JP3009568B2 - 耐水素誘起割れ性および低温靭性の優れた高強度鋼板の製造法 - Google Patents

耐水素誘起割れ性および低温靭性の優れた高強度鋼板の製造法

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JP3009568B2
JP3009568B2 JP5250839A JP25083993A JP3009568B2 JP 3009568 B2 JP3009568 B2 JP 3009568B2 JP 5250839 A JP5250839 A JP 5250839A JP 25083993 A JP25083993 A JP 25083993A JP 3009568 B2 JP3009568 B2 JP 3009568B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐水素誘起割れ(HI
C)性および低温靭性の優れたパイプライン用高強度鋼
板(米国石油協会(API)規格X80級以上の強度、
厚み40mm以下)の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】寒冷地、オフショアーにおける原油、天
然ガス輸送用大径ラインパイプに対しては高強度ととも
に優れた低温靭性、現地溶接性が要求されるが、海水の
注入による原油・ガス井戸のサワー化や劣質資源の開発
にともなって水素誘起割れ(HIC)に対する優れた抵
抗も同時に求められるようになった。一方最近、薄肉化
による鋼材使用量の低減、現地溶接施工の向上などを目
的としてアメリカ石油協会(API)規格5L−X80
(引張強さ620MPa 以上)の超高強度鋼管の使用が増
加してきた。その結果、X80の高強度と優れた耐HI
C性が要求されるケースが次第に増えつつある。更に年
々、ラインパイプに対する高靭性化の要求も増えつつあ
る。
【0003】従来、優れた耐HIC性を有するサワーラ
インパイプは、鋼の高純化、介在物の低減、硫化物
系介在物のCa添加による形態制御、連続鋳造時の軽
圧下や加速冷却による中心偏析の改善、などの技術の総
合化によって製造されてきた(例えば特公昭63−00
13695号、特開昭62−112722号公報)。し
かし、X80のような高強度鋼管を従来技術のみによっ
て製造することはできない。その最も大きな理由は高強
度鋼では、必然的に合金元素量、特にMn量(通常X8
0では1.8〜2.0%添加される)が多くなる結果、
連続鋳造スラブの中心偏析帯に偏析、硬化組織を生成し
て耐HIC性を著しく劣化させるからである。
【0004】そこで特願平3−168399号(特開平
5−9575号公報)、特願平4−74285号(特開
平5−271766号公報)では、C,Mn量を従来の
X80鋼より大幅に低減し、その代替として、Mnより
中心偏析し難いCrや中心偏析部のミクロ組織を均一化
するMoを添加することにより、高強度と耐HIC性を
両立してきた。しかし、これらの従来技術では年々厳格
化の傾向にある低温靭性(特に脆性亀裂伝播停止特性)
の要求(例えば板厚20mmのラインパイプでBDWTT
85%、FATT<−30℃)を安定に満足すること
は困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は耐HIC性お
よび低温靭性の優れたAPI規格5L−X80級以上の
強度を有する鋼板の製造法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
とおりである。 (1)重量%で、 C :0.02〜0.08%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.00〜1.40%、 P :0.010%以下、 S :0.0015%以下、 Nb:0.01〜0.06%、 Cr:0.10〜0.40%、 Mo:0.10〜0.30%、 Ti:0.005〜0.025%、Al:0.06%以下、 Ca:0.001〜0.005%、N :0.001〜0.005%、 O :0.003%以下を含有し、 かつ0.5≦〔Ca〕(1−124〔O〕)/1.25〔S〕≦7.0 を満足する残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼
