JPH08199238A - 高強度低熱膨張合金線材の製造方法 - Google Patents

高強度低熱膨張合金線材の製造方法

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JPH08199238A
JPH08199238A JP794295A JP794295A JPH08199238A JP H08199238 A JPH08199238 A JP H08199238A JP 794295 A JP794295 A JP 794295A JP 794295 A JP794295 A JP 794295A JP H08199238 A JPH08199238 A JP H08199238A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】低弛度架空送電線の中心部用線に使用する、引
張り強さ100kgf/mm2以上の高強度低熱膨張合金線
材。 【構成】重量%で、C:0.1〜0.8、以下1種以上
の計でSi+Mn:0.15〜2.5、Cr+Mo:
8.0以下で、Ni:25〜40でCo:10.0以
下、ただし、Ni+Co:30〜42であって、以下、
いずれも、Al:0.1、Mg:0.1、Ca:0.
1、O:0.005、N:0.008以下であり、残部
が実質上FeであるFe−Ni系合金の線材であって、
熱間の線材圧延後、少なくとも皮剥ぎ、伸線、焼鈍およ
び表面被覆の工程を含み、熱間の線材圧延を、終止温度
900℃以上、圧下率In(So/S)≧3.0(So
は圧延前断面積、Sは圧延後断面積)の条件で実施し、
その後の処理を、圧延終止から700℃までの冷却速度
を3.0℃/秒以上の条件で実施する、最終製品のサイ
ズで100kgf/mm2以上の引張り強さを有する線材の製
造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度低熱膨張合金線
材、とくに低弛度架空送電線の中心部用線に使用する、
引張り強さ100kgf/mm2以上の高強度低熱膨張合金線
材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】低弛度架空送電線の中心部用線の材料と
しては、「インバー」合金Fe−36%Ni、「コバー
ル」合金Fe−29%Ni−17%Co、「スーパーイ
ンバー」合金Fe−36%(Ni+Co)のような、F
e−Ni系またはFe−(Ni+Co)系の合金が使用
されて来た。 Fe,NiおよびCoは熱膨張の制御に
重要な成分であって、使用温度範囲において所望の熱膨
張係数を実現するために、最適な割合で配合される。
【0003】実際のものは、強度の増加を意図して、固
溶強化により母相の強度を高める目的で、または炭化物
・窒化物あるいは金属間化合物の析出を容易にする目的
で、適量のC,Si,Mn,Ti,Cr,Mo,W,N
b等の元素を添加している。
【0004】合金から線材を製造するには、一般につぎ
の工程に従う。 すなわち、溶製した合金のインゴット
または連続鋳造の鋳片の分塊圧延または鍛造−熱間の線
材圧延−表面処理(酸洗または皮削り)−伸線−軟化焼
鈍・時効−メッキの諸工程である。 伸線工程と軟化焼
鈍・時効とは複数回繰り返されることもあり、メッキに
先立ってさらに伸線を行ない、加工硬化による強度増大
をはかることもある。
【0005】低弛度架空送電線の中心部用線に使用する
合金線には、きびしい特性すなわち、(1)高強度(1
00kgf/mm2以上の引張り強さ)、(2)低熱膨張係数
(室温〜300℃における線膨張率αが5×10-6/℃
以下)、(3)高い伸び(1.5%以上)が要求され、
これらに加えて、(4)高い破断捻回値(16回以上)を
もつことが望ましいとされる。 ここで破断捻回値は、
合金線の直径の100倍の長さをゲージ長として約60
rpm で線材を捻ったときに破断に至るまでの回転数をい
い、送電線用線材に適用されている試験法である。
【0006】従来の合金線においては、既知の組成の合
金を常用の加工法で加工した場合、上記(1)〜(3)
の特性要求をみたすことができても、(4)の破断捻回
値を高い値に保つことが困難であった。 これまでの経
験では、低熱膨張合金の破断捻回値はバラツキが大きく
なりやすい特性であって、信頼性の高い架空送電線を構
成するには、破断捻回値を高いレベルに引き上げなけれ
ばならない。
【0007】発明者らは、他の特性を損うことなく高い
破断捻回値を示す高強度低熱膨張合金線材を提供するこ
とを企てて研究の結果、特定の合金組成を選択するとと
もに、前記した線材製造工程において、熱間の線材圧延
終了時に粒界析出物量を一定限度以内にすること、具体
的には2%(面積率)以下にすること、および結晶粒径
を特定の微細なものにすること、具体的には5〜70μ
mの範囲内にすることが効果的であることを見出した。
これらの要件は、一方でもみたされれば所望の線材が
得られるが、両方ともみたされれば、さらに好結果とな
る。
【0008】上記の粒界析出物および結晶粒径の要件
は、一般に線材圧延後の材料を適切な条件で固溶化熱処
理することによって実現するが(ただし、結晶粒径を大
きくしすぎないよう注意を要する)、いうまでもなく熱
処理は時間・労力・エネルギーを要する作業であってコ
ストに影響するから、なるべく省略したい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の一般的
な目的は、高い破断捻回値を示す高強度低熱膨張合金線
材の製造方法において、固溶化熱処理を行なうことな
く、上記の粒界析出物および結晶粒度に関する要件がみ
たされるような製造方法を提供することにある。
【0010】本発明のより具体的な目的は、このような
線材を使用して、耐久力に関して信頼性の高い低弛度架
空送電線の中心部用線を実現することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の高強度低熱膨張
合金の線材は、重量で、C:0.1〜0.8%、Siおよ
びMnの1種または2種(2種の場合は合計で):0.
