JP2005183122A - 加熱装置およびこれを備えた画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 被加熱材の凹凸に密着して加圧でき、かつ、耐久性があり省エネルギーの加熱装置を実現する。
【解決手段】 芯金12に、第1の弾性層13と、発熱して熱源となっている導電層13と、第2の弾性層14と、離型性を高めるための離型層15と、をこの順に形成させた加熱ローラ1と、被加熱材9を、加熱ローラ1の離型層に圧接させる加圧ローラ2と、を備える加熱装置において、上記離型層の厚みを5μm以下とする。これにより、離型層115および第2の弾性層14の厚さを薄膜化しても、良好な画像が得られるので、省エネルギーの定着装置40となる。
【選択図】 図2
【解決手段】 芯金12に、第1の弾性層13と、発熱して熱源となっている導電層13と、第2の弾性層14と、離型性を高めるための離型層15と、をこの順に形成させた加熱ローラ1と、被加熱材9を、加熱ローラ1の離型層に圧接させる加圧ローラ2と、を備える加熱装置において、上記離型層の厚みを5μm以下とする。これにより、離型層115および第2の弾性層14の厚さを薄膜化しても、良好な画像が得られるので、省エネルギーの定着装置40となる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、加熱装置およびこれを備えた画像形成装置に関するものであり、特に、省エネルギーで短時間でウォームアップができ、かつ、被加熱材に均一に加熱できる加熱装置およびこれを備えた画像形成装置に関する。
画像形成装置にて記録紙上にトナー像を形成する際には、トナーを記録紙に付着させた後、溶融させて定着させている。定着を行う定着装置においては、トナーに熱を与えて溶融させる加熱部材と、トナーを記録紙に押し付ける加圧部材とが必要となり、定着装置の具体的な構成としては種々のものが提案されている。
一般的な定着装置の例としては、熱源を備えた加熱ローラと、加熱ローラと圧接させて設置された加圧ローラとによりニップ部を形成し、トナーが付着した記録紙をこのニップ部に通過させることで、トナーを溶融させて記録紙に定着するものがある。このような定着装置には、加熱ローラにトナーが付着してしまうことを防ぐために、ローラ表面に離型層が設けられている。
ここで、図6を用いてニップ部にてトナーが記録紙に定着される様子を説明する。図6(a)は芯金71にフッ素樹脂からなる離型層72を積層した加熱ローラを使用した定着装置であり、カラートナー73が表面に付着した記録紙74がニップ部を通過したときの、加熱ローラの表面部分の様子を示している。図に示すように、記録紙74表面には通常数十μm程度の凹凸があるので、カラートナー73はその凹凸に沿って並んでいる。ところが、芯金71に離型層72を積層した加熱ローラでは、表面が硬すぎて記録紙74の凹凸に追従せず、凹凸に対して平面で押圧することとなるので、記録紙74表面で加熱ローラに接する部分と接しない部分がでてくる。この場合、加熱ローラと接するところではカラートナー73が良好に溶融し、定着後に光沢のある印刷面となるが、接しないところでは、カラートナー73が良好に溶融せずに、印刷面に光沢がでない。よって、印刷後に光沢むらが生じることとなる。
そこで、通常、図6(b)のように、芯金71と離型層72との間に弾性層75を設けて加熱部材の表面の柔軟性を調整し、ニップ部にて加圧ローラと加熱ローラとが記録紙の凹凸に追従して変形するようにしている。これにより、加熱部ローラが記録紙14の凹凸に沿って均一に密着して加熱するので、トナーが均一に溶融し光沢むらが防がれる。
具体的な定着装置としては、特許文献1に、加熱部材として電磁誘導発熱フィルムを用いた構成が示されている。この加熱部材は、励磁コイルの周囲に電磁誘導発熱フィルムを外嵌させたローラ状のもので、上記電磁誘導発熱フィルム(定着フィルム)は内側から発熱層、弾性層、離型層を形成してなる。なお、加熱部材が、上記の記録紙に追従するためには、弾性層が10〜500μmとすることが記載されている。また、離型層としては、シリコーンやフッ素を含む樹脂またはゴムを素材として、1〜100μmの厚さとすることが記載されている。
また、特許文献2には、画像形成装置部品の接触面に炭素膜(特にDLC(ダイヤモンドライクカーボン:diamond like carbon)膜)を形成することが記載されている。このDLC膜のコーティング方法およびその特性については、非特許文献2にも開示されている。
また、特許文献3に、内側の弾性層を硬化させることなくフッ素樹脂の離型層を形成する方法が示されている。
特開平9−44015号公報(公開日:1997年2月14日)
特開平10−18037号公報(公開日:1998年1月20日)
特開2003−84593(公開日:2003年3月19日)
「テクニカルデータカタログ」("Technical Data Catalogue"),第5版,グンゼ株式会社・エンプラ事業部,2001年3月,p.8
「F−DLC」、[online ]、日本アイ・ティ・エフ株式会社、[平成15年12月4日検索]、インターネット<URL :http://www.nippon-itf.co.jp/fdlc.html>
近年、省エネルギー化の観点から、定着装置において、加熱部材の加熱を効率よく行うことが求められている。また、使用者の利便性の観点から、ウォームアップ時間の短縮化が求められている。このために、加熱部材の熱容量を小さくすることで、ウォームアップのためのエネルギーをできるだけ少なくするとともに、加熱開始直後に加熱部材が昇温するようにする(熱応答性の向上)ことが考えられる。加熱部材の熱容量を小さくするためには、熱源から表面までの熱伝導効率を向上させることが必要となり、この方法の1つとして弾性層・離型層を薄層化する方法がある。
しかしながら、離型層について言えば、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)を用いた離型層では、PFAチューブを用いて作製すると、製造方法の問題上20μm程度にまでしか薄膜化できない。このことは、非特許文献1のカタログに、複写機・プリンタ等OA機器のヒートロール(加熱部材)、加圧ロール(加圧部材)及び帯電ロール用のフッ素樹脂収縮チューブ・非収縮チューブの製造可能サイズとして、厚み:20〜100μmと記載されていることから示唆されている。
