため、ジュール熱による発熱が継続する。
しかし、図4に示すように、導電性の非磁性板11を高周波電磁波発生側との間で発熱ローラ3を挟むように配置すると、透過した磁束は、導電性の非磁性板11において渦電流を発生させ、透過した磁束を打ち消す磁束が発生する。発生した磁束は、発熱ローラ3を透過した磁束を打ち消すため、発熱の継続を抑え、温度制御を実現することができる。
導電性の非磁性板11は、発熱ローラ3の内側に形成されていてもよいが、発熱ローラ3の熱容量を低くし、昇温時間を短くするためには、図4に示すように、発熱ローラ3との間に空間(空隙)を有していることが望ましい。
図5に示す定着装置は、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3の内層側に、導電性の非磁性板11と、断熱層13および軸心12からなる内部ローラとを有する。
この定着装置は、図2から図4に示す定着装置と同様に、発熱源としてのIHコイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱し、この熱によって印材9を加熱・加圧する構成となっている。
このとき、加圧を高くしようとすると、発熱ローラ3の厚さが薄い場合には、加圧を均一に行うことができない。そこで、発熱ローラ3の内層側に設けた、断熱層13および軸心12からなる第2の加圧ローラによって加圧を行うことにより、均一な加圧を実現することができる。
上記内部ローラは、高い加圧を実現する必要から、軸心12には、機械的剛性を有する金属材料として、鉄や鉄の合金、ステンレスやアルミニウムやこれらの合金、または、高剛性樹脂材料としてPEEK材やフェノール樹脂、もしくは、補強材としてガラス繊維や炭素繊維を用いた複合材が用いられる。これらの材料は、熱容量を低くするために、中空のパイプ形状や、断熱性に優れた樹脂の複合材料を用いることで、エネルギーロスを大幅に改善することができる。
図6に示す定着装置は、さらに過昇温を防止しつつウォームアップの時間を短縮するために、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3と加圧ローラ7の間に発熱ベルト14を懸架し、断熱層13および軸心12からなる第2の加圧ローラを発熱ローラ3の外側に設けた構成を有する。
図6の構成によれば、発熱ローラ3を小径にすることで、熱容量を小さくすることができるとともに、IH磁気コア4やIHコイル5を小型化することができ、定着装置の小型化を実現することができる。
発熱ベルト14には、磁性材料としてNiやFeを用いることが、発熱効率を高めるために有効であるが、非磁性のステンレスを用いることもできる。上記の金属材料を発熱ベルト14の基材に用いる場合、比抵抗が10×10−6Ωcm程度のCuやAg、Al、Au、Atなどの導電性の非磁性層がベルト基材に密接して存在することにより、発熱ベルト14としての抵抗値が低下し、発熱効率を高めることができる。
また、発熱ベルト14の基材として耐熱性のポリイミド樹脂を用いることもできる。樹脂ベルトとして用いる場合は、電磁気特性を有することが望ましく、電気的に導電性を与えるためにAg、Al、Au、Atなどの導電性材料を添加することにより、照射された高周波数の電磁波(交番磁場)が、発熱ベルト14を通過する際に、磁束により渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ベルト14も発熱し、発熱効率を高めることができる。発熱ベルト14の最外層には、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂その他のゴムを用いてもよい。
また、耐摩耗性や離型性を高めるために、PTFEやPFA、FEPなどの樹脂やゴムを単独でまたは混合して発熱ベルト14の外周面を被覆することが望ましい。また、印材9との離型性を高めるため、上記最外層の樹脂と基材との間に、例えば、低硬度のシリコーンゴムなどの材料によって成形された蓄熱作用を有する柔軟層を形性することも望ましい。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る定着装置を用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図7は、本発明の実施の形態2に係る定着装置を用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図7に示すように、この画像形成装置の画像形成装置本体20には、電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)21が回転自在に配設されている。感光ドラム21は、図中の矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器22によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザビームスキャナ23は、図示しない画像読取装置やコンピュータなどのホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビーム24を出力する。
一様に帯電された感光ドラム21の表面は、レーザビーム24によって走査露光される。これにより、感光ドラム21の露光部分は、電位の絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム21の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器25のマイナスに帯電したトナーによって反転現像され、顕像(トナー像)化される。
現像器25は、回転駆動される現像ローラ26を備えている。現像ローラ26は、感光ドラム21と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。現像ローラ26には、その絶対値が感光ドラム21の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。これにより、現像ローラ26上のトナーが、感光ドラム21の明電位VLの部分にのみ転写されて、静電潜像が顕像化され、感光ドラム21上に未定着トナー像(以下単に「トナー像」という)27が形成される。
一方、給紙部28からは、記録材としての記録紙29が給送ローラ30によって1枚ずつ給送される。給送された記録紙29は、一対のレジストローラ31を経て、感光ドラム21と転写ローラ32とのニップ部に、感光ドラム21の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム21上のトナー像27が、転写バイアスが印加された転写ローラ32により、記録紙29に転写される。
このようにしてトナー像27が形成担持された記録紙29は、記録紙ガイド33により案内されて感光ドラム21から分離された後、加熱定着装置(以下単に「定着装置」という)34の定着部位に向けて搬送される。そして、この定着部位に搬送された記録紙29に、定着装置34によってトナー像27が加熱定着される。
トナー像27が加熱定着された記録紙29は、定着装置34を通過した後、画像形成装置本体20の外部に配設された排紙トレイ35上に排出される。
記録紙29が分離された後の感光ドラム21は、その表面の転写残トナーなどの残留物がクリーニング装置34によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
図8は、本発明の実施の形態2に係る定着装置の構成を示す断面図である。
薄肉の定着ベルト40は、基材41がポリイミド樹脂からなるエンドレスのベルトであり、A3記録用として、約340mmの幅で、直径が47mm、厚さが70μmである。この定着ベルト40の断面を図9に示す。図9に示すように、基材41の上には電磁誘導で発熱する層として、厚さ約10μmの銅材からなる導電層42が形成されている。また、導電層42の表面には、トナー画像との離型性を付与するため、フッ素樹脂からなる厚さ25μmの離型層43が被覆されている。
なお、導電層42は、樹脂基材に銀などの低抵抗粉末材料を分散した導電層を塗布することで形成してもよい。また、基材41の材質としては、電鋳で製作した厚さ約40μm程度のニッケルなどのごく薄い金属を用いることもできる。この場合は、ニッケルが発熱機能を有するため、上記の導電層42はなくてもよい。金属基材としては、ニッケルのほかに鉄やステンレス材、コバルトニッケル合金、鉄ニッケル合金などの金属があるが、非磁性のSUS材などでは、上記と同様に、銅材からなる導電層42を形成するのが好ましい。
また、表面の離型層43は、PTFEやPFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの離型性が良好な樹脂やゴムを単独でまたは混合して被覆することにより形成してもよい。モノクロ画像の定着用としては、離型性のみを確保すればよいが、カラー画像の定着用として用いる場合には、弾性を付与するのが望ましく、この場合には、離型層43の下層にやや厚い(100〜300μm)ゴム層を形成する必要がある。
符号45は、励磁手段としての励磁コイルである。この励磁コイル45は、細い線を束ねたリッツ線を使用し、断面形状は、図8に示すように、定着ベルト40を覆うように形成され、中心と背面の一部には、フェライトで構成された芯材46が設置されている。芯材46は、パーマロイなどの高透磁率の材料を用いることもできる。図10は、芯材46と励磁コイル45の構成を定着ベルト40の方から見た側面図である。励磁コイル45は、図10に示すように、中心の芯材46に沿って発熱ローラ50のほぼ全長にわたって形成され、背面の芯材46は、一部のみに存在し、外部に漏れる磁束を捕捉するように構成されている。励磁コイル45には、励磁回路(図示しない)から20〜60kHzの交流電流で最大1200W程度の電力が印加される。
次に、本実施の形態の定着装置について詳細に説明する。
再び図8に戻り、定着ベルト40は、表面が低硬度(JISA30度)の弾力性ある発泡体のシリコーンゴムで構成された直径34mmの低熱伝導性の定着ローラ51と、後述する合金からなる直径20mmの発熱ローラ50との間に所定の張力をもって懸架され、図中の矢印B方向に回転移動可能となっている。
発熱ローラ50は、厚さ0.2mmの鉄・ニッケルの合金からなる整磁金属で構成されている。発熱ローラ50は、その比透磁率の温度特性が図13に示す温度特性になるように鉄とニッケルの配合割合が調整されて製造されている。本実施の形態の整磁合金は、ニッケルの割合が30数%である。図13に示すように、この発熱ローラ50のキュリー温度Tcは、200℃であり、常温では強い磁性を示すが、184℃で比透磁率が低下し始め190℃を超えると急激に比透磁率が低下し、キュリー温度Tc以上で非磁性となる。なお、図13に示す比透磁率の温度特性は、磁場の強さが45A/mで30kHzの交流磁場条件下での測定値を示す。
発熱ローラ50の内部には、端面が発熱ローラ50と対向する円弧状の銅板53が、発熱ローラ幅のほぼ全域にわたって設けられている。銅板53は、端面を励磁コイル45の左右の巻線のほぼ中央部にそれぞれ対向させ、発熱ローラ50とは約0.5mmの間隔をあけて固定配置される。
図8において、加圧ローラ54は、表面が硬度JISA65度のシリコーンゴムで構成されている。加圧ローラ54は、図8に示すように、定着ベルト40を介して定着ローラ51に圧接してニップ部を形成している。加圧ローラ54は、その状態で金属軸55の周りで回転可能に支持されている。加圧ローラ54は、図示しない装置本体の駆動手段によって図中の矢印F方向に回転駆動され、これに伴って定着ベルト40、定着ローラ51、発熱ローラ50がそれぞれ従動して回転することにより、定着動作が行われる。なお、励磁コイル45と銅板53は、それぞれ、固定位置にあり、動かない。
加圧ローラ54の材質は、他のフッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂やゴムで構成してもよい。また、加圧ローラ54の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFAやPTFE、FEPなどの樹脂またはゴムを単独でまたは混合して被覆してもよい。熱の放散を防ぐため、加圧ローラ54は、熱伝導性が小さい材料で構成されることが望ましい。
符号56は、温度センサである。この温度センサ56は、定着ベルト40の幅方向のほぼ中央でかつ定着ニップ部の入口側に位置し、定着ベルト40の温度を検知し、用紙通紙部の温度を図示しない制御回路によって常時所定の一定温度に制御するためのものである。
次いで、上記のように構成された定着装置34の動作について説明する。
まず、定着装置34のウォームアップ動作について説明する。
