JP3379355B2 - 耐硫化物応力割れ性を必要とする環境で使用される高強度鋼材およびその製造方法 - Google Patents
耐硫化物応力割れ性を必要とする環境で使用される高強度鋼材およびその製造方法Info
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Description
性を必要とする環境、例えば、硫化水素を含む油井環
境、で使用される鋼材、およびその製造方法に関する。
本発明の鋼材は、高強度とともに優れた耐硫化物応力割
れ性を有するので、硫化水素を含む原油、天然ガスなど
の採取、輸送、その他の処理に使用される管などとして
用いるのに好適なものである。
る鋼材には、その主要な性質として硫化物応力割れに対
する耐性(以下、「耐硫化物応力割れ性」と記す)が要
求される。
に発生した水素が鋼中に拡散し、鋼材に負荷された応力
との相乗効果によって破断に至る水素脆化の一種であ
る。
力割れ感受性は高まり、鋼材の耐力に比べて低い負荷応
力で容易に硫化物応力割れを発生する。
影響を大きく受ける。そこで、金属組織面からの耐硫化
物応力割れ性の改良方法について、従来から多くの研究
がなされてきた。一般的に、耐硫化物応力割れ性の向上
には、焼き戻しマルテンサイト組織(以下、単に「αマ
ルテンサイト」という)が最も効果的であり、かつ細粒
組織が望ましいと言われている。
鋼の加熱に誘導加熱などの急速加熱手段を適用する方法
により、また特開昭59−232220号公報には鋼を
2回焼き入れする方法により結晶粒を微細化するという
発明が開示されている。それ以外にも、例えば特開昭6
3−93822号公報には、鋼材の組織をベイナイトと
することによって性能向上を図る方法が示されている。
とされている鋼は、いずれもαマルテンサイトまたはフ
ェライト(一部ベイナイト)を主組織とする炭素鋼(低
合金鋼)である。
「BCC」という)である。しかし、BCCは、本質的
に水素脆化感受性が高い。従って、αマルテンサイトま
たはフェライトを主組織とする鋼では、硫化物応力割れ
を完全に防ぐ方法がない。特に、強度が高くなるほど硫
化物応力割れ感受性は大きくなるから、高強度で、しか
も耐硫化物応力割れ性に優れた鋼材を得ることは事実上
不可能である。
い面心立方晶(以下、「FCC」という)のオーステナ
イト組織を持つステンレス鋼や高Ni合金などの高耐食
合金を用いれば、硫化物応力割れは防止できる。しか
し、オーステナイト系の鋼は一般に低強度である。ま
た、安定なオーステナイト組織を得るためには、Niな
どの高価な成分元素の多量添加が必要であり、鋼材の製
造コスト上昇が著しい。
材には、強度および経済性が強く要求される。このた
め、従来の多量のNiを含むステンレス鋼や高Ni合金
ではその要求を満たし得ない。
イト単相組織で耐硫化物応力割れ性に優れ、しかも高い
強度を持つ鋼材を安価に提供することを課題としてなさ
れたものである。具体的には、耐力(YS)が77.3
〜109.0kgf/mm2 (110〜155ksi)
の強度レベルで、NACE−TM−0177浴(0.5
%酢酸+5%食塩、1気圧硫化水素、25℃)中での割
れ発生限界応力(σth)が前記耐力の80%以上の耐
硫化物応力割れ性を有する高強度鋼材と、その鋼材を安
価に製造する方法を提供することを目的とする。
3kgf/mm2 以上とするのは、次の理由による。す
なわち、本発明鋼材の主用途は、原油や天然ガスの採取
や輸送などに用いる管であるが、その分野で最も権威の
ある米国石油協会(API)の規格で、C110クラス
(耐力110〜155ksi、すなわち77.3〜10
9.0kgf/mm2 のクラス)以上の強度を持たせた
