JP6127667B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents
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Description
かかる感温磁性部材は、定着ベルトの幅方向に沿う長板状であって、定着ベルトの内周面に沿った形状に湾曲加工することにより形成されており、定着ベルトの非通紙部の温度がキュリー温度まで上昇したとき、当該非通紙部に対向する部分が強磁性から常磁性に変化する。それにより、非通紙部の発熱量が低下して、定着ベルトの非通紙部の過昇温を抑制することができる。
特許文献1には、この感温磁性部材が、定着ベルトの内周面に隙間を有して近接して配置された構成が記載されている。
これを避けるため、感温磁性部材を定着ベルトから離すと、今度は、感温磁性部材において定着ベルトから離れ過ぎる部分が発生して定着ベルトの温度に対する感度が低下し、非通紙部の過昇温を効果的に抑制することができなくなり、定着ベルトの熱劣化を早めてしまう。
以下、本発明に係る画像形成装置の第1の実施の形態について、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして説明する。
(1)プリンターの全体構成
図1は、プリンター1の全体の構成を示す図である。
給送部30は、給紙カセットから記録用のシートSを搬送路35に1枚ずつ繰り出す。
感光体ドラム11Y〜11K上に作像されたトナー像は、感光体ドラム11Y〜11Kの転写位置において一次転写ローラー15Y〜15Kと感光体ドラム11Y〜11K間に生じる電界による静電力の作用を受けて、周回走行する中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、中間転写ベルト21上において同じ位置に多重転写されるようにタイミングをずらして実行される。
(2)定着部の構成
図2は、定着部40の構成を示す斜視図であり、図3は、定着部40の構成を示す横断面図である。なお、図2では、説明の便宜上、一部を切り欠いて示している。
以下、定着部40における各構成要素について詳しく説明する。
(2−1)定着ベルト
定着ベルト101は、円筒状であり、ここでは半径方向にある程度の力を加えると弾性変形し、変形状態から力を離して自由にすると自身の復元力により元の円筒状に戻る自己形状保持可能なものが用いられている。
図2に戻って、定着ベルト101の幅方向(定着ローラー102の軸方向に相当。以下、「ベルト幅方向」という。)長さは、最大サイズ(例えばA3縦通し)のシートの幅方向長さよりも長い360mmに設定されている。同図では、最大サイズよりもサイズの小さい小サイズ紙が定着ニップNを通過している様子を示している。
定着ローラー102は、長尺状の芯金121の周囲に弾性層122が積層されてなり、定着ベルト101の周回経路(定着ベルト101が周回走行するときの経路:以下、「ベルト周回経路」という。)の内側に配される。
軸部としての芯金121は、例えばステンレスや鉄、アルミニウム等からなる。
定着ローラー102は、芯金121の軸方向両端部が定着部40の装置筐体に軸受部材としてのベアリングを介して回転自在に支持されている。
定着ローラー102の外径は、定着ベルト101の内径よりも小さく、定着ローラー102と定着ベルト101は、定着ニップNで接するので、定着ニップN以外の部分で両者間には隙間(空間)110(図3)が設けられている。
加圧ローラー103は、長尺状の芯金131の周囲に弾性層132を介して離型層133が積層されてなり、ベルト周回経路の外側に配置され、定着ベルト101を介して定着ローラー102を押圧し、定着ベルト101表面との間に定着ニップNを形成する。
芯金131は、例えばステンレスなどからなり、弾性層132は、例えばゴムからなり、離型層133は、例えばPFAチューブなどからなる。
磁束発生部104は、コイルボビン140と励磁コイル141などを有し、定着ベルト101の周回経路の外側であり定着ベルト101の近辺の位置において、定着ベルト101のベルト幅方向に沿うように配置される。
