JP2002003967A - 耐脱亜鉛腐食性に優れた無鉛快削黄銅およびその製造方法 - Google Patents

耐脱亜鉛腐食性に優れた無鉛快削黄銅およびその製造方法

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JP2002003967A
JP2002003967A JP2000190522A JP2000190522A JP2002003967A JP 2002003967 A JP2002003967 A JP 2002003967A JP 2000190522 A JP2000190522 A JP 2000190522A JP 2000190522 A JP2000190522 A JP 2000190522A JP 2002003967 A JP2002003967 A JP 2002003967A
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dezincification corrosion
brass
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Tetsuya Ando
哲也 安藤
Tetsuo Atsumi
哲郎 渥美
Yoshihiro Yoshikawa
善浩 吉川
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SHINNITTO KINZOKU KK
Sumitomo Light Metal Industries Ltd
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SHINNITTO KINZOKU KK
Sumitomo Light Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた耐脱亜鉛腐食性と切削性をそなえ、熱
間加工性および冷間加工性が良好な無鉛快削黄銅および
その製造方法を提供する。 【解決手段】 Cu:59.0〜62.0%、Bi:
0.3〜4.0%、P:0.02〜0.07%、Fe:
0.30%以下、残部Znおよび不可避不純物からなる
組成を有し、α相とβ相の2相からなり且つβ相がα相
で分断されている組織を有する。上記組成を有する銅合
金の鋳塊を、押出後、または押出および抽伸した後、3
50〜550℃の温度で焼鈍することにより製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐脱亜鉛腐食性と
切削性に優れた無鉛黄銅およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水栓金具、バルブ部品などとして
使用されている黄銅は、鋳造性、熱間および冷間加工
性、機械加工性などが要求されるため、Cu−Zn合金
にPbを添加した快削性黄銅が使用されているが、近
年、健康上および環境上の観点からPbに対する規制が
世界的に厳しくなってきている。
【0003】日本国内においても、飲料水へのPbの溶
出量は現在50ppbに規制されており、2002年に
は10ppbに規制される。一般に、快削黄銅からのP
bの溶出は、機械加工時に溶解し黄銅表面に付着したP
bが黄銅と接触する飲料水中に溶け出すことにより生じ
る。黄銅表面に付着したPbの除去方法もあるが、脱亜
鉛腐食などが生じる腐食性の強い水中で使用した場合に
は、マトリックスの黄銅の腐食に伴い、黄銅内部に存在
しているPbの溶出が懸念されるため問題がある。
【0004】Pbに対する規制の問題を解決するため
に、周期律表でPbの隣に位置し、Pbと共通する特性
を多くそなえたBiをPbに代えて添加することにより
Pbの含有を無くし、あるいはPbの含有量を低減した
黄銅が提案されている(特開平4−231431号公
報、特開平5−255778号公報)。しかしながら、
これらの黄銅を水道水用の水栓金具や配管用の接水金具
として使用する場合には脱亜鉛腐食の問題が生じること
となり、脱亜鉛腐食を抑制するために、BiとともにS
nを添加することが提案されている(特開平7−310
