JP6127667B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

定着装置および画像形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6127667B2
JP6127667B2 JP2013078905A JP2013078905A JP6127667B2 JP 6127667 B2 JP6127667 B2 JP 6127667B2 JP 2013078905 A JP2013078905 A JP 2013078905A JP 2013078905 A JP2013078905 A JP 2013078905A JP 6127667 B2 JP6127667 B2 JP 6127667B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
sensitive magnetic
groove
magnetic layer
belt
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013078905A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014202917A (ja
Inventor
拓哉 佐々木
拓哉 佐々木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Priority to JP2013078905A priority Critical patent/JP6127667B2/ja
Publication of JP2014202917A publication Critical patent/JP2014202917A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6127667B2 publication Critical patent/JP6127667B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置およびこれを備える画像形成装置に関する。
プリンター等の画像形成装置は、トナーなどの未定着画像が形成されたシートを定着装置の定着ニップに通すことにより、未定着画像を加熱、加圧により当該シート上に定着するようになっている。定着装置には、例えば誘導発熱層を有する定着ベルトの周回経路の外側に励磁コイルを配置し、励磁コイルに交流電流を流すことによって発生する磁束を誘導発熱層へ導いて定着ベルトを発熱させる電磁誘導加熱方式によるものがある。
このような電磁誘導加熱方式において、定着ベルトの非通紙部の過昇温を抑制するため、定着温度よりも高いキュリー温度を有する感温磁性部材を定着ベルトの周回経路内側の励磁コイルと対向する位置に配した定着装置がある。
かかる感温磁性部材は、定着ベルトの幅方向に沿う長板状であって、定着ベルトの内周面に沿った形状に湾曲加工することにより形成されており、定着ベルトの非通紙部の温度がキュリー温度まで上昇したとき、当該非通紙部に対向する部分が強磁性から常磁性に変化する。それにより、非通紙部の発熱量が低下して、定着ベルトの非通紙部の過昇温を抑制することができる。
このような感温磁性部材は、湾曲加工時に生じる残留応力によって、その磁気特性が低下するため、従来、湾曲加工の後、当該残留応力を解放し磁気特性を回復させるための磁気焼鈍処理が施されている。
特許文献1には、この感温磁性部材が、定着ベルトの内周面に隙間を有して近接して配置された構成が記載されている。
特開2012−203346号公報
しかしながら、上記磁気焼鈍処理において、残留応力の解放に伴って感温磁性部材に反りやねじれなどの変形が生じて、感温磁性部材が部分的に定着ベルトに接触してしまうおそれがあり、当該接触により感温磁性部材、定着ベルトに破損が生じる可能性がある。
これを避けるため、感温磁性部材を定着ベルトから離すと、今度は、感温磁性部材において定着ベルトから離れ過ぎる部分が発生して定着ベルトの温度に対する感度が低下し、非通紙部の過昇温を効果的に抑制することができなくなり、定着ベルトの熱劣化を早めてしまう。
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであって、湾曲加工後の磁気焼鈍処理の際に生じる感温磁性部材の変形を可及的に抑制して、従来よりも感温磁性部材、定着ベルトの耐久性を向上させることができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、未定着画像が形成されたシートを定着ニップに通して、前記未定着画像をシート上に熱定着する電磁誘導加熱方式のものであって、周回駆動される、誘導発熱層を有する無端状のベルトと、前記ベルトの周回経路の外側に配され、当該ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部と、定着温度よりも高いキュリー温度を有し、前記磁束発生部とベルトを挟んで対向配置された感温磁性部材と、を備え、前記感温磁性部材は、長板状であって、長手方向が前記ベルトの幅方向と平行になるように配されると共に、長手方向に直交する断面が、前記ベルトの内周面に沿って湾曲した形状をしており、前記感温磁性部材の外周面および内周面のうち一方の周面には少なくとも周方向に延びる溝が、長手方向における一方の端部側から他方の端部側にわたって、複数条平行に形成されており、長手方向における溝の間隔は、磁気焼鈍処理における前記感温磁性部材の長手方向における変形が抑制される程度に残留応力が分断されて緩和されるように設定されていることを特徴とする。
周方向に延びる溝の幅は2mm以下であるのが望ましい。前記感温磁性部材の外周面および内周面のうち一方の周面には更に、長手方向に延びる溝が複数条形成されており、当該溝の間隔は当該溝の幅以上であって、10mm以下であるのが望ましい。周方向に延びる溝の間隔は当該溝の幅以上であって、50mm以下であるのが望ましい。
同一の方向に延びる溝の間隔が全て等しいのが望ましい。周方向に延びる溝の深さは、前記感温磁性部材の厚さの1/10以上であって、1/2以下であるのが望ましい。周方向に延びる溝は前記感温磁性部材の外周面に形成されていても構わない。
前記感温磁性部材に形成された溝の深さが、キュリー温度に達していないときの表皮深さ以上であるのが望ましい。本発明は、上記構成の定着装置を備えた画像形成装置としてもよい。
上記構成の定着装置によれば、感温磁性部材に形成された複数条の溝によって、感温磁性部材を湾曲形成する際に生じる残留応力を分断して緩和することができる。これにより、感温磁性部材を湾曲させた後に行われる磁気焼鈍処理の際、残留応力の解放に伴って生じる感温磁性部材に反りやねじれなどの変形を、従来よりも抑制できるようになるので、感温磁性部材の変形に起因する感温磁性部材、定着ベルトの破損を抑制することができる。
本発明の第1の実施の形態に係るプリンターの全体の構成を示す図である。 プリンターに設けられる定着部の構成を示す斜視図である。 定着部の構成を示す横断面図である。 定着ベルトと発熱制御板の断面を示す図である。 (a)は、発熱制御板の有する感温磁性層の、溝が形成された外周面を示す斜視図であり、(b)は、感温磁性層の外周面に形成された溝を説明するための図である。 発熱制御板と支持部材の取り付け構成を示す概略斜視図である。 発熱制御板と支持部材を図6の矢印Hで示す方向から見た平面図である。 図3におけるF−F線で定着部を切断したときの矢視断面図である。 (a)は、溝が形成されてない従来構成の感温磁性層を湾曲する曲げ加工したときに生じる応力を説明するための図、(b)は、長手方向の応力の作用を説明する図、(c)は、曲げ加工後に残る残留応力を説明するための図である。 (a)は、残留応力の解放に伴い生じる感温磁性層の変形の具体例を示す図、(b)は、曲げ加工前の感温磁性層に存在する残留応力の例を示す図、(c)は、(b)の残留応力の解放に伴い生じる変形例を示す図である。 (a)は、溝が形成された感温磁性層を湾曲する曲げ加工したときに生じる応力を説明するための図、(b)は、曲げ加工前の感温磁性層に存在する残留応力が、溝により分断されることを説明するための図である。 変形抑制効果および磁束漏れの抑制効果を検証するために用意した比較例を説明するための図である。 (a)は、変形抑制効果の検証結果を示す表であり、(b)は、磁束漏れの抑制効果の検証結果を示す表である。 第2の実施の形態における感温磁性層の、溝が形成された外周面を示す斜視図である。 変形抑制効果および磁束漏れの抑制効果を検証するために用意した比較例を説明するための図である。 (a)は、変形抑制効果の検証結果を示す表であり、(b)は、磁束漏れの抑制効果の検証結果を示す表である。 第3の実施の形態における感温磁性層の、溝が形成された外周面を示す斜視図である。 (a)は、変形抑制効果の検証結果を示す表であり、(b)は、磁束漏れの抑制効果の検証結果を示す表である。
