JP4666004B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
従来、熱源として、通電により磁界を発生するコイルと、磁界の電磁誘導により渦電流が生じて発熱する発熱体とを用いた電磁誘導発熱方式の定着装置がある。
電磁誘導発熱方式を用いた定着装置の第1例として、所定のキュリー温度を有する感温磁性材料で構成され、励磁コイルで発生する磁界の電磁誘導作用で発熱する発熱ローラと、定着ローラとでベルトを懸架し、発熱ローラ内に回転移動可能な導電性部材を配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の定着装置は、発熱ローラの昇温時には導電性部材を励磁コイルと対向しない位置に移動させ、所定の温度まで上昇したら、導電性部材を励磁コイルと対向する位置に移動させて、特に非通紙部における発熱ローラの温度上昇を防いでいる。
また、電磁誘導発熱方式を用いた定着装置の第2例として、加圧ロール内に配置された誘導加熱コイルと、所定のキュリー温度特性を有し、発熱する定着ロールとしての感温磁性パイプと、感温磁性パイプの内部に非接触状態で配置された非磁性材料を有するものがある(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の定着装置は、感温磁性パイプの温度がキュリー温度より低い場合は、感温磁性パイプに誘導電流が流れて発熱するが、キュリー温度より高い場合は、感温磁性パイプが非磁性体となって磁束が通過し、非磁性材料に誘導電流が流れて温度上昇が止まる。
さらに、電磁誘導発熱方式を用いた定着装置の第3例として、定着ベルトが導電層と透磁性層を有するものがある(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3の定着装置は、昇温時は、電磁誘導により発熱層が発熱する。そして、定着ベルトが定着設定温度以上となったときは、透磁性層を磁束が貫通して磁界が弱まり、発熱層の過剰な発熱が抑えられる。
特許文献1〜3の定着装置は、電磁誘導により発熱する発熱層と、昇温防止のための感温磁性層とが一体となっており、感温磁性層も電磁誘導により発熱するため、発熱層と感温磁性層の両者の発熱で過剰に昇温が行われる。
特許3527442 特開2000−030850 特開平11−288190
本発明は、加熱回転体の必要以上の昇温が抑制される定着装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
本発明の請求項に係る定着装置は、磁界の電磁誘導により発熱し、加熱設定温度以上で耐熱温度以下の温度領域にある透磁率変化開始温度から透磁率が連続的に低下し始める感温層としての回転体と、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂のいずれか1つで形成され前記回転体の外側に積層された離型層と、前記回転体の全幅にずらした千鳥配置で形成され、前記電磁誘導により生じる渦電流の一部を遮断する切込みと、を有する加熱回転体と、前記加熱回転体と対向配置され磁界を発生する磁界発生手段と、前記加熱回転体と離間配置された張架回転体と、前記加熱回転体及び前記張架回転体に巻き掛けられた定着部材と、前記定着部材の外周面に接触し、前記定着部材を前記張架回転体に向けて加圧して、前記定着部材との間を通過する記録媒体上の現像剤像を該記録媒体へ定着させる加圧回転体と、を有する。
本発明の請求項に係る定着装置は、前記定着部材は、少なくとも表皮深さより薄い厚さの発熱層を有し、前記発熱層より前記加熱回転体の感温層の発熱量が小さくなるように前記切込みが形成されている。
本発明の請求項に係る定着装置は、前記発熱層は、厚さ2〜20μm、固有抵抗2.7×10−8Ωcm以下の非磁性金属材料を含む。
本発明の請求項に係る画像形成装置は、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の定着装置と、露光光を出射する露光部と、前記露光光で形成された潜像を現像剤で顕在化して現像剤像を形成する現像部と、前記現像部で顕在化された前記現像剤像を記録媒体上に転写する転写部と、前記転写部で前記現像剤像が転写された記録媒体を前記定着装置に搬送する搬送部と、を備えている。
請求項の発明は、本構成を有していない場合に比較して、加熱回転体の必要以上の昇温が抑制される。
請求項の発明は、本構成を有していない場合に比較して、回転体の必要以上の昇温が抑制される。