を、1100〜1280℃の温度範囲に加熱後、続く圧
延において、鋼板温度が1000℃以下で累積圧下量が
60%以上となる圧延に際して、1パス当り10%以上
の圧下回数の比率が80%以上であり、板厚がt2 〜t
1 での鋼板温度が900〜1000℃、板厚がt3 〜t
2 での鋼板温度が680〜900℃で、t1 ,t2 ,t
3 の関係が t1 >1.3t2 …………………(1) t2 >2.0t3 …………………(2) を満足するように圧延を行った後、冷却速度3〜40℃
/秒で350〜600℃まで水冷、その後放冷すること
を特徴とする耐水素誘起割れ性および低温靭性の優れた
高強度鋼板の製造法。
【0007】ただし、 t1 :1000℃以下の圧延を開始する板厚 t2 :圧延途中での板厚 t3 :最終の板厚 であり、t1 >t2 >t3 である。
【0008】(2)重量%で、 C :0.02〜0.08%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.00〜1.40%、 P :0.010%以下、 S :0.0015%以下、 Nb:0.01〜0.06%、 Cr:0.10〜0.40%、 Mo:0.10〜0.30%、 Ti:0.005〜0.025%、Al:0.06%以下、 Ca:0.001〜0.005%、N :0.001〜0.005%、 O :0.003%以下を含有し、更に V :0.01〜0.10%、 Ni:0.05〜0.50%、 Cu:0.05〜0.50%のうち1種以上を含有し、 かつ0.5≦〔Ca〕(1−124〔O〕)/1.25〔S〕≦7.0 を満足する残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼
を、1100〜1280℃の温度範囲に加熱後、続く圧
延において、鋼板温度が1000℃以下で累積圧下量が
60%以上となる圧延に際して、1パス当り10%以上
の圧下回数の比率が80%以上であり、板厚がt2 〜t
1 での鋼板温度が900〜1000℃、板厚がt3 〜t
2 での鋼板温度が680〜900℃で、t1 ,t2 ,t
3 の関係が t1 >1.3t2 …………………(1) t2 >2.0t3 …………………(2) を満足するように圧延を行った後、冷却速度3〜40℃
/秒で350〜600℃まで水冷、その後放冷すること
を特徴とする耐水素誘起割れ性および低温靭性の優れた
高強度鋼板の製造法。
【0009】ただし、 t1 :1000℃以下の圧延を開始する板厚 t2 :圧延途中での板厚 t3 :最終の板厚 であり、t1 >t2 >t3 である。
【0010】以下、本発明について詳細に説明する。高
強度、優れた低温靭性、現地溶接性とともに優れた耐H
IC性を得るためには、まず第1に鋼の化学成分を限定
する必要がある。このためC,Mn量を従来のX80鋼
よりも大幅に低減し、その代替としてCr,Moを複合
添加した。この理由は連続鋳造(CC)スラブの中心偏
析を改善し、HICの発生・伝播を防止するためであ
る。
【0011】X80鋼のような高強度鋼では必然的にM
n量が高くなるが、MnはPなどとともにCCスラブの
中心偏析帯に偏析し、硬化組織の生成を助長して耐HI
C性を著しく低下させる。これを防止するため、Mn量
の上限は1.40%としなければならない。Mn量の下
限1.0%は強度・靭性を確保するための最小量であ
る。
【0012】またC量の低減はMn,Pの中心偏析を軽
減するとともに、中心偏析帯に生成する硬化組織の絶対
量を低減し、硬化組織の微細化にも有効である。このた
め上限を0.08%に限定した。C量の低減はCr,M
oを複合添加する本発明鋼において、母材および溶接熱
影響部(HAZ)の低温靭性や現地溶接性の改善の上で