また、PFAをコーティングして離型層を設けた場合はより薄くできるが、この場合は、耐久性や磨耗性の問題が生じ、実際には20μm程度の厚みが必要となる。さらに、コーティングの場合、離型層をフッ素樹脂の紛体コーティングした後焼成を行う必要があるので、その下層の弾性層表面に300℃以上の高温がかかってしまい、処理中に弾性層の劣化(硬化)が起きてしまい、所望の弾性が失われてしまうという問題もある。
なお、上記特許文献1には、離型層を1〜100μmとすることが記載されているが、離型層薄層化するための、あるいは、離型層の耐久性・磨耗性を確保するための技術内容が記載も示唆もされておらず、どのようにして薄い離型層が実現できるのかが不明である。
このように、従来の方法では離型層の薄膜化に限界があった。さらに、加熱部材に比較的硬度の高い離型層が厚く形成されることとなり、加熱部材の表面硬度が高くなることは避けられなかった。したがって、上記した記録紙へ追従する程度の柔軟性を与えるための、約400μm以上の厚さの弾性層を備えることが必須となり、薄膜化が達成できなかった。
なお、特許文献1には、画像品質を保証するために弾性層を10〜500μmとすることが記載されているが、記録紙の凹凸は最大約35μmであり、トナーの凹凸が約15μmほどあるので、一般的に使用されている記録紙すべてに対して光沢むらのない画像品質を保とうとした場合には、最低50μmの厚さの弾性層が必要である。また、上記した20μm以上の離型層が設けられている場合は、上記した通り400μm以上の厚さの弾性層が必要であると考えられる。
一方、硬度の高い離型層を設けずに、例えば、芯金にシリコーンゴム等の弾性素材からなる離型層を積層させ(すなわち、シリコーンゴムの弾性層のみを積層させるとも言える)、オイル等の離型剤用いて離型性を与えるという方法も考えられる。この方法では、50μm程度のシリコーンゴムの層という比較的薄い層で、紙およびトナーの凹凸に十分追従し、光沢むらを防ぐことができる。しかし、この場合は、シリコーンゴムの耐久性が十分でないため、長時間の使用に耐えられない。また、オイルによる離型性能も十分でない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加熱材の凹凸に密着して加圧でき、かつ、耐久性があり省エネルギーの加熱装置、およびこれを用いた画像形成装置を実現することにある。
本発明に係る加熱装置は、上記課題を解決するために、発熱してあるいは加熱されて熱を保持している蓄熱部に、少なくとも、弾性を有する素材からなる弾性層と、離型性を有する離型層と、をこの順に形成させた加熱部材と、被加熱材を上記加熱部材の離型層に圧接させる加圧部材と、を備える加熱装置において、上記離型層の厚みが5μm以下であることを特徴としている。
離型層を5μm以下とすることで、従来の20μm程度の厚さの離型層を備えている場合と比べ、熱容量が小さくなる。したがって、加熱装置のウォームアップ時間の短縮化が図れ、また、少ないエネルギーにて加熱が行える。
さらに、一般的に硬度が高い素材からなる離型層を5μm以下とすることで、弾性層の持つ柔軟性がより良好に加熱部材の表面に伝えられる。したがって、弾性層の厚さを薄くしても十分な柔軟性が得られ、被加熱材が加圧部材により加熱装置の離型層に押圧されたときに、被加熱材の表面の凹凸に追従して離型層が変形し、加熱部材から熱が均一に伝わる。つまり、従来より薄い弾性層にて、被加熱材を均一に加熱できる。
そして、弾性層の厚みを薄くすることで、離型層を薄くした場合と同様にして、熱容量が小さくなり、加熱装置のウォームアップ時間が短縮化でき、また、少ないエネルギーにて加熱が行える。
離型層の厚みが5μmより厚くなると、離型層での熱容量がより大きくなる。また、離型層の下層である弾性層の弾性の柔軟性が表面に伝わりにくくなるため、被加熱材の凹凸面に追従した変形をさせて熱を均一に伝えるためには、より厚いの弾性層が必要となり、このことがより一層熱容量を大きくする。熱容量が大きくなると、加熱装置のウォームアップ時間が長くなり、使用時の利便性が失われ、また、加熱にかかるエネルギーが大きくなるので、求められるレベルの省エネルギー化が行えない。
また、本発明に係る加熱装置は、上記離型層がダイヤモンドライクカーボンにより形成されていることを特徴としている。
従来は、定着装置などに用いられる加熱装置において、一般的に、PFAチューブあるいはフッ素樹脂の粉体コーティングにより離型層を形成していたが、このような方法では離型層の薄層化に限界があることや、薄層化した場合に耐久性が維持できないことが問題となっていた。
上記ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜は、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の高温の熱処理を要さない薄膜形成方法が適用できるので、弾性層の弾性を失わせずに、しかも非常に薄い膜を形成することが可能である。
また、DLC膜は、従来のフッ素樹脂に比べ耐久性がある(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の9分の1の磨耗性)ので、5μm以下という非常に薄い膜であっても耐久性を確保できる。
また、本発明にかかる加熱装置は、上記離型層の厚みが、3μm以上であることを特徴としている。
離型層をDLC膜とした場合、3μm以上の厚さとすることで、十分に耐久性に優れた離型層とすることができる。このことは、従来より用いられているフッ素樹脂性離型層の場合に、厚みが20μm以上あれば十分に耐久性がないことが知られており、かつ、DLC膜がフッ素樹脂(PTFE)の9倍の耐磨耗性があることから導き出される。
離型層の厚さが5μmより大きくなると、上記したように、その下層にある弾性層の弾性の効果がなくなって加熱部材の表面が硬くなってしまい、その結果加熱部材の表面が被加熱材の凹凸に追従しなくなる。また、離型層を3μmより小さくすると充分な耐久性が得られなくなる。したがって、被加熱材に均一に加熱でき、しかも離型層の耐久性を確保する範囲としては、上記範囲がもっとも好ましい。