15〜2.5%、CrおよびMoの1種または2種(2
種の場合は合計で):8.0%以下、ならびに、Ni:
25〜40%およびCo:10.0%以下(ただし、N
i+Co:30〜42%)を含有し、Al:0.1%以
下、Mg:0.1%以下、Ca:0.1%以下、O:
0.005%以下、かつN:0.008%以下であり、
残部が実質上FeであるFe−Ni系合金の線材であっ
て、最終製品のサイズで100kgf/mm2 以上の引張り
強さを有する線材を製造する方法であって、熱間の線材
圧延後、少なくとも皮剥ぎ、伸線、焼鈍および表面被覆
の工程を含み、熱間の線材圧延を、終止温度900℃以
上、圧下率ln(So/S)≧3.0(ただし、Soは
圧延前断面積、Sは圧延後断面積)の条件で実施し、そ
の後の処理を、圧延終止から700℃までの温度範囲に
おける冷却速度を3.0℃/sec以上の条件で実施するこ
とを特徴とする。
【0012】
【作用】本発明の合金の組成を上記のように限定した理
由は、つぎのとおりである。
【0013】Ni:25〜40%、Co:10.0%以
下(ただしNi+Co:30〜42%) これらの主成分は、残部のFeとともに、前記した低熱
膨張係数(室温〜300℃における線膨張率αが5×1
-6/℃以下)を実現するために必要な割合で組み合わ
せてある。
【0014】C:0.1〜0.8% 第2伸線がもたらす加工硬化により引張り強さ100kg
f/mm2以上を達成する上で、Cが0.1%以上存在しな
ければならない。 しかしC量が増大すると熱膨張率が
大きくなるし、脆くなって伸び1.5%以上を達成する
ことが困難になるので、0.8%を上限とする。 好ま
しいC量は、0.2〜0.5%である。
【0015】SiおよびMnの1種または2種(2種以上
の場合は合計量で):0.15〜2.5% 脱酸剤として、SiおよびMnのどちらか一方または両
方を使用する。 脱酸効果を確保するためには0.15
%以上の添加が必要であるが、どちらも熱膨張率を高め
るので、上限2.5%を設けた。
【0016】CrおよびMoの1種または2種(2種の
場合は合計量で):8.0%以下 これらの元素は、合金を強化し、加工硬化、析出硬化に
よる高強度を実現するのに役立つ。 多量に加えると熱
膨張率が高まるので、合計量で8.0%を添加の上限と
する。
【0017】Al:0.1%以下、Mg:0.1%以
下、Ca:0.1%以下 これらの元素は脱酸のため、または熱間加工性向上を意
図して添加することがある。 通常含まれる0.1%以
下の量は特性に影響を与えないが多量添加するとメッキ
性を害するので、0.1%を上限とした。
【0018】O:0.005%以下、N:0.008%
以下 それぞれ酸化物、窒化物の介在物を形成し、それらがと
くに粒界に存在すると捻回値の安定にとって妨げになる
から、これらの不純物量は極力低減したい。 上記の
O:0.005%、N:0.008%は、それぞれの許
容限界である。
【0019】熱間の線材圧延およびその後の処理の条件
を上記のように限定した理由は、つぎのとおりである。
【0020】終止温度:900℃以上 粒界析出物となる炭化物を溶け込ませるため、ある程度
高い温度が必要であるが、高過ぎると結晶粒径を粗大化
させるので、それらを調和させ、従来のこの種合金の線
材圧延に行なわれていた条件より低い温度範囲を選択し
た。終止温度が低すぎると圧延時の変形抵抗が増大し、
圧延機に過大な負荷がかかって好ましくない。
【0021】圧下率:ln(So/S)≧3.0 高い圧下率を採用することにより、ミクロな偏析を解消
して結晶粒径を細かくする。 具体例を挙げれば、80
mm径の棒から12mm径の線材に圧延したときln=3.
