JP5029656B2 - 電磁誘導加熱装置及びこれを用いた定着装置、画像形成装置 - Google Patents

電磁誘導加熱装置及びこれを用いた定着装置、画像形成装置 Download PDF

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Description

この発明は、電磁誘導加熱装置及びこれを用いた定着装置、画像形成装置に関するものである。
従来、上記電磁誘導加熱装置及びこれを用いた定着装置に関連する技術としては、例えば、特開平11−288190号公報、特許3527442号公報、特開2000−030850号公報及び特開2008−152247号公報等に開示されたものが既に提案されている。
上記特開平11−288190号公報に係る像加熱装置は、透磁性を有し,そのキュリー温度がほぼ定着温度である透磁性層と、この透磁性層よりも内側に設けられ,導電性を有する導電性層と、この導電性層よりも内側に設けられる中実の支持層を備え、前記3層が一体として回転する加熱ローラと、この加熱ローラの外部に離間して配置され、交番磁界を作用させて前記加熱ローラに渦電流を発生させる励磁部材とを具備するように構成したものである。
また、上記特許3527442号公報に係る像加熱装置は、ベルトと、前記ベルトに圧接して前記ベルトの表面側にニップを形成する加圧手段と、透磁性を有し前記ベルトを移動可能に懸架する発熱ローラと、導電性部材と、前記発熱ローラを励磁する励磁手段と、を有し、前記導電性部材は、前記励磁手段の磁界の範囲内である第1の位置と、この第1の位置とは異なる、前記励磁手段の磁界の範囲外である第2の位置とを取るように構成したものである。
さらに、上記特開2000−030850号公報に係る熱ローラー装置は、組成を調整することによって所定のキュリー温度とした感温磁性金属パイプもしくは感温磁性金属フィルムと、前記感温磁性金属パイプもしくは感温磁性金属フィルムを構成する感温磁性金属材料よりも電気抵抗率が低い非磁性材料とを相互に空間をあけて配設し、前記感温磁性金属パイプもしくは感温磁性金属フィルムを誘導加熱する誘導加熱部とを備えるように構成したものである。
又、上記特開2008−152247号公報に係る定着装置は、磁界の作用により発熱する発熱層を有する円筒形状の第1回転体と、
前記第1回転体に接する第2回転体と、
前記第1回転体の内周面又は外周面に対し所定の間隙を持って配置され、前記磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記第1回転体を介して前記磁界発生手段と対向して配置され、キューリー点を持つ感温磁性材料を含んで構成され、前記発熱層の発熱を制御する発熱制御部材と、を備えるように構成したものである。
特開平11−288190号公報 特許3527442号公報 特開2000−030850号公報 特開2008−152247号公報
ところで、この発明が解決しようとする課題は、磁路を制御する手段が自己発熱するのを抑制するとともに、加熱回転体の被加熱体への熱伝達を行っている部分の端部が熱伝達を行っている部分の平均より高温となるのを抑制することが可能な電磁誘導加熱装置及びこれを用いた定着装置、画像形成装置を提供することにある。
すなわち、請求項1に記載された発明は、電磁誘導によって発熱する発熱体と、
前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記加熱回転体と前記磁界発生手段と対向するように配置され、前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を遮断する前記加熱回転体の軸方向と交差する方向に沿って設けられたスリットからなる遮断部、及び、前記遮断部の一部に設けられ、前記加熱回転体の軸方向に沿って連続した部分であって、前記加熱回転体の長手方向に沿った熱の移動を許容するように連続した連続部とを有する、感温磁性材料で構成され、磁路を形成する磁路形成手段とを備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置である。
さらに、請求項2に記載された発明は、電磁誘導によって発熱する発熱体と、
前記発熱体からの熱をうけ、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記加熱回転体及び前記磁界発生手段と対向するように配置され、感温磁性材料で構成され、前記加熱回転体の軸方向に沿った方向に設けられ、前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を遮断する空間部と、前記空間部と前記加熱回転体の軸方向に沿った方向に垂直な方向に設けられ、前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を形成する連続部とを備え、磁路を形成する磁路形成手段と
を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置である。
又、請求項3に記載された発明は、電磁誘導によって発熱する発熱体と、
前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記加熱回転体及び前記磁界発生手段と対向する部分があるように配置され、感温磁性材料で構成され、前記磁界発生手段と対向している部分の一部に前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を遮断する前記加熱回転体の軸方向と交差する方向に沿って設けられたスリットからなる空間部があり、前記磁界発生手段と対向していない部分の一部に前記加熱回転体の軸方向に沿って連続した部分であって、前記加熱回転体の長手方向に沿った熱の移動を許容するように連続した連続部がある、磁路を形成する磁路形成手段と
を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置である。
更に、請求項4に記載された発明は、電磁誘導によって発熱する発熱体と、
前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記加熱回転体と前記磁界発生手段と対向するように配置され、磁路を形成する磁路形成手段と、を備え、
前記磁路形成手段には、前記磁界発生手段からの磁界が強い部分に前記磁界発生手段からの電磁誘導によって該磁路形成手段に発生する渦電流を遮断するスリットからなる遮断部があり、前記磁界発生手段からの磁界が弱い部分に前記加熱回転体の軸方向に沿って連続した部分であって、前記加熱回転体の長手方向に沿った熱の移動を許容するように連続した連続部がある、磁路を形成する磁路形成手段と
を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置である。
また、請求項5に記載された発明は、電磁誘導によって発熱する発熱体と、
前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
前記加熱回転体と前記磁界発生手段と対向するように配置され、磁路を形成する前記加熱回転体の軸方向に沿って分割した状態で配置された複数の磁路形成手段と、
前記複数の磁路形成手段同士を前記軸の方向につなぐ連続部と
を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置である。
又、請求項6に記載された発明は、前記遮断部または空間部または凹部を、前記加熱回転体の軸方向に傾斜し設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置である。
更に、請求項7に記載された発明は、前記連続部は、前記加熱回転体によって加熱される被加熱体の両端に対応した部分に設けたことを特徴とする請求項1、又は2から6のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置である。
また、請求項8に記載された発明は、前記連続部を、前記加熱回転体の軸方向に沿って予め定められた幅の全長にわたって設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置である。
さらに、請求項9に記載された発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置と、
前記加熱回転体に圧接され、当該加熱回転体との間に形成される圧接部を通過する未定着トナー像を保持した記録媒体を加圧する加圧体と、
を備えたことを特徴とする定着装置である。
又、請求項10に記載された発明は、像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって像担持体上に形成されたトナー像を、直接又は中間転写体を介して記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体上に転写された未定着トナー像を記録媒体上に定着する請求項9に記載された定着手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、磁路形成手段が自己発熱により過剰に発熱するのを抑制できるとともに、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
さらに、請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、磁路形成手段が自己発熱により過剰に発熱するのを抑制できるとともに、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
又、請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、磁路形成手段が自己発熱により過剰に発熱するのを抑制できるとともに、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
更に、請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、磁路形成手段が自己発熱により過剰に発熱するのを抑制できるとともに、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
また、請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、磁路形成手段が自己発熱により過剰に発熱するのを抑制できるとともに、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
さらに、請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