本発明の加熱装置は、上記弾性層の厚みが50μm以上300μm以下であることを特徴としている。
上記弾性層の厚みを50μm以上300μm以下とすることで、加熱部材の表面を被加熱材の凹凸に追従させることができ、かつ、熱容量を小さくできるので、ウォームアップ時間を短縮でき、小さなエネルギーで加熱ができる。
弾性層が300μmより大きくなると加熱部材の熱容量が大きくなるので、ウォームアップ時間が長くなり、また、加熱のためのエネルギーが大きくなる。一方、弾性層の厚さを50μmより小さくすると、加熱部材の表面が、例えば紙等の通常50μm程度の凹凸面を有する被加熱材の凹凸に追従しなくなり、均一な加熱ができない。
上記加熱装置は、上記蓄熱部の厚みが10μm以上100μm以下であることを特徴としている。
上記蓄熱部の厚みを10μm以上100μm以下とすることで、耐久性を保ちながら、熱容量の増大を抑えてウォームアップ時間の短縮および省エネルギー化を図れる。
蓄熱部の厚みが10μmより小さいと、耐久性が不足し、加圧部材との圧接の圧力によって破損される。一方、蓄熱部が上記100μmより厚くなると、熱容量が大きくなり、ウォームアップ時間が長くなるとともに、加熱のために多くのエネルギーが必要となる。
本発明の加熱装置は、上記加熱部材が、円柱状の芯金の周囲に、内部弾性層、層状の蓄熱部、弾性層、離型層をこの順に形成させたものであることを特徴としている。
これによれば、蓄熱部より芯金側に内部弾性層を備えていることで、加熱部材の熱容量を上げることなく加熱部材表面の柔軟性を調整することができる。よって、被加熱材の凹凸に追従した均一な加熱が達成できるとともに、ウォームアップ時間の短縮化、省エネルギー化を実現できる。
また、本発明の加熱装置は、上記蓄熱部が、交番磁界を印加されることにより、誘導電流を発生して発熱することを特徴としている。
これによれば、上記蓄熱部が誘導加熱方式にて発熱し、言い換えれば、自身を熱源として加熱されるので、別の熱源から加熱される場合よりも熱量のロスが少なく、加熱のためのエネルギーをさらに小さくできる。また、蓄熱部を層状に形成できるので、被加熱材に近い位置に配置することもできる。したがって、さらにウォームアップ時間を短縮でき、かつ、加熱のためのエネルギーを少なくできる。さらに、例えば、蓄熱部に交番磁界を印加させるときに、交番磁界の発生源を加熱部材を覆うように配置させることで、加熱部材を短時間で均一に加熱できる。
本発明の加熱装置は、記録媒体に付着したトナーを加熱して定着させるために使用されることを特徴としている。また、本発明の画像形成装置は、このような定着をさせるための加熱装置を備えたものである。
この場合、上記被加熱材はトナーが付着した記録媒体である。一般に使用されている記録媒体表面は、最大で約35μmの凹凸があり、さらにその上にトナーが約15μm程度の凹凸を形成するように付着しているが、上記の加熱装置によれば、加熱部材がこのような凹凸に対応して変形するため、記録媒体表面が均一に加熱される。これにより、トナーが均一に溶融して、記録媒体に、光沢むらがない良好な画像品質のトナー像が形成される。なお、記録媒体に均一が加熱されるので、必要最低限の温度にて加熱しても良好に画像形成され、省エネルギーにも役立つ。
また、上述の加熱装置は、ウォームアップ時間が短いことから、画像形成装置が画像データを取得している間に(例えば、複写機において原稿読み取り動作から紙が印字され排出されるまでの時間である15秒以内に)ウォームアップが完了するため、使用者が待たされることがない。さらに、省エネルギーで画像形成を行える。
本発明の加熱装置は、離型層の厚みが5μm以下であるので熱容量が小さくでき、したがって、加熱装置のウォームアップ時間の短縮化ができるとともに、少ないエネルギーにて加熱が行える。
さらに、一般的に硬度が高い素材からなる離型層を5μm以下とすることで、弾性層の持つ柔軟性がより良好に加熱部材の表面に伝えられる。したがって、弾性層の厚さを薄くしても十分な柔軟性が得られ、被加熱材が加圧部材により加熱装置の離型層に押圧されたときに、被加熱材の表面の凹凸に追従して、離型層が変形し、加熱部材から熱が均一に伝わる。つまり、従来より薄い弾性層にて、被加熱材を均一に加熱できる。
そして、弾性層の厚みを薄くすることで、離型層を薄くした場合と同様にして、熱容量が小さくなり、加熱装置のウォームアップ時間が短縮化でき、また、少ないエネルギーにて加熱が行える。
〔実施の形態1〕
画像形成装置の定着装置においては、良好な画質(均一性、色再現性、光沢)を得るために、紙およびトナーに均一に熱と圧力を加える必要がある。そこで、紙およびトナー表面の凹凸に追従するようにローラ表面に厚肉の弾性層が必要である。また、離型層の影響で生じる光沢ムラを防ぐためにも、弾性層は必須であった。
画像形成装置の定着装置においては、良好な画質(均一性、色再現性、光沢)を得るために、紙およびトナーに均一に熱と圧力を加える必要がある。そこで、紙およびトナー表面の凹凸に追従するようにローラ表面に厚肉の弾性層が必要である。また、離型層の影響で生じる光沢ムラを防ぐためにも、弾性層は必須であった。
一方、カラー定着において熱容量を低減させるには、この弾性層の薄層化が必要である。そこで、発明者らは、薄膜可能なコーティング(例えば、DLC膜)で離型層を構成することで、離型層を薄膜化して弾性層の薄層化することが可能となり、しかも光沢ムラが抑えられることを見出した。
本発明の一実施形態について図1および図2に基づいて説明すると以下の通りである。
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態の画像形成装置について説明する。図1は、乾式電子写真方式のカラー画像形成装置の内部構造を示している。画像形成装置は、例えばネットワーク上の各端末装置から送信される画像データ等に基づいて、所定の記録紙に対して多色又は単色の画像を形成する。