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る画像形成装置の第1の実施の形態について、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして説明する。
(1)プリンターの全体構成
図1は、プリンター1の全体の構成を示す図である。
同図に示すように、プリンター1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像形成部10と、ベルト搬送部20と、給送部30と、定着部40を備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
画像形成部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部10Y〜10Kを備えている。作像部10Yは、感光体ドラム11Yと、その周囲に配設された帯電器12Y、露光部13Y、現像器14Y、一次転写ローラー15Y、感光体ドラム11Yを清掃するためのクリーナなどを備えており、公知の帯電、露光、現像工程を経て感光体ドラム11Y上にY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像部10M〜10Kについて同様であり、対応する色のトナー像が感光体ドラム11M〜11K上に作像される。
ベルト搬送部20は、矢印で示す方向に周回走行される中間転写ベルト21を備える。
給送部30は、給紙カセットから記録用のシートSを搬送路35に1枚ずつ繰り出す。
感光体ドラム11Y〜11K上に作像されたトナー像は、感光体ドラム11Y〜11Kの転写位置において一次転写ローラー15Y〜15Kと感光体ドラム11Y〜11K間に生じる電界による静電力の作用を受けて、周回走行する中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、中間転写ベルト21上において同じ位置に多重転写されるようにタイミングをずらして実行される。
この作像動作のタイミングに合わせて、給送部30からは、シートSが搬送されて来ており、そのシートSは、中間転写ベルト21と、これに圧接された二次転写ローラー22の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラー22に印加された二次転写電圧により生じる電界による静電力の作用を受けて、中間転写ベルト21上の各色トナー像が一括してシートS上に二次転写される。二次転写後のシートSは、定着部40に送られる。
定着部40は、定着ベルト101を備える電磁誘導加熱方式によるものであり、加熱、加圧により二次転写後のシートS上の各色トナー像を定着させる。定着後のシートSは、排出ローラー対38を介して機外に排出され、排紙トレイ39上に収容される。
(2)定着部の構成
図2は、定着部40の構成を示す斜視図であり、図3は、定着部40の構成を示す横断面図である。なお、図2では、説明の便宜上、一部を切り欠いて示している。
両図に示すように、定着部40は、無端状の定着ベルト101、定着ローラー102、加圧ローラー103、磁束発生部104、発熱制御板105、支持部材106、蛇行規制部材107(図8参照)などを備える。
以下、定着部40における各構成要素について詳しく説明する。
(2−1)定着ベルト
定着ベルト101は、円筒状であり、ここでは半径方向にある程度の力を加えると弾性変形し、変形状態から力を離して自由にすると自身の復元力により元の円筒状に戻る自己形状保持可能なものが用いられている。
図4は、定着ベルト101を図3のE−E線で切断したときの断面を示す図であり、定着ベルト101は、その表面側から離型層111、弾性層112、誘導発熱層113が、この順に積層されてなる。離型層111は、例えば厚さが20μmのPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などからなり、弾性層112は、例えば厚さが200μmのシリコーンゴムやフッ素ゴムなどからなる。
誘導発熱層113は、例えば厚さが40μmのニッケルなどからなり、磁束発生部104から発せられる磁束により発熱する。なお、ニッケルに限られず、電磁誘導加熱方式に適用可能な材料であれば、他の磁性材や非磁性材を用いるとしても良い。
図2に戻って、定着ベルト101の幅方向(定着ローラー102の軸方向に相当。以下、「ベルト幅方向」という。)長さは、最大サイズ(例えばA3縦通し)のシートの幅方向長さよりも長い360mmに設定されている。同図では、最大サイズよりもサイズの小さい小サイズ紙が定着ニップNを通過している様子を示している。
(2−2)定着ローラー
定着ローラー102は、長尺状の芯金121の周囲に弾性層122が積層されてなり、定着ベルト101の周回経路(定着ベルト101が周回走行するときの経路:以下、「ベルト周回経路」という。)の内側に配される。
軸部としての芯金121は、例えばステンレスや鉄、アルミニウム等からなる。
弾性層122は、定着ベルト101の熱を芯金121に逃がさないためのものであり、熱伝導率が低く、耐熱性を有する部材、例えばゴム材や樹脂材のスポンジ体等からなる。
定着ローラー102は、芯金121の軸方向両端部が定着部40の装置筐体に軸受部材としてのベアリングを介して回転自在に支持されている。
定着ローラー102の外径は、定着ベルト101の内径よりも小さく、定着ローラー102と定着ベルト101は、定着ニップNで接するので、定着ニップN以外の部分で両者間には隙間(空間)110(図3)が設けられている。
(2−3)加圧ローラー
加圧ローラー103は、長尺状の芯金131の周囲に弾性層132を介して離型層133が積層されてなり、ベルト周回経路の外側に配置され、定着ベルト101を介して定着ローラー102を押圧し、定着ベルト101表面との間に定着ニップNを形成する。
芯金131は、例えばステンレスなどからなり、弾性層132は、例えばゴムからなり、離型層133は、例えばPFAチューブなどからなる。
加圧ローラー103は、芯金131の軸方向両端部が定着部40の装置筐体に軸受部材(不図示)を介して回転自在に支持されており、駆動モータ(不図示)により、図2の矢印Bで示す方向に回転駆動される。加圧ローラー103の回転に従動して、定着ベルト101が矢印Aで示す方向に沿って周回駆動されると共に、定着ローラー102が同方向に回転駆動される。なお、定着ローラー102を駆動側、定着ベルト101と加圧ローラー103を従動側としても良い。
(2−4)磁束発生部
磁束発生部104は、コイルボビン140と励磁コイル141などを有し、定着ベルト101の周回経路の外側であり定着ベルト101の近辺の位置において、定着ベルト101のベルト幅方向に沿うように配置される。
コイルボビン140は、定着ベルト101の周方向(以下、「ベルト周方向」という。)に沿って円弧状に湾曲する部分を含む板状の部材であり、ベルト幅方向の両端部が定着部40の装置筐体に固定されている。
コイルボビン140と定着ベルト101の表面との間隔(ベルト−ボビン間距離)が1〜2mmの範囲内の所定値になるように、コイルボビン140の配設位置が調整される。コイルボビン140の、定着ベルト101側とは反対側には、高透磁率のフェライトなどからなる複数個のコアが配置されている。
励磁コイル141は、ベルト幅方向に沿って長く伸びると共に横断面が円弧状の形状になるようにコイルボビン140に導線を巻き回してなる。励磁コイル141の長手方向長さは、定着ベルト101のベルト幅方向長さよりもやや長くなっている。励磁コイル141は、公知の高周波インバータを含む励磁コイル駆動回路(不図示)に接続され、励磁コイル駆動回路からの交流電力の供給により、定着ベルト101の誘導発熱層113を発熱させるための磁束を発生させる。
励磁コイル141から発せられた磁束は、コイルボビン140に配置された各コアにより定着ベルト101に導かれ、定着ベルト101の誘導発熱層113の、主に磁束発生部104に対向する部分を貫き、この誘導発熱層113の部分に渦電流を発生させて誘導発熱層113を発熱させる。この発熱量は、シートに対してその幅方向にどの位置でも略均一になるようになっている。
この発熱した部分の熱が定着ベルト101の周回駆動により定着ニップNの位置で加圧ローラー103等に伝わることにより、定着ニップNの領域が昇温される。なお、図示していないが定着ベルト101の温度を検出するためのセンサーが別途配置されており、このセンサーの検出信号により定着ベルト101の現在の温度を検出し、この検出温度に基づき定着ニップNの温度が目標の定着温度、例えば180℃に維持されるように励磁コイル141への電力供給が制御される。定着ニップNの温度が目標の定着温度に維持された状態でシートSが定着ニップNを通過する際に、シートS上の未定着のトナー像が加熱、加圧されて当該シートS上に熱定着される。
(2−5)発熱制御板
発熱制御板105は、定着ベルト101内側の空間110内において、定着ベルト101を介して磁束発生部104に対向配置され、定着ベルト101の周方向に沿って円弧状に湾曲して形成されている。また、発熱制御板105は、ベルト幅方向に沿って長尺であり、その長さは定着ベルト101の幅と略同じになっている。
