JP3598771B2 - 熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼及びその分塊圧延方法並びにこれらを用いた継目無鋼管及びその製造方法 - Google Patents

熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼及びその分塊圧延方法並びにこれらを用いた継目無鋼管及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マルテンサイト系ステンレス鋼は、AISI420鋼に代表されるように、強度、耐CO腐食性に優れ比較的安価であることから1980年頃より油井管として適用されてきたが、近年では、高温かつ多量のCOやそれに加えてHSを含む油井環境にも適応しうるために、420鋼より優れた耐食性を有する、特開平3−120337号公報などに見られるような、低C−Ni−Mo添加鋼、あるいは、特開平2−247360号公報などに見られるような、低C−Cu−Ni−Mo添加鋼といった鋼種(いわゆるModified 13Cr 鋼と称される鋼種)が開発されてきている。一般に、合金量が多くなると、耐食性は向上する反面、加工性が悪化する。従って、これらの鋼の開発においては、加工性を大幅に低下させない範囲で、耐食性を究極まで高めようとする努力がなされてきた。
【0003】
上記鋼の油井管はマンネスマン方式の圧延法によって継目無管に製管されるのが通例である。従来マンネスマン圧延は、熱間加工方法の中でも最も苛酷な加工方法として知られており、これらの鋼は、Cr,Ni,Mo,Cuといった合金元素を多量に含むため、マンネスマン方式の圧延法によって製管する際、圧延疵が発生することがあった。このような圧延中の割れ問題に対して、特開平5−263138号公報などに見られるように熱間加工温度域での組織をオーステナイト単相に制御するためにCr,Ni,Mo,Cu,C,N等の主要合金元素添加量バランスを調整する方法や、特公平3−60904号公報などに見られるようにSに代表される熱間加工性に有害な不純物の含有量を特に低く制限する技術が提示されてきている。しかしながら、これらの策をとってもなお、熱間加工に伴う疵の問題は解決できていないのが現状である。
【0004】
上記鋼をマンネスマン方式の圧延法によって継目無管に製管する場合、製管の前工程として、大断面のスラブまたはブルーム形状の鋳片を小断面の製管用素材(矩形断面ブルームまたは丸断面ビレット、以下、管材と称す)に分塊圧延するのが通例である。近年の生産性向上要請から、鋳片サイズは大断面化する傾向にあり、これに伴い分塊圧延は大圧下、低仕上温度化してきており、上記鋼のような難加工材では分塊圧延中に割れが発生するという問題が最近生じてきた。
【0005】
上述の如く、マンネスマン圧延法は熱間加工方法の中で最も苛酷な圧延法とみなされてきたが、上記難加工鋼種に関しては大圧下、低温仕上げの分塊圧延の方がより苛酷である。これは、第一に、被圧延材の組織によるものである。すなわち、製管加工前あるいは加工時の管材は、圧延再結晶組織を呈しているのが通例であり、加えて加熱時に不純物の拡散が起きているため、割れ抵抗性が大きい。一方、分塊圧延前の鋳片はミクロ偏析を伴う上、粒度も粗く、割れ感受性が高い。また、第二に、マンネスマン圧延法における最大圧下ミルであるピアサー、エロンゲータにおける被圧延材の温度は、大断面分塊する場合の最終仕上温度に比べて遥かに高く、疵や割れに対して有利なためである。これによって、上記鋼の継目無管製造全体の高能率生産を阻害しているのが実状である。このように、従来提示されてきた技術では、上記鋼の分塊圧延時に発生する割れの問題を解決することができなかった。
【0006】