も必須である。C量の下限0.02%は母材・溶接部の
強度を確保するための最小量である。C,Mn量の低減
はCCスラブの中心偏析改善に大きな効果がある。しか
し、このような低C,Mn量ではX80のような高強度
を得ることはできない。そこでCr,Moの複合添加に
より、高強度を達成した。
【0013】CrはCCスラブにおいても中心偏析し難
く、かつ制御圧延・加速冷却プロセスにおいて低C−低
Mn鋼の高強度に有効で、しかも低温靭性や現地溶接性
を損なわないことが明らかになった。またMoは低C−
低Mn鋼における中心偏析帯の組織の均一化(硬化組織
の微細分散化)に大きな効果を有し、耐HIC性を改善
することがわかった。Cr,Mo複合添加による優れた
相乗効果を得るためには、Cr,Moはそれぞれ0.1
0%が最低必要である。しかし、添加量が多すぎるとH
AZ靭性、現地溶接性に有害であり、Cr,Mo量はそ
れぞれ0.40%,0.30%を上限としなければなら
ない。
【0014】本発明鋼は必須の元素としてNb:0.0
1〜0.06%、Ti:0.005〜0.025%を含
有する。Nbは制御圧延における結晶粒の微細化や析出
硬化に寄与し、鋼を強靭化する。またTi添加は微細な
TiNを形成し、スラブ加熱時、溶接時のγ粒粗大化を
抑制して母材靭性、HAZ靭性の改善に効果がある。
【0015】Crを添加すると制御圧延鋼においてもシ
ャルピー衝撃試験などの破面にセパレーションが発生し
難くなり、低温靭性の劣化をきたすので、特に本発明鋼
では、低温靭性確保の観点からNb,Ti添加は必須で
あることがわかった。Nb,Ti量の下限は、これらの
元素がその効果を発揮するための最小量であり、その上
限はHAZ靭性や現地溶接性を劣化させない添加量の限
界である。
【0016】次に、その他元素の限定理由について説明
する。Siは多く添加すると現地溶接性、HAZ靭性を
劣化させるため、その上限を0.6%とした。鋼の脱酸
はAl,Tiのみでも十分であり、Siは必ずしも添加
する必要はない。本発明鋼においては不純物であるP,
Sをそれぞれ0.010%,0.0015%以下とし、
かつCaを添加して、0.5≦〔Ca〕(1−124
〔O〕)/1.25〔S〕≦7.0とする。PはCCス
ラブの中心偏析を助長し、硬化組織を形成してHICの
発生・伝播を容易にするため、P量は0.010%以下
に限定した。
【0017】またSはMnS系介在物を形成し、MnS
は圧延で伸長してHICの発生起点となる。これを防止
するには介在物の絶対量を低減するとともに硫化物の形
態を制御して、圧延で伸長し難いCaSとしなければな
らない。そこで、S量は0.0015%以下(望ましく
は0.0010%以下)とし、Caを0.001〜0.
005%添加した。Caによる硫化物の形態制御を十分
に行うため、ESSP=〔Ca〕(1−124〔O〕)
/1.25〔S〕≧0.5とした。しかもESSPが大
きすぎると、Ca系介在物が増加、HICの発生起点と
なるので、その上限を7.0とした。
【0018】上記に関連してO量を0.003%以下に
限定した。これはHICの起点となる酸化物系介在物を
低減するとともに少ないCa量で硫化物の形態制御を行
うためである。Alは脱酸元素として鋼に含まれる元素
であるが、脱酸はTiあるいはSiでも可能であり、必
ずしも添加する必要はない。Al量が0.06%以上に
なるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害す
るので、その上限を0.06%とした。
【0019】NはTiNを形成しスラブ再加熱時や溶接
時のγ粒の粗大化抑制を通じて母材、HAZ靭性を向上
させる。このために必要な最小量は0.001%であ
る。しかし多すぎるとスラブ表面疵や固溶NによるHA
Z靭性劣化の原因となるので、その上限は0.005%
以下に抑える必要がある。
【0020】次にV,Ni,Cuを添加する理由につい
て説明する。基本となる成分に、更にこれらの元素を添
加する主たる目的は本発明鋼の優れた特徴を損なうこと
なく、強度、靭性などの特性向上をはかるためである。