いからである。
「National Association of Corrosion Engineers 」が
推奨する前記のNACE−TM−0177浴中での割れ
発生限界応力(σth)によって評価することとした。
この割れ発生限界応力(σth)が耐力の80%以上で
あれば、昨今の厳しい腐食環境下での使用に十分耐え得
る。
テンサイト組織とは異なり、オーステナイト組織を有す
る材料は一般に水素脆化を起こさないと言われている。
しかし、オーステナイト組織を有するステンレス鋼や高
Ni合金は、硫化水素を含む環境中では主としてCrや
Niを含有することによる皮膜耐食性向上効果が強いた
め、硫化物応力割れを発生しない理由が、オーステナイ
ト組織が水素脆化を起こさないことにあるかどうかにつ
いては未だ明確でない。
験研究の結果、NiおよびCrに比較してはるかに安価
な元素であるMnを主要な合金成分としたオーステナイ
ト単相の鋼材が優れた耐硫化物応力割れ性を有すること
を確認した。
イト単相にするだけでは、前述のような用途向けの鋼材
として必要な強度は得られない。従って、この鋼材に所
定の強度を持たせる方法についても種々実験研究の結
果、オーステナイトの一部が最密六方晶(以下、「HC
P」という)のεマルテンサイトに変態するものの、こ
のεマルテンサイトは水素脆化を起こさず、耐硫化物応
力割れ性を劣化させることがない冷間加工を施すのが最
も経済的であることを確認し、その製造方法をも併せて
開発した。
び(2)のその製造方法を要旨とする。
i:0.05〜1%、Mn:5〜45%、P:0.03
%以下、S:0.03%以下、Cr+Ni+Mo:10
%以下、Cu:3%以下、N:0.6%以下を含み、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、実質的にオー
ステナイトとεマルテンサイトからなる金属組織と、7
7.3kgf/mm2 以上の耐力を有し、しかもNAC
E−TM−0177浴中での割れ発生限界応力(σt
h)が前記耐力の80%以上であることを特徴とする耐
硫化物応力割れ性を必要とする環境で使用される高強度
鋼材。
i:0.05〜1%、Mn:5〜45%、P:0.03
%以下、S:0.03%以下、Cr+Ni+Mo:10
%以下、Cu:3%以下、N:0.6%以下を含み、残
部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼を熱間加工し
た後、1000〜1200℃で10分以上保持した後に
急冷する溶体化熱処理を施し、その後加工度20%以上
の冷間加工を施すことを特徴とする耐硫化物応力割れ性
を必要とする環境で使用される高強度鋼材の製造方法。
からまでを特徴とする。
「%」は、「重量%」を意味する)のMnを含有するこ
と、 金属組織が実質的にオーステナイトとεマルテンサ
イトからなること、 77.3kgf/mm2 以上の耐力を有すること、 NACE−TM−0177浴中での割れ発生限界応
力(σth)が前記耐力の80%以上であること、およ
び 耐硫化物応力割れ性を必要とする環境で使用される
ものであること。
とεマルテンサイトからなる」というのは、必ずしもオ
ーステナイトとεマルテンサイトとの合計量が100%
であることを要しないという意味である。勿論、オース
テナイトとεマルテンサイトの合計が100%であるこ
とが最も望ましいが、僅かな(例えば、面積率で5%程
度までの)他の組織、例えば、フェライトなどが混在す
ることは許される。
イト組織の鋼は、一般に水素脆化を起こしにくいと言わ
れている。しかし、多量のNiやCrを含有しないオー
ステナイト鋼でも、そのような特性が得られるか否かは
不明であった。