コイルボビン140は、定着ベルト101の周方向(以下、「ベルト周方向」という。)に沿って円弧状に湾曲する部分を含む板状の部材であり、ベルト幅方向の両端部が定着部40の装置筐体に固定されている。
励磁コイル141は、ベルト幅方向に沿って長く伸びると共に横断面が円弧状の形状になるようにコイルボビン140に導線を巻き回してなる。励磁コイル141の長手方向長さは、定着ベルト101のベルト幅方向長さよりもやや長くなっている。励磁コイル141は、公知の高周波インバータを含む励磁コイル駆動回路(不図示)に接続され、励磁コイル駆動回路からの交流電力の供給により、定着ベルト101の誘導発熱層113を発熱させるための磁束を発生させる。
発熱制御板105は、定着ベルト101内側の空間110内において、定着ベルト101を介して磁束発生部104に対向配置され、定着ベルト101の周方向に沿って円弧状に湾曲して形成されている。また、発熱制御板105は、ベルト幅方向に沿って長尺であり、その長さは定着ベルト101の幅と略同じになっている。
図4に示すように、発熱制御板105は、定着ベルト101に近い側から、感温磁性層115と非磁性導電層116とがこの順に積層されて構成されている。感温磁性層115と非磁性導電層116とは、ベルト幅方向の長さは等しく、両端が揃えられている。
感温磁性層115は、定着温度よりも所定温度高い温度にキュリー温度を有する感温磁性材料、例えばパーマロイからなり、キュリー温度を超えると強磁性から常磁性に変化し、キュリー温度以下になると強磁性に戻る可逆的な変化特性を有する。
感温磁性層115は、加熱された定着ベルト101の熱によって昇温される。連続プリントした場合に、定着ベルト101のシートSの通過しない非通紙部P(図2参照)の温度がシートSにより熱を奪われないために上昇し続けて定着温度よりも高いキュリー温度に達すると、感温磁性層115の非通紙部Pに対応する部分もそれほど時間をおかずにキュリー温度に達し、その磁性が強磁性から常磁性に変化する。感温磁性層115の常磁性に変化した部分では、磁束発生部104からの磁束が通り抜けやすくなって非磁性導電層116に抜けるようになる。このとき、非磁性導電層116に、その磁束を打ち消す反発磁束を発生させる渦電流が流れて、定着ベルト101の非通紙部Pにおける誘導発熱層113の発熱が抑制される(過昇温抑制機能)。
過昇温抑制機能が有効に機能するよう、感温磁性層115と定着ベルト101との間の上記隙間Gは、できるだけ小さくするのが望ましいが、小さ過ぎると周回駆動される定着ベルト101と接触して破損するおそれがあるため、例えば0.1〜1.0mm程度の微小間隔に設定される。本実施の形態では、この隙間Gが約0.2mmになるように、発熱制御板105が支持部材106により支持されている。
(感温磁性層における溝の構成)
各溝M1は、外周面115aの長手方向の一端から他端まで延び、かつ周方向に所定の間隔をおいて配されている。
本実施の形態における溝M1の深さdは200μm、溝M1の幅Wは1.0mm、隣接する溝M1と溝M1との間の間隔K1は1.0mmとなっている。溝M1は、例えばエッチング等により形成される。
このような溝M1を形成することにより、溝を形成しない場合と比べて、曲げやすくなり、その分、曲げ加工時に生じる残留応力を低減できるので、磁気焼鈍処理時における、感温磁性層115の変形を抑制することができる。詳細については後述する。
(2−6)支持部材
支持部材106は、例えばステンレスや鉄、アルミニウムなどからなるが、耐熱性を有する部材であれば良く、例えば樹脂を用いることもできる。支持部材106は、発熱制御板105よりも曲率が大きい円弧状に湾曲して形成され、発熱制御板105と定着ローラー102との間に配設されている。
この図6では、ベルト幅方向の一方端側だけの構成を示しており、他方端側については省略しているが、基本的に同じ構成になっている。
図7は、図6の矢印Hで示す方向から見た平面図であり、ハトメ201による締結箇所が示されている。
図8は、図3におけるF−F線で定着部40を切断したときの矢視断面図であり、ベルト幅方向の一方端側だけを示している。