133号公報)が、Cu−Zn合金にSnを多く含有さ
せると硬くて脆いγ相が析出し、冷間加工において加工
破断の原因となるという別の問題がある。
【0005】Biを含有させた黄銅における上記の問題
点を解決するために、発明者らは、Biと併用して耐脱
亜鉛腐食性を改善し得るSn以外の合金成分、組織と耐
脱亜鉛腐食性と関連について多くの実験、検討を行った
結果、特定量のPの添加が耐脱亜鉛腐食性改善のために
有効であり、またマトリックスをα相とβ相からなる組
織とし、簡便な熱処理を加えてβ相をα相で分断するこ
とにより脱亜鉛腐食を抑制できることを利用することが
工業的に最も有効であることを見出した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の知見
に基づいて、さらに検討を加えた結果としてなされたも
のであり、その目的は、優れた耐脱亜鉛腐食性と切削性
をそなえ、熱間加工および冷間加工が容易な無鉛快削黄
銅およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の請求項1による耐脱亜鉛腐食性に優れた無
鉛快削黄銅は、Cu:59.0〜62.0%、Bi:
0.3〜4.0%、P:0.02〜0.07%、Fe:
0.30%以下、残部Znおよび不可避不純物からなる
組成を有し、α相とβ相の2相からなり且つβ相がα相
で分断されている組織を有することを特徴とする。
【0008】請求項2による耐脱亜鉛腐食性に優れた無
鉛快削黄銅は、Cu:60.0〜63.0%、Bi:
0.3〜4.0%、P:0.02〜0.07%、Sn:
0.20〜0.50%、Fe:0.30%以下を含有
し、残部Znおよび不可避不純物からなる組成を有し、
α相とβ相の2相からなり且つβ相がα相で分断されて
いる組織を有することを特徴とする。
【0009】請求項3による耐脱亜鉛腐食性に優れた無
鉛快削黄銅の製造方法は、請求項1または2記載の組成
を有する銅合金の鋳塊を、押出後、または押出および抽
伸した後、350〜550℃の温度で焼鈍する工程を包
含することを特徴とする。
【0010】また、請求項4による耐脱亜鉛腐食性に優
れた無鉛快削黄銅の製造方法は、請求項1または2記載
の組成を有する銅合金の鋳塊を押出後、300℃まで1
0℃/秒以下の冷却速度で徐冷する工程を包含すること
を特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明における含有成分の意義お
よび限定理由について説明すると、Cuは、Znより高
価であるから、その含有量を出来るだけ低減させること
が望ましく、その他の含有成分の影響を考慮し、いずれ
の温度範囲においてもα相とβ相の2相からなるマトリ
ックスが形成され、熱間加工の温度範囲において必ずβ
相含み、且つ常温においてα相が主となるように、C
u:62.0%以下とする。また、耐脱亜鉛腐食性と切
削性を向上させるために、熱処理によりβ相を微細に分
断させるには、熱間加工直後の状態でβ相存在率(α相
+β相中のβ相の割合)を1/2以下にするのが好まし
く、そのためにCu:59.0%以上とする。さらに好
ましいCuの含有量は60.0〜61.0%の範囲であ
る。
【0012】Biは、黄銅の切削性を向上させるよう機
能する。好ましい含有範囲は0.3〜4.0%の範囲で
あり、0.3%未満では十分な切削性向上が得られず、
4.0%を越えて含有すると、機械的性質が低下し、脆
化を生じる傾向がある、さらに好ましいBiの含有量
は、1.8〜3.2%の範囲である。
【0013】Pは、耐脱亜鉛腐食性を向上させるよう作
用する。とくにα相の脱亜鉛腐食の抑制に効果があり、
0.02%以上の微量の添加により十分な脱亜鉛腐食性
を示す。また結晶粒を小さくするよう機能する。Pの一
部は硬くて脆いCu3 P相として存在すること、Cuと
Cu3 P相との共晶温度が714℃と低いことを考慮
し、冷間加工性および熱間加工性の観点からPを多量に
添加することは好ましくなく、機械的性質の低下や脆化
も生じないために、Pの上限は0.07%とするのが好
ましい。さらに好ましいPに含有範囲は0.03〜0.