画像形成装置の電源切断時やスリープ状態時は、通常、定着装置34の発熱ローラ50の温度が室温程度にまで低下している。この状態から印字を行うために電源が投入されたりスリープ状態から復帰したりする際には、まず、加圧ローラ54の回転を開始して定着ベルト40、定着ローラ51、および発熱ローラ50がそれぞれ回転した状態で、同時に励磁コイル45に励磁電流を流す。励磁コイル45が通電されると、励磁コイル45に対向する部分の定着ベルト40の導電層42および発熱ローラ50にそれぞれ渦電流が発生し、その部分が発熱する。定着ベルト40の回転と励磁コイル45の通電を継続することで、定着ベルト40全体が昇温を続ける。このとき、制御回路は、温度センサ56により定着ベルト40の温度を常時監視し続け、目標温度までほぼフルパワーで励磁コイル45に通電を継続する。そして、定着ベルト40の温度がトナー像27の定着に適した定着温度に到達すると、制御回路は、出力を制御して定着ベルト40の温度を定着温度に保つようにフィードバック制御を行う。本実施の形態では、定着温度を170℃に設定し、励磁コイル45に1200Wの電力を投入することで、最大用紙幅(A3)全幅を常温25℃から約12秒で定着温度まで昇温させることができた。
図11は、図8に示す定着装置34の励磁コイル45と発熱ローラ50の部分を拡大した図であり、励磁コイル45が通電された時に形成される磁路を示している。
常温から定着温度170℃まで昇温させるウォームアップ時において、発熱ローラ50は、図13に示すように強磁性状態を保つため、励磁コイル45が発生する磁束は、図11の実線Mで示すように、芯材46から定着ベルト40を貫通して発熱ローラ50に入り、発熱ローラ50内を通って芯材46に入り励磁コイル45を周回する。したがって、昇温の間中、励磁コイル45と発熱ローラ50の間は常時強い磁気結合が得られ、安定した最も大きな発熱が得られ、短時間でのウォームアップが可能である。
次に、連続して通紙をする場合の動作について説明する。
図12は、サイズが異なる用紙を連続通紙した場合の定着ベルト幅方向の温度分布を示す図である。
最大用紙幅(本実施の形態では、A3サイズ)を連続通紙する場合は、図12に破線で示すように、A3幅全体がほぼ均一な170℃に保たれる。これは、定着ベルトの幅全体にわたって記録用紙が接触し、全面を常時均一に冷却するためである。
一方、サイズが小さいA4縦を連続通紙すると、用紙が接触するA4幅以内では、温度センサ56と制御回路により定着ベルト40は170℃の一定温度に制御されるが、A4幅の外側は、用紙が接触することはなく、用紙によって冷却されることはない。このとき、電力は幅全体に投入されているため、その結果、A4幅の外側では、急激に定着ベルト40の温度が上昇していく。
また、これと同時に、A4サイズの外側に対応する領域の発熱ローラ50の温度も上昇し、キュリー温度に近づく。発熱ローラ50は、自身の温度が、透磁率が変化し始める温度Tsを超えてキュリー温度に近づくと、その部分の透磁率が急激に低下して磁性を失い、その結果、励磁コイル45によって形成されるA4用紙幅の外側領域の磁束は、図11に示す実線Mから破線M’に変化してくる。磁束M’は、発熱ローラ50と低抵抗の銅板53を貫通して励磁コイル45を周回するが、銅板53を貫通すると、銅板53に強い渦電流が流れるため、大きく減衰する。
その結果、用紙幅外の領域の単位面積あたりの発熱量が大幅に抑えられ、この領域の放熱量と発熱量がバランスする温度で定着ベルト40の昇温が停止し、自己温度制御機能が働いて過昇温が防止される。本実施の形態では、毎分32枚の連続出力時に、図12の実線で示すように、定着ベルト40の昇温を195℃に抑えることができた。
なお、本実施の形態では、A4縦サイズの通紙のみを示したが、用紙のサイズはこれに限定されることはなく、あらゆるサイズでこの原理は働き、自動的に用紙幅外の過昇温が抑えられることは言うまでもない。この場合、温度センサ56の位置は、使用するすべての用紙が通過する位置に対応させて配置しておくことも言うまでもない。
なお、用紙幅外が自己温度制御される温度は、特に、連続通紙の速度と用紙の厚さに影響される。これは、励磁コイル45全体に投入される電力がこれらの条件によって大きく左右されるからであるが、ほとんどの場合、キュリー温度以下に過昇温を抑制することができるため、ゴム材の寿命の低下や、軸受けの損傷を発生することもなく、信頼性の高い定着器を実現することができる。
また、本実施の形態では、発熱ローラ50の内部に銅板53を配置した。この銅板53は、用紙幅外の磁束が発熱ローラ50内を貫通したときに、その磁束を減衰させる方向の渦電流を発生させ、用紙幅外の発熱をより効果的に抑制するためのものであるが、必ずしもこの銅板53は必要というものではない。銅板53はなくても、発熱ローラ50が非磁性に近づき励磁コイル45との磁気結合が弱くなると、その部分の磁束が減少し、発熱が減少するため、自己温度制御される温度は銅板53がある場合よりも高くなるものの、過昇温は有効に防止することができる。
なお、銅板53は銅材に限定されるものではなく、アルミニウムや銀など固有抵抗が小さくて渦電流が発生しやすく、かつ、所定の厚さを確保して抵抗が小さく発熱しにくい構成であればよい。
次に、本実施の形態に用いた発熱ローラ50の磁気特性と、ウォームアップ時間および小サイズ紙連続通紙時の過昇温との関係について詳細に説明する。
図14は、本実施の形態に用いた発熱ローラ50のアニール処理前の比透磁率の温度特性を示す図である。なお、図13の場合と同様、比透磁率の温度特性は、磁場の強さが45A/mで、30kHzの交流磁場の条件下での測定値を示す。
ここでは、発熱ローラ50は、厚さ約1mmの板材からなる整磁金属を深絞り加工によりカップ状とし、これをスピニング加工により薄肉化し、厚さ0.2mm、長さ330mmのパイプ形状とした。加工法は、もちろんこれに限定されるものではなく、しごきにより管材を薄肉化するアイアニング加工や、溶接管を使ってこれをしごき加工して薄肉にする方法などが実用化されている。発熱ローラ50は、熱容量を小さくするために肉厚を薄くし、しかも、全域にわたって磁気特性や形状が均一なことが必要である。また、発熱ローラ50は、材料が比較的高価であるため、切削加工などを用いず、塑性加工によって形成するのが好ましい。しかし、整磁金属に大きな塑性変形を与えると、その磁気特性が大きく変化してしまう。
図14は、上記スピニング加工を施した直後の特性である。図14に示すように、比透磁率は、Tsで示す158℃近辺から低下を始め、キュリー温度Tc=212℃でほぼ非磁性となる。なお、比透磁率が半減する値Thは196℃であった。本実施の形態の加熱ローラ50は、上記加工直後の発熱ローラ50を、窒素ガス雰囲気下、800℃で、1時間保持した後、200℃以下に徐冷する、というアニール処理を施したものである。図13は、そのアニール処理後の磁気特性を示している。図14と比較してわかるように、アニール処理後は、比透磁率の変化が急峻になり、半減値Thは194℃で、アニール処理前とほぼ同じであるが、キュリー温度Tcは200℃、比透磁率が低下し始める温度Tsは184℃となった。
なお、アニール処理としては、600〜1100℃、好ましくは800℃以上で1時間、処理時の雰囲気は0.1mmT以下の真空、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、または、水素などを含む還元雰囲気が望ましい。処理温度が500℃以下の場合、効果を確認することができなかった。
また、キュリー温度を所望の温度に調整するためには、FeとNiの合金比率を変えればよいことは言うまでもない。
次に、このアニール処理前後の発熱ローラを用いた場合のウォームアップ時間の比較を図15に示す。
図15において、本発明に係るアニール処理後の発熱ローラを用いた場合の定着ベルトのウォームアップ特性は実線で、アニール処理前の発熱ローラを用いた場合の定着ベルトのウォームアップ特性は破線でそれぞれ示している。実線で示す本発明に係るアニール処理後の発熱ローラでは、上記のように、12秒で170℃に到達したが、破線で示すアニール処理前の発熱ローラでは、150℃近辺から昇温カーブが緩やかになり、170℃に到達するまでに約17秒を要した。これは、アニール処理前の発熱ローラでは、160℃近辺の早い段階で磁気特性の変化が現れるため、強い磁場のもとでは早い段階から図11に破線で示す発熱ローラ50を貫通する磁束M’が増加し始め、定着ベルト40や発熱ローラ50と励磁コイル45との磁気結合が弱まり、定着ベルト40や発熱ローラ50の発熱効率が低下するためであると考えられる。一方、アニール処理を施した発熱ローラは、180℃になっても強磁性状態を安定して保っているため、貫通する磁束M’の発生が非常に少なく、定着ベルト40は、170℃まで安定した昇温カーブを得ることができる。
次に、この両者を用いてA4縦サイズ紙の連続通紙を行った結果、同一の条件下でアニール処理後の発熱ローラ50を用いた場合、用紙幅外の過昇温は195℃以下であったが、アニール処理前の発熱ローラを用いた場合は、210℃近くまで上昇した。これは、通紙領域内の温調が170℃であり、この時すでに発熱ローラ50の全域で透過磁束M’の割合が増加しており、励磁加熱される部分(定着ベルト40の導電層42と発熱ローラ50)の発熱効率が低下して、結果として温調に必要な電力が増大したこと、および、通紙部と非通紙部の差がつきにくくなったことが原因であると考えられる。
以上の比較の結果から、立ち上げ時のウォームアップ時間を短くするためには、キュリー温度ではなく、比透磁率が低下し始める温度Tsが、できるだけ高く、定着温度から高温側に離れている方が良いことがわかる。また、小サイズ紙を連続通紙する場合の用紙幅外の過昇温についても、同様に、定着設定温度と比透磁率が低下し始める温度Tsとが離れており、かつ、急峻に比透磁率の変化が起こることが望ましい。
一般に、定着装置に用いる定着温度は1つに限定されるものではなく、使用する用紙の厚さや種類などによって複数の設定がなされている場合が多い。
厚紙やOHPを出力する場合は、本実施の形態においても、通常の用紙を用いる場合の設定温度170℃よりも10℃高い180℃の設定がなされている(ただし、この場合はプロセス速度は半速の場合が多い)。この条件下で図14に示すアニール処理前の特性の発熱ローラを用いると、通紙領域内においてもすでに透磁率が低下しており、その結果、全体の発熱効率が悪く、用紙幅外の過昇温が定着温度を170℃に設定した場合よりも大幅に高くなる。
以上のことから、比透磁率が低下し始める温度Tsは、定着設定温度よりもできるだけ高い温度に設定することが望ましいが、これに合わせてキュリー温度を高く設定すると、用紙幅外の過昇温が高くなり過ぎ、好ましくない。キュリー温度としては、定着ベルト40や加圧ローラ54に用いられるシリコーンゴム材の耐熱温度を考慮して、220℃以下のできるだけ低い温度であることが望ましい。
以上のように、発熱ローラ50に用いる整磁金属の磁気特性としては、キュリー温度を220℃以下に設定し、かつ、このキュリー温度と比透磁率が降下し始める温度Tsとの差を望ましくは30℃以下として、比透磁率が急峻な変化をする材料を用い、定着設定温度を比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い温度に設定することにより、ウォームアップ時間の短縮、連続通紙時の加熱効率の確保、および用紙幅外の過昇温の抑制をすべて両立させることができ、ゴム材の寿命の劣化や、軸受け部材の損傷なども有効に防止することができる。
なお、本実施の形態では、整磁金属には鉄やニッケル合金を用いたが、発熱ローラ50としては、必ずしもこれらの材料に限定されるものではなく、明確なキュリー温度を有する軟磁性材料が好ましく、鉄やニッケルにクロムを含有させたものや、絶縁材であるMnZnフェライトなどの使用も可能である。絶縁材の場合には発熱ローラ自身は発熱しないが、誘導加熱される定着ベルト40の導電層42を通過する磁束を制御することができるため、本実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。なお、絶縁材の場合には、定着ベルトと整磁材料との接触を十分に確保し、定着ベルトと整磁材料の温度の乖離を極力少なくすることが重要であるが、これは整磁材料の熱容量を極力小さくすることによって実現可能である。また、絶縁材を用いた場合には、小サイズ紙を連続通紙した場合の通紙領域外の発熱は、整磁材料での渦電流の発生がないため、より小さく抑えられ、過昇温防止に効果的である。
さらに、本実施の形態では、定着ベルト40に誘導加熱される導電層42を設けているが、これに限定されるものではなく、定着ベルト40には発熱機能を持たせず、発熱ローラ50のみを発熱させ、その熱を定着ベルト40に伝達して加熱する構成をとることも可能である。この場合には、定着ベルトの厚さや熱伝導率、通紙速度などにもよるが、熱の伝達・供給のために定着ベルト40の温度よりも発熱ローラ50の温度が若干高くなる。したがって、このような構成においては、定着ベルト40と発熱ローラ50の温度差を考慮して、比透磁率が降下し始める温度Tsを定着温度設定時の発熱ローラ50の温度よりも高い温度に設定すればよい。
(実施の形態3)
実施の形態3における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