請求項の発明は、本構成を有していない場合に比較して、発熱層の熱容量を小さくすることができる。
請求項の発明は、本構成を有していない場合に比較して、画像不良が起こりにくくなる。
本発明の定着装置及び画像形成装置の実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、画像形成装置としてのプリンタ10が示されている。プリンタ10は、プリンタ10の本体を構成する筐体12に光走査装置54が固定されており、光走査装置54に隣接する位置に、光走査装置54及びプリンタ10の各部の動作を制御する制御ユニット50が設けられている。
光走査装置54は、図示しない光源から出射された光ビームを回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査し、反射ミラー等の複数の光学部品で反射して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び ブラック(K)の各トナーに対応した光ビーム60Y、60M、60C、60Kを出射するようになっている。光ビーム60Y、60M、60C、60Kは、それぞれ対応する各感光体20Y、20M、20C、20Kに導かれる。
プリンタ10の下方側には、記録用紙Pを収納する用紙トレイ14が設けられている。用紙トレイ14の上方には、記録用紙Pの先端部位置を調整する一対のレジストロール16が設けられている。また、プリンタ10の中央部には、画像形成ユニット18が設けられている。画像形成ユニット18は、前述の4つの感光体20Y、20M、20C、20Kを備えており、これらが上下一列に並んでいる。
感光体20Y、20M、20C、20Kの回転方向上流側には、感光体20Y、20M、20C、20Kの表面を帯電する帯電ローラ22Y、22M、22C、22Kが設けられている。また、感光体20Y、20M、20C、20Kの回転方向下流側には、Y、M、C、Kの各トナーをそれぞれ感光体20Y、20M、20C、20K上に現像する現像器24Y、24M、24C、24Kが設けられている。
一方、感光体20Y、20Mには第1中間転写体26が接触し、感光体20C、20Kには第2中間転写体28が接触している。そして、第1中間転写体26、第2中間転写体28には第3中間転写体30が接触している。第3中間転写体30と対向する位置には、転写ロール32が設けられている。これにより、転写ロール32と第3中間転写体30との間を記録用紙Pが搬送され、第3中間転写体30上のトナー像を記録用紙Pに転写させる。
記録用紙Pが搬送される用紙搬送路34の下流には、定着装置100が設けられている。定着装置100は、定着ベルト122と加圧ロール104を有しており、記録用紙Pを加熱・加圧してトナー像を記録用紙Pに定着させる。トナー像が定着された記録用紙Pは、用紙搬送ロール36でプリンタ10の上部に設けられたトレイ38に排出される。
ここで、プリンタ10の画像形成について説明する。
画像形成が開始されると、各感光体20Y〜20Kの表面が帯電ローラ22Y〜22Kによって一様に帯電される。そして、光走査装置54から出力画像に対応した光ビーム60Y〜60Kが、帯電後の感光体20Y〜20Kの表面に照射され、感光体20Y〜20K上に各色分解画像に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像に対して、現像器24Y〜24Kが選択的に各色、すなわちY〜Kのトナーを付与し、感光体20Y〜20K上にY〜K色のトナー像が形成される。
その後、マゼンタ用の感光体20Mから第1中間転写体26にマゼンタのトナー像が一次転写される。また、イエロー用の感光体20Yから第1中間転写体26にイエローのトナー像が一次転写され、第1中間転写体26上で前記マゼンタのトナー像に重ね合わされる。
一方、同様にブラック用の感光体20Kから第2中間転写体28にブラックのトナー像が一次転写される。また、シアン用の感光体20Cから第2中間転写体28にシアンのトナー像が一次転写され、第2中間転写体28上で前記ブラックのトナー像に重ね合わされる。
第1中間転写体26へ一次転写されたマゼンタとイエローのトナー像は、第3中間転写体30へ二次転写される。一方、第2中間転写体28へ一次転写されたブラックとシアンのトナー像も、第3中間転写体30へ二次転写される。ここで、先に二次転写されているマゼンタ 、イエローのトナー像と、シアン、ブラックのトナー像とが重ね合わされ、カラー(3色)とブラックのフルカラートナー像が第3中間転写体30上に形成される。