また、請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
又、請求項8に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、磁路形成手段が自己発熱により過剰に発熱するのを抑制できるとともに、加熱回転体の熱伝達を行っている端部領域が高温となるのを抑制することができる。
更に、請求項9に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、記録媒体に高温オフセットが発生するのを抑制することができる。
また、請求項10に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、記録媒体に高温オフセットが発生するのを抑制することができ、高画質の画像を形成することが可能となる。
この発明の実施の形態1に係る電磁誘導加熱装置を用いた定着装置を示す断面構成図である。 この発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置としてのカラー画像形成装置を示す構成図である。 定着ベルトを示す断面構成図である。 感温磁性材料の成分比によるキューリー点の変化を示すグラフである。 交番磁界発生装置にて生成される磁界が各部材を通過する状態を示す構成図である。 定着ベルトの端部を支持する構造を示す構成図である。 この発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。 交番磁界発生装置を示す構成図である。 発熱制御部材の感温磁性を示すグラフである。 交番磁界発生装置にて生成される磁界が各部材を通過する状態を示す構成図である。 定着ベルトの軸方向に沿った温度分布を示す説明図である。 スリットによる渦電流を示す模式図である。 発熱制御部材を示す拡大断面図である。 発熱制御部材を示す平面構成図である。 この発明の実施の形態2に係る発熱制御部材を示す平面構成図である。 この発明の実施の形態3に係る発熱制御部材を示す平面構成図である。 この発明の実施の形態3に係る発熱制御部材を示す平面構成図である。 発熱制御部材の連続部の有無等における定着ベルト温度の変化をそれぞれ示す説明図である。 発熱制御部材の連続部の位置における定着ベルト温度の変化をそれぞれ示す説明図である。 この発明の実施の形態4に係る定着装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態5に係る発熱制御部材を示す平面構成図である。 この発明の実施の形態6に係る定着装置を示す構成図である。
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1
図2はこの発明の実施の形態1に係る電磁誘導加熱装置を用いた定着装置が適用された画像形成装置としてのカラー画像形成装置を示すものである。このカラー画像形成装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)2から送られてくる画像データをプリントするプリンターとしての機能以外に、画像読取装置3によって読み取られた図示しない原稿の画像を複写する複写機や、画像情報を送受信するファクシミリとしても機能するように構成されている。
カラー画像形成装置1の内部には、図2に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3から送られてくる画像データに対して、必要に応じて、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消し、色/移動編集等の予め定められた画像処理を施す画像処理部4が配設されているとともに、カラー画像形成装置1全体の動作を制御する制御部5が配設されている。
そして、上記の如く画像処理部4で予め定められた画像処理が施された画像データは、同じく画像処理部4によって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の画像データに変換され、次に述べるように、カラー画像形成装置1の内部に設けられた画像出力部6によってフルカラー画像やモノクロ画像として出力される。
上記画像処理部4によってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の画像データに変換された画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kの画像露光装置8に送られ、これらの画像露光装置8では、対応する色の画像データに応じてLED発光素子アレイから出射される光によって画像露光が行われる。
上記カラー画像形成装置1の内部には、図2に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの画像形成ユニット(画像形成部)7Y、7M、7C、7Kが、第1色目のイエロー(Y)の画像形成ユニット7Yが相対的に高く、最終色の黒(K)の画像形成ユニット7Kが相対的に低くなるように、水平方向に対して予め定められた角度だけ傾斜した状態で一定の間隔を隔てて並列的に配置されている。
このように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kを、予め定められた角度だけ傾斜した状態で配置することにより、これら4つの画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kを水平に配置した場合に比較して、画像形成ユニット7Y、7M、7C、7K間の距離を短く設定することができ、カラー画像形成装置1の幅を小さくして小型化が可能となる。
これらの4つの画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kは、基本的に、形成する画像の色以外は同様に構成されており、図2に示すように、大別して、図示しない駆動手段により矢印A方向に沿って予め定められた速度で回転駆動される像担持体としての感光体ドラム10と、この感光体ドラム10の表面を一様に帯電する一次帯電用の帯電ロール11と、当該感光体ドラム10の表面に予め定められた色に対応した画像を露光して静電潜像を形成するLEDプリントヘッドからなる画像露光装置8と、感光体ドラム10上に形成された静電潜像を予め定められた色のトナーで現像する現像装置12と、感光体ドラム10の表面を清掃するクリーニング装置13とから構成されている。
上記感光体ドラム10としては、例えば、直径30mmのドラム状に形成され、表面に有機光導電体(OPC)を被覆したものが用いられ、図示しない駆動モータにより矢印A方向に沿って予め定められた速度で回転駆動される。
また、上記帯電ロール11としては、例えば、芯金の表面に合成樹脂やゴムからなり電気抵抗を調整した導電層を被覆したロール状の帯電器が用いられ、この帯電ロール11の芯金には、予め定められた帯電バイアスが印加される。
上記画像露光装置8は、図2に示すように、4つの画像形成ユニット7Y、7M、7C、7K毎にそれぞれ個別に配置されており、各画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kに設けられた画像露光装置8としては、LED発光素子を予め定められたピッチ(例えば、600dpi〜2400dpi)で感光体ドラム10の軸方向に沿って直線状に配置したLED発光素子アレイと、当該LED発光素子アレイの各LED発光素子から出射された光を感光体ドラム10上にスポット状に結像するセルフォックレンズ(商品名)アレイとを備えたものが用いられる。また、上記画像露光装置8は、図2に示すように、下方から感光体ドラム10上に画像を走査露光するように構成されている。
なお、上記画像露光装置8としては、LED発光素子アレイからなるものに限らず、レーザービームを各感光体ドラム10の軸方向に沿って偏向走査するものなどを用いても勿論良い。この場合には、4つの画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kに対して1つの画像露光装置8を配設するように構成しても良い。
上記画像処理部4からは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kに個別に設けられた画像露光装置8Y、8M、8C、8Kに、対応する色の画像データが順次出力され、これらの画像露光装置8Y、8M、8C、8Kから画像データに応じて出射された光束は、対応する感光体ドラム10の表面に走査露光され、画像データに応じた静電潜像が形成される。上記感光体ドラム10上に形成された静電潜像は、現像装置12Y、12M、12C、12Kによって、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー像として現像される。
上記各画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kの感光体ドラム10上に、順次形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー像は、各画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kの上方にわたって傾斜した状態で配置された無端ベルト状の中間転写体としての中間転写ベルト14上に、4つの一次転写ロール15Y、15M、15C、15Kによって順次多重に一次転写される。
この中間転写ベルト14は、複数のロールによって張架された無端ベルト状部材であって、当該ベルト状部材の下辺走行領域が、その走行方向に沿った下流側が相対的に低く、且つ上流側が相対的に高くなるように、水平方向に対して傾斜した状態で配置されている。
即ち、上記中間転写ベルト14は、図2に示すように、駆動ロール16と、背面支持ロール17と、張力付与ロール18と、従動ロール19との間に一定の張力で掛け回されており、図示しない定速性に優れた駆動モータによって回転駆動される駆動ロール16により、矢印B方向に沿って予め定められた速度で循環移動される。上記中間転写ベルト14としては、例えば、可撓性を有するポリイミドやポリアミドイミド等の合成樹脂フィルムを帯状に形成し、この帯状に形成された合成樹脂フィルムの両端を溶着等の手段によって接続することにより無端ベルト状に形成したものや、あるいは最初から無端ベルト状に形成したものが用いられる。上記中間転写ベルト14は、その下辺走行領域において、各画像形成ユニット7Y、7M、7C、7Kの感光体ドラム10Y、10M、10C、10Kに接触するように配置されている。
また、上記中間転写ベルト14には、図2に示すように、当該中間転写ベルト14の上部走行領域の低位側端部に配置され、中間転写ベルト14上に一次転写されたトナー像を記録媒体21上に二次転写する二次転写手段としての二次転写ロール20が、背面支持ロール17によって張架された中間転写ベルト14の表面に当接するように配置されている。
