JP4016786B2 - 継目無鋼管およびその製造方法 - Google Patents

継目無鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原油、天然ガスなどの油井、ガス井(以下、これらを総称して単に「油井」という)の掘削、それらの輸送等に用いられる継目無鋼管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
油井の掘削用、それらの輸送用としては継目無鋼管が用いられており、なかでもラインパイプ用継目無鋼管には、輸送環境の過酷化にともなって、優れた靭性が要求されるようになっている。このような要請に対応して、従来から継目無鋼管の製造に際して、熱間圧延により鋼管を仕上げ圧延した後に、被圧延鋼管を一旦Ar点以下の温度まで冷却した後、再び、被圧延鋼管を加熱して焼入れを行い、引き続いて焼き戻しを行っている。かかる焼き入れおよび焼戻し処理によって、被圧延鋼管の結晶粒の微細化が図れ、靱性を確保することができる。
【0003】
ところが、冷却した被圧延鋼管を再び加熱して焼入れする方法は、熱処理プロセス合理化や生産性の向上といった生産効率化の観点からは有効でない。このため、被圧延鋼管を仕上げ圧延した後にAr点以下まで冷却することなく、直ちに焼入れおよび焼き戻し処理を行う方法が検討されている。しかし、熱間圧延後にAr点以下まで冷却することなく、直ちに焼入れおよび焼き戻し処理を行えば、一般的に結晶粒の微細化が図れず、靭性の低下が懸念される。
【0004】
このため、従来から、継目無鋼管を熱間圧延した後に、直ちに焼入れおよび焼き戻し処理を行う場合であっても、鋼成分と熱間加工後のオーステナイト再結晶条件や鋼成分と熱間圧延条件を調整することによって、安定して微細結晶を得る方法が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、鋼成分を規定した上で熱間圧延で継目無鋼管に製管した後、この鋼管をAr点以下に冷却することなく、Ar点以上の温度域において所定の条件で加熱した後、直ちに焼入れを行い、次いでAc点以下で焼き戻すことにより、低温靭性に優れた高張力継目無鋼管を製造する方法が提案されている。
【0006】
ここで提案された製造方法は、組成成分と熱間加工後のオーステナイト再結晶条件に着目して、Nb、Vの1種または2種とTiを複合添加し、熱間加工後のオーステナイト再結晶粒の微細化を図ることにより、靭性を改善するものである。しかし、提案された製造方法では、Cr、Niを必須添加にすることから添加合金コストが嵩むとともに、Bを必須添加することから、ラインパイプ用鋼管として重要な性能である溶接性が低下するという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2では、鋼成分と熱間圧延条件を調整することによって安定して微細結晶を得る、高靭性継目無鋼管の製造法が開示されている。具体的には、成分が規定された鋼片を1100℃以上に加熱した後、穿孔圧延した中空素管を最終段の傾斜圧延機前でAr点〜1100℃まで冷却し、その直後の最終傾斜圧延機で肉厚断面減少率で20〜70%の成形加工を施し、さらに形状矯正連続圧延を行った後、Ar点〜900℃の温度まで降下した中空素管を該温度より高い900℃〜1100℃に加熱し、その後、仕上げ温度がAr点+50℃以上の熱間仕上げ圧延を施した仕上げ鋼管を、Ar点以上の温度から急冷する焼入れ処理を施し、続いてAr点以下の温度に加熱して冷却する焼き戻し処理を行うことを特徴をする、耐SSC性の優れた高強度、高靭性継目無鋼管の製造法である。
【0008】
しかしながら、ここで開示されている製造法では、鋼の靭性に有効な微細な組織を得ることができるものの、最終傾斜圧延機で成形加工し形状矯正連続圧延を行った後、Ar点〜900℃まで温度を降下させ、その後900〜1100℃に加熱するという、煩雑な工程を必要とするため、鋼管製造プロセス合理化や生産性を阻害することになる。
【0009】
【特許文献1】
特開昭61−238917号公報
【特許文献2】