実施の形態3における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
図16は、本発明の実施の形態3に係る定着装置を示す断面図である。本実施の形態の定着装置34aは、図8に示す実施の形態2の定着装置34とほぼ同様の構成を有し、実施の形態2の定着装置34と異なる点は、発熱ローラ50が発熱プレート60に置き換えられた点である。なお、図16において図8と同じ符号を付した構成要素は、図8と同じ機能を有するため、その説明を省略する。
図16において、発熱プレート60は、鉄・ニッケル合金からなる整磁金属であり、実施の形態2の発熱ローラ50と同様の磁気特性を有する厚さ0.3mmの円弧状のプレートである。この発熱プレート60は、回転することはなく、定着ローラ51から遠ざかる方向にばねで付勢された状態で定着ベルト40を懸架する構成を有する。この状態で加圧ローラ54が回転すると、定着ベルト40は、発熱プレート60と接触した状態で発熱プレート60の表面をこすりながら回転する。励磁コイル45が励磁されて磁束が発生すると、定着ベルト40と発熱プレート60が同時に発熱し、昇温する。
本実施の形態によれば、実施の形態2で得られる効果に加えて、発熱ローラよりも熱容量が小さい発熱プレート60を実現しやすく、また、定着ベルト40の長さも短くしやすいため、ウォームアップ時間をより短縮することが可能となる。
(実施の形態4)
実施の形態4は、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
実施の形態4は、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
本実施の形態における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
図17は、本発明の実施の形態4に係る定着装置を示す断面図である。
図17に示す定着装置34bは、定着ローラ70を有する。定着ローラ70は、幅360mm、外径40mm、厚さ0.5mmの整磁金属からなる基材の上に、電磁誘導発熱を促進するための厚さ7μmの銅層、さらに、その表層にPFAからなる離型層をそれぞれ形成して構成されている。なお、この銅層は必ずしも必要ではないが、銅層を形成した場合は、整磁合金のみの場合よりも発熱効率を高くすることができるという効果がある。
本実施の形態に用いた整磁金属は、実施の形態2と同一の材料構成からなり、板材を丸めて溶接管を形成し、これを引き抜き加工により整形し、さらに表面を機械加工によりクラウン形状を付与したもので、加工後に、実施の形態2と同様、窒素ガス雰囲気下、800℃で1時間保持した後、200℃以下に徐冷するというアニール処理を施した結果、実施の形態2と同様、図13に示す磁気特性が得られた。
励磁手段としての励磁コイル71および芯材72は、実施の形態2における励磁コイル45および芯材46をほぼ相似形で拡大したものであり、基本的には同様の構成をとっている。
加圧ローラ73は、心金74の外側に表面硬度がJISA30度のシリコーンゴムで構成され、外径が40mm、幅が約320mmの回転自在に支持されたローラからなる。加圧ローラ73は、定着ローラ70に押圧され、記録用紙を挟み込む定着ニップ部を形成する。定着ローラ70は、両端を軸受けで回転自在に支持され、内部には銅製の半月状の遮蔽板75が固定配置されている。また、符号56は、実施の形態2と同様、温度センサである。温度センサ56は、定着ローラ70の表面に接触して定着ローラ70の温度を検知し、実施の形態2と同様、制御回路に定着ローラ70の温度情報を伝え、制御回路によって定着ローラ70の温度をコントロールするためのものである。
次に、上記のように構成された定着装置34bの動作について説明する。
常温で待機中の状態からまずウォームアップ動作に入る時は、図示しない駆動装置により定着ローラ70が図中矢印方向に回転を開始する。この時、同時に、励磁コイル71に励磁回路(図示しない)から20〜60kHzの交流電流が通電を開始され、整磁金属およびその表面の銅層に誘導電流が流れ、定着ローラ70が昇温を開始する。ウォームアップ時の定着ローラ70の回転速度は、記録用紙の定着動作時に比べて遅く設定しており、外周の速度で100mm/秒とした。励磁コイル71に投入する電力を1300Wとした場合、20秒弱で定着ローラ70の表面温度は定着温度である175℃に達し、ウォームアップ動作を完了した。
次に、複数回の定着動作を繰り返した後、A5縦サイズを通紙速度360mm/s、毎分65枚で500枚連続通紙した結果、用紙幅外の定着ローラ70の温度は195℃で飽和した。
小サイズ紙を連続して通紙すると用紙幅外の温度は急激に上昇するが、この部分の整磁金属の温度が、比透磁率が低下し始める温度Tsを超えると、実施の形態2の場合と同様、励磁コイル71によって形成される磁束は、整磁金属内を通過する経路Mから漏れて、整磁金属を透過して銅製の遮蔽板75を横切る破線で示した経路M’を通る割合が増加する。その結果、用紙幅外の定着ローラ70の発熱割合が急激に減少して、所定の発熱量以下になると昇温が停止する。
以上のように、発熱ローラ70に用いる整磁金属の磁気特性としては、キュリー温度を220℃以下に設定し、定着設定温度を比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い温度に設定したことにより、ウォームアップ時に、整磁金属は比透磁率が低下することがなく、迅速な立ち上がりを実現することができるとともに、連続通紙時の用紙幅外の過昇温を抑制することができ、ゴム材の寿命の劣化や、軸受け部材の損傷なども有効に防止することができる。
なお、本実施の形態では、整磁金属の外周面に7μmの銅層を設けたが、これは、定着ローラ70の発熱量を増加させ、より効率が良い加熱を行うためである。例えば、固有抵抗が70×10−6Ωcmの整磁金属を周波数25kHzの交流電流で電磁誘導加熱する場合、整磁金属の表皮抵抗は37×10−4〜45×10−4Ωとなる。この値は、誘導加熱しやすい鉄の表皮抵抗9.8×10−4Ωよりも過大であり、インダクタンスも大きいため、渦電流が鉄に比べて流れにくく発熱量が小さい。一方、発熱ローラ70の外周面に、比抵抗が10×10−6Ωcm程度のCuやAg、Al、Au、Atなどを用いた誘電性の非磁性層を設けると、発熱体としての抵抗値が低下し、発熱効率を高めることができる。非磁性層の肉厚は2〜30μm程度であることが望ましい。
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態4と同様、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
実施の形態5は、実施の形態4と同様、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
本実施の形態における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
図18は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す断面図であり、図19は、図18の定着装置の定着ローラ部を示す軸方向の断面図である。
図18および図19において、符号80は、定着ローラである。この定着ローラ80は、幅360mm、外径40mm、厚さ0.5mmの整磁金属からなる基材の内面に、電磁誘導発熱を促進するための厚さ5μmの銅層を設け、さらに、その外周面にPFAからなる離型層を形成して構成されている。
また、符号85は、励磁コイルユニットである。この励磁コイルユニット85は、実施の形態4と異なり、定着ローラ80の内側に配置されている。励磁コイルユニット85は、心金86の周囲に、励磁コイル87によって形成される磁束の通路となるコア材88、89を配置し、その上にリッツ線からなる励磁コイル87を軸方向にらせん状に巻いて構成されている。励磁コイルユニット85は、定着ローラ85とは独立して定着装置本体に取り付けられ、回転することはない。なお、実施の形態4と同様、符号56は温度センサ、符号73は加圧ローラである。
この構成においては、定着ローラ80および加圧ローラ73が回転しながら励磁コイル87が励磁回路により通電されると、図19に破線で示す交番磁束が発生し、この交番磁束が定着ローラ80の銅層および整磁金属を通過して定着ローラ80が発熱する。
本実施の形態においても、実施の形態2と同様の磁気特性を有する整磁金属を定着ローラ80に適用し、定着温度、整磁金属のキュリー点Tc、および整磁金属の比透磁率が低下し始める温度Tsをそれぞれ実施の形態2と同様に設定することで、効率の良い加熱と迅速なウォームアップを実現し、さらに、記録用紙幅外の過昇温を有効に防止するという効果を得ることができた。
なお、本発明においては、整磁材料のキュリー点Tcまたは比透磁率が低下し始める温度Tsが不明瞭な場合には、Tsを比透磁率が最大値から約5%低下した位置に、また、Tcを比透磁率が最小値から約5%高い位置にそれぞれ設定してもよい。
本明細書は、2005年3月15日出願の特願2005−072554および2005年10月13日出願の特願2005−298653に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明に係る定着装置は、過昇温を防止しつつウォームアップの時間を短縮するとともに、オフセットの発生を防止して良好な定着性能を実現することができ、複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置における、電磁誘導加熱方式によって未定着画像を記録材に加熱定着する定着装置として有用である。
また、本発明に係る定着装置は、電磁誘導加熱方式によって未定着画像を記録材に加熱定着する定着装置であり、電子写真方式または静電記録方式の複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に有用である。
本発明は、電子写真方式または静電記録方式の複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に用いられる定着装置に関し、特に、電磁誘導加熱方式によって未定着画像を記録材に加熱定着する定着装置およびこれに用いる加熱ローラ、ならびにこの定着装置を用いた画像形成装置に関する。
近年、複写機やファクシミリ、プリンタなどに用いられる定着装置に、電磁誘導加熱方式を採用することが盛んに検討されている。電磁誘導加熱方式の定着装置においては、励磁コイルに交流電流が印加され、この励磁コイルの周囲に交番磁束(生成消滅を繰り返す磁束)を発生する。そして、発生した交番磁束が導電体を透過することによって渦電流が発生し、この渦電流により導電体で生じた熱が未定着画像の定着に用いられる。
具体的には、例えば、2つのローラによって形成されるニップ部に導電体で生じた熱が伝達され、記録材がニップ部を通過する際に、ローラによる圧力と伝達された熱とによって記録材上のトナーが定着する。導電体で生じた熱をニップ部へ伝達するには、例えば、ニップ部を形成するローラそのものを導電体で形成したり、導電体とニップ部を形成するローラの1つとに薄膜のベルトを懸架したりすればよい。このとき、ニップ部へ伝達された熱はニップ部を通過する記録材や周囲の部材によって奪われるため、ニップ部へ熱を伝達するローラやベルトの温度は低下する。しかし、ニップ部を通過する記録材の幅は多様であるため、常にローラやベルトの幅全体から万遍なく熱が奪われるとは限らない。
すなわち、例えば、ニップ部を形成するローラそのものを導電体で形成するローラ方式を例にとると、導電体で形成された発熱ローラのローラ幅全体が常にニップ部で記録材に接するわけではなく、幅の狭い記録材がニップ部を通過する際には記録材に接することがない部分からは熱が奪われることはない。したがって、例えば、発熱ローラのローラ幅の両端部分などは温度が高くなりすぎることがある。そして、このような部分の温度がトナーの定着に適した定着温度よりも高くなった状態で幅の広い記録材を通過させると、一旦記録材に転写されたトナーが発熱ローラに再び付着するという現象(ホットオフセット)が生じる。
このような過昇温の問題に対しては、キュリー温度が設定された整磁金属を導電体として用いて自己温度制御を行うことが考えられる。キュリー温度とは、整磁金属が有する磁性の有無の閾値となる温度であり、通常温度では強磁性を有する整磁金属でも、キュリー温度を超えた温度では磁性が消失する。このような整磁金属の特性を利用した場合、例えば、特許文献1に開示されているように、発熱するフィルムの導電層の材料としてキュリー温度が定着温度に等しいものを使用することにより、キュリー温度以上での渦電流が減少して発熱が抑制される。
また、他の具体例としては、特許文献2に開示されているように、定着器の熱容量を極力低減し、ウォームアップ時間を短縮した構成として、ベルト定着と電磁誘導加熱を組み合わせた定着器がある。この構成では、励磁コイルによって発熱ローラが電磁誘導加熱され、発熱ローラで発生した熱を定着ベルトで記録紙(記録材)と接触する定着ニップ部まで搬送し、トナー像を溶融固着するようにしている。