二次転写されたフルカラートナー像は、第3中間転写体30と転写ロール32との間のニップ部に達する。そのタイミングに同期して、レジストロール16から記録用紙Pが当該ニップ部に搬送され、記録用紙P上にフルカラートナー像が三次転写(最終転写)される。
この記録用紙Pは、その後、定着装置100に送られ、定着ベルト122と加圧ロール104とのニップ部を通過する。その際、定着ベルト122と加圧ロール104とから与えられる熱と圧力との作用により、フルカラートナー像が記録用紙Pに定着される。定着後、記録用紙Pは用紙搬送ロール36によりトレイ38に排出され、記録用紙Pへのフルカラー画像形成が終了する。
次に、本実施形態に係る定着装置100について説明する。
図2に示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口120A、120Bが形成された筐体120を備えている。筐体120の内部には、加熱回転体としての感温ロール102が設けられている。感温ロール102の両端部は、筐体120の図示しない側壁に形成された中空の軸部に、ベアリングを介して回転可能に支持されている。また、感温ロール102の一方端には、感温ロール102を回転駆動するモータ(図示省略)に接続されるギヤが接着されている。ここで、モータが作動すると、感温ロール102は矢印方向へ回転する。
感温ロール102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108は、感温ロール102の外周面に倣った略円弧状に形成されており、感温ロール102とは反対側の面の略中央部から凸部108Aが突設されている。ボビン108と感温ロール102との間隔は1〜3mm程度となっている。
ボビン108には、通電によって磁界Hを発生する励磁コイル110が、凸部108Aを中心として軸方向(図2の紙面奥行き方向)に複数回巻き回されている。励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って略円弧状に形成された磁性体コア112が配置され、ボビン108に支持されている。なお、定着装置100では、励磁コイル110と感温ロール102で、加熱装置としての加熱部111が構成されている。
また、感温ロール102の内側で、感温ロール102の内周面と1.0〜1.5mm離れた位置には、誘導体118が設けられている。誘導体118は、非磁性体であるアルミニウムからなり、感温ロール102の内周面に沿って対向する円弧形状とされている。なお、誘導体118の両端は、前述の筐体120の軸部に固定されている。また、誘導体118は、感温ロール102の後述する感温層103を磁界Hの磁束が貫通した場合に、磁界Hの磁束を誘導する位置に予め配置されている。
一方、感温ロール102のボビン108と反対側には、所定の距離(例えば、30mm)離れた位置に、張架回転体としての張架ロール114が配設されている。張架ロール114は、芯金116と、芯金116の周囲に被覆されたシリコンゴム層及び離型層とで構成されている。また、張架ロール114は、芯金116が筐体120に回転可能に設けられている。
感温ロール102及び張架ロール114には、定着部材としての定着ベルト122が巻き掛けられている。ここで、感温ロール102がモータの回転によって矢印方向へ回転すると、定着ベルト122が回転して、張架ロール114が感温ロール102と同方向に回転するようになっている。
定着ベルト122を間に挟んで張架ロール114と対向する位置には、定着ベルト122の回転に対して従動回転する加圧ロール104が設けられている。加圧ロール104は、アルミニウム等の金属からなる芯金106の周囲に、厚さ5mmの発泡シリコンゴムスポンジ弾性層を設け、さらに発泡シリコンゴムスポンジ弾性層の外側に、厚さ50μmのカーボン入りPFAからなる離型層を被覆した構成となっている。
また、加圧ロール104は、定着ベルト122の外周面に圧接されているため、定着ベルト122と加圧ロール104の接触部(ニップ部)では、加圧ロール104外周面が凹状となっている。ここで、加圧ロール104は、定着ベルト122の外周面に接触し、定着ベルト122を張架ロール114に向けて加圧して、定着ベルト122との間を通過するトナー像Tを記録用紙Pに定着させる。
一方、定着ベルト122の感温ロール102側の外周面と対向する位置には、定着ベルト122の温度を測定する非接触式の温度センサ124が設けられている。温度センサ124は、熱電対を有し定着ベルト122から与えられる熱量を温度換算することで、定着ベルト122の表面温度を間接的に予測計測する。温度センサ124の取付位置は、記録用紙Pのサイズの大小によって測定値が変わらないように、定着ベルト122の幅方向の略中央部となっている。