上記中間転写ベルト14上に多重に転写されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー像は、図2に示すように、背面支持ロール17に中間転写ベルト14を介して圧接する二次転写ロール20によって、記録媒体としての記録用紙21上に静電気力で二次転写され、これらの各色のトナー像が転写された記録用紙21は、鉛直方向の上方に位置する本実施の形態に係る定着装置30へと搬送される。上記二次転写ロール20は、背面支持ロール17の側方に中間転写ベルト14を介して圧接しており、鉛直方向の下方から上方に搬送される記録用紙21上に、各色のトナー像を一括して二次転写するようになっている。
上記二次転写ロール20としては、例えば、ステンレス等の金属からなる芯金の外周に、導電剤を添加したゴム材料等の導電性弾性体からなる弾性体層を予め定められた厚さに被覆したものが用いられる。
そして、上記各色のトナー像が転写された記録用紙21は、この実施の形態に係る定着装置30によって熱及び圧力で定着処理を受けた後、排出ロール22によって装置1の上端部に設けられた排出トレイ23上に画像面を下にした状態で排出される。
上記記録用紙21は、図2に示すように、装置1内の底部に配置された給紙トレイ24から予め定められたサイズ及び材質のものが、給紙ロール25及び用紙分離搬送用のロール26により一枚ずつ分離された状態で給紙され、レジストロール27まで一旦搬送されて停止される。そして、上記給紙トレイ24から供給された記録用紙21は、予め定められたタイミングで回転するレジストロール27によって中間転写ベルト14の二次転写位置へ送出される。上記記録用紙21としては、普通紙以外にも、表面又は表裏両面にコーティング処理が施されたコート紙等の厚紙なども供給可能となっており、コート紙からなる記録用紙21には、写真画像なども出力される。
トナー像の二次転写工程が終了した中間転写ベルト14の表面は、駆動ロール16の位置に設けられたベルトクリーニング装置28によって残留トナー等が除去されて、次の画像形成工程に備える。尚、図2中、29は、カラー画像形成装置1の各部に電力を供給する電力供給部を示している。
図1はこの発明の実施の形態1に係るカラー画像形成装置に適用される電磁誘導加熱装置を用いた定着装置を示す構成図である。
加熱回転体はベルトでもロールで構成してもよく、また後述の発熱体と一体としても別体としてもよい。また加熱回転体が加熱する場合最終的に加熱したいもの例えば記録媒体を直接加熱してもよいし、間接的に加熱してもよい。本実施例においては加熱回転体を発熱体と一体にベルトで構成し、記録用紙に接触して加熱する無端状の定着ベルト31を用いた。定着装置30は、図1に示すように、矢印C方向に沿って回転する無端状の定着ベルト31と、当該定着ベルト31の外周面に圧接され、本実施例において加圧体として用いた、定着ベルト31の加圧ロール32との圧接部(ニップ部N)の反対側の外周面に予め定められた間隙を介して離間した状態で対向配置される交番磁界発生手段としての交番磁界発生装置33とを備えている。
さらに、上記定着装置30は、本実施例における磁路形成手段として用いた発熱制御部材34を備えている。ここで、磁路形成手段は、対向さえしていれば、内周面側に設けても外周面側に設けてもよいが、本実施例では発熱制御部材34は定着ベルト31の内部に当該定着ベルト31を介して交番磁界発生装置33と対向するように、非接触状態で配置した。更に予め定められた条件下で発熱制御部材34を通過する磁束を誘導する非磁性金属誘導部材35と、定着ベルト31に加圧ロール32を圧接させるための押圧部材36と、これらの発熱制御部材34、非磁性金属誘導部材35及び押圧部材36を支持する支持部材37と、定着ベルト31から記録用紙21の剥離を補助する剥離補助部材38を備えている。
上記定着ベルト31は、加熱ロール32に圧接されて変形する前の断面形状が、外径20〜50mm程度の薄肉円筒形状に形成されており、この実施の形態では、定着ベルト31の外径が30mmに設定されている。この定着ベルト31は、図3に示すように、例えば、基材層311と、その外周面に順次積層された本実施例における発熱体として用いた発熱層312と弾性層313と表面離型層314とから構成されている。なお、上記定着ベルト31の層構成は、これに限定されないことは勿論である。
上記基材層311は、本実施例では定着ベルト31に機械的強度を持たせるベース部材であるとともに、そこに交番磁界発生装置33によって発生される交番磁界の磁路が形成されるものとした。但し、基材層311は、必ずしも交番磁界発生装置33によって発生される交番磁界の磁路を形成しなくてもよいが、この基材層311として、本実施例では透磁率が温度によって変化する感温磁性材料からなるものが用いられる。基材層311は、例えば、透磁率が変化する透磁率変化開始温度が、各色トナー像が溶融する温度である定着ベルト31の加熱設定温度以上であって、弾性層313や表面離型層314の耐熱温度よりも低い予め定められた温度範囲内に設定された感温磁性を有する強磁性体の材料から構成される。
更に説明すると、上記基材層311は、定着ベルト31の加熱設定温度以上の予め定められた温度範囲内、例えば加熱設定温度と当該加熱設定温度よりも100℃程度高い温度の範囲内において、比透磁率が数百以上である強磁性と比透磁率がほぼ1である常磁性(非磁性)との間を可逆的に変化する“感温磁性”を有する材料で構成される。そして、上記基材層311は、透磁率変化開始温度以下の温度範囲では強磁性を呈し、交番磁界発生装置33によって発生された交番磁界の磁束を誘導して、基材層311の内部に当該基材層311の表面に沿った方向に磁路が形成される。また、上記基材層311は、透磁率変化開始温度を超える温度範囲では常磁性を呈し、交番磁界発生装置33によって発生された磁束は当該基材層311の層厚方向に横切るように透過する。
上記基材層311としては、具体的には、透磁率変化開始温度が例えば定着ベルト31の加熱設定温度である140℃〜240℃の範囲内に設定された例えばFe−Ni合金(パーマロイ)等の二元系整磁鋼やFe−Ni−Cr合金等の三元系の整磁鋼等が用いられる。このようなパーマロイや整磁鋼などの金属合金は、薄肉成型性や加工性に優れ、熱伝導率も高く安価であり、さらには機械的強度が高い等の理由から、定着ベルト31の基材層311に適している。基材層311のその他の材料としては、Fe、Ni、Si、B、Nb、Cu、Zr、Co、Cr、V、Mn、Mo等からなる金属の合金が用いられる。例えば、Fe−Niの二元系整磁鋼においては、おおよそFe64%、Ni36%(原子数比)とすることで、図4に示すように、透磁率変化開始温度を225℃前後に設定することができる。また、これらの合金は、すべて60×10-8Ωm以上の高い固有抵抗値を有するため、200μmの厚さ以下では誘導加熱しにくいため、本実施例では誘導加熱しやすい発熱層312を別途設けた。
さらに、上記基材層311は、次に述べるように、例えば、交番磁界発生装置33により生成された交番磁界(磁力線)に対する表皮深さよりも薄い予め定められた厚さに形成される。具体的には、基材層311の材料としてFe−Ni合金を用いた場合には、20〜80μm程度の厚さ、例えば50μmに設定される。
ある材料に交番磁界が入射すると、交番磁界が1/e(≒1/2.718)に減衰する距離として表皮深さ(δ)というパラメータが知られている。この表皮深さ(δ)は、次の(1)式によって表される。この(1)式において、fは交番磁界の周波数(例えば20kHz)、ρは固有抵抗値(Ωm)、μrは比透磁率である。
Figure 0005029656
例えば、定着ベルト31の基材層311として固有抵抗値ρが70×10-8Ωm、比透磁率μrが400である材料の場合、交番磁界の周波数を20kHzとすると、(1)式より、基材層311の表皮深さ(δ)は149μmとなる。そのため、定着ベルト31の機械的強度を確保するとともに、定着ベルト31の柔軟性・フレキシブル性を高める観点から、定着ベルト31の基材層311の厚さを50μmの薄層に形成すると、基材層311の層厚は、表皮深さ(δ)である149μmよりも薄くなる。そのため、交番磁界発生装置33により生成された交番磁界(磁力線H)は、図5に示すように、領域R1、R2や領域R3において、交番磁界の一部が定着ベルト31の基材層311の内部に誘導されて磁路を形成するが、残りは基材層311を透過することになる。
それに対して、定着ベルト31の内周面側に発熱制御部材34を配置することにより、定着ベルト31の温度が透磁率変化開始温度以下の温度である定着温度にある場合には、図5に示したように、基材層311を透過した残りの磁力線Hは発熱制御部材34の内部を通過し、主な磁束が領域R3を通過して励磁コイル56に戻るような閉ループを構成する。このように、磁路を形成することによって領域R1、R2や領域R3において磁気結合度が高まり、磁束密度が高められ、定着ベルト31の導電層312に大きな渦電流Iを発生させ、定着ベルト31に大きなジュール熱Wを生じる。
なお、この実施の形態の発熱制御部材34は、定着装置30の立ち上げ時に、誘導加熱される定着ベルト31から熱が直接流入するのを抑え、定着ベルト31を定着可能温度に到達させるまでの時間を短縮するために、定着ベルト31の内周面とは非接触状態に配置されている。
また、上記基材層311の表面に積層される導電層312は、交番磁界発生装置33にて生成される交番磁界によって電磁誘導加熱される電磁誘導発熱体層として機能するものであり、例えばAg、Cu、Alといった固有抵抗値が相対的に小さい非磁性金属が、厚さ2〜30μm程度に薄膜化できるので適している。因みに、銀の固有抵抗値は、1.59×10-8Ωm、銅の固有抵抗値は、1.67×10-8Ωm、アルミニウムの固有抵抗値は、2.7×10-8Ωmである。
この実施の形態に係る定着装置30では、例えば、厚さ50μmのFe−Ni合金からなる基材層311の表面に、厚さ10μm程度に圧延処理、メッキまたは蒸着等した導電率の高いCuからなる導電層312を形成している。このように、基材層311及び導電層312を薄層に形成することで、定着ベルト30全体としての柔軟性・フレキシブル性を高めるとともに、機械的強度を確保している。
なお、この実施の形態で用いた基材層311は、上述したように導電層312に対して10倍以上高い固有抵抗値を有する材料であるため、導電層312に比べて渦電流Iが流れにくく、導電層312の発熱量に対しては、発熱量が十分に無視することができる非発熱性の層となっている。また、基材層311が発熱した場合には、導電層312を含む定着ベルト31に吸収されていた。