一般に、定着器においては、上記のように、ニップ部を通過する記録紙が定着ベルトの熱を吸収するため、記録紙に接触した部分の定着ベルトや定着ローラの温度は低下する。
したがって、幅の狭い記録紙を連続して定着通紙すると、通紙幅の部分は温度制御されて一定の温度を保つが、用紙幅外の部分は、加熱はされるものの記録紙によって冷やされることがないため、異常に昇温し、その結果、軸受けが損傷したり加圧ローラや定着ローラが損傷したりするなど種々のトラブルを発生することがある。
したがって、幅の狭い記録紙を連続して定着通紙すると、通紙幅の部分は温度制御されて一定の温度を保つが、用紙幅外の部分は、加熱はされるものの記録紙によって冷やされることがないため、異常に昇温し、その結果、軸受けが損傷したり加圧ローラや定着ローラが損傷したりするなど種々のトラブルを発生することがある。
したがって、この場合においても、このような用紙幅外の過昇温の問題に対して、キュリー温度が所定温度に設定された整磁金属を発熱体として用いて自己温度制御を行うことが考えられる。例えば、特許文献3に開示されているように、被加熱材である加熱ローラの温度を所定の定着温度に制御した状態で幅の狭い用紙を連続して通紙する場合、用紙幅外の温度は定着温度以上に昇温するが、温度がキュリー温度近傍になるとその部分の発熱量が減少するため、用紙幅外の過昇温が自動的に抑制される。
特開平7−114276号公報
特開2002−82549号公報
特開2000−35724号公報
しかしながら、上記した従来の定着装置においては、次のような問題がある。
一般に、整磁金属は、磁束の浸透によって内部に発生する誘導電流により発熱するため、材料の電気特性の影響を大きく受ける。このため、抵抗値や結合時のインダクタンスの制限により、発熱部の形状に大きな制約があるという課題があった。
すなわち、抵抗値やインダクタンスを発熱部で一様にする必要から、誘導電流を阻害するような接合や、不均一または不連続な形状を取ることができず、均一な厚みの無端状にする必要性から、ベルト形状やローラ形状にする必要がある。
このとき、整磁金属は、磁束の浸透によって内部に発生する誘導電流により発熱するため、発熱の状態は材料の磁気特性の影響を大きく受ける。すなわち、キュリー温度近傍での磁気特性の変化が緩やかであると、設定温度制御での温度変化に対する追従も緩慢となり、記録材に転写されたトナーに熱が移動した場合の回復が遅く、高速の定着ができないという課題があった。
一方、定着を安定してオフセットなどを発生させることなく継続するためには、定着時の処理を抑える必要があり、高速化が困難であった。
温度の追従性を上げるために、制御設定温度に対して整磁材料のキュリー温度が5〜30℃高い材料を使用すると、定着処理時の温度変化に対する追従性が向上し、処理速度を向上させることはできるが、定着処理時以外の加熱状態では、温度が最適値よりも高くなるために、ホットオフセットが発生しやすくなるという課題や、トナーの使用温度幅を広く取る必要があるという課題もあった。
また、整磁金属を用いた発熱体は、設定温度制御での温度変化に対する追従が緩慢であるため、定着に必要な温度に達するまでのウォームアップに時間がかかるという課題があった。
すなわち、複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置は、電源投入時やスリープ状態からの復帰時に、定着装置をトナーの定着に必要な温度にまで昇温させるが、整磁金属の温度上昇が緩やかであるため、実際に画像形成が可能となるまでに長時間を要してしまう。また、定着装置の温度が十分に高くなっていない状態でトナーの定着を行うと
、記録材に転写されたトナーが十分に溶けずにコールドオフセットが生じる。
、記録材に転写されたトナーが十分に溶けずにコールドオフセットが生じる。
また、整磁金属のキュリー温度を高く設定すると、用紙幅外の温度はそれに従って高くなり、例えば、加熱ローラの温度が220℃程度以上になると、加圧ローラのゴムの耐久性の劣化や軸受けの損傷を招くことになる。
一方、キュリー温度を定着温度に近づけ過ぎると、ウォームアップ時に定着温度近傍で発熱量が減少し、ウォームアップ時間が長くなるという問題が発生する。
また、キュリー温度は高く設定しても、整磁金属の比透磁率の温度に対する変化の割合が緩やかであると、定着温度付近での発熱量が減少し、定着時のエネルギー効率が低下するとともに、上記のようにウォームアップ時間が長くなるという問題が発生する。
本発明の目的は、電磁加熱による過昇温を防止しつつウォームアップの時間を短縮するとともに、オフセットの発生を防止して良好かつ高速な定着を実現することができる定着装置を提供することである。
本発明の他の目的は、電磁誘導で加熱する発熱部材に整磁材料を用いた構成により、定着装置のウォームアップの時間を最大限短縮すると同時に、定着時のエネルギー効率を良好な状態に保ち、かつ、用紙幅外の過昇温を確実に防止し、良好な定着性能を実現することができる定着装置およびこれに用いる加熱ローラ、ならびにこれを用いた画像形成装置を提供することである。
本発明の定着装置は、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、記録材の幅方向に全域にわたる発熱体と、前記発熱体に対向して前記記録材の走行方向と直交する幅方向全域を励磁加熱する励磁コイルを備えた励磁手段と、前記発熱体で発生した熱を前記記録材に接触させるための加圧手段と、を有し、前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、連続通紙時の前記記録材が通過する部分に対応する前記発熱体の定着設定温度を前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い値に設定した、構成をとる。
本発明の加熱ローラは、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、かつ、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsを定着温度よりも高い温度に設定した定着装置に用いる電磁誘導加熱ローラである。
すなわち、本発明の一態様によれば、定着装置は、電圧が印加されると周囲に磁場を形成する励磁手段と、少なくとも一部が前記励磁手段によって形成される磁場内に配置され、前記磁場内に発生する磁束を内部に浸透させて発熱する発熱手段と、前記発熱手段で発生した熱を用いて記録材に担持形成された像を加熱定着する定着手段とを有し、前記発熱手段は、均一な厚みの無端状のベルトやローラなどの形状加工後に、600℃以上で焼鈍工程を経た、所定の温度以上になると磁性が無くなるキュリー温度を調整した磁性材料である整磁材料からなり、前記磁束の浸透によって内部に誘導電流が発生する導電性の透磁性導電層が、前記形状加工後にアニール処理された構成をとる。
これにより、前記磁性材料は、交番磁束の浸透によって、昇温が発生する際に、キュリー温度近傍での透磁率の低下が小さいため、定着装置における速やかな昇温を実現するとともに過昇温を防止しつつ、オフセットの発生を防止して良好な定着性能を実現することができる。
本発明の他の態様によれば、定着装置は、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料を含めてなる記録材幅方向に全域にわたる発熱体と、前記発熱体に対向して記録材走行方向と直交する幅方向全域を励磁加熱する励磁コイルを備えた励磁手段と、前記発熱体で発生した熱を記録材に接触させるための加圧手段とを具備し、かつ、前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、連続通紙時の記録用紙が通過する部分に対応する前記発熱体の定着設定温度を前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い値に設定した構成をとる。
さらに、好ましくは、前記整磁材料のキュリー温度Tcと、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsとは、Tc−Ts≦30℃となるように設定されている。
また、好ましくは、前記発熱体は、前記整磁材料の前記励磁コイル側に非磁性導電層を積層した構成を採り、また、前記整磁材料の厚さを0.1mm以上0.7mm以下に設定した構成をとる。
さらに、好ましくは、前記整磁材料は、整磁金属材料を塑性加工により薄肉の円筒状とした後、アニール処理を施して作成される。
また、好ましくは、前記発熱体を挟んで前記励磁コイルに対向して設けられた非磁性導電体を備え、前記発熱体の温度が上昇し透磁率が低下することにより、前記励磁手段によって形成された磁束が前記発熱体を透過し前記非磁性導電体の内部を貫通するように構成されている。
また、好ましくは、前記定着装置は、前記整磁材料の外周に接触懸架され、前記加圧手段と接触して前記記録材を挟持搬送しつつ前記記録材へ熱を供給する無端状の定着ベルトを備えたベルト定着器の構成をとる。
さらに、好ましくは、前記整磁材料は非回転の部材であり、前記定着ベルトは、この整磁材料と接触摺動して回転移動する構成をとる。
また、好ましくは、前記定着ベルトは、前記励磁手段によって自らが発熱する導電発熱層を有し、かつ、前記整磁材料は、自らは発熱しない磁路形成手段とした構成をとる。
さらに、好ましくは、前記定着装置は、記録用紙が通過する部分に対応する前記発熱体の温度を検知する定着温度検知手段と、前記定着温度検知手段の検知情報に基づいて前記励磁手段への電力供給を制御する制御手段とを有し、前記制御手段によって、前記記録用紙が通過する部分の定着温度を一定に制御するとともに、記録用紙幅外の温度が、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsと前記整磁材料のキュリー温度Tcの間の温度に自己温度制御されるように構成されている。
また、好ましくは、電磁誘導加熱ローラは、所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、前記整磁材料のキュリー温度Tcは220℃以下であり、かつ、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsは定着温度よりも高い温度に設定され、前記整磁材料のキュリー温度Tcと前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsとは、Tc−Ts≦30℃に設定されている。
これらの構成によれば、定着ローラまたは定着ベルトの温度は220℃を大きく上回って上昇することはなく、用紙幅外の過昇温が確実に防止でき、ゴム材の寿命の低下や、軸受けの損傷を発生することがない。また、抑制したい温度の近傍まで発熱体の比透磁率を
高い状態に保っておくことができるため、定着時の発熱効率が良く、かつ、ウォームアップ時に定着温度近傍で発熱量が低下してウォームアップ時間が長くなるということがなく、ウォームアップ時間の短縮と用紙幅外の過昇温防止を両立する使い勝手の良い定着装置を実現できる。
高い状態に保っておくことができるため、定着時の発熱効率が良く、かつ、ウォームアップ時に定着温度近傍で発熱量が低下してウォームアップ時間が長くなるということがなく、ウォームアップ時間の短縮と用紙幅外の過昇温防止を両立する使い勝手の良い定着装置を実現できる。
本発明によれば、均一な厚みの無端状のベルトやローラなどの形状加工後に、600℃以上で焼鈍工程を経た、所定の温度以上になると磁性が無くなるキュリー温度を調整した磁性材料を用いることにより、電磁加熱方式の定着装置において過昇温を防止しつつオフセットの発生を防止して良好な定着性能を実現することができる。
また、本発明によれば、幅の狭い記録材を連続通紙したときの記録材幅外の過昇温を確実に防止し、かつ、ウォームアップの時間を短縮するとともに、過昇温による定着装置の寿命低下やオフセットなどの発生も防止して良好な定着性能を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置における定着ローラの表面温度の時間変化を示す図であり、電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合の定着ローラ表面温度の時間変化を示している。
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置における定着ローラの表面温度の時間変化を示す図であり、電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合の定着ローラ表面温度の時間変化を示している。
電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合、発熱は、磁束の浸透によって金属内部に発生する誘導電流(渦電流)と、導電体としての整磁金属の電気抵抗とによるジュール熱として発生する。したがって、整磁金属材料を均一に加熱するためには、一方で、電気抵抗値を均一にする必要があり、そのためには、整磁金属材料が固有抵抗値を有するため、その厚さを均一にしなければならず、他方で、整磁金属材料の形状を、内部で発生する渦電流を阻害するような不連続の形状や、組成の変性層を形成しない無端形状にしなければならない。