上記画像形成装置は、可視像形成ユニット50(50Y・50M・50C・50B)、記録紙搬送手段30、定着装置(加熱装置)40、供給トレイ57を備えている。
上記プリンタは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色に対応して、4つの可視像形成ユニット50Y・50M・50C・50Bが並設されている。つまり、可視像形成ユニット50Yは、イエロー(Y)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット50Mは、マゼンダ(M)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット50Cは、シアン(C)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット50Bは、ブラック(B)のトナーを用いて画像形成を行う。具体的な配置としては、記録紙8の供給トレイ57と定着装置40とを繋ぐ記録紙の搬送路に沿って4組の可視像形成ユニット50を配設した、所謂タンデム式である。
可視像形成ユニット50は、それぞれ実質的に同一の構成を有し、すなわち、それぞれに、感光体ドラム51、帯電器52、レーザ光照射手段53、現像器54、転写ローラ55クリーナユニット56、が設けられており、搬送される記録紙8に各色トナーを多重転写する。
ここで、上記感光体ドラム51は、形成される画像を担持するものである。上記帯電器52は、感光体ドラム51表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。レーザ光照射手段53は、画像形成装置に入力された画像データに応じて、帯電器5によって帯電した感光体ドラム51表面を露光して、該感光体ドラム51表面に静電潜像を形成する。上記現像器52は、感光体ドラム51表面に形成された静電潜像を、各色のトナーによって顕像化する。転写ローラ55は、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加されており、後述する記録紙搬送手段30により搬送された記録紙8に、形成されたトナー像を転写させている。ドラムクリーナユニット56は、現像器52での現像処理、及び、感光体ドラム51に形成された画像の転写後に、感光体ドラム51表面に残留したトナーを、除去・回収する。以上のような、記録紙8に対するトナー像の転写は、4色について4回繰り返される。
上記記録紙搬送手段30は、駆動ローラ31、アイドリングローラ32、搬送ベルト33からなり、記録紙8に可視像形成ユニット50にてトナー像が形成されるように、記録紙8を搬送するものである。駆動ローラ31およびアイドリングローラ32は、無端状の搬送ベルト33を架張するものであり、駆動ローラ31が所定の周速度に制御されて回転することで、無端状の搬送ベルト33を回転させている。搬送ベルト33は、外側表面に静電気を発生させており、記録紙8を静電吸着させながら、上記記録紙8を搬送している。
上記記録紙8は、このようにして、搬送ベルト33に搬送されながらトナー像を転写されたあと、駆動ローラ31の曲率により搬送ベルト33から剥離され、定着装置40に搬送される。定着装置40は、記録紙8に適度な熱と圧力とを与えて、トナーを溶解して記録紙に固定することで、堅牢な画像を形成する。
ここで、上記定着装置(加熱装置)40について、図2を用いて詳細に説明する。定着装置40は、誘導加熱方式にて加熱されるものである。加熱手段としては、ハロゲンランプなどを用いたランプ加熱方式、セラミックヒータや誘導コイルを用いた誘導加熱方式が使用可能であるが、短時間で均一に加熱して定着させるには、以下に示すような誘電コイルを用いた誘導加熱方式とすることが好ましい。
図2に、この定着装置40の概略図を示す。この定着装置40は、加熱ローラ(加熱部材)1、加圧ローラ(加圧部材)2、磁界発生部3、励磁回路4、駆動部5、制御部6からなる。定着装置40は、表面に未定着のトナー7aが付着した記録紙8(被加熱材9)を、一定温度に加熱された該加熱ローラと加圧ローラとの当接部(ニップ部)に通紙することで、トナー7aを溶融させて記録紙8に押し付け、記録紙8に画像を定着させるものである。なお、定着後には、記録紙8にトナー7bが溶着された状態となり、光沢が出る。
まず、加熱ローラ1について説明する。加熱ローラ1は、芯金11に、第1の弾性層(内部弾性層)12、導電層(蓄熱部)13、第2の弾性層(弾性層)14、離型層15をこの順に積層させたものであり、導電層13に対して、加熱ローラ1の外部に配置した磁界発生部3から交番磁界を印加することで発熱させ、被加熱材8を加熱する。
芯金11は、外径28mmの中空のアルミニウム円筒を使用しており、加熱ローラ1の基材となっている。しかし、素材や形状はこれに限られるものではなく、例えば、鉄製の金属からなるものでもよい。また、芯金11の形状は、中空でなくても(中実でも)かまわないが、芯金11からの放熱が抑制されるので中空の方が望ましい。
第1の弾性層12は、厚さ6mmの断熱性・耐熱性を有する発泡性シリコーンスポンジを使用している。硬度は、ASKER−C硬度計でで25度である。この第1の弾性層は、加熱ローラ1の表面に柔軟性を与え、加熱ローラ1と加圧ローラ2との間に形成されるニップ部に歪みを生じさせ、また広く(ワイドニップに)できる。しかも、弾性層12は断熱性を有しているため、導電層13から熱が伝達されるべき方向、すなわち導電層13から表面に向かう方向とは反対側に熱が伝達されるのを防ぐので、熱の伝達効率が上がる。また、第1の弾性層12の厚さは加熱ローラ1の熱容量増大に寄与しないので、この厚さの調整により熱容量を増大させずに柔軟性を調整できる。
導電層13は、厚み40μmのニッケルを使用しており、交番磁界を印加されることにより発熱する発熱体である。導電層13の材料や厚さとしては、このような誘導加熱が可能なものであればこれに限られるものではない。導電層13の材質としては、磁性を有する導電性材料では、鉄、SUS430ステンレス材等でもよいが、特に比透磁率が高い珪素鋼板や電磁鋼板、ニッケル鋼等であることが好ましい。また、非磁性体の導電性材料であっても、SUS304ステンレス材など抵抗値の高い材料であれば誘導加熱できるのでこれを使用してもよい。