さらに、上記導電層312の表面に積層される弾性層313は、シリコーンゴム等の弾性体で構成されている。被定着部材である記録用紙21に保持されるトナー像は、粉体からなる複数色のトナーが積層して形成されており、特にフルカラー画像の場合にはトナーの総量が多い。そのため、定着装置30のニップ部N内でトナー像を均一に加熱して溶融するには、記録用紙21上のトナー像の凹凸に倣って定着ベルト31の表面が弾性変形することが望ましい。この実施の形態では、弾性層313として、例えば厚さが100〜600μmで、JIS−A硬度が10°〜30°のシリコーンゴムを用いている。
また、上記弾性層313の表面に積層される表面離型層314は、記録用紙21上に保持された未定着トナー像と直接接触する層であるため、離型性の高い材質が使用される。この表面離型層314は、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられる。この表面離型層314の厚さとしては、薄すぎると、耐摩耗性の点で不十分であり、定着ベルト31の寿命を短くする。その反面、表面離型層314は厚すぎると、定着ベルト31の熱容量が大きくなりすぎ、ウォームアップタイムが長くなる。そこで、この実施の形態では、表面離型層314の厚さとして、耐摩耗性と熱容量とのバランスを考慮して1〜50μmに設定している。
上記の如く構成される定着ベルト31は、図6(a)に示すように、その長手方向(軸方向)に沿った両端部に、当該定着ベルト31を回転駆動するために駆動力を伝達する駆動力伝達部材としてのフランジ部材39が圧入や接着等の手段によって固定した状態で装着されている。このフランジ部材39は、定着ベルト31の端部に挿入される円筒形状の円筒部39aと、定着ベルト31の軸方向外側に円筒部39aよりも厚肉の円筒形状に突出した状態で設けられ、外周面にハスバギア等の歯面が一体的に形成された駆動部39bと、円筒部39aと駆動部39bとの間に半径方向の外向きの円環状に突出するように設けられたフランジ部39cとを備えるように構成されている。また、上記フランジ部材39は、図6(b)に示すように、その円筒部39aから駆動部39bにわたる内周面に配設された軸受部材40を介して固定部材41に回転自在に支持されている。この固定部材軸41は、図6(b)に示すように、支持部材37の長手方向に沿った両端部に、外側に向けて突出するように形成された断面矩形状の支持部42の外周に装着されている。
上記フランジ部材39を構成する材質としては、機械的強度や耐熱性の高い、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、LCP樹脂等の所謂エンジニアリングプラスチックスが適している。
また、上記定着装置30は、図7に示すように、細長い矩形状に形成された枠体43を備えている。この枠体43には、定着ベルト31を回転駆動する駆動軸44の両端部が軸受部材45を介して回転自在に支持されている。上記駆動軸44には、枠体43の内側に位置する両端部に、定着ベルト31の両端部に位置するフランジ部材39の駆動部39bと噛み合う駆動ギア46がそれぞれ取り付けられている。また、上記駆動軸44には、枠体43の外側に位置する一端部に、当該駆動軸44に駆動力を伝達する伝達ギア47が取り付けられており、この伝達ギア47には、駆動モータ48の回転軸49に固着された伝達ギア50が噛み合わされている。また、上記駆動モータ48の回転軸49は、その一端部が定着装置30の枠体43に回転自在に取り付けられている。そして、上記定着装置30は、駆動モータ48を回転駆動することにより、当該駆動モータ48の回転駆動力を伝達ギア50及び伝達ギア47を介して駆動軸44に伝達し、駆動軸44に取り付けられた駆動ギア46、46を回転させ、これらの駆動ギア46、46と噛み合う定着ベルト31の両端部に設けられたフランジ部材39の駆動部39b、39bによって、定着ベルト31が予め定められた回転速度(例えば、周速140mm/sec)で回転駆動される。
なお、上記定着ベルト31は、上述したように、金属材料や合成樹脂材料などからなる基材層311、発熱層312、弾性層313及び表面離型層314を積層して構成されているため、柔軟性・フレキシブル性を有しているとともに、機械的強度をも有しており、フランジ部材39の駆動部39b、39bから回転駆動トルクを受けた場合であっても、座屈等が生じることはなく、滑らかに回転駆動される。
なお、上述した支持部材37の支持部42は、図7に示すように、軸受部材45の図中奥側の位置において枠体43に貫通された状態で固定されている。
一方、上記定着ベルト31に圧接する加圧ロール32としては、図1に示すように、例えば、直径18mmの中実の円柱形状に形成された金属製芯材321と、該金属製芯材321の外周に例えば5mmの厚さに被覆されたシリコーンゴムやフッ素ゴム等からなる耐熱弾性体層322と、当該耐熱弾性体層322の表面に例えば50μmの厚さに被覆されたPFA等からなる表面離型層323とから構成されたものが用いられる。
上記加圧ロール32は、図7に示すように、その金属製芯材321の両端部が定着装置30の枠体43に軸受部材51を介して回転自在に支持されているとともに、付勢手段としてのコイルバネ52により定着ベルト31に対して予め定められた圧力(例えば、20kgfの荷重)で圧接するように付勢されている。なお、上記加圧ロール32を回転自在に支持する軸受部材51は、定着装置30の枠体43に対して、定着ベルト31に接離する方向に移動自在に図示しない長孔によって保持されている。
なお、上記加圧ロール32は、図示しない接離機構によって、定着ベルト31と圧接又は離間する方向に移動可能に構成しても良い。この場合、上記加圧ロール32は、定着可能状態になるまでの加熱時である予備加熱時には、接離機構によって定着ベルト31と離間した状態に移動される。
また、上記定着ベルト31と加圧ロール32とが圧接するニップ部Nの記録用紙21の搬送方向(矢印方向)に沿った下流側には、図1に示すように、剥離補助部材38が設けられている。この剥離補助部材38は、一端が固定支持された支持部53と、この支持部53に支持された剥離シート54とからなり、剥離シート54の先端が定着ベルト31に近接又は接触するように配置されている。そして、この剥離補助部材38は、記録用紙21自身の剛性によって定着ベルト21から剥離されなかった記録用紙21を、剥離シート54の先端部によって強制的に剥離するものである。
さらに、上記定着ベルト31の加圧ロール32と反対側に配設される交番磁界発生装置33は、図8に示すように、例えば、耐熱性樹脂等の非磁性体から構成される支持体55と、交番磁界を発生させる励磁コイル56と、励磁コイル56を支持体55上に固定する弾性体で構成された弾性支持部材57と、励磁コイル56にて生成された交番磁界の磁路のうち、定着ベルト31の外周側の磁路を形成する磁心58と、磁界が外部に漏れるのを防止するために磁界を遮蔽する遮蔽部材59と、磁心58を支持体55側に加圧する加圧部材60と、励磁コイル56に交流電流を供給して励磁する励磁回路61とを備えている。
上記支持体55は、その定着ベルト31側に位置する端面の断面形状が、定着ベルト31の表面形状に沿って湾曲した同心円の円弧形状に形成されており、励磁コイル56を支持する上端面(支持面)55aが定着ベルト31との距離が予め定められた値(例えば0.5〜2mm)となるように円弧形状に形成されている。また、この支持体55を構成する材質としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂、又はこれらにガラス繊維を混合した繊維強化の耐熱性樹脂等の耐熱性を有する非磁性材料が用いられる。
上記励磁コイル56は、相互に絶縁された例えば直径0.17mmの銅線材を例えば90本束ねたリッツ線が長円形状や楕円形状、長方形状等の中空の閉ループ状に巻かれて構成されている。そして、この励磁コイル56には、励磁回路61から所定の周波数の交流電流が供給され、励磁コイル56の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交番磁界が生成される。励磁回路61から励磁コイル56に供給される交流電流の周波数は、例えば、20〜100kHzに設定される。
また、上記磁心58は、例えば、ソフトフェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)やパーマロイ、整磁鋼等の高透磁率の酸化物や合金材料で構成される強磁性体が用いられ、定着ベルト31の外側に位置する磁路形成部材として機能する。この磁心58は、励磁コイル56によって発生された交番磁界による磁力線(磁束)が、図5に示すように、励磁コイル56から定着ベルト31を横切って発熱制御部材34の方向に向かい、発熱制御部材34の中を通過して励磁コイル56に戻るといった磁力線の通路(磁路)を形成する。このように、磁心58によって磁路を形成することにより、励磁コイル56によって発生された交番磁界(磁力線)が定着ベルト31の磁心58と対向する領域に集中される。この磁心58としては、磁路形成による損失が小さい材料が望ましく、具体的には渦電流損を小さくする形態(凹所等による電流経路遮断や分断化、薄板束ね等)で使用するのが望ましく、しかもヒステリシス損の小さい材料からなるものが望ましい。
また、定着ベルト31と加圧ロール32を圧接させる押圧部材36は、図1に示すように、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体で構成され、支持部材37の加圧ロール32と対向する位置に固定した状態で取り付けられている。そして、この押圧部材36は、定着ベルト31を介して加圧ロール32と圧接されることにより、加圧ロール32との間でニップ部Nを形成する。
さらに、上記押圧部材36は、図1に示すように、記録用紙21の搬送方向上流側に位置するニップ部Nの入口側であるプレニップ領域36aと、記録用紙21の搬送方向下流側に位置するニップ部Nの出口側である剥離ニップ領域36bとでニップ圧が異なるように設定されている。更に説明すると、押圧部材36のプレニップ領域36aは、加圧ロール32側の面が加圧ロール32の外周面に略倣う円弧形状に形成され、均一で幅の広いニップ部Nを形成する。一方、押圧部材36の剥離ニップ領域36bでは、当該剥離ニップ領域36bを通過する定着ベルト31の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール32の表面を加圧ロール32側に向けて凸形状となるよう局所的に大きなニップ圧で押圧するように形成される。かかる構成により、剥離ニップ領域36bを通過する記録用紙21に定着ベルト31表面から離れる方向のカール(ダウンカール)を形成して、記録用紙21に対する定着ベルト31表面からの剥離を促進させている。その結果、上記記録用紙21は、ニッップ部Nを通過した後、ダウンカールを形成するように変形して、自らの剛性によって定着ベルト31の表面から剥離される。