図4(b)に示すように、温度センサ124は、配線127を介して前述の制御ユニット50(図1参照)の内部に設けられた制御回路128に接続されている。また、制御回路128は、配線130を介して通電回路132に接続されており、通電回路132は、配線134、136を介して前述の励磁コイル110に接続されている。通電回路132は、制御回路128から送られる電気信号に基づいて駆動又は駆動停止され、配線134、136を介して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を供給(矢印方向)又は供給停止するようになっている。
ここで、制御回路128は、温度センサ124から送られた電気量に基づいて温度換算を行い、定着ベルト122表面の温度を測定する。そして、この測定温度と、予め記憶させてある定着設定温度(本実施形態では170℃)とを比較して、測定温度が定着設定温度よりも低い場合は、通電回路132を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図2参照)を発生させる。測定温度が定着設定温度よりも高い場合は、通電回路132を停止するようになっている。
一方、定着ベルト122と加圧ロール104の接触部(ニップ部)出口側には、剥離部材126が設けられている。剥離部材126は、一端が固定された支持部126Aと、支持部126Aに支持されている剥離シート126Bとで構成されている。剥離シート126Bの先端は、定着ベルト122に近接又は接触するように配置されている。
次に、感温ロール102の構成について説明する。
図3(a)、(b)、及び図4(a)に示すように、感温ロール102は、内側から外側に向けて厚さ200μm(150〜200μm以下)の感温層103及び厚さ30μmのPFAからなる離型層105が積層され一体となった多層ロール107と、多層ロール107の外周面に形成された複数のスリット109とで構成されている。
感温層103は、感温ロール102の強度を保持するための基層に位置しており、鉄、ニッケル、クロム、シリコン、ホウ素、ニオブ、銅、ジルコニウム、コバルト等からなる合金で構成される金属軟磁性材料が用いられる。また、感温層103は、感温ロール102の耐熱温度(熱による機能低下や変形などが始まる温度)以下で、定着装置100の定着設定温度(感温ロール102で必要とされる定着温度)以上の温度領域に、透磁率が連続的に低下し始める透磁率変化開始温度を有するものが用いられる。
なお、透磁率変化開始温度とは、図5に示すように、透磁率(JIS−C2531で測定)が連続的に低下し始める温度であり、磁界の磁束の貫通量が変化し始める点をいう。また、透磁率変化開始温度は、キュリー点とは異なるものであり、150℃〜230℃で設定されることが好ましい。
本実施形態では、耐熱温度240℃、定着設定温度170℃と設定し、感温層103として、透磁率変化開始温度が210℃程度の鉄−ニッケル合金を用いている。感温層103の固有抵抗は、60×10−8Ωm以上であり、厚さは200μmとなっている。
また、感温層103は、透磁率変化開始温度より低い温度では強磁性体であり、前述の磁界H(図2参照)を侵入させる。また、透磁率変化開始温度を超えると、透磁率が低下し始め、キュリー点に到達すると非磁性体(常磁性体)となって磁束密度が低下し、磁界Hの磁束貫通量が非常に多くなる。
感温層103の感温機能を十分に発現させるためには、透磁率変化開始温度より低い温度で磁界Hが侵入できる深さを示す表皮深さδを、感温層103の厚み以下にする必要がある。表皮深さδは(1)式で与えられる。逆に、感温層103の厚みを表皮深さδ以上にする必要があるともいえる。
Figure 0004666004
(1)式において、ρは固有抵抗、fは周波数(電磁誘導加熱周波数)、μrは比透磁率(室温)である。例えばいま、ρ≧70×10−8Ωm、f≧20kHzを必要条件として、(1)式に基づいて例えばδ≦200μmとなる比透磁率を求めると、少なくとも比透磁率μr≧230が必要となる。本実施形態の感温層124は、比透磁率μrが230以上となるように、予め熱処理(焼鈍)によって高透磁率化されている。感温層103の材料の固有抵抗ρは例えばJIS K7194などの方法で求められる。