06%である。
【0014】Feは、α相の粗大化を抑制し機械的性質
を安定化させる。Feの好ましい含有量は0.30%以
下の範囲であり、0.30%を越えると、通常のα+β
黄銅の加工温度以上に保持しないと固溶せず、部分的に
結晶粒の成長を妨害し、結晶粒径が大小混粒となり易
く、機械的性質のばらつきの原因となる。Feが固溶せ
ず残留した場合には抽伸破断の原因となる。さらに好ま
しいFeの含有範囲は0.10〜0.25%である。
【0015】Snは、α相の脱亜鉛腐食を抑制するだけ
でなく、β相の耐脱亜鉛腐食性の向上にも有効に機能す
る。すなわち、後述する熱処理により、β相をα相で包
み込むような組織とした場合においても、数%のβ相が
材料表面に露出するが、Snと添加することによって、
この材料表面に露出したβ相の脱亜鉛腐食をも抑制する
ことが可能となる。Snの好ましい含有量は0.20〜
0.50%の範囲であり、0.20%未満ではその効果
が小さく、0.50%を越えると、熱処理条件によって
は硬くて脆いγ相が析出する場合がある。さらに好まし
いSnの含有範囲は0.25〜0.40%である。ま
た、Snの添加は、見かけ上のZn量を増加させる効果
があるため、Snを添加する場合には、Cuの含有量を
60.0〜63.0%の範囲とするのが好ましい。
【0016】なお、本発明の黄銅において、不純物とし
てのSi、Alは、見かけ上のZn量を著しく増加させ
る効果があり、Cu濃度を前記にように制御しても組織
制御が不十分となるおそれがあるため極力抑える必要が
あり、Si:0.0005%以下、Al:0.05%以
下とするのが好ましい。
【0017】本発明においては、マトリックスがα相と
β相の2相からなり、且つβ相がα相で分断されている
組織を有することを特徴とする。β相がα相で分断さ
れ、β相が、Pの含有により耐脱亜鉛腐食性が向上した
α相で包み込まれるような組織形態とすることにより、
脱亜鉛腐食が進行し難くなり、良好な耐脱亜鉛腐食性が
達成される。
【0018】上記の組織形態を得るための製造方法につ
いて説明すると、まず、前記の組成を有する合金を造塊
し、得られた鋳塊を押出加工する。前記の組成を有する
合金は、Cuの含有量が低く、常にα相、β相の2相か
らなるので押出加工は容易である。押出後のマトリック
スはα+β相からなり、β相は大部分が連続した状態で
存在する。この押出材の組織に特定の条件による熱処理
を施すことにより、連続したβ相がα相によって分断さ
れ、本発明の特徴とする組織性状となる。
【0019】本発明における熱処理の第1の実施態様
は、前記の鋳塊を、押出加工した後、または押出および
抽伸加工した後、350〜550℃の温度で、好ましく
は1〜6時間焼鈍処理するものである。350〜550
℃の温度で熱処理を施すことにより、Cu−Zn状態図
に基づく金相学上の原理に従って、β相の一部がα相に
変化して、組織中のα相の存在比率が増大し、その結
果、残留したβ相はα相によって分断されα相に包み込
まれたような形態となり耐脱亜鉛腐食性が向上する。
【0020】熱処理(焼鈍)温度が350℃未満ではβ
相の分断効果が十分に得られず、熱処理温度が550℃
を越えると、α相からβ相への変態が生じ、β相が増え
て連続相となり、耐食性が劣るようになる。焼鈍処理
後、抽伸加工、矯正仕上げ加工などを施すことができ
る。
【0021】本発明における熱処理の第2の実施態様
は、前記の鋳塊を、押出加工した後、押出材を10℃/
秒以下の冷却速度で300℃まで徐冷するものである。
前記のように、本発明の組成を有する合金は、Cuの含
有量が低く、常にα相、β相の2相からなるので押出加
工は容易であり、押出後の組織は、α+β相からなり、
β相は連続した状態で存在している。
【0022】本発明のCu濃度範囲を有する黄銅の場合
には、押出後の温度低下に伴ってβ相からα相への相変