nを主たるオーステナイト安定化元素として使用し、
のような優れた耐硫化物応力割れ性を持たせたものであ
る。しかも、例えば上記(2)の製造方法によって、
のような高強度をも兼ね備えることができる。
を説明する。
を常温でオーステナイト単相組織とするのに必要な元素
である。しかし、その含有量が5%未満では、実質的な
オーステナイトとεマルテンサイトの混合組織が得られ
ず、過度のフェライト相の析出により耐硫化物応力割れ
性が著しく劣化する。また、その含有量が45%を超え
ると、硫化水素環境中にMnが溶解するようになり、腐
食速度を増加させて耐硫化物応力割れ性が劣化する。従
って、Mn含有量は、5〜45%とした。
Nなどのオーステナイト安定化元素を多量に添加すれ
ば、オーステナイトとεマルテンサイトの混合組織は得
られるが、Niのような高価な元素を多量に使用するこ
とは、安価な鋼材を提供するという発明の目的に反す
る。
領域では、Ni、Nなどのオーステナイト安定化元素を
併用してもよいが、これらの成分の過度な添加は、後述
するように、皮膜耐食性の過度な向上に基づく腐食速度
の低下を招き、耐硫化物応力割れ性を低下させるので好
ましくない。よって、本発明鋼材は、基本的にはMnだ
けで安定したオーステナイトとεマルテンサイトの混合
組織を得るのが望ましく、そのMn含有量の好ましい範
囲は15〜45%である。
0.05%未満であると、脱酸が不十分となって非金属
介在物が多く残存し、所望の耐硫化物応力割れ性が得ら
れない。一方、その含有量が1%を超えると、粒界強度
を弱め、耐硫化物応力割れ性が低下する。従って、Si
含有量は、0.05〜1%とした。なお、好ましい範囲
は0.1〜0.9%、より好ましい範囲は0.3〜0.
8%である。
ナイトを安定化してフェライトの析出を抑制し、耐硫化
物応力割れ性を向上させるとともに、強度の向上に寄与
する元素である。このため、これらの効果を得たい場合
には、添加することができる。しかし、その含有量が
0.05%未満では上記の効果は小さい。一方、その含
有量が1.2%を超えると、炭化物の増加に伴い炭化物
と母材間の界面で腐食が進み、腐食速度の増加により減
肉し、耐硫化物応力割れ性が劣化する。従って、添加す
る場合のC含有量は、0.05%以上とするのが望まし
いが、その上限は1.2%以下にする必要がある。な
お、添加する場合の好ましい範囲は0.1〜1%、より
好ましい範囲は0.4〜0.6%である。
03%を超えると粒界に偏析して耐硫化物応力割れ性を
劣化させる。従って、P含有量は、0.03%以下とし
た。なお、Pの含有量は、低ければ低いほど望ましい。
しかし、過度の低下は、鋼材の製造コスト上昇を招くの
で、その下限は、0.001%程度、より好ましくは
0.005%程度に留めるのが望ましい。
るが、0.03%を超えると粒界に偏析するとともに、
硫化物系の介在物を生成して耐硫化物応力割れ性を低下
させる。従って、S含有量は、0.03%以下とした。
なお、Sの含有量は、低ければ低いほど望ましい。しか
し、過度の低下は、鋼材の製造コスト上昇を招くので、
その下限は、0.002%程度、より好ましくは0.0
05%程度に留めるのが望ましい。
強化して耐食性を向上させるとともに、強度の向上に寄
与する元素である。このため、これらの効果を得たい場
合には、添加することができる。しかし、その含有量が
0.5%未満では上記の効果は小さい。一方、その含有
量が3%を超えると、鋼の熱間加工性が著しく劣化し、
鋼材の製造が難しくなる。従って、添加する場合のCu
含有量は、0.5%以上とするのが望ましいが、その上
限は3%以下にする必要がある。なお、添加する場合の
好ましい範囲は1〜2.5%、より好ましい範囲は1.