従って、その添加量は自ら制限される性質のものであ
る。VはほぼNbと同様な効果を有し、ミクロ組織の微
細化による低温靭性の向上や焼入性の増大、析出硬化に
よる高強度化などに効果がある。その効果を発揮するた
めの最小量は、0.01%である。しかし、添加量が多
すぎると現地溶接性やHAZ靭性の劣化を招くので、そ
の上限を0.10%とした。
【0021】Niは現地溶接性、HAZ靭性に悪影響を
及ぼすことなく、強度・靭性をともに向上させるほか、
Cu添加時の熱間割れ防止にも効果がある。その効果を
発揮するための最小量は、0.05%である。しかし
0.5%を超えると経済性の点で好ましくないため、そ
の上限を0.5%とした。Cuは耐食性、耐HIC性に
も効果がある。その効果を発揮するための最小量は、
0.05%である。しかし、0.5%を超えると熱間圧
延時にCu−クラックが生じ、製造が困難になる。この
ため上限を0.5%とした。
【0022】上記のようなCr,Mo複合添加鋼におい
て母材の低温靭性を改善するためには、更に製造法が適
切でなければならない。このため鋼(スラブ)の再加
熱、圧延、冷却条件を限定する必要がある。まず再加熱
温度を1100〜1280℃の範囲に限定する。再加熱
温度はNb析出物を固溶させ、かつ圧延終了温度を確保
するために1100℃以上としなければならない(望ま
しくは1150〜1200℃である)。しかし再加熱温
度が1280℃以上では、γ粒が著しく粗大化し圧延に
よっても完全に微細化できないため、優れた低温靭性が
得られない。このため再加熱温度を1280℃以下とし
た。
【0023】続く圧延において、鋼板温度が1000℃
以下で累積圧下量が60%以上となる圧延に際して、1
パス当り10%以上の圧下回数の比率が80%以上であ
り、板厚がt2 〜t1 での鋼板温度が900〜1000
℃、板厚がt3 〜t2 での鋼板温度が680〜900℃
で、t1 ,t2 ,t3 の関係が t1 >1.3t2 ……………………(1) t2 >2.0t3 ……………………(2) を満足するように圧延を行わなければならない。ただ
し、 t1 :1000℃以下の圧延を開始する板厚 t2 :圧延途中での板厚 t3 :最終の板厚 であり、t1 >t2 >t3 である。
【0024】図1に本発明法の圧延における温度履歴模
式図を示す。鋼板温度が1000℃以下で累積圧下量6
0%以上とするのは、γ低温域圧延によってγ粒を十分
に微細化および延伸化することにより、微細なフェライ
ト粒を得るためである。1000℃以下の累積圧下量が
60%未満では、γ低温域圧延の効果が不十分となり、
微細なフェライト粒は得られない。
【0025】1パス当りの圧下率を大きく限定すること
は、γ未再結晶域での1パス当りの圧下率の増加によっ
て加工γ中の変形帯密度が増加することにより、フェラ
イト核生成サイトが増加し、フェライト粒が微細化す
る、という発明者らの新たな知見に基づくものである。
図2にフェライト粒径に及ぼすγ未再結晶域での1パス
当りの圧下率の影響を示す。一般にフェライト粒を微細
化することは鋼板の高靭性化を達成する最も有効な手段
である。1パス当り10%以上の圧下回数の比率が80
%未満の場合、γ粒内に導入・蓄積される変形帯密度が
不十分となり、微細なフェライト粒が得られない。
【0026】また、厚手材の場合、板厚方向の表面側に
比較して中心部は圧延の効果が減少するため、板厚中心
部のフェライト粒が混粒および粗大となって低温靭性の
劣化を招くことが知られている(特に板厚15mm以
上)。そこで、発明者らの鋭意研究の結果、板厚方向全
域にわたって微細なフェライト粒を得るためには、γ高
温域での再結晶域圧延に引続くγ低温域での圧延に際し
て、前述した各パス大圧下率圧延において、板厚表層
部よりも温度の高い板厚中心部については、圧延前段で
γ再結晶域圧延することによって均一で微細なγ粒とし
た後、圧延後段でγ未再結晶域圧延すること、板厚表
層部については圧延前段からγ未再結晶域圧延するこ
と、が効果的であることがわかった。これが本発明にお