一方、上記従来鋼では、前記したように熱間加工温度域での組織をオーステナイト単相に制御するためにCr,Ni,Mo,Cu,C,N等の主要合金元素添加量バランスを調整する方法が採られてきたが、この制約によって、耐食性に有効なCr,Mo等の合金添加量が制限されたが故に、油井管としての機能が頭打ちとなっており、市場ニーズに応えるには新たなシーズ展開が必要となってきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような問題点を解決しようとするものであって、分塊圧延時の割れを防止するとともに、従来のModified 13Cr 鋼より優れた耐硫化物応力割れ性を有するマルテンサイト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、成分の異なる種々の素材に対して熱間加工性と耐硫化物応力腐食割れ性について研究を重ねた結果、本鋼種においてはSを0.002%以下にし、かつ分塊圧延条件を制限すれば割れを起こさず大断面鋳片の大圧下分塊圧延が可能であること、Alを0.06%を超えて0.3%以下添加することにより耐硫化物応力割れ性が向上すること、を知見した。
【0009】
本発明はこのような知見に基づいて構成したものであって、その要旨は以下の通りである。
(1)重量%で、C :0.05%以下、 Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、S :0.002%以下、 Cr:10〜14%、Ni:4.2〜7.0%(ただし、5.0%以下を除く。)、 Al:0.06%を超えて0.3%以下、N :0.08%以下、 Mo:1.0〜3.0%、Cu:1.0〜2.0%を含有し、さらに必要に応じて、Ca:0.001〜0.01%およびTi:0.5S〜0.05%の1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼。
【0010】
(2)重量%で、C :0.05%以下、 Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、 P :0.03%以下、S :0.002%以下、 Cr:10〜14%、Ni:4.2〜7.0%(ただし、5.0%以下を除く。)、 Al:0.06%を超えて0.3%以下、N :0.08%以下、 Mo:1.0〜3.0%、Cu:1.0〜2.0%を含有し、さらに必要に応じて、Ca:0.001〜0.1%およびTi:0.5S〜0.05%の1種又は2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼の連続鋳造鋳片を分塊圧延して矩形断面ブルームまたは丸断面ビレットを製造する方法であって、分塊圧延中の鋳片温度を1000℃以上1300℃以下とすることを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼の分塊圧延方法。
【0011】
(3)前記(1)記載の熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼よりなることを特徴とする継目無鋼管。
【0012】
(4)前記(2)記載の方法により得られた矩形断面ブルーム又は丸断面ビレットを、マンネスマン方式の熱間圧延に供して継目無鋼管に製管することを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
Modified 13Cr 鋼(0.02C−0.02N−1.5Cu−12.2Cr−5.8Ni−2.0Mo)の鋳造まま材及び圧延材の熱間加工性に及ぼす変形温度の影響を図1に示す。鋳造まま材と圧延材は全く同じ成分であり、Sを0.0029%含有し、組織のみが異なっている。これらの素材を用いて、図2に示した条件で熱間引張試験を行った。すなわち、1250℃に加熱し1分保定後、変形温度(T1℃)まで10℃/sec で冷却し、その温度で1分間保定後、1.4/sec の歪み速度で引張試験を行った。試験後の破断部の断面積を試験前の断面積で割った値を絞り値と定義する。
【0014】
図1の縦軸と横軸はそれぞれ、絞り値と変形温度T1を示している。絞り値が高いほど熱間加工性は良好である。図1中には分塊圧延の加工温度域もあわせて示す。これまでの知見から、絞り値が75%以上あればその温度で良好な熱間加工性を示すことが分かっている。図1より、鋳造まま材の熱間加工性は圧延材よりも大幅に悪く、Sが0.003%以下でも分塊圧延の加工温度域で良好な熱間加工性を示さないことがわかる。
【0015】
次に、分塊圧延時の最大割れ深さに及ぼすS含有量の影響を図3に示す。図3中の各データに付された数字は後述する実施例中の鋼の符号を意味する。図3のデータはベース成分がほぼ同じでS含有量のみ異なる組成の250mm×650mm断面の連続鋳造スラブを217mm×217mm断面のブルームに分塊圧延し、圧延終了後、ブルーム表面の割れを目視観察した結果である。図3より、Sを0.002%以下に制限しなければ分塊圧延時の割れは防止できないことがわかる。