5〜2.5%である。
ナイトを安定化してフェライトの析出を抑制し、耐硫化
物応力割れ性を向上させるとともに、強度の向上に寄与
する元素である。このため、これらの効果を得たい場合
には、添加することができる。しかし、その含有量が
0.05%未満であると上記の効果は小さい。一方、そ
の含有量が0.6%を超えると、鋼の熱間加工性が著し
く劣化し、鋼材の製造が難しくなる。従って、添加する
場合のN含有量は、0.05%以上とするのが望ましい
うが、その上限は0.6%以下にする必要がある。な
お、添加する場合の好ましい範囲は0.1〜0.5%、
より好ましい範囲は0.1〜0.3%である。
した場合、いずれの元素も皮膜耐食性を向上させるとと
もに、強度の向上に寄与する元素である。また、そのう
ちNiは、オーステナイトを安定化してフェライトの生
成を抑制し、耐硫化物応力割れ性を向上させる作用も有
している。のこため、これらの効果を得たい場合には、
Cr、NiおよびMoのうちの1種または2種以上を添
加することができる。しかし、その含有量が、いずれの
元素も1%未満では上記の効果は小さい。一方、その合
計含有量が10%を超えると、皮膜耐食性向上効果が過
度になりすぎるため、孔食発生に伴う応力腐食割れを起
こすようになる。従って、添加する場合のこれらの元素
の含有量は、いずれの元素も1%以上とするのが望まし
いが、その合計含有量は10%以下にする必要がある。
また、添加する場合の合計含有量の好ましい上限は9
%、よりこの好ましい上限は7%である。
鋼材は、前記したように77.3kgf/mm2 (11
0ksi)以上の耐力を持つ高強度鋼材である。このよ
うな強度を持たせる製造方法の一つが、前記(2)の方
法である。以下、その方法を工程順に説明する。
法で行えばよい。鋳造は、インゴット鋳造でも連続鋳造
でも差し支えない。
る。なお、継目無鋼管の製造では、連続鋳造によって得
られたビレットをそのまま穿孔する方法も実用化されて
おり、この場合、鍛造工程は必要ない。鋼材が継目無鋼
管の場合は、上記の穿孔工程の後、マンドレルミルやプ
ラグミルを使用して圧延が行われる。また、鋼材が板材
の場合は、スラブを粗圧延した後、仕上げ圧延するとい
う工程になる。鍛造、穿孔、圧延などの熱間加工の望ま
しい条件は、次のとおりである。
穿孔圧延機での熱間穿孔が可能な程度に行えばよいが、
望ましいのは1000℃から1250℃の間である。穿
孔圧延およびマンドレルミルやプラグミルなどのその他
の圧延機による圧延に関しても特別の制約はないが、熱
間加工性の上から、具体的には表面疵の防止のために、
仕上げ温度を900℃以上とするのが望ましい。仕上げ
温度の上限にも特に制約はないが、1100℃までにと
どめるのがよい。
熱間圧延が可能な温度、例えば1000℃から1250
℃の間とすれば十分である。熱間圧延のパススケジュー
ルは任意であるが、製品の表面疵、耳割れなどの発生を
少なくするための熱間加工性を考慮して、仕上げ温度を
900℃以上とするのが望ましい。仕上げ温度は、上記
継目無鋼管と同様に1100℃までとするのがよい。
化物などを完全に固溶させるのに十分な温度に加熱して
から急冷する。この場合、1000〜1200℃の温度
範囲に10分以上保持した後、急冷する必要がある。す
なわち、加熱温度が1000℃未満であると、炭化物、
特にCrやMoを添加した場合にCr−Mo系の炭化物
を完全固溶させることができず、このCr−Mo系炭化
物周辺にCrおよびMoの欠乏層が形成され、孔食発生
に伴う応力腐食割れを起こし、所望の耐硫化物応力割れ
性が得られなくなる。一方、加熱温度が1200℃を超
えると、フェライトなどの異相が析出し、所望の耐硫化
物応力割れ性が得られなくなる。また、保持時間が10
分未満であると、溶体化の効果が不十分となって炭化物
を完全に固溶させられないために、加熱温度が1000