また、押圧部材36を支持する支持部材37は、図1に示すように、押圧部材36が加圧ロール32からの押圧力を受けた状態での撓み量が一定量以下となるように、剛性の高い材料で構成される。それにより、ニップ部Nにおける長手方向の圧力(ニップ圧)の均一性を維持している。さらに、この支持部材37は、誘導磁界に影響を与えないか、又は与え難い材料であり、かつ、誘導磁界から影響を受けないか、又は受け難い材料で構成される。上記支持部材37としては、例えば、ガラス繊維が混入したPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂や、例えばAl、Cu、Ag等の常磁性金属材料等が用いられる。
また、上記定着ベルト31の内部には、図1に示すように、発熱制御部材34が配設されている。この発熱制御部材34は、図1に示すように、定着ベルト31の内周面に倣った円弧形状に形成されており、その定着ベルト31の内周面に沿った円弧状部分の中心角は、例えば、160度程度に設定される。また、上記発熱制御部材34は、定着ベルト31の内周面と予め定められた約1〜3mm程度の一定の間隙を有するように、非接触状態であるが定着ベルト31からの熱を受け易いように近接して配置されている。さらに、この発熱制御部材34は、定着ベルト31の基材層311と同様に、透磁率変化開始温度が各色トナー像が溶融する定着ベルト31の加熱設定温度以上であって、定着ベルト31の弾性層313や表面離型層314の耐熱温度よりも低い所定の温度範囲内に設定された材質で構成される。
ここで、上記発熱制御部材34は“感温磁性”を有する材料で構成されている。よって、定着ベルト31の加熱設定温度以上の予め定められた温度範囲内、例えば加熱設定温度よりも100℃程度高い温度範囲内において、比透磁率が数百以上である強磁性と比透磁率がほぼ1である常磁性(非磁性)との間を可逆的に変化する。そして、上記発熱制御部材34は、透磁率変化開始温度以下の温度範囲では強磁性を呈し、交番磁界発生装置33によって発生された交番磁界の磁束を誘導して、発熱制御部材34の内部に当該発熱制御部材34の表面に沿った方向に磁路を形成する。また、上記発熱制御部材34は、透磁率変化開始温度を超える温度範囲では常磁性を呈し、交番磁界発生装置によって発生された磁束を発熱制御部材34の層厚方向に横切るように透過する。
上記発熱制御部材34の感温磁性について更に説明すると、この発熱制御部材34は、図9に示すように、強磁性体として機能する強磁性体機能領域(1)と非磁性体となる非磁性領域(4)との間に、比透磁率μrが小さな勾配で増加して最大値となった後に減少する遷移領域(2)と、比透磁率が略直線状に急激に減少して非磁性(常磁性)体へと変化する非磁性変態化領域(3)とを有している。通常、強磁性体が非磁性体へと変化するキューリー点(CP)とは、比透磁率が1となる温度を指すが、この実施の形態では、図9において、強磁性体機能領域(1)を近似する直線L1と、非磁性変態化領域(3)を近似する直線L2との交点であり、透磁率が変化を開始する温度と見なせる透磁率変化開始温度を、キューリー点と称している。
そして、上記発熱制御部材34は、強磁性を呈する透磁率変化開始温度(キューリー点)以下の温度範囲においては、図5に示すように、交番磁界発生装置33にて生成され定着ベルト31を透過した磁束を誘導する。また、この発熱制御部材34は、透磁率変化開始温度を超える温度範囲においては、図10に示すように、非磁性(常磁性)体へと変化し、交番磁界発生装置33にて生成され定着ベルト31を透過した磁束は、発熱制御部材34の層厚方向に横切るように透過する。その結果、上記の如く定着ベルト31を透過し、しかも発熱制御部材34を層厚方向に横切るように透過した磁束は、その下方に位置する非磁性金属誘導部材35との間の空間や、非磁性金属誘導部材35の内部を通過する。
上記発熱制御部材34に適する材質は、定着ベルト31の基材層311と同様、透磁率変化開始温度が例えば定着ベルト31の加熱設定温度である140℃〜240℃の範囲内に設定された例えばFe−Ni合金(パーマロイ)等の二元系整磁鋼やFe−Ni−Cr合金等の三元系の整磁鋼等が用いられる。このようなパーマロイや整磁鋼などの金属合金等は、薄肉成型性や加工性に優れ、熱伝導性も高く安価である等の理由から、発熱制御部材34としても適している。発熱制御部材34のその他の材質としては、Fe、Ni、Si、B、Nb、Cu、Zr、Co、Cr、V、Mn、Mo等からなる金属の合金が用いられる。例えば、Fe−Niの二元系整磁鋼においては、図4に示すように、おおよそFe64%、Ni36%(原子数比)とすることで225℃前後に透磁率変化開始温度を設定することができる。
また、発熱制御部材34は、本実施例では、Fe−Ni合金を用いて、本実施例における定着ベルトの基材層311の厚さ50μmよりも厚い150μm程度の厚さに設定した。なお厚さは100〜300μmが熱効率の面で良かった。
上記発熱制御部材34としては、例えば、定着ベルト31の基材層311と同じFe−Ni合金を用い、強磁性を呈する状態でのFe−Ni合金の室温の固有抵抗値ρが70×10-8Ωm、比透磁率μrが400の材料で、交番磁界の周波数を20kHzとした場合に、上述した(1)式より、強磁性を呈する状態での表皮深さ(δ)は149μmとなる。また、常磁性を呈する状態でのFe−Ni合金の固有抵抗値ρは、温度係数分だけ微増するが室温時とほぼ変わらないとすると、比透磁率μrは1に変化するので、(1)式より、完全に常磁性を呈する状態での表皮深さ(δ)は2978μmとなる。この場合は、少なくとも定着ベルト31の基材層311の厚さと発熱制御部材34の厚さの合計値が、強磁性を呈する状態での表皮深さ(δ)の149μmよりも厚く形成すると、交番磁界発生装置33により生成された交番磁界の磁力線Hは、強磁性を呈する状態において、(1−1/e)×100%以上の磁路を形成される。
交番磁界の磁力線Hが発熱制御部材34に作用すると、発熱制御部材34には渦電流Iが発生する。例えば、発熱制御部材34の厚さを薄く形成した場合には、発熱制御部材34の電気抵抗Rが大きくなるため、発熱制御部材34に流れる渦電流Iは減少し、発熱制御部材34での発熱量は少なくなる傾向を示す。
上記発熱制御部材34の内部で発生する渦電流Iの渦電流損によるジュール熱Wは、W=I2Rで表され、ジュール熱Wに対して渦電流Iは二乗で作用する。そのため、発熱制御部材34の電気抵抗Rを大きくするか、渦電流Iが少なくなるようにすれば、発熱制御部材34での発熱量Wを少なくすることができる。
発熱制御部材34の電気抵抗Rは、次の(2)式により導かれる。(2)式において、ρは発熱制御部材34の固有抵抗値(Ωm)、Sは発熱制御部材34の断面積、Lは発熱制御部材34中を流れる渦電流Iの経路長を示している。(2)式から明らかなように、発熱制御部材34の厚さを薄く形成した場合には、発熱制御部材34の断面積Sが小さくなり、発熱制御部材34の電気抵抗Rは大きくなる。
R=ρ(L/S) ・・・(2)
発熱制御部材34の厚さをt0とし、強磁性を呈する状態での主な磁束が侵入している深さをt1とし、常磁性を呈する状態での表皮深さをt2とすると、t0>t1の場合には、(t0−t1)の部分に流れる渦電流Iは少ない。しかし、発熱制御部材34が常磁性を呈する状態に変化した場合、発熱制御部材34の表皮深さ(δ)が2978μmとなり、渦電流Iは、発熱制御部材34の厚さであるt0の全領域を流れるため、渦電流Iが流れる厚さ方向の領域が増加する。よって、発熱制御部材34が常磁性を呈する状態では、(2)式から、発熱制御部材34の断面積Sが大きくなり、高固有抵抗である発熱制御部材34の電気抵抗Rは小さくなるため発熱し易くなる。そこで、望ましくは、発熱制御部材34では、強磁性を呈する状態での磁束の侵入深さt1をできるだけ小さくして渦電流Iが流れる領域の厚さを小さくして電気抵抗Rを高くするとともに、常磁性を呈する状態での電気抵抗Rを大きくするのが好ましい。
次に、発熱制御部材34の厚さがt0<t1の場合には、厚さt0すべてに渦電流Iが流れる場合が、発熱制御部材34の断面積Sが最も大きくなって電気抵抗Rが最も小さくなるケースに当たる。この場合は、強磁性を呈する状態での渦電流Iが流れる厚さ領域と常磁性を呈する状態に変化した状態での渦電流Iが流れる厚さ方向の領域は、共にt0と同じ領域となる。したがって、発熱制御部材34の厚さがt0<t1の場合は、発熱制御部材34の厚さが表皮深さ(δ)より薄い分だけ発熱量が小さくなった。
すなわち、発熱制御部材34の厚さを例えば100μmと強磁性を呈する状態での主な磁束が侵入している深さt1よりも薄くt0<t1とした場合には、発熱制御部材34内で発生するジュール熱W(W=I2R)において、発熱制御部材34の電気抵抗Rを小さくしながら、渦電流Iも同時に小さくなる。それにより、発熱制御部材34での発熱量Wが最少化された。
磁束の侵入深さt1をできるだけ小さくして電気抵抗Rを大きくすれば、強磁性を呈する状態でのジュール発熱Wを抑制することができる。また、常磁性を呈する状態(表皮深さt2)での電気抵抗Rを大きくすれば、発熱制御部材34の渦電流Iによる自己発熱が抑制できる。磁束の侵入深さt1を小さくして電気抵抗Rを大きくするためには、発熱制御部材34の比透磁率を高くすればよい。比透磁率が高いと磁気結合度や磁束密度も高くなり磁路形成手段としても望ましい。比透磁率を高くするためには、発熱制御部材34を熱処理してフルアニール(焼鈍)すれば良い。
さらに、上記発熱制御部材34の内側に配設された非磁性金属誘導部材35は、例えばAg、Cu、Alといった固有抵抗値が比較的小さい非磁性金属で構成される。そして、この非磁性金属誘導部材35は、図10に示すように、定着ベルト31の基材層311や発熱制御部材34が透磁率変化開始温度以上の温度に上昇した際に、交番磁界発生装置33により生成された交番磁界(磁力線)を誘導して、定着ベルト31の導電層312や発熱制御部材34よりも渦電流Iが発生し易い状態を形成する。それにより、非磁性金属誘導部材34の厚さは、渦電流Iが流れ易いように、表皮深さよりも充分に厚い所定の厚さ(例えば1mm)で形成される。
上記の如く構成される定着装置では、次のようにして記録用紙へのトナー像の定着処理が行われる。
すなわち、上記定着装置30では、図1に示すように、記録用紙21上に多重に転写されたフルカラー等のトナー像を定着するにあたり、図7に示すように、駆動モータ48を起動することにより定着ベルト31を予め定められた回転速度で回転駆動するとともに、交番磁界発生装置33の励磁回路61により励磁コイル56に予め定められた周波数の交流電流を通電する。
こうすることによって、上記定着装置30では、図5に示すように、交番磁界発生装置33の励磁コイル56にて交番磁界が生成され、交番磁界の磁束が形成され、主に定着ベルト31の発熱層311が電磁誘導作用によって発熱し、定着ベルト31が予め定められた定着温度まで加熱される。