【0016】
さらに、発明者らは極低硫鋼に於いて残存する固溶Sを固定すれば熱間加工性がさらに良くなることを知見し、研究を重ねた結果、CaとTiを単独又は複合添加すれば熱間加工性が飛躍的に改善されることを知見した。ただし、Tiの添加量については重量%でSの添加量の0.5倍未満ではその効果が発現されず、0.05%を超えて添加してもその効果は飽和し、逆に粗大な窒化物を析出して靱性を低下させるため0.05%以下とした。また、Caの添加量については、0.001%未満ではその効果が発現されず、0.01%を超えて添加するとCa系介在物が増加して耐硫化物応力割れ性が劣化するので、最適添加量を0.001%〜0.01%とした。
【0017】
次に、望ましい分塊圧延条件について説明する。Modified 13Cr 鋼(0.02C−0,02N−1.5Cu−12.2Cr−5.8Ni−2.0Mo) の鋳造まま材の熱間加工性に及ぼす加熱温度の影響を図4に示す。S含有量が0.0020%である素材を用いて、図5に示す条件で加熱温度T2と変形温度T1を変化させて熱間引張試験を行った。加熱温度が1300℃を超えると急激に熱間加工性が低下することがわかる。これは、1300℃を超える温度になるとMnSの溶解が促進され、それによって生じる固溶Sが温度低下に伴なって粒界に偏析するために粒界が脆化するためである。従って、より良好な熱間加工性を得るためには圧延中の素材温度が1300℃以下になるように素材温度をコントロールすることが望ましい。
【0018】
そこで、250mm×650mm断面のModified 13Cr 鋼(0.02C−0,02N−1.5Cu−12.2Cr−5.8Ni−2.0Mo) 連続鋳造スラブを217mm×217mm断面のブルームに分塊圧延する場合における素材温度を有限要素法解析により計算した。ただし、素材温度はロールの温度により大きく影響を受けるので、ロールに冷却水をかけない場合とかける場合の両方について解析した。その結果、素材には加工発熱による温度上昇が見られ、特に表面近傍が高温になることがわかった。これは、変形が均一に起こらず中心側よりに歪みが集中するためである。
【0019】
計算結果によれば、ロールに冷却水をかけない場合には、素材表層部の温度は加熱温度に比べて約100℃も上昇することがわかった。一方、ロールに冷却水をかける場合には、ロールによる抜熱により素材表層部の温度上昇は抑制され、加工発熱による温度上昇は約50℃に低減できることがわかった。したがって、素材の最高到達温度を1300℃以下にするためには、ロールに冷却水をかけない場合には加熱温度を1200℃以下、ロールに冷却水をかける場合には加熱温度を1250℃以下に制限すればよい。また、加熱温度の下限については特に規定するものではないが、圧延仕上温度確保のため1100℃以上が望ましい。
【0020】
一方、図4より、良好な熱間加工性を得るためには圧延仕上温度を1000℃以上に制限する必要がある。従って、圧延仕上温度の下限を1000℃とした。圧延仕上温度の上限については特に規定するものではなく、1300℃以下であれば問題はない。
【0021】
次に、耐硫化物応力割れ性について説明する。ベース成分がほぼ同じでAl含有量のみ異なる組成の250mm×650mm断面の連続鋳造スラブを217mm×217mm断面のブルームに分塊圧延し、さらに継目無管に製管し、同一の強度レベルになるように調質した後、硫化物応力割れが発生し得る代表的な腐食環境(0.01MPa HS,pH=3.0,5%NaCl,付加応力σap=降伏強度YSの90%,720hr,24℃)で定荷重SSC(Sulfide Stress Cracking )試験を行ったときの破断時間に及ぼすAl含有量の影響を図6に示す。○印は720時間たっても破断しなかったものを示し、●印は720時間以内に破断したことを示す。図6中の各データに付された数字は後述する実施例中の鋼の符号を意味する。
【0022】
図6から、Al添加量を0.06%を超えて0.3%以下とすることで耐硫化物応力割れ性が向上することは明らかである。Alを0.06%を超えて添加すると耐硫化物応力割れ性が向上する理由は、不動態皮膜が強化され耐孔食性が向上するためである。また、Alを0.3%を超えて添加すると耐硫化物応力割れ性が劣化するのは粗大なAl系介在物が生じてそれが孔食の起点あるいは割れ伝播経路となるため耐SSC性が劣化するためである。