℃未満である場合と同様の理由により、所望の耐硫化物
応力割れ性が得られなくなる。
も依存し、一慨には決められない。いずれにしても、鋼
材全体が均熱される時間が必要であるが、製造コストを
抑えるという観点からは長すぎる時間は望ましくなく、
通常1時間以内とするのが適当である。また、冷却は、
冷却中の炭化物(主としてCr−Mo系炭化物)やその
他の金属間化合物などの析出を防ぐために、油冷以上の
冷却速度で冷却する必要がある。
後の鋼材を1000℃未満の温度に一旦冷却した後、上
記1000〜1200℃の温度範囲に再加熱する場合の
保持時間である。しかし、熱間加工の終了温度(仕上が
り温度)を1000〜1200℃の範囲にした場合、そ
の温度でおよそ5分以上の補熱を行えば上記の条件によ
った場合の溶体化熱処理と同じ効果が得られ、再加熱す
ることなく、そのまま急冷することができる。従って、
本発明における上記保持時間の下限値は、熱間加工の終
了温度(仕上がり温度)を1000〜1200℃の範囲
とし、その温度でおよそ5分以上の補熱を行う場合を含
むものとする。
材には、目標とする高強度、すなわち77.3kgf/
mm2 (110ksi)以上の強度を得るための冷間加
工を施す。この場合、加工度(断面減少率)が20%以
上の冷間加工を施す必要がある。すなわち、付与する加
工度が20%未満であると、目標とする高強度、すなわ
ち77.3kgf/mm2 (110ksi)以上の強度
が得られない。
できればどのような方法でもよく、特に制限されない。
しかし、鋼材が鋼管の場合は、孔明きダイスとプラグを
用いるいわゆる冷間抽伸機やコールドピルガーミルと称
される冷間圧延機などを用いるのが工業的に有利であ
る。また、鋼材が板材の場合は、通常の冷延鋼板の製造
に用いられる圧延機を用いるのが工業的に有利である。
されない。しかし、過度の加工は製造コストを抑える観
点からは望ましくなく、その上限は50%程度に留める
のが望ましい。また、所望の強度を得るための加工度
は、20%以上の範囲内で自由に選択できる。例えば、
後に詳述する図2に示す冷間強化曲線に従って所望の強
度を得る加工度を定めればよい。
よってオーステナイトの一部がHCPのεマルテンサイ
ト相に変態するが、このεマルテンサイトは水素脆化を
起こさず、耐硫化物応力割れ性を劣化させることはな
い。
を、150kg真空炉で溶製し、横断面寸法が80mm
×75mmで、長さ130mmのインゴットに鋳造し
た。
ナイト系の本発明対象鋼と比較鋼、鋼No. R〜Tは、従
来から耐硫化物応力割れ性に優れるものとされているフ
ェライト系(αフェライト系)の低合金鋼である。
加熱した後、仕上げ温度1000℃の条件で熱間圧延
し、厚さ12mm、幅90mm、長さ700mmの板材
とし、下記の熱処理と冷間加工、もしくは熱処理のみを
施した。
は、表2および表3に示すように、溶体化処理条件と冷
間加工時の加工度を種々変化させた。
後放冷。 冷間加工 :実施せず。
化物応力割れ性を調査した。耐硫化物応力割れ性は、試
験材のL方向(圧延進行方向)から採取した丸棒型引張
試験片(平行部6.35φ×25.4mm)各2個にて
評価した。負荷応力は母材の耐力の80%とした。
90(Test Method by National Association of Corro
sion Engineers )に規定されるNACE−TM−01
77浴(0.5%酢酸+5%食塩水、1気圧硫化水素飽
和、25℃)とした。この溶液中に720時間保持して
破断するか否かを判定し、破断しないものを耐硫化物応
力割れ性(耐SSC性)が良好「○」、破断したものを
耐硫化物応力割れ性が不良「×」として評価した。
来例の熱処理条件、冷間加工条件、並びに強度および硫
化物応力割れ試験結果を示す。なお、表2から表4に
は、点算法で測定したオーステナイト量とεマルテンサ
イト量(いずれも面積率)も併記した。