一方、スリット109は、長さ10mm、幅0.2mmの切込みで構成されており、励磁コイル110(図2参照)の電磁誘導作用により発生する渦電流B1の流れる方向と交差する方向(ループを遮断する方向)に形成されている。本実施形態では、スリット109の形成方向が、感温ロール102の回転方向(矢印R方向)と同じとなっている。
複数のスリット109は、感温ロール102の幅方向(矢印X方向)に15mmの等間隔で11箇所形成された第1スリット列109Aと、同様に15mmの等間隔で10箇所形成された第2スリット列109Bとで構成されている。第1スリット列109Aと第2スリット列109Bの各スリットは、互いにずれた千鳥配置となっており、いずれも感温ロール102の周方向全体に均等に配置されている。
また、第1スリット列109Aと第2スリット列109Bは、それぞれのスリット109の両端部が、感温ロール102の幅方向の中心線Mから互いに延出されており、幅方向に見て各端部が重なりあっている。ここで、スリット109の量、スリット間隔、スリット同士のオーバーラップ範囲を変更することにより、感温ロール102で発生する渦電流量が調整される。
次に、定着ベルト122の構成について説明する。
図4(a)に示すように、定着ベルト122は、内側から外側に向けて厚さ200μm(150〜200μm以下)のポリイミト゛からなる基層138、厚さ12μm(5〜20μm)の発熱層140、厚さ400μmの弾性層142、及び厚さ30μmの離型層144が、積層され一体化された構成となっている。また、定着ベルト122は、直径を30mm、幅方向長さを300mmとしている。
発熱層140は、前述の磁界H(図2参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料が用いられる。このような金属材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又はこれらの合金を用いることができる。また、定着装置100のウォームアップ時間を短くするためにも、発熱層140の厚さはできるだけ薄くした方がよく、発熱層140として厚さ5〜20μm、固有抵抗2.7×10−8Ωcm以下の非磁性金属材料を用いれば、汎用電源が活用できる交流周波数20kHz〜100kHzの範囲において必要な発熱量を効率よく得ることができる。5μm以下であると、メッキや金属ペーストで形成した場合に均一な層を構成しずらく、温度分布むらができるため5μm以上が望ましい。また、20μm以上であると、発熱層140の抵抗値が小さくなるために渦電流損が得にくくなるため、20μm以下が望ましい。本実施形態では、発熱効率とコストの観点から、銅を用い、厚さを12μmとしている。これは表皮深さδよりも十分に薄いため、磁束を貫通させる。
弾性層142は、優れた弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられ、本実施形態ではシリコンゴムを用いている。
離型層144は、記録用紙P上で溶融されたトナーT(図2参照)との接着力を弱めて、記録用紙Pを定着ベルト122から剥離し易くするために設けられる。優れた表面離型性を得るためには、離型層144として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、又はポリイミド樹脂を用いることが用いられ、本実施形態ではPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、前述のプリンタ10の画像形成工程を経て、トナーTが転写された記録用紙Pが定着装置100に送られる。
続いて、定着装置100では、制御ユニット50によってモータ(図示省略)が駆動され、感温ロール102が矢印方向へ回転する。これにより、定着ベルト122、張架ロール114、及び加圧ロール104が回転する。このとき、制御回路128からの電気信号に基づいて通電回路132が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給される。
ここで、図6(a)に示すように、励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界Hが生成消滅を繰り返す。そして、磁界Hが定着ベルト122の発熱層140を横切ると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱層140に渦電流が発生する。発熱層140は、発熱層140の表皮抵抗、及び発熱層140を流れる渦電流の大きさに比例して発熱し、これによって定着ベルト122が加熱される。なお、磁界Hは、感温ロール102の感温層103に到達し、閉磁路を形成している。
