JPWO2005093108A1 - 黄銅材 - Google Patents
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Abstract
Description
その一方で、鍛造後の金属組織の中にα相の他にβ相が出現すると、β相を起点にして脱亜鉛腐食が発生しやすいことが知られている。
黄銅材においては、Cu成分が63%を越えるとα相単相に抑えやすいが、熱間抵抗が大きく、熱間鍛造用に適用出来ない。
また、引張り強度等の機械的特性が低下する。
そこで、Cu成分を61%程度に下げて鍛造後に熱処理を施し、β相を消失させることも知られている。
しかし、この開示技術においては鍛造性が不充分であり、耐食性を確保するためには熱処理あるいは焼鈍を施さなければならなかった。
また、Cu:61.0〜63.0wt%、Bi:0.5〜2.5wt%、Sn:1.5〜3.0wt%、Sb:0.02〜0.10wt%、P:0.04〜0.15wt%、の他にSi:0.05〜0.30wt%を添加し、残部が実質的にZnであっても良い。
従って、Cu成分は61.0〜63.0wt%の範囲が好ましい。
Biは、CuやZnとほとんど合金化せず、金属組織内に分散することで快削性が向上する。
しかし、BiはPb以上に融点が低く、黄銅材の熱間加工中に溶融状態になり結晶粒界に移動して熱間割れを期たす恐れがある。
Pbの代替として快削性を確保するには、Bi成分が0.5wt%以上が必要で、好ましくは1.0wt%以上である。
本発明にて、特徴的なのは、従来のPb含有黄銅材の場合に、六四黄銅材(Cu:Zn=60:40)ベースとした場合にPbのZn等量は概ね1として換算して、強度、耐脱亜鉛特性等の合金設計をしていたが、BiのZn等量はほぼゼロに近いことが明らかになった点である。
また、従来のPb含有黄銅材においては、Pb成分が、1.0〜2.0wt%添加されているのが一般的であったのに対して本発明においては、Bi成分が0.5wt%以上で良好な快削性を得ることができ、しかもBi成分を0.5〜2.5wt%の範囲では鍛造性と、鍛造後に実質的な熱処理を施さなくても耐脱亜鉛特性が両立する(後述するSn成分との配合による)。
特に、Bi成分0.5〜1.5wt%の範囲では優れた鍛造性を得ることができるだけでなく、伸び及び引っ張り強度等の機械的特性も向上することが明らかになった。
一方、Bi成分を多くすると切削加工時の切屑分断性と刃具潤滑性が向上するが、先に述べたように結晶粒界に移動する量も多くなるので2.5wt%以下がよい。
特にSnは熱間鍛造時にBiの結晶粒界への移動を抑える効果がある。
しかし、Sn成分が1.5wt%未満では添加効果が低く、3.0wt%を超えると硬く脆くなってしまう。
Sn成分は、添加量を多くすると材料が脆くなる傾向があるので、Bi成分を2.0wt%を超えて設定する場合には、2.0wt%以下に抑えるのが好ましいが、Bi成分2.0wt%以下に設定した場合には、Sn成分を3.0wt%まで添加することができ、さらに、耐脱亜鉛腐食特性を向上できる。
従来、Cu−Zn−Bi系黄銅材においては、Si成分は脆化因子として排除されていた。
ところが、Si成分を0.05〜0.30wt%の範囲に制御すると熱間鍛造等の熱間加工性に優れ、特に低温での熱間加工性に優れることが明らかになり、耐脱亜鉛腐食性も良好に維持することが明らかになった。
下限を0.05wt%以上としたのは鍛造改善の向上が認められる限界であり、上限を0.30wt%以下としたのは脆化を考慮したものである。
P成分も脱亜鉛腐食を抑制し、0.04wt%未満では添加効果がなく、0.15wt%を越えると結晶粒界に偏析し、延性が低下するので、P成分は0.04〜0.15wt%の範囲がよい。
本発明においては、Pb成分を含まなくても快削性に優れる。
従って、Pb成分を0.01wt%以下に抑えることで環境負荷が少なくなる。