態によりβ相の存在比率が低下する。この相変態はZn
原子の拡散が律速するため、拡散速度を考慮して押出材
を10℃/秒以下の冷却速度で徐冷することにより、C
u−Zn状態図に基づく金相学上の原理に従って、β相
の一部がα相に変化して、組織中のα相の存在比率が増
加し、その結果、残留したβ相はα相によって分断され
α相に包み込まれたような形態となり耐脱亜鉛腐食性が
向上する。
【0023】押出後の冷却速度が10℃/秒を越える
と、550℃を越える高温領域の場合には、β相からβ
+α相への変態が生じるため、拡散距離が短範囲で足り
るから問題ないが、550℃以下の温度域においては、
β相からα相への変態が生じるため、長範囲の拡散が必
要となり、冷却速度に拡散速度が追随し切れず、β相の
分断が不十分となり、十分な耐脱亜鉛腐食性が得られな
い。押出材を徐冷した後、抽伸加工、矯正仕上げ加工な
どを施すことができる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明するとともに、それに基づいてその効果を実証する。
なお、これらの実施例は、本発明の好ましい一実施態様
を説明するためのものであって、これにより本発明が制
限されるものではない。
【0025】実施例1 65/35黄銅のリターンスクラップを主原料とし、こ
れに新地金を混合して添加元素の濃度を調整した表1に
示す組成の合金を溶解、鋳造し、直径294mmのビレ
ットに造塊した。
【0026】得られた鋳塊を、640℃の温度で直径2
0mmの棒材に押出加工した後、断面減少率10%で冷
間抽伸を行い、ついで表1に示す条件で焼鈍処理し、さ
らに断面減少率15%で冷間抽伸した後、矯正仕上げ加
工した。焼鈍は、電気炉を使用して所定温度に所定時間
保持した後、徐冷することにより行った。
【0027】試験材No.2、No.3およびNo.8
については、640℃の温度で直径20mmの棒材に押
出加工した後、熱間押出材を巻き取るコイルパンを断熱
材で覆うことにより、表1に示す冷却条件で徐冷される
よう調整し、徐冷後、断面減少率15%で抽伸した後、
矯正仕上げ加工した。
【0028】矯正仕上げ加工後の試験材について、下記
の方法により組織観察を行い、加工性、耐脱亜鉛腐食
性、切削性を評価した。 組織観察:焼鈍後、または押出、徐冷後の試験材の縦断
面を顕微鏡で観察し、β相が連続状か分断状かを確認し
た。表1において、βcはβ相が連続状のものを示し、
βdはβ相が分断状のものを示す。 加工性:押出加工および抽伸加工中に破断あるいは割れ
が生じたものは不合格(×)、欠陥を生じることなく加
工できたものを合格(○)とした。
【0029】耐脱亜鉛腐食性:ISO法に準拠して、試
験材を75±3℃のCuCl2 ・2H2 Oの12.7g
/l溶液に24時間浸漬し、脱亜鉛腐食深さを測定し、
以下の基準により評価した。 脱亜鉛腐食深さ100μm以下(実用上脱亜鉛腐食の問
題が生じない深さ)のものは合格(○)、脱亜鉛腐食深
さが100μmを越えるものは不合格(×) 切削性:一定の条件で切削加工を行い、切粉が細かく分
断して切削性が優れていたものは合格(○):切屑が連
続したものは不合格(×)とした。
【0030】組織観察結果、加工性、耐脱亜鉛腐食性、
切削性の評価結果を表2に示す。表2にみられるよう
に、本発明に従う試験材No.1〜8はいずれも、β相
がα相で分断された組織形態を示し、熱間加工性および
冷間加工性は良好であり、優れた切削性、耐脱亜鉛腐食
性を示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】実施例2 65/35黄銅のリターンスクラップを主原料とし、こ
れに新地金を混合して添加元素の濃度を調整した表3に
示す組成の合金を溶解、鋳造し、直径294mmのビレ
ットに造塊した。
【0034】得られた鋳塊を、試験材No.9、No.