特開平6−136443号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、靱性に優れた継目無鋼管の製造に際し、生産効率化の観点から、仕上げ圧延された鋼管をAr点以下まで冷却することなく、直ちに焼入れおよび焼き戻し処理を行えば、結晶粒の微細化が図れず、鋼管の靭性が確保できない。
【0011】
一方、継目無鋼管を熱間圧延した後に、直ちに焼入れおよび焼き戻し処理を行う場合に、鋼成分と熱間加工後のオーステナイト再結晶条件や鋼成分と熱間圧延条件を調整することによって、安定して微細結晶を得る製造法が提案されている。しかし、これらの製造法を採用しても、添加合金コストの増加や鋼管の溶接性が低下したり、鋼成分と熱間圧延条件を調整するため、鋼管製造プロセス合理化や生産性を阻害するという問題がある。
【0012】
本発明は、従来の靱性に優れた継目無鋼管の製造に際して見られた問題点に鑑みてなされたものであり、熱処理プロセスの合理化や生産性の向上に支障をきたすことなく、優れた靭性を発揮することができる継目無鋼管およびそれを製造する方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するため、鋼の靭性に関する知見を整理した。すなわち、鋼の靭性に関し、最も重要な因子は結晶粒径であり、靭性の向上を図るためには、結晶粒径を小さくする必要がある。通常、鋼に微少な破壊が発生すると、破壊亀裂は結晶粒界によってその進行が遮られる。このため、結晶粒が粗大化すると、この亀裂の進行を遮る障壁が減少するため、破壊は一気に伸展し、鋼は靱性を示すことなく脆性破壊の形態をとり易い。
【0014】
そこで、鋼の靭性と結晶粒径との関係についてさらに検討を加えた結果、鋼に微少な破壊が発生した場合に、鋼中の結晶粒が比較的粗大であっても、鋼成分と鋼中の介在物、特に酸化物系介在物の最大径とその個数を制限することによって、結晶粒界の脆化防止を図ることが可能になり、靭性に優れた継目無鋼管を得られることを新たに知見した。
【0015】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)および(2)の継目無鋼管および(3)の継目無鋼管の製造方法を要旨としている。
(1) 質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.30〜2.5%、P:0.030%以下、S:0.006%以下、Ti:0.002〜0.017%、Al:0.001〜0.100%、N:0.008%以下およびO(酸素):0.004%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる継目無鋼管であって、JIS G 0551で規定される粒度番号が7未満であり、かつ鋼中に存在する酸化物系介在物の直径が300μm超えの個数が1cmあたり1個以下で、5〜300μmの個数が1cmあたり200個以下であることを特徴とする継目無鋼管である。
(2) 上記(1)の継目無鋼管は、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%、または/およびCu:0.05〜1.5%、Ni:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.02〜0.5%、V:0.02〜0.20%のうちの1種以上を含有するのが望ましい。
【0016】
さらに、Ti/N≦3.43の関係を満たすこと、Caを含有した場合に、Ca/O(酸素):0.5〜2.0の関係を満たすことが望ましい。
(3) 上記(1)および(2)のいずれかに記載の組成を有する鋼片を、熱間圧延により継目無鋼管に圧延した後、直ちに焼き入れ開始温度を(Ar点+50℃)〜1100℃として5℃/秒以上の冷却速度で冷却し、次いで550℃〜Ac点で焼戻しを行うことにより、JIS G 0551で規定される粒度番号が7未満であり、かつ鋼中に存在する酸化物系介在物の直径が300μm超えの個数が1cmあたり1個以下で、5〜300μmの個数が1cmあたり200個以下である継目無鋼管の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において、化学組成、鋼管組織および製造方法を上記のように規定した理由を説明する。まず、本発明の継目無鋼管の化学組成の規定理由について説明する。以下の説明において、化学組成は質量%で示す。