に、本発明対象鋼(表1中の鋼No.A〜E)を使用
し、本発明で規定する条件で製造した試験No. 1〜
No. 15の本発明鋼材の金属組織は、実質的にオーステ
ナイトとεマルテンサイトの混合組織である。そして、
その耐力は、全て77.3kgf/mm2 以上であり、
中には100kgf/mm2 を超える高強度のものもあ
る。すなわち、本発明鋼材は、前記API規格のC11
0クラス以上に相当する。そして、このような高強度で
あるにもかかわらず、NACE−TM−0177浴での
試験において破断していない。この試験で負荷した応力
は、母材の耐力の80%である。すなわち、本発明鋼材
は、割れ発生限界応力が耐力の80%以上であるという
極めて優れた耐硫化物応力割れ性を持っていた。
製造条件が本発明で規定する範囲外であると、目標とす
る強度が得られないか、強度は得られても所望の耐硫化
物応力割れ性が得られなかった。すなわち、試験No. 1
6〜18、20〜22、24〜26に明らかなように、
冷間加工条件が本発明の範囲内であても、溶体化熱処理
条件が本発明の範囲外の場合では、目標強度は得られた
が、耐硫化物応力割れ性が不良であった。逆に、試験N
o. 19、23および27に明らかなように、溶体化熱
処理が本発明の範囲内であても、冷間加工条件が本発明
の範囲外の場合では、耐硫化物応力割れ性は良好であっ
たが、目標強度が得られなかった。
が、成分組成が本発明で規定する範囲を外れる比較鋼を
用いた場合は、いずれも耐硫化物割れ性が不良であっ
た。
(表1中のI鋼)を使用した場合(試験No. 31、4
3、55)は、5%を超えるフェライト組織が出て、耐
硫化物応力割れ性が不良であった。Mn含有量が過剰な
比較鋼(表1中のJ鋼)を使用した場合(試験No. 3
2、44、56)は、実質的にオーステナイト単相組織
であるが、耐硫化物応力割れ性が不良であった。これ
は、前述のように、鋼中のMnの溶出が起こって腐食速
度が増大した結果である。
中のG鋼)を使用した場合(試験No. 29、41および
53)は、脱酸が不十分で介在物の残留により、耐硫化
物応力割れ性が不良であった。Si含有量が過剰な比較
鋼(表1中のH鋼)を使用した場合(試験No. 30、4
2および54)は、粒界の強度が低いために該部の硫化
物応力割れ感受性が増大し、耐硫化物応力割れ性が不良
であった。
のF鋼)を使用した場合(試験No.28、40、52)
は、炭化物、特にCr−Mo系の炭化物が残留し、Cr
およびMoの欠乏層を生成して耐硫化物応力割れ性が不
良であった。P含有量が過剰な比較鋼(表2中のK鋼)
を使用した場合(試験No. 33、45、57)は、過剰
なPが粒界に偏析し、耐硫化物応力割れ性が不良であっ
た。S含有量が過剰な比較鋼(表1中のL鋼)を使用し
た場合(試験No. 34、46、58)は、過剰なSが粒
界に偏析する一方、硫化物系介在物の生成によって耐硫
化物応力割れ性が不良であった。
有量が過剰な比較鋼(表1中のM、NおよびO鋼)を使
用した場合(試験No. 35〜37、47〜49、59〜
61)は、皮膜耐食性向上効果が過剰となって孔食発生
に伴う割れが起こり、耐硫化物応力割れ性が不良であっ
た。Cu含有量が過剰な比較鋼(表1中のP鋼)および
N含有量が過剰な比較鋼(表1中のQ鋼)を使用した場
合(試験No. 38、39、50、51、62、63)
は、いずれも熱間加工性が悪く、熱間圧延することがで
きなかった。
系低合金鋼(表1中のR、SおよびT鋼)製で、焼入れ
−焼戻し処理したもの(試験No. 64〜69)は、高強
度であるが、いずれも耐硫化物応力割れ性が不良であっ
た。これは、その金属組織がいずれもαマルテンサイト
を主体とした組織であるため、このような高強度では硫
化物応力割れ感受性が大きくなるからである。
有量を種々変化させた0.3〜0.5%C−0.3〜
0.5%Si−17〜22%Mn−0.001〜0.0