12〜15およびNo.18については、640℃の温
度で直径20mmの棒材に押出加工した後、断面減少率
10%で冷間抽伸加工し、ついで、表3に示す条件で焼
鈍処理し、さらに断面減少率15%で冷間抽伸した後、
矯正仕上げ加工した。焼鈍は、電気炉を使用して所定温
度に所定時間保持した後、徐冷することにより行った。
【0035】試験材No.10〜11およびNo.16
〜17については、640℃の温度で直径20mmに押
出加工した後、実施例1と同様にして表3に示す冷却条
件で徐冷し、断面減少率15%で冷間抽伸した後、矯正
仕上げ加工した。
【0036】矯正仕上げ加工後の試験材について、実施
例1と同一の方法により組織観察を行い、加工性、耐脱
亜鉛腐食性、切削性を評価した。結果を表4に示す。表
4にみられるように、本発明に従う試験材No.9〜1
8はいずれも、β相がα相で分断された組織形態を示
し、熱間加工性および冷間加工性は良好であり、優れた
切削性、耐脱亜鉛腐食性を示した。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】実施例3 65/35黄銅のリターンスクラップを主原料とし、こ
れに新地金を混合して添加元素の濃度を調整した表5に
示す組成の合金を溶解、鋳造し、直径294mmのビレ
ットに造塊した。
【0040】得られた鋳塊を、試験材No.19〜20
については、640℃の温度で直径20mmの棒材に押
出加工した後、断面減少率10%で冷間抽伸加工し、つ
いで、表5に示す条件で焼鈍処理し、さらに断面減少率
15%で冷間抽伸した後、矯正仕上げ加工した。焼鈍
は、実施例1と同様、電気炉を使用して所定温度に所定
時間保持した後、徐冷することにより行った。
【0041】試験材No.21については、640℃の
温度で直径20mmに押出加工した後、実施例1と同様
にして表5に示す冷却条件で徐冷し、断面減少率15%
で冷間抽伸した後、矯正仕上げ加工した。
【0042】矯正仕上げ加工後の試験材について、実施
例1と同一の方法により組織観察を行い、加工性、耐脱
亜鉛腐食性、切削性を評価した。結果を表6に示す。表
6にみられるように、本発明に従う試験材No.19〜
21はいずれも、β相がα相で分断された組織形態を示
し、熱間加工性および冷間加工性は良好であり、優れた
切削性、耐脱亜鉛腐食性を示した。
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】比較例1 65/35黄銅のリターンスクラップを主原料とし、こ
れに新地金を混合して添加元素の濃度を調整した表3に
示す組成の合金を溶解、鋳造し、直径294mmのビレ
ットに造塊した。
【0046】得られた鋳塊を、試験材No.22〜2
4、No.27、No.29〜30およびNo.32〜
34 については、640℃の温度で直径20mmの
棒材に押出加工した後、断面減少率10%で冷間抽伸加
工し、ついで、表7に示す条件で焼鈍処理し、さらに断
面減少率15%で冷間抽伸した後、矯正仕上げ加工し
た。焼鈍は、実施例1と同様、電気炉を使用して所定温
度に所定時間保持した後、徐冷することにより行った。
【0047】試験材No.25〜26、No.28、N
o.31およびNo.35については、640℃の温度
で直径20mmに押出加工した後、実施例1と同様にし
て表7に示す冷却条件で徐冷し、断面減少率15%で冷
間抽伸した後、矯正仕上げ加工した。
【0048】矯正仕上げ加工後の試験材について、実施
例1と同一の方法により組織観察を行い、加工性、耐脱
亜鉛腐食性、切削性を評価した。結果を表8に示す。な
お、表7において、本発明の条件を外れたものには下線
を付した。
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】表8に示すように、試験材No.22、N
o.24はCu含有量が低いため、高温長時間の熱処理
を行ってもβ相が分断されず耐脱亜鉛腐食性が改善され
ない。また、β相存在率が高いため冷間加工性が劣り、
抽伸加工で破断が生じた。試験材No.23、No.2
5はCu量が多いため、β相存在率が低く熱間加工時の