【0018】
1.鋼の化学組成
C:0.02〜0.15%
Cは、焼入れ性を高め、強度を上昇させるのに必要な元素である。0.02%未満では焼入れ性が低下し、高い強度を確保することが困難になる。0.15%を超えると、母材の靭性が低下するのみならず、溶接後の熱影響部における靭性が低下する。
【0019】
Si:0.05〜1.0%
Siは、鋼の脱酸を目的として添加するだけでなく、強度の上昇および焼き戻し時の軟化抵抗を高めることに寄与する。これらの効果を得るためには0.05%以上が必要である。しかし、過剰に添加すると靭性が低下するので1.0%以下とした。
【0020】
Mn:0.30〜2.5%
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、強度を上昇するとともに、熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。特に、熱間加工性の向上を図るためには、0.30%以上が必要である。しかし、過剰に添加すると、過度の偏析のため内質欠陥が発生するので2.5%以下とした。
【0021】
P:0.030%以下
Pは、不純物として鋼中に存在するが、結晶粒界に偏析することにより靭性を劣化させるので、0.030%以下とした。
【0022】
S:0.006%以下
Sは、不純物として鋼中に存在するが、MnSなどの硫化物を生成して靭性を劣化させるので0.006%以下とした。さらに望ましくは、0.004%以下である。
【0023】
Ti:0.002〜0.017%
Tiは、鋳片のワレ防止に有効な元素であり、その効果を発揮するには、0.002%以上含有する必要がある。一方、過剰に添加すると、TiCが多量に析出し、鋼の靭性を劣化させるので0.017%以下とした。
【0024】
さらに、Ti含有量が0.002〜0.017%の範囲であっても、後述するように、NによりTiNと固定することによりTiC生成を制御するには、Ti/N≦3.43の関係を満たすことが望ましい。
【0025】
Al:0.001〜0.100%
Alは、鋼の脱酸に必須元素であり、添加量が少なすぎると脱酸不足となり、鋳片に表面疵等が発生して鋼質の劣化を招くので0.001%以上とした。一方、過剰に添加すると、また、鋳片に割れ等が発生して鋼質の劣化要因となるので、0.100%以下とした。
【0026】
N:0.008%以下
Nは、不純物として鋼中に存在するが、濃度が高くなると、鋳片に割れ等が発生して鋼質の劣化を招くので、0.008%以下とした。さらに望ましくは0.006%以下である。
【0027】
O(酸素):0.004%以下
Oは、鋼中の溶存酸素と酸化物系介在物中の酸素の合計含有量を示すが、この量は、脱酸が充分に行われた鋼では、酸化物系介在物中の酸素含有量とほぼ等しくなる。したがって、O含有量が多くなるほど、鋼の靭性を劣化させる鋼中の酸化物系介在物が結晶粒界に多く存在することになるので、できる限り少ない方がよく0.004%以下とした。
【0028】
Ca:0.0005〜0.0040%
Caは添加しなくてもよい。溶鋼にCaを添加すると、低融点のCa−Al−O系介在物を生成し、大型介在物を低減する効果がある。この効果を顕著に発揮させるには、0.0005%以上の含有が必要である。一方、過剰に含有すると、高融点の介在物を生成し、鋼中に残存しやすくなることから、0.0040%以下とした。また、さらにCa添加の効果をあげるには、後述するように、Ca/Oの関係は0.5〜2.0を満たすことが望ましい。
【0029】
Cu:0.05〜1.5%、Ni:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜1. 0%、Mo:0.02〜0.5%およびV:0.02〜0.20%