そして、この定着装置30では、定着ベルト31が予め定められた定着温度Tsに加熱されると、図1に示すように、未定着トナー像が転写された記録用紙21が、定着ベルト31と加熱ロール32との間のニップ部Nに搬送され、定着ベルト31及び加熱ロール32による加熱・加圧作用によって、未定着トナー像が加熱溶融されて記録用紙21上に定着された後、定着ベルト31から剥離され、図2に示すように、排出ロール22によってカラー画像形成装置1の上部に設けられた排出トレイ23上に排出される。
その際、上記カラー画像形成装置1では、A3サイズやA4サイズ、あるいはB4サイズやB5サイズ、レターサイズ等の種々のサイズの記録用紙21に画像を形成することが可能となっている。また、このカラー画像形成装置1では、図11に示すように、記録用紙21の搬送方向と交差する方向の中央部を基準(所謂センターレジ)にて、記録用紙21を搬送するように構成されている。
このとき、上記定着装置30において、図11に示すように、例えば、A4サイズの記録用紙21を長さが相対的に短い短辺21aを先頭にした縦送り(SEF)にて連続的に通紙した場合には、記録用紙21が通過する定着ベルト31の通紙領域Fsの温度は、定着ベルト31の発熱層312の発熱量が定着に必要な熱量とバランスするように設定することで、定着ベルト31の熱が記録用紙21によって奪われるため、予め定められた定着温度Tf近傍に維持される。一方、記録用紙21が通過しない定着ベルト31の非通紙領域Fbは、定着ベルト31の熱が記録用紙21によって奪われることがないため、予め定められた定着温度Tf以上の上限値Tlim近傍まで上昇する。
このように、上記定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が上限値Tlim近傍まで上昇すると、感温磁性材料からなる定着ベルト31の基材層311は、例えば225℃前後に設定された透磁率変化開始温度を超えるため、強磁性体から非磁性体へと変化する。と同時に、定着ベルト31の内周に非接触状態で配設された温度制御部材34も、定着ベルト31の基材層311と同様に感温磁性材料からなり、定着ベルト31から空気を介して伝達された熱によって加熱されるとともに、当該温度制御部材34は、交番磁界発生装置33にて生成される交番磁界によって発熱し、透磁率変化開始温度を超えるため、やはり強磁性体から非磁性体へと変化する。
このとき、上記温度制御部材34の温度は、当該温度制御部材34が交番磁界発生装置33にて生成される交番磁界によって発熱する自己発熱量Wと、定着ベルト31から受ける熱によって決まる。この温度制御部材34のジュール熱による発熱量Wは、上述したように、W=I2Rで与えられ、発熱制御部材34の電気抵抗Rと渦電流Iの大きさに依存する。
そして、上記の如く定着ベルト31の基材層311及び発熱制御部材34が非磁性体へと変化すると、交番磁界発生装置33にて生成された交番磁界は、図10に示すように、定着ベルト31の基材層311及び発熱制御部材34を透過して、発熱制御部材34と非磁性金属誘導部材35との間の空間及び非磁性金属誘導部材35の内部を通過した後に励磁コイル56へと戻り、定着ベルト31の発熱層312及び発熱制御部材34を通過する磁束の磁束密度が低下するため、定着ベルト31の発熱層312及び発熱制御部材34における発熱量が減少し、図11に示すように、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が低下することになる。そのため、記録用紙21の連続通紙時においては、上記定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度上昇が抑制されつつ、定着処理が継続される。
このように、上記発熱制御部材34は、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が透磁率変化開始温度を超える温度に上昇した際に、当該発熱制御部材34が定着ベルト31の基材層311と共に非磁性体へと変化して、図10に示すように、定着ベルト31の基材層311と共に交番磁界発生装置33により生成された交番磁界を透過させて、定着ベルト31の発熱層312を通過する磁束の磁束密度を減少させ、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度上昇を抑制する。
本実施例では発熱制御部材34は、更に、図5及び図10に示すように、交番磁界発生装置33の外部磁路形成部材としての磁心58とともに、磁束が通過する磁路を形成する部材であり、当該発熱制御部材34によって形成される磁路は、発熱制御部材34の比透磁率等に依存する。上記発熱制御部材34は、比透磁率μrが温度に依存して変化する感温磁性材料を含むように構成されており、透磁率変化開始温度付近前後の磁気特性が急激に変化する特性を利用した定着ベルト31の過剰な温度上昇を検出する温度センサーとしての機能を有している。
上記発熱制御部材34が定着ベルト31の非通紙部Fbの温度上昇を抑制するために必要な条件は、図9に示すように、感温磁性材料からなる発熱制御部材34の通紙領域Fsを、発熱制御部材34の強磁性体領域(1)及び遷移領域(2)に維持するとともに、非通紙領域Fbを非磁性変態化領域(3)及び非磁性領域(4)の状態に維持することにある。
具体的には、定着ベルト31の通紙領域Fsは、140〜160℃程度に維持され、透磁率変化開始温度近傍より低い温度領域にあり、発熱制御部材34が強磁性体として機能することにより、図5に示すように、定着ベルト31の通紙領域Fsの磁束密度を高磁束密度化して励磁コイル56との間で閉磁路を形成し続ける必要がある。そして、発熱制御部材34が強磁性体化して閉磁路を形成し続けることによって、高磁束密度化で磁気結合を向上させて定着ベルト31に流れる渦電流Iを増加させることにある。
一方、定着ベルト31の非通紙領域Fbは、図11に示すように、透磁率変化開始温度(Tcu)近傍より高い温度領域にあり、発熱制御部材34が非磁性体へと変態する。これにより、図10に示すように、定着ベルト31の非通紙領域Fbの磁束密度を低下させている。発熱制御部材34が、非磁性体化することによって磁束が貫通し、非磁性金属誘導部材35へ磁束を誘導して定着ベルト31に流れる渦電流量Iを抑制しているので、結果として定着ベルト31の非通紙領域Fbの発熱が抑制される。
しかしながら、電磁誘導による磁束により、渦電流損やヒステリシス損によって発熱制御部材34が自己発熱してしまう。この発熱制御部材34の自己発熱量が大きいと、発熱制御部材34の温度が上昇して、定着ベルトの温度は発熱を抑制したいほど上がっていないにもかかわらず、自己の発熱により透磁率変化開始温度を超えて非磁性体化してしまい、発熱を抑制する必要のない時に抑制効果が発現してしまう虞れがある。よって、本実施例では上記発熱制御部材34は、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度を抑制するために必要な部材であるので、自己発熱による意図しない温度上昇はできる限り小さくする必要がある。
そこで、本実施例における遮断部または空間部または凹部として、スリット70を用いた。上記発熱制御部材34の自己発熱による意図しない温度上昇を抑制するため、図12に示すように、発熱制御部材34の長手方向(定着ベルト31の軸方向)と略90度交差する方向に沿ったスリット70を、発熱制御部材34の長手方向に沿って予め定められた間隔で複数設けた。スリット70があるので、発熱制御部材34が強磁性体化しているときに、当該発熱制御部材34に流れる大きな渦電流の流れが遮断され、発熱制御部材34の発熱が抑えられている。
しかしながら、上記発熱制御部材34の長手方向と略90度交差する方向に沿った複数のスリットを設けた場合には、当該発熱制御部材34に流れる渦電流を遮断し、発熱制御部材34の発熱を抑えることができる半面、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が上限値Tlim近傍まで上昇しても、発熱制御部材34の温度が透磁率変化開始温度(Tcu)を超える時期が遅れることになる。なぜなら、定着ベルトは非通紙領域と通紙領域との境目は定着ベルト自体の伝熱により、最初は通紙領域の温度が低くても非通紙領域の熱が伝わり温度が上がってきてしまい、端部と通紙領域中央部との温度差ができてしまう。しかし、その温度差は非通紙領域と通紙領域の差ほど大きくなく、更に本実施例では定着ベルトと発熱制御部材34の間には空気層があるため発熱制御部材34と定着ベルトが同じ温度になるには時間がかかる。そのため、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が上限値Tlim近傍まで上昇しても、発熱制御部材34が強磁性体化したままで、定着ベルト31の非通紙領域Fbの加熱が継続されてしまい、当該定着ベルト31の非通紙領域Fbの熱が熱伝導によって通紙領域Fsへと伝わり、定着ベルト31の通紙領域Fsの端部近傍の温度が設定された定着温度140〜160℃を大きく上回り、200℃前後まで上昇して、記録用紙21上のトナー像に高温オフセットを生じる虞れが生じる。
そこで、この実施の形態では、スリット70により発熱制御部材34の過剰な温度上昇を抑制しつつ、スリット70を貫通させずに発熱制御部材34の熱伝達を行う部分を残すことで、定着ベルト31の通紙領域Fsの端部近傍の温度が上昇し過ぎることに起因して、記録用紙21上のトナー像に高温オフセットを生じるのを抑制することを可能としている。なお、この貫通させずに残した部分が、本実施例における連続部である連続部72に相当する。
ここで、本実施例の形態である連続部72とスリット70がある場合の温度変化を、スリット70があって連続部72がない場合、スリット70がなくて連続部72のみがある場合とを比較対照として説明する。
即ち、本実施例の形態である連続部72とスリット70がある場合、定着ベルトの温度は、図18(a)に示すように、初期も連続通紙時も、共に本来の制御温度となるように制御可能であるのに対して、スリット70があって連続部72がない場合には、図18(b)に示すように、初期的には、本来の制御温度となるように制御可能であるものの、連続通紙時に定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が上限値Tlim近傍まで上昇しても、発熱制御部材34の非通紙部の熱がスリット70によって遮断されて通紙部側へ伝達されないため、発熱制御部材34の通紙部は、強磁性体化したままで、定着ベルト31の非通紙領域Fbの加熱が継続されてしまい、当該定着ベルト31の非通紙領域Fbの熱が熱伝導によって通紙領域Fsへと伝わり、定着ベルト31の通紙領域Fsの端部近傍の温度が設定された定着温度140〜160℃を大きく上回り、200℃前後まで上昇して、記録用紙21上のトナー像に高温オフセットを生じる虞れが生じる。