発熱制御板105は、磁束発生部104に対向する、周方向の中央部150と、その周方向両側の平板状の側縁部151,152とを有する。中央部150は、外周の曲率が定着ベルト101の内周の曲率と略等しく、側縁部151,152が支持部材106により支持され、定着ベルト101との間に隙間G(図4参照)を有して近接配置されている。
図4に示すように、発熱制御板105は、定着ベルト101に近い側から、感温磁性層115と非磁性導電層116とがこの順に積層されて構成されている。感温磁性層115と非磁性導電層116とは、ベルト幅方向の長さは等しく、両端が揃えられている。
非磁性導電層116は、比較的電気抵抗率が低い材料、例えば銅またはアルミニウムなどからなる。
感温磁性層115は、定着温度よりも所定温度高い温度にキュリー温度を有する感温磁性材料、例えばパーマロイからなり、キュリー温度を超えると強磁性から常磁性に変化し、キュリー温度以下になると強磁性に戻る可逆的な変化特性を有する。
比透磁率としては、例えば50〜2000、好ましくは100〜1000の範囲内のものを用いることができる。キュリー温度よりも低い温度範囲での体積抵抗率としては、例えば2×10-8〜200×10-8Ωm、好ましくは5×10-8〜100×10-8Ωmの範囲内とすることができる。感温磁性層115の厚さは、例えば100〜1000μm、好ましくは200〜600μmの範囲内とすることができる。キュリー温度は、目標とする定着温度が約180℃の場合には、180〜240℃、好ましくは190〜220℃の範囲内のものを用いることができる。本実施の形態では、厚さが400μm、キュリー温度が220℃のパーマロイが用いられる。
上記のキュリー温度は、パーマロイの成分の比率を変えることにより調整することができ、またクロム、コバルト、モリブデンなどを含む合金とすることによってもキュリー温度を調整することもできる。なお、感温磁性層115の素材は、パーマロイに限られず、例えば整磁合金などキュリー温度を有する他の感温磁性材料を用いることもできる。
感温磁性層115は、加熱された定着ベルト101の熱によって昇温される。連続プリントした場合に、定着ベルト101のシートSの通過しない非通紙部P(図2参照)の温度がシートSにより熱を奪われないために上昇し続けて定着温度よりも高いキュリー温度に達すると、感温磁性層115の非通紙部Pに対応する部分もそれほど時間をおかずにキュリー温度に達し、その磁性が強磁性から常磁性に変化する。感温磁性層115の常磁性に変化した部分では、磁束発生部104からの磁束が通り抜けやすくなって非磁性導電層116に抜けるようになる。このとき、非磁性導電層116に、その磁束を打ち消す反発磁束を発生させる渦電流が流れて、定着ベルト101の非通紙部Pにおける誘導発熱層113の発熱が抑制される(過昇温抑制機能)。
この過昇温抑制機能の作用により定着ベルト101の非通紙部Pの温度がキュリー温度を大幅に超えることがなくなり、定着ベルト101にダメージを与えるような過昇温に至ることを防止することができる。
過昇温抑制機能が有効に機能するよう、感温磁性層115と定着ベルト101との間の上記隙間Gは、できるだけ小さくするのが望ましいが、小さ過ぎると周回駆動される定着ベルト101と接触して破損するおそれがあるため、例えば0.1〜1.0mm程度の微小間隔に設定される。本実施の形態では、この隙間Gが約0.2mmになるように、発熱制御板105が支持部材106により支持されている。
このような感温磁性層115を、上述したように円弧状に湾曲させる曲げ加工すると、加工による残留応力が生じて磁気特性が低下するため、通常、曲げ加工の後に、残留応力を除去(解放)して磁気特性を改善するための磁気焼鈍処理が行われる。ところが、この磁気焼鈍処理においては、磁気特性が改善される一方で、残留応力の解放に伴い感温磁性層に反りやねじれによる変形が生じるおそれがある。変形量が大きいと、変形した感温磁性層115が定着ベルト101に接触するおそれがあるため、隙間Gを大きくしなければならず、それにより、感温磁性層115の定着ベルト101の温度に対する感度が低下し、過昇温抑制機能が有効に機能しなくなるおそれがあり、その結果、定着ベルト101の熱劣化(破損)を早めてしまうという問題を招く。
そこで、本実施の形態では、感温磁性層115の曲げ加工時に生じる残留応力を低減し、磁気焼鈍処理時の変形を抑制するため、図5(a)に示すように、感温磁性層115の外周面115aに長手方向に平行な複数条の溝M1を形成した構成としている。
(感温磁性層における溝の構成)
各溝M1は、外周面115aの長手方向の一端から他端まで延び、かつ周方向に所定の間隔をおいて配されている。
図5(b)は、各溝M1の深さ、幅、間隔などの各寸法を説明するための図である。
本実施の形態における溝M1の深さdは200μm、溝M1の幅Wは1.0mm、隣接する溝M1と溝M1との間の間隔K1は1.0mmとなっている。溝M1は、例えばエッチング等により形成される。
このような溝M1を形成することにより、溝を形成しない場合と比べて、曲げやすくなり、その分、曲げ加工時に生じる残留応力を低減できるので、磁気焼鈍処理時における、感温磁性層115の変形を抑制することができる。詳細については後述する。
なお、非磁性導電層116は、磁気焼鈍処理は不要なので、感温磁性層115と、非磁性導電層116とは、それぞれ別体で形成され、円弧状に曲げ加工される。そして、感温磁性層115を磁気焼鈍処理した後、感温磁性層115と非磁性導電層116とが積層され、発熱制御板105が完成する。
(2−6)支持部材
支持部材106は、例えばステンレスや鉄、アルミニウムなどからなるが、耐熱性を有する部材であれば良く、例えば樹脂を用いることもできる。支持部材106は、発熱制御板105よりも曲率が大きい円弧状に湾曲して形成され、発熱制御板105と定着ローラー102との間に配設されている。
支持部材106の周方向両側の側縁部161,162が、発熱制御板105の側縁部151,152に取り付けられ、これを支持している。この取り付けには、図6に示すように、ハトメ201と座金202が用いられている。このとき、支持部材106の側縁部161,162と発熱制御板105の側縁部151,152との間に、例えば0.1mm程度の隙間を設けて、厚み方向の遊びを確保している。これにより、発熱制御板105と支持部材106のそれぞれの熱膨張率差により生じる熱応力を吸収して、発熱制御板105と支持部材106の変形を抑制することができるようになっている。
側縁部161,162のベルト幅方向の端部には、定着部40の装置筐体191(図8)に取り付けられ固定される取付部164,165が設けられている。
この図6では、ベルト幅方向の一方端側だけの構成を示しており、他方端側については省略しているが、基本的に同じ構成になっている。
図7は、図6の矢印Hで示す方向から見た平面図であり、ハトメ201による締結箇所が示されている。
同図に示すように、ハトメ201による締結箇所は、ベルト幅方向に、間隔を開けてなる200a,200b,200cの3か所である。発熱制御板105および支持部材106において、中央の締結箇所200bのハトメ201を挿通する貫通孔(不図示)は丸穴であり、外側の締結箇所200a,200cのハトメ201を挿通する貫通孔(不図示)は、ベルト幅方向に沿う長穴(小判型)となっている。外側の締結箇所200a,200cの貫通孔を長穴にすることにより、この長穴がベルト幅方向の遊びになる。
このようなハトメ止めを行う場合、各締結箇所200a〜200cにおける、発熱制御板105と定着ベルト101との間、支持部材106と定着ローラー102との間の隙間の大きさは、ハトメ201の頭部の突出量、座金202およびハトメ201のかしめ部分の突出量を考慮して、ハトメ201、座金202が定着ベルト101および定着ローラー102に接触しないように設定される。
(2−7)蛇行規制部材
図8は、図3におけるF−F線で定着部40を切断したときの矢視断面図であり、ベルト幅方向の一方端側だけを示している。
同図に示すように、蛇行規制部材170は、定着ベルト101のベルト幅方向の端面101aに当接して当該幅方向の移動を規制する円環状部171と、定着ベルト101の外周面に当接して径方向の移動を規制する筒状部172とからなる、いわゆるキャップ状であって、不図示の保持部材により保持されている。この構成は、ベルト幅方向の他方の端部側も同様になっている。この蛇行規制部材170により、定着ベルト101の蛇行を規制して、周回経路を安定させることができる。これにより、定着ベルト101の蛇行によって、発熱制御板105と定着ベルト101との間の隙間Gが狭まり接触してしまうことがないようにしている。
(3)溝による感温磁性層の変形抑制効果
(3−1)溝が形成されていない従来構成の感温磁性層の場合
まず、本実施の形態においては、溝による感温磁性層の変形抑制効果を説明する前に、溝が形成されていない従来構成の感温磁性層を用いた場合に生じる、曲げ加工時の残留応力と、当該残留応力に起因する磁気焼鈍処理時の変形について、図9(a)〜(c)を参照しながら説明する。