更に、導電層13として、比透磁率の高い非磁性のベース部材(例えば、セラミックなど)を使用し、このベース部材が導電性を有するように配置した構成としてもよい。また、導電層13を複数のスリーブからなるように構成し、発熱量を増大させてもよい。
また、導電層13の厚さとしては、加熱ローラ1表面の温度が昇温し始めるまでの時間を短縮するために、その肉厚を10μm以上100μm以下の厚さに薄肉化することが好ましい。また、30μm以上とすることがより好ましく、80μm以下とすることがより好ましい。
厚さが10μmより小さいとであると、導電層13の耐久性が不足し、回転中に破損する。一方100μmより小さいとの厚みにすると、熱容量が大きくなりウォームアップ時間が長くなってしまう。なお、特許文献1には、導電層(発熱層)が2μm〜100μmとすることが記載されているが、耐久性などの問題から10μm以下のものは実用化は困難である。
厚さが10μmより小さいとであると、導電層13の耐久性が不足し、回転中に破損する。一方100μmより小さいとの厚みにすると、熱容量が大きくなりウォームアップ時間が長くなってしまう。なお、特許文献1には、導電層(発熱層)が2μm〜100μmとすることが記載されているが、耐久性などの問題から10μm以下のものは実用化は困難である。
第2の弾性層14は、被加熱材9が加圧ローラ2により加熱ローラ1に押圧されたときに、被加熱材9の表面の凹凸に追従して離型層15を変形させ、加熱ローラ1から熱が均一に伝わるようにするものである。第2の弾性層14は、厚み150μmの、ゴム硬度20度(JIS−A)のシリコーンゴムを使用しているが、これに限られるものではない。
第2の弾性層14の材料としては、耐熱性に優れ、ゴム弾性を有するものであればよく、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が挙げられる。この中でも、特にゴム弾性が優れているシリコーンゴムを用いるのが望ましい。
第2の弾性層14の厚さとしては、50μm以上300μm以下とすることが好ましい。また、100μm以上とすることがより好ましく、200μm以下とすることがより好ましい。弾性層14が300μmより大きくなると加熱部材自身の熱容量が大きくなるので、ウォームアップ時間がより長くなり、また、加熱のためのエネルギーが大きくなる。ウォームアップ時間の目安としては、例えば従来の複写機において、コピー読み取り動作から紙が印字され排出されるまでの時間が約15秒以下であることから、この時間内に定着器のウォームアップを完了しておくことが望ましい。後に実施例に述べる通り、弾性層14が300μm以下であると、15秒以下のウォームアップが可能である。
一方、紙などの表面の凹凸は、表面粗さ計で容易に測定することが可能でるが、記録紙8として一般的に使用されるもののうち、もっとも表面が粗い紙では表面粗さが最大で約35μm程度ある。そして、トナー7aの凹凸は約15μmほどある。したがって、定着装置40の被加熱材9は、最低50μmの凹凸があることを前提とする必要がある。この凹凸に追従するためには、弾性層は、少なくとも50μm以上必要である。言い換えると、第2の弾性層14が50μmより小さいと、加熱ローラ1が被加熱材9の凹凸に追従しなくなり、均一な加熱ができない。この場合、定着後のトナー像に光沢むらが生じる。
離型層15は、加熱され粘度が低下したトナー7aを記録紙8の方に付着させるために、トナー7aが加熱ローラ1側に付着するのを防止する役割を有する。また、上記した凹凸の追従性を損なわないためには離型層15の厚さを加熱ローラ1の弾性を失わせない程度の厚さにすることが必要となる。このためには、離型層15の厚さを5μm以下とすることが必要となる。また、離型層15を5μm以下とすることで、離型層15の熱容量の小さくできる。
本実施の形態では、離型層15として、厚さ3μmのDLC(ダイヤモンドライクカーボン:diamond like carbon)を使用している。離型層15の材料としては、耐久性に優れ、熱を用いずに薄膜状に形成することができるDLC膜を用いることが好ましい。
ここで、DLC膜とは、C1-nHnあるいは C1-nFnで表され、nが0.4〜0.6となるものであり、具体的には、C0.5H0.5の炭素膜が好ましい。また、離型性確保のためには、C0.5F0.5を用いることも有効である。DLC膜の作成方法としては、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法が好適である。この方法によれば、加熱ローラ1に熱を加えることなく離型層15を形成できるので、第2の弾性層14の弾性を失わせることがなく、非常に薄い離型層15を製造できる。
また、離型層15の厚さは、5μm以下とすることが好ましい。さらに、3μm以上5μm以下とするのがより好ましい。特に、DLC膜を用いる場合は、3μm以上とすることで、耐久性を確保できる。
DLC膜は耐久性に優れ、従来のフッ素コーティング(PTFE;ポリテトラフルオロエチレン)の1/9の磨耗性であることが分かっている(非特許文献2参照)。言い換えると、DLC膜が、磨耗を従来のフッ素樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)の9分の1に抑えることができるのである。従来のPFAでは20μmあれば耐久性は十分である事がわかっているので、磨耗性から判断してDLC膜の場合3μm以上の厚さがあれば十分な耐久性があることがわかる。
なお、離型層15は、厚さ5μm以下で耐久性を保てるものであればDLC膜に限られるものではなく、例えば高耐久性を備えさせたPFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系材料を使用してもよい。このとき、特に、特許文献3に記載のような方法を用いることで弾性を損なわずに薄膜の離型層15を形成できる。
また、第1の弾性層12、導電層13、第2の弾性層14、離型層15の各層はそれぞれ隣接する層と強固に密着されている。このようにして形成された加熱ローラは外径は40.0mmとなった。