また、スリット70がなくて連続部72のみがある場合には、図18(c)に示すように、初期的には、本来の制御温度となるように制御可能であるものの、連続通紙時に発熱制御部材34の非通紙部の温度が上昇すると、発熱制御部材34の非通紙部の熱が通紙部へも伝達され、発熱制御部材34全体が常磁性体へと変化し、定着ベルト31の非通紙領域Fb及び通紙領域Fsの加熱が遮断されてしまい、当該定着ベルト31の通紙領域Fsの温度が不本位に低下してしまう虞れがある。
なお、この連続部は本実施例では発熱制御部材34の長手方向に沿った全長にわたって連続した連続部72である。
ここで、この実施の形態の発熱制御部材34は、図1に示すように、定着ベルト31の内周面に予め定められた間隙を介して対向するように、その中央部分34aが予め定められた中心角θを有する円弧形状に配置されている。この発熱制御部材34の周方向に沿った一端部34bは、図13中、下方に向けて折り曲げられており、図1に示すように、当該下向折曲部34bが支持部材37に設けられた補助部材62にネジ止め等の手段によって固定されている。また、発熱制御部材34の他端部34cは、半径方向の略中心部へ向けて短く折り曲げられた後、内側の端部34dが予め定められた長さだけ下方に向けて略直角に折り曲げられており、図1に示すように、当該下向折曲部34dが支持部材37に非磁性金属誘導部材35の端部と共にネジ止め等の手段によって固定されている。
上記発熱制御部材34は、上述したように、Fe−Niの二元系整磁鋼等の合金によって、例えば100〜200μmの厚さを有する薄板状に形成されており、その剛性は小さいが、図13に示すような異形断面形状に形成することにより、その剛性を向上させることができる。
ただし、上記発熱制御部材34は、図12に示すように、複数のスリットからなるスリット群を形成すると、当該発熱制御部材34の剛性が低下することになる。
そこで、この実施の形態では、図14に示すように、発熱制御部材34の自己発熱による意図しない温度上昇を抑制するため、発熱制御部材34には、その長手方向(定着ベルト31の軸方向)と略90度交差する方向に沿った遮断手段の遮断部としてのスリット70を、発熱制御部材34の長手方向に沿って予め定められた間隔で複数設けたスリット群71が形成されている。
ただし、上記発熱制御部材34のスリット70は、発熱制御部材34の長手方向と略90度交差する方向に沿った円弧形状部34aの全領域にわたって設けるのではなく、円弧形状部34aの上端近傍に位置する領域R3に対応した部分には、スリット70を設けず、発熱制御部材34の長手方向に沿った全長にわたって連続した連続部72として構成されている。
このように構成することで、上記発熱制御部材34の連続部72は、発熱制御部材34の長手方向に沿った全長にわたって連続しているため、薄板状に形成された発熱制御部材34の剛性を高め、当該発熱制御部材34の組み立て性を向上させている。
なお、上記連続部72の幅は、当該発熱制御部材34の厚さt、後述する励磁コイルの空孔部幅等のパラメータとともに、連続部72に発生する渦電流による発熱量などを考慮して決定される。
また、この実施の形態では、発熱制御部材34にスリット70を形成する場合であっても、図13に示すように、後述する励磁コイルの端部付近の対向部位置付近に当たる取付部となる下向折曲部34b、34dには多くの渦電流は流れないこともあり、スリット70を設けないのは勿論のこと、発熱制御部材34の円弧状部34aと下向折曲部34b及び他端部34cとの境界となるエッジ部には、スリット70を設けないように構成されている。なお、上記発熱制御部材34の剛性には影響しない他端部34cは、たとえ短い長さであっても磁界の影響を受ける部分であり、スリット70本来の効果を高めるため、スリット70が設けられている。
上記定着装置30では、図11に示すように、A4サイズ等の小サイズの記録用紙21を、長さが相対的に短い短辺21aを先頭にして縦送りにより搬送して定着する際に、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が上昇して、定着ベルト31の基材層311が透磁率変化開始温度(Tcu)より高い温度となっても、発熱制御部材34には、図14に示すように、当該発熱制御部材34には、複数のスリット70からなるスリット群71が設けられているため、発熱制御部材34の電磁誘導作用による渦電流が複数のスリット70からなるスリット群71によって遮断され、発熱制御部材34の自己発熱が抑制されている。
そのため、上記発熱制御部材34は、それ自体の温度上昇が抑制され、発熱制御部材34の温度が不必要なときに透磁率変化開始温度(Tcu)を上回って非磁性体へと移行し、図10に示すように、定着ベルト31の発熱層312の発熱が不本位に抑制されてしまい、磁気結合度が低下したり、定着ベルト31の非通紙部昇温抑制効果が効かなくなるのを回避することができる。
更に、上記発熱制御部材34には、図14に示すように、複数のスリット70からなるスリット群71の一部に、発熱制御部材34の長手方向に沿って連続した連続部72が設けられているが、本実施例におけるこの連続部72は図12と図14の自己発熱抑制効果に大きな差がない位置に設けている。
ここで、連続部72を図12と図14の自己発熱抑制効果に大きな差がない位置に設けた場合、発熱制御部材34の温度は、図19(a)に示すように、初期状態に対して連続定着時に発熱制御部材34の通紙領域Fsの熱が連続部72を介した熱伝導によって上昇し、端部近傍に変化が現れる。これに対して、発熱制御部材34の自己発熱抑制効果に大きな差がある位置に設けると、発熱制御部材34の温度は、図19(b)に示すように、初期状態に対して連続定着時に発熱制御部材34の通紙領域Fsの熱が連続部72を介した熱伝導によって上昇し、端部近傍以外にも変化が現れてしまうことになる虞れがある。
発熱制御部材34に流れようとする渦電流の主経路は、図12に示すように、対向する励磁コイル56の形状を正射影した経路であり、図8に示すコイルの空孔部の対向位置にあたる発熱制御部材34の図10における領域R3の部位に当たる連続部72は渦電流の流れる量が少ない位置である。図8における励磁コイルの磁界強度分布からもわかるように、発熱制御部材34において渦電流が強く流れる位置は励磁コイルの磁界強度分布最大位置に対向する位置であり、励磁コイル空孔部の対向位置は磁界強度が弱く、渦電流の主経路の流れの中心位置であるため渦電流湯は多く流れない(流れにくい)位置である。よって連続部を設けても自己発熱の抑制効果はほぼ同じにすることが可能になる、連続部は励磁コイル空孔部かもしくは励磁コイル端部付近の対向部位置が連続部として最も望ましい位置であり、本実施例ではその実施形態を用いている。
本実施例の特徴は、発熱制御部材34に渦電流が多く流れる、いわゆる渦電流の主経路にスリットを入れ、渦電流の流れが少ない部位を連結して連続部72を設けた点である。特に連続部72は発熱しにくい部位でありながら、励磁コイル56に対向する加熱領域であり、定着ベルト31からの伝熱量が多く、発熱制御部材自体の熱を軸方向に熱伝導する部位としては好適な位置といえる。
その結果、上記発熱制御部材34は、図15に示すように、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度上昇に伴って、当該発熱制御部材34の連続部72による自己発熱も加わって、発熱制御部材34の定着ベルト31の非通紙領域Fbに対応した非通紙領域Fbの温度が上昇すると、発熱制御部材34の温度が透磁率変化開始温度(Tcu)を上回って非磁性体へと移行し、図10に示すように、定着ベルト31の非通紙領域Fbの温度が過剰に上昇するのを抑制している。
しかも、上記発熱制御部材34には、図14に示すように、連続部72が設けられているため、発熱制御部材34の非通紙領域Fbの温度が透磁率変化開始温度(Tcu)を上回る温度に上昇すると、当該発熱制御部材34の非通紙領域Fbの熱が、発熱制御部材34の通紙領域Fsへと熱伝導によって伝わり、発熱制御部材34の非通紙領域Fbに隣接した通紙領域Fsの温度が透磁率変化開始温度(Tcu)を上回る。
すると、上記発熱制御部材34は、その非通紙領域Fbに隣接した通紙領域Fsが非磁性体へと変化し、励磁コイル56で発生した交番磁界の磁束が、発熱制御部材34の非通紙領域Fbに隣接した通紙領域Fsを透過し、定着ベルト31の発熱層312の非通紙領域Fbに隣接した通紙領域Fsにおける磁束密度が低下するため、定着ベルト31の発熱層312の通紙領域Fsの端部近傍における発熱が抑制されることになる。
したがって、上記定着装置30では、小サイズの記録用紙21を連続して通紙した場合であっても、定着ベルト31の通紙領域Fsの端部近傍における温度が過剰に上昇するのを抑制され、かつ、定着ベルト31の通紙領域Fsの端部近傍等が高温となって、記録用紙21に高温オフセットが発生するのを抑制される。
実施の形態2
図16はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態2では、前記遮断手段の連続部に、前記交番磁界発生手段からの電磁誘導作用により前記発熱制御部材に発生する渦電流を遮断する遮断部を設けるように構成されている。
すなわち、この実施の形態2では、図16(a)に示すように、発熱制御部材34の連続部72に、交番磁界発生装置33からの電磁誘導作用により発熱制御部材34に発生する渦電流を遮断する遮断部としての複数のスリット73が、発熱制御部材34の長さ方向に沿って予め定められた長さに分割されて設けられている。
また、上記複数のスリット73は、図16(a)に示すように、発熱制御部材34のスリット70が設けられた位置に対応して、当該スリット70と交差するように設けても、図16(b)に示すように、発熱制御部材34のスリット70が設けられていない位置に対応して、当該スリット70と交差するように設けても良い。
このように、上記発熱制御部材34の連続部72にスリット73を設けることによって、連続部72に発生する渦電流をスリット73によって遮断することができ、発熱制御部材34の発熱作用を細かく制御することが可能となる。
また、上記スリット73の長さや間隙を適宜設定することにより、発熱制御部材34の発熱作用を更に細かく制御することが可能となる。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態3
図17はこの発明の実施の形態3を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態3では、前記遮断手段の遮断部を、前記発熱制御部材に対して前記加熱回転体の軸方向に沿って傾斜した状態で設けるように構成されている。