同図に示すように、蛇行規制部材170は、定着ベルト101のベルト幅方向の端面101aに当接して当該幅方向の移動を規制する円環状部171と、定着ベルト101の外周面に当接して径方向の移動を規制する筒状部172とからなる、いわゆるキャップ状であって、不図示の保持部材により保持されている。この構成は、ベルト幅方向の他方の端部側も同様になっている。この蛇行規制部材170により、定着ベルト101の蛇行を規制して、周回経路を安定させることができる。これにより、定着ベルト101の蛇行によって、発熱制御板105と定着ベルト101との間の隙間Gが狭まり接触してしまうことがないようにしている。
(3−1)溝が形成されていない従来構成の感温磁性層の場合
まず、本実施の形態においては、溝による感温磁性層の変形抑制効果を説明する前に、溝が形成されていない従来構成の感温磁性層を用いた場合に生じる、曲げ加工時の残留応力と、当該残留応力に起因する磁気焼鈍処理時の変形について、図9(a)〜(c)を参照しながら説明する。
しかしながら、プレス加工では、金型の間に感温磁性層905を挟み込んで強制的に成形するため、上記したような反りαは生じず、内部応力S3,S4が、そのまま残留応力Z3,Z4となって残るようになる(図9(c)参照)。
このような残留応力Z1〜Z4の一部が、磁気焼鈍処理により解放され、その際、感温磁性層905の変形をもたらす。
まず、残留応力Z3,Z4の解放によって、感温磁性層905に長手方向の反りαが生じる。また、残留応力Z1,Z2の解放によって、感温磁性層905の周方向の両端が開くように反りβが生じる。
(3−2)溝が形成された本実施の形態の感温磁性層の場合
これに対して、図11(a)に示す、本実施の形態の感温磁性層115では、外周側の複数条の溝M1が形成された部分では、引張応力がほとんど発生しないと考えられるので、中立面Nは、各溝M1の底面M1aと内周面115bとの間に存し、各溝M1の底面M1aの位置において引張応力が最大になる。
なお、単純に層の厚みを薄くした場合には、その分、感温磁性層の飽和磁束量が減少して磁束漏れが生じやすくなるが、本実施の形態におけるように所定の条件の溝を形成する場合には、飽和磁束量の減少を抑え、磁束漏れが生じるのを抑制することができる。詳しくは後述する。
また、中立面Nより外側部分における引張応力S1が小さくなることにより、周方向の伸びが抑制されて、長手方向に縮もうとする内部応力S3が小さくなり、中立面Nより内側部分における圧縮応力S2が小さくなることにより、周方向の縮みが抑制されて、長手方向に伸びようとする内部応力S4も小さくなる。
また、上述した曲げ加工以前に存在する任意の方向における残量応力についても、溝を形成することで部分的に分断して緩和することができる。
これにより、予め実験により、曲げ加工前の感温磁性層を磁気焼鈍処理して長手方向の変形量を求めておけば、変形量を見越した加工ができ、変形が単純化した分、当該変形量を見越した加工によって、磁気焼鈍処理後における感温磁性層の湾曲形状を所望の形状に近づけることができるようになる。
(4)変形抑制効果の検証について
本実施の形態の感温磁性層115(実施例1)における変形抑制効果を検証するため、図12に示す2つの比較例1,2を用意した。
比較例2の感温磁性層915において、スリットSLの幅は1mm、周方向の間隔は1mmとし、実施例1の感温磁性層115の溝と同じにしている。なお、感温磁性層915の長手方向における強度を確保するため、スリットSLの長手方向の長さL1は50mmとし、当該長手方向には、10mmの間隔K8をおいて複数のスリットSL群が配されている。
上記の実施例1および比較例1,2において、次の3つの検証1〜3を行った。
まず、検証1は、磁気焼鈍処理後の、感温磁性層の外周面の曲率径(mm)を測定し、基準値との比較によって変形抑制効果を検証するものである。
検証2,3は、実施例1および比較例1,2の感温磁性層115,905,915のそれぞれを、プリンター1の定着部40に取り付け、稼働状態を観察することにより、変形抑制効果が得られているか否かを判定し検証するものである。各プリンター1において、感温磁性層以外の構成は全く同じである。