変形抵抗が高くなり、押し詰まりが生じた。試験材N
o.26はBi含有量が低いため、切削屑が螺旋状に連
なり十分な切削性が得られなかった。試験材No.27
はBi量が多いため、熱間加工時にBiの溶融に起因し
て割れが生じ、割れを抑制するためには押出速度を低下
させなければならなかった。また、Biを起点として抽
伸時に破断が生じた。
【0052】試験材No.28はPの含有量が少ないた
め、100μmを越える深さの脱亜鉛腐食が生じ、試験
材No.29はP量が多いため、Cu3 Pを起点として
抽伸時に破断が生じた。試験材No.30はCu濃度に
対してSn含有量が低いため、β相率が大きくなり、高
温長時間の熱処理においてもβ相が分断されず、脱亜鉛
腐食を抑制する効果が不十分となり100μmを越える
深さの脱亜鉛腐食が生じた。試験材No.31はSn量
が多いため、γ相が析出しγ相を起点として抽伸時に破
断が生じた。試験材No.32はFe含有量が多いた
め、熱間押出温度の640℃では完全には固溶せず、残
留したFeが起点となって抽伸破断が生じた。
【0053】試験材No.33は焼鈍温度は低いため、
β相が完全に分断されず十分な耐脱亜鉛腐食性が得られ
なかった。また、焼鈍後のβ相存在率が低いため抽伸時
に破断が生じた。試験材No.34は焼鈍温度が高いた
め、β相存在率が高くなり脱亜鉛腐食が顕著となり、抽
伸時の破断発生率も大きくなった。試験材No.35は
押出後の冷却速度が大きいためα相の析出が不十分とな
り、β相存在率が高く且つβ相がα相により分断され
ず、十分な耐脱亜鉛腐食性が得られなかった。また、抽
伸時の破断発生率も大きくなった。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、優れた耐脱亜鉛腐食性
と切削性をそなえ、熱間加工性および冷間加工性が良好
な無鉛快削黄銅およびその製造方法が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 630 C22F 1/00 630K 640 640A 682 682 683 683 685 685Z 691 691B 692 692A 692B (72)発明者 渥美 哲郎 東京都港区新橋5丁目11番3号 住友軽金 属工業株式会社内 (72)発明者 吉川 善浩 茨城県石岡市大字柏原4番1号 新日東金 属株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cu:59.0〜62.0%(質量%、
    以下同じ)、Bi:0.3〜4.0%、P:0.02〜
    0.07%、Fe:0.30%以下(0%を含む、以下
    同じ)、残部Znおよび不可避不純物からなる組成を有
    し、α相とβ相の2相からなり且つβ相がα相で分断さ
    れている組織を有することを特徴とする耐脱亜鉛腐食性
    に優れた無鉛快削黄銅。
  2. 【請求項2】 Cu:60.0〜63.0%、Bi:
    0.3〜4.0%、P:0.02〜0.07%、Sn:
    0.20〜0.50%、Fe:0.30%以下を含有
    し、残部Znおよび不可避不純物からなる組成を有し、
    α相とβ相の2相からなり且つβ相がα相で分断されて
    いる組織を有することを特徴とする耐脱亜鉛腐食性に優
    れた無鉛快削黄銅。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の組成を有する銅
    合金の鋳塊を、押出後、または押出および抽伸した後、
    350〜550℃の温度で焼鈍する工程を包含すること
    を特徴とする耐脱亜鉛腐食性に優れた無鉛快削黄銅の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の組成を有する銅
    合金の鋳塊を押出後、300℃まで10℃/秒以下の冷
    却速度で徐冷する工程を包含することを特徴とする耐脱
    亜鉛腐食性に優れた無鉛快削黄銅の製造方法。
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