続いて、図1に示すように、定着装置100に送り込まれた記録用紙Pは、所定の定着設定温度(170℃)となっている定着ベルト122及び張架ロール114と加圧ロール104とによって加熱押圧され、トナー画像が記録用紙P表面に定着される。定着装置100から排出された記録用紙Pは、用紙搬送ロール36によりトレイ38に排出される。
ここで、感温ロール102の作用について説明する。
図6(a)に示すように、励磁コイル110で生成された磁界H1は、感温層103まで侵入する。感温層103は金属のため、感温層103も磁界H1の電磁誘導作用により渦電流が発生し、発熱しようとする。
しかし、図3(b)に示すように、感温層103で発生しようとする渦電流B1の大きな流れは、スリット109で遮断される。そして、感温層103の各スリット109間では、ごく僅かな渦電流しか発生せず、感温ロール102の過剰な昇温が抑制される。このため、感温層103の発熱量は、定着ベルト122の発熱層140の発熱量にほとんど影響を与えない程度となる。
これにより、図7に示すように、昇温時の定着ベルト122のピーク温度は、スリット109が無く過剰な加熱が行われる従来の加熱ロールを用いた場合に比較して、低く抑えられる。また、複数枚の記録用紙Pの連続定着で定着ベルト122の温度が低下したとき、励磁コイル110に通電して昇温を行っても、ほとんど定着ベルト122の発熱層140のみの発熱となるので、定着ベルト122の温度を、定着設定温度に近い温度とすることが可能となる。
このように、本実施形態の定着装置100を用いた場合では、感温ロール102の自己発熱による発熱量が抑制され、感温ロール102及び定着ベルト122の過剰な昇温が抑えられるため、トナーTが必要以上の高温溶融状態になりにくくなり、画像汚れが抑制される。
続いて、図6(b)に示すように、感温層103の温度が透磁率変化開始温度以上となった場合は、感温層103の透磁率が低下するため、磁界H1が感温層103を貫通して誘導体118に向かう。このとき、誘導体118においても磁界H1が貫通されるため、閉磁路を形成しにくくなり、磁界H1が弱まって磁界H2となり、発熱層140の発熱量が低減される。これにより、図7に示すように、定着ベルト122の必要以上の昇温が抑制される。
なお、図8(a)、(b)に示すように、感温ロール102の他の実施例として、励磁コイルを内包する方式の感温ロール150を用いることも可能である。
感温ロール150は、感温層103と同様の材質からなる感温層152が内側に配置され、離型層が外側に積層された円筒状の多層ロール154で構成されている。多層ロール154の内側中央には、一端から他端まで螺旋状の励磁コイル156が挿通されている。
励磁コイル156は、図示しない通電回路に接続されており、通電によって磁界を発生させる。また、多層ロール154の外周面と対向する位置には、図示しない非磁性体からなる誘導体が設けられている。
多層ロール154には、複数のスリット160が形成されている。スリット160は、長さ10mm、幅0.2mmの切込みで構成されており、励磁コイル156の電磁誘導作用により発生する渦電流B2の流れる方向と交差する方向(ループを遮断する方向)に形成されている。ここでは、スリット160の形成方向が、多層ロール154の幅方向(矢印X方向)と同じとなっている。
複数のスリット160は、多層ロール154の幅方向(矢印X方向)に15mmの等間隔で5箇所形成された第1スリット列160Aと、第1スリット列160Aから周方向に15mmずれた位置で幅方向に15mmの等間隔で4箇所形成された第2スリット列160Bとで構成されている。
第1スリット列160Aと第2スリット列160Bの各スリットは、互いにずれた千鳥配置となっている。なお、第1スリット列160A及び第2スリット列160Bは、多層ロール154の周方向全体に等間隔で交互に設けられている。また、第1スリット列160Aと第2スリット列160Bは、それぞれのスリット160の両端部が、多層ロール154の幅方向に見て重なりあっている。ここで、スリット160の量、スリット間隔、スリット同士のオーバーラップ範囲を変更することにより、感温ロール150で発生する渦電流量が調整される。
この感温ロール150のように、渦電流B2が周方向に延びる複数のループを形成するときは、幅方向に延びるスリット160を形成することで渦電流B2のループが遮断され、感温層152の発熱が抑制される。これにより、感温ロール150の過剰な昇温が抑制される。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