図9(a)に示すように、感温磁性層905を、プレス加工(プレス力F1)により湾曲させると、湾曲の外周側では周方向の引張応力S1が発生し、湾曲の内周側では周方向の圧縮応力S2が発生する。感温磁性層905の厚み方向の中程に、引張も圧縮も受けない中立面Nができる。中立面Nから外側に離れるほど引張応力S1は大きく、外周面905aで最大になる。一方、中立面Nから内側に離れるほど圧縮応力S2が大きくなる。
また、このとき、感温磁性層905の中立面Nよりも湾曲の外周側部分は、引張応力S1により引っ張られて周方向に伸びるので、それに伴い、当該外周側部分では、ポアソン効果(ある方向に力を加えて変形(たとえば伸び)させると、その直交方向にも反対の変形(圧縮)を生じさせる効果)により、伸びる方向と直交する長手方向に縮もうとする内部応力S3が生じる。反対に、中立面Nよりも内周側部分は、圧縮応力S2により周方向に縮むので、ポアソン効果により、縮む方向と直交する長手方向に伸びようとする内部応力S4が生じる。内部応力S3は、湾曲の外周側部分が伸びるほど大きくなり、内部応力S4は、内周側部分が圧縮されるほど大きくなる。
図9(b)は、このような内部応力S3,S4がもたらす感温磁性層905の変形の一例を説明するためのイメージ図である。同図に示すように、内部応力S3,S4は、感温磁性層905長手方向に反らす(矢印α)力として作用する。
しかしながら、プレス加工では、金型の間に感温磁性層905を挟み込んで強制的に成形するため、上記したような反りαは生じず、内部応力S3,S4が、そのまま残留応力Z3,Z4となって残るようになる(図9(c)参照)。
そして、プレス力F1を解除したとき(プレス加工終了)、図9(c)に示すように、引張応力S1により伸張された部分では、元に戻ろうと縮もうとする力が残留応力Z1となって残り、圧縮応力S2により圧縮された部分では、伸びようとする力が残留応力Z2となって残る。
このような残留応力Z1〜Z4の一部が、磁気焼鈍処理により解放され、その際、感温磁性層905の変形をもたらす。
図10(a)は、残留応力の解放に伴い生じる感温磁性層の変形の具体例を示す図である。なお、図10(a)では、変形を分かり易くするため誇張して描いている。
まず、残留応力Z3,Z4の解放によって、感温磁性層905に長手方向の反りαが生じる。また、残留応力Z1,Z2の解放によって、感温磁性層905の周方向の両端が開くように反りβが生じる。
なお、感温磁性層905内には、上記した曲げ加工時に生じる残留応力Z1〜Z4だけでなく、曲げ加工以前に残量応力が存在するのが通常である。例えば、感温磁性層を構成する薄板部材を形成する圧延工程や、形成した薄板部材から所定のサイズに切り出す切断工程など、各工程で残留応力が生じるので、残留応力が複雑に分布していることの方が多い。
曲げ加工前の、薄板状の感温磁性層905において、例えば、図10(b)に示すような斜め方向の残留応力Z5が存する場合には、当該残留応力Z5の解放に伴い感温磁性層905にねじれ(図10(c)の矢印γで示す変形)が生じる可能性がある。
(3−2)溝が形成された本実施の形態の感温磁性層の場合
これに対して、図11(a)に示す、本実施の形態の感温磁性層115では、外周側の複数条の溝M1が形成された部分では、引張応力がほとんど発生しないと考えられるので、中立面Nは、各溝M1の底面M1aと内周面115bとの間に存し、各溝M1の底面M1aの位置において引張応力が最大になる。
ここで、感温磁性層115と、図9(a)の感温磁性層905との厚みが等しいとすれば、感温磁性層115の中立面Nから溝M1の底面M1aまでの距離、および中立面Nから内周面115bまでの距離は、感温磁性層905の中立面Nからの外周面905aまでの距離、および中立面Nから内周面905bまでの距離よりも短い。よって、感温磁性層115では、各距離が短くなった分、中立面Nより外側の引張応力S1、内側の圧縮応力S2が小さくなる。
つまり、溝により、層の厚みを薄くしたのと同じような効果が得られるようになる。
なお、単純に層の厚みを薄くした場合には、その分、感温磁性層の飽和磁束量が減少して磁束漏れが生じやすくなるが、本実施の形態におけるように所定の条件の溝を形成する場合には、飽和磁束量の減少を抑え、磁束漏れが生じるのを抑制することができる。詳しくは後述する。
これにより、感温磁性層115内の、曲げ加工後に残る周方向の残留応力Z1,Z2が小さくなるので、小さくなった分、磁気焼鈍処理において、残留応力の解放に伴い生じる、図10(a)に示すような周方向の反りβ(変形)を抑制することができる。
また、中立面Nより外側部分における引張応力S1が小さくなることにより、周方向の伸びが抑制されて、長手方向に縮もうとする内部応力S3が小さくなり、中立面Nより内側部分における圧縮応力S2が小さくなることにより、周方向の縮みが抑制されて、長手方向に伸びようとする内部応力S4も小さくなる。
これにより、感温磁性層115内の、曲げ加工後に残る残留応力Z3,Z4も小さくなるので、小さくなった分、磁気焼鈍処理において、残留応力の解放に伴い生じる、図10(a)に示す長手方向の反りα(変形)を抑制することができる。
また、上述した曲げ加工以前に存在する任意の方向における残量応力についても、溝を形成することで部分的に分断して緩和することができる。
例えば、曲げ加工および溝を形成する前の薄板状の感温磁性層115において、斜め方向の残留応力Z5が存在するとした場合(図10(b))、長手方向に沿う溝M1を形成することにより、図11(b)に示すように、各溝M1によって残留応力Z5の長手方向と直交する方向の成分Z5bの一部を分断することができる。これにより、当該残留応力Z5を緩和し、図10(c)に示すようなねじれγの変形を抑制することができる。
残留応力が複雑に分布する場合であっても、各溝M1によって、各残留応力の長手方向と直交する方向の成分の一部を分断する一方、長手方向の成分は残して、曲げ加工以前の残量応力に起因する感温磁性層115の変形を、意図的に長手方向に誘導し単純化している。
これにより、予め実験により、曲げ加工前の感温磁性層を磁気焼鈍処理して長手方向の変形量を求めておけば、変形量を見越した加工ができ、変形が単純化した分、当該変形量を見越した加工によって、磁気焼鈍処理後における感温磁性層の湾曲形状を所望の形状に近づけることができるようになる。
なお、感温磁性層115内における溝M1の底部分では、残留応力の長手方向と直交する方向の成分が残るも、溝が形成されてない感温磁性層905と比べて、溝M1により残留応力を緩和することができるので、磁気焼鈍処理の際に生じる反りやねじれなどの変形を従来よりも抑制することができる。
(4)変形抑制効果の検証について
本実施の形態の感温磁性層115(実施例1)における変形抑制効果を検証するため、図12に示す2つの比較例1,2を用意した。
比較例1は、上記した溝が形成されていない感温磁性層905であり、比較例2は、溝の変わりに貫通孔であるスリットSLが形成された感温磁性層915である。
比較例2の感温磁性層915において、スリットSLの幅は1mm、周方向の間隔は1mmとし、実施例1の感温磁性層115の溝と同じにしている。なお、感温磁性層915の長手方向における強度を確保するため、スリットSLの長手方向の長さL1は50mmとし、当該長手方向には、10mmの間隔K8をおいて複数のスリットSL群が配されている。
実施例1および比較例1,2の各感温磁性層115,905,915は、同一材料かつ同一寸法であり、溝またはスリットを形成する工程が異なるだけで、同じようにプレスによる曲げ加工および磁気焼鈍処理が施されている。
上記の実施例1および比較例1,2において、次の3つの検証1〜3を行った。
まず、検証1は、磁気焼鈍処理後の、感温磁性層の外周面の曲率径(mm)を測定し、基準値との比較によって変形抑制効果を検証するものである。
ここで、曲率径の基準値は19.80mm、その公差は±0.15mmとしている。本実施の形態では、感温磁性層115と定着ベルト101との間の隙間Gの設計値が0.2mmであり、上記公差の範囲内であれば接触しないようになっている。
検証2,3は、実施例1および比較例1,2の感温磁性層115,905,915のそれぞれを、プリンター1の定着部40に取り付け、稼働状態を観察することにより、変形抑制効果が得られているか否かを判定し検証するものである。各プリンター1において、感温磁性層以外の構成は全く同じである。
この変形抑制効果が得られているか否かの判定は、次のようにして感温磁性層が定着ベルト101に接触しているか否かを判定することにより行う。
すなわち、検証2では、ウォームアップ時の、定着ベルトの昇温に要する時間を測定し、基準時間以内であれば、特に問題はないので、感温磁性層が定着ベルト101に接触していないと判定するが、基準時間を超えている場合には、定着ベルトの発熱効率が低下している原因として、定着ベルト101に感温磁性層が接触し熱伝導による熱ロスが生じている可能性が高いことから、感温磁性層が定着ベルト101に接触していると判定する。
ここでは、定着部40の磁束発生部104への供給電力を800Wに固定して、定着ベルト101のベルト幅方向の中央部の温度が23℃から120℃まで上昇するのに要する時間を測定している。