すなわち、検証2では、ウォームアップ時の、定着ベルトの昇温に要する時間を測定し、基準時間以内であれば、特に問題はないので、感温磁性層が定着ベルト101に接触していないと判定するが、基準時間を超えている場合には、定着ベルトの発熱効率が低下している原因として、定着ベルト101に感温磁性層が接触し熱伝導による熱ロスが生じている可能性が高いことから、感温磁性層が定着ベルト101に接触していると判定する。
また、検証3では、500枚の連続プリント(A4縦通し)した後の、定着ベルト101の非通紙部Pの温度を測定し、基準温度(例えば定着ベルトの耐熱温度)未満であれば、特に問題はなく、発熱制御板の過昇温抑制機能が有効に機能していると判断し、感温磁性層が定着ベルト101に接触していないと判定する。なお、基準温度以上の場合には、発熱制御板の過昇温抑制機能が有効に機能していないと判断され、その原因として、感温磁性層が定着ベルト101に接触している可能性が高いことから、感温磁性層が定着ベルト101に接触していると判定する。以下、この基準温度を「第1の基準温度」という。
(検証結果)
図13(a)は、上記検証1〜3の結果を示す表である。
曲率径の測定値は、三次元形状測定器を用いて、各感温磁性層の外周形状を測定して算出したものである。なお、実施例1の感温磁性層115では、溝M1部分を除いた外周の輪郭形状を測定している。
一方、比較例1の曲率径は、19.80±0.20mm、比較例2の曲率径は、19.80±0.26mmであり、いずれも判定は「×」である。
なお、比較例2のスリットが形成された感温磁性層915において、判定は「×」になっているのは、スリットによって強度不足が生じて歪んだものと考えられる。実施例1の溝M1は、感温磁性層115を貫通せず底部を残しているので、その分、強度が確保されており、強度不足による歪みが生じるのを抑制できている。
そして、測定した昇温時間が基準時間以下であれば、変形抑制効果が得られ、感温磁性層が定着ベルトに接触していないとして良好「○」と判定し、基準時間を超えていれば、変形抑制効果が得られず、感温磁性層が定着ベルトに接触しているとして不良「×」と判定した。
一方、比較例1の昇温時間は11.6秒、比較例2の昇温時間は12.0秒で、いずれも判定は「×」であり、変形抑制効果が得られていないと判定される。
検証3では、第1の基準温度を、定着ベルト101の耐熱温度240℃としている。
測定した結果、実施例1の測定温度は235℃、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。
上記検証1〜3の結果より、実施例1は、変形抑制効果が得られていると判定され、図13(a)の評価欄701に「○」が記載されている。一方、比較例1,2は、変形抑制効果が得られていないと判定され、当該評価欄701に「×」が記載されている。
(5)磁束漏れの検証について
次に、感温磁性層115に、溝M1を形成することにより懸念される磁束漏れについても、上記比較例1,2と比較して検証を行った(検証4,5)。
感温磁性層115において磁束漏れが生じると、非磁性導電層116では、漏れた磁束によって渦電流が発生し自己発熱して昇温される。よって、磁束漏れが多いほど非磁性導電層116の昇温速度が高くなるので、昇温速度を測定することにより磁束の漏れが多いか少ないかを判断することができる。
図13(b)は、上記検証4,5の結果を示す表である。
まず、検証4での昇温速度の基準値は、2.5℃/秒としている。
この基準値は、非磁性導電層116の、ウォームアップ時に加熱される定着ベルトの熱による昇温を考慮したものであり、かつ漏れ磁束によって生じる非磁性導電層116の渦電流により、定着ベルトの加熱が抑制され過ぎないよう、予め実験により求められた漏れ磁束の許容範囲に基づいて設定されたものである。
実施例1の昇温速度は2.18℃/秒、判定は「○」であり、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。
一方、比較例2の昇温速度は2.92℃/秒で、判定は「×」であり、スリットから漏れる磁束の影響が大きいことが確認された。
実施例1の測定温度は202℃、判定は「○」であり、この検証でも、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。また、比較例1の測定温度は208℃、判定は「○」であり、磁束漏れを抑制できている。