本発明は、キュリー温度を有する磁性材料が交番する電磁場により発熱する際に、均一な厚さの無端状のベルトやローラなどの形状加工後に、アニールなどの熱処理を行うことにより、キュリー温度近傍で温度変化に対する磁気特性の変化が緩慢になるという、整磁材料が本来有する特性劣化を、回復することが可能であることを見出したことにある。
すなわち、軟磁性材料の磁気特性を改善するために、磁気焼鈍を行うことは知られているが、パーマロイでは1050〜1100℃、鉄やケイ素鉄では900〜950℃で行う必要がある。
しかしながら、電磁加熱方式の定着装置においては、昇温速度を上げるために、熱容量を低く抑える必要があるため、発熱部および熱の保持部材は軽量・薄肉化される。このため、上記の温度で磁気焼鈍を行うと、軽量・薄肉化したベルトやローラは変形を起こしてしまうため、その実施は困難であった。
本実施の形態では、磁気焼鈍温度よりも低い温度でアニール処理を行う。具体的には、例えば、600〜1100℃、好ましくは、800℃以上で1時間アニールなどの熱処理を行う。整磁材料には、例えば、FeとNiの合金、または、FeとNiとCrの合金が用いられる。
整磁材料を所望のキュリー温度に調整することは、上記の合金比率を変えることによって実現することができる。複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置の定着装置の場合、トナーの定着に必要な温度を160〜230℃に設定することが一般的であり、FeとNiの合金の場合、Niの含有率はおおむね35±5%のものを使用する。
次に、上記の組成に調整した整磁材料を用いて、均一な厚さの無端状のベルトやローラを作製する。加工の方法としては、整磁材料のみを使用する場合は、圧延した板材を溶接した後、金型による絞り加工を1回以上行うか、または、金型による絞り加工のみを1回以上行って上記作製を行う。
また、キュリー温度以下の低温時において磁気発熱効率を高めるために、整磁材料からなる透磁性導電層の外周面にメッキ、メタライジング、溶着、電着、蒸着、またはクラッド材による加工を行う。これにより、透磁性導電層を単体で励磁するよりも磁気的な結合が良好となり、磁気発熱効率が向上する。具体的には、例えば、透磁性導電層の励磁手段側に、導電性の非磁性導電層として、望ましくは比抵抗が10×10-6Ωcm程度の、CuやAg、Al、Au、Atなどを積層する。
透磁性導電層と非磁性導電層を合わせた導電層の肉厚は、2〜30μm程度が望ましい。整磁材料からなる透磁性導電層に非磁性材料からなる非磁性導電層を積層して励磁すると、キュリー温度以下の低温時には、透磁性導電層を単体で励磁するよりも磁気的な結合が良好となり、発熱が促進される。
次に、絞り加工などにより所望のサイズに形状加工した材料に対して、熱処理を行う。
熱処理を行う場合の雰囲気は、0.1mmT以下の真空、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、または、水素などを含む還元雰囲気が望ましい。
熱処理を行う場合の雰囲気は、0.1mmT以下の真空、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、または、水素などを含む還元雰囲気が望ましい。
本実施の形態では、窒素ガス置換後に0.1mmT以下の減圧雰囲気で800℃到達後、1時間保持を行った後、200℃以下に徐冷して、上記材料を取り出した。処理温度が500℃以下の場合には、効果を確認することができなかった。
そして、取り出した材料を、電子写真方式によるレーザプリンタや複写機などの画像形成装置において、感光体などを用いてまたは直接記録紙などの記録材上にトナーなどの印材を転写付着させ、これを加熱および加圧して定着する定着装置に用いて、発熱させる。
図1において、符号1の実線で示す曲線は、アニール処理した整磁材料の昇温曲線を示し、符号2の破線で示す曲線は、アニール未処理の整磁材料の昇温曲線を示している。図1は、それぞれの特性曲線を比較した図である。
図1に示すように、電磁加熱方式の定着装置において整磁金属を用いて発熱させる場合、上記アニール処理を行っていない場合(曲線2)は、60秒経過後も設定温度に達しておらず、キュリー温度近傍で磁気特性が緩やかに低下していくのに対して、本実施の形態で生成した材料では、つまり、上記アニール処理を行った場合(曲線1)は、設定した170℃におよそ25秒で速やかに到達する。
図2から図6は、それぞれ、本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す断面図である。ここでは、加熱ローラ(および加熱ベルト)を電子写真方式によるレーザプリンタや複写機などの画像形成装置の定着装置に適用した場合に、感光体などを用いてまたは直接記録紙などの記録材上にトナーなどの印材を転写付着させ、これを加熱および加圧して定着する定着装置を例にとって説明する。
図2に示す定着装置は、発熱源としてのIH(induction heating)コイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱する。図2の定着装置では、この発熱ローラ3で発生する熱によってトナーなどの印材9を加熱・加圧する構成となっている。
このとき、発熱ローラ3は、樹脂層をかぶせて一体化した構成をとる。印材9を加熱・加圧する電子写真方式による画像形成装置(レーザプリンタや複写機など)の場合、樹脂層には、印材9との離型性を得るために、最外層の樹脂層として、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂その他のゴムを用いてもよい。また、耐摩耗性や離型性を高めるためには、PTFEやPFA、FEPなどの樹脂やゴムを単独でまたは混合して発熱ローラ3の外周面を被覆することが望ましい。
また、印材9との離型性を高めるため、上記最外層の樹脂と発熱ローラ3との間に、例えば、低硬度のシリコーンゴムなどの材料によって成形された蓄熱作用を有する柔軟層を形成することも望ましい。
一方、加圧ローラ7は、軸心に樹脂層をかぶせて一体化した構成となっている。例えば、加圧ローラ7の樹脂層は、硬度がJISA30度のシリコーンゴムなどの熱伝導性が小
さい材料によって成形されている。
さい材料によって成形されている。
加圧ローラ7の材料としては、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂その他のゴムを用いてよい。また、耐摩耗性や離型性を高めるために、PTFEやPFA、FEPなどの樹脂やゴムを単独でまたは混合して加圧ローラ7の外周面を被覆することが望ましい。
また、加圧ローラ7は、記録紙などの記録材8とこの上の印材9に熱を与えるだけでなく、加圧する必要から、機械的剛性を有する金属材料として、鉄や鉄の合金、ステンレスやアルミニウムやこれらの合金、または、高剛性樹脂材料としてPEEK材やフェノール樹脂、もしくは、補強材としてガラス繊維や炭素繊維を用いた複合材が用いられる。これらの材料は、熱容量を低くするために、中空のパイプ形状や、断熱性に優れた樹脂の複合材料を用いることで、エネルギーロスを大幅に改善することができる。
図3に示す定着装置は、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3の外層側に、導電性の非磁性層10を有する。
この定着装置は、図2に示す定着装置と同様に、発熱源としてのIHコイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱する。このとき、例えば、固有抵抗が70×10-6Ωcm(オームセンチメートル)の整磁金属を周波数が25kHz(キロヘルツ)の交流電流で電磁誘導加熱する場合、整磁金属の表皮抵抗は、37×10-4〜45×10-4Ω(オーム)となる。
この値は誘導加熱しやすい鉄の表皮抵抗9.8×10-4Ωよりも過大であり、インダクタンスも大きいため、このままでは渦電流が流れにくく、発熱量は小さい。しかし、発熱ローラ3の外周面付近に、比抵抗が10×10-6Ωcm程度のCuやAg、Al、Au、Atなどを用いた導電性の非磁性層10が存在することにより、発熱ローラ3としての抵抗値が低下し、発熱効率を高めることができる。導電性の非磁性層10の肉厚は、2〜30μm程度であることが望ましい。
図4に示す定着装置は、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3の内層側に、導電性の非磁性板11を有する。
この定着装置は、図2および図3に示す定着装置と同様に、発熱源としてのIHコイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱する。発熱によりやがて発熱ローラ3がキュリー温度に達すると、透磁率が低下し、高周波交番磁場による磁束は発熱ローラ3を透過する。
発熱ローラ3の厚さが薄い場合は、厚さ方向に透過する磁束により発生する渦電流が一定であるため、電流値も大きくなる。そのため、ジュール熱による発熱が継続する。
しかし、図4に示すように、導電性の非磁性板11を高周波電磁波発生側との間で発熱ローラ3を挟むように配置すると、透過した磁束は、導電性の非磁性板11において渦電流を発生させ、透過した磁束を打ち消す磁束が発生する。発生した磁束は、発熱ローラ3を透過した磁束を打ち消すため、発熱の継続を抑え、温度制御を実現することができる。
導電性の非磁性板11は、発熱ローラ3の内側に形成されていてもよいが、発熱ローラ3の熱容量を低くし、昇温時間を短くするためには、図4に示すように、発熱ローラ3との間に空間(空隙)を有していることが望ましい。
図5に示す定着装置は、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3の内層側に、導電性の非磁性板11と、断熱層13および軸心12からなる内部ローラとを有する。
この定着装置は、図2から図4に示す定着装置と同様に、発熱源としてのIHコイル5により発生させた高周波数の電磁波(交番磁場)を、IH磁気コア4により効率的に磁気回路を制御して、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3に照射する。照射された交番磁場は、発熱ローラ3の整磁材料の内部に浸透する。
このとき、高周波交番磁場により、キュリー温度以下では磁性材料内に浸透した磁束によって渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ローラ3が発熱し、この熱によって印材9を加熱・加圧する構成となっている。
このとき、加圧を高くしようとすると、発熱ローラ3の厚さが薄い場合には、加圧を均一に行うことができない。そこで、発熱ローラ3の内層側に設けた、断熱層13および軸心12からなる第2の加圧ローラによって加圧を行うことにより、均一な加圧を実現することができる。
上記内部ローラは、高い加圧を実現する必要から、軸心12には、機械的剛性を有する金属材料として、鉄や鉄の合金、ステンレスやアルミニウムやこれらの合金、または、高剛性樹脂材料としてPEEK材やフェノール樹脂、もしくは、補強材としてガラス繊維や炭素繊維を用いた複合材が用いられる。これらの材料は、熱容量を低くするために、中空のパイプ形状や、断熱性に優れた樹脂の複合材料を用いることで、エネルギーロスを大幅に改善することができる。
図6に示す定着装置は、さらに過昇温を防止しつつウォームアップの時間を短縮するために、誘導発熱する発熱体である発熱ローラ3と加圧ローラ7の間に発熱ベルト14を懸架し、断熱層13および軸心12からなる第2の加圧ローラを発熱ローラ3の外側に設けた構成を有する。
図6の構成によれば、発熱ローラ3を小径にすることで、熱容量を小さくすることができるとともに、IH磁気コア4やIHコイル5を小型化することができ、定着装置の小型化を実現することができる。
発熱ベルト14には、磁性材料としてNiやFeを用いることが、発熱効率を高めるために有効であるが、非磁性のステンレスを用いることもできる。上記の金属材料を発熱ベルト14の基材に用いる場合、比抵抗が10×10-6Ωcm程度のCuやAg、Al、Au、Atなどの導電性の非磁性層がベルト基材に密接して存在することにより、発熱ベルト14としての抵抗値が低下し、発熱効率を高めることができる。
また、発熱ベルト14の基材として耐熱性のポリイミド樹脂を用いることもできる。樹
脂ベルトとして用いる場合は、電磁気特性を有することが望ましく、電気的に導電性を与えるためにAg、Al、Au、Atなどの導電性材料を添加することにより、照射された高周波数の電磁波(交番磁場)が、発熱ベルト14を通過する際に、磁束により渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ベルト14も発熱し、発熱効率を高めることができる。発熱ベルト14の最外層には、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂その他のゴムを用いてもよい。