特に、鍛造後に実質的な熱処理をしなくても耐脱亜鉛腐食性を得ることができる。
(鍛造性)
直径約35mmの丸棒から長さ(高さ)35mmの試験片を切り出し、所定の温度で熱間プレス加圧変形させて熱間鍛造性を評価した。
熱間鍛造性の評価としては、下記に示すアプセット率を変化させて割れの発生状況を評価した。
アプセット率(%)=[(35−h)/35]×100(h:加圧変形後の高さ)
図2の表に示した結果は、鍛造温度約750℃でアプセット率を変化させて鍛造性を外観評価したもので、表中、○印はキレツ発生なし、△印はわずかにキレツ発生、×印はキレツ発生を示す。
なお、外観評価例を図3に示し、左側に表示したアプセット率に対して外観評価例を右側に示す。
材料NO.2,3,4を比較すると、Bi成分0.5〜2.5wt%の範囲では少ない方が伸びの値が高くなり、且つ、鍛造性に優れることが明らかになった。
材料NO.3,5を比較すると、Sn成分の添加により優れた鍛造性を維持しつつ、さらに強度を高くでき、後述するように、鍛造後に熱処理しなくても耐脱亜鉛腐食性が良い。
材料NO.6〜9に示すようにSi成分を添加しても鍛造性の改善効果があり、測定データの表示を省略するが、鍛造温度800℃では、針状組織が生じ割れる場合があったが、適正温度であるそれより低い750℃で割れが発生しなかった。
脱亜鉛腐食試験は、国際標準規格 ISO 6509−1981に準じて実施した。
アプセット率60〜90%で鍛造したものから熱処理することなく試験片を切り出し、フェノール樹脂に埋め込み試験面を湿式研磨した。
なお、最終仕上面は5000番の細かい研磨紙で仕上げた。
調整した直後の塩化銅(2価)1質量%水溶液を用いて75℃、24時間、試験面を露出させた。
その後、水洗、エタノール洗浄乾燥し、試験面と直角に切断し、光学顕微鏡を用いて脱亜鉛深さを測定した。
なお、測定方法として平均的な腐食部分の写真をとり、1mm間隔で72箇所測定し、最大脱亜鉛深さと平均脱亜鉛深さを求めた。
その評価例を図4に示し、脱亜鉛した部分の深さを顕微鏡で測定した。
表1に示した材料NO.1〜9はいずれも鍛造成形後に熱処理をしなくても耐脱亜鉛腐食性が良かった。
比較例1はCu成分が63wt%を超えたPb含有黄銅材の例で、図2の表に結果を示すように、鍛造性が悪かった。
比較例2は、Cu成分を61〜63wt%の範囲にしたPb含有黄銅材の例であるが、それぞれ同じCu成分範囲、P成分範囲、Sn成分範囲、Sb成分範囲を持つビスマス系の合金に比べ耐脱亜鉛腐食性が劣っていた。
なお、Pb成分量は、本発明におけるBi成分量と同程度にしてみたもので、この結果からBi成分のZn等量はゼロに近く、Pbが1に近いといわれるのと異なることが明らかになった。
比較例3は、Cu成分を61wt%未満にしてみたもので、耐脱亜鉛腐食性が劣っていた。
また、Cu:61.0〜63.0wt%、Bi:0.5〜2.5wt%、Sn:1.5〜3.0wt%、Sb:0.02〜0.10wt%、P:0.04〜0.15wt%、の他にSi:0.05〜0.30wt%を添加し、残部がZnおよび不純物であっても良い。
Claims (3)
- Cu:61.0〜63.0wt%、Bi:0.5〜2.5wt%、Sn:1.5〜3.0wt%、Sb:0.02〜0.10wt%、P:0.04〜0.15wt%、および残部が実質的にZnである、鍛造性及び耐脱亜鉛腐食性に優れたことを特徴とする黄銅材。
- Cu:61.0〜63.0wt%、Bi:0.5〜2.5wt%、Sn:1.5〜3.0wt%、Sb:0.02〜0.10wt%、P:0.04〜0.15wt%、の他にSi:0.05〜0.30wt%を添加し、残部が実質的にZnである、鍛造性及び耐脱亜鉛腐食性に優れたことを特徴とする黄銅材。
- Pb成分を0.01wt%以下に抑えたことを特徴とする請求の範囲1又は2記載の黄銅材。
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