また、検証3では、500枚の連続プリント(A4縦通し)した後の、定着ベルト101の非通紙部Pの温度を測定し、基準温度(例えば定着ベルトの耐熱温度)未満であれば、特に問題はなく、発熱制御板の過昇温抑制機能が有効に機能していると判断し、感温磁性層が定着ベルト101に接触していないと判定する。なお、基準温度以上の場合には、発熱制御板の過昇温抑制機能が有効に機能していないと判断され、その原因として、感温磁性層が定着ベルト101に接触している可能性が高いことから、感温磁性層が定着ベルト101に接触していると判定する。以下、この基準温度を「第1の基準温度」という。
発熱制御板は、非磁性導電層に渦電流を発生させて非通紙部Pの温度上昇を抑制する過昇温抑制機能を有するが、その反面、渦電流による自己発熱によって温度上昇し、連続プリントした場合には、自己発熱により過昇温するおそれがある。このため、500枚もの大量に連続プリントしたときには、過昇温となってその状態が続くようになるので、発熱制御板(感温磁性層)が定着ベルト101に接触しているときには、発熱制御板の高熱が定着ベルト101の非通紙部Pに熱伝導して過昇温を引き起すことになって、耐熱温度を超えてしまうという事態が生じ得る。
ここでは、第1の基準温度を定着ベルトの耐熱温度とし、連続プリント枚数を、発熱制御板が定着ベルト101に接触している場合に、定着ベルト101の非通紙部Pが過昇温して耐熱温度に達する500枚としている。
(検証結果)
図13(a)は、上記検証1〜3の結果を示す表である。
まず、検証1では、感温磁性層115,905,915の外周面における曲率径の測定値が基準値(19.80±0.15mm)の範囲内であれば、変形量が少なく変形抑制効果が得られているとして良好「○」と判定し、基準値を超えていれば、変形量が多く変形抑制効果が得られていない不良「×」と判定した。
曲率径の測定値は、三次元形状測定器を用いて、各感温磁性層の外周形状を測定して算出したものである。なお、実施例1の感温磁性層115では、溝M1部分を除いた外周の輪郭形状を測定している。
測定した結果、実施例1の曲率径は、19.80±0.10mm、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。
一方、比較例1の曲率径は、19.80±0.20mm、比較例2の曲率径は、19.80±0.26mmであり、いずれも判定は「×」である。
なお、比較例2のスリットが形成された感温磁性層915において、判定は「×」になっているのは、スリットによって強度不足が生じて歪んだものと考えられる。実施例1の溝M1は、感温磁性層115を貫通せず底部を残しているので、その分、強度が確保されており、強度不足による歪みが生じるのを抑制できている。
次に、検証2では、定着ベルトの昇温に要する基準時間を10秒としている。この時間(10秒)は、感温磁性層が定着ベルトに接触していない場合に達せられる時間として、予め実験により求められた時間である。
そして、測定した昇温時間が基準時間以下であれば、変形抑制効果が得られ、感温磁性層が定着ベルトに接触していないとして良好「○」と判定し、基準時間を超えていれば、変形抑制効果が得られず、感温磁性層が定着ベルトに接触しているとして不良「×」と判定した。
測定した結果、実施例1の昇温時間は9.2秒、判定は良好「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。
一方、比較例1の昇温時間は11.6秒、比較例2の昇温時間は12.0秒で、いずれも判定は「×」であり、変形抑制効果が得られていないと判定される。
検証3では、第1の基準温度を、定着ベルト101の耐熱温度240℃としている。
500枚の連続プリント後に測定した定着ベルト101の非通紙部Pの温度が、240℃未満の場合は、変形抑制効果が得られ、感温磁性層が定着ベルトに接触していないとして良好「○」と判定し、240℃を超えていれば、変形抑制効果が得られず、感温磁性層が定着ベルトに接触しているとして不良「×」と判定した。
測定した結果、実施例1の測定温度は235℃、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。
一方、比較例1の測定温度は242℃、比較例2の測定温度は240℃で、いずれも判定は「×」であり、変形抑制効果が得られていないと判定される。
上記検証1〜3の結果より、実施例1は、変形抑制効果が得られていると判定され、図13(a)の評価欄701に「○」が記載されている。一方、比較例1,2は、変形抑制効果が得られていないと判定され、当該評価欄701に「×」が記載されている。
(5)磁束漏れの検証について
次に、感温磁性層115に、溝M1を形成することにより懸念される磁束漏れについても、上記比較例1,2と比較して検証を行った(検証4,5)。
検証4は、ウォームアップ時の、非磁性導電層116の昇温速度(℃/秒)を測定し、基準値との比較によって磁束漏れが抑制されているか否かを検証するものである。
感温磁性層115において磁束漏れが生じると、非磁性導電層116では、漏れた磁束によって渦電流が発生し自己発熱して昇温される。よって、磁束漏れが多いほど非磁性導電層116の昇温速度が高くなるので、昇温速度を測定することにより磁束の漏れが多いか少ないかを判断することができる。
検証5は、500枚の連続プリント(A4縦通し)を実行した後の、感温磁性層115の中央部の温度を測定し、基準温度(例えばキュリー温度)以上の場合は、漏れ磁束によって非磁性導電層116に渦電流が生じて発熱し、その熱により感温磁性層115が昇温されていると判断することができる。よって、この場合は、磁束漏れが抑制できていないと判定する。なお、基準温度未満であれば、漏れ磁束によって生じる非磁性導電層116の渦電流による熱の影響がそう大きくはないと考えることができるので、磁束漏れを抑制できていると判定する。以下、この基準温度を「第2の基準温度」という。
(検証結果)
図13(b)は、上記検証4,5の結果を示す表である。
まず、検証4での昇温速度の基準値は、2.5℃/秒としている。
この基準値は、非磁性導電層116の、ウォームアップ時に加熱される定着ベルトの熱による昇温を考慮したものであり、かつ漏れ磁束によって生じる非磁性導電層116の渦電流により、定着ベルトの加熱が抑制され過ぎないよう、予め実験により求められた漏れ磁束の許容範囲に基づいて設定されたものである。
測定した昇温速度が基準値よりも低い場合は、漏れ磁束により発生する渦電流による自己発熱は少なく、磁束漏れの抑制効果が良好「○」と判定し、昇温速度が基準値を超えて高い場合は、渦電流による自己発熱が多くなっていることから、磁束漏れの抑制効果が不良「×」と判定した。
実施例1の昇温速度は2.18℃/秒、判定は「○」であり、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。
溝が形成されていない比較例1では、その昇温速度が2.20℃/秒と、実施例1よりも若干高くなっているが、昇温速度の差は僅かであり(0.02℃/秒)、誤差の範囲内であると考えられる。当然に、判定は「○」であり、磁束漏れが抑制されている。
一方、比較例2の昇温速度は2.92℃/秒で、判定は「×」であり、スリットから漏れる磁束の影響が大きいことが確認された。
次に、検証5では、第2の基準温度を、感温磁性層115のキュリー温度220℃としている。測定した温度が第2の基準温度よりも低い場合は、磁束漏れの抑制効果が良好「○」であると判定し、第2の基準温度を超える場合は、磁束漏れの抑制効果が不良「×」であると判定した。
実施例1の測定温度は202℃、判定は「○」であり、この検証でも、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。また、比較例1の測定温度は208℃、判定は「○」であり、磁束漏れを抑制できている。
一方、比較例2の測定温度は265℃で、判定は「×」である。比較例2の場合、定着ベルトの中央部の温度が定着温度に保たれ、感温磁性層の温度がキュリー温度より低いときでも、スリットから磁束が漏れるため、非磁性導電層116に渦電流が生じて発熱し、その熱によって感温磁性層が昇温されてしまうからである。
実施例1の測定温度が、比較例1よりも5℃低いのは、溝M1によって感温磁性層115に発生する渦電流を抑制し、自己発熱するのを抑制することができているからである。この場合、感温磁性層115内で発生する当該渦電流により定着ベルトの加熱が抑制されるのを抑えることができるという利点を有する。
本検証5では、上記検証3と同じタイミング(500枚の連続プリント後)で測定しているが、異なるタイミング(例えば100枚の連続プリント後)でも構わない。その場合、上記第2の基準温度は、連続プリント枚数が変わって昇温される時間長さが変わる分を考慮して設定される。
(6)溝の深さ、幅および間隔の設定範囲について
次に、感温磁性層115に形成される溝M1の深さd、溝M1の幅W、隣接する溝M1間の間隔K1における設定範囲について説明する。
まず、溝M1の深さdが、感温磁性層115の厚さT(溝M1以外の部分)の1/10未満だと、溝M1の底部分の厚さと溝M1以外の部分の厚さTとが大きくは変わらないので、曲げやすさも大きく変わらず、曲げ加工時に生じる残留応力の抑制効果が十分に得られない可能性がある。一方、溝M1の深さdが、感温磁性層115の厚さTの1/2を超えると、感温磁性層115の強度が低下し、強度不足により形状が歪むおそれが生じる。これらより、溝M1の深さdは、感温磁性層115の厚さTの1/10以上1/2以下が望ましい。