実施例1の測定温度が、比較例1よりも5℃低いのは、溝M1によって感温磁性層115に発生する渦電流を抑制し、自己発熱するのを抑制することができているからである。この場合、感温磁性層115内で発生する当該渦電流により定着ベルトの加熱が抑制されるのを抑えることができるという利点を有する。
(6)溝の深さ、幅および間隔の設定範囲について
次に、感温磁性層115に形成される溝M1の深さd、溝M1の幅W、隣接する溝M1間の間隔K1における設定範囲について説明する。
また、感温磁性層115内に生じる渦電流を効果的に抑制するという観点から、溝M1の深さdは、表皮深さ以上が望ましい。
例えば、感温磁性層115のキュリー温度に達する前の透磁率をμ、体積抵抗率をρとし、磁束の角周波数をωとした場合に、溝M1の深さdを、上記設定範囲内であって、かつ次の関係式を満たすように設定するのが望ましい。
第2の実施の形態は、感温磁性層に、周方向に延びる溝を設けた構成としている点で、長手方向に延びる溝が設けられた構成の第1の実施の形態と異なっている。
その他の構成については、基本的に第1の実施の形態のプリンター1と同様であるので、同じ構成については、同じ符号で示し、その説明を省略する。
同図に示すように、感温磁性層215の外周215aには、周方向に平行な複数条の溝M2が形成されている。各溝M2は、周方向における一端から他端まで延びており、長手方向に所定の間隔K2をおいて配されている。溝M2間の間隔K2は、感温磁性層215の長手方向の強度低下を考慮し、10.0mmとしている。
このような周方向に延びる溝M2の場合、第1の実施の形態のような、曲げやすくなるという効果は得にくいものの、当該溝M2によって、曲げ加工の際に長手方向に生じる残留応力(図10(a)の残留応力Z3,Z4)の連続性を断つことができるので、磁気焼鈍処理の際に、長手方向の反りαが生じるのを抑制することができる。
(1)変形抑制効果の検証について
本実施の形態の感温磁性層215(実施例2)における変形抑制効果について、第1の実施の形態と同じ検証1〜3を行った。
比較例3の感温磁性層925の溝幅W9は10.0mmとしている。それ以外は、実施例2と同じ構成である。
図16(a)に示すように、検証1の結果、実施例2の曲率径は、基準値以内の19.80±0.12mm、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。
次に、検証2では、実施例2の昇温時間は、基準時間内の9.1秒、判定は「○」であり、変形抑制効果が得られていることが確認された。一方、比較例3の昇温時間は、基準時間を超える11.3秒、判定は「×」であり、変形抑制効果が得られていないと判定される。
上記検証1〜3の結果より、実施例2は、変形抑制効果が得られていると判定され、図16(a)の評価欄701に「○」が記載され、比較例3は、変形抑制効果が得られていないと判定され、当該評価欄701に「×」が記載されている。
(2)磁束漏れの検証について
次に、磁束漏れについても、第1の実施の形態と同じ検証4,5を行った。
一方、比較例3の昇温速度は、基準値を超える2.53℃/秒であることから、磁束漏れの抑制効果が得られていない不良「×」と判定される。これは、溝の幅が広がった分、薄肉部分の面積が増えて磁束が漏れやすくなったからだと考えられる。
一方、比較例3の測定温度は、第2の基準温度以上の265℃であることから、この検証でも、磁束漏れの抑制効果が得られていない「×」と判定された。
(3)溝の間隔(長手方向)について
周方向に延びる溝M2の、長手方向の溝M2間の間隔K2が、5mm未満だと、感温磁性層215において長手方向の強度が不足して変形しやすくなるおそれがある。一方、間隔K2が50mmを超えると、曲げ加工時に生じる長手方向の残留応力や曲げ加工以前に存在する残留応力の、長手方向の成分を分断して緩和することが十分に行えなくなって、磁気焼鈍処理の際に生じる反りやねじれによる変形を抑制できなくなるおそれがある。これらより、間隔K2は、5mm以上50mm以下が望ましい。
第3の実施の形態は、感温磁性層に、周方向に延びる溝に加え、さらに長手方向に延びる溝を設けた構成としている点で、周方向に延びる溝のみが設けられている第2の実施の形態と異なっている。