脂ベルトとして用いる場合は、電磁気特性を有することが望ましく、電気的に導電性を与えるためにAg、Al、Au、Atなどの導電性材料を添加することにより、照射された高周波数の電磁波(交番磁場)が、発熱ベルト14を通過する際に、磁束により渦電流が生じ、この渦電流によるジュール熱によって発熱ベルト14も発熱し、発熱効率を高めることができる。発熱ベルト14の最外層には、例えば、フッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂その他のゴムを用いてもよい。
また、耐摩耗性や離型性を高めるために、PTFEやPFA、FEPなどの樹脂やゴムを単独でまたは混合して発熱ベルト14の外周面を被覆することが望ましい。また、印材9との離型性を高めるため、上記最外層の樹脂と基材との間に、例えば、低硬度のシリコーンゴムなどの材料によって成形された蓄熱作用を有する柔軟層を形性することも望ましい。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る定着装置を用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図7は、本発明の実施の形態2に係る定着装置を用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図7に示すように、この画像形成装置の画像形成装置本体20には、電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)21が回転自在に配設されている。感光ドラム21は、図中の矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器22によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザビームスキャナ23は、図示しない画像読取装置やコンピュータなどのホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビーム24を出力する。
一様に帯電された感光ドラム21の表面は、レーザビーム24によって走査露光される。これにより、感光ドラム21の露光部分は、電位の絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム21の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器25のマイナスに帯電したトナーによって反転現像され、顕像(トナー像)化される。
現像器25は、回転駆動される現像ローラ26を備えている。現像ローラ26は、感光ドラム21と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。現像ローラ26には、その絶対値が感光ドラム21の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。これにより、現像ローラ26上のトナーが、感光ドラム21の明電位VLの部分にのみ転写されて、静電潜像が顕像化され、感光ドラム21上に未定着トナー像(以下単に「トナー像」という)27が形成される。
一方、給紙部28からは、記録材としての記録紙29が給送ローラ30によって1枚ずつ給送される。給送された記録紙29は、一対のレジストローラ31を経て、感光ドラム21と転写ローラ32とのニップ部に、感光ドラム21の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム21上のトナー像27が、転写バイアスが印加された転写ローラ32により、記録紙29に転写される。
このようにしてトナー像27が形成担持された記録紙29は、記録紙ガイド33により案内されて感光ドラム21から分離された後、加熱定着装置(以下単に「定着装置」という)34の定着部位に向けて搬送される。そして、この定着部位に搬送された記録紙29に、定着装置34によってトナー像27が加熱定着される。
トナー像27が加熱定着された記録紙29は、定着装置34を通過した後、画像形成装
置本体20の外部に配設された排紙トレイ35上に排出される。
置本体20の外部に配設された排紙トレイ35上に排出される。
記録紙29が分離された後の感光ドラム21は、その表面の転写残トナーなどの残留物がクリーニング装置34によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
図8は、本発明の実施の形態2に係る定着装置の構成を示す断面図である。
薄肉の定着ベルト40は、基材41がポリイミド樹脂からなるエンドレスのベルトであり、A3記録用として、約340mmの幅で、直径が47mm、厚さが70μmである。この定着ベルト40の断面を図9に示す。図9に示すように、基材41の上には電磁誘導で発熱する層として、厚さ約10μmの銅材からなる導電層42が形成されている。また、導電層42の表面には、トナー画像との離型性を付与するため、フッ素樹脂からなる厚さ25μmの離型層43が被覆されている。
なお、導電層42は、樹脂基材に銀などの低抵抗粉末材料を分散した導電層を塗布することで形成してもよい。また、基材41の材質としては、電鋳で製作した厚さ約40μm程度のニッケルなどのごく薄い金属を用いることもできる。この場合は、ニッケルが発熱機能を有するため、上記の導電層42はなくてもよい。金属基材としては、ニッケルのほかに鉄やステンレス材、コバルトニッケル合金、鉄ニッケル合金などの金属があるが、非磁性のSUS材などでは、上記と同様に、銅材からなる導電層42を形成するのが好ましい。
また、表面の離型層43は、PTFEやPFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの離型性が良好な樹脂やゴムを単独でまたは混合して被覆することにより形成してもよい。モノクロ画像の定着用としては、離型性のみを確保すればよいが、カラー画像の定着用として用いる場合には、弾性を付与するのが望ましく、この場合には、離型層43の下層にやや厚い(100〜300μm)ゴム層を形成する必要がある。
符号45は、励磁手段としての励磁コイルである。この励磁コイル45は、細い線を束ねたリッツ線を使用し、断面形状は、図8に示すように、定着ベルト40を覆うように形成され、中心と背面の一部には、フェライトで構成された芯材46が設置されている。芯材46は、パーマロイなどの高透磁率の材料を用いることもできる。図10は、芯材46と励磁コイル45の構成を定着ベルト40の方から見た側面図である。励磁コイル45は、図10に示すように、中心の芯材46に沿って発熱ローラ50のほぼ全長にわたって形成され、背面の芯材46は、一部のみに存在し、外部に漏れる磁束を捕捉するように構成されている。励磁コイル45には、励磁回路(図示しない)から20〜60kHzの交流電流で最大1200W程度の電力が印加される。
次に、本実施の形態の定着装置について詳細に説明する。
再び図8に戻り、定着ベルト40は、表面が低硬度(JISA30度)の弾力性ある発泡体のシリコーンゴムで構成された直径34mmの低熱伝導性の定着ローラ51と、後述する合金からなる直径20mmの発熱ローラ50との間に所定の張力をもって懸架され、図中の矢印B方向に回転移動可能となっている。
発熱ローラ50は、厚さ0.2mmの鉄・ニッケルの合金からなる整磁金属で構成されている。発熱ローラ50は、その比透磁率の温度特性が図13に示す温度特性になるように鉄とニッケルの配合割合が調整されて製造されている。本実施の形態の整磁合金は、ニッケルの割合が30数%である。図13に示すように、この発熱ローラ50のキュリー温度Tcは、200℃であり、常温では強い磁性を示すが、184℃で比透磁率が低下し始
め190℃を超えると急激に比透磁率が低下し、キュリー温度Tc以上で非磁性となる。なお、図13に示す比透磁率の温度特性は、磁場の強さが45A/mで30kHzの交流磁場条件下での測定値を示す。
め190℃を超えると急激に比透磁率が低下し、キュリー温度Tc以上で非磁性となる。なお、図13に示す比透磁率の温度特性は、磁場の強さが45A/mで30kHzの交流磁場条件下での測定値を示す。
発熱ローラ50の内部には、端面が発熱ローラ50と対向する円弧状の銅板53が、発熱ローラ幅のほぼ全域にわたって設けられている。銅板53は、端面を励磁コイル45の左右の巻線のほぼ中央部にそれぞれ対向させ、発熱ローラ50とは約0.5mmの間隔をあけて固定配置される。
図8において、加圧ローラ54は、表面が硬度JISA65度のシリコーンゴムで構成されている。加圧ローラ54は、図8に示すように、定着ベルト40を介して定着ローラ51に圧接してニップ部を形成している。加圧ローラ54は、その状態で金属軸55の周りで回転可能に支持されている。加圧ローラ54は、図示しない装置本体の駆動手段によって図中の矢印F方向に回転駆動され、これに伴って定着ベルト40、定着ローラ51、発熱ローラ50がそれぞれ従動して回転することにより、定着動作が行われる。なお、励磁コイル45と銅板53は、それぞれ、固定位置にあり、動かない。
加圧ローラ54の材質は、他のフッ素ゴムやフッ素樹脂などの耐熱性樹脂やゴムで構成してもよい。また、加圧ローラ54の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFAやPTFE、FEPなどの樹脂またはゴムを単独でまたは混合して被覆してもよい。熱の放散を防ぐため、加圧ローラ54は、熱伝導性が小さい材料で構成されることが望ましい。
符号56は、温度センサである。この温度センサ56は、定着ベルト40の幅方向のほぼ中央でかつ定着ニップ部の入口側に位置し、定着ベルト40の温度を検知し、用紙通紙部の温度を図示しない制御回路によって常時所定の一定温度に制御するためのものである。
次いで、上記のように構成された定着装置34の動作について説明する。
まず、定着装置34のウォームアップ動作について説明する。
画像形成装置の電源切断時やスリープ状態時は、通常、定着装置34の発熱ローラ50の温度が室温程度にまで低下している。この状態から印字を行うために電源が投入されたりスリープ状態から復帰したりする際には、まず、加圧ローラ54の回転を開始して定着ベルト40、定着ローラ51、および発熱ローラ50がそれぞれ回転した状態で、同時に励磁コイル45に励磁電流を流す。励磁コイル45が通電されると、励磁コイル45に対向する部分の定着ベルト40の導電層42および発熱ローラ50にそれぞれ渦電流が発生し、その部分が発熱する。定着ベルト40の回転と励磁コイル45の通電を継続することで、定着ベルト40全体が昇温を続ける。このとき、制御回路は、温度センサ56により定着ベルト40の温度を常時監視し続け、目標温度までほぼフルパワーで励磁コイル45に通電を継続する。そして、定着ベルト40の温度がトナー像27の定着に適した定着温度に到達すると、制御回路は、出力を制御して定着ベルト40の温度を定着温度に保つようにフィードバック制御を行う。本実施の形態では、定着温度を170℃に設定し、励磁コイル45に1200Wの電力を投入することで、最大用紙幅(A3)全幅を常温25℃から約12秒で定着温度まで昇温させることができた。
図11は、図8に示す定着装置34の励磁コイル45と発熱ローラ50の部分を拡大した図であり、励磁コイル45が通電された時に形成される磁路を示している。
常温から定着温度170℃まで昇温させるウォームアップ時において、発熱ローラ50は、図13に示すように強磁性状態を保つため、励磁コイル45が発生する磁束は、図11の実線Mで示すように、芯材46から定着ベルト40を貫通して発熱ローラ50に入り、発熱ローラ50内を通って芯材46に入り励磁コイル45を周回する。したがって、昇温の間中、励磁コイル45と発熱ローラ50の間は常時強い磁気結合が得られ、安定した最も大きな発熱が得られ、短時間でのウォームアップが可能である。
次に、連続して通紙をする場合の動作について説明する。
図12は、サイズが異なる用紙を連続通紙した場合の定着ベルト幅方向の温度分布を示す図である。
最大用紙幅(本実施の形態では、A3サイズ)を連続通紙する場合は、図12に破線で示すように、A3幅全体がほぼ均一な170℃に保たれる。これは、定着ベルトの幅全体にわたって記録用紙が接触し、全面を常時均一に冷却するためである。
一方、サイズが小さいA4縦を連続通紙すると、用紙が接触するA4幅以内では、温度センサ56と制御回路により定着ベルト40は170℃の一定温度に制御されるが、A4幅の外側は、用紙が接触することはなく、用紙によって冷却されることはない。このとき、電力は幅全体に投入されているため、その結果、A4幅の外側では、急激に定着ベルト40の温度が上昇していく。
また、これと同時に、A4サイズの外側に対応する領域の発熱ローラ50の温度も上昇し、キュリー温度に近づく。発熱ローラ50は、自身の温度が、透磁率が変化し始める温度Tsを超えてキュリー温度に近づくと、その部分の透磁率が急激に低下して磁性を失い、その結果、励磁コイル45によって形成されるA4用紙幅の外側領域の磁束は、図11に示す実線Mから破線M’に変化してくる。磁束M’は、発熱ローラ50と低抵抗の銅板53を貫通して励磁コイル45を周回するが、銅板53を貫通すると、銅板53に強い渦電流が流れるため、大きく減衰する。