03%P−0.005〜0.02%S−残部Feからな
る数種の鋼を用い、Cr、NiおよびMoの合計含有量
が腐食速度に及ぼす影響と硫化物応力割れ発生との関係
を調べた。
L方向(圧延進行方向)から採取した厚さ5mm、幅1
0mm、長さ30mmの板状試験片を、上記試験1で用
いたのと同じNACE−TM−0177浴中に720時
間浸漬した後、浴中から試験片を取り出してその腐食減
量を測定し、この腐食減量から腐食速度を計算して求め
た。試験結果を、図1に示した。
Moの合計含有量が多くなるのに従って腐食速度は小さ
くなる。しかし、その合計含有量が10%を超えると、
硫化物応力割れが発生していることがわかる。これは、
前述したように、Cr、NiおよびMoが皮膜耐食性を
向上させる元素であり、皮膜耐食性が向上する。ところ
が、硫化水素を含む厳しい腐食環境下では、孔食などの
局部腐食が発生すると、皮膜と孔食内部との間に腐食電
池が形成されて孔食内の腐食が著しく進行し、これを起
点として硫化物応力割れが発生するようになるからであ
る。
い、冷間加工時の加工度を種々変化させて耐力に及ぼす
影響を調べた。なお、その他の試験条件は、試験1の試
験No. 1と同じとした。試験結果を、図2に示した。
ないと、目標とする77.3kgf/mm2 (110k
si)以上の耐力が得られないことがわかる。
オーステナイトとεマルテンサイトの混合組織で、耐硫
化物応力割れ性に優れ、しかも高強度である。これらの
特性は、従来の炭素鋼や低合金鋼では両立させることが
事実上不可能なものである。
するオーステナイト系ステンレス鋼やNi基合金に比べ
てはるかに安価で、しかも溶体化熱処理後に冷間加工を
施すのみで製造でき、その製造コスト低減が図れるので
経済的にも優れている。従って、硫化水素を含有する過
酷な腐食環境で使用される油井管などの材料として極め
て有用である。
と耐硫化物応力割れ性に及ぼす影響を調べた結果を示す
図である。
度が耐力に及ぼす影響を調べた結果を示す図である。
Claims (2)
- 【請求項1】重量%で、C:1.2%以下、Si:0.
05〜1%、Mn:5〜45%、P:0.03%以下、
S:0.03%以下、Cr+Ni+Mo:10%以下、
Cu:3%以下、N:0.6%以下を含み、残部はFe
および不可避的不純物からなり、実質的にオーステナイ
トとεマルテンサイトからなる金属組織と、77.3k
gf/mm2 以上の耐力を有し、しかもNACE−TM
−0177浴中での割れ発生限界応力(σth)が前記
耐力の80%以上であることを特徴とする耐硫化物応力
割れ性を必要とする環境で使用される高強度鋼材。 - 【請求項2】重量%で、C:1.2%以下、Si:0.
05〜1%、Mn:5〜45%、P:0.03%以下、
S:0.03%以下、Cr+Ni+Mo:10%以下、
Cu:3%以下、N:0.6%以下を含み、残部はFe
および不可避的不純物からなる鋼を熱間加工した後、1
000〜1200℃で10分以上保持した後に急冷する
溶体化熱処理を施し、その後加工度20%以上の冷間加
工を施すことを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼材
の製造方法。
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JP27764996A JP3379355B2 (ja) | 1996-10-21 | 1996-10-21 | 耐硫化物応力割れ性を必要とする環境で使用される高強度鋼材およびその製造方法 |
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JPH10121202A JPH10121202A (ja) | 1998-05-12 |
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