ける高靭性化の冶金的思想である。
【0027】圧延前段のt2 〜t1 での鋼板温度が90
℃以下では、板厚中心部が比較的低温でγ未再結晶域
圧延となるために、粗大な再結晶γ粒がそのまま延伸化
され、板厚中心部のフェライト粒が粗大かつ混粒とな
る。一方、t2 〜t1 での鋼板温度が1000℃以上で
は、板厚表層部がγ再結晶域圧延となるため、表層部の
フェライト粒が十分に微細化されない。従って、圧延前
段のt2 〜t1 においては、板厚中心部はγ再結晶域
で、板厚表層部はγ未再結晶域で圧延されなければなら
ない。
【0028】圧延後段のt3 〜t2 での鋼板温度が90
0℃以上では、板厚中心部が比較的高温でγ再結晶域圧
延となるため、板厚中心部のフェライト粒が十分に微細
化されない。一方、t3 〜t2 での鋼板温度が680℃
以下では、過度のγ/α(フェライト)二相域圧延とな
るため、粗大な再結晶フェライトが生成して低温靭性が
大幅に劣化し、更に圧延後の水冷開始温度が低すぎるた
めに加速冷却による中心偏析部の組織制御が不十分とな
る。従って、圧延後段のt3 〜t2 においては板厚全域
にわたってγ未再結晶域あるいは一部γ/α二相域で圧
延されなければならない。
【0029】次に、板厚t1 ,t2 ,t3 の関係につい
て説明する。本発明における最終の板厚t3 は主として
15〜40mmの範囲である。(1)式の関係をt1
1.3t2 とすると、圧延前段(t2 〜t1 )における
板厚中心部の累積圧下量が小さくなるため再結晶γ粒が
十分に微細化せず、板厚中心部のフェライト粒が混粒お
よび粗大となる。(2)式の関係をt2 ≦2.0t3
すると圧延後段(t3 〜t2 )における板厚中心部の累
積圧下量が小さくなるため、たとえ各パス大圧下率圧延
においてもγ粒の延伸化およびγ粒内の変形帯密度が不
十分となり、板厚中心部のフェライト粒が粗大化する。
(1)式と(2)式からt1 >2.6t3の関係が得ら
れる。
【0030】圧延後、鋼板を加速冷却することが必須で
ある。加速冷却は中心偏析帯を含めたミクロ組織の改善
に有効で、靭性を損なわずに強度の増加、耐HIC性の
向上を可能にする。加速冷却の条件として圧延後、ただ
ちに冷却速度3〜40℃/秒で350℃以上600℃以
下の温度まで冷却、その後空冷しなければならない。冷
却速度が遅すぎたり、冷却停止温度が高すぎると加速冷
却の効果が十分に得られず、適正なミクロ組織を得るこ
とができない。一方、冷却速度が大きすぎたり、停止温
度が低すぎると硬化組織が生成して低温靭性や耐HIC
性が大幅に劣化する。
【0031】なお、この鋼を製造後、焼戻、脱水素など
の目的でAc1 点以下の温度で再加熱処理しても本発明
の特徴を損なうものではない。また省エネルギーなどを
目的としてCCスラブを加熱炉にホットチャージ、圧延
してもよい。本発明は厚板ミルに適用することが最も好
ましいが、ホットコイルにも適用できる。また、この方
法で製造した鋼板は低温靭性、現地溶接性も優れている
ので、寒冷地におけるパイプラインのほか圧力容器など
にも適する。
【0032】
【実施例】転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の
鋼板(厚み15〜38mm)を製造し、その強度、低温靭
性(BDWTT特性)、HAZ靭性および耐HIC性を
調査した。表1に実施例を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】本発明法に従って製造した鋼板(本発明
鋼)はすべて良好な特性を有する。これに対して、本発
明によらない比較鋼は、強度、低温靭性、HAZ靭性、
耐HIC性のいずれかが劣る。比較鋼7〜18におい
て、鋼7はC量が多すぎるために低温靭性、HAZ靭
性、耐HIC性が劣る。鋼8はMnおよびMo量が多す
ぎるためにHAZ靭性、耐HIC性が劣る。鋼9はCr
量が多すぎるためにHAZ靭性が劣る。鋼10はS量が
多く、かつESSPが小さいために耐HIC性が劣る。