【0023】
また、高Al化は製鋼段階における脱硫効率向上にも有効であり、良好な熱間加工性を維持するための極低硫鋼を安定的かつ経済的に工業生産可能とする副次効果をも奏する。
以上のことから、Alの添加量を0.06%を超えて0.3%以下とすることで、耐硫化物応力割れ性を向上させることができるうえに、高効率、低コストで極低硫化することが可能である。
【0024】
本発明におけるマルテンサイト系ステンレス鋼の成分限定理由は以下の通りである。
C:CはCr炭化物などを形成し耐食性を劣化させる元素である。また、強度を増大させ、油井管として使用されるときに必要とされる耐硫化物割れ性の劣化をまねくため、0.05%以下とした。
【0025】
Si:Siは製鋼工程において脱炭剤として添加されるものである。0.5%を超えて含有されると靱性が劣化することから、0.5%以下とした。
【0026】
Mn:Mnはオーステナイト安定化元素であり、熱間加工時にδ相の析出を抑制することにより圧延疵防止に有効であるが、1.5%を超えて添加すると粒界強度を低下させ靭性が劣化するので1.5%以下とした。
【0027】
P:Pは粒界に偏析して粒界強度を低下させ、靭性を劣化させる不純物元素であり、可及的低レベルが望ましいが、現状精錬技術の到達可能レベルとコストを考慮して、0.03%以下とした。
【0028】
S:Sは熱間加工性を劣化させる不純物元素であり、0.002%を超えると分塊圧延時に割れが発生するため、0.002%以下とした。
【0029】
Cr:Crは耐食性向上の基本元素であり、十分な耐食性を得るには10%以上の添加が必要であるが、フェライト安定化元素でもあり、多すぎると熱間加工時にδ相が析出して熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性を劣化するため、14%以下とした。
【0030】
Ni:Niは耐腐食性向上及び靱性向上に有効である。また、オーステナイト安定化元素であり、圧延疵につながるδ相の生成を抑止する。これらの効果は添加量4.2%未満では小さいため、4.2%以上とした。また、7%を超えて添加しても効果が飽和するとともにAc1変態点を低下させ強度調質を困難にすることから、7%以下とした。
【0031】
Al:耐硫化物応力割れ性を向上させるとともに脱酸及び脱硫を促進させるために添加される。耐硫化物応力割れ性の向上効果は0.06%以下では発現されず、0.3%を超えて添加すると、逆に粗大なAl系介在物が生じてそれが孔食の起点あるいは割れ伝播経路となるため耐硫化物応力割れ性が劣化することから、最適添加範囲を0.06%を超えて0.3%以下とした。また、この添加範囲であれば、十分な脱酸及び脱硫が可能である。
【0032】
N:NはMn、Niと同様に強力なオーステナイト安定化元素であり、圧延疵防止に有効であるが、Cと同様に強度を増大させ、油井管として使用されるときに必要とされる耐応力腐食割れ性の劣化をまねくため、0.08%以下とした。下限は低いほど良い。
【0033】
Mo:Moは耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させるのに必須の元素である。これらの効果は1.0%未満の添加では改善効果が小さいため1.0%以上とした。また、強力なフェライト安定化元素であり、3%を超える添加によりδ相を生成しやすくなることから3.0%以下とした。
【0034】
Cu:CuはNiと同様に耐腐食性向上に有効な元素であるとともに、オーステナイト安定化元素であり、δ相の生成を抑止し圧延疵防止に有効であるため添加するが、1.0%未満ではこれらの効果が十分に得られないため、1.0%以上とした。また、2.0%を超えて添加すると粒界に過剰に偏析して粒界強度を低下させるため熱間加工性が著しく劣化するため、2.0%以下とした。
【0035】
Ti:TiはSによる熱間加工性劣化を抑制するものであり、必要に応じて添加するが、重量%でSの添加量の0.5倍未満ではその効果が発現されず、0.05%を超えて添加してもその効果は飽和し、逆に粗大な窒化物を析出して靱性を低下させるため、最適添加範囲をSの添加量の0.5倍以上、0.05%以下とした。
【0036】