次に、加圧ローラ2について説明する。加圧ローラ2は、芯金21に耐熱弾性体層22を積層したものである。加圧ローラ2は、図示していない弾性部材(バネ)によって、加熱ローラ1に圧接されて、加熱ローラ1との間に接触ニップ部を形成している。そして、このニップ部に記録紙が通紙された場合に、記録紙8を加熱ローラ1に押し付け、記録紙8およびトナー7に良好に熱が伝わるようにするという役割を果たしている。
加圧ローラ2の芯金21は、ここでは鉄製の外径が20.0μmのものを用いているが、材料や大きさはこれに限られるものではなく、例えば、鉄・ステンレスもしくはアルミニウムからなるものであってもよい。
耐熱弾性体層22は、記録紙8に対して均等に加圧させるためのものであり、ここでは、厚さ5μmの耐熱性のシリコーンゴムを用いている。しかし、このような機能を果たすものであれば、材料や厚さはこれに限られるものではない。
加圧ローラ2の各層は強固に密着されており、加圧ローラは外径は30.0mmとなっている。なお、加圧ローラ2にも、加熱ローラ1の離型層15と同様に、トナー7の付着を防止する目的で、表面にPFAやPTFEからなる離型層が形成されていても良い。
次に、磁界発生部3について説明する。加熱ローラ1に交番電界を印加して発熱させる磁界発生部3は、誘導コイルから構成されており、加熱ローラ1の外周部を半周程度取り囲むように、構成されている。このように構成することで、誘電コイルに曲率が存在することとなり、磁束が誘導コイルの曲率円の中心側に集中するので、渦電流の発生量が多くなる。これにより、導電層13の発熱量が大きくなるので、加熱ローラ1の表面温度が迅速に昇温して、ウォームアップ時間の短縮化ができる。
誘導コイルは、ここでは、耐熱性を考慮してアルミニウム単線を使用し、その表面を絶縁層(例えば、酸化膜で覆ったものを使用している。しかし、誘電コイルは、銅線もしくは銅ベースの複合部材線であっても良いし、リッツ線(エナメル線等を撚り線にしたもの)であってもよい。なお、何れの線材でも、誘電コイルでのジュール損を抑えるために、誘導コイルの全抵抗値を0.5Ω以下、望ましくは0.1Ω以下とすることが好ましい。また、誘導コイルは1つ配置しても、定着させる記録紙のサイズに応じて複数個配置してもかまわない。
励磁回路4は、この磁界発生部3の誘導コイルに高周波電流を流すものであり、これにより、交番磁界を発生させて加熱ローラ1に印加する。加熱ローラ1に交番磁界を印加させると、加熱ローラ1の導電層13が発熱する。
制御部6はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、励磁回路4に流す高周波電流を制御する。これにより、加熱ローラ1の温度が一定温度に制御される。なお、ニップ部入り口近傍の加熱ローラ1の外周には、サーミスタ10が配設されており、加熱ローラ1の表面温度を検知して検知信号を出す。制御部6は、このサーミスター10の検知信号に応じて、励磁回路4を制御し、加熱ローラ1の温度を一定温度に制御する。
また、駆動部5は加熱ローラ1を回転駆動させるものであり、記録紙8の搬送に応じて加熱ローラ1を回転させることで、未定着トナー7aを載せた記録紙8画像を搬送しながら、トナー7aを熱と圧力により記録紙8に定着させる。なお、駆動部5の動作は制御部6によって制御される。
以上のような誘電加熱方式の定着装置40は、第1に超低熱容量構造を達成できるという利点がある。これは、トナー7aの溶融定着に必要な熱を保持する熱受容体層(導電層13+第2の弾性層14+離型層15)が薄層化されるためである。熱を保持するべき熱受容体層が低熱容量であると、小さなエネルギーで加熱ができ、ウォームアップの時間も短縮化できる。
第2に、離型層15が非常に薄層であることから、第2の弾性層14の柔軟性を良好に表面に伝えるので柔軟性に富み、且つ第1の弾性層12により上記熱受容体層以外の部分で加熱ローラ1の柔軟性を上げられるので、第2の弾性層14が薄層であるにも関わらず、ニップ部で歪みを生じさせることができると同時に、ワイドニップが形成可能である。
第3に、熱源となる導電層13が加熱ローラ1表面近傍に設けられるとともに、加熱ローラ1外部に設けた誘導加熱コイルを用いて発熱するので、熱量のロスが少なくなる。したがって、熱応答性が大幅に向上するのでウォームアップの時間が短縮でき、また省エネルギー化にもつながる。
〔実施の形態2〕
次に、図3を用いて、定着装置40の代わりに定着装置(加熱装置)60を用いた画像形成装置の例を説明する。なお、定着装置60以外の構成は、実施の形態1と同じである。
次に、図3を用いて、定着装置40の代わりに定着装置(加熱装置)60を用いた画像形成装置の例を説明する。なお、定着装置60以外の構成は、実施の形態1と同じである。
定着装置60は、加熱ローラ68と、加圧ローラ69と、定着ローラ70と、無端ベルト63を備え、記録紙上の未定着のトナーを溶融して、記録紙上に固着させる。
加熱ローラ68は、蓄熱ができる円筒62(例えば、厚さ0.2mm外径30mmのアルミニウム製の円筒)と、その内部に配置された例えばハロゲンランプなどの熱源61からなり、定着に必要な熱を定着ベルト63に与えるものである。なお、熱効率を上げるためには、加熱ローラ内部に発熱層を設け、別途設けた給電手段により発熱層に電流を通電させ、発熱層を加熱するたダイレクトヒーティング(DH)方式によって加熱してもよい。これにより、さらにウォームアップ時間の短縮を図ることが可能である。
定着ローラ70は、円筒64(例えば、厚さ厚さ3mm外径28mmのアルミ製の円筒)と、その表面に形成されたスポンジ層65(例えば、厚さ6mmのシリコンスポンジゴム層)とからなり、加圧ローラ69と圧接してニップ部を形成し、記録紙に圧力を与える。
加圧ローラ69は、円筒66(例えば、厚さ3mm外径20mmの鉄製の円筒)と、その表面に形成された弾性層67(例えば、厚さ5mmのシリコンゴム層)とからなり、加圧ローラ69と圧接してニップ部を形成し、記録紙に圧力を与える。なお、加圧ローラ69は、定着ローラ70よりも固い硬度を有するローラとする。
無端ベルト63は、上記加熱ローラ68と定着ローラ70とに渡って巻回された無端ベルトであり、加熱ローラ68から与えられた熱を保持して、定着ローラ70と加圧ローラ69により形成されたニップ部にて、記録紙に熱と圧力とを与える。