これらの元素は、いずれも鋼の強度を向上させる元素である。したがって、鋼の強度を確保したい場合に、いずれかの元素を単独で、または2種以上の元素を複合して含有させることができる。その効果は、Cu、NiおよびCrの場合に0.05%以上の含有で、MoおよびVの場合には、ともに0.02%以上の含有で顕著になる。しかし、いずれの元素も過剰に添加してもその効果は飽和するので、CuおよびNiの場合は1.5%以下、Crは1.0%以下、Moは0.5%以下およびVは0.20%以下とした。
【0030】
Ti/N≦3.43
Tiは過剰に添加すると、TiCが析出し鋼の靭性を劣化させる。TiCの析出を抑制するには、TiをNと結合させTiNとするのが有効である。TiとNの原子量の比から、Ti/Nの関係が3.43以下であれば、TiCの析出を抑制できるので望ましい。
【0031】
Ca/O:0.5〜2.0
図1は、CaO−Al系擬二元系状態図である。同図に示すように、CaO組成が約50%で共晶反応により低融点組成となり、その融点は約1380℃である。したがって、Caを溶鋼中へ適量添加すると、Al系介在物反応し、低融点のCa−Al−O系介在物を生成する。これらが凝集することにより大型介在物となり、溶鋼中から浮上分離等による低減に効果がある。したがって、Caを含有した場合に低融点組成とするため、Ca/Oの関係は0.5〜2.0を満たすことが望ましい。
【0032】
2.鋼管組織
本発明の継目無鋼管は、JIS G 0551で規定される結晶粒度試験を実施した場合に、粒度番号が7未満であることを前提としている。これは、熱処理プロセスの合理化や生産性の向上を阻害することなく、靭性に優れた継目無鋼管を得るために、仕上げ圧延された鋼管をAr点以下まで冷却することなく、直ちに焼入れおよび焼き戻し処理することを前提としたためである。
【0033】
本発明の継目無鋼管では、鋼中に存在する酸化物系介在物を制約することを特徴としている。通常、破壊が発生した際に、亀裂は結晶粒界によってその進行が遮られる。結晶粒が粗大化すると、この亀裂の進行を遮る障壁が減少するため、結晶粒界に沿った脆性破壊の形態をとり易い。したがって、鋼の靭性を向上させるためには、破壊の伸展を阻止できるように、結晶粒界の脆化を抑制する必要がある。
【0034】
一方、鋼中に酸化物系介在物が多く存在すると結晶粒界を脆化させるので、その個数を制限する必要がある。本発明では、直径が5〜300μmの酸化物系介在物の個数を1cmあたり200個以下と規定したが、可能な限り少なくするのが望ましい。
【0035】
さらに、大型介在物が存在すると、溶接施工時や管加工時の欠陥発生率が高くなるので、鋼中に存在する酸化物系介在物の直径が300μm超えの個数が1cmあたり1個以下に規定する。すなわち、直径が300μmを超える酸化物系介在物が存在する場合も予測されるが、その存在確率は極めて低いことを意味している。
【0036】
対象とする酸化物系介在物としては、CaO、Al、SiO、その他これらの複合酸化物等が挙げられ、それらの形態例としては、Alのように圧延方向に集団をなして不連続に粒状の介在物が並んだ、いわゆるグラスター状介在物と、CaO−Al系のように粘性変形することなく不規則に分散する、いわゆる粒状介在物に分けられる。
【0037】
本発明では、これらの酸化物系介在物の直径と個数を、光学顕微鏡観察に基づいて定量する。定量サンプルは、継目無鋼管の圧延方向に垂直に切断された供試材から圧延方向に平行に、被検面積が300mm以上になるように採取される。得られたサンプルの被検面をランダムに検鏡して、それぞれの介在物の粒径を測定する。測定条件は321視野で、顕微鏡の倍率は400倍である。
【0038】
上記の光学顕微鏡観察では、直径が5μm未満の酸化物系介在物を観察することが困難であると同時に、直径が5μm以上の酸化物系介在物の個数を規定することにより、結晶粒界の脆化を抑制できるか否かの判断が可能である。このため、本発明では、直径が5μm未満の酸化物系介在物の個数は規定せず、直径が5〜300μmの酸化物系介在物の個数を規定する。
【0039】
本発明で規定する鋼中に存在する酸化物系介在物の直径が300μm超えの個数が1cmあたり1個以下で、直径が5〜300μmの個数が1cmあたり200個以下を達成するには、例えば、鋼の精錬段階において、転炉で溶製し、二次精錬としてRH脱ガス処理を実施した後、速やかに連続鋳造する方法を採用することができる。しかし、上記の条件を達成するには、この方法に限定されるものではない。