8、145mm角の棒から9mm径の線材にしたときln=
5.8である。 加工の度合が低いと鋳造組織が残存
し、粒界炭化物量が増加して、最終製品の捻回値が低く
なる。 また、加工の不足は結晶粒径が大きくなりすぎ
る原因にもなり、それに伴って粒界炭化物量も増加して
好ましくない。
【0022】冷却速度:圧延終止から700℃までを
3.0℃/sec以上 冷却速度が遅いと、粒界炭化物量が増加する。 また、
結晶粒径が大きくなりやすく、最終製品の伸びが小さく
なる。 析出物の生成を極力防いで低い温度にするため
に、高温領域ではなるべく急速に冷却する。 40℃/s
ecは、ブロア空冷により実現できる冷却速度である。
【0023】
【実施例】図1に示した工程に従い、高強度低熱膨張合
金の線材を製造した。 以下に各工程を説明する。
【0024】(1)原料配合 製造しようとする合金の組成に従って、Fe源(スクラ
ップ、電解鉄等)、Ni源(電解ニッケル、フェロニッ
ケル等)に42Ni合金やスーパーインバー合金を所要
量組み合わせ、さらに合金元素(C,Si,Mn,C
r,Mo)を所定量配合して、表1に示す組成Aおよび
組成Bの配合原料を用意した。
【0025】(2)溶解−鋳造 組成Aの配合原料を真空誘導炉へ入れ、真空(たとえば
10-2Torr)または不活性ガス(Ar)雰囲気下に溶解
して、合金Aを得た。 同様に、組成Bの配合原料を大
気誘導炉で溶解し、合金Bを得た。
【0026】表1成分 組成A 組成B C 0.25 0.30 Si 0.51 0.75 Mn 0.20 0.30 P 0.008 0.003 S 0.002 0.008 Cu 0.02 0.01 Ni 35.0 38.3 Cr 0.98 0.70 Mo 2.01 1.53 Co 3.14 0.25 Al 0.03 0.08 Mg 0.02 0.01 Ca 0.01 0.01 O 0.0015 0.0014 N 0.0014 0.0035 重量%、残部Fe。
【0027】(3)分塊 合金Aのインゴットを1250℃の温度に加熱し、鍛造
して145mm角のビレットまたは直径75mmの丸棒にし
た。 合金Bのインゴットも加熱温度1250℃で分塊
圧延し、直径50mm、70mmまたは80mmの丸棒にし
た。
【0028】(4)熱間線材圧延 上記の分塊工程で製造した材料を1280℃から900
℃の範囲の種々の温度に加熱し、圧延を行なった。 圧
延後の寸法を9〜15mmの範囲で変化させ熱間圧延線材
を製造した。
【0029】その際、圧延終止温度および圧延終了後7
00℃までの冷却速度を制御した。圧延後の冷却には、
ブロワーによる強制空冷および水冷却を行ない、それぞ
れ送風量および供給水量を制御して、冷却速度を制御し
た。
【0030】熱間圧延の条件および冷却速度を、表2に
示す。
【0031】 表2 No. 組成 熱間圧延材寸法 加工率 終止温度 冷却速度 冷却方法 抽出時 加工後 ln(So/S) (℃) (℃/sec) 実施例 1 A 145B φ15 4.78 1050 4.5 空冷1* 2 A 145B φ12 5.2 1050 7.2 空冷2 3 A 145B φ10.5 5.49 1050 8.3 空冷3 4 B φ80 φ10.5 4.06 1050 7.0 空冷2 5 B φ70 φ12 3.59 1000 7.5 空冷2 6 B φ70 φ8 4.10 1100 40.0 水冷 比較例 7 A 145B φ12 6.53 1100 2.0 空冷0 8 A φ70 φ10.5 8.79 880 5.0 空冷1 9 B φ50 φ12 2.40 1050 1.5 空冷0 *「空冷」の後の数字は、使用したブロワの数を示す。
【0032】この段階で、粒界析出物量および結晶粒径
を測定した。 試験片を縦(圧延)方向に切断して切断
面を研磨し、5%ナイタール液で40秒間腐食したの
ち、走査型電子顕微鏡を用い倍率4000倍で写真撮影
をした。 その写真を自動画像処理装置「ルーゼック
ス」にかけて、粒界に存在する析出物の面積率を算出
し、その値を析出物量とした。 あわせて、結晶粒径の
圧延方向の径を平均して、結晶粒径のサイズとした。
【0033】(5)第1伸線 この表面を削った合金線を冷間伸線し、直径7.75mm
とした。
【0034】(6)熱処理 直径7.75mmに伸線した線材を650℃に10時間加
熱することにより熱処理を行ない、軟化および時効析出