無端ベルト63の構造を図4に示す断面図を用いて説明する。無端ベルト63は、基層(蓄熱部)80に弾性層81と離型層82とを積層させた構成であり、内側に(つまり、加熱ローラ68や定着ローラ70と接する側)に基層80が、外側(つまり、記録紙や加圧ローラ69と接する側)に離型層82がくるように配置する。
上記基層80は、良好に加熱ローラ68からの熱を受けて保持できるものであればよく、例えば厚さ80mm程度のポリイミドからなるものが好ましい。
弾性層81は、記録紙とトナーの凹凸に追従できる程度の柔軟性を与えるものであり、例えば、厚み150μmで、硬度20(JIS-Aの硬度計使用)のシリコーンゴムを使用できる。弾性層81の材料としては、耐熱性に優れ、ゴム弾性を有するものであればよく、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が挙げられる。この中でも、特にゴム弾性が優れているシリコーンゴムを用いるのが望ましい。
弾性層80の厚さとしては、50μm以上300μm以下とすることが好ましい。弾性層81が300μmより大きくなると加熱部材自身の熱容量が大きくなるので、ウォームアップ時間がより長くなり、また、加熱のためのエネルギーが大きくなる。
離型層82は、加熱され粘度が低下したトナーが定着ベルト63側に付着するのを防止する役割を有する。離型層82としては、厚さ3μmのDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を使用している。離型層15の材料としては、耐久性に優れ、熱を用いずに薄膜状に形成することができるDLC膜を用いることが好ましい。しかし、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系材料を使用してもよい。
離型層82の厚さは、5μm以下とすることが好ましい。これは、弾性層81の上記した凹凸の追従性を損なわないためには、離型層82の厚さを5μm以下とすることが必要となるからである。また、離型層15を5μm以下とすることで、離型層15の熱容量の小さくできる。
特に、DLC膜を用いる場合は、3μm以上とすることが好ましい。DLC膜は耐久性に優れ、従来のフッ素コーティング(PTFE;ポリテトラフルオロエチレン)の1/9の磨耗性であることが分かっている(非特許文献2参照)。言い換えると、DLC膜が、磨耗を従来のフッ素樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)の9分の1に抑えることができるのである。ここで、従来のPFAでは20μmあれば耐久性は十分である事がわかっているので、磨耗性から判断してDLC膜の場合3μm以上の厚さがあれば十分な耐久性があることがわかる。
以上、実施の形態として、芯金上に弾性層、離型層の順に形成した定着ローラ、基層状に弾性層、離型層を形成した定着ベルト(フィルム)について説明したが、本発明は、加熱される蓄熱部上に、弾性層、離型層を形成する加熱装置であれば、どのようなものにも適用できる。例えば、湿式電子写真機器における乾燥装置、インクジェットプリンタにおける乾燥装置、リライタブルメディア用消去装置等にも好適に実施される。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本発明は、発熱あるいは加熱される薄膜の基材上に弾性層、離型層の順で形成された加熱回転部材と、回転加熱部材に圧接される加圧部材と、加熱回転部材を加熱する加熱手段を少なくとも備える加熱装置において、離型層の厚みdが0μm<d≦5μmの範囲に形成されている構成であってもよい。
また、上記離型層がDLC膜により形成されていてもよい。この場合、上記加熱装置の離型層の厚みdが、3μm≦d≦5μmの範囲であることが好ましい。
また、上記弾性層の厚みt1が50μm≦t1≦300μm以下であってもよい。
また、上記基材の厚みtが10μm≦t≦100μmであってもよい。
また、上記加熱装置において、加熱手段が基材に交番磁界を印加して誘導電流を発生させる誘導加熱手段であってもよい。
また、本発明の画像形成装置は、以上の加熱装置を備えるものであってもよい。
実施の形態1の定着装置40を有する画像形成装置において、加熱ローラ1の離型層15の厚みを0μm〜10μmに変更して形成された画像品質を評価する実験を行った。つまり、加熱ローラとして、外径28mmの中空のアルミニウム円筒(芯金11)に、厚さ6mmの断熱性・耐熱性を有する発泡性シリコーンスポンジ(第1の弾性層12)、厚さ40μmのニッケル(導電層13)、150μmのゴム硬度20度(JIS−A硬度計)のシリコーンゴム(第2の弾性層14)、DLC膜0〜10μm(離型層15)を積層させたものを用い、加圧ローラ2として、外径20.0μmの鉄製の円筒に厚さ5mmの耐熱性シリコーンゴムを積層したものを用いた。なお、DLC膜0μmとは、離型層を設けない場合である。画像品質の評価は、定着後のトナー像に光沢むらが生じたか否かを、目視にて評価した。
画像形成の条件を以下に記載する。トナーは、ワックスを内包したカラー用オイルレストナー(ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂)を使用した。トナーの粒径は8.5μmであり、このトナーの記録紙の面積単位毎の付着量は1.5mg/cm2である。記録紙は、75gの普通紙を使用した。プロセス速度は、100mm/sであり、加熱ローラ1の表面温度(定着温度)が170℃となるようにした。
上記条件で作成した未定着画像(べた画像)サンプルを定着装置40に通紙して、定着後のサンプルの光沢むらの有無を目視にて評価した。結果を表1に示す。なお、光沢ムラ発生が無い場合は「○」とし、光沢ムラ発生がある場合は、「×」としている。これによれば、定着装置40の場合は離型層15を10μmより小さく、より具体的には5μm以下とすることで、記録紙に光沢むらが生じなくなる事がわかる。