【0040】
3.製造方法
本発明では、本発明が規定する化学組成を含有する鋼片を素材として、上記の鋼管組織を得るため、次の製造方法を採用することができる。
【0041】
鋼片を加熱し、熱間加工により鋼管の形状に仕上げ圧延した後、Ar点以下まで冷却することなく、直ちに焼入れを行う。この際、必要であれば均熱炉を使用して、焼入れ開始前にAr点以下へ温度が低下するのを防止するのが望ましい。
【0042】
焼入れ開始温度が(Ar点+50℃)未満であると、強度にバラツキが生じる。一方、焼入れ開始温度を高めると、仕上げ圧延後再加熱が必要になるので、1100℃以下とした。したがって、焼入れ開始温度は(Ar点+50℃)〜1100℃とした。
【0043】
仕上げ圧延された鋼管の焼入れは、5℃/秒以上の冷却速度を確保して、例えば、常温まで冷却することにより実施する。この焼入れ時の冷却速度が5℃/秒未満では、必要とされる強度を得るのに必要なマルテンサイト、ベイナイトを含む組織が確保できないため、5℃/秒以上の冷却速度を確保する。
【0044】
焼き戻し温度は、溶接熱影響部の強度低下を防止するには550℃以上が必要である。しかし、焼き戻し温度がAc点を超えると強度の低下を招くことになる。したがって、焼き戻しは550℃〜Ac点の温度条件で行う必要がある。
【0045】
本発明では、素材となる鋼片から鋼管を仕上げ圧延するまでの製造工程を限定するものでなく、例えば、連続鋳造機により鋳造されたビレット、または鋳造後分塊工程で圧延して得たビレットを加熱し、傾斜ロール圧延機のようなピアサーを用いて中空素管を得て、その後、マンネスマン・マンドレルミル方式を採用して、マンドレルを用いて延伸圧延後、サイザーまたはレデューサーを用いて仕上げ圧延を行うことができる。
【0046】
上述の化学組成、鋼管組織および製造方法の説明から明らかなように、本発明の継目無鋼管およびその製造方法は、鋼の化学組成を規定することで、所定の鋼管組織を得ようとするものでなく、所定の化学組成を有する鋼片を用い、適正な製造方法を採用して好適な鋼管組織を得ることにより、鋼中の結晶粒が比較的粗大であっても、靭性に優れた特性が確保できるとするものである。
【0047】
【実施例】
表1〜2に示す化学組成を示す35鋼種を転炉で溶製し、二次精錬としてRH処理、または取鍋(LT)処理を実施して、直ちに連続鋳造を行った。連続鋳造機にて製造したビレットを1100℃以上に加熱して、傾斜ロール穿孔機を用いて中空素管を得た。この中空素管をマンドレルミルおよびサイザーを用いて鋼管に仕上げ圧延を行った。そののち、焼入れおよび焼き戻し処理を行い、継目無鋼管を製造した。表3に仕上げ圧延された鋼管寸法(外径、肉厚)および熱処理条件を示す。
【0048】
製造された鋼管から、JIS12号引張試験片およびJIS4号シャルピー試験片を採取し、引張強さ(TS)、降伏強さ(YS)、延性破面遷移温度(vTrs)を測定した。また、浸炭粒度試験により結晶粒度測定および光学顕微鏡観察より1cmあたりの酸化物系介在物の直径が5〜300μmの個数および直径が300μm超えの個数の個数を測定した。測定に際しては、引張試験はJIS Z 2241に、衝撃試験はJIS Z 2242に、粒度試験はJIS G 0551に準じて行った。酸化物系介在物の測定は、光学顕微鏡にて倍率400倍、321視野で測定した。これらの測定結果を表4に示す。
【0049】
【表1】
Figure 0004016786
【0050】
【表2】
Figure 0004016786
【0051】
【表3】
Figure 0004016786
【0052】
【表4】
Figure 0004016786
【0053】
表4の結果から、鋼種No.1〜27は本発明例であり、いずれもvTrsは−40℃以下と良好な靱性を有することが分かる。
【0054】
比較例のうち鋼種No.28〜30は、それぞれS、OおよびTiが本発明で規定する成分範囲から外れるため、vTrsは−26℃、−15℃および−18℃であり靭性が劣化している。さらに、鋼種No.31および32は、それぞれPおよびCが本発明で規定する成分範囲から外れるため、vTrsは−31℃および−30℃であり靭性は不良であった。