溝M1の幅Wが2mmを超えると、溝部分(薄肉部)において強度不足が生じるおそれがある。よって、溝M1の幅Wは、2mm以下にするのが望ましい。また、幅Wを2mm以下と小さくすることによって、溝部分(薄肉部)から磁束が漏れるのを効果的に抑制することができるという利点もある。なお、溝M1の幅Wの下限は、加工精度によって決定されるものであって、特に限定されない。
溝M1間の間隔K1が10mmを超えると、曲げやすさの効果は得られ難くなり、曲げ加工時に生じる残留応力の抑制効果が十分に得られない可能性がある。また、溝M1間の間隔K1が幅W未満とすると、感温磁性層115における溝部分(薄肉部)と溝間の間隔部分(厚肉部)との比率をみたとき、薄肉部の方が厚肉部よりも大きくなるため、強度不足が生じて形状が歪むおそれがある。これらより、溝M1間の間隔K1は溝の幅W以上10mm以下が望ましい。
上記設定範囲内であれば、磁束漏れも効果的に抑制することができる。
また、感温磁性層115内に生じる渦電流を効果的に抑制するという観点から、溝M1の深さdは、表皮深さ以上が望ましい。
例えば、感温磁性層115のキュリー温度に達する前の透磁率をμ、体積抵抗率をρとし、磁束の角周波数をωとした場合に、溝M1の深さdを、上記設定範囲内であって、かつ次の関係式を満たすように設定するのが望ましい。
Figure 0006127667
上記関係式を満たすように設定することにより、感温磁性層115において、溝M1と溝M1との間を超えて流れるようとする渦電流の大部分を抑制することができるので、渦電流を抑制した分、定着ベルト101の発熱効率の低下を抑えることができる。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、感温磁性層に、周方向に延びる溝を設けた構成としている点で、長手方向に延びる溝が設けられた構成の第1の実施の形態と異なっている。
その他の構成については、基本的に第1の実施の形態のプリンター1と同様であるので、同じ構成については、同じ符号で示し、その説明を省略する。
図14は、本実施の形態の感温磁性層215を示す斜視図である。
同図に示すように、感温磁性層215の外周215aには、周方向に平行な複数条の溝M2が形成されている。各溝M2は、周方向における一端から他端まで延びており、長手方向に所定の間隔K2をおいて配されている。溝M2間の間隔K2は、感温磁性層215の長手方向の強度低下を考慮し、10.0mmとしている。
なお、感温磁性層215の厚さは400μm、溝M2の深さは200μm、溝M2の幅Wは1.0mmとし、第1の実施の形態と同じにしている。
このような周方向に延びる溝M2の場合、第1の実施の形態のような、曲げやすくなるという効果は得にくいものの、当該溝M2によって、曲げ加工の際に長手方向に生じる残留応力(図10(a)の残留応力Z3,Z4)の連続性を断つことができるので、磁気焼鈍処理の際に、長手方向の反りαが生じるのを抑制することができる。
また、溝M2の形成によって、曲げ加工以前に存在する残留応力、例えば図10(b)の残留応力Z5などの長手方向の成分を分断することができる。これにより、磁気焼鈍処理の際の、感温磁性層215の変形を周方向に誘導し単純化することができるので、本実施の形態においても、図10(c)に示すようなねじれγが生じるのを抑制することができる。また、この場合、変形を周方向に単純化することにより、第1の実施し形態と同様、変形量を見越した加工が行いやすい。
さらに、溝M2によって、感温磁性層215に生じる渦電流の発生を抑制することができるので、当該渦電流により定着ベルトの発熱効率が低下するのを抑制することができる。
(1)変形抑制効果の検証について
本実施の形態の感温磁性層215(実施例2)における変形抑制効果について、第1の実施の形態と同じ検証1〜3を行った。
また、比較のため、図15に示す、周方向に延びる溝M9の幅を広くした感温磁性層925を用意した(比較例3)。
比較例3の感温磁性層925の溝幅W9は10.0mmとしている。それ以外は、実施例2と同じ構成である。
図16(a)に示すように、検証1の結果、実施例2の曲率径は、基準値以内の19.80±0.12mm、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。
一方、比較例3の曲率径は、基準値を超える19.80±0.20mm、判定は「×」である。比較例3では、実施例2と比べて、溝の幅が広がった分、薄肉部分の面積が増えて強度が低下し、それにより歪みが生じたものと考えられる。
次に、検証2では、実施例2の昇温時間は、基準時間内の9.1秒、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。一方、比較例3の昇温時間は、基準時間を超える11.3秒、判定は「×」であり、変形抑制効果が得られていないと判定される。
検証3では、実施例2の測定温度は、第1の基準温度未満の230℃、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。一方、比較例3の測定温度は、第1の基準温度を超える241℃、判定は「×」であり、変形抑制効果が得られていないと判定される。
上記検証1〜3の結果より、実施例2は、変形抑制効果が得られていると判定され、図16(a)の評価欄701に「○」が記載され、比較例3は、変形抑制効果が得られていないと判定され、当該評価欄701に「×」が記載されている。
(2)磁束漏れの検証について
次に、磁束漏れについても、第1の実施の形態と同じ検証4,5を行った。
図16(b)に示すように、検証4の結果、実施例2の昇温速度は、基準値未満の2.18℃/秒、判定は「○」であり、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。
一方、比較例3の昇温速度は、基準値を超える2.53℃/秒であることから、磁束漏れの抑制効果が得られていない不良「×」と判定される。これは、溝の幅が広がった分、薄肉部分の面積が増えて磁束が漏れやすくなったからだと考えられる。
次に、検証5では、実施例2の測定温度は、第2の基準温度未満の202℃、判定は「○」であり、この検証でも、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。
一方、比較例3の測定温度は、第2の基準温度以上の265℃であることから、この検証でも、磁束漏れの抑制効果が得られていない「×」と判定された。
(3)溝の間隔(長手方向)について
周方向に延びる溝M2の、長手方向の溝M2間の間隔K2が、5mm未満だと、感温磁性層215において長手方向の強度が不足して変形しやすくなるおそれがある。一方、間隔K2が50mmを超えると、曲げ加工時に生じる長手方向の残留応力や曲げ加工以前に存在する残留応力の、長手方向の成分を分断して緩和することが十分に行えなくなって、磁気焼鈍処理の際に生じる反りやねじれによる変形を抑制できなくなるおそれがある。これらより、間隔K2は、5mm以上50mm以下が望ましい。
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態は、感温磁性層に、周方向に延びる溝に加え、さらに長手方向に延びる溝を設けた構成としている点で、周方向に延びる溝のみが設けられている第2の実施の形態と異なっている。
その他の構成については、第2の実施の形態と同様であるので、同じ構成については、同じ符号で示し、その説明を省略する。
図17は、本実施の形態の感温磁性層315を示す斜視図である。
同図に示すように、感温磁性層315の外周315aには、周方向に沿って一端から他端まで延びる複数条の溝M2と、長手方向に沿って一端から他端まで延びる複数条の溝M1とが形成されている。
隣接する溝M2間の間隔K2、および隣接する溝M1間の間隔K3は、それぞれ10.0mmとしている。
この場合、長手方向に延びる溝M1を、周方向に所定の間隔K3を置いて配することにより、曲げやすくなるので、第1の実施の形態と同様、曲げ加工の際に生じる周方向の残留応力(図10(a)の残留応力Z1,Z2)を抑制することができ、磁気焼鈍処理の際に、周方向の反りβが生じるのを抑制することができる。また、曲げやすくなる分、曲げ加工の際に長手方向に生じる残留応力(図10(a)の残留応力Z3,Z4)を低減できるとともに、第2の実施の形態と同様、各溝M2によって、当該残留応力Z3,Z4の長手方向の連続性を断つことができるので、磁気焼鈍処理の際に、長手方向の反りαが生じるのを抑制することができる。
さらに、曲げ加工以前に存在する残留応力については、溝M1,M2により、周方向の成分および長手方向の成分をそれぞれ分断して、全体的に緩和することができるので、当該曲げ加工以前に存在する残留応力によるねじれγ(図10(c)参照)が生じるのを従来よりも抑制することができる。
(1)変形抑制効果の検証について