次に、上記の画像形成装置において、DLC膜を3μmに設定し、第2の弾性層14の厚みを50μm〜400μmに変更して、ウォームアップ所要時間(交番電界印加開始から加熱ローラ1が170℃になるまでの時間)を測定する実験を行った。結果を図4に示す。
これによると、第2の弾性層を300μm以下とすることで、ウォームアップ時間を15秒以下にできる。この場合、ウォームアップ時間が、複写機においてコピー読み取り動作から紙が印字され排出されるまでの時間である15秒より短くなっているので、使用者が不便さを感じないレベルにまでウォームアップ時間を短縮できたといえる。
本発明の加熱装置は、離型層を5μm以下であるため、離型層自身の熱容量が小さくなり、また、弾性層の持つ柔軟性がより良好に加熱部材の表面に伝えられるため、弾性層の厚さを薄くしても、被加熱材を均一に加熱できるので、弾性層の厚みを薄くすることができる。このように、離型層、弾性層を薄くした場合、熱容量が小さくなり、加熱装置のウォームアップ時間が短縮化でき、また、少ないエネルギーにて加熱が行える。
この加熱装置は、蓄熱する蓄熱部に、弾性層、離型層の順に形成した加熱装置すべてに適用可能であり、例えば乾式電子写真機器における定着装置、湿式電子写真機器における乾燥装置、インクジェットプリンタにおける乾燥装置、リライタブルメディア用消去装置等で好適に実施される。定着装置としては、記録紙に接触して熱を伝える部材である、加熱ローラや定着ベルト(フィルム)として適用できる。
1 加熱ローラ(加熱部材)
2 加圧ローラ(加圧部材)
3 磁界発生部
4 励磁回路
5 駆動部
6 制御部
9 被加熱材
11 芯金
12 第1の弾性層(内部弾性層)
13 導電層(蓄熱部)
14 第2の弾性層(弾性層)
15 離型層
40 定着装置(加熱装置)
60 定着装置(加熱装置)
63 定着ベルト(加熱部材)
68 加熱ローラ
69 加圧ローラ(加圧部材)
70 定着ローラ
80 基層(蓄熱部)
81 弾性層
82 離型層
2 加圧ローラ(加圧部材)
3 磁界発生部
4 励磁回路
5 駆動部
6 制御部
9 被加熱材
11 芯金
12 第1の弾性層(内部弾性層)
13 導電層(蓄熱部)
14 第2の弾性層(弾性層)
15 離型層
40 定着装置(加熱装置)
60 定着装置(加熱装置)
63 定着ベルト(加熱部材)
68 加熱ローラ
69 加圧ローラ(加圧部材)
70 定着ローラ
80 基層(蓄熱部)
81 弾性層
82 離型層
Claims (9)
- 発熱してあるいは加熱されて熱を保持している蓄熱部に、少なくとも、弾性を有する素材からなる弾性層と、離型性を有する離型層と、をこの順に形成させた加熱部材と、
被加熱材を上記加熱部材の離型層に圧接させる加圧部材と、を備える加熱装置において、
上記離型層の厚みが5μm以下であることを特徴とする加熱装置。 - 上記離型層がダイヤモンドライクカーボンにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
- 上記離型層の厚みが、3μm以上であることを特徴とする請求項2記載の加熱装置。
- 上記弾性層の厚みが50μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の加熱装置。
- 上記蓄熱部の厚みが10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の加熱装置。
- 上記加熱部材が、円柱状の芯金の周囲に、内部弾性層、層状の蓄熱部、弾性層、離型層をこの順に形成させたものであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の加熱装置。
- 上記蓄熱部が、交番磁界を印加されることにより、誘導電流を発生して発熱するものであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の加熱装置。
- 記録媒体に付着したトナーを加熱して定着させるために使用される請求項1から7の何れか1項に記載の加熱装置。
- 請求項8に記載の加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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JP2003421038A JP2005183122A (ja) | 2003-12-18 | 2003-12-18 | 加熱装置およびこれを備えた画像形成装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009241326A (ja) * | 2008-03-31 | 2009-10-22 | Nippon Steel Chem Co Ltd | 金属張積層板の製造方法 |
US8050612B2 (en) | 2008-07-17 | 2011-11-01 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Fixing device having a temperature-uniforming roller |
US8055173B2 (en) | 2008-04-17 | 2011-11-08 | Fuji Xerox Co., Ltd. | Fixing apparatus and image forming apparatus |
US8145112B2 (en) | 2008-05-23 | 2012-03-27 | Fuji Xerox Co., Ltd. | Heating rotating body, heating device, fixing device and image forming device |
JP2012081704A (ja) * | 2010-10-14 | 2012-04-26 | Hirano Giken Kogyo Kk | 基材製造装置 |
-
2003
- 2003-12-18 JP JP2003421038A patent/JP2005183122A/ja not_active Withdrawn
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