Ca:CaはSによる熱間加工性劣化を抑制するものであり、必要に応じて添加するが、0.001%未満ではその効果が発現されず、0.01%を超えて添加するとCa系介在物が増加して耐硫化物応力割れ性が劣化するので、最適添加量を0.001%以上、0.01%以下とした。
【0037】
本発明鋼は、主にマンネスマン方式の熱間圧延によって継目無管に造管される。ここでいうマンネスマン方式の圧延法とは、通常の継目無鋼管製造のための熱間圧延法で、矩形断面もしくは丸断面の管材を用い、プレスロール穿孔法あるいはマンネスマン穿孔法によって穿孔した後、必要に応じて傾斜圧延機(エロンゲーター)により延伸し、さらにプラグミルあるいはマンドレルミルで肉厚調整、摩管を行い、最終仕上圧延機(サイザーミル)で真円度を調整することにより造管していく一連のプロセスである。
【0038】
【実施例】
表1に示す組成の250mm×650mm断面の連続鋳造スラブを217mm×217mm断面のブルームに分塊圧延した。分塊圧延の際の素材の最高到達温度と仕上温度とを表1に併せて示す。本発明例の1〜は成分、分塊圧延条件とも本発明の範囲である。一方、本発明例の23〜28及び32は、それぞれ本発明例の1〜と成分が同じであるが、分塊圧延条件は分塊圧延方法に係る本発明の規定範囲を外れている。表1には、これらの分塊圧延終了後にブルーム表面の割れを目視観察により調査した結果を示す。
【0039】
【表1】
Figure 0003598771
【0040】
ベース成分がほぼ同じでS含有量のみ異なる鋼(No. 1,2,3,12,13,14)に着目して、分塊圧延時の最大割れ深さに及ぼすS含有量の影響を示した図が前出の図3である。本発明例(No. 1,2,3)では分塊圧延時の割れは発生していない。一方、S含有量が本発明の成分限定範囲を超えている比較例(No. 12,13,14)では分塊圧延時の割れが発生しており、S含有量の増加に伴い最大割れ深さは増大している。
【0041】
また、本発明例の23〜28及び32ではほとんど割れが生じておらず、分塊圧延は十分可能である。しかしながら、分塊圧延条件が最敵条件ではないために、微小な割れが生じることがある。一方、本発明例の1〜では成分に加えて分塊圧延条件も最適条件としているため、分塊圧延時の割れを完全に防止することができ、製造の安定性の観点からはより好ましい。
【0042】
また、上記ブルームを継目無管に圧延し、同一の強度レベルになるように調質した後、硫化物応力割れ(SSC)が発生し得る代表的な腐食環境で定荷重SSC試験を行った。試験条件については、表1に示した鋼をベース成分の違いにより2つのグループに分け、グループ1(No. 1〜6,12〜19,23〜28)の鋼は条件A(0.01MPa H2 S,pH=3.0,5%NaCl,付加応力σap=降伏応力YSの90%,720hr,24℃)とし、グループB(No.20〜22,32)の鋼は条件B(0.003MPa H2 S,pH=3.2,5%NaCl,付加応力σap=降伏応力YSの90%,720hr,24℃)で定荷重SSC試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0043】
ベース成分がほぼ同じでAl含有量のみ異なる鋼(No. 1,4,5,6,15,16,17)に着目して、定荷重SSC試験における破断時間に及ぼすAl含有量の影響を示したのが前出の図6である。本発明例(No. 1,4,5,6)では上記試験条件では720時間経過後も硫化物応力割れは発生していない。一方、Al含有量が本発明の成分限定範囲を超えている比較例(No. 15,16,17)では硫化物応力割れが発生している。
【0044】
表1、図3、図6より、S含有量とAl含有量が本発明の限定範囲内であれば、分塊圧延時に割れが発生せず、かつ、良好な耐硫化物応力割れ性が得られることが明らかである。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、分塊圧延時に割れが発生しない、熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼をが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Modified 13Cr 鋼(低C−低N−1.5Cu−12.2Cr−5.8Ni−2.0Mo)の鋳造まま材及び圧延材の熱間加工性に及ぼす変形温度の影響を示す図表である。