その結果、用紙幅外の領域の単位面積あたりの発熱量が大幅に抑えられ、この領域の放熱量と発熱量がバランスする温度で定着ベルト40の昇温が停止し、自己温度制御機能が働いて過昇温が防止される。本実施の形態では、毎分32枚の連続出力時に、図12の実線で示すように、定着ベルト40の昇温を195℃に抑えることができた。
なお、本実施の形態では、A4縦サイズの通紙のみを示したが、用紙のサイズはこれに限定されることはなく、あらゆるサイズでこの原理は働き、自動的に用紙幅外の過昇温が抑えられることは言うまでもない。この場合、温度センサ56の位置は、使用するすべての用紙が通過する位置に対応させて配置しておくことも言うまでもない。
なお、用紙幅外が自己温度制御される温度は、特に、連続通紙の速度と用紙の厚さに影響される。これは、励磁コイル45全体に投入される電力がこれらの条件によって大きく左右されるからであるが、ほとんどの場合、キュリー温度以下に過昇温を抑制することができるため、ゴム材の寿命の低下や、軸受けの損傷を発生することもなく、信頼性の高い定着器を実現することができる。
また、本実施の形態では、発熱ローラ50の内部に銅板53を配置した。この銅板53は、用紙幅外の磁束が発熱ローラ50内を貫通したときに、その磁束を減衰させる方向の渦電流を発生させ、用紙幅外の発熱をより効果的に抑制するためのものであるが、必ずしもこの銅板53は必要というものではない。銅板53はなくても、発熱ローラ50が非磁
性に近づき励磁コイル45との磁気結合が弱くなると、その部分の磁束が減少し、発熱が減少するため、自己温度制御される温度は銅板53がある場合よりも高くなるものの、過昇温は有効に防止することができる。
性に近づき励磁コイル45との磁気結合が弱くなると、その部分の磁束が減少し、発熱が減少するため、自己温度制御される温度は銅板53がある場合よりも高くなるものの、過昇温は有効に防止することができる。
なお、銅板53は銅材に限定されるものではなく、アルミニウムや銀など固有抵抗が小さくて渦電流が発生しやすく、かつ、所定の厚さを確保して抵抗が小さく発熱しにくい構成であればよい。
次に、本実施の形態に用いた発熱ローラ50の磁気特性と、ウォームアップ時間および小サイズ紙連続通紙時の過昇温との関係について詳細に説明する。
図14は、本実施の形態に用いた発熱ローラ50のアニール処理前の比透磁率の温度特性を示す図である。なお、図13の場合と同様、比透磁率の温度特性は、磁場の強さが45A/mで、30kHzの交流磁場の条件下での測定値を示す。
ここでは、発熱ローラ50は、厚さ約1mmの板材からなる整磁金属を深絞り加工によりカップ状とし、これをスピニング加工により薄肉化し、厚さ0.2mm、長さ330mmのパイプ形状とした。加工法は、もちろんこれに限定されるものではなく、しごきにより管材を薄肉化するアイアニング加工や、溶接管を使ってこれをしごき加工して薄肉にする方法などが実用化されている。発熱ローラ50は、熱容量を小さくするために肉厚を薄くし、しかも、全域にわたって磁気特性や形状が均一なことが必要である。また、発熱ローラ50は、材料が比較的高価であるため、切削加工などを用いず、塑性加工によって形成するのが好ましい。しかし、整磁金属に大きな塑性変形を与えると、その磁気特性が大きく変化してしまう。
図14は、上記スピニング加工を施した直後の特性である。図14に示すように、比透磁率は、Tsで示す158℃近辺から低下を始め、キュリー温度Tc=212℃でほぼ非磁性となる。なお、比透磁率が半減する値Thは196℃であった。本実施の形態の加熱ローラ50は、上記加工直後の発熱ローラ50を、窒素ガス雰囲気下、800℃で、1時間保持した後、200℃以下に徐冷する、というアニール処理を施したものである。図13は、そのアニール処理後の磁気特性を示している。図14と比較してわかるように、アニール処理後は、比透磁率の変化が急峻になり、半減値Thは194℃で、アニール処理前とほぼ同じであるが、キュリー温度Tcは200℃、比透磁率が低下し始める温度Tsは184℃となった。
なお、アニール処理としては、600〜1100℃、好ましくは800℃以上で1時間、処理時の雰囲気は0.1mmT以下の真空、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、または、水素などを含む還元雰囲気が望ましい。処理温度が500℃以下の場合、効果を確認することができなかった。
また、キュリー温度を所望の温度に調整するためには、FeとNiの合金比率を変えればよいことは言うまでもない。
次に、このアニール処理前後の発熱ローラを用いた場合のウォームアップ時間の比較を図15に示す。
図15において、本発明に係るアニール処理後の発熱ローラを用いた場合の定着ベルトのウォームアップ特性は実線で、アニール処理前の発熱ローラを用いた場合の定着ベルトのウォームアップ特性は破線でそれぞれ示している。実線で示す本発明に係るアニール処理後の発熱ローラでは、上記のように、12秒で170℃に到達したが、破線で示すアニ
ール処理前の発熱ローラでは、150℃近辺から昇温カーブが緩やかになり、170℃に到達するまでに約17秒を要した。これは、アニール処理前の発熱ローラでは、160℃近辺の早い段階で磁気特性の変化が現れるため、強い磁場のもとでは早い段階から図11に破線で示す発熱ローラ50を貫通する磁束M’が増加し始め、定着ベルト40や発熱ローラ50と励磁コイル45との磁気結合が弱まり、定着ベルト40や発熱ローラ50の発熱効率が低下するためであると考えられる。一方、アニール処理を施した発熱ローラは、180℃になっても強磁性状態を安定して保っているため、貫通する磁束M’の発生が非常に少なく、定着ベルト40は、170℃まで安定した昇温カーブを得ることができる。
ール処理前の発熱ローラでは、150℃近辺から昇温カーブが緩やかになり、170℃に到達するまでに約17秒を要した。これは、アニール処理前の発熱ローラでは、160℃近辺の早い段階で磁気特性の変化が現れるため、強い磁場のもとでは早い段階から図11に破線で示す発熱ローラ50を貫通する磁束M’が増加し始め、定着ベルト40や発熱ローラ50と励磁コイル45との磁気結合が弱まり、定着ベルト40や発熱ローラ50の発熱効率が低下するためであると考えられる。一方、アニール処理を施した発熱ローラは、180℃になっても強磁性状態を安定して保っているため、貫通する磁束M’の発生が非常に少なく、定着ベルト40は、170℃まで安定した昇温カーブを得ることができる。
次に、この両者を用いてA4縦サイズ紙の連続通紙を行った結果、同一の条件下でアニール処理後の発熱ローラ50を用いた場合、用紙幅外の過昇温は195℃以下であったが、アニール処理前の発熱ローラを用いた場合は、210℃近くまで上昇した。これは、通紙領域内の温調が170℃であり、この時すでに発熱ローラ50の全域で透過磁束M’の割合が増加しており、励磁加熱される部分(定着ベルト40の導電層42と発熱ローラ50)の発熱効率が低下して、結果として温調に必要な電力が増大したこと、および、通紙部と非通紙部の差がつきにくくなったことが原因であると考えられる。
以上の比較の結果から、立ち上げ時のウォームアップ時間を短くするためには、キュリー温度ではなく、比透磁率が低下し始める温度Tsが、できるだけ高く、定着温度から高温側に離れている方が良いことがわかる。また、小サイズ紙を連続通紙する場合の用紙幅外の過昇温についても、同様に、定着設定温度と比透磁率が低下し始める温度Tsとが離れており、かつ、急峻に比透磁率の変化が起こることが望ましい。
一般に、定着装置に用いる定着温度は1つに限定されるものではなく、使用する用紙の厚さや種類などによって複数の設定がなされている場合が多い。
厚紙やOHPを出力する場合は、本実施の形態においても、通常の用紙を用いる場合の設定温度170℃よりも10℃高い180℃の設定がなされている(ただし、この場合はプロセス速度は半速の場合が多い)。この条件下で図14に示すアニール処理前の特性の発熱ローラを用いると、通紙領域内においてもすでに透磁率が低下しており、その結果、全体の発熱効率が悪く、用紙幅外の過昇温が定着温度を170℃に設定した場合よりも大幅に高くなる。
以上のことから、比透磁率が低下し始める温度Tsは、定着設定温度よりもできるだけ高い温度に設定することが望ましいが、これに合わせてキュリー温度を高く設定すると、用紙幅外の過昇温が高くなり過ぎ、好ましくない。キュリー温度としては、定着ベルト40や加圧ローラ54に用いられるシリコーンゴム材の耐熱温度を考慮して、220℃以下のできるだけ低い温度であることが望ましい。
以上のように、発熱ローラ50に用いる整磁金属の磁気特性としては、キュリー温度を220℃以下に設定し、かつ、このキュリー温度と比透磁率が降下し始める温度Tsとの差を望ましくは30℃以下として、比透磁率が急峻な変化をする材料を用い、定着設定温度を比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い温度に設定することにより、ウォームアップ時間の短縮、連続通紙時の加熱効率の確保、および用紙幅外の過昇温の抑制をすべて両立させることができ、ゴム材の寿命の劣化や、軸受け部材の損傷なども有効に防止することができる。
なお、本実施の形態では、整磁金属には鉄やニッケル合金を用いたが、発熱ローラ50としては、必ずしもこれらの材料に限定されるものではなく、明確なキュリー温度を有する軟磁性材料が好ましく、鉄やニッケルにクロムを含有させたものや、絶縁材であるMn
Znフェライトなどの使用も可能である。絶縁材の場合には発熱ローラ自身は発熱しないが、誘導加熱される定着ベルト40の導電層42を通過する磁束を制御することができるため、本実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。なお、絶縁材の場合には、定着ベルトと整磁材料との接触を十分に確保し、定着ベルトと整磁材料の温度の乖離を極力少なくすることが重要であるが、これは整磁材料の熱容量を極力小さくすることによって実現可能である。また、絶縁材を用いた場合には、小サイズ紙を連続通紙した場合の通紙領域外の発熱は、整磁材料での渦電流の発生がないため、より小さく抑えられ、過昇温防止に効果的である。
Znフェライトなどの使用も可能である。絶縁材の場合には発熱ローラ自身は発熱しないが、誘導加熱される定着ベルト40の導電層42を通過する磁束を制御することができるため、本実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。なお、絶縁材の場合には、定着ベルトと整磁材料との接触を十分に確保し、定着ベルトと整磁材料の温度の乖離を極力少なくすることが重要であるが、これは整磁材料の熱容量を極力小さくすることによって実現可能である。また、絶縁材を用いた場合には、小サイズ紙を連続通紙した場合の通紙領域外の発熱は、整磁材料での渦電流の発生がないため、より小さく抑えられ、過昇温防止に効果的である。
さらに、本実施の形態では、定着ベルト40に誘導加熱される導電層42を設けているが、これに限定されるものではなく、定着ベルト40には発熱機能を持たせず、発熱ローラ50のみを発熱させ、その熱を定着ベルト40に伝達して加熱する構成をとることも可能である。この場合には、定着ベルトの厚さや熱伝導率、通紙速度などにもよるが、熱の伝達・供給のために定着ベルト40の温度よりも発熱ローラ50の温度が若干高くなる。したがって、このような構成においては、定着ベルト40と発熱ローラ50の温度差を考慮して、比透磁率が降下し始める温度Tsを定着温度設定時の発熱ローラ50の温度よりも高い温度に設定すればよい。
(実施の形態3)
実施の形態3における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
実施の形態3における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
図16は、本発明の実施の形態3に係る定着装置を示す断面図である。本実施の形態の定着装置34aは、図8に示す実施の形態2の定着装置34とほぼ同様の構成を有し、実施の形態2の定着装置34と異なる点は、発熱ローラ50が発熱プレート60に置き換えられた点である。なお、図16において図8と同じ符号を付した構成要素は、図8と同じ機能を有するため、その説明を省略する。
図16において、発熱プレート60は、鉄・ニッケル合金からなる整磁金属であり、実施の形態2の発熱ローラ50と同様の磁気特性を有する厚さ0.3mmの円弧状のプレートである。この発熱プレート60は、回転することはなく、定着ローラ51から遠ざかる方向にばねで付勢された状態で定着ベルト40を懸架する構成を有する。この状態で加圧ローラ54が回転すると、定着ベルト40は、発熱プレート60と接触した状態で発熱プレート60の表面をこすりながら回転する。励磁コイル45が励磁されて磁束が発生すると、定着ベルト40と発熱プレート60が同時に発熱し、昇温する。