効果を得た。
【0035】(7)皮剥ぎ 熱処理後の線材の表面の酸化スケールと疵を除くため、
ダイスを通して表面を削った。
【0036】(8)第2伸線 冷間伸線により、直径3.0mmの合金線を得た。 加工
率は85%とした。
【0037】(9)メッキ 上記の直径3.0mmの線を架空送電線の中心部用線に用
いるには耐食性を高めなければならないので、溶融Zn
−Al合金に浸漬してメッキした。
【0038】メッキ後の合金線について、捻回値試験
(試験法は前記した。 10コの平均と、標準偏差を求
めた。)、伸び(引張試験における破断時の)および線
膨張率(30℃〜300℃までの平均値)を測定した。
【0039】前記した熱間線材圧延後の粒界析出物量と
結晶粒径との測定値に加えて、捻回値、引張り強さおよ
び伸びの測定値を、表3にまとめて示す。 膨張係数
は、合金Aでは3.6〜3.8×10-6/℃、合金Bで
は3.4〜3.6×10-6/℃であった。
【0040】 表3 No. 組成 圧延線材特 最終製品サイズ の特性 結晶粒径 粒界炭化物 引張強さ 伸び 捻回値 (μm) (面積率%) (kgf/mm2)(%)(回/100d) 平均 σ 実施例 1 A 26 1.1 132.3 2.0 115 9 2 A 21 0.13 134.3 2.1 125 5 3 A 17 0.05 136.5 2.2 120 7 4 B 47 0.05 135.2 1.8 122 6 5 B 55 0.06 138.3 1.6 123 6 6 B 12 0.02 132.8 2.2 127 5 比較例 7 A 76 2.4 132.2 1.6 75 22 8 A 4 2.2 137.7 1.4 61 33 9 B 82 3.1 131.5 1.5 82 25 上記表2および表3のデータから明らかなように、熱間
線材圧延とその後の処理の条件とを本発明に従って選択
することにより、高い破断捻回値が得られている。
【0041】
【発明の効果】本発明によるときは、100kgf/mm2
上の強度をもつFe−(Ni+Co)系高強度低熱膨張
合金において、合金のもつ物理的特性を維持したまま、
破断捻回値が向上したものが得られる。 従ってこの合
金の線材は、低弛度架空送電線の中心部線として用いる
とき、信頼性の高い製品を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高強度低熱膨張合金線材の製造方法
の工程を示すブロックダイアグラム。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮崎 健史 大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 北村 真一 大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 吉田 敦 大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量で、C:0.1〜0.8%、Siおよ
    びMnの1種または2種(2種の場合は合計で):0.
    15〜2.5%、CrおよびMoの1種または2種(2
    種の場合は合計で):8.0%以下、ならびに、Ni:
    25〜40%およびCo:10.0%以下(ただし、N
    i+Co:30〜42%)を含有し、Al:0.1%以
    下、Mg:0.1%以下、Ca:0.1%以下、O:
    0.005%以下、かつN:0.008%以下であり、
    残部が実質上FeであるFe−Ni系合金の線材であっ
    て、最終製品のサイズで100kgf/mm2以上の引張り強
    さを有する線材を製造する方法であって、熱間の線材圧
    延後、少なくとも皮剥ぎ、伸線、焼鈍および表面被覆の
    工程を含み、熱間の線材圧延を、終止温度900℃以
    上、圧下率ln(So/S)≧3.0(ただし、Soは
    圧延前断面積、Sは圧延後断面積)の条件で実施し、そ
    の後の処理を、圧延終止から700℃までの温度範囲に
    おける冷却速度を3.0℃/sec以上の条件で実施するこ
    とを特徴とする高強度低熱膨張合金線材の製造方法。
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