その他の構成については、第2の実施の形態と同様であるので、同じ構成については、同じ符号で示し、その説明を省略する。
同図に示すように、感温磁性層315の外周315aには、周方向に沿って一端から他端まで延びる複数条の溝M2と、長手方向に沿って一端から他端まで延びる複数条の溝M1とが形成されている。
隣接する溝M2間の間隔K2、および隣接する溝M1間の間隔K3は、それぞれ10.0mmとしている。
(1)変形抑制効果の検証について
本実施の形態の感温磁性層315(実施例3)における変形抑制効果について、第1および第2の実施の形態と同じ検証1〜3を行った。
また、検証2における実施例3の昇温時間は、基準時間内の9.0秒、判定は「○」であり、検証3における実施例3の測定温度は、第1の基準温度未満の230℃、判定は「○」である。これらからも、変形抑制効果が得られていることが確認された。
(2)磁束漏れの検証について
図18(b)に示すように、検証4の結果、実施例3の昇温速度は、基準値未満の2.19℃/秒、判定は「○」であり、検証5の結果、実施例3の測定温度は、第2の基準温度未満の202℃、判定は「○」である。これらより、磁束漏れの抑制効果が得られていることが確認された。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、感温磁性層115,215,315それぞれの、定着ベルト101側となる外周面に溝を形成した構成を示したが、これに限定するものではない。
この場合、定着ベルトの熱が感温磁性層に熱伝導するので、定着ベルトの温度に対する感度を高められるという利点がある一方で、接触する分、感温磁性層および定着ベルトが劣化しやすいことから、できる限り接触圧が小さくなるように構成される。
例えば、実際に生じうる製造誤差を考慮すると、溝が、感温磁性層の長手方向または周方向に対して平行度0.1〜0.5mm程度傾斜していてもよい。
ここで、「平行度」とは、完全に平行であるときの位置を基準位置とした場合に、その位置からのずれの大きさを表し、それにより平行の度合いを示すものである。
例えば、感温磁性層115と非磁性導電層116とを積層せず、これらを別体にして隙間を有して近接配置するように構成しても構わない。
(5)また、上記実施の形態では、感温磁性層115と非磁性導電層116とを組み合わせて定着ベルトの過昇温を抑制させる構成を示したが、これに限定するものではない。
例えば、ベルト幅方向において、定着ベルト101の、最小サイズのシート(例えば、はがき縦)の通過しない非通紙部に相当する領域にのみ、非磁性導電層を設けて、その間の通紙部に相当する領域には非磁性導電層を設けない構成としても構わない。印刷の際、当該通紙部は、定着温度になるように常に温度制御されているので、過昇温となるおそれがないからである。
上述したように、長手方向に延びる溝M1の場合、溝M1間の間隔K1は溝の幅W以上10mm以下、周方向に延びる溝M2の場合、溝M2間の間隔K2は5mm以上50mm以下の範囲内であれば、溝間の間隔が等しくなくても、曲げ加工時に生じる残留応力を抑制することができて、磁気焼鈍処理の際に生じる反りやねじれによる変形を抑制することができる。
例えば、感温磁性層115に溝を形成して円弧状に曲げ加工した後、かつ磁気焼鈍処理の前または後に、感温磁性層115の内周面に、非磁性導電層116を構成する材料(例えば銅またはアルミニウム)を、例えば鍍金、蒸着などして積層させて作製することもできる。
例えば、ハトメに代えて、リベットを用いる構成としても良い。
また、締結箇所の数や位置についても、上記実施の形態の構成に限定されるものではない。装置構成に応じて適した数や位置などが決められる。
(11)上記実施の形態では、定着ベルト101の周回経路の内側に定着ローラー102を配置する構成例を説明したが、定着ベルト101の周回経路の外側から加圧ローラー103などの加圧部材に定着ベルト101を介して押圧され、定着ニップNを確保可能な被加圧部材であれば、ローラー形状のものに限られない。例えば、ローラーに代えて固定パッドを用いることもできる。