すなわち、この実施の形態3では、図17に示すように、発熱制御部材34に、交番磁界発生装置33からの電磁誘導作用により発熱制御部材34に発生する渦電流を遮断する遮断部としての複数のスリット70が、発熱制御部材34の長さ方向に対して予め定められた角度だけ傾斜した状態で設けられている。
このように、複数のスリット70を発熱制御部材34の長さ方向に対して予め定められた角度だけ傾斜した状態で設けることにより、連続部72と共に発熱制御部材34の長さ方向に沿った熱の移動をある程度許容することができ、定着ベルト31の通紙領域Fsの端部近傍の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態4
図20はこの発明の実施の形態4を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態4では、電磁誘導によって発熱する発熱体と、前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、前記加熱回転体と前記磁界発生手段と対向するように配置され、磁路を形成する複数の磁路形成手段と、前記複数の磁路形成手段同士を前記軸の方向につなぐ連続部とを備えるように構成されている。
すなわち、この実施の形態4では、図20(a)に示すように、発熱制御部材34が定着ベルト31の内面に接触するように配置されている。また、発熱制御部材34は、本実施例では、Fe−Ni合金を用いて、本実施例における定着ベルトの基材層311の厚さ50μmよりも厚い300μmの厚さに設定した。発熱制御部材34の厚さは、厚ければ厚いほど、渦電流が流れやすい。本実施例では、発熱制御部材34を定着ベルト31に接触させているため、発熱制御部材34の自己発熱は前記実施例に比べると許容される。また、発熱制御部材34を薄く製作するのはコストがかかったため、本実施例では厚さを300μmとした。
また、この実施の形態4では、図20(b)に示すように、定着ベルト31と励磁コイルと対向するように配置され、磁路を形成する複数の磁路形成部材341、342、343・・・と、これら複数の磁路形成部材341、342、343・・・同士を軸の方向につなぐ連続部72とを備えるように構成されている。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態5
図21はこの発明の実施の形態5を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態5では、前記連続部は、前記加熱回転体によって加熱される被加熱体の両端に対応した部分に設けるように構成されている。
すなわち、この実施の形態5では、図21に示すように、発熱制御部材34の連続部72を定着ベルト31の全長にわたって設けるのではなく、発熱制御部材34の連続部を定着ベルト31の記録用紙の端部(両端部又は端部を基準に用紙を搬送する場合には一方の端部)に対応した部分にのみ設けるように構成されている。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態6
図22はこの発明の実施の形態6を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態6では、加熱回転体と発熱体とが別体となるように構成されている。
すなわち、この実施の形態6では、図22に示すように、発熱体としての発熱ロール80を備えており、当該発熱ロール80の外周には、他のロール81との間に加熱回転体として定着ベルト31が張架されていて、定着ベルト31は発熱体を備えていない。上記発熱ロール80の内部には、磁路形成手段34が配設されているとともに、発熱ロール80の外周には、磁界発生手段としての励磁コイルが設けられている。
このように、加熱回転体が必ずしても発熱体を備えている必要はなく、加熱回転体と発熱体とが別体となるように構成しても勿論よい。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
この発明は、電子写真方式を用いたプリンターや複写機等の画像形成装置の定着装置として適用されるが、これに限られるものではなく電磁誘導加熱装置全般に適用できる。例えば予め定められた温度に加熱される加熱回転体を用いて他の部材を回転し、フィルム部材などを予め定められた温度に加熱して溶着処理を行うための用いられる電磁誘導加熱装置などとして広く用いることができる。
21:記録倍体、30:定着装置、31:定着ベルト、312:導電層、32:加熱ロール、34:発熱制御部材、70:スリット、72:連続部。

Claims (10)

  1. 電磁誘導によって発熱する発熱体と、
    前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
    前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
    前記加熱回転体と前記磁界発生手段と対向するように配置され、前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を遮断する前記加熱回転体の軸方向と交差する方向に沿って設けられたスリットからなる遮断部、及び、前記遮断部の一部に設けられ、前記加熱回転体の軸方向に沿って連続した部分であって、前記加熱回転体の長手方向に沿った熱の移動を許容するように連続した連続部とを有する、感温磁性材料で構成され、磁路を形成する磁路形成手段とを備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置。
  2. 電磁誘導によって発熱する発熱体と、
    前記発熱体からの熱をうけ、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
    前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
    前記加熱回転体及び前記磁界発生手段と対向するように配置され、感温磁性材料で構成され、前記加熱回転体の軸方向に沿った方向に設けられ、前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を遮断する空間部と、前記空間部と前記加熱回転体の軸方向に沿った方向に垂直な方向に設けられ、前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を形成する連続部とを備え、磁路を形成する磁路形成手段と
    を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置。
  3. 電磁誘導によって発熱する発熱体と、
    前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
    前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
    前記加熱回転体及び前記磁界発生手段と対向する部分があるように配置され、感温磁性材料で構成され、前記磁界発生手段と対向している部分の一部に前記磁界発生手段からの電磁誘導によって自己に発生する渦電流を遮断する前記加熱回転体の軸方向と交差する方向に沿って設けられたスリットからなる空間部があり、前記磁界発生手段と対向していない部分の一部に前記加熱回転体の軸方向に沿って連続した部分であって、前記加熱回転体の長手方向に沿った熱の移動を許容するように連続した連続部がある、磁路を形成する磁路形成手段と
    を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置。
  4. 電磁誘導によって発熱する発熱体と、
    前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
    前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
    前記加熱回転体と前記磁界発生手段と対向するように配置され、磁路を形成する磁路形成手段と、を備え、
    前記磁路形成手段には、前記磁界発生手段からの磁界が強い部分に前記磁界発生手段からの電磁誘導によって該磁路形成手段に発生する渦電流を遮断するスリットからなる遮断部があり、前記磁界発生手段からの磁界が弱い部分に前記加熱回転体の軸方向に沿って連続した部分であって、前記加熱回転体の長手方向に沿った熱の移動を許容するように連続した連続部がある、磁路を形成する磁路形成手段と
    を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置。
  5. 電磁誘導によって発熱する発熱体と、
    前記発熱体からの熱を受け、他の部材を加熱しつつ軸回りに回転する加熱回転体と、
    前記加熱回転体に対向配置され、前記発熱体を電磁誘導によって発熱させる磁界を発生させる磁界発生手段と、
    前記加熱回転体と前記磁界発生手段と対向するように配置され、磁路を形成する前記加熱回転体の軸方向に沿って分割した状態で配置された複数の磁路形成手段と、
    前記複数の磁路形成手段同士を前記軸の方向につなぐ連続部と
    を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置。
  6. 前記遮断部または空間部または凹部を、前記加熱回転体の軸方向に傾斜し設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置。
  7. 前記連続部は、前記加熱回転体によって加熱される被加熱体の両端に対応した部分に設けたことを特徴とする請求項1、又は2から6のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置。
  8. 前記連続部を、前記加熱回転体の軸方向に沿って予め定められた幅の全長にわたって設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置と、
    前記加熱回転体に圧接され、当該加熱回転体との間に形成される圧接部を通過する未定着トナー像を保持した記録媒体を加圧する加圧体と、
    を備えたことを特徴とする定着装置。
  10. 像担持体上にトナー像を形成する画像形成部と、
    前記画像形成部によって像担持体上に形成されたトナー像を、直接又は中間転写体を介して記録媒体に転写する転写手段と、
    前記記録媒体上に転写された未定着トナー像を記録媒体上に定着する請求項9に記載された定着手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
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