プリンタ10は、固体の現像剤を用いる乾式の電子写真方式だけでなく、液体現像剤を用いるものであってもよい。また、定着ベルト122の温度検知手段として、非接触式の温度センサ124の代わりに、定着ベルト122の内側に配置され内周面と接触するサーミスタを用いてもよい。さらに、予め温度の換算を設定しておけば、温度センサ124は、加圧ロール104の表面と対向する位置に設けてもよい。
スリット109、160は、渦電流を遮断可能であれば、斜め方向に形成されていてもよい。また、渦電流遮断手段は、スリット109、160に限らず、例えば、導電性の低い樹脂材料を感温層103、152に部分的に埋め込んでもよい。
本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体図である。 本発明の実施形態に係る定着装置の断面図である。 (a)本発明の実施形態に係る感温ロールにスリットが形成された状態を示す斜視図である。(b)本発明の実施形態に係る感温層に流れる渦電流をスリットで遮断した状態を示す模式図である。 (a)本発明の実施形態に係る感温ロール及び定着ベルトの断面図である。(b)本発明の実施形態に係る制御回路及び通電回路の接続図である。 本発明の実施形態に係る感温磁性部材の透磁率と温度の関係を示した模式図である。 (a)、(b)本発明の実施形態に係る定着ベルト及び感温ロールを磁界が貫通する状態を示した模式図である。 本発明の実施形態に係る感温ロール及び定着ベルトと従来例の加熱ロールとについて時間と温度の関係を比較したグラフである。 (a)本発明の他の実施例として感温ロールにスリットが形成された状態を示す斜視図である。(b)本発明の他の実施例として感温層に流れる渦電流をスリットで遮断した状態を示す模式図である。
符号の説明
10 プリンタ(画像形成装置)
18 画像形成ユニット(露光部)
24 現像器(現像部)
32 転写ロール(転写部)
34 用紙搬送路(搬送部)
100 定着装置(定着装置)
102 感温ロール(加熱回転体)
103 感温層(感温層)107 多層ロール(回転体)
104 加圧ロール(加圧回転体)
109 スリット(渦電流遮断手段、切込み)
110 励磁コイル(磁界発生手段)
111 加熱部(加熱装置)
114 張架ロール(張架回転体)
122 定着ベルト(定着部材)
140 発熱層(発熱層)
150 感温ロール(加熱回転体)
152 感温層(感温層)
154 多層ロール(回転体)
H 磁界
P 記録媒体(記録媒体)
T トナー(現像剤)

Claims (4)

  1. 磁界の電磁誘導により発熱し、加熱設定温度以上で耐熱温度以下の温度領域にある透磁率変化開始温度から透磁率が連続的に低下し始める感温層としての回転体と、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂のいずれか1つで形成され前記回転体の外側に積層された離型層と、前記回転体の全幅にずらした千鳥配置で形成され、前記電磁誘導により生じる渦電流の一部を遮断する切込みと、を有する加熱回転体と、
    前記加熱回転体と対向配置され磁界を発生する磁界発生手段と、
    前記加熱回転体と離間配置された張架回転体と、
    前記加熱回転体及び前記張架回転体に巻き掛けられた定着部材と、
    前記定着部材の外周面に接触し、前記定着部材を前記張架回転体に向けて加圧して、前記定着部材との間を通過する記録媒体上の現像剤像を該記録媒体へ定着させる加圧回転体と、
    を有する定着装置。
  2. 前記定着部材は、少なくとも表皮深さより薄い厚さの発熱層を有し、前記発熱層より前記加熱回転体の感温層の発熱量が小さくなるように前記切込みが形成されている請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記発熱層は、厚さ2〜20μm、固有抵抗2.7×10 −8 Ωcm以下の非磁性金属材料を含む請求項2に記載の定着装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置と、
    露光光を出射する露光部と、
    前記露光光で形成された潜像を現像剤で顕在化して現像剤像を形成する現像部と、
    前記現像部で顕在化された前記現像剤像を記録媒体上に転写する転写部と、
    前記転写部で前記現像剤像が転写された記録媒体を前記定着装置に搬送する搬送部と、
    を備えた画像形成装置。
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