本実施の形態によれば、実施の形態2で得られる効果に加えて、発熱ローラよりも熱容量が小さい発熱プレート60を実現しやすく、また、定着ベルト40の長さも短くしやすいため、ウォームアップ時間をより短縮することが可能となる。
(実施の形態4)
実施の形態4は、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
実施の形態4は、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
本実施の形態における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
図17は、本発明の実施の形態4に係る定着装置を示す断面図である。
図17に示す定着装置34bは、定着ローラ70を有する。定着ローラ70は、幅360mm、外径40mm、厚さ0.5mmの整磁金属からなる基材の上に、電磁誘導発熱を促進するための厚さ7μmの銅層、さらに、その表層にPFAからなる離型層をそれぞれ形成して構成されている。なお、この銅層は必ずしも必要ではないが、銅層を形成した場合は、整磁合金のみの場合よりも発熱効率を高くすることができるという効果がある。
本実施の形態に用いた整磁金属は、実施の形態2と同一の材料構成からなり、板材を丸めて溶接管を形成し、これを引き抜き加工により整形し、さらに表面を機械加工によりクラウン形状を付与したもので、加工後に、実施の形態2と同様、窒素ガス雰囲気下、800℃で1時間保持した後、200℃以下に徐冷するというアニール処理を施した結果、実施の形態2と同様、図13に示す磁気特性が得られた。
励磁手段としての励磁コイル71および芯材72は、実施の形態2における励磁コイル45および芯材46をほぼ相似形で拡大したものであり、基本的には同様の構成をとっている。
加圧ローラ73は、心金74の外側に表面硬度がJISA30度のシリコーンゴムで構成され、外径が40mm、幅が約320mmの回転自在に支持されたローラからなる。加圧ローラ73は、定着ローラ70に押圧され、記録用紙を挟み込む定着ニップ部を形成する。定着ローラ70は、両端を軸受けで回転自在に支持され、内部には銅製の半月状の遮蔽板75が固定配置されている。また、符号56は、実施の形態2と同様、温度センサである。温度センサ56は、定着ローラ70の表面に接触して定着ローラ70の温度を検知し、実施の形態2と同様、制御回路に定着ローラ70の温度情報を伝え、制御回路によって定着ローラ70の温度をコントロールするためのものである。
次に、上記のように構成された定着装置34bの動作について説明する。
常温で待機中の状態からまずウォームアップ動作に入る時は、図示しない駆動装置により定着ローラ70が図中矢印方向に回転を開始する。この時、同時に、励磁コイル71に励磁回路(図示しない)から20〜60kHzの交流電流が通電を開始され、整磁金属およびその表面の銅層に誘導電流が流れ、定着ローラ70が昇温を開始する。ウォームアップ時の定着ローラ70の回転速度は、記録用紙の定着動作時に比べて遅く設定しており、外周の速度で100mm/秒とした。励磁コイル71に投入する電力を1300Wとした場合、20秒弱で定着ローラ70の表面温度は定着温度である175℃に達し、ウォームアップ動作を完了した。
次に、複数回の定着動作を繰り返した後、A5縦サイズを通紙速度360mm/s、毎分65枚で500枚連続通紙した結果、用紙幅外の定着ローラ70の温度は195℃で飽和した。
小サイズ紙を連続して通紙すると用紙幅外の温度は急激に上昇するが、この部分の整磁金属の温度が、比透磁率が低下し始める温度Tsを超えると、実施の形態2の場合と同様、励磁コイル71によって形成される磁束は、整磁金属内を通過する経路Mから漏れて、整磁金属を透過して銅製の遮蔽板75を横切る破線で示した経路M’を通る割合が増加する。その結果、用紙幅外の定着ローラ70の発熱割合が急激に減少して、所定の発熱量以下になると昇温が停止する。
以上のように、発熱ローラ70に用いる整磁金属の磁気特性としては、キュリー温度を220℃以下に設定し、定着設定温度を比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い温度
に設定したことにより、ウォームアップ時に、整磁金属は比透磁率が低下することがなく、迅速な立ち上がりを実現することができるとともに、連続通紙時の用紙幅外の過昇温を抑制することができ、ゴム材の寿命の劣化や、軸受け部材の損傷なども有効に防止することができる。
に設定したことにより、ウォームアップ時に、整磁金属は比透磁率が低下することがなく、迅速な立ち上がりを実現することができるとともに、連続通紙時の用紙幅外の過昇温を抑制することができ、ゴム材の寿命の劣化や、軸受け部材の損傷なども有効に防止することができる。
なお、本実施の形態では、整磁金属の外周面に7μmの銅層を設けたが、これは、定着ローラ70の発熱量を増加させ、より効率が良い加熱を行うためである。例えば、固有抵抗が70×10−6Ωcmの整磁金属を周波数25kHzの交流電流で電磁誘導加熱する場合、整磁金属の表皮抵抗は37×10−4〜45×10−4Ωとなる。この値は、誘導加熱しやすい鉄の表皮抵抗9.8×10−4Ωよりも過大であり、インダクタンスも大きいため、渦電流が鉄に比べて流れにくく発熱量が小さい。一方、発熱ローラ70の外周面に、比抵抗が10×10−6Ωcm程度のCuやAg、Al、Au、Atなどを用いた誘電性の非磁性層を設けると、発熱体としての抵抗値が低下し、発熱効率を高めることができる。非磁性層の肉厚は2〜30μm程度であることが望ましい。
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態4と同様、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
実施の形態5は、実施の形態4と同様、発熱ローラ自身が加圧ローラと対向し、記録用紙と接触して定着を行う構成を有する場合である。
本実施の形態における画像形成装置の概略構成は、図7に示す実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。本実施の形態においては、定着装置の構成のみが実施の形態2と異なっている。
図18は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す断面図であり、図19は、図18の定着装置の定着ローラ部を示す軸方向の断面図である。
図18および図19において、符号80は、定着ローラである。この定着ローラ80は、幅360mm、外径40mm、厚さ0.5mmの整磁金属からなる基材の内面に、電磁誘導発熱を促進するための厚さ5μmの銅層を設け、さらに、その外周面にPFAからなる離型層を形成して構成されている。
また、符号85は、励磁コイルユニットである。この励磁コイルユニット85は、実施の形態4と異なり、定着ローラ80の内側に配置されている。励磁コイルユニット85は、心金86の周囲に、励磁コイル87によって形成される磁束の通路となるコア材88、89を配置し、その上にリッツ線からなる励磁コイル87を軸方向にらせん状に巻いて構成されている。励磁コイルユニット85は、定着ローラ85とは独立して定着装置本体に取り付けられ、回転することはない。なお、実施の形態4と同様、符号56は温度センサ、符号73は加圧ローラである。
この構成においては、定着ローラ80および加圧ローラ73が回転しながら励磁コイル87が励磁回路により通電されると、図19に破線で示す交番磁束が発生し、この交番磁束が定着ローラ80の銅層および整磁金属を通過して定着ローラ80が発熱する。
本実施の形態においても、実施の形態2と同様の磁気特性を有する整磁金属を定着ローラ80に適用し、定着温度、整磁金属のキュリー点Tc、および整磁金属の比透磁率が低下し始める温度Tsをそれぞれ実施の形態2と同様に設定することで、効率の良い加熱と迅速なウォームアップを実現し、さらに、記録用紙幅外の過昇温を有効に防止するという効果を得ることができた。
なお、本発明においては、整磁材料のキュリー点Tcまたは比透磁率が低下し始める温
度Tsが不明瞭な場合には、Tsを比透磁率が最大値から約5%低下した位置に、また、Tcを比透磁率が最小値から約5%高い位置にそれぞれ設定してもよい。
度Tsが不明瞭な場合には、Tsを比透磁率が最大値から約5%低下した位置に、また、Tcを比透磁率が最小値から約5%高い位置にそれぞれ設定してもよい。
本明細書は、2005年3月15日出願の特願2005−072554および2005年10月13日出願の特願2005−298653に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明に係る定着装置は、過昇温を防止しつつウォームアップの時間を短縮するとともに、オフセットの発生を防止して良好な定着性能を実現することができ、複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置における、電磁誘導加熱方式によって未定着画像を記録材に加熱定着する定着装置として有用である。
また、本発明に係る定着装置は、電磁誘導加熱方式によって未定着画像を記録材に加熱定着する定着装置であり、電子写真方式または静電記録方式の複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に有用である。
Claims (15)
- 所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、記録材の幅方向に全域にわたる発熱体と、
前記発熱体に対向して前記記録材の走行方向と直交する幅方向全域を励磁加熱する励磁コイルを備えた励磁手段と、
前記発熱体で発生した熱を前記記録材に接触させるための加圧手段と、を有し、
前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、連続通紙時の前記記録材が通過する部分に対応する前記発熱体の定着設定温度を前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsよりも低い値に設定した、
定着装置。 - 前記整磁材料のキュリー温度Tcと、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsとを、Tc−Ts≦30℃となるように設定した、請求項1に記載の定着装置。
- 前記発熱体は、
前記整磁材料の前記励磁コイル側に非磁性導電層を積層して構成されている、
請求項1に記載の定着装置。 - 前記整磁材料の厚さは、0.1mm以上0.7mm以下である、請求項1に記載の定着装置。
- 前記整磁材料は、
整磁金属材料を塑性加工により薄肉の円筒状とした後、アニール処理を施して作成される、
請求項1に記載の定着装置。 - 前記発熱体を挟んで前記励磁コイルに対向して設けられた非磁性導電体、をさらに有し、
前記発熱体の温度が上昇し透磁率が低下することにより、前記励磁手段によって形成された磁束が前記発熱体を透過し前記非磁性導電体の内部を貫通するように構成されている、
請求項1に記載の定着装置。 - 前記整磁材料の外周に接触懸架され、前記加圧手段と接触して前記記録材を挟持搬送しつつ前記記録材へ熱を供給する無端状の定着ベルト、をさらに有する請求項1に記載の定着装置。
- 前記整磁材料は、
非回転の部材であり、
前記定着ベルトは、
前記整磁材料と接触摺動して回転移動する、
請求項7に記載の定着装置。 - 前記定着ベルトは、
前記励磁手段によって自らが発熱する導電発熱層を有する、
請求項7に記載の定着装置。 - 前記整磁材料は、
自らは発熱しない磁路形成手段である、
請求項9に記載の定着装置。 - 前記記録材が通過する部分に対応する前記発熱体の温度を検知する定着温度検知手段と、
前記定着温度検知手段の検知情報に基づいて前記励磁手段への電力供給を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段によって、前記記録材が通過する部分の定着温度を一定に制御するとともに、前記記録材の幅外の温度が、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsと前記整磁材料のキュリー温度Tcの間の温度に自己温度制御されるように構成されている、
請求項1に記載の定着装置。 - 前記励磁手段は、
周波数が20kHzから60kHzである電流が印加される、
請求項1に記載の定着装置。 - 請求項1に記載の定着装置を有する画像形成装置。
- 所定の温度以上になるとおおむね非磁性となる整磁材料からなり、
前記整磁材料のキュリー温度Tcを220℃以下とし、かつ、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsを定着温度よりも高い温度に設定した定着装置に用いる電磁誘導加熱ローラ。 - 前記整磁材料のキュリー温度Tcと、前記整磁材料の比透磁率が降下し始める温度Tsとを、Tc−Ts≦30℃となるように設定した、請求項14に記載の電磁誘導加熱ローラ。
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