本実施の形態の感温磁性層315(実施例3)における変形抑制効果について、第1および第2の実施の形態と同じ検証1〜3を行った。
図18(a)に示すように、検証1の結果、実施例3の曲率径は、基準値以内の19.80±0.12mm、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。
また、検証2における実施例3の昇温時間は、基準時間内の9.0秒、判定は「○」であり、検証3における実施例3の測定温度は、第1の基準温度未満の230℃、判定は「○」である。これらからも、変形抑制効果が得られていることが確認された。
(2)磁束漏れの検証について
図18(b)に示すように、検証4の結果、実施例3の昇温速度は、基準値未満の2.19℃/秒、判定は「○」であり、検証5の結果、実施例3の測定温度は、第2の基準温度未満の202℃、判定は「○」である。これらより、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、感温磁性層115,215,315それぞれの、定着ベルト101側となる外周面に溝を形成した構成を示したが、これに限定するものではない。
感温磁性層115,215,315の、定着ベルト101側とは反対側の内周面に溝を形成する構成としても構わない。この場合も、外周面に溝を形成した場合と同様、形成した溝によって曲げ加工時に生じる残留応力を抑制することができるので、磁気焼鈍処理の際の、残留応力の解放に伴い生じる反りやねじれなどの変形を抑制することができる。それにより、感温磁性層の変形に起因する感温磁性層および定着ベルトが破損するのを抑制することができる。
(2)上記実施の形態では、各感温磁性層115,215,315と定着ベルト101とが隙間を有して近接配置された非接触の構成を示したが、これに限定するものではなく、定着ベルトの内周面に感温磁性層を面接触させる構成としても構わない。
この場合、定着ベルトの熱が感温磁性層に熱伝導するので、定着ベルトの温度に対する感度を高められるという利点がある一方で、接触する分、感温磁性層および定着ベルトが劣化しやすいことから、できる限り接触圧が小さくなるように構成される。
ところが、上述したように、感温磁性層を構成する薄板部材を、磁気焼鈍処理において反りやねじれによる変形が生じると、感温磁性部材と定着ベルトとの間の接触圧にバラツキが生じて、接触圧が高くなった部分において感温磁性部材や定着ベルトが破損しやすくなって寿命を縮めてしまう。そこで、本発明を適用することにより、感温磁性層を構成する薄板部材の変形を抑制することができるので、接触圧が部分的に高くなって感温磁性層および定着ベルトが破損するのを抑えることができ、その結果、寿命の低下を防ぐことができるようになる。
(3)上記実施の形態では、感温磁性層の長手方向または周方向に平行な溝を設けた構成を示したが、完全に平行でなくてもよい。
例えば、実際に生じうる製造誤差を考慮すると、溝が、感温磁性層の長手方向または周方向に対して平行度0.1〜0.5mm程度傾斜していてもよい。
ここで、「平行度」とは、完全に平行であるときの位置を基準位置とした場合に、その位置からのずれの大きさを表し、それにより平行の度合いを示すものである。
例えば、平行度0.1mmとは、長手方向の溝の場合、溝の一端の幅方向中心位置を通過する長手方向の直線を基準線とすると、溝の他端の幅方向中心位置が、基準線から0.1mm離れた位置にあることを意味する。また、周方向の溝の場合には、溝の一端の幅方向中心位置を含み、かつ感温磁性層の長手方向と直交する面を基準面とすると、溝の他端の幅方向中心位置が、基準面より0.1mm離れた位置にあることを意味する。
(4)上記実施の形態では、感温磁性層115と非磁性導電層116とを積層して一体化した構成を示したが、これに限定するものではない。
例えば、感温磁性層115と非磁性導電層116とを積層せず、これらを別体にして隙間を有して近接配置するように構成しても構わない。
(5)また、上記実施の形態では、感温磁性層115と非磁性導電層116とを組み合わせて定着ベルトの過昇温を抑制させる構成を示したが、これに限定するものではない。
例えば、非磁性導電層116を設けないで、感温磁性層115だけの構成としても構わない。感温磁性層115がキュリー温度まで上昇し、磁性が強磁性から常磁性に変化した部分では、磁束発生部104からの磁束が通り抜けて発散するため、定着ベルトの発熱効率が低下し、感温磁性層115単体だけでも、定着ベルトが過昇温するのをある程度抑制することができる。なお、感温磁性層115に非磁性導電層116を組み合わせて用いる方が、より効果的に過昇温を抑制することができることは言うまでもない。
(6)上記実施の形態では、非磁性導電層116の長さを、感温磁性層115と同じにして、定着ベルト101の幅方向の一端から他端に亘って、非磁性導電層116が設けられた構成を示したが、これに限定するものではない。
例えば、ベルト幅方向において、定着ベルト101の、最小サイズのシート(例えば、はがき縦)の通過しない非通紙部に相当する領域にのみ、非磁性導電層を設けて、その間の通紙部に相当する領域には非磁性導電層を設けない構成としても構わない。印刷の際、当該通紙部は、定着温度になるように常に温度制御されているので、過昇温となるおそれがないからである。
(7)上記実施の形態では、溝間の間隔を全て等しい構成を示したが、これに限定するものではなく、間隔を異なせて溝を配しても構わない。
上述したように、長手方向に延びる溝M1の場合、溝M1間の間隔K1は溝の幅W以上10mm以下、周方向に延びる溝M2の場合、溝M2間の間隔K2は5mm以上50mm以下の範囲内であれば、溝間の間隔が等しくなくても、曲げ加工時に生じる残留応力を抑制することができて、磁気焼鈍処理の際に生じる反りやねじれによる変形を抑制することができる。
(8)第1の実施の形態では、感温磁性層115と非磁性導電層116とが積層されて、発熱制御板105が作製されている構成を示したが、発熱制御板105の作製方法を限定するものではない。
例えば、感温磁性層115に溝を形成して円弧状に曲げ加工した後、かつ磁気焼鈍処理の前または後に、感温磁性層115の内周面に、非磁性導電層116を構成する材料(例えば銅またはアルミニウム)を、例えば鍍金、蒸着などして積層させて作製することもできる。
(9)上記実施の形態では、発熱制御板105と支持部材106とをハトメ止めにより締結する構成を示したが、これに限定するものではない。
例えば、ハトメに代えて、リベットを用いる構成としても良い。
また、締結箇所の数や位置についても、上記実施の形態の構成に限定されるものではない。装置構成に応じて適した数や位置などが決められる。
(10)上記実施の形態では、支持部材106の形状が、発熱制御板105と同じように、円弧状に湾曲してなる構成を示したが、これに限定するものではない。例えば、支持部材106の横断面の形状が、1以上の角部を有する形状としても良い。
(11)上記実施の形態では、定着ベルト101の周回経路の内側に定着ローラー102を配置する構成例を説明したが、定着ベルト101の周回経路の外側から加圧ローラー103などの加圧部材に定着ベルト101を介して押圧され、定着ニップNを確保可能な被加圧部材であれば、ローラー形状のものに限られない。例えば、ローラーに代えて固定パッドを用いることもできる。
また、加圧部材として加圧ローラー103を設ける構成例を説明したが、これに限られず、例えば加圧パッドなどを用いるとしても良い。
(12)上記実施の形態では、本発明に係る定着装置および画像形成装置をタンデム型カラープリンターに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、誘導発熱層を有する無端状のベルトの周回経路の外側に、ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部を配置しつつ、ベルトの周回経路の内側に、定着温度よりも高い所定温度(キュリー温度)を超えると磁性を失う整磁合金層を有する発熱制御板を配置する構成の電磁誘導加熱方式の定着装置およびこれを備える画像形成装置であれば、例えば複写機、ファクシミリ装置、多機能複合機(MFP:Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置に適用することができる。
1 プリンター
10 画像形成部
10Y〜10K 作像部
11 感光体ドラム
12 帯電器
13 露光部
14 現像器
20 ベルト搬送部
30 給送部
40 定着部
101 定着ベルト
102 定着ローラー
103 加圧ローラー
104 磁束発生部
105 発熱制御板
106 支持部材
115 感温磁性層
115,215,315 感温磁性層
116 非磁性導電層
170 蛇行規制部材
171 円環状部
172 筒状部
191 装置筐体
K1,K2,K3 間隔(溝間の間隔)
M1,M2 溝

Claims (9)

  1. 未定着画像が形成されたシートを定着ニップに通して、前記未定着画像をシート上に熱定着する電磁誘導加熱方式の定着装置であって、
    周回駆動される、誘導発熱層を有する無端状のベルトと、