鋼11は加熱温度が低すぎるため、析出強化に寄与する
固溶Nb量が少なく、かつ中心偏析の改善度合が小さい
ため、強度、耐HIC性が劣る。
【0037】鋼12,13は1パス当り10%以上の圧
下回数の比率が小さいため、フェライト粒の微細化が不
十分となり、低温靭性が劣る。鋼14はt3 での鋼板温
度が高すぎるため、フェライト粒が粗大化し、低温靭性
が劣る。鋼15はt3 での鋼板温度が低すぎるため、粗
大再結晶フェライト粒が生成し、また中心偏析部の組織
制御が不十分となるため、低温靭性、耐HIC性が劣
る。鋼16,17はt1,t2 ,t3 の関係が不適切で
あるため、フェライト粒が微細化されず、低温靭性が劣
る。鋼18,19は水冷冷却速度が遅すぎる、あるいは
水冷停止温度が高すぎるために、中心偏析部の組織の制
御が不十分となり、耐HIC性が劣る。
【0038】
【発明の効果】本発明により、耐HIC性および低温靭
性の優れた高強度X80鋼板を大量生産することが可能
となった。その結果、現場での溶接施工能率やパイプラ
インの安全性が著しく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧延における温度履歴模式図。
【図2】フェライト粒径に及ぼすγ未再結晶域での1パ
ス当りの圧下率の影響を示す図表。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−9575(JP,A) 特開 平4−358021(JP,A) 特開 平5−9573(JP,A) 特開 平1−136929(JP,A) 特開 平7−109520(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/02 - 8/04 B21B 1/00 - 3/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.02〜0.08%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.00〜1.40%、 P :0.010%以下、 S :0.0015%以下、 Nb:0.01〜0.06%、 Cr:0.10〜0.40%、 Mo:0.10〜0.30%、 Ti:0.005〜0.025%、Al:0.06%以下、 Ca:0.001〜0.005%、N :0.001〜0.005%、 O :0.003%以下 かつ 0.5≦〔Ca〕(1−124〔O〕)/1.25〔S〕≦7.0 を満足する残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼
    を、1100〜1280℃の温度範囲に加熱後、続く圧
    延において、鋼板温度が1000℃以下で累積圧下量が
    60%以上となる圧延に際して、1パス当り10%以上
    の圧下回数の比率が80%以上であり、板厚がt2 〜t
    1 での鋼板温度が900〜1000℃、板厚がt3 〜t
    2 での鋼板温度が680〜900℃で、t1 ,t2 ,t
    3 の関係が t1 >1.3t2 ………………………(1) t2 >2.0t3 ………………………(2) を満足するように圧延を行った後、冷却速度3〜40℃
    /秒で350〜600℃まで水冷、その後放冷すること
    を特徴とする耐水素誘起割れ性および低温靭性の優れた
    高強度鋼板の製造法。ただし、 t1 :1000℃以下の圧延を開始する板厚 t2 :圧延途中での板厚 t3 :最終の板厚 であり、t1 >t2 >t3 である。
  2. 【請求項2】 重量%でさらに、 V :0.01〜0.10%、 Ni:0.05〜0.50%、 Cu:0.05〜0.50% のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1記
    載の耐水素誘起割れ性および低温靭性の優れた高強度鋼
    板の製造法。
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