【図2】熱間引張試験の条件を示す図表である。
【図3】分塊圧延時の最大割れ深さに及ぼすS含有量の影響を示す図表である。
【図4】Modified 13Cr 鋼(0.02C−0.02N−1.5Cu−12.2Cr−5.8Ni−2.0Mo)の鋳造まま材の熱間加工性に及ぼす加熱温度の影響を示す図表である。
【図5】熱間引張試験の条件を示す図表である。
【図6】硫化物応力割れが発生する代表的な腐食環境で定荷重SSC試験を行ったときの破断時間とAl含有量の関係を示す図表である。

Claims (6)

  1. 重量%で、C :0.05%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P :0.03%以下、S :0.002%以下、Cr:10〜14%、Ni:4.2〜7.0%(ただし、5.0%以下を除く。)、Al:0.06%を超えて0.3%以下、N :0.08%以下、Mo:1.0〜3.0%、Cu:1.0〜2.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼。
  2. 重量%で、C :0.05%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P :0.03%以下、S :0.002%以下、Cr:10〜14%、Ni:4.2〜7.0%(ただし、5.0%以下を除く。)、Al:0.06%を超えて0.3%以下、N :0.08%以下、Mo:1.0〜3.0%、Cu:1.0〜2.0%、を含有し、さらに、Ca:0.001〜0.01%およびTi:0.5S〜0.05%の1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼。
  3. 重量%で、C :0.05%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P :0.03%以下、S :0.002%以下、Cr:10〜14%、Ni:4.2〜7.0%(ただし、5.0%以下を除く。)、Al:0.06%を超えて0.3%以下、N :0.08%以下、Mo:1.0〜3.0%、Cu:1.0〜2.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼の連続鋳造鋳片を分塊圧延して矩形断面ブルームまたは丸断面ビレットを製造する方法であって、分塊圧延中の鋳片温度を1000℃以上1300℃以下とすることを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼の分塊圧延方法。
  4. 重量%で、C :0.05%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.5%以下、P :0.03%以下、S :0.002%以下、Cr:10〜14%、Ni:4.2〜7.0%(ただし、5.0%以下を除く。)、Al:0.06%を超えて0.3%以下、N :0.08%以下、Mo:1.0〜3.0%、Cu:1.0〜2.0%を含有し、さらに、Ca:0.001〜0.1%およびTi:0.5S〜0.05%の1種又は2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼の連続鋳造鋳片を分塊圧延して矩形断面ブルーム又は丸断面ビレットを製造する方法であって、分塊圧延中の鋳片温度を1000℃以上1300℃以下とすることを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼の分塊圧延方法。
  5. 請求項1又は2記載の熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼よりなることを特徴とする継目無鋼管。
  6. 請求項3又は4記載の方法により得られた矩形断面ブルーム又は丸断面ビレットを、マンネスマン方式の熱間圧延に供して継目無鋼管に製管することを特徴とする熱間加工性及び耐硫化物応力割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
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