    前記ベルトの周回経路の外側に配され、当該ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部と、
    定着温度よりも高いキュリー温度を有し、前記磁束発生部とベルトを挟んで対向配置された感温磁性部材と、を備え、
    前記感温磁性部材は、長板状であって、長手方向が前記ベルトの幅方向と平行になるように配されると共に、長手方向に直交する断面が、前記ベルトの内周面に沿って湾曲した形状をしており、
    前記感温磁性部材の外周面および内周面のうち一方の周面には少なくとも周方向に延びる溝が、長手方向における一方の端部側から他方の端部側にわたって、複数条平行に形成されており、長手方向における溝の間隔は、磁気焼鈍処理における前記感温磁性部材の長手方向における変形が抑制される程度に残留応力が分断されて緩和されるように設定されている
    ことを特徴とする定着装置。
  2. 周方向に延びる各溝の幅は2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記感温磁性部材の外周面および内周面のうち一方の周面には更に、長手方向に延びる溝が複数条形成されており、当該溝の間隔は当該溝の幅以上であって、10mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
  4. 周方向に延びる溝の間隔は当該溝の幅以上であって、50mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の定着装置。
  5. 同一の方向に延びる溝の間隔が全て等しいことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の定着装置。
  6. 周方向に延びる溝の深さは、前記感温磁性部材の厚さの1/10以上であって、1/2以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の定着装置。
  7. 周方向に延びる溝前記感温磁性部材の外周面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の定着装置。
  8. 前記感温磁性部材に形成されたの深さが、キュリー温度に達していないときの表皮深さ以上であることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
JP2013078905A 2013-04-04 2013-04-04 定着装置および画像形成装置 Active JP6127667B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013078905A JP6127667B2 (ja) 2013-04-04 2013-04-04 定着装置および画像形成装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013078905A JP6127667B2 (ja) 2013-04-04 2013-04-04 定着装置および画像形成装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014202917A JP2014202917A (ja) 2014-10-27
JP6127667B2 true JP6127667B2 (ja) 2017-05-17

Family

ID=52353391

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013078905A Active JP6127667B2 (ja) 2013-04-04 2013-04-04 定着装置および画像形成装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6127667B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7176322B2 (ja) * 2018-09-25 2022-11-22 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 定着装置及びこれを用いた画像形成装置
JP7225668B2 (ja) * 2018-10-19 2023-02-21 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 定着装置及び画像形成装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06170938A (ja) * 1992-12-02 1994-06-21 Ricoh Co Ltd 湾曲加工方法及び湾曲加工装置
US20090028617A1 (en) * 2005-03-15 2009-01-29 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. Fixing apparatus, heating roller, and image forming device
JP2010224370A (ja) * 2009-03-25 2010-10-07 Fuji Xerox Co Ltd 定着装置、および画像形成装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014202917A (ja) 2014-10-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8983352B2 (en) Fixing device and image forming apparatus provided with the same
JP2010231094A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2007264421A (ja) 定着部材、定着装置及び画像形成装置
JP2015118234A (ja) 定着装置、及びその定着装置を備える画像形成装置
JP2010060595A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP6127667B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2007114524A (ja) 定着装置および定着ベルトの劣化判定方法
JP5800688B2 (ja) 像加熱装置
US8498562B2 (en) Fixing device and image forming apparatus comprising the same
JP4781457B2 (ja) 画像加熱装置及びこれを備えた画像形成装置
JP5839258B2 (ja) 定着装置及びこれを備えた画像形成装置
JP4760860B2 (ja) 定着装置およびこれを備える画像形成装置
JP2006011217A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2011039242A (ja) 定着装置およびこれを備える画像形成装置
JP2010224342A (ja) 定着装置、および画像形成装置
JP2010230932A (ja) 定着装置、および画像形成装置
JP2010224370A (ja) 定着装置、および画像形成装置
JP2010231106A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5488683B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5169201B2 (ja) 誘導加熱装置,定着装置および画像形成装置
JP5136097B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP4296984B2 (ja) 定着装置及び画像形成装置
JP5016388B2 (ja) 定着装置及び画像形成装置
JP7158961B2 (ja) 画像加熱装置及び回転体
JP2009198802A (ja) 定着装置及び画像形成装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160908

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160920

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161121

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170314

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170327

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6127667

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150