【0055】
比較例のうち鋼種No.33〜35は、精錬工程において転炉で溶製後、二次精錬として取鍋(LT)処理を実施したものであるが、酸化物系介在物の直径が300μm超えの個数が1cmあたり1個以下を満足するが、その直径が5〜300μmの個数が1cmあたり209〜239個と本発明で規定する範囲から外れるため、vTrsは−18〜−33℃であり靭性は不良であった。
【0056】
図2は、直径が5〜300μmの酸化物系介在物の個数(1cmあたり)と衝撃値(vTrs)との関係を示す図である。同図中の記号は、○は鋼種No.1〜27(本発明例)、×は鋼種No.28〜30(比較例、成分外れ)、▲は鋼種No.33〜35(比較例、酸化物系介在物外れ)をそれぞれ示している。
【0057】
図2に示す結果から、鋼種No.1〜27の本実施例では、酸化物系介在物の個数が低下するにともない、vTrsの改善が図られていることがわかる。特に、鋼種No.7、16、20および22では、vTrsはいずれも−60℃以下と極めて優れた靱性が得られている。
【0058】
【発明の効果】
本発明の継目無鋼管およびその製造方法によれば、鋼成分と鋼中の酸化物系介在物の最大径と個数を制限することによって、鋼に破壊が発生した場合に、鋼中の結晶粒が比較的粗大であっても、結晶粒界の脆化防止を図ることが可能になる。これにより、熱処理プロセスの合理化や生産性の向上を阻害することなく、靭性に優れた継目無鋼管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CaO−Al系擬二元系状態図である。
【図2】直径が5〜300μmの酸化物系介在物の個数(1cmあたり)と衝撃値(vTrs)との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.30〜2.5%、P:0.030%以下、S:0.006%以下、Ti:0.002〜0.017%、Al:0.001〜0.100%、N:0.008%以下およびO(酸素):0.004%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなる継目無鋼管であって、JIS G 0551で規定される粒度番号が7未満であり、かつ鋼中に存在する酸化物系介在物の直径が300μm超えの個数が1cmあたり1個以下で、5〜300μmの個数が1cmあたり200個以下であることを特徴とする継目無鋼管。
  2. さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%を含有することを特徴とする請求項1に記載の継目無鋼管。
  3. さらに、質量%で、Cu:0.05〜1.5%、Ni:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.02〜0.5%およびV:0.02〜0.20%のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の継目無鋼管。
  4. さらに、Ti/N≦3.43の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の継目無鋼管。
  5. Caを含有した場合に、Ca/O(酸素):0.5〜2.0の関係を満たすことを特徴とする請求項2〜請求項4に記載の継目無鋼管。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の組成を有する鋼片を、熱間圧延により継目無鋼管に圧延した後、直ちに焼き入れ開始温度を(Ar点+50℃)〜1100℃として5℃/秒以上の冷却速度で冷却し、次いで550℃〜Ac点で焼戻しを行うことにより、JIS G 0551で規定される粒度番号が7未満であり、かつ鋼中に存在する酸化物系介在物の直径が300μm超えの個数が1cmあたり1個以下で、5〜300μmの個数が1cmあたり200個以下である継目無鋼管の製造方法。
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