(12)上記実施の形態では、本発明に係る定着装置および画像形成装置をタンデム型カラープリンターに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、誘導発熱層を有する無端状のベルトの周回経路の外側に、ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部を配置しつつ、ベルトの周回経路の内側に、定着温度よりも高い所定温度(キュリー温度)を超えると磁性を失う整磁合金層を有する発熱制御板を配置する構成の電磁誘導加熱方式の定着装置およびこれを備える画像形成装置であれば、例えば複写機、ファクシミリ装置、多機能複合機(MFP:Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
10 画像形成部
10Y〜10K 作像部
11 感光体ドラム
12 帯電器
13 露光部
14 現像器
20 ベルト搬送部
30 給送部
40 定着部
101 定着ベルト
102 定着ローラー
103 加圧ローラー
104 磁束発生部
105 発熱制御板
106 支持部材
115 感温磁性層
115,215,315 感温磁性層
116 非磁性導電層
170 蛇行規制部材
171 円環状部
172 筒状部
191 装置筐体
K1,K2,K3 間隔(溝間の間隔)
M1,M2 溝
Claims (9)
- 未定着画像が形成されたシートを定着ニップに通して、前記未定着画像をシート上に熱定着する電磁誘導加熱方式の定着装置であって、
周回駆動される、誘導発熱層を有する無端状のベルトと、
前記ベルトの周回経路の外側に配され、当該ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部と、
定着温度よりも高いキュリー温度を有し、前記磁束発生部とベルトを挟んで対向配置された感温磁性部材と、を備え、
前記感温磁性部材は、長板状であって、長手方向が前記ベルトの幅方向と平行になるように配されると共に、長手方向に直交する断面が、前記ベルトの内周面に沿って湾曲した形状をしており、
前記感温磁性部材の外周面および内周面のうち一方の周面には少なくとも周方向に延びる溝が、長手方向における一方の端部側から他方の端部側にわたって、複数条平行に形成されており、長手方向における溝の間隔は、磁気焼鈍処理における前記感温磁性部材の長手方向における変形が抑制される程度に残留応力が分断されて緩和されるように設定されている
ことを特徴とする定着装置。 - 周方向に延びる各溝の幅は2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記感温磁性部材の外周面および内周面のうち一方の周面には更に、長手方向に延びる溝が複数条形成されており、当該溝の間隔は当該溝の幅以上であって、10mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
- 周方向に延びる溝の間隔は当該溝の幅以上であって、50mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の定着装置。
- 同一の方向に延びる溝の間隔が全て等しいことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の定着装置。
- 周方向に延びる溝の深さは、前記感温磁性部材の厚さの1/10以上であって、1/2以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の定着装置。
- 周方向に延びる溝は前記感温磁性部材の外周面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の定着装置。
- 前記感温磁性部材に形成された溝の深さが、キュリー温度に達していないときの表皮深さ以上であることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
- 請求項1から請求項8までのいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
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